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特表2023-539697皮膚ケア活性成分及び2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】皮膚ケア活性成分及び2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20230908BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230908BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/06
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537733
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2021019485
(87)【国際公開番号】W WO2022239257
(87)【国際公開日】2022-11-17
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯間 雄介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・タション
(72)【発明者】
【氏名】新美 類
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC582
4C083AC662
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD352
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD641
4C083AD642
4C083BB11
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD35
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
本発明は、(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル、(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分を含む組成物に関する。本発明による組成物は、成分(b)及び(c)の組み合わせを使用しない場合と比較して、成分(d)の皮膚への浸透を増強又は改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分、及び
(e)水
を含む組成物。
【請求項2】
組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル及び(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLBが、11.5~14.0、好ましくは12.0~13.5、より好ましくは12.5~13.0の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルが、2~4つのグリセロール単位、好ましくは3又は4つのグリセロール単位、より好ましくは4つのグリセロール単位を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分が、12個以下の炭素原子、好ましくは11個以下の炭素原子、より好ましくは10個以下の炭素原子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルが、2~4つのグリセロール単位、好ましくは2又は3つのグリセロール単位、より好ましくは2つのグリセロール単位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分が、14個以上の炭素原子、好ましくは16個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル/(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量の質量比が、1~5、好ましくは1.5~4、より好ましくは2~3である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分が、-4.5~4.5、好ましくは-4.0~4.0、より好ましくは-3.5~3.5の範囲内のlogP値を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(d)皮膚ケア活性成分が、皮膚ケア美容活性成分、好ましくは皮膚白色化又は抗しわ成分であり、より好ましくはナイアシンアミド、アスコルビルグルコシド、フェニルエチルレゾルシノール、ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール、3-O-エチルアスコルビン酸、サリチル酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(a)少なくとも1種の油を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物中の(a)油の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲内である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態である、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚を処置するための美容方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に塗布する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の皮膚ケア活性成分及び少なくとも2種の異なるタイプのポリグリセリル脂肪酸エステルを含む組成物、好ましくは化粧用又は皮膚科学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用及び皮膚科学的組成物の分野において使用される、多種多様な皮膚ケア活性成分がある。
【0003】
皮膚ケア活性成分は、可能な限り皮膚に吸収されること、又は皮膚に浸透することが好ましい。しかしながら、このような皮膚ケア活性成分の皮膚吸収又は皮膚浸透は、皮膚のバリア機能に起因して、容易ではない。したがって、皮膚ケア活性成分の皮膚浸透を増強するための1つの可能な手法は、皮膚浸透増強剤を皮膚ケア活性成分とともに使用することでありうる。
【0004】
例えば、WO 2018/097303では、セラミドの皮膚浸透を増強するために、セラミドを含むナノエマルション又はマイクロエマルション中に、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルとナイアシンアミドとの組み合わせを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2018/097303
【特許文献2】EP-A-0 487 404
【特許文献3】EP-A-0 425 066
【特許文献4】特開平05-213 736号
【特許文献5】EP 0 667 145
【特許文献6】EP 1 430 883
【特許文献7】WO 02/051 828
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【非特許文献3】ASTM規格445附属書C
【非特許文献4】Meylan及びHowardによる記事:Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm. Sci.、84: 83~92、1995
【非特許文献5】Exploring QSAR:hydrophobic, electronic and steric constants(ACS professional reference book、1995)
【非特許文献6】http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm
【非特許文献7】Satoshi Tomomasaら、Oil Chemistry、37巻、11号(1988)、48~53頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新規な皮膚浸透増強剤に基づいて、皮膚ケア活性成分の皮膚への浸透を増強又は改善することができる、皮膚ケア活性成分を含む組成物が、依然として必要とされている。
【0008】
本発明の目的は、新規な皮膚浸透増強剤を使用することによって、ある特定のクラスの皮膚ケア活性成分の皮膚への浸透を増強又は改善することができる、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、
(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分、及び
(e)水
を含む組成物によって達成することができる。
【0010】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル及び(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLBは、11.5~14.0、好ましくは12.0~13.5、より好ましくは12.5~13.0の範囲内であってもよい。
【0011】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~4つのグリセロール単位、好ましくは3又は4つのグリセロール単位、より好ましくは4つのグリセロール単位を含んでもよい。
【0012】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、12個以下の炭素原子、好ましくは11個以下の炭素原子、より好ましくは10個以下の炭素原子を含んでもよい。
【0013】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲内であってもよい。
【0014】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~4つのグリセロール単位、好ましくは2又は3つのグリセロール単位、より好ましくは2つのグリセロール単位を含んでもよい。
【0015】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、14個以上の炭素原子、好ましくは16個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子を含んでもよい。
【0016】
本発明による組成物中の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内であってもよい。
【0017】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル/(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量の質量比は、1~5、好ましくは1.5~4、より好ましくは2~3であってもよい。
【0018】
(d)皮膚ケア活性成分は、-4.5~4.5、好ましくは-4.0~4.0、より好ましくは-3.5~3.5の範囲内のlogP値を有してもよい。
【0019】
(d)皮膚ケア活性成分は、皮膚ケア美容活性成分、好ましくは皮膚白色化又は抗しわ成分であってもよく、より好ましくはナイアシンアミド、アスコルビルグルコシド、フェニルエチルレゾルシノール、ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール、3-O-エチルアスコルビン酸、サリチル酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0020】
本発明による組成物中の(d)皮膚ケア活性成分の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲内であってもよい。
【0021】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の油を更に含んでもよい。
【0022】
本発明による組成物中の(a)油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲内であってもよい。
【0023】
本発明による組成物が(a)少なくとも1種の油を含む場合、本発明による組成物は、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態であってもよい。
【0024】
本発明はまた、皮膚を処置するための美容方法であって、本発明による組成物を皮膚に塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
鋭意検討の結果、本発明者は、新規な皮膚浸透増強剤を使用することによって、ある特定のクラスの皮膚ケア活性成分の皮膚への浸透を増強又は改善することができる、組成物を提供できることを発見した。
【0026】
本発明は、
皮膚ケア活性成分の浸透を増強又は改善するために、皮膚ケア活性成分を含む組成物中に、
より高いHLB値を有する少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、及び
より低いHLB値を有する少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル
を組み合わせて使用することによって特徴付けられうる。
【0027】
第1のポリグリセリル脂肪酸エステルのより高いHLB値は、より高いHLB数値範囲内に属しうる。第2のポリグリセリル脂肪酸エステルのより低いHLB値は、より低いHLB数値範囲内に属しうる。より高いHLB数値範囲とより低いHLB数値範囲とは、互いに重複しない。
【0028】
したがって、本発明の一態様は、
(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分、及び
(e)水
を含む組成物である。
【0029】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の油を更に含んでもよい。
【0030】
本発明による組成物は、(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、及び(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの組み合わせを使用しない場合と比較して、(d)皮膚ケア活性成分の皮膚への浸透を増強又は改善することができる。
【0031】
本発明による組成物は、透明又は半透明でありうる。
【0032】
本発明による組成物は、高温下で長期間保存した後でさえ、相分離がまったく又はほとんど起こらないほどに安定であることが好ましい。
【0033】
本発明による組成物は、界面活性剤として、植物等の天然資源から誘導される原材料によって調製することができるポリグリセリル脂肪酸エステルを使用するため、環境に優しい。
【0034】
更に、本発明による組成物は、べたつきが少ないものとすることができ、そのため、べたつき感が低減した触感を与えることができる。「べたつき」という用語は、ここでは、皮膚に粘着性の感触を与える特性を意味する。そのため、本発明による組成物は、優れた使用感、特に、組成物の塗布後の優れた皮膚感を与えることができる。
【0035】
更に、本発明による組成物は、ホモジナイザーが必要とするような大量のエネルギーを用いずに調製することができる。したがって、本発明による組成物は、少量のエネルギーを使用すること、例えば組成物の成分を穏やかに撹拌することによって、調製することができる。そのため、本発明による組成物は、その調製手法を考慮して環境に優しい。
【0036】
以下に、本発明による組成物を、より詳細に説明する。
【0037】
[油]
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の油が使用される場合、これらは同じであっても、異なってもよい。
【0038】
ここでは、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)において、液体又はペースト(非固体)の形態の脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組み合わせで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0039】
(a)油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油;植物油若しくは動物油、及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油;又はこれらの混合物であってもよい。
【0040】
(a)油は、植物又は動物起源の油、合成油、シリコーン油、炭化水素油、及び脂肪族アルコールからなる群から選択することができる。
【0041】
植物油の例として、例えば、アマニ油、ツバキ油、マカダミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナッツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0043】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0044】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0045】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが誘導されるアルコール及び酸のうち、少なくとも1種は分枝状である。
【0046】
一酸及び一価アルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0047】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用してもよい。
【0048】
とりわけ、以下のものを挙げることができる:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコール。
【0049】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。「糖」という用語は、いくつかのアルコール官能基を含有し、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有せず、且つ少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することを想起されたい。これらの糖は、単糖、オリゴ糖、又は多糖であってもよい。
【0050】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにこれらの誘導体、とりわけアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてメチルグルコースが含まれる。
【0051】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状で飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選ぶことができる。これらの化合物が不飽和である場合、1~3つの共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0052】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0053】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル、及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけ、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0054】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、とりわけスクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0055】
挙げることができる例は、Amerchol社によりGlucate(登録商標) DOの名称で販売されている製品であり、これはジオレイン酸メチルグルコースである。
【0056】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0057】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0058】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等;環状オルガノポリシロキサン、例えば、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0059】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、とりわけ、液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選ばれる。
【0060】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてもよい。本発明に従って使用されうる有機変性シリコーンは、上で定義したシリコーン油であり、構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含む。
【0061】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones(1968)、Academic Pressにおいて、より詳細に定義されている。これらは、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0062】
揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、60℃から260℃の間の沸点を有するものから選ばれ、よりいっそう詳細には、以下から選ばれる。
【0063】
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社によりVolatile Silicone(登録商標) 7207又はRhodia社によりSilbione(登録商標) 70045 V2の名称で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社によりVolatile Silicone(登録商標) 7158、Rhodia社によりSilbione(登録商標) 70045 V5の名称で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社によりSilsoft 1217の名称で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えば、式:
【0064】
【化1】
【0065】
のUnion Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標) FZ 3109を挙げることもできる。
【0066】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物も挙げることができる。
【0067】
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃において5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社によりSH 200の名称で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445附属書Cに従って、25℃において測定される。
【0068】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンを使用してもよい。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細にはポリジアルキルシロキサンから選ばれ、その中では、主としてトリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0069】
これらのポリジアルキルシロキサンの中でも、以下の市販製品を非限定的に挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例としては70 047 V 500 000油、
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製200シリーズの油、例えば60 000mm2/sの粘度を有するDC200、並びに
- General Electric社製Viscasil(登録商標)油及びGeneral Electric社製SFシリーズのある特定の油(SF 96、SF 18)。
【0070】
ジメチコノール(CTFA)の名称で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製48シリーズの油も挙げることができる。
【0071】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、とりわけポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0072】
フェニルシリコーン油は、次式:
【0073】
【化2】
【0074】
(式中、
R1~R10は、互いに独立して、飽和又は不飽和で、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル、又はブチル基であり、
m、n、p、及びqは、互いに独立して、両端を含めて0~900、好ましくは両端を含めて0~500、より好ましくは両端を含めて0~100の整数であり、
ただし、n+m+qの和は0以外である)
のフェニルシリコーンから選ぶことができる。
【0075】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品が含まれる:
- Rhodia社製Silbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製Rhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製の油であるDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid、
- Bayer社製PKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20、
- General Electric社製SFシリーズのある特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0076】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上の式中、R1~R10はメチルであり、p、q、及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0077】
有機変性液状シリコーンは、とりわけ、ポリエチレンオキシ及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。したがって、信越化学工業株式会社により提案されているシリコーンKF-6017、並びにUnion Carbide社製の油であるSilwet(登録商標)L722及びL77を挙げることができる。
【0078】
炭化水素油は、以下から選ぶことができる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンが含まれる。
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、流動石油ゼリー、ポリデセン、及び水素化ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0079】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱物油(例えば流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水素化ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0080】
脂肪族アルコールにおける「脂肪族」という用語は、比較的多数の炭素原子を包含することを意味する。したがって、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールは、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0081】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和で、直鎖状及び分枝状の基から選ばれる)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル及びC12~C20アルケニル基から選ばれうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていても、されていなくてもよい。
【0082】
脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0083】
脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0084】
したがって、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和C6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0085】
「飽和脂肪族アルコール」という用語は、ここでは、長い脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪族アルコールは、任意の直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪族アルコールが、好ましく使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪族アルコールが、より好ましく使用されうる。分枝状C16~C20脂肪族アルコールが、よりいっそう好ましく使用されうる。
【0086】
飽和脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪族アルコールとして使用することができる。
【0087】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中に使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0088】
(a)油は、600g/mol未満の分子量を有する油から選ばれることもまた好ましい。
【0089】
好ましくは、(a)油は、600g/mol未満等の低分子量を有し、1つ又は複数の短い炭化水素鎖(C1~C12)を有するエステル油(例えば、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、及びパルミチン酸エチルヘキシル)、シリコーン油(例えば、シクロヘキサシロキサン等の揮発性シリコーン)、炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン及びスクアラン)、分枝状及び/又は不飽和の脂肪族アルコール(C12~C30)タイプの油、例えばオクチルドデカノール及びオレイルアルコール、並びにジカプリリルエーテル等のエーテル油の中から選ばれる。
【0090】
(a)油は、極性油から、より好ましくはエステル油から選ばれることが好ましい。
【0091】
本発明による組成物中の(a)油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0092】
本発明による組成物中の(a)油の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0093】
本発明による組成物中の(a)油の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%であってもよい。
【0094】
[第1のポリグリセリル脂肪酸エステル]
本発明による組成物は、(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステルを含む。単一のタイプの(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルを組み合わせて使用してもよい。
【0095】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤として機能することができる。
【0096】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、12.0~17.0、好ましくは12.5~16.0、より好ましくは13.5~15.0のHLB値を有してもよい。
【0097】
HLB(「親水性-親油性バランス」)という用語は、当業者には周知であり、分子中の親水性部分と親油性部分との間の比を表す。
【0098】
2種以上の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルが使用される場合、HLB値は、すべての(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB値の加重平均によって決定される。
【0099】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、飽和又は不飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリ及びそれらを超えるエステルから選ぶことができる。
【0100】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~4つのグリセロール単位、好ましくは3又は4つのグリセロール単位、より好ましくは4つのグリセロール単位を含むことが好ましい。
【0101】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸又は脂肪酸部分は、12個以下の炭素原子、好ましくは11個以下の炭素原子、より好ましくは10個以下の炭素原子を含んでもよい。(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸又は脂肪酸部分は、4個以上の炭素原子、好ましくは6個以上の炭素原子、より好ましくは8個以上の炭素原子を含んでもよい。(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸又は脂肪酸部分は、4~12個の炭素原子、好ましくは6~11個の炭素原子、より好ましくは8~10個の炭素原子を有してもよい。
【0102】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸から選択することができる。
【0103】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、カプリン酸PG3(HLB:約14)、カプリル酸PG4(HLB:14)、ラウリン酸PG4(HLB:約14)、カプリン酸PG4(HLB:14)、ミリスチン酸PG5(HLB:15.4)、ステアリン酸PG5(HLB:15)、カプリル酸PG6(HLB:14.6)、カプリン酸PG6(HLB:13.1)、ラウリン酸PG6(HLB:14.1)、ラウリン酸PG10(HLB:15.2)、ミリスチン酸PG10(HLB:14.9)、ステアリン酸PG10(HLB:14.1)、イソステアリン酸PG10(HLB:13.7)、オレイン酸PG10(HLB:13.0)、ヤシ脂肪酸PG10(HLB:16)、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0104】
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルは、カプリン酸PG3(HLB:約14)、カプリル酸PG4(HLB:14)、ラウリン酸PG4(HLB:約14)、カプリン酸PG4(HLB:14)、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0105】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0106】
その一方で、本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0107】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲内であってもよい。
【0108】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルの量/(a)油の量(存在する場合)の質量比は、0.6~1.2、好ましくは0.7~1.1、より好ましくは0.8~1.0の範囲内であってもよい。
【0109】
[第2のポリグリセリル脂肪酸エステル]
本発明による組成物は、(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステルを含む。単一のタイプの(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルを組み合わせて使用してもよい。
【0110】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤として機能することができる。
【0111】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、5.0~10.0、好ましくは6.0~9.5、より好ましくは7.0~9.0のHLB値を有してもよい。
【0112】
2種以上の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルが使用される場合、HLB値は、すべての(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB値の加重平均によって決定される。
【0113】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、飽和又は不飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリ及びそれらを超えるエステルから選ぶことができる。
【0114】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~4つのグリセロール単位、好ましくは2又は3つのグリセロール単位、より好ましくは2つのグリセロール単位を含むことが好ましい。
【0115】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸又は脂肪酸部分は、14個以上の炭素原子、好ましくは16個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子を含んでもよい。(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸又は脂肪酸部分は、30個以下の炭素原子、好ましくは24個以下の炭素原子、より好ましくは20個以下の炭素原子を含んでもよい。(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸又は脂肪酸部分は、14~30個、好ましくは16~24個、より好ましくは18~20個の炭素原子を有してもよい。
【0116】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの脂肪酸部分のための脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、及びオレイン酸から選択することができる。
【0117】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、ステアリン酸PG2(HLB:5.0)、ジステアリン酸PG2(HLB:4)、イソステアリン酸PG2(HLB:8)、ジイソステアリン酸PG2(HLB:3.2)、トリイソステアリン酸PG2(HLB:3)、セスキイソステアリン酸PG2(HLB:約4)、オレイン酸PG2(HLB:8)、セスキオレイン酸PG2(HLB:5.3)、ジステアリン酸PG3(HLB:5)、ジイソステアリン酸PG3(HLB:5)、ジヤシ脂肪酸PG3(HLB:7)、ヘキサステアリン酸PG5(HLB:4.0)、トリオレイン酸PG5(HLB:7.0)、ペンタオレイン酸PG10(HLB:6.4)、セスキカプリル酸PG2(HLB:約8)、カプリン酸PG2(HLB:9.5)、ラウリン酸PG2(HLB:8.5)、ミリスチン酸PG2(HLB:10)、イソパルミチン酸PG2(HLB:9)、オレイン酸PG4(HLB:10)、ステアリン酸PG4(HLB:9)、イソステアリン酸PG4(HLB:8.2)、ジステアリン酸PG6(HLB:8)、ジステアリン酸PG10(HLB:約9)、トリステアリン酸PG10(HLB:8)、ジイソステアリン酸PG10(HLB:10)、トリイソステアリン酸PG10(HLB:8)、トリヤシ脂肪酸PG10(HLB:9)、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0118】
(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルは、ステアリン酸PG2(HLB:5.0)、ジステアリン酸PG2(HLB:4)、イソステアリン酸PG2(HLB:8)、ジイソステアリン酸PG2(HLB:3.2)、トリイソステアリン酸PG2(HLB:3)、セスキイソステアリン酸PG2(HLB:約4)、オレイン酸PG2(HLB:8)、セスキオレイン酸PG2(HLB:5.3)、ジステアリン酸PG3(HLB:5)、ジイソステアリン酸PG3(HLB:5)、ジヤシ脂肪酸PG3(HLB:7)、セスキカプリル酸PG2(HLB:約8)、カプリン酸PG2(HLB:9.5)、ラウリン酸PG2(HLB:8.5)、ミリスチン酸PG2(HLB:10)、イソパルミチン酸PG2(HLB:9)、オレイン酸PG4(HLB:10)、ステアリン酸PG4(HLB:9)、イソステアリン酸PG4(HLB:8.2)、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0119】
本発明による組成物中の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0120】
その一方で、本発明による組成物中の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であってもよい。
【0121】
本発明による組成物中の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内であってもよい。
【0122】
本発明による組成物中の(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量/(a)油の量(存在する場合)の質量比は、0.1~0.9、好ましくは0.2~0.7、より好ましくは0.3~0.5の範囲内であってもよい。
【0123】
[ポリグリセリル脂肪酸エステルの量]
本発明によれば、((b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルと(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルとの総量)/(a)油の量(存在する場合)の質量比は、3.0以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下であってもよい。
【0124】
従来、グリセリル脂肪酸エステル/油(存在する場合)の量の質量比は、はるかに高く、例えば6.0である。
【0125】
そのため、本発明による組成物は、ポリグリセリル脂肪酸エステルの総量を低減又は限定することができる。
【0126】
本発明は、ポリグリセリル脂肪酸エステルの総量を低減することができるので、本発明による組成物は、べたつき感のない触感を与えることが可能であり、又はべたつき感が更に低減した触感を与えることが可能である。
【0127】
((b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステルと(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルとの総量)/(a)油の量(存在する場合)の質量比は、0.1超、好ましくは0.2超、より好ましくは0.3超であることが好ましい。
【0128】
その一方で、本発明によれば、(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル/(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの量の質量比は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上であってもよく、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下であってもよく;1~5、好ましくは1.5~4、より好ましくは2~3であってもよい。
【0129】
[ポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLB]
(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル及び(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLB値は、すべての第1及び第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの加重平均として計算することができる。
【0130】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル及び(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLBは、11.5以上、好ましくは12.0以上、より好ましくは12.5以上であってもよい。
【0131】
本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル及び(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLBは、14.0以下、好ましくは13.5以下、より好ましくは13.0以下であってもよい。
【0132】
したがって、本発明の一実施形態では、本発明による組成物中の(b)第1のポリグリセリル脂肪酸エステル及び(c)第2のポリグリセリル脂肪酸エステルの平均HLBは、11.5~14.0、好ましくは12.0~13.5、より好ましくは12.5~13.0の範囲内であってもよい。
【0133】
[皮膚ケア活性成分]
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分を含む。単一のタイプの(d)皮膚ケア活性成分を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの(d)皮膚ケア活性成分を組み合わせて使用してもよい。
【0134】
(d)皮膚ケア活性成分は、-4.5~4.5、好ましくは-4.0~4.0、より好ましくは-3.5~3.5の範囲内のlogP値を有することが好ましい。
【0135】
log P値とは、オクタン-1-オール/水の、見かけの分配係数の底を10とする対数の値である。log P値は公知であり、オクタン-1-オール及び水の中の、(c)化合物の濃度を決定する標準試験によって決定される。log Pは、Meylan及びHowardによる記事:Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm. Sci.、84: 83~92、1995に記載されている方法によって計算することができる。この値は、多数の市販のソフトウェアパッケージを使用して計算してもよく、これらでは、log Pを、分子の構造の関数として決定する。例として、米国環境庁製のEpiwinソフトウェアを挙げることができる。
【0136】
この値は、とりわけ、ACD(Advanced Chemistry Development) SolarisソフトウェアV4.67を使用して計算してもよく;この値はまた、Exploring QSAR:hydrophobic, electronic and steric constants(ACS professional reference book、1995)から得ることもできる。概算値を提供しているインターネットサイトもある(アドレス:http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm)。
【0137】
(d)皮膚ケア活性成分は、塩の形態であってよい。(d)皮膚ケア活性成分の塩としては、従来型の、前記化合物の非毒性塩、例えば酸から又は塩基から形成されるものが挙げられる。
【0138】
(d)皮膚ケア活性成分は、皮膚ケア美容活性成分、より好ましくは皮膚白色化成分又は皮膚アンチエイジング成分、例えば抗しわ成分であることが好ましい。
【0139】
(d)皮膚ケア活性成分として、ビタミンB3及び誘導体を挙げることができる。
【0140】
ビタミンB3は、ビタミンPPとも呼ばれ、次式:
【0141】
【化3】
【0142】
(式中、Rは、-CONH2(ナイアシンアミド)、-COOH(ニコチン酸若しくはナイアシン)、又はCH2OH(ニコチニルアルコール)、-CO-NH-CH2-COOH(ニコチン尿酸)、又は-CO-NH-OH(ニコチニルヒドロキサム酸)でありうる)
の化合物である。ナイアシンアミドが好ましい。
【0143】
挙げることができるビタミンB3誘導体には、例えば、ニコチン酸トコフェロール等のニコチン酸エステル、-CONH2の水素基の置換によるナイアシンアミド由来のアミド、カルボン酸とアミノ酸との反応からの生成物、ニコチニルアルコールとカルボン酸、例えば、酢酸、サリチル酸、グリコール酸、又はパルミチン酸とのエステルが含まれる。
【0144】
次の誘導体も挙げることができる: 2-クロロニコチンアミド、6-メチルニコチンアミド、6-アミノニコチンアミド、N-メチルニコチンアミド、N,N-ジメチルニコチンアミド、N-(ヒドロキシメチル)ニコチンアミド、キノリン酸イミド、ニコチンアニリド、N-ベンジルニコチンアミド、N-エチルニコチンアミド、ニフェナゾン、ニコチンアルデヒド、イソニコチン酸、メチルイソニコチン酸、チオニコチンアミド、ニアラミド、2-メルカプトニコチン酸、ニコモール及びニアプラジン、ニコチン酸メチル、並びにニコチン酸ナトリウム。
【0145】
やはり挙げることができる他のビタミンB3誘導体には、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又は炭酸塩等の無機塩、及びカルボン酸との反応によって得られる塩等の有機塩、例えば、酢酸塩、サリチル酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、マンデル酸塩、酒石酸塩等が含まれる。
【0146】
(d)皮膚ケア活性成分として、アスコルビン酸及びその誘導体を挙げることができる。
【0147】
アスコルビン酸は、通常は天然生成物から抽出されるため、一般にL形態である。
【0148】
ある特定の環境パラメータ、例えば、光、熱及び水性媒体に対して非常に高感度となる、その化学構造(α-ケトラクトン)のために、アスコルビン酸は、例えば、アスコルビン酸の糖エステル、又はホスホリルアスコルビン酸の金属塩、アルカリ金属塩、エステル及び糖から選ばれる誘導体又はアナログの形態において使用することが有利でありうる。
【0149】
本発明において使用されうるアスコルビン酸の糖エステルは、とりわけ、アスコルビン酸のグリコシル、マンノシル、フルクトシル、フコシル、ガラクトシル、N-アセチルグルコサミン及びN-アセチルムラミン酸誘導体、並びにこれらの混合物、より特定的には、アスコルビルグルコシド、例えば、アスコルビル-2-グルコシド、2-O-α-D-グルコピラノシルL-アスコルビン酸、又は6-O-β-D-ガラクトピラノシルL-アスコルビン酸である。後者の化合物及びこれらを調製するための方法は、特に、文献EP-A-0 487 404、EP-A-0 425 066、及び特開平05 213 736号に記載されている。
【0150】
ホスホリルアスコルビン酸の金属塩に関して、アスコルビルリン酸アルカリ金属塩、とりわけアスコルビルリン酸ナトリウム、アスコルビルリン酸アルカリ土類金属塩及びアスコルビルリン酸遷移金属塩から選ぶことができる。
【0151】
アスコルビン酸前駆体、例えば、活性剤アミド及び活性剤糖誘導体を使用することもでき、これらはそれぞれ、アスコルビン酸をin situで放出するための酵素として、プロテアーゼ又はペプチダーゼ、及びグリコシダーゼを必要とする。このような化合物は、特許EP 0 667 145に記載されている。
【0152】
活性剤糖誘導体は、とりわけ、C3~C6糖誘導体から選ばれる。これらはとりわけ、グルコシル、マンノシル、フルクトシル、フコシル、N-アセチルグルコサミン、ガラクトシル、及びN-アセチルガラクトサミン誘導体、N-アセチルムラミン酸誘導体、及びシアル酸誘導体、並びにこれらの混合物から選ばれる。
【0153】
第2のアスコルビン酸前駆体は、他の酵素によって、例えば、エステラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ等によって加水分解される誘導体から選ぶことができる。本発明によれば、第2の活性剤前駆体は、例えば、リン酸エステル;硫酸エステル;パルミチン酸エステル;酢酸エステル;プロピオン酸エステル;フェルラ酸エステル;及び一般に、活性剤のアルキル又はアシルエステル;アシル又はアルキルエーテルから選ぶことができる。アシル及びアルキル基は、特に、1~30個の炭素原子を含有する。皮膚ケア活性成分として、3-O-エチルアスコルビン酸を挙げることができる。
【0154】
特に、第2の前駆体は、硫酸エステル又はリン酸エステル等の、鉱酸との反応から誘導され、皮膚と接触するとスルファターゼ又はホスファターゼと反応するエステルであってもよく、第2の前駆体は、有機酸との、例としては、パルミチン酸、酢酸、プロピオン酸、ニコチン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、又はフェルラ酸との反応から誘導され、特定の皮膚エステラーゼと反応する、アシル又はアルキルエステルであってもよい。
【0155】
他の誘導体は、例えば特許EP 1 430 883に記載されている。
【0156】
アスコルビン酸アナログは、より詳細には、その塩、とりわけアルカリ金属塩、例えばアスコルビン酸ナトリウム、そのエステル、とりわけ酢酸エステル、プロピオン酸エステル、若しくはパルミチン酸エステル等、又はその糖、とりわけ、グリコシルアスコルビン酸等である。
【0157】
(d)皮膚ケア活性成分として、レゾルシノール誘導体を挙げることができる。
【0158】
レゾルシノール誘導体は、好ましくは4位が置換されている誘導体、例えば4-アルキルレゾルシノール、より好ましくはフェニルエチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール、及び4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオール、特に、その白色化効果のためにフェニルエチルレゾルシノールであってもよい。フェニルエチルレゾルシノールはまた、4-(1-フェニルエチル)-1,3-ベンゼンジオールとも称され、以下の化学式によって表される。フェニルエチルレゾルシノールは、例えばSymrise Corp社から入手することができる(製品名:Symwhite 377(登録商標))。
【0159】
【化4】
【0160】
レゾルシノール誘導体の他の例として、以下のものを挙げることができる: 2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、4,5-ジメチルレゾルシノール、2,4-ジメチル-1,3-ベンゼンジオール、3,5-ジヒドロキシベンジルアミン、5-メトキシレゾルシノール、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール、2-メトキシレゾルシノール、4-メトキシレゾルシノール、3,5-ジヒドロキシトルエン一水和物、4-クロロレゾルシノール、2-クロロレゾルシノール、2',4'-ジヒドロキシアセトフェノン、3',5'-ジヒドロキシアセトフェノン、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、4-プロピルレゾルシノール、2,4-ジヒドロキシ-1,3,5-トリメチルベンゼン、3,5-ジヒドロキシベンズアミド、2,6-ジヒドロキシベンズアミド、2,4-ジヒドロキシベンズアミド、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンジルアルコール、3,5-ジヒドロキシアニソール水和物、4-アミノレゾルシノール塩酸塩、2-アミノレゾルシノール塩酸塩、5-アミノベンゼン-1,3-ジオール塩酸塩、2',4'-ジヒドロキシプロピオフェノン、2',4'-ジヒドロキシ-3'-メチルアセトフェノン、(2,4-ジヒドロキシフェニル)アセトン、(3,5-ジヒドロキシフェニル)アセトン、2,6-ジヒドロキシ-4'-メチルアセトフェノン、4-n-ブチルレゾルシノール、2,4-ジエチル-1,3-ベンゼンジオール、3,5-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,4-ジヒドロキシ-6-メチル安息香酸、3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、2-エチル-5-メトキシベンゼン-1,3-ジオール、4-アミノ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシアセトフェノン一水和物、3,5-ジヒドロキシベンジルアミン塩酸塩、4,6-ジクロロレゾルシノール、2',4'-ジヒドロキシ-3'-メチルプロピオフェノン、1-(3-エチル-2,6-ジヒドロキシフェニル)エタン-1-オン、2',6'-ジヒドロキシ-4'-メトキシアセトフェノン、1-(2,6-ジヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタン-1-オン、3(2,4-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、及び2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸。
【0161】
(d)皮膚ケア活性成分として、C-グリコシド誘導体を挙げることができる。
【0162】
本発明に従って組成物中に存在しうるC-グリコシド誘導体は、下の一般式(II):
【0163】
【化5】
【0164】
(式中、
Rは、非置換直鎖状C1~C4、とりわけC1~C2アルキル基、特にメチルを示し、
Sは、D-グルコース、D-キシロース、N-アセチル-D-グルコサミン、及びL-フコースから選ばれる単糖、特にD-キシロースを表し、
Xは、-CO-、-CH(OH)-、及び-CH(NH2)-から選ばれる基、優先的には-CH(OH)-基を表す)
の化合物、並びにまた化粧料として許容されるその塩、その溶媒和物、例えば水和物、及びその光学異性体から選ばれる。
【0165】
本発明における使用に特により好適なC-グリコシド誘導体の非限定的な例として、とりわけ以下の誘導体:
C-ベータ-D-キシロピラノシド-n-プロパン-2-オン、
C-アルファ-D-キシロピラノシド-n-プロパン-2-オン、
C-ベータ-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパン、
C-アルファ-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパン、
1-(C-ベータ-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシプロパン、
1-(C-アルファ-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシプロパン、
1-(C-ベータ-D-グルコピラノシル)-2-アミノプロパン、
1-(C-アルファ-D-グルコピラノシル)-2-アミノプロパン、
3'-(アセトアミド-C-ベータ-D-グルコピラノシル)プロパン-2'-オン、
3'-(アセトアミド-C-アルファ-D-グルコピラノシル)プロパン-2'-オン、
1-(アセトアミド-C-ベータ-D-グルコピラノシル)-2-ヒドロキシプロパン、
1-(アセトアミド-C-ベータ-D-グルコピラノシル)-2-アミノプロパン、
並びにまた化粧料として許容されるその塩、その溶媒和物、例えば水和物、及びその光学異性体を挙げることができる。
【0166】
特定の実施形態によれば、C-ベータ-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパン又はC-アルファ-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパン、なおも良好にはC-ベータ-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパンを、有利には、本発明による組成物の調製のために使用してもよい。
【0167】
特定の実施形態によれば、本発明における使用に好適なC-グリコシド誘導体は、有利には、C-ベータ-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパンとしても知られ、とりわけ、水/プロピレングリコール混合物(60/40)中の30質量%溶液として、Chimex社によりMexoryl SBB(登録商標)の名称で販売されている、ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオールでありうる。一実施形態によれば、C-グリコシド誘導体は溶液の形態であり、溶液中では、C-グリコシド誘導体は、溶液の総質量に対して30質量%の量で存在し、残りは水とプロピレングリコールとの混合物である。
【0168】
本発明における使用に好適なC-グリコシド誘導体の塩は、従来のこれらの化合物の生理的に許容される塩、例えば、有機酸又は鉱酸から形成される塩を含んでもよい。挙げることができる例には、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、及びホウ酸等の鉱酸の塩が含まれる。1つ又は複数のカルボン酸基、スルホン酸基又はホスホン酸基を含みうる、有機酸の塩を挙げることもできる。これらは、直鎖状、分枝状又は環状脂肪族酸、或いは芳香族酸であってもよい。これらの酸はまた、O及びNから選ばれる1個又は複数のヘテロ原子も、例えばヒドロキシル基の形態で含んでもよい。とりわけ、プロピオン酸、酢酸、テレフタル酸、クエン酸、及び酒石酸を挙げることができる。
【0169】
上記の化合物に許容される溶媒和物は、従来の溶媒和物、例えば、溶媒の存在に起因して前記化合物の調製の最終工程中に形成されるものを含む。挙げることができる例には、水、又は直鎖状若しくは分枝状のアルコール、例えばエタノール若しくはイソプロパノールの存在に起因する溶媒和物が含まれる。
【0170】
本発明における使用に好適なC-グリコシド誘導体は、とりわけ、その内容が参照によって本明細書に組み込まれる、文献WO 02/051 828に記載されている合成法によって得ることができる。
【0171】
(d)皮膚ケア活性成分として、サリチル酸及びその誘導体を挙げることができる。サリチル酸の誘導体は、式(III):
【0172】
【化6】
【0173】
(式中、
R基は、2~22個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝状、又は環状の飽和脂肪族鎖;2~22個の炭素原子を含有し、共役していてもよい1つ又は複数の二重結合を含有する不飽和鎖;直接、又は2~7個の炭素原子を含有する飽和若しくは不飽和脂肪族鎖を介して、カルボニル基に連結している芳香族核を示し、前記基同士は、同一であっても異なってもよい、(a)ハロゲン原子、(b)トリフルオロメチル基、(c)遊離形態における、若しくは1~6個の炭素原子を含有する酸によってエステル化されたヒドロキシル基、又は(d)遊離形態における、若しくは1~6個の炭素原子を含有する低級アルコールによってエステル化されたカルボキシル官能基から選ばれる、1つ又は複数の置換基によって、場合により置換されており、
R'はヒドロキシル基である)
によって表すことができる。サリチル酸誘導体は、無機塩基又は有機塩基から誘導される塩の形態であってもよい。
【0174】
(d)皮膚ケア活性成分は、ナイアシンアミド、アスコルビルグルコシド、フェニルエチルレゾルシノール、ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール、3-O-エチルアスコルビン酸、サリチル酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが、よりいっそう好ましい。
【0175】
本発明による組成物中の(d)皮膚ケア活性成分の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0176】
その一方で、本発明による組成物中の(d)皮膚ケア活性成分の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0177】
本発明による組成物中の(d)皮膚ケア活性成分の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~20質量%、好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の範囲内であってもよい。
【0178】
[水]
本発明による組成物は、(e)水を含む。
【0179】
本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であってもよい。
【0180】
その一方で、本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってもよい。
【0181】
本発明による組成物中の(e)水の量は、組成物の総質量に対して、60質量%~95質量%、好ましくは70質量%~90質量%、より好ましくは80質量%~85質量%の範囲内であってもよい。
【0182】
[ポリオール]
本発明による組成物は、少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。単一のタイプのポリオールを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのポリオールを組み合わせて使用してもよい。
【0183】
「ポリオール」という用語は、ここでは、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖又はその誘導体を包含しない。糖の誘導体としては、糖の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及びその1つ又は複数のヒドロキシ基中の水素原子がアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基、又はカルボニル基等の少なくとも1つの置換基で置き換えられている、糖又は糖アルコールが挙げられる。
【0184】
ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールであってもよい。
【0185】
ポリオールは、天然ポリオールであっても、合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状、又は環状の分子構造を有しうる。
【0186】
ポリオールは、グリセリン及びその誘導体、並びにグリコール及びその誘導体から選択することができる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール(5~50のエチレンオキシド基)、及びソルビトール等の糖からなる群から選択することができる。
【0187】
本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0188】
その一方で、本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってもよい。
【0189】
したがって、ポリオールは、組成物の総質量に対して、0.01質量%~25質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、例えば0.1質量%~15質量%の範囲内の量で、本発明による組成物中に存在しうる。
【0190】
[他の成分]
本発明による組成物は、室温(25℃)で液体の形態である、1種又は複数の一価アルコール、例えば1~6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の一価アルコール等、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールを含有してもよい。
【0191】
本発明による組成物中の一価アルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよい。
【0192】
その一方で、本発明による組成物中の一価アルコールの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0193】
したがって、本発明による組成物中の一価アルコールの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%の範囲内であってもよい。
【0194】
本発明による組成物はまた、上で説明した成分を除く、化粧用及び皮膚科学的組成物において従来使用される様々なアジュバント、例えば増粘剤、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性又は双性イオン性ポリマー、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性界面活性剤、酸化防止剤、着色剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、香料、分散剤、コンディショニング剤、皮膜形成剤、保存剤、共保存剤、並びにこれらの混合物を含んでもよい。
【0195】
一実施形態では、本発明による組成物は、ラウリン酸PG5等の5つ以上のグリセロール単位を含むポリグリセリル脂肪酸エステル不含であってもよい。「不含」という用語は、ここでは、本発明による組成物が、5つ以上のグリセロール単位を含むポリグリセリル脂肪酸エステルを、限定的な量で含有しうることを意味する。しかしながら、5つ以上のグリセロール単位を含むポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、よりいっそう好ましくは0.01質量%未満であるように限定されることが好ましい。本発明による組成物は、5つ以上のグリセロール単位を含むポリグリセリル脂肪酸エステルを含まないことが最も好ましい。
【0196】
別の実施形態では、本発明による組成物は、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤不含であってもよい。「不含」という用語は、ここでは、本発明による組成物が、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を、限定的な量で含有しうることを意味する。しかしながら、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、よりいっそう好ましくは0.01質量%未満であるように限定されることが好ましい。本発明による組成物は、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を含まないことが最も好ましい。
【0197】
(調製)
本発明の組成物は、上で説明した必須成分、及び必要な場合、上で説明した任意成分を混合することによって、調製することができる。
【0198】
上記の必須成分及び任意成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用し、上記の必須成分及び任意成分を混合して、本発明による組成物を調製することができる。
【0199】
本発明による組成物は、ホモジナイザーが必要とするような大量のエネルギーを用いずに調製することができる。したがって、本発明による組成物は、少量のエネルギーを使用すること、例えば組成物の成分を穏やかに撹拌することによって、調製することができる。そのため、本発明による組成物は、その調製手法を考慮して環境に優しい。
【0200】
[形態]
本発明による組成物の形態は、限定されない。
【0201】
本発明による組成物は、本発明による組成物が(a)少なくとも1種の油を含む場合、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態であってもよい。
【0202】
「マイクロエマルション」は、2通りに、すなわち、広義及び狭義に定義されうる。すなわち、1つには、マイクロエマルションが、油性成分、水性成分、及び界面活性剤の3つの成分を有する三成分系を含有する熱力学的に安定な等方性単一液相を指す場合(「狭義のマイクロエマルション」)があり、2つ目には、熱力学的に不安定な典型的なエマルション系の中で、マイクロエマルションが、粒径がより小さいために透明又は半透明な外観を示すエマルションを更に含む場合(「広義のマイクロエマルション」)がある(Satoshi Tomomasaら、Oil Chemistry、37巻、11号(1988)、48~53頁)。本明細書において使用される「マイクロエマルション」は、「狭義のマイクロエマルション」、すなわち、熱力学的に安定な等方性単一液相を指す。
【0203】
マイクロエマルションは、油がミセルによって可溶化されているO/W(水中油)タイプのマイクロエマルション、水が逆ミセルによって可溶化されているW/O(油中水)タイプのマイクロエマルション、又は界面活性剤分子の会合数が無限になり、その結果、水性相及び油性相の両方が連続構造を有する両連続マイクロエマルションのいずれか1つの状態を指す。
【0204】
マイクロエマルションは、レーザー粒度分析によって測定して、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下の粒径を有する分散相を有しうる。
【0205】
「ナノエマルション」は、ここでは、350nm未満のサイズを有する分散相を特徴とするエマルションを意味し、この分散相は、分散相/連続相界面において、ラメラタイプの液晶相を任意選択で形成することができる(b)及び(c)の非イオン性界面活性剤のクラウンによって安定化されている。特定の乳白剤の非存在下では、分散相が小サイズであることからナノエマルションの透明性が生じるが、この小サイズは、機械的エネルギーの使用によって得られる。
【0206】
ナノエマルションは、その構造によって、マイクロエマルションと区別することができる。具体的には、マイクロエマルションは、例えば、成分(b)及び(c)によって形成されて成分(a)で膨化したミセルから形成された、熱力学的に安定な分散体である。更に、マイクロエマルションは、調製するために実質的な機械的エネルギーを必要としない。
【0207】
ナノエマルションは、レーザー粒度分析によって測定して、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下の粒径を有する分散相を有しうる。
【0208】
本発明による組成物は、連続水性相中に分散した油相を含む、O/W型エマルションの形態であることが好ましい。分散した油相は、水性相中の油滴であってもよい。
【0209】
O/W型の構成又は構造は、水性相中に分散した油相からなるので、外側に水性相を有し、そのため、本発明による組成物がO/W型の構成又は構造を有する場合、水性相が与えることができる即時のみずみずしさの感触に起因して、心地良い使用感を与えることができる。
【0210】
(a)油の粒径は、本発明による組成物がO/W型エマルションの形態である場合、35nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下であることが、よりいっそう好ましい。粒径は、動的光散乱法によって測定することができる。粒径測定は、例えば、大塚電子株式会社により市販されている、粒径分析装置ELSZ-2000シリーズによって実行することができる。
【0211】
粒径は、体積平均粒子直径又は数平均粒子直径、好ましくは体積平均粒子直径であってもよい。
【0212】
本発明による組成物は、透明とすることができる。
【0213】
透明性は、濁度を測定することによって測定されうる(例えば、濁度は、丸型セル(直径25mm及び高さ60mm)、及び可視光(400nmから800nmの間、好ましくは400~500nm)を発することができるタングステンフィラメント電球を有する2100Q(Hach Company社により市販されている)を用いて測定することができる)。測定は、無希釈組成物において実行することができる。ブランクは、蒸留水を用いて決定されうる。
【0214】
本発明による組成物は、150NTU以下、好ましくは130NTU以下、より好ましくは110NTU以下の濁度を有する。
【0215】
[方法及び使用]
本発明による組成物は、化粧用又は皮膚科学的組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚のための化粧用組成物であることが好ましい。
【0216】
本発明による組成物は、皮膚に塗布することによって、皮膚を処置するための、美容方法等の非治療的方法のために使用することができる。
【0217】
したがって、本発明はまた、皮膚を処置するための美容方法であって、本発明による組成物を皮膚に塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【0218】
本発明はまた、皮膚ケア製品等の化粧料としての、又は化粧料における、本発明による組成物の使用にも関しうる。
【0219】
言い換えれば、本発明による組成物は、そのままで化粧料として使用することができる。或いは、本発明による組成物は、化粧料の一要素として使用することができる。例えば、本発明による組成物を任意の他の要素に加えて、又は任意の他の要素と組み合わせて、化粧料を形成することができる。
【0220】
皮膚ケア製品は、ローション、クリーム、セラム、及び日焼け止め剤等であってもよい。
【0221】
本発明の別の態様はまた、
(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル、
(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分、及び
(e)水
を混合する工程を含む、組成物を調製するための方法にも関する。
【0222】
混合する工程は、大量のエネルギーを使用するホモジナイザー等の特殊な機械的撹拌機を用いない、いわゆる低エネルギープロセスによって実行されることが好ましい。低エネルギープロセスは、成分(b)~(e)を単に穏やかに撹拌することによって、実行することができる。
【0223】
本発明による使用及び方法における上記の組成物は、(a)少なくとも1種の油を更に含んでもよい。この場合、本発明による使用及び方法における上記の組成物は、O/W型ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態であることが好ましい。
【0224】
本発明の別の態様は、(e)水を含む組成物において、又は(a)少なくとも1種の油及び(e)水を含む、好ましくはナノエマルション若しくはマイクロエマルションの形態における組成物において、
(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分
の皮膚浸透を増強又は改善するための、
(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、及び
(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル
の使用に関する。
【0225】
本発明はまた、(e)水を含む組成物における、又は(a)少なくとも1種の油及び(e)水を含む、好ましくはナノエマルション若しくはマイクロエマルションの形態における組成物における、
(d)少なくとも1種の皮膚ケア活性成分
のための皮膚浸透増強剤としての、
(b)12.0以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上のHLB値を有する、少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、及び
(c)10.0以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下のHLB値を有する、少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル
の使用に関する。
【0226】
本発明による組成物についての成分(b)~(e)、及び成分(a)を含む任意成分に関する上記の説明は、本発明による使用及び方法についての成分に適用することができる。本発明による組成物の調製及び形態に関する説明もまた、上記の使用及び方法において記載された組成物の調製及び形態に適用することができる。
【実施例
【0227】
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0228】
(実施例1~12及び比較例1~18)
表1~6に示す実施例1~12及び比較例1~18による以下の組成物を、以下の通り表1~6に示す成分を混合することによって調製した。表1~6に示す成分の量についての数値はすべて、活性材料の「質量%」に基づく。
【0229】
【表1A】
【0230】
【表1B】
【0231】
【表2A】
【0232】
【表2B】
【0233】
【表3A】
【0234】
【表3B】
【0235】
【表4A】
【0236】
【表4B】
【0237】
【表5A】
【0238】
【表5B】
【0239】
【表6A】
【0240】
【表6B】
【0241】
[評価]
(安定性)
実施例1~12及び比較例1~18による組成物を、インキュベータ中に45℃で1カ月間維持した。組成物の外見を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0242】
良好: 相分離は観察されなかった
不良: 相分離が観察された
【0243】
結果を、表1~6中の「安定性」と表記した行に示す。
【0244】
(活性成分の浸透量)
浸透試験の実験を、Franz拡散セル(Hanson社)において、Strat-Mメンブレン(Millipore社、直径15mm)を用いて実行した。この機器は、ドナー部及びレセプター部で構成され、Strat-Mメンブレンは、ドナー部とレセプター部との間にあった。所定の体積を有するレセプター部を、32℃の温度で維持されている受容溶液(receiving solution)(0.25質量%のTween 80/脱イオン水)で満たし、これを小さなマグネチックバーによって連続的に撹拌した。実施例1~12及び比較例1~18による各組成物を、スパチュラを用いて、30mg/cm2の量でドナー部のメンブレンに塗り広げた。5時間後、200μlの受容溶液をレセプター部から取り出し、同じ浸透条件を維持するため、同量の新しい受容溶液をレセプター部に供給した。取り出した受容溶液をHPLCによって分析して、受容溶液中の活性成分の量を決定した。メンブレンを通過した活性成分のパーセンテージは、受容溶液中の活性成分の検出量を、メンブレンに塗り広げた活性成分の量で除算することによって計算した。
【0245】
結果を、表1~6中の「活性成分の浸透量」と表記した行に示す。
【0246】
実施例1及び比較例1~3の比較は、エマルション中に2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用又は不使用と比較して、活性成分(アスコルビルグルコシド)の浸透が増強されたことを実証している。
【0247】
実施例2は、2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、油を用いない場合でさえ、活性成分(アスコルビルグルコシド)の浸透が増強されたことを実証している。
【0248】
実施例3及び比較例4~6の比較は、エマルション中に2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用又は不使用と比較して、活性成分(ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール)の浸透が増強されたことを実証している。
【0249】
実施例4は、2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、油を用いない場合でさえ、活性成分(ヒドロキシプロピルテトラヒドロピラントリオール)の浸透が増強されたことを実証している。
【0250】
実施例5及び比較例7~9の比較は、エマルション中に2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用又は不使用と比較して、活性成分(3-O-エチルアスコルビン酸)の浸透が増強されたことを実証している。
【0251】
実施例6は、2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、油を用いない場合でさえ、活性成分(3-O-エチルアスコルビン酸)の浸透が増強されたことを実証している。
【0252】
実施例7及び比較例10~12の比較は、エマルション中に2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用又は不使用と比較して、活性成分(ナイアシンアミド)の浸透が増強されたことを実証している。
【0253】
実施例8は、2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、油を用いない場合でさえ、活性成分(ナイアシンアミド)の浸透が増強されたことを実証している。
【0254】
実施例9及び比較例13~15の比較は、エマルション中に2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用又は不使用と比較して、活性成分(サリチル酸)の浸透が増強されたことを実証している。
【0255】
実施例10は、2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、油を用いない場合でさえ、活性成分(サリチル酸)の浸透が増強されたことを実証している。
【0256】
実施例11及び比較例16~18の比較は、エマルション中に2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、単一のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用又は不使用と比較して、活性成分(フェニルエチルレゾルシノール)の浸透が増強されたことを実証している。
【0257】
実施例12は、2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用することで、油を用いない場合でさえ、活性成分(フェニルエチルレゾルシノール)の浸透が増強されたことを実証している。
【国際調査報告】