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特表2023-539732物理オブジェクトを製造するための方法及び3D印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】物理オブジェクトを製造するための方法及び3D印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/129 20170101AFI20230911BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230911BHJP
   B29C 64/277 20170101ALI20230911BHJP
【FI】
B29C64/129
B33Y10/00
B29C64/277
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512271
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2021057098
(87)【国際公開番号】W WO2022038441
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】20192103.8
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】コルテン,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】キルヒナー,バスティアン ペー.
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,クリスティアン アー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲルラッハ,コルビニアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,トーマス カー.
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL76
4F213WL96
(57)【要約】
少なくとも1つの物理オブジェクトを製造するための3D印刷システム(10)は、硬化性材料を受け入れるための少なくとも1つのリザーバ(12)と、硬化性材料のリザーバ内の焦点面上に光を照射して、硬化した材料の層を形成するように構成された少なくとも1つの光エンジン(22)と、製造される物理オブジェクトを支えるための少なくとも1つのビルドプラットフォーム(18)と、製造される物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて、硬化性材料を照射するために、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択するように構成されたコントローラと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の3D印刷システム(10;110)によって少なくとも1つの物理オブジェクトを製造する方法であって、
a)少なくとも1つの硬化性材料を準備する工程と、
b)前記硬化性材料を照射するために、前記3D印刷システム(10;110)において利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択する工程と、
c)前記3D印刷システム(10;110)内に設けられた少なくとも1つの光エンジン(22;122)によって提供される、前記少なくとも1つ又は少なくとも2つの選択光学解像度を有する光を、前記硬化性材料内の焦点面に照射することによって、前記硬化性材料の層を選択的に硬化させて、硬化した材料の層を形成する工程と、
d)前記硬化した材料の層を、前記照射光の焦点面に対して変位させる工程と、を含み、
前記少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択する工程が、製造される前記少なくとも1つの物理オブジェクトの所定の表面品質に基づく、方法。
【請求項2】
前記光学解像度が、前記3D印刷システム(10)に設けられた複数の光エンジン(22)から少なくとも1つの光エンジンを選択することによって選択され、各光エンジン(22)が、異なる設定光学解像度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学解像度が、前記少なくとも1つの光エンジン(22;122)のうちの単一の光エンジン(22;122)と共に使用するための複数の光学素子(28;128)から1つの光学素子(28;128)を選択することによって選択され、各光学素子(28;128)が、異なる設定焦点距離を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学解像度が、前記少なくとも1つの光エンジン(22;122)のズーム可能な光学素子(28;128)のズーム設定を選択することによって選択され、異なるズーム設定が異なる焦点距離を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
異なる所定の表面品質を有する少なくとも2つの物理オブジェクトがそれぞれ、前記3D印刷システム(10)内に設けられた少なくとも2つの光エンジン(22)のうちの少なくとも1つの別個の光エンジン(22)を用いて、前記3D印刷システム(10)によって同時に製造され、前記少なくとも2つの光エンジン(22)が、異なる選択光学解像度を有し、より高い所定の表面品質を有する、製造される前記物理オブジェクトに対して、より高い光学解像度が選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの物理オブジェクトが、異なる選択光学解像度を有する少なくとも2つの光エンジン(22)によって前記3D印刷システム(10)において製造され、好ましくは、前記少なくとも1つの物理オブジェクトが、前記少なくとも2つの光エンジン(22)によって同時に製造される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化した材料の層をステップサイズで変位させることによって、前記硬化した材料の層を、前記照射光の前記焦点面に対して不連続に変位させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化した材料の層を、設定された又は可変の変位速度で変位させることによって、前記硬化した材料の層を、前記照射光の前記焦点面に対して連続的に、かつ、工程c)と同時に変位させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
製造される前記少なくとも2つの物理オブジェクトの前記硬化した材料の層を、同期して変位させる、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの物理オブジェクトを製造するための3D印刷システム(10;110)であって、
硬化性材料を受け入れるための少なくとも1つのリザーバ(12)と、
前記硬化性材料の前記リザーバ(12)内の焦点面上に光を照射して、硬化した材料の層を形成するように構成された少なくとも1つの光エンジン(22;122)と、
製造される前記物理オブジェクトを支えるための少なくとも1つのビルドプラットフォーム(18)と、
製造される前記物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて、前記硬化性材料を照射するために、前記3D印刷システム(10;110)において利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択するように構成されたコントローラと、を備える
3D印刷システム(10;110)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリザーバ(12)及び/又は前記少なくとも1つのビルドプラットフォーム(18)を変位させるための少なくとも1つの変位ユニットを備える、請求項10に記載の3D印刷システム(10;110)。
【請求項12】
前記3D印刷システム(10;110)が、少なくとも2つの物理オブジェクトを製造するための少なくとも2つのリザーバ(12)及び/又は少なくとも2つのビルドプラットフォーム(18)を備える、請求項10又は11に記載の3D印刷システム(10;110)。
【請求項13】
前記3D印刷システム(10;110)が、前記少なくとも2つのリザーバ(12)及び/又は前記少なくとも2つのビルドプラットフォーム(18)を個別に変位させるための少なくとも2つの変位ユニットを備える、請求項10~12のいずれか一項に記載の3D印刷システム(10;110)。
【請求項14】
前記3D印刷システム(10;110)は、それぞれが異なる設定光学解像度を有する少なくとも2つの光エンジン(22)を備える、請求項10~13のいずれか一項に記載の3D印刷システム(10;110)。
【請求項15】
製造される物理オブジェクトの所定の所望される表面品質の設定を記憶するように構成されたメモリをさらに備え、前記コントローラは、前記メモリと通信して、前記メモリから選択された前記設定に基づいて前記少なくとも1つの光学解像度を選択することができる、請求項10~14のいずれか一項に記載の3D印刷システム(10;110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、物理オブジェクトを製造するための3D印刷システムによる積層造形プロセスの使用がより普及してきている。したがって、多くの産業部門は、3D印刷システムを使用して、日常家庭用品から医療用途の製品などのより高機能な製品まで広範囲に及ぶ製品を製造している。
【0002】
1つの利用可能な3D印刷システムは、熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling)(FDM)と呼ばれ、プラスチックを軟化させる熱押出機を通して熱可塑性フィラメントを供給する。次に、軟化したプラスチックをプリントヘッドによって層状に配置して、3D印刷されたオブジェクトを作成する。FDM印刷システムは一般に安価であるので、家庭での使用において普及している。しかしながら、FDM印刷システムを用いて製造されたオブジェクトの達成可能な表面品質が比較的低いために、工業目的でのそれらの使用は限定される。
【0003】
より高い表面品質は、ステレオリソグラフィ(Stereolithography Apparatus)(SLA)システムを含む樹脂ベースの3D印刷システムによって達成することができる。FDMシステムと同様に、SLAシステムは、積層法を使用して、材料を物理オブジェクトに層ごとに付加することによって物理オブジェクトを製造する。
【0004】
SLAシステムは、光モジュールからの光パターンを硬化性樹脂の層上に投影することによって、通常は液体樹脂である感光性ポリマー材料を硬化させるという概念に基づいている。光モジュールは、レーザ又はデジタルプロジェクタとすることができ、デジタルプロジェクタを使用するシステムは、多くの場合デジタル光処理(Digital Light Processing)(DLP)システムと呼ばれる。
【0005】
DLP 3D印刷システムは、典型的には、樹脂上に光を反射する回転又は揺動マイクロミラーのアレイを備えるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用し、これにより光を樹脂上に反射させる。したがって、DMDは、放出された光の光路内に配置されて、硬化性樹脂の層上に所望の光パターンを実現する。また、DMDの代わりに、光の光路内に配置された液晶ディスプレイ(LCD)を用いることもできる。したがって、そのようなLCD技術を使用する3D印刷システムは、多くの場合、LCD 3D印刷システムと呼ばれ、より一般的になりつつある。
【0006】
レーザSLAプリンタは、1つ又は複数のレーザビームを物理オブジェクトの表面上に投影するが、DLPプリンタは、1つの層の画像全体を物理オブジェクト上に一度に投影する。したがって、一般に、DLPプリンタは、各層のより迅速な硬化を提供し、より短い製造プロセスをもたらす。両方の場合において、製造されたオブジェクトの達成可能な表面品質は、レーザ又はプロジェクタのいずれかの光スポットサイズによって主に決定される。
【0007】
物理オブジェクトの意図された用途及び意図された用途に必要とされる表面品質に応じて、適切なSLA及びDLP印刷システムが、それぞれの印刷システムの達成可能な表面品質に基づいて選択される。
【0008】
米国特許出願公開第2018/056605(A1)号(Chen Chao Shunら)は、構築デバイス及び光学投影エンジンを含む3D印刷システムを記載している。光学投影エンジンは、光硬化性材料を硬化させるために、少なくとも第1のピクセルサイズ及び第2のピクセルサイズを有する画像ビームをビルドプラットフォーム上に投影するためのズームレンズを有する。
【0009】
国際公開第2016/164629(A1)号(Trio Labs)は、ビルド面と、材料送達システムと、第1の解像度を有する第1の結像構成要素と、第2の解像度を有する第2の結像構成要素と、を備える製作デバイスを説明しており、第1及び第2の結像構成要素は、個別に、及び共に組み合わせて動作可能である。
【0010】
独国特許出願公開第10204985(A1)(Beckmann)は、露光される材料の表面上及び材料を覆うための透明プレート上に制御可能な強度の放射線を選択的に投影するための、各層のオブジェクトの断面に応じて電子的に制御可能なマスク生成装置を用いて、電磁放射線又は粒子放射線の作用下で固化可能な液体材料を、規定された層の厚さで製造されるオブジェクトの断面において層状に固化することによって、ビルドプラットフォーム上に3次元オブジェクトを製造する方法に関する。
【0011】
しかしながら、多くの産業部門では、様々な製品の生産において、製造されるオブジェクトに対する要件が様々であることが多いので、より柔軟な手法が必要とされている。さらに、より効率的な製造プロセスを提供するために、オブジェクトのより迅速な製造が必要とされている。
【0012】
したがって、本発明の目的は、物理オブジェクトを製造する改善された方法を提供することである。
【0013】
この目的は、単一の3D印刷システムによって少なくとも1つの物理オブジェクトを製造する方法によって達成される。本方法は、
a)少なくとも1つの硬化性材料を準備する工程と、
b)硬化性材料を照射するために、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択する工程と、
c)3D印刷システム内に設けられた少なくとも1つの光エンジンによって提供される、少なくとも1つ又は少なくとも2つの選択光学解像度を有する光を、硬化性材料内の焦点面上に照射することによって、硬化性材料の層を選択的に硬化させて、硬化した材料の層を形成する工程と、
d)硬化した材料の層を、照射光の焦点面に対して変位させる工程と、を含む。
【0014】
好ましくは、少なくとも工程c)及びd)、好ましくは少なくとも工程a)、c)及びd)、より好ましくは工程b)~d)は、物理オブジェクトを製造するために複数回繰り返される。
【0015】
従来技術で知られている3D印刷システムとは対照的に、本明細書で開示される方法は、2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択することを可能にするが、従来技術の3D印刷システムは、単一の利用可能な光学解像度を備えており、したがって、方法の用途は、単一の光学解像度を用いた製造に限定される。少なくとも2つの光学的解決策の選択が好ましい場合がある。
【0016】
一般に、3D印刷システムは、製造されるオブジェクトの、最も高い所要表面品質及び所要精度に基づくユーザの要求に従って選択される。しかしながら、この場合、より低い最低表面品質が求められる特定の製品にとって、3D印刷システムの光学解像度が高過ぎる場合がある。より高い光学解像度は、より低い光学解像度と比較してより小さい露光面積をもたらし得る。したがって、特定の製品に所要最低解像度よりも高い光学解像度を使用することは、製造される物理オブジェクトの達成可能な最大構築サイズを不必要に減少させる。したがって、これは、達成可能な構築サイズを制限する可能性、及び/又はより大きな製品の製造時間を増加させる可能性があり、それによって製造効率を低下させる。
【0017】
さらに、それぞれが異なる光学解像度を有するいくつかの3D印刷システムを使用することができる。しかしながら、これは、所要3D印刷システムが多数となることに起因して、製造設備内の複雑さを増加させ、製造に必要な空間及びビルドエリアを増加させる。さらに、広範囲の異なる3D印刷システムの保守が必要とされ、これは時間がかかり、費用効率が低い。
【0018】
したがって、本明細書に開示される方法によれば、少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度の選択は、製造される少なくとも1つの物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて行うことができる。
【0019】
これは、生産設備内の複雑さを低減し、異なる所要表面品質を有する複数の物理オブジェクトを製造するための所要空間及びビルドエリアを減少させる。
【0020】
焦点面は、照射光が硬化性材料において集束される平面、すなわち異なる光線が出会う平面として理解されるべきである。したがって、照射光の焦点は焦点面内にある。
【0021】
提供される硬化性材料は、好ましくは樹脂であってもよい。さらに、硬化性材料の物理的状態は、好ましくは液体であってもよく、あるいはペーストであってもよい。
【0022】
この方法はまた、好ましくは様々な品質の、複数の異なる硬化性材料を提供することを含むことができる。これは、ペースト及び液体、又は複数の異なるペースト及び/若しくは複数の異なる液体など、異なる物理的状態を有する複数の硬化性材料を提供することを含む。したがって、物理オブジェクトは、様々な異なる硬化性材料を使用して製造することができる。異なる硬化性材料は、同時に又は連続して提供することができる。さらに、2つ以上の硬化性材料が同時に提供され得る一方で、少なくとも1つのさらなる硬化性材料が、最初の2つ以上の硬化性材料とは異なるときに提供され得る。
【0023】
使用される硬化性材料、例えば液体及びペーストは、特にそれらの粘度によって特徴付けることができる。好ましくは、硬化性材料の粘度は、23℃、1s-1におけるせん断速度で、0.1~400Pa・s、好ましくは0.1~200Pa・s、より好ましくは0.1~100Pa・sの範囲であり得る。硬化性材料の粘度は、好ましくは、Anton Paar製のPhysica MCR301 Rheometerを使用して、プレート/プレート又はプレート/コーン形状で、制御されたせん断速度の下、23℃で測定することができる。測定は、好ましくは、実質的にDIN53018-1に対応することができる。
【0024】
硬化性材料は、特定のエネルギー量を有する光によって照射され得る。好ましくは、硬化性材料上に放出される光のエネルギー量は、W/m単位で光源の電力密度を調整することによって、及び/又は硬化性材料上への光の露光時間を調整することによって調整することができる。好ましくは、光源の電力密度は、0.1W/m~100W/mの範囲であり得る。好ましくは、露光時間は、1秒~10秒の範囲であり得る。したがって、例えば、光源の電力密度が10W/mであるように選択することができ、露光時間が10秒であるように選択することができる。しかしながら、光源の電力密度が100W/mであるように選択することができ、露光時間が1秒であるように選択することができる。したがって、一般に、好ましくは、より長い露光時間を電力密度がより低い光源と組み合わせることができる、又はより短い露光時間を電力密度がより高い光源と組み合わせることができる。選択される光源の電力密度及び露光時間の量は、好ましくは、硬化深さ及び/又は使用される硬化性材料の特性(好ましくは少なくともその粘度及び/又はその比熱容量及び/又はその光吸収品質を含む)に基づいて選択することができる。
【0025】
硬化性材料は、好ましくは、バットとも呼ばれるリザーバ内に提供することができる。硬化性材料のレベルは、好ましくは、例えば、少なくとも各硬化工程の後に、少なくとも1つの硬化性材料を例えば供給装置によってリザーバに連続的に又は繰り返し供給することによって、一定又はほぼ一定に保つことができる。代替的に、硬化性材料は、例えばユーザによって手動でリザーバに供給され得る。
【0026】
硬化性材料を照射するために3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つの光学解像度を選択することは、好ましくは、そのような選択を実行するように構成されたコントローラによって行うことができる。好ましくは、ユーザは、製造される少なくとも1つの物理オブジェクトの所要表面品質を入力することができる。コントローラは、製造される少なくとも1つの物理オブジェクトの所要表面品質を達成することができる2つ以上の光学解像度から少なくとも1つの対応する光学解像度をユーザの入力に基づいて選択することができる。
【0027】
本開示の文脈内で、光学解像度は、概して、硬化性材料上に照射される光のピクセルサイズに関連する。したがって、ピクセルサイズが小さくなるにつれて、硬化性材料上の光の露光面積を小さくすることができる。したがって、面積当たりのピクセル数、すなわち露光面積を増加させることができる。これは、物理オブジェクトのより高い表面品質を達成することを可能とし得る。
【0028】
ピクセルサイズを減少させ、面積当たりのピクセル数を増加させると、面積当たりの光エネルギーも増加する。これは、硬化性材料上に照射される光の硬化深さを増加させ、硬化深さは、光が単一層上で硬化させることができる最大深さとして理解されるべきである。これは、例えば、単一のクラウンのような、より小さい構築面積を有するより小さい部品のより速い製造を可能にする。
【0029】
好ましくは、ピクセルサイズが減少し、面積当たりの光エネルギーが増加する場合、硬化性材料が露光される光エネルギーを所望のレベルに減少させ、それによってピクセルサイズが減少した場合の光エネルギーの増加を打ち消すために、例えば、実質的に一定の硬化深さを維持するために、上述のように、W/m単位で光源の電力密度を調整することによって、かつ/又は硬化性材料上の光への露光時間を調整することによって、硬化性材料上に照射される光のエネルギー量を調整することができる。
【0030】
逆に、ピクセルサイズを増加させ、したがって面積当たりのピクセル数を減少させることは、一般に、製造される物理オブジェクトの表面品質の低下につながる。しかしながら、この場合、硬化性材料上に放出される光への露光面積は、より小さいピクセルサイズと比較してより大きい。
【0031】
したがって、単一の3D印刷システム内の複数の利用可能な光学解像度から3D印刷システムの光学解像度を選択かつ調整することによって、異なる所望の表面品質を単一の3D印刷システムによって達成することができる。これは、広範囲のオブジェクト又は様々な所要表面品質の柔軟で効率的な製造プロセスを可能にする。
【0032】
本明細書に開示される方法によれば、照射光のピクセルサイズは、0.75μm~100μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは20μm~80μm、最も好ましくは30~70μmの範囲内で好ましくは選択かつ調整され得る。
【0033】
製造される少なくとも1つの物理オブジェクトの表面品質は、好ましくは、物理オブジェクトの表面粗さ、すなわち製造後の物理オブジェクトの外表面上の硬化した材料のステップのサイズに基づいて決定することができる。好ましくは、表面粗さは、z軸に沿って延びる表面について決定される。好ましくは、表面粗さは、z軸に沿って延びる複数の表面について決定される。好ましくは、表面粗さは、2つ以上の軸に沿う、例えば2つ又は3つの軸に沿う、複数の表面について決定される。好ましくは、表面粗さは、全ての又は少なくとも複数の測定された表面の平均値であり得る。この表面粗さは、例えば、二乗平均平方根誤差Rq、平均粗さRa、平均粗さ深さRz及び/又は二乗平均平方根勾配Rsqなどの既知の粗さパラメータに基づいて決定することができる。
【0034】
製造された物理オブジェクトの表面品質を測定する好ましい方法は、Keyence VK-Xシリーズなどの共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)を使用することにより、表面高さの外観を見ることである。好ましくは、表面粗さ測定は、ISO25178に従って行われる。一般に、表面粗さへの主な影響はピクセルサイズである。したがって、一般に、バランスのとれたシステムでは、ピクセルサイズは、製造された物理オブジェクトの粗さ深さRzに実質的に等しく、例えば、30μmのピクセルサイズは、一般に、約30μmの、製造された物理オブジェクトの表面粗さ深さRzをもたらす。しかしながら、有効表面粗さは、物理オブジェクトの測定方向、部品のトポロジー、例えば、平面対曲面、光散乱、露光時間、光学素子の品質、後処理、及び硬化性材料の特性などのさらなる要因にも依存し得る。
【0035】
特に、表面品質は、製造されるオブジェクトのCADモデルなどにおける物理オブジェクトのデジタル表現と比較した、製造された物理オブジェクトの表面品質の忠実度に基づいて決定することができる。物理オブジェクトのデジタル表現は、したがって、理論的に達成可能な最も高い表面品質を有するものとして見ることができる。
【0036】
したがって、所望の忠実度が低いほど、すなわち、物理オブジェクトの理論的に達成可能な表面品質と所望される実際の表面品質との間の誤差が大きいほど、製造された物理オブジェクトの表面上により大きな段差がある、製造された物理オブジェクトのより低い表面品質をもたらし得る。このように、より高い忠実度は、製造された物理オブジェクトの表面上の段差がより小さい、製造された物理オブジェクトのより高精度の表面品質を必要とし得る。
【0037】
この目的のために、製造された物理オブジェクトの表面は、製造プロセス中に、又は製造プロセスと製造プロセスの間に、例えば、表面粗さを測定するための触覚測定装置などの表面品質検知装置、又はコンピュータ断層撮影(CT)によって検知することができ、これにより物理オブジェクトの達成された表面品質を判定することができる。3D印刷システムは、その結果、達成された表面品質と所望の表面品質との間の誤差を検知することができる。それゆえに、3D印刷システムは、例えば製造プロセス中に、又は製造プロセスと製造プロセスの間に異なる光学解像度を選択することによって、ユーザによる介入なしに、変位ステップサイズ又は光学解像度などの製造設定を調整することができる。3D印刷システムは、任意選択で、調整された設定を記憶する前に、提案された設定の調整を確認するようにユーザに促すことができる。したがって、異なる表面品質を達成するために使用される製造設定は、文書化され、3D印刷システムの品質を制御及び/又は検証するために使用されることができる。
【0038】
好ましくは、本明細書に開示される方法に従って硬化性材料を照射するために、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択することを、少なくとも1つの物理オブジェクトの製造プロセスにおいて1回実行することができる。あるいは、本明細書に開示される方法に従って硬化性材料を照射するために、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択することを、少なくとも1つの物理オブジェクトの単一の製造プロセス中に複数回実行することができる。
【0039】
本方法は、多種多様な物理オブジェクトに対して用いることができる。特に、本方法は、歯科修復物などの医療製品に用いることができる。したがって、本方法は、例えば、クラウン及び/又はブリッジを製造するために使用することができる。本発明に開示される方法によれば、本方法は、同じ生産において製造される異なる製品間の異なる表面品質要件に迅速に適合させることができる。これは、例えば、同じ3D印刷システムが、異なる表面品質要件を有する広範囲の異なる物理的製品の製造に使用されることを可能にする。さらに、単一の物理オブジェクトを、物理オブジェクトの異なるセクションにおいて異なる表面品質で製造することができる。例えば、外側と比較して内側に粗い表面を有するクラウンを製造することができる。したがって、例えば、外側により滑らかな表面品質を達成しつつ、より粗い表面を内側において提供することによって、歯科用セメントの内側への接着を向上させることができる。本方法によって製造することができるさらなる物理オブジェクトは、スプリント、サージカルガイド及び/又は歯科用ナイトガードを含む。
【0040】
本明細書に開示される方法によれば、硬化性材料の層は、3D印刷システム内に設けられた少なくとも1つの光エンジンによって提供される少なくとも1つ又は少なくとも2つの選択光学解像度を有する光を照射することによって選択的に硬化される。これは、1つの光エンジンのみを使用しても光学解像度を変えることができることを意味する。
【0041】
しかしながら、代替的に、3D印刷システムは、2つ以上の光エンジンを含むことができる。光学解像度は、利用可能な複数の光エンジンのうちの少なくとも1つの光学解像度を変更することによって選択することができる。しかしながら、光学解像度は、物理オブジェクトの製造プロセス中に、又は異なる物理オブジェクトの製造プロセスと製造プロセスの間に、ある光学解像度を有する1つの光エンジンから異なる光学解像度を有する別の光エンジンに切り替えることによって変更され得る。
【0042】
この方法によれば、硬化した材料の層を、照射光の焦点面に対して変位させることができる。これは、物理オブジェクト、したがって硬化した材料の層を絶対運動として変位させることができる変位デバイスによって達成することができる。物理オブジェクトは、変位デバイスによって変位可能であり得るビルドプラットフォームに取り付けられ得る。これにより、硬化した層を含む物理オブジェクト全体を照射光の焦点面に対して変位させることができる。硬化した材料の層は、好ましくは、光エンジンから離れるように変位させることができる。
【0043】
硬化した材料の層は、好ましくは段階的に、すなわち不連続に、好ましくは光エンジンから離れるように変位させることができる。硬化した材料の層は、好ましくは、ステップサイズで変位させることができ、ステップサイズは、物理オブジェクトの製造プロセス中において一定とすることができる。しかしながら、ステップサイズはまた、物理オブジェクトの製造プロセス中に可変であってもよい。あるいは、硬化した材料の層は、物理オブジェクトの製造プロセス中に、設定速度又は可変速度で連続的に変位させることができる。
【0044】
ステップサイズは、好ましくは10μm~100μm、好ましくは20μm~80μm、より好ましくは30~70μmの範囲内であり得る。
【0045】
連続変位の場合、硬化した材料の層は、0.01mm/s~20mm/s、好ましくは0.1mm/s~15mm/s、より好ましくは0.3mm/s~10mm/s、より好ましくは0.5~5mm/s、最も好ましくは0.6~2mm/sの範囲の速度で変位させることができる。
【0046】
本明細書に開示される方法によれば、単一の物理オブジェクト又は2つ以上の物理オブジェクトを同時に製造することができる。代替的に、2つ以上の物理オブジェクトを準同時に製造することができ、これは、2つ以上の物理オブジェクトが単一の3D印刷システム内の1つの製造プロセスで製造されるが、各物理オブジェクトで時間がずらされた製造プロセスの少なくとも一部の間に製造工程が行われることを意味する。
【0047】
好ましくは、それぞれが異なる表面品質を有し、したがって異なる光学解像度で製造される2つの異なる物理オブジェクトが製造可能である。したがって、例えば、より高い光学解像度を用いるより小さい部品と、より低い光学解像度を用いるより大きい部品とを同時に製造することができる。
【0048】
本開示の文脈において、光エンジンは、好ましくは、レーザ又はプロジェクタなどの少なくとも1つの光モジュールを備える。光エンジンは、光を焦点面上に集束させるための少なくとも1つの光学素子をさらに備えることができる。光エンジンは、非モジュール部材とすることができ、これは、特定の光エンジンについて、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光学素子が交換可能でない、又は少なくとも交換可能であることを意図していないことを意味する。したがって、それぞれが独自の少なくとも1つの光モジュール及び少なくとも1つの光学素子を有する複数の光エンジンから、少なくとも1つの光モジュール及び少なくとも1つの光学素子を含む光エンジンを選択することによって、本明細書に開示される方法の範囲内で光学解像度を選択することができ、したがって調整することができる。光エンジンに加えて、追加のレーザ又は複数のレーザが設けられ、レーザビームを物理オブジェクト上に放出し、それによって物理オブジェクトを、好ましくは物理オブジェクトの境界に沿って、滑らかにすることができる。追加のレーザは、光エンジンに対して、同時に、連続して、又は交互に使用することができる。
【0049】
しかしながら、光エンジンは、代替的に、モジュール構成であってもよく、これは、光エンジンにおいて、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光学素子を、製造プロセス中に、及び/又は製造プロセスと製造プロセスの間に交換して、照射光の光学解像度を変更できることを意味する。
【0050】
したがって、好ましくは、光学解像度は、3D印刷システムに設けられた複数の光エンジンから少なくとも1つの光エンジンを選択することによって選択することができ、各光エンジンは、異なる設定光学解像度を有する。
【0051】
したがって、設定光学解像度は、光エンジンの光学解像度を指し、これは、例えば光学素子及び/又は、異なるプロジェクタなど、光モジュールを交換することによって調整することはできない。
【0052】
この場合、3D印刷システムは、複数の光エンジン、すなわち2つ以上の光エンジンを備えることができる。各光エンジンが異なる設定光学解像度を有するので、各光エンジンが異なる設定光学解像度を有する複数の光エンジンを有する単一の3D印刷システムは、様々な達成可能光学解像度、したがって製造される物理オブジェクトの様々な達成可能表面品質を提供することができる。
【0053】
これはまた、単純な方法で、すなわち、既存の3D印刷デバイス内に、それぞれが異なる光学解像度を有する複数の光エンジンを設置することによって、従来の3D印刷デバイスを、本明細書に開示される方法に適合させることができる。
【0054】
代替的に、少なくとも1つの光エンジンのうちの、単一の光エンジンと共に使用するための光学素子であって、各光学素子が異なる設定焦点距離を有する、複数の光学素子から1つの光学素子を選択することによって、光学解像度を選択することができる。
【0055】
この場合、少なくとも1つの光エンジンがモジュール構成で提供される。これは、少なくとも1つの光エンジンの光学素子が、複数の達成可能な光学解像度からの選択及び変更を行うために、製造プロセス中に、又は製造プロセスと製造プロセスの間に交換可能であることを意味する。
【0056】
光学素子は、変位デバイスによって光学素子を変位させることによって交換することができる。変位デバイスは、複数の異なる光学素子を支える回転装置であってもよい。回転装置を回転させることによって、所望の光学素子を光源からの照射光に位置合わせできる一方で、以前に使用された光学素子を照射光から外し、それによって所望の光学素子に交換する。代替的に、変位デバイスは、光学素子を並進的に変位させることができる。
【0057】
しかしながら、光学解像度は、少なくとも1つの光エンジンのズーム可能な光学素子のズーム設定を選択することによって選択することもでき、異なるズーム設定は異なる焦点距離を提供する。
【0058】
ズーム可能な光学素子のズーム設定を選択し、調整することによって、光エンジンの光学解像度を無段階の方法で選択かつ調整できる。これにより、製造される物理オブジェクトの所要表面品質に従って、単一の光エンジンの光学解像度を柔軟に調整できる。
【0059】
それぞれが好ましくは異なるズーム範囲を有するズーム可能な光学素子を有する複数の光エンジンを提供し、選択することもできる。あるいは、複数の光エンジンの全てがズーム可能な光学素子を有し得るわけではない。この場合、選択可能な複数の光エンジンのうちのいくつか、すなわち、1つ以上の光エンジンがズーム可能な光学素子を有することができ、一方で、他の利用可能な光エンジンは、上述のように、設定焦点距離を有する固定光学素子又は交換可能な光学素子を有することができる。
【0060】
好ましくは、異なる所定の表面品質を有する少なくとも2つの物理オブジェクトがそれぞれ、3D印刷システム内に設けられた少なくとも2つの光エンジンのうちの少なくとも1つの別個の光エンジンを用いて、3D印刷システムによって同時に製造される。少なくとも2つの光エンジンは、好ましくは、異なる選択光学解像度を有することができる。好ましくは、製造されるより高い所定の表面品質を有する物理オブジェクトに対して、より高い光学解像度が選択される。
【0061】
これは、いくつかの物理オブジェクトの迅速かつ効率的な製造を可能にする。さらに、これは、異なる所定の表面品質を有する物理オブジェクトが単一の3D印刷システムにおいて同時に製造されることを可能にする。
【0062】
好ましくは、少なくとも1つの物理オブジェクトが、異なる選択光学解像度を有する少なくとも2つの光エンジンによって印刷システム内で製造される。少なくとも1つの物理オブジェクトは、好ましくは、少なくとも2つの光エンジンによって同時に製造される。
【0063】
この場合、異なる表面品質を有する物理オブジェクトを製造することができる。例えば、物理オブジェクトは、物理オブジェクトの少なくとも1つのセクションにおいてより高い表面品質を有することができ、同時に、物理オブジェクトの少なくとも別のセクションは、より低い表面品質を有することができる。したがって、一様でない表面品質を有する物理オブジェクトを製造することができる。
【0064】
これにより、物理オブジェクトの様々なセクションにおいて所要表面品質に基づいた物理オブジェクトを最適に製造することが可能になる。したがって、最も高い所要表面品質で物理オブジェクトを均一に製造する代わりに、物理オブジェクトの表面品質要求に従って物理オブジェクトを最適な時間条件下で製造することができる。
【0065】
例えば、歯科修復物、例えばクラウンなどの物理オブジェクトのベースフォームは、第1の硬化性材料を使用して第1の表面品質を達成するために第1の光学解像度で製造することができる。その上に、1つ又は複数のトップコーティング層を、第2の表面品質を達成するために第2の光学解像度を用いてベースフォーム上に硬化させることができ、第2の光学解像度及び第2の表面品質は、好ましくは第2の硬化性材料を使用し、好ましくは第1の光学解像度及び第1の表面品質よりも高い。第1及び第2の硬化性材料は、同じ材料であってもよく、及び/又は同じ品質を有してもよい。したがって、ベースフォームよりも高い表面品質を有する外側コーティングを有する物理オブジェクトを有利に製造することができる。
【0066】
好ましくは、硬化した材料の層をステップサイズで変位させることによって、硬化した材料の層を照射光の焦点面に対して不連続に変位させることができる。
【0067】
物理オブジェクト、したがって硬化した材料の層は、物理オブジェクト全体を変位デバイスによって移動させることによって変位させることができる。この場合、好ましくは、物理オブジェクトはビルドプラットフォームに取り付けることができ、次に、ビルドプラットフォームを変位デバイスによって変位させることができる。
【0068】
ステップサイズは、3D印刷デバイスのz軸が一般にこの変位の方向に延びているためにzステップサイズと呼ばれることが多く、物理オブジェクトの製造プロセス中に一定であり得る。しかしながら、代替的に、例えば、物理オブジェクトの製造プロセス中に異なる厚さの硬化性材料の層を硬化させるために、ステップサイズは物理オブジェクトの製造プロセス中に変更されてもよい。この場合、硬化性材料への光のエネルギー量は、W/m単位で光源の電力密度を調整することによって、及び/又は硬化性材料の光への露光時間を調整することによって、層の厚さに基づいて調整することができる。光源の電力密度及び/又は硬化性材料の光への露光時間を増加させることによって、エネルギー量を増加させることができる。逆に、光源の電力密度及び/又は硬化性材料の光への露光時間を減少させることによって、エネルギー量を減少させることができる。そのため、例えば、より大きなステップサイズを用いるとき、したがって硬化性材料のより厚い層を硬化させるとき、エネルギー量を増加させることができ、それによって照射光の硬化深さを増加させることができる。逆に、より小さいステップサイズを用いるとき、したがって硬化性材料のより薄い層を硬化させるとき、エネルギー量を減少させることができ、それによって照射光の硬化深さを減少させることができる。
【0069】
ステップサイズは、好ましくは1μm~150μm、好ましくは20μm~80μm、より好ましくは25~70μmの範囲内であり得る。
【0070】
ステップサイズは、例えばコントローラによって、予め決定され得る、又は製造プロセス中に決定され得る。例えば、コントローラは、それによって、製造されているときに達成された物理オブジェクトの表面品質における、所望の表面品質と比較した任意の誤差に対処することができる。この目的のために、物理オブジェクトは、物理オブジェクトの表面粗さを測定するための光学走査装置又は触覚測定装置などの走査装置によって走査されることができ、これにより物理オブジェクトの実際に達成された表面品質を判定し得る。コントローラ及び/又は走査デバイスは、物理オブジェクトの実際に達成された表面品質と、物理オブジェクトの所望の達成表面品質との間の誤差を判定することができる。任意の判定された誤差に基づいて、コントローラは、ステップサイズを適宜調整することができる。
【0071】
好ましくは、硬化した材料の層を、設定された又は可変の変位速度で変位させることによって、硬化した材料の層を、照射光の焦点面に対して、連続的に、かつ、工程c)と同時に、変位させることができる。好ましくは、変位速度をより早くするため、W/m単位で光源の電力密度を調整することによって、かつ/又は硬化性材料の光への露光時間を調整することによって、硬化性材料上に放出される光のエネルギー量を調整することができる。光源の電力密度及び/又は硬化性材料の光への露光時間を増加させることによって、エネルギー量を増加させることができる。逆に、光源の電力密度及び/又は硬化性材料の光への露光時間を減少させることによって、エネルギー量を減少させることができる。したがって、例えば、より高い変位速度を用いる場合、エネルギー量を増加させることができる。逆に、より低い変位速度を用いる場合、エネルギー量を減少させることができる。
【0072】
好ましくは、製造される少なくとも2つの物理オブジェクトのそれぞれについて、硬化した材料の層を照射光の焦点面に対して別々に変位させることができる。
【0073】
これは、少なくとも2つの物理オブジェクトを少なくとも部分的に互いから独立して製造する柔軟な方法を可能にする。したがって、少なくとも2つの物理オブジェクトのうちの少なくとも1つの物理オブジェクトは、少なくとも2つの物理オブジェクトのうちのさらなる物理オブジェクトとは異なる速度又は異なるステップサイズで変位させることができる。
【0074】
代替的に、製造される少なくとも2つの物理オブジェクトの硬化した材料の層を、同期して変位させることができる。
【0075】
好ましくは、工程c)及びd)、並びに任意選択で工程b)は、複数回繰り返すことができる。好ましくは、光は、少なくとも2つの物理オブジェクトのそれぞれの硬化性材料内の焦点面上に異なる変位間隔で照射され得る。
【0076】
それによって、物理オブジェクトは、それらの個々の要件に従って製造され得る。
【0077】
好ましくは、方法は、工程d)の後に、
e)物理オブジェクトを移動させ、それによって余剰材料内に質量慣性力を生成することによって物理オブジェクトから余剰材料を除去する工程をさらに含み得る。
【0078】
典型的には、硬化性材料の一部は、物理オブジェクトを構築した後に余剰材料としてオブジェクトの外表面上に存在する。この余剰材料は、それが物理オブジェクトの実際の形状の上に追加的な構造を形成し、望ましくないモノマーを含むことがある、及び/又は耐久性のある構造を形成し得ないため、概して望ましくない。
【0079】
物理オブジェクトを移動させ、それによって余剰材料内に質量慣性力を生成することによって、物理オブジェクトから余剰材料を除去する利点は、積層造形によって構築されたオブジェクトから望ましくない付着した余剰材料を広範囲に除去することを可能にすることである。特に、オブジェクトのクリーニングは非侵襲的、かつ、非接触式である。したがって、物理オブジェクトの構造的損傷又は機械的故障を防止する。代替的又は追加的に、材料除去媒体、例えば溶媒、エアジェット及び/又は研磨材料を物理オブジェクトに適用することによって、物理オブジェクトから余剰材料が除去され得る。
【0080】
本明細書で言及される用語「質量慣性力」は、単位質量当たりの力として指定されてもよく、したがって、単位m/sで指定されてもよい。さらに、質量慣性力は、重力加速度の要因であるG力によって表され得る。本明細書の目的のために、重力加速度は、9.81m/sである。それゆえ、例えば、9.81m/sの質量慣性力は、1Gと表すことができる。
【0081】
本発明によれば、付着した硬化性材料の少なくとも一部は、好ましくは、付着した余剰材料に作用する加速力又は質量慣性力の結果、物理オブジェクトから分離させられる。加速力又は質量慣性力は、物理オブジェクトを移動させること、例えば、回転させることによって誘起される。表現「オブジェクトから分離させる」は、付着した硬化性材料の部分が、物理オブジェクトの外面を覆う膜から分離するということが理解される。したがって、これは、物理オブジェクトからの余剰材料のさらなる除去の程度を低減する、又は物理オブジェクトからの余剰材料のさらなる除去を完全に排除し得る。
【0082】
好ましくは、生成される質量慣性力の量は、製造される各物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて選択することができる。
【0083】
生成される質量慣性力は、メートル単位での物理オブジェクトの半径と、1秒当たりの回転数単位での物理オブジェクトの回転速度とに依存する。したがって、回転速度が速いほど、物理オブジェクトの特定の半径に対して生成される質量慣性力は大きくなる。したがって、回転速度を増加させることは、結果としてより多くの材料を物理オブジェクトから除去し得る。しかしながら、これは、物理オブジェクトのより粗い外側表面をもたらし得る。遅すぎる回転速度を選択することにより、余剰材料が物理オブジェクトから十分に除去されない結果となる可能性があり、これは、物理オブジェクトの所要許容範囲外の寸法をもたらす可能性がある。
【0084】
したがって、所定の表面品質を、製造される各物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて選択することができる。
【0085】
好ましくは、回転速度は、3回転/秒~100回転/秒、好ましくは10回転/秒~80回転/秒、より好ましくは20回転/秒~60回転/秒、最も好ましくは30回転/秒~50回転/秒から選択することができる。
【0086】
質量慣性力は、好ましくは、可変量の時間、好ましくは少なくとも15秒間、より好ましくは少なくとも30秒間、より好ましくは少なくとも60秒間、より好ましくは少なくとも90秒間、より好ましくは少なくとも120秒間、より好ましくは少なくとも180秒間、最も好ましくは少なくとも200秒間、生成されるように選択することができる。
【0087】
物理オブジェクトを移動させ、それによって余剰材料内に質量慣性力を生成することによって、物理オブジェクトから余剰材料を除去する概念は、国際公開第2019/023120(A1)号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
また、本発明の目的はまた、物理オブジェクトのより効率的かつ柔軟な製造を可能にする3D印刷システムを提供することである。
【0089】
この目的は、少なくとも1つの物理オブジェクトを製造するための3D印刷システムによって達成される。方法に関連して説明される利点及び特徴は、それに応じて以下に説明される3D印刷システムに適用される。
【0090】
3D印刷システムは、硬化性材料を受け入れるための少なくとも1つのリザーバを備える。リザーバは、多くの場合バット(vat)と呼ばれ、好ましくは、実質的に矩形の形状であってもよく、好ましくは、硬化性材料を受け入れるための容積を画定する基部及び4つの側壁を有してもよい。
【0091】
リザーバのサイズは、主に、製造される物理オブジェクトのサイズによって決定される。したがって、リザーバは3D印刷システムに着脱可能に取り付けられ、リザーバと引き換えに、製造される異なるサイズの物理オブジェクトを収容するための異なるサイズを有するリザーバと迅速に交換することができる。好ましくは、リザーバは、3Dシステムに摺動自在に取り付けることができる。
【0092】
3D印刷システムは、硬化した材料の層を形成するために硬化性材料のリザーバ内の焦点面上に光を照射するように構成された少なくとも1つの光エンジンをさらに備える。
【0093】
本明細書に開示される方法に関連して説明したように、光エンジンは、好ましくは、レーザ又はプロジェクタなどの少なくとも1つの光モジュールを備える。光エンジンは、光を焦点面上に集束させるための少なくとも1つの光学素子をさらに備えることが好ましい。光エンジンは、非モジュール部材とすることができ、これは、少なくとも1つの光源及び少なくとも1つの光学素子が交換可能でない、又は少なくとも交換可能であることを意図していないことを意味する。
【0094】
3D印刷システムは、製造される物理オブジェクトを支えるための少なくとも1つのビルドプラットフォームをさらに備える。物理オブジェクトは、好ましくは、物理オブジェクトの第1の層をビルドプラットフォームの表面上に直接硬化させることによってビルドプラットフォームに取り付けることができる。代替的に、物理オブジェクトのプリフォームは、実矧ぎなどの固定手段によってビルドプラットフォームに取り付けることができ、硬化性材料の層をプリフォーム上に硬化させることができる。
【0095】
3D印刷システムは、製造される物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて、硬化性材料を照射するために3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択するように構成されたコントローラをさらに備える。したがって、例えば、少なくとも1つの光モジュール及び少なくとも1つの光学素子を含む光エンジンを、それぞれが独自の少なくとも1つの光モジュール及び少なくとも1つの光学素子を有する複数の光エンジンから選択することによって、コントローラによって光学解像度を選択、したがって変更することができる。
【0096】
コントローラは、好ましくは、ユーザによる入力に基づいて、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択するように構成され得る。例えば、ユーザは、製造される物理オブジェクトの所定の表面品質を、3D印刷システムに含まれる入力デバイスに入力することができ、それに基づいて、コントローラは、所定の表面品質を達成するために適切な光学解像度を選択する。しかしながら、コントローラはまた、例えば、3D印刷システムによる、例えば、光学走査デバイスを用いた、製造される物理オブジェクト及びその対応する所要表面品質の検知に基づいて、光学解像度を自律的に選択することもできる。
【0097】
好ましくは、3D印刷システムは、少なくとも1つのリザーバ及び/又は少なくとも1つのビルドプラットフォームを変位させるための少なくとも1つの変位ユニットを備えることができる。
【0098】
リザーバを絶対運動として変位させるとき、リザーバ内の硬化性材料を、物理オブジェクトに対して変位させる。これにより、硬化性材料を、直前の硬化工程で硬化した材料の層の下に集めることができる。このようにして、硬化工程を繰り返すことができる。
【0099】
しかしながら、好ましくは、少なくとも1つのビルドプラットフォームをリザーバに対して変位させる。この場合、物理オブジェクトを、絶対運動として、好ましくは光エンジンから離れるように変位させる。
【0100】
あるいは、少なくとも1つのリザーバ及び少なくとも1つのビルドプラットフォームの絶対変位の組合せを実現することができ、少なくとも1つのリザーバ及び少なくとも1つのビルドプラットフォームは、好ましくは単一の変位ユニットによって変位させることができる。しかしながら、代替的に、少なくとも1つのリザーバ及び少なくとも1つのビルドプラットフォームは、互いに独立した別個の変位ユニットによって変位させることができる。
【0101】
好ましくは、3D印刷システムは、少なくとも2つの物理オブジェクトを製造するための少なくとも2つのリザーバ及び/又は少なくとも2つのビルドプラットフォームを備えることができる。
【0102】
少なくとも2つのリザーバ及び/又は少なくとも2つのビルドプラットフォームは、複数の物理オブジェクトを製造するのに有利である。これにより、例えば、少なくとも2つのリザーバ内に複数の異なる硬化性材料を提供することによって、異なるサイズを有するかつ/又は異なる硬化性材料を必要とする複数の物理オブジェクトを、単一の3D印刷システムで製造することが可能になる。少なくとも2つのリザーバはまた、例えば、異なる形状及びサイズの製造される物理オブジェクトを収容するために、異なる形状及びサイズであってもよい。例えば、2つの異なる硬化性材料をリザーバの各々に1つずつ提供することができる。好ましくは、少なくとも2つの物理オブジェクトを同時に製造することができる。代替的に、少なくとも2つの物理オブジェクトを順次製造することができる。
【0103】
好ましくは、3D印刷システムは、少なくとも2つのリザーバ及び/又は少なくとも2つのビルドプラットフォームを個別に変位させるための少なくとも2つの変位ユニットを備えることができる。それによって、少なくとも2つの物理オブジェクトは、その表面品質要件に従って各物理オブジェクトを個々に変位させることによって、互いに独立して製造することができる。これは、例えば、1つの物理オブジェクトを、異なる物理オブジェクトとは異なる速度又はステップサイズで変位させることを可能にする。
【0104】
好ましくは、3D印刷システムは、製造された物理オブジェクトを受け取り、物理オブジェクトの余剰材料に質量慣性力を発生させ、それによって物理オブジェクトから余剰材料を除去するように構成されたロータを有する遠心分離機を備えることができる。
【0105】
好ましくは、3D印刷システムは、それぞれが異なる設定光学解像度を有する少なくとも2つの光エンジンを備えることができる。
【0106】
好ましくは、3D印刷システムは、ズーム可能な光学素子を有する少なくとも1つの光エンジンを備えることができる。
【0107】
好ましくは、3D印刷システムは、3D印刷システム内の単一の光エンジンと共に使用されるように構成された異なる焦点距離をそれぞれ有する少なくとも2つの光学素子を備えることができる。
【0108】
好ましくは、3D印刷システムは、製造される物理オブジェクトの所定の所望される表面品質の設定を記憶するように構成されたメモリを備えることができる。コントローラは、好ましくはメモリと通信して、好ましくはメモリから選択された設定に基づいて、少なくとも1つの光学解像度を選択することができる。
【0109】
これは、3D印刷システムが、製造される特定の物理オブジェクトの製造設定に迅速にアクセスすることを可能にする。製造設定は、ユーザによる入力を介して手動でメモリに記憶することができる。しかしながら、3D印刷システムはまた、製造された物理オブジェクトの達成された製造設定に基づいて、例えば記憶されたアルゴリズムを介して、自律的に設定を適合させることもできる。3Dシステムは、表面粗さを測定するための視覚走査装置又は触覚測定装置などの表面品質検知装置を備えることができ、これにより達成された表面品質を判定することができる。3D印刷システムは、その結果、達成された表面品質と所望の表面品質との間の誤差を検知することができる。それゆえに、3D印刷システムは、ユーザによる介入なしに、変位ステップサイズ又は光学解像度などの記憶された製造設定を調整することができる。3D印刷システムは、調整された設定を記憶する前に、提案された設定の調整を確認するようにユーザに促すことができる。
【0110】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、図面に基づく以下の好ましい実施形態の説明において開示される。上述した特徴及び特徴の組合せ、並びに以下に説明する特徴及び特徴の組合せは、説明した組合せにおいてのみ開示されていると見なされるべきではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せ及び/又は特徴により、他の組合せ及び/又は特徴においても開示されていると見なされるべきである。
【0111】
以下の態様のリストは、本発明の代替及び/又はさらなる特徴を提供する。
1. 単一の3D印刷システムによって少なくとも1つの物理オブジェクトを製造する方法であって、
a)少なくとも1つの硬化性材料、好ましくはペースト及び/又は液体を準備する工程と、
b)硬化性材料を照射するために、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択する工程と、
c)3D印刷システム内に設けられた少なくとも1つの光エンジンによって提供される、少なくとも1つ又は少なくとも2つの選択光学解像度を有する光を、硬化性材料内の焦点面に照射することによって、硬化性材料の層を選択的に硬化させて、硬化した材料の層を形成する工程と、
d)硬化した材料の層を、好ましくは照射光の焦点面に対して変位させる工程と、を含み、
好ましくは少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択する工程が、製造される少なくとも1つの物理オブジェクトの所定の表面品質に基づく、方法。
2. 光学解像度が、3D印刷システムに設けられた複数の光エンジンから少なくとも1つの光エンジンを選択することによって選択され、各光エンジンは、異なる設定光学解像度を有する、態様1に記載の方法。
3. 光学解像度が、少なくとも1つの光エンジンのうちの好ましくは単一の光エンジンと共に使用するための複数の光学素子から1つの光学素子を選択することによって選択され、各光学素子は、異なる設定焦点距離を有する、態様1に記載の方法。
4. 光学解像度が、少なくとも1つの光エンジンのズーム可能な光学素子のズーム設定を選択することによって選択され、異なるズーム設定が異なる焦点距離を提供する、態様1に記載の方法。
5. 異なる所定の表面品質を有する少なくとも2つの物理オブジェクトがそれぞれ、3D印刷システム内に設けられた少なくとも2つの光エンジンのうちの少なくとも1つの別個の光エンジンを用いて、3D印刷システムによって同時に製造され、少なくとも2つの光エンジンが、異なる選択光学解像度を有し、好ましくは、より高い所定の表面品質を有する、製造される物理オブジェクトに対して、より高い光学解像度が選択される、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
6. 少なくとも1つの物理オブジェクトが、異なる選択光学解像度を有する少なくとも2つの光エンジンによって印刷システムにおいて製造され、好ましくは、少なくとも1つの物理オブジェクトが、少なくとも2つの光エンジンによって同時に製造される、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
7. 製造プロセス中に硬化した材料の層を可変の又は一定のステップサイズで変位させることによって、硬化した材料の層を、照射光の焦点面に対して不連続に変位させる、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
8. 硬化した材料の層を、設定された又は可変の変位速度で変位させることによって、硬化した材料の層を、照射光の焦点面に対して連続的に、かつ、工程c)と同時に変位させる、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
9. 製造される少なくとも2つの物理オブジェクトのそれぞれについて、硬化した材料の層を、照射光の焦点面に対して別々に変位させる、態様5~8のいずれか1つに記載の方法。
10. 製造される少なくとも2つの物理オブジェクトの硬化した材料の層を、同期して変位させる、態様5~8のいずれか1つに記載の方法。
11. 少なくとも工程c)及びd)、並びに任意選択的に工程b)及び/又は工程a)も複数回繰り返され、光が少なくとも2つの物理オブジェクトのそれぞれの硬化性材料内の焦点面上に異なる変位間隔で照射される、態様7~10のいずれか1つに記載の方法。
12. 方法が、工程d)の後にさらに、物理オブジェクトを移動させ、それによって、余剰材料内に質量慣性力を生成することによって物理オブジェクトから余剰材料を除去する工程e)を含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
13. 生成される質量慣性力の量が、製造される各物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて選択される、態様12に記載の方法。
14. 少なくとも1つの物理オブジェクトを製造するための3D印刷システムであって、
硬化性材料を受け入れるための少なくとも1つのリザーバと、
硬化性材料のリザーバ内の焦点面上に光を照射して、硬化した材料の層を形成するように構成された少なくとも1つの光エンジンと、
製造される物理オブジェクトを支えるための少なくとも1つのビルドプラットフォームと、
製造される物理オブジェクトの所定の表面品質に基づいて、硬化性材料を照射するために、3D印刷システムにおいて利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択するように構成されたコントローラと、を備える3D印刷システム。
15. 少なくとも1つのリザーバ及び/又は少なくとも1つのビルドプラットフォームを変位させるための少なくとも1つの変位ユニットを備える、態様14に記載の3D印刷システム。
16. 3D印刷システムが、少なくとも2つの物理オブジェクトを製造するための少なくとも2つのリザーバ及び/又は少なくとも2つのビルドプラットフォームを備える、態様14及び15のいずれか1つに記載の3D印刷システム。
17. 3D印刷システムが、少なくとも2つのリザーバ及び/又は少なくとも2つのビルドプラットフォームを個別に変位させるための少なくとも2つの変位ユニットを備える、態様16に記載の3D印刷システム。
18. 製造された物理オブジェクトを受け入れ、物理オブジェクトの余剰材料に質量慣性力を生成し、それによって物理オブジェクトから余剰材料を除去するように構成されたロータを有する遠心分離機をさらに備える、態様14~17のいずれか1つに記載の3D印刷システム。
19. 3D印刷システムが、それぞれが異なる設定光学解像度を有する少なくとも2つの光エンジンを備える、態様14~18のいずれか1つに記載の3D印刷システム。
20. 3D印刷システムが、ズーム可能な光学素子を有する少なくとも1つの光エンジンを備える、態様14~19のいずれか1つに記載の3D印刷システム。
21. 3D印刷システムが、3D印刷システム内の単一の光エンジンと共に使用されるように構成された異なる焦点距離をそれぞれ有する少なくとも2つの光学素子を備える、態様14~20のいずれか1つに記載の3D印刷システム。
22. 製造される物理オブジェクトの所定の所望される表面品質の設定を記憶するように構成されたメモリをさらに備え、コントローラは、メモリと通信して、メモリから選択された設定に基づいて少なくとも1つの光学解像度を選択することができる、態様14~21のいずれか1つに記載の3D印刷システム。
【図面の簡単な説明】
【0112】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態についてさらに説明する。
図1】本発明による実施形態の断面図を示している。
図2図1に示す実施形態の断面図である。
図3】本発明によるさらなる実施形態の断面図を示している。
【0113】
図1は、液体及び/又はペーストなどの硬化性材料を受け入れるためのリザーバ12を備える3D印刷システム10を示す。リザーバ12は、透明な基部14と、4つの側壁16とを備え、図1に示される3D印刷システム10の断面図により、側壁16のうちの3つだけが図1において可視である。透明な基部14及び4つの側壁16は、硬化性材料(図示せず)を受け入れるための容積を画定している。
【0114】
3D印刷システム10は、好ましくは変位デバイス(図示せず)によって変位可能であり得るビルドプラットフォーム18をさらに備える。ビルドプラットフォーム18は、ビルドプレート20を含み、ビルドプレート20上で硬化性材料の層が硬化されて、製造される物理オブジェクト(図示せず)を形成する。
【0115】
3D印刷システム10はまた、構築されたプラットフォーム18の下に配置された2つの光エンジン22を備え、これらは単一のキャリアユニット24に接続されている。各光エンジン22は、光エンジン22から照射され得る光を生成するための光モジュール26を含む。光モジュール26は、図1において、更なる詳細なしに概略的にのみ示されている。光モジュール26は、例えば、レーザ又は光プロジェクタであり得る。
【0116】
各光エンジン22は、光学素子28をさらに備える。光学素子28の一方又は両方は、設定焦点距離を有することができる。したがって、3D印刷システム10内で利用可能な2つの光エンジン22のうちの少なくとも1つを選択することによって、3D印刷システム10の光学解像度を選択し、任意選択で調整することができる。好ましくは、複数の物理オブジェクトを、それぞれ異なる選択光学解像度を有する異なる光エンジン22によって製造することができる。複数の物理オブジェクトを、好ましくは同時に製造することができる。
【0117】
あるいは、光学素子28のうちの少なくとも1つは、異なるズーム設定を有するズーム可能な光学素子であってもよく、各ズーム設定は、好ましくは、照射光に対して異なる焦点距離を提供する。
【0118】
光エンジン22のうちの少なくとも1つはまた、モジュール構成を有することができ、これは、光エンジン22のうちの少なくとも1つの光学素子28を交換して、光モジュール26のうちの少なくとも1つを、好ましくは異なる焦点距離を有する異なる光学素子28と対にすることができることを意味する。
【0119】
代替的に、光エンジン22のうちの少なくとも1つの光モジュール26は、異なる光モジュール26を1つ以上の光学素子28と対にするために交換可能であり得る。
【0120】
図1はまた、3D印刷システム10のxyz座標系を示す。x軸及びy軸は、ビルドプレート20に実質的に平行に延び、y軸は、図面平面内に延び、x軸は、y軸に対して垂直に延びている。z軸は、ビルドプレート20に対して実質的に垂直に延びている。
【0121】
3D印刷システム19を用いて物理オブジェクトを製造するとき、硬化性材料を最初にリザーバ12内に準備することができる。
【0122】
リザーバ12内に硬化性材料を準備することに続いて又はその前に、3D印刷システム10のコントローラ(図示せず)は、リザーバ12内に受け入れた硬化性材料を照射するために3D印刷システム10内で利用可能な2つ以上の光学解像度から少なくとも1つ又は少なくとも2つの光学解像度を選択することができる。3D印刷システム10において利用可能な2つ以上の光解像度は、2つの光エンジン22によって、例えば、異なる焦点距離を有する光学素子28を各光エンジン22が有することで、及び/又は各光モジュール26が異なる光学解像度を有することで実現することができる。
【0123】
追加的に又は代替的に、光エンジン22の少なくとも1つは、モジュール構成を有することができる。この場合、3D印刷システム10は、複数の交換可能な光学素子28であって、それぞれが異なる焦点距離を有し、光モジュール26のうちの少なくとも1つと対にされる光学素子28を備えることができる。
【0124】
代替的に、光エンジン22の少なくとも1つは、異なるズーム設定を有するズーム可能な光学素子28を備えることができ、異なるズーム設定は、光エンジン22の少なくとも1つによって照射される光の光学解像度を調整するための異なる焦点距離を提供する。
【0125】
少なくとも1つの選択光学解像度を有する光が、光エンジン22のうちの少なくとも1つから、リザーバ12内に受け入れられた硬化性材料内の焦点面上に照射される。
【0126】
それによって、硬化性材料の少なくとも一部が、ビルドプレート20上で、又はビルドプレート20に取り付けられたプリフォーム上で、硬化した材料の層として硬化して、製造される物理オブジェクトの少なくとも一部を形成する。
【0127】
その上で、ビルドプラットフォーム18、したがってビルドプレート20を変位デバイスによって変位させることによって、硬化された材料の層を焦点面に対してz方向に変位させる。さらに、リザーバ12を、追加的又は代替的に、変位デバイス(図示せず)によって変位させることができる。
【0128】
あるいは、3D印刷システム10は、複数のビルドプラットフォーム18及び/又は複数のビルドプレート20を備えることができる。これは、複数の物理オブジェクトを製造するのに特に有利であり、少なくとも1つの物理オブジェクトが各ビルドプレート20上に製造される。好ましくは、製造される複数の物理オブジェクトは、異なる形状及び/若しくはサイズ並びに/又は異なる所望の表面品質など、異なる所望の特性を有する異なる物理オブジェクトであり得る。この場合、各ビルドプラットフォーム18及び/又は各ビルドプレート20は、単一の変位デバイスによって、又はそれぞれビルドプラットフォーム18及び/又は各ビルドプレート20自体の変位デバイスによって変位可能であり得る。
【0129】
あるいは、3D印刷システム10はまた、好ましくは、異なる粘度及び/又は異なる密度及び/又は異なる多孔性などの、異なる特性を有する硬化性材料などの異なる硬化性材料を受け入れるために、複数のリザーバ12を備えることができる。複数のリザーバ12はそれぞれ、異なる形状及び/又はサイズを有することができる。
【0130】
図2は、図1の3D印刷システム10と実質的に同じ構成を示す。図1とは対照的に、図2のビルドプラットフォーム18、したがってビルドプレート20は、図1に示す構成と比較して正のz方向に変位されている。これは、硬化性材料の底部層が物理オブジェクト上で硬化した後に物理オブジェクトを変位させるための、ビルドプラットフォーム18の変位、したがってビルドプレート20の変位をシミュレートする。ビルドプラットフォーム18は、一定速度又は可変速度で連続的に変位させることができる。代替的に、ビルドプラットフォーム18は、製造プロセス中に、段階的に、一定のステップサイズで、又は可変ステップサイズで変位させることができる。
【0131】
ビルドプラットフォーム18を変位させた後、好ましくは、硬化性材料の少なくとも1つのさらなる層が物理オブジェクト上に硬化される。任意選択で、硬化性材料の少なくとも1つのさらなる層が物理オブジェクト上に硬化される前に、硬化性材料を硬化させるために照射される光の所望の又は所要の光学解像度を再評価して再選択し、任意選択で光学解像度を調整すること、又は以前に選択された光学解像度を維持することができる。
【0132】
この目的のために、3D印刷システム10は、達成された表面品質を評価するために、触覚測定機器などの表面品質検知装置を備えることができる。例えば、評価された表面品質が物理オブジェクトの所望の表面品質の許容範囲内にない場合、コントローラは、物理オブジェクトの所望の又は所定の表面品質に従って光学解像度を再選択することができる。
【0133】
図3は、別の実施形態による3D印刷システム110の構成を示す。3D印刷システムは、図1及び図2に示す3D印刷システム10と実質的に同じ特徴を含む。全ての図において同一の部分には、同じ参照符号が対応して付されている。
【0134】
図1及び図2に示す3D印刷システム10とは対照的に、図3に示す3D印刷システム110は、光モジュール126及び光学素子128を備える単一の光エンジン122のみを備える。光エンジン122は、キャリアユニット24に接続されている。
【0135】
したがって、3D印刷システム110の光学解像度は、例えば、光エンジン122の光学素子128及び/又は光モジュール126を交換することによって、選択及び調整することができる。したがって、3D印刷システム110は、単一の3D印刷システム110によって、製造される物理オブジェクトの異なる表面品質を達成するように3D印刷システム110の光学解像度を選択及び調整するために、それぞれが異なる設定焦点距離を有する複数の光学素子128(図示せず)を提供することができる。追加的に又は代替的に、光学素子128は、照射光の光学解像度を調整するために、異なる焦点距離を提供する異なるズーム設定を有するズーム可能な光学素子であり得る。したがって、ズーム可能な光学素子128のズーム設定を選択することによって、光エンジン122によって照射される光の光解像度を選択することができ、好ましくは調整することができる。
【0136】
したがって、代替的に又は追加的に、それぞれが異なる光学解像度を有する複数の光モジュール126(図示せず)が3D印刷システム110内に提供され、それにより、3D印刷システム110内で利用可能な複数の光モジュール126のうちの少なくとも1つを選択することによって、3D印刷システム110内で利用可能な複数の光学解像度から光学解像度を選択することができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】