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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】ウイルス感染の処置および予防
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/742 20150101AFI20230908BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230908BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 39/155 20060101ALI20230908BHJP
   A61K 39/125 20060101ALI20230908BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230908BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230908BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20230908BHJP
【FI】
A61K35/742
A61K39/39
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P37/02
A61P11/00
A61K39/155
A61K39/125
A23L33/135
C12N15/11 Z ZNA
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514456
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 GB2021052268
(87)【国際公開番号】W WO2022049381
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2013874.9
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520311318
【氏名又は名称】スポレゲン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カッティング,サイモン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE05
4B018MD85
4B018ME14
4B018MF02
4B065AA19X
4B065BD01
4B065BD13
4B065CA03
4B065CA44
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA52
4C085BA57
4C085BA71
4C085CC07
4C085EE06
4C085FF19
4C085GG08
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC64
4C087BC68
4C087CA09
4C087CA10
4C087CA47
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZB07
4C087ZB09
4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、抗ウイルス製剤として作用する、ウイルス感染、特に、呼吸器系ウイルス感染の処置、予防または寛解における使用のための製剤における細菌および細菌関連組成物に関する。本発明は、そのような製剤を含む医薬組成物、およびウイルス感染に対する免疫予防における免疫刺激物質または自然免疫刺激物質としてのそれらの使用を含む。本発明は、アジュバントとしての、およびウイルス感染に対するワクチン接種における(すなわち、適応免疫および/または獲得免疫における)製剤の使用も包含する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染の処置、予防または寛解における使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項2】
ウイルス感染に対する免疫予防における自然免疫刺激物質としての使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項3】
非経口的に投与された抗原に対するアジュバント効果を発揮するように適合され、任意選択で、前記抗原が、コロナウイルスワクチンである、請求項1または2に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項4】
ウイルス感染の部位へのCD4、CD8および/またはγδ T細胞の動員を増加させる、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項5】
ウイルス感染後の肺へのナチュラルキラー(NK)細胞動員を低減する、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項6】
前記細菌が、Firmicutes門に属する芽胞形成性細菌であり、好ましくは、Bacillus種またはClostridium種である、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項7】
前記ウイルスが、呼吸器系ウイルスである、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項8】
前記ウイルスが、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、コロナウイルスおよびライノウイルスからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項9】
前記ウイルスが、コロナウイルス、好ましくは、SARS-CoV-2である、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項10】
前記使用が、前記生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートの対象への粘膜適用を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項11】
経鼻的に、舌下に、経口的にまたは非経口的に適用される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項12】
経鼻的に適用される、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項13】
前記細菌が、スクアレンシクラーゼ遺伝子(sqhC)、またはそのホモログ、オルソログもしくは等価物を含み、および/あるいは前記細菌が、1種または複数のスポルレンを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項14】
前記細菌が、配列番号28に実質的に示される核酸を含む核酸配列、またはその断片もしくはバリアントを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項15】
スポルレンファミリーメンバーを産生するか、またはそれを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項16】
前記スポルレンファミリーメンバーが、スポルレンA、Bおよび/またはCである、請求項15に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項17】
1種または複数の非リボソームペプチドを産生するか、またはそれを含み、任意選択で、前記非リボソームペプチドが、フェンギシンファミリーのメンバー、サーファクチンファミリーのメンバーおよびイツリンファミリーのメンバーからなる群から選択されるリポペプチドである、先行する請求項のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項18】
糖脂質をさらに産生するか、またはそれをさらに含み、好ましくは、前記糖脂質が、ラムノ脂質もしくはその活性誘導体および/またはソホロ脂質もしくはその活性誘導体である、請求項17に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項19】
マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択されるリポペプチドをさらに産生するか、またはそれをさらに含む、請求項17または18に記載の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項20】
前記細菌が、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の1つまたは複数を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項21】
使用されるものが、生もしくは死細菌芽胞である、先行する請求項のいずれか一項に記載の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項22】
前記細菌芽胞が、死んでおり、前記死細菌芽胞が、経鼻的に適用される、請求項21に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞。
【請求項23】
生もしくは死栄養細菌が使用され、任意選択で、前記細菌が、経鼻的に適用される、請求項1~20のいずれか一項に記載の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項24】
前記生細胞によって産生される細胞外材料が使用され、任意選択で、前記材料が、経鼻的に適用される、請求項1~20のいずれか一項に記載の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項25】
破壊細菌細胞ホモジネートが使用され、任意選択で、前記ホモジネートが、経鼻的に適用される、請求項1~20のいずれか一項に記載の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート。
【請求項26】
ウイルス感染の処置、予防または寛解における使用のための、少なくとも1種のスポルレンファミリーメンバー、ならびに/またはサーファクチンファミリーのメンバー、イツリンファミリーのメンバーおよびフェンギシンファミリーのメンバー、もしくはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択されるリポペプチドを含む抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物。
【請求項27】
糖脂質をさらに含み、好ましくは、前記糖脂質が、ラムノ脂質もしくはその活性誘導体および/またはソホロ脂質もしくはその活性誘導体である、請求項26に記載の使用のための抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物。
【請求項28】
マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択されるリポペプチドをさらに含む、請求項26または請求項27に記載の使用のための抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物。
【請求項29】
前記ウイルスが、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、コロナウイルスおよびライノウイルスからなる群から選択される、請求項26~28のいずれか一項に記載の使用のための抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物。
【請求項30】
食糧または健康補助食品としての使用のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート、請求項21に記載の生もしくは死細菌芽胞、請求項22に記載の死細菌芽胞、請求項23に記載の生もしくは死栄養細菌、請求項24に記載の生細胞によって産生される細胞外材料、請求項25に記載の破壊細菌細胞ホモジネート、あるいは請求項26~29のいずれか一項に記載の使用のための抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物。
【請求項31】
請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート、請求項21に記載の生もしくは死細菌芽胞、請求項22に記載の死細菌芽胞、請求項23に記載の生もしくは死栄養細菌、請求項24に記載の生細胞によって産生される細胞外材料、請求項25に記載の破壊細菌細胞ホモジネート、あるいは請求項26~29のいずれか一項に記載の使用のための抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物、ならびに任意選択で、1種または複数の食品グレードの成分を含む、健康補助食品または食糧。
【請求項32】
請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート、請求項21に記載の生もしくは死細菌芽胞、請求項22に記載の死細菌芽胞、請求項23に記載の生もしくは死栄養細菌、請求項24に記載の生細胞によって産生される細胞外材料、請求項25に記載の破壊細菌細胞ホモジネート、あるいは請求項26~29のいずれか一項に記載の使用のための抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物、ならびに薬学的に許容される媒体または担体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染の処置および予防に関する。特に、本発明は、ウイルス感染、特に、呼吸器系ウイルス感染の処置、予防または寛解における使用のための製剤(すなわち、抗ウイルス製剤)における細菌および細菌関連組成物に関する。本発明は、そのような製剤を含む医薬組成物、およびウイルス感染に対する免疫予防における免疫刺激物質または自然免疫刺激物質としてのそれらの使用に及ぶ。本発明は、アジュバントとしての、およびウイルス感染に対するワクチン接種における(すなわち、適応免疫および/または獲得免疫における)製剤の使用にも及ぶ。製剤は、理想的には、粘膜的に(例えば、経鼻的に)投与可能である。
【0002】
自然免疫は、人間の病原体に対する防御の最前線である。免疫のこの形態は、曝露後迅速に獲得され、通常<7日で起こる。自然免疫は、非特異的であり、各種のウイルスおよび細菌病原体に対して作用し、複数の因子、例えば、マクロファージおよび樹状細胞(DC)の活性化から生じる炎症を含み得る。これは、病原体と細胞表面上のパターン認識受容体(例えば、トール様受容体、TLR)との相互作用によって起こり、白血球および好中球を感染部位に動員するサイトカインの産生をもたらす。自然免疫応答はまた、我々の適応免疫、すなわち、我々が再び病原体に遭遇したら、記憶を保持する抗原特異的応答を引き起こすのを助ける。
【0003】
多くのウイルスは、感染に対する前触れとして自然免疫応答を回避する複雑な機構を発達させている。関連する例としては、SARSの原因物質であるSARS-CoV1[1]、COVID-19の原因物質であるSARS-Cov2、呼吸器多核体ウイルス(RSV)[13]、ライノウイルス[14]およびインフルエンザ[2]が挙げられる。したがって、自然免疫をブーストすることは、ウイルス病原体に対する抵抗性を増強するための1つの方法である可能性がある。実際に、インフルエンザの場合において、TLRのアゴニストは、ウイルスとその宿主受容体との正常な相互作用を妨げることによって、疾患に対する保護を提供することが示されている[3]。
【0004】
アゴニストは、宿主細胞(例えば、マクロファージおよびDC)の表面上の受容体(典型的には、TLR)と正常に相互作用する細菌またはウイルス上に存在する分子である。これらの分子は、非病原体の表面上でも見出され得る。意外なことに、細菌芽胞も、それらの表面上に関連する分子を持つ。Bacillus種の芽胞は、典型的には、土壌中で見出され、我々は、定期的にそれらに曝されている。Bacillus芽胞はまた、プロバイオティクス、すなわち、宿主に健康上の利益を付与する有益細菌として、世界中で使用されている[4]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウイルス感染、特に、呼吸器系ウイルスの感染を処置または予防するための改善された製剤に対する当技術分野における必要性が存在する。
【0006】
本発明者は、細菌芽胞もしくは栄養細胞、または細菌芽胞/細胞に由来する材料の適用(例えば、経鼻的に、または舌下に、または注射によって、しかし特に鼻腔内に)が、その感染力が自然免疫と相関する、一般にウイルス、特に、SARS-Cov-2などの呼吸器系ウイルスの感染からの保護を付与し得、およびそれに対してワクチン接種し得ることと仮説を立てた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の態様において、ウイルス感染の処置、予防または寛解における使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートを提供する。
【0008】
本発明の第2の態様において、ウイルス感染を処置する方法であって、治療有効量の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートを、そのような処置を必要とする患者に投与することまたは投与したことを含む、方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様において、ウイルス感染に対する免疫予防における自然免疫刺激物質としての使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートを提供する。
【0010】
また別の態様において、ウイルス感染に対する免疫予防における自然免疫を刺激する方法であって、治療有効量の生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートを、そのような処置を必要とする患者に投与することまたは投与したことを含む、方法を提供する。
【0011】
有利には、実施例1に示すように、本発明者は、驚くべきことに、Bacillus芽胞が、マウスにおいて、呼吸器系ウイルス感染に対する保護に十分な自然免疫を誘発することを示した。したがって、好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、またはそれらからの細胞外材料/ホモジネートは、自然免疫応答を誘発することによりウイルス感染に対する好適な予防薬として使用することができる。自然免疫応答は、非特異的である傾向があり、そのため、ウイルスの変異形態(例えば、ウイルス株バリアント)と戦うために効果的である。したがって、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、免疫刺激物質、自然免疫刺激物質または予防的免疫モジュレーターであると見なされ得る。
【0012】
さらにまた、細菌芽胞は、バイオリアクター中での成長を使用してそれらを簡単に生成することができるので、特に有利である。さらにまた、芽胞は、液体中で保管することができ、または最高で<60℃の温度から乾燥することができ、(パンデミック状況において特に価値がある)備蓄を可能にするほぼ無限の有効期間を有することができる。
【0013】
一実施形態において、生細菌芽胞を、ウイルス感染と戦うために使用することが好ましい。実施例5に示すように、Bacillus subtilisの精製生芽胞によりマウスをブーストすることで、肺および唾液における抗原特異的SIgAの力価、ならびに血清におけるIgGを増加させることによって、免疫が増大する。SIgAなどの粘膜応答を増大または刺激する能力は、既存のコロナウイルスワクチンのために重要であり、芽胞が、驚くべきことに、非経口経路によって投与された抗原に対する固有の新規アジュバント効果を発揮することを実証する。そのため、このデータは、芽胞が、それらの性能を増強し、免疫応答を強化することによって、既存のコロナウイルスワクチンを改善するための有用性を有することを実証する。
【0014】
したがって、好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、非経口的に投与された抗原に対するアジュバント効果を発揮するように適合される。非経口的に投与された抗原は、ウイルス感染のためのワクチンであり得るか、またはそれを含み得る。例えば、抗原は、非経口的に投与され得るDNAまたはRNAワクチンなどのコロナウイルスワクチンであってもよい。
【0015】
別の実施形態において、死細菌芽胞を使用することが好ましい。好ましくは、生または死芽胞は、トール様受容体、好ましくは、TLR2および/またはTLR4と相互作用することによって、免疫を上方調節する。本発明者は、これが、芽胞が自然免疫応答をどのようにして刺激するかについての可能性のある機構であると考えている。
【0016】
実施例7において説明するように、本発明者は、オートクレーブ処理細菌芽胞が、ウイルス感染の間に肺胞腔へのCD4およびγδ T細胞動員を増強したことを観察した。本発明者は、CD4およびγδ T細胞が、ウイルス感染の間の組織損傷を寛解させる調節性の役割を有し得ると考えている。したがって、好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、ウイルス感染の部位へのT細胞の動員を増加させる。さらにより好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、ウイルス感染の部位へのCD4、CD8および/またはγδ T細胞の動員を増加させる。
【0017】
加えて、実施例7に記載するように、本発明者は、驚くべきことに、芽胞の事前処置が、H1N1感染5日後に、肺胞腔へのナチュラルキラー(NK)細胞動員を低減したことを見出した。本発明者は、過増殖NK細胞の浸潤が、ウイルス性肺炎における肺組織損傷の一因となり得ると考えている。したがって、好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、ウイルス感染後、肺へのナチュラルキラー(NK)細胞動員を低減する。
【0018】
また別の実施形態において、生細菌細胞を、ウイルス感染と戦うために使用する。またさらなる実施形態において、死細菌細胞を、ウイルス感染と戦うために使用する。
【0019】
細菌芽胞または細胞を、例えば、オートクレーブ処理、ホルムアルデヒド不活化、照射(例えば、ガンマ線)、加熱(例えば、低温殺菌)、または本発明者の特許出願であるWO2019/086887に記載のチミンシンテターゼ不活化により、死滅させ得るか、または生き残れないようにし得る、いくつかの方法があることを当業者は認識するであろう。低温殺菌は、穏やかな加熱(芽胞ではなく栄養細胞のみを死滅させるために、通常は、約100℃未満)を使用する公知技法である。実施例6は、Bacillus subtilisの熱失活芽胞が、B.subtilis芽胞により処置されたマウスの80%の生存によって実証されるように、粘膜経路を介して投与された場合に、コロナウイルス感染に対する有効な保護を付与することができることを示す。したがって、これは、芽胞が、コロナウイルス感染後に、驚くべきことに、SARS-CoV-2に対して保護するおよび生存率を改善する能力を有することを実証する。
【0020】
死細胞は、インタクトであってもよい。あるいは、死細胞は、壊れたまたは破壊された細胞、すなわち、例えば、超音波処理またはリゾチームなどの酵素などによって機械的にまたは物理的に破壊された細胞を含み得る。この実施形態において、破壊された細胞の外皮であるエンベロープ関連外皮およびエキソポリサッカライド(EPS)などが、抗ウイルス活性を示すであろう。したがって、さらなる実施形態において、破壊細胞ホモジネートを使用することが好ましい。
【0021】
しかしながら、最も好ましい実施形態において、生栄養細菌細胞、または生細胞によって産生される細胞外材料を、感染と戦うために使用する。別の好ましい実施形態において、生栄養細胞によって産生される細胞外材料または破壊細胞ホモジネートを含む無細胞試料(例えば、上清)を、ウイルス感染と戦うために使用してもよい。
【0022】
好ましくは、細菌(生もしくは死芽胞、または生もしくは死栄養細菌細胞、または細胞外材料を産生する細菌、または細胞ホモジネート)は、Firmicutes門に属する芽胞形成性細菌である。
【0023】
好ましくは、細菌(生もしくは死芽胞、または生もしくは死栄養細菌細胞、または細胞外材料を産生する細菌、または細胞ホモジネート)は、Bacillus種またはClostridium種である。より好ましくは、細菌は、Bacillus種である。
【0024】
好ましくは、Bacillus種は、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus velezensis、Bacillus clausii、Bacillus coagulans、Bacillus pumilus、Bacillus firmus、Bacillus flexus、Bacillus licheniformis、Bacillus marisflavi、Bacillus polyfermenticus、Bacillus megaterium、Bacillus flexus、またはBacillus indicusである。
【0025】
好ましくは、細菌は、B.subtilisである。好ましくは、細菌は、B.amyloliquefaciensまたはB.velezensisである。本発明者は、B.velezensisが、B.amyloliquefaciensの非常に近縁種であり、それ自体が新しい種であることが最近示されたと考えている(Wang,L.T.、Lee,F.L.、Tai,C.J.およびKuo,H.P. Bacillus velezensis is a later heterotypic synonym of Bacillus amyloliquefaciens. Int J Syst Evol Microbiol 58、671~675頁、doi:10.1099/ijs.0.65191-0(2008))。
【0026】
別の実施形態において、DSMZ、Inhoffenstrabe 7B、38124 Braunschweig、Germanyに寄託された細菌は、表1に定義され得る。
【0027】
【表1】
【0028】
したがって、好ましくは、細菌は、表1に表される、SG154、SG43、SG183、SG188、SG336およびSG2404からなる群から選択され得る。
【0029】
好ましくは、使用されるB.amyloliquefaciensまたはB.velezensis株は、SG57、SG137、SG185、SG277およびSG297からなる群から選択される。最も好ましくは、B.amyloliquefaciens株は、SG277またはSG297である。B.subtilis株は、SG140である。
【0030】
別の実施形態において、細菌は、表2に定義され得る。
【0031】
【表2】
【0032】
一実施形態において、B.amyloliquefaciensの1つもしくは複数の株、または細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細胞ホモジネートが、使用される。言い換えれば、SG57、SG137、SG185、SG277およびSG297からなる群から選択される任意のB.amyloliquefaciens株が、使用され得る。あるいは、別の実施形態において、SG57、SG137、SG185、SG277およびSG297からなる群から選択される2つ以上のB.amyloliquefaciens株が、使用され得る。例えば、SG277およびSG297が、同時に使用され得るか、またはSG137およびSG57が、同時に使用され得るなどである。
【0033】
また別の実施形態において、B.amyloliquefaciensの1つまたは複数の株は、B.subtilis、または対応する細胞によって産生される細胞外材料、またはそれらからの破壊細胞ホモジネートと組み合わせて使用されてもよい。例えば、B.amyloliquefaciens株SG277は、B.subtilis株SG140とともに使用されてもよい。
【0034】
本明細書に記載の細菌株のいずれかを、生もしくは死芽胞、または生もしくは死栄養細菌細胞、または細胞外材料を産生する細菌、または細胞ホモジネートとして使用することができる。
【0035】
最も好ましい株は、以下の通り、ブダペスト条約の下で、2018年2月15日および2019年5月10日に、NCIMB、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen、AB21 9YAに寄託された株である。
指定番号:NCIMB 42971-本明細書において、B.amyloliquefaciens SG277と称する。
指定番号:NCIMB 42972-本明細書において、B.amyloliquefaciens SG297と称する。
指定番号:NCIMB 42973-本明細書において、B.amyloliquefaciens SG185と称する。
指定番号:NCIMB 42974-本明細書において、B.subtilis SG140と称する。
指定番号:NCIMB 43392-本明細書において、B.amyloliquefaciens SG57と称する。
指定番号:NCIMB 43393-本明細書において、B.amyloliquefaciens SG137と称する。
【0036】
細菌分類学における最近の変更としては、B.amyloliquefaciens株のB.velezensisとしての再分類が挙げられる(Wangら、2008;Fan,B. Blom,J.、Klenk,H.P.およびBorriss,R.Bacillus amyloliquefaciens,Bacillus velezensis,and Bacillus siamensis Form an “Operational Group B.amyloliquefaciens” within the B.subtilis Species Complex.Front Microbiol 8、22頁 doi:10.3389/fmicb.2017.00022(2017))。本出願は、SG57、SG137、SG185、SG277およびSG297と指定される株を開示し、これらの株は、分類学における最近の変更を考慮することなく、B.amyloliquefaciensと指定した。したがって、本明細書および特許請求の範囲において使用されるB.amyloliquefaciensの種の指定は、分類学の専門家がB.velezensis株として指定するであろう株を含むことが理解されるべきである。
【0037】
また別の実施形態において、B.amyloliquefaciensの1つまたは複数の株は、B.subtilisの1つまたは複数の株、または対応する細胞によって産生される細胞外材料、またはそれらからの破壊細胞ホモジネートと組み合わせて使用されてもよい。2つの株の例について、B.amyloliquefaciens株NCIMB42971は、B.amyloliquefaciens NCIMB42972、B.amyloliquefaciens NCIMB42973、B.subtilis NCIMB42974、B.amyloliquefaciens NCIMB43392またはB.amyloliquefaciens NCIMB43393とともに使用されてもよく;B.amyloliquefaciens株NCIMB42972は、B.amyloliquefaciens NCIMB42973、B.subtilis NCIMB42974、B.amyloliquefaciens NCIMB43392またはB.amyloliquefaciens NCIMB43393とともに使用されてもよく;B.amyloliquefaciens株NCIMB42973は、B.subtilis NCIMB42974、B.amyloliquefaciens NCIMB43392またはB.amyloliquefaciens NCIMB43393とともに使用されてもよく;B.subtilis NCIMB42974は、B.amyloliquefaciens NCIMB43392またはB.amyloliquefaciens NCIMB43393とともに使用されてもよく;またはB.amyloliquefaciens NCIMB43392は、B.amyloliquefaciens NCIMB43393とともに使用されてもよい。
【0038】
細菌は、B.amyloliquefaciens株であってもよく、B.amyloliquefaciens株は、NCIMB 42971、NCIMB 42972、NCIMB 42973、NCIMB 43392またはNCIMB 43393として寄託された株から選択される。細菌は、B.subtilis株を含んでいてもよく、B.subtilis株は、NCIMB 42974として寄託された株である。すべての細菌は、NCIMB 42971、NCIMB 42972、NCIMB 42973、NCIMB 43392またはNCIMB 43393として寄託されたB.amyloliquefaciens株、およびNCIMB 42974として寄託されたB.subtilis株から選択されてもよい。
【0039】
好ましくは、ウイルスは、呼吸器系ウイルスである。好ましくは、ウイルスは、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、コロナウイルスおよびライノウイルスからなる群から選択される。
【0040】
好ましくは、呼吸器系ウイルスは、コロナウイルスである。より好ましくは、コロナウイルスは、MERS、SARS-CoV1およびSARS-CoV2から選択される。最も好ましくは、呼吸器系ウイルスは、SARS-CoV2である。SARS-CoV2が、COVID-19の原因物質であることが認識されるであろう。
【0041】
好ましくは、使用は、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートの対象への粘膜適用を含む。粘膜適用は、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートの、経鼻、直腸、眼、経口または舌下適用を含み得る。
【0042】
好ましくは、ウイルス感染の処置における使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、非経口的に適用される。そのため、本発明者は、好ましくは死んでいる注射される細菌芽胞を、有効なワクチンアジュバントとして使用し得ると考えている。
【0043】
好ましくは、ウイルス感染の処置における使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、経鼻的に適用される。経鼻適用は、スプレーまたは液滴による適用を含み得る。
【0044】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、舌下に適用され、当業者は、口腔において(より具体的には、舌の下で)分子の持続放出に関連することを理解するであろう。このアプローチは、胃腸経路、および耐性に対する潜在的な課題を回避する点で有利である。また、舌下経路は、舌下リンパ腺との相互作用を可能にする。舌下適用は、ウエハ(例えば、頬側ウエハ)または速溶性フィルムによる適用を含み得る。
【0045】
一実施形態において、生細菌芽胞を、コロナウイルス感染、好ましくは、SARS-CoV2感染を処置するために使用し、舌下に、好ましくは、ウエハ(例えば、頬側ウエハ)または速溶性フィルムによって適用することが好ましい。一実施形態において、死細菌芽胞を、コロナウイルス感染、好ましくは、SARS-CoV2感染を処置するために使用し、舌下に、好ましくは、ウエハ(例えば、頬側ウエハ)または速溶性フィルムによって適用することが好ましい。
【0046】
別の実施形態において、生細菌芽胞を、コロナウイルス感染、好ましくは、SARS-CoV2感染を処置するために使用し、経鼻的に、好ましくは、スプレーまたは液滴によって適用することが好ましい。一実施形態において、死細菌芽胞を、コロナウイルス感染、好ましくは、SARS-CoV2感染を処置するために使用し、経鼻的に、好ましくは、スプレーまたは液滴によって適用することが好ましい。
【0047】
例えば、一実施形態において、SARS-CoV-2感染の処置、予防または寛解における使用のための死B.subtilis芽胞を提供し、ここで、死B.subtilis芽胞は、経鼻的に適用される。
【0048】
一実施形態において、生細菌芽胞を、コロナウイルス感染、好ましくは、SARS-CoV2感染を処置するために使用し、非経口的に適用することが好ましい。一実施形態において、死細菌芽胞を、コロナウイルス感染、好ましくは、SARS-CoV2感染を処置するために使用し、非経口的に適用することが好ましい。
【0049】
実施例2に示すように、本発明者は、本発明者が、自然免疫系の誘導によるウイルス感染に対する芽胞形成性細菌の保護効果のために不可欠な際立った因子の1つを特定したと考えている。これらは、「スポルレン」と称されるヘプタプレニル脂質であり、これは、多分TLR2および/またはTLR4を活性化することによって、アジュバント活性を保有すると考えられる。スクアレンシクラーゼ遺伝子のsqhCは、細菌芽胞がスポルレンを産生するために利用するスクアレンシクラーゼ酵素(スポルレノールシンターゼ)をコードする。
【0050】
したがって、好ましくは、細菌は、スクアレンシクラーゼ遺伝子のNCBI遺伝子ID番号939443によって表され得るsqhC、またはそのホモログ、オルソログもしくは等価物を含み、および/または細菌は、1種または複数のスポルレンを含む。
【0051】
一実施形態において、sqhCのオープンリーディングフレームは、以下の通り、配列番号28として本明細書に提供される核酸によってコードされ得る。
【0052】
【化1】
【0053】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号28に本質的に示される核酸、またはその断片もしくはバリアントを含むか、またはそれからなる核酸配列を含む。
【0054】
ゲノム検索は、SqhC遺伝子が、BacillusおよびClostridiaに存在することを示した。したがって、他のBacillusおよびClostridiaも、SqhCホモログもしくはオルソログ、またはSqhC等価物を有し、したがって、他の芽胞形成性細菌が、本発明者の研究に基づいて、呼吸器系ウイルス感染に対する自然免疫保護も伝達すると予測されるであろう。
【0055】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スポルレンファミリーメンバーを産生するか、またはそれを含む。スポルレンファミリーメンバーは、以下の通り、式VIIに示される構造を有し得る。
【0056】
【化2】
【0057】
一実施形態において、スポルレンファミリーメンバーは、スポルレンA、BおよびCからなる群から選択される。
【0058】
一実施形態において、スポルレンファミリーメンバーは、スポルレンAまたはその活性誘導体を含む。一実施形態において、スポルレンファミリーメンバーは、スポルレンBまたはその活性誘導体を含む。一実施形態において、スポルレンファミリーメンバーは、スポルレンCまたはその活性誘導体を含む。
【0059】
スポルレンA、BおよびCは、Takigawa H、Sugiyama M、Shibuya Y.C(35)-terpenes from Bacillus subtilis KSM 6-10.J Nat Prod.2010;73(2):204~7頁;doi:10.1021/np900705qの図1に示されるように、酵素のスクアレンシクラーゼを介して、C35テルペンから誘導されると考えられる。
【0060】
したがって、一実施形態において、スポルレンAは、以下の通り、式VIIIに示される構造を有し得る。
【0061】
【化3】
【0062】
一実施形態において、スポルレンBは、以下の通り、式IXに示される構造を有し得る。
【0063】
【化4】
【0064】
一実施形態において、スポルレンCは、以下の通り、式Xに示される構造を有し得る。
【0065】
【化5】
【0066】
したがって、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、少なくとも1種のスポルレンファミリーメンバーを産生し得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スポルレンA、スポルレンBおよびスポルレンCからなる群から選択されるスポルレンファミリーメンバーを産生し得るか、またはそれを含み得る。
【0067】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スポルレンA、スポルレンBおよびスポルレンCを産生し得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スポルレンAおよびスポルレンBを産生し得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スポルレンAおよびスポルレンCを産生し得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スポルレンBおよびスポルレンCを産生し得るか、またはそれを含み得る。
【0068】
本発明者は、図8に示すように、抗細菌特性(WO2019/16252に記載される通り)を示し、Clostridium difficile感染を処置するために組成物において使用することができる、Bacillus種によって産生される因子を以前に特定した。本発明者は、ここに、これらの因子が、驚くべきことに、抗ウイルス活性も示し、したがって、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートを、ウイルスの直接阻害によって、COVID-19などのウイルス感染を処置、予防または寛解させるために使用し得る追加の手段を提供することができると考えている。この活性は、上記に記載の自然免疫系の刺激とは異なり、ウイルスエンベロープ/カプシドタンパク質を変性させるこれらの分子の能力から生じると考えられる。本発明者は、これらの分子が、芽胞(死または生存のいずれか)の表面に付着することを示した。したがって、本発明者は、ウイルスそれ自身を直接阻害することに加えて、自然免疫応答を誘発するこの二重効果が、非常に頑強なワクチン接種のまたは予防的な免疫応答を作り出すのを助けると考えている。
【0069】
加えて、これらの因子(例えば、リポペプチド)は、自然免疫応答にも関与し得るか、または関与し得ないアジュバント特性を示すことも示されている[15~18]。したがって、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、(i)抗ウイルス特性、および(ii)アジュバント特性を有し、これらは、自然免疫に影響を及ぼし得ることが認識されるべきである。
【0070】
したがって、一実施形態において、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、1種または複数の非リボソームペプチドを産生するか、またはそれを含む。
【0071】
本明細書において使用される場合、「非リボソームペプチド(non-ribosomal peptide)」(非リボソームペプチド(non-ribosomal peptides)またはNRPとしても公知)という用語は、非リボソームペプチドシンテターゼによって合成される二次代謝産物のペプチドのクラスを意味する。好ましくは、本発明の1種または複数の非リボソームペプチドは、リポペプチドである。
【0072】
本発明の非リボソームペプチドとしては、限定されるものではないが、フェンギシンファミリーのメンバー、サーファクチンファミリーのメンバーおよびイツリンファミリーのメンバーであるリポペプチドが挙げられる。
【0073】
非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバー、サーファクチンファミリーのメンバーおよびイツリンファミリーのメンバーからなる群から選択される1種または複数のペプチドであり得る。好ましくは、非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバーおよびサーファクチンファミリーのメンバーからなる群から選択される1種または複数のペプチドであり得る。最も好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、非リボソームペプチド:フェンギシンファミリーのメンバーおよびサーファクチンファミリーのメンバーを産生し得るか、またはそれを含み得る。
【0074】
非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバー、サーファクチンファミリーのメンバー、イツリンファミリーのメンバーからなる群から選択される1種または複数のペプチドであり得る。好ましくは、非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバーおよびサーファクチンファミリーのメンバーであり得る。
【0075】
生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、2種以上の非リボソームペプチドを産生し得るか、またはそれを含み得る。2種以上の非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバー、サーファクチンファミリーのメンバーおよびイツリンファミリーのメンバーからなる群から選択され得る。2種以上の非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバーおよびサーファクチンファミリーのメンバーからなる群から選択され得る。生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、3種以上の非リボソームペプチドを産生し得るか、またはそれを含み得る。好ましくは、非リボソームペプチドは、フェンギシンファミリーのメンバーおよびサーファクチンファミリーのメンバーである。
【0076】
一実施形態において、フェンギシンファミリーのメンバーについての一般式を、下記の式Iに示すことができ、式中、R1~R3は、任意のアミノ酸であり、好ましくは、R1は、LまたはD Tyrであり、R2は、AlaまたはValであり、R3は、LまたはD Tyrである。
【0077】
【化6】
【0078】
フェンギシンファミリーのメンバーは、フェンギシンA[配列番号11]、フェンギシンB[配列番号12]、プリパスタチンA[配列番号13]およびプリパスタチンB[配列番号14]からなる群から選択され得る。
【0079】
【化7】
【0080】
好ましくは、フェンギシンファミリーのメンバーは、フェンギシンAまたはその活性誘導体を含む。フェンギシンAまたはその活性誘導体は、C15、C16、C17またはC18アイソフォームであってもよい。最も好ましくは、フェンギシンAは、C15フェンギシンAアイソフォームである。フェンギシンAまたはその活性誘導体は、アセチル化されていてもよい。
【0081】
一実施形態において、フェンギシンAは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有し得る。
L-Glu-D-Orn-D-Tyr-D-aThr-L-Glu-D-Ala-L-Pro-L-Gln-L-Tyr-L-Ile[配列番号11]
好ましくは、フェンギシンファミリーのメンバーは、フェンギシンBまたはその活性誘導体を含む。フェンギシンBまたはその活性誘導体は、C13、C14、C15またはC16アイソフォームであってもよい。最も好ましくは、フェンギシンBは、C15フェンギシンBアイソフォームである。フェンギシンBまたはその活性誘導体は、アセチル化されていてもよい。
【0082】
一実施形態において、フェンギシンBは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有し得る。
L-Glu-D-Orn-D-Tyr-D-aThr-L-Glu-D-Val-L-Pro-L-Gln-L-Tyr-L-Ile
[配列番号12]
ペプチドがサーファクチンファミリーのメンバーである一実施形態において、サーファクチンファミリーのメンバーについての一般式を、下記の式IIに示すことができ、式中、R1~R4は、任意のアミノ酸であり、好ましくは、R1は、グルタミンまたはグルタミン酸であり、R2は、ロイシンまたはバリンであり、R3は、バリン、ロイシンまたはアラニンであり、R4は、ロイシンまたはバリンである。
【0083】
【化8】
【0084】
サーファクチンファミリーのメンバーは、エスペリン[配列番号15]、リケナイシン[配列番号16]、プミラシジン[配列番号17]およびサーファクチン[配列番号18]からなる群から選択され得る。
【0085】
【化9】
【0086】
式中、XLは、GlnまたはGluであり、XLは、LeuまたはIleであり、XLおよびXLは、ValまたはILeであり、XPは、ValまたはIleであり、XSは、Val、LeuまたはILeであり、XSは、Ala、Val、LeuまたはILeであり、XSは、Val、LeuまたはIleである。
【0087】
好ましくは、サーファクチンファミリーのメンバーは、サーファクチンまたはその活性誘導体である。一実施形態において、サーファクチンは、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有し得る。
L-Glu-L-XS-D-Leu-L-XS-L-ASP-D-Leu-L-XS[配列番号18]
したがって、サーファクチンの活性誘導体は、C12、C13、C14、C15、C16またはC17アイソフォームのいずれかを含み得る。好ましくは、サーファクチンは、C16アイソフォームである。サーファクチンまたはその活性誘導体は、C12、C13、C14、C15、C16またはC17アイソフォームであってもよい。最も好ましくは、サーファクチンまたはその活性誘導体は、C15アイソフォームである。
【0088】
一実施形態において、サーファクチンは、式IIIに示される構造を有し得る。
【0089】
【化10】
【0090】
一実施形態において、イツリンファミリーのメンバーまたはその活性誘導体は、イツリンA、イツリンA、イツリンC、マイコスブチリン、バシロマイシンD、バシロマイシンF、バシロマイシンL、バシロマイシンLCおよびバシロペプチンからなる群から選択され得る。
【0091】
一実施形態において、イツリンファミリーのメンバーまたはその誘導体の一般式を、下記の一般式IVに示すことができ、式中、R1~R5は、任意のアミノ酸であり、好ましくは、R1は、AsnまたはAspであり、R2は、Pro、GlnまたはSerであり、R3は、Glu、ProまたはGlnであり、R4は、SerまたはAsnであり、R5は、Thr、SerまたはAsnである。
【0092】
【化11】
【0093】
イツリンファミリーのメンバーまたはその活性誘導体は、イツリンA[配列番号19]、イツリンA[配列番号20]、イツリンC[配列番号21]、マイコスブチリン[配列番号22]、またはバシロマイシンD[配列番号23]、バシロマイシンF[配列番号24]、バシロマイシンL[配列番号25]、バシロマイシンLC[配列番号26]、バシロペプチンA、バシロペプチンBまたはバシロペプチンC[配列番号27]であり得、その配列を下記に示す。
【0094】
【化12】
【0095】
バシロペプチンA、BおよびC:シクロ[D-Asn-Ser-Glu-D-Ser-Thr-βAA-Asn-D-Tyr][配列番号27]
式中、バシロペプチンA、BおよびCのそれぞれについてのβAAは、下記の式VにおいてRで示す。
【0096】
【化13】
【0097】
好ましくは、イツリンファミリーのメンバーは、イツリンAまたはその活性誘導体である。イツリンAがリポペプチドであることが認識されるであろう。イツリンAまたはその活性誘導体は、C14、C15またはC16アイソフォームであってもよい。したがって、イツリンAの活性誘導体は、C14、C15またはC16アイソフォームのいずれかを含み得る。最も好ましくは、イツリンAまたはその活性誘導体は、C15イツリンアイソフォームである。
【0098】
一実施形態において、イツリンAは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有し得る:
L-Asn-D-Tyr-D-Asn-L-Gln-L-Pro-D-Asn-L-Ser[配列番号19]
式中、n-C14、i-C15、ai-C15
【0099】
本発明者はまた、糖脂質などの別のバイオサーファクタントの存在が、特に有利であり得ると考えている。
【0100】
したがって、好ましい実施形態において、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、糖脂質をさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0101】
好ましくは、糖脂質は、ラムノ脂質もしくはその活性誘導体および/またはソホロ脂質もしくはその活性誘導体である。
【0102】
好ましくは、糖脂質は、ラムノ脂質である。ラムノ脂質は、モノラムノ脂質またはジラムノ脂質であってもよい。
【0103】
好ましくは、ラムノ脂質は、C、C8:2、C10、C12、C12:2、C14またはC14:2アイソフォームからなる群から選択される。
【0104】
好ましくは、ラムノ脂質は、C12アイソフォームである。
【0105】
一実施形態において、ラムノ脂質は、式VIに示される一般式を有する。
【0106】
【化14】
【0107】
式中、R、Rおよびnは、それぞれのアイソフォームについて下記の表に示される通りである。
【0108】
【表3】
【0109】
一実施形態において、ソホロ脂質は、式XIに示される一般式を有する。
【0110】
【化15】
【0111】
本発明者は、リポペプチドおよび糖脂質の組み合わせを含む組成物が抗ウイルス性であると考えている。
【0112】
好ましくは、本発明による、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択されるリポペプチドをさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0113】
マイコスブチリンまたはその活性誘導体は、C17アイソフォームであってもよい。一実施形態において、マイコスブチリンは、式XIIに示される構造を有し得る。
【0114】
【化16】
【0115】
モジャベンシンAまたはその活性誘導体は、C16アイソフォームであってもよい。一実施形態において、モジャベンシンAは、式XIIIに示される構造を有し得る。
【0116】
【化17】
【0117】
クルスタキンまたはその活性誘導体は、C13アイソフォームであってもよい。好ましくは、クルスタキンは、C15クルスタキンアイソフォームである。一実施形態において、クルスタキンは、式XIVに示される構造を有し得る。
【0118】
【化18】
【0119】
好ましくは、リポペプチドは、フェンギシンAであり、好ましい実施形態において、抗生物質組成物は、リポペプチドのイツリンA、サーファクチンおよびフェンギシンAを含む。
【0120】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、リポペプチドのイツリンAおよびサーファクチン、ならびにフェンギシンA、フェンギシンB、マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択される少なくとも2種のさらなるリポペプチドをさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0121】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、リポペプチドのイツリンAおよびサーファクチン、ならびにフェンギシンA、フェンギシンB、マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択される少なくとも3種のさらなるリポペプチドをさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0122】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、リポペプチドのイツリンAおよびサーファクチン、ならびにフェンギシンA、フェンギシンB、マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択される少なくとも4種のさらなるリポペプチドをさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0123】
最も好ましい実施形態において、しかしながら、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、リポペプチドのイツリンA、サーファクチン、フェンギシンA、フェンギシンB、マイコスブチリン、モジャベンシンAおよびクルスタキン、またはその活性誘導体をさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0124】
別の好ましい実施形態において、本発明の細菌は、B.amyloliquefaciens NCIMB 42971由来のマロニルCoA-アシル担体タンパク質トランスアシラーゼ遺伝子を含んでいてもよく、これは、以下の通り、配列番号7として本明細書に提供される。
【0125】
【化19】
【0126】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号7に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0127】
一実施形態において、B.amyloliquefaciens NCIMB 42971由来のマロニルCoA-アシル担体タンパク質トランスアシラーゼ遺伝子は、以下の通り、配列番号9として本明細書に提供されるアミノ酸配列をコードし得る。
【0128】
【化20】
【0129】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号9に本質的に示されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片をコードする遺伝子を含む。
【0130】
別の好ましい実施形態において、本発明の細菌は、B.amyloliquefaciens NCIMB 42971由来のマロニルCoA-アシル担体タンパク質トランスアシラーゼ遺伝子を含んでいてもよく、これは、以下の通り、配列番号8として本明細書に提供される。
【0131】
【化21-1】
【0132】
【化21-2】
【0133】
【化21-3】
【0134】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号8に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0135】
一実施形態において、B.amyloliquefaciens NCIMB 42971由来のマロニルCoA-アシル担体タンパク質トランスアシラーゼ遺伝子は、以下の通り、配列番号10として本明細書に提供されるアミノ酸配列をコードし得る。
【0136】
【化22】
【0137】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号10に本質的に示されるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくは断片をコードする遺伝子を含む。
【0138】
別の実施形態において、本発明の細菌は、16S rDNAを含んでいてもよい。
【0139】
したがって、別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通り、配列番号1として本明細書に提供されるNCIMB 42971の16S rDNAを含み得る。
【0140】
【化23】
【0141】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号1に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0142】
別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通り、配列番号2として本明細書に提供されるNCIMB 42972の16S rDNAを含み得る。
【0143】
【化24】
【0144】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号2に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0145】
したがって、別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通り、配列番号3として本明細書に提供されるNCIMB 42973の16S rDNAを含み得る。
【0146】
【化25】
【0147】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号3に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0148】
別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通り、配列番号4として本明細書に提供されるNCIMB 42974の16S rDNAを含み得る。
【0149】
【化26】
【0150】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号4に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0151】
別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通り、配列番号5として本明細書に提供されるNCIMB 43393の16S rDNAを含み得る。
【0152】
【化27】
【0153】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号5に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0154】
別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通り、配列番号6として本明細書に提供されるNCIMB 43392の16S rDNAを含み得る。
【0155】
【化28】
【0156】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号6に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0157】
別の好ましい実施形態において、細菌は、以下の通りB.subtilis株SG188の16S rDNAを含み得る。
【0158】
【化29】
【0159】
したがって、好ましくは、細菌は、配列番号29に本質的に示されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0160】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の1つまたは複数を含み得る。
【0161】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の2つ以上を含み得る。
【0162】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の3つ以上を含み得る。
【0163】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の4つ以上を含み得る。
【0164】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の5つ以上を含み得る。
【0165】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片の6つ以上を含み得る。
【0166】
一実施形態において、細菌は、配列番号1~6、28および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントもしくは断片を含み得る。
【0167】
異なる種にわたる本明細書に記載の配列のいずれかのホモログおよびパラログも、本発明の一部であると見なされる。
【0168】
好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、少なくとも1種のスポルレンファミリーメンバーおよび少なくとも1種の非リボソームペプチドを産生するか、またはそれを含む。
【0169】
例えば、一実施形態において、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、スクアレンシクラーゼ遺伝子のsqhC、ならびにフェンギシンファミリーのメンバー、サーファクチンファミリーのメンバーおよびイツリンファミリーのメンバーからなる群から選択される少なくとも1種のリポペプチドをさらに産生するか、またはそれをさらに含む。
【0170】
好ましくは、生芽胞、死芽胞、または生栄養細胞もしくは死細胞、または生細胞によって産生される細胞外材料、またはそれらからの破壊細胞ホモジネートは、第1または第2の態様に従って、抗ウイルス組成物を構成する。好ましくは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、抗ウイルス特性、および/または自然免疫刺激特性を示す。
【0171】
本発明者は、抗ウイルス組成物/自然免疫刺激組成物が、示される驚くべき抗ウイルス活性の原因であると考えている。
【0172】
したがって、第3の態様において、ウイルス感染の処置、予防または寛解における使用のための、少なくとも1種のスポルレンファミリーメンバー、ならびに/またはサーファクチンファミリーのメンバー、イツリンファミリーのメンバーおよびフェンギシンファミリーのメンバー、もしくはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択されるリポペプチドを含む抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物を提供する。
【0173】
組成物は、第1の態様において定義される糖脂質またはさらなるリポペプチドをさらに含んでいてもよい。
【0174】
本発明の第4の態様において、ウイルス感染を処置する方法であって、治療有効量の少なくとも1種のスポルレンファミリーメンバー、ならびに/またはサーファクチンファミリーのメンバー、イツリンファミリーのメンバーおよびフェンギシンファミリーのメンバー、もしくはこれらのリポペプチドのいずれかの活性誘導体からなる群から選択されるリポペプチドを、そのような処置を必要とする患者に投与することまたは投与したことを含む、方法を提供する。
【0175】
方法は、第1の態様において定義される糖脂質またはさらなるリポペプチドを投与することまたは投与したことを含んでいてもよい。
【0176】
本発明の第5の態様において、食糧または健康補助食品としての使用のための、第1の態様において定義される、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート、あるいは第3の態様において定義される抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物を提供する。
【0177】
本発明の第6の態様において、第1の態様において定義される、生もしくは死細菌芽胞、生存もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート、あるいは第3の態様において定義される抗ウイルス組成物および/または自然免疫刺激組成物、ならびに任意選択で、1種または複数の食品グレードの成分を含む、健康補助食品または食糧を提供する。
【0178】
スポルレンファミリーメンバー、呼吸器系ウイルス、サーファクチンファミリーメンバー、イツリンファミリーのメンバー、フェンギシンファミリーのメンバー、および使用は、第1の態様において定義される通りであり得る。好ましくは、処置または予防される(すなわち、ワクチン接種される)ウイルスは、呼吸器系ウイルス、例えば、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、コロナウイルスおよびライノウイルスからなる群から選択されるウイルスである。
【0179】
好ましくは、呼吸器系ウイルスは、コロナウイルスである。より好ましくは、コロナウイルスは、MERS、SARS-CoV1およびSARS-CoV2から選択される。最も好ましくは、呼吸器系ウイルスは、SARS-CoV2である。
【0180】
一部の実施形態において、組成物は、例えば、生芽胞または生栄養細胞と組み合わせて送達される場合に、プロバイオティクスであり得る。
【0181】
食糧は、飲料であってもよい。別の実施形態において、食糧は、医療食糧または「医療食品」であってもよい。当業者は、「医療食品」という用語が、それに関係する栄養機能表示を有する食糧を指すことを理解するであろう。
【0182】
一部の実施形態において、本発明の薬剤および組成物は、食糧または健康補助食品の形態、例えば、プロバイオティクスで投与されてもよい。食糧は、飲料であってもよい。別の実施形態において、食糧は、医療食糧または「医療食品」であってもよい。当業者は、「医療食品」という用語が、それに関係する栄養機能表示を有する食糧を指すことを理解するであろう。
【0183】
本発明の調製物が、栄養補助食品の形態である場合、これは、好ましくは、10~1015個細胞/用量、好ましくは、10~1011個細胞/用量を含有する微生物の単位用量を含有する、別々の投与のための形態、例えば、カプセル剤、錠剤、散剤または類似の形態であり得る(ここで、細胞は、栄養細胞もしくは芽胞、またはその混合物の形態のいずれかである)。
【0184】
栄養補助食品はまた、粉末の形態または類似の形態であり得、これは、摂取できる状態の食品の調製物のために、好適な食品(組成物)または好適な液体もしくは固体担体に添加されるか、あるいはそれと混合される。
【0185】
例えば、栄養補助食品は、乾燥粉末の形態であり得、これは、水、経口補水液、ミルク、フルーツジュース、または類似の飲用可能な液体などの好適な液体を使用して再構成される。これはまた、固形食品または発酵乳製品、例えば、ヨーグルトなどの高水分含有量の食品と混合される、粉末の形態であり得る。
【0186】
本発明の組成物はまた、摂取できる状態の食品の形態であり得る。そのような食品は、例えば、上記に記載の本発明のサプリメントを自体公知の食品もしくは食品ベースに添加すること、投与に必要な量の微生物(別々にまたは混合物として)を自体公知の食品もしくは食品ベースに添加すること、または投与に必要な細菌の量を含有する食品が得られるまで食品培地中で必要な細菌を培養することによって調製され得る。食品培地は、好ましくは、それが食品の一部を既に形成しているか、または発酵後に食品の一部を形成するようなものである。
【0187】
これに関して、食品または食品ベースは、発酵または非発酵のいずれかであり得る。
【0188】
本発明の組成物は、経口摂取のための食品、例えば、総合食品または乳児用調製粉乳であり得る。
【0189】
組成物は、プレバイオティック化合物、特に、発酵の際にブチレート/酪酸、プロピオネート/プロピオン酸またはアセテート/酢酸の産生をもたらす繊維、タンパク質などの窒素供与体、ならびに特定のビタミン、ミネラルおよび/または微量元素をさらに含有することができる。後者に関して、また実施例から見ることができるように、慢性下痢の処置のために意図される調製物に葉酸が存在し得るように、増加した量または中程度に高い量のビタミンA、K、B12、ビオチン、Mg、CaおよびZnの存在は、有利であり得る。
【0190】
栄養補助食品は、繊維、例えば、総調製物100gあたり少なくとも0.5gの繊維の量をさらに含んでいてもよい。
【0191】
繊維として、調製物は、好ましくは、上記に示された量の、難消化性デンプンまたは別のブチレート発生源、およびガムまたはダイズ多糖などの好適なプロピオネート発生源を含有する。酪酸およびプロピオン酸などの短鎖脂肪酸は、総組成物100gあたり少なくとも0.1gの量で、好ましくは、好適に封入された形態で、またはその生理学的等価物、例えば、プロピオン酸ナトリウムとして、使用することもできる。
【0192】
窒素、ビタミン、ミネラルおよび微量元素はまた、例えば、酵母抽出物の形態で含まれていてもよい。
【0193】
本発明の組成物は、胃腸管の上皮壁への細菌接着を阻害する1種または複数の物質をさらに含有することができる。好ましくは、これらの化合物は、レクチン、糖タンパク質、マンナン、グルカン、キトサンおよび/もしくはその誘導体、荷電タンパク質、荷電炭水化物、シアリル化化合物、ならびに/または接着阻害性免疫グロブリン、ガラクトオリゴ糖、ならびに加工炭水化物および加工キチン質であって、後者が、組成物の1~10%w/v、好ましくは、2~5%w/vの量であるものから選択される。
【0194】
好ましい接着阻害性物質は、キトサン、イナゴマメ粉、ならびに縮合型タンニンおよびタンニン誘導体が豊富な抽出物、例えば、クランベリー抽出物であり、最終生成物中のタンニンの量は、好ましくは、10~600μg/mlである。
【0195】
組成物はまた、特に組成物が総合食品の形態である場合に、ペプチドおよび/またはタンパク質、特に、グルタメートおよびグルタミン、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルならびに微量元素が豊富なタンパク質を含有していてもよい。0.6~3gグルタミン/100g生成物に相当する量のグルタミン/グルタメート前駆体、および抗含有量のグルタミンを有する小ポリペプチドの使用が好ましい。あるいは、グルタミンが豊富なタンパク質、例えば、乳タンパク質、コムギタンパク質またはその加水分解物を添加することができる。
【0196】
好ましい一実施形態において、組成物は、グルコサミンをさらに含む。グルコサミンは、典型的には、10~2000mgの範囲、例えば、100~2000mgの範囲、例えば、250~1500mgの範囲、例えば、500~1000mgの範囲の一日摂取量に相当する量で含まれる。特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、単位剤形に製剤化され、ここで、1~5単位剤形が、10~1015個、好ましくは、10~1012個、特に、10~1011個のBacillus細胞、および10~2000mgの範囲、例えば、100~2000mgの範囲、例えば、250~1500mgの範囲、例えば、500~1000mgの範囲の量のグルコサミンの一日摂取量に相当する。グルコサミンは、グルコサミン塩酸塩またはグルコサミンリン酸塩であってもよい。当業者は、グルコサミンがキトサミンも指し得ることを理解するであろう。
【0197】
本発明の組成物は、無ラクトースであってもよい。一部の実施形態において、組成物は、高いオスモル濃度(好ましくは、400mosm/l未満、より好ましくは300 mosm/l未満)を有し、他の実施形態において、組成物は、例えば、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1717650/に開示される組成物として、より低いオスモル濃度を有する。一部の実施形態において、本発明の組成物は、コーシャー、ベジタリアンまたはビーガンである。
【0198】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、本発明の株、および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0199】
本発明者は、細菌、例えば、さまざまなB.amyloliquefaciensおよびB.subtilis株、またはそのような株の任意の組み合わせの1つを含む、新規食品、食品成分、健康補助食品、健康補助食品成分、医療食品、特定医療用食品、特定保健用食品、特定用途食品、健康食品、補完医療ナチュラルヘルス製品、ナチュラルヘルス製剤、ナチュラルヘルス成分、ならびに医薬品、医薬調製物、医薬製剤、および医薬成分を調製した。
【0200】
したがって、1種もしくは複数のB.amyloliquefaciens株および/または1種もしくは複数のB.subtilis株の生もしくは死芽胞、または生もしくは死栄養細胞、あるいはそれらの混合物、あるいは生細胞によって産生される細胞外材料、あるいは破壊細胞ホモジネート、ならびに担体または媒体、増量剤、安定剤、栄養分、香味剤、着色剤の中から好ましくは選択される1種または複数の食品グレードの成分を含む組成物を提供する。
【0201】
担体または媒体は、保管および使用の間に適用される条件下で不活性な任意の食品グレードの成分の中で選択される。担体または媒体の例としては、ミネラル、例えば、CaCO、NaCl、KCl、CaHPO;ポリマー、例えば、天然または加工デンプン、ペクチン、セルロース;糖、例えば、ラクトース、スクロースまたはグルコース;小麦粉および脱脂粉乳が挙げられる。
【0202】
増量剤は、適用される条件下で不活性な成分の中で選択される。増量剤は、典型的には、組成物が所望の体積を得ることを確保するために本発明の組成物に添加される。
【0203】
安定剤は、生成および/または保管の間に、1種もしくは複数のB.amyloliquefaciens株および/または1種もしくは複数のB.subtilis株を安定化および/または保護する能力を有する食品グレードの成分の中で選択される。好適な安定剤の例としては、アスコルビン酸およびビタミンEが挙げられる。
【0204】
栄養分は、組成物が、1種もしくは複数のB.amyloliquefaciens株および/または1種もしくは複数のB.subtilis株の成長をサポートしないという条件で、原則として、任意の栄養分の中で選択することができる。典型的には、これは、組成物が、乾燥していること、または少なくとも、水分活性が、微生物の増殖が防止されるように非常に低いことを意味する。栄養分の例としては、ミネラル、ビタミン、糖、タンパク質、粉乳を含むミルクまたはその分画、小麦粉、はちみつおよびジュースが挙げられる。
【0205】
香味剤および着色剤は、当技術分野において公知の食品グレードの香味剤および着色剤の中で選択される。
【0206】
組成物は、食品、食品成分、健康補助食品、健康補助食品成分、医療食品、特定医療用食品、特定保健用食品、特定用途食品、健康食品、補完医療;ナチュラルヘルス製品、ナチュラルヘルス製剤、ナチュラルヘルス成分、医薬品、医薬調製物、医薬製剤、または医薬成分であってもよい。
【0207】
組成物は、生細胞もしくは芽胞、または細胞もしくは芽胞が起源の化合物を含むか、あるいはそれからなるプロバイオティクス組成物であってもよい。組成物は、増量剤および安定化剤から選択される1種または複数の食品グレードの成分を含んでいてもよい。組成物は、カプセル剤、錠剤または小袋などの単位投薬量製剤で提供されてもよい。それぞれの単位投薬量製剤は、10~1010CFUの1種または複数の微生物を含んでいてもよい。組成物は、1種または複数の微生物株に加えて、少なくとも1種の栄養分および/またはビタミンを含む食品組成物であってもよい。食品組成物は、一食あたり10~1010CFUに相当するCFUカウントを含んでいてもよい。
【0208】
1種または複数の微生物は、凍結乾燥形態または噴霧乾燥形態で提供されてもよい。組成物は、グルコサミンをさらに含んでいてもよい。組成物は、10~2000mg、任意選択で、100~2000mgの範囲、または250~1500mgの範囲、または500~1000mgの範囲の一日摂取量に相当するグルコサミンを含んでいてもよい。グルコサミンは、グルコサミン塩酸塩またはグルコサミンリン酸塩であってもよい。
【0209】
好ましくは、本発明の薬剤および製剤(すなわち、(i)生もしくは死細菌芽胞、(ii)生もしくは死栄養細菌、(iii)生細胞によって産生される細胞外材料、(iv)破壊細菌細胞ホモジネート、または(v)本発明の組成物)は、抗ウイルス特性、および自然免疫刺激特性を示す。したがって、「抗ウイルス」という用語は、抗ウイルス特性および/または自然免疫刺激特性の両方を意味し得る。
【0210】
本発明による抗ウイルス剤および抗ウイルス製剤は、呼吸器系ウイルス感染、最も好ましくは、SARS-CoV2を処置、寛解または予防するために、単剤療法(すなわち、(i)生もしくは死細菌芽胞、(ii)生もしくは死栄養細菌、(iii)生細胞によって産生される細胞外材料、(iv)破壊細菌細胞ホモジネート、または(v)本発明の抗ウイルス組成物の単独使用)において使用し得ることを理解するであろう。あるいは、そのような本発明による抗ウイルス剤および抗ウイルス製剤は、アジュバントとして、または、呼吸器系ウイルス感染、例えば、SARS-CoV2を処置、寛解または予防するために公知の療法と組み合わせて使用されてもよい。本発明者は、本発明による抗ウイルス剤および抗ウイルス製剤が、既存のウイルスワクチンと組み合わせて使用された場合に、アジュバントとして有利に作用し得ると考えている。抗ウイルス剤および抗ウイルス製剤は、ワクチンで処置された対象における適応免疫応答を誘導する既存のワクチンの作用を補完する、自然免疫刺激物質として作用し得る。したがって、一実施形態において、本発明による薬剤および製剤は、既存のウイルスワクチン、好ましくは、コロナウイルスワクチンまたはインフルエンザワクチンと組み合わせて使用され得る。
【0211】
本発明による薬剤および製剤は、特に組成物が使用される様式に応じて、いくつかの異なる形態を有する組成物と組み合わされてもよい。したがって、例えば、組成物は、散剤、錠剤、カプセル剤、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液の形態、または処置を必要とする人もしくは動物に投与され得る任意の他の好適な形態であり得る。本発明による医薬の媒体が、それを与えられる対象によって十分に許容されるものでなければならないことが認識されるであろう。
【0212】
本発明の薬剤および製剤は、いくつかの方法で使用され得る。例えば、経口投与が必要とされてもよく、この場合において、薬剤は、例えば、錠剤、カプセル剤または液剤の形態で経口的に摂取され得る組成物内に含有され得、これは、食品または飲料中に存在する組成物の送達を含み得る。
【0213】
本発明の抗ウイルス組成物および抗ウイルス製剤は、好ましくは、粘膜送達によって投与される。本発明の抗ウイルス組成物および抗ウイルス製剤は、好ましくは、吸入によって(例えば、鼻腔内に)投与され得る。
【0214】
したがって、好ましくは、ウイルス感染の処置における使用のための、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、経鼻的に適用される。経鼻適用は、スプレー、ミスト、液滴、クリーム、ゲルまたは注射による適用を含み得る。別の実施形態において、生細菌芽胞を、ウイルス感染を処置するために使用し、経鼻的に、好ましくは、スプレー、ミスト、液滴、クリーム、ゲルまたは注射によって適用することが好ましい。一実施形態において、死細菌芽胞を、ウイルス感染を処置するために使用し、経鼻的に、好ましくは、スプレー、ミスト、液滴、クリーム、ゲルまたは注射によって適用することが好ましい。経鼻投与のために使用される投薬量は、10~1015個、好ましくは、10または10~1012個、特に、10~1010個の細菌細胞(栄養細胞もしくは芽胞、またはその混合物の形態のいずれか)であり得る。
【0215】
あるいは、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネートは、舌下に適用され得る。舌下適用は、ウエハ(例えば、頬側ウエハ)または速溶性フィルムによる適用を含み得る。
【0216】
組成物はまた、局所使用のために製剤化されてもよい。例えば、クリームまたは軟膏が、皮膚に適用されてもよい。あるいは、組成物は、舌下投与によって送達されてもよい。好ましくは、組成物は、粘膜適用のために製剤化される。
【0217】
本発明による薬剤および製剤はまた、持続放出または遅延放出デバイス内に組み込まれてもよい。そのようなデバイスは、例えば、皮膚上または皮膚下に挿入され得、医薬は、数週間またはさらに数か月にわたって放出され得る。デバイスは、処置部位に少なくとも隣接して位置し得る。そのようなデバイスは、本発明に従って使用される薬剤による長期処置が必要であり、頻回投与(例えば、少なくとも毎日の投与)が通常必要である場合に、特に有利であり得る。
【0218】
好ましい実施形態において、本発明による薬剤および製剤は、注射によって血流に、または処置を必要とする部位に直接、対象に投与され得る。注射は、静脈内(ボーラスまたは注入)、または皮下(ボーラスまたは注入)、または皮内(ボーラスまたは注入)であってもよい。
【0219】
必要とされる薬剤および製剤の量は、その生物活性および生物学的利用率によって決定され、これは次に、投与の様式、薬剤および製剤の生理化学的特性、およびそれらが単剤療法としてまたは併用療法で使用されるかどうかに依存することを理解するであろう。投与の頻度はまた、処置される対象内の薬剤および製剤の半減期によって影響を受けるであろう。投与される最適な投薬量は、当業者によって決定され得、使用中の特定の薬剤および製剤、医薬組成物の強度、投与の様式、ならびにウイルス感染の進行とともに変わるであろう。対象の年齢、体重、性別、食事、および投与の回数を含む、処置される特定の対象に応じた追加の因子は、投薬量を調節する必要性をもたらすであろう。
【0220】
一般に、本発明による薬剤、抗ウイルス(および/または自然免疫刺激)組成物または製剤の0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の一日用量が、どの薬剤および製剤が使用されるかに応じて、呼吸器感染を処置、寛解または予防するために使用され得る。より好ましくは、一日用量は、0.01g/kg体重~1mg/kg体重、より好ましくは、0.1g/kg体重~100g/kg体重、最も好ましくは、およそ0.1g/kg体重~10g/kg体重である。
【0221】
本発明による薬剤または組成物は、例えば、それらが、10~1015個、好ましくは、10または10~1012個、特に、10~1010個の細菌細胞(栄養細胞もしくは芽胞、またはその混合物の形態のいずれか)を含有することによって特徴付けられ得る。参照値は、投与の単位、例えば、錠剤、カプセル剤または小袋である。組成物は、経口投与のために調製されてもよい。細菌細胞は、好適には、凍結乾燥または噴霧乾燥される。
【0222】
食品組成物の場合において、組成物が、10~1015個、好ましくは、10~10個、特に、10~10個の細菌細胞(栄養細胞もしくは芽胞、またはその混合物の形態のいずれか)を含有するものを提供し得る。参照値は、投与の単位、例えば、エンドユーザーに販売される食品材料の包装単位である。生理学的に許容される担体は、通常は、食品材料であり、これは、特に、「乳製品、発酵乳製品、ミルク、ヨーグルト、チーズ、シリアル、ミューズリーバー、および小児食品調製物」を含む群から選択される。
【0223】
薬剤および製剤は、ウイルス感染の開始の前、その間またはその後に投与され得る。一日用量が、単回投与(例えば、1日1回の注射または経口用量)として与えられてもよい。あるいは、薬剤および製剤は、1日に2回以上、または1週間に1回もしくは複数回、または1か月に1回もしくは複数回の投与を必要としてもよい。例として、薬剤および製剤は、2回(または処置されるウイルス感染の重症度に応じてそれよりも多く)の0.07g~700mgの一日用量(すなわち、体重70kgと仮定する)として投与されてもよい。処置を受けている患者は、起床時に1回目の用量を、次いで、夜(2用量レジメンの場合)に、またはその後3もしくは4時間の間隔で、2回目の用量を取ってもよい。
【0224】
あるいは、持続放出デバイスを、反復用量を投与する必要なく、患者に本発明による薬剤および製剤の最適な用量を提供するために使用してもよい。
【0225】
製薬業界によって慣例的に用いられる手順などの公知の手順(例えば、インビボ実験、臨床試験など)を使用して、本発明による薬剤および製剤の特定の製剤、ならびに正確な治療レジメン(薬剤および製剤の一日用量、ならびに投与の頻度など)を形成し得る。
【0226】
本発明は、第7の態様において、第1の態様において定義される、生もしくは死細菌芽胞、生存もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、破壊細菌細胞ホモジネート、または第3の態様において定義される使用のための抗ウイルス組成物、および薬学的に許容される媒体または担体を含む医薬組成物も提供する。
【0227】
第8の態様において、第7の態様による組成物を作製するための方法であって、治療有効量の、第1の態様において定義される、生もしくは死細菌芽胞、生存もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、破壊細菌細胞ホモジネート、または第3の態様において定義される抗ウイルス組成物と、薬学的に許容される媒体または担体とを混合することを含む、方法も提供する。
【0228】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物または家畜動物であり得る。したがって、本発明による医薬は、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ)、ペットを処置するために使用され得るか、または他の獣医適用において使用され得る。最も好ましくは、対象は、人間である。
【0229】
第1の態様による、生もしくは死細菌芽胞、生もしくは死栄養細菌、生細胞によって産生される細胞外材料、または破壊細菌細胞ホモジネート、あるいは第3の態様による抗ウイルス組成物の「治療有効量」は、対象に投与された場合に、感染を処置するか、または所望の効果を生じるために必要な活性構成成分の量である、任意の量である。
【0230】
例えば、治療有効量は、約0.001μg~約1mg、好ましくは、約0.01μg~約100μgであり得る。薬剤の量が、約0.1μg~約10μg、最も好ましくは、約0.5μg~約5μgの量であることが好ましい。
【0231】
本明細書において称される「薬学的に許容される媒体」は、医薬組成物を製剤化するのに有用であることが当業者に公知である任意の公知化合物または公知化合物の組み合わせである。
【0232】
一実施形態において、薬学的に許容される媒体は、固体であってもよく、組成物は、散剤または錠剤の形態であってもよい。固体の薬学的に許容される媒体としては、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、色素、増量剤、流動促進剤、圧縮補助剤、不活性結合剤、甘味剤、保存剤、色素、コーティング、または錠剤崩壊剤としても作用し得る1種または複数の物質が挙げられ得る。媒体はまた、封入材料であってもよい。散剤において、媒体は、本発明による微粉化された活性薬剤との混合物中にある微粉化された固体である。錠剤において、活性薬剤は、好適な割合で必要な圧縮特性を有する媒体と混合され、所望の形状およびサイズに圧縮され得る。散剤および錠剤は、好ましくは、最高で99%の活性薬剤を含有する。好適な固体媒体としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施形態において、医薬媒体は、ゲルであってもよく、組成物は、クリームなどの形態であってもよい。
【0233】
しかしながら、医薬媒体は、液体であってもよく、医薬組成物は、溶液の形態である。液体媒体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、および加圧組成物を調製するのに使用される。本発明による活性薬剤は、水、有機溶媒、両方の混合物などの薬学的に許容される液体媒体、または薬学的に許容される油脂に溶解または懸濁され得る。液体媒体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤または浸透圧調節剤などの他の好適な医薬添加物を含有することができる。経口投与および非経口投与のための液体媒体の好適な例としては、水(一部分では、上記の添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(一価アルコール、および多価アルコール、例えば、グリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分画されたココナツ油およびラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与のために、媒体はまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油状エステルであり得る。無菌液体媒体は、非経口投与のための無菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物のための液体媒体は、ハロゲン化炭化水素、または他の薬学的に許容される噴霧剤であり得る。
【0234】
無菌の溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内注射、特に、皮下注射によって利用することができる。薬剤は、滅菌水、生理食塩水または他の適切な無菌注射可能媒体を使用して、投与の時に、溶解または懸濁され得る無菌固体組成物として調製されてもよい。
【0235】
本発明の薬剤および組成物は、他の溶質もしくは懸濁化剤(例えば、十分な生理食塩水または溶液を等張にするためのグルコース)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合したソルビトールのオレエートエステルおよびその無水物)などを含有する無菌の溶液または懸濁液の形態で、経口的に投与されてもよい。本発明に従って使用される薬剤は、液体または固体組成物形態のいずれかで、経口的に投与することもできる。経口投与に好適な組成物は、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤および散剤などの固体形態、ならびに液剤、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤などの液体形態を含む。非経口投与に有用な形態は、無菌の液剤、乳剤および懸濁剤を含む。
【0236】
本発明の薬剤および組成物は、例えば、持続放出フィルム、ウエハまたはカプレットの形態で、舌下に投与されてもよい。
【0237】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に記載のすべての特徴、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップのすべては、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が互いに排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで、上記の態様のいずれかと組み合わされてもよい。
【0238】
本発明が、そのバリアントまたは断片を含む本明細書において言及される配列のいずれかのアミノ酸または核酸配列を実質的に含む、任意の核酸もしくはペプチド、またはそのバリアント、誘導体もしくはアナログに及ぶことが認識されるであろう。「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「バリアント」および「断片」という用語は、本明細書において言及される配列のいずれか1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性、例えば、配列番号1~29として特定される配列などと40%の同一性を有する配列であり得る。
【0239】
言及される配列のいずれかと、65%よりも高い、より好ましくは、70%よりも高い、さらにより好ましくは、75%よりも高い、またより好ましくは、80%よりも高い配列同一性である配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列も想定される。好ましくは、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、言及される配列のいずれかと少なくとも85%の同一性、より好ましくは、本明細書において言及される配列と、少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも92%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも97%の同一性、さらにより好ましくは、少なくとも98%の同一性、最も好ましくは、少なくとも99%の同一性を有する。
【0240】
当業者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性パーセンテージを算出する方法を認識するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性パーセンテージを算出するために、2つの配列のアライメントを最初に作成し、それに続いて、配列同一性の値の算出を行わなければならない。2つの配列の同一性パーセンテージは、以下に応じて、異なる値を取り得る:(i)配列を整列させるために使用される方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(異なるプログラムに実装)、または3D比較からの構造アライメント;ならびに(ii)アライメント方法によって使用されるパラメーター、例えば、ローカル対グローバルアライメント、使用されるペアスコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、およびギャップペナルティ、例えば、関数形式および定数。
【0241】
アライメントを行ったら、2つの配列間の同一性パーセンテージを算出する多くの異なる方法が存在する。例えば、その一つは、同一の数を(i)最も短い配列の長さ、(ii)アライメントの長さ、(iii)配列の平均長さ、(iv)非ギャップ位置の数、または(v)オーバーハングを除く等価位置の数で割ってもよい。さらにまた、同一性パーセンテージは、長さにも強く依存することが認識されるであろう。したがって、配列のペアが短くなると、より高い配列同一性が偶然生じると予想され得る。
【0242】
したがって、タンパク質またはDNA配列の正確なアライメントは、複雑なプロセスであることが認識されるであろう。一般的な多重アライメントプログラムであるClustalW(Thompsonら、1994、Nucleic Acids Research、22、4673~4680頁;Thompsonら、1997、Nucleic Acids Research、24、4876~4882頁)は、本発明によるタンパク質またはDNAの多重アライメントを生成するための好ましい方法である。ClustalWのための好適なパラメーターは、以下の通りであり得る。DNAアライメントについて:ギャップオープンペナルティ=15.0、ギャップ伸長ペナルティ=6.66、およびマトリックス=Identity。タンパク質アライメントについて:ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、およびマトリックス=Gonnet。DNAおよびタンパク質のアラインメントについて:ENDGAP=-1およびGAPDIST=4。当業者であれば、最適な配列アライメントのためにこれらのおよび他のパラメーターを変えることが必要であり得ることが分かるであろう。
【0243】
好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性パーセンテージの算出は、次いで、(N/T)×100などのアライメントから算出され得、ここで、Nは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含んで、かつオーバーハングを含んでまたは除いて比較された位置の総数である。好ましくは、オーバーハングは、算出に含まれる。したがって、2つの配列間の同一性パーセンテージを算出するための最も好ましい方法は、(i)例えば上記に示されるように、好適なパラメーターのセットを使用して、ClustalWプログラムを使用して配列アライメントを作成すること、ならびに(ii)NおよびTの値を以下の式:配列同一性=(N/T)×100に挿入することを含む。
【0244】
類似する配列を特定するための代替方法は、当業者に公知であろう。例えば、実質的に類似するヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下でDNA配列またはそれらの相補体にハイブリダイズする配列によってコードされる。ストリンジェントな条件とは、本発明者が、ヌクレオチドを、およそ45℃で3×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でフィルターに結合したDNAまたはRNAにハイブリダイズし、それに続いておよそ20~65℃で0.2×SSC/0.1%のSDS中で少なくとも1回洗浄することを意味する。あるいは、実質的に類似するポリペプチドは、例えば、アミノ酸配列である配列番号1~29において示される配列と、少なくとも1アミノ酸、しかし5、10、20、50または100未満のアミノ酸が異なっていてもよい。
【0245】
遺伝コードの縮重に起因して、本明細書に記載の任意の核酸配列が、それによってコードされるタンパク質配列に実質的に影響を及ぼすことなく、変更または変化して、その機能性バリアントを提供することができることは明白である。好適なヌクレオチドバリアントは、配列内で同じアミノ酸をコードし、したがってサイレント(同義)変化を生じる、異なるコドンの置換によって変更された配列を有するものである。他の好適なバリアントは、ホモログなヌクレオチド配列を有するが、それを置換するアミノ酸と類似の生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードして、保存的変化を生じる、異なるコドンの置換によって変更される配列の全部または部分を含むものである。例えば、小さい非極性の疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリンおよびメチオニンが挙げられる。大きい非極性の疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。したがって、どのアミノ酸が類似の生物物理学的特性を有するアミノ酸で置換され得るかは認識され、当業者であれば、これらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知っているであろう。
【0246】
本発明をより良く理解するため、およびその実施形態を有効に行い得る方法を示すために、例として、添付図面への参照をここに行う。
【図面の簡単な説明】
【0247】
図1A】ウイルス感染に対して保護するBacillus種の芽胞の能力を示す図である。マウスに、2経鼻用量(2×10個/用量)の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)を投薬し、42日目に、10 LD50のH5N2(A)および(B)を負荷した。H5N2を負荷されたマウスの生存率を(C)に、体重を(D)に示し、2経鼻用量の死滅Bacillus芽胞(芽胞)は、不活化インフルエンザウイルス(すなわち、インフルエンザワクチン)による投薬と同等であり、同様に100%の保護を提供した2経鼻用量の0.5μgHAのNIBRG-14(A/Aquatic Bird/Korea)からなる対照群(iNiB)によって例示される、生H5N2保護に対する100%の保護を提供する。
図1B】ウイルス感染に対して保護するBacillus種の芽胞の能力を示す図である。マウスに、2経鼻用量(2×10個/用量)の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)を投薬し、42日目に、10 LD50のH5N2(A)および(B)を負荷した。H5N2を負荷されたマウスの生存率を(C)に、体重を(D)に示し、2経鼻用量の死滅Bacillus芽胞(芽胞)は、不活化インフルエンザウイルス(すなわち、インフルエンザワクチン)による投薬と同等であり、同様に100%の保護を提供した2経鼻用量の0.5μgHAのNIBRG-14(A/Aquatic Bird/Korea)からなる対照群(iNiB)によって例示される、生H5N2保護に対する100%の保護を提供する。
図2A】不活化H5N1ビリオン(μgHAとして規定)と組み合わせて使用した場合のBacillus種芽胞(死滅Bacillus種芽胞、芽胞)のアジュバント効果を示す図である。実験設計を(A)および(B)に示す。インフルエンザH5N2(A/Aquatic Bird/Korea)(10 LD50)を負荷されたマウス(n=5/gp)の生存率を(C)に、体重を(D)に示す。無処置動物および0.02μgのHAを投薬された動物は、負荷後に生存を示さなかった。芽胞は、負荷に対する60%の保護を提供した。0.5μgのビリオンHAは、保護(80%)を提供したが、これは、(C)に示されるように、芽胞(2×10CFU)と混合した場合に、100%に増加した。体重も、全体を通してモニターした(D)。
図2B】不活化H5N1ビリオン(μgHAとして規定)と組み合わせて使用した場合のBacillus種芽胞(死滅Bacillus種芽胞、芽胞)のアジュバント効果を示す図である。実験設計を(A)および(B)に示す。インフルエンザH5N2(A/Aquatic Bird/Korea)(10 LD50)を負荷されたマウス(n=5/gp)の生存率を(C)に、体重を(D)に示す。無処置動物および0.02μgのHAを投薬された動物は、負荷後に生存を示さなかった。芽胞は、負荷に対する60%の保護を提供した。0.5μgのビリオンHAは、保護(80%)を提供したが、これは、(C)に示されるように、芽胞(2×10CFU)と混合した場合に、100%に増加した。体重も、全体を通してモニターした(D)。
図3A】2経鼻用量(2×10個/用量)の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)を投薬されている、H5N2(A/Aquatic Bird/Korea)(10 LD50)を負荷されたマウスの生存率を示す図である。(A)および(B)は実験設計を示す。生存率を(C)に、体重を(D)に示す。
図3B】2経鼻用量(2×10個/用量)の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)を投薬されている、H5N2(A/Aquatic Bird/Korea)(10 LD50)を負荷されたマウスの生存率を示す図である。(A)および(B)は実験設計を示す。生存率を(C)に、体重を(D)に示す。
図4A】さまざまな量の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)で処置されたマウスの用量依存性の生存率を示す図である。研究設計を(A)に示す。5×10個および2×10個で処置されたマウスは、5 LD50 H5N2による負荷14日後に100%の生存を有していたことが観察された(C)。体重を(D)に示す。
図4B】さまざまな量の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)で処置されたマウスの用量依存性の生存率を示す図である。研究設計を(A)に示す。5×10個および2×10個で処置されたマウスは、5 LD50 H5N2による負荷14日後に100%の生存を有していたことが観察された(C)。体重を(D)に示す。
図5】野生型芽胞のアジュバント効果、およびこの応答におけるSqhCの関与のグラフである。第1のアプローチにおいて、野生型(群1)またはsqhC(群2)同系芽胞を、死滅させ、皮下経路によってマウスに注射した(1、15および36日目)。同時に、不活化H5N1ビリオンを使用して、1、15および36日目に、鼻腔内経路によって、同じマウスに投薬した。第2のアプローチにおいて、野生型(群3)またはsqhC(群4)死滅芽胞のいずれかを、不活化H5N1ビリオンと混合および吸着させ、次いで、これを使用して、鼻腔内経路によってマウスに投薬した(1、15および36日目)。得られた処置マウスの唾液中の分泌性IgA(SIgA)の濃度を示す。
図6】Bacillus種SG277によって分泌された材料の硫酸アンモニウム沈殿のSECクロマトグラムを示すグラフである。4つの分画(Sec0、Sec1、Sec2およびSec3)を、それぞれ、フェンギシン、サーファクチン、イツリンおよびクロロテタインと特定した。
図7】H5N1不活化ビリオンと組み合わせて使用した場合の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)のアジュバント効果を示す図である。研究設計を(A)に示し、マウスの生存を(B)に示す。死滅芽胞は、H5N2負荷(A/Aquatic Bird/Korea)(10 LD50)に対する約50%の保護を提供した。H5N1(iNiBRG14クレード1)を使用して、0.02μgまたは0.1μgとしてHAにおいて定義されるビリオンの保護は、存在しなかったか(0.02μg)、または低かった(0.1μg)。死滅芽胞と混合した場合、保護は、100%であり、したがって、芽胞のアジュバント効果を実証した。
図8】胆汁酸(リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、デオキシコール酸)、サーファクチンおよび277-SECの対数濃度に対するウシ血清アルブミン(BSA;0.1mg/ml)の安定性を示すグラフである。アッセイにおけるメタノールの妨害について相殺するために、メタノール(MeOH)ベースラインをグラフに含めた。すべてのアッセイは、レポーターの蛍光色素SYPRO-Orangeの存在下、1×PBS緩衝液中で行った。
図9】hACEトランスジェニックマウスに2経鼻用量(1および14日目;2×10CFU/用量)の死滅Bacillus種芽胞(芽胞)を投薬した結果を示すグラフである。最後の用量の4日後、動物に、SARS0Cov2(10PFU)を負荷した。4日後、重要な器官および組織を回収し、PFU(プラーク形成単位)またはゲノムコピー(qPCRによる)のいずれかとして、ウイルス量について調べた。
図10】血清(IgG)(パネルA)、唾液(SIgA)(パネルB)および肺(分泌性IgA、SIgA)(パネルC)における、組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質で免疫され、PBS緩衝液(rSp)、またはB.subtilis株PY79の精製芽胞(rSp+PY79)のいずれかで経鼻的にブーストされたマウスにおける抗原(スパイク)特異的抗体応答を示すグラフである。
図11A】SARS-CoV-2(5×10PFU/50ml/用量)を鼻腔内に負荷され、1.5×10CFU/用量(30ml/用量)で、熱失活B.subtilis芽胞(SPOR-COV)の鼻腔内投薬用量で週に3回処置されたマウスの生存率(パネルA)、体重(パネルB)および疾患スコア(パネルC)を示す図である。
図11B】SARS-CoV-2(5×10PFU/50ml/用量)を鼻腔内に負荷され、1.5×10CFU/用量(30ml/用量)で、熱失活B.subtilis芽胞(SPOR-COV)の鼻腔内投薬用量で週に3回処置されたマウスの生存率(パネルA)、体重(パネルB)および疾患スコア(パネルC)を示す図である。
図12】熱死滅芽胞(SPOR-COV)の1.5×10CFU/30μlの鼻腔内用量で週に3回処置されたマウスにおける肺流入領域リンパ節(パネルA)および肺胞腔(パネルB)におけるT細胞応答を示す図である。
図13A】熱死滅芽胞(SPOR-COV)の1.5×10CFU/30μlの鼻腔内用量で週に3回処置され、芽胞の最後の用量の7日後に1×10PFU/50μlのH1N1-PR8ウイルスで負荷されたマウスの効果を示す図である。(パネルA)は、H1N1感染後の体重および肺におけるウイルス量を示す。(パネルB)および(パネルC)は、芽胞の事前処置およびH1N1感染後の肺胞腔へのT細胞動員を示し、パネル(D)は好中球およびナチュラルキラー(NK)細胞動員を示す。
図13B】熱死滅芽胞(SPOR-COV)の1.5×10CFU/30μlの鼻腔内用量で週に3回処置され、芽胞の最後の用量の7日後に1×10PFU/50μlのH1N1-PR8ウイルスで負荷されたマウスの効果を示す図である。(パネルA)は、H1N1感染後の体重および肺におけるウイルス量を示す。(パネルB)および(パネルC)は、芽胞の事前処置およびH1N1感染後の肺胞腔へのT細胞動員を示し、パネル(D)は好中球およびナチュラルキラー(NK)細胞動員を示す。
図13C】熱死滅芽胞(SPOR-COV)の1.5×10CFU/30μlの鼻腔内用量で週に3回処置され、芽胞の最後の用量の7日後に1×10PFU/50μlのH1N1-PR8ウイルスで負荷されたマウスの効果を示す図である。(パネルA)は、H1N1感染後の体重および肺におけるウイルス量を示す。(パネルB)および(パネルC)は、芽胞の事前処置およびH1N1感染後の肺胞腔へのT細胞動員を示し、パネル(D)は好中球およびナチュラルキラー(NK)細胞動員を示す。
【発明を実施するための形態】
【0248】
[実施例]
本発明者は、最初に、呼吸器系ウイルスに対して保護する芽胞形成性細菌の能力を決定し、この保護に関連する細菌によって産生される因子を特定しようと試みた。それらの知見に基づいて、本発明者は、コロナウイルスなどのウイルス感染を予防または処置するための非常に有効な経鼻投与可能な抗ウイルス剤を開発したと考えている。
【0249】
材料および方法
H5N2生存研究(図1~4および7)
マウス(Balb/c)の群を、バイオセーフティーレベル3の施設において、標準的な動物ケージ中、温度および湿度調節が確保された設備に収容した。順化の2週間後、動物にラベル付けし、群に割り当てた。動物を、麻酔し、図および下記に記載の芽胞またはビリオンを、ピペットチップ(最大20マイクロリットル/鼻孔)を使用して、経鼻的(鼻腔内に)投薬した。
【0250】
投薬は、常に、0日目および14日目であった。42日目に、動物を、麻酔し、生H5N2ウイルス(A/Aquatic Bird/Korea(H5N2))を負荷した。本文書および凡例に示されるように5 LD50または10 LD50のいずれかで、2負荷用量を使用した。A/Aquatic Bird/KoreaのHAタンパク質は、NIBRG-14(H5N1)のHAタンパク質を伴って92~93%保存されている。次いで、マウスを、インフルエンザ感染の臨床徴候について毎日モニターし、体重を毎日記録した。
【0251】
以下の懸濁液をマウスに投薬した(i.n.)。
【0252】
PBS - リン酸緩衝生理食塩水、対照として使用(無処置)。
【0253】
芽胞 - オートクレーブ処理(121℃、15psi、30分)されたB.subtilisの芽胞懸濁液。
【0254】
NIBRG-14 - HA(赤血球凝集素)μgで定義される全不活化(ホルマリン)H5N1(NIBRG-14)ウイルス。NIBRG-14は、A/Vietnam/1194/2004(クレード1)であり、the National Institute of Standards and Control(NIBSC)、UKから入手した。NIBRG-14は、他に記載されるようにして(Songら 2012)、卵から培養した。HA濃度を、標準的な特異的ヒツジ抗血清(NIBSC、UK)を使用して、SRD(一元放射免疫拡散)アッセイによって決定した。60μg/ml(HA)のNIBRG-14の懸濁液を、作業ストックとして使用した。
【0255】
一部の例において(図2および図7において)、不活化NIBRG-14ビリオンを、芽胞と経鼻的に共投与した。この場合において、NIBRG-14および芽胞試料を混合し、0.1MのPBS(pH7.2)緩衝液中で、穏やかに撹拌しながら室温で30分間、共インキュベートした。次いで、芽胞を、0.01MのPBS(pH7.2)緩衝液中の1×前懸濁液で洗浄し、投薬した。
【0256】
sqhCノックアウト研究(図5
マウスの群に、野生型PY79 B.subtilis芽胞、またはBosakら[1]のsqhC変異を持つ同系誘導体(SG768 sqhC::kan trpC2)を投薬した。両方の場合において、芽胞は、オートクレーブ処理によって死滅させた。4群の動物を、無処置と同様に使用した。それぞれの群のBalb/cマウスは、6動物であった。すべての場合における投薬レジメンは、1、15および36日目であった。使用した芽胞のそれぞれの用量は、経鼻経路による1×10個のオートクレーブ処理芽胞、および非経口(s.c.)経路による1×10個であった。使用したウイルスは、約1~1.2μgHAのH5N1(ホルムアルデヒド不活化インフルエンザA/Vietnam/1194/2004;NIBRG-14)であり、これを、単独でまたは芽胞に吸着させて、動物に投薬した。
【0257】
吸着のために、H5N1を、0.1MのPBS(pH7.2)緩衝液中で、穏やかに撹拌しながら室温で30分間、インキュベートした。次いで、芽胞を、0.01MのPBS(pH7.2)緩衝液中の1×前懸濁液で洗浄し、投薬した。
【0258】
群1:マウスに、オートクレーブ処理sqhC芽胞(1×10個)を皮下に、およびH5N1ウイルス(約1~1.2μg)を鼻腔内に投薬した。
【0259】
群2:マウスに、オートクレーブ処理PY79芽胞(1×10個)を皮下に、およびH5N1ウイルス(約1~1.2μg)を鼻腔内に投薬した。
【0260】
群3:マウスに、H5N1(約1~1.2μg)が吸着されたオートクレーブ処理sqhC芽胞(1×10個)を鼻腔内に投薬した。
【0261】
群4:マウスに、H5N1(約1~1.2μg)が吸着されたオートクレーブ処理PY79芽胞(1×10個)を鼻腔内に投薬した。
【0262】
対照群は、無処置であり、マウスは、H5N1を投薬された(経鼻的に)。
【0263】
ウイルス(H5N1)特異的SIgAを、ELISAによって決定した。
【0264】
熱シフトアッセイ(図8
熱シフトアッセイは、その両親媒性に起因して、タンパク質フォールディングの際に水溶液に露出する疎水性アミノ酸に結合する蛍光色素SYPRO-Orange(Sigma DMSOに5000×で溶解)を用いる技法である。色素は、波長λex=480nmで、それが疎水性残基と複合体化したら、励起して、λem=568nmの容易に検出可能な光シグナルを放射し得る。実験のための反応物を、0.1mg/mlのタンパク質最終濃度、10倍で保たれたSYPRO-Orange希釈液および1×のPBSを用いて、マスターミックスとして調製した。チューブ中のそれぞれの反応物の最終体積は、30μLであった。試料を、リアルタイムPCR機(StepOne Plus Applied Biosystems)において溶融し、そこでは、試料を溶融前に4℃で1時間平衡化し、次いで、99℃の温度まで、1%の温度増分(約1℃/分に相当する)で溶融した。SYPRO-Orangeの発光スペクトルがこれらの色素の発光スペクトルと重複するので、記録は、色素が多くの場合にともに働くように配置された後に名付けられた4つの記録発光チャネル、すなわちROX、FAM、VICおよびTAMRAからの蛍光を読み取るように設定した。反応を、技術的三反復で実行した。すべての実験を、タンパク質陰性対照(10×SYPRO-Orange、および緩衝液のみ)と並行して行った。サーファクチンおよび胆汁酸を、メタノール中で4mg/ml→0.015mg/mlの最終アッセイ濃度に溶解した(50%→0.2%、それぞれのステップで2倍異なる)。277 SEC希釈液を、1×PBS中で調製した。BSAの濃度は、0.1mg/mlであり、SYPRO-Orange希釈液は、10×で保った。DMSOは、アッセイ中に、0.2%の最終濃度で存在した。試料を、4℃で1時間、事前に平衡化した後、それぞれの溶融を、約1℃/分の温度増分に置いた。蛍光および温度増分のそれぞれの微分プロットからのTmの読み取りを使用して、アッセイにおいて使用された添加物の濃度に対するTmのグラフをプロットした。
【実施例1】
【0265】
経鼻的に投与された不活化Bacillus種芽胞は、インフルエンザウイルス感染に対して保護することができる
本発明者は、自然免疫を刺激する細菌芽胞を利用して、呼吸器系ウイルスコロニー形成に対する迅速な保護を提供し得ると仮説を立てた。
【0266】
結果
マウスモデルを使用して、本発明者は、死滅芽胞(芽胞)の鼻腔内投与が、悪性H5N2(A/Aquatic Bird/Korea)による致死的負荷を予防することができたことを実証した。図1は、芽胞の2回の鼻腔内投与が、負荷後少なくとも14日間持続する、10 LD50に対する100%の保護を提供したことを示す。これは、不活化インフルエンザH5N1ビリオンの2鼻腔内用量を投与されたマウスへの同等の保護であり、ワクチン製剤と同等の保護レベルを実証した。類似の研究において、60%の保護を示した(図3)。芽胞の鼻腔内用量を用量設定することによって、100%の保護を付与するために必要な用量が、≧5×10CFUであることが示された(図4)。
【0267】
考察
このデータは、死滅された、したがって代謝的に不活性なBacillusの芽胞が、粘膜経路を介して、この場合では経鼻的に投与された場合に、ウイルス感染(インフルエンザH5N2)に対する保護を付与することができることを示す。免疫する用量に関連するインフルエンザの免疫原性の非存在は、保護が自然免疫の誘導によって引き起こされることを示唆する。
【実施例2】
【0268】
アジュバント分子としてのスポルレンの特定
本発明者は、宿主において防御免疫を付与する能力が、芽胞内に含有される1種または複数の分子から生じる可能性があると最初に仮説を立てた。さらに、アジュバントが固有の免疫調節特性を持つことが公知であるので、これらの分子は、アジュバント特性を付与する可能性がある。
【0269】
結果
最初の例において、本発明者は、芽胞がアジュバント特性を持つかを評価し(図2)、次いで、免疫調節特性を付与した芽胞特異的分子の性質を決定した(図5)。
【0270】
アジュバント特性を実証するために、不活化H5N1ビリオン(A/Aquatic Bird/Korea)を使用して、マウスに、鼻腔内経路によって投薬した。用量を、0.02μgおよび0.5μgとして、赤血球凝集素(HA)単位によって定義した。図2に示すように、0.02μgのH5N1の投与は、H5N2を負荷された(10 LD50)マウスに対して保護を付与できなかった。他方で、0.5μg(HA)のH5N1ビリオンの用量は、80%の保護を提供し、この場合において、独立して確認されたウイルス特異的中和抗体の産生から生じたであろう。著しく、低用量または高用量のいずれかのH5N1ビリオンを混合し、マウスに共投与した場合(2経鼻用量)、100%の保護が観察された。最も率直な説明は、芽胞が、ビリオンと混合されると、それらの免疫原性をブーストし、このようにして、粘膜アジュバントとして作用するというものである。類似の知見が、0.02および0.1μgのHAのNIBRIG HA濃度を使用する反復研究で見出された(図7)。
【0271】
芽胞は、芽胞中でのみ見出される固有のテルペノイド分子を持つ。言及されるこれらの分子は、スポルレン(スポルレンA、BおよびC)として公知である。それらの合成の原因となるシクラーゼ酵素(スポルレノールシクラーゼ)は、sqhC遺伝子によってコードされる。テルペノイドとして、スポルレンは、スクアレンなどの公知のアジュバントとの類似性を共有する。
【0272】
本発明者は、BacillusおよびClostridiumなどの細菌種によって産生されるスポルレンが、実施例1において観察および記載された抗ウイルス特性において不可欠の役割を果たし得ると仮説を立てた。この仮説を試験するために、本発明者は、B.subtilisの(sqhC)欠陥変異株を利用し、モデルとしてH5N1共投与を使用して、アジュバントとしてのその同系親PY79(SqhC)に対してそれを試験した。
【0273】
野生型芽胞、およびスポルレノールシクラーゼを欠く同系変異体(sqhC)を調製し、次いで、オートクレーブ処理を使用して死滅させた。4群のマウスを使用して、いくつかの異なる投薬戦略を用いて、芽胞およびH5N1で免疫した(図5)。
【0274】
第1の例において、本発明者は、マウスに、H5N1の不活化ビリオン(A/Aquatic Bird/Korea)の経鼻投与と一緒に、wt(群2)またはsqhC(群1)芽胞のいずれかを皮下注射によって投薬した。この戦略を使用して、H5N1に対する粘膜免疫応答(分泌性IgA)が、sqhC芽胞を使用した場合に有意に減少したことが分かった。並行して、本発明者は、不活化H5N1ビリオンと混合された野生型(群4)またはsqhC(群3)死滅芽胞のいずれかによる鼻腔内投薬を使用して、動物群に投与した。図5に示すように、H5N1特異的免疫応答(分泌性IgA)は、ビリオンがsqhC芽胞と共投与された場合に有意に減少した。
【0275】
考察
任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者は、SqhCが、芽胞に吸着された場合に、ウイルスに対する局所/粘膜免疫応答を増強するのに役割を果たす必要があることをこれらのデータが示すと考えている。これは、群3および4の間の差から見られる(図5)。
【0276】
H5N1の芽胞への吸着は、これらが、別々の経路(群1および2対群3および4)またはH5N1送達単独によって芽胞および抗体を投薬されたマウスよりも有意に大きいので、局所/粘膜免疫応答の増強における重要な因子である(図5)。
【0277】
芽胞が別々の経路(皮下)によって送達された場合でさえ、それらは、依然として粘膜(図5)免疫応答を増強し得る(H5N1に対する群2と比較)。この現象は、ミョウバンでも見られる。
【0278】
上記の現象において、SqhC(およびそれが生成する産物であるスポルレン)は、芽胞が別々の経路によって送達される場合に、すなわち、群1および群2を比較して、粘膜免疫応答を増強するために重要でもあると思われる。
【0279】
これらの実験は、オートクレーブ処理(死滅)芽胞(芽胞)を使用して行った。スクアレンシクラーゼ遺伝子のsqhCは、細菌芽胞がスポルレンを産生するために利用するスクアレンシクラーゼ酵素(スポルレノールシンターゼ)をコードする。したがって、任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者は、生芽胞を使用して、その対照下でSqhCまたはスポルレンが変性されないことが確実である場合に、応答がより良好であると仮説を立てた。あるいは、別のプロセス、例えば、UV-Cまたはガンマ線照射によって不活化された芽胞も、SqhCが不活性化されないこと、またはそのコードされたスポルレンが変性されず、活性を保持することを確実にし得る。
【0280】
結論
したがって、要約すると、本発明者は、芽胞への吸着が、呼吸器系ウイルス感染に対する粘膜免疫応答を増強することを示した。スポルレン(その合成はSqhCに依存する)は、四環式イソプレノイドであり、このアジュバント性にとって重要であり、これは、粘膜応答に特異的であろう。
【0281】
ゲノム検索は、SqhC遺伝子が、BacillusおよびClostridiaに存在することを示した。したがって、本発明者は、他のBacillusおよびClostridiaも、SqhCホモログ、オルソログまたはSqhC等価物を有し、したがって、他の芽胞形成性細菌が、本発明者の研究に基づいて、呼吸器系ウイルス感染に対する自然免疫保護も伝達すると予測されるであろうと考えている。
【実施例3】
【0282】
Bacillus種は、抗ウイルス特性を示すバイオサーファクタントを産生する
図6は、Bacillus細胞(この場合では、Bacillus種SG277)から精製されたリポペプチドのSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)クロマトグラムを示す。特定された主要なリポペプチドは、サーファクチン(ピークSec1)、イツリン(ピークSec2)およびフェンギシン(ピークSec0)であった。これらのリポペプチドバイオサーファクタントは、Bacillus種に共通しており、株間でさまざまなレベルで見出される。
【0283】
精製SEC分画(ピークSec0+Sec1+Sec2を含む277-SEC)を使用して、我々は、このBacillus産生材料が、ウシ血清アルブミン(BSA)に対する強い変性活性を有していたことを実証した(図8)。熱シフトアッセイを使用して、我々は、BSAを変性する277-SECの能力を調べ、ここで、タンパク質の溶融温度を、試験物の濃度の増加に対してモニターした。試験物は、277-SEC、サーファクチン、および3種の胆汁酸(リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、デオキシコール酸)であった。サーファクチンおよび3種の胆汁酸は、すべて、市販の供給源から入手した。データは、277-SECの高希釈液が、BSAを変性し得る(Tmの減少によって示される)ことを示す。277-SECの構成成分であるサーファクチンも、BSAの変性において、277-SEC未満であったが強力であり、しかし277-SECおよびサーファクチンは両方とも、他の3種のバイオサーファクタントよりもはるかに強力であった。
【0284】
結論
バイオサーファクタント活性を有するBacillus産生リポペプチドは、タンパク質に対する強い変性活性を有する。本発明者は、Bacillus産生バイオサーファクタントのリポペプチドの直接接触を使用して、ウイルスエンベロープまたはカプシドタンパク質を迅速に変性させることができると考えている。
【実施例4】
【0285】
経鼻的に投与された不活化Bacillus種芽胞は、SARS-CoV2感染に対して保護することができる
hACE動物モデルの一般原則、およびSARS-Cov2感染を評価するためのその使用は、記載される通りである(Caseら Cell Host & Microbe.2020 28:1~10頁)。hACE2を過剰発現する(トランスジェニック)マウスを、実験的なインビボ研究のために使用する。マウスを、群で、バイオセーフティクラス3の設備に収容する。順化後、麻酔された動物に、0日目および14日目に、死滅Bacillus芽胞(芽胞、用量あたり2×10個)を、鼻腔内経路(鼻孔あたり20μl)によって投薬する。芽胞は、溶液中で作製し、オートクレーブ処理(121℃、15psi、30分)によって死滅させる。
【0286】
負荷のために、芽胞の最後の用量の4日後(18日目)、マウスを、麻酔し、鼻腔内経路を使用して、約10プラーク形成単位(PFU)のSARS-Cov2を投与する。体重の臨床徴候およびウイルス量を毎日モニターする。ウイルス量について、4つの組織を、負荷の4日後に調べ(図9)、肺、脾臓、心臓および鼻咽頭を調べる。鼻腔試料について、洗浄液を使用して、回収し、ウイルスのPFUを外挿する。心臓、肺および脾臓について、量は、qPCRによって外挿する。
【0287】
考察
データは、肺、脾臓、心臓および鼻洗浄液に存在するSARS-Cov-2のカウントが、ウイルス量が高いままで、感染を示す対照群と比較して、有意に低減されることを示す。芽胞が、任意のSARS-Cov2免疫原を欠くので、任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者は、感染に対する効果が、自然免疫によって引き起こされ、インフルエンザ予防のもの(実施例1)と似ている可能性が最も高いと判断する。本発明者は、根本的な機構が、類似しており、SqhCを多分含むTLRと芽胞との相互作用に由来するはずであるとさらに判断する。
【実施例5】
【0288】
Bacillus種芽胞は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するアジュバント効果を実証する
マウス(Balb-C;雌、8週齢)を、1日目に、組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sino-Biological(カタログ:40589-V08B1;アミノ酸16~1213))で免疫した。タンパク質を、アジュバント(Addavax、Invitrogen)と混合し、筋肉内注射によって投与した。14日目および28日目に、マウスを、PBS緩衝液(対照)またはB.subtilis株PY79の精製芽胞(PBS緩衝液に懸濁された2×10CFU/用量)のいずれかで、経鼻的にブーストした(鼻腔内、i.n.;20マイクロリットル)。
【0289】
結果
抗原(スパイク)特異的抗体応答を、42日目に、血清(IgG)(パネルA)、唾液(SIgA)(パネルB)およびELISAによって肺(分泌性IgA、SIgA)(パネルC)において決定した。
【0290】
図10に示すように、経鼻経路を使用して、B.subtilis株PY79の精製生芽胞によりマウスをブーストすることで、肺および唾液における抗原特異的SIgAの力価、ならびに血清におけるIgGを増加させることによって、免疫が増大する。
【0291】
結論
SIgAなどの粘膜応答を増大する能力は、既存のコロナウイルスワクチンのために重要であり、芽胞が、非経口経路によって投与された抗原に対する固有の新規アジュバント効果を発揮することを実証する。そのため、このデータは、芽胞が、それらの性能を増強し、免疫応答を強化することによって、既存のコロナウイルスワクチンを改善するための有用性を有することを実証する。
【実施例6】
【0292】
Bacillus種芽胞は、SARS-CoV-2による感染に対する保護を提供する
雄K18-hACE2トランスジェニックマウス(n=5/群)を、1.5×10CFU/用量(30μl/用量)で、熱失活B.subtilis芽胞(SPOR-COV)の鼻腔内用量(1、7および14日目)で週に3回処置した。B.subtilis株SG188(SPOR-COV)の芽胞を、オートクレーブ処理(121℃、15psi、20分)し、生存能力を有さなかかった。最後の用量の7日後、マウスを、SARS-CoV-2(5×10PFU/50μl/用量)で負荷した(鼻腔内)。
【0293】
結果
図11は、(i)B.subtilis芽胞および偽感染、(ii)B.subtilis芽胞およびSARS-CoV-2、または(iii)SARS-CoV-2およびPBSの処置レジメン後のマウスの生存パーセント(パネルA)、体重(パネルB)および疾患スコア(パネルC)を示す。パネルA1に示すように、本発明者は、驚くべきことに、不活化B.subtilis芽胞によるマウスの経鼻投薬が、致死的用量のSARS-CoV-2に対する80%の保護を提供したことを見出した。対照的に、SARS-CoV-2およびPBSによる処置は、マウスにおいて、0%の生存率をもたらした。
【0294】
結論
このデータは、B.subtilisの熱失活芽胞が、B.subtilis芽胞により処置されたマウスの80%の生存によって実証されるように、粘膜経路を介して投与された場合に、コロナウイルス感染に対する有効な保護を付与することができることを示す。したがって、これは、芽胞が、コロナウイルス感染後に、SARS-CoV-2に対して保護するおよび生存率を改善する能力を有することを実証する。
【実施例7】
【0295】
芽胞の事前処置は、CD4およびγδ T細胞を動員する
マウスを、熱死滅芽胞(SPOR-COV)の1.5×10CFU/30μlの鼻腔内用量で週に3回処置した。芽胞の最後の用量の7日後、縦隔LN(mLN)(図12A)および気管支肺胞洗浄液(BALF)(図12B)を、T細胞サブセット分類のために収集した。
【0296】
結果
図12Aおよび12Bに示すように、芽胞は、肺流入領域リンパ節(LN)および肺胞腔へのT細胞動員の増加を誘導した。
【0297】
マウス(雄C57BL/6、群あたり5頭のマウス)を、熱死滅芽胞の1.5×10CFU/30μlの鼻腔内用量で週に3回処置し、芽胞の最後の用量の7日後に1×10PFU/50μlのH1N1-PR8ウイルス(インフルエンザ)で負荷した。マウスを、感染の5日後に選別して、ウイルス力価検出のために肺、および免疫細胞分析のためにBALFを収集した。
【0298】
結果
図13Aに示すように、芽胞による事前処置は、H1N1感染後の肺におけるウイルス量を低減した。加えて、図13Bおよび13Cは、芽胞の事前処置が、H1N1感染の間に、肺胞腔へのCD4、CD8およびγδ T細胞動員を増強したことを示す。さらにまた、本発明者は、驚くべきことに、芽胞の事前処置が、H1N1感染5日後に、肺胞腔へのNK細胞動員を低減したことを見出した。
【0299】
結論
したがって、本発明者は、芽胞処置によって動員された気管支肺胞洗浄液のCD4およびγδ T細胞が、H1N1感染の間に組織損傷を寛解させる調節性の役割を有し得ると仮説を立てた。加えて、H1N1感染の間に肺胞腔において観察されたNK細胞の低減されたレベルに起因して、本発明者はまた、豊富なNK細胞浸潤が、ウイルス性肺炎における肺組織損傷の一因となり得ると仮説を立てた。
【0300】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
【配列表】
2023539682000001.xml
【国際調査報告】