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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】TLRアゴニストによるがんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20230908BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513704
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021047826
(87)【国際公開番号】W WO2022047083
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,376
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517071025
【氏名又は名称】バーディー バイオファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, リーシン
(72)【発明者】
【氏名】アントバッカ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ファン, タオ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA14
(57)【要約】
本明細書は、イミダゾキノリンアミン薬を使用するがんに対する単剤治療の方法を提供する。さらなる方法は、がんに対する免疫チェックポイント阻害剤治療との調整を提供する。本明細書では、イミダゾキノリンアミン薬、1-[4-アミノ-2-(エトキシメチル)イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-2-メチルプロパン-2-オール、またはその薬学的に許容され得る塩、集合的に化合物Aが(文脈で別のものが指示されない限り)、治療的有用性および許容され得る毒性をもつ、がんの処置のための単剤治療として全身に投与され得る、投与量および患者集団が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、
【化2】
またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)を、単剤治療として、前記遊離塩基の0.10mg/mから1.2mg/mという投与量で投与することを含む方法。
【請求項2】
化合物Aの前記投与量が0.30mg/mから0.75mg/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物Aの前記投与量が約0.75mg/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が以前に免疫チェックポイント阻害治療で処置されたことがある、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者のがんが前記以前の処置中に進行した、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
化合物Aの単剤治療が、前記以前の処置の最後の投与後2週間から6ヶ月に開始される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
化合物Aの単剤治療が、前記以前の処置の最後の投与後12週間以内に開始される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記以前の処置が化学療法をさらに含んでいた、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法が細胞傷害性治療であった、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化学療法が標的治療であった、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫チェックポイント阻害剤治療が、PD-1/PD-L1遮断であった、請求項4~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
PD-1/PD-L1遮断が抗PD-1抗体の投与を含んでいた、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PD-1/PD-L1遮断が抗PD-L1抗体の投与を含んでいた、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ベースラインレベルを確立するための化合物Aの最初の投与の前、および応答レベルを決定するための化合物Aの6回投与後の、血漿または全血中のインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)濃度または転写レベルの定量をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
化合物Aの6回投与後のIP-10の前記血漿または全血濃度がIP-10の前記ベースラインレベルの少なくとも2倍以下である場合、化合物Aの最初の投与量が0.90mg/m未満であれば化合物Aの前記投与量を増加させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、治療有効量の化合物Aを前記患者に投与して、
a.8ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);および/または
b.3ng/mL*日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、方法。
【請求項17】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、治療有効量の化合物Aおよび抗PD-1抗体を前記患者に投与して、
a.7ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);および/または
b.2ng/mL日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、方法。
【請求項18】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、治療有効量の化合物Aおよび抗PD-L1抗体を前記患者に投与して、
a.10ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);および/または
b.2ng/mL日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、方法。
【請求項19】
maxまでの平均時間(Tmax)が前記投与後15~90分である、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物Aが全身投与される剤形に含められている、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記剤形が、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または皮内を含む非経口注射経路を介して投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記静脈内経路が、静脈内ボーラスまたは静脈内注入を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1~3用量の免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後に
【化3】
またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)を、0.10mg/mから1.2mg/mの投与量で投与することを含む、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法。
【請求項24】
化合物Aの最初の投与の後に、さらなる用量の前記免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫チェックポイント阻害剤による処置が、化合物Aによる処置と併せて継続される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年8月26日付で出願された米国特許仮出願第63/070,376号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
イミダゾキノリンアミン、例えばイミキモドおよび化合物Aなどに治療潜在性があることは、長い間認識されてきた。その潜在性を実現することは困難であることが判明した。イミダゾキノリンアミンは、一般に、Toll様受容体(TLR)7および/またはTLR8のアゴニストであり、インビトロで抗ウイルス活性と抗がん活性の両方を有する。イミキモドは、日光角化症ならびに生殖器および肛門周囲の疣贅の局所処置薬へと開発され、成功を収めている。しかし、イミダゾキノリンアミンは、用量制限毒性(DLT)のために、全身投与薬としての開発にまだ成功していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本明細書では、イミダゾキノリンアミン薬、1-[4-アミノ-2-(エトキシメチル)イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-2-メチルプロパン-2-オール、またはその薬学的に許容され得る塩、集合的に化合物Aが(文脈で別のものが指示されない限り)、治療的有用性および許容され得る毒性をもつ、がんの処置のための単剤治療として全身に投与され得る、投与量および患者集団が開示される。一部の実施形態では、化合物Aは、遊離塩基または共役塩基の形態で投与される。一部の実施形態では、化合物Aは、薬学的に許容され得る塩の形態で投与される。さらなる実施形態には、その製剤が含まれる。本明細書に記載の投与量は、硫酸塩などの塩が投与されている場合でも(特に記載のない限り)、遊離塩基に基づく。一部の実施形態では、投与量は、投与される特定の種の分子量に基づいて調整される。
【0004】
一部の実施形態は、化合物Aを0.10~1.2mg/mの投与量で投与することを含む、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法である。一部の実施形態では、投与量は、少なくとも0.10、0.15、0.30、0.45、または0.6mg/mである。一部の実施形態は、化合物Aを0.75、0.9、1.0、1.1、または1.2mg/mを超えない投与量で投与することを含む。一部の実施形態では、投与される化合物Aの投与量は、これらの値のいずれかによって制限された範囲内である。一部の実施形態では、患者はヒトである。
【0005】
一部の実施形態では、化合物Aは単剤治療として使用される。つまり、化合物Aによる処置は、以前のがん治療の最後の投与の後まで開始されず、他の抗がん薬は化合物Aが投与されているのと同じ時間枠で投与されない。一部の実施形態では、化合物Aによる処置は、患者の体内の以前の抗がん薬の濃度が実質的に低下するかまたは除去されるまで開始されない。一部の実施形態では、化合物Aによる処置は、以前の抗がん薬の最後の投与から少なくとも2週間または少なくとも4週間後まで開始されない。一部の実施形態では、化合物Aによる処置は、以前の抗がん薬の最後の投与から3ヶ月または6ヶ月以内に開始される。一部の実施形態では、化合物Aによる処置は、そのような処置が中止されていなかったら、以前の治療の次の投与が行われたであろう時点の後まで開始されない。
【0006】
一部の実施形態では、化合物Aは、(たとえ他の治療で患者のがんが進行したとしても)別のがん治療の後のほうが効果的である。一部の実施形態では、以前の治療とは、化学療法、例えば細胞傷害性治療または標的治療であった。一部の実施形態では、以前の治療とは、免疫チェックポイント阻害治療、例えばPD-1遮断であった。
【0007】
一部の実施形態は、免疫チェックポイント阻害剤の少なくとも1、2、3、4、5、または6回の投与(またはこれらの値によって限られた任意の範囲の投与)を含む一連の免疫チェックポイント阻害剤治療の処置の後に化合物Aを投与することを含む、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤の投与は、化合物Aによる処置が開始される頃、または開始される前に中止される。つまり、化合物Aは免疫チェックポイント阻害剤の最後の投与の後に、しかしその後3ヶ月以内に投与される。一部の実施形態では、化合物Aによる処置は、免疫チェックポイント阻害剤の最初の用量が投与された後に開始されるが、免疫チェックポイント阻害剤治療は中止されない。一部の実施形態では、患者のがんは最初の免疫チェックポイント阻害剤治療中に進行し、化合物Aによる処置は、その進行が観察された後に開始される。免疫チェックポイント阻害剤治療とは、PD-1遮断である。
【0008】
一部の実施形態では、PD-1遮断は、抗PD-1抗体の投与を含む。他の実施形態では、PD-1遮断は、抗PD-L1抗体の投与を含む。
【0009】
一部の実施形態は、治療有効量の化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩を患者に投与して、
a.少なくとも8ng/mLの化合物A遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);または
b.少なくとも3ng/mL*日の化合物A遊離塩基の曲線下面積(AUC);あるいは
c.両方
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、がんを処置する方法であり、
これにより、血漿濃度プロファイルに達しない化合物Aによる処置と比較して、臨床的利益の可能性が増加する。
【0010】
一部の実施形態は、治療有効量の化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩、および抗PD-1抗体を患者に投与して、
a.化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax)が少なくとも7ng/mL;または
b.化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)が少なくとも2ng/mL*日;あるいは
c.両方
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、がんを処置する方法であり、
これにより、血漿濃度プロファイルに達しない化合物Aによる処置と比較して、臨床的利益の可能性が増加する。
【0011】
一部の実施形態は、治療有効量の化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩、および抗PD-L1抗体を患者に投与して、
a.少なくとも10ng/mLの化合物A遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);または
b.少なくとも2ng/mL*日の化合物A遊離塩基の曲線下面積(AUC);あるいは
c.両方
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、がんを処置する方法であり、
これにより、血漿濃度プロファイルに達しない化合物Aによる処置と比較して、臨床的利益の可能性が増加する。
【0012】
一部の実施形態では、化合物Aは、非経口的に投与される。一部の実施形態では、非経口投与は、静脈内注射または注入を含む。一部の実施形態では、化合物Aは、15~90分にわたり、または30~60分にわたり注入される。
【0013】
一部の実施形態は、化合物Aの投与前から投与後のインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)の血漿または全血濃度の変化を測定することをさらに含む。一部の実施形態は、化合物Aの投与前から投与後の血漿または全血中のIP-10転写物の変化を決定することをさらに含む。一部の実施形態では、化合物Aの投与後のIP-10の濃度または転写レベルは、化合物Aの3回または6回投与後に決定される。これらの実施形態の様々な態様では、IP-10は、2倍、3倍、4倍、または5倍よりも大きく増加する。一部の実施形態では、血漿または全血中のIP-10濃度が閾値レベル、例えば、2倍、3倍、4倍、または5倍を超えて増加していない場合に、化合物Aの投与量を増加させる。
【0014】
一部の実施形態では、化合物Aは、患者において少なくとも9.4ng/mlである血漿中の化合物Aの遊離塩基のCmaxを生じるのに十分な投与量で投与される。一部の実施形態では、化合物Aは、患者において少なくとも2.09ng/mL*日である血漿中の化合物Aの遊離塩基のAUCを生成するのに十分な投与量で投与される。これらの閾値のいずれか一方が満たされない場合、化合物Aの投与量を増加させてよい。一部の実施形態では、Tmaxは、投与後15~90分である。一部の実施形態では、Tmaxは、投与後60分以内である。一部の態様では、投与後とは注入開始後を指す。
【0015】
一部の実施形態では、化合物Aの投与量を増加させる場合、0.15、01、または0.05mg/mずつ増加させる。
【0016】
化合物Aは、20~90分間の静脈内注入により、3~6週間にわたって1~6回投与することができ、投与は週に1回より頻繁には行わない。特定の実施形態では、化合物Aは3週間のサイクルで毎週、つまり、21日サイクルの1、8、および15日目に投与される。別の特定の実施形態では、化合物Aは3週間のサイクルで1回、つまり、21日サイクルの1日目に投与される。別の特定の実施形態では、化合物Aは6週間のサイクルで1回、つまり、42日サイクルの1日目に投与される。上に述べたパターンに一致するさらなる特定の実施形態も想定される。これらの実施形態は、がんの種類または以前の治療によるなど、投与量、用量調整、および患者集団をはじめとする、本明細書に開示される処置方法のその他の変動する態様と自由に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、最初の注入後のサイクル1の1日目の血漿中の化合物Aの遊離塩基形態の濃度を経時的に測定することによる、漸増用量の化合物Aの塩形態の薬物動態を示す。各サイクルは、質量分析により検出された化合物Aの遊離塩基の平均血漿濃度を示す。血漿試料中の化合物Aの定量は、用量レベル1(0.30mg/m;n=8)、2(0.45mg/m;n=8)、3(0.60mg/m;n=7)、および4(0.75mg/m;n=11)の被験者について分析された。
【0018】
図2A図2A~Bは、様々な用量の化合物Aに応答したインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)産生の分析を提示する。図2Aは、化合物Aの4つの用量レベル(1-0.30mg/m;2-0.45mg/m;3-0.60mg/m;4-0.75mg/m)に応答したベースラインIP-10産生からの誘導を対数スケールで示す。用量レベル表示の後の括弧内の数値は被験者の数である。四分位間の範囲は、垂直線で結ばれた各プロットの外側の水平線で示されている。長方形:四分位間の範囲;ブレース(brace):最小/最大;水平線:1(unity)(ベースラインからの変化はなし。内部の水平線は中央値(下側の線)および幾何平均(上側の線)を示す。はp<0.05を意味する(対数領域でのウィルコクソン順位和検定))。図2Bは、様々な化合物Aの用量レベル(D1~D4、図1の1~4に対応)についてのIP-10産生のベースライン誘導の割合の比較を示す。計算は対数領域で実施された(ウィルコクソン順位和検定)。各水平線は、95%信頼区間を表す。黒丸はIP-10産生の倍数変化の推定値である。P値は各水平線の右側に表示される。縦の破線はヌル値である。
図2B図2A~Bは、様々な用量の化合物Aに応答したインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)産生の分析を提示する。図2Aは、化合物Aの4つの用量レベル(1-0.30mg/m;2-0.45mg/m;3-0.60mg/m;4-0.75mg/m)に応答したベースラインIP-10産生からの誘導を対数スケールで示す。用量レベル表示の後の括弧内の数値は被験者の数である。四分位間の範囲は、垂直線で結ばれた各プロットの外側の水平線で示されている。長方形:四分位間の範囲;ブレース(brace):最小/最大;水平線:1(unity)(ベースラインからの変化はなし。内部の水平線は中央値(下側の線)および幾何平均(上側の線)を示す。はp<0.05を意味する(対数領域でのウィルコクソン順位和検定))。図2Bは、様々な化合物Aの用量レベル(D1~D4、図1の1~4に対応)についてのIP-10産生のベースライン誘導の割合の比較を示す。計算は対数領域で実施された(ウィルコクソン順位和検定)。各水平線は、95%信頼区間を表す。黒丸はIP-10産生の倍数変化の推定値である。P値は各水平線の右側に表示される。縦の破線はヌル値である。
【0019】
図3図3A~Bは、化合物Aの血漿濃度に対するIP-10変化の薬力学-薬物動態(PD-PK)分析を示す。図3Aは、Cmax(左パネル)およびAUEC四分位(右パネル)による、化合物AのPKについてのサイクル1の1日目および8日目(各被験者について線で結んだ白丸)のベースラインIP-10誘導の割合を示す。上記の括弧内の数字は、各四分位におけるサイクル1の1日目および8日目の被験者の数である。中央値(太い黒線)および幾何平均(正方形)は、四分位間の範囲(灰色のブレース)内に表示される。灰色の水平線は1(unity)(ベースラインからのIP-10誘導の変化なし)を表し、黒丸は誘導の倍数が1未満であることを示す。図3Bは、Cmax(左パネル)についての四分位およびAUC(右パネル)四分位の間で比較した、ベースラインAUECからのベースライン誘導のIP-10の割合を示す。各水平線は、95%信頼区間を表す。黒丸は推定値である。P値は各水平線の右側に表示される。縦の破線はヌル値である。計算は対数領域で実施された(ウィルコクソン順位和検定)。
【0020】
図4図4は、サイクル1での注入後の32名の患者のIP-10サイトカイン誘導レベルが分析されたことを示す。IP-10誘導レベルはベースラインからの誘導倍数として提示され、その後、化合物Aの薬物動態パラメータAUCに従って、低AUC群(AUCが2.09ng/mL*日を下回る)の16名の患者と、高AUC群(AUCが2.09を上回る)の16名の患者の2つの群に分けられた。これらの2つの群のIP-10誘導レベルは、平均+/-SEMとして計算され、2つの群間の統計学的差異はスチューデントT検定で分析された。ベースラインからのIP-10の誘導レベルの平均値は、低AUC群と高AUC群についてそれぞれ3.68倍と27.2倍であった。
【0021】
図5図5は、サイクル1での注入後の32名の患者のIP-10サイトカイン誘導レベルが分析されたことを示す。IP-10誘導レベルは、ベースラインからの誘導倍数として表され、化合物Aの薬物動態パラメータCmaxに従って2つの群に分けられ、それぞれ低Cmax群(Cmaxが9.4ng/mLを下回る)および高Cmax群(Cmaxが9.4ng/mLを上回る)にそれぞれ16名の患者が分けられた。これらの2つの群のIP-10誘導レベルは、平均+/-SEMとして計算され、2つの群間の統計学的差異はスチューデントT検定で分析された。誘導レベルの平均値は、低Cmax群と高Cmax群についてそれぞれ5.09倍と31.9倍であった。
【0022】
図6A図6A~Cは、化合物Aの単剤治療(図6A)、化合物Aと抗PD-1 mAbの併用治療(図6B)、および化合物Aと抗PD-L1 mAbの併用治療(図6C)による処置の際の、血漿中の化合物Aの遊離塩基のAUCおよびCmaxについての閾値を上回るおよび下回る、部分奏効または長期間安定疾患を達成している患者のパーセンテージを示す。
図6B図6A~Cは、化合物Aの単剤治療(図6A)、化合物Aと抗PD-1 mAbの併用治療(図6B)、および化合物Aと抗PD-L1 mAbの併用治療(図6C)による処置の際の、血漿中の化合物Aの遊離塩基のAUCおよびCmaxについての閾値を上回るおよび下回る、部分奏効または長期間安定疾患を達成している患者のパーセンテージを示す。
図6C図6A~Cは、化合物Aの単剤治療(図6A)、化合物Aと抗PD-1 mAbの併用治療(図6B)、および化合物Aと抗PD-L1 mAbの併用治療(図6C)による処置の際の、血漿中の化合物Aの遊離塩基のAUCおよびCmaxについての閾値を上回るおよび下回る、部分奏効または長期間安定疾患を達成している患者のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本明細書では、1-[4-アミノ-2-(エトキシメチル)イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-2-メチルプロパン-2-オール、
【化1】
、またはその薬学的に許容され得る塩、集合的に化合物Aを(文脈で別のものが指示されない限り)用いてがんを処置する方法が開示される。一部の実施形態では、化合物Aは単剤治療として投与される。一部の実施形態では、患者は免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1/L1軸の免疫チェックポイント阻害剤で以前に処置されている。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤治療は、化合物Aによる処置と併せて継続される。他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤治療は、化合物Aによる処置の開始前に中止される。
【0024】
化合物Aをがん治療に使用することに多くの関心および研究がなされてきたが、これは臨床診療に向けては成功していない。広く認識されているのは、化合物Aは全身使用、特に静脈内投与では治療濃度域がない、つまり、毒性作用が治療的有用性を上回るということである。これらの問題は、化合物Aの単剤治療において最も深刻である。それにもかかわらず、本明細書では、化合物Aの単剤治療が許容されないレベルの毒性を引き起こすことなく治療的有用性を提供することのできる、化合物A、特に薬学的に許容され得る塩の静脈内投与の投与量および投与スケジュール、ならびに好ましい患者集団が開示される。薬物間相互作用がなければ、この治療的有用性は他の治療と併用しても持続するはずである。
【0025】
一部の実施形態では、患者は、化合物Aによる処置の開始前に、他のいくつかのがん治療によって処置されている。様々な実施形態では、他の治療は、免疫チェックポイント阻害剤、細胞傷害性薬剤または標的治療薬などの化学療法薬、または治療用モノクローナル抗体であり得る。様々な実施形態では、治療用モノクローナル抗体は、アンタゴニストまたはアゴニスト免疫チェックポイント阻害剤、抗がん抗原抗体、私を食べないでシグナル(don’t-eat-me signal)ブロッカー、またはM2マクロファージの枯渇を媒介する抗体であり得る。一部の実施形態では、上記のように、他の処置は、化合物Aによる処置を開始する前に中止される。他の実施形態では、他の処置は、化合物Aによる処置と併せて継続される。さらに他の実施形態では、化合物Aによる処置が保留され、以前の他の処置が繰り返され、再び中止されて、化合物Aによる処置が再開される。一部の実施形態は、具体的には、1またはそれを超える処置様式を含む。一部の実施形態は、具体的には、1またはそれを超える処置様式を除外する。
【0026】
本明細書において、単剤治療とは、単一の抗がん治療薬を利用するがん処置レジメンを指す。これは、別の治療薬による以前の(または以降の)治療を除外するものではなく、単剤治療剤の投与が別の抗がん治療の投与と時間的に一致していない、または調整されていないことを示しているにすぎない。少なくとも、単剤治療の開始は、以前の薬剤の最後の用量の投与後まで開始されない。一部の実施形態では、化合物Aによる処置は、そのような処置が中止されていなかったら、以前の抗がん治療の次の投与が行われたであろう時点の後まで開始されない。一部の実施形態では、単剤治療の開始は、体内の以前の抗がん剤の存在が実質的に低下するかまたは除去されるまで開始されない。一部の実施形態では、単剤治療は、別の抗がん医薬剤、つまり、患者の体に投与される組成物に関するものである。そのような実施形態では、単剤治療は、外科的処置または放射線治療と時間的に重複するか、または調整されてよい。
【0027】
本明細書において、化学療法とは、がんの処置のための低分子薬の使用を指す。歴史的に、化学療法薬は、DNAを損傷するか、または細胞分裂の機構を破壊し、一般的に分裂細胞に対して細胞傷害性である薬物であった。そのような薬物は細胞傷害性またはDNA損傷化学療法薬と呼ばれることがある。最近になって、いわゆる標的療法が開発された。これらには低分子薬の使用も含まれる。しかし、これらの薬物は、細胞分裂の調節に関与する特定のタンパク質、多くの場合キナーゼに作用する。これらの薬物標的タンパク質は、通常、体の一部の細胞でのみ発現し、がん細胞で過剰発現することさえある。その結果、薬物の効果は従来の細胞傷害性化学療法薬よりも特異性が高い。一部の実施形態は、化学療法による前処置を受けた患者に関する。一部のそれらの実施形態では、その化学療法は、細胞傷害性またはDNA損傷化学療法であった。他のそれらの実施形態では、その化学療法は、細標的化学療法であった。その他の実施形態は、これらの化学療法の様式のいずれかまたはすべてによる前処置を特に除外する。
【0028】
免疫チェックポイント阻害治療は、T細胞の分化および活性化における調節経路に作用して、これらのチェックポイントを介してT細胞発生プログラムの通過を促進して、抗腫瘍(または他の治療)活性を実現することができる医薬、通常は生物製剤の使用を指す。免疫チェックポイント治療をもたらす薬剤は、一般に免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれており、阻害されるのはT細胞の発生に関するチェックであることが理解される必要がある。したがって、多くの免疫チェックポイント阻害剤は、受容体-リガンド対の相互作用(例えば、プログラム細胞死1(PD-1)とプログラム死リガンド1(PD-L1)との相互作用)も阻害するが、他のチェックポイント阻害剤(例えば抗OX40、抗GITR、抗CD137、抗CD122、抗CD40、および抗ICOSなど)は、T細胞発生のチェックを解除または阻害する標的のアゴニストとして作用し、最終的にエフェクター機能を促進し、かつ/または調節機能を阻害する。一部のチェックポイントの阻害が、場合によっては臨床的改善を媒介するのに十分であることは証明されているが、他のチェックポイントの阻害は併用することで最も効果的に作用する。最も一般的には、受容体-リガンド対の1つのメンバーに対する抗体が使用される。代替実施形態では、抗体は、免疫チェックポイント標的分子に同様に結合する別のタンパク質で置き換えられる。場合によっては、これらの非抗体分子は、免疫チェックポイント標的分子のリガンドまたは結合パートナーの細胞外部分を含む、つまり、免疫チェックポイント標的分子への結合を媒介するには少なくとも細胞外部分が必要である。一部の実施形態では、リガンドのこの細胞外結合部分は、融合タンパク質内のさらなるポリペプチドに結合される。一部の実施形態では、このさらなるポリペプチドは、抗体のFcまたは定常領域を含む。
【0029】
プログラム死-1(PD-1)は、T細胞上のチェックポイントタンパク質である。PD-1とその結合パートナーであるプログラム死リガンド1(PD-L1)の両方に対する抗体は、免疫チェックポイント阻害剤(PD-1遮断)として臨床的に使用されている。PD-1/PD-L1を標的とするモノクローナル抗体(mAb)の限定されない例としては、抗PD-1mAbニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、Merck&Co.)、cemiplimab-rwlc(LIBTAYO(登録商標)、Regeneron Pharmaceuticals)、および抗PD-L1 mAbsデュルバルマブ(MEDI4736、IMFINZI(商標)、Medimmune)、アテゾリズマブ(MPDL3280A;TECENTRIQ(登録商標)、Hoffmann-La Roche)、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標)、EMD Serono)、およびBMS-936559(Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。これらは、PD-1遮断のための手段、PD-1/PD-L1結合を阻害するための手段、または免疫チェックポイント阻害のための手段と呼ばれることがある。
【0030】
CTLA-4は、CD4およびCD8 T細胞の表面と、CD25+、FOXP3+T制御(Treg)細胞に発現する免疫チェックポイント分子である。CTLA-4を標的とするモノクローナル抗体の限定されない例としては、イピリムマブ(YERVOY(登録商標);Bristol-Myers Squibb)およびトレメリムマブ(Medimmune)が挙げられる。これらは、CTLA-4を阻害するための手段、または免疫チェックポイント阻害のための手段と呼ばれることがある。
【0031】
TIM-3(T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3)は、IFN-γ-産生CD4Tヘルパー1(Th1)およびCD8T細胞傷害性1(Tc1)T細胞で選択的に発現する分子である。TIM-3に対する限定されない例示的な抗体は、米国特許出願公開第20160075783号に開示されており、これは抗TIM-3抗体に関するその内容すべてについて、参照により本明細書に組み込まれる。他の抗TIM-3抗体としては、TSR-022(Tesaro)が挙げられる。これらは、TIM-3を阻害するための手段、または免疫チェックポイント阻害のための手段と呼ばれることがある。
【0032】
LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3;CD223)は、CTLA-4およびPD-1と同様の方法でT細胞の細胞増殖、活性化、およびホメオスタシスを負に調節し、Treg抑制機能において役割を果たす。LAG-3に対する限定されない例示的な抗体としては、GSK2831781(GlaxoSmithKline)、relatlimab(BMS-986016、ブリストルマイヤーズスクイブ)、および米国特許出願公開第2011/0150892号に開示される抗体が挙げられ、これは抗LAG-3抗体に関するその内容すべてについて、参照により本明細書に組み込まれる。これらは、LAG-3を阻害するための手段、または免疫チェックポイント阻害のための手段と呼ばれることがある。
【0033】
TIGIT(IgおよびITIMドメインをもつT細胞免疫受容体)は、腫瘍の免疫監視に関与している免疫受容体阻害チェックポイントである。これは、CD155(PVRまたはポリオウイルス受容体)およびCD112(ネクチン-2またはPVRL2)という同じ組のリガンドについて、免疫活性化受容体CD226(DNAM-1)と競合する。抗TIGIT抗体は、前臨床モデルで抗PD-1/PD-L1抗体との共同作用を示した。Tiragolumab(Roche)、etigilimab(OncoMed)、vibostolimab(MK-7684;Merck)、およびEOS-448(iTeos Therapeutics)は抗TIGIT抗体の限定されない例である。これらは、TIGITを阻害するための手段、または免疫チェックポイント阻害のための手段と呼ばれることがある。
【0034】
GITR(グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質)は、エフェクターT細胞機能を促進し、制御性T細胞による免疫応答の抑制を阻害する。前述のOX-40と同様に、チェックポイント阻害剤は、標的、この場合はGITRのアゴニストである。アゴニスト抗体であるTRX518は、現在、がんを対象としたヒト臨床試験が行われている。それだけでは進行したがんの実質的な臨床的改善を媒介するのに十分ではないかもしれないが、PD-1遮断などの他のチェックポイント阻害との組合せは有望であった。
【0035】
他の免疫チェックポイント阻害剤の標的としては、限定されるものではないが、BおよびT細胞アテニュエーター(BTLA)、CD40、CD122、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、OX40(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー4)、Siglec-15、B7H3、CD137(4-1BB;CD40およびOX40と同様に、チェックポイント阻害はアゴニストとともに達成される)などが挙げられ、これらは本開示の方法において潜在的に有用である。いくつかの抗OX40アゴニストモノクローナル抗体が初期段階のがん臨床試験に入っており、それには、限定されるものではないが、MEDI0562およびMEDI6469(Medimmune)、MOXR0916(Genetech)、およびPF-04518600(Pfizer)が挙げられ;抗ICOSアゴニスト抗体、JTX-2011(Jounce Therapeutics)も同様である。臨床研究中の抗CD40アゴニスト抗体としては、ダセツズマブ、CP-870,893(セリクレルマブ)、およびChi Lob 7/4が挙げられる。抗siglec-15抗体も公知である(例えば、米国特許第8,575,531号参照)。抗CD137アゴニスト抗体としては、限定されるものではないが、ウレルマブおよびウトミルマブが挙げられる。さらに、CD122は、ベンペガルデスロイキン(NKTR-214、CD122バイアスアゴニストとして使用されるペグ化IL-2)を用いたがん臨床試験で標的にされている。B7H3は、エノブリツズマブ、131I-オンブルタマブ、177Lu-DTPA-オンブルタマブ、131I-8H9、124I-8H9、MCG018、およびDS-7300aなどの試薬を用いて、免疫チェックポイント阻害についておよび腫瘍抗原としての両方で標的にされている。これらは、免疫チェックポイント阻害のための手段、またはそれらのそれぞれの標的を阻害する(または必要に応じて活性化する(刺激する))ための手段と呼ばれることがある。
【0036】
化合物Aによる治療は、他の種類の治療用モノクローナル抗体による処置に続いてもよい。一部の実施形態では、治療用モノクローナル抗体は、いわゆる「私を食べないで」シグナルを遮断する;これらには、ILT2(例えば、BND-22)、ILT4(例えばMK-4830)、CD47(例えば、Hu5F9-G4)、およびSIRPα(例えば、KWAR23)を認識する抗体が含まれる。私を食べないでシグナルは、SIRPαとCD47の結合を遮断することにより抗CD47抗体と同様に作用する、SIRPタンパク質と抗体Fc領域の融合タンパク質であるTTI-621などの産物で遮断することもできる。
【0037】
一部の実施形態では、治療用モノクローナル抗体は、がん抗原、例えば、限定されるものではないが、Her2、CD133/プロミニン、TROP2、クローディン18.2(例えば、クラウディキシマブ(claudiximab)(IMAB362)またはゾルベツキシマブ)、CD73/NT5E(例えば、MEDI9447、BMS986179、SRF373/NZV930、CPI-006/CPX-006、IPH5301、またはTJ004309;CD73/NT5Eも免疫チェックポイントとみなされる)、crypto-1、またはCEACAM5を認識する。一部の実施形態では、抗がん抗原抗体は、細胞傷害性薬剤に結合されている。限定されない例としては、CEACAM5を標的とするヒト化抗体と強力な細胞傷害性メイタンシノイド誘導体DM4とを組み合わせた抗体薬物複合体(ADC)、SAR408701;Trop-2を標的とし、アウリスタチン微小管阻害剤であるAur0101を送達する抗体薬物複合体、PF-06664178;Trop-2を標的とし、SN-38を送達するADC、サシツズマブゴビテカン(IMMU-132);Trop-2を標的とし、トポイソメラーゼI阻害剤でエキサテカンの誘導体であるDXdを送達するADC、DS-1062a;および、強力な細胞傷害性薬物であるモノメチルアウリスタチンに結合したマウス抗ヒトCD133抗体(AC133)、AC133-vcMMAFが挙げられる。
【0038】
一部の実施形態では、抗CD206抗体などの治療用モノクローナル抗体は、M2マクロファージ枯渇に使用することができる。一部の実施形態では、抗CD206抗体をジフテリア毒素などの毒素に結合させる。
【0039】
薬学的に許容され得る塩としては、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、塩化物、マレイン酸塩、クエン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、およびグルコン酸塩が挙げられる。化合物Aの塩の様々な実施形態は、これらの塩を含む属、その任意のサブセット、または任意の個々の種である。一部の実施形態では、この個々の化合物Aの塩は、塩化物、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、またはリン酸塩である。
投与量
【0040】
化合物Aの塩形態の投与量は、主に便宜上、一般にmg/kgの単位で表される。しかし、これは実際には薬物曝露を推定するにはかなり不正確な方法である。治療係数(ヒトの場合、TD50/ED50、それぞれ集団の50%についての耐用量(tolerated dose)と有効用量の比)が大きい場合、薬物曝露の変動は重要でないことがある。治療係数が小さい場合、容認できない毒性を回避すると同時に有効性を達成するには、より正確な投与が必要である。薬物曝露は被験者の体重よりも体表面積(BSA)に、より密接に比例するため、mg/mの単位で表される薬物の投与量は、このより高い精度を提供することができる。化合物Aの曝露においてこのより高い精度を達成するために、化合物Aの投与量は、本明細書においてmg/mの単位で表される。以下の例では、BSAについてモステラー式が使用された(BSA(m)=√身長(cm)×体重(kg)/3600)。しかし、他の式、例えば、デュボア&デュボア式(BSA(m)=0.20247×身長(m)0.725×体重(kg)0.425)が存在する。これらの式は十分に類似した結果をもたらすため、違いは重要ではない。
【0041】
様々な実施形態では、化合物Aの投与量は、0.10mg/m~1.2mg/m、または0.15mg/m~1.0mg/m(硫酸塩の質量で0.2~1.3mg/m)であり、毎週静脈内注入によって投与される。一部の実施形態では、投与量は、0.75、0.80、0.90、または1.0mg/mを超えない。一部の実施形態では、投与量は、少なくとも0.15、0.30、0.45、または0.60mg/mである。一部の実施形態では、投与量は、これらの値の任意の対によって囲まれた範囲内である。他の実施形態では、化合物Aは、毎週、隔週、3週間ごと、または毎週と3週間ごとの間の任意の整数の日数の間隔で投与される。
【0042】
一部の実施形態では、PD-1遮断と組み合わせて使用する場合、有効性は、0.5~0.9mg/m(または硫酸塩の質量で0.66~1.2mg/m)の化合物Aの投与量で達成することができる。
【0043】
平均BSAの推定値は、調査した集団によって異なる。ある編集物によると、米国の20~79歳男性の平均BSAは、2.060mであり、同じ年齢の米国女性の平均BSAは1.830mであった。英国の成人のがん患者の値は、男性と女性についてそれぞれ1.91mと1.71mで、約7%少なかった。BSA推定値に基づく例示的な用量範囲を表1に示す。
【表1】
【0044】
一部の実施形態では、化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩は、例えば、100mLの生理食塩水(normal saline)中で、静脈内注入によって投与される。適切な用量を得るために、適切な量のより濃縮された溶液を静脈内溶液に添加して、個々の患者に必要な投与量を得ることになる。したがって、製造された剤形は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mg/mlの濃度の、またはそれらの値の任意の対によって囲まれた範囲内の、化合物Aまたはその薬学的に許容され得る塩の溶液であり得る。一部の実施形態では、この溶液は、1~2mLの溶液で満たされたバイアル(または同様の容器)に含まれる。
【0045】
一部の実施形態では剤形は、化合物A硫酸塩を含む。一部の実施形態では、剤形溶液中の化合物A硫酸塩の濃度は、1.0~2.5mg/mLである。一部の実施形態では、剤形溶液中の化合物A硫酸塩の濃度は、1.31mg/ml(化合物A遊離塩基1mg/mLに相当)である。一部の実施形態では、剤形は、1.5mLの剤形溶液を含有する2mLの注射バイアルを包含する。一部の実施形態では、剤形溶液は、9.1mg/mlの塩化ナトリウム、0.71mg/mlのクエン酸ナトリウム二水和物(sodium citrate dehydrate)、pHを4.0~5.0(両端を含む)に調整するのに十分なクエン酸二水和物(citrate dehydrate)またはクエン酸、および容量調整のための注射用水をさらに含む。
【0046】
投与スケジュールを確立する際には、通常、血流中または体内の他の部位で定常状態の濃度を達成しようとするか、または化合物Aの遊離塩基形態の濃度をある最小レベルより上に少なくとも維持しようとすることが通常である。実施形態では、化合物Aは、最大の投与量で使用しても、化合物Aは24時間以内に体内から実質的に除去されるという事実にもかかわらず、化合物Aは毎週投与される。これは所望の免疫治療効果を得るのに十分であり、さらに、サイトカイン放出症候群または他の有害事象が原因で患者を高度の毒性に追い込むことを回避することが見出されている。
【0047】
一部の実施形態では、化合物Aの投与量は、IP-10誘導レベルに基づいて処置中に調整される。一部の実施形態では、IP-10の誘導倍数が2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、または40倍未満である場合、化合物Aの投与量は増加される。一部の実施形態では、化合物Aの投与量調整は、0.15mg/mである。一部の実施形態では、化合物Aの投与量調整は、0.10mg/mまたは0.05mg/mである。1回を超える投与量調整を伴う一部の実施形態では、最初の投与量調整(複数可)は、0.15mg/mであるが、IP-10の所望の誘導倍数に近づくにつれて、投与量調整の大きさは、例えば、0.10mg/mまたは0.05mg/mに減少する。
毒性および有害事象
【0048】
薬物の有効性と毒性との間の関係は、一般に、治療濃度域および治療係数で表される。治療濃度域は、検出可能な治療効果を示す最低用量から、最大耐量(MTD)、つまり、許容されない毒性を生じることなく所望の治療効果を得る最大用量(the highest dose that will the desired therapeutic effect)までの用量範囲である。最も一般的な治療係数は、動物研究に基づく場合はLD50:ED50の比として計算され、ヒトでの研究に基づく場合はTD50:ED50の比率として計算される(ただし、この計算は動物研究から導き出すこともでき、保護係数と呼ばれることもある)。ここで、LD50、TD50、およびED50は、それぞれ、試験集団の50%で致死性、毒性、そして効果のある用量である。
【0049】
一部の実施形態では、化合物Aの投与量は、毒性および関連する有害事象の重症度または発生率を回避するかまたは減少させる。これらの実施形態の様々な態様では、毒性は、観察可能な毒性、実質的な毒性、重大な毒性、または許容され得る毒性、または用量制限毒性(例えば、限定されるものではないが、MTDなど)である。観察可能な毒性とは、変化が観察されている間、作用が無視できるかまたは軽度であることを意味する。実質的な毒性とは、患者の全体的な健康または生活の質に悪影響があることを意味する。場合によって、他の進行中の医療介入により、実質的な毒性が軽減または解消されることがある。重大な毒性とは、その作用が急性の医療介入および/または用量低減または処置の一時的停止を必要とすることを意味する。毒性の容認可能性は、治療されている特定の疾患とその重症度、および医療介入を軽減できるかどうかによって影響を受ける。
【0050】
毒性および有害事象は、5段階尺度によって段階分けされることがある。グレード1または軽度の毒性は無症候性であるか軽度の症状のみを引き起こし、臨床的観察または診断的観察のみによって特徴付けられることがあり、介入は指示されない。グレード2または中等度の毒性は、日常生活の活動(食事の準備、買い物、お金の管理、電話の使用など)に支障を来すことがあるが、最小限の、局所的な、または非侵襲的な介入のみが指示される。グレード3の毒性は医学的に重大であるが、すぐに生命を脅かすものではなく、入院または入院の延長が指示され、セルフケアに関連する日常生活の活動(入浴、衣類の着脱、自分で食べること、トイレの使用、薬の服用、寝たきりになっていないこと)が損なわれる可能性がある。グレード4の毒性は生命を脅かすものであり、緊急の介入が指示される。グレード5の毒性では、有害事象に関連した死亡が生じる。したがって、様々な実施形態において、本明細書に開示されるレジメンでの、または特定の投与量での化合物Aの使用は、別のレジメンによる薬物の使用と比較して、処置に関連する毒性のグレードを少なくとも1段階低下させる。他の実施形態では、特定のレジメンまたは特定の投与量で化合物Aを使用することにより、毒性はグレード2またはそれ未満、グレード1またはそれ未満に制限されるか、または毒性が観察されることがない。
【0051】
一部の実施形態では、許容されないレベルの毒性が観察された場合、化合物Aの投与量を減らす。一部の実施形態では、化合物Aの投与量は、0.15mg/m減少させる。一部の実施形態では、化合物Aの投与量は、0.10mg/mまたは0.05mg/m減少させる。一部の実施形態では、注入時間は、有害反応を緩和するために延長される。
サイトカイン誘導
【0052】
本明細書に記載の化合物Aの単剤治療は、いくつかのサイトカイン、中でも注目すべきは炎症性サイトカインのIFN-γおよびIP-10の発現を誘導する。本明細書において、誘導は、化合物Aの単剤治療の開始前の発現のベースラインレベルの2倍以上の発現の増加を指す。代替実施形態では、誘導は、化合物Aの単剤治療の開始前の発現のベースラインレベルの5倍以上の発現の増加を指す。一部の実施形態では、誘導倍数は、IP-10のAUCに基づく。一部の実施形態では、IP-10誘導はCmaxに基づく。
【0053】
観察により、より高いレベルのIP-10誘導は、以前の免疫チェックポイント阻害、特にPD-1遮断治療(抗PD-1または抗PD-L1のいずれかによる)と関連していたことが示されている。より大きなIP-10誘導は、以前の化学療法、特にDNA損傷化学療法にも関連していた。より大きなIP-10誘導は、以前の標的療法にも関連していた。さらに、IP-10のベースラインレベルが高いほど、化合物Aの単剤治療に対するさらなるIP-10誘導による応答の見込みがより高いことを示し得る。
【0054】
一部の実施形態では、化合物Aの単剤治療の間、サイトカイン誘導がモニターされる。モニタリングには、IFN-γおよびIP-10などのサイトカイン、またはCXCL10(IP-10)またはCXCL11などのIFN-γ誘導性遺伝子産物の血漿または血清レベルをアッセイすることが含まれ得る。モニタリングには、これらのタンパク質をコードする全血RNA転写物の定量を含めることができる。ベースラインの読み取り値は、化合物A単剤治療の最初の注入前に確立され、その後の特定の時点で試料を採取することができる。(好ましくは、ベースライン読み取り用の試料は、注入を開始する1~6時間前に採取されるが、注入前24時間以内であればいつでも許容され得る。)サイトカイン誘導は、化合物Aの初回注入後、化合物Aの2回目の注入後、6週間の処置後、最初の有効性評価スキャンの時点、疾患の進行の時点、臨床応答の時点、有害事象の時点、または定期的なスケジュールで、例えば、処置の開始または処置の開始後の最初の測定から数えて3週間または6週間ごとに評価することができる。サイトカインレベル、例えばIP-10レベルの変化に応じて、化合物Aの投与量を次の注入について変更して、応答の見込みを高め、および/または重大な有害事象のリスクを低下させることができ得る。
免疫応答に対するIP-10誘導の重要性およびIP-10誘導をがんにおける応答と相関させる方法
【0055】
IP-10は、単球、CD4Th1 T細胞、エフェクターCD8T細胞、NK、および樹状細胞などの免疫細胞で発現するCXCR3に結合することにより抗腫瘍免疫を発揮することが知られている。IP-10は、IFN-γとI型インターフェロンの両方によって誘導され、CD4T細胞、NK/NKT細胞、単球、樹状細胞、線維芽細胞、内皮細胞、および上皮細胞によって産生される。IP-10誘導は、CXCR3を介したTh1の分極を引き起こし、細胞傷害性Tリンパ球、NKおよびマクロファージの成熟および活性化ならびにそれらの腫瘍微小環境への遊走を促進する。IP-10誘導は、CXCR3CD4/CD8T細胞を活性化して抗腫瘍免疫を強化することもできる。
【0056】
対照的に、がん細胞で発現するCXCR3に結合したIP-10は、自己分泌シグナル伝達を通じて生存と転移を促進することができる。腫瘍微小環境におけるIP-10-CXCR3シグナル伝達の増強は、応答の負の予測因子とみなされるが、免疫細胞におけるIP-10-CXCR3パラクリンシグナル伝達軸は、抗腫瘍免疫応答を誘発する。したがって、血液中のIP-10誘導は、抗腫瘍免疫のパラクリンシグナル伝達の予測因子となり得る。しかし、IP-10誘導と抗腫瘍応答を完全に相関させるためには、腫瘍微小環境における活性化免疫細胞の遊走とCXCR3発現を評価する必要がある。
【0057】
IP-10を含むIFN-γ媒介遺伝子シグネチャーは、がん患者の応答についてのよく研究された予測バイオマーカーである。IFN-γ/IP-10誘導は、抗腫瘍免疫の増加と関連しており、様々な固形腫瘍の臨床応答につながった。興味深いことに、これらの研究には、抗PD-(L)1 mAb、抗CTLA-4 mAb、IFN-α、ポリ-I:C、およびDNAワクチンなどの免疫調節薬が関与してIFN-γ/IP-10誘導を介する抗腫瘍免疫を誘発していた。さらに、PD-1およびCTLA-4遮断により、抗腫瘍免疫応答と相関するマクロファージ由来のIP-10が誘導された。IP-10が間質細胞でまたは化学放射線治療後に誘導された他の例では、免疫活性を抑制するのにTregの動員が好まれた。したがって、免疫活性化 対 抑制としてのIFN-γ/IP-10誘導の役割は、Treg媒介免疫細胞とTh1媒介免疫細胞との間のバランスを変え得る腫瘍と処置タイプ(例えば、免疫治療 対 化学療法)に依存し得る。
処置方法
【0058】
本明細書では、単剤治療として静脈内注入によって化合物Aを投与することを含む、哺乳動物、例えばヒトのがんを処置する方法が提供される。投与量は、患者の化合物Aへの曝露をより正確に制御するために、mg/mの単位で指定される。上記のように、投与量は、0.10mg/m~1.2mg/mの範囲内であり得る。この量の薬物は、通常、20~90分、例えば30分、または60分、またはこれらの値の対によって囲まれた任意の範囲にわたって注入される。化合物Aは、注入により、3~6週間にわたって1~6回投与され、投与は週に1回より多く頻繁には行われない。このような処置の単位を「サイクル」と呼ぶと便利であり得るが、1つのサイクルの終わりまたは次のサイクルの開始に結びつく必要なイベントはない。実際、処置は、1)疾患(がん)が進行し、薬物がその望ましい効果を達成できないために停止されるか、2)患者に毒性があり、処置を中止する必要があるか、3)患者および/または処置中の医師が、別の処置のほうが患者にとって良いと判断するか、または4)すべての疾患(がん)が消失し、患者および/または処置中の医師が治療を停止することを決定するまで、サイクルのスケジュールに従って中断することなく継続することができ、多くの場合継続されることになる。場合によっては、上記のように処置を中止する代わりに、無効性または毒性に応じて投与量を調整することが適した場合がある。
【0059】
以前の治療の後の化合物Aの単剤治療は、以前の治療の最後の投与の後、新しい治療手段を採用することが決定された後にいつでも開始することができる。一部の実施形態では、化合物A治療は、体内の以前の治療薬の量を実質的に減少させるかまたは排出させるため、手術から回復するため、または以前の治療によって生じた有害事象が解決するための休止期間の後に開始する。様々な実施形態では、以前の治療の最後の投与と化合物A単剤治療の開始との間の間隔は、少なくとも2、3、または4週間、または1ヶ月である。一部の実施形態では、化合物A単剤治療は、以前の治療からの毒性がグレード1またはそれ未満またはベースラインまで低下するまで開始しない。一部の実施形態では、以前の治療は器官に永続的な損傷を引き起こし、化合物A単剤治療は、損傷した臓器の機能低下または機能喪失の緩和治療が確立されるまで開始されない。例えば、甲状腺または脳下垂体が損傷し、ホルモン補充治療が行われることがある。これらの実施形態の一態様では、この以前の治療は、免疫治療、例えば免疫チェックポイント阻害治療であった。これらの実施形態の別の態様では、以前の治療は化学療法、例えば細胞傷害性またはDNA損傷化学療法であった。
【0060】
観察により、以前の処置が化合物A単剤治療に対する応答を偏らせる可能性があることが示されている。例えば、以前のPD-1遮断免疫チェックポイント阻害は、より大きなIP-10誘導およびより良好な臨床応答と関連していた。したがって、一部の実施形態では、化合物A単剤治療は、免疫チェックポイント阻害治療から外れた患者(例えば、進行性疾患または許容できない毒性による)を処置するために使用される。これらの実施形態の一態様では、患者は、化学療法、例えば、細胞傷害性化学療法またはDNA損傷化学療法を用いる以前の処置も受けている。一部のこれらの実施形態では、化合物A単剤治療は、以前の治療の最後の投与から12週間以内または24週間以内(または3ヶ月以内または6ヶ月以内)に、あるいは以前の免疫チェックポイント阻害治療の最後の投与から12週間以内または24週間以内(または3ヶ月以内または6ヶ月以内)に開始される。一部の実施形態では、以前の免疫チェックポイント阻害治療は、抗PD-1治療、抗PD-L1治療、またはそのいずれかであった。一部の実施形態では、以前の免疫チェックポイント阻害治療は、抗CTLA-4治療であった。なおさらなる実施形態では、以前の免疫チェックポイント阻害治療は、抗LAG-3、抗Siglec-15、抗TIGIT、または抗TIM-3であった。さらなる実施形態では、以前の免疫チェックポイント阻害治療は、抗B7H3、抗CD137、抗OX40、抗CD40、抗CD122、抗ICOS、または抗CD73/NT5Eであってよい。
【0061】
他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害治療および化合物Aによる処置は、化合物Aによる処置が開始される前に少なくとも1~3用量の免疫チェックポイント阻害剤が投与される順次処置として行われる。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害治療は、化合物Aによる処置を開始する前に中止される。他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤の投与は、化合物Aによる処置と併せて継続される。これらの実施形態の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、その通常のスケジュールに従って投与される。
【0062】
様々な実施形態では、化合物A単剤治療または順次治療が開始されるウィンドウは、最も早い投与およびそれを開始するべき期間に関する上記教示のいずれかによって定義される。
【0063】
処置の有効性は、処置の過程で監視することができる。モニタリングは、例えば、単純なX線、CATまたはCTスキャン、PETスキャン、またはMRIで、1または複数の腫瘍を画像化することによって達成することができる。一部の実施形態では、これらのスキャン技術は、画像化のための手段と呼ぶことができ、そのようなスキャンを行うことは、画像化のためのステップと呼ぶことができる。
【0064】
がん治療の有効性は、通常、「応答」の点から測定される。応答を監視する技法は、限定されないが、以下のようながんを診断するために使用される試験と類似している場合がある。
・一部のリンパ節を含むしこりまたは腫瘍は、触診し、身体検査によって外部から測定することができる。
・一部の内部がん腫瘍は、X線、CTスキャン、PETスキャン、CT/PETスキャンまたはMRIに現れ、ルーラーで測定することができる。
・臓器機能を測定するものを含む血液検査を実施することができる。
・特定のがんには腫瘍マーカー試験を行うことができる。
【0065】
血液検査、細胞数検査、または腫瘍マーカー試験など、使用する試験にかかわらず、同じタイプの以前の検査と結果を比較できるように、特定の間隔で検査が繰り返される。
【0066】
がんの処置に対する応答は、いくつかの方法で定義される:
・完全奏効-がんまたは腫瘍がすべて消失する;疾患のエビデンスはない。腫瘍マーカー(該当する場合)の発現レベルは正常範囲内に入り得る。
・部分奏効-がんは何%か縮小したが、疾患は残っている。腫瘍マーカー(該当する場合)のレベルは低下している可能性があるが(または、腫瘍量の減少の指標として、腫瘍マーカーに基づいて、増加)、疾患のエビデンスは残っている。
・安定疾患-がんは成長も縮小もしていない。疾患の量は変化していない。腫瘍マーカー(該当する場合)に有意に変化していない。
・疾患増悪-がんが成長している。今は処置前よりも疾患が増加している。腫瘍マーカー試験(該当する場合)は、腫瘍マーカーが上昇したことを示している。
【0067】
がんの処置の有効性の他の尺度には、全生存期間(診断からまたは評価中の処置の開始から測定された、何らかの原因による死亡までの期間)、無がん生存期間(完全奏効後にがんが検出されない期間)、および無増悪生存期間(疾患の安定化、部分奏効、または完全奏効後、腫瘍成長の再開が検出されない期間)の間隔が含まれる。
【0068】
腫瘍の大きさ(腫瘍量)に関して固形がんの処置応答を評価するために、WHO基準とRECIST基準という2つの標準的な方法がある。これらの方法は、固形腫瘍を測定して、現在の腫瘍を過去の測定値と比較したり、変化を将来の測定値と比較したり、処置レジメン計画を変更したりする。WHO法では、固形腫瘍の長軸と短軸を測定した後、これらの2つの測定値の積を算出する。複数の固形腫瘍がある場合は、すべての積の合計を算出する。RECIST法では、長軸のみを測定する。複数の固形腫瘍がある場合は、すべての長軸の測定値の合計を算出する。しかし、リンパ節を含む場合は、長軸の代わりに短軸を測定する。
【0069】
血漿中の遊離塩基の濃度に基づいて、化合物Aの臨床的利益と特定の薬物動態プロファイルとの間に有益な関連が観察された。化合物Aの遊離塩基の血漿中のCmaxが8.3ng/mL、および/または化合物Aの遊離塩基の血漿中の曲線下面積(AUC)が3.4ng/mL*日であることは、化合物Aの単剤治療からの臨床的利益の可能性が高いことに関連している。したがって一部の実施形態は、治療有効量の化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩を患者に投与して、化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax)が>8.3ng/mL、化合物Aの遊離塩基のAUCが>3.4ng/mL*日、またはその両方を含む、前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、がんを処置する方法である。一部の実施形態では、さらなる実施形態では、臨床的利益の可能性は、血漿濃度プロファイルを達成しない化合物Aによる処置と比較して増加する。他の実施形態では、達成されるCmaxプロファイルは、>5、>6、>7、>8、>9、>10、>11、または>12ng/mLである。他の実施形態では、達成されるAUCプロファイルは、>1、>2、>3、>4、または>5ng/mL*日である。
【0070】
化合物Aの遊離塩基の血漿中のCmaxが7.6ng/mL、および/または化合物Aの遊離塩基の血漿中のAUCが2.2ng/mL*日であることは、化合物Aと抗PD1抗体の併用治療からの臨床的利益の可能性が高いことに関連している。したがって一部の実施形態は、治療有効量の化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩と抗PD-1抗体を患者に投与して、化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax)が7.6ng/mL、化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)が2.2ng/mL*日、またはその両方を含む、前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、がんを処置する方法である。さらなる実施形態では、臨床的利益の可能性は、血漿濃度プロファイルを達成しない化合物Aによる処置と比較して増加する。他の実施形態では、達成されるCmaxプロファイルは、>5、>6、>7、>8、>9、または>10ng/mLである。他の実施形態では、達成されるAUCプロファイルは、>1、>2、>3、>4、または>5ng/mL*日である。
【0071】
化合物Aの遊離塩基の血漿中のCmaxが10.5ng/mL、および/または化合物Aの遊離塩基の血漿中のAUCが2.1ng/mL*日であることは、化合物Aと抗PD-L1抗体の併用治療からの臨床的利益の可能性が高いことに関連している。したがって一部の実施形態は、治療有効量の化合物A、またはその薬学的に許容され得る塩と抗PD-L1抗体を患者に投与して、化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax)が10.5ng/mL、化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)が2.1ng/mL*日、またはその両方を含む、前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、がんを処置する方法である。さらなる実施形態では、臨床的利益の可能性は、血漿濃度プロファイルを達成しない化合物Aによる処置と比較して増加する。他の実施形態では、達成されるCmaxプロファイルは、>5、>6、>7、>8、>9、>10、>11、または>12ng/mLである。他の実施形態では、達成されるAUCプロファイルは、>1、>2、>3、>4、または>5ng/mL*日である。
【0072】
特定の実施形態では、「臨床的利益」は、RECISTバージョン1.1による、完全奏効、部分奏効、または18週間を上回る安定疾患を意味する。
【0073】
「処置すること」または「処置」という用語は、ヒトまたは他の動物における疾患またはその態様の診断、緩和、または予防を含むあらゆる種類の処置活動、あるいはヒトまたは他の動物の体の構造またはあらゆる機能に他の方法で影響を与えるあらゆる活動を広く含む。処置活動には、医療専門家、患者自身、またはその他の人のいずれによるものであっても、特に本明細書に開示される様々な処置方法に従って、本明細書に記載されている薬剤、剤形、および医薬組成物を患者に投与することが含まれる。処置活動には、医師、フィジシャン アシスタント、ナースプラクティショナーなどの医療専門家の指示、指導、助言が含まれ、それは他の医療専門家または患者自身を含む他の人によって実行される。一部の実施形態では、処置活動の指示、指導、および助言の態様は、保険会社または医薬品給付管理会社などによって行われる可能性があるような、医薬品の保険適用を承認する、代替医薬品の適用範囲を認めない、薬剤処方集に医薬品を含める、または薬剤処方集から代替医薬品を除外する、または医薬品を使用するための報奨金を提供することなどによって、特定の医薬品またはその組合せが、状態の処置のために選択されることを奨励、誘導、または命令することも含むことができ、その医薬品は実際に使用される。一部の実施形態では、処置活動は、病院、診療所、健康維持組織、医療行為または医師団などによって確立される可能性のあるような方針または実践基準によって、特定の医薬品が状態の処置のために選択されることを奨励、誘導、または命令することを含むこともでき、その医薬品は実際に使用される。そのようなすべての指示、指導、および助言は、指導に従うことで処置の利益を受け取ることを条件づけるものとみなされる。場合によっては、そのような指示、指導、および助言を順守することで患者が金銭的利益を受けることもある。場合によっては、そのような指示、指導、および助言を順守することで医療専門家が金銭的利益を受けることもある。
【0074】
開示される方法によって処置することのできるがんの限定されない例としては、限定されるものではないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、小脳星状細胞腫;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫脳腫瘍、テント上原始脳腫瘍、神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部の神経膠腫など)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、癌(副腎皮質癌、胃腸癌、膵島細胞癌、皮膚癌、原発不明癌など);子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、腱鞘の明細胞肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜がん、上衣腫、上皮がん、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、膵島細胞癌(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、口唇および口腔がん、原発性肝がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、原発性転移性扁平上皮頸部がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、鼻腔および副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、中咽頭がん、卵巣上皮がん、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫陰茎がん、松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、前立腺がん、直腸がん、腎がん、移行細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、ユーイングファミリー腫瘍、カポジ肉腫、骨肉腫/骨、軟部組織の悪性線維性組織球腫など)、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、精巣がん、胸腺腫、甲状腺がん、絨毛性腫瘍、膣がん、外陰がん、またはウィルムス腫瘍を挙げることができる。一部の実施形態は、固形腫瘍を処置する方法である。一部の実施形態は、癌、または肉腫、または血液悪性腫瘍を処置する方法である。
【0075】
本明細書に開示される処置方法はそれぞれ、がんの処置における使用のための対応する組成物、がんの処置における組成物の使用、またはがんを処置するための医薬品の製造における組成物の使用などと表現されることがある。
製剤
【0076】
化合物Aを含む医薬組成物は、必要に応じて、限定されないが、他の薬学的に許容され得る成分(または医薬成分)を含むことができ、それには、限定されないが、バッファー、保存料、張度調整剤、塩、抗酸化剤、重量オスモル濃度調整剤、生理学的物質、薬理学的物質、増量剤、乳化剤、湿潤剤、甘味剤または香味剤などが含まれる。pHを調整するための様々なバッファーおよび手段を、得られる調製物が薬学的に許容され得るという条件で使用して、本明細書に開示される医薬組成物を調製することができる。そのようなバッファーとしては、限定されないが、酢酸バッファー、ホウ酸バッファー、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、中性緩衝食塩水、およびリン酸緩衝食塩水が挙げられる。必要に応じて、組成物のpHを調整するために、酸または塩基を使用することができることが理解される。薬学的に許容され得る抗酸化剤には、限定されないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。有用な保存料としては、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安定化オキシクロロ組成物、例えば、亜塩素酸ナトリウムなど、およびキレート剤、例えば、DTPAまたはDTPA-ビスアミド、DTPAカルシウム、およびCaNaDTPA-ビスアミドなどが挙げられる。医薬組成物に有用な張度調整剤には、限定されないが、塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリンなど、および他の薬学的に許容され得る張度調整剤が含まれる。
【0077】
注入に適した液体製剤は、生理学的に許容され得る滅菌水性液剤または非水性液剤、分散液剤、懸濁剤または乳剤と、滅菌注入液剤または分散液剤に再構成するための滅菌粉剤を含み得る。適した水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、限定されるものではないが、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロールなど)、それらの適した混合物、植物油(オリーブ油など)、ポリマー、リポソーム、ナノ粒子、ナノミセル製剤、ペグ化、アルミニウムゲル、アルブミンなどの関連タンパク質またはポリペプチド、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液剤の場合は必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0078】
化合物Aの医薬組成物は、必要に応じて、活性化合物を薬学的に許容され得る組成物に加工することを容易にする薬学的に許容され得る担体を含むことができる。そのような担体は、一般に活性化合物と混合されるか、または活性化合物を希釈または封入することが許容されている。限定されないが、例えば、水、食塩水、グリシン、ヒアルロン酸などのような水性媒体;溶媒;分散媒;ポリマー、リポソーム、ナノ粒子、ナノミセル製剤、ペグ化、アルミニウムゲル;アルブミンなどの関連タンパク質またはポリペプチド;抗菌剤および抗真菌剤;等張剤および吸収遅延剤;あるいは任意の他の不活性成分をはじめとする、様々な薬学的に許容され得る担体のいずれかを使用することができる。
【0079】
一部の実施形態では、患者のBSAに基づく適切な投与量の化合物Aは、注入用に100mlの生理食塩水に希釈される。
【0080】
一部の実施形態では、化合物Aの注射用液剤は、静脈内使用のための、化合物Aと不活性成分、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを含有する、無菌で保存料を含まない無色の液剤である。一次包装は、1.5mLの化合物A注射用液剤を含有する2mLのガラス製バイアルからなる。化合物Aの遊離塩基の濃度は、1.0mg/mlであってよく(ただし、この液剤は、硫酸塩などの薬学的に許容され得る塩を溶解することによって作製されてもよい)、100mLの生理食塩水に添加されるバイアル内の薬液の容量は、バイアル内1.0mg/mLと、患者の大きさ(mass)またはBSAに基づいて計算される。使用法は、薬局マニュアルまたは処方情報(添付文書)に、投与液剤の調製および注入要件について記載することができる。
【0081】
一部の実施形態では、化合物A注射用液剤のバイアルは、1回限りの使用のためのものであり、2mlの透明なバイアルで供給することができる。バイアルは13mmのゴム栓で蓋をされ、13mmのプラスチックアルミニウムシールで密封される。プラスチック製のフリップオフキャップ付きのアルミニウムシールは、クロージャーを所定の位置に固定するために使用することができる。バイアルは、複数のバイアル、例えばそれぞれ6本のバイアルが収まる小型の段ボール箱で出荷することができる。バイアルは室温(15~25℃)で保管され、安全で温度管理された、利用が制限された区域で光から保護される。最終の化合物A硫酸塩濃度は、約1.3mg/mLとなり得る。これは、約1.0mg/mLの遊離塩基に相当する。
【実施例
【0082】
以下の限定されない例は、現在企図される代表的な実施形態のより完全に理解を容易にするために、説明のみを目的として提供される。これらの例は、本明細書に記載される実施形態のいずれかを限定すると解釈されるべきではない。
実施例1
化合物Aの薬物動態および安全性
【0083】
単剤としての化合物A硫酸塩の多施設、非盲検、用量漸増/用量拡大第1相試験は、再発したかまたは標準的治療に対して難治性である、組織学的に確認された、切除不能または転移性の固形腫瘍を有する被験者に、あるいは承認された治療のない被験者について進行中である。被験者は、静脈内注入として、100mlの生理食塩水中の化合物A塩を投与される。処置サイクルは21日間で、1日目、8日目、および15日目に毎週3回の注入が行われる。
【0084】
進行中の第1相用量漸増試験には、これまでに、単剤治療として少なくとも1つの用量の化合物A塩で処置された36名の被験者が登録された。被験者集団の要約(表2)は、スクリーニング時に記録された人口統計、および以前の治療ラインを示す。(1つの治療ラインは、単剤の1以上の完全なサイクル、数種類の薬物の組合せからなるレジメン、または様々なレジメンの計画的な順次治療からなる。)登録された被験者の固形腫瘍には、15種類のタイプがあり、最も多かったのはNSCLC、子宮内膜癌/肉腫、および卵巣がんであった。
【表2】
【0085】
化合物Aの投与量は、最初はmg/kgで指定されていたが、問題があることが分かった。体重および薬物曝露の被験者間変動を考慮して、体表面積(BSA)ベースの投与量(mg/m)に基づく投与量が採用された。モステラー式が使用された:BSA=√身長(cm)×体重(kg)/3600。5つの漸増投与量(0.30mg/m、0.45mg/m、0.60mg/m、0.75mg/m、および0.90mg/m)を静脈内投与したところ、化合物Aの遊離塩基曝露の用量依存的増加が観察され、おおよその半減期は4時間であった(図1)。化合物Aは、すべての投与量について注入後約24時間までに血流から効果的に排除され、サイクル1の1日目から8日目に薬物の蓄積の徴候は観察されなかった。
【0086】
この試験では、明らかな用量依存的な毒性の増加はなかった。化合物Aの単剤治療は全体的に忍容性が高く、グレード4または5の有害事象(AE)がなく、36名中11名(31%)の被験者が薬物関連のAEを経験しなかった。最も一般的な薬物関連のAEは、免疫活性化に関連していた。
【0087】
患者のIP-10誘導倍数は、安全性プロファイルとの相関が観察されなかった。全体的な安全性プロファイルは、実質的なIP-10誘導を有する被験者とIP-10誘導が最小の被験者との間で同等であったためである(表3)。しかし、IP-10誘導は、化合物A単剤治療を受けている患者に対する臨床的利益と相関することが示されている。
【表3】
【0088】
IP-10誘導(>5倍増加)は、以前に抗PD-(L)1 mAbおよび/または化学療法処置を受けた被験者でより可能性が高かった(表3)。しかし、そのような免疫活性化は、以前に抗PD-(L)1 mAb処置を受けた被験者の臨床応答に有利に働いた。
実施例2
サイトカインバイオマーカーアッセイ
【0089】
少なくとも1つの用量の化合物A塩単剤治療で処置した各被験者について、サイクル1の1日目、サイクル1の8日目、およびサイクル3の1日目の投与前と注入後0.5、1、2、4、6、8、12、および24時間(サイクル3の1日目では投与前と注入後1時間および4時間のみ)に血液試料を採取した。化合物Aの薬力学解析には、サイトカイン定量および全血RNA転写プロファイリングが含まれていた。
【0090】
収集した血漿試料は、炎症応答、免疫系調節、およびその他の生物学的プロセスに関与するサイトカインバイオマーカーについて定量された。サイトカイン定量のためのアッセイは、IL-5、IL-17A、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、TNF-α、IFN-α、IFN-β、およびIP-10に対する捕捉抗体でプレコートされたMeso Scale Discovery(MSD)V-PLEXおよびU-PLEXプレートを用いて、Frontage Laboratories,Inc.によって行われた。血漿試料をプレートに直接加えて、試料中の分析物を捕捉抗体に結合させた。次に、電気化学発光標識(MSD SOLFO-TAG(商標))結合検出抗体を添加し、MSDプレートリーダーによってプレートを視覚化した。発光強度を測定して、各試料において捕捉された分析物の量(またはサイトカインレベル)を定量した。
【0091】
全血試料から抽出されたRNAを、予め設計されたHuman Pan Cancer Immune Profilingパネルの遺伝子を使用して遺伝子発現を定量するように設計されたハイプレックスアッセイのNanoString nCounterプラットフォームによって分析した。様々な時点での患者内比較も行った。サイトカインの定量からのデータに基づいて、選択した遺伝子の相対的な転写レベルを分析した。
【0092】
被験者試料の取り扱いおよび実験室分析は、医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)および優良試験所基準(GLP)に準拠して実施された。
【0093】
サイトカイン定量のデータ分析により、化合物A単剤治療が血中IP-10レベル(図2A)およびIFN-γ(データは示さず)を有意に増加させることが明らかになった。最も強力なサイトカイン誘導は、試験した化合物Aの最高用量レベルである、0.75mg/m用量レベル4に応答して観察された。IFN-γおよびIP-10レベルの増加は、化合物Aが、抗腫瘍免疫の周知のマーカーであるインターフェロン誘導性遺伝子シグネチャーをアップレギュレートすることを強く示唆している。化合物Aに誘導されたIP-10およびIFN-γの発現、ならびにインターフェロン誘導性遺伝子転写物の増加は、臨床応答と相関していた(実施例4を参照)。
実施例3
化合物A塩の投与に応答したサイトカインの薬動力学
【0094】
化合物A塩の静脈内投与のサイトカイン産生への影響を評価するために、市販のMSD V-plexアッセイ(Meso Scale Discoveries)を製造業者の指示に従って使用して、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-2、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-17、インターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)およびTNF-αの血漿レベルを定量した。血漿試料はサイクル1、サイクル3、およびサイクル6で採取した。定量されたサイトカインのうち、IP-10、IFN-γ、IL-6、IL-8、IL-10、およびTNF-αは検出可能なレベルであった。ピークのサイトカインレベルをサイクル1の1日目のベースラインに対して各被験者について正規化し、化合物Aの用量レベルに基づいて比較した(表4)。サイクル1の1日目または8日目のいずれかのより大きいピークサイトカインレベルを、すべての被験者を含むように分析するために選択した。IP-10およびIFN-γに用量依存的増加があり、化合物Aによる免疫活性化が示された。各用量レベルからのピークサイトカインレベル/ベースラインの中央値および範囲を表4に示す。サイトカイン誘導は、化合物Aのピーク血漿濃度とも相関していた(図3)。
【表4】
【0095】
IP-10およびIFN-γ誘導は、より高い化合物A塩用量で最も強力であることが明らかであり(表4)、そのようなIP-10およびIFN-γ誘導は統計学的に有意であった(それぞれ、p=0.002およびp=0.013)。IP-10転写物の用量依存的増加は、全血RNAでも観察された(データは示さず)。さらに、ベースラインからのIP-10の変化がAUECレベルで示された場合でも、IP-10誘導の用量依存的増加が観察された(図2A)。化合物AによるIP-10の用量依存的増加は、図2Bに見られるように、IP-10誘導が0.75mg/mで最も大きく(D4;用量レベル4)、統計学的に有意であった。
【0096】
IP-10/IFN-γ変化の中央値は、部分奏効および長期安定疾患(SD)の被験者においてより高く(データは示さず)、IP-10およびIFN-γ誘導が化合物Aに対する臨床応答と相関することが示された。このことは、Nanostring分析によるRNA転写プロファイリングによって確認され、レスポンダー(部分奏効および安定疾患>18週間)におけるCXCL10、CXCL11、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)のIFN誘導性遺伝子転写レベルの増加が示された(データは示さず)。応答に必要な免疫活性化のウィンドウは、PR(2名中2名)および長期SD被験者(7名中6名)に見られた、5~40倍増加のIP-10誘導によって定義され得る。100倍増加を上回るIP-10のウィンドウ外の誘導は、サイトカイン放出症候群などの毒性のリスクを最小限にするために、代わりに用量を減らす必要性があり得る。
実施例4
化合物A塩の単剤治療の有効性
【0097】
irRECISTによると、63%の病勢コントロール率(2例の部分奏効[PR]+18例の安定疾患[SD])が達成された。7名の被験者(22%)が長期の病勢コントロール(研究期間>18週間)を得、そのうちの1名は、化合物A塩の単剤治療処置で研究期間が68週間と最長であった。進行性疾患(PD、38%)の12名の被験者の反応が最も良かった。部分奏効の被験者は両名とも0.75mg/mの高用量の化合物A塩を投与された。
実施例5
化合物A塩の薬物動態、薬動力学、IP-10誘導のマーカー、および臨床的有効度の相関
【0098】
分析を行って、化合物Aの遊離塩基形態の薬物動態パラメータ、およびベースラインからの血漿IP-10誘導レベルとの関係、および臨床応答との相関関係を調査した。応答は、最良の総合効果-免疫関連部分奏効(irPR)、研究期間が18週間を上回るまたは下回る免疫関連安定疾患(irSD)、および未確認の免疫関連進行性疾患(uirPD)で定義された。臨床的利益は、部分奏効(irPR)または18週間を超えるirSDと定義された。有効性の評価が可能な32名の患者のIP-10サイトカイン誘導レベルを、サイクル1の投与量に関して分析した。個々の患者のADME(吸収、分布、代謝、および排泄)の患者間変動のために、同じ投与量を投与される患者でも、化合物A(遊離塩基として測定)のAUCまたはCmax値が非常に異なることがあり、これは次にIP-10誘導など、非常に異なる下流の薬力学的効果を生じる。例えば、代謝の遅い用量レベル2を投与された患者Aは、用量レベル3を投与された患者Bよりも高いAUCおよび/またはCmaxを有し得、その結果、患者Aはベースラインよりも高いIP-10誘導レベルを生じ得る。最終的には、化合物Aの投与量は、薬物動態(AUCまたはCmax)または薬動力学(例えば、IP-10誘導)因子に基づいて調整することが適切であり得る。
【0099】
図4に示されるように、ベースラインからの誘導として示されるIP-10誘導レベルを、化合物AのAUCに従って2つの群に分け、16名の患者を低AUC群(AUCが2.09ng/mL*日を下回る)、16名の患者を高AUC群(AUCが2.09ng/mL*日を上回る)群とした。IP-10の誘導レベルの平均値は、低AUC群では3.68倍であるが、高AUC群では27.2倍であり、IP-10を誘導して次に患者において臨床的利益をもたらすためには、最低でもAUC 2.09ng/ng/mL*日が必要であることを示している。この差はp<0.05で統計学的に有意である。実際、最良の応答に基づくと、低AUC群(irSD>18週)では2名の患者しか臨床的利益を得られなかったのに対し、高AUC群(irPR2名、irSD5名>18週)では7名の患者が治療的利益を得ている。このことは、高AUC群の患者のほうが臨床的利益を得る可能性が有意に高いことを明確に示していた。
【0100】
図5に示されるように、IP-10誘導レベルをベースラインからの誘導として示し、化合物AについてのCmaxに従って2つの群に分け、16名の患者を低Cmax群(Cmaxが9.4ng/mL*日を下回る)、16名の患者を高AUC群(Cmaxが9.4ng/mL*日を上回る)群とした。IP-10の誘導レベルの平均値は、低Cmax群では5.09倍であるが、高Cmax群では31.9倍であり、十分なIP-10を誘導して次に患者において臨床的利益をもたらすためには、最低でも9.4ng/mLのCmaxが必要であることを示している。この差はp<0.05で統計学的に有意である。実際、最良の応答に基づくと、低Cmax群(irSD>18週)では2名の患者しか臨床的利益を得られなかったのに対し、高Cmax群(irPR2名、irSD5名>18週)では7名の患者が治療的利益を得ている。このことは、高AUC群の患者のほうが臨床的利益を得る可能性が有意に高いことを明確に示していた。
【0101】
IP-10誘導がより高いことと有効性との間には相関があり、これはIFN-γよりも高かった。IP-10誘導の中央値(C1D1~C1D8の間のピーク濃度)は、臨床的利益のある被験者(irPR+irSD>18週間)についてのベースラインに対して13.5倍であったのに対して、irSD<18週間およびuirPDの被験者ではそれぞれ4.0倍および3.4倍であった。同様に、IFN-γ誘導の中央値は、臨床的利益のある被験者(irPR+irSD>18週間)についてのベースラインに対して7.5倍であったのに対して、irSD<18週間およびuirPDの被験者ではそれぞれ3.0倍および2.5倍であった。用量レベルが高いほど、IP-10またはIFN-γの誘導が大きくなり、それがひいてはより良好な臨床的有効度と相関することは明らかである。
実施例6
化合物Aの硫酸塩注射用液剤
【0102】
剤形を製造して、1.31mg/mL(1mLあたり1mgの遊離塩基)の濃度の化合物A硫酸塩の液剤1.5mLを2mLの注射バイアル内に得た。この液剤を作製するためのマスター式は(1mLあたり)以下であった:
・化合物A硫酸塩 1.31mg
・塩化ナトリウム 9.1mg
・クエン酸ナトリウム二水和物 0.71mg
・pHを4.0~5.0に調整するためのクエン酸二水和物(citrate dehydrate)またはクエン酸
・容量を1mLに調整するための注射用水
【0103】
化合物A硫酸塩は、C1722・HSO、分子量412.46である。結晶形態が製造の間に確認された(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018232725号に特定される結晶形態A)。
【0104】
投与するためには、適切な容量を注射バイアルから抜き取り、静脈内溶液用容器に注入し(例えば、100mLの生理食塩水)、これを患者に静脈内注入する。例えば、BSAが1.80の患者に0.75mg/mの化合物Aの遊離塩基、すなわち、1.35mgの用量を投与する場合、1.35mLの容量の化合物A硫酸塩溶液を注射バイアルから抜き取り、静脈内溶液用容器に注入することになる。
実施例7
単剤治療におけるまたは抗PD-1もしくは抗PD-L1治療との併用治療における化合物Aと臨床的有効度の相関
【0105】
化合物Aを、進行性固形腫瘍を有する被験者において、単剤治療で、そして抗PD-1 mAb(ペンブロリズマブ)または抗PD-L1 mAb(アテゾリズマブ)との併用治療で評価した。分析は、単剤治療で、または抗PD-1 mAbまたは抗PD-L1 mAbと併用して投与された化合物Aの遊離塩基形態の臨床的利益と薬物動態パラメータの相関関係を調査するために行われた。臨床的利益は、固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)バージョン1.1に基づいて、X線検査による完全奏効、部分奏効または18週間を超える安定疾患として定義された。
【0106】
図6Aに示されるように、32名の進行性固形がんの患者において、化合物Aを単剤治療で評価した。化合物AのAUCに従って患者を2つの群に分け、18名の患者を低AUC群(AUCが3.42ng/mL*日を下回る)、14名の患者を高AUC群(AUCが3.42ng/mL*日を上回る)とした。処置に対する臨床的利益は、低AUC群で11%の患者に観察されたのに対し、高AUC群では50%の患者に観察され、最低でも3.42ng/mL*日のAUCが患者において臨床的利益をもたらす可能性が高いことを示している。同じ患者におけるCmaxの評価を、化合物AについてのCmaxに従って2つの群に分け、17名の患者を低Cmax群(Cmaxが8.38ng/mLを下回る)、15名の患者を高Cmax群(Cmaxが8.38ng/mLを上回る)とした。処置に対する臨床的利益は、低Cmax群で12%の患者に観察されたのに対し、高Cmax群では47%の患者に観察され、最低でも8.38ng/mLのCmaxが患者において臨床的利益をもたらす可能性が高いことを示している。
【0107】
図6Bに示されるように、26名の進行性固形がんの患者において、化合物Aをペンブロリズマブとの併用治療で評価した。化合物AのAUCに従って患者を2つの群に分け、11名の患者を低AUC群(AUCが2.19ng/mL*日を下回る)、15名の患者を高AUC群(AUCが2.19ng/mL*日を上回る)とした。処置に対する臨床的利益は、低AUC群で27%の患者に観察されたのに対し、高AUC群では47%の患者に観察され、最低でも2.19ng/mL*日のAUCが患者において臨床的利益をもたらす可能性が高いことを示している。同じ患者におけるCmaxの評価を、化合物AについてのCmaxに従って2つの群に分け、10名の患者を低Cmax群(Cmaxが7.65ng/mLを下回る)、16名の患者を高Cmax群(Cmaxが7.65ng/mLを上回る)とした。処置に対する臨床的利益は、低Cmax群で30%の患者に観察されたのに対し、高Cmax群では44%の患者に観察され、最低でも7.65ng/mLのCmaxが患者において臨床的利益をもたらす可能性が高いことを示している。
【0108】
図6Cに示されるように、25名の進行性固形がんの患者において、化合物Aをアテゾリズマブとの併用治療で評価した。化合物AのAUCに従って患者を2つの群に分け、15名の患者を低AUC群(AUCが2.14ng/mL*日を下回る)、10名の患者を高AUC群(AUCが2.14ng/mL*日を上回る)とした。処置に対する臨床的利益は、低AUC群で20%の患者に観察されたのに対し、高AUC群では50%の患者に観察され、最低でも2.14ng/mL*日のAUCが患者において臨床的利益をもたらす可能性が高いことを示している。同じ患者におけるCmaxの評価を、化合物AについてのCmaxに従って2つの群に分け、15名の患者を低Cmax群(Cmaxが10.5ng/mLを下回る)、10名の患者を高Cmax群(Cmaxが10.5ng/mLを上回る)とした。処置に対する臨床的利益は、低Cmax群で27%の患者に観察されたのに対し、高Cmax群では40%の患者に観察され、最低でも10.5ng/mLのCmaxが患者において臨床的利益をもたらす可能性が高いことを示している。
【0109】
最後に、本明細書の態様は特定の実施形態を参照することによって強調されているが、当業者は、これらの開示される実施形態が本明細書に開示される主題の原理の例示にすぎないことを容易に理解することを理解されたい。そのため、開示される主題が本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および/または試薬などに決して限定されないことは当然理解される。したがって、開示される主題の様々な修正または変更または代替構成は、本明細書の精神から逸脱することなく、本明細書の教示に従って行うことができる。最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、正確に示され記載されたものに限定されない。
【0110】
本発明を実施するための本発明者らに公知の最良の態様を含む、本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されている。もちろん、これらの記載される実施形態の変形形態は、前述の説明を読めば当業者には明らかとなるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形形態を必要に応じて採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載された以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって容認されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載された主題のすべての修正および等価物を含む。さらに、すべての可能なその変形形態における上記の実施形態の任意の組合せは、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0111】
本発明の代替実施形態、要素、またはステップのグループ化は、限定として解釈されるものではない。各グループメンバーは、個別に、または本明細書に開示される他のグループメンバーとの任意の組合せで参照され特許請求され得る。利便性および/または特許性の理由から、グループの1またはそれを超えるメンバーがグループに含まれる、またはグループから削除される可能性があることが予想される。そのような包含または削除が発生した場合、本明細書はそのグループを変更された通りに含むものとみなされ、したがって、添付される特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0112】
他に指示がなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数字は、いかなる場合も「約」という用語によって修飾されると理解される。本明細書において、「約」という用語は、そのように限定された特徴、項目、量、パラメータ、特性、または用語が、記載された特徴、項目、量、パラメータ、特性、または用語の値の上下プラスまたはマイナス10パーセントの範囲を包含することを意味する。したがって、他にそうでないことが示されていない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、変動し得る近似値である。少なくとも、そして均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値表示は少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および値は近似値であるにもかかわらず、具体的な例に示される数値範囲および値は可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値範囲および値には、それぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が本質的に含まれる。値の数値範囲の記述は、本明細書において、その範囲内に入る各個々の数値を個別に参照する略記法として機能することを意図しているにすぎない。本明細書で別段の指示がない限り、数値範囲の各個々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0113】
本発明を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「a」、「an」、「the」、および同様の指示対象は、本明細書で別段の指示がない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈される。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書において提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、別途特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0114】
本明細書に開示される特定の実施形態は、特許請求の範囲において、からなる、または、から本質的になるという言語を使用してさらに限定されてよい。特許請求の範囲で使用される場合、出願時であろうと補正毎に追加されていようと、「からなる」という移行語は、特許請求の範囲で指定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。「から本質的になる」という移行語は、特許請求の範囲を、指定された材料またはステップ、および1または複数の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求された本発明の実施形態は、本明細書において本質的にまたは明示的に記載され、可能にされる。
【0115】
本明細書において参照され特定されるすべての特許、特許公報、およびその他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用されるかもしれないそのような刊行物に記載の組成物および方法論を記載および開示する目的で、参照によりその全体が個別にかつ明示的に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の提出日以前に開示されたものについてのみ提供されている。この点に関して、本発明者らが先行発明またはその他の理由により、かかる開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。日付に関するすべての記述またはこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確性に関していかなる承認も行うものではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
【手続補正書】
【提出日】2023-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法において使用するための
【化2】

またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)を含む組成物であって、前記方法は、前記組成物を、単剤治療として、前記遊離塩基の0.10mg/mから1.2mg/mという投与量で投与することを含む、組成物
【請求項2】
化合物Aの前記投与量が0.30mg/mから0.75mg/mである、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
化合物Aの前記投与量が約0.75mg/mである、請求項1に記載の組成物
【請求項4】
前記患者が以前に免疫チェックポイント阻害治療で処置されたことがある、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物
【請求項5】
前記患者のがんが前記以前の処置中に進行した、請求項4に記載の組成物
【請求項6】
化合物Aの単剤治療が、前記以前の処置の最後の投与後2週間から6ヶ月に開始される、請求項4または5に記載の組成物
【請求項7】
化合物Aの単剤治療が、前記以前の処置の最後の投与後12週間以内に開始される、請求項6に記載の組成物
【請求項8】
前記以前の処置が化学療法をさらに含んでいた、請求項4~7のいずれか1項に記載の組成物
【請求項9】
前記化学療法が細胞傷害性治療であった、請求項8に記載の組成物
【請求項10】
前記化学療法が標的治療であった、請求項8に記載の組成物
【請求項11】
前記免疫チェックポイント阻害剤治療が、PD-1/PD-L1遮断であった、請求項4~10のいずれか1項に記載の組成物
【請求項12】
PD-1/PD-L1遮断が抗PD-1抗体の投与を含んでいた、請求項11に記載の組成物
【請求項13】
PD-1/PD-L1遮断が抗PD-L1抗体の投与を含んでいた、請求項11に記載の組成物
【請求項14】
前記方法が、ベースラインレベルを確立するための化合物Aの最初の投与の前、および応答レベルを決定するための化合物Aの6回投与後の、血漿または全血中のインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)濃度または転写レベルの定量をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物
【請求項15】
化合物Aの6回投与後のIP-10の前記血漿または全血濃度がIP-10の前記ベースラインレベルの少なくとも2倍以下である場合、化合物Aの最初の投与量が0.90mg/m未満であれば化合物Aの前記投与量を増加させる、請求項14に記載の組成物
【請求項16】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、化合物Aを含む組成物であって、前記患者に投与されて、
a.8ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);および/または
b.3ng/mL*日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組成物
【請求項17】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、化合物Aおよび抗PD-1抗体を含む組合せ物であって、前記患者に投与されて、
a.7ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);および/または
b.2ng/mL日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組合せ物
【請求項18】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、化合物Aおよび抗PD-L1抗体を含む組合せ物であって、前記患者に投与されて、
a.10ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(Cmax);および/または
b.2ng/mL日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組合せ物
【請求項19】
maxまでの平均時間(Tmax)が前記投与後15~90分である、請求項16に記載の組成物または請求項17もしくは8に記載の組合せ物
【請求項20】
前記化合物Aが全身投与される剤形に含められている、請求項16に記載の組成物または請求項17もしくは8に記載の組合せ物
【請求項21】
前記剤形が、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または皮内を含む非経口注射経路を介して投与される、請求項20に記載の組成物または組合せ物
【請求項22】
前記静脈内経路が、静脈内ボーラスまたは静脈内注入を含む、請求項21に記載の組成物または組合せ物
【請求項23】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、免疫チェックポイント阻害剤および
【化3】

またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)を含む組合せ物であって、前記免疫チェックポイント阻害剤が、少なくとも1~3用量で投与されて、前記化合物Aが、0.10mg/mから1.2mg/mの投与量で投与されることを特徴とする、組合せ物
【請求項24】
化合物Aの最初の投与の後に、さらなる用量の前記免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項23に記載の組合せ物
【請求項25】
前記免疫チェックポイント阻害剤による処置が、化合物Aによる処置と併せて継続される、請求項23に記載の組合せ物
【請求項26】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、化合物Aを含む組成物であって、前記患者に抗PD-1抗体と組み合わせて投与されて、
a.7ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.2ng/mL 日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組成物。
【請求項27】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、抗PD-1抗体を含む組成物であって、前記患者に化合物Aと組み合わせて投与されて、
a.7ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.2ng/mL 日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組成物。
【請求項28】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、化合物Aを含む組成物であって、前記患者に抗PD-L1抗体と組み合わせて投与されて、
a.10ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.2ng/mL 日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組成物。
【請求項29】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、抗PD-L1抗体を含む組成物であって、前記患者に化合物Aと組み合わせて投与されて、
a.10ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.2ng/mL 日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを特徴とする、組成物。
【請求項30】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物であって、0.10mg/m から1.2mg/m の投与量で投与される、
【化4】

またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)と組み合わせて、少なくとも1~3用量の免疫チェックポイント阻害剤で投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項31】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための、
【化5】

またはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物であって、少なくとも1~3用量の免疫チェックポイント阻害剤での免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、0.10mg/m から1.2mg/m の投与量で投与されることを特徴とする、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
本明細書において参照され特定されるすべての特許、特許公報、およびその他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用されるかもしれないそのような刊行物に記載の組成物および方法論を記載および開示する目的で、参照によりその全体が個別にかつ明示的に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の提出日以前に開示されたものについてのみ提供されている。この点に関して、本発明者らが先行発明またはその他の理由により、かかる開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。日付に関するすべての記述またはこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確性に関していかなる承認も行うものではない。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、
【化2】

またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)を、単剤治療として、前記遊離塩基の0.10mg/m から1.2mg/m という投与量で投与することを含む方法。
(項目2)
化合物Aの前記投与量が0.30mg/m から0.75mg/m である、項目1に記載の方法。
(項目3)
化合物Aの前記投与量が約0.75mg/m である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記患者が以前に免疫チェックポイント阻害治療で処置されたことがある、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記患者のがんが前記以前の処置中に進行した、項目4に記載の方法。
(項目6)
化合物Aの単剤治療が、前記以前の処置の最後の投与後2週間から6ヶ月に開始される、項目4または5に記載の方法。
(項目7)
化合物Aの単剤治療が、前記以前の処置の最後の投与後12週間以内に開始される、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記以前の処置が化学療法をさらに含んでいた、項目4~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記化学療法が細胞傷害性治療であった、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記化学療法が標的治療であった、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記免疫チェックポイント阻害剤治療が、PD-1/PD-L1遮断であった、項目4~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
PD-1/PD-L1遮断が抗PD-1抗体の投与を含んでいた、項目11に記載の方法。
(項目13)
PD-1/PD-L1遮断が抗PD-L1抗体の投与を含んでいた、項目11に記載の方法。
(項目14)
ベースラインレベルを確立するための化合物Aの最初の投与の前、および応答レベルを決定するための化合物Aの6回投与後の、血漿または全血中のインターフェロン誘導性タンパク質10(IP-10)濃度または転写レベルの定量をさらに含む、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
化合物Aの6回投与後のIP-10の前記血漿または全血濃度がIP-10の前記ベースラインレベルの少なくとも2倍以下である場合、化合物Aの最初の投与量が0.90mg/m 未満であれば化合物Aの前記投与量を増加させる、項目14に記載の方法。
(項目16)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、治療有効量の化合物Aを前記患者に投与して、
a.8ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.3ng/mL*日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、方法。
(項目17)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、治療有効量の化合物Aおよび抗PD-1抗体を前記患者に投与して、
a.7ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.2ng/mL 日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、方法。
(項目18)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、治療有効量の化合物Aおよび抗PD-L1抗体を前記患者に投与して、
a.10ng/mLを超える化合物Aの遊離塩基の最大血漿濃度(C max );および/または
b.2ng/mL 日を超える化合物Aの遊離塩基の曲線下面積(AUC)
を含む前記患者における血漿濃度プロファイルを得ることを含む、方法。
(項目19)
max までの平均時間(T max )が前記投与後15~90分である、項目16~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記化合物Aが全身投与される剤形に含められている、項目16~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記剤形が、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または皮内を含む非経口注射経路を介して投与される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記静脈内経路が、静脈内ボーラスまたは静脈内注入を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
少なくとも1~3用量の免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後に
【化3】

またはその薬学的に許容され得る塩、(化合物A)を、0.10mg/m から1.2mg/m の投与量で投与することを含む、がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法。
(項目24)
化合物Aの最初の投与の後に、さらなる用量の前記免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記免疫チェックポイント阻害剤による処置が、化合物Aによる処置と併せて継続される、項目23に記載の方法。
【国際調査報告】