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特表2023-539588ミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】ミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20230908BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A61K31/136
A61P35/00
A61P7/00
A61K9/127
A61P43/00 121
A61K31/675
A61K31/4745
A61K31/573
A61K9/20
A61K9/14
A61K45/00
A61K47/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513307
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 CN2021114810
(87)【国際公開番号】W WO2022042653
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010878461.4
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506417359
【氏名又は名称】石薬集団中奇制薬技術(石家庄)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSPC ZHONGQI PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY(SHIJIAZHUANG)CO.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.896,Zhongshan East Road,High-Tech Zone,Shijiazhuang,Hebei,050035,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュンレイ
(72)【発明者】
【氏名】シァ,シュエファン
(72)【発明者】
【氏名】リ,イェンフゥイ
(72)【発明者】
【氏名】アン,ナー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,イェンリン
(72)【発明者】
【氏名】リ,トン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シーシァ
(72)【発明者】
【氏名】ジャ,ルンルー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA36
4C076AA95
4C076CC14
4C076CC27
4C076DD63
4C076FF70
4C084AA22
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA35
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA51
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB21
4C086DA10
4C086DA35
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA05
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA17
4C206MA21
4C206MA24
4C206MA44
4C206MA55
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA51
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を治療するための薬物の調製におけるミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用。前記PTCLは、治療ナイーブのPTCLであることが好ましい。上記に加え、PTCLを治療する他の第一選択薬、第二選択薬をさらに使用してもよい。患者に治療有効量のミトキサントロン塩酸塩リポソームとシクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンとを投与する、PTCLを治療する方法。当該薬物の併用は、安全で耐えられ、毒性及び副作用が小さく、治療ナイーブのPTCL患者においてより高い総客観的奏効率(ORR)を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTCLを治療する薬物の調製におけるミトキサントロンリポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用。
【請求項2】
ミシクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンの療法によるPTCLの治療効果を向上させる薬物の調製におけるミトキサントロンリポソームの使用。
【請求項3】
前記PTCLは、治療ナイーブのPTCLであり、前記ミトキサントロンリポソームは、ミトキサントロン塩酸塩リポソームであることが好ましいことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、シクロホスファミド及びビンクリスチンは、同じ製剤に存在してもよく、それぞれ独立して製剤してもよく、
上記の4つの薬物をそれぞれ製剤とする場合、剤形は同じでもよく、異なっていてもよく、
前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが液状注射剤の場合、有効成分はミトキサントロンを基準として0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/ml含まれ、
プレドニゾンが錠剤の場合、規格は5mg/錠であり、
クロホスファミドが粉末注射剤の場合、規格は0.2g/バイアルであり、
ビンクリスチンが粉末注射剤の場合、規格は1mg/バイアルであることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記薬物は、PTCLを治療する他の薬物をさらに含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
ミトキサントロンリポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを含み、
前記ミトキサントロンリポソームはミトキサントロン塩酸塩リポソームであることが好ましく、
前記ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、シクロホスファミド及びビンクリスチンは、同じ製剤に存在してもよく、それぞれ独立して製剤してもよく、
上記の4つの薬物をそれぞれ製剤とする場合、剤形は同じでもよく、異なっていてもよく、
前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが液状注射剤の場合、有効成分はミトキサントロンを基準として0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/ml含まれ、
プレドニゾンが錠剤の場合、規格は5mg/錠であり、
クロホスファミドが粉末注射剤の場合、規格は0.2g/バイアルであり、
ビンクリスチンが粉末注射剤の場合、規格は1mg/バイアルであることを特徴とするPTCLを治療する薬物。
【請求項7】
PTCL患者に有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを使用し、
ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、シクロホスファミド及びビンクリスチンの投与は注射投与であることが好ましく、
プレドニゾンは経口投与であることが好ましく、
好ましくは、ミトキサントロンを基準として、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームの有効治療用量は8~30mg/m、より好ましくは12~24mg/mであり、
シクロホスファミドの用量は750mg/m、ビンクリスチンの用量は1.4mg/m、プレドニゾンの用量は100mg/日であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
PTCL患者にシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを使用することに加え、有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソームをさらに併用することを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項9】
ミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを含む、PTCLを治療する組成物であって、各投与サイクルの初日にPTCL患者に有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、ビンクリスチン及びシクロホスファミドを任意の順序で投与し、
好ましくは、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前にプレドニゾンを投与し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後にビンクリスチンを投与し、その後シクロホスファミドを投与し、
好ましくは、投与サイクルは4週間または3週間ごとに1回投与することであることを特徴とする組成物。
【請求項10】
シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンの療法によるPTCLの治療効果を向上させる薬物であって、ミトキサントロン塩酸塩リポソームを含有し、各投与サイクルの初日に、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームはプレドニゾンの投与後、ビンクリスチン及びシクロホスファミドの投与前の任意時間で投与し、用量は8~30mg/m、より好ましくは12~24mg/mであり、4週間または3週間ごとに1回投与することを特徴とする薬物。
【請求項11】
前記ミトキサントロンリポソームは、粒子径が約30~80nmであり、好ましくは約35~75nm、より好ましくは約40~70nm、さらに好ましくは約40~60nmであり、1)有効成分であるミトキサントロン又はその薬学的に許容される塩と、2)相転移温度(Tm)が体温よりも高いリン脂質を含むリン脂質二重分子層とを含有し、前記Tmが体温よりも高いリン脂質は、ホスファチジルコリン、水添大豆レシチン、水添卵黄レシチン、ジパルミトイルレシチン、またはジステアロイルレシチン、またはこれらの任意の組み合わせである請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記ミトキサントロンリポソームは、粒子径が約30~80nmであり、好ましくは約35~75nm、より好ましくは約40~70nm、さらに好ましくは約40~60nmであり、1)有効成分であるミトキサントロン又はその薬学的に許容される塩と、2)相転移温度(Tm)が体温よりも高いリン脂質を含むリン脂質二重分子層とを含有し、前記Tmが体温よりも高いリン脂質は、ホスファチジルコリン、水添大豆レシチン、水添卵黄レシチン、ジパルミトイルレシチン、またはジステアロイルレシチン、またはこれらの任意の組み合わせである請求項6又は10に記載の薬物、又は請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記ミトキサントロンリポソームは、粒子径が約30~80nmであり、好ましくは約35~75nm、より好ましくは約40~70nm、さらに好ましくは約40~60nmであり、1)有効成分であるミトキサントロン又はその薬学的に許容される塩と、2)相転移温度(Tm)が体温よりも高いリン脂質を含むリン脂質二重分子層とを含有し、前記Tmが体温よりも高いリン脂質は、ホスファチジルコリン、水添大豆レシチン、水添卵黄レシチン、ジパルミトイルレシチン、またはジステアロイルレシチン、またはこれらの任意の組み合わせである請求項7又は8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗腫瘍分野に該当し、具体的に治療ナイーブの末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)のための薬物の調製におけるミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PTCLは胸腺において成熟したT細胞を由来とするリンパ増殖性腫瘍のグループのであり、明らかに異質性があり、ほとんどは攻撃性が高い。2016年に改訂されたWHO分類基準(非特許文献1)によると、PTCLには、非特定型末梢性T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性鼻型NK/T細胞リンパ腫、ALK陽性全身性未分化大T細胞リンパ腫、ALK陰性全身性未分化大T細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群等を含む、合計30を超えるサブタイプを持つ4つのカテゴリーが含まれる。複雑な病理学的分類は、このグループの疾患の異質性を反映している。PTCLの発生と病理学的サブタイプの分布には地域差がある。アジアでの発生率は、ヨーロッパやアメリカよりもやや高くなっている。中国では、PTCLは非ホジキンリンパ腫(NHL)において約25%~35%占めており、欧米諸国(10%~15%)よりもかなり高くなっている。
注目すべきは、PTCLの治療が楽観的でないことである。CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)またはCHOP類似療法の初回治療への適用は、全体的な奏効率が低く、再発しやすく、予後が不良である。ALK陽性全身性未分化大T細胞リンパ腫(ALCL)以外のPTCLのサブタイプの5年生存率はわずか14~32%である(非特許文献2)。
【0003】
アントラサイクリンを含まない療法によるPTCLを治療する第一選択としての治療効果に対する研究調査は続々と国内外で行われている。しかし、アントラサイクリン系薬物をメインとするCHOP類似療法よりも優れていることは証明されていない。したがって、アントラサイクリンを含む療法は、第一選択としての位置づけが変わっていない。このように、PTCLについては、安全で効率的な第一選択療法をさらに検討する必要がある。
ミトキサントロン(Mitoxantrone Hydrochloride)は、今まで世界30か国以上で使用されているアントラサイクリン系薬物である。急性白血病などの血液系腫瘍、リンパ腫、及び乳がんなど、さまざまな固形がんに治療効果がある。その副作用は、主に骨髄抑制、胃腸反応、心毒性である。臨床的には、主に急性骨髄性白血病の治療に使用される。
【0004】
リポソームは、薬物を担持する新しい形態である。研究によると、体内におけるカプセル化された薬物の分布を変更できるため、薬物は主に腫瘍組織に蓄積され、それによって薬物の治療指数が向上し、薬物の治療用量及び薬物の毒性が減少する。これらの特徴によって、抗腫瘍薬の研究におけるリポソームの薬物担持としての適用が重要視されている。研究者は、ミトキサントロンリポソーム製剤に関する研究を行っている。例えば、特許文献1には、ミトキサントロンリポソームが開示されており、その開示事項は参照によりその全文がここに組み込まれる。リポソーム製剤は一般的なミトキサントロン製剤と比較して、毒性(特に心毒性)が低く、受動的に腫瘍組織を標的とする特徴を有し、抗腫瘍活性が向上することは研究により示されている。
【0005】
ミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射剤単剤の臨床第I相試験は、進行性固形腫瘍の被験者及びリンパ腫の被験者を対象として用量漸増調査及びPK/PD研究が完了した。試験結果によると、本剤は6~30mg/mの用量範囲内で安全で耐えられ、一定の治療効果を示していた。ミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射剤単剤のキーポイントとなる第II相は、再発/難治性PTCL患者で実施され、登録を完了した(n=108例、投与量20mg/m)。現在、独立審査委員会(IRC)によって評価され、治療効果が確認された客観的奏効率(ORR)は40.7%であった。再発/難治性PTCL患者における本剤の単剤投与の治療効果が良好であることに鑑み、本研究は、治療ナイーブのPTCL患者におけるミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射剤の併用投与をさらに検討することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/080367号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Swerdlow SH,et al. The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms. Blood. 2016 May 19;127(20):2375-2390.
【非特許文献2】Vose J,et al.International peripheral T-cell and natural killer/T-cell lymphoma study:pathology findings and clinical outcomes.J Clin Oncol.2008 Sep 1;26(25):4124-4130.
【発明の概要】
【0008】
特に明記しない限り、本発明における「治療ナイーブ」は、以下の定義を使用する。
「治療ナイーブ」とは、抗リンパ腫治療がなく、新しく診断されたと定義される。
「ミトキサントロン」には、ミトキサントロン及びその薬学的に許容される塩が含まれ、前記ミトキサントロンの薬学的に許容される塩は、ミトキサントロン塩酸塩であることが好ましい。ミトキサントロンリポソームは、ミトキサントロン塩酸塩リポソームであることが好ましい。
【0009】
本発明は、PTCLを治療する薬物の調製におけるミトキサントロンリポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用を提供する。
【0010】
前記PTCLは、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、ALK陽性未分化大T細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陰性未分化大T細胞リンパ腫(ALCL)から選択される少なくとも1つのサブタイプであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンによるPTCLの治療効果を向上させる薬物の調製におけるミトキサントロンリポソームの使用を提供する。
【0012】
本発明は、ミトキサントロンリポソームによるPTCLの治療効果を向上させる薬物の調製における、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンの併用の使用を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、ミトキサントロン及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを含むことを特徴とするPTCLを治療する薬物を提供する。
【0014】
前記PTCLは、治療ナイーブのPTCLであることが好ましい。前記ミトキサントロンリポソームは、ミトキサントロン塩酸塩リポソームであることが好ましい。
【0015】
好ましくは、ミトキサントロン塩酸塩ポソーム、プレドニゾン、シクロホスファミド及びビンクリスチンは、同じ製剤に存在してもよく、それぞれ独立して製剤してもよい。上記の4つの薬物をそれぞれ製剤とする場合、剤形は同じでもよく、異なっていてもよい。前記剤形は、例えば、注射剤形、経口剤形など、臨床的に許容される任意の剤形であってよい。前記注射剤形は、液状注射剤、注射用粉末剤、注射用錠剤などを含み、前記経口剤形は、錠剤、カプセル剤、経口液剤などを含む。前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームが液状注射剤の場合、有効成分はミトキサントロンを基準として0.5~5mg/ml、好ましくは1~2mg/ml、より好ましくは1mg/ml含まれる。プレドニゾンが錠剤の場合、規格は5mg/錠であり、クロホスファミドが粉末注射剤の場合、規格は0.2g/バイアルであり、使用時に200mg/10ml溶液と調製し、ビンクリスチンが粉末注射剤の場合、規格は1mg/バイアルであり、使用時に1mg/20ml溶液と調製する。
【0016】
プレドニゾンは規格が5mg/錠の錠剤であるとは、1錠中にプレドニゾンを5mg含有することを意味し、シクロホスファミドは規格が0.2g/バイアルの粉末注射剤であるとは、粉末注射剤の1バイアル中にシクロホスファミドを0.2g含有することを意味し、ビンクリスチンは規格が1mg/バイアルの粉末注射剤であるとは、粉末注射剤の1バイアル中にビンクリスチンを1mg含有することを意味する。
【0017】
前記薬物には、PTCLを治療する他の薬物をさらに含んでもよい。当該薬物とは、中国または他の国や地域(例えば、米国、欧州連合、日本、韓国など)の医薬品管理部門によって承認されたPTCLを治療するための薬物を指す。
【0018】
本発明は、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンが有効治療用量でPTCL患者に使用されることを特徴とするPTCLの治療方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンの療法によるPTCLの治療効果を向上させる方法であって、PTCL患者にシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを使用することに加え、有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソームをさらに併用することを特徴とする方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、ミトキサントロン塩酸塩リポソームによるPTCLの治療効果を向上させる方法であって、PTCL患者にミトキサントロン塩酸塩リポソームを使用することに加え、有効治療用量のシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンをさらに併用することを特徴とする方法を提供する。
【0021】
上述方法では、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、シクロホスファミド及びビンクリスチンの投与は、注射投与であることが好ましく、プレドニゾンの投与は、経口投与であることが好ましい。好ましくは、ミトキサントロンを基準として、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームの有効治療用量は8~30mg/m、より好ましくは12~24mg/mであり、具体的には、例えば12mg/m、14mg/m2、15mg/m、16mg/m、18mg/m、20mg/m、24mg/mである。シクロホスファミドの用量は750mg/m、ビンクリスチンの用量は1.4mg/m(体表面積を基準にして計算し、各症例の最大投与量は2mgを超えてはならない)、プレドニゾンの投与量は100mg/日である。好ましくは、投与サイクルは4週間または3週間ごとに1回投与することである。各投与サイクルにおいて、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、シクロホスファミド及びビンクリスチンを1回投与し、プレドニゾンを5回連続投与する。好ましくは、各投与サイクルの初日に、PTCL患者に有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、ビンクリスチン及びシクロホスファミドを任意の順序で投与し、2~5日目に継続してプレドニゾンを投与する。好ましくは、各投与サイクルの初日に、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前にプレドニゾンを投与し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後にビンクリスチンを投与し、その後シクロホスファミドを投与する。
【0022】
本発明はさらに、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンを含む、PTCLを治療する組成物であって、各投与サイクルの初日にPTCL患者に有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、ビンクリスチン及びシクロホスファミドを任意の順序で投与し、2~5日目に継続してプレドニゾンを投与することを特徴とする組成物を提供する。好ましくは、各投与サイクルの初日に、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前にプレドニゾンを投与し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後にビンクリスチンを投与し、その後シクロホスファミドを投与する。好ましくは、投与サイクルは4週間または3週間ごとに1回投与することである。好ましくは、ミトキサントロンを基準として、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームの用量は、8~30mg/m、より好ましくは12~24mg/mである。好ましくは、シクロホスファミドの用量は750mg/m、ビンクリスチンの用量は1.4mg/m(体表面積を基準にして計算し、各症例の最大投与量は2mgを超えてはならない)、プレドニゾンの用量は100mg/日である。
【0023】
ここでの「任意の順序での投与」とは、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム及びシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンをそれぞれ製剤とし、臨床的に許容される方法でそれぞれ投与し、投与の順序には強制的な定めがなく、各薬物は体外で混合しないことをいう。
【0024】
本発明はさらに、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンの療法によるPTCLの治療効果を向上させる薬物であって、ミトキサントロン塩酸塩リポソームを含有し、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームはプレドニゾンの投与後、ビンクリスチン及びシクロホスファミドの投与前の任意時間で投与することを特徴とする薬物を提供する。好ましくは、各投与サイクルの初日にPTCL患者に任意の順序で有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、ビンクリスチン及びシクロホスファミドを投与し、2~5日目に継続してプレドニゾンを投与する。好ましくは、各投与サイクルの初日に、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前にプレドニゾンを投与し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後にビンクリスチンを投与し、その後シクロホスファミドを投与する。好ましくは、ミトキサントロンを基準として、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームの用量は8~30mg/m、より好ましくは12~24mg/mであり、4週間または3週間ごとに1回投与する。好ましくは、シクロホスファミドの用量は750mg/m、ビンクリスチンの用量は1.4mg/m(体表面積を基準にして計算し、各症例の最大投与量は2mgを超えてはならない)、プレドニゾンの用量は100mg/日である。
【0025】
本発明はさらに、ミトキサントロン塩酸塩リポソームによるPTCLの治療効果を向上させる薬物であって、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンを含有し、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームはプレドニゾンの投与後、ビンクリスチン及びシクロホスファミドの投与前の任意時間で投与することを特徴とする薬物を提供する。好ましくは、各投与サイクルの初日にPTCL患者に有効治療用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム、プレドニゾン、ビンクリスチン及びシクロホスファミドを任意の順序で投与し、2~5日目に継続してプレドニゾンを投与する。好ましくは、各投与サイクルの初日に、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前にプレドニゾンを投与し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後にビンクリスチンを投与し、その後シクロホスファミドを投与する。好ましくは、ミトキサントロンを基準として、前記ミトキサントロン塩酸塩リポソームの用量は8~30mg/m、より好ましくは12~24mg/mであり、4週間または3週間ごとに1回投与する。好ましくは、シクロホスファミドの用量は750mg/m、ビンクリスチンの用量は1.4mg/m(体表面積を基準にして計算し、各症例の最大投与量は2mgを超えてはならない)、プレドニゾンの用量は100mg/日である。
【0026】
好ましくは、毎回静脈内投与について、前記リポソーム薬物製剤の点滴投与時間は30min~120min、好ましくは60min~120min、より好ましくは90±15minである。
【0027】
本発明に係るミトキサントロン塩酸塩リポソームの用量はすべてミトキサントロンを基準とする。
【0028】
本発明に係るミトキサントロン塩酸塩リポソームは当業界の通常の方法によって調製することができ、先行技術に開示された任意の方法によって調製されるミトキサントロン塩酸塩リポソームであってよい。例えばWO2008/080367A1に開示された方法により調製でき、当該特許の開示事項は参照により全文がここに組み込まれる。
【0029】
いくつかの実施例では、本発明に係るミトキサントロンリポソームは、その粒子径は約30~80nmであり、1)リポソーム内の多価対イオンと不溶性沈殿物を形成することができる有効成分であるミトキサントロン又はその薬学的に許容される塩と、2)リポソームの相転移温度が体温よりも高くなるように、相転移温度(Tm)が体温よりも高いリン脂質を含むリン脂質二重分子層とを含有する。前記Tmが体温よりも高いリン脂質は、ホスファチジルコリン、水添大豆レシチン、水添卵黄レシチン、ジパルミトイルレシチン、またはジステアロイルレシチン、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくは、前記ミトキサントロンリポソームの粒子径は約35~75nmであり、好ましくは約40~70nm、より好ましくは40~60nm、特に好ましくは60nmである。いくつかの実施形態において、前記リン脂質二重分子層は、水添大豆レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを3:1:1の質量比で含有し、前記リポソームの粒子径は約60nmであり、前記対イオンは硫酸イオンである。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明に係るミトキサントロン塩酸塩リポソームの調製方法は以下のとおりである。HSPC(水添大豆レシチン)、Chol(コレステロール)及びDSPE-PEG2000(ポリエチレングリコール2000修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)を(3:1:1)の質量比に従って秤量し、95%エタノールに溶解し、透明な溶液(すなわち、リン脂質のエタノール溶液)を得る。リン脂質のエタノール溶液を300mMの硫酸アンモニウム溶液と混合し、60~65℃で1時間振とうして水和し、不均一な多層リポソームを得る。その後、マイクロ流体デバイスを使用してリポソームの粒子サイズを小さくする。得られたサンプルを濃度0.9%のNaCl溶液で200倍に希釈し、NanoZSで検出したところ、粒子の平均粒子サイズは約60nmであり、メインピークは40~60nmの間に集中していた。その後、膜貫通型硫酸アンモニウムグラジエントを形成するように、限外濾過装置を用いてブランクリポソームの外相の硫酸アンモニウムを除去し、外相を290mMスクロースと10mMグリシンに置換する。16:1の脂質薬物比に従って、ミトキサントロン塩酸塩溶液 (10mg/mL)をブランクリポソームに添加し、薬物を60~65Cで担持する。約1時間のインキュベーション後、カプセル化効率は、ゲル排除クロマトグラフィーを使用して約100%であることが実証された。この処方で得られた製品は、PLM60と名付けられた。PLM60におけるHSPC:Chol:DSPE-PEG2000:ミトキサントロンの重量比は9.58:3.19:3.19:1であり、スクロースグリシン溶液の浸透圧は生理学的な値に近い。
【0031】
有益効果
本発明のミトキサントロン塩酸塩リポソームを用い、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンをさらに併用することは、安全で患者が耐えられ、毒性及び副作用が小さく、治療ナイーブのPTCL患者においてより高い総ORR率を得ることができる。投与サイクルの増加に伴い、治療効果がさらに向上し、それによって患者の無増悪生存期間(PFS)及び5年全生存率(OS)が向上することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の実施例は、本発明の具体的な説明であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0033】
実施例1 治療ナイーブのPTCLの治療におけるミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液と、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンとの併用に関する臨床研究
本研究は、治療ナイーブのPTCLの被験者を対象として、さまざまな用量のミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液と固定用量のシクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンを投与する単群非盲検多施設共同第Ib相臨床試験であり、上記療法の安全性及び忍容性を検討し、上記薬物併用療法におけるミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液の最適な投与量を確認し、治療効果を評価し、薬物動態的な特徴を観察することを目的とする。本研究は、用量漸増段階と用量拡大段階に分けられる。
【0034】
一.試験の設計
1.用量漸増段階
(1)全体の設計
本研究は、スクリーニング期間、治療期間及びフォローアップ期間で構成されている。
被験者はインフォームドコンセントフォームに署名し、スクリーニング期間中にすべてのベースライン評価を完了する。スクリーニングにおいて適格な被験者は治療期間に入り、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液の投与量は、低用量群から高用量群に次第に増加する。4W(28日間)を1サイクルとし、1つ目の投与サイクルでDLTを確認する。すべての被験者は、プランに従って投与前後の異なる時点でPK血液サンプルを収集し、治療中にプランに規定される関連検査を完了して、安全性、忍容性、及び治療効果を観察する。同じ被験者は、研究期間中に1つの用量の治療及び投与スケジュールしか受けられない。治療期間の後、フォローアップ期間に入る。
【0035】
(2)用量漸増及び投与プラン
ミトキサントロン塩酸塩リポソーム(PLM60)の用量漸増段階では、初期用量を12mg/mとし(ミトキサントロンを基準とする)、12mg/m、15mg/m、18mg/mの3つの用量群を予め設定する。各サイクルの初日(D1)に点滴静注する。
ビンクリスチンについて、用量は1.4mg/m(体表面積を基準にして計算し、各症例の最大投与量は2mgを超えてはならない)であり、D1に、静脈内注射し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後に投与する。
シクロホスファミドについて、用量は750mg/mであり、D1に、静脈内注射し、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、ビンクリスチンの投与後に投与する。
プレドニゾンについて、用量は100mg/日であり、D1~D5において経口投与し、D1には、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前に投与し、D2~D5にはプレドニゾンのみを投与し、プレドニゾン単独使用時の臨床投与要求を満たせればよい。
【0036】
被験者がDLTになると、元の治療プランは中止され、研究者は臨床診断及び治療基準に従って対応処理を行い、毒性がグレード1以下またはベースラインレベルに戻るまで監視する。当該被験者が元のプランでの治療を継続することによる利益がリスクを上回ると研究者が判断した場合は、治験依頼者の同意を得た上で継続して治療期間(投与量は元の投与量と同じである)に入ることができる。被験者は元のプランの継続が適切ではないと研究者が判断した場合、研究から離れる。
【0037】
(3)継続投与の要件
1)好中球数≧1.5×10/L、ヘモグロビン≧80g/L、血小板数≧75×10/Lを満たす必要がある。
2) 非血液学的毒性(脱毛症を除く)は、薬物毒性に対して薬物治療を行うかどうかに関係なく、グレード1以下またはベースラインレベルに戻らなければならない。
3)上記条件が満たされない場合は、原則として減量せず、投与を遅らせることができるが、14日を超えない。
4)1及び2の投与条件を満たすまでに毒性が回復していない場合、および/または投与遅延が14日を超える場合、研究者が依然として患者に利益をもたらすと判断した場合、治験依頼者と連絡した上で継続投与は可能である。
【0038】
2.用量拡大段階
用量漸増段階の研究結果により、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンの併用療法におけるミトキサントロン塩酸塩リポソームの第II相推奨用量(RP2D)を決定した後、用量拡大段階に入ることができる。
【0039】
本研究は、スクリーニング期間、治療期間及びフォローアップ期間で構成されている。ミトキサントロン塩酸塩リポソーム注射液はRP2D用量に拡張し、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの用量は漸増段階と同じである。治療は、Q4W(28日間)群とQ3W(21日間)群との2つの群に分け、各群は10~20例に拡張する。
【0040】
研究手順に従ってスクリーニングされた適格な被験者を、クロスオーバー法でそれぞれQ4W群またはQ3W群に割り付ける。治療期間において、Q4W群は28日間を1サイクルとし、Q3W群は21日間を1サイクルとし、6サイクルの投与が計画され、6サイクルの治療完了、疾患の進行、死亡、耐えられない毒性、及び他の治療手段(化学療法プラン、ASCT、放射線療法などの変更を含む)が必要であると研究者が判断すること、被験者が自ら治療を中止することになる(いずれか早い方を基準とする)までである。治療期間中、プランの要求に従ってPK採血及び関連する検査を実施し、安全性と治療効果を観察する。治療期間の終わりに、フォローアップ期間に入る。
【0041】
3.研究の終了時間
研究の終了は、最後の被験者が最後の訪問を完了することとして定義する。
【0042】
二.試験の対象
(一)入選基準
以下の基準をすべて満たす患者は、本研究に選ぶことができる。
1.患者は本研究を十分理解し、自発的に参加し、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名する。
2.年齢18~70歳(上限と下限を含む)。
3.治療ナイーブの、組織病理学で診断されたPTCLは、次のサブタイプのいずれかである。
(1)非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)
(2)血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)
(3)未分化大T細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陽性
(4)未分化大T細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陰性
(5)登録可能であると研究者に判断され、治験依頼者により承認されるPTCLの他のサブタイプ
4.PET/CTで評価できるフルオロデオキシグルコース(FDG)に親和性を持つPTCLである。
5.ECOGスコアが0~1である。
6.実験室検査は、次の基準を満たす。
(1)絶対好中球数(ANC)≧1.5×10/L
(2)血小板(PLT) ≧75×10/L
(3)ヘモグロビン(HB)≧80g/L
(4)血清総ビリルビン(TBIL)≦正常上限(ULN)の1.5倍
(5)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦ULNの2.5倍
(6)血清クレアチニン(Scr)≦ULNの1.5倍
7.女性患者は、次のいずれかの条件を満たさなければならない。
(1)閉経者で、月経が少なくとも1年以上止まった。
(2)出産可能年齢の方は、次の条件を満たす必要がある。
a)本試験の登録前の血液妊娠検査の結果が陰性であった。
b)研究期間全体及び最終投与終了後の少なくとも12か月間に、認められている非常に効果的な避妊手段[定義:継続して正しく使用でき、年間失敗率が1%未満であり、例えば、排卵抑制と組み合わせた複合ホルモン(エストロゲンとプロゲステロンを含む)、排卵抑制と組み合わせたプロゲステロン避妊、子宮内避妊器具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、両側卵管結紮、精管切除である]の実施に同意する。
8.男性患者またはそのパートナーは、研究期間中、第7条に記載される非常に効果的な避妊手段の1つの実施に同意し、治療期間全体及び最後の投与の終了後の少なくとも12か月間内に効果的な避妊を行う。
【0043】
(二)除外基準
次の除外基準のいずれかを満たす者は、本研究の対象外である。
1.組織病理学は、次のサブタイプのいずれかである。
(1)節外性鼻型NK/T細胞リンパ腫(NKTCL)
(2)菌状息肉症(MF)/セザリー症候群(SS)、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫などの原発性皮膚T細胞リンパ腫
(3)成人T細胞白血病/リンパ腫などの白血病型PTCL
2.リンパ腫の白血病期(骨髄検査におけるリンパ腫細胞の割合が20%以上)の患者、または中枢神経系(CNS)への関与のある患者、または血球貪食症候群を併発している患者。
3.予想生存期間が6か月未満である。
4.アントラサイクリンまたはリポソーム薬に対するアレルギーの病歴がある。
5.シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンの使用には禁忌がある。
6.短期間または低用量のグルココルチコイド(短期間のグルココルチコイドは、プレドニゾン、又は換算後のプレドニゾン≦100mg/日であり、かつ7日未満であることを定義し、低用量のグルココルチコイドは、プレプレドニゾン、又は換算後のプレドニゾン≦30mg/日であることを定義する)を除く、抗リンパ腫の治療を受けた。
7.以下を含むがこれらに限定されない心機能障害または重大な心疾患がある。
(1)スクリーニング前の6ヶ月以内に、心筋梗塞、うっ血性心不全、ウイルス性心筋炎;不安定狭心症及び不整脈などの治療的介入を必要とする症状を伴う心疾患を発症した。
(2)心機能クラスがII~IV(ニューヨーク心臓協会心機能分類 NYHA)である。
(3)心エコー検査で検出された駆出率(EF)が50%または研究センターの下限値未満である。
(4)持続性心筋症の病歴がある。
(5)QTc>450ミリ秒であるか、または先天性QT延長症候群に罹患している。
8.B型の表面抗原が陽性であり、かつHBV-DNA力価が研究センターの上限値より高いか、またはC型肝炎(HCV)抗体が陽性であるか、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体が初期スクリーニングで陽性である。
9.スクリーニング前の4~6週間以内に外科大手術を受けたことがあるか、研究期間中に大手術を受ける予定がある。
10.スクリーニング前の4週間以内に重度の感染症が発生し、化学療法に適さないと研究者に判断される。
11.スクリーニング時にコントロールが不十分な高血圧を持つ。
12.スクリーニング時にコントロールが不十分な糖尿病を持つ。
13.スクリーニング前の3か月以内に活動性の内臓出血の病歴がある。
14.5年以内に悪性腫瘍の病歴があり、試験プランの実施または結果の分析に影響を与える可能性がある(治癒した皮膚基底細胞癌、非浸潤性子宮頸癌、非浸潤性乳癌、非浸潤性消化管粘膜癌、限局性前立腺がんを除く)。
15.固形臓器移植後。
16.精神疾患または認知障害の病歴がある。
17.薬物(医療目的外使用の麻薬、向精神薬)乱用、薬物(鎮静催眠薬、鎮痛薬、麻薬、覚せい剤、抗精神病薬など)依存の既往歴がある。
18.妊娠中または授乳中の女性。
19.本研究への参加が適切ではないと研究者に判断される。
【0044】
三.研究結果
本研究は現在、用量漸増段階にあり、予め設定された12mg/m、15mg/m、18mg/mの3つの用量群の用量増加試験を完了し、用量漸増の停止につながる事情はなかった。研究者は治験依頼者と連絡して議論した後、21mg/m用量群を追加した(3例登録済)。
【0045】
Lugano基準の2014年版に準じて、PET-CTによって治療効果評価を行った。
【0046】
計22例の治療ナイーブのPTCLの被験者は本研究に登録され、そのうち18例は治療中であり、4例は研究から離れた(疾患の進行があって離れたのは3例、治療効果が乏しかったため離れたのは1例である)。その中で、1回の治療効果評価(84日)を受けた13例の被験者を登録して下記のことを考察した。
【0047】
ミトキサントロン塩酸塩リポソーム(PLM60)の投与量は以下の表1に示すとおりである。
ビンクリスチン(粉末注射剤の規格が1mg/バイアルである)の用量は1.4mg/mであり、各サイクルの初日に静脈内注射し、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与後に投与する。
シクロホスファミド(粉末注射剤の規格が0.2g/バイアルである)の用量は750mg/mであり、各サイクルの初日に点滴静注し、ミトキサントロン塩酸塩リポソーム、ビンクリスチンの投与後に投与する。
プレドニゾン(錠剤の規格が5mg/錠である)の用量は、100mg/日であり、各サイクルの1日目から5日目に経口投与し、各サイクルの初日にはミトキサントロン塩酸塩リポソームの投与前に投与し、各サイクルの2日目~5日目にはプレドニゾンのみを投与する。
【0048】
評価結果は以下の表1に示すとおりである。
【表1】
【0049】
その結果として、本発明のミトキサントロン塩酸塩リポソームをシクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾンと組み合わせて上記の用量で使用すると、安全で耐えられ、毒性及び副作用が小さく、治療ナイーブのPTCL患者において高い総ORR率を得ることができる。ミトキサントロンリポソームの用量の増加に伴い、治療効果は向上する傾向を示した。現在、ほとんどの患者は1回の治療効果評価を受けているだけであり、投与サイクルの増加に伴い、治療効果がさらに向上すると予想される。その中では、ミトキサントロン塩酸塩リポソームの高用量群において、治療効果が臨床標準治療(CHOP療法)より優れていた。
【国際調査報告】