(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230908BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20230908BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20230908BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20230908BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
C22C38/00 301W
C22C38/00 301A
C22C38/14
C22C38/58
C21D8/02 B
C21D9/46 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513796
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2021115419
(87)【国際公開番号】W WO2022042728
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010896458.5
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 煥 榮
(72)【発明者】
【氏名】楊 峰
(72)【発明者】
【氏名】張 晨
(72)【発明者】
【氏名】楊 阿 娜
(72)【発明者】
【氏名】倪 亞 平
【テーマコード(参考)】
4K032
4K037
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA02
4K032AA04
4K032AA08
4K032AA11
4K032AA14
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4K037FC04
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4K037FD05
4K037FD06
4K037FE01
4K037FM01
4K037GA08
4K037JA06
(57)【要約】
その化学組成が重量百分率で、C 0.05~0.10%、Si≦2.0%、Mn 1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.003%、Al 0.02~0.08%、N≦0.004%、Mo 0.1~0.5%、Ti 0.01~0.05%、O≦0.0030%、残部はFeと他の不可避不純物である、980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼及びその製造方法。本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧800MPa、引張強度≧980MPa、穴拡げ率が60%以上にも達することができ、コントロールアームやサブフレームなどの、高強度・薄肉化が必要で、且つ成形が複雑な乗用車シャーシ部品に使用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その化学組成が重量百分率で、C 0.05~0.10%、Si≦2.0%、Mn 1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.003%、Al 0.02~0.08%、N≦0.004%、Mo 0.1~0.5%、Ti 0.01~0.05%、O≦0.0030%、残部はFeと他の不可避不純物である、980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項2】
Cr≦0.5%、B≦0.002%、Ca≦0.005%、Nb≦0.06%、V≦0.05%、Cu≦0.5%、Ni≦0.5%の中の1種又は複数種の元素をさらに含み、ただし、前記Nb、Vの好ましい含有量はそれぞれ≦0.03%であり、前記Cu、Niの好ましい含有量はそれぞれ≦0.3%であり、前記Crの好ましい含有量は0.2~0.4%であり、Bの好ましい含有量は0.0005~0.0015%であり、前記Caの好ましい含有量は≦0.002%であることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項3】
Cr≦0.5%及び/又はB≦0.002%をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項4】
前記C含有量は0.06~0.09%であることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項5】
前記Mn含有量は1.4~1.8%であることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項6】
前記S含有量は0.0015%以下に制御される、及び/又は前記N含有量は0.003%以下に制御されることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項7】
前記Al含有量は0.02~0.05%であることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項8】
前記Ti含有量は0.01~0.03%である、及び/又は前記Mo含有量は0.15~0.35%であることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項9】
前記超高穴拡げ性鋼の微細組織は全ベイナイトであることを特徴とする、請求項1に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項10】
前記超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧800MPa、引張強度≧980MPa、横伸びA
50≧10%、穴拡げ率≧60%であり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格しており、好ましくは、-40℃衝撃靭性≧40Jであることを特徴とする、請求項1又は9に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項11】
前記超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧850MPa、引張強度≧1020MPa、横伸びA
50≧10%、穴拡げ率≧70%であり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格しており、-40℃衝撃靭性≧50Jであることを特徴とする、請求項10に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項12】
前記超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧830MPa、引張強度≧1000MPa、横伸びA
50≧10%、穴拡げ率≧70%であり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格しており、-40℃衝撃靭性≧60Jであることを特徴とする、請求項10に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項13】
前記超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧900MPa、引張強度≧1040MPa、横伸びA
50≧10%、穴拡げ率≧65%であり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格しており、-40℃衝撃靭性≧40Jであることを特徴とする、請求項10に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼。
【請求項14】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法。
1)製錬、鋳込み
請求項1~8に記載された組成に従い、転炉又は電気炉で製錬し、真空炉で二次精錬した後、ビレット又はインゴットに鋳込む;
2)ビレット又はインゴットを、加熱温度1100~1200℃、保温時間1~2時間で再加熱する;
3)熱間圧延
圧延開始温度を950~1100℃とし、950℃以上で大圧下で3~5パス行い、且つ累計変形量を≧50%、好ましくは≧70%とする;次に、中間ビレットの温度を930~950℃にした後、仕上圧延を5~7パス行い、且つ累計変形量を≧70%、好ましくは≧80%とする;圧延終了温度を800~930℃とする;
4)冷却
まず動的回復と動的再結晶するように0~10秒の空冷を行い、次に水冷を行い、ベイナイト変態温度範囲、即ちB
s~B
fの間に≧10℃/s、好ましくは10~60℃/sの冷却速度で帯鋼を水冷して巻取ってから、風冷で鋼コイルの温度を室温まで冷却する;好ましい巻取り温度は410~550℃である;
5)酸洗
帯鋼の酸洗実行速度を30~100m/minの区間で調整し、酸洗温度を75~85℃の間に制御し、引張矯正率を≦2%に制御し、それからすすぎ洗い、帯鋼表面を乾燥し、油を塗布する。
【請求項15】
工程5)の酸洗の後に、35~50℃の温度区間ですすぎ洗い、且つ120~140℃の間で帯鋼の表面を乾燥し、油を塗布することを特徴とする、請求項14に記載の980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度鋼の分野に属し、特に、980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国民経済の発展に伴い、自動車の生産台数も大幅に増加し、板材の使用量も増え続けている。中国国内の自動車産業では、自動車のシャーシ部品、トーションビーム、セダンのサブフレーム、ホイールのスポークとリム、フロントとリアのアクスルアセンブリ、ボディ構造部品、シート、クラッチ、シートベルト、トラックのボックスパネル、保護ネット、車のビームなど、多くの車種の部品のオリジナル設計で、熱間圧延板や酸洗板の使用が要求されている。その中でも、シャーシ用鋼は、自動車に使われる鋼の総量の24~34%も占めている。
【0003】
乗用車の軽量化は、自動車業界のトレンドであるだけでなく、法規制での要求でもある。法規制では燃費が規定されているが、これは実質的にボディの軽量化に対する要求であり、材料に反映すると、高強度、薄肉化、軽量化という要求になる。高強度化と軽量化は、将来の新型車に対する必然的な要求であり、それは必然的に、鋼の使用レベルの向上とシャーシ構造の変更に繋がる:例えば部品の複雑化により、材料の性能や表面などへの要求、並びにハイドロフォーミング、ホットスタンピング、レーザー溶接などの成形技術も進歩し、その結果、材料の高強度、スタンピング、フランジング、反発、疲労などの性能に繋がる。
【0004】
中国国内の高強度高穴拡げ性鋼の開発は、海外と比較すると、強度レベルが相対的に低いだけでなく、性能安定性も悪い。例えば、中国国内の自動車部品メーカーに使用されている高穴拡げ性鋼の殆どは、600MPa以下の高硬度鋼であり、440MPa以下レベルの高穴拡げ性鋼の競争は激化している。現在、引張強度780MPaレベルの高穴拡げ性鋼は徐々に量産されつつあるが、成形の2つの重要な指標である伸びと穴拡げ率に対する要求もさらに高くなる。一方、980MPaレベルの高穴拡げ性鋼は、まだ研究開発・認証の段階にあり、まだ量産化の段階に至っていない。しかし、より高い強度と超高い穴拡げ率を持つ980高穴拡げ性鋼は、必然的に今後発展の方向になる。ユーザーの潜在的なニーズに応えるために、優れた穴拡げ性を持つ980MPaレベルの高穴拡げ性鋼の開発が求められている。
【0005】
関する既存の特許文献の大半は、780MPa以下レベルの高穴拡げ性鋼に関するものである。980MPaレベルの高穴拡げ性鋼に関する文献は殆どない。中国特許出願CN106119702Aでは、粒状ベイナイトと少量のマルテンサイトの微細組織を有すると共に、NbとCrが微量で添加された低炭素V-Ti微細合金化設計をその成分設計の主要な特徴とする980MPaレベルの熱間圧延高穴拡げ性鋼が開示される。本発明とは、成分、プロセスや組織などの点で大きく異なっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
文献によると、材料の伸びは通常、その穴拡げ率と反比例の関係にあり、即ち、伸びが高いほど穴拡げ率は低くなり、逆に、伸びが低いほど穴拡げ率は高くなる。そうすると、高伸びと高穴拡げ性を有すると同時に、高強度も有する高穴拡げ性鋼を獲得することは、非常に困難である。また、同一又は類似の強化機構であれば、材料の強度が高いほど穴拡げ率は低くなる。
【0007】
塑性と穴拡げ・フランジング性に優れた鋼材を得るためには、両者のバランスをより良く取る必要がある。もちろん、材料の穴拡げ率は多くの要因と密接に関係しているが、中でも組織の均質性、介在物や偏析の制御レベル、組織の種類、穴拡げ率の測定などは、最も重要な要因である。一般に、単一で均質な組織は穴拡げ率の向上に有利であるが、二相又は多相の組織は穴拡げ率の向上に不利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の内容
本発明の目的は、980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼及びその製造方法を提供することであり、前記超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧800MPa、引張強度≧980MPa、穴拡げ率が60%以上にも達することができ、コントロールアームやサブフレームなどの、高強度・薄肉化が必要で、且つ成形が複雑な乗用車シャーシ部品に使用可能である。
【0009】
上記目的を果たすために、本発明の技術方案は:
本発明の成分設計によれば、ユーザーの使用時における優れた溶接性を確保し、得られたベイナイト組織の優れた強度と穴拡げ率の適合を確保するために、C含有量を低く設計する。
【0010】
具体的には、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼は、その化学組成が重量百分率で、C 0.05~0.10%、Si≦2.0%、Mn 1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.003%、Al 0.02~0.08%、N≦0.004%、Mo 0.1~0.5%、Ti 0.01~0.05%、残部はFeと他の不可避不純物である。
【0011】
Cr≦0.5%、B≦0.002%、Ca≦0.005%、Nb≦0.06%、V≦0.05%、Cu≦0.5%、Ni≦0.5%の中の1種又は複数種の元素をさらに含む;ただし、前記Nb、Vの好ましい含有量はそれぞれ≦0.03%である。いくつかの実施形態において、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼は、Cr及び/又はBを含み、Crの好ましい含有量は0.20~0.50%であり、Bの好ましい含有量は0.0005~0.002%である。前記Cu、Niの好ましい含有量はそれぞれ≦0.3%であり、前記Crの好ましい含有量は0.2~0.4%であり、前記Bの好ましい含有量は0.0005~0.0015%であり、前記Caの好ましい含有量は≦0.002%である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼は、その化学組成が重量百分率で、C 0.05~0.10%、Si≦2.0%、Mn 1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.003%、Al 0.02~0.08%、N≦0.004%、Mo 0.1~0.5%、Ti 0.01~0.05%、Cr≦0.5%、B≦0.002%、Ca≦0.005%、Nb≦0.06%、V≦0.05%、Cu≦0.5%、Ni≦0.5%、残部はFeと他の不可避不純物であり、且つ前記全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼は、少なくともCr、B、Ca、Nb、V、Cu及びNiの中の1種又は複数種の元素を含み、好ましくは、少なくともCr及び/又はBを含む。
【0013】
好ましくは、C含有量は0.06~0.09%である。好ましくは、Mn含有量は1.4~1.8%である。好ましくは、S含有量は0.0015%以下に制御される。好ましくは、Al含有量は0.02~0.05%である。好ましくは、N含有量は0.003%以下に制御される。好ましくは、Ti含有量は0.01~0.03%である。好ましくは、Mo含有量は0.15~0.35%である。好ましくは、O含有量は30ppm以内に制御される。好ましくは、Si含有量は0.05~2.0%である。
【0014】
本発明にかかる超高穴拡げ性鋼の微細組織は全ベイナイトである。
本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧800MPa、好ましくは≧830MPa、より好ましくは≧850MPa、さらに好ましくは≧880MPaであり、引張強度≧980MPa、好ましくは≧1000MPa、より好ましくは≧1020MPaであり、横伸びA50≧10%であり、穴拡げ率≧60%、好ましくは≧70%であり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格している。
【0015】
好ましくは、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、-40℃衝撃靭性≧40J、好ましくは≧50J、より好ましくは≧60Jである。特に好ましい実施形態において、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、-40℃衝撃靭性≧70Jである。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧850MPaであり、引張強度≧1020MPaであり、横伸びA50≧10%であり、穴拡げ率≧70%であり、-40℃衝撃靭性≧50Jであり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格している。
【0017】
さらに好ましい実施形態において、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧830MPaであり、引張強度≧1000MPaであり、横伸びA50≧10%であり、穴拡げ率≧70%であり、-40℃衝撃靭性≧60Jであり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格している。
【0018】
さらに好ましい実施形態において、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼は、降伏強度≧900MPaであり、引張強度≧1040MPaであり、横伸びA50≧10%であり、穴拡げ率≧65%であり、-40℃衝撃靭性≧40Jであり、冷間曲げ性能テスト(d≦4a、180°)に合格している。
【0019】
本発明にかかる超高穴拡げ性鋼の成分設計において:
炭素は、鋼における基本元素であり、本発明にとって重要な元素の一つでもある。炭素はオーステナイト相領域を拡大させ、オーステナイトを安定化させる。炭素は鋼における間隙原子として、鋼の強度向上にとって非常に重要な役割を担い、鋼の降伏強度と引張強度に対する影響が一番大きい。本発明において、超高強度と超高穴拡げ率を得るために、単相で均質な低炭素ベイナイト組織を獲得する必要がある。引張強度980MPaレベルの高強度鋼を得るために、炭素含有量を0.05%以上に確保する必要があり、さもないと、炭素含有量が0.05%以下であれば、形成されるベイナイト組織の引張強度は980MPaに達することができない。しかし、炭素含有量は0.10%を超えてはいけない。炭素含有量が高すぎると、形成される低炭素ベイナイト組織に多くの島状マルテンサイト-オーステナイト(Martensite-Austenite constituent)が生じやすく、伸びと穴拡げ率に不利である。よって、炭素含有量を0.05~0.10%の間に制御すべきであり、好ましい範囲は0.06~0.09%の間にある。
【0020】
ケイ素は、鋼における基本元素であり、本発明にとって重要な元素の一つでもある。前記のように、異なる珪素含有量は、鋼の性能、特に伸びと穴拡げ率に重要な影響を与える。ケイ素含有量が低いと、組織における残留オーステナイトが少なくなり、伸びが相対的に低くなるが、ケイ素含有量が0.8%以上に達すると、同じ工程で、組織における残留オーステナイトの含有量が増加し、伸びの向上に有利である。本発明のケイ素含有量範囲内において、異なる珪素含有量は主に伸び指標に影響を与えるが、穴拡げ率への影響が小さい。多くのケイ素を鋼に添加すると、圧延機の負荷が大きくなりやすいことから、鋼の表面にも不利である。よって、鋼の表面品質を改善すると共に、実際の圧延力を低下させるために、鋼におけるSi含有量は高すぎることが許容されず、通常は2.0%を超えない。実際のユーザーのニーズに応じて、成分設計において、低ケイ素と高ケイ素の2つの構想をそれぞれ採用することができる。
【0021】
マンガンは、鋼における一番の基本元素であり、本発明にとって一番重要な元素の一つでもある。周知のように、Mnはオーステナイト相領域を拡大させる重要な元素であり、鋼の臨界焼入速度を低下させ、オーステナイトを安定化させ、結晶粒を微細化させ、オーステナイトからパーライトへの変態を遅延させることができる。本発明において、鋼板の強度を確保するために、Mn含有量は通常、1.0%以上に制御されるが、Mn含有量は2.0%を超えることも通常許容されず、さもないと、製鋼時にMnの偏析が発生しやすくなると共に、スラブ連続鋳造時にも熱間割れが発生しやすくなる。よって、鋼において、Mn含有量は通常、1.0~2.0%に制御され、好ましい範囲は1.4~1.8%である。
【0022】
リンは、鋼における不純物元素である。Pは極めて結晶粒界に偏在しやすく、鋼におけるP含有量は高い(≧0.1%)と、Fe2Pを形成して結晶粒の周辺に析出し、鋼の塑性と靭性を低下させるので、その含有量は少ないほど良く、一般的には0.02%以内に制御することが好ましく、且つ製鋼コストも高騰しない。
【0023】
硫黄は、鋼における不純物元素である。鋼におけるSはMnと結合してMnS介在物を形成することが普通であり、特にSとMnの含有量が両方とも高い場合、鋼において多くのMnSが形成されるが、MnS自身は若干の塑性を有し、後続の圧延過程において、MnSは圧延方向に沿って変形するので、鋼板の横方向の塑性を低下させるだけでなく、組織の異方性も増加させ、穴拡げ性に不利である。よって、鋼におけるS含有量は少ないほど良く、本発明におけるMn含有量を高いレベルにしなければならないことも考慮すると、MnS含有量を低減させるために、S含有量を厳しく制御しなければならず、S含有量を0.003%以内に制御する必要があり、好ましい範囲は0.0015%以下である。
【0024】
アルミニウムは、鋼において主に脱酸と窒素固定の役割を担う。Ti、Nb、Vなどの強炭化物形成元素の存在を前提として、Alは主に脱酸と結晶粒微細化の役割を担う。本発明において、Alは一般的な脱酸元素及び結晶粒微細化元素として、その含有量は通常0.02~0.08%に制御すれば良い。Al含有量が0.02%未満であると、結晶粒微細化に寄与できず、同様に、Al含有量が0.08%以上であると、その結晶粒微細化効果は飽和してしまう。よって、鋼において、Al含有量は通常、0.02~0.08%の間に制御すれば良いが、好ましい範囲は0.02~0.05%の間にある。
【0025】
窒素は、本発明において不純物元素に属し、その含有量は低いほど良い。しかし、窒素は製鋼過程において不可避な元素である。その含有量が少ないが、Tiなどの強炭化物形成元素と結合すると、形成されたTiN粒子は鋼の性能、特に穴拡げ性に非常に悪い影響を与える。また、TiNは四角い形状をしているため、その鋭利な角と基板との間に大きな応力集中が存在し、穴拡げ変形過程で、TiNと基板との間の応力集中によりクラックが発生しやすく、穴拡げ性を大きく低下させる。窒素含有量を可能な限り制御することを前提として、Tiなどの強炭化物形成元素の含有量は少ないほど好ましい。本発明において、微量のTiを加えて窒素を固定することで、TiNによる悪影響を可能な限り低減させる。よって、窒素含有量を0.004%以下に制御すべきであり、好ましい範囲は0.003%以下である。
【0026】
チタンは、本発明にとって重要な元素の一つである。Tiは本発明において主に2つの役割を担う:一つは、鋼中の不純物元素Nと結合してTiNを形成し、一部の「窒素固定」の役割を担う;二つは、材料の後続の溶接過程で分散した微細なTiNを一定数形成し、オーステナイト結晶粒子のサイズを抑制し、組織を微細化させて低温靭性を改善することである。よって、鋼において、Ti含有量の範囲は0.01~0.05%に制御され、好ましい範囲は0.01~0.03%である。
【0027】
モリブデンは、本発明にとって重要な元素の一つである。鋼にモリブデンを添加すると、フェライトとパーライトの変態を大幅に遅らせることができる。モリブデンのこの役割は、実際の圧延過程における様々なのプロセスの調整に有利であり、例えば、圧延終了時に、段階的冷却をしても良いが、空冷をしてから水冷などをしても良い。本発明において、空冷をしてから水冷をするプロセス、或いは圧延後に直接的に水冷するプロセスを採用しても、モリブデンを添加することにより、空冷過程でフェライトやパーライトなどの組織が形成されないことを確保できると共に、空冷過程で変形されたオーステナイトの動的回復が起こり、組織の均質性向上に寄与する;モリブデンは強い溶接軟化抵抗性を有する。本発明の主要な目的は、単一の低炭素マルテンサイトと少量の残留オーステナイトの組織を得ることであるが、低炭素マルテンサイトは溶接後に軟化現象が発生しやすいので、モリブデンを所定量で添加することにより、溶接軟化の度合いを効果的に低減させることができる。よって、モリブデン含有量を0.1~0.5%の間に制御すべきであり、好ましい範囲は0.15~0.35%である。
【0028】
クロムは、本発明に添加可能な元素の一つである。少量のクロム元素の添加は、鋼の焼入性を向上させるためではなく、B相と結合して、溶接後の溶接熱影響部に針状のフェライト組織を形成することに寄与し、溶接熱影響部の低温靭性を大幅に向上させるためである。本発明にかかる最終応用部品は乗用車のシャーシ系製品であるため、溶接熱影響部の低温靭性が重要な指標となる。溶接熱影響部の強度が低下しすぎないように確保することに加え、溶接熱影響部の低温靭性も所定の要求を満たす必要がある。また、クロム自身もある程度の溶接軟化抵抗作用を有する。よって、鋼において、クロム元素添加量は通常≦0.5%であり、好ましい範囲は0.2~0.4%である。
【0029】
ホウ素は、本発明に添加可能な元素の一つである。鋼におけるホウ素の役割は主に、旧オーステナイト粒界に偏在し、初析フェライトの形成を抑制することである;鋼にホウ素を添加することにより、鋼の焼入性を大きく向上させることもできる。しかし、本発明において、微量のホウ素元素の添加の主要な目的は、焼入性を向上させるためではなく、クロム相と結合して、溶接熱影響部の組織を改善し、靭性で優れた針状フェライト組織を得るためである。鋼に添加されるホウ素元素は通常、0.002%以下に制御され、好ましい範囲は0.0005~0.0015%の間にある。
【0030】
カルシウムは、本発明に添加可能な元素である。カルシウムは、MnSなどの硫化物の形態を改善し、長い縞状のMnSなどの硫化物を球状のCaSに変えて、介在物の形態の改善に寄与し、それにより長い縞状の硫化物が穴拡げ性に与える悪影響を低減することができるが、添加されるカルシウムが多すぎると、酸化カルシウムの数が増えてしまい、穴拡げ性に不利である。よって、鋼において、カルシウム添加量は通常≦0.005%であり、好ましい範囲は≦0.002%である。
【0031】
酸素は、製鋼過程において不可避な元素であり、本発明にとって、鋼におけるO含有量は、脱酸後に、普通は30ppm以下に達することができ、鋼板の性能に明らかな悪影響を与えない。よって、鋼において、O含有量を30ppm以内に制御すれば良い。
【0032】
ニオブは、本発明に添加可能な元素の一つである。ニオブは、チタンと同様に、鋼中の強炭化物形成元素であり、ニオブを鋼に添加することにより、鋼の未再結晶温度を大幅に上昇させ、仕上圧延段階で転位密度がより高い変形オーステナイトを獲得し、後続の変態過程で最終の変態組織を微細化させることができる。しかし、ニオブの添加量は多すぎてはならず、一方では、ニオブの添加量が0.06%を超えると、組織で比較的に粗いニオブ炭素窒化物を形成しやすく、炭素原子の一部を消費し、炭化物による析出強化効果を低下させる。それに、ニオブ含有量が多いと、熱間圧延状態のオーステナイト組織に異方性が生じやすくなり、後続の冷却変態過程で最終の組織に引き継がれ、穴拡げ性に不利である。よって、鋼において、ニオブ含有量は通常≦0.06%に制御され、好ましい範囲は≦0.03%である。
【0033】
バナジウムは、本発明に添加可能な元素である。バナジウムは、チタンやニオブと同様に、強炭化物形成元素である。しかし、バナジウムの炭化物は固溶温度や析出温度が低く、通常、仕上圧延段階で全てオーステナイトに固溶している。温度が下がって変態が始まる場合のみに、フェライト中でバナジウムが形成し始まる。フェライトにおけるバナジウムの炭化物の固溶度は、ニオブとチタンの固溶度よりも大きいので、バナジウムの炭化物はフェライト中でより大きなサイズで形成され、析出強化に不利であり、鋼の強度への寄与はチタンよりも遥かに小さいし、バナジウムの炭化物の形成により、炭素原子もある程度消耗されるので、鋼の強度向上に不利である。よって、鋼において、バナジウム添加量は通常≦0.05%であり、好ましい範囲は≦0.03%である。
【0034】
銅は、本発明に添加可能な元素の一つである。鋼に銅を添加することにより、鋼の耐食性を向上されることができ、Pの元素と共に添加されると、耐食性がより一層優れる;Cuの添加量が1%を超えると、所定の条件下でε-Cu析出相を形成し、強い析出強化効果を奏することができる。しかし、Cuの添加により、圧延過程で「Cu脆化」現象が発生しやすく、ある応用環境で「Cu脆化」現象を著しく引き起こすことなくCuによる耐食性改善効果を十分に活用するために、Cu元素含有量は通常、0.5%以内に制御され、好ましい範囲は0.3%以内である。
【0035】
ニッケルは、本発明に添加可能な元素の一つである。鋼にニッケルを添加することにより、ある程度の耐食性を与えるが、耐食効果は銅より弱く、鋼にニッケルを添加することにより、鋼の引張性能にあまり影響を与えないが、鋼の組織と析出相を微細化させ、鋼の低温靭性を大幅に向上させることができる;それに、銅元素が添加された鋼に、ニッケルを少量で添加することにより、「Cu脆化」の発生を抑制できる。大量のニッケルの添加は、鋼自身の性能に明らかな悪影響がない。銅とニッケルを同時に添加すると、耐食性を向上させるだけでなく、鋼の組織や析出相も微細化させ、低温靭性を大幅に向上させることができる。しかし、銅もニッケルも比較的高価な合金元素であるので、合金設計のコストを最小限に抑えるため、ニッケル添加量は通常≦0.5%であり、好ましい範囲は≦0.3%である。
【0036】
本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法は、以下の工程を含む:
1)製錬、鋳込み
記載された組成に従い、転炉又は電気炉で製錬し、真空炉で二次精錬した後、ビレット又はインゴットに鋳込む;
2)ビレット又はインゴットを、加熱温度1100~1200℃、保温時間1~2時間で再加熱する;
3)熱間圧延
オーステナイト結晶粒子の微細化を主要な目的として、圧延開始温度を950~1100℃とし、950℃以上で大圧下で3~5パス行い、且つ累計変形量を≧50%、好ましくは≧70%とする;次に、中間ビレットの温度を930~950℃にした後、仕上圧延を5~7パス行い、且つ累計変形量を≧70%、好ましくは≧80%とする;圧延終了温度を800~930℃とする;
4)冷却
まず動的回復と動的再結晶するように0~10秒の空冷を行い、次に水冷を行い、ベイナイト変態温度範囲、即ちBs~Bfの間に≧10℃/s、好ましくは10~60℃/sの冷却速度で帯鋼を水冷して巻取ってから、風冷(冷却速度>20℃/h)で鋼コイルの冷却を室温まで加速する;好ましい巻取り温度は410~550℃である;
5)酸洗
帯鋼の酸洗実行速度を30~100m/minの区間で調整し、酸洗温度を75~85℃の間に制御し、帯鋼の伸びロスを低減させるように引張矯正率を≦2%に制御する;35~50℃の温度区間ですすぎ洗い、且つ120~140℃の間で帯鋼の表面を乾燥し、油を塗布する。
【0037】
好ましくは、工程5)の酸洗後に、35~50℃の温度区間ですすぎ洗い、且つ120~140℃の間で帯鋼の表面を乾燥し、油を塗布する。
【0038】
本発明の革新点は、以下の通りである。
本発明の成分設計によれば、単相低炭素ベイナイトの設計構想を採用し、適切な圧延終了温度と圧延後の空冷又は直接水冷を採用し、巻取った鋼コイルに風冷又は鋼コイルの冷却を加速できる他のモードを採用し、できるだけ早く鋼コイルの温度を室温まで冷却することにより、最終的に組織が均質で微細な単相ベイナイトを獲得し、高塑性、靱性、良好な冷間曲げ性能と超高穴拡げ率を表す。
【0039】
圧延プロセスの設計において、粗圧延と仕上圧延段階において、圧延過程をなるべく速いペースで完成すべきである。圧延終了後、まずは異なる時間で空冷を行うが、圧延終了後に直接に層流冷却を行っても良い。空冷の主要な目的は、マンガンとモリブデンを多く含む成分設計により、マンガンはオーステナイトを安定化させる元素であり、モリブデンはフェライトとパーライト変態を大幅に遅らせる。よって、所定の時間で空冷する過程において、圧延された変形オーステナイトは変態せずに、即ちフェライト組織を形成することなく、動的再結晶と緩和過程を起こす。変形オーステナイトは、動的再結晶を起こすと、組織が均質で擬等軸なオーステナイトを形成することができ、緩和後に、オーステナイト粒内部の転位が大幅に減少し、両者の組み合わせにより、後続の水冷層流冷却過程で組織が均質で微細な単相ベイナイトが得られる。ベイナイト組織を得るために、帯鋼の水冷速度を≧10℃/sとする必要がある。
【0040】
本発明にかかる微細組織は低炭素ベイナイトであるので、圧延終了後にベイナイト変態温度範囲、即ちBs~Bfの間に≧10℃/sの冷却速度で帯鋼を冷却して巻取れば良い。ベイナイト変態時間が長いため、鋼コイルを巻取った後にも変態が引き起こされる。よって、強度、塑性、穴拡げ率に全て優れた高強度鋼を得るために、巻取った鋼コイルを最短時間で風冷又は他の強制冷却モード(冷却速度>20℃/h、好ましくは≧25℃/h)で鋼コイルの温度をできるだけ早く室温まで下げることで、単相の均質で微細なベイナイト組織を得ることが必要である。本発明は、このような革新的な成分とプロセス設計構想に基づき、強度、塑性、靭性、冷間曲げ、穴拡げ性などの性能に優れた980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼を得ることができる。
【0041】
本発明の有利な効果は、
(1)比較的に経済的な成分設計構想を採用したと共に、革新的な冷却プロセスルートを採用したことで、強度、塑性、靭性、穴拡げ性などの性能に優れた980MPaレベルの超高穴拡げ性鋼を得た;
(2)鋼コイル又は鋼板は優れた強度、塑性、靭性と穴拡げ率の適合を有すると共に、良好な冷間曲げ性能と穴拡げ・フランジング性能も兼ねて有し、その降伏強度が≧800MPaで、引張強度が≧980MPaで、且つ厚さ2~6mmの熱間圧延若しくは酸洗超高穴拡げ性鋼であると共に、良好な伸び(横向A50≧8%)、衝撃靭性及び穴拡げ性(穴拡げ率≧60%)も有し、高強度・薄肉化と穴拡げ・フランジングが必要で、且つ成形が複雑な自動車シャーシやサブフレームなどの部品の製造に使用可能であり、その非常に幅広い応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法のプロセスフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法における圧延プロセスの概念図である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法における冷却プロセスの概念図である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼の実施例3の典型的な金属組織写真である。
【
図5】
図5は、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼の実施例5の典型的な金属組織写真である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる超高穴拡げ性鋼の実施例7の典型的な金属組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1~
図3を参照として、本発明にかかる980MPaレベルの全ベイナイト型超高穴拡げ性鋼の製造方法は、以下の工程を含む:
1)製錬、鋳込み
記載された組成に従い、転炉又は電気炉で製錬し、真空炉で二次精錬した後、ビレット又はインゴットに鋳込む;
2)ビレット又はインゴットを、加熱温度1100~1200℃、保温時間1~2時間で再加熱する;
3)熱間圧延
圧延開始温度を950~1100℃とし、950℃以上で大圧下で3~5パス行い、且つ累計変形量を≧50%とする;次に、中間ビレットの温度を930~950℃にした後、仕上圧延を5~7パス行い、且つ累計変形量を≧70%とする;圧延終了温度を800~930℃とする;
4)冷却
まず動的回復と動的再結晶するように0~10秒の空冷を行い、次に水冷を行い、ベイナイト変態温度範囲、即ちB
s~B
fの間に≧10℃/sの冷却速度で帯鋼を水冷して巻取ってから、風冷(冷却速度>20℃/h)で鋼コイルの冷却を室温まで加速する;
5)酸洗
帯鋼の酸洗実行速度を30~100m/minの区間で調整し、酸洗温度を75~85℃の間に制御し、引張矯正率を≦2%に制御し、35~50℃の温度区間ですすぎ洗い、且つ120~140℃の間で表面を乾燥し、油を塗布する。
【0044】
本発明にかかる超高穴拡げ性鋼の実施例の成分は表1に示し、本発明にかかる鋼の実施例の生産プロセスパラメータは表2、表3に示し、ただし、圧延プロセスにおける鋼ビレットの厚さは230mmである;本発明の実施例にかかる鋼板の力学的性能は表4に示す。引張性能(降伏強度、引張強度、伸び)は、ISO 6892-2-2018国際規格に基づいて測定し、穴拡げ率は、ISO 16630-2017国際規格に基づいて測定し、衝撃エネルギーは、ISO 14556-2015国際規格に基づいて測定した。
【0045】
表4から分かるように、鋼コイルはいずれも降伏強度≧800MPaであり、引張強度≧980MPaであり、伸びは通常≧10%であり、衝撃エネルギーは比較的に安定しており、-40℃低温衝撃エネルギー≧40Jであり、穴拡げ率≧60%である。上記実施例から分かるように、本発明にかかる980MPa高強度鋼は、優れた強度、塑性、靭性と穴拡げ性の適合を有し、特にコントロールアームなどの、高強度・薄肉化と穴拡げ・フランジングが必要な自動車シャーシなどの部品の製造に適切であり、ホイールなどの穴フランジングが必要で、且つ成形が複雑な部品にも適用することができ、その幅広い応用が期待される。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【国際調査報告】