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特表2023-539626線維症及び炎症のための修飾免疫細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】線維症及び炎症のための修飾免疫細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/57 20060101AFI20230908BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230908BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230908BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20230908BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20230908BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230908BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20230908BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20230908BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230908BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C12N15/57
C12N5/078
C12N5/10
C12N15/19
C12N15/24
C12N15/12
C12N5/0786
C12N5/0784
A61K35/15
A61P1/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513706
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2021047889
(87)【国際公開番号】W WO2022047119
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,046
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521029782
【氏名又は名称】カリスマ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダンデカール, アディティア
(72)【発明者】
【氏名】クリチンスキー, マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB63
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB11
(57)【要約】
本開示は、外来性の線維溶解作用物質及び/または外来性の抗炎症作用物質を含む免疫細胞、ならびに外来性の線維溶解作用物質及び/または外来性の抗炎症作用物質を含む免疫細胞を使用する方法に関するものである。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質、及び/または
(ii)少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質
をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、修飾免疫細胞。
【請求項2】
前記少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質が、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)またはTWEAKポリペプチドを含む、請求項1に記載の修飾免疫細胞。
【請求項3】
前記MMPが、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-16、MMP-19、MMP-24、及び/またはTIMP-1のうちの1個以上を含むか、またはそれである、請求項2に記載の修飾免疫細胞。
【請求項4】
前記少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質が、サイトカイン、ケモカイン、またはペントラキシンを含むか、またはそれである、請求項1~3のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項5】
(i)前記サイトカインが、IL10、IL-4、IL-13、及び/またはTGF-ベータを含むか、またはそれであり、
(ii)前記ケモカインがCX3CLを含むか、またはそれであり、及び/または
(iii)前記ペントラキシンがペントラキシン-2を含むか、またはそれである、請求項4に記載の修飾免疫細胞。
【請求項6】
前記少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または前記少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質が、前記免疫細胞に繋留されているか、または前記免疫細胞から分泌されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項7】
前記1つ以上の核酸配列が、1つ以上の肝臓特異的プロモーターまたは肝硬変特異的プロモーターを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項8】
前記1つ以上の核酸配列が、CX3CR1プロモーター、インスリン様成長因子1(IGF1)、またはCD11Bプロモーターを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項9】
前記修飾免疫細胞が、マクロファージ、単球、または樹状細胞を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項10】
前記マクロファージが、分極化マクロファージを含むか、またはそれである、請求項9に記載の修飾免疫細胞。
【請求項11】
前記分極化マクロファージが、M0、M1、またはM2マクロファージを含むか、またはそれである、請求項10に記載の修飾免疫細胞。
【請求項12】
前記M2マクロファージが、M2A、M2B、M2C、またはM2Dマクロファージを含むか、またはそれである、請求項11に記載の修飾免疫細胞。
【請求項13】
前記マクロファージが、単球または前駆免疫細胞に由来する、請求項9~12のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項14】
前記前駆免疫細胞が、造血幹細胞、骨髄系前駆細胞、骨髄芽球、単芽球、前単球、またはこれらの中間体を含むか、またはそれである、請求項13に記載の修飾免疫細胞。
【請求項15】
前記マクロファージが、G-MCSF由来マクロファージまたはM-CSF由来マクロファージである、請求項9~14のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞を含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬的に許容される担体を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含む、核酸コンストラクト。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸コンストラクトを含む、医薬組成物。
【請求項20】
医薬的に許容される担体を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象における線維症または炎症を治療または予防するための方法であって、前記対象に、請求項16、17、19、または20のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療有効量を送達することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記線維症が、肝臓、肺、心臓、血管系、腎臓、膵臓、皮膚、胃腸管、骨髄、造血組織、神経系、及び/または眼の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記肝臓の線維化疾患、障害、または状態が、脂肪性肝疾患、障害、または状態を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記脂肪性肝疾患、障害、または状態が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)またはアルコール性肝疾患を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記NAFLが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アルコール性肝疾患が、アルコール性脂肪性肝疾患(AFLD)またはアルコール性脂肪性肝炎(ASH)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、肝硬変、肝損傷、肝細胞癌、肝脂肪化、肝不全リスク増大、死亡リスク増大、及び/またはC型肝炎感染(HCV)のうちの1つ以上を有する、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記炎症が、肝臓、胃腸管、肺、皮膚、心臓血管系、神経系、腎臓、膵臓、関節、眼、及び/または内分泌系の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、肝星細胞の活性化を低減する、請求項21~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、肝再生及び/または肝分解を向上させる、請求項21~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、前記対象における線維化促進マクロファージ集団及び抗線維化マクロファージ集団を均衡させる、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
免疫細胞を修飾する方法であって、前記免疫細胞に、少なくとも1つの外来性の抗線維化作用物質及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含む核酸コンストラクトを送達することを含む、前記方法。
【請求項33】
前記送達することが、mRNA、DNA、または化学修飾mRNAを用いたエレクトロポレーションまたは形質移入を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記送達することが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターを用いた形質導入を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記レトロウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記レンチウイルスベクターが、Vpxタンパク質でパッケージングされている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
Vpxタンパク質が、前記核酸コンストラクトの前、それと同時、またはその後に前記免疫細胞に送達される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記アデノウイルスベクターが、Ad2ベクターまたはAd5ベクターを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記Ad5ベクターが、Ad5f35アデノウイルスベクターを含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月28日に出願された米国特許仮出願第63/072,046号の優先権及び利益を主張し、当該出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、過剰な線維性結合組織の発生を特徴とする深刻な健康問題であり、このような組織の発生は、少なくとも部分的には、(例えば、損傷に応答した)修復及び/または反応のプロセスに起因するものである。線維症は、肺、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、皮膚、及び脳を含めた様々な臓器で起こり得る。線維化疾患、障害、状態に対し現在利用可能な治療法は、有効性が限られている。
【0003】
炎症性疾患は、ヒトの病的状態及び死亡の重大な原因である。炎症に対し現在利用可能な治療薬には、副腎抑制、骨の衰弱、筋消耗、消化性潰瘍、低カリウム血症、及び免疫系抑制などの様々な副作用が存在する。
【0004】
そのため、線維症及び炎症の低減及び治療に最適化された新たな治療モダリティの開発が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、線維溶解作用物質及び/または外来性の抗炎症作用物質を含む免疫細胞、ならびに線維溶解作用物質及び/または外来性の抗炎症作用物質を含む免疫細胞を使用する方法に関するものである。部分的には、本開示は、特異的に修飾された免疫細胞の投与が、線維化及び/または炎症性疾患の1つ以上の症状を治療するのに驚くほど有効であるという認識を包含する。
【0006】
1つの態様において、本開示は、(i)少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または(ii)少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含む、修飾免疫細胞を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質は、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)またはTWEAKポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、MMPは、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-16、MMP-19、MMP-24、及び/またはTIMP-1のうちの1つ以上を含むか、またはそれである。
【0008】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質は、サイトカイン、ケモカイン、またはペントラキシンを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL10、IL-4、IL-13、及び/またはTGF-ベータを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、ケモカインは、CX3CLを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、ペントラキシンは、ペントラキシン-2を含むか、またはそれである。
【0009】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質は、免疫細胞に繋留されているか、または免疫細胞から分泌されている。
【0010】
いくつかの実施形態において、1つ以上の核酸配列は、1つ以上の肝臓特異的プロモーターまたは肝硬変特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の核酸配列は、CX3CR1プロモーター、インスリン様成長因子1(IGF1)、またはCD11Bプロモーターを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞は、マクロファージ、単球、または樹状細胞を含む。いくつかの実施形態において、マクロファージは、分極化マクロファージを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、分極化マクロファージは、M0、M1、またはM2マクロファージを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、M2マクロファージは、M2A、M2B、M2C、またはM2Dマクロファージを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、マクロファージは、単球または前駆免疫細胞に由来する。いくつかの実施形態において、前駆免疫細胞は、造血幹細胞、骨髄系前駆細胞、骨髄芽球、単芽球、前単球、またはこれらの中間体を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、マクロファージは、G-MCSF由来マクロファージまたはM-CSF由来マクロファージである。
【0012】
いくつかの実施形態において、(例えば、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を含む)本明細書に記載の修飾免疫細胞は、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含まない第2の修飾免疫細胞に比べて、M2表現型を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞は、M2表現型を少なくとも7日間維持する。いくつかの実施形態において、(例えば、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を含む)本明細書に記載の修飾免疫細胞は、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含まない第2の修飾免疫細胞に比べて、M2表現型の1つ以上のマーカーの発現の増加を示す。いくつかの実施形態において、M2表現型の1つ以上のマーカーは、CD163、CD206、またはCD209のうちの1つ、2つ、または3つを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞からの抗炎症作用物質(例えば、IL10)の分泌は、1つ以上の非修飾免疫細胞をM2表現型に変換する。
【0013】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の修飾免疫細胞を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は医薬的に許容される担体を含む。
【0014】
別の態様において、本開示は、核酸コンストラクトであって、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または本明細書に記載の任意の態様または実施形態の少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含む、核酸コンストラクトを提供する。
【0015】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の核酸コンストラクトを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は医薬的に許容される担体を含む。
【0016】
別の態様において、本開示は、対象における線維症または炎症を治療または予防する方法を提供し、当該方法は、対象に、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の医薬組成物の治療有効量を送達することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、線維症は、肝臓、肺、心臓、血管、腎臓、膵臓、皮膚、胃腸管、骨髄、造血組織、神経系、及び/または眼の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、肝線維化疾患、障害、または状態は、脂肪性肝疾患、障害、または状態を含む。いくつかの実施形態において、脂肪性肝疾患、障害、または状態は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)またはアルコール性肝疾患を含む。いくつかの実施形態において、NAFLは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む。いくつかの実施形態において、アルコール性肝疾患は、アルコール性脂肪性肝疾患(AFLD)またはアルコール性脂肪性肝炎(ASH)を含む。いくつかの実施形態において、対象は、肝硬変、肝損傷、肝細胞癌、肝脂肪化、肝不全リスク増大、死亡リスク増大、及び/またはC型肝炎感染(HCV)のうちの1つ以上を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、炎症は、肝臓、胃腸管、肺、皮膚、心臓血管系、神経系、腎臓、膵臓、関節、眼、及び/または内分泌系の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、肝星細胞の活性化を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、肝再生及び/または肝分解を向上させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、線維化促進マクロファージ集団及び抗線維化マクロファージ集団を均衡させる。
【0020】
別の態様において、本開示は、免疫細胞を修飾する方法を提供し、当該方法は、免疫細胞に、核酸コンストラクトであって、本明細書に記載の任意の態様または実施形態の少なくとも1つの外来性の抗線維化作用物質及び/または本明細書に記載の任意の態様または実施形態の少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含む、核酸コンストラクトを送達することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、送達することは、mRNA、DNA、または化学修飾mRNAを用いたエレクトロポレーションまたは形質移入を含む。いくつかの実施形態において、送達することは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターを用いた形質導入を含む。いくつかの実施形態において、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態において、送達することは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)及び少なくとも1つのVpxタンパク質を用いた形質導入を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の免疫細胞は、ウイルスベクターを用いた形質移入の前及び/またはそれと同時に、少なくとも1つのVpx mRNAを用いたエレクトロポレーションまたは形質移入の一方または両方が行われる。いくつかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、Vpxタンパク質でパッケージングされている。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、Ad2ベクターまたはAd5ベクターを含む。いくつかの実施形態において、Ad5ベクターは、Ad5f35アデノウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態において、送達は、トランスポゾンベースの送達またはCRISPRベースの標的化統合(例えば、Cas9、Cas12a、またはC2c2のうちの1つ以上を含むCRISPR/Casシステム)を含む。
【0022】
図面は例示のためのものに過ぎず、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから3日後における、ヒトマクロファージの生存率を示す一連のグラフである。
【0024】
図2A】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから3日後、5日後、及び7日後における、ドナー1からのヒトマクロファージの上清中のIL10レベルを示す一連のグラフである。
図2B】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから3日後、5日後、及び7日後における、ドナー2からのヒトマクロファージの上清中のIL10レベルを示す一連のグラフである。
【0025】
図3A】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから3日後における、ドナー1からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)及びM1マーカー(CD80及びCD86)のMFIを示す一連のグラフである。
図3B】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから3日後における、ドナー2からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)及びM1マーカー(CD80及びCD86)のMFIを示す一連のグラフである。
【0026】
図4A】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから7日後における、ドナー1からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)のMFIを示す一連のグラフである。
図4B】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから7日後における、ドナー2からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)のMFIを示す一連のグラフである。
【0027】
図5A】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションした操作マクロファージから分泌されたIL10で刺激した後における、ドナー1からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)のMFIを示す一連のグラフである。
図5B】30nM、100nM、及び300nMのIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションした操作マクロファージから分泌されたIL10で刺激した後における、ドナー2からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)のMFIを示す一連のグラフである。
【0028】
図6A】IL10をコードするVPXレンチウイルス(VPX-LV)またはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入してから3日後、5日後、及び7日後における、ドナー1からのヒトマクロファージの上清中のIL10レベルを示す一連のグラフである。
図6B】IL10をコードするVPXレンチウイルス(VPX-LV)またはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入してから3日後、5日後、及び7日後における、ドナー2からのヒトマクロファージの上清中のIL10レベルを示す一連のグラフである。
【0029】
図7A】IL10をコードするVPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入してから3日後における、ヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)及びM1マーカー(CD80及びCD86)のMFIを示す一連のグラフである。
図7B】IL10をコードするVPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入してから7日後における、ヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)及びM1マーカー(CD80及びCD86)のMFIを示す一連のグラフである。
【0030】
図8A】IL10をコードするVPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入した操作マクロファージから分泌されたIL10で刺激した後における、ドナー1からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)及びM1マーカー(CD80及びCD86)のMFIを示す一連のグラフである。
図8B】IL10をコードするVPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入した操作マクロファージから分泌されたIL10で刺激した後における、ドナー2からのヒトマクロファージのM2マーカー(CD163及びCD206)及びM1マーカー(CD80及びCD86)のMFIを示す一連のグラフである。
【0031】
図9A】MMP13 mRNAまたはf-luc mRNAを用いてエレクトロポレーションしてから1日後、3日後、及び5日後における、ヒトマクロファージの上清中のMMP13レベルを示す一連のグラフである。
図9B】MMP13 VPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入してから5日後、7日後、及び10日後における、ヒトマクロファージの上清中のMMP13レベルを示す一連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本発明をより容易に理解するため、最初に、ある特定の用語を以下で定義する。以下の用語及びその他の用語のさらなる定義については、本明細書全体にわたって記載されている。本発明の背景を説明し、その実施に関しさらなる詳細を提供するために本明細書で参照されている刊行物及びその他の参考資料は、参照により本明細書に援用される。
【0033】
本明細書では、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは複数のエレメントを意味する。
【0034】
およそまたは約:本明細書で使用する場合、関心対象の1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、記述された参照値と同等の値を意味する。ある特定の実施形態において、「およそ」または「約」という用語は、別段の明記がない限り、または文脈から明らかでない限り、記載された基準値のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下に入る値の範囲(このような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)を指す。
【0035】
活性化:本明細書で使用する場合、「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激された、またはエフェクター機能を発揮するために刺激された、細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)の状態を指す。また、活性化は、誘導されたサイトカイン産生、サイトカイン分泌、食作用、細胞シグナル伝達(例えば、遺伝子発現の変化)、標的細胞殺傷、代謝変化、炎症メディエーターの産生、増殖、エピジェネティック再プログラミング、マクロファージの表現型スイッチング(例えば、M1分極化)、腫瘍促進もしくはM2マクロファージの抑制、腫瘍促進もしくはM2マクロファージの表現型スイッチング、及び/または抗原のプロセシング及び提示にも関連し得る。
【0036】
活性化単球/マクロファージ/樹状細胞:本明細書で使用する場合、「活性化単球/マクロファージ/樹状細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を経ているか、またはエフェクター機能を発揮している単球/マクロファージ/樹状細胞を指す。「活性化単球/マクロファージ/樹状細胞」という用語は、とりわけ、エフェクター機能を実施しているか、または静止状態では見られない任意の活性(食作用、サイトカイン分泌、増殖、遺伝子発現の変化、代謝変化、炎症メディエーターの産生、増殖、エピジェネティック再プログラミング、マクロファージの表現型スイッチング(例えば、M1分極化)、腫瘍促進またはM2マクロファージの抑制、腫瘍促進またはM2マクロファージの表現型スイッチング、及びその他の機能を含む)を発揮している細胞を指す。
【0037】
作用物質:本明細書で使用する場合、「作用物質」(または「生物学的作用物質」または「治療作用物質」)という用語は、本明細書に記載の修飾免疫細胞によって発現、放出、分泌、または標的に送達することができる分子を指す。作用物質としては、限定されるものではないが、核酸、抗生物質、抗体またはそのフラグメント、抗体作用物質またはそのフラグメント、成長因子、サイトカイン、酵素、タンパク質、ペプチド、融合タンパク質、合成分子、有機分子(例えば、小分子)、炭水化物、脂質、ホルモン、ミクロソーム、これらの誘導体またはバリエーション、これらのうちの1つ以上を含む製剤または組成物、及びこれらの任意の組合せを含む。作用物質は、標的または標的細胞上に存在する任意の細胞部分、例えば、受容体、抗原決定基、または他の結合部位に結合することができる。作用物質は、細胞内に拡散または輸送することができ、細胞内で作用することができる。例えば、作用物質は、本明細書に記載の外来性の線維溶解作用物質であり得る。また、作用物質は、本明細書に記載の外来性の抗炎症作用物質でもあり得る。
【0038】
抗体:本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、特定の標的抗原に対する特異的結合を付与するのに十分なカノニカル免疫グロブリン配列エレメントを含むポリペプチドを指す。当技術分野で知られているように、自然界で産生されるインタクトな抗体は、2つの同一な重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)と、2つの同一な軽鎖ポリペプチド(それぞれ25kD)とを含むおよそ150kDの四量体の作用物質であり、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドは互いに会合して、一般に「Y字型」構造と称される構造をもたらす。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(それぞれ約110アミノ酸長)を含み、アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)の次に3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びカルボキシ末端側のCH3(Y字の幹部分の底部にある)が続く。「スイッチ」として知られている短い領域は、重鎖可変領域及び定常領域を接続する。「ヒンジ」は、CH2及びCH3ドメインを抗体の残部に接続する。このヒンジ領域における2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体内の2つの重鎖ポリペプチドを相互に接続する。各軽鎖は2つのドメインを含み、アミノ末端側の可変(VL)ドメインの次にカルボキシ末端側の定常(CL)ドメインが続き、これらは別の「スイッチ」により互いから分離されている。インタクトな抗体の四量体は2つの重鎖-軽鎖二量体を含み、重鎖及び軽鎖は1つのジスルフィド結合によって互いに結合し、2つの他のジスルフィド結合は重鎖ヒンジ領域を互いに接続し、その結果二量体が互いに接続して四量体が形成される。また、天然に産生された抗体は、典型的にはCH2ドメイン上で、グリコシル化もされている。天然抗体内の各ドメインは、「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有し、この免疫グロブリンフォールドは、圧縮された逆平行ベータバレル内で互いに対し詰め込まれた2つのベータシート(例えば、3、4、または5ストランドシート)から形成されている。各可変ドメインは、「相補性決定領域」(CDR1、CDR2、及びCDR3)として知られている3つの超可変ループと、ある程度インバリアントな4つの「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)とを含む。天然抗体がフォールディングするとき、FR領域は、ドメインに構造フレームワークをもたらすベータシートを形成し、重鎖及び軽鎖の両方からのCDRループ領域は三次元空間内で一緒になって、Y構造の先端に位置する1つの超可変抗原結合部位を創出する。天然存在の抗体のFc領域は、補体システムのエレメントに結合し、さらにエフェクター細胞(例えば、細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含む)上の受容体にも結合する。Fc領域のFc受容体に対する親和性及び/または他の結合特性は、グリコシル化または他の修飾によって調節することができる。いくつかの実施形態において、産生及び/または利用される抗体は、グリコシル化Fcドメイン(修飾または操作グリコシル化を伴うFcドメインを含む)を含む。いくつかの実施形態において、天然抗体に見られるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体は、このようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原に反応する生物により生成される)か、あるいは組換え操作、化学合成、または他の人工システムもしくは方法論によって産生されるかにかかわらず、「抗体」と称することができ、及び/または「抗体」として使用することができる。いくつかの実施形態において、抗体はポリクローナルである。いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナルである。いくつかの実施形態において、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒトの抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態において、抗体配列エレメントは、当技術分野で知られているように、ヒト化、霊長類化、キメラなどである。さらに、本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、適切な実施形態において、(別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り)代替的提示における抗体の構造的及び機能的特徴を利用するための、当技術分野で知られているか、または開発されたコンストラクトまたはフォーマットのいずれかを指すことができる。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物に従って利用される抗体は、限定されるものではないが、インタクトなIgA、IgG、IgE、またはIgM抗体;二重または多重特異的抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など);抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fd’フラグメント、Fdフラグメント、及び単離されたCDRまたはそのセット;単鎖Fv;ポリペプチド-Fc融合体;単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはそのフラグメントなどのサメ単一ドメイン抗体);ラクダ様(cameloid)抗体;マスク抗体(例えば、Probodies(登録商標));Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIP(商標)」);単鎖またはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標));VHH;Anticalins(登録商標);Nanobodies(登録商標)ミニボディ;BiTE(登録商標);アンキリンリピートタンパク質またはDARPIN(登録商標);Avimers(登録商標);DART;TCR様抗体;Adnectins(登録商標);Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標);Affibodies(登録商標);TrimerX(登録商標);MicroProteins;Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標);及びKALBITOR(登録商標)から選択される形式をとる。いくつかの実施形態において、抗体は、天然産生された場合に有するであろう共有結合的修飾(例えば、グリカンの付着)が欠如している場合がある。いくつかの実施形態において、抗体は、共有結合的修飾(例えば、グリカンの付着)、ペイロード[例えば、検出可能部分、治療部分、触媒的部分等]、または他のペンダント基[例えば、ポリ-エチレングリコール等]を含むことができる。
【0039】
抗体フラグメント:本明細書で使用する場合、「抗体フラグメント」という用語は、インタクトな抗体の一部を指し、またインタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、線状抗体、scFv抗体、ならびに抗体フラグメント及びそのヒト化バージョンから形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0040】
抗体重鎖:本明細書で使用する場合、「抗体重鎖」という用語は、天然の立体構造で全ての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0041】
抗体軽鎖:本明細書で使用する場合、「抗体軽鎖」という用語は、天然の立体構造で全ての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。
【0042】
抗原:本明細書で使用する場合、「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘発可能な分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方に関係し得る。当業者であれば、実質的に全てのタンパク質またはペプチドを含む、任意の巨大分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAから導出することができる。当業者は、免疫応答を引き出すタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、当該用語が本明細書で使用されるように「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原は遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされなくてもよいことを理解するであろう。本開示が、限定されるものではないが、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むこと、及びこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を引き出すように様々な組合せで配置されることは容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原が、合成により生成することも、生物学的試料から導出することもできることは容易に明らかである。このような生物学的試料としては、限定されるものではないが、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液を挙げることができる。
【0043】
自己由来:本明細書で使用する場合、「自己由来」という用語は、ある個体に由来する任意の材料であって、後に同じ個体に再導入される材料を指す。
【0044】
同種異系:本明細書で使用する場合、「同種異系」という用語は、同じ種の異なる動物に由来する移植片(例えば、細胞の集団)を指す。
【0045】
異種:本明細書で使用する場合、「異種」という用語は、異なる種の動物に由来する移植片(例えば、細胞の集団)を指す。
【0046】
保存的配列の修飾:本明細書で使用する場合、「保存的配列の修飾」という用語は、そのアミノ酸配列を含む特定のタンパク質の少なくとも1つの性質または特性(例えば、抗体の結合特性)に顕著に影響を及ぼさないか、またはそれを変更しないアミノ酸修飾を指す。このような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、付加、及び欠失が挙げられる。修飾は、当技術分野で知られている標準的な技法(例えば、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発)により、様々な実施形態に適合する抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。このようなファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、及びトリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、及びメチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、及びイソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更された抗体は、本明細書に記載の機能アッセイを用いて抗原を結合する能力について試験することができる。
【0047】
有効量:本明細書で使用する場合、「有効量」及び「治療有効量」は交換可能であり、これらは、特定の生物学的結果を達成するか、または治療上もしくは予防上の利益を提供するのに有効な、本明細書に記載の化合物、製剤、材料、または組成物の量を指す。このような結果としては、限定されるものではないが、当技術分野に適している任意の手段によって定量される抗腫瘍活性を挙げることができる。
【0048】
エフェクター機能:本明細書で使用する場合、「エフェクター機能」または「エフェクター活性」とは、免疫細胞の刺激に応答して免疫細胞が行う特定の活性を指す。例えば、マクロファージのエフェクター機能は、食作用によって細胞細片、外来物質、微生物、がん細胞、及び他の不健康な細胞を貪食し消化することである。
【0049】
コードする:本明細書で使用する場合、「コードする」とは、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド内の特定のヌクレオチド配列が、生物学的プロセスにおいて、定義されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)または定義されたアミノ酸配列を有する他のポリマー及び巨大分子の合成のための鋳型として機能する固有の特性、ならびにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質をもたらす場合、タンパク質をコードする。コード鎖(mRNAの塩基配列と同一であり、通常、配列表で示されるヌクレオチド配列)及び非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される)はいずれも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称することができる。
【0050】
内在性:本明細書で使用する場合、「内在性」とは、特定の生物、細胞、組織、またはシステムからの、またはその内部で産生された物質を指す。
【0051】
外来性:本明細書で使用する場合、「外来性」という用語は、特定の生物、細胞、組織、またはシステムの外部から導入された、または産生された任意の材料を指す。
【0052】
拡大する:本明細書で使用する場合、「拡大する」という用語は、単球/マクロファージの数の増加におけるように数が増加することを指す。1つの実施形態において、ex vivoで拡大した単球、マクロファージ、または樹状細胞は、培養物中に元来存在する数に比べて数が増加する。別の実施形態において、ex vivoで拡大した単球、マクロファージ、または樹状細胞は、培養物中の他の細胞タイプに比べて数が増加する。本明細書で使用する場合、「ex vivo」という用語は、生物(例えば、ヒト)から取り出し、生物の外部(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクター)で増殖させた細胞を指す。
【0053】
発現:本明細書で使用する場合、核酸配列の「発現」という用語は、核酸配列から任意の遺伝子産物を生成することを指す。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、転写物であり得る。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、ポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、核酸配列の発現は、以下のうちの1つ以上を含む:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば転写による産生);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端形成によるもの);(3)RNAからポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;及び/または(4)ポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾。
【0054】
発現ベクター:本明細書で使用する場合、「発現ベクター」という用語は、発現させるべきヌクレオチド配列に作用可能に結合している発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性エレメントを含み、発現に必要な他のエレメントは、宿主細胞により、またはin vitro発現系で供給することができる。発現ベクターとしては、当技術分野で知られている全てのもの、例えば、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸またはリポソームに含まれるもの)、ならびにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(例えば、Ad5f35)が挙げられる。
【0055】
線維症:本明細書で使用する場合、「線維症」という用語は、細胞、組織、または臓器の正常な構成成分としてではなく、修復及び/または反応プロセスとしての線維性組織の形成を指す。線維症は、任意の特定の組織における線維芽細胞の蓄積及び正常な沈着を超えるコラーゲン沈着によって特徴付けられる。線維化疾患、障害、及び状態としては、限定されるものではないが、創傷治癒から生じる線維症、全身性及び局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺炎症、特発性肺線維症、間質性肺疾患、肝硬変、慢性BまたはC肝炎感染の結果としての線維症、腎疾患(例えば、糸球体腎炎)、瘢痕組織に起因する心疾患、ケロイド及び肥厚性瘢痕、ならびに眼疾患(例えば、黄斑変性、網膜網膜症、及び硝子体網膜症)が挙げられる。線維化疾患、障害、及び状態は、肝細胞内のコレステロール及び/またはトリグリセリドの蓄積に起因する疾患、障害、及び状態のような肝臓関連の可能性があり、これらは、肝線維症及び/または肝硬変につながる炎症促進性反応を引き起こす恐れがある。線維性の構成要素を有する肝障害としては、限定されるものではないが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)もしくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))またはアルコール性肝疾患(例えば、アルコール性脂肪性肝疾患(AFLD)もしくはアルコール性脂肪性肝炎(ASH))が挙げられる。線維化疾患、障害、及び状態としては、機械的外傷、胆道閉塞、自己免疫性肝炎、鉄過剰症、B型肝炎感染(HBV)、及び/またはC型肝炎感染(HCV)を挙げることができる。
【0056】
相同性:本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子間)、及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一の場合、互いに「相同」であるとみなされる。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%類似している(例えば、対応する位置に関連する化学特性を有する残基を含む)場合、互いに「相同」であるとみなされる。当業者には理解されるように、相同性の程度を決定するための配列比較を可能にする様々なアルゴリズムが利用可能であり、これには、異なる配列においてどの残基が互いに「対応」するか検討する際に、ある配列内の別の配列に対する指示された長さのギャップを許容することにより行われるものが含まれる。2つの核酸配列間の相同性パーセントの計算は、例えば、2つの配列を最適な比較目的のためにアラインメントすることにより実施することができる(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、また、対応しない配列は、比較目的のために無視することができる)。ある特定の実施形態において、比較目的のためにアラインメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。次に、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドを比較する。第1の配列内のある位置が、第2の配列内の対応位置と同じヌクレオチドにより占有されている場合、その位置における分子は同一であり、第1の配列内のある位置が、第2の配列内の対応位置と類似するヌクレオチドにより占有されている場合、その位置における分子は類似している。2つの配列間の相同性パーセントは、配列が共有する同一及び同様の位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れている。
【0057】
同一性:本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば、2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子の各々の位置がアルギニンに占有されている場合、これらの配列はその位置において同一である。2つのアミノ酸配列がアラインメントで同じ位置に同じ残基を有する同一性またはその程度は、しばしばパーセンテージとして表現される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致するまたは同一である位置の数の一次関数であり、例えば、2つのアミノ酸配列の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマー内の5つの位置)が一致する場合、2つのアミノ酸配列は50%同一であり、位置の90%(例えば、10中9)が一致するまたは同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0058】
実質的な同一性:本明細書で使用する場合、「実質的な同一性」という用語は、アミノ酸または核酸配列間の比較を指す。当業者であれば理解するように、2つの配列は、対応する位置に同一の残基を含む場合、概して「実質的に同一」であるとみなされる。当技術分野で周知されているように、アミノ酸または核酸配列は、様々なアルゴリズムのいずれかを使用して比較することができる。このようなアルゴリズムには市販のコンピュータープログラムで利用可能なものが含まれ、例えば、ヌクレオチド配列についてはBLASTN、アミノ酸配列についてはBLASTP、ギャップBLAST、及びPSI-BLASTがある。いくつかの実施形態において、2つの配列は、対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上が、該当する残基の連なりにわたって同一である場合に実質的に同一とみなされる。いくつかの実施形態において、該当する連なりは完全配列である。いくつかの実施形態において、該当する連なりは、少なくとも10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、125個、150個、175個、200個、225個、250個、275個、300個、325個、350個、375個、400個、425個、450個、475個、500個、またはそれ以上の残基である。CDRの文脈において、「実質的な同一性」に言及された場合、典型的には、参照CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するCDRを指す。
【0059】
炎症:本明細書で使用する場合、「炎症」という用語は、侵害刺激(限定されるものではないが、損傷、免疫反応、感染、内在性物質の変化、内在性経路の欠陥、及び/または外来物質を含む)に対する細胞的、生理学的、及び/または免疫学的応答を指す。炎症は、全身性または局所性であり得る。炎症は、急性または慢性であり得る。例示的な炎症性の状態、疾患、及び障害としては、限定されるものではないが、肝臓、胃腸管炎症、肺、皮膚、心臓血管系、神経系、腎臓、膵臓、関節、眼、及び/または内分泌系の炎症性状態、疾患、または障害が挙げられる。炎症性疾患、障害、または状態は、毒素、侵襲(例えば、環境上の危険(例えば、アスベスト、石炭粉、及び/または多環式芳香族炭化水素)、あるいは喫煙)、及び/または医学的処置(例えば、手術)に関連し得る。炎症性疾患、障害、または状態は、自己免疫性疾患であるか、またはそれを含むことができる。
【0060】
免疫グロブリン:本明細書で使用する場合、「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスを指す。B細胞が発現する抗体は、場合によってはBCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称される。このタンパク質のクラスに含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、及びIgEである。IgAは、身体の分泌物(例えば、唾液、涙液、母乳、胃腸管分泌物、ならびに気道及び泌尿器官の粘液分泌物)中に存在する一次抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、ほとんどの対象の一次免疫応答で産生される主要な免疫グロブリンである。これは、凝集、補体固定、及び他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌及びウイルスに対する防御において重要である。IgDは、抗体機能は知られていないが、抗原受容体として機能し得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンに曝露されたときにマスト細胞及び好塩基球からメディエーターを放出させることによって即時型過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
【0061】
単離された:本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、自然の状態から変化したか、または除去されたものを指す。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離」されていないが、その天然状態の共存材料から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離」されている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在する場合もあれば、例えば宿主細胞のような非ネイティブの環境に存在する場合もある。
【0062】
レンチウイルス:本明細書で使用する場合、「レンチウイルス」という用語はRetroviridae科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるレトロウイルスの中でも独特なウイルスであり、宿主細胞のDNAに顕著な量の遺伝情報を送達することができるため、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つとなっている。HIV、SIV、及びFIVは、全てレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、in vivoで顕著なレベルの遺伝子移入を達成するための手段を提供する。
【0063】
修飾:本明細書で使用する場合、「修飾」という用語は、本開示の分子または細胞の変化した状態または構造を指す。分子は、化学的、構造的、及び機能的なものを含めて、多くの方法で修飾することができる。細胞は、核酸の導入によって修飾することができる。
【0064】
調節する:本明細書で使用する場合、「調節する」という用語は、対象における応答レベルが、治療または化合物が存在しない場合の対象における応答レベルに比べて、及び/または他の点では同一であるが治療していない対象における応答レベルに比べて、検出可能に増加または減少するのを媒介することを指す。この用語は、ネイティブなシグナルまたは応答に対し混乱させ及び/または影響を及ぼし、それにより、対象、好ましくはヒトにおいて有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0065】
作用可能に結合している:本明細書で使用する場合、「作用可能に結合している」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的結合を指し、その結果後者が発現する。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作用可能に結合している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コード配列と作用可能に結合している。概して、作用可能に結合したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合には、同じリーディングフレーム内にある。
【0066】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖を指す。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用する場合、核酸及びポリヌクレオチドは交換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、これが加水分解して単量体の「ヌクレオチド」となり得るという一般知識を有する。単量体のヌクレオチドは、加水分解してヌクレオシドとなり得る。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドには、限定されるものではないが、当技術分野で利用可能な任意の手段(限定されるものではないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCR(商標)を用いた組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングなど、ならびに合成手段を含む)によって得られる全ての核酸配列が含まれる。
【0067】
ポリペプチド:本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、典型的にはペプチド結合によって結合している、残基(例えば、アミノ酸)の任意のポリマー鎖を指す。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、自然界に存在するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、自然界に存在しないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、人手の行為によって設計及び/または産生されるという点において操作されているアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはその両方を含むか、またはそれらからなることができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、天然アミノ酸のみまたは非天然アミノ酸のみを含むか、またはそれからなることができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその両方を含むことができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはこれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上のペンダント基または他の修飾(例えば、1つ以上のアミノ酸側鎖の修飾またはそれに対する結合)を含むことができる。いくつかの実施形態において、このようなペンダント基または修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、ペグ化など(これらの組合せを含む)からなる群より選択することができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは環状であってもよい、及び/または環状部分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは環状ではない、及び/またはいかなる環状部分も含まない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは線状である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ステープルポリペプチドであるか、またはそれを含むことができる。いくつかの実施形態において、「ポリペプチド」という用語は、参照ポリペプチド、活性、または構造の名称に付加することができ、このような場合、本明細書では、当該用語は、関連する活性または構造を共有するポリペプチドを指すように使用され、したがって、同じクラスまたはファミリーのポリペプチドのメンバーであるとみなすことができる。各々のこのようなクラスについて、本明細書は、アミノ酸配列及び/または機能が既知であるクラス内の例示的なポリペプチドを提供し、及び/または当業者はこれらを認識するであろう。いくつかの実施形態において、このような例示的なポリペプチドは、ポリペプチドクラスまたはファミリーにおける参照ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、クラスの参照ポリペプチド(いくつかの実施形態では、クラス内の全てのポリペプチド)に対し、顕著な配列相同性もしくは同一性を示す、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列エレメント)を共有する、及び/または共通の活性(いくつかの実施形態では、同等のレベルもしくは指定された範囲内での活性)を共有する。例えば、いくつかの実施形態において、メンバーポリペプチドは、参照ポリペプチドとの少なくとも約30~40%、しばしば約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の全体的な配列相同性の程度を示し、及び/または非常に高い配列同一性、しばしば90%超、もしくは95%、96%、97%、98%、もしくは99%超を示す少なくとも1つの領域(例えば、いくつかの実施形態では特徴的な配列エレメントであるか、またはそれを含んでもよい保存領域)を含む。このような保存領域は、通常、少なくとも3~4個、しばしば最大20個またはそれ以上のアミノ酸を包含し、いくつかの実施形態において、保存領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上の連続した少なくとも1つのアミノ酸の連なりを包含する。いくつかの実施形態において、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドのフラグメントを含むか、またはそれらからなることができる。いくつかの実施形態において、有用なポリペプチドは、複数のフラグメントを含むか、またはそれらからなることができ、それらの各々は、関心対象のポリペプチドがその親ポリペプチドの誘導体であるように、同じ親ポリペプチド内で、関心対象のポリペプチド内で見られるのとは互いに異なる空間的配置で見られる(例えば、親内で直接結合しているフラグメントが、関心対象のポリペプチド内で空間的に離れていてもよく、その逆であってもよく、及び/またはフラグメントが関心対象のポリペプチド内で親と異なる順序で存在していてもよい)。
【0068】
タンパク質:本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合によって互いに結合している少なくとも2つのアミノ酸の連なり)を指す。タンパク質は、アミノ酸以外の部分(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなど)を含んでもよく、及び/または他のプロセシングもしくは修飾が行われてもよい。当業者は、「タンパク質」が、細胞によって産生される完全なポリペプチド鎖(シグナル配列の有無は問わない)であっても、その特徴的な部分であってもよいことを理解するであろう。当業者は、タンパク質が、場合により、(例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって結合するか、または他の手段によって関連付けられる)複数のポリペプチド鎖を含んでもよいことを理解するであろう。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、または両方を含むことができ、当技術分野で知られている様々なアミノ酸修飾または類似体のいずれかを含むことができる。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などが挙げられる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びこれらの組合せを含むことができる。「ペプチド」という用語は、概して、長さが約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満、または10アミノ酸未満のポリペプチドを指すために使用する。いくつかの実施形態において、タンパク質は、抗体、抗体フラグメント、その生物学的活性部分、及び/またはその特徴的な部分である。
【0069】
対象:本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、生物、例えば、哺乳類(例えば、ヒト、非ヒト哺乳類、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、イヌ)を指す。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、成人、青年、または小児の対象である。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態(例えば、本明細書に示されているように治療することができる疾患、障害、または状態、例えば、本明細書で挙げられているがんまたは腫瘍)を患っている。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態に感受性を有し、いくつかの実施形態において、感受性を有する対象は、(参照対象または集団で観察される平均リスクに比べて)疾患、障害、または状態を発症する素因を有する、及び/またはそのリスクの増加を示す。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態の特定の症状(例えば、疾患の臨床所見)または特性を示さない。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態のいかなる症状も特徴も示さない。いくつかの実施形態において、対象は患者である。いくつかの実施形態において、対象は、診断及び/または治療が管理されている及び/または管理されてきた個体である。
【0070】
実質的に精製された:本明細書で使用する場合、例えば細胞に適用される「実質的に精製された」という用語は、他の細胞種を本質的に含まない細胞を指す。また、実質的に精製された細胞は、通常は天然に存在する状態で関連している他の細胞タイプから分離した細胞も指す。いくつかの場合において、実質的に精製された細胞の集団は、均質な細胞の集団を指す。他の場合においては、この用語は、単に、天然の状態で結合している細胞から分離した細胞を指す。いくつかの実施形態において、細胞は、in vitroで培養される。他の実施形態において、細胞は、in vitroで培養されない。
【0071】
療法:本明細書で使用する場合、「療法(therapeutic)」という用語は、治療及び/または予防を指す。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0072】
形質移入:本明細書で使用する場合、「形質移入」または「形質導入」または「形質転換」という用語は、外来核酸が宿主細胞内に移入または導入されるプロセスを指す。「形質移入」または「形質転換」または「形質導入」細胞は、外来の核酸で形質移入、形質転換、または形質導入された細胞である。細胞には、初代主題細胞及びその後代が含まれる。
【0073】
治療する:本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、疾患、障害、及び/または状態(例えば、線維症及び/または炎症に関連する疾患、障害、及び/または状態)の1つ以上の症状または特徴の部分的または完全な緩和、改善、発症の遅延、抑制、予防、軽減、及び/または発生率及び/または重症度の低減を指す。いくつかの実施形態において、治療は、疾患、障害、及び/または状態の徴候または特徴を示さない対象に投与することができる(例えば、予防的であってもよい)。いくつかの実施形態において、治療は、初期または軽度の疾患、障害、及び/または状態の徴候または特徴を示すに過ぎない対象に、例えば、疾患、障害、及び/または状態に関連する病態の発症リスクを減少させる目的で投与することができる。いくつかの実施形態において、治療は、確立した、重度の、及び/または後期の疾患、障害、または状態の徴候を示す対象に投与することができる。
【0074】
ベクター:本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、単離核酸を含み、この単離核酸を細胞の内部に送達するのに使用することができる物質組成物を指す。多数のベクターが当技術分野で知られており、限定されるものではないが、これには線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが含まれる。したがって、「ベクター」という用語は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。また、この用語は、細胞内への核酸の移行を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物(例えば、ポリリジン化合物、リポソームなど)を含むと解釈されるべきでもある。ウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。
【0075】
本開示全体において、本発明の様々な態様は範囲形式で提示され得る。範囲形式での記述は、単に便宜及び簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、考えられ得る全ての部分範囲に加えて、その範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、「1~6」といった範囲の記述は、「1~3」、「1~4」、「1~5」、「2~4」、「2~6」、「3~6」などの部分範囲に加えて、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
[発明を実施するための形態]
【0076】
免疫細胞
本開示は、とりわけ、修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)であって、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む、修飾免疫細胞を提供する。修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)を含むか、またはそれを発現することができる。
【0077】
本明細書で使用する場合、「免疫細胞」という用語は、免疫応答(例えば、免疫応答の促進)に関与する細胞を指す。免疫細胞の例としては、限定されるものではないが、マクロファージ、単球、樹状細胞、好中球、好酸球、マスト細胞、血小板、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、T-リンパ球、またはB-リンパ球が挙げられる。免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)の供給源は、対象から得ることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、提供される方法及び/または組成物は、免疫細胞の集団を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の免疫細胞の集団は、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び/またはこれらの前駆体を含む。いくつかの実施形態において、免疫細胞の集団は、単球、マクロファージ、もしくは樹状細胞の精製された集団、または細胞株を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は活性化され、例えば免疫細胞は、例えば不活性な細胞に比べて、サイトカイン産生、ケモカイン産生、食作用、細胞シグナル伝達、標的細胞殺傷、及び/または抗原提示の増加を示す。いくつかの実施形態において、活性化された免疫細胞は、例えば不活性細胞に比べて、遺伝子発現の変化、例えば、炎症促進性遺伝子発現(例えば、TNF、IL-12、IFN、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、またはIL-1のうちの1、2、3、4、5、6、または7個)の誘導を示す。ある特定の実施形態において、活性化された免疫細胞は、細胞分裂を経ている。
【0080】
いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、対象から得られる(例えば、単離される)。免疫細胞は、自己由来とするか、または同種異系もしくは汎用ドナーから調達することができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、腫瘍、及び/または人工多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞(ESC))を含めた多くの供給源から得ることができる。ある特定の実施形態において、細胞は、当業者に知られている任意の数の分離技法(例えば、フィコール分離)を用いて、対象から採取した血液単位から得ることができる。いくつかの実施形態において、対象の循環血液からの細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。アフェレーシスによって採取した細胞は、洗浄して血漿画分を取り出し、様々なバッファー(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS))または培養基に再懸濁することができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球)の濃縮は、プラスチック付着を含む。いくつかの実施形態において、濃縮に続いて、免疫細胞(例えば、単球)の分化は、GM-CSFによる刺激を含む。いくつかの実施形態において、血球(例えば、単球、リンパ球、血小板、血漿、及び/または赤血球)を含む組成物、例えば、白血球アフェレーシス組成物(例えば、leukopak)が濃縮に使用される。いくつかの実施形態において、白血球アフェレーシス組成物(例えば、leukopak)は、健康なヒトドナーからの試料を含む。ある特定の実施形態において、免疫細胞(例えば、単球)のアフェレーシスの次に、GM-CSFによる動員が行われる。ある特定の実施形態において、免疫細胞(例えば、単球)の選択は、マイクロビーズ(例えば、CliniMACS Prodigyデバイス上のMACS(登録商標)MicroBeads)を用いたCD14陽性選択を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、免疫細胞前駆体(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞の前駆体)が、本明細書に記載の組成物及び方法で使用される。免疫細胞前駆体は、in vivoまたはex vivoで免疫細胞に分化させることができる。前駆免疫細胞の非限定的な例としては、造血幹細胞、骨髄系前駆細胞、骨髄芽球、単芽球、前単球、またはこれらの中間体が挙げられる。例えば、誘導多能性幹細胞を使用して、単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞を生成することができる。誘導多能性幹細胞(iPSC)は、正常なヒト組織(例えば、末梢血、線維芽細胞、皮膚、ケラチノサイト、または腎上皮細胞)から導出することができる。自家、同種異系、または汎用ドナーiPSCは、骨髄系統(例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、またはその前駆体)に向かって分化させることができる。
【0082】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通じた遠心分離により、赤血球を溶解し、リンパ球及び赤血球を枯渇させることによって末梢血から単離することができる。代替的に、免疫細胞は、臍帯組織から単離してもよい。免疫細胞の特定の亜集団は、ポジティブまたはネガティブ選択技法によってさらに単離することができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、ある特定の抗原(限定されるものではないが、CD34、CD3、CD4、CD8、CD56、CD66b、CD19、またはCD20を含む)を発現する細胞から枯渇させることができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞集団の濃縮は、例えばネガティブ選択による場合、ネガティブ選択された細胞に固有の表面マーカーに向けられた抗体の組合せを用いて達成することができる。非限定的な例として、細胞選択は、ネガティブ磁気免疫付着またはフローサイトメトリーも含むことができ、これは、ネガティブ選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する。
【0083】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)の所望の集団をポジティブまたはネガティブ選択によって単離する間に、免疫細胞の濃度及び表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変化させることができる。ビーズ及び細胞の接触面積を確実に最大にするために、ビーズ及び細胞が混合される体積を大きく減らすことが望ましい場合がある。
【0084】
マクロファージ
本開示は、とりわけ、マクロファージであって、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む、マクロファージを提供する。マクロファージは、標的細胞(例えば、病原体または腫瘍細胞)の検出、食作用、及び破壊、ならびに組織修復プロセスの開始、維持、及び分解に特化した免疫細胞である。マクロファージは、多数の成長因子(例えば、PDGF、IGF-1、TGF-β1、及びVEGF-αを含む)の産生によるものを含めて、組織修復に強力に寄与している。いくつかの実施形態において、マクロファージは、レゾルビン(例えば、レゾルビンDs及び/またはレゾルビンEs)を含むか、またはそれを発現する。いくつかの実施形態において、マクロファージは、オステオポンチンを含むか、またはそれを発現する。いくつかの実施形態において、M2またはM0表現型を示すマクロファージは、本開示によって包含される方法及び/または組成物で使用される場合、特に有利である。
【0085】
いくつかの実施形態において、マクロファージは、未分化またはM0マクロファージを含むか、またはそれである。ある特定の実施形態において、マクロファージは、CD14、CD16、CD64、CD68、CD71、またはCCR5のうちの1、2、3、4、5、または6個を含むか、またはそれを発現する。様々な刺激に曝露することで、M0マクロファージをいくつかの異なる集団に分極化するように誘導することができ、この集団は、マクロファージ表現型マーカー、サイトカイン産生、及び/またはケモカイン分泌によって識別することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、マクロファージは、分極化マクロファージを含むか、またはそれである。古典的な活性化条件下では、M0マクロファージを炎症促進性シグナル(例えば、LPS、IFNγ、及びGM-CSF)に曝露し、M1マクロファージに分極化することができる。一般に、M1マクロファージは、炎症促進性免疫応答(Th1及びTh17 T細胞応答)に関連する。他の刺激に曝露することで、マクロファージを「代替的に活性化された」多様な集団またはM2マクロファージに分極化することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、マクロファージは、M1マクロファージを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、マクロファージは、M1マクロファージの1つ以上のマーカー(例えばCD86、CD80、MHC II、IL-1R、TLR2、TLR4、iNOS、SOCS3、CD83、PD-L1、CD69、MHC I、CD64、CD32、CD16、IL1R、IFITファミリーメンバー、またはISGファミリーメンバーのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18個)を発現する。
【0088】
いくつかの実施形態において、マクロファージは、M2マクロファージ(例えば、M2A、M2B、M2C、またはM2Dマクロファージ)を含むか、またはそれである。M2Aマクロファージは、IL-4、IL-13、及び/または真菌感染によって誘導することができる。M2Bマクロファージは、IL-1Rリガンド、免疫複合体、及び/またはLPSによって誘導することができる。M2Cマクロファージは、IL-10及び/またはTGFβによって誘導することができる。M2Dマクロファージは、IL-6及び/またはアデノシンによって誘導することができる。いくつかの実施形態において、マクロファージは、M2マクロファージの1つ以上のマーカー(例えば、CD206、CD163、またはCD209のうちの1、2、または3個)を発現する。
【0089】
いくつかの実施形態において、マクロファージは、少なくとも1つの上方調節されたM2マーカー及び/または少なくとも1つの下方調節されたM1マーカーを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのM2マーカー(例えば、CD206、CD163、及び/またはCD209)は、マクロファージ内で上方調節される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのM1マーカー(例えば、HLA DR、CD86、CD80、PD-L1、CD83、CD69、MHC I、CD64、CD32、CD16、IL1R、IFITファミリーメンバー、及び/またはISGファミリーメンバー)がマクロファージ内で下方調節される。
【0090】
単球
本開示は、とりわけ、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書で提供されるポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書で提供されるポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む単球を提供する。単球は、血液、骨髄、及び脾臓内で循環する多能性細胞であり、概して定常状態では増殖しない。単球のサイズは、直径約10~30μmの範囲で大きく変化し得る。単球の核:細胞質の比は、約2:1から約1:1の範囲であり得る。典型的には、単球は、ケモカイン受容体及び病原体認識受容体を含み、これは創傷修復時または感染時などに血液から組織への移動を媒介する。単球は、炎症性及び/または抗炎症性サイトカインを産生し、細胞及び/または毒性分子を取り込み、樹状細胞またはマクロファージに分化することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、単球は、1つ以上の表現型マーカーを含むか、またはそれを発現する。ヒト単球の例示的な表現型マーカーとしては、限定されるものではないが、CD9、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD15、CDw17、CD31、CD32、CD33、CD35、CD36、CD38、CD43、CD49b、CD49e、CD49f、CD63、CD64、CD65s、CD68、CD84、CD85、CD86、CD87、CD89、CD91、CDw92、CD93、CD98、CD101、CD102、CD111、CD112、CD115、CD116、CD119、CDwl2lb、CDw123、CD127、CDw128、CDw131、CD147、CD155、CD156a、CD157、CD162、CD163、CD164、CD168、CD171、CD172a、CD180、CD206、CD131a1、CD213 2、CDw210、CD226、CD281、CD282、CD284、及びCD286が挙げられる。マウス単球の例示的な表現型マーカーとしては、限定されるものではないが、CD11a、CD11b、CD16、CD18、CD29、CD31、CD32、CD44、CD45、CD49d、CD115、CD116、Cdw131、CD281、CD282、CD284、CD286、F4/80、及びCD49bが挙げられる。ある特定の実施形態において、単球は、CD11b、CD14、またはCD16のうちの1、2、または3個を含む。ある特定の実施形態において、単球は、CD14+CD16-単球、CD14+CD16+単球、またはCD14-CD16+単球を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、単球は、マクロファージに分化する。いくつかの実施形態において、単球は、樹状細胞(DC)に分化する。単球は、当技術分野で知られている任意の技法により、マクロファージまたはDCに分化させることができる。例えば、単球のマクロファージへの分化は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)によって誘導することができる。単球からDCへの分化は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とIL-4との組合せによって誘導することができる。
【0093】
樹状細胞
本開示は、とりわけ、樹状細胞(DC)であって、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む、樹状細胞を提供する。DCは、骨髄由来の特殊な抗原提示細胞であり、免疫応答の開始及び自己抗原に対する免疫系の寛容性の維持に関与する。樹状細胞は、リンパ系及び非リンパ系の器官に見出すことができ、概してリンパ系または骨髄系統から発生すると考えられている。
【0094】
いくつかの実施形態において、DCは、1つ以上の表現型マーカーを含むか、またはそれを発現する。DCの例示的な表現型マーカーとしては、限定されるものではないが、CD11c、CD83、CD1a、CD1c、CD141、CD207、CLEC9a、CD123、CD85、CD180、CD187、CD205、CD281、CD282、CD284、CD286、及び部分的にはCD206、CD207、CD208、及びCD209が挙げられる。
【0095】
未熟DCは、抗原捕捉能力は高いが、T細胞刺激能力が比較的低いことによって特徴付けることができる。炎症性メディエーターはDCの成熟を促進する。いくつかの実施形態において、DCは、未熟DCを含むか、またはそれである。他の実施形態において、DCは、成熟DCを含むか、またはそれである。
【0096】
修飾免疫細胞
いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、修飾マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)を発現することによって生成される。また、本開示は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸配列(例えば、単離核酸配列)を含む免疫細胞も提供し、当該細胞は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現する単球、マクロファージ、または樹状細胞である。
【0097】
外来性の線維溶解作用物質
本明細書で使用する場合、「外来性の線維溶解作用物質」という用語は、例えば、本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞)を介し線維化標的に影響を及ぼすために発現、放出、分泌、または送達され得る外来性の分子を指す。線維化標的は、線維組織の形成を引き起こすか、またはそれから生じ、線維症に関連する任意の生化学的、細胞的、または生理学的なタンパク質を含むことができる。線維化標的は、任意の線維化状態、疾患、または障害(例えば、本明細書に記載の線維化状態、疾患、または障害)に関連し得る。外来性の線維溶解作用物質としては、限定されるものではないが、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、抗生物質、抗体もしくはその断片、抗体作用物質もしくはその断片、成長因子、サイトカイン、酵素、合成分子、有機分子(例えば、小分子)、炭水化物、脂質、ホルモン、及び/またはミクロソーム、あるいは前述のいずれかの誘導体またはバリアントを挙げることができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、外来性の線維溶解作用物質は、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)もしくはその機能的断片を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、MMPは、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-16、MMP-19、MMP-24、及び/またはTIMP-1、あるいは前述のいずれかの機能的断片のうちの1つ以上を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、外来性の線維溶解作用物質は、TWEAKポリペプチドまたはその機能的断片を含むか、またはそれである。
【0099】
いくつかの実施形態において、外来性の線維溶解作用物質は、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)に繋留されている。いくつかの実施形態において、外来性の線維溶解作用物質は、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)から分泌される。
【0100】
いくつかの実施形態において、外来性の線維溶解作用物質は、1つ以上のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)-アンカー、1つ以上の膜貫通型受容体またはリガンド、あるいは1つ以上のヒンジドメイン及び/または1つ以上の膜貫通型ドメインとの融合により、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)に繋留されている。いくつかの実施形態において、ヒンジドメインは、CD8a、IgG4、またはCD28ヒンジドメインを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8a、CD64、CD32a、CD32c、CD16a、TRL1、TLR2、TLR3、TRL4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、ALK、AXL、DDR2、EGFR、EphA1、INSR、cMET、MUSK、PDGFR、PTK7、RET、ROR1、ROS1、RYK、TIE2、TRK、VEGFR、CD40、CD19、CD20、41BB、CD28、OX40、GITR、TREM-1、TREM-2、DAP12、MR、ICOS、MyD88、CD3ゼータ、FcRγ、V/I/LxYxxL/V、SIRPa、CD45、Siglec-10、PD1、SHP-1、SHP-2、KIR-2DL、KIR-3DL、NKG2A、CD170、CD33、BTLA、CD32b、SIRPb、CD22、PIR-B、LILRB1、CD36、またはSyk膜貫通ドメインを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、外来性の線維溶解作用物質は、短いリンカー(例えば、グリシンリッチ及び/またはセリンリッチリンカー)により、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)に繋留されている。いくつかの実施形態において、リンカーは、(GGGGS)n(n=1、2、3、4、または5)、またはその並べ替えバージョン、例えば(SGGGG)n(n=1、2、3、4、または5)を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、肝星細胞の活性化を減少または予防する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、組織の再生及び/または分解(例えば、肝組織の再生及び/または分解)を向上させる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、線維化促進免疫細胞集団及び線維化抑制免疫細胞集団(例えば、マクロファージ集団)を均衡させる。
【0102】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、線維症(例えば、肝線維症)を減少または予防する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、組織損傷(例えば、肝組織損傷)を減少または予防する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、アラニントランスアミナーゼ(ALT)及び/またはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)を減少する。
【0103】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、肝細胞炎症を減少または予防する(例えば、その結果、NF-kB、IL-1β、IL-2、MCP-1、及び/またはMIP-1のレベルを減少する)。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、抗炎症作用物質(例えば、IL-10、IL-2、及び/またはCCL18)のレベルまたは活性の増加をもたらす。
【0104】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、脂肪化(例えば、肝脂肪化)を減少または予防する。
【0105】
外来性の抗炎症作用物質
本明細書で使用する場合、「外来性の抗炎症作用物質」という用語は、例えば、本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞)を介し炎症標的に発現、放出、分泌、または送達させることができる外来性の分子を指す。炎症標的は、侵害刺激(限定されるものではないが、損傷、免疫反応、感染、内在性物質の変化、内在性経路の欠陥、及び/または外来物質を含む)に対する生化学的、細胞的、または生理学的応答を引き起こすか、またはそれから生じ得る。いくつかの実施形態において、炎症標的は、タンパク質であるか、またはそれを含む。外来性の抗炎症作用物質としては、限定されるものではないが、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸、抗生物質、抗体もしくはその断片、抗体作用物質もしくはその断片、成長因子、サイトカイン、酵素、合成分子、有機分子(例えば、小分子)、炭水化物、脂質、ホルモン、及び/またはミクロソーム、あるいは前述のいずれかの誘導体またはバリアントを挙げることができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、サイトカインを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL10、IL4、IL13、TGFβ、IL11、IL1RA、IL6、M-CSF、GM-CSF、sTNFRI、sTNFRII、sIL-18BP、及び/またはIL2-RAを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、ケモカインを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、ケモカインは、CX3CLを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、ペントラキシンを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、ペントラキシンは、ペントラキシン-2を含むか、またはそれである。
【0107】
いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)に繋留されている。いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)から分泌される。
【0108】
いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、1つ以上のGPI-アンカー、1つ以上の膜貫通型受容体またはリガンド、あるいは1つ以上のヒンジドメイン及び/または1つ以上の膜貫通型ドメインとの融合により、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)に繋留されている。いくつかの実施形態において、ヒンジドメインは、CD8a、IgG4、またはCD28ヒンジドメインを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8a、CD64、CD32a、CD32c、CD16a、TRL1、TLR2、TLR3、TRL4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、ALK、AXL、DDR2、EGFR、EphA1、INSR、cMET、MUSK、PDGFR、PTK7、RET、ROR1、ROS1、RYK、TIE2、TRK、VEGFR、CD40、CD19、CD20、41BB、CD28、OX40、GITR、TREM-1、TREM-2、DAP12、MR、ICOS、MyD88、CD3ゼータ、FcRγ、V/I/LxYxxL/V、SIRPa、CD45、Siglec-10、PD1、SHP-1、SHP-2、KIR-2DL、KIR-3DL、NKG2A、CD170、CD33、BTLA、CD32b、SIRPb、CD22、PIR-B、LILRB1、CD36、またはSyk膜貫通ドメインを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、外来性の抗炎症作用物質は、短いリンカー(例えば、グリシンリッチ及び/またはセリンリッチリンカー)により、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)に繋留されている。いくつかの実施形態において、リンカーは、(GGGGS)n(n=1、2、3、4、または5)、またはその並べ替えバージョン、例えば(SGGGG)n(n=1、2、3、4、または5)を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、1つ以上の炎症作用物質(例えば、TNFα、IL-6、IL-1β、MCP-1、CCL2、及び/またはMIP-1)の発現レベルを減少する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、炎症性シグナル伝達(例えば、NF-kBシグナル伝達)を減少する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、抗炎症作用物質(例えば、IL-10、IL-2、及び/またはCCL18)の発現レベルを増加する。
【0110】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、酸化ストレスを減少または予防する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、組織炎症(例えば、肝組織炎症)を減少または防止する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質を発現するか、またはそれを含む本明細書に記載の修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、例えば、同じタイプの非修飾免疫細胞に比べて、炎症エフェクター細胞(例えば、肝星細胞)の活性化を減少する。
【0111】
核酸コンストラクト
本開示は、とりわけ、核酸分子であって、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む、核酸分子を提供する。免疫細胞は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸分子(例えば、外来性の核酸分子)を含むことができる。
【0112】
別段の明記がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という表現は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が何らかのバージョンでイントロン(複数可)を含み得る範囲内で、イントロンも含むことができる。「コードする」という用語は、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド内の特定のヌクレオチド配列が、生物学的プロセスにおいて、定義されたヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNA、及びmRNA)または定義されたアミノ酸配列を有する他のポリマー及び巨大分子の合成のための鋳型として機能する固有の特性、ならびにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質をもたらす場合、タンパク質をコードする。コード鎖(mRNAの塩基配列と同一であり、通常、配列表で示されるヌクレオチド配列)及び非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される)はいずれも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称することができる。
【0113】
「作用可能に結合した」または「転写制御」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす制御配列と異種核酸配列との間の機能的結合を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作用可能に結合している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コード配列と作用可能に結合している。作用可能に結合したDNA配列は、互いに連続することができ、例えば、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、これらは同じリーディングフレーム内にある。
【0114】
本明細書で使用する場合、「フラグメント」または「部分」という用語は、全体の離散的な部分を含み、ただし全体の構造に見られる1つ以上の部分が欠如した構造を指す。いくつかの実施形態において、フラグメントは、このような離散的な部分を含む。いくつかの実施形態において、フラグメントは、全体に見られる特徴的な構造エレメントまたは部分からなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドフラグメントは、全体のヌクレオチドに見られる少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、またはそれ以上の単量体単位(例えば、核酸)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドフラグメントは、全ヌクレオチドに見られる単量体単位(例えば、残基)の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、25%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上を含むか、またはそれからなる。全体の材料または実体は、いくつかの実施形態では全体の「親」と称されることがある。
【0115】
少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸分子は、DNA分子、RNA分子、またはこれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態において、核酸分子は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)転写物を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、核酸分子は、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードするmRNA転写物を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、核酸分子は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をコードするDNAコンストラクトを含むか、またはそれである。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質の全体または断片は、例えば、細胞(例えば、哺乳類細胞)内での発現のために、コドン最適化核酸分子によってコードされる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質の全体または断片は、例えば、細胞(例えば、哺乳類細胞)内での発現のために、コドン最適化核酸分子によってコードされる。様々なコドン最適化法が当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,786,464号及び同第6,114,148号に開示されている(これらの各々を、参照により全体として本明細書に援用する)。
【0117】
いくつかの実施形態において、ベクターは、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸分子を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージミド、レトロトランスポゾン(例えば、ピギーバックもしくはスリーピングビューティー)、部位特異的挿入ベクター(例えば、少なくとも1つの外来性線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸配列を含む鋳型ドナーDNAを挿入するためのCRISPR/Casシステム(例えば、Cas9、Cas12a、もしくはC2c2のうちの1つ以上を含むCRISPR/Casシステム)、Znフィンガーヌクレアーゼ、及び/またはTALEN)、自殺発現ベクター、あるいは当技術分野で知られている他のベクターを含む。ベクターは、真核生物内での複製及び統合に適したものであり得る。ベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、シークエンシングベクターを挙げることができる。
【0118】
ベクターは、複製起点、プロモーター配列(例えば、構成的または誘導的プロモーター)、及び/または好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び米国特許第6,326,193号を参照(これらの各々は、参照により全体として本明細書に援用される))を含むことができる。また、ベクターとしては、例えば、分泌を促進するためのシグナル配列、ポリアデニル化シグナル及び転写ターミネーター(例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル)、エピソーム複製及び原核生物における複製を可能にするエレメント(例えば、SV40オリジン及び/またはColE1)、選択を可能にするエレメント(例えば、アンピシリン耐性遺伝子及び/またはゼオシンマーカー)、及び/またはレポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質)も挙げることができる。
【0119】
本明細書に記載の核酸の発現は、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸を、発現ベクター中のプロモーターに作用可能に結合することにより、達成することができる。本明細書に記載の核酸の発現は、少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする核酸を、発現ベクター中のプロモーターに作用可能に結合することにより、達成することができる。例示的なプロモーター(例えば、構成的プロモーター)としては、限定されるものではないが、伸長因子1αプロモーター(EF-1α)プロモーター、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ユビキチンCプロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)プロモーター、鳥類白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、またはクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられる。誘導的プロモーターの例としては、限定されるものではないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。ベクターは、転写開始の頻度を調節するために、追加のプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーも含むことができる。
【0120】
ベクターは、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードし、1つ以上の組織特異的プロモーターに作用可能に結合している、1つ以上の核酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターは、1つ以上の肝臓特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターは、1つ以上の肝硬変特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターは、CX3CR1プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターは、インスリン様成長因子1(IGF1)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターは、CD11Bプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、ベクター(またはベクターの組合せ)は、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の線維溶解作用物質及び/または抗炎症作用物質をコードする核酸配列を含むことができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含むベクターは、ウイルスベクターを含むか、またはそれである。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知されており、例えば、Sambrook et al.,2012,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NY)で説明されている。ウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターもしくはガンマレトロウイルスベクター)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ベクターは、レンチウイルスベクター(例えば、米国特許第9,149,519号または国際公開第WO2017/044487号で説明されているもの(これらの各々は、参照により全体として本明細書に援用される))を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスは、二重鎖DNAを含む大きなウイルス科である。アデノウイルスは、宿主細胞の核内で複製し、宿主の細胞機構を使用してウイルスRNA、DNA、及びタンパク質を合成する。アデノウイルスは、当技術分野において、複製細胞及び非複製細胞の両方に影響を及ぼし、大きな導入遺伝子を収容し、宿主細胞ゲノムへの統合なしでタンパク質をコードすることが知られている。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、Ad2ベクターまたはAd5ベクター(例えば、Ad5f35アデノウイルスベクター、例えば、ヘルパー依存性Ad5F35アデノウイルスベクター)を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。AAVシステムは、当技術分野で周知されている(例えば、Kelleher and Vos,Biotechniques,17(6):1110-17(1994);Cotten et al.,P.N.A.S. U.S.A.,89(13):6094-98(1992);Curiel,Nat Immun,13(2-3):141-64(1994);Muzyczka,Curr Top Microbiol Immunol,158:97-129(1992);及びAsokan A,et al.,Mol.Ther.,20(4):699-708(2012)を参照)。組換えAAV(rAAV)ベクターを生成し、使用するための方法は、例えば、米国特許第5,139,941号及び第4,797,368号に記載されている。
【0124】
いくつかのAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV3(例えば、AAV3B)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、及びAAV11、ならびにこれらのバリアントを含む)が特性評価されている。概して、任意のAAV血清型は、本明細書に記載の少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)を送達するために使用することができる。いくつかの実施形態において、AAV血清型は、特定の組織に対する向性を有する。
【0125】
いくつかの実施形態において、CRISPR/Cas9システム(またはCas12a、Cas13などを含む他のCasシステム)は、最近、相同組換え(HR)中にドナー鋳型DNAとして機能するためのアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを用いた高レベルの精密なゲノム編集を容易にすることが示されている。
【0126】
いくつかの実施形態において、ベクターは、(例えば、Tobias Maetzig et al.,“Gammaretroviral Vectors:Biology,Technology and Application”Viruses.2011 Jun;3(6):677-713(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載のように)ガンマレトロウイルスベクターを含む。例示的なガンマレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MLV)、脾限局巣形成ウイルス(SFFV)、及び骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、ならびにこれらから誘導されるベクターが挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、ベクターは、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする2つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの作用物質(例えば、2つ以上の線維溶解作用物質、2つ以上の抗炎症作用物質、または線維溶解作用物質と抗炎症作用物質との組合せ)をコードする2つ以上の核酸配列は、単一の核分子により、例えば、同じフレーム内で単一のポリペプチド鎖として、コードされる。いくつかの実施形態において、2つ以上の作用物質は、1つ以上の切断ペプチド部位(例えば、自動切断部位または細胞内プロテアーゼの基質)によって分離されている。ある特定の実施形態において、切断ペプチドは、ブタテシオウイルスI(P2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(T2A)ペプチド、ウマ鼻炎A型ウイルス(E2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(F2A)ペプチド、またはこれらのバリアントを含む。
【0128】
医薬組成物
本開示は、とりわけ、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)と、1つ以上の医薬的または生理的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤との組合せを含む、医薬組成物を提供する。
【0129】
「治療有効量」、「免疫有効量」、「抗免疫応答有効量」、または「免疫応答阻害有効量」が示される場合、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物の正確な量は、医師により、患者(対象)の年齢、体重、免疫応答、及び状態の個々の差を考慮して決定することができる。
【0130】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物は、バッファー(中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロース、デキストラン、またはマンニトール);タンパク質、ポリペプチド、またはアミノ酸(例えばグリシン);抗酸化剤;キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、混入物を実質的に含まず、例えば、検出可能なレベルの混入物(例えば、エンドトキシン)が存在しない。
【0131】
本明細書に記載の医薬組成物は、治療または予防されるべき疾患、障害、または状態に適切な方法で投与することができる。投与の量及び頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患、障害、または状態のタイプ及び重症度といった因子によって決定されるが、臨床試験によって適切な投与量が決定されることもある。
【0132】
本明細書に記載の医薬組成物は、様々な形態をとることができる。このような形態としては、例えば、液体、半固体、及び固体の投与形態、例えば、溶液(例えば、注射液及び点滴液)、分散液または懸濁液、リポソーム、ならびに坐剤が挙げられる。好ましい組成物は、注射液または点滴溶液であり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、経動脈、または腹腔内の投与用に製剤化することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内)投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内点滴または注射用に製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、筋肉内または皮下注射用に製剤化される。本明細書に記載の医薬組成物は、免疫療法で一般的に知られている点滴技法を使用することによって投与するために製剤化することができる(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988(参照により全体として本明細書に援用される)を参照)。
【0134】
本明細書で使用する場合、「非経口投与」及び「非経口投与される」という用語は、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を指し、通常は注射または点滴によるものであり、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、腫瘍内、及び胸骨内の注射及び点滴が含まれる。
【0135】
本明細書に記載の免疫細胞を含む医薬組成物は、約10~約10細胞/kg体重(例えば、約10~約10細胞/kg体重)(これらの範囲内の全ての整数値を含む)で投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)の用量は、少なくとも約1×10、約1.1×10、約2×10、約3.6×10、約5×10、約1×10、約1.8×10、約2×10、約5×10、約1×10、約2×10、約5×10、約1×10、約2×10、または約5×10細胞を含む。本明細書に記載の医薬組成物は、ある特定の投与量で複数回投与することもできる。特定の患者に対する最適な投与量及び治療レジメンは、当業者が、患者の疾患、障害、または状態の徴候をモニターし、それに応じて治療を調整することにより、容易に決定することができる。
【0136】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物を対象に投与し、続いて再採血し(またはアフェレーシスを実施し)、採取した免疫細胞を活性化し、活性化した免疫細胞を対象に再注射することが所望されることがある。このプロセスは、複数回(例えば、数週間ごとに)実施され得る。免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、約10cc~約400ccの採血から活性化することができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、約20cc、約30cc、約40cc、約50cc、約60cc、約70cc、約80cc、約90cc、または約100ccの採血から活性化される。理論に拘束されるものではないが、本明細書に記載の複数の採血及び再注入を含む方法は、ある特定の免疫細胞集団を選択し得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物は、第2の治療法と組み合わせて(例えば、その前、それと同時、またはその後に)投与される。例えば、第2の治療法としては、限定されるものではないが、ファルネソイドX受容体アゴニスト、ステアロイルCoAデサチュラーゼ阻害剤、CCR2/CCR5ケモカインアンタゴニスト、PPARアゴニスト、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン-3阻害剤、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、リジルオキシダーゼ-2(LOX-2)アンタゴニスト、TGFβアンタゴニスト、及び/またはTIMPアンタゴニストを挙げることができる。対象に投与されるべき任意の前述の治療薬の投与量は、治療される疾患、障害、または状態によって、及び特定の対象に基づいて変化する。ヒトの投与のための投与量のスケーリングは、当分野で受け入れられている方法に従って実施することができる。
【0138】
治療方法
本開示は、とりわけ、対象における疾患、障害、または状態(例えば、本明細書に記載の疾患、障害、または状態)を治療する方法を提供し、当該方法は、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物を送達することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物の治療有効量が、疾患、障害、または状態を有する対象に投与される。
【0139】
本明細書に記載の方法で治療される対象は、哺乳類、例えば、霊長類、例えば、ヒト(例えば、本明細書に記載の疾患、障害、もしくは状態を有するか、またはそれを有するリスクのある対象)とすることができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、対象に対し自己由来、同種異系、または異種異系であり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書に記載の投与レジメンに従って、単独で、または1つ以上の治療作用物質、手順、もしくはモダリティと組み合わせて、対象に投与することができる。
【0140】
本明細書に記載の医薬組成物の投与は、任意の好都合な方法(例えば、注射、摂取、輸血、吸入、植込み、または移植)で行うことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、注射または点滴によって投与される。本明細書に記載の医薬組成物は、対象に、経動脈、皮下、静脈内、皮内、腫瘍内、節内、筋肉内、または腹腔内投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内)投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、筋肉内または皮下注射によって投与される。本明細書に記載の医薬組成物は、対象の炎症部位、局所疾患部位、リンパ節、器官、腫瘍、または感染部位に直接注射することができる。
【0141】
線維症
本明細書に記載の修飾免疫細胞は、対象における線維症の1つ以上の症状を改善または低減するために(例えば、対象における線維化疾患、障害、または状態を治療または予防するために)投与することができる。諸方法は、本明細書に記載の修飾免疫細胞を、それを必要とする対象に、対象における線維症の1つ以上の症状を減少するか、または線維症を予防するのに十分な量で投与することを含むことができる。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、例えば、線維化疾患、障害、または状態を有する対象において、組織修復を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、対象は、線維症を有するか、または線維化疾患、障害、もしくは状態の診断を受けている。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に記載の修飾免疫細胞を用いた前治療を受けたことがない(例えば、ナイーブな対象である)。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞は、対象(例えば、線維化疾患、障害、または状態を有する対象)における線維症を治療(例えば、反転、低減、緩和、または予防)するための医薬品として使用するためのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞は、対象(例えば、線維化疾患、障害、または状態を有する対象)における線維症を治療(例えば、その1つ以上の症状を反転、低減、もしくは緩和、またはそれを予防)するための医薬品の製造に使用するためのものである。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞を対象に投与することにより、このような投与を受けなかった対象に比べて、以下のうちの1つ以上の発症が遅延するか、またはそれらが低減する:組織線維症の形成または沈着;線維化病変のサイズ、細胞充実性、組成、または細胞含量;線維化病変のコラーゲン及び/またはヒドロキシプロリンの含量;線維形成タンパク質の発現または活性;炎症応答に関連する線維症;及び/または線維症に伴う体重減少。いくつかの実施形態において、線維症を低減することにより、このような投与を受けなかった対象に比べて対象の生存期間が増加する。
【0144】
例示的な線維化疾患、障害、または状態としては、全身性疾患、障害、または状態(例えば、全身性硬化症、多巣性線維硬化症、強皮症慢性移植片対宿主病、腎性全身線維症、または強皮症)、ならびに臓器特異性疾患、障害、または状態(例えば、肝臓、肺、心臓、腎臓、膵臓、皮膚、及び/または神経系の線維症)が挙げられる。いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、過増殖性線維化疾患(例えば、非がん性線維化疾患)を含むか、またはそれである。
【0145】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、肝臓、肺、心臓、血管、腎臓、膵臓、皮膚、胃腸管、骨髄、造血組織、神経系、及び/または眼の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、腱、軟骨、皮膚(例えば、皮膚表皮及び/または内皮)、心臓組織、血管組織(例えば、動脈及び/または静脈)、膵臓組織、肺組織、腎臓組織、子宮組織、卵巣組織、神経組織、精巣組織、腹膜組織、結腸、小腸、胆道、腸、骨髄、造血組織、及び/または眼組織(例えば、網膜組織)を含む組織に影響を及ぼす。
【0146】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、肝臓の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、肝臓の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)肝機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、肝臓の線維化疾患、障害、または状態は、脂肪性肝疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、脂肪性肝疾患、障害、または状態は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)もしくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))またはアルコール性肝疾患(例えば、アルコール性脂肪性肝疾患(AFLD)もしくはアルコール性脂肪性肝炎(ASH))を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、対象は、肝硬変、肝細胞癌、肝不全リスク増大、死亡リスク増大、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、B型肝炎感染(HBV)、機械的外傷、胆道閉塞、自己免疫性肝炎、鉄過剰症、B型肝炎感染(HBV)、及び/またはC型肝炎感染(HCV)を有する。
【0147】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、肺の線維性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、肺の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)肺機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、肺線維化疾患、障害、または状態は、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常の間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患、原因不明性線維性肺胞炎(CFA)、気管支拡張症、及び/または強皮症肺疾患を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、肺線維症は、職業上の危険、環境汚染物質、喫煙、自己免疫性結合組織障害(例えば、関節リウマチ、強皮症、もしくは全身性エリテマトーデス(SLE))、結合組織障害(例えば、サルコイドーシス)、及び/または感染性疾患に関連する。
【0148】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、腎臓の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、腎臓の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)腎機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、腎臓の線維化疾患、障害、または状態は、腎線維症(例えば、慢性腎線維症)、線維症に関連する腎症(例えば、糖尿病性腎症)、ループス、腎臓の強皮症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、ヒト慢性腎臓病(CKD)に関連するIgA腎症腎線維症、慢性進行性腎症(CPN)、尿細管間質性線維症、尿管閉塞、慢性尿毒症、慢性間質性腎炎、放射線腎症、糸球体硬化症、進行性糸球体腎症(PGN)、内皮/血栓性微小血管損傷、及び/またはHIV関連腎症を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、腎線維症は、毒素、刺激物、または化学療法剤への曝露に関連する。
【0149】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、心臓の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、心臓の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)心機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、心臓の線維化疾患、障害、または状態は、心筋線維症を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、心筋線維症は、放射線心筋炎、外科的処置の合併症(例えば、心筋術後線維症)、感染性疾患(例えば、シャーガス病)、肉芽腫、代謝貯蔵障害(例えば、心筋症もしくは血色素症)、発育障害(例えば、心内膜線維弾性症)、動脈硬化症、及び/または毒素もしくは刺激物への曝露(例えば、薬物誘発性心筋症、薬物誘発性心毒性、またはアルコール性心筋症)に関連する。いくつかの実施形態において、心筋線維症は、心筋サルコイドーシス、心筋梗塞、及び/またはうっ血性心不全に関連する。
【0150】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、眼の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、眼の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)眼の機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、眼の線維化疾患、障害、または状態は、緑内障、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)、黄斑浮腫(例えば、糖尿病性黄斑浮腫)、網膜症(例えば、糖尿病性網膜症)、及び/またはドライアイ疾患を含むか、またはそれである。
【0151】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、皮膚の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、皮膚の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)皮膚の機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、皮膚の線維化疾患、障害、または状態は、皮膚の線維症(例えば、肥厚性瘢痕及び/またはケロイド瘢痕)、皮膚の強皮症、及び/または腎原性全身線維症を含むか、またはそれである。
【0152】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、胃腸管の線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。本明細書に記載の修飾免疫細胞は、(例えば、胃腸管の線維化疾患、障害、または状態を有する対象における)胃腸管機能を向上させるために投与することができる。いくつかの実施形態において、胃腸管の線維化疾患、障害、または状態は、放射線誘発性腸線維症、前腸の炎症性障害(例えば、バレット食道もしくは慢性胃炎)に関連する線維症、及び/または後腸の炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、もしくはクローン病)に関連する線維症を含むか、またはそれである。
【0153】
いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、慢性線維化疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、炎症性疾患、障害、または状態に関連する。いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、骨髄炎(例えば、慢性骨髄炎)を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、線維化疾患、障害、または状態は、アミロイドーシス(例えば、慢性骨髄炎に関連するアミロイドーシス)を含むか、またはそれである。
【0154】
炎症
本明細書に記載の修飾免疫細胞は、対象における炎症を改善または低減するために(例えば、対象における炎症性疾患、障害、または状態(例えば、炎症性疾患、障害、または状態の1つ以上の症状)を治療または予防するために)投与することができる。諸方法は、本明細書に記載の修飾免疫細胞を、それを必要とする対象に、対象における炎症を減少または予防するのに十分な量で投与することを含むことができる。いくつかの実施形態において、対象は、炎症を有するか、または炎症性疾患、障害、もしくは状態の診断を受けている。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に記載の修飾免疫細胞を用いた前治療を受けたことがない(例えば、ナイーブな対象である)。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞は、対象(例えば、炎症性疾患、障害、または状態を有する対象)における炎症を治療(例えば、反転、低減、緩和、または予防)するための医薬品として使用するためのものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の修飾免疫細胞は、対象(例えば、炎症性疾患、障害、または状態を有する対象)における炎症を治療(例えば、その1つ以上の症状を反転、低減、もしくは緩和、またはそれを予防)するための医薬品の製造に使用するためのものである。
【0156】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、全身性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、局所性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、急性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、慢性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。
【0157】
例示的な炎症性疾患、障害、または状態としては、限定されるものではないが、全身性疾患、障害、または状態(例えば、慢性全身性炎症、ベーチェット病、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、及び/または敗血症)、ならびに臓器特異的疾患、障害、または状態(例えば、肝臓、肺、心臓、腸、腎臓、及び/または膵臓の炎症)が挙げられる。いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、肝臓、胃腸管、肺、皮膚、心臓血管系、神経系、腎臓、膵臓、関節、眼、及び/または内分泌系の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、自己免疫性障害を含むか、またはそれである。
【0158】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、肝臓の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、肝炎症性疾患、障害、または状態は、脂肪性肝疾患、障害、または状態(例えば、NAFLD(例えば、NASH)またはAFLD(例えば、ASH))を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態において、肝炎症性疾患、障害、または状態は、肝硬変(例えば、原発性胆汁性肝硬変または原発性硬化性胆管炎)、肝炎(例えば、ウイルス感染、自己免疫応答、薬物治療、毒素、及び/または環境性作用物質からの肝炎)、及び/または胆道閉鎖症を含むか、またはそれである。
【0159】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、胃腸管の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態において、胃腸管の炎症性疾患、障害、または状態は、大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、非定型大腸炎、虚血性大腸炎、放射線大腸炎、及び/またはコラーゲン性大腸炎)、クローン病、リーキーガット症候群、過敏性腸症候群(IBS)、バレット食道、腸管炎症、慢性胃炎、遠位直腸炎、腸炎、小腸結腸炎、胃炎、胆管炎、回腸炎、便秘、下痢、消化不良もしくは非潰瘍性消化不良、憩室症、及び/またはポリープを含むか、またはそれである。
【0160】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、肺の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、肺の炎症性疾患、障害、または状態は、喘息、COPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎(例えば、慢性気管支炎)、細気管支炎、肺炎症、肺線維症、嚢胞性線維症、間質性肺炎(例えば、過敏性肺炎、通常の間質性肺炎(UIP)、肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎、石綿肺症、珪肺症、気管支拡張症、ベリリウム肺症、滑石沈着症、塵肺症、肺サルコイドーシス、及び/または胸膜炎を含むか、またはそれである。
【0161】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、皮膚の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、皮膚の炎症性疾患、障害、または状態は、乾癬、湿疹、皮膚炎(例えば、湿疹性皮膚炎、局所性または脂漏性皮膚炎、アレルギー性または刺激性接触皮膚炎、亀裂性湿疹、光アレルギー性皮膚炎、光毒性皮膚炎、植物性光線皮膚炎、放射線皮膚炎、またはうっ滞性皮膚炎)、潰瘍、魚鱗癬、表皮水疱症、肥厚性瘢痕、ケロイド、炎症性皮膚症、光老化、皮膚萎縮、炎症性皮膚症、皮膚筋炎、天疱瘡を含むか、またはそれである。
【0162】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、心血管系の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、心血管系の炎症性疾患、障害、または状態は、アテローム動脈硬化症、冠状動脈梗塞損傷、末梢血管疾患、心筋炎、血管炎、狭窄の血管再生、心筋炎、心膜炎、II型糖尿病に関連する血管疾患、心内膜炎、コレステロール関連代謝障害、酸素フリーラジカル損傷、及び/または虚血を含むか、またはそれである。
【0163】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、神経系の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、神経系の炎症性疾患、障害、または状態は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病または認知症(demntia))、多発性硬化症、脳炎(例えば、炎症性浮腫を伴う脳炎)、うつ病、注意欠陥障害(ADD)、パーキンソン病、統合失調症、及び/または神経障害(例えば、末梢神経障害)を含むか、またはそれである。
【0164】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、腎臓の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、腎臓の炎症性疾患、障害、または状態は、腎炎、ウェゲナー病に続発する腎炎、急性腎炎に続発する急性腎不全、閉塞後症候群、尿細管虚血、腎盂腎炎糸球体硬化症、膜性神経障害、及び/または腎動脈硬化症を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、腎炎は、糸球体腎炎、間質性腎炎、及び/またはループス腎炎を含むか、またはそれである。
【0165】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、膵臓の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、膵臓の炎症性疾患、障害、または状態は、膵炎(例えば、急性または慢性膵炎)を含むか、またはそれである。
【0166】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、関節の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、関節炎症性疾患、障害、または状態は、関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、痛風性関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎、強直性脊椎炎、脊椎関節炎、変形性関節炎、及び/または滑膜炎を含むか、またはそれである。
【0167】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、眼の炎症性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、眼の炎症性疾患、障害、または状態は、ぶどう膜炎、虹彩炎、視神経炎、結膜炎、強膜炎、虹彩炎、乾性角結膜炎、眼瞼炎、加齢黄斑変性(AMD)、ドライアイ症候群、視神経損傷、糖尿病性網膜症、角膜炎症、及び/または網膜炎症を含むか、またはそれである。
【0168】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、内分泌系の疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、内分泌系の炎症性疾患、障害、または状態は、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、副腎皮質炎症(例えば、急性副腎皮質炎症または慢性副腎皮質炎症)、及び/またはI型糖尿病を含むか、またはそれである。
【0169】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、自己免疫性疾患、障害、または状態を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、自己免疫性疾患、障害、または状態は、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎、及び/または強直性脊椎炎)、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、ループス、全身性エリテマトーデス(SLE)、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎もしくは湿疹性皮膚炎)、重症筋無力症、IBD、クローン病、大腸炎、急性炎症性疾患(例えば、内毒素血症、敗血症、毒素性ショック症候群)、移植拒絶反応、アレルギー(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、アレルギー性接触皮膚炎、もしくはアレルギー性結膜炎)、ウェゲナー肉芽腫症(gramilornatosis)、血管炎、リウマチ性多発筋痛(PMR)、腱炎、滑液包炎、即時過敏反応(例えば、喘息、花粉症、皮膚アレルギー、もしくは急性アナフィラキシー)、急性散在性脳脊髄炎、シェーグレン病(Sorgen’s disease)、アジソン病、心疾患、骨粗鬆症、全身脱毛症、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、化膿性汗腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、間質性膀胱炎、斑状強皮症、神経性筋強直、側頭動脈炎、血管炎、及び/または白斑を含むか、またはそれである。
【0170】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、創傷を含むか、またはそれである。ある特定の実施形態において、創傷は、急性創傷、慢性創傷、開放創傷、閉鎖創傷、感染創傷、外部創傷、内部創傷、及び/または出血を含むか、またはそれである。
【0171】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、虚血を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、虚血は、心虚血、腸虚血、脳虚血(例えば、脳卒中)、四肢虚血、腸間膜虚血、皮膚虚血を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、臓器(例えば、胃腸管、膀胱、または心臓)の虚血再灌流傷害、灌流後症候群、及び/または一過性虚血を含むか、またはそれである。
【0172】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、敗血症を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、敗血症(species)は、肺炎、腹部感染、腎感染、及び/または血流感染に起因する敗血症を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態において、敗血症は、敗血症症候群、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症、及び/または尿毒症を含むか、またはそれである。
【0173】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患、障害、または状態は、感染性疾患を含む。いくつかの実施形態において、感染症は、マラリア、肺炎、アフリカトリパノソーマ症、結核、HIV、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヘルペスウイルス感染、インフルエンザ(例えば、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、またはインフルエンザウイルスC)、エプスタインバーウイルス感染、シャーガス病、細菌性、旋毛虫症、もしくは真菌性心筋炎、髄膜炎、レジオネラ、肝炎(例えば、慢性活動性肝炎)、肺炎、Clostridium difficile感染症、小腸内細菌過剰繁殖(SIBO)、デング出血熱、ライム病、髄膜炎菌血症、壊死性筋膜炎、壊死性腸炎、ハンセン病、連鎖球菌性筋炎、感染性大腸炎、真菌症(例えば、Candida albicans感染症)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染、肺炎喉頭蓋炎、腹膜炎、溶血性尿毒症症候群、毒素性ショック症候群、Pneumocystis carinii、Campylobacter jejuni感染、Helicobacter pylori感染、ウイルス性脳炎、敗血症性関節炎、ガス壊疽、骨盤内炎症性疾患、Mycobacterium avium-intracellulare感染、精巣炎、及び/またはウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)を含むか、またはそれである。
【0174】
免疫細胞修飾の方法
本開示は、とりわけ、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を修飾するための方法を提供し、当該方法は、核酸コンストラクトであって、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む、核酸コンストラクトを送達することを含む。
【0175】
本明細書に記載の少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)及び/または少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸配列を含む核酸コンストラクトは、物理的、化学的、または生物学的方法によって免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入することができる。本明細書に記載の核酸コンストラクトを免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入するための物理的方法は、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、またはこれらの組合せを含むことができる。核酸コンストラクトは、エレクトロポレーションを含めた市販の方法(Amaxa Nucleofector-II(登録商標)(Amaxa Biosystems,Cologne,Germany)、ECM 830 BTX(Harvard Instruments,Boston,Mass.)、Gene Pulser II(登録商標)(BioRad,Denver,Colo.)、またはMultiporator(登録商標)(Eppendort,Hamburg Germany))を用いて、免疫細胞に導入することができる。また、核酸コンストラクトは、mRNA形質移入、例えば、カチオン性リポソーム媒介形質移入、リポフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介形質移入、または「遺伝子銃」などのバイオリスティック粒子送達システム(例えば、Nishikawa,et al.Hum Gene Ther.,12(8):861-70(2001)(参照により全体として本明細書に援用される)を参照)を用いても、免疫細胞に導入することができる。
【0176】
本明細書に記載の核酸コンストラクトを免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入するための生物学的方法には、DNAベクター及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)に遺伝子を挿入するのに広く利用されるようになっている。また、ウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス(例えば、Adf535)、またはアデノ随伴ウイルス(例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照(参照により全体として本明細書に援用される))に由来してもよい。レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルス)は、導入遺伝子を長期間安定的に組み込み、娘細胞に伝播させることを可能にする長期の遺伝子導入を達成するのに適したツールである。
【0177】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、制限因子SAMHD1が発現し、逆転写に利用可能なヌクレオチド三リン酸を枯渇させることから、レンチウイルス形質導入に抵抗性を有し得る。例えば、SAMHD1は、デオキシヌクレオシド三リン酸の細胞内プールを枯渇させることにより、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の複製を制限することができる。サル免疫不全ウイルス(SIV)及びHIV-2に関連するアクセサリータンパク質であるウイルスタンパク質X(Vpx)は、SAMHD1の分解を誘導する。いくつかの実施形態において、(a)(i)少なくとも1つの本明細書に記載の外来性の線維溶解作用物質及び/または(ii)少なくとも1つの本明細書に記載の外来性の抗炎症作用物質をコードする1つ以上の核酸配列を含むウイルスベクターならびに(b)少なくとも1つのVpxタンパク質の送達は、例えば、(i)少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または(ii)少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質、ならびに送達されない少なくとも1つのVpxタンパク質を含む同じタイプの免疫細胞に比べて、本明細書に記載の免疫細胞(例えばマクロファージ、単球、または樹状細胞)の形質移入を増加させることができる。
【0178】
いくつかの実施形態において、Vpxレンチウイルスは、少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または(ii)少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質をゲノムに組み込んで、(i)少なくとも1つの外来性の線維溶解作用物質及び/または(ii)少なくとも1つの外来性の抗炎症作用物質の長期の持続的な発現を可能にし得る。Vpx-レンチウイルスで形質導入したマクロファージは、ウイルス形質導入による表現型上の影響を受けない。これは、表現型の可塑性を備えた本明細書に記載の修飾マクロファージの産生を可能にする知見である。他のウイルスベクター(例えば、Ad5f35)がM1、炎症促進性表現型を誘導するのに対し、Vpx-レンチウイルスはM1/M2表現型に影響を及ぼさないため、ベースラインで炎症促進機能/毒性を有しない可能性のあるM0修飾マクロファージ産物が可能となる。Vpx-レンチウイルスで形質導入したマクロファージは表現型の可塑性を保持しており、サイトカイン、アゴニスト、ペプチド、培養基、及び他の因子を用いてM1またはM2表現型にさらに分極化することができる。Vpx-レンチウイルスで形質導入したマクロファージは、炎症促進性シグナル(例えば、1つ以上の炎症促進性サイトカイン、例えば、LPS、IFNa、IFNb、IFNγ、CpG、CD40L、GM-CSF、TNFa、IL-6、またはSTINGリガンド(STING-L)のうちの1つ以上)に曝露し、M1マクロファージに分極化することができる。Vpx-レンチウイルスで形質導入したマクロファージは、免疫抑制性シグナル(例えば、1つ以上の免疫抑制サイトカイン(例えば、IL-4、IL-10、IL-13、もしくはTGFbのうちの1つ以上)及び/または少なくとも1つのプロスタグランジンもしくは少なくとも副腎皮質ホルモンのうちの一方または両方)に曝露し、M2マクロファージに分極化することができる。
【0179】
いくつかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、Vpxタンパク質(例えば、国際公開番号第WO2017/044487号(参照により全体として本明細書に援用される)に記載のもの)でパッケージングされる。いくつかの実施形態において、Vpxは、ビリオン関連タンパク質(例えば、ウイルス複製のためのアクセサリータンパク質)を含む。いくつかの実施形態において、Vpxタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)によってコードされる。いくつかの実施形態において、Vpxタンパク質は、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)によってコードされる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)は、Vpxタンパク質でパッケージングされたレンチウイルスベクターで形質移入される。いくつかの実施形態において、Vpxは、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)の少なくとも1つの抗ウイルス因子を阻害する。いくつかの実施形態において、Vpxタンパク質でパッケージングされたレンチウイルスベクターは、例えば、Vpxタンパク質でパッケージングされなかったレンチウイルスベクターに比べて、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)の形質移入効率の増加を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、例えば、Ad2ベクターまたはAd5ベクター(例えば、Ad5f35アデノウイルスベクター、例えば、ヘルパー依存性Ad5F35アデノウイルスベクター))による形質移入の前に、少なくとも1つのVPX mRNAでエレクトロポレーションまたは形質移入の一方または両方が行われる。
【0180】
本明細書に記載の核酸コンストラクトを免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入するための化学的手段としては、コロイド分散システム、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、及び脂質ベースのシステム(例えば、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、ナノ粒子、リポソーム、及びリポフェクタミン-核酸複合体)が挙げられる。
【0181】
本明細書に記載の核酸コンストラクトを送達するための例示的なシステムとして、脂質ベースのシステムがある。本明細書に記載の核酸コンストラクトは、リポソームの水性内部でカプセル化したり、脂質二重層内に散在させたり、結合分子を介してリポソームに付着させたり、リポソームに封入したり、リポソームと複合体化させたり、脂質を含む溶液または懸濁液に分散させたり、脂質と混合したり、ミセルと複合体化させたり、別の方法で脂質と結合させたりすることができる。本明細書に記載の方法で使用するための脂質は、天然の脂質であっても合成の脂質であってもよい。脂質は、市販の供給源から入手することもできる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリンはSigma(St.Louis,MO)から入手することができ、ジセチルリン酸はK&K Laboratories(Plainview,NY)から入手することができ、コレステロールはCalbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロールはAvanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL.)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存することができる。
【0182】
本明細書に記載の核酸コンストラクトが免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)中に存在することを確認するために様々なアッセイを実施することができる。例えば、このようなアッセイとしては、当業者に周知されている分子生物学的アッセイ(例えば、サザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR、及びPCR)、ならびに生化学的アッセイ(例えば、特定のペプチドの有無を検出するアッセイ(例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によるもの))が挙げられる。
【0183】
修飾中の免疫細胞の処置及び培養
いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)は、免疫細胞の修飾中に処置及び/または培養される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を、in vitro転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターで処置することを含む。in vitro転写(IVT)されたmRNAは、様々なエンドソーム自然免疫受容体(トール様受容体3(TLR3)、TLR7、及びTLR8)、ならびに細胞質自然免疫受容体(プロテインキナーゼRNA活性化(PKR)、レチノイン酸誘導性遺伝子Iタンパク質(RIG-I)、黒色腫分化関連タンパク質5(MDA5)、ならびに2’-5’-オリゴアデニル酸合成酵素(OAS))によって認識される。これらの異なる経路を介したシグナル伝達は、1型インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン6(IL-6)、IL-12、及び転写プログラムのカスケードの活性化に関連する炎症を引き起こす。全体的に見ると、これらにより、特異的免疫応答を誘導する準備ができた炎症促進性微小環境が創出される。さらに、下流の作用(例えば、真核生物翻訳開始因子2α(eIF2α)のリン酸化による翻訳のスローダウン、リボヌクレアーゼL(RNaseL)によるRNA分解の強化、ならびに自己増幅mRNAの複製の過剰発現及び阻害)は、IVT mRNAの薬物動態及び薬力学に関連するものである。
【0184】
いくつかの実施形態において、in vitro転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターは、RNase阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、in vitro転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターは、RNaseL、RNase T2、またはRNase1阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、in vitro転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターは、RNaseL阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、RNaseL阻害剤は、スニチニブを含む。いくつかの実施形態において、RNaseL阻害剤は、ABCE1を含む。
【0185】
いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をRNaseL阻害剤で処置することで、修飾免疫細胞におけるmRNAの安定性は、RNaseL阻害剤で処置しなかった同じタイプの修飾免疫細胞におけるmRNAの安定性に比べて増加する。いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をRNaseL阻害剤で処置することで、修飾免疫細胞における外来性の線維溶解作用物質の発現は、RNaseL阻害剤で処置しなかった同じタイプの修飾免疫細胞における外来性の線維溶解剤の発現に比べて増加する。いくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をRNaseL阻害剤で処置することで、修飾免疫細胞におけるエフェクター活性は、RNaseL阻害剤で処置しなかった同じタイプの修飾免疫細胞におけるエフェクター活性に比べて増加する。
【0186】
本開示のいくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を処置するステップは、免疫細胞にmRNAを送達するステップの前に行われる。
【0187】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養するステップを含む。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNFα、IL-6、SFNGL、LPS、CD40アゴニスト、4-1BBリガンド、組換え4-1BB、CD19アゴニスト、TLRアゴニスト(例えば、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8、もしくはTLR-9)、TGF-β(例えば、TGF-β1、TGF-β2、もしくはTGF-β3)、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-20、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、TNF-β、CD154、リンパトキシンβ(LT-β)、A増殖誘導リガンド(APRIL)、CD70、CD153、グルココルチコイド誘導TNF受容体リガンド(GITRL)、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、OX40L(CD252)、TALL-1(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー13B(TNFSF13B))、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、エリスロポエチン(Epo)、甲状腺ペルオキシダーゼ前駆体(Tpo)、FMS関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT-3L)、幹細胞因子(SCF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、メロゾイト表面タンパク質(MSP)、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質(NOD)リガンド(例えば、NOD1、NOD2、もしくはNOD1/2アゴニスト)、RIG-I様受容体(RLR)リガンド(例えば、5’ppp-dsRNA、3p-hpRNA、ポリ(I:C)、またはポリ(dA:dT))、C型レクチン受容体(CLR)リガンド(例えば、カードラン、βグルカン、HKCA、ラミナリン、pustulan、スクレログルカン、WGP分散性、WGP可溶性、ザイモサン、ザイモサン枯渇、furfurman、b-GlcCer、GlcC14C18、HKMT、TDB、TDB-HD15、もしくはTDM)、環状ジヌクレオチドセンサーリガンド(例えば、C-Gasアゴニストもしくはインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)リガンド)、インフラマソーム誘導物質(例えば、ミョウバン、ATP、CPPD結晶、ヘモゾイン、MSU結晶、ナノSiO2、ナイジェリシン、もしくはTDB)、アリール炭化水素(AhR)リガンド(例えば、FICZ、インジルビン、ITE、もしくはL-キヌレニン)、アルファプロテインキナーゼ1(ALPK1)リガンド、マルチPRRリガンド、NFKB/NFAT活性化物質(例えば、concavalin A、イオノマイシン、PHA-P、もしくはPMA)、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、サイトカインはIFN-βを含む。
【0188】
本開示のいくつかの実施形態において、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を培養するステップは、免疫細胞にmRNAを送達するステップの後に行われる。
【0189】
いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞の生存率は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養しなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞による外来性の線維溶解作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)の発現は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞による外来性の抗炎症作用物質(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)発現は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。
【0190】
いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞による外来性の線維溶解作用物質の発現の寿命は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞による外来性の抗炎症作用物質の発現の寿命は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。
【0191】
いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞のエフェクター活性は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。いくつかの実施形態において、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養することで、修飾免疫細胞のM2分極化は、サイトカインまたは免疫刺激性組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞に比べて増加する。
【0192】
本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、GenBankアクセッション番号を含めて、参照により全体として援用される。さらに、材料、方法、及び例は、例示的なものに過ぎず、限定的であるようには意図されてない。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験を行う際は本明細書に記載の方法及び材料と同様または同等のものを使用することができるが、好適な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0193】
以下の実施例によって本開示をさらに例示する。実施例は、例示目的で示されるに過ぎないものである。これを、いかなる形においても本開示の範囲または内容を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例
【0194】
以下の実施例は、本明細書に記載の方法及び組成物を作製及び使用する方法を当業者に説明するために提供するものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。
【0195】
実施例1:抗線維化及び/または抗炎症タンパク質を分泌する操作分極化マクロファージ。
この実施例の目的は、線維溶解作用物質(例えば、抗線維化タンパク質)及び/または抗炎症作用物質(例えば、抗炎症タンパク質)産生につながるマクロファージを生成するために、マクロファージの分化を最適化することである。マクロファージ分化の方法が、線維化MMP、ペントラキシン-2、IL10、CX3CL1、TWEAK、及び他の導入遺伝子の定常状態産生に及ぼす影響、ならびにマクロファージ(M0、M1、及びM2サブタイプ)の分極化が線維溶解機能に及ぼす影響について検討する。表1は、線維溶解作用物質及び/または抗炎症作用物質に使用することができる例示的なポリペプチド配列を示す。
【表1】
【0196】
ヒトの抗線維化及び/または抗炎症は、DNA、mRNA、化学修飾mRNAを用いたエレクトロポレーション及び/または形質移入、あるいはレンチウイルス、アデノウイルス、または代替ウイルスベクターを用いたウイルス形質導入により、マクロファージに導入することができる。マクロファージは、本明細書に記載のウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター(例えば、Ad2ベクターまたはAd5ベクター(例えば、Ad5f35アデノウイルスベクター、例えば、ヘルパー依存性Ad5F35アデノウイルスベクター)))を用いて形質移入する前に、少なくとも1つのVPX mRNAを用いたエレクトロポレーション及び/または形質移入の一方または両方を行うことができる。
【0197】
ヒトマクロファージのレンチウイルス形質導入のために、ヒトマクロファージの抗線維化及び/または抗炎症カーゴの高レベルの形質導入及び発現を達成するための最適な条件を決定する。形質導入条件を最適化した後、ELISAまたはMeso Scale Discovery(MSD)を用いて、MMP、ペントラキシン2、IL10、CX3CL1、または他の導入遺伝子の分泌及び動態を定量する。qRT-PCRを用いて、MMP、ペントラキシン2、IL10、及びCX3CL1のmRNAレベル(mRNA半減期)を定量する。分泌される因子の機能的活性も確認する。
【0198】
ヒトマクロファージのmRNA形質移入のために、非ウイルス法を適用することによって操作ヒトマクロファージを生成して、抗線維化及び/または抗炎症カーゴ発現を評価する。形質移入条件を最適化した後、ELISAまたはMSDを用いて、MMP、ペントラキシン2、IL10、CX3CL1、または他の導入遺伝子の分泌及び動態を定量する。qRT-PCRを用いて、MMP、ペントラキシン2、IL10、CX3CL1、または他の導入遺伝子のmRNAレベル(mRNA半減期)を定量する。分泌される因子の機能的活性も確認する。
【0199】
線維化肝臓の環境が操作マクロファージ及びそのカーゴ分泌に及ぼす影響をin vitroで定量する。操作マクロファージをTNFα、IL1β、IL6、及びIFNγに曝露する。MMPまたは他の酵素を発現するように操作したマクロファージのために、次に上清を回収し、酵素活性を定性的に分析する。ELISAを用いて、MMP、ペントラキシン2、IL10、CX3CL1、または他の導入遺伝子の分泌及び動態の定性的な試験も行う。
【0200】
マウスマクロファージ操作を評価するための同系マウスシステムを確立することができる。ELISAまたはMSDを用いて、操作マウスマクロファージからの抗線維化及び抗炎症分泌タンパク質の安定性をin vitroで定量することができる。線維化肝臓環境が操作マウスマクロファージ及びそのカーゴ分泌に及ぼす影響も、in vitroで定量することができる。
【0201】
実施例2:肝線維症マウスモデルにおける操作マクロファージの抗線維化及び抗炎症活性。
NOD.CB17-Prkdcscidマウスを用いた肝線維症モデルを開発する。四塩化炭素(CCl)を隔週に腹腔内投与することにより、線維症を誘導する。線維症誘導から8週後に、マウスを操作ヒトマクロファージで処置する。ペントラキシン-2のために、線維症誘導から4週間後に、マウスを操作IL-2発現ヒトマクロファージで処置する。
【0202】
このモデルでは、異なる表現型分極化のマクロファージ(M0、M1、M2サブタイプ)を評価する。線維症を、肝切片の線維症を検出するためのPico Sirus Red染色及び病理学的スコア化を用いて測定する。肝切片の線維症マーカー(例えば、コラーゲン-Iα沈着)についても免疫組織化学的に検討する。線維化促進遺伝子(例えば、Sma1α及びTGFβ)の遺伝子発現ならびに抗線維化肝MMP9及びMMP13のレベルを経時的に評価する。マクロファージマーカーF4/80及びMMP9/MMP13/IL10/ペントラキシン-2/CX3CL1の免疫蛍光共染色を実施する。線維症に関連するパラメーターを検討することに加えて、肝炎及び全身性炎症についても調べる。肝微小環境を、IHC、FACS、及び/またはシングルセルRNAシークエンシングによって評価する。抗線維化及び抗炎症カーゴを有する操作マウスマクロファージの生体内分布及び薬物動態を定量する。
【0203】
また、操作マウスマクロファージの機能評価は、免疫不全マウスを用いた同系in vivo肝線維症モデルで評価することもできる。線維症は、隔週のCCL4腹腔内注射によって誘導する。線維症誘導から4~8週間後に、マウスを操作マウスマクロファージで処置する。線維症を、肝切片の線維症を検出するためのPico Sirus Red染色及び病理学的スコア化を用いて測定する。肝切片の線維症マーカー(例えば、コラーゲン-I沈着)についても免疫組織化学的に調べる。線維化促進遺伝子(例えば、Sma1α及びTGFβ)の遺伝子発現ならびに抗線維化肝MMP9及びMMP13のレベルを評価する。マクロファージマーカーF4/80及びMMP9/MMP13/IL10/ペントラキシン-2/CX3CL1の免疫蛍光共染色を実施する。IHC、FACS、及び/またはシングルセルRNAシークエンシングを用いて、肝微小環境及び免疫浸潤を評価する。局所性及び全身性炎症マーカーを測定する。抗線維化及び抗炎症カーゴを有する操作マウスマクロファージの生体内分布及び薬物動態を定量する。
【0204】
実施例3:NAFLD-NASH誘発性肝線維症モデルにおける操作マクロファージの抗線維化活性。
NAFLD-NASH肝疾患モデルにおいて、操作マクロファージの有効性及び抗線維化活性を評価する。米国型生活様式誘発性肥満症候群(ALIOS)食餌、ストレプトゾトシンNAFLDモデル、及び高脂肪高コレステロール食餌を用いて、操作マクロファージの有効性を定量する。また、NASH及びNAFLDのヒト化FRG(登録商標)KOモデルにおけるヒトマクロファージの有効性も定量する。
【0205】
実施例4:抗炎症作用物質または線維溶解作用物質を分泌する操作マクロファージ。
この実施例の目的は、抗炎症作用物質及び/または抗線維溶解作用物質を分泌するための非ウイルス(例えば、mRNA)及びウイルス(例えば、レンチウイルス)の両方の送達方法を用いて、マクロファージを操作することであった。ヒトマクロファージに、IL10またはMMP13 mRNA(生存率、発現、及び持続性を強化する化学修飾を含む)をコードするmRNAを用いて、異なるmRNA濃度でエレクトロポレーションした。異なる時点でELISAを用いて上清中のIL10またはMMP13レベルを測定することにより、IL10及びMMP13の産生をモニタリングした。IL10またはMMP13をコードするVPXレンチウイルス(VPX-LV)を異なるMOIで用いて、ヒトマクロファージを形質転換した。異なる時点でELISAを用いて上清中のIL10またはMMP13レベルを測定することにより、IL10及びMMP13の産生をモニタリングした。
【0206】
IL10をコードするmRNAのエレクトロポレーションを用いた以下のヒトマクロファージの実験のために、2例のドナーからのCD14+単球をGM-CSFで7日間分化させてマクロファージに変換した。0日目のマクロファージに、30nM、100nM、及び300nMの安定性のための化学修飾を含むIL10 mRNAまたはmCherry mRNAを用いてエレクトロポレーションした。
【0207】
IL10を分泌するように操作したマクロファージの生存率を3日目に調べた。エレクトロポレーション後、IL10操作マクロファージを3~7日間静置し培養した。剥離した細胞をLive/Dead Aqua染色剤で染色した。フローサイトメトリー分析を実施して、生存率を測定した。mRNAエレクトロポレーションを介しIL10を分泌するように操作したマクロファージは、3日目に生存していた(図1)。
【0208】
mRNAを用いてエレクトロポレーションしたマクロファージのIL-10分泌を調べた。エレクトロポレーション後、細胞培養上清を3日目、5日目、及び7日目に採取した。各時点及び各条件からの上清を使用して、IL-10 ELISA(二連)を実行した。mRNAを用いてエレクトロポレーションしたマクロファージは、3日目、5日目、及び7日目にIL10を分泌し、mRNA量の増加に対応してIL10分泌を増加した(図2A~2B)。
【0209】
3日目のマクロファージ分極化を調べるため、IL10操作マクロファージを剥離し、フローサイトメトリー解析を用いて評価した。剥離した細胞を、Live/Dead Aqua染色剤、CD163、CD206、CD80、及びCD86抗体で染色した。フローサイトメトリー分析を実施して、マクロファージの表現型を調べた。M1マーカーCD80では軽微な増加、M1マーカーCD86では軽微な減少が認められた(図3A~3B)。全体的に見ると、マクロファージ内でのIL10発現がM1マーカーに及ぼす影響はわずかであった。これに対し、M2マーカーCD163ではロバストな増加、M2マーカーCD206では軽微な増加が認められた。IL10はSTAT3を通じてシグナルを伝達し、ロバストにCD163を誘導するが、STAT6によって調節されているCD206は誘導しない。これらのデータは、「IL-10 M2表現型」を示し、IL10の機能的分泌と、これらの操作細胞がM2に自己分極化する能力とを証明するものである。
【0210】
7日目のIL10操作マクロファージの分極化について調べた。7日目に、氷塊の上にプレートを15~20分間置くことにより、UpcellプレートにプレーティングしたIL10操作マクロファージを剥離した。剥離した細胞をLive/Dead Aqua染色剤、CD163、及びCD206で染色した。フローサイトメトリー分析を実施して、マクロファージの表現型を調べた。IL10操作マクロファージは、7日目もM2様表現型を維持した(図4A~4B)。
【0211】
mRNAを用いて操作したIL10分泌マクロファージが他のマクロファージに及ぼす影響を調べた。IL10操作マクロファージの上清を7日目に採取し、-80Cで保存した。0日目に凍結上清を解凍し、培地で1:10に希釈した。希釈した上清を0.2uMフィルターに通した。濾液を使用して新たな2例のドナーを刺激した。刺激してから2日後に細胞を剥離し、Live/Dead Aqua染色剤、CD163、及びCD206で染色した。フローサイトメトリー分析を実施して、マクロファージの表現型を調べた。操作マクロファージから分泌されるIL10は、他のマクロファージをM2様マクロファージに変換した(図5A~5B)。バイスタンダーマクロファージは、IL10応答遺伝子CD163を上方調節した。IL10 mRNAが高濃度の場合には、もう1つのM2マーカーCD206の増加が見られた。
【0212】
IL10をコードするVPX-LVを用いた以下の実験のために、CD14+単球をGM-CSFで7日間分化させてマクロファージに変換した。0日目のマクロファージに、IL10をコードするVPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入した。形質導入後、細胞培養上清を3日目、5日目、及び7日目に採取した。各時点及び各条件からの上清を使用して、IL-10 ELISA(二連)を実行した。VPX-LVを用いて形質導入したマクロファージは、3日目、5日目、及び7日目にIL10を分泌した(図6A~6B)。
【0213】
IL10操作マクロファージの表現型を調べた。3日目及び7日目に、フローサイトメトリー分析を用いてIL10操作マクロファージを評価した。剥離した細胞を、Live/Dead Aqua染色剤、CD163、CD206、CD80、及びCD86で染色した。フローサイトメトリー分析を実施して、マクロファージの表現型を調べた。IL10操作マクロファージを、3日目及び7日目に抗炎症性M2表現型に変換した(図7A~7B)。VPX-LV IL10操作ヒトマクロファージは、IL10応答M2マーカーCD163を上方調節した。マクロファージは、3日目までにCD163の誘導を示した。IL10操作マクロファージは、7日目もM2様表現型を維持した。注目すべきことに、MOI5では、MOI10よりも顕著に多くのM2表現型マクロファージが得られた。これは、IL10を分泌する自己分極VPX-LV操作マクロファージを産生するのに最適なMOIが必要とされることを示すものである。
【0214】
VPX-LVを用いて操作したIL10分泌マクロファージが他のマクロファージに及ぼす影響について調べた。IL10操作マクロファージの上清を7日目に採取し、-80Cで保存した。0日目に凍結上清を解凍し、培地で1:10に希釈した。希釈した上清を0.2uMフィルターに通した。濾液を使用して新たな2例のドナーを刺激した。刺激してから2日後に細胞を剥離し、Live/Dead Aqua染色剤、CD163、CD206、CD80、及びCD86で染色した。フローサイトメトリー分析を実施して、マクロファージの表現型を調べた。VPX-LV操作マクロファージから分泌されるIL10は、他のマクロファージをM2様マクロファージに変換した(図8A~8B)。バイスタンダーマクロファージは、M2マクロファージマーカーCD163及びCD206を発現した。これは、VPX-LV IL10操作マクロファージが、周囲の免疫細胞において免疫抑制表現型を誘導可能な機能的IL10を分泌することを示すものである。
【0215】
MMP13 mRNAを用いてエレクトロポレーションしたマクロファージからのMMP13分泌を調べた。CD14+単球をGM-CSFで7日間分化させてマクロファージに変換した。0日目のマクロファージに、100nMの化学修飾を含むMMP13 mRNAまたはf-luc mRNAを用いてエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、細胞培養上清を1日目、3日目、及び5日目に採取した。各時点及び各条件からの上清を使用して、MMP13 ELISA(二連)を実行した。評価したドナーからのマクロファージは、ベースラインでMMP13を産生した。MMP13 mRNAを用いたエレクトロポレーションにより、分泌されるMMP13の相対量が対照マクロファージに比べて増加した。特に5日目には1.5倍超の増加が見られる(図9A)。ある特定の条件ではMMP産生が低減するため、外来的な過剰発現が治療ペイロード送達を保証する。さらに、試験したドナーは、特に高いバックグラウンドMMP13を有した。
【0216】
MMP13 VPX-LVを用いて形質導入したマクロファージからのMMP13の分泌を調べた。CD14+単球をGM-CSFで7日間分化させてマクロファージに変換した。0日目のマクロファージに、MMP13をコードするVPX-LVまたはGFPをコードするVPX-LVを用いて形質導入した。形質導入後、細胞培養上清を5日目、7日目、及び10日目に採取した。各時点及び各条件からの上清を使用して、MMP13 ELISA(二連)を実行した。MMP13 VPX-LV操作マクロファージからは、対照VPX-LV GFPマクロファージに比べて顕著に高いMMP13分泌が認められた(図9B)。
【0217】
結論
本明細書で提供するデータは、非ウイルスmRNA法を用いて、ヒトマクロファージを抗線維化及び抗炎症性ヒトマクロファージにするように一過性に操作できることを示すものである。mRNA法を用いて、生存率及びIL10またはMMP13分泌量が高い操作細胞が生成された。マクロファージは、少なくとも7日目までIL10を産生した。IL10操作マクロファージはM2表現型に自己分極化し、少なくとも7日目までM2表現型を維持した。IL10操作マクロファージからの上清により、バイスタンダーM0マクロファージがM2様マクロファージに変換された。操作マクロファージは、3日目からMMP13を産生した。5日目までにMMP13の分泌が最大量に達した。
【0218】
本明細書で提供するデータは、ウイルス法(VPX-レンチウイルス形質導入)を用いて、ヒトマクロファージを抗線維化及び抗炎症性ヒトマクロファージにするように安定的に操作できることを示すものである。VPX-レンチウイルス形質導入を用いて、生存率及びIL10またはMMP13分泌量が高い操作細胞が生成された。マクロファージは、形質導入の3日後からIL10を産生し、少なくとも7日目までIL10を放出した。IL10操作マクロファージはM2表現型に自己分極化し、少なくとも7日目までM2表現型を維持した。IL10操作マクロファージからの上清により、バイスタンダーM0マクロファージがM2様マクロファージに効率的に変換された。マクロファージは5日目からMMP13を産生し、少なくとも10日目まで分泌を維持した。7日目までにMMP13の分泌が最大量に達した。
【0219】
これらの結果は、非ウイルス(化学修飾を含むmRNA)またはウイルス(VPX-レンチウイルス導入)いずれの方法を用いても、初代ヒトマクロファージがIL10またはMMP13を分泌するように首尾よく操作されたことを示すものである。操作マクロファージは、各クラスにおけるモデルペイロードである抗線維化(MMP13)または抗炎症性(IL10)ペイロードを産生した。
【0220】
等価物
当業者は、本開示に対する様々な変更、修正、及び改良が当業者には容易に想到されることを理解されたい。このような変更、修正、及び改良は、本開示の一部であることが意図され、また本発明の趣旨及び範囲に含まれることが意図されている。したがって、上記の説明及び図面は例示に過ぎず、本開示に記載の任意の発明は、以下の特許請求の範囲によってさらに詳細に説明される。
【0221】
当業者であれば、本明細書に記載のアッセイまたは他のプロセスで得られた値に起因するずれまたは誤差の典型的な基準を理解するであろう。本発明の背景を説明し、その実施に関しさらなる詳細を提供するために本明細書で参照されている刊行物、ウェブサイト、及びその他の参考資料は、参照により全体として本明細書に援用される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【国際調査報告】