(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】アルギネートをベースとするポリマーおよび製品、ならびにそれらの製造
(51)【国際特許分類】
C08L 5/04 20060101AFI20230908BHJP
D01F 9/04 20060101ALI20230908BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C08L5/04
D01F9/04
C08K5/092
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512041
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2021045942
(87)【国際公開番号】W WO2022040043
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523055075
【氏名又は名称】キール ラブス, インコーポレーティッド
【氏名又は名称原語表記】KEEL LABS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィギュリー,ギャレット ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ギャンデ,マシュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,レイ ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002AB051
4J002EF066
4J002EF106
4J002FD146
4J002GK00
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB07
4L035BB14
4L035BB15
4L035BB16
4L035GG01
4L035GG03
4L035HH01
4L035JJ04
4L035KK05
(57)【要約】
非置換のジカルボキシレートで橋架けされた多価のカチオンによりイオン的に架橋されたアルギネートを含むポリマー、かかるポリマーを含む製品、およびそれらの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非置換のジカルボキシレートで橋架けされた多価のカチオンによりイオン的に架橋されたアルギネートを含むポリマー。
【請求項2】
C2-C20ジカルボキシレートを用いて橋架けされている、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
1)少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩;
少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート;および
少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤
を合わせる工程と;
2)それらを反応させてポリマーを形成する工程と
を含む方法により作製された、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
a.i.少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩;
ii.少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート;および
iii.少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤
を合わせる工程と;
b.それらを反応させてポリマーを形成する工程と
を含む、請求項1に記載のポリマーを製造する方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマーから造形品を製造する方法であって、
a.前記ポリマーを造形して造形品を形成する工程
を含む、方法。
【請求項6】
a.溶媒中の少なくとも1種の一価の金属アルギン酸塩および少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレートのドープを調製する工程と;
b.ドープを紡糸口金に通して押し出して繊維を形成する工程と;
c.繊維を、溶媒および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する少なくとも1つの凝固浴に通して延伸する工程と;
d.繊維を乾燥する工程と
を含む湿式紡糸プロセスにより、請求項1に記載のポリマーの繊維を製造する方法。
【請求項7】
a.アルギン酸塩が、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウム塩であり、約10,000~約500,000の分子量を有し、約1~約2.5のG/M比を有し;
b.ジカルボキシレートが、ジカルボン酸ナトリウム、カリウム、リチウム、またはアンモニウムであり;
c.多価のカチオン性架橋剤が、カルシウム、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを有し;
d.ドープが、ドープの重量の0.5~50重量%の一価の金属アルギン酸塩を含み;
e.ドープが、アルギン酸塩の重量に対して約1~約125%の少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートで調製され;
f.凝固浴が、溶媒中に約0.02~約2モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ドープの溶媒が水であり、凝固浴の溶媒が水である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
非置換のジカルボキシレートが、飽和したC3-C12脂肪族ジカルボキシレートである、請求項2もしくは3に記載のポリマーまたは請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
非置換のジカルボキシレートが、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、およびテトラデカン二酸からなる群から選択されるジカルボン酸に由来する、請求項2もしくは3に記載のポリマーまたは請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
非置換のジカルボキシレートが脂肪族であり、炭素鎖が不飽和である、請求項2もしくは3に記載のポリマーまたは請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
非置換ジカルボキシレートがC6-C20芳香族ジカルボキシレートである、請求項2もしくは3に記載のポリマーまたは請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
架橋剤が、塩化カルシウム、塩化バリウム、重炭酸カルシウム、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)請求項1~3および9~13のいずれか一項に記載のポリマーもしくは請求項4および9~13のいずれか一項に記載の方法により生産されたポリマーから生産された、または(b)請求項6~8のいずれか一項に記載の方法により生産された、繊維。
【請求項15】
請求項14に記載の繊維を含む布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
この出願は2020年8月20日に出願された米国仮出願第63/067,988号および2021年1月20日に出願された米国仮出願第63/139,345号の優先権を主張し、両出願の開示内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願はアルギネートをベースとするポリマーおよび製品、例えば繊維を提供する。アルギネートをベースとする繊維は、履き物、衣料品、服飾品、包装、および家具産業のような様々な範囲の用途において石油化学系ポリマーに代わる堆肥化可能な代替品としてのテキスタイル(textile)を生産するのに使用することができる。
【背景技術】
【0003】
産業界では、テキスタイルのような多くの製品に対して、再生可能な資源から作ることができ、その結果リサイクルすることができるか、そうでなくても環境に対する影響がないかまたはほとんどなく廃棄することができるような「揺り籠から墓場までの」解決策が望まれている。アルギネートのような天然物を使用する試みがなされて来ているが、製品が充分な性能特性をもたないか、または環境に対して不利な影響を及ぼすことになる成分もしくは溶媒を使用したので、今までの努力は満足なものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に弾性(elasticity)、弾力(resilience)、および靭性(tenacity)のような優れた特性を保有しかつ保持し、そのためテキスタイル繊維を含めて多くの用途に適合した製品が提供される。例えば、本発明の繊維(フィラメントおよびステープルを含む)、ヤーン(繊維束)、およびその他のテキスタイル(例えば、織布および不織布のような布)は予想外に優れた機械的完全性を有しており、繊維工業により生じる環境損害を劇的に低下させる能力のため様々な範囲の産業で使用することができる。
【0006】
製品は昆布に由来するアルギネートを用いて作製することができ、したがって植物ベースであり、有害な原材料の必要性を低減すると考えることができる。昆布は低温の沿岸水域で地球全体に生育する海藻または大型藻類の1種である。昆布は地球上で最も速く生育し、最も迅速に再び満ちる(replenishing)生命体の1つである。昆布の成長には、有害な肥料および農薬を利用しないし、耕地を使用しないし、かんがいのために新鮮な水を使用しない。昆布は炭素/CO2を効率よく吸収し、成長中周囲の水から汚染物質を濾しとる。昆布の養殖は、新しい収入源を提供すると共に海洋生息環境を改善することにより魚の乱獲および汚染の影響を受ける経済および生態学的共同体を立て直すのに役立つ可能性がある。昆布は報道によると陸地の森林より1エーカー当たり20倍多くの炭素を隔離し、したがって昆布から作られる製品はカーボンニュートラルまたはカーボンネガティブである可能性が高い。
【0007】
製品は現在および将来の工業用途に使用するのに適合しており、多くの産業、特に繊維工業で現在使用されている製品に代わる適切な代用品となる特性を有している。例えば、繊維は、既に存在する湿式紡糸設備を用い、労働者および環境に対してより安全な化学を用いて紡糸し、加工処理することができる。製品は、例えば引張強さ(靭性)、破壊強度、弾性、伸び、弾力、湿潤強度、弾性係数(modulus)、および強靭性を含めて、他のアルギネート製品と比較して優れた特性を有し、レーヨンの機械的特性と適合性があり、かつ生分解性である。繊維製造加工適性および効率は改善される。アルギネートをベースとする製品は慣用の方法を用いて顔料および染料を容易に吸収することができる。
【0008】
製品は生分解性で堆肥化可能であり、かつ多くの場合菌類および細菌により分解することができる。製品はまた海水中で生分解性でもあり得、摂取されても水生生物に害を及ぼさない。
【0009】
本発明の1つの利点は、製品を、水を溶媒として用いて作製することができるということである。例えば、湿式紡糸において、水をドープおよび凝固浴として使用することができるが、多くの他の湿式紡糸プロセスは石油由来溶媒または苛性溶液を用いて行われる。これは、環境、加工処理、安全性、およびコストの観点から有利である。
【0010】
非置換のジカルボキシレートで橋架けされた多価のカチオンによりイオン的に架橋されたアルギネートを含むポリマーが提供される。
【0011】
アルギネートは一価のカチオンとのアルギン酸塩に由来し得る。アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウム、カリウム、アンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。アルギン酸塩は例えばアルギン酸ナトリウムであり得る。
【0012】
ポリマーは非置換のC2-C20ジカルボキシレート、例えばC2-C20脂肪族ジカルボキシレートを用いて橋架けされていてもよい。複数の実施形態において、ジカルボキシレートはC3-C12ジカルボキシレート、例えばC3-C12脂肪族ジカルボキシレートである。この明細書を通じてジカルボキシレートブリッジ(dicarboxylate bridge)に言及するが、これはいずれも非置換である脂肪族、脂環式、または芳香族のジカルボキシレートから形成することができる。これらのジカルボキシレートブリッジは一般に2~20個(またはそれ以上の)炭素を有するジカルボキシレートから形成されるが、炭素の数は重要ではなく、2-20の任意の数の炭素を有するジカルボキシレートを使用し得る。本明細書で使用されるとき、「C2」ジカルボキシレートは2個の炭素を有し、「C20」ジカルボキシレートは20個の炭素を有する、等である。
【0013】
ジカルボキシレートは、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、およびテトラデカン二酸からなる群から選択される非置換の脂肪族ジカルボン酸に由来し得る。複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートは脂肪族であり、炭素鎖は不飽和である。
【0014】
複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートは脂環式ジカルボキシレートである。
【0015】
複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートは芳香族のジカルボキシレートである。複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートはC6-C20の芳香族ジカルボキシレートである。
【0016】
さらに、少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩、少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート、および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を合わせる工程と、それらを反応させて上述のポリマーを形成する工程とを含む、ポリマーを製造する方法が提供される。複数の実施形態において、方法はアルギン酸塩の重量に対して約1~約125%の少なくとも1種のジカルボキシレートを合わせることを含む。ジカルボキシレートの重量はアルギン酸塩の重量に対して例えば少なくとも7.5%のような少なくとも5%であり得る。ジカルボキシレートの重量はアルギン酸塩の重量に対して例えば75%以下のような100%以下であり得る。
【0017】
複数の実施形態において、方法は、溶媒中に約0.02~約2モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する少なくとも1つの凝固浴内で行い得る。複数の実施形態において、多価のカチオン性架橋剤は0.05~1.5モル/リットルである。複数の実施形態において、凝固浴溶媒は水である。
【0018】
さらに、ポリマーから造形品を製造する方法であって、上記ポリマーを造形して造形品(shaped article)を形成する工程を含む、方法が提供される。複数の実施形態において、造形品は繊維であり、複数の実施形態において、造形品はフィルムであり、複数の実施形態において、造形品は布である。
【0019】
また、少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩、少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート、および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を場合により1種またはそれ以上の添加剤と合わせ、反応させて、架橋されたアルギネートを含むポリマーを含む造形品を形成することを含む、造形品を製造する方法も提供される。複数の実施形態において、造形品は繊維であり、造形は湿式紡糸を含む。
【0020】
また、(a)溶媒中の少なくとも1種の一価の金属アルギン酸塩および少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレートのドープを調製する工程と;(b)そのドープを紡糸口金に通して押し出して繊維を形成する工程と;(c)その繊維を、溶媒および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する少なくとも1つの凝固浴に通して延伸する工程と;(d)その繊維を乾燥する工程とを含む湿式紡糸プロセスを含む、上記ポリマーの繊維を製造する方法も提供される。
【0021】
複数の実施形態において、アルギン酸塩は少なくとも約10,000グラム/モルの分子量を有し得る。複数の実施形態において、アルギン酸塩は約500,000グラム/モル以下の分子量を有し得る。
【0022】
複数の実施形態において、アルギン酸塩は少なくとも1で約2.5以下のG/M比を有し得る。
【0023】
複数の実施形態において、ジカルボキシレートはジカルボン酸のナトリウム、カリウム、リチウム、またはアンモニウム塩である。
【0024】
複数の実施形態において、多価のカチオン性架橋剤はカルシウム、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを有する。
【0025】
多価のカチオンは、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化マグネシウム、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤に由来し得る。
【0026】
複数の実施形態において、ドープは、ドープの重量に対して0.5~50重量%の一価の金属アルギン酸塩を含む。一価の金属アルギン酸塩の重量は、例えばドープの1~40重量%、例えばドープの2~25重量%、またはドープの4~18重量%であり得る。
【0027】
複数の実施形態において、非置換のジカルボン酸塩は、例えばドープ中のアルギン酸塩の5~100%または7.5%~約75重量%のように、ドープ中のアルギン酸塩の重量に対して1~125%である。ドープの残部は、例えば主として水であり得る。
【0028】
複数の実施形態において、凝固浴は凝固浴溶媒中に0.02~2モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する。凝固浴溶媒は、例えば、主としてまたは実質的に水であり得る。複数の実施形態において、多価のカチオン性架橋剤は、例えば0.075~0.75モル/リットルのような0.05~1.5モル/リットルである。複数の実施形態において、ドープの溶媒は水である。
【0029】
凝固浴は例えば少なくとも0.02モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有し得る。複数の実施形態において、凝固浴は少なくとも0.05モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する。複数の実施形態において、凝固浴は少なくとも0.075モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する。複数の実施形態において、凝固浴は2モル/リットル以下の少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤、例えば1.5モル/リットル以下の少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する。複数の実施形態において、凝固浴は0.75モル/リットル以下の少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する。
【0030】
複数の実施形態において、ドープの溶媒は水である。
【0031】
複数の実施形態において、凝固浴の溶媒は水である。
【0032】
複数の実施形態において、ドープの溶媒は水であり、凝固浴の溶媒は水である。
【0033】
また、(a)ポリマーから生産された、(b)ポリマープロセスにより作製されたポリマーから生産された、または(c)繊維製造プロセスにより生産された繊維、およびそれらの繊維を含む布も提供される。
複数の実施形態において、布は編布、または織布、または不織布である。
【0034】
本発明はさらに、上記ポリマーまたは上記プロセスにより生産されたポリマーから作製されたフィルム、発泡体、ペレット、または顆粒状粒子を提供する。本発明はさらに水浴または噴霧プロセスを用いて顆粒状粒子またはペレットを作製する方法を提供する。
【0035】
本開示の追加の特徴および利点は一部は以下の説明に記載され、一部は以下の説明から明らかになるか、または本開示の実践により分かるであろう。本開示の目標および他の利点は以下の説明および特許請求の範囲で特に指摘する要素および組合せによって実現され達成される。
【0036】
以上の全般的な記載および以下の詳細な説明は代表的なものであり、本開示のさらなる説明を提供する説明のためだけのものであり、特許請求の範囲に包含される主題の範囲を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書に示される詳細は、単に、本開示の様々な実施形態の例示および説明のための考察であり、開示されている主題の原理および概念的見地の最も有用で容易に理解される説明と考えられる記載である。この点、開示されている主題の詳細を開示の基本的な理解に必要な程度より詳細に示そうとするものではなく、開示のいくつかの形態が実際にいかように具体化され得るかを当業者に対して明らかにする記載である。
【0038】
以下の開示はより詳細な実施形態を参照する。しかしながら、開示される主題は異なる形で具体化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈してはならない。本明細書に記載されるものと類似または同等な方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料が本明細書に記載される。
【0039】
他に規定されない限り、本明細書で使用するすべての技術および科学用語はこの開示が属する技術分野で通常の知識を有するものにより普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の記載で使用する専門用語は特定の実施形態を記載するためのみのものであり、限定することが意図されていない。本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、単数形態「a」、「an」、および「the」は文脈が明らかに他を示さない限り複数形態も含むことが意図されている。また、語句「少なくとも1つ」および「1つまたはそれ以上」は同義であることが意図されており、その使用は「a」、「an」、および「the」に先行されるいずれの記載のまたは請求項に記載の特徴の範囲を単数形態に限定することを意図していない。
【0040】
本明細書で述べた刊行物、特許出願、特許、およびその他の文書はすべて参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。他に規定されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術および科学用語はこの発明が属する技術分野で通常の知識を有するものにより普通に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾が生ずる場合は、定義を含めて本明細書が優先する。
【0041】
他に示されない限り、明細書および特許請求の範囲中で使用される成分の量、反応条件、等を表すすべての数はいかなる場合でも用語「約」により修飾されていると理解されたい。したがって、反対に示されない限り、明細書および特許請求の範囲で記載される数値パラメーターは、個々の実施形態で得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するつもりはないが、各々の数値パラメーターは有効数字の数および通常の丸め手段を考慮して解釈するべきである。ある値またはある範囲の終点を記載する際に用語「約」が使用されるとき、本開示は言及されているその具体的な値または終点を包含すると理解されたい。
【0042】
開示された主題の広い範囲を表す数値範囲およびパラメーターは近似値であるが、具体的な例に記載される数値はできるだけ正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、本来、その値を得るために使用される方法に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含有する。この明細書を通じて与えられるあらゆる数値範囲は、かかるより広い数値範囲内に入るあらゆるより狭い数値範囲を、かかるより狭い数値範囲がすべて明白に本明細書中に記載されているかのように包含する。
【0043】
量、濃度、またはその他の値もしくはパラメーターがある範囲、好適な範囲または上側の好ましい値および下側の好ましい値のリストとして与えられているときは、範囲が別々に開示されているかどうかに関わらず、いずれかの上側の範囲の限界または好適な値およびいずれかの下側の範囲の限界または好適な値の任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示していると理解されたい。本明細書中で数値の範囲が記載されている場合、特に明記しない限り、その範囲はその終点、ならびにその範囲内のすべての整数および分数を包含することが意図されている。本発明の範囲がある範囲を定義するときに記載されている特定の値に限定されることは意図されていない。
【0044】
この出願においてすべてのパーセント測定は、特に明記しない限り、所与の試料重量の100%を基準にして重量で測定される。したがって、例えば30%は試料の100重量部毎の30重量部を表す。他に記載しない限り、すべての百分率、部、比、等は重量による。
【0045】
本開示は開示されている組成物に含まれることが考えられる多数の様々な成分を含む。発明者は、かかる成分を含むことを明白に予期するとき、かかる成分を除くことも明白に考えるものと認識するべきである。したがって、本明細書に開示されているすべての成分は排除されることも明白に予期される。
【0046】
明白に示される場合を除いて商標は大文字で示す。
【0047】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「特徴とする(characterized by)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはその他あらゆる変化形は非排他的な包含に及ぶことが意図されている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は必ずしもそれらの要素のみに限定されることなく、リストに明白に挙げられていないかまたはかかるプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、明らかに反対に述べられない限り、「または(or)」は包括的なorを指し、排他的なorを意味しない。例えば、条件AまたはBは:Aが真実であり(または存在し)、Bが虚偽である(または存在しない)、Aが虚偽であり(または存在せず)、Bが真実である(または存在する)、およびAおよびBの両方が真実である(または存在する)のいずれか1つによって満たされる。
【0048】
移行句「からなる(consisting of)」は請求項に規定されていないいかなる要素、工程、または成分も排除し、通常伴う不純物を除いて記載されているもの以外の材料の包含に対してその請求項を閉じる(クローズする)。語句「からなる(consists of)」がある請求項の序文(プリアンブル(preamble))の直後ではなく請求項本体の節に現れるときは、その節に記載されている要素のみに限定され、その他の要素は全体として請求項から排除されない。
【0049】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、規定された材料または工程および請求項に記載の発明の基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼすことのないものに限定する。「「から本質的になる」請求項は「からなる」形式で書かれた閉じた請求項と「含む」形式で起草された十分に開いた(オープンの)請求項との中央の立場を占める。」
【0050】
出願人がある発明またはその一部分を「含む」のようなオープンエンドの用語で定義している場合、(特に明記しない限り)記載は用語「から本質的になる」または「からなる」を用いてかかる発明を記載してもいると解釈されるべきであることは容易に理解されるべきである。
【0051】
本発明は非置換のジカルボキシレートで橋架けされた多価のカチオンによりイオン的に架橋されたアルギネート「骨格(backbone)」を有するポリマー、それらの製造および使用に関する。(用語「骨格」はこの記載において単に、ポリマー性の成分が実質的にアルギネートであるかまたはアルギネートから誘導されているという事実を参照するために使用されている。当技術分野でアルギネートとして認識されているようにポリマー性成分全体がアルギネートでなければならないことを示すとは意図されていない。)ジカルボキシレートは本質的にジカルボン酸のジアニオンである。塩は水溶性であり、繊維の湿式紡糸のような多くの用途でうまく機能するので塩が一般的に好ましい。いかなる特定の作用理論にも縛られたくはないが、架橋剤からの多価のカチオン(例えば、カルシウムまたはその他のカチオン)がジカルボン酸塩のナトリウムまたはその他の金属対イオンと置き換わり、ジカルボキシレートをアルギネートのカルボキシレート基のアニオンに結び付けると信じられる。複数の実施形態において、本発明のポリマーは結晶質、半結晶性または非晶質として特徴付けることができる。
【0052】
アルギネート繊維を作製する他の試みもなされて来ているが、それらの試みは現在開示された概念を使用していない。例えば、中国特許出願公開第101033564号は塩化カルシウム架橋剤を用いて湿式紡糸によりアルギン酸カルシウム繊維を製造することを記載している。これらの繊維は商業用途に適切な特性を有していない。米国特許第7,270,654号のような他の文書は造形品を作製する際のアルギネートの使用について述べているが、いずれも、工業用途に適した特性を有し、その後環境に対する影響がないかまたは最小である製品を教示していない。
【0053】
国際公開第2020/118080号はアルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、およびポリオール可塑剤(グリセロール)を含むアルギネート組成物、ならびに繊維の湿式紡糸におけるそれらの使用、ならびに布およびフィルムに関する。
【0054】
本発明のポリマーは(a)アルギネート骨格、(b)非置換ジカルボキシレート、および(c)多価のカチオンから作られている。各々の相対的な割合は一般に使用するジカルボキシレートの分子量または鎖長、ならびに使用する多価のカチオンの価数および重量に依存する。複数の実施形態が1種類だけのアルギネート、ジカルボキシレート、または多価のカチオンを含み得るが、例えば1種またはそれ以上のアルギネート、ジカルボキシレートおよび多価のカチオンの混合物を使用することができるように1種類より多くの各々の成分が含まれてもよい。
【0055】
複数の実施形態において、ジカルボキシレートブリッジはアルギネートカルボキシレート含量に対して少なくとも約0.1および少なくとも約0.2モル当量で存在する。複数の実施形態において、ジカルボキシレートブリッジはアルギネートカルボキシレート含量に対して約1.0以下、約0.5以下および約0.75モル当量以下で存在する。
【0056】
複数の実施形態において、アルギネート骨格は少なくとも約20重量%のポリマー、または少なくとも約50、60、70、80、90、もしくは92.5重量%のポリマーを含むことができる。複数の実施形態において、アルギネート骨格は約95重量%以下のポリマーを含むことができる。
【0057】
複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートは少なくとも約1重量%のポリマー、または少なくとも約5、7.5、10、20、30、40、もしくは50重量%のポリマーを含むことができる。
【0058】
出発材料
ポリマーは少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩;少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート;および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤から作られることができる。
【0059】
アルギネート
本発明のポリマーはアルギネート骨格を有する。いずれかの適切なアルギネートカチオン性塩を使用して本発明のポリマーを作製することができる。それらは、1種またはそれ以上のアルギン酸塩と一価のカチオンから誘導された少なくとも1種のアルギネートを用いて作製することができる。例として、限定されることはないが、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム塩がある。複数の実施形態において、ポリマーはアルギン酸ナトリウムを用いて作製される。
【0060】
天然に存在するアルギネートはグリコシド結合を介して連結されたβ-(1-4)結合したd-マンヌロン酸単位(M-単位)およびβ-(1-4)結合したl-グルロン酸単位(G-単位)の線状のコポリマーからなる多糖である。これらの単位はポリマー鎖内のホモポリマーブロック(MMまたはGG)またはランダムコポリマーブロック(GM)中に見出すことができる。アルギネートは普通G-単位とM-単位との比、すなわちG/M比により記載される。G/M比は広く変化することができるが、通例3:1~1:3である。本発明内で使用することができるアルギネートは天然に由来してもよいし(例えば、昆布由来)、または生物工学的方法によって作製してもよい。本発明はアルギネートの起源により限定されない。
【0061】
本発明内で使用することができるアルギネートはその元々の、すなわち、「天然の」構造を有していてもよいし、または例えばアルギン酸プロピレングリコールのように化学的に修飾されていてもよい。かかる修飾は、本発明の基本的概念と容認できないほどに干渉しないことを条件として容認できる。
【0062】
いかなる適切なG/M比のアルギン酸塩も使用することができる。G対Mの比は高性能アニオン交換-パルスドアンペロメトリッククロマトグラフィー(High Performance Anion Exchange-Pulsed Amperometric Chromatography)(HPAE-PAC)により決定される。
【0063】
複数の実施形態において、G/M比は少なくとも0.5である。複数の実施形態において、G/M比は少なくとも約1である。少なくともいくつかの実施形態において、G/M比は少なくとも1.5である。G/M比は約2.5以下であり得る。複数の実施形態において、G/M比は約2以下であり得る。1つの考えられるアルギン酸塩は約1.8のG/M比を有する。
【0064】
アルギン酸塩はその分子量および/または粘度により記載することができる。本明細書では各々に対して記載される。本明細書で使用されるとき、分子量は最良の効率および正確さのため多角度光散乱(MALS)で測定される。この方法は重量平均分子量(Mw)を与え、本明細書中アルギネートの分子量への参照はいずれもMwである。分子量は溶液中で測定される粘度に直接影響を及ぼす。高い粘度は一般に高い平均分子量により生じる。直接粘度を測定するには、通例1重量%の水溶液を20℃に保ち、Brookfield粘度計を用いて粘度を得る。熟練技術者には容易に認識されるように、提示される粘度は記載される分子量と正確に相関せず、所与の用途に有用なアルギン酸塩を選択するためにはこれらの特性のいずれか一方または両方を使用することができる。
【0065】
アルギン酸塩は、複数の実施形態において、少なくとも約10,000グラム/モル、少なくとも約15,000グラム/モル、少なくとも約50,000グラム/モル、または少なくとも約90,000グラム/モルの分子量を有し得る。複数の実施形態において、アルギン酸塩は約500,000グラム/モル以下、約325,000グラム/モル以下、または約250,000グラム/モル以下の分子量を有する。粘度に関して、アルギン酸塩は少なくとも約15cP、少なくとも約20cP、少なくとも約25cP、少なくとも約30cP、少なくとも約35cP、または少なくとも約40cPの粘度を有し得る。アルギン酸塩は約1000cP以下、約900cP以下、約800cP以下、約700cP以下、約600cP以下、約500cP以下、約400cP以下、または約325cP以下の粘度を有し得る。
【0066】
実施形態は高い分子量および高いG/M比の両方を有し得る。かかる実施形態において、アルギン酸塩は約200,000~約500,000グラム/モルの分子量、または約150cP~約1,000cPの粘度、および約1.5~約2.5のG/M比を有することができる。
【0067】
実施形態は高い分子量および低いG/M比を有し得る。この実施形態において、アルギン酸塩は約200,000~約500,000グラム/モルの分子量または約150cP~約1,000cPの粘度、および約0.5~約0.75のG/M比を有する。
【0068】
実施形態は低い分子量および高いG/M比を有し得る。かかる実施形態において、アルギン酸塩は約30,000~約200,000グラム/モルの分子量または約20cP~約150cPの粘度、および約1.5~約2.5のG/M比を有することができる。
【0069】
実施形態は低い分子量および低いG/M比を有し得る。かかる実施形態において、アルギン酸塩は約30,000~約200,000グラム/モルの分子量または約20cP~約150cPの粘度、および約0.5~約0.75のG/M比を有することができる。
【0070】
実施形態は中程度のG/M比を有し得る。中程度のG/M比が存在する複数の実施形態において、約0.75~約1.5のG/M比が規定され得る。
【0071】
この発明の実施に有用なアルギン酸塩の例は市販されている。例としては、例えば:Algin IL-6G(Kimica、東京、日本);Algin I-3G(Kimica);Algin I-8(Kimica);ALGOGEL(登録商標)3541(Algaia、パリ、フランス);ALGOGEL(登録商標)7041(Algaia、パリ、フランス);SATIALGINE(登録商標)S1600N(Algaia);SATIALGINE(登録商標)S20NS(Algaia);ProNova SLM100(International Flavors&Fragrances NovaMatrix、Sandvika、ノルウェー);ProNova SLG20(International Flavors&Fragrances NovaMatrix);アルギン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich、St.Louis Missouri)がある。湿式紡糸において、高いG/M比と共に低い分子量を使用する(例えばAlgin IL-6G)のが加工性のために好適である。
【0072】
ジカルボキシレート
本発明のポリマーは、非置換のジカルボキシレートで橋架けされた多価のカチオンによりイオン的に架橋されている。本明細書で使用されるとき、用語「ジカルボキシレート」は非置換のジカルボン酸塩を意味する。熟練技術者にはすぐ認識されるように、ジカルボキシレートはそれらのカルボキシル基と結合した正の対イオンを有する。
【0073】
ジカルボキシレートブリッジはいずれかの有用な非置換ジカルボキシレートに由来する。複数の実施形態において、ジカルボキシレートブリッジは非置換のC2-C20ジカルボキシレートブリッジであり、C2-C20非置換ジカルボン酸から得られる非置換のC2-C20ジカルボキシレートに由来する。
【0074】
複数の実施形態において、非置換のジカルボキシレートブリッジはC2-C20脂肪族ジカルボキシレートブリッジであり、C2-C20脂肪族ジカルボン酸から得られるC2-C20脂肪族ジカルボキシレートに由来する。
【0075】
本明細書で、ブリッジ、塩、および酸に言及するとき、当業者は相関関係を容易に認識するであろう。例として、例えば、非置換のC3-C12ジカルボン酸から得られるC3-C12ジカルボキシレートがある。以下の議論で、ブリッジ、塩、または酸の特徴に言及するとき、当業者はまたその記載を対応するブリッジ、塩、または酸を包含するとして読むはずである。
【0076】
「脂肪族の」ジカルボキシレートまたはジカルボン酸に言及するとき、本発明は線状、分岐、または環式脂肪族の炭化水素鎖を有するジカルボキシレートまたはジカルボン酸を意味する。複数の実施形態において、線状または分岐した炭化水素が使用される。複数の実施形態において、線状の炭化水素が選択される。
【0077】
複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートは脂肪族であり、炭素鎖は飽和している。この実施形態において、ジカルボキシレートは、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、およびテトラデカン二酸からなる群から選択される飽和した脂肪族のジカルボン酸に由来する。複数の実施形態において、ジカルボキシレートはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される非置換の脂肪族ジカルボン酸に由来する。複数の実施形態において、ジカルボキシレートはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される飽和した脂肪族のジカルボン酸に由来する。複数の実施形態において、飽和した脂肪族ジカルボキシレートはC4-C8ジカルボン酸に由来する。複数の実施形態において、飽和した脂肪族ジカルボキシレートはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されるジカルボン酸に由来する。複数の実施形態において、非置換の脂肪族ジカルボン酸はセバシン酸であり;複数の実施形態においてジカルボン酸はアジピン酸であり;複数の実施形態においてジカルボン酸はグルタル酸であり;複数の実施形態においてジカルボン酸はコハク酸である。
【0078】
複数の実施形態において、非置換ジカルボキシレートは脂肪族であり、炭素鎖は不飽和である。本発明で有用な不飽和の脂肪族ジカルボン酸の例には限定されることはないがマレイン酸およびフマル酸がある。
【0079】
脂環式および芳香族のジカルボン酸も本発明内で使用することができる。複数の実施形態において非置換ジカルボキシレートは脂環式のジカルボキシレート、例えばC3-C20脂環式ジカルボキシレートである。本発明で有用な脂環式ジカルボン酸の例には限定されることはないがシクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、およびノルボルナンジカルボン酸がある。
【0080】
複数の実施形態において非置換ジカルボキシレートは芳香族のジカルボキシレート、例えばC6-C20芳香族ジカルボキシレートである。本発明で有用な芳香族ジカルボン酸の例には限定されることはないがテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびアントラセンジカルボン酸がある。
【0081】
上に挙げたジカルボン酸の具体的な例は単に参考であり、本発明はこれらの例に限定されない。1種またはそれ以上のジカルボン酸の混合物をこれらの実施形態のいずれでも使用することができ、その他の場合1種のみのジカルボン酸の使用が好ましいことがある。
【0082】
ジカルボキシレートはジカルボン酸と塩基を反応させることにより形成することができる。これらのジカルボキシレートを購入することも、または容易に調製することもできる。複数の実施形態において、それらは使用に先立って別の反応で調製され単離される。あるいは、それらは逐次付加(sequential addition)により調製することができる。
【0083】
ジカルボキシレートの例には限定されることはないがジカルボン酸のナトリウム、カリウム、リチウム、またはアンモニウム塩がある。複数の実施形態でジカルボン酸ナトリウムを使用する。複数の実施形態がジカルボン酸カリウムを使用する。ジカルボキシレートの混合物を使用することができる。
【0084】
ジカルボン酸または塩を水のような溶媒に溶解させる湿式紡糸およびその他の用途に使用する場合溶解性が重要であり、共溶媒または代わりの一価の対イオンを使用して、より高分子量のジカルボキシレートの充分な溶解性を確保する必要があり得る。
【0085】
ジカルボキシレートを作製するのにあらゆる適切な塩基を使用することができる。湿式紡糸の場合、溶媒、最も一般的には水に可溶性の塩を使用するのが望ましいことがある。複数の実施形態において、塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、およびこれらの混合物から選択される。複数の実施形態において、塩基は水酸化ナトリウムである。複数の実施形態において、塩基は水酸化カリウムである。
【0086】
ジカルボキシレートの作製は当技術分野で周知であり、溶液または固体、等を用い、慣用の技術を始めとするいずれかの技術を用いて行うことができる。一例として、水酸化ナトリウムは溶液中または固体として購入し、その後ジカルボン酸と反応させることができる。苛性溶液、例えば50%水酸化ナトリウム水溶液は容易に入手できる。苛性物は固体として購入することもできる。
【0087】
架橋剤
本発明のポリマーにおいて、アルギネート骨格は多価のカチオンで橋架けされたジカルボキシレートによりイオン的に架橋されている。すなわち、イオン結合を介して、少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤がジカルボキシレートをアルギネート骨格に結合している。
【0088】
また多価のカチオンによる直接のイオン性架橋であることもできる。これは当然化学量論に依存し、ポリマーおよび得られる製品の特性を調節するために使用することができる。
【0089】
多価のカチオンの例はカルシウム、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、およびこれらの混合物である。架橋結合する多価のカチオンはカルシウム、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、コバルト、バリウム、およびこれらの混合物から選択され得る。複数の実施形態において、架橋結合するカチオンはカルシウム、銅、鉄、アルミニウム、および亜鉛、ならびにこれらの混合物から選択される。複数の実施形態において、架橋結合するカチオンはカルシウム、銅、アルミニウム、およびこれらの混合物から選択される。1つの特定の実施形態において、架橋結合するカチオンはカルシウムである。
【0090】
反応を実施するのに使用される量の水またはその他の溶媒系(例えば、グリセロール)に対して充分に可溶性であるあらゆる適切なカチオン性架橋剤が機能することができる。架橋剤の例には、例えば、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、および硫酸亜鉛がある。より特定の架橋剤は塩化カルシウム、塩化バリウム、重炭酸カルシウム、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、および硫酸亜鉛である。1つの特定の架橋剤は塩化カルシウムである。
【0091】
セルロース
国際公開第2020/118080号に記載されているようなセルロースをポリマーに加えることができる。適切なセルロースの例として、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、その他のセルロース誘導体、またはこれらの組合せがある。多くの実施形態において、セルロースは使用しない。
【0092】
添加剤
ポリマーおよびそれらで作製される製品は1種またはそれ以上の添加剤を含有し得、その例は当技術分野で公知であり、また当技術分野で記載されているものに特有の所望の特性に適した量で使用され得る。これらの種類の添加剤の例は当技術分野で周知であり、顔料、染料、増白剤、またはその他の着色剤、蛍光染料(optical brightener)、安定剤(例えば、難燃剤または耐火剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤)、可塑剤、艶消し剤(例えば、TiO2、CaCO3、二酸化ケイ素)、粘度調整剤、界面活性剤、抗菌剤、帯電防止剤、潤滑剤、加工助剤、スリップ剤、粘着防止剤、離型剤、充填剤、およびその他有用な添加剤であることが当技術分野で知られている成分を含む。(TiO2のようないくつかの添加剤はこれらの目的の1つより多くを果たし得る。)添加剤は様々なプロセス工程で様々な技術を用いて組み込み得ることが容易に認識されよう。
【0093】
ポリマーおよび製品
本発明の製品は現在および将来の工業用途に使用するのに適合しており、多くの産業、特に繊維工業で現在使用されている製品に代わる適切な代用品となる性質を有している。本発明の製品はテキスタイル繊維およびフィルムを含めて多くの用途に適合させる弾性、弾力および靭性のような優れた特性を保有し保持している。例えば、本発明の繊維(フィラメントおよびステープルを含む)、ヤーン(繊維束)、およびその他のテキスタイル(例えば、織布および不織布のような布)は予想外に優れた機械的完全性を有しており、ある範囲の産業に使用して、繊維工業により生じる環境損害を劇的に低減することができる。
【0094】
本発明を使用してフィラメントおよびステープル繊維を始めとする様々な種類の繊維を作製することができる。これらの用語はその普通の商業的な意味で使用されている。通例、本明細書で、「フィラメント」とは紡績機での連続した繊維を指して使用される。
【0095】
「ステープル繊維」はカットファイバーまたはフィラメントを指して使用される。例えば、不織布用のステープル繊維は少なくとも約1インチの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、長さは少なくとも約1.25インチまたはそれ以上である。用途に応じて、長さは約6インチ以上までであることができる。複数の実施形態において、長さは約4インチ以下である。複数の実施形態において、長さは約2インチ以下である。
【0096】
実施形態は主としてまたは単に、当技術分野で時に単成分繊維または構造といわれる、この発明のポリマーを(場合により添加剤と共に)使用することに焦点を当てる。しかしながら、他の実施形態はこの発明のポリマーを他のポリマーと共に含むことができる。すなわち、本発明のポリマーは、慣用の鞘/芯(sheath/core)およびサイドバイサイド(並列)多成分構造を始めとする多成分(multicomponent)(例えば、二成分)構造、および多要素(multiconstituent)(例えば、二要素)構造で使用し得る。(表示された1種またはそれ以上のアルギネートを含む)多数のポリマーが存在する場合、多成分(multicomponent)および多要素(multiconstituent)構造を含めてポリマーのあらゆる適切な組合せを使用することができる。使用するポリマーの種類および比率は過度の実験をすることなく当業者により容易に決定することができる。例えば、実施形態は大量のポリマーに対して非常に少量の本発明のポリマーを含むことができる。したがって、実施形態は、すべて繊維の重量により、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または100%以下のポリマーを含有することができる。
【0097】
ヤーン(「束(bundle)」ともいわれる)は好ましくは多くのフィラメントを含む。
【0098】
繊維の大きさおよび形状は用途によって変わり、0.1デニール/フィラメント(dpf)以下ほどに小さいことができ、また300dpf以上ほどに大きいことができる。多くのテキスタイル用途に対して、本発明の繊維は少なくとも約0.1、少なくとも約0.5のデニール/フィラメント(dpf)を有し、最終用途に応じて約30以下、約10以下、約5以下、より好ましくは約3以下のdpfを有する。これらの大きさは例示目的のためであり、熟練技術者は様々な目的に所望の大きさに通じている。
【0099】
本発明はまたモノフィラメントを製造するのにも使用することができる。モノフィラメントは多くの場合約10~約300dpfである。モノフィラメント、モノフィラメントヤーン、およびその使用は当技術分野で周知である。
【0100】
繊維またはフィラメントは、例えば、丸い、実質的に丸い、卵形を含めてあらゆる形状であることができ、または溝付き、ほとんど平ら、ドッグボーン、八葉形(octalobal)、デルタ、日輪型(sunburst)(ソル(sol)ともいわれる)、スカラップ(scalloped)卵形、三葉形(trilobal)、テトラチャネル(tetra-channel)(クワトラチャネル(quatra-channel)ともいう)、スカラップリボン(scalloped ribbon)、リボン、星形、雪だるま、等のようなその他の形状を有することができる。それらは固体、中空またはマルチホローであることができる。複数の実施形態において、繊維は丸いかまたは実質的に丸い固体フィラメントである。複数の実施形態において、繊維は平らまたは実質的に平らな固体フィラメントである。複数の実施形態において、繊維はリボンまたはスカラップリボンフィラメントである。
【0101】
本発明は繊維で作られた布、例えば編んだ、織った、不織、およびその他の種類の布を含む。織布または編布はモノフィラメント、マルチフィラメント、および紡績糸から作製することができるが、これらに限定されない。不織布は一般にステープル繊維から湿式(wet laid)、エアレイド(air laid)、もしくは梳綿(carding)プロセスによって、または電解紡糸もしくは溶液ブローンプロセスを用いた直接形成によって作製される。布は他の種類の繊維またはフィラメントとのブレンドを含むことができ、例えば、アルギネートの繊維を他の天然および合成繊維と一緒に紡糸し、現存のヤーンをアルギネートヒドロゲルまたはフィラメントでコートする。
【0102】
本発明は衣料品(例えば、衣類または履き物用の布)または敷物材料、自動車内装、壁紙のような工業用テキスタイルに有用なステープル繊維およびフィラメントのようなすべての種類のテキスタイル最終用途を含む。
【0103】
ヤーンおよび布はステープルおよびフィラメント、例えば綿で作られたもの、動物材料(例えば、ウールおよびキトサン)、再生セルロース(例えば、ビスコース(レーヨン)およびリヨセル(レーヨン)、堆肥化可能なポリマー、例えばポリ乳酸(PLA)およびポリヒドロキシ酪酸(PHA)、靭皮(例えば、亜麻布および大麻)、およびタンパク質ベースの材料(例えば絹)とのブレンドを含む。ブレンドはまた、合成繊維(ステープルおよびフィラメント)、例えばアラミド(例えば、KEVLAR(登録商標)およびNOMEX(登録商標))、ポリアミド(例えば、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン6,10;ナイロン5,6;およびナイロン6,12)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)(SORONA(登録商標))、ポリブチレンテレフタレート(PBT)(ポリテトラメチレンテレフタレート)、ポリプロピレンおよびポリエチレン(例えば、超高分子量(UHMW)ポリエチレン)も含むことができる。熟練技術者はこれらの繊維の所望の大きさおよびその他の特性を容易に認識するであろう。例えば、フィラメントおよびステープル繊維ブレンドは少なくとも約10重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約75重量%、および少なくとも約90重量%の本発明のフィラメントまたはステープル繊維を用途に応じて少なくとも約0.5dpf、少なくとも約1dpf、少なくとも約2dpf、少なくとも約3dpf、少なくとも約5dpfおよび少なくとも約10dpfまたはそれより大きいフィラメントである他のポリマーの市販されているフィラメントまたはステープル繊維と共に含有することができる。複数の実施形態において、繊維またはフィラメントは少なくとも約10dpf以下で少なくとも5dpf以下である。
【0104】
ヤーンおよび布は少量(例えば、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、および少なくとも約5重量%、ならびに約10重量%以下または約5重量%以下)の弾性フィラメントおよび繊維(例えば、スパンデックス、エラステイン、または鞘/芯およびサイドバイサイドPET/PTT、PET/PBTおよびPTT/PBT二成分繊維)を含有することができ、これらは適当な大きさおよび伸び特性を有し、所望の繊維および布特性のために加えることができる。伸びフィラメントおよび繊維は少なくとも約0.5dpf、少なくとも約1dpf、少なくとも約2dpf、少なくとも約3dpfおよび少なくとも約5dpfの大きさを有することができる。複数の実施形態において、フィラメントおよび繊維は約10dpf以下および約5dpf以下の大きさを有する。
【0105】
本発明はまた、ポリマーのフィルム、発泡体、顆粒状粒子、およびヒドロゲルも含む。フィルムは限定されないがスピンコーティング、回転成形、溶液流延および単層または多層共押出を始めとする慣用の方法によって作製することができる。発泡体は限定されないが開気孔(連続分注)、および閉気孔を始めとする慣用の方法によって作製することができる。
【0106】
顆粒状粒子またはペレットは水浴(例えば、切断が水浴中で行われる)または噴霧プロセスを用いて作製することができる。顆粒状粒子の例は限定されることはないが農業用品(agricultural product)配送(例えば、殺虫剤、殺菌剤、および除草剤のような農薬、ならびにその他の種類の農業用品)、薬物送達、香水噴霧、または洗濯用粉末および台所洗剤の封入のためのミクロスフェアまたはマイクロカプセル化を含む。顆粒状粒子はまた細胞または細菌をカプセル化するのにも使用することができる。
【0107】
すぐに分かるように、本発明のポリマーを使用して、慣用のプロセスを用いて他の多くの製品を作製することができる。
【0108】
(a)(i)少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩;(ii)少なくとも1種の非置換ジカルボキシレート;および(iii)少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を合わせる工程と;(b)それらを反応させてポリマーを形成する工程とを含む、ポリマーを製造する方法が提供される。
【0109】
実施形態はまず少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩を少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートと合わせて混合物を形成し、続いてその混合物を少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤と合わせてポリマーを形成することを含む。
【0110】
さらに、ポリマーから造形品を製造する方法であって、ポリマーを造形して造形品を形成する工程を含む、方法が提供される。複数の実施形態において、造形品は繊維である。複数の実施形態において、造形品はフィルムである。複数の実施形態において、造形品は布である。
【0111】
実施形態はアルギネートおよび非置換ジカルボキシレートを合わせ、続いて造形し、続いて架橋剤を加えることを含む。
【0112】
複数の実施形態において、方法はアルギン酸塩をアルギン酸塩の重量に対して少なくとも約2.5%、少なくとも約5%、少なくとも約7.5%、および少なくとも約10%の少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートと反応させることを含む。複数の実施形態において、方法はアルギン酸塩をアルギン酸塩の重量に対して約125%以下、約100%以下、および約75%以下の少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートと反応させることを含む。
【0113】
複数の実施形態においてドープを使用する。それらの実施形態において、(a)ドープはドープの重量の約0.5~約50重量%の一価の金属アルギン酸塩、(b)ドープ内のアルギン酸塩の重量に対して約1~約125%の少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートを含み、残部は主としてまたは実質的に水である。一価の金属アルギン酸塩の重量は少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約4重量%であり得る。一価の金属アルギン酸塩の重量は約40%以下、または約25%以下、または約18%以下であり得る。
【0114】
複数の実施形態において、方法は溶媒中に約0.02~約2および約0.05~約1.5モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する浴内で行われる。複数の実施形態において、溶媒は水である。
【0115】
湿式紡糸
複数の実施形態において、本発明は繊維(例えば連続フィラメントおよびステープル)、ヤーン(例えば、紡績糸)、およびその他のテキスタイル(例えば、織布および不織布のような布)、例えば湿式紡糸した繊維、ヤーン、およびテキスタイルに関する。繊維、ヤーン、およびその他のテキスタイルの1つの利点は既に存在する工業設備を用いて作製することができるということである。
【0116】
1つの製造方法は湿式紡糸を含む。1つの特定の湿式紡糸プロセスは以下の工程を含む:溶媒中の少なくとも1種の一価のカチオンアルギン酸塩および少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレートのドープを調製する工程;そのドープを紡糸口金に通して押し出して繊維を形成する工程;繊維を、溶媒および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する凝固浴に通して延伸する工程;繊維を乾燥する工程。1つまたはそれ以上の凝固浴を使用し得る。
【0117】
ドープおよび凝固浴中の溶媒は水であることができる。アルコールを溶媒として使用することも可能であろうが好ましくはない。水は混合されたアルコール(例えば、50%以下、および特定の実施形態ではそれより少ない量)、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、またはグリセロールを含有することができるが、熟練技術者は溶媒として水自体を使用することの利点を容易に認識するであろう。すなわち、これは環境保護、加工性、安全性、およびコストの観点から有利である。1つまたはそれ以上の凝固浴を使用し得、凝固浴は異なる溶媒(いずれに対しても水が溶媒として好ましい)または多価のカチオンを異なる濃度で有してもよい。本発明の1つの利点は、複数の実施形態においてドープおよび凝固浴の溶媒が水であることである。
【0118】
ドープおよび浴の温度はいろいろであることができ、同じでも異なってもよい。好適な溶媒は水を含むので、温度は一般に0℃より高くて、100℃未満である。多数の浴を使用し得るので、それらの浴の温度も所望の効果を達成するように変えられ得る。
【0119】
ドープは、限定されないが光および熱安定剤、顔料および染料、抗菌剤、艶消し剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、粘度調整剤、加工助剤、ならびにその他当技術分野で有用な添加剤であることが知られている成分のような一般的な添加剤を含むことができる。
【0120】
凝固浴は限定されないが非架橋イオン(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、染料、界面活性剤、粘着防止剤、スリップ剤、および難燃剤のような他の成分を含むことができる。
【0121】
複数の実施形態において、遊離のジカルボン酸および塩基を溶媒中で混合してジカルボキシレートを形成し、次いでアルギン酸塩を加える。
【0122】
複数の実施形態において、方法はさらに延伸の後乾燥の前に洗浄工程を含む。複数の実施形態において、延伸は1またはそれ以上の延伸工程で行われる。
【0123】
複数の実施形態において、方法はさらに繊維をステープル繊維に切断することを含む。
【0124】
複数の実施形態において、方法はさらに繊維を連続フィラメントに巻き上げることを含む。
【0125】
延伸は1またはそれ以上の延伸工程で行うことができる。
【0126】
複数の実施形態において、方法はさらにフィラメントをテキスチャー化することを含む。複数の実施形態において、方法はさらにクリンピングする(crimping)ことを含む。
【0127】
複数の実施形態において、方法はさらにスピン仕上げを施すことを含む。スピン仕上げの例は当技術分野で公知である。
【0128】
複数の実施形態において、(a)ドープはドープの重量の約0.5~約50重量%の一価の金属アルギン酸塩、(b)ドープ中のアルギン酸塩の重量に対して約1~約125%の少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートを含み、残部は主としてまたは実質的に水である。一価の金属アルギン酸塩の重量は少なくとも約1%、または少なくとも約2%、または少なくとも約4重量%であり得る。一価の金属アルギン酸塩の重量は約40%以下、または約25%以下、または約18%以下であり得る。非置換ジカルボキシレートの重量はドープ中のアルギン酸塩の少なくとも約5%、または少なくとも約7.5%、または少なくとも約10重量%であり得る。非置換ジカルボキシレートの重量はドープ中のアルギン酸塩の約100重量%以下、または約75重量%以下であり得る。
【0129】
凝固浴は少なくとも約0.02、少なくとも約0.05、または少なくとも約0.075モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有し得る。凝固浴は約2以下、約1.5以下、または約0.75モル/リットル以下の少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有し得る。
【0130】
架橋は1つまたはそれ以上の凝固浴で起こる。したがって、方法は独立してまたは連続して設定された1つまたはそれ以上の凝固浴を用いて実施し得、場合により硬化効率を改善するために向流の使用を含むことができる。充分な架橋が起こり得るために、繊維は1つまたはそれ以上の凝固浴中で少なくとも約2秒、または少なくとも5秒を費やすことができる。繊維は1つまたはそれ以上の凝固浴中で約20秒以下、または約15秒以下を費やし得る。
【0131】
様々な仕上げ、例えばスピン仕上げおよび/またはオーバーフィニッシュ(overfinish)を所望の通りに施してもよく、帯電防止、潤滑性、および/またはその他この発明の繊維を特定の製造品に加工処理するのに望まれ得るような特性を提供し得る。
【0132】
本発明はまた、着色剤をドープに添加する伝統的な浸染または原液着色プロセスを含む、アルギネートをベースとする繊維、ヤーン、またはテキスタイルを着色する方法も含む。天然、非毒性、または生合成染料または顔料を含めて様々な範囲の染料および顔料を使用して、アルギネートをベースとする繊維、ヤーン、またはテキスタイルの固有の化学または機械的特性に影響を及ぼすことなく本出願のアルギネートをベースとする繊維、ヤーン、またはテキスタイルを着色することができる。
【実施例】
【0133】
[実施例1]
【0134】
1容量部の10MのNaOHを99容量部の蒸留水に加えることによってアジピン酸ナトリウムのストック2%w/v溶液を調製した。この溶液に1.46重量部のアジピン酸を加えた。5重量部のALGIN(商標)I-3G-80(Kimica、東京、日本)を50容量部のストックアジピン酸ナトリウム溶液および45容量部の蒸留水に溶かすことにより高分子量の高Gアルギネート溶液を調製した。同伴空気を除いた後、この溶液を3μmフィルターでろ過し、0.14mL/穴/分の速度で150μm紡糸口金に通して押し出した。0.12MのCaCl2を含有する1メートルの凝固浴に通して6.0m/minで繊維を引っ張った。次いで蒸留水浴に通して8.1m/minで引いて、残留カルシウム塩を除き、ゴデット(godet)で加熱した。フィラメントを8.4m/minでスプール上に集めた。周囲条件下で一晩乾燥した後、フィラメントを22℃および65%相対湿度でコンディショニングし、その後フィラメントデニールを決定し、引張特性を測定した(ASTM2256)。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表1に見ることができる。
【0135】
[対照例1]
5重量部のALGIN(商標)I-3G-80(Kimica、東京、日本)を95重量部の蒸留水中に溶かすことによって高レベルのグルロン酸単位(「高G」)を含有する高分子量のアルギネートの溶液を調製した。同伴空気を除いた後、溶液を3μmのフィルターでろ過し、0.14グラム/穴/分の速度で150μmの紡糸口金に通して押し出した。0.12MのCaCl2を含有する1メートルの凝固浴に通して繊維を6.0m/minで引っ張った。次いで蒸留水浴に通して8.1m/minで引いて残留するカルシウム塩を除き、ゴデットで加熱した。フィラメントを8.4m/minでスプールに集めた。周囲条件下で一晩乾燥した後、試料を20±2℃および65±3%相対湿度でコンディショニングし、その後デニールを決定し、引張特性を測定した(ASTM2256)。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表1に見ることができる。
【0136】
【0137】
表1のデータは、ジカルボキシレートを加えると増大した破断伸びおよび破断靭性が得られることを示している。
[実施例2]
【0138】
0.58重量部のアジピン酸を85容量部の0.09M水性NaOHに完全に溶解するまで撹拌しながら溶かすことによりアジピン酸ナトリウム溶液を調製した。これに5重量部の高分子量高Gアルギン酸ナトリウムALGIN(商標)I-3G-80および9.5部の蒸留水を加え、すべてのアルギネートが溶解するまで撹拌した。同伴空気を除いた後、溶液を3μmのフィルターでろ過し、150μmの紡糸口金に通して0.14グラム/穴/分の速度で押し出した。0.12MのCaCl2を含有する1メートルの凝固浴に通して繊維を6.0m/minで引っ張った。次いで蒸留水浴に通して8.1m/minで引いて残留するカルシウム塩を除き、ゴデットで加熱した。繊維を8.4m/minでスプール上に集めた。周囲条件下で一晩乾燥した後、フィラメントを20±2℃および65±3%相対湿度でコンディショニングし、その後フィラメントデニールを決定し、引張特性(ASTM2256)を測定した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表2に見ることができる。
[実施例3]
【0139】
0.47重量部のコハク酸を85容量部の0.09M水性NaOHに完全に溶解するまで撹拌しながら溶かすことにより調製したコハク酸ナトリウム溶液を用いて実施例2を繰り返した。使用したアルギネートは高分子量低Gアルギン酸ナトリウムSATIALGINE(商標)S1600NS(Algaia、Lannilis、フランス)であった。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表2に見ることができる。
[実施例4]
【0140】
低分子量高Gアルギン酸ナトリウムALGIN(商標)IL-6G(Kimica、東京、日本)を用いて実施例3を繰り返した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表2に見ることができる。
[実施例5]
【0141】
コハク酸および低分子量低Gアルギン酸ナトリウムSATIALGINE(商標)S20NS(Algaia、Lannilis、フランス)を用いて実施例2を繰り返した。結果は表2に見ることができる。
【0142】
【0143】
表2のデータは、ジカルボキシレートを使用すると様々なアルギネートで良好な結果が得られることを示している。
[実施例6-10]
【0144】
1部の固体NaOHを225部の蒸留水に加えることによりアジピン酸ナトリウム溶液を調製した。この溶液に1.6部のアジピン酸を加え、アジピン酸が溶解するまで混合した。15部の高MW高Gアルギネート(ALGIN I-3G-80)をアジピン酸ナトリウム溶液に混合しながらゆっくり加えることにより紡糸ドープを調製した。溶解したら、追加の150部の蒸留水を加えて、5重量%のアルギン酸ナトリウムを含有する紡糸ドープを得た。同伴空気を除いた後、この溶液をフィルターパックに通してろ過し、60μmの400穴紡糸口金に通して4m/minの速度で押し出した。0.12MのCaCl2を含有する凝固浴に通して4または12m/minの速度で繊維を引っ張った。次いで脱イオン水で洗浄し、布柔軟剤(Neutral、Unilever、ロンドン、英国)で処理して乾燥中に繊維が融合するのを防いだ。次に繊維を80℃で45min乾燥した。乾燥はスプール上に集めたフィラメント(一定の長さ、張力下)か、またはスプールから切断したフィラメントで(張力なし)行った。結果は表3に見ることができる。
[実施例11]
【0145】
1部の固体NaOHを225部の蒸留水に加えることによりアジピン酸ナトリウム溶液を調製した。この溶液に1.6部のアジピン酸を加え、アジピン酸が溶解するまで混合した。15部の高MW高Gアルギネート(ALGOGEL(登録商標)7041)をアジピン酸ナトリウム溶液に混合しながらゆっくり加えることにより紡糸ドープを調製した。溶解したら、追加の150部の蒸留水を加えて4重量%のアルギン酸ナトリウムを含有する紡糸ドープを得た。同伴空気を除いた後、この溶液を2100穴55μm紡糸口金に通して50mL/minの速度で押し出した。0.12MのCaCl2を含有する凝固浴に通して繊維を9m/minの速度で引っ張った。次いで水中で洗浄し、布柔軟剤(Neutral、Unilever、ロンドン、英国)で処理して繊維が乾燥中に融合するのを防いだ。その後繊維を80℃で45min乾燥した。結果は表3に見ることができる。
【0146】
【0147】
表3のデータは、ジカルボキシレートを使用すると様々な紡糸条件で良好な結果が得られることを示している。
【0148】
[対照例2]
5重量部のALGIN(商標)I-3G-80(Kimica、東京、日本)を95重量部の蒸留水に溶かすことにより高レベルのグルロン酸単位(「高G」)を含有する高分子量アルギネートの溶液を調製した。同伴空気を除いた後、溶液を3μmフィルターでろ過し、0.14グラム/穴/分の速度で150μm紡糸口金に通して押し出した。0.12MのCaCl2を含有する1メートルの凝固浴に通して繊維を6.0m/minで引っ張った。次いで8.1m/minで蒸留水浴に通して引いて残留するカルシウム塩を除き、ゴデットで加熱した。フィラメントをスプール上に8.4m/minで集めた。周囲条件下で一晩乾燥した後、20±2℃および65±3%相対湿度で試料をコンディショニングし、その後デニールを決定し、引張特性(ASTM2256)を測定した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例12]
【0149】
0.30重量部のマロン酸および5.7容量部の1.0M水性NaOHを約70部の水に溶かすことによりマロン酸ナトリウム溶液を調製した。これに5重量部の高分子量高Gアルギン酸ナトリウムALGIN(商標)I-3G-80および20重量部の蒸留水を加え、混合物をすべてのアルギネートが溶解するまで撹拌した。同伴空気を除いた後、溶液を3μmフィルターでろ過し、0.14グラム/穴/分の速度で150μm紡糸口金に通して押し出した。0.12MのCaCl2を含有する1メートルの凝固浴に通して6.0m/minで繊維を引っ張った。次いで蒸留水浴に通して8.1m/minで引いて残留するカルシウム塩を除き、ゴデットで加熱した。繊維を8.4m/minでスプール上に集めた。周囲条件下で一晩乾燥した後、フィラメントを20±2℃および65±3%相対湿度でコンディショニングし、その後フィラメントデニールを決定し、引張特性(ASTM2256)を測定した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例13]
【0150】
コハク酸を用いてコハク酸ナトリウム溶液を調製した以外は実施例12を繰り返した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例14]
【0151】
0.41重量部のアジピン酸および5.7容量部の1.0M水性NaOHを約70部の水に溶かすことによりアジピン酸ナトリウム溶液を調製した以外は実施例12を繰り返した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例15]
【0152】
0.57重量部のセバシン酸および5.7容量部の1.0M水性NaOHを約70部の水に溶かすことによりセバシン酸ナトリウム溶液を調製した以外は実施例12を繰り返した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例16]
【0153】
0.47重量部のコハク酸および8.0容量部の1.0M水性NaOHを約65部の水に溶かすことによりコハク酸ナトリウム溶液を調製した。これに7重量部の低分子量高Gアルギン酸ナトリウムALGIN(商標)IL-6Gおよび20重量部の蒸留水を加え、混合物をすべてのアルギネートが溶解するまで撹拌した。実施例の残りは実施例12に記載した通りに行った。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例17]
【0154】
0.58重量部のコハク酸および8.0容量部の1.0M水性NaOHを約65部の水に溶かすことによりアジピン酸ナトリウム溶液を調製した以外は実施例16を繰り返した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
[実施例18]
【0155】
0.69重量部のスベリン酸および8.0容量部の1.0M水性NaOHを約65部の水に溶かすことによりスベリン酸ナトリウム溶液を調製した以外は実施例16を繰り返した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表4に見ることができる。
【0156】
【0157】
表4から分かるように、本発明は様々なジカルボキシレートおよびアルギネートで弾性係数ならびに降伏伸びおよび靭性を顕著に損なうことなく改善された破断伸びおよび靭性を提供する。一般に繊維技術において、伸びおよび靭性は伸びが増大すると靭性が低下し、また逆も同様であるように対立することが認識されている。したがって増大した破断伸びおよび靭性、ならびに増大した降伏伸びおよび靭性を達成したことは予想外のことである。
【0158】
データはC4-C8飽和脂肪族ジカルボキシレートが特にうまくいくことを示している。
[実施例19-26]
【0159】
表示した重量(表6)のセバシン酸および1.0Mの水性NaOHを約70部の水に溶かすことによりセバシン酸ナトリウム溶液を調製した。これに5重量部の高分子量高Gアルギン酸ナトリウムALGIN(商標)I-3G-80および20重量部の蒸留水を加え、混合物をすべてのアルギネートが溶解するまで撹拌した。同伴空気を除いた後、溶液を3μmフィルターでろ過し、150μm紡糸口金に通して0.14グラム/穴/分の速度で押し出した。0.12MのCaCl2を含有する1メートルの凝固浴に通して繊維を6.0m/minで引っ張った。次いで蒸留水浴に通して8.1m/minで引いて残留するカルシウム塩を除き、ゴデットで加熱した。繊維をスプール上に8.4m/minで集めた。周囲条件下で一晩乾燥した後、フィラメントを20±2℃および65±3%相対湿度でコンディショニングし、その後フィラメントデニールを決定し、引張特性(ASTM2256)を測定した。結果(1つの試料に付き10回の反復の平均)は表5に見ることができる。
【0160】
【0161】
表5から分かるように、本発明は弾性係数ならびに降伏伸びおよび靭性を顕著に損なうことなく改善された破断伸びおよび靭性を提供する。伸びおよび靭性は対立すると認められ、したがって伸びが増大すると靭性が低下し、逆も同様であるので、増大した破断伸びおよび靭性、ならびに増大した降伏伸びおよび靭性を達成したことは予想外である。
【0162】
測定
以下の測定技術を実施例に使用した。
【0163】
デニールは、繊維の9000メートル当たりの質量(グラム)である線密度単位である。
【0164】
実施例1-5および12-26、ならびに対照例1-2の場合、デニール測定は、既知の長さの繊維を収集し、人工気候室(22±3℃および65±5%)内で少なくとも24時間コンディショニングし、次いで重量を測定した。
【0165】
実施例1-5および12-26、ならびに対照例1および2で、引張測定値は、20±2℃および65±3%相対湿度で少なくとも12時間コンディショニングした繊維に対してADMET(Norwood、Massachusetts、米国)のEXPERT7600を50.8mm/minおよびクランプ間隔80mmを用いて得た(ASTM2256)。
【0166】
実施例6-11で、機械的性質、デニールおよび引張試験値は、20±2℃および65±3%相対湿度で一晩コンディショニングした繊維に対してLenzing Technik(オーストリア)のVIBROSKOP/VIBRODYNを20mm/minおよびクランプ間隔20mmを用いて得た(EN ISO5079)。
[実施例27]
【0167】
カチオン性架橋剤として塩化バリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、および硫酸亜鉛を用いて先行する実施例と同様な実施例を行う。
[実施例28]
【0168】
塩基として水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、および重炭酸リチウムを用いて先行する発明実施例と同様な実験を行う。
[実施例29]
【0169】
本発明を記載した実施例と同様な実施例を行って以下のデニール、すなわち0.75dpf、1dpf、2dpf、3dpf、および5dpfを有するフィラメントを調製する。
[実施例30]
【0170】
先行する実施例のフィラメントをクリンピングし、切断して1インチ、1.25インチ、2インチ、4インチ、および6インチの長さを有するステープル繊維を作製する。
[実施例31]
【0171】
(a)10重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、75重量%、90重量%および100重量%の実施例28の繊維から作製されたステープル繊維を(b)残部の、市販されている(i)0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpf、5dpfおよび10dpfの表8に挙げる合成および半合成ポリマーのステープル繊維(本発明のステープル繊維に対応する長さを有する)または(ii)表6に挙げる天然繊維と共に用いて紡績糸ブレンドを調製する。
【0172】
【0173】
(a)10重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、75重量%、90重量%、および100重量%の先行する発明実施例の繊維から作製された連続フィラメントを(b)残部の市販されている(i)0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpf、5dpfおよび10dpfの表7に挙げる合成および半合成ポリマーの連続繊維または(ii)連続絹繊維と共に用いてヤーンを調製する。
【0174】
【0175】
(a)10重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、75重量%、90重量%、および100重量%の先行する発明実施例の連続フィラメントのヤーンを(b)残部の表8に挙げる材料の適当な大きさの市販されているヤーンと共に用いて布を調製する。
[実施例34]
【0176】
(a)10重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、75重量%、90重量%、および100重量%の先行する発明実施例のステープル繊維のヤーンを(b)残部の表8に記載する材料の市販されている繊維の適当な大きさのヤーンと共に用いて布ブレンドを調製する。
【0177】
【0178】
1、2、3、4、5および10重量%の、所望のヤーンおよび布特性のための適当な大きさ(例えば、伸張前に弛緩した状態で測定して0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpfおよび5dpf)および伸び特性を有するスパンデックス(エラステイン)連続フィラメントを使用して実施例32を繰り返す。
[実施例36]
【0179】
1、2、3、4、5および10重量%の、所望のヤーンおよび布特性のための適当な大きさ(例えば、0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpfおよび5dpf)および伸び特性を有するポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート(PET/PTT)サイドバイサイドまたは鞘/芯ステープル繊維を使用して実施例31を繰り返す。
[実施例37]
【0180】
1、2、3、4、5および10重量%の、所望のヤーンおよび布特性のための適当な大きさ(例えば、0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpfおよび5dpf)および伸び特性を有するPET/PTTサイドバイサイドまたは鞘/芯連続フィラメントを使用して実施例32を繰り返す。
[実施例38]
【0181】
1、2、3、4、5および10重量%の、所望のヤーン特性のための適当な大きさ(例えば、0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpfおよび5dpf)および伸び特性を有するポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート(PET/PBT)サイドバイサイドまたは鞘/芯ステープル繊維を使用して実施例31を繰り返す。
[実施例39]
【0182】
1、2、3、4、5および10重量%の、所望の布特性のための適当な大きさ(例えば、0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpfおよび5dpf)および伸び特性を有するPET/PBTサイドバイサイドまたは鞘/芯連続フィラメントを使用して実施例32を繰り返す。
[実施例40]
【0183】
1、2、3、4、5および10重量%の、所望のヤーンおよび布特性のための適当な大きさ(例えば、伸張前に弛緩した状態で測定して0.5dpf、1dpf、2dpf、3dpf、5dpfおよび10dpf)および伸び特性を有する溶融紡糸熱可塑性エラストマー連続フィラメントを使用して実施例32を繰り返す。
【0184】
本開示の他の実施形態は本明細書の考察および本明細書に開示された本開示の実施から当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単に代表的と考えられ、本開示の真の範囲および思想は以下の特許請求の範囲およびその等価物により示されることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非置換の
脂肪族ジカルボキシレートで橋架けされた多価のカチオンによりイオン的に架橋されたアルギネートを含むポリマー。
【請求項2】
非置換の脂肪族C2-C20ジカルボキシレートを用いて橋架けされている、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
非置換の脂肪族ジカルボキシレートが非置換の飽和脂肪族C3-C12ジカルボキシレートである請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
非置換の脂肪族ジカルボキシレートが線状である請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
非置換の
脂肪族ジカルボキシレートが、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、およびテトラデカン二酸からなる群から選択されるジカルボン酸に由来する、請求項
2に記載のポリマー。
【請求項6】
非置換の脂肪族ジカルボキシレートが、シクロペンタンジカルボキシレート、シクロヘキサンジカルボキシレート、及びノルボルナンジカルボキシレートからなる群から選択された脂環式ジカルボキシレートである請求項2に記載のポリマー。
【請求項7】
1)少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩;
少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート;および
少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤
を合わせる工程と;
2)それらを反応させてポリマーを形成する工程と
を含む方法により作製された、請求項1
~6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
a.i.少なくとも1種の一価のカチオン性アルギン酸塩;
ii.少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレート;および
iii.少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤
を合わせる工程と;
b.それらを反応させてポリマーを形成する工程と
を含む、請求項1
~6のいずれか一項に記載のポリマーを製造する方法。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリマーから造形品を製造する方法であって、
a.前記ポリマーを造形して造形品を形成する工程
を含む、方法。
【請求項10】
(a)請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリマー
からなる、繊維。
【請求項11】
a.溶媒中の少なくとも1種の一価の金属アルギン酸塩および少なくとも1種の非置換のC2-C20ジカルボキシレートのドープを調製する工程と;
b.ドープを紡糸口金に通して押し出して繊維を形成する工程と;
c.繊維を、溶媒および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する少なくとも1つの凝固浴に通して延伸する工程と;
d.繊維を乾燥する工程と
を含む湿式紡糸プロセスにより、請求項
10に記載のポリマーの繊維を製造する方法。
【請求項12】
ドープの溶媒が水であり、凝固浴の溶媒が水である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
a.アルギン酸塩が、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウム塩であり、約10,000~約500,000の分子量を有し、約1~約2.5のG/M比を有し;
b.ジカルボキシレートが、ジカルボン酸ナトリウム、カリウム、リチウム、またはアンモニウムであり;
c.多価のカチオン性架橋剤が、カルシウム、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを有し;
d.ドープが、ドープの重量の0.5~50重量%の一価の金属アルギン酸塩を含み;
e.ドープが、アルギン酸塩の重量に対して約1~約125%の少なくとも1種の非置換ジカルボキシレートで調製され;
f.凝固浴が、溶媒中に約0.02~約2モル/リットルの少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
架橋剤が、塩化カルシウム、塩化バリウム、重炭酸カルシウム、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
(a)請求項11~14のいずれか一項に記載の方法により生産された、繊維。
【請求項16】
請求項
10または15に記載の繊維から製造された布。
【請求項17】
a.溶媒中の少なくとも1種の一価の金属アルギン酸塩および少なくとも1種の非置換の芳香族C2-C20ジカルボキシレートのドープを調製する工程と;
b.ドープを紡糸口金に通して押し出して繊維を形成する工程と;
c.繊維を、溶媒および少なくとも1種の多価のカチオン性架橋剤を含有する少なくとも1つの凝固浴に通して延伸する工程と;
d.繊維を乾燥する工程と
を含む湿式紡糸プロセスにより、繊維を製造する方法。
【国際調査報告】