(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】安定な医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/045 20060101AFI20230908BHJP
A61K 31/4152 20060101ALI20230908BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230908BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230908BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230908BHJP
C07D 231/20 20060101ALI20230908BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230908BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230908BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230908BHJP
【FI】
A61K31/045
A61K31/4152
A61P9/10
A61P25/00
A61P21/00
C07D231/20 Z CSP
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512045
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2021112813
(87)【国際公開番号】W WO2022037537
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010827343.0
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522052107
【氏名又は名称】先声▲薬▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SIMCERE PHARMACEUTICAL CO., LTD
(71)【出願人】
【識別番号】522330120
【氏名又は名称】江蘇先声薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU SIMCERE PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.699-18, XUANWU AVENUE, XUANWU DISTRICT, NANJING, JIANGSU, 210042, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】銭勇
(72)【発明者】
【氏名】王霞
(72)【発明者】
【氏名】朱溪
(72)【発明者】
【氏名】劉存存
(72)【発明者】
【氏名】王峰
(72)【発明者】
【氏名】任晋生
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC11
4C076DD24
4C076DD38
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA03
4C086BC36
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA10
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA94
4C206AA01
4C206CA09
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA03
4C206NA10
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA36
4C206ZA94
(57)【要約】
安定な医薬組成物であって、それは医薬技術分野に属し、該有効成分がエダラボンとデクスボルネオールである医薬組成物は、予想外に、その特有の不純物SCR-756と不純物SCR-757の含有量をコントロールすることができ、不純物と製品品質をコントロールしにくく、貯蔵期間が短いなどの問題を根本的に解決した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、共溶媒と、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルである、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記エダラボンとデクスボルネオールとの重量比は1:1~4:1であり、
好ましくは、前記エダラボンとデクスボルネオールとの重量比は4:1であり、
好ましくは、前記医薬組成物におけるエダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムとの重量比は4:1:2である、ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物におけるエダラボンの含有量は1.0~3.0ミリグラム/ミリリットルであり、好ましくは、前記エダラボンの含有量は2.0ミリグラム/ミリリットルであり、
好ましくは、前記医薬組成物におけるデクスボルネオールの含有量は、0.2~1.0ミリグラム/ミリリットルであり、好ましくは0.5ミリグラム/ミリリットルであり、
好ましくは、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.97~1.03ミリグラム/ミリリットルであり、さらに好ましくは、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は1.0ミリグラム/ミリリットルであり、
好ましくは、前記共溶媒と溶媒はそれぞれプロピレングリコールと注射用水である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物には、式I:
【化1】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩がさらに含まれ、
好ましくは、前記式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と前記エダラボンとの重量比は0.3%以下である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物には、式II:
【化2】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩がさらに含まれ、
好ましくは、前記式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩と前記エダラボンとの重量比は0.3%以下である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は、前記エダラボンとの重量比が0.3%以下である式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、前記エダラボンとの重量比が0.3%以下である式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩とを含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
式I:
【化3】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
式II:
【化4】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物の、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症又は関連障害を治療する医薬製剤の製造における応用。
【請求項10】
請求項7に記載の式Iに示す化合物又はその薬学的に許容される塩及び/又は請求項8に記載の式IIに示す化合物又はその薬学的に許容される塩の、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物又は医薬製剤の品質管理における応用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、出願者により2020年8月17日に中国国家知的財産局に提出された、特許出願番号が202010827343.0であり、発明名称が「安定な医薬組成物」である先願に基づく優先権を主張する。前記先願は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医薬技術分野に属し、安定な医薬組成物に関し、具体的には、有効成分がエダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン)とデクスボルネオールである医薬組成物に関する。
【0003】
〔背景技術〕
過去の15年間、脳卒中は、死亡及び長期的且つ重篤な神経系疾患を引き起こす原因として、世界中で第2位、中国で第1位となっている。脳卒中医療品質評価研究(CHINA QUEST)は、中国における急性脳卒中の治療現状の疫学的状況を調査した。研究によると、中国の虚血性脳卒中患者は、発症から病院までの時間が平均で20.1時間であり、相当数の患者の来院時間が24時間後であり、この部分の患者がまだ有効な薬物治療を受けておらず、急性虚血性脳卒中の治療に臨床的に広く用いられているエダラボン注射液は、その説明書の用法や用量の部分に、発症後24時間以内に投与を開始することが明記されている。
【0004】
それとともに、薬品品質に対する管理も次第に医薬品開発における重点と難点になっている。
【0005】
そのため、治療の時間窓が長く、治療効果が顕著であり、安定性に優れ、投薬の安全性が高いエダラボン医薬組成物を提供することは、当分野において早急な解決の待たれる技術課題となっている。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルである。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、共溶媒と、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルである。
【0008】
いくつかの実施形態において、ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は、0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルであり、例えば、0.97~1.03ミリグラム/ミリリットルであり、例示的には、0.95ミリグラム/ミリリットル、0.96ミリグラム/ミリリットル、0.97ミリグラム/ミリリットル、0.98ミリグラム/ミリリットル、0.99ミリグラム/ミリリットル、1.0ミリグラム/ミリリットル、1.01ミリグラム/ミリリットル、1.02ミリグラム/ミリリットル、1.03ミリグラム/ミリリットル、1.04ミリグラム/ミリリットル、1.05ミリグラム/ミリリットルである。いくつかの実施形態において、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は、1.0ミリグラム/ミリリットルである。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物におけるエダラボンとデクスボルネオールとの重量比は、1:1~4:1であり、例えば、2:1、2.5:1、3:1又は3.5:1である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物におけるエダラボンとデクスボルネオールとの重量比は4:1である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物におけるエダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムとの重量比は4:1:2である。
【0012】
本発明の技術案によれば、前記医薬組成物におけるエダラボンの含有量は、1.0~3.0ミリグラム/ミリリットルであり、例えば、1.5~2.5ミリグラム/ミリリットルである。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物におけるエダラボンの含有量は2.0ミリグラム/ミリリットルである。
【0013】
本発明の技術案によれば、前記医薬組成物におけるデクスボルネオールの含有量は、0.2~1.0ミリグラム/ミリリットルであり、例えば、0.3~0.8ミリグラム/ミリリットルである。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物におけるデクスボルネオールの含有量は0.5ミリグラム/ミリリットルである。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物において、エダラボンの含有量は2.0ミリグラム/ミリリットルであり、デクスボルネオールの含有量は0.5ミリグラム/ミリリットルであり、ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は1.0ミリグラム/ミリリットルである。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記共溶媒は、プロピレングリコール、エタノール又はt-ブタノールから選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記溶媒は注射用水から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記共溶媒と溶媒はそれぞれプロピレングリコールと注射用水である。
【0018】
本発明の技術案によれば、前記医薬組成物における共溶媒の含有量は、0.01~0.15ミリリットル/ミリリットルであり、例えば、0.03~0.12ミリリットル/ミリリットルであり、例示的には、0.05ミリリットル/ミリリットル、0.08ミリリットル/ミリリットル、0.1ミリリットル/ミリリットルである。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物において、エダラボンの含有量は2.0ミリグラム/ミリリットルであり、デクスボルネオールの含有量は0.5ミリグラム/ミリリットルであり、ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は1.0ミリグラム/ミリリットルであり、プロピレングリコールの含有量は0.08ミリリットル/ミリリットルである。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物において、エダラボンの含有量は2.0ミリグラム/ミリリットルであり、デクスボルネオールの含有量は0.5ミリグラム/ミリリットルであり、ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は1.0ミリグラム/ミリリットルであり、プロピレングリコールの含有量は0.08ミリリットル/ミリリットルであり、残りは注射用水である。
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、前記医薬組成物の用量(単回用量)は、5ミリリットルの溶液であり、該溶液には、10ミリグラムのエダラボンと、2.5ミリグラムのデクスボルネオールと、含有量が5ミリグラムであるピロ亜硫酸ナトリウムと、0.4ミリリットルのプロピレングリコールとが含まれ、残りが注射用水である。
【0022】
本発明の技術案によれば、前記医薬組成物の有効成分はエダラボンとデクスボルネオールである。
【0023】
本発明の技術案によれば、前記医薬組成物は、式I:
【0024】
【0025】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに含んでもよい。
【0026】
更に、前記式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と前記エダラボンとの重量比は、0.3%以下であり、例えば、0.29%以下、0.28%以下、0.27%、0.26%以下、0.25%以下、0.2%以下、0.15%以下、0.1%以下である。
【0027】
本発明の技術案によれば、前記医薬組成物は、式II:
【0028】
【0029】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに含んでもよい。
【0030】
更に、前記式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩と前記エダラボンとの重量比は、0.3%以下であり、例えば、0.29%以下、0.28%以下、0.27%、0.26%以下、0.25%以下、0.2%以下、0.15%以下、0.1%以下である。
【0031】
別の態様では、本発明は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、共溶媒と、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルであり、前記医薬組成物は、前記エダラボンとの重量比が0.3%以下である式I:
【0032】
【0033】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0034】
別の態様では、本発明は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、共溶媒と、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルであり、前記医薬組成物は、前記エダラボンとの重量比が0.3%以下である式II:
【0035】
【0036】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0037】
別の態様では、本発明は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、エダラボンと、デクスボルネオールと、ピロ亜硫酸ナトリウムと、共溶媒と、溶媒とを含み、前記ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量は0.95~1.05ミリグラム/ミリリットルであり、前記医薬組成物は、前記エダラボンとの重量比が0.3%以下である前記式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と、前記エダラボンとの重量比が0.3%以下である前記式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩とをさらに含む。
【0038】
本発明は、式I:
【0039】
【0040】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0041】
本発明は、式II:
【0042】
【0043】
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0044】
本発明の技術案によれば、前記薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩又はリチウム塩である。
【0045】
本発明は、上記医薬組成物の、脳卒中を治療する医薬製剤の製造における応用をさらに提供する。
【0046】
本発明は、上記医薬組成物の、脳卒中の治療における用途をさらに提供する。
【0047】
本発明は、脳卒中を治療する上記医薬組成物をさらに提供する。
【0048】
本発明は、上記医薬組成物の、筋萎縮性側索硬化症又は関連障害を治療する薬剤の製造における応用をさらに提供する。
【0049】
本発明は、上記医薬組成物の、筋萎縮性側索硬化症又は関連障害の治療における用途をさらに提供する。
【0050】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症又は関連障害を治療する上記医薬組成物をさらに提供する。
【0051】
本発明は、脳卒中を予防及び/又は治療する方法をさらに提供し、該方法は、治療有効量の医薬組成物又は医薬製剤を治療対象、例えば、ヒトに投与することを含む。
【0052】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症又は関連障害を予防及び/又は治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量の医薬組成物又は医薬製剤を治療対象、例えば、ヒトに投与することを含む。
【0053】
本発明は、上記式Iに示す化合物又はその薬学的に許容される塩の、前記医薬組成物又は医薬製剤の品質管理における応用をさらに提供する。
【0054】
本発明は、上記式IIに示す化合物又はその薬学的に許容される塩の、前記医薬組成物又は医薬製剤の品質管理における応用をさらに提供する。
【0055】
本発明は、式Iの化合物又はその互変異性体の製造方法をさらに提供し、中間体2に対して還元反応を行って式Iの化合物又はその互変異性体を得ることを特徴とする。
【0056】
【0057】
本発明は、式IIの化合物又はその互変異性体の製造方法をさらに提供し、中間体2に対して還元反応を行って式IIの化合物又はその互変異性体を得ることを特徴とする。
【0058】
【0059】
本発明の技術案によれば、中間体2を、還元剤と溶媒の存在で反応させて式Iの化合物又はその互変異性体を得る。
【0060】
本発明の技術案によれば、中間体2を還元剤と溶媒の存在で反応させて式IIの化合物又はその互変異性体を得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム及び/又はシアノ水素化ホウ素リチウムから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記還元剤は水素化ホウ素ナトリウムから選択される。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記溶媒は、プロトン性溶媒から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールから選択される一つ又は複数である。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記溶媒は、メタノールから選択される。
【0066】
本発明は、中間体2の製造方法をさらに提供し、中間体1をスルホン化試薬と反応させて中間体2を得ることを特徴とする。
【0067】
【0068】
いくつかの実施形態において、前記スルホン化試薬は、三酸化硫黄及び/又は三酸化硫黄の付加物である。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記スルホン化試薬は、三酸化硫黄・ジオキサン付加物である。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記中間体1は、以下の反応で製造して得られる。
【0071】
【0072】
〔有益な効果〕
発明者は、医薬品開発過程において、有効成分のエダラボンとデクスボルネオールを含む医薬組成物には、不純物SCR-756と不純物SCR-757という二種類の斬新な構造の不純物が出現しやすいことを発見し、不純物SCR-756と不純物SCR-757は、一旦生成されると、その含有量が、通常、同定閾値を0.1%超え、両方の含有量を合理的な範囲内にコントロールすることが難しいが、より複雑なこととして、安定性試験により、不純物SCR-756、不純物SCR-757及びエダラボン総不純物の含有量は、貯蔵温度の上昇及び貯蔵時間の延長に伴って、増加速度が速くなり、プロセス段階において、温度、pH値、共溶媒及び配合時間などをコントロールするという一般的な方法だけでは上記問題を効果的に解決できないことが明らかになった。それに対して、発明者は、大量の試験から、ピロ亜硫酸ナトリウムの用量が医薬組成物における不純物SCR-756、不純物SCR-757及び総不純物の含有量に大きな影響を与え、ピロ亜硫酸ナトリウムの用量が低すぎるか又は高すぎると、不純物SCR-756、不純物SCR-757及び総不純物がいずれも効果的にコントロールできないことを意外に発見した。したがって、本発明は、ピロ亜硫酸ナトリウムを加え且つその用量を適切な範囲にコントロールすることによって、組成物自体に存在する不純物と製品品質をコントロールしにくく、不純物含有量が貯蔵温度の上昇又は貯蔵期の延長に伴って増加速度が速くなるなどの技術問題を効果的に解決し、特に、該医薬組成物における不純物SCR-756、不純物SCR-757及びエダラボン総不純物の含有量を予想外にコントロールすることができ、不純物と製品品質をコントロールしにくく、貯蔵期限が短く、投与安全性が低いなどの問題を根本的に解決した。
【0073】
本明細書では、「互変異性体」という用語は、低エネルギー障壁(low energy barrier)を介して相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を指す。互変異性が可能な場合(例えば、溶液の中にある場合)に、互変異性体の化学平衡を達成することができる。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピック互変異性体(prototro pictautomer)とも呼ばれる)は、ケトエノール異性化及びイミンエナミン異性化のような、プロトン移動による相互変換を含む。特に示さない限り、本発明の化合物は、全ての互変異性体形態がいずれも本発明の範囲内にある。
【0074】
当業者であれば分かるように、α-H含有のカルボニル化合物にはケト型-エノール型互変異性現象が存在し、互変異性体は、相互変換可能であり、一般的には平衡形態で存在する。そのため、当業者であれば分かるように、本発明の式I及び式IIの化合物には、いずれも互変異性現象が存在し、互変異性体の間は相互変換可能である。本発明のいくつかの実施形態において、記述及び表現を容易にするために、互変異性現象が存在する化合物は、ケト型(例えば、式I又は式IIの化合物)のみで表してもよいし、エノール型(例えば、式I’又は式II’化合物)のみで表してもよい。本明細書では、式I又は式IIで示す化合物は、ケト型化合物も含み、対応するエノール型化合物も含む。
【0075】
【0076】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕SCR-756のCOSYスペクトルである。
【0077】
〔
図2〕SCR-756のHSQCスペクトルである。
【0078】
〔
図3〕SCR-756のHMBCスペクトルである。
【0079】
〔
図4〕SCR-757のCOSYスペクトルである。
【0080】
〔
図5〕SCR-757のHSQCスペクトルである。
【0081】
〔
図6〕SCR-757のHMBCスペクトルである。
【0082】
〔発明を実施するための形態〕
以下は、具体的な実施例を結び付けながら、本発明の技術案をさらに詳細に説明する。理解すべきこととして、以下の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0083】
特に説明されていない限り、以下の実施例に使用される原料と試薬は、いずれも市販品であり、又は既知の方法によって製造できるものである。
【0084】
実施例1:ピロ亜硫酸ナトリウムの用量と関連物質の考察
プロピレングリコールを50~60℃に加熱し、エダラボンを加え、完全に溶解するまで撹拌し、薬液を得て、薬液を25℃以下に降温させ、それにデクスボルネオール(構造は
【0085】
【0086】
である)を加え、完全に溶解するまで撹拌した。ピロ亜硫酸ナトリウムを適量の25℃以下の水に加え、完全に溶解するまで撹拌し、ピロ亜硫酸ナトリウム溶液を撹拌しながら薬液にゆっくりと加え、処方量近くまでゆっくりと水を加え続けた。0.1mol/Lの塩酸と水酸化ナトリウム溶液でpHを4.5±0.2に調整し、最終的に水を加えて処方量まで定容し、薬液を濾過し、窒素を充填して注入封止し、滅菌した。
【0087】
以上の方法により、ピロ亜硫酸ナトリウムの含有量がそれぞれ0.5mg/mL、0.8mg/mL、1.0mg/mL、1.2mg/mL、1.5mg/mLの医薬組成物を製造して得られ、その具体的な処方は、表1に示すとおりである。
【0088】
【0089】
表1における医薬組成物の関連物質を分析し、温度60℃の条件で0日及び10日間放置した後のサンプルの不純物SCR-756、不純物SCR-757及びエダラボン総不純物の含有量状況をそれぞれ検出した。具体的には表2に示すとおりである。
【0090】
【0091】
関連物質の分析方法は以下のとおりであり、適量のサンプルを取り、溶媒であるメタノール-水(体積比32:68)を加えて希釈して、1mLあたりに約0.5mgのエダラボンを含む溶液を作り、供試品溶液とし、精密に適量を量り取り、溶媒で希釈して1mLあたりに約5μgのエダラボンを含む溶液を作り、対照溶液とした。不純物対照品SCR-756 5mg、SCR-757 5mgを精密に秤り取って、100mLのメスフラスコに入れ、溶媒を加えて超音波で溶解させてスケールまで希釈し、よく振って、不純物貯蔵溶液とし、また、エダラボン対照品10mgを精密に秤り取って、20mLのメスフラスコに入れ、メタノール5mLを加えて溶解させ、不純物貯蔵溶液1mLを加え、溶媒を加えてスケールまで希釈し、よく振って、システム適合性溶液とした。高速液体クロマトグラフィ(中国薬典2015年版四部通則0512)試験に従い、オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤(Agilent Eclipse plus C18 4.6×150mm、3.5μm)とし、0.5%トリエチルアミン(リン酸でpH値を6.3に調整する)を移動相Aとし、メタノールを移動相Bとし、以下の表に従って線形勾配溶出を行い、検出波長は248nmである。システム適合性溶液10μLを精密に量り取り、液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録し、不純物SCR-756、不純物SCR-757及びエダラボンは、順にピークになり、エダラボンピークの保持時間は約6分間である。供試品溶液と対照溶液をそれぞれ10μL精密に量り取り、それぞれ液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録した。
【0092】
【0093】
実施例2
プロピレングリコールを50~60℃に加熱し、エダラボンを加え、完全に溶解するまで撹拌し、薬液を得て、薬液を25℃以下に降温させ、それにデクスボルネオールを加え、完全に溶解するまで撹拌した。酸化防止剤(ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、L-システイン塩酸塩、単独使用又は二つ併用可能)を適量の25℃以下の水に加え、溶解するまで撹拌し、上記酸化防止剤溶液を撹拌しながら薬液にゆっくりと加え、処方量近くまでゆっくりと水を加え続けた。0.1mol/Lの塩酸と水酸化ナトリウム溶液でpHを4.5±0.2に調整し、最終的に水を加えて処方量まで定容し(表3に示すように)、薬液を濾過し、窒素を充填して注入封止し、滅菌した。サンプルの性状及びエダラボン不純物の状況を重点的に考察し、結果は表4に示すとおりである。
【0094】
【0095】
【0096】
処方1、2は、処方3に比べて、そのエダラボン関連不純物の量が有意に低い。
【0097】
関連物質の分析方法は以下のとおりであり、
高速液体クロマトグラフィ(中国薬典2010年版二部付録VI E)アッセイに従い、オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤(Waters sunfire C18、4.6×250mm、5.0μm)とし、0.02mol/Lの酢酸アンモニウム溶液(氷酢酸でpH値を4.0に調整する)を移動相Aとし、アセトニトリルを移動相Bとし、以下の表に従って線形勾配溶出を行い、
検出波長:254nm;
流速:1.0ml/min;
サンプル投入量:20μl;
溶媒:0.02mol/L酢酸アンモニウム溶液(氷酢酸でpH値を4.0に調整する)-アセトニトリル(体積比80:20);
供試品溶液:本品を5ml取って20mlのメスフラスコに入れ、溶媒を加えてスケールまで希釈すれば得られ、
対照溶液:供試品溶液1mlを精密に量り取って200mlのメスフラスコに入れ、溶媒を加えてスケールまで希釈すれば得られる。
【0098】
【0099】
実施例3化合物SCR-756及びSCR-757の製造
【0100】
【0101】
合成ステップ:
(1)中間体1の製造
39.92gのNaを、分割して1.25Lの無水エタノールに加え、25~40℃のまま維持し、Naが完全に溶解して透明になるまで50℃で撹拌し、光が通らない暗所で、0~5℃で250gのエダラボン固体を分割して加え、撹拌して濁った液体を得て、N2バルーンで保護し、黒いビニール袋で光を避け、203.11gのクロロアセトンを750mLの無水エタノールに溶解させてエタノール溶液になり、滴下ホッパーに直接加え、-5~0℃で上記エタノール溶液を滴下し、N2バルーンで保護し、黒いビニール袋で光を避け、0~5℃で2h撹拌し、TLC(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により、大部分のエダラボン原材料が消耗されたことを監視し、撹拌状態で、反応液を4Lの氷水に注ぎ、濾過し、濾過ケーキを水で600mL*3洗浄し、酢酸エチル200mLで叩解し、濾過して合計37gの中間体1を得た。
【0102】
(2)中間体2の製造
37gの中間体1を3Lの三口フラスコに入れ、N2バルーンで保護し、650mLのジクロロエタンと325mLの無水ジオキサンを投入ホッパーによって加え、真空を引き、完全に溶解するまで撹拌し、0~5℃の撹拌状態で、100gの4A型モレキュラシーブと69.41gの三酸化硫黄・ジオキサン付加物を順に分割して加え、100℃に昇温し8時間反応させ、8h後に25℃に降温させ、濾過し、無水ジクロロメタンで濾過ケーキを二回洗浄し、濾過ケーキと600mLの無水ジクロロメタンを撹拌し、濾過して大粒のモレキュラシーブを除去し、濾液を5分間撹拌してから濾過し、濾過ケーキを無水ジクロロメタンで二回洗浄して粗物を得て、粗物をエタノールで叩解し、濾過して30gの固体(中間体2)を得た。
【0103】
(3)化合物SCR-756及びSCR-757の製造
30gの中間体2を2Lの三口フラスコに加え、N2バルーンで保護し、600mLの無水MeOHを投入ホッパーによって加え、真空を引き、ドライアイス浴で撹拌し、0~5oCに維持し、8.85gのNaBH4を分割して加え、反応液を60℃で3h撹拌した後に、溶媒をスピンドライさせ、HPLC単離(クロマトグラフカラム:YMC-Triart Prep C18 250*50mm*10μm、移動相:[水(0.1%トリフルオロ酢酸)-アセトニトリル]、アセトニトリル%:0%~28.5%、19mins)によって、化合物SCR-756と化合物SCR-757を得た。
【0104】
化合物SCR-756と化合物SCR-757の構造を核磁気共鳴により実証した。
【0105】
核磁気共鳴スペクトル(NMR)
計器:BRUKER AV-400型核磁気共鳴装置
溶媒:DMSO-d6
内部標準:TMS
温度:300K。
【0106】
SCR-756の水素スペクトル、炭素スペクトル核磁気データは、表5-1と表5-2に示すとおりである。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
SCR-757の水素スペクトル、炭素スペクトル核磁気データは、表6-1と表6-2に示すとおりである。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
また、SCR-756とSCR-757のCOSYスペクトル、HSQCスペクトル及びHMBCスペクトルは、それぞれ
図1~
図6に示すとおりである。
【0115】
その結果、SCR-756は式Iに示すような構造を有し、SCR-757は式IIに示すような構造を有することが分かった。
【0116】
以上、本発明の実施形態を説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨と原則を逸脱しない限り、なされたいかなる修正、等価変更、改善などは、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】SCR-756のCOSYスペクトルである。
【
図2】SCR-756のHSQCスペクトルである。
【
図3】SCR-756のHMBCスペクトルである。
【
図4】SCR-757のCOSYスペクトルである。
【
図5】SCR-757のHSQCスペクトルである。
【
図6】SCR-757のHMBCスペクトルである。
【国際調査報告】