(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】低い燃料消費のためのピストンレス燃焼フライホイールエンジン設計
(51)【国際特許分類】
F02B 53/00 20060101AFI20230908BHJP
F02B 53/02 20060101ALI20230908BHJP
F02B 53/04 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
F02B53/00 C
F02B53/02 C
F02B53/04 A
F02B53/02 A
F02B53/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514152
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 US2021048079
(87)【国際公開番号】W WO2022047246
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523070322
【氏名又は名称】ハロ3 ホールディングス エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】523070333
【氏名又は名称】ソー,ポール,ジェイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ソー,ポール,ジェイ.
(57)【要約】
ピストンレス燃焼フライホイールエンジンは、回転フライホイールディスクがフライホイールディスクの単一の回転内で燃焼エンジンの従来の4ストロークをもたらすことを可能にするように一緒に動作する2つのサブシステムを含む。エンジンは、質量を有するフライホイールディスクを含み、及び回転慣性とトルクとを送達するように構成される。一次サブシステムは、フライホイールディスク及び燃焼サイクルを生じさせるように構成された外部ハウジングブロックを含む。二次サブシステムは、ハウジングブロック内に配置され、及び吸気サイクル、圧縮サイクル及び排気サイクルを生じさせるように構成される。これらのサイクルは、フライホイールディスクの外部で行われる。一次サブシステム及び二次サブシステムの使用は、燃焼サイクルがフライホイールディスクの回転毎に起きることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンレス燃焼フライホイールエンジンであって、
質量を有し、及び回転慣性とトルクとを送達するように構成されたフライホイールディスク、
前記フライホイールディスク及び燃焼サイクルを生じさせるように構成された外部ハウジングブロックを含む一次サブシステム、
吸気サイクル、圧縮サイクル及び排気サイクルを生じさせるように構成される、前記ハウジングブロック内に配置された二次サブシステムであって、前記サイクルは、前記フライホイールディスクの外部で行われる、二次サブシステム
を含み、前記一次サブシステム及び前記二次サブシステムの使用は、前記燃焼サイクルが前記フライホイールディスクの回転毎に起きることを可能にする、ピストンレス燃焼フライホイールエンジン。
【請求項2】
前記フライホイールディスクは、前記外部ハウジングブロック内で回転する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記フライホイールディスクは、外面上に空洞を含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記外部ハウジングブロックは、空洞であって、前記フライホイールディスクが前記外部ハウジングブロック内で回転するとき、前記外部ハウジング及び前記フライホイールディスクの前記空洞がすれ違うような空洞を含む、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記一次サブシステムは、分割燃焼空洞セットを含み、前記燃焼空洞は、前記フライホイールディスクと前記外部ハウジングブロックとの間で分割される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記外部ハウジングブロック内の吸気ポートと連通する圧縮空気リザーバを更に含み、前記圧縮空気リザーバ内の圧縮空気は、着火のために分割燃焼空洞セット内に押し込まれる、請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記外部ハウジングブロック内の吸気ポートと連通する圧縮空気リザーバを更に含み、前記圧縮空気リザーバは、圧縮空気を保持するように構成される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項8】
前記圧縮空気は、前記フライホイールディスク及び前記外部ハウジングブロックの空洞内に同時に挿入される、請求項7に記載のエンジン。
【請求項9】
動力サイクルを誘発するように構成された燃料ポート及び点火プラグを更に含む、請求項8に記載のエンジン。
【請求項10】
前記動力サイクルは、前記フライホイールディスクの前記空洞が前記外部ハウジングブロック内で回転し、及び前記外部ハウジングブロック内のポートを通して選択的に排出されるように前記フライホイールディスクを回転させる、請求項9に記載のエンジン。
【請求項11】
前記外部ハウジングブロックに結合されたロッカーピボット燃焼ゲートを更に含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項12】
前記ロッカーピボット燃焼ゲートと連通し、及び前記フライホイールディスクの空洞内に選択的に延在するように枢動するように構成された格納可能なゲートを更に含む、請求項11に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は、燃焼エンジン内の燃料消費を最小限にする方法に関し、より詳細には、従来の内燃機関(ICE)内のピストンの均等物又は現代のロータリエンジン内の回転チャンバを効率的に除去し、低減された燃料消費をもたらす方式のロータリ式燃焼エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
1950年代後半に開発されたロータリワンケルエンジンの出現は別として、従来の内燃機関の基本的設計は、ここ150年で基本的に変わっていない。その導入以後、事実上全ての改良は、その元の設計からの機械的及び熱力学効率の増加の領域におけるものであった。工学的な努力で大きい進歩がなされた結果、ここ数十年にわたっていくつかの改良がもたらされたが、基本的に燃焼機関の設計には依然としてかなりの欠点がある。
【0003】
従来の内燃機関(ICE)では、図面の
図1に見られるように、ピストン及びそれぞれのピストンロッドは、メインエンジン内のクランクシャフトに連結される。燃焼力は、クランクシャフトを回転させる回転力又はトルクを生成するために、ピストンが上死点を通過した後にクランクシャフトに伝達される。
【0004】
従来のピストンエンジン内の全てのピストンは、4つの異なる段階(吸気、圧縮、動力及び排気)を経なければならない。所与のいずれの例でも、システム内の1つのピストンのみが動力ストローク段階中にクランクシャフトに正のエネルギーを供給する。単一ピストンからのこの動作は、クランクシャフトに回転エネルギーを供給するだけでなく、残りのピストンを動かして排気を出し、新しい空気を吸い込み、空気/燃料混合物を圧縮するそれぞれの段階を経るためにもエネルギーを供給しなければならない。これらをもたらす原動力は、むしろ急速にクランクシャフトからエネルギーを除去する。
【0005】
単一軸内で直線的に変化する力(すなわちピストンの上下運動)を加えた際に行われる仕事に関する一般式は、以下の通りである。
【数1】
【0006】
式1は、図面の
図2に表されるように、単一ピストンによって進められた動きを考察すると明らかになる。摩擦を無視すると、ピストンは、常に加速することに留意されたい(ピストンが最高速度に達したときの一部の短期間を除く)。ピストン及びロッドの質量は、連続して加速するため、この動きを提供するエネルギー源(この場合には主要クランクの)は、その回転慣性から取り除くエネルギーを提供する。
図2をよく見ると、最高加速は、TDC及びBDCで起きることがわかる。これは、クランクがピストンの質量を完全停止まで一方向に減速し、ピストンを完全停止から反対方向に再加速しなければならないために当然である。これは、クランクのかなりの労力を要する。ピストン、ロッド及びピンアセンブリの平均重量は、約30lbsである。すなわち、質量は、高いRPMで比較的短い距離を動かなければならないために非常に大きい。
【0007】
米国特許第6,796,285号及び第7,500,462号に記載された発明は、従来の燃焼機関に対して大きく異なる方式で動作する内燃機関の例を記載している。従来の内燃機関は、ピストンのクランクを回転させるために、ピストンが燃焼する下方運動に依拠するのに対して、これらの特許は、ロータリ式エンジンの変形形態を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
分割ピストンレス燃焼フライホイールエンジンを提供することが本出願の目的である。システムは、燃焼行程を2つの本体に分離し、燃焼及び動力サイクルが第1の本体で起きる一方、吸気及び排気が第2の本体を通して起きる。組み合わせたときにシステム間の嵩張る機械的リンクは、燃焼行程を完了するために一緒に動作する、より効率的に動作される優れたシステムのために取り除かれる。本システムは、従来の燃焼機関を超える著しい利点を提供する。これらの利点は、以下のように要約することができる。
1.正味摩擦を低減し、エンジンの寿命を延ばすために、内部の可動部品の数を低減し、封止を除去する。
2.従来のクランクシャフトは、多量の回転慣性を保存し、機械荷重にトルクを送達できるかなりの質量の「フライホイールディスク」と置換されている。
3.設計は、回転方向に接する、回転する「フライホイールディスク」の最遠位端付近に力を加えるとき、エンジンにトルクを送達するための新規の手法を供給する。分割燃焼チャンバ(以下の定義を参照されたい)は、フライホイールを一方向に回転させる方向にフライホイールディスクの周囲に接する燃焼力を伝達する重要な機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本システムは、従来のシステムから根本的に離れた手法を表し、より優れた効率、性能制御及び増加した燃費について以前のシステムを超える実質的な改善をもたらす。
【0010】
本システムとそれ以前のシステムとの間の一部の重要な構成の差は、本出願のシステムが、4つの主なサイクル又は「ストローク」の役割を2つの専用のサブシステムにわたる2つの分類に分離する構成を含むことである。一次サブシステムは、フライホイールディスク及び外部ハウジングブロックであり、膨張性高温気体からの力がクランクに伝達される実際の「燃焼サイクル」が起きる。残りの3つのサイクル「吸気」、「圧縮」及び「排気」サイクルは、第2のサブシステムにおいて一次動力装置の燃焼空間から外部で行われる。
【0011】
前述の機能的責任が実際の動力装置から除去されるように、2つのサブシステムに分配することにより、本発明は、米国特許第6,796,285号及び第7,500,462号に記載された先行技術で求められるような2回転毎ではなく、フライホイールディスクの1回転毎に燃焼サイクルを起こすことができる。この抜本的な転換の手法により、多数の追加の制約のない設計の選択肢が広がり、更なる柔軟性及び主要な性能要件の最適化を可能にすることができる。例えば、本発明では、圧縮比は、孔の寸法及びストロークの寸法と無関係に圧縮サブシステムによって設定される。
【0012】
こうして概説されたアセンブリの特徴が重要であるため、以下の記載は、よりよく理解され、当技術分野に対する本貢献が確実に認識され得るようにより詳細なものとなる。システムの追加の特徴が以下に記載され、続く特許請求の範囲の主題を形成する。
【0013】
本アセンブリの多くの目的は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかになり、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。同じ参照記号は、複数の図において対応する部分を示す。
【0014】
システムの少なくとも一実施形態を詳細に説明する前に、アセンブリは、その適用において、以下の記載又は例示された図面に説明された構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。アセンブリは、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施及び実行され得る。本明細書で利用する表現及び専門用語は、説明のためのものであり、限定とみなされるべきではないことも理解されたい。
【0015】
従って、本開示が基づく概念は、本アセンブリの様々な目的を実行するために他の構造、方法及びシステムの設計に対する基準として容易に利用され得ることが当業者に認識されるであろう。そのため、特許請求の範囲は、本アセンブリの趣旨及び範囲から逸脱しない限り、このような均等な構造を含むとみなすことが重要である。
【0016】
図面の簡単な説明
本出願の特性と考えられる新規の特徴は、添付の特許請求の範囲で説明される。しかし、本出願自体と同様に好ましい使用の態様並びに更なる目的及びその利点は、添付図面と併せて読むことで、以下の詳述を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1の従来の内燃機関内のピストンの動力、加速度及び速度を例示するグラフである。
【
図3】フライホイールディスク上の下半体及び上半体並びに固定ハウジングブロックのそれぞれを表す、分割燃焼チャンバシステムが示された、本出願のピストンレス燃焼フライホイールエンジンの斜視図である。
【
図4】外部ハウジングの内側に存在するフライホイールディスク並びに本出願の実施形態による、様々なポート、ガスインジェクタ及び点火システムとその関係を有する本出願のロータリエンジンの断面図である。
【
図5】一体で動作するフライホイールディスク動力装置及び高圧圧縮機によって表される、2つの主なサブシステムで構成される本発明を描く。
【
図6】
図6A~6Hは、燃焼空洞、燃料インジェクタ、吸気及び排気ポートに対するフライホイールディスクの位置付け示す、本出願のエンジンの様々な段階を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願は、様々な修正形態及び代替形状が可能であるが、それらの特定の実施形態は、図面に例によって示されており、本明細書に詳細に記載される。しかし、特定の実施形態の本明細書の記載は、本出願を開示された特定の形態に限定することを意図せず、対照的に、その意図は、本明細書に記載されるように、本出願の趣旨及び範囲内に入る全ての修正形態、均等物及び代替形態を網羅することを理解するべきである。
【0019】
好ましい実施形態の説明
好ましい実施形態の例示的実施形態は、以下に記載される。わかりやすくするために、実際の実装形態の全ての特徴が本明細書に記載されているわけではない。当然のことながら、あらゆるこのような実際の実施形態の開発において、多数の実装形態の特定の決定は、実装形態によって異なるシステムに関する及び事業に関する制約の順守など、開発者の特定の目標を達成しなければならないことが認識されるであろう。その上、このような開発努力は、複雑で時間が掛ることがあるが、それにも関わらず、本開示の利益を有する当業者が行う慣例であろうことが認識されるであろう。
【0020】
本明細書では、デバイスが添付図面に描かれているように、様々な構成要素間の空間的関係及び構成要素の様々な側面の空間的配向が参照され得る。しかし、本出願を完全に読んだ後に当業者に認識されるように、本明細書に記載されたデバイス、部材、装置、その他は、あらゆる所望の配向に位置付けられ得る。このように様々な構成要素間の空間的関係を記載するか、又はそのような構成要素の側面の空間的配向を記載するための用語を使用することは、本明細書に記載された実施形態があらゆる所望の方向に配向され得るため、構成要素間の相対関係又はそのような構成要素の側面の空間的配向のそれぞれを記載すると理解されるべきである。
【0021】
実施形態及び方法は、その構造及び動作の両方について、添付の記載と併せて考慮することにより、添付図面から理解されるであろう。アセンブリの一部の実施形態は、本明細書に表されていることがある。異なる実施形態の様々な構成要素、部品及び特徴は、一緒に組み合わされ得、及び/又は互いに置き換えられ得、それらの全てが本出願の範囲に入るが、全ての変形形態及び特定の実施形態が図面に示されているわけではないことが理解されるべきである。様々な実施形態間で混合して一致する特徴、要素及び/又は機能は、一実施形態の特徴、要素及び/又は機能が、別段の指示がない限り、必要に応じて別の実施形態に組み込まれ得ることが本開示から当業者に認識されるであろうように、本明細書で明確に企図されていることも理解されるべきである。
【0022】
ここで、図を参照すると、同じ参照記号は、複数の図全体を通して対応する又は類似の要素の形及び機能を同定する。以下の図は、本出願の実施形態及びそれに関連した特徴を記載する。ここで、図を参照して、本出願の実施形態が本明細書に記載される。冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、本明細書で使用する場合、内容が明確にそうでないと指定しない限り、複数の参照を含むことに留意されるべきである。
【0023】
新しい方式は、古典的な内燃機関に関する熱力学及び機械的原理とほぼ同じものを採用するが、燃焼エネルギーを回転クランクシャフトに伝達される方法が大きく異なる。本発明は、固定円筒外部ハウジングブロック及びその軸方向シャフトを中心に自由に回転することができる、ハウジングブロックの空洞の内側で同軸に載置するかなりの質量の回転円筒形状のフライホイールディスクから構成される。
【0024】
固定円筒ハウジングブロックは、典型的に内燃機関に見出される多くの基本構成要素及び要素を含む、極めて重要な要素を表す。但し、前述の包含は、従来の線形配置と対照的に、弓形を画定するハウジングの外周から同軸に配置されることを除く。これらの構成要素及び要素は、あらゆる数のガソリン直噴インジェクタ(GDI)、点火プラグ、燃焼チャンバ、吸気ポート、排気ポート及び弁機構アセンブリ自体がハウジングの内壁を通して存在し、更に以下に記載されるフライホイールディスク上の燃焼空洞に接近しやすい弁機構アセンブリを含む、エンジンの基本的循環機能を提供する。
【0025】
ここで、図面の
図3を参照する。フライホイールディスク100は、フライホイールのいずれか片側又は両側上の車軸から構成され、ハウジング構造の内側に確実に固定されたシャフトマウントの手段を通して、フライホイールディスクの一端又は両端によって支持される。これらのシャフトマウントは、ハウジングの蓋の内側又はハウジング内部のいずれかの箇所に直接固定することができる。
【0026】
フライホイールディスク100は、従来のクランクシャフトの必要性を除去し、この特定の実施形態では、フライホイールディスク上で互いから角度が180度ずれた2つの燃焼空洞は、あらゆるピストンの必要性に取って代わる。本実施形態では、フライホイールディスク100上の2つの空洞101は、あらゆる非対称力の均衡をとるために同時に燃焼するように設計されるが、必ずしも必要ではないであろう。外部ブロックハウジング上に配置された上部燃焼チャンバ102と組み合わせた、フライホイールディスク100上のこれらの燃焼空洞101は、「分割燃焼」セットと呼ばれる。分割チャンバ内の容積空間は、ピストンの上部と、従来の燃焼機関内の上死点(TDC)における円筒頭部内の燃焼ドーム容積との間に通常見出される同等の燃焼空間に取って代わる。
図3に下部移動チャンバ101として描かれた燃焼空間は、フライホイールディスク100上に固定され、その外縁に留まる。
【0027】
ここで、図面の
図4も参照する。この構成は、米国特許第6,796,285号及び第7,500,462号に記載された先行技術における特許請求の範囲に対して著しく異なる方式を表す。前述の特許文献におけるフライホイールディスクチャンバ101は、フライホイールディスクの外縁部と半径方向内方に少し離れた距離との間を重心に向かって前後に連続して急速に往復する内部ゲート上に載置する。本発明のフライホイールディスクは、移動する構成要素が必要なく、より信頼できる解決策になる。ハウジングの燃焼空洞101及び上部固定チャンバ102内の膨張性高温気体は、回転の中心に対して半径方向に離れたフライホイールディスク100の円周上で燃焼力を変換する。これは、フライホイールディスク200及び固定ハウジングに取り付けられたロッカーピボット燃焼ゲート208の燃焼面の両方の上部及び下部チャンバ203、204の壁が、
図4に描かれたように互いに押して離れるときに最大トルクを生成する。その格納可能なゲート構成要素と組み合わせたロッカーピボット燃焼ゲート208は、適所に落下して、着火直前の適切なときに燃焼チャンバの先端縁部とゲート面との間により小さい容積を生成するように設計される。逆に、格納可能なゲート構成要素は、上方に格納して、燃焼行程が完了したときにフライホイールディスクを連続して回転させることができる。
図4に描かれたロッカーピボット燃焼ゲート208アセンブリは、ゲートの往復運動を制御するための1つのこのような好ましい実施形態であるが、カム及びプッシュロッド又は電気アクチュエータなどの任意の機械的又は電気機械的なものである。フライホイールディスク102の直径及びその質量は、従来のエンジンクランクの直径及びその質量より著しく大きく、より大量の運動エネルギーを回転慣性の形式で保存することができる。
【0028】
ここで、図面の
図5も参照すると、概略図は、高圧空気をフライホイールディスク及びハウジングブロックサブシステムに供給することを担う二次サブシステムを示す。このサブシステムは、以下の目的のためにフライホイールディスクハウジングアセンブリに高圧縮空気を供給するように機能するため、本発明における重要な要素である。
a)フライホイールディスク200における分割燃焼チャンバに予加圧された空気を提供する。
b)燃焼チャンバ205、206から排気された使用済燃焼燃料を洗い流すために、高速の清浄な空気を提供する。この動作は、「チャンバリンス」と呼ばれる。
【0029】
高圧空気システムの中心は、回転スクリュー圧縮機300である。回転スクリュー圧縮機300は、2つの螺旋ロータによって生成された正変位を用いて、濾過吸気を通して周囲空気を取り入れる。スクリューロータは、次いで、ロータスクリューが回転すると、吸気を圧縮する。動作中、ロータは、回転し、螺旋歯は、一緒に噛み合って、ロータとケーシング壁との間にチャンバを形成する。螺旋の幾何形状は、空気をより大きい容積からより小さい容積にさせ、圧縮空気を排出側から出して高圧リザーバタンク301内に送る。電子制御ユニット(ECU)は、回転スクリュー圧縮機300がリザーバタンク301内の圧力を一定に維持するように管理する。スクリュー圧縮機300を駆動するために必要なエネルギー源は、直接的にフライホイールディスク200によって生成された機械トルク及び/又は間接的にあらゆる標準自動車システムに見出されるものと酷似したシステム電気系統によって支持された電動機のいずれかに由来し得る。
【0030】
ここで、
図5も参照すると、高圧マニホールド302は、高圧縮空気を、リザーバタンク301から、フライホイールディスク200動力装置アセンブリの外部ハウジングブロック207上に配置された圧縮吸気ポート201及びチャンバフラッシュ吸気ポート206まで送るために使用される。機械式カム又は電子制御ユニット(ECU)のいずれかを使用して、圧縮空気をそれぞれのポートにそれらの適正なタイミングで投じるように、弁アセンブリを制御することができる。高圧マニホールドシステム301は、あらゆる所与のシステムに存在するあらゆる数の吸気ポート201及びチャンバフラッシュ吸気ポート206を促進するように設計することができる。本発明の1つの可能な実施形態は、燃焼直後に、外部ハウジングブロック207上に配置された上部固定燃焼チャンバ102のチャンバを洗い流すために、高圧マニホールドシステム302を使用することを含むことができる。
【0031】
ここで、図面の
図6A~6Hも参照する。本発明に関連した工程を記載する全サイクルが
図6に描かれている。
図6Aに描かれたように、フライホイールディスク200は、この章で後に画定されるように、上死点(TDC)に接近する。フライホイールディスク200の下部チャンバ204の先端縁部が燃焼ゲート208の正確な場所にある特定の点において、バネ荷重ゲートは、チャンバ204内の適所に先端縁部を押し下げて、
図6Bに描かれたように、ゲートの燃焼面とチャンバ204の先端縁部との間に小さい容積をまず生成する。
【0032】
これは、下部チャンバ204が圧縮吸気弁201、ガス直噴インジェクタ(GDI)202及び点火プラグ203と位置合わせされるとき、全工程が開始される場所である。ECUは、下部燃焼チャンバ204内に燃料を噴霧すると共に、空気インジェクタ201の弁を開く。
【0033】
図6Cを参照すると、燃料と空気の混合物を下部チャンバ204内に注入した後、ECUは、点火プラグ203を着火することにより、空気と燃料との混合物が着火する。その結果、
図6Dに描かれたように燃焼することにより、膨張性高温ガスが膨張し、下部チャンバ204の先端縁部が押されて、外部ハウジングに対して静止している燃焼ゲートの表面に対して反対側の端部から遠ざけられる。これにより、フライホイールディスク200が
図6の例示的概略図において時計回りに回転する。
【0034】
エンジンは、
図6Eに描かれたような燃焼ゲート208の場合、後続部が裏側に接近すると動力ストロークの端部に達する。燃焼アームアセンブリ208の湾曲したレバーアームは、ゲートを徐々に上昇させてハウジング内に格納し、チャンバの後続縁部が到着する前にフライホイールから遠ざけて損傷を防ぐ。燃焼ゲート208が格納されると、もはやいかなる対向する面を押しやる燃焼力もなくなり、この時点で、フライホイールディスクは、
図6Fに例示されたように、基本的にその勢いから惰走する。最後に、フライホイールディスクがTDCに接近する前に、圧縮排気は、
図6Gに描かれたように、ハウジング内の排気開口209から逃れることができる。
【0035】
代わりに、
図6Gに前述した排気方法に対して、下部フライホイールディスク空洞が圧縮空気チャンバフラッシュ吸気ポート206と出力ポート205(
図4を参照されたい)との両方と重なるときの例である。この工程は、チャンバリンスサイクルと呼ばれ、
図5に描かれている。このサイクル中、吸気ポート206における弁が開き、出力ポート205で陰圧条件を生成することにより、高速の空気が押されてチャネルを通り、下部空洞204からの排気ガスをすすぐ。代わりに、上部チャンバ空洞203も同様の手法で洗い流すことができる。
【0036】
本発明は、低荷重条件中に燃料を節約する優れた利点を可能にする。例えば、車両において、電子制御ユニット(ECU)は、車両が坂道を下っているとき、燃料及び火花を燃焼チャンバに送達することを簡単に停止し得る。ECUは、荷重に基づいて必要なときにのみ燃料及び火花を加えるようにプログラムすることができる。本出願は、この概念を説明するために、用語「コーストモード」及び「慣性スロットリング」を使用する。
【0037】
最終的なチャンバをすすぐ段階に続いて、生成された運動量によってフライホイールディスク200が再度吸気位置に戻され、全工程が繰り返される。
【0038】
本出願のシステムは、少なくとも以下を含む、先行技術を超える多くの利点を有する。
1.フライホイールディスクの寸法、質量及び半径は、所望の量の所望の回転慣性を制御するためにその柔軟な構成を可能にする。
2.分割燃焼チャンバは、ロッカーピボット燃焼ゲートアセンブリと併せて、燃焼反応をフライホイールディスクの外周上で合力に変換する機構で回転エネルギーをクランクに効率的に変換し、振動からのエネルギー損失を最小にする。
3.フライホイールディスク自体を除いて、回転するフライホイールは、動く構成要素を含有せず、信頼性、長寿及び内部でこすれる部品間の摩擦を低減する燃料効率に関してより優れている可能性がある。
4.従来の内燃機関によって画定された4つのサイクルのうちの3つは、燃焼空間から除去され、従来のエンジン設計の手法に現在存在する多くのパラメトリック依存性、制約及び性能トレードオフを除去することにより、極めて柔軟な設計が可能になる。
5.クランクの2回転毎の代わりに、クランクの1回転毎に燃焼することにより、より頻繁に動力を送達する機能。
6.フライホイール部100を選択的に自由に回転させるために、「コーストモード」を実施するか、又は換言すると、点火及び圧縮の性能を規制するより単純でより信頼できる方法を提供する。
【0039】
上に開示された具体的な実施形態は、例示に過ぎないため、本出願は、異なるが、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな均等な手法で修正及び実施され得る。従って、上に開示された具体的な実施形態は、変更又は修正され得、そのような全ての変形形態は、本出願の範囲及び趣旨内であると考えられることが明らかである。それに応じて、本明細書で求められる保護は、本明細書に記載される通りである。大きい利点がある出願が記載及び例示されていることが明らかである。本出願は、限定された数の形態で示されているが、これらの形態のみに限定されるのではなく、その趣旨から逸脱することなく、様々な変更形態及び修正形態が可能である。
【国際調査報告】