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特表2023-539623機械的耐久性が改善された調整可能なガラス組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】機械的耐久性が改善された調整可能なガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20230908BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C3/064
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513694
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021047057
(87)【国際公開番号】W WO2022046586
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,462
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】レッツィ,ピーター ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジエン
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB06
4G062CC10
4G062DA04
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB04
4G062DB05
4G062DC03
4G062DC04
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4G062EF04
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4G062EG04
4G062FA01
4G062FA10
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4G062GA01
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4G062GE01
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4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062MM27
4G062NN33
(57)【要約】
ガラス組成物は、24モル%以上かつ60モル%以下のSiO;23モル%以上かつ35モル%以下のAl;3.5モル%以上かつ35モル%以下のB;0モル%超かつ20モル%以下のLiO;0モル%以上かつ10モル%以下のNaO;及び、0モル%以上かつ3モル%以下のKOを含む。ガラス組成物中のLiO、NaO、及びKO(すなわち、RO)の合計は、12モル%以上かつ20モル%以下でありうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成物であって、
24モル%以上かつ60モル%以下のSiO
23モル%以上かつ35モル%以下のAl
3.5モル%以上かつ35モル%以下のB
0モル%超かつ20モル%以下のLiO、
0モル%以上かつ10モル%以下のNaO、及び
0モル%以上かつ3モル%以下のK
を含み、ここで、
Oは12モル%以上かつ20モル%以下であり、ROはLiO、NaO、及びKOの合計である、
ガラス組成物。
【請求項2】
Al+Bが28モル%以上かつ60モル%以下である、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
前記ガラス組成物が、24モル%以上かつ34モル%以下のAlを含む、請求項1又は請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項4】
前記ガラス組成物が、5モル%以上かつ30モル%以下のBを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項5】
Al-RO-ROが-0.5モル%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項6】
前記ガラス組成物が、3モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項7】
前記ガラス組成物が、
25モル%以上かつ35モル%以下のAl、及び
3モル%以上かつ11モル%以下のLi
を含む、請求項6に記載のガラス組成物。
【請求項8】
前記ガラス組成物が、
24モル%以上かつ30モル%以下のAl、及び
10モル%以上かつ18モル%以下のLi
を含む、請求項6に記載のガラス組成物。
【請求項9】
Oが12.5モル%以上かつ19モル%以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項10】
ROが0モル%以上かつ17.5モル%以下であり、かつROがMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOの合計である、請求項1から9のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項11】
前記ガラス組成物が、0モル%以上かつ15モル%以下のMgOを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項12】
Al3+-RO-ROが2モル%超である、請求項1から11のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項13】
前記ガラス組成物が、シェブロンノッチショートバー法で測定して、0.75MPa・m1/2以上のKIc破壊靭性を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項14】
前記ガラス組成物が70MPa以上のヤング率を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【請求項15】
前記ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する比が、0.0095m1/2以上である、請求項1から14のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年8月26日出願の米国仮特許出願第63/070462号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、イオン交換可能なガラス組成物、特に、改善された機械的耐久性を有する、透明、半透明、又は不透明な着色されたガラス物品を提供することができるイオン交換可能なガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
カバーガラス、ガラスバックプレーンなどのガラス物品は、LCD及びLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、現金自動預け払い機(ATM)などの民生用電子デバイス及び商業用電子デバイスの両方で用いられている。これらのガラス物品の幾つかは、ガラス物品がユーザの指及び/又はスタイラスデバイスを含むさまざまな物体による接触を必要とする、「タッチ」機能を含むことができ、そのため、ガラスは、引っかき傷などの損傷なしに定期的な接触に耐えるのに十分な堅牢性を備えている必要がある。実際、ガラス物品の表面に導入された引っかき傷は、ガラス物品の強度を低下させる可能性があり、これは、引っかき傷が、ガラスの壊滅的な破損につながる亀裂の開始点として機能しうるためである。
【0004】
さらには、ガラス物品の少なくとも一部を着色することが望ましい場合がある。例えば、製造業者は、ガラス物品を電子デバイス(例えば、電話)の背面に、又はカウンタートップとして使用することを所望しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、透明、半透明、又は不透明な着色されたガラス物品を製造するために調整可能でありつつ、改善された機械的特性を有する代替的なガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様A1によれば、ガラス組成物は、24モル%以上かつ60モル%以下のSiO;23モル%以上かつ35モル%以下のAl;3.5モル%以上かつ35モル%以下のB;0モル%超かつ20モル%以下のLiO;0モル%以上かつ10モル%以下のNaO;及び、0モル%以上かつ3モル%以下のKOを含むことができ、ここで、ROは12モル%以上かつ20モル%以下であり、ROはLiO、NaO、及びKOの合計である。
【0007】
第2の態様A2は、Al+Bが28モル%以上かつ60モル%以下である、態様A1に記載のガラス組成物を含む。
【0008】
第3の態様A3は、ガラス組成物が24モル%以上かつ34モル%以下のAlを含む、態様A1又はA2に記載のガラス組成物を含む。
【0009】
第4の態様A4は、ガラス組成物が5モル%以上かつ30モル%以下のBを含む、態様A1からA3のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0010】
第5の態様A5は、Al-RO-ROが-0.5モル%以上である、態様A1からA4のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0011】
第6の態様A6は、ガラス組成物が3モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含む、態様A1からA5のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0012】
第7の態様A7は、ガラス組成物が3モル%以上かつ11モル%以下のLiOを含む、態様A6に記載のガラス組成物を含む。
【0013】
第8の態様A8は、ガラス組成物が10モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含む、態様A6に記載のガラス組成物を含む。
【0014】
第9の態様A9は、ガラス組成物が、25モル%以上かつ35モル%以下のAl;及び、3モル%以上かつ11モル%以下のLiOを含む、態様A6に記載のガラス組成物を含む。
【0015】
第10の態様A10は、ガラス組成物が、24モル%以上かつ30モル%以下のAl;及び、10モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含む、態様A6に記載のガラス組成物を含む。
【0016】
第11の態様A11は、ROが12.5モル%以上かつ19モル%以下である、態様A1からA10のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0017】
第12の態様A12は、ROが0モル%以上かつ17.5モル%以下であり、ROがMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOの合計である、態様A1からA11のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0018】
第13の態様A13は、ROが0モル%超かつ15モル%以下である、態様A12に記載のガラス組成物を含む。
【0019】
第14の態様A14は、ガラス組成物が0モル%以上かつ15モル%以下のMgOを含む、態様A1からA13のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0020】
第15の態様A15は、Al+B3-O-ROが2モル%超である、態様A1からA14のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0021】
第16の態様A16は、ガラス組成物が、シェブロンノッチショートバー法で測定して、0.75MPa・m1/2以上のKIc破壊靭性を有する、態様A1からA15のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0022】
第17の態様A17は、ガラス組成物が70MPa以上のヤング率を有する、態様A1からA16のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0023】
第18の態様A18は、ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する比が0.0095m1/2以上である、態様A1からA17のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0024】
第19の態様A19は、ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する比が0.01m1/2以上である、態様A18に記載のガラス組成物を含む。
【0025】
第20の態様A20は、ガラス組成物が0.21以上のポアソン比を有する、態様A1からA19のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0026】
本明細書に記載されるガラス組成物のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部には、その説明から当業者には容易に明らかになり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識される。
【0027】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、さまざまな実施形態を説明しており、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図していることが理解されるべきである。添付の図面は、さまざまな実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載されるさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、特許請求の範囲の主題の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、多相ガラスを形成するための例示的な冷却スケジュールの時間に対する温度のプロット(x軸:時間;y軸:温度)
図2】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物から製造され、冷却スケジュールに供されたガラス物品の写真
図3】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、ガラス組成物から製造され、冷却スケジュールに供された試料ガラス物品のX線回折(「XRD」)スペクトルのプロット(x軸:2θ;y軸:強度)
図4】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、試料ガラス組成物から製造され、冷却スケジュールに供されたガラス物品のXRDスペクトルのプロット(x軸:2θ;y軸:強度)
図5】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物から製造され、冷却スケジュールに供されたガラス物品の写真
図6】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、ガラス組成物から製造され、冷却スケジュールに供されたガラス物品の波長(x軸)に対する透過率(y軸)のプロット
図7】本明細書に記載される1つ以上の実施形態による、ガラス組成物から製造され、冷却スケジュールに供されたガラス物品の波長(x軸)に対する反射率(y軸)のプロット
【発明を実施するための形態】
【0029】
これより、機械的耐久性が改善された調整可能なガラス組成物のさまざまな実施形態について詳細に参照する。実施形態によれば、ガラス組成物は、24モル%以上かつ60モル%以下のSiO;23モル%以上かつ35モル%以下のAl;3.5モル%以上かつ35モル%以下のB;0モル%超かつ20モル%以下のLiO;0モル%以上かつ10モル%以下のNaO;及び、0モル%以上かつ3モル%以下のKOを含む。ガラス組成物中のLiO、NaO、及びKO(すなわち、RO)の合計は、12モル%以上かつ20モル%以下でありうる。調整可能なガラス組成物、及び透明、半透明、又は着色されたガラス物品を製造する方法のさまざまな実施形態について、添付の図面を特に参照して本明細書で説明する。
【0030】
本明細書では、範囲は、約1つの特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、例えば先行詞「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。さらには、範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、及び他の端点とは独立してのいずれにおいても重要であることが理解されよう。
【0031】
本明細書で用いられる方向の用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部)は、描かれた図を参照してのみ作られており、絶対的な方向を意味することは意図していない。
【0032】
特に明記しない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを必要とすること、若しくは、装置には特定の向きが必要であると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、若しくは装置クレームが個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に記載していない場合、あるいは、ステップが特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に別段に明確に述べられていない場合、若しくは装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが記載されていない場合には、いかなる意味においても、順序又は方向が推測されることは決して意図していない。これには、次のような解釈のためのあらゆる非明示的根拠が当てはまる:ステップの配置、動作フロー、構成要素の順序、又は構成要素の方向に関する論理的事項;文法上の編成又は句読点から派生した平明な意味;及び、明細書に記載される実施形態の数又はタイプ。
【0033】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ある1つの(a)」構成要素への言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0034】
本明細書に記載されるガラス組成物の実施形態では、特に明記しない限り、構成成分(例えば、SiO、Alなど)の濃度は、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で指定される。
【0035】
「0モル%」及び「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成物中の特定の構成成分の濃度及び/又は不存在を説明するために用いられる場合には、構成成分が意図的にガラス組成物に添加されないことを意味する。しかしながら、ガラス組成物は、0.1モル%未満の量で汚染物質又はトランプとして微量の構成成分を含みうる。
【0036】
「破壊靭性」という用語は、本明細書で用いられる場合、KIc値を指し、シェブロンノッチ付きショートバー法で測定される。シェブロンノッチ付ショートバー(CNSB)法は、Bubsey, R.T. et al., “Closed-Form Expressions for Crack-Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron-Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements,” NASA Technical Memorandum 83796, pp.1-30 (October1992)の式5を使用してY*mを計算することを除き、Reddy, K.P.R. et al, “Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron-Notched Specimens,” J. Am. Ceram. Soc., 71 [6], C-310-C-313 (1988)に開示されている。
【0037】
ガラス組成物を説明するために本明細書で用いられる「調整可能」という用語は、ガラス組成物の特性が調整可能であることを指す。例えば、本明細書に記載されるガラス組成物は、透明又は半透明のガラス物品又は不透明な着色されたガラス-セラミック物品を製造するために成形プロセス温度(すなわち、溶融物)からさまざまな冷却スケジュールに供されうる。
【0038】
本明細書に記載されるX線回折(XRD)スペクトルは、Bruker Corporation社(米国マサチューセッツ州ビレリカ所在)製のLYNXEYE XE-T検出器を備えたD8 ENDEAVOR X線回折システムで測定される。ガラス組成物試料の走査時間は15分に設定される。
【0039】
本明細書に記載される透過率データ(すなわち、全透過率)は、PerkinElmer Inc.社(米国マサチューセッツ州ウォルサム所在)製のLambda 950 UV/Vis分光光度計で測定される。Lambda 950装置に150mmの積分球を取り付けた。オープンビームベースライン及びSpectralon(登録商標)基準反射率ディスクを使用して、データを回収した。全透過率(全Tx)では、試料は積分球の入口点に固定される。拡散透過率(拡散Tx)の場合は、球体の出口ポート上のSpectralon(登録商標)基準反射率ディスクが取り除かれ、軸上の光が球を出て光トラップに入ることを可能にする。光トラップの効率を決定するために、試料なしで、拡散部分のゼロオフセット測定が行われる。拡散透過率の測定値を補正するために、次式を使用して試料測定値からゼロオフセット寄与を差し引く:拡散Tx=拡散測定-(ゼロオフセット*(全Tx/100))。反射率(すなわち、%反射)は、すべての波長について次のように測定される:(%拡散Tx/%全Tx)*100。
【0040】
本明細書で用いられる「平均透過率」という用語は、所与の波長範囲内でなされた透過率の平均を指し、整数が付された各波長は等しく重み付けされている。本明細書に記載される実施形態では、「平均透過率」は、400nmから800nm(端点を含む)の波長範囲にわたって報告される。
【0041】
本明細書でガラス組成物から形成された物品を説明するために用いられる「透明」という用語は、ガラス組成物が、0.6mmの物品厚さで400nmから800nmの範囲(端点を含む)の波長の光に対して垂直入射で測定した場合に、75%以上の平均透過率を有することを意味する。
【0042】
本明細書でガラス組成物から形成された物品を説明するために用いられる「半透明」という用語は、ガラス組成物が、0.6mmの物品厚さで400nmから800nm(端点を含む)の波長範囲の光に対して垂直入射で測定した場合に、20%以上かつ75%未満の平均透過率を有することを意味する。
【0043】
本明細書でガラス組成物から形成された物品を説明するために用いられる「不透明」という用語は、ガラス組成物が、0.6mmの物品厚さで400nmから800nm(端点を含む)の波長範囲の光に対して垂直入射で測定した場合に、20%未満の平均透過率を有することを意味する。
【0044】
本明細書でガラス組成物から形成された物品を説明するために用いられる「白色」という用語は、ガラス組成物が、80以上のL*;2以下の|a*|;及び、3以下の|b*|のCIELAB色空間における透過色座標を有することを意味する。CIELAB色空間は、標準光源D65を使用して測定される。
【0045】
本明細書でガラス組成物から形成された物品を説明するために用いられる「パターン化」という用語は、ガラス組成物が、白色のCIELAB色空間に第1の透過色座標を有し、白色のCIELAB色空間とは異なる別のCIELAB色空間に第2の透過色座標を有することを意味する。
【0046】
本明細書で用いられる「フォーゲル・フルチャー・タンマン(「VFT」)関係」という用語は、粘度の温度依存性を説明しており、次式で表される:
【0047】
【数1】
【0048】
式中、ηは粘度である。VFT A、VFT B、及びVFT Tを決定するために、ガラス組成物の粘度が所与の温度範囲にわたって測定される。粘度対温度の生データは、最小二乗フィッティングによってVFT方程式に当てはめられ、A、B、及びTが得られる。これらの値を用いて、軟化点を超える任意の温度における粘度点(例えば、200P温度、35000P温度、及び200000P温度)を計算することができる。
【0049】
本明細書で用いられる「融点」という用語は、ASTM C338に準拠して測定して、ガラス組成物の粘度が200ポアズになる温度を指す。
【0050】
本明細書で用いられる「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×107.6ポアズになる温度を指す。軟化点は、ASTM C1351Mと同様に、温度の関数として10から10ポアズの無機ガラスの粘度を測定する、平行板粘度法に従って測定される。
【0051】
本明細書で用いられる「アニール点」又は「有効アニーリング温度」という用語は、ASTM C598に準拠して測定して、ガラス組成物の粘度が1×1013.18ポアズになる温度を指す。
【0052】
本明細書で用いられる「歪み点」という用語は、ASTM C598に準拠して測定して、ガラス組成物の粘度が1×1014.68ポアズになる温度を指す。
【0053】
本明細書に記載される密度は、ASTM C693-93の浮力法によって測定される。
【0054】
本明細書で用いられる「CTE」という用語は、指定されたように、300℃冷却(すなわち、冷却中に測定された、300℃での瞬間CTE)又は50℃冷却(すなわち、冷却中に測定された、50℃での瞬間CTE)における、ガラス組成物の瞬間熱膨張係数を指す。
【0055】
本明細書で用いられる「液相粘度」という用語は、失透の開始時の(すなわち、ASTM C829-81に準拠して勾配炉法で決定した液相線温度における)ガラス組成物の粘度を指す。
【0056】
本明細書で用いられる「液相線温度」という用語は、ASTM C829-81に準拠して勾配炉法で決定した、ガラス組成物が失透し始める温度を指す。
【0057】
本明細書に記載されるガラス組成物の弾性率(ヤング率とも呼ばれる)は、ギガパスカル(GPa)の単位で提供され、ASTM C623に準拠して測定される。
【0058】
本明細書に記載されるガラス組成物の剪断弾性率は、ギガパスカル(GPa)の単位で提供される。ガラス組成物の剪断弾性率は、ASTM C623に準拠して測定される。
【0059】
本明細書に記載されるポアソン比は、ASTM C623に準拠して測定される。
【0060】
本明細書に記載される屈折率は、ASTM E1967に準拠して測定される。
【0061】
表面圧縮応力は、折原製作所(日本所在)製造のFSM-6000のような市販の機器などの表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラス-セラミックの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)の測定に依拠している。SOC、は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、「ガラス応力-光学係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」と題されたASTM規格C770-16に記載される手順C(ガラスディスク法)に準拠して測定される。圧縮深さ(DOC)は、当技術分野で知られている散乱光偏光器(SCALP)技法と組み合わせたFSMを用いて測定される。FSMはカリウムイオン交換の圧縮深さを測定し、SCALPはナトリウムイオン交換の圧縮深さを測定する。最大中央張力(CT)値は、当技術分野で知られているSCALP技法を使用して測定される。
【0062】
本明細書で用いられる「圧縮深さ」(DOC)という語句は、圧縮応力が引張応力へと移行する物品内の位置を指す。
【0063】
化学強化プロセスは、アルカリケイ酸塩ガラスにおいて高強度及び高靭性を実現するために使用されている。化学的に強化されたガラスの破砕限界は、概して、ガラスの成分の破壊靭性によって制御される。シリカは、約0.75MPa・m1/2の比較的低いKIc破壊靭性を有し、これにより、ケイ酸塩ガラスのKIc破壊靭性は約0.75MPa・m1/2の値に制限されることを強いられる。特定の酸化物は、破壊靭性を増加させうる(例えば、ZrO、Ta、TiO、HfO、La、Y)。しかしながら、そのような酸化物は高価であり、それによってガラス組成物から形成されるガラス物品のコストが上昇しうる。
【0064】
Alの添加は、ガラス組成物の破壊靭性を増加させることができるが、液相粘度も低下させる可能性があり、ガラス組成物を成形困難にする。Bの添加は、ガラス組成物の破壊靭性も改善することができる。しかしながら、Bの存在は、ガラス組成物のイオン交換強化に続くガラス組成物の達成可能な中央張力を低下させる可能性があり、溶融及び成形プロセス中に揮発性の問題を生じる可能性がある。
【0065】
前述の問題を軽減するガラス組成物が本明細書に開示される。具体的には、本明細書に開示されるガラス組成物は、比較的高濃度のAlを含み、これにより、透明若しくは半透明のガラス物品、又は破壊靭性が改善された不透明な着色されたガラスセラミック物品を製造するために、さまざまな冷却スケジュールに供することができる、調整可能なガラス組成物が得られる。
【0066】
本明細書に記載されるガラス組成物は、アルミノホウケイ酸塩ガラス組成物として説明することができ、SiO、Al、及びBを含む。本明細書に記載されるガラス組成物はまた、ガラス組成物のイオン交換性を可能にするために、LiO及びNaOなどのアルカリ酸化物も含む。
【0067】
SiOは、本明細書に記載されるガラス組成物における主要なガラス形成剤であり、ガラス組成物のネットワーク構造を安定化するように機能することができる。ガラス組成物中のSiOの濃度は、基本的なガラス形成能力を提供するように十分に高くなければならない(例えば、24モル%以上)。純粋なSiO又は高SiOガラスの溶融温度は望ましくないほど高いため、ガラス組成物の融点を制御するために、SiOの量を(例えば、60モル%以下に)制限することができる。したがって、SiOの濃度を制限することは、ガラス組成物の溶融性及び成形性を改善するのに役立ちうる。
【0068】
したがって、実施形態では、ガラス組成物は、24モル%以上かつ60モル%以下のSiOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のSiOの濃度は、24モル%以上、28モル%以上、又はさらに32モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のSiOの濃度は、60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下、又はさらに45モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のSiOの濃度は、24モル%以上かつ60モル%以下、24モル%以上かつ55モル%以下、24モル%以上かつ50モル%以下、24モル%以上かつ45モル%以下、28モル%以上かつ60モル%以下、28モル%以上かつ55モル%以下、28モル%以上かつ50モル%以下、28モル%以上かつ45モル%以下、32モル%以上かつ60モル%以下、32モル%以上かつ55モル%以下、32モル%以上かつ50モル%以下、若しくはさらに32モル%以上かつ45モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0069】
SiOと同様に、Alもまた、ガラスネットワークを安定化させることができ、さらに、ガラス組成物に改善された機械的特性及び化学的耐久性を提供する。ガラス組成物の粘度を制御するために、Alの量を調整することもできる。Alの濃度は、得られるガラス組成物が所望の破壊靭性(例えば、0.75MPa・m1/2以上)を有するように、十分に高くなければならない(例えば、23モル%以上)。しかしながら、Alの量が多すぎる(例えば、35モル%を超える)と、溶融物の粘度が上昇し、それによってガラス組成物の成形性が低下する可能性がある。実施形態では、ガラス組成物は、23モル%以上かつ35モル%以下のAlを含みうる。実施形態では、ガラス組成物は、24モル%以上かつ34モル%以下のAlを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlの濃度は、23モル%以上、24モル%以上、25モル%以上、又はさらに26モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlの濃度は、35モル%以下、34モル%以下、32モル%以下、又はさらに30モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlの濃度は、23モル%以上?かつ35モル%以下、23モル%以上かつ34モル%以下、23モル%以上かつ32モル%以下、23モル%以上かつ30モル%以下、24モル%以上かつ35モル%以下、24モル%以上かつ34モル%以下、24モル%以上かつ32モル%以下、24モル%以上かつ30モル%以下、25モル%以上かつ35モル%以下、25モル%以上かつ34モル%以下、25モル%以上かつ32モル%以下、25モル%以上かつ30モル%以下、26モル%以上かつ35モル%以下、26モル%以上かつ34モル%以下、26モル%以上かつ32モル%以下、若しくはさらに26モル%以上かつ30モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0070】
はガラス組成物の溶融温度を低下させる。さらには、ガラス組成物へのBの添加は、ガラス組成物がセラミック化される場合にインターロッキング結晶微細構造の実現を助ける。加えて、Bは、ガラス組成物の耐損傷性も改善することができる。セラミック化後に存在する残留ガラス中のホウ素がアルカリ酸化物又は二価カチオン酸化物(例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnO)によって電荷平衡化されていない場合には、ホウ素は、ガラスの構造を開く、三角配位状態(又は3配位ホウ素)になる。これらの3配位ホウ素原子の周りのネットワークは、四面体配位(又は4配位)ホウ素ほど堅固ではない。理論に縛られはしないが、3配位ホウ素を含むガラス組成物は、4配位ホウ素と比較して、亀裂形成前にある程度の変形を許容することができると考えられる。ある程度の変形を許容することにより、ビッカース圧痕亀裂開始閾値が増加する。3配位ホウ素を含むガラス組成物の破壊靭性もまた増加しうる。Bの濃度は、ガラス組成物の成形性を改善し、破壊靭性を増加させるために、十分に高くなければならない(例えば、3.5モル%以上)。しかしながら、Bが高すぎると、化学的耐久性及び液相粘度が低下し、溶融中のBの揮発及び蒸発の制御が難しくなる。したがって、Bの量は、ガラス組成物の化学的耐久性及び製造可能性を維持するように制限されうる(例えば、35モル%以下)。
【0071】
実施形態では、ガラス組成物は、3.5モル%以上かつ35モル%以下のBを含みうる。実施形態では、ガラス組成物は、5モル%以上かつ30モル%以下のBを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のBの濃度は、3.5モル%以上、5モル%以上、7.5モル%以上、10モル%以上、12.5モル%以上、15モル%以上、又はさらに17.5モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のBの濃度は、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、又はさらに20モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のBの濃度は、3.5モル%以上かつ35モル%以下、3.5モル%以上かつ30モル%以下、3.5モル%以上かつ25モル%以下、3.5モル%以上かつ20モル%以下、5モル%以上かつ35モル%以下、5モル%以上かつ30モル%以下、5モル%以上かつ25モル%以下、5モル%以上かつ20モル%以下、7.5モル%以上かつ35モル%以下、7.5モル%以上かつ30モル%以下、7.5モル%以上かつ25モル%以下、7.5モル%以上かつ20モル%以下、10モル%以上かつ35モル%以下、10モル%以上かつ30モル%以下、10モル%以上かつ25モル%以下、10モル%以上かつ20モル%以下、12.5モル%以上かつ35モル%以下、12.5モル%以上かつ30モル%以下、12.5モル%以上かつ25モル%以下、12.5モル%以上かつ20モル%以下、15モル%以上かつ35モル%以下、15モル%以上かつ30モル%以下、15モル%以上かつ25モル%以下、15モル%以上かつ20モル%以下、17.5モル%以上かつ35モル%以下、17.5モル%以上かつ30モル%以下、17.5モル%以上かつ25モル%以下、若しくはさらに17.5モル%以上かつ20モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0072】
本明細書に記載されるガラス組成物は、比較的高濃度のAl及びBを含み、これにより、ガラス組成物の破壊靭性を高めることができる。実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計量(すなわち、Al(モル%)+B(モル%))は、増強された破壊靭性を提供するように、28モル%以上でありうる。AlとBの合計量が増加すると液相線温度が増加するため、ガラス組成物中のAlとBの合計量は、ガラス組成物の液相線温度を制御するように制限されうる(例えば、60モル%以下)。液相線温度が増加すると、ガラス組成物の液相粘度及び安定性は低下し、その結果、ガラス組成物は下方延伸プロセス又はフュージョン成形プロセスに適さなくなる可能性がある。
【0073】
実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計量は、28モル%以上かつ60モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計量は、30モル%以上かつ57モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計量は、28モル%以上、30モル%以上、32モル%以上、又はさらに34モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計量は、60モル%以下、57モル%以下、53モル%以下、又はさらに50モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計量は、28モル%以上かつ60モル%以下、28モル%以上かつ57モル%以下、28モル%以上かつ55モル%以下、28モル%以上かつ53モル%以下、28モル%以上かつ50モル%以下、30モル%以上かつ60モル%以下、30モル%以上かつ57モル%以下、30モル%以上かつ55モル%以下、30モル%以上かつ53モル%以下、30モル%以上かつ50モル%以下、32モル%以上かつ60モル%以下、32モル%以上かつ57モル%以下、32モル%以上かつ55モル%以下、32モル%以上かつ53モル%以下、32モル%以上かつ50モル%以下、34モル%以上かつ60モル%以下、34モル%以上かつ57モル%以下、34モル%以上かつ55モル%以下、34モル%以上かつ53モル%以下、若しくはさらに34モル%以上かつ50モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0074】
上述のように、ガラス組成物のイオン交換性を可能にするために、ガラス組成物は、LiO及びNaOなどのアルカリ酸化物を含みうる。LiOは、ガラス組成物のイオン交換能を助け、また、ガラス組成物の軟化点を低下させ、それによってガラスの成形性を高める。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%超かつ20モル%以下のLiOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物は、3モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のLiOの濃度は、0モル%超、3モル%以上、5モル%以上、7モル%以上、又はさらに10モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のLiOの濃度は、20モル%以下、18モル%以下、15モル%以下、13モル%以下、又はさらに11モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のLiOの濃度は、0モル%超かつ20モル%以下、0モル%超かつ18モル%以下、0モル%超かつ15モル%以下、0モル%超かつ13モル%以下、0モル%超かつ11モル%以下、3モル%以上かつ20モル%以下、3モル%以上かつ18モル%以下、3モル%以上かつ15モル%以下、3モル%以上かつ13モル%以下、3モル%以上かつ11モル%以下、5モル%以上かつ20モル%以下、5モル%以上かつ18モル%以下、5モル%以上かつ15モル%以下、5モル%以上かつ13モル%以下、5モル%以上かつ11モル%以下、7モル%以上かつ20モル%以下、7モル%以上かつ18モル%以下、7モル%以上かつ15モル%以下、7モル%以上かつ13モル%以下、7モル%以上かつ11モル%以下、10モル%以上かつ20モル%以下、10モル%以上かつ18モル%以下、10モル%以上かつ15モル%以下、10モル%以上かつ13モル%以下、若しくはさらに10モル%以上かつ11モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0075】
実施形態では、Alの量とLiOの量とのバランスが取られうる。特に、実施形態では、Alの量は、LiOの量より多くてもよく、その結果、アルミニウムが5配位の状態(又は5配位アルミニウム)がもたらされ、ガラス組成物の破壊靭性が改善される。例えば、実施形態では、ガラス組成物は、比較的多量のAl(例えば、25モル%以上かつ35モル%以下)と、比較的少量のLiO(例えば、3モル%以上かつ11モル%以下)とを含みうる。実施形態では、ガラス組成物は、比較的少量のAl(例えば、24モル%以上かつ30モル%以下)と、比較的多量のLiO(例えば、10モル%以上かつ18モル%以下)とを含みうる。
【0076】
ガラス組成物のイオン交換能を助けることに加えて、NaOは、融点を低下させ、ガラス組成物の成形性を改善する。しかしながら、ガラス組成物に添加するNaOが多すぎると、融点が低くなりすぎる可能性がある。したがって、実施形態では、ガラス組成物中に存在するLiOの濃度は、ガラス組成物中に存在するNaOの濃度より大きくなりうる。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ10モル%以下のNaOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のNaOの濃度は、0モル%以上、0.5モル%以上、1モル%以上、又はさらに1.5モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のNaOの濃度は、10モル%以下、9モル%以下、7モル%以下、又はさらに5モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のNaOの濃度は、0モル%以上かつ10モル%以下、0モル%以上かつ9モル%以下、0モル%以上かつ7モル%以下、0モル%以上かつ5モル%以下、0.5モル%以上かつ10モル%以下、0.5モル%以上かつ9モル%以下、0.5モル%以上かつ7モル%以下、0.5モル%以上かつ5モル%以下、1モル%以上かつ10モル%以下、1モル%以上かつ9モル%以下、1モル%以上かつ7モル%以下、1モル%以上かつ5モル%以下、1.5モル%以上かつ10モル%以下、1.5モル%以上かつ9モル%以下、1.5モル%以上かつ7モル%以下、若しくはさらに1.5モル%以上かつ5モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0077】
本明細書に記載されるガラス組成物は、KOなど、LiO及びNaO以外のアルカリ金属酸化物をさらに含みうる。KOは、含まれる場合には、イオン交換を促進し、圧縮深さを増加させることができ、かつ融点を低下させてガラス組成物の成形性を改善することができる。しかしながら、KOを添加しすぎると、表面の圧縮応力及び融点が低くなりすぎる可能性がある。したがって、実施形態では、ガラス組成物に添加するKOの量は、制限されうる。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ3モル%以下のKOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のKOの濃度は、0モル%以上、又はさらに0.1モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のKOの濃度は、3モル%以下、1モル%以下、又はさらに0.5モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のKOの濃度は、0モル%以上かつ3モル%以下、0モル%以上かつ1モル%以下、0モル%以上かつ0.5モル%以下、0.1モル%以上かつ3モル%以下、0.1モル%以上かつ1モル%以下、若しくはさらに0.1モル%以上かつ0.5モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0078】
すべてのアルカリ酸化物の合計は、本明細書ではROと表される。具体的には、ROは、ガラス組成物中に存在するLiO、NaO、及びKOの合計(モル%単位)である(すなわち、RO=LiO(モル%)+NaO(モル%)+及びKO(モル%)。Bと同様に、アルカリ酸化物は、ガラス組成物の軟化点及び成形温度を低下させるのに役立ち、それによって、例えばガラス組成物中のより多くの量のSiOに起因するガラス組成物の軟化点及び成形温度の上昇を相殺する。ガラス組成物中にアルカリ酸化物の組合せ(例えば、2つ以上のアルカリ酸化物)を含めることにより、軟化点及び成形温度をさらに低下させることができ、これは、「混合アルカリ効果」と呼ばれる現象である。しかしながら、アルカリ酸化物の量が多すぎる場合、ガラス組成物の平均熱膨張係数が100×10-7/℃超まで増加することが見出されており、これは望ましくないであろう。
【0079】
実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、12モル%以上かつ20モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、12.5モル%以上かつ19モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、12モル%以上、12.5モル%以上、又はさらに13モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、20モル%以下、19モル%以下、17モル%以下、又はさらに15モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、12モル%以上かつ20モル%以下、12モル%以上かつ19モル%以下、12モル%以上かつ17モル%以下、12モル%以上かつ15モル%以下、12.5モル%以上かつ20モル%以下、12.5モル%以上かつ19モル%以下、12.5モル%以上かつ17モル%以下、12.5モル%以上かつ15モル%以下、13モル%以上かつ20モル%以下、13モル%以上かつ19モル%以下、13モル%以上かつ17モル%以下、若しくはさらに13モル%以上かつ15モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0080】
本明細書に記載されるガラス組成物は、MgOをさらに含みうる。MgOは、ガラス組成物の粘度を下げ、それにより、成形性、歪み点、及びヤング率を高め、イオン交換性を改善することができる。しかしながら、ガラス組成物に添加されるMgOが多すぎると、ガラス組成物中のナトリウム及びカリウムイオンの拡散性が低下し、それにより、得られるガラスのイオン交換性能(すなわち、イオン交換能力)に悪影響を与える。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ15モル%以下のMgOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ13モル%以下のMgOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のMgOの濃度は、0モル%以上、1モル%以上、又はさらに2モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のMgOの濃度は、15モル%以下、13モル%以下、10モル%以下、7モル%以下、又はさらに5モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のMgOの濃度は、0モル%以上かつ15モル%以下、0モル%以上かつ13モル%以下、0モル%以上かつ10モル%以下、0モル%以上かつ7モル%以下、0モル%以上かつ5モル%以下、1モル%以上かつ15モル%以下、1モル%以上かつ13モル%以下、1モル%以上かつ10モル%以下、1モル%以上かつ7モル%以下、1モル%以上かつ5モル%以下、2モル%以上かつ15モル%以下、2モル%以上かつ13モル%以下、2モル%以上かつ10モル%以下、2モル%以上かつ7モル%以下、若しくはさらに2モル%以上かつ5モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0081】
本明細書に記載されるガラス組成物は、CaOをさらに含みうる。CaOは、ガラス組成物の粘度を下げ、それにより、成形性、歪み点、及びヤング率を高め、イオン交換性を改善することができる。しかしながら、ガラス組成物に添加されるCaOが多すぎると、ガラス組成物中のナトリウム及びカリウムイオンの拡散性が低下し、それにより、得られるガラスのイオン交換性能(すなわち、イオン交換能力)に悪影響を与える。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ5モル%以下のCaOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のCaOの濃度は、0モル%以上、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又はさらに1モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のCaOの濃度は、5モル%以下、又はさらに3モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のCaOの濃度は、0モル%以上かつ5モル%以下、0モル%以上かつ3モル%以下、0.1モル%以上かつ5モル%以下、0.1モル%以上かつ3モル%以下、0.5モル%以上かつ5モル%以下、0.5モル%以上かつ3モル%以下、1モル%以上かつ5モル%以下、若しくはさらに1モル%以上かつ3モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。実施形態では、ガラス組成物は、CaOを含まないものでありうる。
【0082】
実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ5モル%以下のSrOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のSrOの濃度は、0モル%以上、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又はさらに1モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のSrOの濃度は、5モル%以下、又はさらに3モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のSrOの濃度は、0モル%以上かつ5モル%以下、0モル%以上かつ3モル%以下、0.1モル%以上かつ5モル%以下、0.1モル%以上かつ3モル%以下、0.5モル%以上かつ5モル%以下、0.5モル%以上かつ3モル%以下、1モル%以上かつ5モル%以下、若しくはさらに1モル%以上かつ3モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。実施形態では、ガラス組成物は、SrOを含まないものでありうる。
【0083】
実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ5モル%以下のBaOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のBaOの濃度は、0モル%以上、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又はさらに1モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のBaOの濃度は、5モル%以下、又はさらに3モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のBaOの濃度は、0モル%以上かつ5モル%以下、0モル%以上かつ3モル%以下、0.1モル%以上かつ5モル%以下、0.1モル%以上かつ3モル%以下、0.5モル%以上かつ5モル%以下、0.5モル%以上かつ3モル%以下、1モル%以上かつ5モル%以下、若しくはさらに1モル%以上かつ3モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。実施形態では、ガラス組成物は、BaOを含まないものでありうる。
【0084】
実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上かつ5モル%以下のZnOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のZnOの濃度は、0モル%以上、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又はさらに1モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のZnOの濃度は、5モル%以下、又はさらに3モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のZnOの濃度は、0モル%以上かつ5モル%以下、0モル%以上かつ3モル%以下、0.1モル%以上かつ5モル%以下、0.1モル%以上かつ3モル%以下、0.5モル%以上かつ5モル%以下、0.5モル%以上かつ3モル%以下、1モル%以上かつ5モル%以下、若しくはさらに1モル%以上かつ3モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。実施形態では、ガラス組成物は、ZnOを含まないものでありうる。
【0085】
すべての二価カチオン酸化物の合計は、本明細書ではROで表される。具体的には、ROは、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOの合計(モル%単位)である(すなわち、RO=MgO(モル%)+CaO(モル%)+SrO(モル%)+BaO(モル%)+ZnO(モル%))。ガラス組成物中のROの濃度は、比較的速いイオン交換を可能にするように(例えば、17.5モル%以下に)制限されうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、0モル%以上かつ17.5モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、0モル%超かつ15モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、0モル%以上、0モル%超、0.1モル%以上、1モル%以上、又はさらに2モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、17.5モル%以下、15モル%以下、12.5モル%以下、10モル%以下、又はさらに7.5モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROの濃度は、0モル%以上かつ17.5モル%以下、0モル%以上かつ15モル%以下、0モル%以上かつ12.5モル%以下、0モル%以上かつ10モル%以下、0モル%以上かつ7.5モル%以下、0モル%超かつ17.5モル%以下、0モル%超かつ15モル%以下、0モル%超かつ12.5モル%以下、0モル%超かつ10モル%以下、0モル%超かつ7.5モル%以下、0.1モル%以上かつ17.5モル%以下、0.1モル%以上かつ15モル%以下、0.1モル%以上かつ12.5モル%以下、0.1モル%以上かつ10モル%以下、0.1モル%以上かつ7.5モル%以下、1モル%以上かつ17.5モル%以下、1モル%以上かつ15モル%以下、1モル%以上かつ12.5モル%以下、1モル%以上かつ10モル%以下、1モル%以上かつ7.5モル%以下、2モル%以上かつ17.5モル%以下、2モル%以上かつ15モル%以下、2モル%以上かつ12.5モル%以下、2モル%以上かつ10モル%以下、若しくはさらに2モル%以上かつ7.5モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0086】
ガラス組成物中のROとROの合計量は、ガラス組成物の失透を防ぐように(すなわち、30モル%以下に)制限されうる。実施形態では、ガラス組成物中のROとROの合計量(すなわち、RO(モル%)+RO(モル%))は、10モル%以上、12モル%以上、14モル%以上、又はさらに16モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROとROの合計量は、30モル%以下、25モル%以下、又はさらに20モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のROとROの合計量は、10モル%以上かつ30モル%以下、10モル%以上かつ25モル%以下、10モル%以上かつ20モル%以下、12モル%以上かつ30モル%以下、12モル%以上かつ25モル%以下、12モル%以上かつ20モル%以下、14モル%以上かつ30モル%以下、14モル%以上かつ25モル%以下、14モル%以上かつ20モル%以下、16モル%以上かつ30モル%以下、16モル%以上かつ25モル%以下、若しくはさらに16モル%以上かつ20モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0087】
実施形態では、ガラス組成物は、過アルミナであり(すなわち、ガラス組成物中のAlの量は、ROとROの合計より大きい)、これは、ガラス組成物が損傷及び/又は破損に対してより耐性となるように、ガラス組成物の破壊靭性を増加させることができる。実施形態では、ガラス組成物中のAlからROとROの合計を差し引いた量(すなわち、Al(モル%)-RO(モル%)-RO(モル%))は、-0.5モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl-RO-ROは、0モル%以上かつ20モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl-RO-ROは、-0.5モル%以上、0モル%以上、0.1モル%以上、1モル%以上、又はさらに2モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl-RO-ROは、20モル%以下、18モル%以下、16モル%以下、又はさらに14モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl-RO-ROは、-0.5モル%以上かつ20モル%以下、-0.5モル%以上かつ18モル%以下、-0.5モル%以上かつ16モル%以下、-0.5モル%以上かつ14モル%以下、0モル%以上かつ20モル%以下、0モル%以上かつ18モル%以下、0モル%以上かつ16モル%以下、0モル%以上かつ14モル%以下、0.1モル%以上かつ20モル%以下、0.1モル%以上かつ18モル%以下、0.1モル%以上かつ16モル%以下、0.1モル%以上かつ14モル%以下、1モル%以上かつ20モル%以下、1モル%以上かつ18モル%以下、1モル%以上かつ16モル%以下、1モル%以上かつ14モル%以下、2モル%以上かつ20モル%以下、2モル%以上かつ18モル%以下、2モル%以上かつ16モル%以下、若しくはさらに2モル%以上かつ14モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0088】
実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計はROとROの合計よりも大きく、これにより、ガラス組成物が損傷及び/又は破損に対してより耐性となるようにガラス組成物の破壊靭性を高めることができる。実施形態では、ガラス組成物中のAlとBの合計からROとROの合計を差し引いた量(すなわち、Al(モル%)+B(モル%)-RO(モル%)-RO(モル%))は、2モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl+B-RO-ROは、4モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl+B-RO-ROは、2モル%以上、4モル%以上、又はさらに6モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl+B-RO-ROは、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、又はさらに30モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のAl+B-RO-ROは、2モル%以上かつ45モル%以下、2モル%以上かつ40モル%以下、2モル%以上かつ35モル%以下、2モル%以上かつ30モル%以下、4モル%以上かつ45モル%以下、4モル%以上かつ40モル%以下、4モル%以上かつ35モル%以下、4モル%以上かつ30モル%以下、6モル%以上かつ45モル%以下、6モル%以上かつ40モル%以下、6モル%以上かつ35モル%以下、若しくはさらに6モル%以上かつ30モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。
【0089】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物はさらに、1つ以上の清澄剤を含みうる。実施形態では、清澄剤は、例えば、SnOを含みうる。実施形態では、ガラス組成物中のSnOの濃度は、0モル%以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のSnOの濃度は、1モル%以下、0.5モル%以下、0.4モル%以下、0.3モル%以下、0.2モル%以下、又はさらに0.1モル%以下でありうる。実施形態では、ガラス組成物中のSnOの濃度は、0モル%以上かつ1モル%以下、0モル%以上かつ0.5モル%以下、0モル%以上かつ0.4モル%以下、0モル%以上かつ0.3モル%以下、0モル%以上かつ0.2モル%以下、若しくはさらに0モル%以上かつ0.1モル%以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲でありうる。実施形態では、ガラス組成物は、SnOを含まないものとすることができる。
【0090】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物はさらに、トランプ物質、例えば、FeO、Fe、MnO、MoO、La、CdO、As、Sb、硫黄ベースの化合物、例えば、硫酸塩、ハロゲン、又はそれらの組合せを含みうる。
【0091】
実施形態では、ガラス組成物は、24モル%以上かつ60モル%以下のSiO;23モル%以上かつ35モル%以下のAl;3.5モル%以上かつ35モル%以下のB;0モル%超かつ20モル%以下のLiO;0モル%以上かつ10モル%以下のNaO;及び、0モル%以上かつ3モル%以下のKOを含むことができ、ここで、ROは12モル%以上かつ20モル%以下であり、ROはLiO、NaO、及びKOの合計である。
【0092】
本明細書に記載されるガラス組成物から形成される物品は、任意の適切なの形状又は厚さとすることができ、これは、ガラス組成物の使用のための特定の用途に応じて変化させることができる。ガラスシートの実施形態は、30μm以上、50μm以上、100μm以上、250μm以上、500μm以上、750μm以上、又はさらに1mm以上の厚さを有しうる。実施形態では、ガラスシートの実施形態は、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、又はさらに2mm以下の厚さを有しうる。実施形態では、ガラスシートの実施形態は、30μm以上かつ6mm以下、30μm以上かつ5mm以下、30μm以上かつ4mm以下、30μm以上かつ3mm以下、30μm以上かつ2mm以下、50μm以上かつ6mm以下、50μm以上かつ5mm以下、50μm以上かつ4mm以下、50μm以上かつ3mm以下、50μm以上かつ2mm以下、100μm以上かつ6mm以下、100μm以上かつ5mm以下、100μm以上かつ4mm以下、100μm以上かつ3mm以下、100μm以上かつ2mm以下、250μm以上かつ6mm以下、250μm以上かつ5mm以下、250μm以上かつ4mm以下、250μm以上かつ3mm以下、250μm以上かつ2mm以下、500μm以上かつ6mm以下、500μm以上かつ5mm以下、500μm以上かつ4mm以下、500μm以上かつ3mm以下、500μm以上かつ2mm以下、750μm以上かつ6mm以下、750μm以上かつ5mm以下、750μm以上かつ4mm以下、750μm以上かつ3mm以下、750μm以上かつ2mm以下、1mm以上及び6mm以下、1mm以上及び5mm以下、1mm以上及び4mm以下、1mm以上及び3mm以下、若しくはさらに1mm以上及び2mm以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の厚さを有しうる。
【0093】
上で論じたように、本明細書に記載されるガラス組成物は、該ガラス組成物が損傷に対してより耐性となるように、増加した破壊靭性を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、0.75MPa・m1/2以上、0.8MPa・m1/2以上、0.9MPa・m1/2以上、1.0MPa・m1/2以上、又はさらに1.1MPa・m1/2以上のKIc破壊靭性を有しうる。
【0094】
実施形態では、ガラス組成物は、70GPa以上、75GPa以上、又はさらに80GPa以上のヤング率を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、120GPa以下、110GPa以下、又はさらに100GPa以下のヤング率を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、70GPa以上かつ120GPa以下、70GPa以上かつ110GPa以下、70GPa以上かつ100GPa以下、75GPa以上かつ120GPa以下、75GPa以上かつ110GPa以下、75GPa以上かつ100GPa以下、80GPa以上かつ120GPa以下、80GPa以上かつ110GPa以下、若しくはさらに80GPa以上かつ100GPa以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲のヤング率を有しうる。
【0095】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、比較的高い、KIc破壊靭性のヤング率に対する比を有しており、ガラス組成物が損傷に対してより耐性となるように破壊エネルギーを増加させることができる。実施形態では、ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する比は0.0095m1/2以上でありうる。実施形態では、ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する比は0.01m1/2以上でありうる。
【0096】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、比較的高いポアソン比を有しており、ガラス組成物が損傷に対してより耐性となるように破壊エネルギーを増加させることができる。実施形態では、ガラス組成物は、0.22以上、0.23以上、又はさらに0.24以上のポアソン比を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、0.28以下、0.27以下、又はさらに0.26以下のポアソン比を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、0.22以上及び0.28以下、0.22以上及び0.27以下、0.22以上及び0.26以下、0.23以上及び0.28以下、0.23以上及び0.27以下、0.23以上及び0.26以下、0.24以上及び0.28以下、0.24以上及び0.27以下、若しくはさらに0.24以上及び0.26以下、又はこれらの端点のいずれかによって形成されるあらゆる部分範囲のポアソン比を有しうる。
【0097】
実施形態では、ガラス組成物は、2.3g/cm以上、2.35g/cm以上、又はさらに2.4g/cm以上の密度を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、2.6g/cm以下、2.55g/cm以下、又はさらに2.5g/cm以下の密度を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、2.3g/cm以上かつ2.6g/cm以下、2.3g/cm以上かつ2.55g/cm以下、2.3g/cm以上かつ2.5g/cm以下、2.35g/cm以上かつ2.6g/cm以下、2.35g/cm以上かつ2.55g/cm以下、2.35g/cm以上かつ2.5g/cm以下、2.4g/cm以上かつ2.6g/cm以下、2.4g/cm以上かつ2.55g/cm以下、若しくはさらに2.4g/cm以上かつ2.5g/cm以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の密度を有しうる。
【0098】
実施形態では、ガラス組成物は、3ppm以上、4ppm以上、又はさらに5ppm以上の300℃冷却におけるCTEを有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、8ppm以下、7ppm以下、又はさらに6ppm以下の300℃冷却におけるCTEを有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、3ppm以上かつ8ppm以下、3ppm以上かつ7ppm以下、3ppm以上かつ6ppm以下、4ppm以上かつ8ppm以下、4ppm以上かつ7ppm以下、4ppm以上かつ6ppm以下、5ppm以上かつ8ppm以下、5ppm以上かつ7ppm以下、若しくはさらに5ppm以上かつ6ppm以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の300℃冷却におけるCTEを有しうる。
【0099】
実施形態では、ガラス組成物は、3ppm以上、4ppm以上、又はさらに5ppm以上の50℃冷却におけるCTEを有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、8ppm以下、7ppm以下、又はさらに6ppm以下の50℃冷却におけるCTEを有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、3ppm以上かつ8ppm以下、3ppm以上かつ7ppm以下、3ppm以上かつ6ppm以下、4ppm以上かつ8ppm以下、4ppm以上かつ7ppm以下、4ppm以上かつ6ppm以下、5ppm以上かつ8ppm以下、5ppm以上かつ7ppm以下、若しくはさらに5ppm以上かつ6ppm以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の50℃冷却におけるCTEを有しうる。
【0100】
実施形態では、ガラス組成物は、400℃以上、450℃以上、又はさらに500℃以上の歪み点を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、700℃以下、650℃以下、又はさらに600℃以下の歪み点を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、400℃以上かつ700℃以下、400℃以上かつ650℃以下、400℃以上かつ600℃以下、450℃以上かつ700℃以下、450℃以上かつ650℃以下、450℃以上かつ600℃以下、500℃以上かつ700℃以下、500℃以上かつ650℃以下、若しくはさらに500℃以上かつ600℃以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の歪み点を有しうる。
【0101】
実施形態では、ガラス組成物は、500℃以上、又はさらに550℃以上のアニール点を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、800℃以下、又はさらに700℃以下のアニール点を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、500℃以上かつ800℃以下、500℃以上かつ700℃以下、550℃以上かつ800℃以下、若しくはさらに550℃以上かつ700℃以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲のアニール点を有しうる。
【0102】
実施形態では、ガラス組成物は、600℃以上、又はさらに700℃以上の軟化点を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、900℃以下、又はさらに800℃以下の軟化点を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、600℃以上かつ900℃以下、600℃以上かつ800℃以下、700℃以上かつ900℃以下、若しくはさらに700℃以上かつ800℃以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の軟化点を有しうる。
【0103】
実施形態では、ガラス組成物は、25GPa以上、30GPa以上、又はさらに32GPa以上の剪断弾性率を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、50GPa以下、45GPa以下、又はさらに43GPa以下の剪断弾性率を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、25GPa以上かつ50GPa以下、25GPa以上かつ45GPa以下、25GPa以上かつ43GPa以下、30GPa以上かつ50GPa以下、30GPa以上かつ45GPa以下、30GPa以上かつ43GPa以下、32GPa以上かつ50GPa以下、32GPa以上かつ45GPa以下、若しくはさらに32GPa以上かつ43GPa以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の剪断弾性率を有しうる。
【0104】
実施形態では、ガラス組成物は、1.4以上、1.45以上、又はさらに1.5以上の屈折率を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、1.6以下、又はさらに1.55以下の屈折率を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、1.4以上かつ1.6以下、1.4以上かつ1.55以下、1.45以上かつ1.6以下、1.45以上かつ1.55以下、1.5以上かつ1.6以下、若しくはさらに1.5以上かつ1.55以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の屈折率を有しうる。
【0105】
実施形態では、ガラス組成物は、2.25nm/mm/MPa以上、又はさらに2.5nm/mm/MPa以上の応力光学係数(SOC)を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、3.75nm/mm/MPa以下、又はさらに3.5nm/mm/MPa以下のSOCを有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、2.25nm/mm/MPa以上かつ3.75nm/mm/MPa以下、2.25nm/mm/MPa以上かつ3.5nm/mm/MPa以下、2.5nm/mm/MPa以上かつ3.75nm/mm/MPa以下、若しくはさらに2.5nm/mm/MPa以上かつ3.5nm/mm/MPa以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲のSOCを有しうる。
【0106】
実施形態では、ガラス組成物は、1P以上、50P以上、又はさらに100P以上の液相粘度を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、2kP以下、1kP以下、又はさらに0.5kP以下の液相粘度を有しうる。実施形態では、ガラス組成物は、1P以上かつ2kP以下、1P以上かつ1kP以下、1P以上かつ0.5kP以下、50P以上かつ2kP以下、50P以上かつ1kP以下、50P以上かつ0.5kP以下、100P以上かつ2kP以下、100P以上かつ1kP以下、若しくはさらに100P以上かつ0.5kP以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の液相粘度を有しうる。これらの粘度範囲により、ガラス組成物を、フュージョン成形、スロットドロー、フローティング、圧延、及び当業者に知られている他のシート成形プロセスを含むがこれらに限定されない、さまざまな異なる技法によってシートへと成形することが可能となる。しかしながら、他の物品(すなわち、シート以外)を成形するために、他のプロセスを使用することができるものと理解されたい。
【0107】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、該ガラス組成物から製造されたガラス物品の強化を促進するようにイオン交換可能である。典型的なイオン交換プロセスでは、ガラス組成物中のより小さい金属イオンが、ガラス組成物から製造されたガラス物品の外面に近い層内の同じ原子価のより大きい金属イオンと置換又は「交換」される。より小さいイオンをより大きいイオンで置換すると、ガラス組成物から製造されたガラス物品の層内に圧縮応力が生じる。実施形態では、金属イオンは一価の金属イオン(例えば、Li、Na、Kなど)であり、イオン交換は、ガラス組成物から製造されたガラス物品を、該ガラス物品中のより小さい金属イオンを置換する、より大きい金属イオンの少なくとも1つの溶融塩を含む浴に浸漬することによって達成される。あるいは、Ag、Tl、Cuなどの他の一価のイオンが、一価のイオンと交換されうる。ガラス組成物から製造されたガラス物品を強化するために用いられる一又は複数のイオン交換プロセスは、浸漬の合間の洗浄及び/又はアニーリングステップを伴う、単一の浴又は同様の組成若しくは異なる組成の複数の浴への浸漬を含みうるが、これらに限定されない。
【0108】
ガラス物品への曝露の際、イオン交換溶液(例えば、KNO及び/又はNaNO溶融塩浴)は、実施形態によれば、350℃以上かつ500℃以下、360℃以上かつ450℃以下、370℃以上かつ440℃以下、360℃以上かつ420℃以下、370℃以上かつ400℃以下、375℃以上かつ475℃以下、400℃以上かつ500℃以下、410℃以上かつ490℃以下、420℃以上かつ480℃以下、430℃以上かつ470℃以下、若しくはさらに440℃以上かつ460℃以下、又は前述の値の間のあらゆる部分範囲の温度でありうる。実施形態では、ガラス組成物は、2時間以上かつ48時間以下、2時間以上かつ24時間以下、2時間以上かつ12時間以下、2時間以上かつ6時間以下、8時間以上かつ44時間以下、12時間以上かつ40時間以下、16時間以上かつ36時間以下、20時間以上かつ32時間以下、若しくはさらに24時間以上かつ28時間以下の時間、又は前述の値の間のあらゆる部分範囲の時間、イオン交換溶液に曝露されうる。
【0109】
得られる圧縮応力層は、2時間のイオン交換時間でガラス物品の表面に少なくとも100μmの深さ(「圧縮深さ」又は「DOC」とも呼ばれる)を有しうる。実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、又はさらに100μm以上の圧縮深さを達成するようにイオン交換されうる。実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、少なくとも10MPaの中央張力を達成するようにイオン交換されうる。この表面圧縮層の発達は、イオン交換されていない材料と比較して、より優れた耐亀裂性及びより高い曲げ強度を達成するのに有益である。表面圧縮層は、ガラス物品の本体(すなわち、表面圧縮を含まない領域)のガラス物品内へと交換されるイオンの濃度と比較して、ガラス物品内へと交換されるイオンの濃度がより高い。
【0110】
実施形態では、ガラス物品は、厚さtと、0.32t以下、0.3t以下、0.28t以下、又はさらに0.26t以下のDOCとを有しうる。
【0111】
実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、イオン交換強化後に、20MPa以上、50MPa以上、75MPa以上、100MPa以上、250MPa以上、500MPa以上、750MPa以上、又はさらに1GPa以上の表面圧縮応力を有しうる。実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、イオン交換強化後に、20MPa以上かつ1GPa以下、20MPa以上かつ750MPa以下、20MPa以上かつ500MPa以下、20MPa以上及び250MPa以下、50MPa以上かつ1GPa以下、50MPa以上かつ750MPa以下、50MPa以上かつ500MPa以下、50MPa以上かつ250MPa以下、75MPa以上かつ1GPa以下、75MPa以上かつ750MPa以下、75MPa以上かつ500MPa以下、75MPa以上及び250MPa以下、100MPa以上かつ1GPa以下、100MPa以上かつ750MPa以下、100MPa以上かつ500MPa以下、100MPa以上及び250MPa以下、250MPa以上かつ1GPa以下、250MPa以上かつ750MPa以下、250MPa以上かつ500MPa以下、500MPa以上かつ1GPa以下、500MPa以上かつ750MPa以下、若しくはさらに750MPa以上かつ1GPa以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の表面圧縮応力を有しうる。
【0112】
実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、イオン交換強化後に、10MPa以上、25MPa以上、又はさらに50MPa以上の中央張力を有しうる。実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、イオン交換強化後に、250MPa以下、200MPa以下、又はさらに150MPa以下の中央張力を有しうる。実施形態では、ガラス組成物から製造されたガラス物品は、イオン交換強化後に、10MPa以上かつ250MPa以下、25MPa以上かつ250MPa以下、50MPa以上かつ250MPa以下、10MPa以上かつ200MPa以下、25MPa以上かつ200MPa以下、50MPa以上かつ200MPa以下、10MPa以上かつ150MPa以下、25MPa以上かつ150MPa以下、若しくはさらに50MPa以上かつ150MPa以下、又はこれらの端点のいずれかから形成されるあらゆる部分範囲の中央張力を有しうる。
【0113】
実施形態では、ガラス物品を製造するプロセスは、ガラス組成物を1つ以上の予め選択された温度で1つ以上の予め選択された時間で熱処理してガラスの均質化を誘導することを含む。実施形態では、ガラス物品を製造するための熱処理は、(i)ガラス組成物を1~100℃/分の速度でガラス均質化温度まで加熱すること;(ii)ガラス組成物を0.25時間以上かつ4時間以下の時間、ガラス均質化温度で維持してガラス物品を生成すること;及び、(iii)形成されたガラス物品を室温まで冷却することを含みうる。実施形態では、ガラス均質化温度は、300℃以上かつ700℃以下でありうる。
【0114】
上述のように、本明細書に記載されるガラス組成物をさまざまな冷却スケジュールに供して、異なる平均透過率を有するガラス-セラミック物品を製造することができる。実施形態では、ガラス物品は、透明(すなわち、75%以上の平均透過率を有する)、半透明(すなわち、20%以上かつ75%以下の平均透過率を有する)、又は不透明(すなわち、20%未満の平均透過率を有する)でありうる。
【0115】
実施形態では、ガラス-セラミック物品を製造するプロセスは、再加熱ステップを実施する必要なく、後成形(例えば、圧延、キャスティング、フュージョン、スロットドロー、フロートなど)を直接実施することができる。次に図1を参照すると、熱プロファイルAに関して示されているように、冷却スケジュールは、(i)成形されたガラス組成物を成形プロセス温度T(すなわち、溶融物)から核形成温度範囲Tまで1℃/分以上かつ500℃/分以下の平均冷却速度で冷却すること;(ii)成形されたガラス組成物を核形成温度範囲Tで60秒以上かつ48時間以下の間維持して、ガラス-セラミック物品を生成すること;(iii)形成されたガラス-セラミック物品を1℃/分以上かつ500℃/分以下の平均冷却速度でガラス-セラミック物品の有効アニーリング温度±20℃のTまで冷却すること;(iv)ガラス-セラミック物品をガラス-セラミック物品の有効アニーリング温度±20℃のTで15分以上かつ1時間以下の時間維持すること;及び、(v)ガラス-セラミック物品を室温Tまで冷却することを含みうる。
【0116】
実施形態では、次に図1の熱プロファイルBを参照すると、冷却スケジュールには、有効なアニーリング温度への冷却が含まれていなくてもよい。したがって、実施形態では、冷却スケジュールは、(i)成形されたガラス組成物を成形プロセス温度Tから核形成温度範囲Tまで1℃/分以上かつ500℃/分以下の平均冷却速度で冷却すること;(ii)成形されたガラス組成物を核形成温度範囲Tで60秒以上かつ48時間以下の時間維持して、ガラス-セラミック物品を形成すること;(iii)ガラス-セラミック物品を室温Tまで冷却することを含みうる。
【0117】
実施形態では、上述の冷却スケジュールのいずれも、一定又は変化する冷却速度を有することができる。
【0118】
実施形態では、成形プロセス温度Tから核形成温度範囲Tまでのより高い平均冷却速度により、透明なガラス物品が得られる。理論に束縛されることは望まないが、より高い平均冷却速度では、ガラス物品がガラスを失透させるためにより高い温度(例えば、T)で十分な時間を費やさないことから、ガラス物品は透明のままであると考えられる。実施形態では、成形プロセス温度Tから核形成温度範囲Tまでのより低い平均冷却速度は、不透明なガラス物品をもたらしうる。理論に束縛されることは望まないが、平均冷却速度が遅いと、ガラス物品がガラスを失透させるのに十分な時間を高温(例えば、>T)で費やすため、ガラス物品は不透明になると考えられる。
【0119】
実施形態では、核形成温度範囲Tは、1000℃以上かつ1600℃以下、1100℃以上かつ1500℃以下、又はさらに1200℃以上かつ1400℃以下でありうる。
【0120】
冷却スケジュールは、結果として得られるガラス-セラミックの最終的な完全性、品質、色、及び/又は不透明度に影響を与える可能性がある、次の所望される属性の1つ以上を生成するように賢明に規定される:ガラス-セラミックの(一又は複数の)結晶相、1つ以上の主結晶相及び/又は1つ以上の副結晶相とガラスとの比率、1つ以上の主結晶相及び/又は1つ以上の副結晶相とガラスとの結晶相集合体、及び1つ以上の主結晶相及び/又は1つ以上の副結晶相の間の粒度又は粒度分布。実施形態では、ガラス-セラミックの結晶相は、ボロムライト(boromullite)、コランダム、スポジュメン、スピネル、ムライト、又はそれらの組合せを含みうるが、これらに限定されない。
【0121】
上述のように、本明細書に記載されるガラス組成物を、これらのさまざまな冷却スケジュールに供して、異なる色を有するガラスセラミック物品を製造することができる。実施形態では、ガラス-セラミック物品は、白色(すなわち、80以上のL*;2以下の|a*|;及び、3以下の|b*|のCIELAB色空間における透過色座標を有する)であってもよく、又はパターン化されていてもよい(すなわち、白色のCIELAB色空間に第1の透過色座標及び白色のCIELAB色空間とは異なる別のCIELAB色空間に第2の透過色座標を有する)。
【0122】
実施形態では、ガラス-セラミック物品は、70以上かつ98以下のCIELAB色空間における明度L*値を有しうる。実施形態では、ガラス-セラミック物品は、-2以上かつ3以下のCIELAB色空間における赤/緑値a*を有しうる。実施形態では、ガラス-セラミック物品は、-2以上かつ6以下のCIELAB色空間における青/黄値b*を有しうる。
【0123】
実施形態では、1つ以上の結晶相は、非アルカリ含有でありうる。特に、ガラス組成物中に存在するアルカリは、結晶化後に残留ガラス相に存在する可能性があり、そのため、イオン交換を受けやすい。
【0124】
結果として得られるガラス-セラミックは、シートとして提供されてよく、これが次に、プレス、ブロー、曲げ、たるみ、真空成形、又は他の手段によって、均一な厚さの湾曲した又は曲がった片へと再形成されうる。再形成は、熱処理の前に行うことができ、又は成形工程は、成形工程と熱処理工程とが実質的に同時に行われる熱処理工程として機能してもよい。
【0125】
本明細書に記載されるガラス組成物は、例えば、LCD及びLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、及び現金自動預け払い機(ATM)などの消費者用又は商用電子デバイスのためのカバーガラス若しくはガラスバックプレーン用途;タッチスクリーン若しくはタッチセンサ用途;例えば、携帯電話、パーソナルメディアプレーヤー、及びタブレットコンピュータを含む携帯用電子機器;例えば、半導体ウェハを含む集積回路用途;太陽光発電用途;建築用ガラス用途;自動車若しくは車両用ガラス用途;又は、商用若しくは家庭用電化製品用途を含めたさまざまな用途に使用することができる。実施形態では、消費者向け電子デバイス(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ウルトラブック、テレビ、及びカメラ)、建築用ガラス、及び/又は自動車用ガラスは、本明細書に記載されるガラス物品を含みうる。本明細書に開示されるガラス組成物のいずれかを組み込んだ例示的な物品は、筐体;少なくとも部分的に又は完全に筐体内にあり、筐体の前面か又はそれに隣接しているコントローラ、メモリ、及びディスプレイを少なくとも含む電気部品;並びに、筐体の前面又はその上にあってディスプレイを覆うカバー基板を含む、消費者向け電子デバイスでありうる。幾つかの実施形態では、カバー基板及び/又は筐体の少なくとも一方の少なくとも一部は、本明細書に開示されるガラス組成物のいずれかを含みうる。
【実施例
【0126】
さまざまな実施形態をより容易に理解するために、本明細書に記載されるガラス組成物のさまざまな実施形態を例示することを意図している以下の実施例を参照する。
【0127】
表1は、ガラス組成(モル%単位)、及びそれぞれのガラス組成の特性を示している。ガラス組成1~67を有するガラスが形成される。
【0128】
【表1-1】
【0129】
【表1-2】
【0130】
【表1-3】
【0131】
【表1-4】
【0132】
【表1-5】
【0133】
【表1-6】
【0134】
【表1-7】
【0135】
【表1-8】
【0136】
【表1-9】
【0137】
【表1-10】
【0138】
【表1-11】
【0139】
【表1-12】
【0140】
表1の実施例のガラス組成によって示されるように、本明細書に記載されるガラス組成物は、該ガラス組成物が損傷に対してより耐性となるように、増加したKIc破壊靭性を有する。さらには、本明細書に記載されるガラス組成物は、比較的高い、KIc破壊靭性のヤング率に対する比、及び比較的高いポアソン比を有しており、その両方が、ガラス組成物が損傷に対してより耐性となるように、破壊エネルギーを増加させる。
【0141】
次に図2を参照すると、実施例のガラス組成物2を溶融物から空気中1650℃、室温(すなわち、20℃)で3分間冷却し、次いで500℃のオーブン内で冷却すると、透明なガラス物品GC2Aが得られる。実施例のガラス組成物2を溶融物から空気中1650℃、室温で2分間冷却し、次いで500℃のオーブン内で冷却すると、不透明な白色のガラス-セラミック物品GC2Bが得られる。実施例のガラス組成物2を溶融物から空気中1650℃、室温で1分間冷却し、次いで500℃のオーブン内で冷却すると、不透明なパターン化されたガラス-セラミック物品GC2Cが得られる。図2に示すガラス物品によって示されるように、本明細書に記載されるガラス組成物は、異なる冷却スケジュールに供されて、透明なガラス物品;不透明な白色のガラス-セラミック物品;及び、不透明なパターン化されたガラス-セラミック物品を生成することができる。
【0142】
次に表2を参照すると、XRDデータは、実施例のガラス組成物33~38を溶融物から空気中1650℃、室温(すなわち、20℃)で2分間冷却し、次いで500℃のオーブン内で冷却すること(以後、「実施例の冷却スケジュール」)により、ボロムライト結晶相及び/又はコランダム結晶相を有するガラス-セラミック物品がもたらされることを示している。次に図3を参照すると、実施例の冷却スケジュールに供した後の例えばガラス組成物33のXRDスペクトルは、ボロムライト結晶相の存在を証明するピークを含んでいる。次に図4を参照すると、実施例の冷却スケジュールに供した後の例えばガラス組成物37のXRDスペクトルは、ボロムライト結晶相とコランダム結晶相の存在を証明するピークを含んでいる。ボロムライト及びコランダム結晶相は非アルカリ含有である。表2並びに図3及び4によって示されるように、本明細書に記載されるガラス組成物を冷却して、該ガラス組成物中に存在するアルカリが結晶化後に残留ガラス中に残され、イオン交換されるように、1つ以上の非アルカリ含有結晶相を有するガラス-セラミックを形成することができる。
【0143】
【表2】
【0144】
次に図5を参照すると、実施例のガラス組成物33を実施例の冷却スケジュールに供すると、不透明な白色のガラス-セラミック物品GC33Aが得られる。GC33Aの白色は、表3に示されるように、GC33AのCIELAB色空間によって確認される。GC33Aによって示されるように、ボロムライト結晶相の存在は、図3に示されるXRDスペクトルによって証明されるように、不透明な白色のガラス-セラミック物品が得られる。
【0145】
【表3】
【0146】
再び図5を参照すると、実施例のガラス組成物37を実施例の冷却スケジュールに供すると、不透明なパターン化されたガラス-セラミック物品GC37A及びGC37Bが得られる。GC37A及びGC37Bによって示されるように、コランダム結晶相の存在は、図4に示されるXRDスペクトルによって証明されるように、不透明なパターン化されたガラス-セラミック物品が得られる。
【0147】
次に図6を参照すると、ガラス組成物33~38を実施例の冷却スケジュールに供することにより、0%の平均透過率(すなわち、可視波長範囲内)を有し、IR波長範囲内(すなわち、800~2500nm)で透過する(これは、得られたガラス-セラミック物品が不透明なガラス-セラミック物品であることを示している)、ガラス-セラミック物品が得られる。次に図7を参照すると、ガラス組成物33~38を実施例の冷却スケジュールに供することにより、400nmから700nmの間にピーク反射率を有する(これは、得られたガラス-セラミック物品が白色であることを示している)、ガラス-セラミック物品が得られる。
【0148】
表3及び図5~7によって示されるように、本明細書に記載されるガラス組成物は、冷却スケジュールに供されて、不透明な白色のガラス-セラミック物品を形成しうる。
【0149】
特許請求の範囲に記載の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態にさまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書は、このような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入る限り、本明細書、に記載されるさまざまな実施形態の修正及び変更に及ぶことが意図されている。
【0150】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0151】
実施形態1
ガラス組成物であって、
24モル%以上かつ60モル%以下のSiO
23モル%以上かつ35モル%以下のAl
3.5モル%以上かつ35モル%以下のB
0モル%超かつ20モル%以下のLiO、
0モル%以上かつ10モル%以下のNaO、及び
0モル%以上かつ3モル%以下のK
を含み、ここで、
Oは12モル%以上かつ20モル%以下であり、ROはLiO、NaO、及びKOの合計である、
ガラス組成物。
【0152】
実施形態2
Al+Bが28モル%以上かつ60モル%以下である、実施形態1に記載のガラス組成物。
【0153】
実施形態3
前記ガラス組成物が、24モル%以上かつ34モル%以下のAlを含む、実施形態1又は実施形態2に記載のガラス組成物。
【0154】
実施形態4
前記ガラス組成物が、5モル%以上かつ30モル%以下のBを含む、実施形態1から3のいずれかに記載のガラス組成物。
【0155】
実施形態5
Al-RO-ROが-0.5モル%以上である、実施形態1から4のいずれかに記載のガラス組成物。
【0156】
実施形態6
前記ガラス組成物が、3モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含む、実施形態1から5のいずれかに記載のガラス組成物。
【0157】
実施形態7
前記ガラス組成物が、3モル%以上かつ11モル%以下のLiOを含む、実施形態6に記載のガラス組成物。
【0158】
実施形態8
前記ガラス組成物が、10モル%以上かつ18モル%以下のLiOを含む、実施形態6に記載のガラス組成物。
【0159】
実施形態9
前記ガラス組成物が、
25モル%以上かつ35モル%以下のAl、及び
3モル%以上かつ11モル%以下のLi
を含む、実施形態6に記載のガラス組成物。
【0160】
実施形態10
前記ガラス組成物が、
24モル%以上かつ30モル%以下のAl;及び
10モル%以上かつ18モル%以下のLi
を含む、実施形態6に記載のガラス組成物。
【0161】
実施形態11
Oが12.5モル%以上かつ19モル%以下である、実施形態1から10のいずれかに記載のガラス組成物。
【0162】
実施形態12
ROが0モル%以上かつ17.5モル%以下であり、かつROがMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOの合計である、実施形態1から11のいずれかに記載のガラス組成物。
【0163】
実施形態13
ROが0モル%超かつ15モル%以下である、実施形態12に記載のガラス組成物。
【0164】
実施形態14
前記ガラス組成物が、0モル%以上かつ15モル%以下のMgOを含む、実施形態1から13のいずれかに記載のガラス組成物。
【0165】
実施形態15
Al3+-RO-ROが2モル%超である、実施形態1から14のいずれかに記載のガラス組成物。
【0166】
実施形態16
前記ガラス組成物が、シェブロンノッチショートバー法で測定して、0.75MPa・m1/2以上のKIc破壊靭性を有する、実施形態1から15のいずれかに記載のガラス組成物。
【0167】
実施形態17
前記ガラス組成物が70MPa以上のヤング率を有する、実施形態1から16のいずれかに記載のガラス組成物。
【0168】
実施形態18
前記ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する比が、0.0095m1/2以上である、実施形態1から17のいずれかに記載のガラス組成物。
【0169】
実施形態19
前記ガラス組成物のKIc破壊靭性のヤング率に対する前記比が、0.01m1/2以上である、実施形態18に記載のガラス組成物。
【0170】
実施形態20
前記ガラス組成物が0.21以上のポアソン比を有する、実施形態1から19のいずれかに記載のガラス組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】