(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】エッチング、剥離、及びクリーニング用途用のアミンオキシド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513713
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 US2021046092
(87)【国際公開番号】W WO2022046447
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウリアルテ,フベンティーノ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,クー
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA22
5F157AA23
5F157AA29
5F157AA30
5F157AA32
5F157AA34
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5F157DB11
(57)【要約】
本開示は、半導体装置等のマイクロエレクトロニクス基板と、N,N-ジメチルエタノールアミンN-オキシド、トリエタノールアミンN-オキシド、エタンアミン、2,2’-オキシビス[N,N-ジメチル-、N,N’-ジオキシド]、1-メチルピロリジンN-オキシド、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンN-オキシド、及びそれらの混合物からなる群より選択されるアミンオキシドを、基板のクリーニングに十分な時間及び温度で接触させることにより、マイクロエレクトロニクス基板をクリーニングする方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクス基板をクリーニングする方法であって、前記基板と、トリエタノールアミンN-オキシド、N,N-ジメチルエタノールアミンN-オキシド、エタンアミン、2,2’-オキシビス[N,N-ジメチル-、N,N’-ジオキシド]、1-メチルピロリジンN-オキシド、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンN-オキシド、及びそれらの混合物からなる群より選択されるアミンオキシドを含む組成物を、接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、半導体、ガラス、金属、セラミック材料、樹脂、磁気材料、又は超伝導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、その表面上に、配線及び電極、絶縁材料、低k誘電材料、金属酸化物、有機化合物、又は金属が提供された半導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記配線及び電極は、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素(arsenide)を含み;前記絶縁材料は、SiO
2、窒化ケイ素、又はガラスを含み;前記金属酸化物は、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、又は(Ba、Sr)TiO
3を含み、前記有機化合物は、ポリイミド又は有機熱硬化性樹脂を含み;並びに前記金属は、タングステン、銅、アルミニウム、又はそれらの合金、ケイ化物、及び窒化物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、その上に形成されたフォトレジスト層を有し、及び前記基板と前記組成物の前記接触は、前記基板から前記フォトレジスト層を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、その上に付着した灰残渣を有し、及び前記基板と前記組成物の前記接触は、前記基板から前記灰残渣を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、その上に付着したエッチング残渣を有し、及び前記基板と前記組成物の前記接触は、前記基板から前記エッチング残渣を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、その上に付着した金属残渣を有し、及び前記基板と前記組成物の前記接触は、前記基板から前記金属残渣を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、その上に形成された、酸化物、フォトレジスト又はエッチング残渣を含有する低k誘電材料を有し、及び前記基板と前記組成物の前記接触は、前記低k誘電材料から、前記酸化物を部分的に除去し、及び前記フォトレジスト又はエッチング残渣を完全に除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロエレクトロニクス基板は、付着したプロセス残渣を担持する無機酸化物含有表面を含み、及び前記基板と前記組成物の前記接触は、前記無機酸化物含有表面を化学的にエッチングして、前記付着したプロセス残渣の除去を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物は、過酸化水素を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし
【0002】
本開示は、概して、半導体基板の表面をアミンオキシドで処理する方法に関する。詳細には、本開示は、半導体基板とアミンオキシドを接触させることにより、半導体基板の表面をクリーニング、剥離、又はエッチングする方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
電子装置、例えば、集積回路(IC)及びトランジスタ等の製造中、電子要素及びコネクタの層が、半導体基板、これはスライス又はウエハとも称するが、この表面でエッチングされる、又は表面に成膜する。製造される要素の品質に影響を及ぼす1つの要因は、エッチング又は成膜前の基板表面の清浄度である。なぜなら、不純物又は汚染物質が層間に捕捉されて、それら層間の接着に影響を及ぼすことになるからである。技術の進歩によって電子要素及び回路のサイズが縮小するにつれて、製造された装置の電気特性及び信頼性を改善する目的で、基板表面の清浄度を確実にする必要性がさらにより大きくなっている。
【0004】
存在する可能性のある表面汚染物質として、有機化合物(グリース又は溶媒蒸気等)、イオン材料、金属酸化物/水酸化物、フォトレジスト、又はケイ素粒子が挙げられる。さらなる加工前にこうした望ましくない物質を除去して実質的に清浄な表面を得るのに、化学的クリーニング、エッチング、及び剥離方法が一般的に使用される。上記のエッチング、剥離、及びクリーニングプロセス用の配合物には、酸化剤、例えば、過酸化水素が広く使用され、酸又は塩基、例えば、アンモニアを併用することが多い。しかしながら、過酸化水素は、高又は低phレベルでは、熱的又は化学的に不安定であることが知られている。そのうえさらに、場合によっては、過酸化水素は、その高い酸化強度が金属又は誘電材料、フォトレジスト、及び有機物に損傷を与える可能性があることから、望ましくない場合がある。したがって、毒性が低く、こうした材料と適合性がある酸化強度幅を有する有機酸化剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様において、概して提供されるのは、マイクロエレクトロニクス基板と、1種又は複数のアミンオキシドを含有する組成物を、基板をクリーニングするのに十分な時間及び温度で接触させることによる、基板のクリーニング方法であり、アミンオキシドには、N,N-ジメチルエタノールアミンN-オキシド(CAS#10489-99-3)、トリエタノールアミンN-オキシド(CAS#7529-23-9)、エタンアミン、2,2’-オキシビス[N,N-ジメチル-、N,N’-ジオキシド](CAS#565236-99-9)、1-メチルピロリジンN-オキシド(CAS7529-17-1)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンN-オキシド、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本開示の方法は、様々な基板で行うことが可能であり、基板として、ヒ化ガリウム等の半導体、プロセス残渣を有するケイ素ウエハ、並びに半導体装置、例えば、集積回路、サファイアウエハ、微小電子機械装置(microelectromechanical device)(MEM)、及び光電子装置等の製造で適用される、一過性層及び非一過性層が挙げられるが、これらに限定されない。
【0006】
一部の実施形態において、基板は、その上に形成されたフォトレジスト層を有し、クリーニング工程は、基板からフォトレジストを除去する。
【0007】
他の実施形態において、基板は、その上に付着した(deposited)エッチング残渣を有し、クリーニング工程は、基板からエッチング残渣を除去する。
【0008】
さらに他の実施形態において、基板は、その上に付着した灰残渣を有し、クリーニング工程は、基板から灰残渣を除去する。
【0009】
さらなる実施形態において、基板は、その上に付着した金属残渣を有し、クリーニング工程は、基板から金属残渣を除去する。
【0010】
さらに他の実施形態において、基板は、基板上に形成された、酸化物、フォトレジスト又はエッチング残渣を含有する低k誘電材料等の誘電体層を有し、クリーニング工程は、低k誘電材料から、酸化物を部分的に除去し、及びフォトレジスト又はエッチング残渣を完全に除去する。
【0011】
一部の実施形態において、基板は、付着したプロセス残渣を担持する無機酸化物含有表面を有し又は備え、本開示の組成物は、無機酸化物含有表面を化学的にエッチングして、付着したプロセス残渣の除去を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示のアミンオキシドの酸化還元電位値を、過酸化水素及びN-メチルモルホリンオキシドの基準値と合わせて示すグラフである;並びに
【
図2】過酸化水素、N-メチルモルホリンオキシド、及び本開示のアミンオキシドを用いた相対腐食速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0014】
「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、任意の追加要素、工程、又は手順について、それらが本明細書中開示されているか否かに関わらず、その存在を排除することを意図しない。どのような誤解も避ける目的で、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて本明細書中特許請求される全ての組成物は、反対する記述がない限り、任意の追加の添加剤又は化合物を含むことができる。対照的に、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、本明細書中登場する場合、任意の他の要素、工程、又は手順について、それらが操作性に必須ではない場合を除いて、それらをどのような後続の列挙範囲からも排除し、「~からなる(consisting of)」という用語は、使用される場合には、具体的に描写又は列挙されていない任意の要素、工程、又は手順を排除する。「又は」という用語は、特に記載がない限り、列挙される要員を個別に指すとともに、任意の組み合わせでも指す。
【0015】
冠詞の「a」及び「an」は、本明細書中、その冠詞の文法上の目的語が、1つ又は1つより多いこと(すなわち、少なくとも1つであること)を指すのに使用される。例として、「アミンオキシド(an amineoxide)」は、1つのアミンオキシド又は1つより多いアミンオキシドを意味する。「1つの実施形態において」、「1つの実施形態に従って」、等の語句は、一般に、その語句に続く特定の特長、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれており、及び本開示の実施形態の1つより多くにも含まれている可能性があることを意味する。重要なことは、そのような語句が、必ずしも同一態様を指してはないことである。本明細書中、ある要素若しくは特長が、含まれている又はある特徴を有することを記述するのに「may」、「can」、「could
」、又は「might」が使用される場合、その特定の要素若しくは特長は、含まれている又はある特徴を有することを必須としない。
【0016】
「約」という用語は、本明細書中使用される場合、値又は範囲にある度合いの変動性を許容することを可能にし、例えば、その度合いは、表示される値の又は表示される範囲限度の、10%以内、5%以内、又は1%以内が可能である。
【0017】
「好適である」及び「好ましくは」という用語は、ある特定の状況下で、ある特定の利益をもたらす可能性がある実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又はことなる状況下で、好適である可能性がある。そのうえさらに、1つ又は複数の好適な実施形態という記述は、他の実施形態が有用ではないことを暗示するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図しない。
【0018】
「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、続いて記載される事象、状況、又は材料が、生じる又は存在する可能性もあれば、そうではない可能性もあり、並びにその記載は、当該事象、状況、又は材料が、生じ又は存在する場合、及びそれが生じない又は存在しない場合を含むことを意味する。
【0019】
範囲形式で表現される値は、範囲の限度として明記される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される全ての個別の数値又はサブ範囲も、各数値及びサブ範囲が明記されているかのように含まれるとして、柔軟な様式で解釈されなければならない。例えば、1~6等の範囲は、1~3、2~4、3~6等のサブ範囲、並びにその範囲内に含まれる個別の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされなければならない。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0020】
「低k誘電材料」及び「低誘電率誘電材料」という用語は、本明細書中使用される場合、約3.5未満、好ましくは約2.5以下の誘電率を有する誘電材料を指すことを意図する。典型的には、「低k誘電材料」及び「低誘電率誘電材料」という用語は、本明細書中使用される場合、わずか約1.4~約3.5という低さの誘電率を有する誘電材料を指す。本開示は、k値が3.5~4.5である誘電体層を有する基板のクリーニングにおいても有用である可能性がある。
【0021】
「実質的に含まない」という用語は、特定の化合物又は部分が、組成物に実体のある影響を及ぼさない量で存在している組成物を指す。一部の実施形態において、「実質的に含まない」は、特定の化合物又は部分が、組成物中に、組成物の合計重量に基づいて、2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、又は0.05重量%、又はさらには0.01重量%未満の量で存在する組成物、あるいは特定の化合物又は部分の量が個別の組成物中に存在しないこと、を指す場合がある。
【0022】
本開示のアミンオキシドは、異なる酸化能力を有するように開発されたものであり、この酸化能力が、驚くべきことに、本開示のアミンオキシドを適用する所望の材料を選択的に酸化して他の材料には損傷を与えない可能性をもたらす。そのうえさらに、本開示の各アミンオキシドが、異なる金属、例えば、Al、Cu、及びCo等に対して持つ腐食性もまた、互いに少しづつ異なっているため、様々な用途用に専用化された配合物において腐食防止剤を含めて又は含めずに配合することが可能である。
【0023】
本開示は、概して、マイクロエレクトロニクス基板と、1種又は複数のアミンオキシドを含有する組成物を、接触させることによる、基板のクリーニング方法に関し、アミンオキシドには、N,N-ジメチルエタノールアミンN-オキシド(CAS#10489-99-3)、トリエタノールアミンN-オキシド(CAS#7529-23-9)、エタン
アミン、2,2’-オキシビス[N,N-ジメチル-、N,N’-ジオキシド](CAS#565236-99-9)、1-メチルピロリジンN-オキシド(CAS7529-17-1)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンN-オキシド、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本開示のアミンオキシドは、ある範囲の酸化能力を示すことがわかっており、許容可能な毒性を呈することも予想されている。そのうえさらに、アミンオキシドがある範囲の酸化能力を示すことから、それらは、様々な酸化強度を提供することができ、このため、様々なマイクロエレクトロニクス基板、金属、フォトレジスト、及び有機物を、エッチング、剥離、及びクリーニングする様々な組成物に使用することができる。本開示のアミンオキシドは、特別な湿式プロセシング工程、特別な種類又は混合物の金属表面に使用するための、あるいはマイクロエレクトロニクス基板表面である特定の所望効果を得るための、組成物の設計も可能にする。
【0024】
本開示のアミンオキシドは、適切なアミン(芳香族アミン、脂肪族アミン、環状アミン、環状脂肪族アミンが挙げられるが、これらに限定されない)と酸化剤、例えば、限定するものではないが、過酸化水素の反応を通じて調製することができる。強酸、例えば、塩酸(HCl)を用いた電位差滴定を用いて、反応混合物中のアミンオキシドと未反応アミンの割合を特定することができる。アミンオキシド含有量は、強塩基対全塩基の比から計算することができる。
【0025】
実施形態に従って、組成物は、アミンオキシドを少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも約0.5重量%、又は少なくとも約1重量%、又は少なくとも約2重量%、又は少なくとも約3重量%、又は少なくとも約5重量%)、及び/又は最大で約30重量%(例えば、最大で約25重量%、又は最大で約20重量%、又は最大で約17重量%、又は最大で約15重量%、又は最大で約12重量%、又は最大で約10重量%)含むことができ、この場合、重量%は、組成物の合計重量に基づく。さらに別の実施形態において、組成物は、過酸化水素を実質的に含まない。
【0026】
本開示の組成物は、マイクロエレクトロニクス基板の表面をクリーニング、エッチング、又は剥離するのに使用される、当業者に既知の他の材料も含むことができる。そのような材料として、有機溶媒;水;金属のハロゲン化物、水酸化物、ホウ化物、アルコキシド、酸化物、及びアンモニウム塩;有機酸;pH調整剤;腐食防止剤;界面活性剤;殺生物剤;消泡剤;キレート化剤;並びに抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本開示のアミンオキシドを含有する組成物は、金属又は粒子での汚染により大きな問題を起こす傾向がある基板、例えば、半導体、ガラス、金属、セラミック材料、樹脂、磁気材料、超伝導体等の、表面をクリーニングするのに使用される。詳細には、本開示のアミンオキシドを含有する組成物は、半導体装置用基板の製造の際、高度に清浄化された表面を有することが要求される半導体装置、例えば、半導体素子及びディスプレイ装置の表面をクリーニングするのに、より適切に使用される。こうした基板には、その表面に、配線及び電極、絶縁材料、低k誘電材料、金属酸化物、有機化合物、及び金属が提供されることができる。配線及び電極用材料の例として、半導体材料、例えば、Si、Ge、Ga、及びAs等;絶縁材料、例えば、SiO2、窒化ケイ素、ガラス、金属酸化物、例えば、酸化銅又は酸化アルミニウム、遷移金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、及び化ジルコニウム、(Ba、Sr)TiO3(BST)、有機化合物、例えば、ポリイミド、及び有機熱硬化性樹脂;金属、例えば、W、Cu、及びAl、又はそれらの合金、ケイ化物、及び窒化物等を挙げることができる。
【0028】
詳細には、本開示のアミンオキシドを含有する組成物は、表面に遷移金属又は遷移金属化合物を有する半導体装置をクリーニングするのに適切に使用される。遷移金属の例として、タングステン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ジルコニウム、ハフ
ニウム、モリブデン、ルテニウム、金、白金、銀等を挙げることができる。遷移金属化合物の例として、窒化物、酸化物、及びケイ化物を挙げることができる。
【0029】
1つの実施形態に従って、本開示の方法は、上記アミンオキシドを含有する組成物と、基板を接触させる工程を含み、この基板は、フォトレジスト層、反射防止コーティング層(anti-reflective coating layer)、無機若しくは有機汚染物質、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、環状オレフィン樹脂、若しくは無水マレイン酸樹脂に基づく重合体、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のイオンに基づくエッチング及び灰残渣、並びに酸素;タンタル、チタン、銅、アルミニウム、若しくはタングステンを含有する金属不純物、あるいはシリカ若しくはアルミナ研磨剤を他の一般的なスラリー添加剤、例えば、酸化剤、緩衝剤、安定剤、界面活性剤、不動態化剤(passivating agent)、錯化剤、腐食防止剤、又は他の作用剤とともに含有するスラリー残渣、を含む。
【0030】
本開示で使用されるクリーニング方法は、組成物と基板を直接接触させることにより行うことができる。上記アミンオキシドを含有する組成物と基板を接触させる方法として、組成物で満たされたクリーニングタンクに基板を浸漬するディップ型接触法、基板に対してノズルから組成物を流しながら基板を高速で回転させるスピン型接触法、基盤に組成物を噴射することにより基盤をクリーニングするスプレー型接触法等が使用可能である。上記クリーニング法を行う装置として、カセットに収容された複数の基板を同時にクリーニングするバッチ型クリーニング装置、ホルダーに嵌めた単一の基板をクリーニングするシングルウエハ型クリーニング装置等が使用可能である。
【0031】
クリーニング時間は、バッチ型クリーニング装置の場合は通常、30秒~30分、好ましくは1~15分であり、シングルウエハ型クリーニング装置の場合は通常、1秒~15分、好ましくは5秒~5分である。クリーニング時間が短すぎる場合、十分なクリーニング効果を得ることが難しくなる可能性がある。クリーニング時間が長すぎる場合、相応するクリーニング効果を得ることができず、それによりスループットの低下が引き起こされる。本開示のアミンオキシドを含有する組成物は、上記方法のいずれかにより基板に適用することができる。汚染物質を短時間でより効果的に除去するという観点からは、スピン型又はスプレー型クリーニング法の利用がより好適である可能性がある。また、本開示の組成物を、クリーニング時間の短縮及び使用するクリーニング溶液の量の削減に関する問題を抱えているシングルウエハ型クリーニング装置に適用した場合、これらの問題が適切に取り除かれる可能性がある。
【0032】
上記方法で使用される組成物温度は、通常、室温である。クリーニング効果を向上させる目的で、組成物を、約40℃~70℃の温度に加熱することが可能である。さらに、クリーニングしようとする基板がその表面に露出したケイ素を有する場合、残存する有機汚染物質は、ケイ素の表面に付着する傾向にある。したがって、そのような場合、クリーニングされる基板を300℃以上の温度で熱処理して付着した有機物を熱分解する、又はオゾン水処理に供して付着した有機物を酸化分解することが好ましい。
【0033】
また、本開示のクリーニング法は、好ましくは、物理的クリーニング法、例えば、クリーニングブラシを使用するスクラブクリーニング等の機械クリーニング法、又はメガソニッククリーニング法と合わせて使用することができる。特に、メガソニック照射又はブラシスクラブ洗浄を本開示のアミンオキシドを含有する組成物と組み合わせて使用する場合、粒子状汚染物質の除去性はさらに向上し、クリーニング時間の短縮がもたらされる。また、化学的機械的研磨後のクリーニングは、好ましくは、樹脂製のブラシを用いて行われる。
【0034】
ブラシの樹脂材料は、任意選択で、選択することができ、例えば、ブラシは、PVA(ポリビニルアルコール)から調製したものが可能である。また、基板に0.5MHz以上の周波数を有するメガソニック波を照射する場合、粒子状汚染物質の除去性は、アミンオキシドとの相乗効果故に顕著に向上する可能性がある。さらに、本発明のクリーニング法を行う前及び/又は後に、基板を、水の電気分解で得られる電解イオン水、又は水に水素ガスを溶解させることにより調製した水素水でクリーニングすることができる。
【0035】
別の実施形態において、本開示は、以下のフォトレジスト剥離プロセスと組み合わせて使用されるクリーニング法も含み、フォトレジスト剥離プロセスは、典型的には、本クリーニング法の前に行われる。任意の適切な乾式剥離プロセスが使用可能であり、そのようなプロセスとして、O2プラズマアッシング、オゾンガス相処理、フッ素プラズマ処理、熱H2ガス処理等が挙げられる。
【0036】
また、クリーニング法は、有機湿式剥離法とも組み合わせて使用可能である。有機湿式剥離は、本開示のクリーニング法の前、後、又は前後両方、のいずれかで行うことができる。任意の従来型有機湿式剥離溶液が使用可能であり、当業者なら適切な有機湿式剥離剤を選択することが可能であると思われる。
【0037】
別の実施形態に従って、本開示の組成物は、金属フィルムの化学的機械的平坦化又は研磨後に半導体基板をクリーニングするために使用することができる。すなわち、本開示の方法は、金属的特長(導電性特長)、例えば、層間コネクタ又は導電線を有する半導体ウエハの平坦化表面をクリーニングすることに関する。表面は、例えば、金属、例えば、銅、アルミニウム、白金、チタン、銀、タングステン、及び/又はタンタル等、誘電材料、例えば、シリカ、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、ホウケイ酸ガラス(BSG)、又はリンケイ酸ガラス等、炭素ドープシリカ、多孔質シリカ、及び/又は低k誘電材料、例えば、プラズマ誘起化学気相成長法(PECVD)、スピンコーティングプロセス、又はオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)前駆体からの分解により付着した二酸化ケイ素、を含むことができる。そのようなウエハが平坦化された後、残存粒子、例えば、スラリー、金属的特長、誘電材料、パッド、及びウエハに由来するものは、平坦化表面にばらばらに残存している。本方法は、ウエハの平坦化表面と、本開示のアミンオキシドを含有する組成物を、ウエハの平坦化表面から残存粒子の少なくとも一部を除去するのに有効な温度及び時間(例えば、上記したもの)で、接触させることを含む。本開示の方法の実施形態において、組成物は、銅又はアルミニウム配線の形成及び配線のCMP後に、半導体基板に適用される。
【0038】
本開示の別の実施形態に従って、半導体基板の表面は、アミンオキシドを用いて処理されて、汚染物質、例えば、有機化合物、酸化物層、及びイオン性物質の除去により表面がクリーニングされる。
【0039】
本開示の実施形態に従って、半導体基板の表面は、アミンオキシドを用いて処理されて、もはや必要ではない、例えば、エッチング段階が完了してしまった、フォトレジスト層の表面が剥離される。
【0040】
本開示のさらに別の実施形態に従って、半導体基板の表面は、アミンオキシドを用いて処理されて、基板の単層又は複数層を化学的に除去する目的で、表面がエッチングされる。一部の実施形態において、基板の一部は、エッチングに耐えるマスキング材料、例えば、窒化ケイ素等で保護することができる。
【0041】
驚くべきことに、本開示のアミンオキシドは、過酸化水素のものより低い酸化強度範囲を呈することが見出された。過酸化水素の強力な酸化力が、半導体装置の製造中に、金属
、フォトレジスト、及び有機物に望ましくない損傷を引き起こす可能性があることは、よく知られている。このことは、本開示のアミンオキシドが、より広い範囲の金属、フォトレジスト、及び有機物に対して適合性があり、より広い範囲の半導体基板において、望ましくない損傷を引き起こすことなく、剥離処理、クリーニング処理、及びエッチング処理に使用可能であることを意味する。そのうえさらに、これらのアミンオキシドは、過酸化水素に比べて熱的に安定であり、このことは、それらがより長い貯蔵寿命を有することを意味する。すなわち、さらに他に提供されるのは、本開示のアミンオキシドを含有する組成物であり、この組成物は、過酸化水素を実質的に含まない。
【実施例】
【0042】
実施例1:N,N-ジメチルエタノールアミンN-オキシドの調製
撹拌器、窒素ライン、滴下漏斗、及び搭頂冷却器を備えた1.0L丸底ガラス反応器に、脱イオン(DI)水37.0グラム及びジメチルエタノールアミン284.4グラムを投入した。窒素ガスを5分間吹き込んだ後、反応器を57°C(135°F)に加熱した。次いで、反応物温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、31%過酸化水素350.0グラムをゆっくりと加えた。過酸化水素を全て投入した後、反応温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、反応物を60分間温浸放置した。反応物を室温(RT)に冷却し、完成した生成物を、窒素パッド下、32ozプラスチックボトルに充填した。
【0043】
滴定により、約99%のジメチルエタノールアミンが酸化されたことが示された。
【0044】
実施例2:トリエタノールアミンN-オキシドの調製
撹拌器、窒素ライン、滴下漏斗、及び搭頂冷却器を備えた1.0L丸底ガラス反応器に、DI水60グラム及びトリエタノールアミン256.4グラムを投入した。窒素ガスを5分間吹き込んだ後、反応器を57℃(135°F)に加熱した。次いで、反応物温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、31%過酸化水素278.0グラムをゆっくりと加えた。過酸化水素を全て投入した後、反応温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、反応物を60分間温浸放置した。反応物をRTに冷却し、完成した生成物を、窒素パッド下、32ozプラスチックボトルに充填した。
【0045】
滴定により、約99%のトリエタノールアミンが酸化されたことが示された。
【0046】
実施例3:エタンアミン、2,2’-オキシビス[N,N-ジメチル-、N,N’-ジオキシド]の調製
撹拌器、窒素ライン、滴下漏斗、及び搭頂冷却器を備えた1.0L丸底ガラス反応器に、DI水10.0グラム及びビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル277.6グラムを投入した。窒素ガスを5分間吹き込んだ後、反応器を57°C(135°F)に加熱した。次いで、反応物温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、31%過酸化水素280.0グラムをゆっくりと加えた。過酸化水素を全て投入した後、反応温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、反応物を60分間温浸放置した。反応物をRTに冷却し、完成した生成物を、窒素パッド下、32ozプラスチックボトルに充填した。
【0047】
滴定により、約95%のビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテルが酸化されたことが示された。
【0048】
実施例4:1-メチルピロリジンN-オキシド(XHE-139)の調製
撹拌器、窒素ライン、滴下漏斗、及び搭頂冷却器を備えた1.0L丸底ガラス反応器に、DI水20.5グラム及び1-メチルピロリジン232.8グラムを投入した。窒素ガ
スを5分間吹き込んだ後、反応器を57°Cに加熱した。次いで、反応物温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、31%過酸化水素300.0グラムをゆっくりと加えた。過酸化水素を全て投入した後、反応温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、反応物を60分間温浸放置した。反応物をRTに冷却し、完成した生成物を、窒素パッド下、32ozプラスチックボトルに充填した。
【0049】
滴定により、約99%の1-メチルピロリジンが酸化されたことが示された。
【0050】
実施例5:N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンN-オキシドの調製
撹拌器、窒素ライン、滴下漏斗、及び搭頂冷却器を備えた1.0L丸底ガラス反応器に、DI水114.0グラム及びN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン289.9グラムを投入した。窒素ガスを5分間吹き込んだ後、反応器を57°Cに加熱した。次いで、反応物温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、31%過酸化水素250.0グラムをゆっくりと加えた。過酸化水素を全て投入した後、反応温度を57~60°C(135~140°F)に維持しながら、反応物を60分間温浸放置した。反応物をRTに冷却し、完成した生成物を、窒素パッド下、32ozプラスチックボトルに充填した。
【0051】
滴定により、約72%のN,N-ジメチルシクロヘキシルアミンが酸化されたことが示された。
【0052】
図1を参照して、N,N-ジメチルエタノールアミンN-オキシド(実施例1)、トリエタノールアミンN-オキシド(実施例2)、及びエタンアミン、2,2’-オキシビス[N,N-ジメチル-、N,N’-ジオキシド](実施例3)の酸化還元電位が、過酸化水素(H
2O
2)及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)の基準値と合わせて示されている。本開示のアミンオキシドの酸化還元電位は、過酸化水素のものよりも低いが、N-メチルモルホリンオキシドのものより高いことが示される。
【0053】
図2を参照して、様々な金属に対する上記アミンオキシド並びにN-メチルモルホリンオキシド及び過酸化水素の腐食速度が示される。本開示のアミンオキシドの腐食速度は、過酸化水素のものより遅いことが示される。
【0054】
当然ながら、上記に記載される実施形態は、例示にすぎず、いかなる形でも制限をかけないことが意図される。本発明を実行する上記実施形態は、形態、パーツ配置、詳細、及び操作順に多くの修飾を受け入れることが可能である。したがって、本発明は、そのような修飾を全て、本発明の範囲内に包含することが意図される。
【国際調査報告】