IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘドリッヒ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-539566三重炉を用いた加工部材の多重温度制御方法
<>
  • 特表-三重炉を用いた加工部材の多重温度制御方法 図1
  • 特表-三重炉を用いた加工部材の多重温度制御方法 図2
  • 特表-三重炉を用いた加工部材の多重温度制御方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】三重炉を用いた加工部材の多重温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
H02K15/12 D
H02K15/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023510362
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2021072456
(87)【国際公開番号】W WO2022034164
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】102020004905.2
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522018701
【氏名又は名称】ヘドリッヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】バウフ、カール
(72)【発明者】
【氏名】マイス、ゲルハルト カール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス、ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP06
5H615PP12
5H615QQ03
5H615RR07
5H615SS24
5H615SS42
(57)【要約】
【課題】例えば鋼や銅から構成されるステータの様な、異なった材料から構成される構成部品の、迅速で、エネルギ効率がよく、均一で、空間節約的で、かつ正確な加熱を可能にすること。
【解決手段】軟鉄積層体及び銅ロッドから構成される電気モータのステータ(7)及びロータ並びに一般的に異なる磁気的及び熱技術的特性の材料から構成される構成部品の多重(multipl)温度制御方法であって、構成部品の磁性部分は一次的に誘導により加熱されると同時に同一の構成部品の非磁性部分は一次的に赤外線放射により加熱され、二次的に同時的加熱並びに後続の目標温度の微細調節及びその保持が対流により行われること、を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟鉄積層体及び銅ロッドから構成される電気モータのステータ(7)及びロータ並びに一般的に異なる磁気的及び熱技術的特性の材料から構成される構成部品の多重(multipl)温度制御方法であって、
構成部品の磁性部分は一次的に誘導により加熱されると同時に同一の構成部品の非磁性部分は一次的に赤外線放射により加熱され、
二次的に同時的加熱並びに後続の目標温度の微細調節及びその保持が対流により行われること、を特徴とする多重温度制御方法。
【請求項2】
筒状の構成部品、特にステータ(7)が、一次的加熱において、急速かつ均一な加熱のため内部から及び外部から同時に異なる加熱方法により、特に誘導及び赤外線放射により、加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の多重温度制御方法。
【請求項3】
内部及び外部の加熱源の強度が、かくて誘導加熱(8)及び赤外線加熱の強度が、構成部品に配された材料部分のエネルギ需要と目標温度に対応して、互いに独立して制御されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の多重温度制御方法。
【請求項4】
均一な温度分布の為及びより良好な熱伝達の為の、周囲の空気による対流加熱における加熱の間に、構成部品が運動、特に回転に置かれ、及び/又は、誘導体(8)及び赤外線放射器(9)が、任意的に線形に、運動されることを特徴とする、請求項1~3の少なくとも1項に記載の多重温度制御方法。
【請求項5】
構成部品の対流加熱の為の加熱エネルギが、部分的に、構成部品から反射されたか、又は、丁度放射された赤外線源に由来すること、及び/又は、少なくとも、誘導体(8)により加熱されるフェライト系材料製の受動的加熱要素(10)により導入されることを特徴とする、請求項1~4の少なくとも1項に記載の多重温度制御方法。
【請求項6】
加熱されるべき非磁性であるが導電性の部分は、赤外線放射に補充的に又は選択的に、高い電流通電に基づく抵抗加熱により、加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の多重温度制御方法。
【請求項7】
構成部品の熱量に対応して必要な構成部品の、特に構成部品の個々の材料部分の、異なる材料の質量及びその熱容量に基づく要求される温度上昇の為の加熱は、構成部品の個々の材料部分に作用する加熱エネルギが、プログラム予設定に従って、所望の熱量が導入されかくて目標温度に到達するまで、供給されるように行われることを特徴とする、請求項1~6の少なくとも1項に記載の多重温度制御方法。
【請求項8】
請求項1~7の少なくとも1項に記載の多重温度制御方法の実現のための、電気モータのステータ(7)及びロータの急速かつ効果的加熱の為の装置としての三重(triplex)炉(1)であって、
三重炉(1)は、好ましくは可動に配された少なくとも一つの誘導体(8)及び好ましくは可動に配された少なくとも一つの赤外線放射器(9)から構成される一次的加熱部から構成される少なくとも一つの加熱ステーションと、二次的対流加熱部と、加熱室(2)の外部に存在し、構成部品回転駆動装置を備えた少なくとも一つの構成部品輸送ユニット(5)とから構成されることを特徴とする三重炉。
【請求項9】
二次的対流加熱部の熱源は、受動的加熱要素(10)であり、フェライト系材料製受動的加熱要素(10)が少なくとも一つの誘導体(8)とカップリングされており、及び/又は、赤外線吸収体が赤外線放射器に対する受動的加熱要素をなすことを特徴とする、請求項8に記載の三重炉。
【請求項10】
一次的加熱要素も、二次的加熱要素も選択的に位置可動に配設され、それぞれ駆動装置に接続されていることを特徴とする、請求項8~9の少なくとも1項に記載の三重炉。
【請求項11】
請求項8~10の少なくとも1項に記載の三重炉であって、
三重炉(1)は、一方において、能動的加熱要素及び好ましくは補充的な受動的加熱要素、少なくとも一つの閉鎖可能な構成部品装入開口部(3)及び構成部品運動方向に沿って延在する加熱室切欠き開口部(2.2)、並びに、任意的に、吸引開口部、温度センサ、照明器、及び少なくとも一つのワンウェイ鏡面化ガラス盤を備えると共に、
他方において、加熱室(2)と接続された構成部品搬送装置を備え、その内部に存在する構成部品キャリア(6)が加熱室(2)の中へ突出し、機械要素を介して駆動部により運動されかつ回転されることを、特徴とする三重炉。
【請求項12】
誘導体(8)は、可撓性の、任意的に駆動部により変形可能な中空体であり、好ましくは、銅製可撓菅ないしは銅製蛇腹菅の形で構成されることを特徴とする、請求項8~11の少なくとも1項に記載の三重炉。
【請求項13】
三重炉は、3つの加熱方法の各々に対してかつ構成部品輸送ユニット(5)に対して温度制御手段を備えることを特徴とする、請求項8~12の少なくとも1項に記載の三重炉。
【請求項14】
加熱室(2)内に、一次的加熱要素および2次的加熱要素を備えた複数の加熱ステーションが、直列的に配設されることを特徴とする、請求項8~13の少なくとも1項に記載の三重炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々の材料から成る電気モータのステータの様な、好ましくは管状の、構成部品ないし部材の迅速、効果的かつ均一な加熱のための方法及び、三重炉(トリプレックス炉)の形における例示的な装置に関する。三重炉は、電気モータのステータの様な構成部品の異なった材料及び部分を対象とした、3つの異なった加熱プロセスの同時的実施を可能にする。
【背景技術】
【0002】
電気モータの構成部品は、通常銅から成る導電性部品の包埋及び/又は含浸のため、鋼板(複数)及び銅ロッド(複数)、いわゆるヘアピン、もしくは銅線材から成るステータ及びロータを、80~180°Cの温度に加熱する必要がある。ステータ及びロータの含浸及び/又は包埋は、特に構成部品の互いに対する固定のため、より良きかつ規定された熱放出のため及び付加的な電気絶縁のため、行われる。
【0003】
後述の発明は、軟鉄積層体(軟磁性鉄積層コア、以下「鉄積層体」とも称する)及び銅巻線から構成される電気モータのステータを的とする。銅巻線は、最近の電気モータにおいては、しばしば、銅製の溶接したヘアピン(複数)によって、置き換えられており、ヘアピンは鉄積層体内に内径部分において導入され、軸方向の両側においていわゆる巻線ヘッドとして突出している。含浸及び/又は包埋のためのステータの予熱の際にも、またゲル化のため及び硬化のための後続の温度上昇(複数)のためにも、効果的、迅速かつ均一な温度上昇が望まれる。
【0004】
これらの部品の含浸又は包埋のための、現在のシステムにおいては、これ迄、殆ど(強制)空気循環炉が用いられ、所望の温度を達成するため、空気循環炉の中へステータが最小時間の間装入され、ないし、これらの炉を通じて走行されている。熱伝達は、その際、対流によって行われる。これらの炉は、通例、ガス又は電気で加熱される。真空中では、この種の加熱方法は、有効ではない。なぜならば、熱担体としての空気がないからである。この方法は、安価であり、最もよく試され、緩和であり、長い滞留時間に対して非感受性であるが、しかし、かなりの時間、スペース及びエネルギを必要とする。
【0005】
数年来、ステータは、個別に、外部から構成部品に対して照射される赤外線放射によって加熱されている。この際、加熱放射は、加熱されるべき物体の表面に直接当たる。熱源からの空気へのそして空気からの、或いはガスからのステータ熱伝達は、それにより行われない。異なった材料(複数)の表面は、しかし、その際、それぞれの反射率および熱伝導性に応じて大きく異なって加熱される。細い銅製部分への放射も厚い鉄積層体に対すると同様に作用するので、ステータ内部及び表面の均一な温度分布は、より長い待ち(保持)時間によってのみ実現可能である。
【0006】
更に、誘導炉が知られている。特に鉄の様な磁性材料の加熱の為のこの炉ないしプロセスにおいては、構成部品は、高周波の交番磁界を通過される。銅は非磁性であるため、このプロセスにおいては本質的に鉄積層体のみが加熱される。鉄積層体から、温度は次いで銅の部分へ移行しなければならない。特に、誘導加熱の際、ホットスポット(複数)、即ち電磁波が集中する角やエッジが考慮されなければならない。ここにおいて、超過温度(過熱)が非常に早く発生し、それは、絶縁又は隣接する樹脂部分の破壊を導出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE10 2017 005 532A1
【特許文献2】EP2 905 346A1
【特許文献3】DE692 24 349T2
【特許文献4】DE 10 2012 007 959A1
【特許文献5】DE 10 2018 101 226A1
【特許文献6】EP2 640 546B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
DE10 2017 005 532A1から、電気機械のステータ又はアンカーの誘導加熱及び高温保持の為の方法及び加熱装置が知られており、誘導加熱は異なった材料(複数)に向けられた異なった周波数の電磁界によって行われる。鉄積層体及び突出する銅部分はその際異なった周波数の異なった誘導体によって加熱される。ステータの均一なかつ数度程度に正確な温度への到達は、誘導及び放射の様な直接的加熱方法では実際には非常に困難であること分かっており、さらに待ち時間が伴う。特に、含浸の後常時強制的に回転される部分における温度測定が、問題である。特に、異なった出発温度又は長い保持時間に際して、全体のプロセスに影響を与える許容できない偏差が生ずる。
【0009】
電気モータの加熱のさらに他の方法は、抵抗加熱である。その際、低電圧の大きな低周波数電流が巻線に印加される。この際熱は、電気抵抗に基づき、電流通電する部分にのみ生成され、そこから鉄積層体の様な鋼製部材に伝達されねばならない。これは、全ての構成部分に同一の温度が要求される限り、かなり長い時間を必要とし、そしてさらに、大きなエネルギ強度のため、効率が低い。
【0010】
構成部品の加熱に長時間を要するということは、所定の短いサイクル時間での連続処理において、多数の被加工物キャリア及び把持装置、かなりの場所的かつエネルギ的必要を伴う大きな炉、及び、長い前準備時間及び通過時間を意味する。設備内に存在する大きな数の構成部品は、これらのフレキシビリティを損ない、かつ高価にする。
【0011】
EP2 905 346A1からは、鋼板製構成部品に対して温度プロフィルを印加するための方法及び熱処理装置が知られている。これは、鋼板製構成部品の AC3温度超の温度への加熱の為の製造炉を備え、そして鋼板製構成部品に対して温度プロフィルを印加するための熱的後処理ステーションを備えており、その際、鋼板製構成部品の1又は複数の領域が対流により及び/又は放射により及び/又は熱伝達により冷却かつ加熱される。
【0012】
アルミニウム又はアルミニウム合金製部品の熱処理の為の方法及び装置の制御方法がDE692 24 349T2から知られている。
【0013】
誘導装置を用いた加工材料の誘導加熱のための装置の制御装置が、DE10 2012 007 959A1から知られている。
【0014】
DE 10 2018 101 226A1から、アクスルシャフト、側部シャフト、又は駆動シャフトの様な、長い加工材料の誘導硬化のための装置が知られており、少なくとも、硬化ステーション及び焼き戻しステーションを含んでいる。その際、少なくとも一つの硬化ステーションが、加熱の為の誘導装置及び材料の急冷のための急冷装置を有し、硬化すべき材料を供給装置から取り出して硬化ステーションへ入れそして排出装置に置くため、少なくとも一つの多軸ロボットが設けられている。
【0015】
最後に、EP2 640 546B1から、金属製材料を溶接の際加熱するための誘導加熱のための装置が知られており、少なくとも一つの可撓性誘導要素と、誘導要素に接続された中周波数発生器の出力及び場合により周波数を自動制御するための手段とを有し、この際、可撓性誘導要素と冷却剤導管は多段階に可塑的ないし弾性的に変形可能であり、そして、手動で又は自動的に加熱されるべき材料の形に適合可能である。
【0016】
従って、課題は、例えば鋼や銅から構成されるステータの様な、異なった材料から構成される構成部品の、迅速で、エネルギ効率がよく、均一で、空間節約的で、かつ正確な加熱を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、請求項1に記載のような方法により解決される。後続の請求項は、前記方法の展開形態及び当該方法の実施のための例示的装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
新しい方法は、さらに、含浸された、即ちなお液状の樹脂でスプレーして濡らされたステータ及びロータが、含浸剤の滴下及び回転アンバランスを回避するため、連続的に回転しなければならないという要求に対応するものである。
【0019】
新しい方法は、異なった加工材料(単に「材料」とも称する)から構成される構成部品(単に「部品」とも称する)の、異なった、材料及び構成部分に向けられた、異なった加熱源を用いた加熱方法による、同時的加熱により特徴付けられる。この方法は、たとえばステータの、さらにはその内部及び外部からの同時的加熱を実現する。このような方法及びそれに適合された装置により、初めて、非常に迅速で、かくてエネルギ及び空間を節約しての加熱、及びさらにそのような構成部品(ないし部材)の均一な(内部を通しての)一貫加熱が可能になった。この新しい方法は、熱の大部分は直接構成部分に供給される、ないしは、誘導により構成部分の内部ですら生成されるので、高いエネルギ効率を特徴とする。
【0020】
本書において対流炉と表示される従来の熱伝達方式の炉に対比して、必要とする熱量の大部分の直接的導入に基づき加熱室は、非常に小さく構成でき、それは、また、回転する構成部分が単に僅かの空気循環を不可欠とするからでもある。小さな構成態様は、僅かの放射面を、かくて少ない熱損失を、生ずる。我々により提案された解決策の断熱されたハウジングは、かくて、単に僅かの熱を、周囲に放出するだけである。構成部品の直接的加熱の為の加熱要素は、また対流加熱の(エネルギ)供給にも資するという構成的特徴に基づき、炉空間ないしは加熱室を小さく保つための、さらなる助け大なる特徴である。一方において、赤外線放射器又は赤外線反射器は、構成部品を囲む空気が加熱されるように運動される。他方において、特に誘導体が作用するフェライト系材料製(ferritisch)の受動的加熱要素は、対流的加熱の為の熱源として、役立つ。誘導体が受動的加熱要素に作用する強度(強さ)は、温度制御されている。誘導体は、好ましくは、可動に配設され、少なくとも一つの駆動手段(アクチュエータ)によって、異なった構成部品(ないし部分)サイズそして場合により異なった構成部品形状に適合可能である。誘導体の運動可能性により、誘導体は受動的加熱要素の作用領域内へももたらされる。かくて、同一の誘導器が、構成部品の直接的加熱のためにも、また、対流的加熱の為の受動的加熱要素の温度制御(ないし温度調節的加熱;Temperierung)の為にも役立つ。受動的加熱要素としては、フェライト系材料製フィン付きチューブ、成形部材、プレート、棒状体、又は格子が提案される。これらの運動されない要素においては、温度は、加熱ステーションにおける空気温度の如く、同様に信頼して測定できる。誘導体と受動的加熱素子の相互作用により、即ち、空気流動を与える回転する構成部品(ないし部分)と共に、対流式炉が創出される。加熱室内の空気循環は、補助空気ファン(ベンチレータ)により支援される。対流式加熱方法は、構成部品温度の僅か(微細)の適合(調節)に、構成部品内部自体の温度平衡のために、及び、例えば、後続の装置部分の停止状態における待ち時間の際、到達した目標温度の保持のために、資する。間接的加熱の活性化は、特に、受動的加熱要素と誘導体の間の距離の減少により行われ、例えば、旋回、回転、摺動、などにより、並びに、誘導体への異なった強さでの(エネルギ)印加により、行われる。
【0021】
新しい方法の特徴は、誘導、赤外線放射及び対流を同時に作用させることである。選択的に(ないし任意的に)赤外線放射は、高い低電圧電流を介しての銅部分の抵抗加熱により、置き換え又は補充される。
【0022】
適切な装置においては、受動的加熱要素は、赤外線放射器によっても加熱される。
【0023】
0~100%の、誘導及び/又は赤外線放射の強度及び期間は、一方において、操作者により、各構成部品(ないし部分)に応じて予設定される。他方において、加熱出力は、予設定された最高温度を考慮して、現在温度と目標温度の差に基づいて、制御される。これらの運動される部材における温度は、不正確にのみ測定され、しかも、表面でのみ測定されるので、構成部品の加熱は、好ましくは、次のスキームに従って行われる。既知の質量の銅と鋼積層体を有するステータの出発温度が測定される。目標温度は、固定されている。ステータに導入された加熱出力(これは、誘導加熱の為の周波数変換器が表示できる)及び、作用期間の長さから、導入された熱量が求められ、予設定された下降的出力推移(曲線)に対応して計算された必要な熱量と比較される。或は、構成部品への熱量導入量を、テーブルに対応して、温度上昇(曲線)と構成部品(部分)に対応してプログラム化することも可能である。
【0024】
温度測定には、既知の非接触的及び接触的測定技術を用いる。
【0025】
ステータ表面及び内部での均一な温度分布のため、ステータは、好ましくは加熱プロセスの全期間の間、回転され、そして加うるに内部から及び外部から加熱される。異なった構成部分(複数)乃至ステータサイズ(複数)が、同一の誘導器(複数)及び赤外線放射器(複数)によって効率的に加熱されることができるように、これらの装置部材は可動に配設される。ステータの内部に配設される加熱要素にとっては、ステータが次のステーションへさらに移動できるようにするためにもこのこと(可動配設)は、不可欠である。可動の短い誘導器(インダクタ)は、交番的な線形運動により長いステータの均一な加熱も可能とする。赤外線放射要素についても、同じことが妥当する。さらに、能動的(aktiv)な加熱要素のこの運動可能性は、対流による温度制御(制御的加熱)のための受動的加熱要素のターゲットとした起動及び加熱をも可能にする。
【0026】
新しい方法のさらなる特徴は、回転する構成部品(ないし部材)の内部及び外部からの、異なった熱源(複数)を用いた同時的加熱である。その際、熱源(複数)それぞれの材料及び構成部品(ないし部分)の形状に適合される。各熱源が構成部品の対応する部分(セクション)に所定の時間の間作用する(熱の)強さは、導入されるべき熱出力ないし所望の温度を与える。
【0027】
対流は、構成部品(ないし部材)の直接的加熱を支援し、そして、構成部品(部材)内部での温度平衡を問題とするとき、また、所望の目標温度の保持を問題とするとき、主として重要性を有する。特にステータやロータのような、構成部品の回転により、さもなくば一般的な周囲空気循環ブロアを用いることなく、構成部品の周りの継続的な空気時循環をもたらす。このことは、構成空間、エネルギの節約を生じ、そして騒音を生じない。ブロア及びガイドバッフル板の装入が必須でないこと、そして、既存の加熱要素の利用に基づき、非常に小さな加熱室が可能であり、それは断熱が安価であり、かつ急速に加熱可能である。大きな(高い)熱効率に鑑み、加熱される空間(加熱室)は、出来る限り、鏡や適切な箔(フォイル)ないし被覆材のごとき反射性要素(複数)を備える。三重(triplex)炉の内部監視のため、内部領域にワン-ウェイミラー盤が設けられ、これは、熱放射の60~95%を反射するが、炉内への注視は許容するものである。
【0028】
三重炉の(壁の)通過のため、三重炉には、フラップ、及び/又はブラシ又は耐熱性の垂れ幕が、構成部品装入開口部及び/又は加熱室の切欠部(切欠き開口部)に装着される。
【0029】
ステータの一様な回転は、液状の含浸剤(通例、塗料又は樹脂)の導入の後、一様な層(被膜)を巻線に得るため、及び溝の一様な充填を確保するため、不可欠である。停止状態においては、含浸剤は、滴下するであろう。不均一な含浸剤の分布があると、ロータのように回転する構成部品においては、許容されない回転アンバランスが生ずるであろう。
【0030】
ボア(中心孔)がないため外部及び内部から同時に加熱できない構成部品に対して、好ましくは可動な加熱要素(複数)の、対向しての又は列状に並べての、配設が提案される。
【0031】
三重炉形式の方法の実施のための例示的装置は、本質上、加熱室と、これに接続される構成部品搬送ユニットとから構成される。構成部品搬送ユニットは、構成部品キャリア(支持具)を、ステップ的に又は連続的に、加熱室を通って搬送する。構成部品キャリアは、このため、回転可能に配設され、そして、搬送要素の所に又は複数の搬送要素の間にチェーンのように配置される。構成部品の連続的回転のため、構成部品キャリアは、構成部品キャリアに設けたピニオンギア(ないし歯状部)に作用する特別の駆動装置により、駆動される。構成部品キャリアの回転運動は、任意的に、同一のチェーンによって行われ、該チェーンの間にチェーンホイールを備えた構成部品キャリアが配置される。
【0032】
回転する構成部品の為の構成部品キャリアは、インナクランプ又はアウタクランプとして実施され、加熱室内に存在し運動される構成部品と取り付けられた構成部品搬送ユニットの間の接続を生成する。
【0033】
加熱室は、例えば、誘導器、赤外線照射器、並びに受動的加熱要素及び赤外線の吸収体若しくは反射体の様な、直接的又は間接的な構成部品加熱の為の加熱要素(複数)を含む。三重炉は、モジュール的に構成され、そして、少なくとも一つの加熱ステーションを有し、加熱ステーションは前に既述の加熱要素(複数)を備える。一つの三重炉内に配列される加熱ステーションの数は、技術的な予設定に従う。囲い込みハウジングは、加熱室の体積(ないし容量)を可能な限り小さく保持し、そして床と天井(蓋)の間の温度差を小さくするため、最大の(寸法の)構成部品に対してわずかの余地(Raum)のみを与えるよう構成される。加熱室は、構成部品搬送ユニットに至る一方の側で、全長にわたり、構成部品キャリアがその中で運動する切欠き開口部を備える。切欠き開口部は、好ましくは、多数列のブラシ帯材ないしは他の可撓性の被覆要素により、覆われている。後続の又は、前置の設備部分が、加熱室とは異なる温度レベルを有する場合には、切欠き開口部は、入口及び出口のところで、摺動可能に配設されかつ駆動装置(アクチュエータ)を備えた、フラップ又はドアなどの様な閉鎖要素により閉鎖される。これらの、好ましくは摺動要素として実施された入口(複数)は、場合により構成部品を伴う構成部品キャリアの通過の為にのみ、開かれる。構成部品の加熱素子、特に成形材料又は含浸樹脂の加熱の場合、ゲル化及び硬化の際に結露が生ずるので、加熱室には、多数のセンサ、特に接触式又は非接触式の温度センサが、配設される。
【0034】
模式的に表示された図面により、本方法及び例示的な三重炉の形式の装置について詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】異なった加熱源によるステータ(7)の内部及び外部からの同時的加熱の為の、一次的加熱要素の可能な一構成を示す。
図2】三重炉(1)の例示的一実施例の断面図を示す。
図3】ステータ(7)を取り付けたインナクランプとしての一構成部品キャリア(6)を示す。
【実施例
【0036】
図1は、一例として、電気モータの為のステータ(7)の形における一構成部品の加熱室(2)内での能動的及び受動的加熱素子の可能な単純化した配設(構成)を断面において示し、ステータ(7)は、複数の軟鉄シート(軟磁性鉄板)からなる鉄積層体(積層鉄心)(7.1)と、銅巻線(7.2)から本質上構成される。鉄積層体の両側に突出する銅ロッド端部(複数)は、巻線ヘッドと称される。鉄積層体はその内周部に長手方向溝(複数)を有し、長手方向溝(複数)内には銅ロッドが挿入されている。ステータ(7)は、構成部品キャリア(6)により支持され、搬送され、そして回転され、構成部品キャリアはここでは簡単に、(構成部品を外部から把持する)アウタクランプとして表示されている。加熱室(2)は、断熱性の加熱室ハウジング(2.1)として規定(画成)されている。加熱室ハウジング(2.1)は、構成部品搬送ユニット(5)のための、少なくとも一つのスロット形の切欠き開口部(2.2)を、備える。この切欠き開口部(2.2)に沿って、構成部品キャリア(6)は、かくてそれと共にステータ(7)は、運動し、回転しつつ一つの加熱ステーションから他の加熱ステーションへ、又は、一つの装置部分から次の装置部分に到達する。ステータ(7)の一次的加熱の為、特に鉄積層体誘導加熱の為外部に配置した誘導器(インダクタ)(8)、及び、ステータ(7)の中心ボア内に配置した、銅ロッドの加熱の為の少なくとも一つの赤外線放射器(放射体)(9)が認められる。駆動装置(アクチュエータ)に接続されて、そして一次的加熱要素のスライド可能な配設により、これらの加熱器は、異なった構成部品(ないし構成部分)の寸法に、特には異なったステータ寸法に適合され、又は、(異なった)ステータ(7)内に導入される。更に、一次的加熱要素及び特に誘導器(8)にとって、その摺動可能な配設保持により、受動的加熱要素(10)の作用領域内へ移行することが、可能であり、受動的加熱要素を加熱室(2)の対流式加熱のため、かくて構成部品を、温度制御(制御的に加熱;temperieren)することが可能である。赤外線加熱菅(複数)は、表示した例において、同じく(装置の)軸方向に可動に配設保持されステータ(7)の中心ボア内へ入りかつ出るように移動することができる。
【0037】
誘導器(8)及び/又は赤外線加熱菅は、好ましくは、摺動(スライド)可能に配設され、そして、自動的位置決めのため、駆動装置(アクチュエータ)と接続されている。それにより、一次的加熱要素は、異なった構成部品(ないし構成部分)の寸法ないしはステータ寸法に適合され、そして同時に、加熱室(2)及びステータ(7)の対流式加熱のための受動的加熱素子(10)に対するエネルギ源として利用される。その際、例えば誘導器(8)が活性化され、フェライト系(材料製の)受動的加熱素子(10)の相互作用領域内へ運動(移動)される(即ちカップリングされる)。この様にして、誘導器(8)は、選択的に構成部品又は受動的加熱素子(10)を加熱する。同様にして、赤外線放射菅を用いても加熱することができる。加熱室(2)内での空気循環は、ステータ(7)の回転運動及び/又は熱空気ファン(11)により行われる。
【0038】
加熱要素のこの配置構成により、ステータ(7)は、誘導による鉄積層体内への直接的熱導入により、及び、銅ロッド(複数)内への赤外線放射による直接的熱導入により、外側から及び内側から同時に加熱され、及び/又は補充的に、並びに引き続いて、すべての側において、加熱された循環空気、即ち、対流により、所定温度に保たれるか又は目標温度に平衡化される。加熱室(2)は、好ましくは、ステータ(7)の装入の際既に、赤外線放射器(9)及び受動的加熱要素(10)により、目標温度にもたらされている。
【0039】
図2は、構成部品搬送ユニット(5)及び加熱室(2)から構成される三重炉(1)の簡略化表示の断面図を示す。インナクランプ(内側で把持)としてクランプ保持されたステータ(7)を備えて表示された構成部品キャリア(6)は、構成部品搬送ユニット(5)内においてチェイン(複数)に係合(掛けまわし)して配されたチェーンホイール(複数)を備えて、(回転可能に)軸受け保持されており、そして、切欠き開口部(2.2)を貫通して、加熱室(2)内へ入り込んでいる。ここに、切欠き開口部(2.2)は、構成部品搬送ユニット(5)と加熱室(2)の間において、(構成部品の)搬送経路に沿って、配設されている。構成部品キャリア(6)の軸が、シールされた切欠き開口部(2.2)を貫通して運動できるように、切欠き開口部(2.2)には可撓性のシール部材(カバー)が設けられる。可撓性シール部材は、例えば、ブラシ、吊り幕、弾性薄板、及び弾性の、膨らましたシリコーンチューブの様な、耐熱性シール材である。この開示例においては、誘導器ないしインダクタ(8)は、鉄積層体の上部の外部に配設されており、赤外線放射器(複数)(9)は、外部から巻線ヘッドの銅ロッド(複数)に向けて(カップリング可能に)配設されている。対流の為の、ステータ(7)を囲む加熱された空気は、視認可能には、表示されていない。加熱室(2)は、断熱性絶縁層で被覆したハウジングから構成され、並びに、少なくとも一つの構成部品装入開口部(3)を備え、これは、同時にまた、構成部品の排出にも用いられる。
【0040】
図3は、中心ボアを有する構成部品のインナクランプとして構成され、かつ、ステータ(7)を支持する構成部品キャリア(6)を示す。構成部品キャリア(6)は、図示の実施例において、ステータ(7)の回転の為の支点(中心軸)をなし、かつその搬送の為の駆動要素をなす、2個のチェーンホイールを備える。チェーンホイールは、(それぞれ)DE 10 2019 004 954.3に示されているように、チェーンの間に(チェーンに係合されて回転可能に)支持されている。
【符号の説明】
【0041】
1 三重炉(トリプレックス炉)
2 加熱室
2.1 加熱室ハウジング
2.2 加熱室切欠き開口部
3 構成部品装入開口部
4 排気口(吸引開口)
5 構成部品搬送ユニット
6 構成部品キャリア
7 ステータ
7.1 (軟)鉄積層体(積層鉄コア)
7.2 (銅)巻線
8 誘導器(インダクタ)
9 赤外線放射器
10 受動的加熱要素
11 熱空気ファン(循環ファン)
図1
図2
図3
【国際調査報告】