(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-15
(54)【発明の名称】糖尿病を治療するためのイオン性液体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230908BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230908BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230908BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230908BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230908BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230908BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20230908BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230908BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230908BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20230908BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230908BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230908BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20230908BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P3/10
A61P1/16
A61P3/04
A61K38/02
A61K38/26
A61K38/28
A61K48/00
A61K31/7088
A61K45/08
A61K9/08
A61K9/48
A61K31/14
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537886
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021048537
(87)【国際公開番号】W WO2022051304
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523074308
【氏名又は名称】アイ2オー セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】イプセン,ケリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA53
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4C076BB11
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4C086AA01
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4C086ZA70
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4C206AA02
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4C206KA01
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4C206MA57
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4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZC35
(57)【要約】
糖尿病並びに肥満及び代謝異常を含む関連疾患を治療するためのイオン性液体及び深共晶液体を、本明細書に開示する。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患又は障害の治療を必要とする対象における疾患又は障害の治療方法であって、イオン性液体を含む治療的有効量の組成物を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
疾患又は障害が糖尿病である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患又は障害が1型糖尿病である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
疾患又は障害が2型糖尿病である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
疾患又は障害が非アルコール性脂肪肝炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
肥満の治療、体重増加の防止、又は体重の減少を必要とする対象における肥満の治療、体重増加の防止、又は体重の減少方法であって、イオン性液体を含む治療的有効量の組成物を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
組成物が、皮下、静脈内、又は経口投与により投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
組成物が経口投与により投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
組成物が液体充填カプセルとして投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
組成物が単回投与で投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
組成物が複数回投与で投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
組成物が粘膜に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が、少なくとも0.1重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、少なくとも0.05Mの濃度でイオン性液体を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
イオン性液体が、約4:1~約1:4のカチオン:アニオン比を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
イオン性液体が式(I):
【化1】
[式中:
R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、独立して、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ヘテロアルキル、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、及びC
2-6アルキニルから選択され;そして
R
6は、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、及びC
2-6アルキニルから選択される]
によって表される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5のうち少なくとも2つが水素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5のうち少なくとも3つが水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5が水素である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
R
6がC
1-6アルキル及びC
2-6アルケニルから選択される、請求項16記載の方法。
【請求項21】
R
6がC
1-6アルキルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
R
6がC
2アルキルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
R
6がC
1-6アルケニルである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
R
6がC
2アルケニルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
イオン性液体が式(II):
【化2】
[式中:
Rは、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、及びC
2-6アルキニルから選択される]
によって表される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
RがC
1-6アルキルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
RがC
1アルキルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
RがC
3アルキルである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
イオン性液体が式(III):
【化3】
によって表される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
イオン性液体が、コリニウムカチオンと、シンナメート、ヒドロシンナメート、マロネート、シトロネレート、及びグルタレートから選択されるアニオンとを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
アニオンが、シンナメート、ヒドロシンナメート、及びシトロネレートから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
組成物が1以上の追加薬剤をさらに含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
1以上の追加薬剤が、核酸、小分子、及びポリペプチドから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1以上の追加薬剤が核酸を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
1以上の追加薬剤が小分子を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
1以上の追加薬剤がポリペプチドを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
1以上の追加薬剤が、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド誘導体、及びグルカゴン様ペプチド模倣体から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
1以上の追加薬剤が、リラグルチド、エキセナチド、及びセマグルチドから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
1以上の追加薬剤がリラグルチドを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
1以上の追加薬剤がインスリン及びプラムリンタイドから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
組成物が、医薬的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びヒドロケイ皮酸を1:2のモル比で含む、前記組成物。
【請求項43】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びケイ皮酸を1:1のモル比で含む、前記組成物。
【請求項44】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びグルタル酸を1:1のモル比で含む、前記組成物。
【請求項45】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びマロン酸を1:1のモル比で含む、前記組成物。
【請求項46】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びオクテン酸を1:1のモル比で含む、前記組成物。
【請求項47】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びオクテン酸を1:2のモル比で含む、前記組成物。
【請求項48】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びシトロネル酸を1:1のモル比で含む、前記組成物。
【請求項49】
イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びシトロネル酸を1:2のモル比で含む、前記組成物。
【請求項50】
1以上の追加薬剤をさらに含む、請求項42~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
1以上の追加薬剤が、核酸、小分子、及びポリペプチドから選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
1以上の追加薬剤が核酸を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
1以上の追加薬剤が小分子を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
1以上の追加薬剤がポリペプチドを含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項55】
1以上の追加薬剤が、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド誘導体、及びグルカゴン様ペプチド模倣体から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項56】
1以上の追加薬剤が、リラグルチド、エキセナチド、及びセマグルチドから選択される、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
1以上の追加薬剤がリラグルチドを含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
1以上の追加薬剤がインスリン及びプラムリンタイドから選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項59】
請求項42~49のいずれか1項に記載の組成物及び医薬的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本願は2020年9月1日出願の米国仮特許出願第63/073172号、2021年2月26日出願の米国仮特許出願第63/154461号、及び2021年3月12日出願の米国仮特許出願第63/160575号の利益を主張するものであり、その各々の内容全体を本明細書で参考として援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002]糖尿病は、膵臓が全身グルコースの正常レベルを維持するのに十分なレベルのインスリンを分泌できないことを特徴とする代謝性疾患である。進歩しているにもかかわらず、糖尿病の新規治療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
[0003]1つの観点において、疾患又は障害の治療を必要とする対象における疾患又は障害の治療方法であって、イオン性液体を含む治療的有効量の組成物を対象に投与することを含む方法を、本明細書に提供する。
【0004】
[0004]いくつかの態様では、疾患又は障害は糖尿病である。いくつかの態様では、疾患又は障害は1型糖尿病である。いくつかの態様では、疾患又は障害は2型糖尿病である。いくつかの態様では、疾患又は障害は非アルコール性脂肪肝炎である。
【0005】
[0005]別の観点では、肥満の治療、体重増加の防止、又は体重の減少を必要とする対象における肥満の治療、体重増加の防止又は体重の減少方法であって、イオン性液体を含む治療的有効量の組成物を対象に投与することを含む方法を、本明細書に提供する。
【0006】
[0006]いくつかの態様では、組成物は、皮下、静脈内、又は経口投与により投与される。いくつかの態様では、組成物は経口投与により投与される。いくつかの態様では、組成物は液体充填カプセルとして投与される。いくつかの態様では、組成物は単回投与で投与される。いくつかの態様では、組成物は複数回投与で投与される。いくつかの態様では、組成物は粘膜に投与される。
【0007】
[0007]いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.1重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.05Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約4:1~約1:4のカチオン:アニオン比を含む。
【0008】
[0008]いくつかの態様では、イオン性液体は、式(I):
【0009】
【0010】
[式中:
R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6ヘテロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキニルから選択され;そして
R6は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキニルから選択される]
によって表される。
【0011】
[0009]いくつかの態様では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうち少なくとも2つは水素である。いくつかの態様では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうち少なくとも3つは水素である。いくつかの態様では、R1、R2、R3、R4、及びR5は水素である。
【0012】
[0010]いくつかの態様では、R6はC1-6アルキル及びC2-6アルケニルから選択される。いくつかの態様では、R6はC1-6アルキルである。いくつかの態様では、R6はC2アルキルである。いくつかの態様では、R6はC1-6アルケニルである。いくつかの態様では、R6はC2アルケニルである。
【0013】
[0011]いくつかの態様では、イオン性液体は式(II):
【0014】
【0015】
[式中:
Rは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキニルから選択される]
によって表される。
【0016】
[0012]いくつかの態様では、RはC1-6アルキルである。いくつかの態様では、RはC1アルキルである。いくつかの態様では、RはC3アルキルである。
[0013]いくつかの態様では、イオン性液体は式(III):
【0017】
【0018】
によって表される。
[0014]いくつかの態様では、イオン性液体は、コリニウムカチオンと、シンナメート、ヒドロシンナメート、マロネート、シトロネレート、及びグルタレートから選択されるアニオンとを含む。いくつかの態様では、アニオンは、シンナメート、ヒドロシンナメート、及びシトロネレートから選択される。
【0019】
[0015]いくつかの態様では、組成物は、1以上の追加薬剤をさらに含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、核酸、小分子、及びポリペプチドから選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は核酸を含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は小分子を含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤はポリペプチドを含む。
【0020】
[0016]いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド誘導体、及びグルカゴン様ペプチド模倣体から選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、リラグルチド、エキセナチド、及びセマグルチドから選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤はリラグルチドを含む。
【0021】
[0017]いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、インスリン及びプラムリンタイドから選択される。
[0018]いくつかの態様では、組成物は、医薬的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0022】
[0019]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びヒドロケイ皮酸を1:2のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
[0020]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びケイ皮酸を1:1のモル比で組成物を、本明細書に提供する。
【0023】
[0021]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びグルタル酸を1:1のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
[0022]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びマロン酸を1:1のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
【0024】
[0023]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びオクテン酸を1:1のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
[0024]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びオクテン酸を1:2のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
【0025】
[0025]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びシトロネル酸を1:1のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
[0026]別の観点では、イオン性液体を含む組成物であって、該イオン性液体が、コリン及びシトロネル酸を1:2のモル比で含む組成物を、本明細書に提供する。
【0026】
[0027]いくつかの態様では、組成物は、1以上の追加薬剤をさらに含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、核酸、小分子、及びポリペプチドから選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は核酸を含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は小分子を含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤はポリペプチドを含む。
【0027】
[0028]いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド誘導体、及びグルカゴン様ペプチド模倣体から選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、リラグルチド、エキセナチド、及びセマグルチドから選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤はリラグルチドを含む。
【0028】
[0029]いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、インスリン及びプラムリンタイドから選択される。
[0030]別の観点では、本明細書に記載の組成物及び医薬的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物を、本明細書に提供する。
参考としての援用
[0031]本明細書で言及するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、又は特許出願を参考として援用することを具体的かつ個々に示したのと同程度に、参考として本明細書で援用される。
【0029】
[0032]本発明の新規特徴を、付随する特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な態様を説明する以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】[0033]
図1は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)のアミノ酸配列を示す。
【
図2】[0034]
図2は、エキセナチドのアミノ酸配列を示す。
【
図3】[0035]
図3は、リラグルチドのアミノ酸配列を示す。
【
図4】[0036]
図4は、セマグルチドのアミノ酸配列を示す。
【
図5】[0037]
図5は、室温において液体であるさまざまなイオン性液体を示す。
【
図6】[0038]
図6は、室温において液体ではないさまざまなイオン性液体を示す。
【
図7】[0039]
図7は、非糖尿病ラットへコリン-シトロネル酸を空腸内投与した後の血中グルコースレベルの経時変化を示す。
【
図8】[0040]
図8は、非糖尿病ラットへコリン-オクタン酸及びコリン-オクテン酸を投与した後の血中グルコースレベルの経時変化を示す。
【
図9】[0041]
図9は、非糖尿病ラットへシトロネルを投与した後の血中グルコースレベルの経時変化を示す。
【
図10】[0042]
図10は、非糖尿病ラットへコリン-シトロネル酸を皮下及び経口投与した後の血中グルコースレベルの経時変化を示す。
【
図11】[0043]
図11は、糖尿病ラットへコリン-シトロネル酸を経口投与した後の血中グルコースレベルの経時変化を示す。
【
図12】[0044]
図12は、糖尿病ラットへコリン-シトロネル酸を空腸内、皮下、及び経口投与した後の血漿インスリンレベルの経時変化を示す。
【
図13】[0045]
図13は、非糖尿病ラットへコリン-シトロネル酸を空腸内投与した後の血中グルコースレベル及び尿中グルコースレベルの経時変化を示す。
【
図14】[0046]
図14は、非糖尿病ラットへコリン-ヒドロケイ皮酸及びリラグルチドを空腸内投与した後の血清リラグルチドレベルの経時変化を示す。
【
図15】[0047]
図15は、イヌの十二指腸(液体)又は胃(液体又はカプセル)へのC-ケイ皮酸中のリラグルチド(1:1)の送達を、IV(静脈内)、SC(皮下)投薬及び製剤化されていないリラグルチドの胃への経口投与と比較して示す。
【
図16】[0048]
図16は、イヌの胃への液体としてのC-ケイ皮酸中のエキセナチド(1:1)の送達を、IV、SC投薬及び製剤化されていないもの(エキセナチド-生理食塩水)と比較して示す。
【
図17】[0049]
図17は、Evonik EPOコーティングでコーティングされた0、00若しくは000ゼラチンカプセル又は0 HPMCカプセルで胃に送達されたコリン-ケイ皮酸中のセマグルチド(1:1)を示す。
【
図18】[0050]
図18は、イヌの胃へのC-ケイ皮酸中のセマグルチド(1:1)の送達(液体及びカプセル)を、IV、SC投薬及び製剤化されていないもの(PPB)又はSNACを伴うもの(SNAC-PPB)の経口投与と比較して示す。
【
図19】[0051]
図19は、コリン-ケイ皮酸を用いたリラグルチド及びエキセナチド(1:1)の共送達(co-delivery)を示す。
【
図20】[0052]
図20は、イオン性液体(IL)及び生理食塩水を100μLで投与したラットのH&E染色GI(胃腸)管組織を示す。
【
図21】[0053]
図21は、100μLのイオン性液体(IL)投与(薄い灰色;左側の棒グラフ)及び生理食塩水投与(濃い灰色;右側の棒グラフ)ラットについての血液及び血漿の結果を示す。
【
図22】[0054]
図22は、オクルディン及びクローディン-1について染色された、イオン性液体(IL)投与群及び生理食塩水投与群(プラセボ)からの空腸タイトジャンクションの免疫組織化学染色を示す。
【
図23】[0055]
図23は、100μLを投与したイオン性液体(IL)群及びプラセボ群におけるラットの体重を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
[0056]別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0032】
[0057]本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示内容を含む。
[0058]「Cx-y」という用語は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルなどの化学部分と併せて使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含有する基を包含することを意味する。例えば、「C1-6アルキル」という語は、1~6個の炭素を含有する直鎖アルキル及び分枝鎖アルキル基を含む、置換又は非置換飽和炭化水素基を表す。-Cx-yアルキレン-という語は、アルキレン鎖中にx~y個の炭素を有する置換又は非置換アルキレン鎖を表す。例えば、-C1-6アルキレン-は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、及びヘキシレンから選択することができ、これらのいずれか1つは、置換されていてもよい。
【0033】
[0059]「アルキル」は、直鎖アルキル及び分枝鎖アルキル基を含む、置換又は非置換飽和炭化水素基を表す。アルキル基は、1~12個の炭素原子(例えば、C1-12アルキル)、例えば、1~8個の炭素原子(C1-8アルキル)又は1~6個の炭素原子(C1-6アルキル)を含有することができる。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。アルキル基は、単結合によって分子の残りの部分に付着している。本明細書中で具体的に特記しない限り、アルキル基は、本明細書に記載される置換基などの1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0034】
[0060]「ハロアルキル」は、1以上のハロゲンによって置換されているアルキル基を表す。代表的なハロアルキル基としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、及び1,2-ジブロモエチルが挙げられる。
【0035】
[0061]「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有する直鎖又は分枝鎖アルケニル基を含む、置換又は非置換炭化水素基をさす。アルケニル基は、2~12個の炭素原子を含有することができる(例えば、C2-12アルケニル)。代表的なアルケニル基としては、エテニル(すなわち、ビニル)、プロプ-1-エニル、ブト-1-エニル、ペント-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなどが挙げられる。本明細書中で具体的に特記しない限り、アルケニル基は、本明細書に記載される置換基などの1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0036】
[0062]「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有する直鎖又は分枝鎖アルキニル基を含む、置換又は非置換炭化水素基をさす。アルキニル基は、2~12個の炭素原子を含有することができる(例えば、C2-12アルキニル)。代表的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。本明細書中で具体的に特記しない限り、アルキニル基は、本明細書に記載される置換基などの1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0037】
[0063]「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」及び「ヘテロアルキニル」は、炭素以外の原子から選択される1以上の骨格鎖原子をそれぞれ有する、置換又は非置換のアルキル、アルケニル及びアルキニル基を表す。炭素以外の原子から選択される代表的な骨格鎖原子としては、例えば、O、N、P、Si、S、又はそれらの組合せが挙げられ、ここで、窒素、リン、及び硫黄原子は、所望により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、所望により四級化されていてもよい。与えられる場合、数値範囲は全体的な鎖長を表す。例えば、3~8員ヘテロアルキルは、3~8個の原子の鎖長を有する。分子の残りの部分への接続は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル又はヘテロアルキニル鎖中のヘテロ原子又は炭素のいずれかを介していてもよい。本明細書中で具体的に特記しない限り、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、又はヘテロアルキニル基は、本明細書に記載される置換基などの1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0038】
[0064]本明細書で使用される「イオン性液体」という用語は、液体状態で存在する有機塩又は有機塩の混合物を表す。イオン性液体は、工業的加工、触媒作用、医薬品、及び電気化学を含むさまざまな分野において有用であることが示されている。イオン性液体は、少なくとも1つのアニオン性成分及び少なくとも1つのカチオン性成分を含有する。イオン性液体は追加的な水素結合供与体(すなわち、-OH又はNH基を提供することができる任意の分子)を含むことができ;例としては、限定されるものではないが、アルコール、脂肪酸、及びアミンが挙げられる。アニオン性及びカチオン性成分は、任意のモル比で存在することができる。代表的なモル比(カチオン:アニオン)としては、限定されるものではないが、1:1、1:2、2:1、及びこれらの比の間の範囲が挙げられる。いくつかの態様では、イオン性液体又は溶媒は100℃未満において液体として存在する。いくつかの態様では、イオン性液体又は溶媒は、室温において液体として存在する。
【0039】
[0065]本明細書で使用される「医薬的に許容し得る賦形剤」又は「医薬的に許容し得る担体」という語句は、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、又は封入材料などの医薬的に許容し得る材料、組成物、又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の構成成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。医薬的に許容し得る担体として機能することができる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)医薬製剤に使用される他の非毒性適合性物質、が挙げられる。
【0040】
[0066]「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、意図した用途、例えば、限定されるものではないが、以下に定義するような疾患の治療に影響を及ぼすのに十分な、本明細書に記載される化合物の量をさす。治療的有効量は、意図される治療適用(インビボ)、又は治療される対象及び疾患状態、例えば、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与方法などに応じて変動することができ、これらは当業者によって容易に決定されることができる。この用語はまた、標的細胞において特定の応答、例えば、血小板粘着及び/又は細胞移動の減少を誘導する用量にも適用される。具体的な用量は、選択される特定の化合物、従うべき投薬計画、それが他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、それが投与される組織、及びそれが運ばれる身体送達システムに応じて変動する。
【0041】
[0067]本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、疾患、障害、又は医学的状態に関して有益又は望ましい結果、例えば、限定されるものではないが、治療的利益及び/又は予防的利益を得るためのアプローチを表す。治療的利益としては、例えば、治療される基礎疾患の根絶又は改善を挙げることができる。また、治療的利益としては、例えば、対象が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、対象において改善が観察されるような、基礎疾患に関連する1以上の生理学的症状の根絶又は改善を挙げることができる。特定の態様では、予防的利益のために、特定の疾患を発症するリスクがある対象、又は疾患の1以上の生理学的症状を報告しているが、この疾患の診断がなされていなくてもよい対象に、組成物を投与する。
【0042】
[0068]「治療効果」は、この用語を本明細書で使用する場合、上記のような治療的利益及び/又は予防的利益を包含する。予防効果としては、疾患若しくは状態の出現の遅延若しくは排除、疾患若しくは状態の症状の発症の遅延若しくは排除、疾患若しくは状態の進行の減速、停止若しくは逆転、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0043】
[0069]「同時投与」、「と組み合わせて投与される」という用語、及びそれらの文法的等価物は、本明細書で使用される場合、ヒトを含む動物への2以上の薬剤の投与を包含し、その結果、薬剤及び/又はそれらの代謝産物の両方が同時に対象中に存在する。同時投与は、別個の組成物の同時投与、別個の組成物の異なる時点での投与、又は両方の薬剤が存在する組成物の投与を包含する。
【0044】
[0001]本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、動物(例えば、脊椎動物、両生類、魚類、哺乳類、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、乳牛、ヒツジ、げっ歯類、ウサギ、リス、クマ、及び霊長類(例えば、チンパンジー、ゴリラ、及びヒト))を包含する。対象は、好ましくは哺乳類である。哺乳類は、例えば、任意の哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、並びに家畜又は食用に育てられる動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、及びヤギであることができる。好ましい態様では、哺乳類はヒトである。
【0045】
[0002]「対照」又は「標準対照」は、試験試料、測定値又は値と比較するための基準、通常は既知の基準として働く、試料、測定値又は値を表す。例えば、試験試料を所与の疾患(例えば、糖尿病)を有する対象から採取し、既知の正常(非疾患)個体(例えば、標準対照対象)と比較することができる。標準対照はまた、所与の疾患を有さない同様の個体(例えば、標準対照対象)、例えば、同様の医学的背景、同じ年齢、体重などを有する健常個体の集団(すなわち、標準対照集団)から集められた平均的な測定値又は値を表すことができる。標準対照値はまた、同じ個体から、例えば、疾患発症前の患者から早期に得た試料から、得ることもできる。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば、半減期)又は治療的尺度(例えば、副作用の比較)に基づき治療的利益を比較するように考案することができる。対照は、データの重要性を決定するためにも有用である。例えば、所与のパラメーターの値が対照において大きく変動する場合、試験試料における変動は有意であるとはみなされない。当業者であれば、任意の数のパラメーターの評価のために標準対照を設計できることを認識するであろう。
【0046】
[0070]本明細書で使用される場合、「薬物」は、標的細胞又は生物体に対して効果を発揮する任意の薬剤である。薬物は、化学物質;有機又は無機小分子;ペプチド;タンパク質;又は核酸を含む群から選択することができる。本明細書に記載される方法における使用が企図される活性化合物の非限定的な例としては、小分子、ポリペプチド、核酸、抗体、ワクチン、GLP-1ポリペプチド又はその模倣体/類似体、プラムリンタイド、及びインスリンが挙げられる。
【0047】
[0071]本明細書で使用される場合、「糖尿病」は、膵臓によるインスリン分泌の欠乏又は欠如を特徴とする代謝性疾患である真性糖尿病を表す。全体を通して使用される「糖尿病」は、本明細書で別段の指定がない限り、1型及び2型真性糖尿病を含むすべての型を包含する。糖尿病の最も一般的な2つの形態は、インスリン産生の減少(1型)、又はインスリンに対する身体による応答の減少(2型)のいずれかに起因する。1型糖尿病では膵臓の機能が次第に失われ、その結果、最終的に、患者は、糖尿病の管理のために外因的に送達されたインスリンに完全に依存するようになる。2型では患者は膵臓の機能をいくらか維持するが、インスリンに対する身体の感受性は低減し、その結果、患者によって維持される血糖の程度が低下する。2型患者は、グルコース感受性を増加させる経口薬、GLP-1類似体、又はインスリンを含む、さまざまな薬物によって治療される。どちらの型の糖尿病も高血糖をもたらし、これは、糖尿病の急性徴候である、過剰な尿産生、口渇の増加及び水分摂取量の増加、かすみ目、原因不明の体重減少、嗜眠、並びにエネルギー代謝の変化を引き起こす。糖尿病は、神経障害、網膜症、微小血管機能不全、腎不全、及び創傷治癒不良を含む多くの合併症を引き起こす可能性がある。「前糖尿病」対象は、例えば、空腹時血糖の上昇又は食後血糖の上昇を有し、その結果、グルコースレベルが糖尿病の現在の医学的定義に適合しないことを特徴とすることができる。「新たに診断された」対象は、診断から1~3年以内の1型糖尿病患者を表す。この患者集団は、一般的な1型糖尿病集団とは生理学的又は感情的に異なっていることができる。
【0048】
[0072]「肥満」という用語は、体内の脂肪が過剰であることを表す。肥満は、当業者によって容認され、利用されている任意の尺度によって決定することができる。現在容認されている肥満の尺度は、体格指数(BMI)である。肥満の結果としては、心血管疾患、高い血圧(すなわち、高血圧)、変形性関節症、癌、及び糖尿病が挙げられる。
イオン性液体を含む組成物
[0073]いくつかの態様では、特定の疾患及び障害の治療に有用なイオン性液体を含む組成物を、本明細書に提供する。いくつかの態様では、イオン性液体中のアニオンは、ケイ皮酸、ヒドロケイ皮酸、ヒドロキシケイ皮酸(3-フェニルプロパン酸又はベンジル酢酸)、メトキシケイ皮酸、フェルラ酸、イソフェルラ酸、2-フェニルプロピオン酸(ヒドロアトロパ酸)、クマル酸、3,3-ジフェニルプロピオン酸、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸)から選択することができる。ケイ皮酸の他の構造的類似体を使用してもよい。
【0049】
[0074]いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びヒドロケイ皮酸を1:2のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びケイ皮酸を1:1のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びグルタル酸を1:1のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びマロン酸を1:1のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びオクテン酸を1:1のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びオクテン酸を1:2のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びシトロネル酸を1:1のモル比で含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、コリン及びシトロネル酸を1:2のモル比で含む。
【0050】
[0075]いくつかの態様では、ケイ皮酸の構造的類似体は、式:
【0051】
【0052】
[式中:
R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6ヘテロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキニルから選択され;そして
R6は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキニルから選択される]
によって表される。
【0053】
[0076]いくつかの態様では、アニオンは、式:
【0054】
【0055】
[式中:
Rは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、及びC2-6アルキニルから選択される]
によって表される二酸である。
【0056】
[0077]コリン(又はコリニウム)は、イオン性液体の調製におけるカチオンの好適な選択肢である。しかしながら、カチオンは、コリンの塩(例えば、塩化コリン)、コリンの誘導体、又は本明細書に記載のアニオンとイオン性液体を形成することができる任意の他の生体適合性カチオンを含む、さまざまな分子から選択することができる。
【0057】
[0078]いくつかの態様では、イオン性液体は、以下のスキーム:
【0058】
【0059】
によって例示されるように、酸を重炭酸コリンと混合することによって調製される。
[0079]重炭酸コリンは、カルボン酸と反応して、水、二酸化炭素、及び式:
【0060】
【0061】
によって表されるイオン性液体を形成する。
[0080]反応混合物中のアニオンとカチオンの比に応じて、得られる混合物は、過剰の酸又は過剰の重炭酸コリンのいずれかを含有する可能性もある。本明細書で使用される「イオン性液体」という用語は、等モルの酸及び炭酸コリン、過剰の酸、又は過剰の重炭酸コリンを含む、すべての化学量論を包含する。
【0062】
[0081]酸性プロトンの有無にかかわらず、示されるイオン性液体構造は、濃度及び組成に応じて同等であり、交換可能である。
[0082]いくつかの態様では、イオン性液体の特性は、アニオンとカチオンの間のイオン相互作用によって決定される。いくつかの態様では、イオン性液体の特性は、アニオンとカチオンの間の水素結合相互作用によって決定される。イオン性液体の特性に対するイオン相互作用及び水素結合相互作用の相対的寄与は、イオンの性質に応じてさまざまであることができる。
【0063】
[0083]いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.01重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.02重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.03重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.04重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.05重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.06重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.07重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.08重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.09重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.1重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.2重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.3重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.4重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.5重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.6重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.7重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.8重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.9重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1.0重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。
【0064】
[0084]いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.01Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.02Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.03Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.04Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.05Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.06Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.07Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.08Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.09Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.1Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.2Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.3Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.4Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.5Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.6Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.7Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.8Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.9Mの濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1.0Mの濃度でイオン性液体を含む。
【0065】
[0085]いくつかの態様では、イオン性液体は、約4:1~約1:4のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約4.4:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約4.3:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約4.2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約4.1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約4.0:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.9:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.8:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.7:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.6:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.5:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.4:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.3:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約3.0:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.9:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.8:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.7:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.6:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.5:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.4:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.3:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.9:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.8:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.7:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.6:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.5:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.4:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.3:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.3のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.4のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.5のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.6のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.7のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.8のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.9のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.3のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.4のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.5のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.6のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.7のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.8のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.9のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.0のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.3のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.4のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.5のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.6のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.7のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.8のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:3.9のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:4.0のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:4.1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:4.2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:4.3のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:4.4のカチオン:アニオン比を含む。
【0066】
[0086]いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.1重量/容量%の濃度でイオン性液体を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも0.05Mの濃度でイオン性液体を含む。
【0067】
[0087]いくつかの態様では、イオン性液体は、約2:1~約1:2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2.1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.9:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.8:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.7:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.6:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.5:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.4:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.3:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.2:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1.1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.3のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.4のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.5のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.6のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.7のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.8のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:1.9のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.1のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.2のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.3のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.4のカチオン:アニオン比を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、約1:2.5のカチオン:アニオン比を含む。
【0068】
[0088]いくつかの態様では、イオン性液体は、表1に列挙するカチオンのいずれか1つを含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、表1に列挙するカチオンの任意の1以上を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、表1に列挙するアニオンのいずれか1つを含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、表1に列挙するアニオンの任意の1以上を含む。いくつかの態様では、イオン性液体は、表1に列挙するカチオン:アニオン比のいずれか1つを含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、表1に列挙するイオン性液体のいずれか1つを含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、表1に列挙するイオン性液体の任意の1以上を含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、イオン性液体のいずれか1つを、表1に列挙するカチオン:アニオン比のいずれか1つで含む。いくつかの態様では、本明細書に提供される組成物は、イオン性液体の任意の1以上を、表1に列挙するカチオン:アニオン比のいずれか1つで含む。
製剤
[0089]いくつかの態様では、本明細書に提供されるイオン性液体は、1以上の薬物と組み合わせて製剤化される。いくつかの態様では、イオン性液体は、溶解度及び/又は送達を高めるために他の溶媒と組み合わせることができる。溶媒は、水性又は非水性であることができる。いくつかの態様では、溶媒の目的は、粘膜又は胃腸管が経るイオン性液体の用量を制御することである。溶媒によるイオン性液体の希釈は、対象に安全量を送達するという目的を果たすことができる。いくつかの態様では、溶媒の目的は、1以上の薬物の溶解度を改善することである。そのような改善は、1以上の薬物の化学的特性に適合するようにイオン性液体の物理化学的環境を制御する溶媒の能力に由来することができる。いくつかの態様では、溶媒は、粘膜を横断する送達を改善するという目的を果たすことができる。
【0069】
[0090]使用される溶媒としては、無制限に、滅菌水、生理食塩水、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、又は界面活性剤を挙げることができる。
【0070】
[0091]いくつかの態様では、溶媒は、イオン性液体とカプセルとの適合性に悪影響を与えないように選択する。
[0092]いくつかの態様では、1以上の薬物は、ミセル又は他の自己組織化構造を形成することができる。いくつかの態様では、そのような構造は、イオン性液体の存在下でのみ生じることができる。
【0071】
[0093]いくつかの態様では、1以上の薬物は核酸分子である。本明細書に記載される核酸分子は、ベクター、発現ベクター、抑制性核酸、アプタマー、鋳型分子若しくはカセット(例えば、遺伝子編集のための)、又は標的化分子(例えば、CRISPR-Cas技術のための)、又は生物体への送達が意図される任意の他の天然若しくは合成核酸分子であることができる。
【0072】
[0094]態様のいずれにおいても、1以上の薬物は、局所組織、例えば、腸管粘膜を治療すること、遠隔組織、例えば、肝臓を治療すること、又は全身循環に入ることを目的として設計することができる。
【0073】
[0095]いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物、例えば、イオン性液体及び1以上の薬物を含む組成物は、医薬的に許容し得る賦形剤をさらに含むことができる。適切な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組合せが挙げられる。加えて、必要に応じて、組成物は、1以上の薬物の有効性を増強する、乳化剤、界面活性剤、pH緩衝剤などの少量の追加的な賦形剤を含有することができる。
【0074】
[0096]いくつかの態様では、イオン性液体を含む組成物はさらに、生物体への送達を容易にするように設計された剤形に封入化することができる。そのような剤形の非限定的な例としては、カプセル剤、錠剤、及びシロップ剤が挙げられる。
【0075】
[0097]いくつかの態様では、製剤は、糖(ラクトースなど)、デンプン(トウモロコシデンプンなど)、セルロース、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、ゼラチン、及び他の適合性物質といった賦形剤を必要とする可能性がある。
【0076】
[0098]いくつかの態様では、本明細書に記載のイオン性液体を含む組成物は、1以上の追加薬剤をさらに含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、核酸、小分子、及びポリペプチドから選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は核酸を含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は小分子を含む。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤はポリペプチドを含む。いくつかの態様では、ポリペプチドは抗体を含む。いくつかの態様では、抗体は、抗原結合性フラグメント(Fab、F(ab’)2)、単鎖可変フラグメント(scFv)、及びナノボディから選択されるいずれか1つを含む。
【0077】
[0099]いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド誘導体、及びグルカゴン様ペプチド模倣体から選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、リラグルチド、エキセナチド、及びセマグルチドから選択される。いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、リラグルチドを含む。
【0078】
[0100]いくつかの態様では、1以上の追加薬剤は、インスリン及びプラムリンタイドから選択される。
疾患及び障害の治療のためのイオン性液体
[0101]いくつかの態様では、代謝性疾患又は代謝異常の治療を必要とする対象における代謝性疾患又は代謝異常の治療方法であって、イオン性液体を含む組成物を投与することを含む方法を、本明細書に提供する。代謝異常としては、限定されるものではないが、肥満、糖尿病、脂肪肝疾患、又は非アルコール性脂肪肝疾患が挙げられる。
【0079】
[0102]いくつかの態様では、経口投与によって糖尿病を治療するためのイオン性液体の使用を、本明細書に提供する。経口投与は、丸剤、カプレット、カプセル、エアロゾルスプレー、又は液体を含む投薬形態のいずれか1つで達成することができる。イオン性液体、又はイオン性液体と共に送達される1以上の薬物は、カプセルに封入することができる。投薬形態を有するイオン性液体は、明澄な純(neat)イオン性液体、イオン性液体と医薬的に許容し得る希釈剤、エマルション、又は懸濁液との均質混合物を含む、任意の物理的形態で存在することができる。経口用量はまた、シロップ、スプレー、又はエアロゾルとして与えられることもできる。本明細書に開示される任意の経口用量の組成物は、所定量のイオン性液体及び所望により1以上の薬物を含有することができ、当業者に周知の薬剤学の方法によって調製することができる。
【0080】
[0103]いくつかの態様では、インスリンの経口製剤をイオン性液体と組み合わせて経口投与することを含む糖尿病の治療方法を、本明細書に記載する。
[0104]いくつかの態様では、インスリン及びプラムリンタイドの経口製剤をイオン性液体と組み合わせて経口投与することを含む糖尿病の治療方法を、本明細書に記載する。
【0081】
[0105]いくつかの態様では、イオン性液体中のリラグルチド又はエキセナチドの経口製剤を経口投与することを含む糖尿病の治療方法を、本明細書に記載する。
[0106]本明細書に記載されるように、イオン性液体は、経口投与中に接する粘膜を横断して活性化合物を安全に運ぶことができる。
【0082】
[0107]本明細書の実施例に記載されるように、1以上の薬物と一緒に投与される場合、イオン性液体は1以上の薬物を可溶化し、全身循環への送達の増強をもたらす。したがって、それらは、粘膜への、及び/又は粘膜を横断する送達ビヒクルとして、特に適している。
【0083】
[0108]いくつかの態様では、1以上の薬物の送達方法であって、1以上の薬物をイオン性液体と組み合わせて粘膜、例えば、鼻膜、口膜、又は膣膜に投与することを含む方法を、本明細書に提供する。
【0084】
[0109]いくつかの態様では、1以上の薬物の送達方法であって、1以上の薬物を、少なくとも0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、1500mg/kg、1600mg/kg、1700mg/kg、1800mg/kg、1900mg/kg、2000mg/kg、2500mg/kg、3000mg/kg、3500mg/kg、4000mg/kg、4500mg/kg、5000mg/kg、5500mg/kg、6000mg/kg、6500mg/kg、7000mg/kg、7500mg/kg、8000mg/kg、8500mg/kg、9000mg/kg、又は10000mg/kgの用量で投与することを含む方法を、本明細書に提供する。いくつかの態様では、1以上の薬物の送達方法であって、1以上の薬物を、0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、1500mg/kg、1600mg/kg、1700mg/kg、1800mg/kg、1900mg/kg、2000mg/kg、2500mg/kg、3000mg/kg、3500mg/kg、4000mg/kg、4500mg/kg、5000mg/kg、5500mg/kg、6000mg/kg、6500mg/kg、7000mg/kg、7500mg/kg、8000mg/kg、8500mg/kg、9000mg/kg、又は10000mg/kgの用量で投与することを含む方法を、本明細書に提供する。
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)
[0110]グルカゴン様ペプチド-1(GLP-l)は、ヒトにおいて食物摂取量及び空腹感を低減することが知られているペプチドホルモンである。GLP-1のアミノ酸配列を
図1に示す。GLP-1は、グルコース恒常性に寄与するプログルカゴン遺伝子の転写産物に由来するインクレチンである。天然GLP-1の半減期は極めて短く、その使用は治療上の難題となっているので、より高い安定性を有するGLP-1の改変型が開発されてきた。そのような改変は、ペプチドの配列を変動させることによるか、又は別の実体(entity)をペプチドにコンジュゲートさせることによって、実施することができる。一般的な改変としては、脂質尾部の付着が挙げられる。GLP-1模倣体は、現在2型糖尿病の治療に使用されており、最近の臨床試験は、これらの治療がグルコース恒常性を改善することを実証している。それらはまた、体重減少を達成するのにも有用である。
【0085】
[0111]さまざまなGLP-1模倣体が知られており、糖尿病の治療に使用されている。GLP-1模倣体(又は類似体)としては、エキセナチドを挙げることができる。エキセナチドのアミノ酸配列を
図2に示す。GLP-1類似体の他の例としては、酵素分解を低減するための誘導体、例えば、リキシセナチド、デュラグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、リラグルチド、及びタスポグルチドが挙げられる。リラグルチドのアミノ酸配列を
図3に示す。セマグルチドのアミノ酸配列を
図4に示す。
【0086】
[0112]いくつかの態様では、GLP-1ポリペプチド又はその模倣体/類似体の経口製剤をイオン性液体と組み合わせて経口投与することを含む糖尿病の治療方法を、本明細書中に記載する。
【0087】
[0113]いくつかの態様では、本明細書中に提供される組成物は、イオン性液体及びGLP-1類似体を含む組成物を送達することによって肥満を治療するために使用することができる。
【0088】
[0114]いくつかの態様では、本明細書中に提供される組成物は、イオン性液体及びGLP-1類似体の2重作用によって肥満を治療するために使用することができる。特定のイオン性液体は、腸粘膜を横断する脂肪吸収を減少させる。体重減少に対する組成物の正味の結果は、脂肪吸収の減少、食物摂取量の減少、及びGLP-1類似体の送達の増加の組合せに起因することができる。
【実施例】
【0089】
全般
[0115]すべての動物実験は、動物実験委員会(animal care committee)のガイドライン及び米国学術研究会議のthe Guide for the Care and Use of Animals of the Institute of Laboratory Animal Resourcesに従って行った。
実施例1: コリン シトロネレート(1:2)の調製
[0116]500mL丸底フラスコ中の2当量の純シトロネル酸(20g、0.117mol、2当量)に、重炭酸コリン(9.70g、0.059mol、1当量)の80重量%溶液を12.13g加えた。該混合物を、CO2の発生が止まるまで40℃で攪拌した。溶媒を60℃で1時間にわたり回転蒸発により除去し、生成物を真空オーブン中、60℃で48時間乾燥した。
実施例2: コリン シンナメート(1:2)の調製
[0117]500mL丸底フラスコ中の2当量の純ケイ皮酸(30g、0.202mol、2当量)に、重炭酸コリン(16.72g、0.101mol、1当量)の80重量%溶液を20.91g加えた。ケイ皮酸を可溶化するために、エタノール(5mL)を混合物に添加した。該混合物を、CO2の発生が止まるまで40℃で攪拌した。溶媒を60℃で1時間にわたり回転蒸発により除去し、生成物を真空オーブン中、60℃で48時間乾燥した。
実施例3: イオン性液体の調製
[0118]カチオンとしてのコリン及びさまざまなアニオンを含むいくつかのイオン性液体を合成した。イオン性液体を調製するために、2、1、0.5、又は0.33当量の重炭酸コリン(80重量%溶液)を、250mL丸底フラスコ中の純カルボン酸アニオンに添加した。重炭酸コリン水溶液と混和しないアニオンのために、エタノールなどの共溶媒を、均質混合物が形成するまで添加した。CO2の発生が止まるまで混合物を室温で撹拌した。溶媒を60℃で20分間にわたり回転蒸発により除去し、各生成物を真空オーブン中、60℃で48時間乾燥した。
【0090】
[0119]62種類のアニオンを用いて、108種類のイオン性液体を合成した。これら108のイオン性液体のうち、43は室温で固体であり、65は室温で液体であった。いくつかの例では、非流動性ワックス状固体又は展延性グリース状固体であったイオン性液体は、高温(>30℃)で液化した。いくつかの例では、固体粉末は、高温(>30℃)で液化しなかった。いくつかの例(例えば、デカン酸)では、単一のアニオンは、1つの比率(2:1)で液体を生じ、別の比率(1:1又は1:2)で固体を生じた。形成したさまざまなイオン性液体及びそれらの物理的特性を表1にまとめる。
【0091】
【0092】
【0093】
実施例4: イオン性液体及び深共晶溶媒の物理的形態
[0120]イオン性液体は、それらの外観及び特性において著しく多様であった。コリン-酒石酸(2:1)などいくつかのイオン性液体は、室温において明澄液体である。他のもの、例えばコリン-ケイ皮酸は、室温において粘性黄色液体である。室温において液体であるさまざまなイオン性液体を
図5に示す。
【0094】
[0121]アニオンとカチオンのいくつかの混合物は、室温において液体ではない。例えば、コリン-酒石酸(1:1)は固体であり、コリン-デカン酸(1:1)はワックス状固体である。さまざまな非液体組成物を
図6に示す。室温において液体形態で存在するイオン性液体は、本明細書に記載の医薬用途にとりわけ適している。
実施例5: コリン-シトロネル酸投与後の血中グルコースレベルに対する効果
[0122]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、コリン-シトロネル酸を空腸内注射により投与した。絶食対照群には、生理食塩水を空腸内注射により投与した。血中グルコースレベルを決定するために、一定間隔で約250μLの血液を採取した。得られた値を、時間に対し、初期読み取り値に対する血中グルコースレベルの平均変化百分率±標準誤差としてプロットし(n=3)、
図7に示す。
【0095】
[0123]コリン-シトロネル酸は、血中グルコースレベルの即時かつ用量依存的な低下をもたらした。生理食塩水での対照処置は、血中グルコースレベルをベースラインから変化させなかった。しかしながら、ラットにコリン-シトロネル酸10、20、50、及び100μLを投与した場合、血中グルコースレベルは用量依存的に低下した。100μL用量では、グルコースレベルはベースラインから約70%低下した。この血中グルコースレベルの低下の程度は、糖尿病の治療において有効である可能性が高い。
実施例6: コリン-オクタン酸及びコリン-オクテン酸投与後の血中グルコースレベルに対する効果
[0124]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、100μLのコリン-オクタン酸又はコリン-オクテン酸を空腸内注射により投与した。絶食対照群には、生理食塩水を空腸内注射により投与した。血中グルコースレベルを決定するために、一定間隔で約250μLの血液を採取した。得られた値を、時間に対し、初期読み取り値に対する血中グルコースレベルの平均変化百分率±標準誤差としてプロットし(n=3)、
図8に示す。
【0096】
[0125]驚くべきことに、血中グルコースレベルの顕著な低下をもたらしたコリン-シトロネル酸とは異なり、コリン-オクタン酸もコリン-オクテン酸もラットにおいて血中グルコースレベルを低下させなかった。
実施例7: シトロネル酸投与後の血中グルコースレベルに対する効果
[0126]得られた値を、時間に対し、初期読み取り値に対する血中グルコースレベルの平均変化百分率±標準誤差としてプロットし(n=4)、
図9に示す。
【0097】
[0127]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、コリン-シトロネル酸又はシトロネル酸単独を空腸内注射により投与した。50μL用量のコリン-シトロネル酸は、血中グルコースレベルを開始レベルの約50%まで即座に低下させた。しかしながら、コリン-シトロネル酸イオン性液体50μL中の酸含量と同等であるシトロネル酸単独をラットに38μL投与した場合、血中グルコースレベルは開始レベルに対し約30%までしか低下せず、このレベルは10μLのイオン性液体投与後に観察されるレベルと同様であった。シトロネル酸単独では、コリン-シトロネル酸イオン性液体と同じ血中グルコース降下効果は得られない。
実施例8: コリン-シトロネル酸の経口及び皮下投与後の血中グルコースレベルの低下
[0128]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、コリン-シトロネル酸を皮下注射又は液体強制経口投与のいずれかにより投与した。絶食対照群には、生理食塩水を経口投与した。血中グルコースレベルを決定するために、一定間隔で約250μLの血液を採取した。得られた値を、時間に対し、初期読み取り値に対する血中グルコースレベルの平均変化百分率±標準誤差としてプロットし(n=4)、
図10に示す。
【0098】
[0129]コリン-シトロネル酸の経口及び皮下送達は両方とも、ラットにおいて血中グルコースレベルの低下をもたらした。いずれの場合も、グルコースレベルは最初の2時間以内に低下し、経時的に上昇した。
実施例9: 1型糖尿病のラットモデルにおける経口コリン-シトロネル酸投与後の血中グルコースレベルの低下
[0130]成体ストレプトゾシン誘発糖尿病雄Wistarラット及び非糖尿病ラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、コリン-シトロネル酸を液体強制経口投与により投与した。血中グルコースレベルを決定するために、一定間隔で約250μLの血液を採取した。得られた値を、時間に対し、初期読み取り値に対する血中グルコースレベルの平均変化百分率±標準誤差としてプロットし(n=4)、
図11に示す。
【0099】
[0131]コリン-シトロネル酸の経口送達は、血中グルコースレベルの実質的な低下をもたらした。健常ラットでは、グルコースレベルは低下し、時間とともに徐々に回復した。一方、1型糖尿病モデルでは、グルコースレベルはコリン-シトロネル酸の経口投与後に低下し続け、1型糖尿病の治療薬としてのコリン-シトロネル酸の可能性が実証された。
実施例10: 1型糖尿病のラットモデルにおけるコリン-シトロネル酸投与後の誘発インスリン(insulation)分泌
[0132]成体ストレプトゾトシン誘発糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、皮下注射(SC)、液体強制経口投与、又はカテーテル(空腸カテーテル)を介した空腸留置により、コリン-シトロネル酸を投与した。絶食対照群には処置をしなかった。インスリン血清濃度を決定するために、一定間隔で約250μLの血液を採取した。得られた値を、時間に対し、平均血漿インスリン濃度±標準誤差としてプロットし(n=3)、
図12に示す。
【0100】
[0133]インスリン分泌の刺激は、コリン-シトロネル酸のすべての投与方法で観察され、膵臓においてインスリンを産生する天然の能力を欠く1型糖尿病患者に対する治療薬としてのコリン-シトロネル酸の可能性が実証された。コリン-シトロネル酸は、新たに診断された1型糖尿病患者又は前糖尿病患者にとりわけ有用である可能性があり、これらの患者では、膵臓がインスリン産生細胞を依然としていくつか維持しており、これらの細胞が、コリン-シトロネル酸投与によって刺激されてインスリンを産生することができる。
実施例11: コリン-シトロネル酸投与後のグルコースの尿中排泄の増加
[0134]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、コリン-シトロネル酸をさまざまな用量で空腸内注射により投与し、血中グルコースをモニタリングした。注射1.5時間後に、尿を膀胱からサンプリングしてグルコース濃度を決定した。得られたグルコース濃度値を、用量レベルに対し、初期読取り値に対する血中グルコースレベルの変化百分率として、及び用量レベルに対し膀胱から採取した尿中のグルコース濃度の変化としてプロットし(n=1)、
図13に示す。
【0101】
[0135]血中グルコースレベルの低下及び尿中のグルコース濃度の上昇によって証明されるように、コリン-シトロネル酸は、グルコースを再吸収する腎臓の能力を低下させて、身体からのグルコース除去の量を増強し、血中グルコースレベルを低下させるのを助ける。
実施例12: コリン-ヒドロケイ皮酸を用いたリラグルチドの送達
[0136]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、リラグルチド及びコリン-ヒドロケイ皮酸を空腸内注射により投与した。絶食対照群には、生理食塩水を空腸内注射により投与した。リラグルチド血清濃度を決定するために、約250μLの血液を1時間ごとの間隔で採取した。得られた値を、時間に対し、ng/mLでの平均リラグルチド血清濃度±標準誤差としてプロットし(n=3)、
図14に示す。
【0102】
[0137]コリン-ヒドロケイ皮酸製剤として送達される場合、リラグルチドは、驚くほど高い血清濃度で血液循環中に送達された。リラグルチドの経口送達は難しいことが知られている。例えば、Buckley及び共同研究者らは、周知の浸透促進剤の存在下であっても、リラグルチドはごくわずかしか吸収されないことを実証した(Sci.Transl.Med.2018,10,eaar7047)。本明細書に報告されるリラグルチドの血中濃度は、文献に報告されているものよりも約4400倍高い。この予想外のレベルのリラグルチド送達は、特にリラグルチドの治療的利益が十分に確立されている2型糖尿病の治療に関し、糖尿病治療薬としてのコリン-ヒドロケイ皮酸の有望性を実証している。しかしながら、リラグルチドの現在の標準的治療が毎日の注射であるという事実は、コンプライアンス及び患者の承諾において高いハードルになる。リラグルチドを送達することができる経口丸剤は、患者への影響を劇的に改善するはずである。
実施例13: さまざまなコリンベースのイオン性液体を用いたリラグルチドの送達
[0138]成体非糖尿病雄Wistarラットを、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、リラグルチドと、さまざまなコリンベースのイオン性液体の1つとを空腸内注射により投与した。さまざまなイオン性液体について得られた5時間でのリラグルチドのピーク濃度を表2にまとめる。
【0103】
【0104】
[0139]送達されるリラグルチドの量はイオン性液体の組成に依存していた。コリン-シトロネル酸はわずかではあるが有意な吸収を生じさせて、4.5ng/mLのピーク濃度をもたらした。コリン-リノール酸は、濃度を約10倍改善して44ng/mLとした。コリン-マロン酸はさらに吸収を改善して、365ng/mLの血中リラグルチド濃度をもたらした。意外にも、コリン-ヒドロケイ皮酸は2000ng/mLを超える血中リラグルチド濃度をもたらし、コリン-シトロネル酸よりも500倍改善した。
実施例14: Lira-C-ケイ皮酸(1:1)/イヌ - リラグルチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)の胃又は十二指腸への送達
[0140]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、0.6mg/kgのリラグルチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)を内視鏡的留置により胃(液体又はカプセルとして)又は十二指腸(液体として)に麻酔下で投与した。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取した。対照群は、静脈内(IV、0.03mg/kg)及び皮下(SC、0.06mg/kg)投与を包含した。0.6mg/kgの製剤化されていないリラグルチドも胃に内視鏡的に投与した(
図15)。
実施例15: エキセナチド-C-ケイ皮酸(1:1)/イヌ - エキセナチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)の胃への送達
[0141]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、0.6mg/kgのエキセナチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)を液体形態(エキセナチド-IL)で内視鏡的留置により胃に麻酔下で投与した。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取した。対照群は、静脈内(IV、0.03mg/kg)及び皮下(SC、0.06mg/kg)投与を包含した。製剤化されていないエキセナチドもまた、緩衝液中の液体(生理食塩水、0.6mg/kg)として胃に内視鏡的に投与した(
図16)。
実施例16: セマグルチド-C-ケイ皮酸(1:1)カプセル/イヌ - ゼラチンカプセル及びHPMCカプセル中のセマグルチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)の胃への送達
[0142]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、EvonikのEPOコーティングでコーティングされた0、00又は000ゼラチンカプセル又は0 HPMCカプセルに含有された0.6mg/kgのセマグルチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)を、内視鏡的留置により胃に麻酔下で投与した。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取した(
図17)。
実施例17: セマグルチド-C-ケイ皮酸(1:1)/イヌ - セマグルチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)の胃への送達
[0143]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、0.6mg/kgのセマグルチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)を液体形態(Sema-IL)又はゼラチンカプセル(00ゼラチンカプセル)のいずれかで、内視鏡的留置により胃に麻酔下で投与した。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取した。対照群は、静脈内(IV、0.03mg/kg)及び皮下(SC、0.06mg/kg)投与を包含した。製剤化されていないセマグルチドもまた、緩衝液中の液体(PPB、0.6mg/kg)として胃に内視鏡的に投与した。比較例として、0.6mg/kgのセマグルチドを、浸透促進剤であるSNACと混合し、液体を介して胃に内視鏡的に投与した(
図18)。
実施例18: リラグルチド/エキセナチドの混合物 - リラグルチドとエキセナチド及びコリン-ケイ皮酸(1:1)の共送達
[0144]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、それぞれ0.3mg/kgのリラグルチドとエキセナチドとの混合物及びコリン-ケイ皮酸(1:1)を液体形態で内視鏡的留置により胃に麻酔下で投与した。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取した(
図19)。
実施例19: 安全性/毒性 - コリン-ケイ皮酸(1:1.5)の安全性プロファイル
[01145]成体非糖尿病雄Wistarラットに、25又は100μLのコリン-ケイ皮酸(1:1.5)のいずれかを強制経口投与により30日間毎日投与した。2つのプラセボ群は、25又は100μLの生理食塩水のいずれかを摂取した。動物を全身の健康状態について毎日観察し、体重を記録した。31日目に、すべての動物を安楽死させ、分析のために組織、血液及び血漿試料を採取した。臓器の切片(心臓、肺、肝臓、腎臓、及び脾臓)並びにすべての胃腸管切片(胃、十二指腸、空腸、回腸及び結腸)をH&Eで染色し、専門の病理学者が結果を読み、IL又は生理食塩水(プラセボ)を投与した動物の臓器及び胃腸管組織の組織学的検査において有意差が見出されなかったと結論付けた(
図20)。血球数は、IL投与群とプラセボ群との間で、いずれの用量レベルについても統計的に有意な差はなく、臓器毒性の血漿指標でもなかった(
図21)。胃腸管組織(十二指腸、空腸、回腸及び結腸)のタイトジャンクションタンパク質であるクローディン-1及びオクルディンのIHC染色は、IL投与群とプラセボ群との間で、いずれの用量レベルについても差異を示さなかった(
図22)。IL投与群とプラセボ群との間で全体的な健康状態又は体重増加に差はなかった(
図23)。
実施例20: さまざまなカチオン:アニオン比のコリン-ケイ皮酸を用いて製剤化された薬物の胃又は十二指腸への送達
[01146]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、例えば約4:1~約1:4の比でコリン-ケイ皮酸と共に製剤化された薬物、例えば、リラグルチド、エキセナチド、又はセマグルチドを、内視鏡的留置により胃(液体又はカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)として)又は十二指腸(液体として)に麻酔下で投与する。例えば、コリン-ケイ皮酸は、段落[0085]又は[0087]に記載した比のいずれか1つで製剤化される。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取する。対照群は、静脈内(IV)及び皮下(SC)投与を包含する。同じ用量の製剤化されていない薬物、例えば、リラグルチド、エキセナチド、又はセマグルチドも、内視鏡的に胃に投与する。
実施例21: さまざまなイオン性液体を用いて製剤化された薬物の胃又は十二指腸への送達
[0147]成体非糖尿病雄ビーグル犬を、水を自由に摂取させた点を除き一晩絶食させ、その後、例えば約4:1~約1:4の比でコリン-ヒドロケイ皮酸、コリン-グルタル酸、コリン-マロン酸、コリン-オクテン酸、又はコリン-シトロネル酸と共に製剤化された薬物、例えば、リラグルチド、エキセナチド、又はセマグルチドを、内視鏡的留置により胃(液体又はカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)として)又は十二指腸(液体として)に麻酔下で投与する。例えば、コリン-ヒドロケイ皮酸、コリン-グルタル酸、コリン-マロン酸、コリン-オクテン酸、又はコリン-シトロネル酸は、段落[0085]又は[0087]に記載した比のいずれかで製剤化される。イヌを回収し、12時間かけて血漿を採取する。対照群は、静脈内(IV)及び皮下(SC)投与を包含する。同じ用量の製剤化されていない薬物、例えば、リラグルチド、エキセナチド、又はセマグルチドも、内視鏡的に胃に投与する。
【0105】
[0148]本発明の好ましい態様を本明細書に示し記載してきたが、当業者には、これらの態様は例示に過ぎないことが明らかであろう。当業者であれば、ここで、本発明から逸脱することなく、数々の変動、変化、及び置換を思い付くであろう。本明細書に記載した本発明の態様のさまざまな代替物を、本発明の実施に際し採用してもよいことを、理解すべきである。以下の請求項は本発明の範囲を定義し、それにより、これらの請求項及びその等価物の範囲内の方法及び構造が包含されることが意図される。
【国際調査報告】