(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】三金属担持触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/16 20060101AFI20230911BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230911BHJP
C10G 47/16 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B01J29/16 M
B01J37/04 102
C10G47/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513466
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021047131
(87)【国際公開番号】W WO2022046623
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビ - ゼン
(72)【発明者】
【氏名】レー、バオ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
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(57)【要約】
アルミナ、シリカ-アルミナ、及びNi、Mo、及びWで含浸されたゼオライト含有基材から構成される新規な触媒が提供される。一実施形態では、三金属触媒は、従来の水素化分解前処理触媒と共に積層され、水素化分解ステージへ原料を水素化処理するのに有用な触媒の組み合わせを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、シリカ-アルミナ、及びNi、Mo、及びWを含浸させたゼオライト含有基材からなる触媒。
【請求項2】
前記触媒が、前記触媒のバルク乾燥重量に基づいて、2~10重量%のNiO、3~15重量%のMoO
3、15~40重量%のWO
3を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
WO
3のMoO
3に対する重量比が2.0~6.4である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒が、前記触媒のバルク乾燥重量に基づいて、2~10重量%のNi前駆体、3~15重量%のMo前駆体、及び10~50重量%のW前駆体を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒中の前記WのMoに対するモル比が1.2~4.0の範囲である、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記基材が、前記基材の乾燥重量に基づいて、0.1~40重量%のアルミナ、20~80重量%のシリカアルミナ、及び0.5~60重量%のゼオライトを含む、請求項2または4に記載の触媒。
【請求項7】
前記ゼオライトが、USYゼオライト、ベータゼオライト、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-48、SSZ-33、SSZ-41、SSZ-42、SSZ-53、SSZ-60、SSZ-65、SSZ-70、SSZ-82、SSZ-91、SSZ-109、モルデナイトゼオライト、またはそれらの混合物を含む、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記ゼオライトがUSYゼオライトを含む、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記基材が、前記基材の乾燥重量に基づいて、10~30重量%のアルミナ、30~80重量%のASA、及び、1~50重量%のUSYゼオライトを含む、請求項6に記載の触媒。
【請求項10】
有機酸をさらに含む、請求項2または4に記載の触媒。
【請求項11】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
請求項1に記載の触媒を調製するプロセスであって、
(i)モリブデン前駆体とH
3PO
4との混合物を含む溶液を調製することと、
(ii)タングステン前駆体及びニッケル前駆体を含む水溶液を調製することと、
(iii)前記溶液(i)と(ii)とを組み合わせて、三金属溶液を形成することと、
(iv)前記基材に前記三金属溶液を含浸させることと、
を含む前記プロセス。
【請求項13】
(i)モリブデン酸アンモニウム四水和物とH
3PO
4との混合物を含む溶液を調製することと、
(ii)メタタングステン酸アンモニウム及びニッケル前駆体の水溶液を調製することと、
(iii)前記溶液(i)と(ii)とを組み合わせて、三金属溶液を形成することと、
(iv)前記基材に前記三金属溶液を含浸させることと、
を含む請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記(ii)の水溶液に有機酸を添加することをさらに含む、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
水素化分解プロセスであって、
(i)水素化分解前処理触媒と積層された請求項1に記載の前記触媒を含む触媒の組み合わせ上で、炭化水素原料を前処理反応に供することと、
(ii)前記前処理反応からの流出物を水素化分解ゾーンに送ることと、
を含む前記水素化分解プロセス。
【請求項17】
前記触媒の組み合わせが、最上層上に水素化分解前処理触媒と共に積層される、請求項16に記載の水素化分解プロセス。
【請求項18】
前記原料が、水素化分解ディーゼル燃料製品を製造するために設計されている、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記原料が、ワックス状基油製品を製造するために設計されている、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
炭化水素原料を水素化処理するプロセスであって、前記炭化水素原料を、水素化処理条件下で、水素化分解前処理触媒と積層された請求項1に記載の前記触媒に供することを含む、前記プロセス。
【請求項21】
前処理水素化分解触媒と積層された請求項1に記載の前記触媒を含む、触媒の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素化分解システムにおいて有用な新規三金属担持触媒に関する。三金属担持触媒を調製及び使用するためのプロセスも開示される。
【背景技術】
【0002】
炭化水素原料の水素化分解は、真空軽油(VGO)原料を様々な燃料や潤滑油に変換するなど、低価値の炭化水素留分を高価値の製品に変換するためによく使用される。水素化分解とは、水素化及び脱水素に、炭化水素のクラッキング/分解が伴うプロセス、例えば、より重質な炭化水素をより軽質な炭化水素に転化すること、あるいは芳香族化合物及び/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環状分岐パラフィンに転化することを指す。典型的な水素化分解反応スキームは、最初の水素化処理工程、水素化分解工程、及び水素化分解後の工程を含むことができる。これらの工程の後、流出物を分画して、所望のディーゼル燃料及び/または潤滑基油を分離することができる。
【0003】
従来、担持された水素化分解触媒は、Ni及びW金属で調製され、C-C分解プロセスで水素化機能を提供する。近年では、Ni、Mo、及びW金属が、共沈による自立型水素化処理触媒に使用されている。例えば、米国特許第9,919,987号を参照されたい。
【0004】
しかしながら、HDN及びHDS活性、ならびに脱ロウ機能などの他の改善された機能を提供できる新しい触媒に対する需要がある。
【発明の概要】
【0005】
アルミナ、シリカ-アルミナ、及びNi、Mo、及びWで含浸されたゼオライト含有基材から構成される新規な触媒が提供される。一実施形態では、三金属触媒は、従来の前処理水素化分解触媒と共に積層され、水素化分解装置へ原料を前処理するのに有用な触媒の組み合わせを提供する。
【0006】
一実施形態では、触媒は、触媒のバルク乾燥重量に基づいて、2~10重量%のNi前駆体、3~15重量%のMo前駆体、及び10~50重量%のW前駆体を含む。別の実施形態では、触媒基材は、基材の乾燥重量に基づいて、0.1~40重量%のアルミナ、20~80重量%のシリカアルミナ、例えば非晶質シリカアルミナ(ASA)、及び0.5~60重量%のゼオライト、例えばUSYゼオライトを含む。
【0007】
別の実施形態では、モリブデン前駆体とH3PO4の混合物を調製すること、タングステン前駆体及びニッケル前駆体を含む水溶液を調製すること、該溶液を組み合わせて三金属溶液を形成すること、及び、基材に該三金属溶液を含浸させることとを含むプロセスが提供される。
【0008】
一実施形態では、水素化分解プロセスが提供される。この方法は、炭化水素原料を、水素化分解前処理触媒と積層された本触媒を含む触媒の組み合わせ上で前処理反応に供することを含む。得られた流出物は、その後、前処理反応ゾーンから水素化分解ゾーンに送られる。前処理反応ゾーンにおいて、触媒の組み合わせは、水素化分解前処理触媒を最上層とし、本三金属触媒を最下層として積層される。
【0009】
とりわけ、本触媒は、水素化分解システムで使用して、水素化分解原料の優れた前処理を提供することができる。層状の組み合わせとして、水素化分解前処理触媒を上層に使用し、本担持三金属触媒を従来の水素化分解前処理触媒または減圧軽油水素化処理触媒と組み合わせることで、改善されたHDN及びHDS活性が得られることがわかっている。原料の脱ロウの改善も観察されており、システム内のその後の脱ロウプロセスをより過酷な条件で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】VGO1原料の水素化処理におけるHDN活性を様々な触媒で比較したグラフである。
【
図2】VGO1原料の水素化処理におけるHDS活性を様々な触媒で比較したグラフである。
【
図3】2つの潤滑油水素化分解触媒系を使用して調製されたワックス基油のワックス含有量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本三金属担持触媒は、それらの化合物またはイオン形態(「金属前駆体」)のニッケル、モリブデン及びタングステンの供給源から調製される。任意の適切なニッケル、モリブデンまたはタングステン金属前駆体を使用して、金属前駆体溶液、例えば任意の酸化物または塩を調製することができる。
【0012】
ニッケル前駆体の例には、ニッケルの酸化物または硫化物、ニッケルの有機化合物(例えば、ナフテン酸ニッケル、ニッケロセン)、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル及び硫酸ニッケルが挙げられる。
【0013】
モリブデン前駆体の例には、モリブデンの酸化物または硫化物、モリブデンの有機化合物(例えば、ナフテン酸モリブデン)、モリブデンの硫黄含有有機化合物(例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン)、モリブデン酸、アルカリ金属またはモリブデン酸アンモニウム(例えば、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム四水和物、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、テトラチオモリブデン酸アンモニウム)、Mo-Pヘテロポリアニオン化合物(例えば、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム)、Mo-Siヘテロポリアニオン化合物(例えば、12-モリブドケイ酸)、塩化モリブデンが挙げられる。
【0014】
タングステン前駆体の例には、タングステンの酸化物または硫化物、タングステンの有機化合物(例えば、シクロペンタジエニルタングステン二水素化物)、タングステン酸、アルカリ金属またはタングステン酸アンモニウム(例えば、タングステン酸ナトリウム、ポリタングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、テトラチオタングステン酸アンモニウム)、W-Pヘテロポリアニオン化合物(例えば、12-タングストリン酸)、塩化タングステンが挙げられる。
【0015】
触媒前駆体は、有機錯化剤または修飾剤(「L」)の存在下で調製され得る。好ましくは、有機錯化剤は金属結合基またはキレート剤である。好ましくは、有機錯化剤は二座配位子である。一実施形態では、有機錯化剤は、溶液中で金属リガンド錯体を形成するのに適している。
【0016】
有機酸は、有機錯化剤の好ましいクラスである。一実施形態では、有機錯化剤は、カルボン酸官能基と、カルボン酸、ヒドロキサム酸、ヒドロキソ、ケト、アミン、アミド、イミン、またはチオールから選択される少なくとも1つの追加の官能基とを含む有機酸である。本明細書での使用に適した有機錯化剤の例には、グリオキシル酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリシン、オキサミン酸、グリオキシル酸2-オキシム、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、N-メチルアミノ二酢酸及びイミノ二酢酸が挙げられる。好ましい有機酸はクエン酸である。
【0017】
混合溶液に使用される有機錯化剤の量も、反応条件下で溶液中に金属有機錯体を形成するのに十分でなければならない。錯化剤が有機酸である実施形態において、金属に対する有機酸のカルボン酸基の比は、少なくとも0.33、例えば、少なくとも0.5、少なくとも約1(ほぼ同じ数のカルボン酸基と金属原子が存在することを意味する)、少なくとも2,または少なくとも3であり得る。別の実施形態では、金属に対するカルボン酸基の比は、12以下(例えば、10以下、または8以下)であり得る。
【0018】
別の実施形態では、有機錯化剤対金属の混合溶液で使用されるモル比は、6:1以下(例えば、5.5:1以下、5:1以下、または4.5:1以下)である。さらに別の実施形態では、有機錯化剤と金属との混合溶液で使用されるモル比は、0.5:1以上(例えば、1:1以上、または1.5:1以上、2:1以上、2.5:1以上、3:1以上、または3.5:1以上)である。
【0019】
含浸溶液中の金属前駆体及び錯化剤または変性剤(使用する場合)の量は、乾燥後の触媒前駆体中の金属対変性剤の好ましい比率を達成するように選択すべきである。
【0020】
3つの金属で含浸される触媒基材は、基材の乾燥重量に基づいて、約0.1~約40重量%のアルミナ基材、または別の実施形態では、約10~約30重量%のアルミナで構成され得る。約25重量%アルミナを別の実施形態で使用することができる。触媒の基材はまた、基材の乾燥重量に基づいて、約20~約80重量%のシリカアルミナ、または別の実施形態では、約30~約80重量%のシリカアルミナで構成され得る。任意の適切なシリカアルミナを使用することができる。一実施形態では、シリカアルミナは非晶質シリカアルミナ(ASA)である。ゼオライトは、一般に、基材の乾燥重量に基づいて、基材の0.5~約60重量%を構成する。別の実施形態では、ゼオライトは、基材の約1~約50重量%を構成し得る。
【0021】
アルミナは、触媒基材での使用が知られている任意のアルミナであり得る。例えば、アルミナは、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ、χ-アルミナ、またはそれらの混合物であり得る。
【0022】
触媒担体のシリカアルミナは、好ましくは、一実施形態において、平均メソポア直径が一般に70Å~130Åである非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0023】
一実施形態では、非晶質シリカ-アルミナ材料は、ICP元素分析によって決定される、担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量のSiO2、450~550m2/gのBET表面積、及び0.75~1.35mL/gの全細孔容積を含む。
【0024】
別の実施形態では、触媒担体は、ICP元素分析によって決定される、担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量のSiO2を含有する非晶質シリカ-アルミナ材料、450~550m2/gのBET表面積、0.75~1.35mL/gの全細孔容積、及びが70Å~130Åの平均メソ細孔径を含む。
【0025】
別の実施形態では、触媒担体は、0.7~1.3の表面対バルクシリカ対アルミナ比(S/B比)、及び約10重量%以下の量で存在する結晶性アルミナ相を有する、高度に均質な非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【数1】
【0026】
S/B比を決定するために、シリカ-アルミナ表面のSi/Al原子比は、X線光電子分光法(XPS)を使用して測定される。XPSは、化学分析用電子分光法(ESCA)としても知られている。XPSの侵入深さは50Å未満であるため、XPSで測定されたSi/Al原子比は、表面の化学組成に対するものである。
【0027】
シリカ-アルミナの特性評価のためのXPSの使用は、AppliedCatalysisA,196,247-260,2000においてW.Daneielletal.によって公開されている。したがって、XPS技術は、触媒粒子表面の外層の化学組成を測定するのに有効である。オージェ電子分光法(AES)及び二次イオン質量分析法(SIMS)などの他の表面測定技術も、表面組成物の測定に使用することができる。
【0028】
別に、組成物のバルクSi/Al比は、ICP元素分析から決定される。次いで、表面Si/Al比をバルクSi/Al比と比較することによって、S/B比及びシリカ-アルミナの均一性が決定される。SB比が粒子の均一性をどのように定義するのかを以下に説明する。1.0のS/B比は、材料が粒子全体で完全に均質であることを意味する。1.0未満のS/B比は、粒子表面がアルミニウムで富化されており(またはシリコンが欠乏している)、アルミニウムが主に粒子の外面に位置していることを意味する。1.0超のS/B比は、粒子表面がシリコンで富化されており(またはアルミニウムが欠乏している)、アルミニウムが主に粒子の外面に位置していることを意味する。
【0029】
ゼオライトは、水素化分解触媒に使用される任意の適切なゼオライトであり得る。例えば、ゼオライトは、USYゼオライト、ベータゼオライト、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-48、SSZ-33、SSZ-41、SSZ-42、SSZ-53、SSZ-60、SSZ-65、SSZ-70、SSZ-82、SSZ-91、SSZ-109、モルデナイトゼオライト、及びそれらの混合物であり得る。一実施形態では、USYゼオライトが好ましい。
【0030】
「ゼオライトUSY」とは、超安定化Yゼオライトを指す。Yゼオライトは、SARが3以上の合成フォージャサイト(FAU)ゼオライトである。Yゼオライトは、水熱安定化、脱アルミニウム化、及び同形置換のうちの1つまたは複数によって超安定化することができる。ゼオライトUSYは、出発の(合成されたままの)Na-Yゼオライト前駆体よりも高いフレームワークシリコン含有量を有する任意のFAU型ゼオライトであり得る。そのような適切なYゼオライトは、例えば、Zeolyst、Tosoh及びJGCから市販されている。
【0031】
基材に3つの金属を含浸させて、本担持三金属触媒を生成する。一実施形態では、触媒を調製するプロセスは、2つの溶液を調製することを含む。1つの溶液は、モリブデン(Mo)前駆体とH3PO4の混合物を含む。H3PO4の存在により、透明な溶液を得ることができる。他の溶液は、タングステン(W)前駆体及びニッケル(Ni)前駆体を含む水溶液である。2つの溶液を組み合わせて、三金属溶液を形成する。H3PO4の存在が、得られる三金属溶液を透明にするのに役立つことがわかっている。次いで、基材を、従来の含浸技術を使用して三金属溶液で含浸する。
【0032】
一実施形態では、モリブデン前駆体はモリブデン酸アンモニウム四水和物である。一実施形態では、タングステン前駆体はメタタングステン酸アンモニウムである。一実施形態では、ニッケル前駆体は炭酸ニッケルである。
【0033】
別の実施形態では、タングステン及びニッケル前駆体を含む水溶液に、錯化剤または変性剤として有機酸も添加される。クエン酸は、よく使用される有機酸の1つである。
【0034】
溶液の添加量は、最終的な触媒が、触媒のバルク乾燥重量に基づいて、2~10重量%Ni前駆体、3~15重量%Mo前駆体、及び10~50重量%W前駆体を含むようなものである。触媒中のW対Moのモル比は、一般に約1.2~約4.0の範囲である。最終的な触媒をか焼して金属酸化物を生成する場合、添加量は、最終的な触媒が、触媒のバルク乾燥重量に基づいて、2~10重量%のNiO、3~15重量%のMoO3、及び15~40重量%のWO3を含むようなものである。酸化物の場合、WO3対MoO3の重量比は、一般に約2.0~約6.4の範囲である。一般に、有機酸を含浸に使用する場合、酸化物へのか焼は使用されない。
【0035】
より具体的には、基材はその成分と共に調製され、しばしば押し出される。押出物をタンブリングしながら、典型的には0.5~100時間(より典型的には1~5時間)、室温~212oF(100℃)で、初期湿潤が達成されるまで、押出物を含浸溶液に曝露し、続いて、0.1~10時間、典型的には約0.5~約5時間エージングする。
【0036】
乾燥工程は、含浸溶液溶媒を除去するのに十分な温度であるが、改質剤の分解温度より低い温度で実施される。別の実施形態では、次いで、乾燥含浸押出物を、改質剤を使用する場合はその分解温度よりも高い温度、典型的には約500oF(260℃)~1100oF(590℃)で、有効な時間か焼する。本発明は、含浸された押出物をか焼する場合、温度が意図されたか焼温度まで上昇または傾斜している期間中に乾燥を受けることを企図する。この有効な時間は、約0.5時間~約24時間、典型的には約1時間~約5時間の範囲であろう。か焼は、空気などの流れる酸素含有ガス、窒素などの流れる不活性ガス、または酸素含有ガスと不活性ガスの組み合わせの存在下で行うことができる。
【0037】
一実施形態では、含浸押出物は、金属が金属酸化物に変換されない温度でか焼される。さらに別の実施形態では、含浸押出物は、金属を金属酸化物に変換するのに十分な温度でか焼することができる。
【0038】
本発明の乾燥及びか焼された触媒は、硫化されて活性触媒を形成することができる。触媒を形成するための触媒前駆体の硫化は、触媒を反応器に導入する前に行うことができ(したがって、ex-situ前硫化)、または反応器内で行うことができる(in-situ硫化)。
【0039】
適切な硫化剤には、元素硫黄、硫化アンモニウム、ポリスルフィドアンモニウム([(NH4)2Sx)、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、チオ尿素CSN2H4、二硫化炭素、二硫化ジメチル(DMDS)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジブチルポリスルフィド(DBPS)、メルカプタン、ターシャリブチルポリスルフィド(PSTB)、ターシャリノニルポリスルフィド(PSTN)、水性硫化アンモニウムが含まれる。
【0040】
一般に、硫化剤は、硫化触媒を形成するのに必要な化学量論量を超える量で存在する。別の実施形態では、硫化剤の量は、硫化触媒を生成するために少なくとも3対1の硫黄対金属のモル比を表す。
【0041】
触媒は、硫化剤と150oF~900oF(66℃~482℃)の温度で10分~15日間、101kPa~25,000kPaのH2含有ガス圧下で接触すると活性硫化触媒に変換される。硫化温度が硫化剤の沸点よりも低い場合、プロセスは一般に大気圧で実施される。硫化剤/任意成分の沸点より上では、反応は一般に増圧下で実施される。本明細書で使用される場合、硫化プロセスの完了は、金属を、例えば、CO9S8、MoS2、WS2、Ni3S2などに変換するのに必要な化学量論的硫黄量の少なくとも95%が消費されたことを意味する。
【0042】
一実施形態では、硫化は、水素及びH2Sに分解可能な硫黄含有化合物を用いて気相で完了するまで実施することができる。例には、メルカプタン、CS2、チオフェン、DMS、DMDS、及び好適なS含有精製所出口ガスが挙げられる。H2と硫黄含有化合物のガス状混合物は、各工程において同じであっても異なっていてもよい。気相における硫化は、固定床プロセス及び移動床プロセス(触媒が反応器に対して移動する、例えば、沸騰プロセス及び回転炉)を含む任意の好適な方法で行うことができる。
【0043】
触媒前駆体と水素及び硫黄含有化合物との接触は、68oF~700oF(20℃~371℃)の温度、101kPa~25,000kPaの圧力で1時間~100時間の1工程で完了することができる。典型的には、硫化は、温度を上昇させるか徐々に上昇させ、完了するまで一定時間保持しながら、一定時間にわたって実施される。
【0044】
別の実施形態では、硫化は気相で行うことができる。硫化は2つ以上の工程で行われ、最初の工程は次の工程よりも低い温度で行われる。
【0045】
一実施形態では、硫化は液相で実施される。まず、触媒前駆体を、触媒全細孔容積の20%~500%の範囲の量で有機液体と接触させる。有機液体との接触は、周囲温度~248°F(120℃)の範囲の温度で行うことができる。有機液体を組み込んだ後、触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる。
【0046】
一実施形態では、有機液体は、200oF~1200oF(93℃~649℃)の沸点範囲を有する。有機液体の例としては、重油などの石油留分、鉱物性潤滑油などの潤滑油留分、常圧軽油、真空軽油、直留軽油、ホワイトスピリット、ディーゼル、ジェット燃料及び灯油などの中間留分、ナフサ、ならびにガソリンが挙げられる。一実施形態では、有機液体は、10重量%の硫黄を含み、好ましくは5重量%である。
【0047】
本触媒は、水素化分解システムにおいて有用である。水素化分解ゾーンで水素化分解触媒として使用することができる。本三金属担持触媒を従来の水素化分解前処理触媒と層状組み合わせとして組み合わせる場合に、特定の用途が発見された。特に、従来の前処理触媒は最上層であり、最初に水素化分解原料と接触する。この層状の組み合わせは、水素化分解反応段階の前処理または水素化処理ゾーンで有利に使用される。上層触媒は、一般に、60~85体積%の層状組み合わせ、及び15~40体積%の本触媒から構成される。好ましいのは80体積%~20体積%の組み合わせである。
【0048】
最上層の従来の前処理触媒は、水素化分解システムの前処理または水素化処理ゾーンで使用され、水素化脱窒素及び/または水素化脱硫を行う任意の従来の触媒であり得る。そのような従来の前処理触媒は、本触媒の三金属の組み合わせを含まない。このような前処理または水素化処理触媒の例としては、ARTから入手可能なICR513、ICR514、及びICR1000シリーズ;Celestia(登録商標)、Nebula(登録商標)、及びMIDW(登録商標)の商標で入手可能なExxonMobil触媒;Albermarle触媒KF880及びKF870が挙げられる。そのような触媒を本発明の触媒と組み合わせる/積層することは、非常に有利であることが見出された。
【0049】
本組合せ触媒は、水素化分解プロセスにおいて、前処理または水素化処理ゾーンとして特定の用途を有することが見出された。原料が層状の組み合わせを通過すると、結果として生じる流出物は水素化分解ゾーンに送られる。前処理ゾーンは、前処理または水素化処理ゾーンの従来の温度及び圧力条件下で操作される。ディーゼル燃料または潤滑基油を製造するために設計された水素化分解原料にも、特定の用途が見出されている。
【実施例】
【0050】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【0051】
実施例1:アルミナ触媒担体Aの調製
触媒担体Aを、US2014/0367311A1に従って調製した。アルミナ含有スラリーを次のように調製した:タンクに13630Lの市水を加えた。加熱して温度を120oF(49℃)に上昇させた。硫酸アルミニウム流及びアルミン酸ナトリウム流を攪拌しながらタンクに連続的に添加した。硫酸アルミニウム流は、水(79.9L/分)でインライン希釈された硫酸アルミニウム(8.3重量%のAl2O3を含む、76L/分)の水溶液からなり、アルミン酸ナトリウム流は、水(134L/分)でインライン希釈されたアルミン酸ナトリウム(25.5重量%のAl2O3を含む)の水溶液を水で構成される。アルミン酸ナトリウム流へのアルミン酸ナトリウム溶液の添加速度は、アルミナスラリーのpHによって制御した。pHを9.0に、温度を120oF(49℃)に制御した。温度制御は、両方の流れの希釈水の温度を調整することによって達成した。2,082Lのアルミン酸ナトリウム水溶液をタンクに添加した後、硫酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムの流れの両方を停止した。得られたスラリーの温度を、35分間蒸気を注入して127oF(53℃)に上昇させた。蒸気注入を続けている間に、硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウム流の両方を再開した。この工程の間、スラリーのpHを9.0に保ち、温度は自由に上昇させた。4542Lの硫酸アルミニウム水溶液を添加すると、沈殿が停止した。スラリーの最終温度は149oF(65℃)に達した。沈殿が停止した後、同じアルミン酸ナトリウム水溶液を添加してpHを9.3に上げた。次に、アルミナスラリーを濾過し、洗浄して、Na+及びSO4
2-を除去した。このスラリーをスラリーAと称する。
【0052】
スラリーAの約半分を別のタンクにポンプで送り込んだ後、蒸気を注入して140~151oF(60~66℃)に加熱し、この温度で維持した。MS-25シリカ-アルミナ(63.5kg、W.R.Grace製)をタンクに追加した。MS-25の量は、最終的な担体が3%のSiO2を含むように制御した。続いて、酢酸(113kg、29.2%)をスラリーに添加した後、30分間攪拌しました。攪拌後、アンモニア(60.8kg、6.06%)を添加した後、スラリーを濾過してケーキを得た。得られたケーキを約550oF(288℃)で乾燥させて、約60%の水分を含むアルミナ粉末を得た。次に、粉末をミキサーに移し、0.5%のHNO3及び10%の再循環触媒/担体微粉で処理した。押出可能な混合物が形成されるまで混合物を混合し続けた。次に、混合物を1/16インチの非対称な四葉形に押し出し、乾燥させ、1350oF(732℃)でか焼して、触媒担体Aを得た。
【0053】
実施例2:アルミナ触媒担体Bの調製
アルミナ支持体Bを、アルミナ支持体Aと同じ方法で調製した。相違点は、約60%の水分を含むアルミナ粉末を生成するために、乾燥工程を噴霧乾燥から同等の温度でのホロフライト乾燥に変更したことである。この乾燥プロセスにより、細孔容積がわずかに大きく、細孔サイズがより大きいアルミナ粉末を生成した。次に、粉末をミキサーに移し、0.5%のHNO3及び10%の再循環触媒/担体微粉で処理した。押出可能な混合物が形成されるまで混合物を混合し続けた。次に、混合物を1/16インチの非対称な四葉形に押し出し、乾燥させ、1350oF(732℃)でか焼して、触媒担体Bを得た。
【0054】
実施例3:ゼオライト含有水素化分解触媒担体Cの調製
水素化分解触媒支持体Cは、米国特許第9,187,702B2号に記載された方法に従って調製した。67g(乾燥重量、1099oF(593℃)でサンプルを乾燥させた後に計量)のシリカ-アルミナ粉末(Sasol、PIDC、JGCから入手)、25g(乾燥重量)の疑似ベーマイトアルミナ粉末(Sasolから入手))及び8gのゼオライトY(Zeolyst、JGC、Tosoh)をよく混合させた。1MHNO3酸水溶液(乾燥触媒支持体の1重量%)を混合粉末に添加して、押し出し可能なペーストを形成した。そのペーストを1/16インチの非対称な四葉形に押し出し、248oF(120℃)で一晩乾燥した。過剰な乾燥空気をパージしながら、その乾燥した押出成形体を1099oF(593℃)で1時間か焼し、室温まで冷却して担体Cを得た。
【0055】
実施例4:ゼオライト含有水素化分解触媒担体Dの調製
水素化分解触媒担体Dは、67g(乾燥重量、1099oF(593℃)でサンプルを乾燥させた後に秤量)の高細孔容積シリカ-アルミナ粉末、25g(乾燥重量)の疑似ベーマイトアルミナ粉末(Sasolから入手)及び8gのゼオライトY(Zeolyst、JGC、Tosohから)をよく混合したものを使用したこと以外は、触媒担体Cと同様の方法で調製した。1MHNO3酸水溶液(乾燥触媒支持体の1重量%)を混合粉末に添加して、押し出し可能なペーストを形成した。そのペーストを1/16インチの非対称な四葉形に押し出し、248oF(120℃)で一晩乾燥した。過剰な乾燥空気をパージしながら、その乾燥した押出成形体を1099oF(593℃)で1時間か焼し、室温まで冷却して触媒担体Dを得た。
【0056】
実施例5:水素化分解前処理触媒A(NixMoyP)の調製
触媒Aは、触媒担体AにNi-Mo-P金属水溶液を含浸させた。詳しい調製はWO2015/164464A1に記載されている。撹拌機を備えた丸底フラスコ内の400mLの水に116.7gのクエン酸を添加した。194.75gの炭酸ニッケル(49%のNi)を上記溶液に添加した。次いで、189.34gのリン酸(85%)を溶液にゆっくりと添加し、溶液を150oF(66℃)に加熱した。次に、475.95gの三酸化モリブデンを溶液に添加した。溶液を約190oF~210oFに加熱し、溶液が透明になるまで少なくとも1.5時間その温度範囲に保持した。溶液が透明になったら、それを120oF(49℃)未満に冷却し、さらに272.8gのクエン酸を添加し、溶液が透明になるまで混合物を攪拌した。溶液を脱イオン水で1000mLに希釈した。MoO3の最終濃度は、0.4750g/mLの溶液であった。得られたNixMoyPz溶液の分析は、以下の組成(金属は酸化物として表される)を示した。乾燥ベースの重量%:NiO、6.0;P2O56.5;MoO3、25.0。溶液は次の成分比を含んでいた:0.4クエン酸/(NiO+MoO3)(mol/mol)。
【0057】
触媒Aは、NixMoyPz溶液を使用して触媒担体Aを含浸することによって調製した。担体は、初期湿潤法によって含浸し、例えば、金属溶液の総体積は、103%の支持体押出物の水細孔体積と一致する。次に、湿った押出物を空気中で、320oF(160℃)で10分間加熱し、40分かけて680oF(360℃)まで上昇させ、680oF(360℃)で10分間保持し触媒Aを生成した。
【0058】
実施例6:水素化分解前処理触媒B(NixMoyP)の調製
触媒Bは、触媒Aと同じ金属溶液、金属添加量、及び焼成条件で調製した。唯一の違いは、触媒担体Bを使用することである。
【0059】
実施例7:水素化分解触媒C(NixWyとクエン酸)の調製
NiW水素化分解触媒Cは、触媒担体Cを用いて調製した。メタタングステン酸アンモニウム及び炭酸ニッケルを含有する水溶液を使用して、最終触媒中6.0重量%NiO及び22.0重量%のWO3を目標金属添加量で、Ni及びWの含浸を実行した。最終乾燥触媒の12.2重量%の量のクエン酸をNiW溶液に添加した。溶液を122oF(50℃)超に加熱して、完全に溶解した(透明な)溶液を確保した。金属溶液の総量は、基材押出物の103%の水細孔容積と一致する(初期湿潤法)。押出物をタンブリングしながら、金属溶液を担体押出物に徐々に添加した。溶液の添加が完了したら、浸漬した押出物を2時間熟成させた。次に、湿った押出物を空気中で320oF(160℃)で10分間加熱し、40分かけて680oF(360℃)まで上昇させ、680oF(360℃)で10分間保持し触媒Cを生成した。
【0060】
実施例8:水素化分解触媒D(NixWyMozPとクエン酸)の調製
三金属(NiWMo)水素化分解触媒Dを、水素化分解触媒Cと同様に、触媒担体Cを使用して調製した。2つの水溶液を別々に調製し、含浸前に混合した。MoP溶液は、必要量のモリブデン酸アンモニウム四水和物、及び、85%のH3PO4を混合して透明な溶液を形成することによって調製した。NiW溶液を、触媒Cの場合と同じ方法で調製した。2つの透明な溶液を一緒組み合わせて、三金属溶液を形成した。三金属溶液の総量は、基材押出物の103%の水細孔容積と一致する(初期湿潤法)。押出物をタンブリングしながら、金属溶液を触媒担体Cに徐々に添加した。溶液の添加が完了したら、浸漬した押出物を2時間熟成させた。次に、湿った押出物を空気中で、320oF(160℃)で10分間加熱し、40分かけて680oF(360℃)まで上昇させ、680oF(360℃)で10分間保持し触媒Dを生成した。目標金属添加量は、19.0重量%のWO3、4.8重量%のMoO3、4.2%のNiO及び1.0重量%のP2O5である。最終乾燥触媒の8.5重量%の量のクエン酸をNiW溶液に添加した。
【0061】
実施例9:水素化分解触媒E(NixWyMozP、クエン酸無し)の調製
三金属(NiWMo)水素化分解触媒Eを、水素化分解触媒Dと同様に、触媒担体Cを使用して調製した。2つの水溶液を別々に調製し、含浸前に混合した。MoP溶液は、必要量のモリブデン酸アンモニウム四水和物、及び、85%のH3PO4を混合して透明な溶液を形成することによって調製した。NiW溶液は、触媒C及びDとは異なり、クエン酸無しで調製した。NiW水溶液を、必要量の硝酸ニッケル六水和物及びメタタングステン酸アンモニウムを水中で混合することによって調製した。2つの透明な溶液を合わせて、三金属溶液を形成した。三金属溶液の総量は、基材押出物の103%の水細孔容積と一致する(初期湿潤法)。押出物をタンブリングしながら、金属溶液を触媒担体Cに徐々に添加した。溶液の添加が完了したら、浸漬した押出物を2時間熟成させた。次に、湿った押出物を空気中で320oF(160℃)で10分間加熱し、40分かけて680oF(450℃)まで上昇させ、842oF(360℃)で10分間保持し触媒Eを生成した。目標金属添加量は、21.7重量%のWO3、5.5重量%のMoO3、4.8%のNiO及び1.2重量%のP2O5である。
【0062】
実施例10:水素化分解触媒F(Ni
xW
yMo
zP、クエン酸無し)の調製
三金属(NiWMo)水素化分解触媒Fを、触媒担体Dを使用して調製した。31.2重量%のWO
3、8.0重量%のMoO
3、6.8%のNiO及び1.8重量%のP
2O
5の金属添加量を目標とするために、三金属溶液は、より高い濃度であることを除いて、触媒Eと同じである。
【表1】
【0063】
実施例11:炭化水素真空軽油試料
一連の研究では、2つの真空軽油を使用した。VGO1は、粗蒸留から直接得た直留VGOであった。VGO2は直留VGOとヘビーコーカー軽油の混合原料であった。それらの特性を表2に示す。
【表2】
【0064】
実施例12:水素化分解前処理(HDN/HDS)活性研究
水素化処理性能評価を、自動化された触媒と蒸留システムを備えた社内設計の固定床水素化処理装置を使用して実施した。合計6mLの触媒押出物(L/D=1-2)をステンレス製反応器に添加した。触媒床には、原料と触媒の接触を改善し、チャネリングを防ぐために100メッシュのアランダムを充填し、炉の等温ゾーンに配置した。水素化分解前処理触媒の評価条件を以下に示す。
・原料:VGO1
・入口水素圧力:2300PSIG
・水素分圧:2180PSIA
・水素対油の比率:5000SCFB
・供給量:2.0LHSV
・試験対象:水素化脱窒素(HDN)活性比較のための水素化処理製品中の20ppmのNまたは水素化脱硫(HDS)活性比較のための水素化処理製品中の500ppmのS
【0065】
液体生成物を、600
oF(316℃)に制御されたカットポイントのためにオンライン蒸留に送った。蒸留オーバーヘッド(DO)、蒸留ボトム(DB)、及びオフガスからのサンプルが収集され、水素化分解(HCR)変換、HDN、及びHNS活性計算についてSimdist、N及びSを毎日分析した。表1に挙げた6つの触媒すべてについて、反応器温度を700~740
oF(371~393℃)の範囲に制御した。3層触媒系、触媒A/D、触媒B/D及び触媒B/Fも評価した。層状触媒系は、下のチャートに示すように、20体積%の触媒Dまたは触媒Fの上に80体積%の触媒Aまたは触媒Bを80/20の体積比で構成した。
【表3】
【0066】
研究における層状触媒系及びHDN研究の結果を
図1に示しており、VGO1の水素化処理におけるHDN活性を、様々な使用触媒と比較したものである。触媒活性は、水素化処理された製品で20ppmのNを生成するために必要な温度に基づいて比較した。正の値は、触媒が触媒Aの基本ケースよりもHDNでより活性であることを示す。
【0067】
結果を
図1に示しており、
図1は、1)三金属水素化分解触媒Dが、匹敵する総金属装填量で、バイメタル水素化分解触媒Cよりも高い水素化脱窒素(HDN)活性を示したことを示している。2)三金属水素化分解触媒D、E、及びF単独(Ni
xW
yMo
zP)は、従来のアルミナ担持水素化分解前処理触媒A及びB(Ni
xMo
yP)より活性が低かった。しかし、層状触媒系の3つ(A/D、B/D、及びB/F)はすべて、前処理触媒A及びB(Ni
xMo
yP)よりも活性であった。これは、HDN適用のためのNi
xMo
yP水素化処理触媒とNi
xW
yMo
zP水素化分解触媒との間の相乗効果を示唆している。
【0068】
HDS研究の結果を
図2に示しており、VGO1の水素化処理におけるHDS活性を、様々な触媒と比較したものである。触媒活性は、水素化処理された製品で500ppmのSを生成するために必要な温度に基づいて比較した。正の値は、触媒が触媒Aの基本ケースよりもHDSでより活性であることを示す。
【0069】
図2に示す結果に基づき、水素化脱硫(HDS)についても同様の結論を下すことができる。1)三金属水素化分解触媒Dは、匹敵する全金属添加量で、バイメタル水素化分解触媒Cよりも高いHDS活性を示した。2)層状触媒系(A/D、B/D、及びB/F)の3つすべてが、前処理触媒A及びB(Ni
xMo
yP)よりも活性であり、HDS用途向けのNi
xMo
yP水素化処理触媒とNi
xW
yMo
zP水素化分解触媒間の相乗効果を示している。
【0070】
実施例13:基油研究のための水素化分解
VGO2を、以下のプロセス条件で、ワックス基油220R及び600Rを製造するための潤滑油の水素化分解研究に使用した。
・原料:VGO2
・入口水素圧力:2100PSIG
・水素分圧:2000PSIA
・水素対油の比率:5000SCFB
・供給量:0.65LHSV
・試験目標:ワックス基油220Rについて>110VI(100℃で約6cSt)
【0071】
比較のために2つの触媒系を試験した。基本ケースでは、以下のスキームに示すように、潤滑剤HCRの前処理及び後処理として触媒Aを使用した。触媒の添加量:脱金属化(Demet)触媒/触媒A/LubeHCR触媒/触媒A=10/39/40/11重量%。ART脱金属(Demet)触媒を、金属不純物管理のために潤滑油水素化分解装置の上部で使用した。ART水素化分解触媒をVIのアップグレードに使用した。新しいケースの場合、唯一の変更点は、潤滑剤HCRの前処理として、触媒Aが部分的に触媒Dに置き換えたことである。触媒A対触媒Dの比率は、体積で4対1であり、例えば、VGO1原料を用いた水素化分解前処理研究に使用された比率と同じ比率である。その意図は、前のセクションで観察された相乗的なHDN/HDS活性の利点を利用することである。
【表4】
【0072】
層状系のHDN/HDS活性の利点に加えて、本発明の触媒系での生成されたワックス基油のワックス含有量が、ベースケースからのそれよりも大幅に低いことも見出された。
図3に示すように、水素化分解転化率の増加に伴い、ワックス含有量の減少は徐々に増加した。ワックス含有量の減少は、三金属Ni
xW
yMo
z成分によって生成された酸性部位での異性化に起因し得る。
【国際調査報告】