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特表2023-539604微細化改質粒状炭素材料及びそれを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】微細化改質粒状炭素材料及びそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20230908BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230908BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230908BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C01B32/05
C08L101/00
C08K3/013
C08L21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513481
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021073685
(87)【国際公開番号】W WO2022043470
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102020210801.3
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244562
【氏名又は名称】サンコール・インダストリーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・ポチュン
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・リューダー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・シュマウクス
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD37
4G146BA32
4G146BA49
4G146BC03
4G146BC23
4G146BC32B
4J002AA001
4J002AC001
4J002BB151
4J002DA016
4J002DA036
4J002FA086
4J002FD016
4J002GC00
4J002GM00
(57)【要約】
本発明は、微細化粒状炭素材料、並びにそれを製造する方法及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状炭素材料であって、
0.20Bq/g炭素を超えるが、0.45Bq/g炭素より低い14C含有率、
500μm未満かつ0.5μmを超える粒径分布のD50、及び
少なくとも0.05mmol/gかつ最大で0.4mmol/gのOH基密度
を有する粒状炭素材料であって、
アルカリ液体中の粒状炭素材料の溶解度が25%未満である
ことを特徴とする、粒状炭素材料。
【請求項2】
15質量%未満、好ましくは12質量%、10質量%、8質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%未満、2質量%以下の、かつ0.25質量%を超え、好ましくは0.5質量%を超え、更に好ましくは0.75質量%を超える灰分含有率を有することを特徴とする、請求項1に記載の粒状炭素材料。
【請求項3】
4質量%、3質量%未満、2質量%以下の、かつ0.25質量%を超え、好ましくは0.5質量%を超え、更に好ましくは、0.75質量%を超える灰分含有率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の粒状炭素材料。
【請求項4】
250μm未満、好ましくは100μm、特に好ましくは50μm未満の、かつ、好ましくは0.5μmを超え、更に好ましくは1μmを超え、特に好ましくは5μmを超え、一層好ましくは10μmを超える粒径分布のD50を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項5】
5μmを超え、一層好ましくは10μmを超える粒径分布のD50を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項6】
アルカリ液体中のその溶解度が15%未満、好ましくは10%未満であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項7】
アルカリ液体が好ましくはNaOH(0.1mol/l)の水溶液に相当し、可溶な割合が明細書中に記載された方法に従って求められることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項8】
少なくとも0.075mmol/g、特に好ましくは少なくとも0.1mmol/g、かつ最大で0.35mmol/g、特に好ましくは最大で0.3mmol/gのOH基密度を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項9】
0.23Bq/g炭素を超えるが、0.45Bq/g炭素より低い14C含有率を有し、及び/又は
DIN 53765-1994に従って測定可能なガラス転移温度はなく、及び/又は
灰分を含まない乾燥物質に対して60質量%から80質量%の間の炭素含有率を有し、及び/又は
DIN 53552に従って950℃で測定して30質量%を超える含有率の揮発性構成要素を有し、及び/又は
DIN 53552に従って200℃で測定して5質量%未満の含有率の揮発性構成要素を有する
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項10】
少なくとも5m/g、好ましくは少なくとも8m/g、更に好ましくは少なくとも10m/g、一層好ましくは少なくとも15m/g、特に好ましくは少なくとも20m/g、一層好ましくは少なくとも30m/g、特に少なくとも35m/g以上のBET表面積を有し、BET表面積が、好ましくは最大で200m/g、更により好ましくは最大で180m/g、更に好ましくは最大で150m/g、特に好ましくは最大で120m/gであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項11】
ジメチルスルフィド、グアイアコール及びメチルグアイアコール(クレオソール)の含有率がそれぞれ1mg/kg未満であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項12】
少なくとも2つのプロセス工程を含む方法であって、第1のプロセス工程において、請求項1から11のいずれか一項に記載の粒状炭素材料の前駆体に相当し、それとは異なる粒状炭素材料pCMが用意され、それは続いて第2のプロセス工程において、ガス雰囲気下での加熱によって改質され、それによって請求項1から11のいずれか一項に記載の粒状炭素材料を得ることができ、これは好ましくは臭気低減される、方法によって得ることができることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項13】
ガス雰囲気中での加熱の前に、第1のプロセス工程に従って得ることができる粒状炭素材料が500μm未満の、かつ0.5μmを超える粒径分布のD50を有していたことを特徴とする、請求項12に記載の粒状炭素材料。
【請求項14】
用いられる粒状炭素材料pCMのOH基密度が、第2のプロセス工程によるガス雰囲気中での加熱によって低減又は調節され、それによって請求項1又は8に定義されるOH基密度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の粒状炭素材料を得ることができることを特徴とする、請求項12又は13に記載の粒状炭素材料。
【請求項15】
第2のプロセス工程が、大気下ではなく、15体積%未満、好ましくは10体積%未満、更に好ましくは5体積%未満、特に好ましくは3体積%未満の酸素含有率を有する不活性ガスに富む空気からなるプロセス雰囲気の下で遂行され、酸素含有率が好ましくは少なくとも0.1体積%、特に好ましくは少なくとも0.5体積%、とりわけ好ましくは少なくとも1体積%であることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項16】
第1のプロセス工程において用意される粒状炭素材料pCMが、全体又は一部分が液体に溶解された出発原料、好ましくはリグニン系の出発原料の沈殿によって得られることを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項17】
第2のプロセス工程のプロセス温度が、以降の加工の温度及び/又は使用の温度より最大で50℃低くかつ最大で50℃高く、プロセス温度が最高温度を超えず、かつ最低温度未満に下がらないことを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項18】
第2のプロセス工程の後に得ることができる改質粒状炭素材料の粒径分布のD50が、第1のプロセス工程において用意される粒状炭素材料pCMの粒径分布のD50より、5倍、好ましくは最大で4倍、3倍、2.5倍、2倍、1.75倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍、大きいことを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載の粒状炭素材料。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の粒状炭素材料を製造する方法であって、少なくとも2つのプロセス工程を含み、第1のプロセス工程において、請求項1から11のいずれか一項に規定の粒状炭素材料の前駆体に相当し、それとは異なる粒状炭素材料pCMが用意され、それが続いて第2のプロセス工程においてガス雰囲気の下での加熱によって改質され、次いで、それによって請求項1から11のいずれか一項に記載の粒状炭素材料を得ることができ、これが好ましくは臭気低減される、方法。
【請求項20】
ポリマー混合物、特にエラストマー混合物等のゴム混合物中の添加剤としての、請求項1から18のいずれか一項に記載の粒状炭素材料の使用。
【請求項21】
少なくとも1種のゴム及び少なくとも1種の充填剤成分を含む加硫性ゴム組成物であって、充填剤成分が、請求項1から18のいずれか一項に記載の粒状炭素材料を少なくとも含む、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の加硫性ゴム組成物の加硫によって得ることができる加硫ゴム組成物であって、7日後のアルカリ液体中、25%未満の膨潤を示すことを特徴とする、加硫ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化改質粒状炭素材料、それらの製造の方法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化改質粒状炭素材料は、多くの応用分野において用いられる。これらは、黒色着色剤としての使用から、ポリマー、例えばエラストマー、熱可塑性又は熱可塑性エラストマー中の充填剤としての使用に及ぶ。そのような炭素系材料は、例えばカーボンブラック、すなわち比較的高い割合の炭素を有する材料であってもよい。他の粒状炭素材料は原料を再生長させることから得られる。カーボンブラックと比較して、そのような粒状炭素材料は、多少低い割合の炭素を有するが、高度の官能基化により興味ある性質を示す。原料の再生長に基づく粒状炭素材料の製造のための特別に興味のある出発原料は、完全に又は部分的に溶液にすることができる出発原料、例えば糖、デンプン又はリグニンである。原料の再生長に基づくそのような完全に又は部分的に溶解される出発原料は、沈殿プロセスによって粒状炭素材料に変換することができる。溶解された粒状炭素材料の製造のための沈殿プロセスは、当業者に十分に知られている。
【0003】
例えば、リグニン系の粒状炭素材料は、例えば、液体水酸化ナトリウム中に溶解されたリグニンから、CO又はHS等の酸性ガスの導入による沈殿によって、又はHSO等の酸の添加によって得ることができる。この先行技術についての例は国際公開第2006031175号、国際公開第2006038863号又は国際公開第2009104995号に挙げられる。
【0004】
更に、リグニン系の粒状炭素材料は、塩基、例えば液体水酸化ナトリウムに溶解されたリグニンから、温度を例えば水熱炭化条件に上げ、同時安定化を伴う沈殿させることによって得ることができる。この先行技術についての例は、国際公開第2016/020383号又は国際公開第2017/085278号に記載されている。酸性ガスの導入による、酸の添加による、又は温度の上昇による沈殿のための方法は、更に組み合わせることができる。
【0005】
粒状炭素材料の製造において、一定のプロセスパラメーターの調節は、特に得られる粒径(すなわち得られる凝集体のサイズ、それは一次粒子から構築され得る)又は粒径分布、並びに表面パラメーター、特に、比表面積(またそれは一次粒径の尺度としても使用される)の調節において影響を及ぼす可能性を広げる。
【0006】
粒径又は粒径分布は、例えばふるい分析、又はレーザー回折によって定量することができる。例えば、乾燥した粒状炭素材料についてのふるい分析はDIN 66165に従って遂行されてもよい。レーザー回折は、例えば、水中に分散した粒状炭素材料について、ISO13320に従って遂行されてもよい。
【0007】
一次粒径は、例えばBET測定又はSTSA測定等の比表面積の測定のための方法によって定量されてもよい。ここで、BET測定は、外側及び内側の表面積の合計を求めるが、STSA測定は外側の表面積のみを求める。適切な測定方法は、例えば、ASTM D 6556-14に与えられる。脱ガス温度を選ぶ場合、粒状炭素材料の検査のために約150℃の値に設定すべきであることに注意しなければならない。
【0008】
一次粒子の平均サイズ又は比表面積のサイズは、粒状炭素材料を使用して製造される材料、例えば後続の架橋を伴うエラストマーとの粒状炭素材料の配合により製造されるゴム用品の性質に影響を有することは公知である。例えば、ゴム用品の摩耗特性は、より大きい又はより小さいBET表面積を有する粒状炭素材料が用いられるかに応じて異なる。状況は、引張強度等の機械的性質について類似している。BET表面積としてより大きい値は、より大きい引張強度値及びより低い摩耗と相関する。ここで、粒状炭素材料が用いられる場合、少なくとも5m/g、好ましくは少なくとも8m/g、更に好ましくは少なくとも10m/g、一層好ましくは少なくとも15m/g以上の比表面積値が、しばしば高品質ゴム用品を得るために必要とされる。
【0009】
しかし、例えば原料の、特に全体又は一部分が溶解されるリグニン系の粒状炭素材料の再生長に基づく原料の沈殿によって得られる公知の粒状炭素材料の不都合は、粒状炭素材料自体から発する、粒状炭素材料の加工中に放出される、及び/又は、粒状炭素材料を含む材料から発する不快臭である。これは、粒状炭素材料の可能性のある適用を厳しく限定するが、これはそれ自体非常に興味深い。
【0010】
リグノセルロース系材料の不快臭は、特に、木材の加工中に形成されるリグニン、ヘミセルロース及びセルロース及び他の木材構成要素(例えば樹脂)の熱分解又は化学分解プロセスによってもたらされる。
【0011】
不快臭をもたらす化合物は、硫黄含有物質、例えばジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド又はジメチルテトラスルフィド、又は例えばフェノール、グアイアコール、エチルグアイアコール等のフェノール性物質を含む。
【0012】
更に、様々な揮発性有機化合物が放出される。揮発性有機化合物は、またVOCとしても知られ、容易に蒸発する揮発性有機物質を含むか、又は室温等の低温でガスとして既に存在する。揮発性有機化合物VOCは既に木材材料中に存在し、加工中にそこから放出されるか、又は、現在の知識によれば、それらは脂肪酸の分解によって形成され、それが次に木材の分解物になるかのどちらかである。加工中に生じる典型的な変換生成物は、例えば高級アルデヒド又は、やはりまた有機酸である。特に木材成分のセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの分解物として結果的に有機酸が生じ、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸等、ほとんどのアルカン酸又は芳香族酸が形成される。アルデヒドは加水分解加工中にセルロース又はヘミセルロースの基本構成単位から形成される。したがって、例えば、アルデヒドフルフラールは、セルロース及びヘミセルロースの単糖類及び二糖類からそれぞれ形成されるが、芳香族アルデヒドはリグニンの部分的加水分解の消化中に放出され得る。放出される他のアルデヒドはとりわけ、高級アルデヒド、ヘキサナール、ペンタナール又はオクタナールである。
【0013】
リグニン系の粒状炭素材料の臭気低減のための方法は、先行技術において公知である。一方で、これらは、例えば抽出プロセス(国際公開第2013/101397号)によるリグニンの予備精製、酵素触媒反応(独国特許出願公開第10 2006 057566号)、後続の洗浄を含む酸化成分を用いる処理(独国特許出願公開第10 1013 001678号)に、他方では、例えば蒸発プロセスによる黒液の処理、還元剤又は酸化剤又はまた塩素化反応を用いる処理並びに高温処理に依存する。しかし、そのような方法は、比較的大量の材料の処理を必要とするか、又は、それらは、化学薬品の使用を伴い、それは、設備及び金融費用の両方の観点で不利である。
【0014】
高い温度で熱水で炭化されたリグニンを処理する方法は、例えば、欧州特許第3053929号から公知である。欧州特許第3053929号において、熱水で炭化されたリグニンは、最終処理の目的で、例えば、活性化において、好ましくは不活性ガスの下で安定化が施される。水熱炭化は150℃から300℃の間、好ましくは150℃~250℃の温度で実行される。安定化は適温で行われ、この温度は、水熱炭化の温度より少なくとも30℃高い。安定化の温度は、200から700℃、好ましくは300から600℃の間、理想的には500~600℃に存在する。したがって、330℃の安定化の最低温度は、結果として300℃の水熱炭化の温度であり、280℃の安定化の温度は、結果として250℃の水熱炭化の温度である。ここで、加熱速度は0.1から20℃/分の間にある。プロセスにおいて、ガス(主として酸素及び水素)は材料から抜け、好ましくは加工中減圧される。この熱処理の目的は、活性炭を製造するために、最終加工、好ましくは活性化のために調製されるように、熱水で炭化されたリグニンを安定させることである。
【0015】
高い温度で木材の臭気を低減する方法は、例えば、欧州特許第3170635号から公知である。このプロセスにおいて、150から200mmの間の長さ、15から20mmの間の幅及び0.5から2mmの間の厚さを有する長い木材チップが、1から5時間の間の継続期間の間、酸素に乏しいか無酸素の雰囲気中150℃から300℃の間の温度で焙られる。質量損失は10から30%の間である。
【0016】
したがって、更なる加工用化学薬品の使用なしで、好ましくは既に得られた粒状炭素材料を処理することによって、粒状炭素材料自体から発する、粒状炭素材料の加工中に放出される、及び/又は粒状炭素材料を含む材料から発する臭気の削減目標を可能にする方法を提供することができることは望ましい。このように、設備の観点でコスト及び負担を低減することができるが、同時に、加工される材料の量が低下する。しかし、そのようなプロセスの別の要件は、粒状炭素材料の望ましい性質、例えば、粒径若しくは粒径分布、又は一次粒径若しくは比表面積が、臭気低減処理中に失われてはならないということである。
【0017】
しかし、例えば、原料の再生長に基づく完全に又は部分的に溶解した出発原料の、特にリグニン系の粒状炭素材料の沈殿によって得られる公知の粒状炭素材料の別の不都合は、それらの高い極性である。これは、それらが有意差のある極性を有する材料に使用される場合、殊に添加剤、試薬又は充填剤として、それ自体では非常に興味深い粒状炭素材料の可能な適用を厳しく限定する。
【0018】
したがって、粒状炭素材料の極性が、好ましくは既に得られた粒状炭素材料の処理により、選択的に調節することができる方法を提供することができることも望ましい。このように、コスト及び負担は、設備の観点では低減することができるが、同時に加工される材料の量は低下する。しかし、そのような方法の別の要件は、粒状炭素材料の望ましい性質、例えば、粒径若しくは粒径分布、又は一次粒径若しくは比表面積が、極性を調節するための処理中に失われてはならないということである。
【0019】
また、粒状炭素材料が既に価値のある生成物であるので、材料の損失は多過ぎてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2006031175号
【特許文献2】国際公開第2006038863号
【特許文献3】国際公開第2009104995号
【特許文献4】国際公開第2016/020383号
【特許文献5】国際公開第2017/085278号
【特許文献6】国際公開第2013/101397号
【特許文献7】独国特許出願公開第10 2006 057566号
【特許文献8】独国特許出願公開第10 1013 001678号
【特許文献9】欧州特許第3053929号
【特許文献10】欧州特許第3170635号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Determination of surface- accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cationic dye adsorption; Bioresource Technology, 2014, 169: 80~87頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明は、対応する粒状炭素材料、並びに上に記載の粒状炭素材料を提供することができるようにその製造のための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は特許請求の範囲に定義される主題によって達成される。本発明の好ましい実施形態及び更なる態様は、更なる請求項及び以下の詳細な説明において与えられる実施形態に由来する。
【0024】
詳細には、本発明の第1の主題は、
0.20Bq/g炭素を超えるが、0.45Bq/g炭素より低い14C含有率、
500μm未満かつ0.5μmを超える粒径分布のD50、及び、
少なくとも0.05mmol/gかつ最大0.4mmol/gのOH基密度
を有する粒状炭素材料であって、
アルカリ液体中の粒状炭素材料の溶解度は25%未満である、
粒状炭素材料である。
【0025】
本発明の別の主題は、少なくとも2つのプロセス工程を含む本発明に従って粒状炭素材料を製造する方法であり、第1のプロセス工程において、本発明による粒状炭素材料の前駆体に相当し、それとは異なる粒状炭素材料pCMが用意され、それは続いて第2のプロセス工程において、ガス雰囲気の下での加熱によって改質され、次いで、それによって本発明による粒状炭素材料は得ることができ、これは好ましくは臭気低減される。
【0026】
本発明の別の主題は、ポリマー混合物、特にエラストマー混合物等のゴム混合物中の添加剤としての粒状炭素材料の使用である。
【0027】
本発明の別の主題は、少なくとも1種のゴム及び少なくとも1種の充填剤成分を含む加硫性ゴム組成物であり、ここで、充填剤成分は、少なくとも本発明による粒状炭素材料を含む。
【0028】
本発明の別の主題は、加硫性ゴム組成物の加硫によって得ることができ、アルカリ液体中で7日後25%未満の膨潤を有する加硫ゴム組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の方法は、臭気が低減され及び/又はOH基が低減され(すなわち、極性が低減した)、原料の再生長に基づく出発原料から製造された微細化粒状炭素材料の製造を可能にする。上に言及したように、そのような粒状炭素材料は本発明の別の主題である。
【0030】
本発明による方法の特徴的な特色は、例えば、第1のプロセス工程において、微細化粒状炭素材料(以後、pCMと称する)が好ましくは得られ、その臭気は、第2のプロセス工程において低減され、それによって臭気低減pCMが得られることである。
【0031】
本発明による方法の特徴的な特色は、例えば、第1のプロセス工程において、微細化粒状炭素材料(以後、pCMと称する)が得られ、そのOH基密度(特に材料の表面の)は、第2のプロセス工程において低減され、好ましくは調節されて、それによってOH基が低減したpCMが得られることである。
【0032】
本発明による方法によって、臭気が低減されOH基密度が低減され、好ましくはOH基密度が調整されたpCMを得ることもまた可能である。この点で、第2のプロセス工程は、臭気低減を、OH基密度の低減、好ましくは調節と組み合わせることができる。以下において、改質pCMは、臭気低減pCM又はOH基が低減されたpCM、又は臭気低減に加えてOH基低減されたpCMとして理解されるべきである。改質pCM又は微細化改質pCMは、このように本発明による粒状炭素材料に相当し、第2のプロセス工程の後に得られる。微細化pCM又はpCM(両方ともそれぞれまだ改質されていない)は、このように本発明の粒状炭素材料の前駆体に相当し、第1のプロセス工程の後に得られ、第2のプロセス工程において用いられる。
【0033】
本発明によると、微細化pCMは、第1のプロセス工程において好ましくは液体の存在下で、特に好ましくは水の存在下で得られ、第2のプロセス工程において好ましくはガス雰囲気中で改質pCMに変換される。本発明によると、微細化pCMからの液体の分離は、好ましくは第1及び第2のプロセス工程の間で行われる。
【0034】
本発明による粒状炭素材料(改質pCM)及びその前駆体(pCM)の両方はそれぞれ、本発明の文脈においては、好ましくはまた「微細化(された)」とも称する。「微細化(された)」という用語は、以後BET表面積、STSA表面積及び粒径分布のD50の関数としてそれぞれ定義される。特に好ましくは、本発明の意味で「微細化(された)」とは、それぞれの粒状炭素材料が、500μm未満かつ0.5μmを超える粒径分布のD50(D50値)を有することを意味する。以後定義されるように、この微細化はPSD微細化とも称する。
【0035】
既に上に言及されたように、本発明による粒状炭素材料は、本発明の文脈において好ましくは「改質(された)」粒状炭素材料又は改質pCMとも称する。この意味で、用語「改質(された)」とは、炭素材料が、本発明による粒状炭素材料と異なる出発原料として用いられる、微細化粒状炭素材料pCMから得られたことを意味する。本発明による粒状炭素材料は、特に、ガス雰囲気中で出発原料を熱することにより得ることができる点で、出発原料pCMとして用いられる微細化粒状炭素材料pCMと異なる。加熱によって、上に言及された改質が達成される。本発明の文脈において、本発明による粒状炭素材料はまた、好ましくは微細化改質粒状炭素材料と称する。上記の表明はこの点で累積的に当てはまる。
【0036】
本発明によると、微細化pCMのモルフォロジーは、第2のプロセス工程においてほんのわずかに変化する。したがってまた、改質pCMの微細化が第1のプロセス工程の後に既に実質上達していることは本方法、及び本発明による粒状炭素材料にとって特徴的である。したがって、本発明の第2のプロセス工程は、pCMの微細化はほとんど変化せず、微細化pCMの実質上臭気のみが低減され、及び/又は、微細化pCMのOH基密度は低減又は調節されるように構成される。
【0037】
第1のプロセス工程の後の微細化pCMが少なくとも5m/g、好ましくは少なくとも8m/g、更に好ましくは少なくとも10m/g、一層好ましくは少なくとも15m/g、特に好ましくは少なくとも20m/g、一層好ましくは少なくとも30m/g、特に少なくとも35m/g以上のBET表面積を有する場合、有利であることが示された。有利には、BET表面積は、最大で200m/g好ましくは最大で180m/g、更に好ましくは最大で150m/g、特に好ましくは最大で120m/gである。以下において、BET表面積の観点で記載の微細化はBET微細化と称する。
【0038】
有利には、微細化pCMのBET表面積は、最大でもわずか20%、好ましくは最大で15%、より好ましくは最大10%、そのSTSA表面積と異なる。したがって、pCMは好ましくは低い空隙率のみを有する。BET表面積の測定の代替法として、STSA表面積も使用されてもよい。以下において、STSA表面積の観点で記載の微細化はSTSA微細化と称する。
【0039】
更に、微細化pCMが、第1のプロセス工程の後、500μm未満、好ましくは250μm未満、更に好ましくは100μm未満、特に好ましくは50μmの粒径分布のD50を有する場合、有利であることが示された。有利には、微細化pCMの粒径分布のD50は、0.5μmを超え、より好ましくは1μmを超え、特に好ましくは5μmを超え、一層好ましくは10μmを超える。D50は、粒子の50%が表示値より小さいことを意味する。以下において、PSDの観点で記載の微細化は、PSD微細化と称する。
【0040】
したがって、微細化pCM及び改質pCMの微細化は、そのPSD微細化及び/又はBET微細化、及び/又は、STSA微細化によって記載されてもよい。
【0041】
本発明による方法の1つの構成は以下を特徴とする。
- 第1のプロセス工程において、微細化pCMは、液体の存在下で得られ、
- それは第2のプロセス工程においてガス雰囲気中で改質pCMに変換され、
- 第1のプロセス工程及び第2のプロセス工程の間で、微細化pCMからの液体の分離が行われ、
- 第2のプロセス工程の後の改質pCMの微細化は、第2のプロセス工程の前に微細化pCMの微細化より最大で5倍小さく、及び/又は、
- 第2のプロセス工程の前の微細化pCMの臭気と比較して、第2のプロセス工程後、改質pCMの臭気が低減され、及び/又は
- 第2のプロセス工程の後の改質pCMのOH基密度は、第2のプロセス工程の前の微細化pCMのOH基密度と比較して低減される。
【0042】
pCMの微細化は、第2のプロセス工程中に最大で5倍、好ましくは最大で4倍、3倍、2.5倍、2倍、1.75倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍低下する。
【0043】
微細化の低下は、以下を意味する。
- 改質pCMの粒径分布のD50は、最大で5倍、好ましくは最大で4倍、3倍、2.5倍、2倍、1.75倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍、微細化pCMの粒径分布のD50より大きく、及び/又は
- 改質pCMのBET表面積は、最大で100%、好ましくは最大で5倍、好ましくは最大で4倍、3倍、2.5倍、2倍、1.75倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍、微細化pCMのBET表面積より小さく、及び/又は
- 改質pCMのSTSA表面積は、最大で100%、好ましくは最大で5倍、好ましくは最大で4倍、3倍、2.5倍、2倍、1.75倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍、微細化pCMのSTSA表面積より小さい。
【0044】
好ましくは、BET表面積又はSTSA表面積が第2のプロセス工程において減少する係数は、粒径分布のD50が第2のプロセス工程において増加する係数より小さい。
【0045】
更に、第1のプロセス工程の後の微細化pCMが、15質量%未満、好ましくは12質量%未満、10質量%、8質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%の灰分含有率を有する場合、有利なことが示された。有利には、微細化pCMの灰分含有率は、0.25質量%を超え、好ましくは0.5質量%を超え、より好ましくは0.75質量%を超える。
【0046】
なおその上に、微細化pCMは、好ましくは(灰分を含まない乾燥物質(灰分を含まない乾燥物質含有率)に対して)40~80質量%(質量%)の、好ましくは50~80質量%、より好ましくは60から80質量%未満の炭素含有率を示す。
【0047】
微細化pCMは、なおその上に、好ましくは少なくとも0.1mmol/g、好ましくは少なくとも0.15mmol/g、特に好ましくは少なくとも0.2mmol/g、かつ最大で0.6mmol/g、好ましくは最大で0.55mmol/g、特に好ましくは最大で0.5mmol/gのOH基密度を示す。
【0048】
微細化pCMは、更に好ましくは少なくとも1 OH/nmBET表面積、好ましくは少なくとも1.5 OH/nmBET表面積、特に好ましくは少なくとも1.75 OH/nmBET表面積、及び最大で15 OH/nmBET表面積、好ましくは最大で12 OH/nmBET表面積、特に好ましくは最大で10 OH/nmBET表面積のOH基密度を示す。材料表面のOH基密度(OH/nmに加えてmmol/g両方で)の測定は、Sipponenらによって実行される。(Determination of surface- accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cationic dye adsorption; Bioresource Technology, 2014, 169: 80~87頁)。
【0049】
以下において、微細化pCMを得るための第1のプロセス工程の好ましい実施形態が記載される。本発明の文脈において、この第1のプロセス工程は第2のプロセス工程直前に行われるか、又はこの第1の工程が、時間の観点で第2より有意に先に行われるか(例えば、第1の工程からのpCMが別々に製造され、次に第2の工程に施される前に貯蔵又は輸送されるように)は重要ではない。
【0050】
好ましくは、微細化pCMは、第1のプロセス工程において、全体又は一部分が液体に溶解された出発原料の沈殿によって得られる。
【0051】
この目的のために、出発原料は、好ましくは、第1のプロセス工程の前に液体に、好ましくは水に、全体又は一部分が溶解される。更に好ましくは、第1のプロセス工程の前の溶解された出発原料は、50%を超え、好ましくは60%、70% 75%、80%、85%を超える糖(炭水化物)、デンプン又はリグニンからなる。
【0052】
糖分の測定はTAPPI T 249cm-00の方針に沿って実行される。
【0053】
デンプン含有率の測定はTAPPI T 419の方針に沿って実行される。
【0054】
Klasonリグニン含有率の測定はTAPPI T222オーム-02の方針に沿って実行される。酸可溶性リグニン含有率の測定はTAPPI T250 UM 250の方針に沿って実行される。下記において、Klasonリグニン及び酸可溶性リグニンの合計はリグニン含有率と称する。
【0055】
リグノセルロースを含み、例えば出発原料として適切な液体は、結果として、例えば、大量の木材が加工されるパルプ産業において廃棄物として生じる。木材加工の方法に応じて、それは、通常黒液に溶解したKRAFTリグニンとして加水分解リグニンとして、又はリグニンスルホナートとして、大量に生じる。それぞれの加工方法におけるpH値に応じて、リグニンに典型的なヒドロキシル基中の水素原子は、金属陽イオンと比例して置き換えられてもよい。厳密に言えば、リグニンスルホナートは、それが加工中に導入された追加のスルホナート基を呈するので、既にリグニンの化学的誘導体である。
【0056】
したがって、本方法の一実施形態において、黒液は出発原料として用いられるリグノセルロース含有液体として使用される。黒液は、バイオマスのアルカリ細分化プロセスにおいて、例えばKRAFTプロセス又は水酸化物プロセスにおいて廃液として結果として得られたリグニン含有液体である。黒液のpH値は通常12-14のpH値でアルカリの範囲にある。黒液はリグニンに加えて有機又は無機の構成要素を更に含むことができる。黒液の特徴は、有機乾燥物質中のリグニンの割合が、50%を超え、特に60%を超え、又は更に70%を超え、したがって、15%~35%で存在する木質バイオマス中のリグニンの割合より著しく高いことである。
【0057】
出発原料が50%を超えるリグニンからなる場合、その場合には微細化pCMは、好ましくは全体又は一部分が液体に溶解したリグニンの沈殿によって、酸性ガスの導入によって及び/又は酸の添加によって及び/又は沈殿によって得られる。そのような方法は原則としては当業者に公知であり、国際公開第2006031175号又は国際公開第2006038863号又は国際公開第2009104995号に記載されている。有利には、これらの方法は、第1のプロセス工程の後、上に記載の粒径分布、BET表面積及び/又はSTSA表面積を特徴とする微細化pCMが存在するように制御される。
【0058】
代替として、出発原料が50%を超えるリグニンからなる場合、微細化pCMは、好ましくは水熱炭化(HTC)の条件下での沈殿及び同時安定化によって得られる。そのようなプロセスは、原則として当業者に公知であり、国際公開第2016/020383号又は国際公開第2017/085278号に記載されている(沈殿及び同時安定化)。有利には、これらの方法は、第1のプロセス工程の後、上に記載の粒径分布、BET表面積及び/又はSTSA表面積を特徴とする微細化pCMが存在するように制御される。
【0059】
代替として、微細化pCMは、好ましくは第1のプロセス工程において固体出発原料からの、好ましくは木材又はわらからの加水分解によって得られる。プロセスにおいて、固体出発原料は、加水分解前及び/又は加水分解中に、第1のプロセス工程の後に、上に記載の粒径分布、BET表面積及び/又はSTSA表面積を特徴とする微細化pCMとしてそれが存在するのと同じ程度に粉砕される。出発原料中に含まれる炭水化物は加水分解中に溶液を通過するので、微細化pCMは、出発原料と比較してリグニン含有率が増加する。加水分解によって得られるそのような微細化pCMは、有利には、60質量%を超え、好ましくは65質量%を超え、特に好ましくは70質量%を超えるリグニン含有率を有する。有利には、これらの方法は、第1のプロセス工程の後、上に記載の粒径分布、BET表面積、及び/又は、STSA表面積を特徴とする、微細化pCMが存在するように制御される。
【0060】
以下において、第2のプロセス工程の好ましい実施形態が記載される。上に言及されたように、第1のプロセス工程の後に得られる、微細化pCMは、第2のプロセス工程による本発明に従って微細化改質pCMに変換することができる。
【0061】
本発明によると、pCMは、第2のプロセス工程においてガス雰囲気中で改質pCMに変換される。
【0062】
有利には、第2のプロセス工程は大気下でではなくプロセス雰囲気の下で行われる。プロセス雰囲気は、例えば、以下を意味すると理解されている。
- 15体積%未満、好ましくは10体積%未満、更に好ましくは5体積%未満、特に好ましくは3体積%未満の酸素含有率を有する不活性ガスに富む空気;不活性ガスに富む空気の絶対圧は、必要に応じて選択することができ、好ましくは最大で2000mbar、更に好ましくは最大で1500mbar、好ましくは少なくとも100mbar、更に好ましくは少なくとも200mbar、250mbar、500mbar、750mbarである。
- 不活性ガス;不活性ガスの絶対圧は、必要に応じて選択されてもよく、好ましくは最大で2000mbar、更に好ましくは最大で1500mbar、好ましくは少なくとも100mbar、更に好ましくは少なくとも200mbar、250mbar、500mbar、750mbarである。
- 750mbar未満、好ましくは500mbar未満、更に好ましくは250mbar未満、幾つかの事例で100mbar未満の圧力を有する減圧空気。
【0063】
有利には、不活性ガスに富む空気からなるプロセス雰囲気の酸素含有率は、少なくとも0.1体積%、好ましくは少なくとも0.5体積%、特に好ましくは少なくとも1体積%である。
【0064】
本発明の意味で適切な不活性ガスは、特に第2のプロセス工程中にpCMから放出される窒素、二酸化炭素、過熱水蒸気又はガスである。第2のプロセス工程中にpCMから放出されるガスは、また例えば、一酸化炭素、水素、メタン又は硫化水素等を含むが、この文書においてそれを不活性ガスと称する。不活性ガスに富む空気を使用する場合、又はプロセス雰囲気として不活性ガスを使用する場合、既に上記に示されたように、圧力はそれぞれの可能性又は要件によって選択されてもよい。設備の観点で最も単純な方法は、大気圧、又は単に少しだけ負圧又は陽圧で、例えば±50、好ましくは±25mbar、特に好ましくは±10mbarでプロセスを実行することである。
【0065】
第2のプロセス工程は、好ましくは(例えば温度プロフィール、最高温度、プロセス雰囲気の選択、可能性として圧力の選択によって)第2のプロセス工程においてpCMの質量損失が、20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%未満、3%以下となるように制御される。一定の質量損失は、匂い物質の含有率を低減するために及び/又はOH基密度を低減、好ましくは調節するために、本発明による方法の第2のプロセス工程中に必要となる。この質量損失は、通常少なくとも1%以上、好ましくは少なくとも2%以上、幾つかの事例において5%以上である。このことで、失われる材料が多過ぎず、他方では、所望の臭気低減及び/又はOH基密度の低減が達成されることを保証し達成する。このようにして、例えば、エラストマー中に充填剤として使用される改質pCMの適合性も保証することができる。
【0066】
第2のプロセス工程のプロセス雰囲気の選択には無関係に、第2のプロセス工程のプロセス温度は最低温度を超えるべきであり、最高温度を超えるべきでない。最高温度は、300℃、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃、特に好ましくは235℃以下、一層好ましくは230℃以下、特に好ましくは225℃、幾つかの好ましい事例において220℃、更に好ましくはまた210℃、まれな事例では更に200℃以下である。最低温度は、80℃、好ましくは100℃、好ましくは120℃、好ましくは130℃以上、更に好ましくは150℃以上、特に好ましくは160℃以上、殊に好ましくは170℃以上、幾つかの事例において180℃以上である。第2のプロセス工程においてプロセス温度でプロセス雰囲気中にpCMが保持される滞留時間は、広い範囲にわたり選択されてもよい。適切な値は、1秒以上、かつ5時間以下である。好ましくは、滞留時間は60分以下である、更に好ましくは30分以下、特に好ましくは15分以下、幾つかの事例において10分未満である。第2のプロセス工程の連続作業に関しては、滞留時間は平均滞留時間として理解されるべきである。
【0067】
好ましくは、微細化pCMのOH基密度は第2のプロセス工程中に調節される。有利には、この調節は、プロセス温度を選択することにより、好ましくはプロセス雰囲気と組み合わせて、特に好ましくはプロセス雰囲気の酸素含有率を調節することにより行われる。
【0068】
例えば、好ましくは250℃未満、より好ましくは240℃未満、特に好ましくは235℃未満、一層好ましくは230℃未満、特に好ましくは225℃未満、幾つかの好ましい事例において220℃未満、一層好ましくはまた210℃未満、まれな事例において更に200℃未満の低いプロセス温度を、酸素含有率の調節と組み合わせることによって、OH基密度は、材料を高熱のストレスにさらさずに、狙った通りに調節することができる。これによって、可能な限り、微細化は保存され、可能な限り、臭気は低減され、その上、OH基密度は調節される。
【0069】
pCMが第2のプロセス工程において滞留時間中にプロセス雰囲気下で処理されるだけでなく、加熱及び冷却もまたプロセス雰囲気下で行うことが有利であるとわかった。
【0070】
pCMが、第1のプロセス工程において軟材リグニンから、例えば、水熱炭化条件下の組み合わせた安定化を用いる沈殿によって得られた場合、わずか10%以下の質量損失を、250℃以下の処理の最高温度で、約5m/g以下のBET表面積の同時損失を伴って達成することができる(すなわち、pCMが40m/gのBET表面積を有する場合、これは最大35m/gに相当する)。同時に、臭気試験は、不快臭の発生の有意な低下を示す。それ自体臭気低減pCMについてだけでなく、また充填剤としての臭気低減pCMを用いたゴム用品の製造中に、それに加えてゴム用品についても、第2のプロセス工程を経験していないpCMを用いた別のものと比べてこの低下が見出された。
【0071】
本発明による方法は、このように望ましい臭気極小化及び/又はOH基密度の低減と、同時に最大限所望される材料の性質の保存と、並びに質量損失との間良好なバランスを達成することができる。このためにプロセス化学薬品の使用も複雑な手順も必要ではない。また、本発明による処理の最高温度は、比較的低い範囲にあり、それは、コスト及びプロセス制御両方の観点で有利である。
【0072】
好ましくは、第2のプロセス工程は、移動床、流動床、又は同伴流において実行される。更に、好ましくは、第2のプロセス工程は液体の分離と組み合わせてもよい。有利には、液体の分離は、少なくとも一部はその蒸発によって行われる。有利には、液体の蒸発は、微細化pCMが蒸発の間に少なくとも35℃の温度、好ましくは少なくとも40℃に到達するように、>80%、好ましくは>85%の乾燥物質含有率まで実行される。
【0073】
有利には、液体の蒸発は、微細化pCMが蒸発の間に最大で130℃の温度、好ましくは最大で125℃、更に好ましくは最大で120℃、特に好ましくは最大で115℃、一層好ましくは最大で95℃、特に最大で90℃に到達するように、>80%、好ましくは>85%の乾燥物質含有率まで実行される。有利には、微細化pCMは、それが、85%を超える、更に好ましくは90%を超える、特に好ましくは95質量%を超える乾燥物質含有率を有する場合に限り第2のプロセス工程のプロセス温度に昇温される。
【0074】
既に上に記載のように、好ましくはリグニンに基づき、本発明に従って得られた改質pCM、好ましくは沈殿又は、例えば水熱炭化の条件下で組み合わせた安定化を用いる沈殿によって得られた改質pCMは、またゴム混合物中の使用が提案される。
【0075】
本発明の文脈において、また、それは本発明に従って製造された改質pCMはまた、極性又は疎水性に改質され、例えば、先行技術に従って製造されたpCMより疎水性又は低極性のエラストマー化合物における使用に適合することが示された。好ましくは、改質pCMを含むエラストマー化合物は、条件付きで、アルカリ液体中でのみ膨潤する。好ましくは、媒質中で7日後に改質pCMを含むエラストマー化合物の質量増加は、25%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満である。
【0076】
上に言及されたように、本発明の第1の主題は、特に本発明による方法によって提供される改質pCM、すなわち、
0.20Bq/g炭素を超えるが、0.45Bq/g炭素より低い14C含有率、
500μm未満かつ0.5μmを超える粒径分布のD50、
少なくとも0.05mmol/gかつ最大0.4mmol/gのOH基密度を有する、
アルカリ液体中の粒状炭素材料の溶解度が25%未満である粒状炭素材料である。
【0077】
好ましくは、本発明による粒状炭素材料は、
- 0.23Bq/g炭素を超えるが、好ましくは0.45Bq/g炭素より低い14C含有率を有し、及び/又は
- 灰分を含まない乾燥物質に対して60質量%から80質量%の間の炭素含有率を有し、及び/又は
- DIN 53765-1994に従って測定可能なガラス転移温度はなく、及び/又は
- DIN 53552に従って950℃で測定して30質量%を超える揮発性構成要素の含有率を有し、及び/又は
- DIN 53552に従って200℃で測定して5質量%未満の揮発性構成要素の含有率を有する。
【0078】
有利には、改質pCMのBET表面積は少なくとも5m/g、少なくとも8m/g、更に好ましくは少なくとも10m/g、一層好ましくは少なくとも15m/g、特に好ましくは少なくとも20m/g、一層好ましくは少なくとも30m/g、特に少なくとも35m/g以上である。有利には、改質pCMのBET表面積は最大で200m/g、好ましくは最大で180m/g、更に好ましくは最大で150m/g、特に好ましくは最大で120m/gである。
【0079】
有利には、改質pCMのBET表面積は、最大でもわずか20%、好ましくは最大で15%、より好ましくは最大で10%、そのSTSA表面積と異なる。したがって、改質pCMは好ましくはわずかな空隙率を有する。
【0080】
改質pCMの粒径分布のD50は、500未満μm、好ましくは250μm未満、更に好ましくは100μm未満、特に好ましくは50μm未満である。有利には、改質pCMの粒径分布のD50は、0.5μmを超え、好ましくは1μmを超え、特に好ましくは5μmを超え、一層好ましくは10μmを超える。特に好ましくは、改質pCMの粒径分布のD50は、5μmを超え、一層好ましくは10μmを超える。
【0081】
有利には、改質pCMは、15質量%未満、好ましくは12質量%未満、10質量%、8質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%以下の灰分含有率を有する。有利には、改質pCMの灰分含有率は、0.25質量%を超え、好ましくは0.5質量%を超え、更に好ましくは0.75質量%を超える。特に好ましくは、改質pCMは、4質量%、3質量%未満、2質量%以下、かつ0.25質量%を超え、好ましくは0.5質量%を超え、更に好ましくは0.75質量%を超える灰分含有率を有する。
【0082】
なおその上に、改質pCMは、少なくとも0.05mmol/g、好ましくは少なくとも0.075mmol/g、特に好ましくは少なくとも0.1mmol/gのOH基密度を示す。改質pCMは、最大で0.4mmol/g、好ましくは最大で0.35mmol/g、特に好ましくは最大で0.3mmol/g、幾つかの事例において0.25mmol/g未満の、まれな事例において0.2mmol/g未満のOH基密度を示す。
【0083】
改質pCMは、条件付きでアルカリ液体中にのみ可溶である。改質pCMの溶解度は、25%未満、好ましくは15%未満、特に好ましくは10%未満である。可溶な割合は、以下に記載の方法に従って求められる。好ましくは、アルカリ液体は、NaOHの水溶液、特に好ましくは0.1mol/lの濃度を有する水溶液を表す。
【0084】
改質pCMは好ましくは低減された臭気を有する。したがって、特に硫黄を含むフェノール性物質の放散の割合が低減する。しかしながら、幾つかのVOC、例えば酢酸等の放散もまた低減することが可能となっている。放散の量の測定のための一方法は以下に記載される。
【0085】
好ましくは、改質pCMは、最大で1mg/kg、好ましくは最大で0.5mg/kg、更に好ましくは0.1mg/kg未満、一層好ましくは0.05mg/kg未満、特に0.01mg/kg未満の割合のジメチルスルフィドを有する。
【0086】
好ましくは、改質pCMは、それぞれ最大で1mg/kg、好ましくは最大で0.5mg/kg、更に好ましくは0.1mg/kg未満、一層好ましくは0.05mg/kg未満、特に0.01mg/kg未満の割合のそれぞれグアイアコール及びメチルグアイアコール(クレオソール)を有する。
【0087】
好ましくは、改質pCMは、5mg/kg未満のナフタレン分を有する(DIN EN 16181 :2017-11/ドラフト)。好ましくは、BGを含まない18種のEPA-PAH(DIN EN 16181 :2017-11 /ドラフト)の合計は、5mg/kg未満である。好ましくは、ベンゾ[a]アントラセン、クリセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、インデノール[1,2,3-cd]ピレン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ(e)ピレン及びベンゾ[j]フルオランテンの含有率は改質pCMにおいて検出可能でない(<0.1mg/kg) (DIN EN 16181 : 2017-11/ドラフト)。
【0088】
好ましくは、改質pCMは、それぞれVDA 278(05/2016)に従って熱脱離分析によって求めて、脱ガス性の個々の成分、
- 2-メトキシフェノール
- フェノール
- グアイアコール
- 4-メトキシ-3-メチル-フェノール
- 4-プロパノールグアイアコール
- 2-メトキシ-4-メチルフェノール
- 2-メトキシ-4-エチルフェノール
- 4-プロピルグアイアコール
- メタノールの、
改質pCMの50μg/g未満、好ましくは改質pCMの25μg/g、特に好ましくは改質pCMの15μg/g未満、一層好ましくは改質pCMの10μg/g未満、特に好ましくは改質pCMの5μg/g未満、幾つかの事例において改質pCMの1μg/g未満の含有率を有する。
【0089】
好ましくは、改質pCMのOANは、150ml/100gを超え、より好ましくは151ml/100gを超え、特に151ml/100gを超える。
【0090】
好ましくは、改質pCMのOANは、200ml/100g未満、特に好ましくは180ml/100g未満、特に170ml/100g未満である。
【0091】
好ましくは、硫黄によって架橋して、120phrの改質pCMを用いて充填されたSBRポリマー混合物の電気抵抗は、1.0E10Ohm・cmを超える。
【0092】
好ましくは、改質pCMは、少なくとも2つのプロセス工程を含む方法によって得ることができ、第1のプロセス工程において、本発明による粒状炭素材料の前駆体に相応し、それとは異なる粒状炭素材料pCMが用意され、それは続いて第2のプロセス工程において、ガス雰囲気下での加熱によって改質され、次いで、それによって本発明による粒状炭素材料を得ることができ、これは好ましくは臭気低減される。
【0093】
好ましくは、第1のプロセス工程に従って得ることができる粒状炭素材料pCMは、ガス雰囲気中の加熱の前に500μm未満、かつ0.5μmを超える粒径分布のD50を有していた。
【0094】
好ましくは、用いられる粒状炭素材料pCMのOH基密度は、第2のプロセス工程に従ってガス雰囲気中の加熱によって低減又は調節され、それによって、上に定義されたようなOH基密度を有する改質pCMを得ることができる。
【0095】
好ましくは、第2のプロセス工程は、大気下では行わず、15体積%未満、好ましくは10体積%未満、更に好ましくは5体積%未満、特に好ましくは3体積%未満の酸素含有率を有する不活性ガスに富む空気からなるプロセス雰囲気の下で行われ、ここで、酸素含有率は好ましくは少なくとも0.1体積%、特に好ましくは少なくとも0.5体積%、とりわけ好ましくは少なくとも1体積%である。
【0096】
好ましくは、第1のプロセス工程において用意される粒状炭素材料pCMは、全体又は一部分が液体に溶解された出発原料、好ましくはリグニン系の出発原料の沈殿によって得られる。
【0097】
好ましくは、第2のプロセス工程のプロセス温度は、以降の加工の温度及び/又は使用の温度より最大で50℃低く最大で50℃高く、プロセス温度は最高温度を超えず、最低温度以下に下がらない。
【0098】
好ましくは、第2のプロセス工程の後に得ることができる改質粒状炭素材料の粒径分布のD50は、最大で5倍、好ましくは最大で4倍、3倍、2.5倍、2倍、1.75倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、1.1倍、第1のプロセス工程において用意される粒状炭素材料pCMの粒径分布のD50より大きい。
【0099】
本発明の別の主題は、少なくとも2つのプロセス工程を含む本発明に従って粒状炭素材料を製造する方法であり、第1のプロセス工程において、本発明による粒状炭素材料の前駆体に相当し、それとは異なる粒状炭素材料pCMが用意され、それは続いて第2のプロセス工程において、ガス雰囲気の下での加熱によって改質され、次いで、それによって本発明による粒状炭素材料は得ることができ、これは好ましくは臭気低減される。
【0100】
本発明の別の主題は、ポリマー混合物、特にエラストマー混合物等のゴム混合物中の添加剤としての、本発明による粒状炭素材料の使用である。
【0101】
本発明の別の主題は、少なくとも1種のゴム、及び、本発明による少なくとも粒状炭素材料を含む少なくとも1種の充填剤成分を含む加硫性ゴム組成物である。
【0102】
ゴム組成物は、なおその上に少なくとも1種の架橋剤を含む少なくとも1種の加硫システムを含んでいてもよい。そのような架橋剤としての例は硫黄及び/又はペルオキシドである。用いることができるゴムとしての例は、天然ゴム(NR)及びハロブチルゴムであり、次に好ましくはクロロブチルゴム(CIIR;クロロ-イソブテン-イソプレンゴム)及びブロモブチルゴム(BIIR;ブロモ-イソブテン-イソプレンゴム)、ブチルゴム又はイソブチレン-イソプレンゴム(HR;イソブテン-イソプレンゴム)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、次に好ましくはSSBR(溶液重合SBR)及び/又はESBR(乳化重合SBR)、ポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR、ニトリルゴム)及び/又はHNBR(水和NBR)、クロロプレン(CR)、ポリイソプレン(IR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0103】
本発明の別の主題は、加硫性ゴム組成物の加硫によって得ることができ、アルカリ液体中7日後に25%未満の膨潤を有する加硫ゴム組成物である。膨張はDIN ISO 1817:2015に従って0.1molのNaOH中で求められる。
【0104】
測定方法
1.14C含有率の測定
14C含有率(生物学に基づいた炭素の含有率)の測定は、DIN EN 16640:2017-08に従って放射性炭素方法によって実行される。
【0105】
2.粒径分布の測定
粒径分布は、ISO 13320:2009に従って水に分散した材料(水中の1質量%)のレーザー回折によって求めることができる。体積分率は、例えば、μmでD50(試料の体積の50%の粒子の直径が、この値未満である)として規定される。
【0106】
3.炭素含有率の測定
炭素含有率はDIN 51732: 2014-7に従って元素分析によって求められる。
【0107】
4.乾燥物質含有率の測定
試料の乾燥物質含有率は、DIN 51718:2002-06の方針に沿って以下のように求められた。この目的に関しては、Sartorius社からのMA100水分天秤で105℃の乾燥温度に加熱した。乾燥試料は、まだ粉末の形態でなければ、乳鉢で又は粉砕して粉末にする。測定されるおよそ2gの試料は水分天秤の適切なアルミニウム皿に秤量し、次に、測定を開始した。試料の質量が30秒間に1mgを超えて変化しなければすぐに、この質量は一定と考えられ、測定は終了する。次いで、乾燥物質含有率は、試料質量%の表示含有率に対応する。二重測定が少なくとも1回、各試料に関して遂行された。加重平均値が報告された。
【0108】
5.灰分含有率の測定
試料の水を含まない灰分含有率を、DIN 51719規格に従って熱重量分析によって、以下のように求められた:秤量前に、試料は粉砕又は乳鉢にかけた。灰分測定の前に、秤量された材料中の乾燥物質含有率が求められる。試料材料は坩堝中で0.1mg単位まで秤量された。試料を含む炉は、9°K/分の加熱速度で815℃の目標温度に加熱され、次いで、2時間この温度で保持された。次いで、炉は300℃に冷却され、その後、試料は取り出された。試料はデシケーター中で室温に冷却され、再び秤量された。残りの灰分を初期の質量に関連づけ、このように、灰分の質量パーセントが求められた。3回の測定を各試料に関して遂行し、平均値が報告された。
【0109】
6.有機充填剤のBET及びSTSA表面積の測定
比表面積は、工業用カーボンブラックに対して提供されるASTM D 6556(2019-01-01)規格に従って窒素吸着によって求められた。この規格に従って、BET表面積(Brunauer、Emmett及びTellerによる比表面積の全体)及び外部表面積(STSA表面積;統計的厚さ表面積(Statistical Thickness Surface Area))が以下のように求められた。
【0110】
分析される試料は、測定前に105℃で乾燥物質含有率>97.5質量%に乾燥された。更に、測定セルは、試料の秤量前に数時間105℃で乾燥器で乾燥された。次いで、試料は漏斗を使用して、測定セルへ充填された。充填中に測定セル軸上部に汚染がある場合には、適切なブラシ又はパイプクリーナーを使用して掃除された。(静電気を帯びた)材料が舞い上がる場合には、ガラスウールが、試料中へ更に秤量された。ガラスウールは、焼成プロセス中に舞い上がり、設備を汚染し得る材料を保持するために使用された。
【0111】
分析される試料は、2時間150℃で焼成され、Al標準は350℃で1時間焼成された。以下のN用量が圧力範囲に応じて、測定のために使用された:
p/p0 = 0 - 0.01:N用量:5ml/g
p/p0 = 0.01 - 0.5:N用量:4ml/g。
【0112】
BETを求めるために、外挿法が、少なくとも6測定点を含めたp/p0 = 0.05~0.3の範囲で遂行された。STSAを求めるために、外挿法が、少なくとも7測定点を含めたt = 0.4~0.63nm(p/p0 = 0.2~0.5に対応する)からの吸着されたNの層厚さの範囲で遂行された。
【0113】
7.アルカリ媒体中の溶解度の測定
アルカリ溶解度の測定は、以下に記載の方法に従って実行される:
1.固体試料の溶解度を求めるためには、それが、乾燥して細かい粉末(乾燥物質含有率>98%)の形で存在しなければならない。そうでなければ、乾燥試料は溶解度を求める前に粉砕するか、又は、徹底的に乳鉢にかける。
2.溶解度は3回繰り返して求められる。この目的に関しては、2.0gの各乾燥試料が、各20gの0.1M NaOHそれぞれに秤量される。しかしながら、試料の求めたpH値が<10である場合、試料は廃棄され、代わりに2.0gの乾燥充填剤が、各20gの0.2M NaOHへ秤量される。言いかえれば、pH値(<10又は>10)に応じて、0.1M NaOHが使用される(pH>10)又は0.2M NaOH(pH<10)が使用される。
3.アルカリ懸濁液は、毎分200の振盪機速度で室温で2時間振盪される。液体がプロセス中に蓋と接触すれば、これが起こるのを防止するために振盪機速度を低減しなければならない。
4.次いで、アルカリ懸濁液は6000 x gで遠心分離機にかけられる。
5.遠心分離の上澄みはPor 4フリットによって濾過される。
6.遠心分離後の固体は、工程4から6の繰り返しにより、蒸留水で2度洗浄される。
7.固体は105℃で少なくとも24時間、質量が一定になるまで乾燥器で乾燥される。
8.アルカリ溶解度は以下のように算定される:
試料のアルカリ溶解度[%]=遠心分離、濾過及び乾燥の後の溶解しない割合の質量[g×100/項目2において得られた乾燥生成物の質量[g]
【0114】
8.pH値の測定
以下に記載のように、pHはASTM D 1512規格の方針に沿って求められた。乾燥試料は、まだ粉末の形態でなければ、乳鉢又は粉砕で粉末にする。各事例において、試料5g及び完全脱イオン水50gを、ガラスビーカーへ秤量した。懸濁液は、加熱機能及び撹拌子を備えた磁気撹拌機を使用して一定撹拌で60℃の温度に加熱し、温度は60℃で30分間維持された。続いて、混合物が撹拌中に冷却することができるように、撹拌機の加熱機能は停止された。冷却後に、蒸発水は、完全脱イオン水を再び添加することにより補充され、5分間再び撹拌された。懸濁液のpH値は、較正された測定機器で求められた。懸濁液の温度は23℃(±0.5℃)であるべきである。二重測定が各試料に関して遂行され、平均値が報告された。
【0115】
9.ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度の測定はDIN 53765-1994に従って行われる。
【0116】
10.排出量の測定
脱ガス性有機化合物(排出)の含有率は、VDA 278(05/2016)に従って熱脱離法分析によって求められる。合計の脱ガス性有機排ガスは、VOC及びFOGサイクルからの測定値の合計として与えられる。個々の成分の濃度は、質量スペクトル及び保持指数に基づく信号ピークを割り当てることにより求められる。
【0117】
11.OH基密度の測定
フェノール性OH基及びフェノラート基を含む表面の利用可能な酸性ヒドロキシル基の測定(OH基密度)は、Sipponenに従って定性的及び定量的に比色測定で実行された。Sipponenによる方法は、充填剤表面に利用可能な酸性ヒドロキシル基に対するアルカリ染料アズールBの吸着に基づき、論文「Determination of surface-accessible acidic hydroxyls and surface area of lignin by cation dye adsorption」(Bioresource Technology 169 (2014) 80~87頁)に詳細に記載されている。表面の利用可能な酸性ヒドロキシル基の量はmmol/g(充填剤)で与えられる。
【0118】
本発明は、ここで例示の実施形態を参照してより詳細に説明されるが、しかし、限定して解釈されてはならない。
【実施例1】
【0119】
第1の工程で、水中の水熱処理によってリグニンから微細化粒状炭素材料を製造した。
【0120】
第1の工程に使用した材料は、リグニンUPM BioPiva 190(市販されている)であった。使用した材料は、0.1M NaOH中68.5%の溶解度を有していた。
【0121】
撹拌しながらリグニンを水と混合し、このようにして11%の乾燥物質含有率(DM含有率)に希釈した。次いで7.5gの水酸化ナトリウムを、100gの乾燥物質当たりに添加した。混合物は、撹拌しながら80℃に加熱し、1時間後、pH 10.1を有するリグニン溶液を得た。
【0122】
次いで、リグニン溶液を220℃に加熱し、220℃で480分の期間熱水処理した。続いて、得られた懸濁液を室温に冷却した。
【0123】
これは8.8のpHをもたらした。
【0124】
懸濁液の試料を12,000rpmで遠心分離機にかけ、得られた残渣を乾燥した。BET及びSTSAに関して乾燥した残渣を分析した。39.4m/gのBET及び37.2m/gのSTSAを多点で測定した。
【0125】
次いで、得られたリグニン懸濁液を脱水し、フィルタープレスで圧搾し、39.4%のDM含有率に機械的に脱水した。このようにして、フィルターケーキが得られた。
【0126】
フィルターケーキの懸濁固体物質の試料の粒径分布のD50は、5μmであった。
【0127】
フィルターケーキの試料を乾燥した。BET及びSTSAに関して乾燥したフィルターケーキを分析した。38.3m/gのBET及び36.1m/gのSTSAを多点で測定した。
【0128】
得られたフィルターケーキは、微細化され、第2の工程で更に処理した(改質)粒状炭素材料pCMを表す。
【0129】
第2の工程で、微細化改質粒状炭素材料(本発明による)を、ガス雰囲気中の加熱によって微細化粒状炭素材料pCMから回収した。
【0130】
第1の工程の後に得られた、微細化粒状炭素材料pCMから、試料を取り、第2の工程で異なる条件下で処理し(試料1~5)、又は第2の工程で処理しなかったが、しかし、空気中での乾燥のみをした(参照試料REF)。
【0131】
各試料を個々に、連続的に窒素でパージした回転式煙管炉に供給した。試料は、80℃の温度でまず乾燥し、次いで、下記Table 1(表1)に示したプロセス温度に加熱し、示した時間保持し、示したガス組成を設定した。次いで、再び室温に試料を冷却した。
【0132】
【表1】
【0133】
次いで、それぞれ得られた、微細化粒状炭素材料を分析した。以下のTable 2(表2)に与えられたパラメーターを測定した:
【0134】
【表2】
【0135】
試料1~5及び参照REFをそれぞれ、充填剤としてEPDMマトリックスへ混合した。加硫の後、試験片を水性NaOH(0.1M)中で膨潤させた。7日後の膨潤は以下のTable 3(表3)に示される。DIN ISO 1817:2015に従って膨潤を求める:
【0136】
【表3】
【0137】
0.1%のNaOH中のそれぞれの試料の求めた溶解度(Table 2(表2)参照)が低いほど、充填剤としてそれぞれの試料を含む加硫物の水性NaOH中の求めた膨潤も低い。
【0138】
Table 4(表4)の処方に従って、及び以下のプロセスによって化合物の混合物の調製及び加硫物の調製を行った:
【0139】
【表4】
【0140】
以下の方法に従って混合物の調製を行った:W & P Type GK1,5E混合機(互いに噛み合う回転子幾何形状)によって70%の充填比、40℃の混合温度及び40rpmの速度で混合物を調製した。
【0141】
レオメーターで求めた最適のt90時間に従って、160℃で焼成することにより加硫を実行した。
【国際調査報告】