(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】界面活性剤
(51)【国際特許分類】
C07D 307/68 20060101AFI20230908BHJP
C09K 23/00 20220101ALI20230908BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230908BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230908BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230908BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20230908BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230908BHJP
【FI】
C07D307/68 CSP
C09K23/00
A61K8/49
A61K47/22
A61K9/10
A61K8/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514470
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 GB2021052271
(87)【国際公開番号】W WO2022049384
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519426058
【氏名又は名称】インペリアル カレッジ イノベイションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Level 1 Faculty Building, C/O Imperial College, Exhibition Road London SW7 2AZ, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アル ガッタ,アミール
(72)【発明者】
【氏名】ハレット,ジェイソン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】コントレラス,ラウル イグナシオ アラベナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4D077
4H039
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076DD59F
4C076FF16
4C083AC841
4C083BB01
4C083CC01
4C083DD31
4C083EE07
4C083FF01
4D077AA03
4D077AA04
4D077AA09
4D077AB03
4D077AB10
4D077AB11
4D077AB12
4D077AC01
4D077BA03
4D077CA03
4D077CA04
4D077CA15
4D077DC07X
4D077DC26X
4D077DC32X
4D077DC59X
4H039CA66
(57)【要約】
本発明は、式(I)による脂肪族アルコールとフロ酸のエステル化から誘導可能な化合物に関する。また、本発明は、前記化合物の界面活性剤としての使用、前記化合物を含む組成物、および前記化合物の製造に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、R
1は
【化2】
であり、Xはカチオンであり、R
2は非環式C
8~C
18脂肪族基である)。
【請求項2】
Xがアルカリ金属カチオン、例えばナトリウムカチオン、カリウムカチオン、リチウムカチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオンまたはアンモニウムカチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xがナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xがナトリウムカチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
2が直鎖状C
8~C
18脂肪族基である、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
R
2が直鎖状C
8~C
18アルキル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R
2が直鎖状C
8、C
12またはC
16アルキル基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R
2が不飽和直鎖状C
8~C
18脂肪族基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ia)の構造:
【化3】
を有する、請求項1から8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
式(Ib)の構造:
【化4】
を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
【化5】
の構造を有する、請求項1から9のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の化合物の界面活性剤としての使用。
【請求項13】
洗浄剤組成物、パーソナルケア組成物、油回収組成物、医薬組成物、薬物送達組成物、農業用組成物、コーティング組成物、または塗料組成物である、請求項1から11のいずれかに記載の化合物を含む組成物。
【請求項14】
任意選択で請求項13の組成物である、請求項1から11のいずれかに記載の2種以上の化合物の混合物を含む組成物。
【請求項15】
R
2が非環式C
8脂肪族である請求項1から11のいずれかに記載の化合物、およびR
2が非環式C
12またはC
16脂肪族である請求項1から11のいずれかに記載の化合物を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
式(Ia)の化合物:
【化6】
を製造するための方法であって、
a)式(II)の化合物:
【化7】
をスルホン化剤と接触させるステップ、および
b)塩基を添加して前記式(Ia)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR
2が請求項1から9のいずれかに定義される通りである、方法。
【請求項17】
前記スルホン化剤が、ピリジン/三酸化硫黄錯体、オレウム、三酸化硫黄またはクロロスルホン酸から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基がアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(Ib)の化合物:
【化8】
を製造するための方法であって、
a)式(II)の化合物:
【化9】
をカルボキシル化剤と接触させるステップ、および
b)酸を添加して前記式(Ib)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR
2が請求項1から8および10のいずれかに定義される通りである、方法。
【請求項20】
前記カルボキシル化剤が二酸化炭素である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップa)が、(i)式(II)の化合物、(ii)二酸化炭素、および(iii)アルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、またはそれらの組合せの混合物を提供することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップa)が、(i)式(II)の化合物、(ii)二酸化炭素、および(iii)炭酸カリウムもしくは炭酸セシウム、またはそれらの組合せの混合物を提供することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ステップa)が、200~300℃の範囲の温度および8~40barの圧力で実施される、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
フロ酸を式(III)の化合物:
【化10】
(式中、R
2は、請求項1および5から8のいずれかに定義される通りである)と、任意選択で酸の存在下で接触させることによって式(II)の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項16から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記方法が酸の存在下で実施され、前記酸が硫酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記硫酸が、式(II)の化合物の量に対して少なくとも1.0mol%の量で提供される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
フルフラールを式(III)の化合物:
【化11】
(式中、R
2は、請求項1および5から8のいずれかに定義される通りである)と、酸素源および触媒の存在下で接触させることによって式(II)の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項16~23のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記酸素源がジ-tert-ブチルペルオキシドまたは過酸化水素から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記触媒が貴金属または遷移金属を含む、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記貴金属または遷移金属が、金、パラジウム、白金、ルテニウム、マンガン、コバルトまたはバナジウムからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から11のいずれかに記載の化合物およびドデシル硫酸ナトリウムを含む組成物。
【請求項32】
式(II)の化合物:
【化12】
(式中、R
2は、請求項1および5から8のいずれかに定義される通りである)。
【請求項33】
式(II)の化合物:
【化13】
を製造するための方法であって、
フロ酸を式(III)の化合物:
【化14】
(式中、R
2は、請求項1および5から8のいずれかに定義される通りである)と、任意選択で酸の存在下で接触させるステップを含む、方法。
【請求項34】
酸の存在下で実施され、前記酸が硫酸である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記硫酸が、式(II)の化合物の量に対して1.0mol%~2.0mol%の量で提供される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
式(II)の化合物:
【化15】
を製造するための方法であって、
フルフラールを式(III)の化合物:
【化16】
(式中、R
2は、請求項1および5から8のいずれかに定義される通りである)と、酸素源および触媒の存在下で接触させるステップを含む、方法。
【請求項37】
前記酸素源がジ-tert-ブチルペルオキシドまたは過酸化水素から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記触媒が貴金属または遷移金属を含む、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記貴金属または遷移金属が、金、パラジウム、白金、ルテニウム、マンガン、コバルトまたはバナジウムからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤として機能することができる化合物、洗浄剤におけるその使用、および前記化合物の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、最も使用されている化学製品の1つであり、大量に商業化され、多くの異なる分野、例えば家庭用、工業用、農業用およびパーソナルケア製品で応用されている。生産される量が多いため、使用される原料、合成手順、生分解性および配合などの面で持続可能であることが、界面活性剤の成功を評価する重要なパラメータである。
【0003】
界面活性剤の設計は、界面活性剤化合物の親水性および疎水性部分の化学構造の選択に基づく。界面活性剤の評価は、臨界ミセル濃度(CMC)、クラフト温度(KP)、硬水への耐性、起泡性、溶解性、乳化特性、毒性および生分解性などの様々なパラメータを評価することによって達成されてもよい。これらすべてのパラメータの間の良好な妥協点に達するために、多くの公知の洗浄剤は、異なる化学化合物の配合物であり、ここで界面活性剤は、配合物の15~40%を占める有効成分であり、界面活性剤の性能を最適化するために、ビルダー、キレート剤およびハイドロトロープなどの添加剤が含まれる。
【0004】
直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)は、Suri,S.K.;Thakur,M.S.;Bhardwaj,S.;J.Am.Oil Chem.Soc.1993,70(1),59~64.https://doi.org/10.1007/BF02545368に記載されるように、洗浄剤用途における界面活性剤として広範に使用されている。しかし、適切な洗浄特性を持つ洗浄剤配合物を得るために、LASに添加剤をブレンドする必要がある。LASの特性を調整するために存在しなければならない添加剤の一部は、環境に害を及ぼすと考えられる。例えば、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびニトリロ三酢酸ナトリウムは、LASの硬水耐性を高めるために使用されるが、ヒトおよび/または水生生物に対して有毒とみなされる。現在、ゼオライトまたはクエン酸など、他のより環境に優しいビルダーが使用されているが、これらの添加剤はより高価であり、および/または洗浄剤に配合するのがより困難である。
【0005】
また、LASは再生不可能な石油系原料から作製される。このため、LASの代替として、パーム核、ヤシ油または脂肪酸などの再生可能資源から生産可能なバイオ由来のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が使用されてきた。しかし、SDSは硬水中で性能が乏しく、高いCMCを示し、LASと同様に、性能を向上させるために高価および/または環境に有害な添加剤を配合しなければならないため、有用性は限定的であった。
【0006】
代替的な界面活性剤は、Gassamaら,Green Chem,2013,15,1558~1566、Krausおよびee,J.Surfact.Deterg.(2013)16:317~320、US20170226075ならびにUS20180327375で提案されている。
【0007】
バイオ再生可能および/または低コスト原料から誘導可能である、硬水中で性能が良好である、溶解性が高いおよび/またはCMCが低いなどの向上した特性を有する新規の界面活性剤を提供することが依然として望ましい。また、新規の界面活性剤は、より少ないビルダー、キレート剤およびハイドロトロープを使用しながら洗浄剤に配合可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、脂肪族アルコールとフロ酸のエステル化から誘導される新規のクラスの界面活性剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、式(I)の化合物:
【0010】
【0011】
(式中、R1は
【0012】
【0013】
であり、Xはカチオンであり、R2は非環式C8~C18脂肪族基である)
が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様は、式(I)の化合物の界面活性剤としての使用に関する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、式(I)の化合物を含む組成物を提供し、組成物は、洗浄剤組成物、パーソナルケア組成物、油回収組成物、医薬組成物、農業用組成物または塗料組成物である。
【0016】
第4の態様では、本発明は、式(Ia)の化合物:
【0017】
【0018】
を製造するための方法であって、
a)式(II)の化合物:
【0019】
【0020】
をスルホン化剤と接触させるステップ、および
b)塩基を添加して式(Ia)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR2が本発明の第1の態様で定義される通りである方法を提供する。
【0021】
第5の態様では、本発明は、式(Ib)の化合物:
【0022】
【0023】
を製造するための方法であって、
a)式(II)の化合物:
【0024】
【0025】
をカルボキシル化剤と接触させるステップ、および
b)酸を添加して式(Ib)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR2が本発明の第1の態様で定義される通りである方法を提供する。
【0026】
第6の態様では、本発明は、式(I)の化合物およびドデシル硫酸ナトリウムを含む組成物を提供する。
【0027】
第7の態様では、本発明は、R2が本発明の第1の態様で定義される通りである、式(II)の化合物を提供する。
【0028】
第8の態様では、本発明は、式(II)の化合物:
【0029】
【0030】
を製造するための方法であって、
フロ酸を式(III)の化合物:
【0031】
【0032】
(式中、R2は本発明の第1の態様で定義される通りである)と、任意選択で酸の存在下で接触させるステップを含む、方法を提供する。
【0033】
第9の態様では、本発明は、式(II)の化合物:
【0034】
【0035】
を製造するための方法であって、
フルフラールを式(III)の化合物:
【0036】
【0037】
(式中、R2は本発明の第1の態様で定義される通りである)と、酸素源および触媒の存在下で接触させるステップ
を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】-様々な濃度での表面張力の測定-界面活性剤濃度の関数としての様々な界面活性剤の水溶液の表面張力の変化を示すグラフである。
【
図2】-CMCの2倍の界面活性剤の濃度で実施されたオクタノール中の水/界面活性剤溶液の液滴形成-オクタノール中の界面活性剤溶液の表面張力を測定するために使用された液滴実験の画像を示す図である。
【
図3】様々な触媒の存在下でのドデカノールとフロ酸の間の反応から得られたフロ酸ドデシルの量を示すグラフである。
【
図4】フロ酸ドデシルの生成速度が、反応に存在する硫酸触媒の量によってどのように影響されるかを示すグラフである。
【
図5】フロ酸オクチルがクロロスルホン酸によってスルホン化される速度が、反応温度によってどのように影響されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の第1の態様では、式(I)の化合物:
【0040】
【0041】
(式中、R1は
【0042】
【0043】
であり、Xはカチオンであり、R2は非環式C8~C18脂肪族基である)
が提供される。
【0044】
式(I)の化合物では、Xはカチオンである。Xは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたはアンモニウムカチオンであってもよい。Xは、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、リチウムカチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであってもよい。Xは、アルカリ金属カチオン、例えばナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンであってもよい。
【0045】
R2は、非環式C8~C18脂肪族基である。R2は、飽和非環式C8~C18脂肪族基、例えばC8~C18アルキル基であってもよい。R2は、不飽和非環式C8~C18脂肪族基、例えばC8~C18アルケンであってもよい。R2は、直鎖状C8~C18脂肪族基であってもよい。したがって、R2は、直鎖状C8~C18アルキル基であってもよい。R2は、代替的に、分枝状C8~C18アルキル基であってもよい。R2はまた、不飽和直鎖状C8~C18脂肪族基であってもよい。
【0046】
R2は、8~18個の炭素原子を含有する。R2は、8個~16個の炭素原子を含有してもよい。R2は、例えば、C8脂肪族基、C12脂肪族基またはC16脂肪族基であってもよい。実際、R2は、直鎖状C8アルキル基、直鎖状C12アルキル基、または直鎖状C16アルキル基であってもよい。
【0047】
R1は、
【0048】
【0049】
のいずれかである。したがって、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物:
【0050】
【0051】
(式中、R2は、上述の非環式C8~C18脂肪族基である)を含む。式(I)の化合物はまた、式(Ib)の化合物:
【0052】
【0053】
(式中、R2は、上述の非環式C8~C18脂肪族基である)を含む。
【0054】
式(I)の例示的な化合物は、
【0055】
【0056】
を含む。
【0057】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の化合物の界面活性剤としての使用に関する。第1の態様の化合物、または第1の態様の化合物の混合物は、界面活性剤として使用され得る。本発明の第1の態様の化合物は、洗浄剤組成物に使用され得る。本発明の第1の態様の化合物は、表面から汚染物質を除去するために使用され得る。例示的な表面には、セラミック、金属、ガラス、プラスチック、布、またはこれらのいくつかの組合せが含まれる。
【0058】
本発明の第3の態様は、第1の態様の化合物を洗浄剤組成物中に提供することに関する。したがって、洗浄剤組成物は、第1の態様の化合物、または2種以上の化合物の混合物を含んでもよい。洗浄剤組成物は、担体および/または1種もしくは複数の添加剤を含んでもよく、例えば、洗浄剤組成物は、1種もしくは複数のビルダー、キレート剤またはハイドロトロープ、およびそれらの組合せも含んでもよい。例示的なビルダーには、ゼオライトおよびクエン酸が含まれる。例示的なキレート剤には、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびニトリロ三酢酸ナトリウムが含まれる。例示的なハイドロトロープには、尿素、トシル酸塩(トルエンスルホン酸のナトリウム塩またはトルエンスルホン酸のカリウム塩など)、クメンスルホン酸塩(クメンスルホン酸のナトリウム塩またはクメンスルホン酸のアンモニウム塩など)、およびキシレンスルホン酸塩(キシレンスルホン酸のカリウム塩、キシレンスルホン酸のカルシウム塩またはキシレンスルホン酸のアンモニウム塩など)が含まれる。洗浄剤組成物は、ハイドロトロープを含まなくてもよい。これらの添加剤のいずれかを最終配合物に含有させ、洗浄剤の特性をさらに増強することができる。洗浄剤におけるそれらの使用に加え、第1の態様の化合物は、パーソナルケア組成物、油回収組成物、医薬組成物、薬物送達組成物、農業用組成物、コーティング組成物、または塗料組成物の一部として使用されてもよい。第1の態様の化合物は、乳化を必要とする任意の配合または方法(例えば、ラジカル重合方法)において使用されてもよい。
【0059】
第1の態様の2種以上の化合物の混合物を含む組成物が提供されてもよい。
【0060】
界面活性剤としておよび/または洗浄剤組成物で使用するために提供され得る第1の態様の化合物の混合物は、第1の態様の2種以上の化合物を含んでもよい。第1の態様の2種以上の化合物の混合物はまた、パーソナルケア組成物、油回収組成物、医薬組成物、薬物送達組成物、農業用組成物、コーティング組成物、または塗料組成物中に提供されてもよい。このような混合物では、2種以上の化合物は、異なる鎖長のR2基を有してもよい。混合物は、R2が非環式C8~C11脂肪族である第1の態様の化合物、およびR2が非環式C12~C18脂肪族である第1の態様の化合物を含んでもよい。例えば、混合物は、R2が非環式C8脂肪族である第1の態様の化合物、およびR2が非環式C12~C18脂肪族である第1の態様の化合物を含んでもよい。混合物は、R2が直鎖状または分枝状C8アルキル(例えば直鎖状C8アルキル)である化合物、およびR2が直鎖状または分枝状C12~C18アルキル(例えば直鎖状C12~C18アルキル)である化合物を含んでもよい。混合物は、R2が直鎖状または分枝状C8アルキル(例えば直鎖状C8アルキル)である化合物、およびR2が直鎖状または分枝状C12~C18アルキル(例えば直鎖状C12~C18アルキル)である化合物を含んでもよい。混合物は、R2が直鎖状または分枝状C8アルキル(例えば直鎖状C8アルキル)である化合物、およびR2が直鎖状または分枝状C12またはC16アルキル(例えば直鎖状C12またはC16アルキル)である化合物を含んでもよい。混合物は、R2が直鎖状または分枝状C8アルキル(例えば直鎖状C8アルキル)である化合物、およびR2が直鎖状または分枝状C12アルキル(例えば直鎖状C12アルキル)である化合物を含んでもよい。
【0061】
混合物は、
【0062】
【0063】
の2種以上の混合物、例えば
【0064】
【0065】
の混合物を含んでもよい。上記の混合物のいずれかは、2種の化合物を約2:1~1:2、例えば約1:1の重量比で含んでもよい。
【0066】
式(I)の化合物の合成
式(I)の化合物は、以下の合成ルートによって調製され得る:
【0067】
【0068】
(式中、R1およびR2は前述の通りである)。
【0069】
したがって、本発明の第4の態様は、式(Ia)の化合物:
【0070】
【0071】
を製造するための方法であって、
a)式(II)の化合物:
【0072】
【0073】
をスルホン化剤と接触させるステップ、および
b)塩基を添加して式(Ia)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR2が上述の通りである方法を提供する。
【0074】
方法のステップa)は、式(II)の化合物をスルホン化剤と接触させることを必要とする。スルホン化剤は、ピリジン/三酸化硫黄錯体、オレウム、三酸化硫黄またはクロロスルホン酸であってもよい。スルホン化剤(例えばクロロスルホン酸)は、提供される式(II)の化合物の量に対して、少なくとも化学量論量(1:1のモル比)で提供されてもよい。スルホン化剤(例えば、クロロスルホン酸)は、提供される式(II)の化合物の量に対して過剰に提供されてもよい。例えば、スルホン化剤(例えばクロロスルホン酸)は、式(II)の化合物の量に対して1.05以上の当量で提供されてもよい。
【0075】
ステップa)は、溶媒を用いてまたは用いずに実施されてもよい。溶媒が使用される場合、溶媒としてクロロホルムが使用されてもよい。また、溶媒として液体二酸化硫黄が使用されてもよく、例えばスルホン化剤としての可溶化された三酸化硫黄とともに、液体二酸化硫黄が溶媒として使用されてもよい。
【0076】
ステップa)は、20℃以上の温度で実施されてもよい。例えば、60℃以上の温度が使用されてもよく、60℃~80℃の範囲の温度が使用されてもよく、または60℃~70℃の範囲の温度が使用されてもよい。
【0077】
方法のステップb)は、式(Ia)の化合物が洗浄剤として使用するために提供される形態の塩として得られるように、塩基の添加を必要とする。塩基は、中和を達成するために、例えばpH7以上に達するように添加されてもよい。適切な塩基には、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩が含まれる。適切なアルカリ金属水酸化物には、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが含まれる。適切なアルカリ金属炭酸塩には、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが含まれる。
【0078】
本発明の第5の態様は、式(Ib)の化合物:
【0079】
【0080】
を製造するための方法であって、
a)式(II)の化合物:
【0081】
【0082】
をカルボキシル化剤と接触させるステップ、および
b)酸を添加して式(Ib)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR2が上述の通りである方法を提供する。
【0083】
方法のステップa)は、式(II)の化合物をカルボキシル化剤と接触させることを必要とする。カルボキシル化剤は二酸化炭素であってもよい。この反応は、i)式(II)の化合物、ii)二酸化炭素、およびiii)アルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、またはそれらの組合せの混合物を提供することによって向上させることができる。例えば、成分iii)は、炭酸カリウムもしくは炭酸セシウム、またはそれらの組合せであってもよい。ステップa)は、約200~約300℃の範囲の温度および約8bar~約40barの圧力で行われてもよい。
【0084】
方法のステップb)は、式(Ia)の化合物が洗浄剤として使用するために提供される形態の塩として得られるように、酸の添加を必要とする。酸は、中和を達成するために、例えばpH7以下に到達するように添加されてもよい。
【0085】
式(Ia)または式(Ib)による化合物を作製するための方法はまた、最初に式(II)の化合物を調製するステップを含むことができる。これは、脂肪族アルコールとフラン誘導体との間でエステルを形成することによって達成され得る。例えば、式(II)の化合物は、フロ酸を式(III)の化合物:
【0086】
【0087】
(式中、R2は、上記で定義される非環式C8~C18脂肪族基である)と、任意選択で触媒としての酸の存在下で接触させることによって調製され得る。
【0088】
この反応は、提供される式(III)の化合物の量に対して過剰のフロ酸を使用して実施されてもよい。例えば、ここでフロ酸は、式(III)の化合物の量に対して1.2以上の当量で提供されてもよい。あるいは、反応は、提供されるフロ酸の量に対して過剰の式(III)の化合物を使用して実施されてもよい。
【0089】
方法は、酸触媒の存在下で実施されてもよい。酸触媒は、ルイス酸またはブレンステッド酸であってもよい。酸は、提供される式(III)の化合物の量に対して0.1~10.0mol%、例えば0.1~5.0mol%、0.1~2.0mol%、0.1~1.0mol%、または1.0~2.0mol%の量で提供されてもよい。
【0090】
酸は、硫酸、またはスルホン酸官能基を含むポリマー(周知の例として、Nafion、Aberlyst-15またはPurolite-C450が挙げられる)であってもよい。酸は、提供される式(III)の化合物の量に対して1.0~2.0mol%の量で提供される硫酸であってもよい。
【0091】
方法は、酸が存在することなく実施されてもよい。例えば、方法は、溶媒を用いずに、かつ酸を用いずに160℃以上の温度で実施されてもよい。
【0092】
反応は、溶媒を用いてまたは用いずに実施されてもよい。溶媒を用いずに反応を実施する場合、反応は、提供されるフロ酸に式(III)の化合物を可溶化するのに十分に高い温度で実施されてもよい。例えば、120℃以上の温度が使用されてもよく、または140℃以上の温度が使用されてもよく、または140℃~160℃の範囲の温度が使用されてもよい。溶媒を用いて反応を実施する場合、非プロトン性有機溶媒が使用されてもよい。溶媒が使用される場合、反応は60℃以上の温度で実施されてもよい。
【0093】
式(II)の化合物を調製する代替的な方法は、フルフラールを式(III)の化合物:
【0094】
【0095】
(式中、R2は上記で定義される非環式C8~C18脂肪族基である)と、酸素源および触媒の存在下で接触させることである。
【0096】
この方法では、適切な酸素源は、ジ-tert-ブチルペルオキシドまたは過酸化水素またはガス状酸素もしくは空気であってもよい。適切な触媒は、貴金属または遷移金属を含んでもよい。貴金属または遷移金属は、ゼロ価であってもよく、または金属錯体の一部であってもよい。適切な貴金属または遷移金属錯体には、貴金属カルベンまたは遷移金属カルベンが含まれる。貴金属または遷移金属は、バルクで、または別の物質に担持されて触媒として使用されてもよい。適切な担体は、炭素、チタニア、ゼオライトまたはジルコニアを含んでもよい。適切な貴金属または遷移金属には、金、パラジウム、白金、ルテニウム、マンガン、コバルトまたはバナジウムが含まれる。
式(I)の化合物およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む組成物
式(I)の化合物がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)との混合物の一部として提供されると、混合物は、向上した水への溶解性を示すことが見出された。
【0097】
したがって、本発明の第6の態様は、上記で定義される式(I)の化合物およびSDSを含む組成物を提供する。組成物は、式(I)の化合物とSDSの様々な比で提供されてもよく、例えば、それらはそれぞれ約1:6~約6:1の式(I)の化合物とSDSの質量比で提供されてもよい。組成物は、R1が
【0098】
【0099】
であり、R2が直鎖状C12アルキルである式(I)の化合物、およびSDSを含んでもよく、ここで質量比は約6:1である。
【0100】
組成物は、
【0101】
【0102】
およびSDSを含んでもよく、ここで質量比は約6:1である。
【0103】
式(II)の化合物
本発明の第7の態様は、式(II)の化合物:
【0104】
【0105】
(式中、R2は上記で定義される通りである)
を提供する。
【0106】
したがって、本発明の第8の態様は、式(II)の化合物:
【0107】
【0108】
を製造するための方法であって、
フロ酸を式(III)の化合物:
【0109】
【0110】
(式中、R2は本発明の第1の態様で定義される通りである)と、任意選択で酸の存在下で接触させるステップを含む、方法を提供する。この方法を実施するために使用され得る条件は、式(II)の化合物がフロ酸から得られる場合に、本発明の第4および第5の態様に関連して上述されたものである。
【0111】
同様に、本発明の第9の態様は、式(II)の化合物:
【0112】
【0113】
を製造するための方法であって、
フルフラールを式(III)の化合物:
【0114】
【0115】
(式中、R2は本発明の第1の態様で定義される通りである)と、酸素源および触媒の存在下で接触させるステップを含む、方法を提供する。この方法を実施するために使用され得る条件は、式(II)の化合物がフルフラールから得られる場合に、本発明の第4および第5の態様に関連して上述されたものである。
【0116】
本明細書で使用される「脂肪族」という用語は、直鎖状(すなわち、非分枝状)、分枝状、非環式、環式またはそれらの組合せであってもよい、飽和と不飽和の両方の非芳香族炭化水素を含む。用語「脂肪族」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびシクロアルケニル部分を含む。本明細書で使用される「非環式族」という用語は、飽和と不飽和の両方の炭化水素を含み、これらは直鎖状または分枝状であってもよい。不飽和非環式脂肪族は、1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合または三重結合を含有する。「非環式脂肪族」という用語は、直鎖状もしくは分枝状アルキル(完全飽和)、アルケニル(少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む)またはアルキニル(少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む)部位を含む。
【0117】
本明細書で使用される「スルホン化剤」という用語は、有機化合物にスルホン酸基を付与するために使用可能な試薬を指す。本明細書で使用される「カルボキシル化剤」という用語は、有機化合物にカルボン酸基を付与するために使用可能な試薬を指す。
【0118】
本明細書で使用される「アンモニウムカチオン」という用語は、[NH4]+カチオン、第一級アンモニウムカチオン([NH3R]+)、第二級アンモニウムカチオン([NH2R]2
+)、第三級アンモニウムカチオン([NHR3]+)または第四級アンモニウムカチオン([NR4]+)を指す。各Rは、独立して炭化水素、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、または脂肪族部分と芳香族部分の両方を含む炭化水素であってもよい。脂肪族炭化水素は、例えばアルキル基であってもよい。アルキル基は、例えばC1~C18アルキル基、C1~C12アルキル基、またはC1~C6アルキル基であってもよい。Rが芳香族基を含む場合、例えばRがフェニル基またはベンジル基である場合、芳香族基は、例えば、1つもしくは複数のハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素)、または1つもしくは複数のアルキル基で任意選択で置換されてもよい。
【0119】
「約」という用語は、およそ、その範囲内、おおよそ、または周辺を意味するように本明細書で使用される。用語「約」が数値範囲と関連して使用される場合、記載された数値範囲の上下の境界まで拡張することによってその範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、数値を10%のばらつきで記載された値の上下に修正するために本明細書で使用される。
【0120】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という単語、ならびに単語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがこれらに限定されない」を意味し、他の成分を排除することを意図しない(かつ排除しない)。本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、「含む」への言及は、「から本質的になる」および「からなる」も包含する。
【0121】
次に、以下の非限定的な例を参照することにより、本開示をより詳細に説明する。
【実施例】
【0122】
略称:
LAS=直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム、
SDBS=ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、
SAF=スルホン化フロ酸アルキル
材料:
フロ酸(98%)、1-オクタノール(>99%)、1-ドデカノール、1-ヘキサデカノール(99%)、発煙硫酸(20%SO3)、クロロスルホン酸(99%)、三酸化硫黄ピリジン錯体(97%)、医薬グレードドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)およびドデシル硫酸ナトリウムを、Sigma Aldrichから入手した。フロ酸オクチル(>97%)をTCIから入手した。ジクロロメタン(DCM)、クロロホルムおよび硫酸(5M)をVWRから入手した。クロロホルムを水で洗浄することによって(3:1の比で3回)エタノールから精製し、蒸留塔で五酸化リンで蒸留した。溶媒を、分解を避けるために暗い容器に保管した。別様に記載されない限り、他の化学物質はすべて精製せずに使用された。
【実施例1】
【0123】
フロ酸オクチルの合成
丸底フラスコでオクタノール(100g、0.768mol、1当量)をフロ酸(103.3g、0.926、1.2当量)と混合した後、硫酸(オクタノールに対して1mol%、1.54ml)を添加した。反応物を140℃で加熱し、アルコールが完全に消費されるまで放置した(4~5時間)。反応混合物をDCM(200ml)で希釈し、濾過して副生成物および未反応のフロ酸を除去した。有機相を水(400ml)で洗浄し、中性pHに達するまで残存する酸性を除去した。エマルジョンは遠心分離で分解できなかったため、洗浄中に塩化ナトリウムまたはエタノールを添加して相を分離する必要があった。真空下で溶媒を除去すると、粗生成物が得られた(収率90%)。生成物を、真空下で活性炭下で蒸留することによってさらに精製した。
【0124】
フロ酸オクチル:1H NMR (DMSO-d6): δ 8 (m, -C-CH-O-, ), 7.3, 6.7 (m x 2, 2 x 1H, 2 x C-CH-C), 4.23 (t, 2H, O-CH2-CH2, JHH =6.6 Hz), 1.66, 1.4-1.8 (m, CH2アルキル鎖), 0.86 (m, CH
2
-CH3). 13C{1H} NMR (DMSO-d6): δ 159.9 (C=O), 147.8 (CH-C-C=O), 144.6 (O-CH-CH), 119, 113 (-C-CH-CH-C), 65 (O-CH2-CH2), 31.7,31.1,29.1,28.7,25.8,22.7 (6 X C, C-CH2-C), 14.4 (-CH2-CH3) ppm. MS (ES, 負モード): m/z =225.1486. FT-IR : 1705 cm-1 (O-C=O伸縮).
【実施例2】
【0125】
スルホン化フロ酸オクチル(SAF-8)の合成
フロ酸オクチル(30g、0.134mol)を乾燥クロロホルム(1l)に添加し、完全な溶解が達成されるまで室温で混合した。次に、反応フラスコを水が充填されたバブラーに接続し、そこから生成されたHClを排出させた。次に、クロロスルホン酸(CSA)を添加した(16.6g、0.140mol、1.05当量)。バブラーで泡立ちが観察されなくなるまで反応を放置し、次に1H NMR分光法によって分析し、エステルの完全な変換およびCSAの大部分の反応によって反応が完了したことを確認した(CSAシフト:10.9ppm)。クロロホルムを真空下で除去して緑色の溶液を得、これを水で希釈し、水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和した。次に、水を真空下で除去して、粗生成物を黒色固体として得た。生成物は、ジクロロメタンに溶解して濾過し、その後ジエチル(200ml)で3回洗浄することによって精製して、残存する硫酸ナトリウム塩(過剰のクロロスルホン酸の中和によって形成される)および暗い色の原因となる不純物を除去する必要があった。洗浄後、界面活性剤を白色粉末として得た(収率70%)。
【0126】
スルホン化フロ酸オクチル:1H NMR (D2O): 6.9, 6.7 (m x 2, 2 x 1H, 2 x C-CH-C), 4.2 (t, 2H, O-CH2-CH2, JHH =6.6 Hz), 1.6, 1.34-1.0 (m, CH2アルキル鎖), 0.8 (m, CH
2
-CH3). 13C{1H} NMR (D2O): δ158.5 (C=O), 155.8(O-CH-CH,) 144.5 (CH-C-C=O),118.2-112.2 (-C-CH-CH-C), 66.1 (O-CH2-CH2), 31.7,29.2,29.1.2,28.3,25.7,22.6 (6 X C, C-CH2-C), 13.8 (-CH2-CH3) ppm. MS (ES, 負モード): m/z (存在率) = 303.087 (C13H19O6S- 100%). FT-IR : 1250-1300 cm-1, S=O伸縮), 1705 cm-1(O-C=O伸縮).
【実施例3】
【0127】
フロ酸ドデシルの合成
丸底フラスコでドデカノール(100g、0.54mol、1当量)をフロ酸(72.58g、0.648、1.2当量)と混合した後、硫酸(ドデカノールに対して1mol%、1.08ml)を添加した。反応物を140℃で加熱し、アルコールが完全に消費されるまで放置した(4~5時間)。反応混合物をDCM(200ml)で希釈し、濾過して副生成物および未反応のフロ酸を除去した。有機相を水(400ml)で洗浄し、中性pHに達するまで残存する酸性を除去した。エマルジョンは遠心分離で分解できなかったため、洗浄中に塩化ナトリウムまたはエタノールを添加して相を分離する必要があった。真空下で溶媒を除去すると、粗生成物が得られた(収率87%)。生成物を、真空下で活性炭下で蒸留することによってさらに精製した。
【0128】
フロ酸ドデシル:1H NMR (DMSO-d6): δ 7.9 (m, -C-CH-O-, ), 7.2, 6.7 (m x 2, 2 x 1H, 2 x C-CH-C), 4.23 (t, 2H, O-CH
2
-CH2, JHH =6.6 Hz), 1.66, 1.4-1.8 (m, CH
2アルキル鎖), 0.86 (m, CH2-CH
3). 13C{1H} NMR (DMSO-d6): δ159.9 (C=O), 148.2 (CH-C-C=O), 144.5 (O-CH-CH), 119, 112.5 (-C-CH-CH-C), 65.7 (O-CH2-CH2), 31.8,29.5,29.2,29.7,28.8,25.9,22.6 (8 X C, C-CH2-C), 14.1 (-CH2-CH3) ppm. MS (ES, 負モード): m/z = 281.2109. FT-IR : 1705 cm-1 (O-C=O伸縮).
【実施例4】
【0129】
スルホン化フロ酸ドデシル(SAF-12)の合成
フロ酸ドデシル(30g、0.107mol)を乾燥クロロホルム(1l)に添加し、完全な溶解が達成されるまで室温で混合した。次に、反応フラスコを水が充填されたバブラーに接続し、そこから生成されたHClを排出させた。次に、クロロスルホン酸(CSA)を添加した(13.1g、0.112mol、1.05当量)。バブラーで泡立ちが観察されなくなるまで反応を放置し、次に1H NMR分光法によって分析し、エステルの完全な変換およびCSAの大部分の反応によって反応が完了したことを確認した(CSAシフト:10.9ppm)。クロロホルムを真空下で除去して緑色の溶液を得、これを水で希釈し、水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和した。次に、水を真空下で除去して、粗生成物を黒色固体として得た。生成物は、ジクロロメタンに溶解して濾過し、その後ジエチル(200ml)で3回洗浄することによって精製して、残存する硫酸ナトリウム塩(過剰のクロロスルホン酸の中和によって形成される)および暗い色の原因となる不純物を除去する必要があった。洗浄後、界面活性剤を白色粉末として得た(収率64%)。
【0130】
フロ酸ドデシル:1H NMR (DMSO-d6): δ 7.9 (m, -C-CH-O-, ), 7.2, 6.7 (m x 2, 2 x 1H, 2 x C-CH-C), 4.23 (t, 2H, O-CH
2
-CH2, JHH =6.6 Hz), 1.66, 1.4-1.8 (m, CH
2アルキル鎖), 0.86 (m, CH2-CH
3). 13C{1H} NMR (DMSO-d6): δ159.9 (C=O), 148.2 (CH-C-C=O), 144.5 (O-CH-CH), 119, 112.5 (-C-CH-CH-C), 65.7 (O-CH2-CH2), 31.8,29.5,29.2,29.7,28.8,25.9,22.6 (8 X C, C-CH2-C), 14.1 (-CH2-CH3) ppm. MS (ES, 負モード): m/z (存在率) = 359.0865 (C17H27O6S- 100%). FT-IR : 1100-1300 cm-1, S=O伸縮), 1705 cm-1(O-C=O伸縮).
【実施例5】
【0131】
フロ酸ヘキサデシルの合成
丸底フラスコでヘキサデカノール(100g、0.412mol、1当量)をフロ酸(55.4g、0.495、1.2当量)と混合した後、硫酸(ヘキサデカノールに対して1mol%、0.824ml)を添加した。反応物を140℃で加熱し、アルコールが完全に消費されるまで放置した(4~5時間)。反応混合物をDCM(200ml)で希釈し、濾過して副生成物および未反応のフロ酸を除去した。有機相を水(400ml)で洗浄し、中性pHに達するまで残存する酸性を除去した。エマルジョンは遠心分離で分解できなかったため、洗浄中に塩化ナトリウムまたはエタノールを添加して相を分離する必要があった。生成物を-20℃でDCMから結晶化させ、白色粉末を得た(収率89%)。
【0132】
フロ酸ヘキサデシル:1H NMR (ベンゼン-d6): δ 7.0, 6.9 (m x 2, 2 x 1H, 2 x C-CH-C), 5.8 (m, -C-CH-O-, ), 4.1 (t, 2H, O-CH2-CH2, JHH =6.7 Hz), 1.44, 1.37-1.05 (m, CH2アルキル鎖), 0.85 (m, CH
2
-CH3). 13C{1H} NMR (ベンゼン-d6): δ 158.5 (C=O), 145.7 (CH-C-C=O), 145.5 (O-CH-CH), 117, 111 (-C-CH-CH-C), 64.4 (O-CH2-CH2), 32,29.9-29.3,28.8,26,23 (6 X C, C-CH2-C), 14.1 (-CH2-CH3) ppm. MS (ES, 負モード): m/z = 337.2735. FT-IR : 1705 cm-1 (O-C=O伸縮).
【実施例6】
【0133】
スルホン化フロ酸ヘキサデシル(SAF-16)の合成
フロ酸ヘキサデシル(30g、0.0892mol)を乾燥クロロホルム(1l)に添加し、完全な溶解が達成されるまで室温で混合した。次に、反応フラスコを水が充填されたバブラーに接続し、そこから生成されたHClを排出させた。次に、クロロスルホン酸(CSA)を添加した(10.9g、0.09366mol、1.05当量)。バブラーで泡立ちが観察されなくなるまで反応を放置し、次に1H NMR分光法によって分析し、エステルの完全な変換およびCSAの大部分の反応によって反応が完了したことを確認した(CSAシフト:10.9ppm)。クロロホルムを真空下で除去して緑色の溶液を得、これを水で希釈し、水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和した。次に、水を真空下で除去して、粗生成物を黒色固体として得た。生成物を少量の水で洗浄し、水相でのこの界面活性剤の低い溶解性を利用することによって硫酸塩を除去した。THFは不純物の除去に効率的であることが証明され、界面活性剤が白色粉末として残った。
【0134】
スルホン化フロ酸ヘキサデシル:1H NMR (D2O): δ 6.9, 6.7 (m x 2, 2 x 1H, 2 x C-CH-C), 4.1 (t, 2H, O-CH2-CH2, JHH =6.4 Hz), 1.54, 1.26-0.95 (m, CH2アルキル鎖), 0.8 (m, CH
2
-CH
3
). 13C{1H} NMR (D2O): δ159.5 (C=O), 156.5(O-CH-CH,) 144.6 (CH-C-C=O),118.9-112.9 (-C-CH-CH-C), 66.1 (O-CH2-CH2), 32.2, 31-29.3,28.5, 26,22.8 (10 X C, C-CH2-C), 13.8 (-CH2-CH3) ppm. MS (ES, 負モード): m/z (存在率) = 415.1465 (C21H35O6S- 100%). FT-IR : 1100-1300 cm-1, (S=O伸縮), 1705 cm-1(O-C=O伸縮).
【実施例7】
【0135】
溶解性試験
様々な界面活性剤の溶解性試験を、ISO規格6839(水への溶解性の決定)に従って実施した。典型的な試験では、界面活性剤濃度が12.5~22.5%w/wである溶液20mlを二重に調製し、温度制御されたホットプレートを使用して完全に溶解されるまで加熱した。10mlの溶液を20mlのバイアルに注ぎ、沈殿が観察されるまで冷却させた。別の10mlの溶液を20mlのバイアルに注ぎ、より高い温度で保持した。沈殿した試料をゆっくりと加熱し、透明な試料をゆっくりと冷却した。外観の変化が生じた温度を、特定の界面活性剤濃度における溶解性の温度とみなした。溶解性試験の結果を表1に報告する。
【0136】
【0137】
市販のSDBSは、ベンゼン環によって付与される広範な疎水性のために最も低い溶解性を有することが証明されたが、SDSは、室温で10~15%とより高い溶解性を達成した。SDSの溶解性はSDBSよりも高いが、SDSは依然として、使用時に溶解性を増加させるためにハイドロトロープの添加が必要である。エステル結合を持つフラン頭部に変更することによって顕著な向上が達成され、特にSAF-8では、非常に低い温度で高い溶解性が達成された。SAF-8は、室温で最大140%の濃度で可溶化することができた。SAF-12は、24℃で20%で可溶性であったが、20℃未満の温度で沈殿する。アルキル鎖の影響はSAF-16で明白になり、非常に低い溶解性を有することが見出された。0.05%のSAF-16は、室温で水相に可溶性であった。SAF-8はハイドロトロープを添加せずに洗浄剤として使用され得、SAF-16はハイドロトロープとともに使用され得る。SAF-12は、温水用途では単独で、すなわちハイドロトロープを添加せずに、または冷水用途ではハイドロトロープを添加して洗浄剤として使用され得る。SAF-8との混合物を使用すると、より高いアルキル鎖のSAFの溶解性を向上させることができる。例として、20%のSAF-8と20%のSAF-12の混合物は、7℃までの温度で溶解性を示した。
【実施例8】
【0138】
硬水への耐性
これらの測定は、ISO規格1063に報告されている標準プロトコルに従って行った。カチオン源として、6、9および12m当量のCa/L(3.0、4.5、6.0mM)の濃度の塩化カルシウムを使用した。20℃の水中で濃度50mg/mlの界面活性剤の母液を調製した。50mlファルコンチューブに母液の規定のアリコートを移し、カルシウム溶液で50mlまで希釈した。界面活性剤母液の5種類の異なるアリコートを試験した:5.0、2.5、1.2、0.6および0.3ml。すべての試験において、試料の外観を検査し、表2に従ってスコアを割り当てた。各界面活性剤について15回の試験のスコアを合計し、最終結果を表3に従って平均安定性として表した。
【0139】
【0140】
乳白色とは、透明ではないが物体を見ることができる溶液である。混濁とは、透明ではなく、物体が透けて見えない溶液である。
【0141】
【0142】
安定性試験の結果を表4に報告する。SDBSおよびSDSは、硬水に対する耐性が非常に低いことが証明され、多くの試験で広範な沈殿を示した。一方、SAF-8およびSAF-12は非常に良好な溶解性を示し、溶液はすべての異なるカルシウム濃度で透明なままであった。
【0143】
【実施例9】
【0144】
臨界ミセル濃度 空気-水-界面活性剤系
10ppm~12.500ppmの濃度で、水-界面活性剤溶液の表面張力を評価した。各界面活性剤について評価した濃度は、界面活性剤の溶解性および分析中に観察される表面張力の低下によって変化した。実験を25℃で実施した。脱イオン水(Milli-Qシステム(Merck)を使用して調製した)を各実験に使用した。
【0145】
ペンダントドロップ法を使用して、Kruss DSA25を使用することによって表面張力を計算した。溶液の液滴を、液滴が最大サイズに達するまで金属鈍針(1.25mm)の先端に生成した。10~15秒の平衡化後、デジタルカメラを使用して液滴の画像を撮影した。液滴は、ソフトウェアKruss Easy Drop Standard-Drop Shape Analysis(DSA1)v1.92を使用して分析した。ソフトウェアは、ヤング・ラプラスの式を使用し、重力および静水圧の影響を考慮して液滴の変形に応じた表面張力を計算する。
【0146】
表面張力対界面活性剤濃度をプロットした後に臨界ミセル濃度(CMC)を得た。CMCは、初期の直線がグラフのプラトーと交差する界面活性剤濃度として計算される。CMCの結果を表5にまとめる。結果によると、アルキル鎖は、炭素原子4個が加わるごとに、CMCを約5倍低下させるという顕著な影響を及ぼす。2000ppm未満のCMCが多くの商業的用途にとって望ましい。界面活性剤とSAF-8の混合物を使用することによってCMCを向上させることができ、以前に報告されたようなCMCと溶解性の間の最適なバランスが得られる。
【0147】
【実施例10】
【0148】
オクタノール-水-界面活性剤系での表面張力測定
液滴体積法を使用して、若干の修正を加えたISO規格9101に従い、系における表面張力を計算した。各実験では、Kruss DSA25液滴形状分析機器に接続されたシリンジを使用して、オクタノールに浸した針(d=1.82mm)の先端に界面活性剤の水溶液の液滴をゆっくりと形成させた。液滴の形成は、針から離脱する最大体積に可能な限り近く成長させた。この時点で、液滴を2分間放置して安定させ、少量の追加の溶液を供給することによって針から離脱させた。Kruss DSA25に接続されたカメラを使用して、針から離れる液滴の写真を撮影した。液滴の直径を測定し、表面張力を以下の式を使用して計算した:
【0149】
【0150】
(式中、γは表面張力(mN/m)であり、Vは液滴体積(cm3)であり、Δρは水とオクタノールの間の密度差(g/cm3)であり、gは重力による加速度(cm/s2)であり、dは針の外径(cm)であり、fは以下の式を使用して計算した補正係数である):
【0151】
【0152】
脱イオン水(Milli-Qシステム(Merck)を使用して調製した)中のCMCの2倍の濃度における表面張力を表6にまとめる。オクタノール中の水は7.45±1.10mN/cmの表面張力を示すため、表面張力がより低いほど安定な安定したエマルションの形成に有利であることから、より好ましい洗浄能力に対応することに注目すべきである。
図2には、CMCの2倍の界面活性剤濃度のSAF-8、SAF-12およびSDBSについて、オクタノール中の水/界面活性剤溶液の液滴形成が報告されている。SAF-8は、主に高濃度の界面活性剤を使用したことに起因してより低い表面張力を示す(2.65±0.32mN/cm)。SAF-12は、SDBS(4.48±0.75mN/cm)と比較してより低い表面張力(3,42±0.58mN/cm)を示し、これらの界面活性剤は高い洗浄能力を有することが示される。
【0153】
【0154】
さらに、硬水(500ppm CaCl2)を使用して表面張力を評価し、結果を表7にまとめる。SAF-8はCMCの2倍の濃度を使用して評価し、SAF-12はCMCの2、4および8倍の濃度で評価した。驚くべきことに、SAF-8およびSAF-12は、硬水において依然として強く表面張力を低下させ、SDSおよびSDBSは著しい凝集を示す。
【0155】
【実施例11】
【0156】
フロ酸アルキルの合成のための触媒のスクリーニング
フロ酸を式(II)によるフロ酸アルキルに変換する際に使用する酸触媒を同定するために、以下の手順を使用して異なる触媒を試験した。
【0157】
3mlバイアルに化学量論量のフロ酸およびドデカノール(フロ酸500mg、ドデカノール830mg)を室温で投入した。次いで、バイアルに触媒を添加した(硫酸の場合は1mol%を添加し、NafionまたはAmberlystなどのポリマー系触媒の場合は300mgを添加した。バイアルを150℃で予熱された加熱ブロックに1.5時間置いた。ナフタレンを内部標準として使用するGC-MS-FIDにより、フロ酸ドデシルの収率およびドデカノールの変換度を分析した。
【0158】
これらの実験結果を
図3に示す。結果は、各触媒からフロ酸ドデシルが得られたことを示す。硫酸またはNafionを使用した場合、出発物質のほぼ完全な変換が観察され、高収率のフロ酸ドデシルが得られた。
【実施例12】
【0159】
フロ酸アルキルの合成に使用するための触媒の量の最適化
式(II)によるフロ酸アルキルを製造するための方法を最適化するために、異なる量の硫酸触媒の存在下で、フロ酸およびドデカノールのフロ酸ドデシルへの変換をモニタリングした。
【0160】
各実験では、フロ酸(500mg)を化学量論量のドデカノール(830mg)および一定量の硫酸(0.41、1、1.5、2mol%のうちの1つ)と混合した。反応混合物を、150℃で予熱された加熱ブロックに1.5時間置いた。フロ酸ドデシルの収率を内部標準としてナフタレンを使用するGC-MS-FIDによって分析した。
【0161】
これらの実験の結果を
図4に示す。結果は、1mol%~2mol%の硫酸を使用した場合、反応が1.5時間以内の完了に向けて進行することを示す。
【実施例13】
【0162】
フロ酸ドデシルを調製するための最適化された方法
フロ酸1kg(8.93mol)を化学量論量のドデカノール(1.66kg)と混合し、反応混合物が150℃の温度に達するまで加熱した。1mol%の硫酸を添加した。反応中に発生した水を、800mbarにおいて圧力コントローラー付き真空ラインに接続されたDean Stark装置で収集した。反応は1.5時間実施した。フロ酸アルキルを、黄色がかった液体として得た(収率99%)。フロ酸ドデシル生成物をNMRおよびGC-MSによって確認した。残存するフロ酸の含有量は、HPLCによって2%未満と評価された。
【実施例14】
【0163】
フロ酸アルキルのスルホン化で使用するための反応温度の最適化
式(I)による界面活性剤を作製するための方法を最適化するために、反応温度を変えながら、クロロスルホン酸によるフロ酸オクチルのスルホン化をモニタリングした。
【0164】
各実験において、フロ酸オクチル(500mg、2.24mmol)を室温で化学量論量のクロロスルホン酸(260mg、2.24mmol)と混合し、直ちに激しく撹拌しながら予熱した加熱ブロック(60、70、80℃)に置いた。一定間隔で試料(約10mg)を採取し、水で希釈した。SAF-8の収率を、Aminex HPX-87Hカラムを使用したHPLCによって決定した。
【0165】
これらの実験の結果を
図5に示す。70℃より高い温度では、より長い反応時間に曝露された場合にスルホン酸が分解することが見出された。80℃でSAF-8の収率の増加が観察されたが、混合物は暗色の固体になり、特定の色指定がある用途における使用には適さない。低温(例えば、70℃以下)でのスルホン化は、溶液の過度の暗色化を避けつつ、最適なスルホン化収率をもたらす。
【実施例15】
【0166】
起泡力の試験
若干の修正を加えたISO 6964に規定されたプロトコルに従って起泡力を評価した。各試験において、脱イオン水または200ppmのCaCl2を含む蒸留水の硬水溶液を使用して、界面活性剤0.2%を含有する界面活性剤溶液700mLを調製した。溶液を、成分を50℃で60分間かき混ぜることによって調製した。60分後、1000mLのガラス製メスシリンダーに50mLの溶液を注ぎ、これを50℃に加熱した水浴に入れた。界面活性剤溶液600mLを、出口にステンレス鋼針を取り付けたクロマトグラフィー用カラムに注いだ。針の先端がメスシリンダー内の界面活性剤溶液から450cmになるように、メスシリンダーの上にカラムを設置した。界面活性剤溶液450mLをカラムからメスシリンダーに注いだ。注液後、30秒、3分、5分および15分で泡の高さを測定した。5分後に観察された泡の高さを以下の表8に報告する。
【0167】
SDSは、蒸留水中で非常に良好な起泡性を有するが、これは硬水中で著しく低下し、沈殿し始めることが見出された。SAF界面活性剤、特にSAF-12を使用すると、泡の安定性が向上し、これらは蒸留水と硬水の両方でSDSよりも大きな泡の高さを達成した。これは、SAF界面活性剤がパーソナルケア製品における使用に適しており、キレート剤または泡増強剤の非存在下であっても、SDSより優れた特性を示す可能性があることを示す。
【0168】
【実施例16】
【0169】
毒性試験
大腸菌からのB-ガラクトシダーゼの阻害
EBPIから供給されるToxi-Chromo試験キットを使用して、界面活性剤の存在下でのb-ガラクトシダーゼの発現における大腸菌の阻害を定量化することにより、様々な界面活性剤の毒性を分析した。標準プロトコルを使用して、1000ppmの界面活性剤を含有する母液を調製した。細菌接種物を、反応混合物、キットに付属する栄養剤、および毒物と混合した。異なる量の界面活性剤を含有する15種類のさらなる試料を、その後の希釈によってウェルプレートに調製した。キットに付属する色源体を各ウェルに添加した後、ウェルプレートを37℃で30分間インキュベートした。プレートリーダーを使用し、600nmで光学濃度(OD)を読み取った。阻害%は、ODの変化(青色発色に伴う)によって測定した。EC50を、阻害%および界面活性剤濃度をプロットし、フィッティングすることによって測定した。
【0170】
【0171】
原生生物微生物の成長の阻害
様々な界面活性剤の毒性を、microbiotestsから供給されるProtoxkitを使用して、界面活性剤の存在下での原生生物微生物の成長の阻害を定量化して分析した。標準プロトコルを使用して、蒸留水による連続1:1希釈によって毒物の希釈系列を調製した。各溶液2mLをUVキュベットに入れる。原生生物の接種物を440nmで0.04のODに到達するように希釈し、接種物40μLを栄養剤40μLの溶液とともに各希釈バイアルに添加した。各バイアルの初期ODを測定し、バイアルを30℃で24時間インキュベートした。初期ODと最終ODの変化を比較することによって阻害を測定した。EC50は、阻害%および界面活性剤濃度をプロットしてフィッティングすることにより、50%阻害を得るための界面活性剤の濃度として決定した。
【0172】
【0173】
毒性試験の結果は、アルキル鎖の長さが、頭部基の性質よりも毒性に対してはるかに大きな影響を及ぼすことを示す。例えば、SAF-8は、他の12炭素鎖の界面活性剤と比較してはるかに低い毒性を有することが見出された。SAF-12は、SDSよりも低い毒性を有することが示されたが、これは全体的により長い鎖を有するSAF-12の尾部基(エステル基を含む)によるものと思われる。SAF-8とSAF-12の両方は、両方の方法論でSDBSに比べて低い毒性を示し、これは、フラン環頭部基に基づく界面活性剤が、ベンゼン環頭部基を有する界面活性剤よりも毒性が低いことを示唆する。
【実施例17】
【0174】
ゼイン可溶化試験
パーソナルケア製品への界面活性剤の適用性を、ゼインタンパク質を可溶化するそれらの能力を分析することによって試験した。各試験において、ゼインタンパク質2gを0.5wt%界面活性剤溶液40mlと混合し、混合物を40℃で12時間インキュベートした。混合物を遠心分離し、残存する固形ゼインを50mLの水で5回洗浄した。固形ゼインを70℃のオーブンで5日間乾燥させて秤量した。ゼインの可溶化を、界面活性剤溶液に溶解されたゼインのパーセンテージとして評価した。試験の結果を以下の表11に示す。
【0175】
【0176】
この試験の結果は、SAF-8およびSAF-12はSDBSよりも少ない量のゼインを溶解し、SAF-8はSDSと同等の性能を有することを示す。このことから、新規の界面活性剤はパーソナルケア製品における使用に適しており、SDBSなどの一般的に使用される界面活性剤よりも皮膚への刺激が少ないことが示唆される。
【0177】
実施形態は例として記載され、これらの実施形態は例示であり、制限的ではないとみなされるべきである。本開示は、本出願に記載された特定の実施形態に関して制限されない。当業者には明らかなように、その精神および範囲から逸脱することなく変更がなされてもよいことが理解される。
【0178】
以下の番号付き実施形態によって包含される主題も、任意選択で上述されたおよび/または後続の特許請求の範囲に定義される主題と組み合わせて本発明の一部を形成する。
【0179】
番号付き実施形態1
式(I)の化合物:
【0180】
【0181】
(式中、R1は
【0182】
【0183】
であり、Xはカチオンであり、
R2は非環式C8~C18脂肪族基である)。
【0184】
番号付き実施形態2
Xがアルカリ金属カチオン、例えばナトリウムカチオンまたはカリウムカチオンである、番号付き実施形態1に記載の化合物。
【0185】
番号付き実施形態3
Xがナトリウムカチオンである、番号付き実施形態1に記載の化合物。
【0186】
番号付き実施形態4
R2が直鎖状C8~C18脂肪族基である、番号付き実施形態1から3のいずれかに記載の化合物。
【0187】
番号付き実施形態5
R2が直鎖状C8~C18アルキル基である、番号付き実施形態4に記載の化合物。
【0188】
番号付き実施形態6
R2が直鎖状C8、C12またはC16アルキル基である、番号付き実施形態5に記載の化合物。
【0189】
番号付き実施形態7
R2が不飽和直鎖状C8~C18脂肪族基である、番号付き実施形態4に記載の化合物。
【0190】
番号付き実施形態8
式(Ia)の構造:
【0191】
【0192】
を有する、番号付き実施形態1から7のいずれかに記載の化合物。
【0193】
番号付き実施形態9
式(Ib)の構造:
【0194】
【0195】
を有する、番号付き実施形態1から7のいずれか1つに記載の化合物。
【0196】
番号付き実施形態10
【0197】
【0198】
の構造を有する、番号付き実施形態1から8のいずれかに記載の化合物。
【0199】
番号付き実施形態11
番号付き実施形態1から10のいずれかに記載の化合物の界面活性剤としての使用。
【0200】
番号付き実施形態12
番号付き実施形態1から10のいずれかに記載の化合物を含む洗浄剤組成物。
【0201】
番号付き実施形態13
請求項1から10のいずれかに記載の2種以上の化合物の混合物を含む、番号付き実施形態12に記載の洗浄剤組成物。
【0202】
番号付き実施形態14
R2が非環式C8脂肪族である請求項1から10のいずれかに記載の化合物、およびR2が非環式C12またはC16脂肪族である請求項1から10のいずれかに記載の化合物を含む、番号付き実施形態13に記載の洗浄剤組成物。
【0203】
番号付き実施形態15
式(Ia)の化合物:
【0204】
【0205】
を製造するための方法であって、
式(II)の化合物:
【0206】
【0207】
をスルホン化剤と接触させるステップ、および
b)塩基を添加して式(Ia)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR2が番号付き実施形態1~8のいずれかに定義される通りである、方法。
【0208】
番号付き実施形態16
スルホン化剤が、ピリジン/三酸化硫黄錯体、オレウム、三酸化硫黄またはクロロスルホン酸から選択される、番号付き実施形態15に記載の方法。
【0209】
番号付き実施形態17
塩基が、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、番号付き実施形態15に記載の方法。
【0210】
番号付き実施形態18
式(Ib)の化合物:
【0211】
【0212】
を製造するための方法であって、
式(II)の化合物:
【0213】
【0214】
をカルボキシル化剤と接触させるステップ、および
b)酸を添加して式(Ib)の化合物を形成するステップ
を含み、XおよびR2が番号付き実施形態1から7および9のいずれかに定義される通りである、方法。
【0215】
番号付き実施形態19
カルボキシル化剤が二酸化炭素である、番号付き実施形態18に記載の方法。
【0216】
番号付き実施形態20
ステップa)が、(i)式(II)の化合物、(ii)二酸化炭素、および(iii)アルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、またはそれらの組合せの混合物を提供することを含む、番号付き実施形態19に記載の方法。
【0217】
番号付き実施形態21
ステップa)が、(i)式(II)の化合物、(ii)二酸化炭素、および(iii)炭酸カリウムもしくは炭酸セシウム、またはそれらの組合せの混合物を提供することを含む、番号付き実施形態19に記載の方法。
【0218】
番号付き実施形態22
ステップa)が、200~300℃の範囲の温度および8~40barの圧力で実施される、番号付き実施形態18から21のいずれかに記載の方法。
【0219】
番号付き実施形態23
フロ酸を式(III)の化合物:
【0220】
【0221】
(式中、R2は、番号付き実施形態1および4から7のいずれかに定義される通りである)と、酸の存在下で接触させることによって式(II)の化合物を調製するステップをさらに含む、番号付き実施形態15から22のいずれかに記載の方法。
【0222】
番号付き実施形態24
フルフラールを式(III)の化合物:
【0223】
【0224】
(式中、R2は、番号付き実施形態1および4から7のいずれかに定義される通りである)と、酸素源および触媒の存在下で接触させることによって式(II)の化合物を調製するステップをさらに含む、番号付き実施形態15から22のいずれかに記載の方法。
【0225】
番号付き実施形態25
酸素源がジ-tert-ブチルペルオキシドまたは過酸化水素から選択される、番号付き実施形態24に記載の方法。
【0226】
番号付き実施形態26
触媒が貴金属または遷移金属を含む、番号付き実施形態24または番号付き実施形態25に記載の方法。
【0227】
番号付き実施形態27
前記貴金属または遷移金属が、金、パラジウム、白金、ルテニウム、マンガン、コバルトまたはバナジウムからなる群から選択される、番号付き実施形態26に記載の方法。
【国際調査報告】