(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】コカルエンベロープを使用したT細胞形質導入のためのレンチウイルスベクターの生成の改善
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20230911BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230911BHJP
C12N 15/47 20060101ALI20230911BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230911BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230911BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230911BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230911BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/47
C12N15/13
C12N5/10
C12N15/12
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514005
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021048331
(87)【国際公開番号】W WO2022051240
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ライリー ジェームズ エル.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むレトロウイルスベクターを使用して、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞に送達するための組成物および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を免疫細胞またはその前駆細胞に送達するための方法であって、
前記細胞に、
(a)CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、
(b)コカルベシクロウイルス(Cocal vesiculovirus)エンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、
(c)レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、
(d)レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドと
を導入する工程を含み、
導入される移入プラスミドの量が、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む該レトロウイルスベクターの量よりも多い、
方法。
【請求項2】
導入される移入プラスミドの量が、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターの量の少なくとも2倍(×)、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、または20×である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
コカルベシクロウイルスエンベロープをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記エンベロープタンパク質の発現が、転写調節エレメントの制御下にある、請求項1記載の方法。
【請求項5】
転写調節エレメントが真核生物プロモーターである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
転写調節エレメントが構成的プロモーターである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質が、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
レトロウイルスベクターが、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
抗原結合ドメインが、全長抗体もしくはその抗原結合断片、Fab、一本鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
抗原結合ドメインが、CD4、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1(MUC1)、TnMUC1、グリピカン-2(GPC2)、癌細胞関連GPC2、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)結合GDNFファミリーα-受容体4(GFRα4; GFRアルファ4)および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される標的抗原に特異的に結合する、請求項9~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
CARが、ヒンジ領域をさらに含む、請求項9~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
膜貫通ドメインが、
人工疎水性配列、I型膜貫通タンパク質、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)またはCD154の膜貫通ドメイン、および、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメイン
からなる群より選択される、請求項9のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
細胞内ドメインが、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項9~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
細胞内ドメインが、TNFRスーパーファミリータンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)からなる群より選択されるタンパク質の共刺激ドメイン、および、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメイン、またはその変異体を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
細胞内シグナル伝達ドメインが、
ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、細胞質受容体を有する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはその変異体の細胞質シグナル伝達ドメイン
からなる群より選択される細胞内ドメインを含む、請求項14~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性Tリンパ球または制御性T細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
T細胞がCD8+ T細胞である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
T細胞がCD4+ T細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
T細胞が制御性T細胞である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
レトロウイルスベクターが、レンチウイルスベクター、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルスおよびイプシロンレトロウイルスからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質が、ヒトコドン最適化されている、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
大規模化される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
懸濁状態での成長のために前記細胞を適合させる工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
無血清培養物中で成長するように前記細胞を適合させる工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
CARを含む免疫細胞またはその前駆細胞を含む組成物であって、前記細胞が、前記請求項のいずれか一項記載の方法によって産生される、前記組成物。
【請求項27】
GMPに準拠している、請求項22記載の組成物。
【請求項28】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞またはその前駆細胞に送達するための方法であって、前記細胞に、宿主細胞内で生成されたコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子を形質導入する工程を含み、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子が、
CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、
コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、
レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、
レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドと
を含む、方法。
【請求項29】
(a)宿主細胞に、
CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、
コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、
レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、
レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドと
を導入する工程であって、
宿主細胞が、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子を産生する、工程;
(b)コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子を回収する工程; ならびに
(c)免疫細胞にコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子を形質導入する工程であって、形質導入された免疫細胞が、移入プラスミドのヌクレオチド配列によってコードされるCARを発現する、工程
を含む、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞に送達するための方法。
【請求項30】
宿主細胞に導入される移入プラスミドの量が、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む前記レトロウイルスベクターの量よりも多い、請求項28~29のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2020年9月1日に出願された米国仮特許出願第63/073,194号に対する35 U.S.C.§119(e)の下での優先権を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前臨床動物モデル、獣医学、臨床試験および治療用途では、レンチウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターは遺伝子療法を提供する。レンチウイルスベクターは、ガンマレトロウイルスベクターと比較して、静止細胞に効率的に形質導入することができる。効率の増大は、有糸分裂中(例えば細胞分裂)だけでなく、細胞の生活環全体を通して、レンチウイルスが感染細胞の核に入る能力に少なくとも起因すると考えられる。レンチウイルスベクターは、例えば、ガンマレトロウイルスベクターと比較して、プロモーター領域に非常に近接して組み込まれないという利点を有する。したがって、遺伝子破壊、癌および奇形腫形成のリスクは、レンチウイルスベクターの方がガンマレトロウイルスベクターよりも低いと考えられる。レンチウイルスはまた、自己不活性化であるように設計され、これにより、安全性プロファイルも改善するという利点を有する。
【0003】
遺伝子療法を目的として、遺伝子療法ベクターによる形質導入に感受性の細胞の範囲を制限または拡大することが望まれる場合がある。この目的のために、内因性ウイルスエンベロープタンパク質が他のウイルス由来のエンベロープタンパク質によって、またはキメラタンパク質によって置き換えられている多くのベクターが開発されている。そのようなキメラは、ビリオンへの組込みに必要なウイルスタンパク質の部分と、特定の宿主細胞タンパク質と相互作用することを意図した配列とからなる。記載されるようにエンベロープタンパク質が置き換えられているウイルスは、偽型ウイルスと呼ばれる。最も一般的なレンチウイルス偽型は、インディアナベシクロウイルス(Indiana vesiculovirus)(「水疱性口内炎ウイルス」および「水疱性口内炎インディアナウイルス」としても知られる)エンベロープ糖タンパク質(VSV-G)である。VSV-Gは広範囲な有効性を有することが示されており、高力価で産生され得るが、VSV-Gはまた、VSV-Gを含むかまたはVSV-Gによってカプセル化されたレトロウイルス粒子を生成および包装するために使用される細胞株(すなわち、「プロデューサー細胞)では、毒性および不安定性に関連する。VSV-Gは、インビボで投与されると、ヒト血清補体によって不活性化されるため、その有効性を低下させ、患者においてVSV-Gに対する有害な補体依存性免疫応答を引き起こし得る。コカルベシクロウイルス(Cocal vesiculovirus)は、同じ属であるが、インディアナベシクロウイルスとは血清学的に異なる。
【0004】
当技術分野において、患者において力価を増加させ、有効性を改善し、毒性を低下させるレンチウイルスベクターが必要とされている。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において記載されるように、本発明は、最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むレトロウイルスベクターを使用して、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞に送達するための組成物および方法に関する。
【0006】
一局面では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を免疫細胞またはその前駆細胞に送達するための方法を含む。該方法は、細胞に、a)CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミド(transfer plasmid)と、b)コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、c)レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、d)レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを導入する工程を含む。導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターの量よりも多い。
【0007】
ある特定の態様では、導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターの量の少なくとも2倍(×)、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×または20×である。
【0008】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。
【0009】
ある特定の態様では、エンベロープタンパク質の発現は、転写調節エレメントの制御下にある。ある特定の態様では、転写調節エレメントは、真核生物プロモーターである。ある特定の態様では、転写調節エレメントは、構成的プロモーターである。
【0010】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0011】
ある特定の態様では、レトロウイルスベクターは、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0012】
ある特定の態様では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。
【0013】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、全長抗体もしくはその抗原結合断片、Fab、一本鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、CD4、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD123、CD133、EGFR、EGFRvIII、メソテリン、Her2、PSMA、CEA、GD2、IL-13Ra2、グリピカン-3、CIAX、LI-CAM、CA 125、CTAG1B、ムチン1(MUC1)、TnMUC1、グリピカン-2(GPC2)、癌細胞関連GPC2、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)結合GDNFファミリーα-受容体4(GFRα4; GFRアルファ4)および葉酸受容体-アルファからなる群より選択される標的抗原に特異的に結合する。
【0014】
ある特定の態様では、CARは、ヒンジ領域をさらに含む。
【0015】
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、人工疎水性配列、I型膜貫通タンパク質、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)またはCD154の膜貫通ドメイン、およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインからなる群より選択される。
【0016】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリータンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)からなる群より選択されるタンパク質の共刺激ドメイン、およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメイン、またはその変異体を含む。ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、細胞質受容体を有する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはその変異体の細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される細胞内ドメインを含む。
【0017】
ある特定の態様では、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性Tリンパ球または制御性T細胞である。ある特定の態様では、T細胞はCD8+ T細胞である。ある特定の態様では、T細胞はCD4+ T細胞である。ある特定の態様では、T細胞は制御性T細胞である。
【0018】
ある特定の態様では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルスおよびイプシロンレトロウイルスからなる群より選択される。
【0019】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、ヒトコドン最適化されている。
【0020】
ある特定の態様では、該方法は大規模化される。ある特定の態様では、該方法は、懸濁状態での成長のために細胞を適合させる工程をさらに含む。ある特定の態様では、該方法は、無血清培養物中で成長するように細胞を適合させる工程をさらに含む。
【0021】
別の局面では、本発明は、CARを含む免疫細胞またはその前駆細胞を含む組成物を含み、該細胞は、本明細書において企図される方法のいずれかによって産生される。ある特定の態様では、組成物は、GMPに準拠している。
【0022】
別の局面では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞またはその前駆細胞に送達するための方法を含む。該方法は、宿主細胞内で生成されたコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子を細胞に形質導入する工程を含み、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子は、CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを含む。
【0023】
別の局面では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞に送達するための方法を含む。該方法は、宿主細胞に、CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを導入する工程を含み、宿主細胞は、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子を産生する。該方法は、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルス粒子を回収する工程、および免疫細胞にコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子を形質導入する工程であって、形質導入された免疫細胞が、移入プラスミドのヌクレオチド配列によってコードされるCARを発現する工程をさらに含む。
【0024】
ある特定の態様では、宿主細胞に導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターの量よりも多い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばさらによく理解されるであろう。本発明を例示するために、ここで好ましい態様が図面に示されている。ただし、本発明は、図面に示された態様の正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0026】
【
図1】
図1は、コドン最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質(以下、「Cocal-G」)をコードする例示的なベクターを示す。
【
図2】
図2は、コドン最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む、
図1のベクターのヌクレオチド配列を示す。
【
図3】
図3は、コドン最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質の例示的なアミノ酸配列を示す。
【
図4】
図4は、コドン最適化されたCocal-Gエンベロープ化レンチウイルス粒子(Cocal-G ENV)が、特にエンベロープ濃度および移入プラスミド濃度を調整した後に、初代ヒトT細胞内で、水疱性口内炎ウイルス(インディアナベシクロウイルス)(VSV-G)エンベロープ化レンチウイルス粒子の形質導入効率よりも良好な形質導入効率を示すという知見を示す。
【
図5】
図5は、GFPを発現する細胞の割合、および該細胞の総平均蛍光強度(MFI)としてグラフ化された、
図4から得られたフローサイトメトリーデータを示す。
【
図6】
図6は、Cocal-G ENVが、特にエンベロープ濃度および移入プラスミド濃度を調整した後に、CD8+ T細胞内でレンチウイルス形質導入効率を高めるという知見を示す。
【
図7】
図7は、Cocal-Gが、CD8 T細胞内でCD4 CARの形質導入効率を高めるという知見を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むレトロウイルスベクターを使用して、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞に送達するための組成物および方法を提供する。ある特定の態様では、該方法は、免疫細胞に、CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを導入する工程を含み、導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターの量よりも多い。
【0028】
ある特定の態様では、本発明は、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質の発現のためのベクター、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含むウイルス粒子、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸、該ベクターもしくは粒子を含む細胞、および/またはその粒子を含む組成物を提供する。ある特定の態様では、本発明は、本明細書において開示される方法によって生成された、キメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞を提供する。ある特定の態様では、本発明は、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含むベクターを含むプロデューサー細胞、ならびに該細胞を作製および使用する方法を提供する。
【0029】
本開示において記載される方法は、本明細書において開示される特定の方法および実験条件に限定されず、これは、そのような方法および条件は変動し得るためであることを理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0030】
さらに、本明細書において記載される実験は、別段の指定がない限り、当業者の技術の範囲内の従来の分子的技術および細胞生物学的技術および免疫学的技術を使用する。そのような技術は当業者に周知であり、文献内で十分に説明されている。例えば、あらゆる補足を含む、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987-2008),Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Fourth Edition),Michael R.Green and Joseph Sambrook eds.,およびHarlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Chapter 14,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor(2013,2nd edition)を参照されたい。
【0031】
A. 定義
別途定義されない限り、本明細書において使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。潜在的な曖昧さがある場合、本明細書において提供される定義は、辞書または外部定義に優先する。文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。「または」の使用は、特に指示しない限り、「および/または」を意味する。用語「含む(including)」ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は限定的ではない。
【0032】
一般に、本明細書において記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は、周知であり、当技術分野において一般的に使用される。本明細書において提供される方法および技術は、一般に、別段の指定がない限り、当技術分野において周知の従来の方法に従って、本明細書を通して引用および説明される様々な一般的およびさらに具体的な参考文献に記載されているように行われる。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書において記載されるように、製造業者の仕様に従って行われる。本明細書において記載される分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および製薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当技術分野において周知であり、一般的に使用される。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化および送達、ならびに患者の治療には、標準的な技術が使用される。
【0033】
本開示がさらに容易に理解され得ることから、選択用語を以下に定義する。
【0034】
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」とは、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0035】
例えば、量、持続時間などの測定可能な値を指す際に本明細書において使用される「約」は、指定された値から±20%または±10%、さらに好ましくは±5%、さらになお好ましくは±1%、さらに一層好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は、開示された方法を行うのに適している。
【0036】
本明細書において使用される「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激されたT細胞の状態を指す。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能に関連し得る。用語「活性化T細胞」は、とりわけ、細胞分裂を受けているT細胞を指す。
【0037】
本明細書において使用される場合、疾患を「緩和する」ことは、疾患の1つまたは複数の症状の重症度を低下させることを意味する。
【0038】
本明細書において使用される用語「抗原」は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、もしくは特定の免疫担当細胞の活性化、またはその両方を伴い得る。当業者であれば、実質的にあらゆるタンパク質またはペプチドを含むいずれかの高分子が抗原として役立ち得ることを理解するであろう。
【0039】
本明細書において使用される用語「抗体」は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源または組換え源に由来するインタクトな免疫グロブリン(すなわち、IgA二量体またはIgM五量体のような「Y」字型構造またはそれらの連結された組合せ、各「Y」は、一方が各Fab領域の末端にある2つの抗原結合部位を含み、各Fab領域は「Y」の各アームであり、各「Y」はFc領域をさらに含み、Fc領域は「Y」の基部である)であり得、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分(すなわち、Fab領域またはその断片)であり得る。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であることが多い。本明細書における態様では、抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在することができる(Harlow et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0040】
さらに、抗原は、組換えDNA、ミトコンドリアDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。したがって、当業者であれば、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含むいずれかのDNAが、その用語が本明細書において使用されるように「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解するであろう。本明細書における態様には、限定されることなく、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用が含まれ、これらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を誘発するために様々な組合せで構成されることは容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原は、生成および合成され得るか、または生体試料に由来し得ることは容易に明らかである。そのような生体試料には、限定されることなく、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体体液が含まれ得る。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「自己由来」は、後に個体に再導入される、同じ個体に由来する任意の材料を指すことを意味する。
【0042】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、T細胞による共刺激応答、例えば、限定されることなく、増殖を媒介する、T細胞上の同源の結合パートナーを指す。共刺激分子には、限定されることなく、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が含まれる。
【0043】
本明細書において使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせて、T細胞増殖、および/または重要な分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションをもたらすシグナルを指す。
【0044】
「疾患」は、動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物の「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が、障害がない場合よりも好ましくない健康状態である。未治療のままでも、障害は、必ずしも動物の健康状態をさらに低下させない。
【0045】
本明細書において使用される用語「ダウンレギュレーション」は、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の減少または排除を指す。
【0046】
「有効量」または「治療有効量」は、本明細書において区別なく使用され、特定の生物学的結果を達成するために有効な、または治療的もしくは予防的利益を提供するために有効な、本明細書において記載される化合物、製剤、材料または組成物の量を指す。そのような結果には、限定されることなく、細胞と接触した際に、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクターによって運ばれる核酸、または該核酸によってコードされるタンパク質、例えば、CARもしくはTCRの検出可能なレベルの変化を引き起こす量が含まれ得る。
【0047】
「コードする」は、生物学的プロセスにおいて、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)の定義された配列またはアミノ酸の定義された配列のいずれかを有する他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として機能する、ポリヌクレオチド内のヌクレオチド、例えば、遺伝子、cDNAまたはmRNAの特定の配列の固有の特性、ならびにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系内でタンパク質を産生する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、配列表に通常提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖はともに、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称され得る。
【0048】
本明細書において使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織もしくは系由来の任意の材料、または生物、細胞、組織もしくは系の内部で産生される任意の材料を指す。
【0049】
本明細書において使用される用語「エピトープ」は、免疫応答を誘発し、B細胞応答またはT細胞応答を誘発することができる、抗原上の小化学分子として定義される。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。ほとんどの抗原は多くのエピトープを有する。すなわち、それらは多価である。一般に、エピトープは、約10アミノ酸、または約10個の糖のサイズである。好ましくは、エピトープは、約4~18アミノ酸、さらに好ましくは約5~16アミノ酸、さらになお最も好ましくは6~14アミノ酸、さらに好ましくは約7~12アミノ酸、最も好ましくは約8~10アミノ酸である。当業者であれば、一般に、分子の特定の線状配列ではなく、全体的な三次元構造が抗原特異性の主な基準であり、したがって、これにより、あるエピトープが別のエピトープと区別されることを理解する。本開示に基づき、本発明において使用されるペプチドは、エピトープであり得る。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「外因性」は、生物、細胞、組織もしくは系から導入されるか、または生物、細胞、組織もしくは系の外部で産生される任意の材料を指す。
【0051】
本明細書において使用される用語「拡大増殖する」は、細胞(すなわち、T細胞)の数の増加のように、数が増加することを指す。一態様では、エクスビボで拡大増殖される細胞は、培養物中に最初に存在する数と比較して数が増加する(すなわち、T細胞の数の10、100、1000、1万、10万、100万などの増加)。別の態様では、エクスビボで拡大増殖される細胞は、培養物中の他の細胞型と比較して数が増加する(すなわち、他の細胞型の10%の増加と比較して、T細胞の10倍の増加)。本明細書において使用される用語「エクスビボ」は、生存生物(例えばヒト)から取り出され、該生物の外部で(例えば、培養皿、試験管またはバイオリアクター内で)増殖された細胞を指す。
【0052】
本明細書において使用される用語「発現」は、そのプロモーターによって促進される、特定のヌクレオチド配列の転写または翻訳として定義される。
【0053】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列(すなわち、コード配列)に機能的に連結された発現制御配列(すなわち、転写制御配列または転写制御プロモーター)を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含む。発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系内で供給され得る。発現ベクターには、当技術分野において公知のあらゆるもの、例えば、コスミドおよびプラスミド(例えば、裸の、またはリポソームに含まれる)が含まれる。組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)は、それらが組換えポリヌクレオチドを有するという点でベクターと見なすことができる。レトロウイルス粒子を産生しなければならないため、レトロウイルス粒子を産生する細胞は、核酸ベクター(すなわち、ウイルス粒子をコードする核酸、およびウイルス粒子に含有される導入遺伝子のヌクレオフェクション)またはウイルスベクター(すなわち、センダイウイルスによる、ウイルス粒子をコードする核酸、およびウイルス粒子に含有される導入遺伝子の送達)として送達され得る、レトロウイルス粒子のための発現ベクターを含み得る。
【0054】
本明細書において使用される場合、「宿主細胞」は、核酸ベクター自体を複製し、さらに多くの核酸ベクター自体(すなわち、さらに多くのプラスミド)を産生するように核酸ベクターによってトランスフェクトされた細胞である。プラスミドおよびベクター(核酸ベクター)産生のための宿主細胞の例には、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌が挙げられる。
【0055】
本明細書において使用される「同一性」は、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば、2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれの位置がアルギニンによって占められている場合、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアライメントで同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、多くの場合、割合として表される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致または同一の位置の数の一次関数である。例えば、2つの配列内の位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマー内の5つの位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一である。位置の90%(例えば、10のうちの9)が一致している、または同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。したがって、「改変」は、同一性がもはや同じではないようなアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の変化を指すことができる(すなわち、アミノ酸の置換、欠失または付加)。一般に、付加または欠失は、同一のアミノ酸またはヌクレオチドがアライメントされるように付加または欠失後の配列を再アライメントすることによる、欠失または付加によって引き起こされる、アミノ酸またはヌクレオチドのシフトの主要因である(すなわち、「同じ位置」を占める)。例えば、10の配列からの1アミノ酸の欠失は、アミノ酸欠失がどこにあるかにかかわらず、元の配列に対して90%の同一性を有するアミノ酸配列をもたらす。10アミノ酸配列内の第1のアミノ酸の欠失は、新しい第1のアミノ酸が参照配列内の第2のアミノ酸とアライメントされるため、0%の同一性をもたらさない。これに関連して、欠失は、比較のための配列内の欠失位置ではゼロ(すなわち、ヌルまたはプレースホルダー)として扱われるのに対して、付加は、参照配列内の位置ではゼロまたはヌルとして扱われる。
【0056】
本明細書において使用される用語「免疫応答」は、リンパ球が抗原性分子を異物として同定し、抗体の形成を誘導し、および/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する際に生じる、抗原に対する細胞応答として定義される。
【0057】
用語「免疫抑制性」は、全体的な免疫応答を低下させることを指すために本明細書において使用される。
【0058】
「単離された」は、天然の状態から変化または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0059】
本明細書において使用される「レンチウイルス」は、レトロウイルス科(Retroviridae)のスプーマレトロウイルス亜科(Spumaretrovirinae)の同じ名称の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点でレトロウイルスの中で独特である。それらは、宿主細胞のDNAにかなりの量の遺伝情報を送達することができるため、遺伝子送達ウイルスベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVはいずれもレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するウイルスベクターは、インビボで顕著なレベルの遺伝子移入を達成する手段を提供する。
【0060】
本明細書において使用される用語「改変された」は、本発明の分子または細胞の変化した状態または構造を意味する。分子は、化学的、構造的および機能的を含む多くの方法で改変され得る。細胞は、核酸の導入によって改変され得る。
【0061】
本明細書において使用される用語「調節する」は、治療もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、またはその他の点では同一であるが未治療の対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。該用語は、天然のシグナルもしくは応答を撹乱するか、または天然のシグナルもしくは応答に影響を与え、それによって、対象、好ましくはヒトにおいて有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0062】
本発明の文脈では、一般的に存在する核酸塩基について以下の略語が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0063】
用語「オリゴヌクレオチド」は、典型的には、短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、C、G)によって表される場合、これは、「U」が「T」を置き換えるという点でRNA配列(すなわち、A、U、C、G)も含むことが理解されるであろう。
【0064】
特に指定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いに縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするあらゆるヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはRNAという語句にはまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列があるバージョンではイントロンを含有し得る程度にイントロンが含まれ得る。
【0065】
免疫原性組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)注射もしくは皮下注入技術、静脈内(i.v.)注射もしくは静脈内注入技術、筋肉内(i.m.)注射もしくは筋肉内注入技術、または胸骨内注射もしくは胸骨内注入技術が含まれる。
【0066】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸は、ヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書において使用される核酸およびポリヌクレオチドは交換可能である。当業者は、核酸が、モノマー「ヌクレオチド」に加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的な知識を有する。モノマーヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドには、限定されることなく、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCRなどを使用した組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、当技術分野において利用可能な任意の手段によって、ならびに合成手段によって得られるあらゆる核酸配列が含まれるがそれに限定されるわけではない。
【0067】
本明細書において使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、区別なく使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において使用される場合、該用語は、例えば、当技術分野において一般的にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、多くの種類が存在する、当技術分野において一般にタンパク質と呼ばれる長鎖とを指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチドまたはそれらの組合せが含まれる。
【0068】
本明細書において使用される場合、「プロデューサー細胞」は、任意で、細胞がそれによって形質導入またはトランスフェクトされる、遺伝情報をコードする核酸を運ぶレトロウイルスベクター(すなわち、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸またはベクター)を含め、レトロウイルス粒子を産生するのに必要かつ十分な核酸ベクター(すなわち、プラスミドまたは核酸ベクター)(コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするベクターを含む)によってトランスフェクトされた細胞である。
【0069】
抗体またはCARに関して本明細書において使用される用語「特異的に結合する」とは、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないか、またはそれに結合しない抗体またはCARを意味する。例えば、1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体は、1つまたは複数の種由来のその抗原にも結合し得る。しかし、そのような交差種反応性は、抗体の特異的な分類をそれ自体変化させない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の様々な対立遺伝子形態にも結合し得る。しかし、そのような交差反応性は、抗体の特異的な分類をそれ自体変化させない。いくつかの例では、用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存し、例えば、抗体が、一般にタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識し、それに結合することを意味するように使用され得る。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」および抗体を含有する反応では、エピトープA(または遊離の標識されていないA)を含有する分子の存在は、抗体に結合した標識されたAの量を減少させる。
【0070】
用語「刺激」とは、刺激分子(例えばTCR/CD3複合体)とその同源のリガンドとの結合によって誘導され、それによって、シグナル伝達事象、例えば、限定されることなく、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を媒介する一次応答を意味する。刺激は、特定の分子の発現の変化、例えば、TGF-ベータのダウンレギュレーション、または細胞骨格構造の再編成などを媒介することができる。
【0071】
「刺激分子」は、該用語が本明細書において使用される場合、抗原提示細胞上に存在する同源の刺激リガンドと特異的に結合する、T細胞上の分子を意味する。
【0072】
本明細書において使用される「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の同源の結合パートナー(本明細書において「刺激分子」と呼ばれる)と特異的に結合し、それによって、限定されることなく、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含む、T細胞による一次応答を媒介することができるリガンドを意味する。刺激リガンドは、当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドを負荷したMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0073】
用語「対象」は、免疫応答が誘発され得る生存生物(例えば哺乳動物)を含むことが意図される。本明細書において使用される「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物には、例えば、家畜およびペット、例えば、ヒツジ哺乳動物、ウシ哺乳動物、ブタ哺乳動物、イヌ哺乳動物、ネコ哺乳動物およびマウス哺乳動物が含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0074】
本明細書において使用される場合、用語「T細胞受容体」または「TCR」は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する、膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合遺伝子複合体分子に結合した抗原の認識を担う。TCRは、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるが、一部の細胞では、TCRは、ガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、構造的に類似しているが、異なる解剖学的位置および機能を有するアルファ/ベータ形態およびガンマ/デルタ形態で存在し得る。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変ドメインおよび定常ドメインから構成される。いくつかの態様では、TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞およびガンマデルタT細胞を含む、TCRを含むいずれかの細胞上で改変され得る。
【0075】
用語「力価」は、滴定によって決定される溶液の濃度を指し、ウイルス学では、溶液中の感染性ウイルス粒子の濃度を指し、濃度は、ウイルスに感染しているか、またはウイルス粒子、もしくはウイルス粒子の産生に必要なタンパク質をコードする核酸、核酸ベクターによってトランスフェクトされたプロデューサー細胞の集団から得られる。プロデューサー細胞の集団から得られた力価は、任意で、通常は遠心分離によってそこから濃縮され得る。
【0076】
本明細書において使用される用語「治療的」は、治療または予防を意味する。治療的効果は、疾患状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0077】
本明細書において使用される用語「トランスフェクトされた」、「形質転換された」または「形質導入された」は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」、「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸によってトランスフェクト、形質転換または形質導入されたものである。該細胞には、初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0078】
本明細書において使用される場合、疾患を「治療する」とは、対象が経験する疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低下させることを意味する。
【0079】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る物質の組成物である。限定されることなく、線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含む多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、用語「ベクター」には、自律複製プラスミドまたは自律複製ウイルスが含まれる。該用語にはまた、細胞への核酸の移入を促進する非プラスミド化合物および非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどが含まれると解釈されるべきである。ベクターは、「ベクター」に先行する修飾語句、すなわち、「核酸ベクター」対「ウイルスベクター」によって互いに区別され得(すなわち、プラスミド対ウイルス)、すなわち、「核酸ベクター」はプラスミドを包含するがウイルスを包含せず、すなわち、「ウイルスベクター」はウイルスを包含するがプラスミドを包含しない(ウイルスは、発現ベクターであるが、核酸または導入遺伝子を含むにもかかわらず、プラスミド自体または核酸ベクター自体ではないと理解される)。ウイルスベクターの例には、限定されることなく、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターなどが挙げられる。
【0080】
「ウイルス粒子(virus particle)」、「ウイルス粒子(viral particle)」、または本明細書において時として使用される「粒子」は、ウイルスの感染形態を構成し、タンパク質シェルまたはエンベロープタンパク質によって囲まれたRNAまたはDNA(レトロウイルスの場合はRNA)からなる完全なウイルス粒子を意味する。タンパク質シェル、またはエンベロープタンパク質の完全な構成は、カプシドとして知られており、不活性化されていないタンパク質の場合、それらの複製、挿入、感染または病原性に必要なものを含む、ウイルス粒子および他のタンパク質によって運ばれる遺伝情報を含む、粒子の内部コアを保護する。本明細書において使用される「ウイルスベクター」または「ベクター粒子」は、標的細胞に送達される単離された核酸または導入遺伝子を含むウイルス粒子であり、単離された核酸は、任意で、標的細胞内で発現されるキメラ抗原受容体をコードすることによって、標的細胞の遺伝現象、エピジェネティクスまたはタンパク質発現を変化させる。ウイルスベクターでは、エンベロープタンパク質は、標的細胞に送達される単離された核酸または導入遺伝子をカプセル化することができる。
【0081】
範囲: 本開示全体を通して、本発明の様々な局面は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜および簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲、およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0082】
B. 方法
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞(例えばT細胞)を生成するための組成物および方法を提供する。一局面では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞またはその前駆細胞に送達するための方法を含む。該方法は、免疫細胞またはその前駆細胞に、CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを導入する工程を含む。ある特定の態様では、細胞に導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターの量よりも多い。
【0083】
本発明は、当技術分野において公知の任意のキメラ抗原受容体(CAR)と、本明細書において他の箇所で詳細に説明されているものとを含むと解釈されるべきである。
【0084】
一局面では、本発明は、CAR T細胞の集団を生成するための方法を含む。該方法は、T細胞またはその前駆細胞に、CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを導入する工程を含む。ある特定の態様では、細胞に導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターの量よりも多い。
【0085】
ある特定の態様では、導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターの量の少なくとも2倍(×)、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×または20×である。
【0086】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のヌクレオチド配列によってコードされる。ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0087】
ある特定の態様では、エンベロープタンパク質の発現は、転写調節エレメントの制御下にある。ある特定の態様では、転写調節エレメントは、真核生物プロモーターである。ある特定の態様では、転写調節エレメントは、構成的プロモーターである。
【0088】
ある特定の態様では、ベクターは、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0089】
一局面では、免疫細胞の異種集団に核酸配列を送達するための方法が本明細書において提供される。該方法は、免疫細胞の異種集団を、核酸配列を含むコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させる工程を含む。いくつかの態様では、核酸配列は、CARまたはTCRをコードする。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子は、SEQ ID NO:1に記載の核酸配列によってコードされるコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をさらに含む。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む。
【0090】
いくつかの態様では、免疫細胞、または免疫細胞の異種集団は、T細胞を含む。いくつかの態様では、T細胞は、CD8+ T細胞を含む。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+ T細胞を含む。いくつかの態様では、T細胞は、制御性T細胞を含む。いくつかの態様では、免疫細胞の異種集団は、CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞を含む。いくつかの態様では、免疫細胞の異種集団は、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞を含む。
【0091】
本明細書において開示される方法は、CARを含む細胞のバッチ生産のために大規模化され得る。細胞はまた、懸濁状態での成長のために、および/または無血清培養物中で成長するように適合させることができる。該方法、および該方法によって作製された組成物(例えばCAR T細胞)は、GMPに準拠することもできる。
【0092】
C. コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質、および該糖タンパク質を含有する粒子
本発明は、ウイルス粒子などの粒子、およびコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む細胞を含む、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を産生および使用するための組成物および方法を提供する。粒子およびコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質では、それらを産生する細胞(すなわち、「プロデューサー細胞」)に対する毒性が低下しており、それらに感染している細胞(すなわち、「標的細胞」)の形質導入効率が増大している。本発明はまた、ウイルスによる細胞の感染中に細胞に送達される、核酸導入遺伝子(例えばCAR)をさらに含む粒子であるウイルスベクター粒子を提供する。コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸およびベクターも本発明に含まれる。コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸またはベクターを含むプロデューサー細胞も含まれ、プロデューサー細胞は、任意で、ウイルス粒子またはウイルスベクター粒子を産生する。
【0093】
いくつかの態様では、ウイルス粒子は、自己不活性化であり得る。自己不活性化ウイルス粒子は、初回のウイルス複製を過ぎるとウイルス転写を防止することができる。その結果、自己不活性化粒子は、一度だけ宿主ゲノム(例えば哺乳動物ゲノム)に感染することができ、その中の遺伝情報は、一度だけ宿主ゲノム(例えば哺乳動物ゲノム)に組み込まれることができるが、それ以上は感染することができない。したがって、自己不活性化粒子は、複製能のあるウイルスを作り出すリスクを大幅に低下させることができる。
【0094】
別の局面では、該粒子を含む組成物が提供される。該粒子およびコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質では、それらを産生する細胞に対する毒性が低下しているため、該粒子を含む組成物は、他のレトロウイルス粒子を含む組成物、およびVSV-Gエンベロープタンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む他のエンベロープタンパク質を有する他のレトロウイルス粒子を含む組成物を含む、他のウイルス粒子を含む組成物よりも高い力価の粒子を有することができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、ウイルス力価の増大は、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質、それをコードする核酸またはベクター、およびそれを含むウイルス粒子の毒性の低下に起因すると思われ、これにより、プロデューサー細胞が、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む粒子を産生する同じ細胞よりも高濃度のウイルス粒子を作製することが可能になる。したがって、組成物は、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化された粒子を有する組成物と比較して、高い力価の成熟粒子および未成熟粒子、高い力価の感染性粒子、ならびに粒子内に担持された高い力価の遺伝情報(例えばCAR)を有する。
【0095】
該粒子およびコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質では、それらを産生する細胞に対する毒性が低下しているため、該粒子を含む組成物は、他のレトロウイルス粒子を含む組成物、およびVSV-Gエンベロープタンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む他のエンベロープタンパク質を有する他のレトロウイルス粒子を含む組成物を含む、他のウイルス粒子を含む組成物よりも高い形質導入効率を有することができる。したがって、組成物は、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化された粒子を有する組成物よりも高い形質導入効率を有する。
【0096】
別の局面では、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質は、該粒子またはウイルス粒子を標的細胞に侵入させるのに効果が高い。したがって、該粒子を含む組成物は、他のレトロウイルス粒子を含む組成物、およびVSV-Gエンベロープタンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む他のエンベロープタンパク質を有する他のレトロウイルス粒子を含む組成物を含む、他のウイルス粒子を含む組成物よりも高い形質導入効率を有することができる。したがって、組成物は、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化された粒子を有する組成物よりも高い形質導入効率を有する。
【0097】
別の局面では、該粒子およびコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質では毒性が低下しているため、該粒子、および該粒子を含む組成物は、該粒子または組成物と接触している細胞および生物に対して、VSV-Gエンベロープタンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む他のレトロウイルス粒子を含む他のレトロウイルス粒子を含む組成物および粒子を含む、他のウイルス粒子を含む組成物よりも低い毒性(すなわち、低いインビボ毒性)を有することができる。細胞および生物に対する毒性のこの低下は、同等の力価の粒子に対する毒性の測定値を定量することによって測定され得る。あるいは、細胞および生物に対する毒性のこの低下は、同等の毒性の測定値を有することによって測定され得るが、毒性の同等の測定値は、別のエンベロープタンパク質、例えば、VSV-Gエンベロープタンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む粒子よりも高い力価の、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む粒子から得られる。
【0098】
したがって、本発明の組成物は、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化された粒子を有する組成物よりも高い形質導入効率を有する。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、形質導入効率の増大は、毒性が低くなれば、ウイルス粒子に感染したさらに多くの細胞が、別のウイルス粒子、例えば、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化されたものに感染した細胞よりも生存するという点で、毒性の低下に起因する可能性がある。
【0099】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むかまたはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなる。ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質アミノ酸配列は、1~10個、1~20個、1~30個、1~40個、または1~50個のその改変(付加、欠失または置換を含む)を有する。
【0100】
一局面では、単離されたコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質が提供され、該タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列; 90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するアミノ酸配列; 1~10個のそのアミノ酸改変(付加、欠失または置換を含む)を有するアミノ酸配列; 1~20個のそのアミノ酸改変を有するアミノ酸配列; 1~30個のそのアミノ酸改変を有するアミノ酸配列; 1~40個のそのアミノ酸改変を有するアミノ酸配列; 1~50個のそのアミノ酸改変を有するアミノ酸配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のそのアミノ酸改変を有するアミノ酸配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のそのアミノ酸改変を有するアミノ酸配列である。
【0101】
一局面では、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列によってコードされる単離されたコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質が提供される。ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のヌクレオチド配列; 90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0102】
異なるエンベロープタンパク質または粒子(すなわち、VSV-Gまたは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質)を発現するプロデューサー細胞から得られた同じ測定値と比較して、プロデューサー細胞上のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質または該タンパク質を含有する粒子の毒性がより低いことは、1)総プロデューサー細胞数がより多いこと、2)該粒子をコードするプラスミドのトランスフェクションに関する陽性マーカーもしくはレポーター遺伝子を発現するプロデューサー細胞数がより多いこと(すなわち、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸もしくは核酸ベクターが、トランスフェクトされた細胞が蛍光を発するようにGFPをさらにコードしているか、またはウイルスベクター粒子によってカプセル化された核酸が、感染後に感染細胞が蛍光を発するようにGFPなどのレポーター遺伝子をコードしている)、3)トランスフェクトされた各細胞内の陽性マーカーもしくはレポーター遺伝子のレベルがより高いこと(すなわち、GFPが陽性マーカーまたはレポーター遺伝子である場合、細胞1個当たりの蛍光平均がより大きいこと)、4)細胞死の測定値がより低いこと、または5)プロデューサー細胞内の非機能性粒子もしくは未成熟粒子に対する感染性粒子の機能力価、数もしくは比がより高いことによって、示され得る。
【0103】
プロデューサー細胞、およびウイルス粒子に感染した細胞を含む細胞では、細胞死の測定値は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子を発現するようにトランスフェクトされたか、または代わりにVSV-Gを含む同じウイルスに感染した同じ細胞の10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、103分の1、104分の1、105分の1、106分の1、107分の1、または108分の1であり得る。プロデューサー細胞、およびウイルス粒子に感染した細胞を含む細胞では、細胞死の測定値は、いくつかの態様では、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされたか、または代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む同じウイルスに感染した同じ細胞の10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、103分の1、104分の1、105分の1、106分の1、107分の1、または108分の1である。
【0104】
プロデューサー細胞、およびウイルス粒子に感染した細胞を含む細胞の総数は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子を発現するようにトランスフェクトされたか、または代わりにVSV-Gを含む同じウイルスに感染した同じ細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍であり得る。いくつかの態様では、プロデューサー細胞、およびウイルス粒子に感染した細胞を含む細胞の総数は、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされたか、または代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の糖タンパク質)を含む同じウイルスに感染した同じ細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0105】
いくつかの態様では、ウイルス粒子をコードする成分のトランスフェクションに関する陽性マーカーまたはレポーター遺伝子を発現するプロデューサー細胞の数は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子を発現するようにトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。いくつかの態様では、ウイルス粒子をコードする成分のトランスフェクションに関する陽性マーカーまたはレポーター遺伝子を発現するプロデューサー細胞の数は、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0106】
いくつかの態様では、ウイルス粒子内の導入遺伝子上に陽性マーカーまたはレポーター遺伝子を発現する細胞の数は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子に感染した同じ細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。いくつかの態様では、ウイルス粒子内の導入遺伝子上に陽性マーカーまたはレポーター遺伝子を発現する細胞の数は、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)に感染した同じプロデューサー細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0107】
いくつかの態様では、ウイルス粒子をコードする成分のトランスフェクションに関する陽性マーカーの量は、トランスフェクトされた細胞1個当たり、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子を発現するようにトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。いくつかの態様では、ウイルス粒子をコードする成分のトランスフェクションに関する陽性マーカーの量は、トランスフェクトされた細胞1個当たり、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0108】
いくつかの態様では、感染細胞内の導入遺伝子由来の陽性マーカーの量は、感染細胞1個当たり、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子によってカプセル化された粒子に感染した同じ細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。いくつかの態様では、感染細胞内の導入遺伝子由来の陽性マーカーの量は、トランスフェクトされた細胞1個当たり、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされた同じ感染細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0109】
いくつかの態様では、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞の数は、感染細胞1個当たり、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子によってカプセル化された粒子に感染した同じ細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞の数は、感染細胞1個当たり、代わりに別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされた同じ感染細胞の10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0110】
いくつかの態様では、粒子力価は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子またはコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)をコードする核酸ベクターおよび核酸によってトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞から得られたウイルス力価よりも高いが、これは、該粒子をコードする核酸ベクターおよび核酸、ならびに該粒子自体およびエンベロープ糖タンパク質自体では、プロデューサー細胞に対する毒性が低いためである。いくつかの態様では、粒子力価は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子または別のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)を発現するようにトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞から得られたものの10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍または108倍である。
【0111】
いくつかの態様では、粒子を産生する細胞内の全粒子(非感染性粒子または未成熟粒子を含む)に対する感染性粒子の割合は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子またはコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)をコードする核酸ベクターおよび核酸によってトランスフェクトされた同じ細胞内の同じ割合よりも高いが、これは、該粒子をコードする核酸ベクターおよび核酸、ならびに該粒子自体およびエンベロープ糖タンパク質自体では、プロデューサー細胞に対する毒性が低いためである。いくつかの態様では、感染性粒子の割合は、代わりにVSV-Gエンベロープ化粒子またはコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質含有粒子(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の粒子または糖タンパク質)をコードする核酸ベクターおよび核酸によってトランスフェクトされた同じ細胞から得られた感染性粒子の割合よりも2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、30×、100×、300×、1000×高い。
【0112】
いくつかの態様では、コドン最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む粒子の形質導入効率は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む粒子よりも高い。いくつかの態様では、該粒子の形質導入効率は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質またはコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の糖タンパク質)を含む粒子よりも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、30×、100×、300×、1000×高い。
【0113】
いくつかの態様では、コドン最適化されたコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む粒子を含む組成物の形質導入効率は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質または第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む粒子を含む組成物の形質導入効率よりも高い。いくつかの態様では、該粒子を含む組成物の形質導入効率は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質またはコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質(例えば、第1世代、第2世代または第3世代の糖タンパク質)を含む粒子を含む組成物の形質導入効率よりも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、30×、100×、300×、1000×高い。いくつかの態様では、形質導入効率は、同じ細胞を同じ力価で感染させ、感染した細胞の数を測定することによって測定される。いくつかの態様では、形質導入効率は、同じ細胞を異なる力価で感染させ、どの力価が同じ割合の感染細胞を達成するかを決定することによって測定される。
【0114】
そのような態様では、形質導入効率が測定される標的細胞は、組成物(すなわち、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質もしくは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含むかまたはそれらによってカプセル化された粒子の組成物と比較して、本開示の粒子の組成物)にわたって同じであり得る。ある特定の態様では、形質導入効率が測定される標的細胞は、HEK293-T細胞である。いくつかの態様では、形質導入効率は、具現化された粒子を含む具現化された組成物を作製するために使用されたプロデューサー細胞から得られた同じ量のタンパク質から決定され、同じ条件下でトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞から得られた公知の粒子を含有する組成物と比較される。いくつかの態様では、形質導入効率は、具現化された粒子を含む具現化された組成物を作製するために使用されたプロデューサー細胞から得られた同じ体積の上清から決定され、同じ条件下でトランスフェクトされた同じプロデューサー細胞から得られた公知の粒子を含有する組成物と比較される。いくつかの態様では、この体積は、ウイルス粒子をペレット化させる条件下で遠心分離され、次いで、同じ体積に再懸濁され、したがって、具現化された粒子を濃縮し、したがって、形質導入効率の比較のために公知の粒子(すなわち、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質もしくは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含有するかまたはそれらによってエンベロープ化された粒子)を同様に濃縮する。いくつかの態様では、具現化された粒子の組成物の該体積は、濃縮され(すなわち、凍結乾燥、蒸発などによって)、公知の粒子(すなわち、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質もしくは第1世代、第2世代もしくは第3世代のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含有するかまたはそれらによってエンベロープ化された粒子)の組成物は、形質導入効率の比較を提供するために同一の方法で濃縮される。
【0115】
ウイルスを遠心分離または濃縮する方法は、例えば、参照により組み入れられる、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Joseph F.Sambrook and David W.Russell,eds.; 3rd Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2001)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Michael R.Green and Joseph F.Sambrook,eds.; 4th Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2012)に見出され得る。
【0116】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むレトロウイルス粒子には、限定されることなく、ベルパオウイルス科(Belpaoviridae)、メタウイルス科(Metaviridae)、シュードウイルス科(Pseudoviridae)、レトロウイルス科(例えばHIV)、カリモウイルス科(Caulimoviridae)(例えば、VII群ウイルス科)を含むオルテルウイルス目(Ortervirales); アルファレトロウイルス(Alpharetrovirus)属、ベータレトロウイルス(Betaretrovirus)属、ガンマレトロウイルス(Gammaretrovirus)属、デルタレトロウイルス属、イプシロンレトロウイルス属、レンチウイルス属を含むオルソレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae); ボビスプーマウイルス(Bovispumavirus)属、エクイスプーマウイルス(Equispumavirus)属、フェリスプーマウイルス(Felispumavirus)属、プロシミイスプーマウイルス(Prosimiispumavirus)属、シミイスプーマウイルス(Simiispumavirus)属を含むスプーマレトロウイルス亜科が含まれる。好ましい態様には、オルソレトロウイルス亜科粒子、アルファレトロウイルス粒子、ベータレトロウイルス粒子、デルタレトロウイルス粒子、イプシロンレトロウイルス粒子、ガンマレトロウイルス粒子、レンチウイルス粒子、スプーマレトロウイルス亜科粒子、ボビスプーマウイルス粒子、エクイスプーマウイルス粒子、フェリスプーマウイルス粒子、プロシミイスプーマウイルス粒子およびシミイスプーマウイルス粒子が含まれる。いくつかの態様では、レトロウイルス粒子は、前記の目、科、亜科、属の異なるメンバーのエレメント、タンパク質および酵素に由来する。これに関して、いくつかの態様では、粒子は、単一の亜科または属に限定されず、複数の異なる亜科または属からのエレメント、タンパク質、酵素および核酸から構成され得る。他の態様では、エレメント、タンパク質、酵素および核酸は、同じ科、同じ亜科、または同じ属に由来する。
【0117】
ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含有するレトロウイルス粒子は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含むレンチウイルスであるかまたはレンチウイルスに由来するレンチウイルスベクターを含む。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、例えば、CARをコードする核酸の遺伝子移入および発現のためにインビボおよびエクスビボで使用され得る(例えば、米国特許第5,994,136号を参照)。
【0118】
D. キメラ抗原受容体
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞またはその前駆体、例えば、改変T細胞のための組成物および方法を提供する。いくつかの態様では、免疫細胞は、CARをコードする遺伝情報(すなわち、導入遺伝子)を運ぶコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクターによって形質導入されることによって、CARを発現するように遺伝子改変されている。本明細書におけるCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。
【0119】
抗原結合ドメインは、細胞内での発現のために、CARの別のドメイン、例えば、いずれも本明細書において他の箇所に記載される膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインに機能的に連結され得る。一態様では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸に機能的に連結され、細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列にさらに機能的に連結される。
【0120】
本明細書において記載される抗原結合ドメインは、本明細書において記載される膜貫通ドメインのいずれか、本明細書において記載される細胞内ドメインもしくは細胞質ドメインのいずれか、またはCARに含めることができる、本明細書において記載される他のドメインのいずれかと組み合わせられ得る。本明細書における主題CARはまた、本明細書において記載されるヒンジドメインを含むことができる。本明細書における主題CARはまた、本明細書において記載されるスペーサードメインを含むことができる。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインの各々は、リンカーによって分離されている。
【0121】
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、炭水化物および糖脂質を含む特異的標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域である。いくつかの態様では、CARは、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含む。標的抗原は、標的細胞に関連するいずれかの種類のタンパク質またはそのエピトープを含み得る。例えば、CARは、標的細胞の特定の疾患状態を示す、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含み得る。
【0122】
ある特定の態様では、標的細胞抗原は腫瘍関連抗原(TAA)である。腫瘍関連抗原(TAA)の例には、限定されることなく、分化抗原、例えば、MART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、および腫瘍特異的多系列抗原、例えば、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15; 過剰発現された胚抗原、例えば、CEA; 過剰発現された癌遺伝子および変異した腫瘍抑制遺伝子、例えば、p53、Ras、HER-2/neu; 染色体転座から生じる固有の腫瘍抗原; 例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR; ならびにウイルス抗原、例えば、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVAおよびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7が挙げられる。他の大きなタンパク質系抗原には、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSが含まれる。好ましい態様では、CARの抗原結合ドメインは、限定されることなく、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、PSCA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCR、EGFR、IL-13Ra2、葉酸受容体-アルファ、TnMUC1、グリピカン-2(GPC2)、癌細胞関連GPC2、ムチン1(MUC-1)、およびグリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)結合GDNFファミリーα受容体4(GFRα4; GFRアルファ4)などを含む抗原を標的とする。
【0123】
ある特定の態様では、標的細胞抗原はCD4である。
【0124】
標的とされる所望の抗原に応じて、CARは、所望の抗原標的に特異的な適切な抗原結合ドメインを含むように操作され得る。例えば、CD19が、標的とされる所望の抗原である場合、CARに組み込むための抗原結合部分として、CD19に対する抗体を使用することができる。
【0125】
本明細書において記載されるように、標的細胞上の特異的標的抗原に対する親和性を有する本開示のCARは、標的特異的結合ドメインを含み得る。いくつかの態様では、標的特異的結合ドメインはマウス標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインはマウス起源のものである。いくつかの態様では、標的特異的結合ドメインはヒト標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインはヒト起源のものである。
【0126】
いくつかの態様では、本開示のCARは、1つまたは複数の標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有することができる。いくつかの態様では、CARは、標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を有することができる。そのような態様では、CARは、二重特異性CARまたは多重特異性CARである。いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、同じ標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同じ標的抗原に対して親和性を有する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原の異なるエピトープに結合することができる。複数の標的特異的結合ドメインがCARに存在する場合、結合ドメインは、タンデムに配置され得、リンカーペプチドによって分離されていてもよい。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARでは、結合ドメインは、オリゴペプチドリンカーもしくはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域または膜ヒンジ領域を介して、単一のポリペプチド鎖上で互いに共有結合している。
【0127】
抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、限定されることなく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、およびそれらの任意の断片を含むことができる。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン部分は、哺乳動物抗体またはその断片を含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面に存在する抗原の種類および数に依存し得る。
【0128】
本明細書において使用される場合、用語「一本鎖可変断片」または「scFv」は、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合した、免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接結合されるか、またはVHのN末端をVLのC末端と、もしくはVHのC末端をVLのN末端と接続する、ペプチドをコードするリンカーによって結合される。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン(例えばCD19結合ドメイン)は、N末端からC末端に向かってVH-リンカー-VLの構成を有するscFvを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に向かってVL-リンカー-VHの構成を有するscFvを含む。当業者であれば、本明細書において使用するための適切な構成を選択することができるであろう。
【0129】
リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが豊富であるとともに、溶解性のためにセリンまたはトレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。リンカーの非限定的な例は、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる、Shen et al.,Anal.Chem.80(6):1910-1917(2008)および国際公開公報第2014/087010号に開示されている。限定されることなく、グリシンセリン(GS)リンカー、例えば、(GS)
n、(GSGGS)
n(SEQ ID NO:5)、(GGGS)n(SEQ ID NO:6)、および(GGGGS)n(SEQ ID NO:7)を含む様々なリンカー配列が当技術分野において公知であり、式中、nは、少なくとも1の整数を表す。例示的なリンカー配列は、限定されることなく、
などを含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者であれば、本明細書において使用するための適切なリンカー配列を選択することができるであろう。一態様では、抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、核酸配列
によってコードされ得るアミノ酸配列
を有するリンカー配列によって分離されている。
【0130】
scFvタンパク質は、定常領域の除去、およびリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston,et al.(Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879-5883,1988)によって記載されているように、VHおよびVLをコードする配列を含む核酸から発現され得る。米国特許第5,091,513号、米国特許第5,132,405号および米国特許第4,956,778号ならびに米国特許出願公開第20050196754号および米国特許出願公開第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニストscFvが記載されている(例えば、Zhao et al.,Hybridoma(Larchmt)2008 27(6):455-51; Peter et al.,J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12; Shieh et al.,J.Imunol.2009 183(4):2277-85; Giomarelli et al.,Thromb Haemost 2007 97(6):955-63; Fife eta.,J.Clin.Invst.2006 116(8):2252-61; Brocks et al.,Immunotechnology 1997 3(3):173-84; Moosmayer et al.,Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照。刺激活性を有するアゴニストscFvが記載されている(例えば、Peter et al.,J.Biol.Chem.2003 25278(38):36740-7; Xie et al.,Nat.Biotech.1997 15(8):768-71; Ledbetter et al.,Crit.Rev.Immunol.1997 17(5-6):427-55; Ho et al.,BioChim.Biophys.Acta.2003 1638(3):257-66を参照)。
【0131】
本明細書において使用される場合、「Fab」は、抗原に結合するが一価であり、Fc部分を有しない、抗体構造の断片を指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFab断片と、Fc断片とを生じる(例えば、重(H)鎖定常領域; 抗原に結合しないFc領域)。
【0132】
本明細書において使用される場合、「F(ab')2」は、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成された抗体断片を指し、この断片は、2つの抗原結合(ab')(二価)領域を有し、各(ab')領域は、2つの別個のアミノ酸鎖、抗原に結合するためのS-S結合によって連結されたH鎖の一部および軽(L)鎖を含み、残りのH鎖部分は一緒に連結されている。「F(ab')2」断片は、2つの個々のFab'断片に分割され得る。
【0133】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される同じ種に由来し得る。例えば、ヒトに使用する場合、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体またはその断片を含むことができる。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される異なる種に由来し得る。例えば、ヒトに使用する場合、CARの抗原結合ドメインは、マウス抗体またはその断片を含むことができる。
【0134】
膜貫通ドメイン
本明細書におけるCARは、CARの抗原結合ドメインをCARの細胞内ドメインに接続する膜貫通ドメインを含み得る。主題CARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆体)の原形質膜にまたがることができる領域である。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば真核細胞膜に挿入するためのものである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間に介在する。
【0135】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CAR内のドメインのうちの1つまたは複数と天然に会合している。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、1つまたは複数のアミノ酸置換によって選択または改変され得る。
【0136】
膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質、例えばI型膜貫通タンパク質に由来し得る。供給源が合成である場合、膜貫通ドメインは、細胞膜へのCARの挿入を容易にする任意の人工配列、例えば人工疎水性配列であり得る。本明細書において特に使用される膜貫通ドメインの例には、限定されることなく、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、CD154(CD40L)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9に由来する(すなわち、少なくとも膜貫通領域を含む)膜貫通ドメイン、およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)(キラー細胞免疫グロブリン様受容体としても知られる)に由来する膜貫通ドメインが挙げられる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは合成であり得、その場合、ロイシンおよびバリンなどの主に疎水性の残基を含む。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出されるであろう。
【0137】
本明細書において記載される膜貫通ドメインは、本明細書において記載される抗原結合ドメインのいずれか、本明細書において記載される細胞内ドメインのいずれか、または主題CARに含めることができる、本明細書において記載される他のドメインのいずれかと組み合わせられ得る。
【0138】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。本明細書における主題CARはまた、ヒンジ領域を含むことができる。CARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する親水性領域である。いくつかの態様では、このドメインは、CARの適切なタンパク質フォールディングを促進する。ヒンジ領域は、CARの任意の成分である。ヒンジ領域は、抗体のFc断片、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジ配列、またはそれらの組合せから選択されるドメインを含み得る。ヒンジ領域の例には、限定されることなく、CD8aヒンジ、3つのグリシン(Gly)ほど小さくなり得るポリペプチドから作製された人工ヒンジ、ならびにIgG(ヒトIgG4など)のCH1ドメインおよびCH3ドメインが挙げられる。
【0139】
いくつかの態様では、本開示の主題CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続し、次いで、膜貫通ドメインが細胞内ドメインに接続するヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、好ましくは、抗原結合ドメインが標的細胞上の標的抗原を認識し、それに結合するのを補助することができる(例えば、Hudecek et al.,Cancer Immunol.Res.(2015)3(2):125-135を参照)。いくつかの態様では、ヒンジ領域は可撓性ドメインであり、したがって、抗原結合ドメインが、腫瘍細胞などの細胞上の標的抗原の特異的な構造および密度を最適に認識する構造を有することを可能にする(Hudecek et al.,前記)。ヒンジ領域の可撓性は、ヒンジ領域が多くの異なる立体配座をとることを可能にする。
【0140】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、受容体に由来するヒンジ領域ポリペプチド(例えば、CD8由来ヒンジ領域)である。
【0141】
ヒンジ領域は、約4アミノ酸~約50アミノ酸、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約15aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、または約40aa~約50aaの長さを有することができる。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、5aa超、10aa超、15aa超、20aa超、25aa超、30aa超、35aa超、40aa超、45aa超、50aa超、55aa超またはそれ以上の長さを有することができる。
【0142】
好適なヒンジ領域は、容易に選択され得、いくつかの好適な長さのいずれか、例えば、1アミノ酸(例えばGly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸、例えば、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸であり得、1、2、3、4、5、6または7アミノ酸であり得る。好適なヒンジ領域は、20アミノ酸超(例えば、30、40、50、60またはそれ以上のアミノ酸)の長さを有することができる。
【0143】
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー(G)
n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)
n、(GSGGS)
n(SEQ ID NO:5)および(GGGS)
n(SEQ ID NO:6)を含み、式中、nは、少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野において公知の他の可撓性リンカーを含む。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーを使用することができる。GlyおよびSerはともに比較的構造化されておらず、したがって、成分間の中立なテザーとして機能することができる。グリシンポリマーを使用することができる。グリシンは、アラニンよりもはるかに多くのphi-psi空間にアクセスし、さらに長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限されない(例えば、Scheraga,Rev.Computational.Chem.(1992)2:73-142を参照)。例示的なヒンジ領域は、限定されることなく、
などを含むアミノ酸配列を含むことができる。
【0144】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域アミノ酸配列は、当技術分野において公知である。例えば、Tan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87(1):162-166; およびHuck et al.,Nucleic Acids Res.(1986)14(4):1779-1789を参照されたい。非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含むことができる:
(例えば、Glaser et al.,J.Biol.Chem.(2005)280:41494-41503を参照);
など。
【0145】
ヒンジ領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3またはヒトIgG4のヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。一態様では、ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含み得る。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、ヒンジ領域が配列EPKSCDKTYTCPPCP(SEQ ID NO:28)を含むように、Tyrによって置換され得る。例えば、Yan et al.,J.Biol.Chem.(2012)287:5891-5897を参照されたい。一態様では、ヒンジ領域は、ヒトCD8に由来するアミノ酸配列、またはその変異体を含み得る。
【0146】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本明細書における主題CARはまた、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」および「細胞内ドメイン」は、本明細書において区別なく使用される。CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現される細胞(例えば免疫細胞)のエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化を担う。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば免疫細胞)にその特殊な機能、例えば、標的細胞の傷害および/または破壊を行うように指示する。
【0147】
本明細書において使用するための細胞内ドメインの例には、限定されることなく、表面受容体の細胞質部分、共刺激分子、およびT細胞内で協調して作用してシグナル伝達を開始する任意の分子、ならびにこれらのエレメントの任意の誘導体または変異体、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0148】
細胞内シグナル伝達ドメインの例には、限定されることなく、T細胞受容体複合体のζ鎖、またはそのホモログのいずれか、例えば、η鎖、FcsRIγ鎖およびβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖など、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびにT細胞形質導入に関与する他の分子、例えば、CD2、CD5およびCD28が挙げられる。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、細胞質受容体を有する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)、およびそれらの組合せであり得る。
【0149】
一態様では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、TNFRスーパーファミリータンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)由来の少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、CD2、CD3、CD8に由来する細胞内ドメイン、またはそれらの誘導体もしくは変異体、同じ機能的能力を有するそれらの任意の合成配列、ならびにそれらの任意の組合せなどの1つまたは複数の共刺激分子の任意の部分もしくは全体を含む。
【0150】
細胞内ドメインの他の例には、限定されることなく、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(Fc Epsilon RIb)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9と特異的に結合するリガンド、本明細書において記載される他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、変異体または断片、同じ機能的能力を有する、共刺激分子の任意の合成配列、およびそれらの任意の組合せを含む1つまたは複数の分子または受容体由来の断片またはドメインが挙げられる。
【0151】
細胞内ドメインの追加の例には、限定されることなく、CD3、B7ファミリー共刺激受容体および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1世代、第2世代および第3世代T細胞シグナル伝達タンパク質を含むいくつかの種類の様々な他の免疫シグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられるがそれに限定されるわけではない(例えば、Park and Brentjens,J.Clin.Oncol.(2015)33(6):651-653を参照)。さらに、細胞内シグナル伝達ドメインには、NK細胞およびNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン(例えば、Hermanson and Kaufman,Front.Immunol.(2015)6:195を参照)、例えば、NKp30(B7-H6)(例えば、Zhang et al.,J.Immunol.(2012)189(5):2290-2299を参照)、およびDAP 12(例えば、Topfer et al.,J.Immunol.(2015)194(7):3201-3212を参照)、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10、およびCD3zのシグナル伝達ドメインが含まれ得る。
【0152】
主題CARに使用するのに適した細胞内シグナル伝達ドメインには、CARの活性化に応答して(すなわち、抗原および二量体化剤によって活性化される)別個の検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生の増加; 標的遺伝子の転写の変化; タンパク質の活性の変化; 細胞挙動、例えば細胞死の変化; 細胞増殖; 細胞分化; 細胞生存; 細胞シグナル伝達応答の調節など)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインが含まれる。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6など)下記のITAMモチーフを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、膜に結合したCARに共有結合しておらず、代わりに細胞質に拡散している。
【0153】
主題CARに使用するのに適した細胞内シグナル伝達ドメインには、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドが含まれる。いくつかの態様では、ITAMモチーフは、細胞内シグナル伝達ドメイン内で2回繰り返され、ITAMモチーフの第1および第2の実例は、6~8個のアミノ酸によって互いに分離されている。一態様では、主題CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
【0154】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する、ヒト免疫グロブリン受容体、例えば、限定されることなく、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIAおよびFcRL5のシグナル伝達ドメインを含む(例えば、Gillis et al.,Front.Immunol.(2014)5:254を参照)。
【0155】
好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来するITAMモチーフ含有部分であり得る。例えば、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質由来のITAMモチーフ含有ドメインであり得る。したがって、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含有する必要はない。好適なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例には、限定されることなく、DAP12、FCER1G(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)およびCD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)が挙げられる。
【0156】
一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP12(TYROBP; TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質; KARAP; PLOSL; DNAX活性化タンパク質12; KAR関連タンパク質; TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質; キラー活性化受容体関連タンパク質(killer activating receptor associated protein); キラー活性化受容体関連タンパク質(killer-activating receptor-associated protein)などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、FCER1G(FCRG; Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖; Fc受容体ガンマ鎖; fc-イプシロンRI-ガンマ; fcRガンマ; fceRlガンマ; 高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ; 免疫グロブリンE受容体、高親和性、ガンマ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D; CD3-DELTA; T3D; CD3抗原、デルタサブユニット; CD3デルタ; CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体); OKT3、デルタ鎖; T細胞受容体T3デルタ鎖; T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖; CD79a抗原(免疫グロブリン関連アルファ); MB-1膜糖タンパク質; ig-アルファ; 膜結合免疫グロブリン関連タンパク質; 表面IgM関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、本開示のCARに使用するのに適した細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。一態様では、本開示のCARに使用するのに適した細胞内シグナル伝達ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CAR内の細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0157】
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が使用される範囲で、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、そのような切断された部分をインタクトな鎖の代わりに使用することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断された部分を含む。
【0158】
本明細書において記載される細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書において記載される抗原結合ドメインのいずれか、本明細書において記載される膜貫通ドメインのいずれか、またはCARに含めることができる、本明細書において記載される他のドメインのいずれかと組み合わせられ得る。
【0159】
E. 免疫細胞の供給源
いくつかの態様では、免疫細胞の供給源、またはその異種集団は、エクスビボ操作のために対象から得られる。エクスビボ操作のための標的細胞の供給源には、例えば、自己または異種のドナー血液、臍帯血または骨髄も含まれ得る。例えば、免疫細胞の供給源は、レトロウイルス粒子と接触させた後に改変された免疫細胞によって治療される対象由来、例えば、対象の血液、対象の臍帯血、または対象の骨髄であり得る。対象の非限定的な例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック種が挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0160】
免疫細胞およびその異種集団は、血液、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、リンパまたはリンパ器官を含む多数の供給源から得ることができる。免疫細胞は、免疫系の細胞、例えば、自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、リンパ球を含む骨髄系細胞またはリンパ球細胞、典型的にはT細胞およびNK細胞である。他の例示的な細胞には、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む複能性幹細胞および多能性幹細胞が含まれる。いくつかの局面では、細胞はヒト細胞である。治療される対象に関して、細胞は、同種異系または自己由来であり得る。細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離されたもの、または対象から単離され凍結されたものである。
【0161】
ある特定の態様では、免疫細胞は、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)または樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球および/または好塩基球である。一態様では、標的細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞、またはiPS細胞に由来する細胞、例えば、対象から生成され、1つまたは複数の標的遺伝子の発現を改変するか(例えば、1つまたは複数の標的遺伝子の発現の変異を誘導する)または操作するように操作され、例えば、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞または造血幹細胞に分化したiPS細胞である。
【0162】
いくつかの態様では、細胞の異種集団は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4+ 細胞、CD8+ 細胞およびそれらの亜集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化の可能性、拡大増殖、再循環、局在化および/もしくは持続能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官もしくは区画内の存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化の程度によって定義されるものを含む。T細胞および/またはCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞のサブタイプおよび亜集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)細胞、セントラルメモリーT(TCM)細胞、エフェクターメモリーT(TEM)細胞または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連不変T(MAIT)細胞、天然および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞ならびにデルタ/ガンマT細胞がある。ある特定の態様では、当技術分野において利用可能な任意の数のT細胞株を使用することができる。
【0163】
いくつかの態様では、該方法は、免疫細胞を対象から単離する工程、それらを調製する工程、処理する工程、培養する工程、または操作する工程を含む。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養工程または調製工程を含む。記載されるような操作のための細胞は、試料、例えば、生体試料、例えば、対象から得られるまたは対象に由来するものから単離され得る。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは病態を有するか、または細胞療法を必要とするか、または細胞療法が投与される対象である。いくつかの態様では、対象は、細胞が単離、処理および/または操作されている養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。したがって、いくつかの態様では、細胞は、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料は、対象から直接採取された組織、体液および他の試料、ならびに分離、遠心分離、遣伝子工学(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から生じる試料を含む。生体試料は、生物学的供給源から直接得られる試料、または処理される試料であり得る。生体試料には、限定されることなく、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官の試料が含まれ、これらに由来する処理済み試料が含まれる。
【0164】
いくつかの局面では、細胞の異種集団を含有する試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物であるか、もしくはアフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物に由来する。細胞の例示的な異種集団には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、大腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。細胞療法、例えば、養子細胞療法の文脈では、細胞の異種集団には、自己および同種異系の供給源由来の試料が含まれる。
【0165】
いくつかの態様では、細胞の異種集団は、細胞株、例えばT細胞株に由来する。いくつかの態様では、細胞の異種集団は、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類およびブタから得られる。いくつかの態様では、細胞の異種集団の単離は、1つもしくは複数の調製工程、または非親和性に基づく細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞の異種集団は、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分を富化し、特定の試薬に感受性のある細胞を溶解または除去するために、洗浄され、遠心分離され、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの例では、細胞の異種集団は、密度、付着特性、サイズ、感度、または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0166】
いくつかの例では、対象の循環血液由来の細胞の異種集団は、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球または血小板を含むリンパ球を含有し、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。いくつかの態様では、対象から収集された血球は、例えば、血漿画分を除去するために、および後続の処理工程のために細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために洗浄される。いくつかの態様では、細胞の異種集団は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って、接線流濾過(TFF)によって達成される。いくつかの態様では、細胞は、洗浄後に様々な生体適合性緩衝液に再懸濁される。ある特定の態様では、血球試料の成分は除去され、細胞は培養培地に直接再懸濁される。いくつかの態様では、該方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば、赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製、およびパーコール勾配またはフィコール勾配による遠心分離を含む。
【0167】
一態様では、個体の循環血液由来の免疫細胞の異種集団は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含むリンパ球を含有する。アフェレーシスによって収集された細胞の異種集団を洗浄して血漿画分を除去し、細胞を適切な緩衝液もしくは培地、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)に入れることができるか、または洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠くことができるか、もしくは後続の処理工程のためにすべてではないが多くの二価カチオンを欠くことができる。洗浄後、免疫細胞の異種集団は、様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca不含、Mg不含PBSなどに再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去され得、細胞は培養培地に直接再懸濁され得る。
【0168】
いくつかの態様では、該方法は、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸などの1つまたは複数の特異的分子の細胞内での発現または存在に基づく異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく任意の公知の分離方法を使用することができる。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの局面では、単離は、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞の発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離を含み、これは、例えば、そのようなマーカーと特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、続いて、一般に洗浄工程、および抗体または結合パートナーに結合していない細胞から抗体または結合パートナーに結合した細胞を分離することによる。
【0169】
そのような分離工程は、試薬と結合した細胞がその後の使用のために保持される陽性選択、または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される陰性選択に基づくことができる。いくつかの例では、両画分がその後の使用のために保持される。いくつかの局面では、所望の集団以外の細胞が発現させるマーカーに基づいて分離が最もよく行われるように、異種集団内の細胞型を特異的に同定する陰性選択が、抗体が利用可能でない場合に特に有用であり得る。分離は、特定の細胞集団、または特定のマーカーを発現する細胞の100%の富化または除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陽性選択または富化は、そのような細胞の数または割合を増加させることを示すが、マーカーを発現しない細胞の完全な不在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞などの特定の種類の細胞の陰性選択、除去または枯渇は、そのような細胞の数または割合を減少させることを示すが、そのような細胞いずれもが完全に除去される必要はない。
【0170】
いくつかの例では、複数回の分離工程が行われ、この分離工程では、1つの工程から陽性または陰性に選択された画分が、後続の陽性選択または陰性選択などの別の分離工程に供される。いくつかの例では、単一の分離工程によって、陰性選択の標的となるマーカーにそれぞれ特異的な複数の抗体または結合パートナーとともに細胞をインキュベートすることなどによって、複数のマーカーを同時に発現する細胞を枯渇させることができる。同様に、様々な細胞型上に発現された複数の抗体または結合パートナーとともに細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型を同時に陽性に選択することができる。
【0171】
いくつかの態様では、T細胞集団のうちの1つまたは複数では、表面マーカーなどの1つもしくは複数の特定のマーカーについて陽性である(マーカー+)もしくは高レベルの表面マーカーなどの1つもしくは複数の特定のマーカーを発現する(マーカーhlgh)、または1つもしくは複数のマーカーについて陰性である(マーカー-)もしくは比較的低レベルの1つもしくは複数のマーカーを発現する(マーカーlow)細胞が富化されているかまたは枯渇している。例えば、いくつかの局面では、T細胞、例えば、1つもしくは複数の表面マーカーが陽性であるかまたは高レベルの1つもしくは複数の表面マーカーを発現する細胞、例えば、CD28+ T細胞、CD62L+ T細胞、CCR7+ T細胞、CD27+ T細胞、CD127+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD45RA+ T細胞および/またはCD45RO+ T細胞の特定の亜集団が、陽性選択技術または陰性選択技術によって単離される。場合によっては、そのようなマーカーは、T細胞(非メモリー細胞など)の特定の集団では存在しないか、または比較的低レベルで発現されるが、T細胞(メモリー細胞など)の特定の他の集団では存在するか、または比較的高レベルで発現されるものである。一態様では、細胞(CD8+ 細胞またはT細胞、例えばCD3+ 細胞など)では、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127および/もしくはCD62Lが陽性であるかもしくは高表面レベルのCD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127および/もしくはCD62Lを発現する細胞が富化されているか(すなわち、陽性に選択されている)、ならびに/または、細胞(CD8+ 細胞またはT細胞、例えばCD3+ 細胞など)では、CD45RAについて陽性であるかもしくは高表面レベルのCD45RAを発現する細胞が枯渇している(すなわち、陰性に選択されている)。いくつかの態様では、細胞では、CD122、CD95、CD25、CD27および/もしくはIL7-Ra(CD127)が陽性であるかまたは高表面レベルのCD122、CD95、CD25、CD27および/もしくはIL7-Ra(CD127)を発現する細胞が富化されているかまたは枯渇している。いくつかの例では、CD8+ T細胞では、CD45ROについて陽性(またはCD45RAについて陰性)およびCD62Lについて陽性の細胞が富化されている。例えば、CD3+ T細胞、CD28+ T細胞は、CD3/CD28がコンジュゲートした磁性ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使用して陽性に選択され得る。
【0172】
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球または他の白血球細胞、例えば、CD14などの非T細胞上に発現されるマーカーの陰性選択によって、PBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+ ヘルパーT細胞およびCD8+ 細胞傷害性T細胞を分離するために、CD4+ またはCD8+ 選択工程が使用される。そのようなCD4+ およびCD8+ 集団は、1つもしくは複数のナイーブ、メモリーおよび/もしくはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるかまたは比較的高度に発現されるマーカーに対する陽性選択または陰性選択によって、亜集団にさらに分類され得る。いくつかの態様では、例えば、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性選択または陰性選択によって、CD8+ 細胞では、ナイーブ幹細胞、セントラルメモリー幹細胞、エフェクターメモリー幹細胞および/またはセントラルメモリー幹細胞がさらに富化されているかまたは枯渇している。いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、投与後の長期生存、拡大増殖および/または生着を改善するなど、効果を高めるために行われ、これはいくつかの局面では、そのような亜集団では特にロバストである。いくつかの態様では、TCMが富化されたCD8+ T細胞とCD4+ T細胞とを組み合わせると、効果がさらに高まる。
【0173】
いくつかの態様では、メモリーT細胞は、CD8+ 末梢血リンパ球のCD62L+ およびCD62L-の両サブセットに存在する。PBMCでは、例えば、抗CD8抗体および抗CD62L抗体を使用して、CD62L-CD8+ 画分および/またはCD62L+ CD8+ 画分が富化されていてもよいかまたは枯渇していてもよい。いくつかの態様では、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞亜集団、例えば、セントラルメモリー(TCM)細胞が富化された亜集団。いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3および/またはCD127の陽性発現または高い表面発現に基づき、いくつかの局面では、CD45RAおよび/もしくはグランザイムBを発現するかまたは高度に発現する細胞の陰性選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が富化されたCD8+ 集団の単離は、CD4、CD 14、CD45RAを発現する細胞の枯渇と、CD62Lを発現する細胞の陽性選択または富化とによって行われる。一局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、CD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択と、CD62Lに基づく陽性選択とに供される、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から開始して行われる。そのような選択は、いくつかの局面では同時に行われ、他の局面ではいずれかの順序で連続的に行われる。いくつかの局面では、CD8+ 細胞集団または亜集団を調製するのに使用されたのと同じ、CD4発現に基づく選択工程はまた、CD4に基づく分離からの陽性画分および陰性画分の両方が保持され、該方法の後続の工程に使用されるように、CD4+ 細胞集団または亜集団を生成するために使用され、任意で、1つまたは複数のさらなる陽性選択工程または陰性選択工程が続く。
【0174】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞およびエフェクター細胞に分類される。CD4+ リンパ球は、標準的な方法によって得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-T細胞、CD45RA+ T細胞、CD62L+ T細胞、CD4+ T細胞である。いくつかの態様では、セントラルメモリーCD4+ 細胞は、CD62L+ およびCD45RO+ である。いくつかの態様では、エフェクターCD4+ 細胞は、CD62L-およびCD45ROである。一例では、陰性選択によってCD4+ 細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルが、典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、磁性ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合して、陽性および/または陰性選択のための細胞分離を可能にする。
【0175】
いくつかの態様では、細胞は、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルス粒子と接触する前、接触中、または接触した後にインキュベートまたは培養される。インキュベーション工程は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化または増殖を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激性作用物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団内の細胞の増殖、拡大増殖、活性化もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、またはコカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルス粒子との接触、およびCARもしくはTCRをコードする核酸および核酸ベクターによる導入を含め、内部に含有される導入遺伝子の導入のために細胞をプライミングするように設計されたものが含まれる。条件には、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンまたは刺激性因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質のうちの1つまたは複数が含まれ得る。いくつかの態様では、刺激条件または作用物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞内でTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするか、または開始させる。そのような作用物質には、TCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的なものなどの抗体、例えば、ビーズなどの固体支持体に例えば結合した抗CD3、抗CD28、または1つもしくは複数のサイトカインが含まれ得る。任意で、拡大増殖方法は、抗CD3抗体または抗CD28抗体を培養培地(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)、または遺伝子改変T細胞に加えて、抗CD3抗原結合ドメインを含むCARを発現させる工程をさらに含み得る。いくつかの態様では、刺激作用物質は、IL-2またはIL-15、例えば、少なくとも約10単位/mLのIL-2濃度を含む。
【0176】
別の態様では、免疫細胞の異種集団、および任意でその中のT細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離によって、末梢血から単離される。あるいは、T細胞は、臍帯から単離され得る。いずれの場合も、その中のT細胞の特定の亜集団を陽性選択技術または陰性選択技術によってさらに単離することができる。
【0177】
そのように単離された臍帯血単核細胞では、限定されることなく、CD34、CD8、CD14、CD19およびCD56を含む特定の抗原を発現する細胞が枯渇していてもよい。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、抗体、例えば腹水を含む生体試料、物理的支持体に結合した抗体、および細胞に結合した抗体を使用して達成することができる。
【0178】
陰性選択によるT細胞集団の富化は、陰性に選択された細胞に固有の表面マーカーに対する抗体の組合せを使用して達成することができる。好ましい方法は、陰性に選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、陰性磁気免疫接着(negative magnetic immunoadherence)またはフローサイトメトリーによる細胞選別または選択である。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8のうちの1つまたは複数に対する抗体を含む。
【0179】
陽性選択または陰性選択による細胞の所望の集団の単離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。ある特定の態様では、細胞とビーズとの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞とが一緒に混合される体積を顕著に減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一態様では、20億細胞/mlの濃度が使用される。一態様では、10億細胞/mlの濃度が使用される。さらなる態様では、1億細胞/ml超が使用される。さらなる態様では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万または5000万細胞/mlの細胞の濃度が使用される。さらに別の態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万または1億細胞/mlからの細胞の濃度が使用される。さらなる態様では、1億2500万または1億5000万細胞/mlの濃度が使用され得る。高濃度を使用すると、細胞収量の増加、細胞活性化、および細胞拡大増殖がもたらされ得る。
【0180】
洗浄工程後にT細胞を凍結することもでき、これは単球除去工程を必要としない。理論に束縛されることを望むものではないが、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団内の顆粒球と、ある程度単球とを除去することによって、さらに均一な生成物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程の後、細胞を凍結溶液に懸濁することができる。多くの凍結溶液および凍結パラメーターが当技術分野において公知であり、これに関連して有用であるが、非限定的な例では、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の好適な細胞凍結培地を使用することを伴う。次いで、細胞を毎分1℃の速度で-80℃まで凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中に保存する。制御された凍結の他の方法、および-20℃で、または液体窒素中で直ちに制御されない凍結を使用することができる。
【0181】
一態様では、T細胞の集団は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、T細胞の精製集団、およびT細胞株などの細胞内に含まれる。別の態様では、末梢血単核細胞は、T細胞の集団を含む。さらに別の態様では、精製T細胞は、T細胞の集団を含む。
【0182】
ある特定の態様では、T制御性細胞(Treg)を試料から単離することができる。試料には、限定されることなく、臍帯血または末梢血が含まれ得る。ある特定の態様では、Tregは、フローサイトメトリーソーティングによって単離される。試料は、当技術分野において公知の任意の手段による単離の前に、Tregについて富化され得る。単離されたTregは、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させられる前に、凍結保存および/または拡大増殖され得る。Tregを単離する方法は、その内容全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,754,482号、米国特許第8,722,400号および米国特許第9,555,105号、ならびに米国特許出願第13/639,927号に記載されている。
【0183】
TCRまたはCARをコードする核酸ベクターを含むコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子の前であろうと後であろうと、例えば、米国特許第6,352,694号、米国特許第6,534,055号、米国特許第6,905,680号、米国特許第6,692,964号、米国特許第5,858,358号、米国特許第6,887,466号、米国特許第6,905,681号、米国特許第7,144,575号、米国特許第7,067,318号、米国特許第7,172,869号、米国特許第7,232,566号、米国特許第7,175,843号、米国特許第5,883,223号、米国特許第6,905,874号、米国特許第6,797,514号、米国特許第6,867,041号および米国特許出願公開第20060121005号に記載されている方法を使用して、細胞を活性化し、数の上で拡大増殖させることができる。例えば、免疫細胞またはT細胞の異種集団は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質と、T細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとが結合した表面との接触によって拡大増殖され得る。特に、T細胞集団は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD3抗原結合ドメインを含むCARを発現するT細胞、もしくは表面に固定化された抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアとともにタンパク質キナーゼC活性化因子(例えばブリオスタチン)との接触によって刺激され得る。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、T細胞を抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone,Besancon,France)が挙げられ、これらは、当技術分野において公知の他の方法および試薬と同様に、該方法に使用され得る(例えば、ten Berge et al.,Transplant Proc.(1998)30(8):3975-3977; Haanen et al.,J.Exp.Med.(1999)190(9):1319-1328; およびGarland et al.,J.Immunol.Methods(1999)227(1-2):53-63を参照)。
【0184】
本明細書において開示される方法による拡大増殖T細胞は、約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約600倍、約700倍、約800倍、約900倍、約1000倍、約2000倍、約3000倍、約4000倍、約5000倍、約6000倍、約7000倍、約8000倍、約9000倍、約10,000倍、約100,000倍、約1,000,000倍、約10,000,000倍またはそれ以上、およびそれらの間のありとあらゆる全体的または部分的な整数だけ増加し得る。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲で拡大増殖する。
【0185】
培養後、一定期間にわたり、または細胞が最適な継代のためにコンフルエントもしくは高細胞密度に達するまで、培養装置内の細胞培地中でT細胞をインキュベートしてから、細胞を別の培養装置に移すことができる。培養装置は、インビトロで細胞を培養するために一般的に使用される任意の培養装置であり得る。好ましくは、コンフルエンスのレベルは、細胞を別の培養装置に移す前に70%以上である。さらに好ましくは、コンフルエンスのレベルは90%以上である。期間は、インビトロでの細胞の培養に適した任意の時間であり得る。T細胞培地は、T細胞の培養中にいつでも交換することができる。好ましくは、T細胞培地は、約2~3日毎に交換される。次いで、T細胞を培養装置から回収し、その後、T細胞を直ちに使用するか、または凍結保存して貯蔵して後で使用することができる。一態様では、該方法は、拡大増殖したT細胞を凍結保存する工程を含む。凍結保存されたT細胞は、T細胞に核酸を導入する前に解凍される。
【0186】
別の態様では、該方法は、T細胞を単離し、T細胞を拡大増殖させる工程をさらに含む。別の態様では、該方法は、拡大増殖前にT細胞を凍結保存する工程をさらに含む。さらに別の態様では、凍結保存されたT細胞は、T細胞をコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させる前に解凍される。
【0187】
エクスビボ拡大増殖細胞の別の手順は、米国特許第5,199,942号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。米国特許第5,199,942号に記載されているような拡大増殖は、本明細書において記載される他の拡大増殖方法に対する代替または追加であり得る。要約すると、T細胞のエクスビボ培養および拡大増殖は、米国特許第5,199,942号に記載されているものなどの細胞増殖因子、または他の因子、例えば、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドへの添加を含む。一態様では、T細胞を拡大増殖させることは、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドからなる群より選択される因子とともにT細胞を培養することを含む。
【0188】
本明細書において記載される培養工程(本明細書において記載される作用物質との接触、またはエレクトロポレーション後)は、非常に短く、例えば、24時間未満、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23時間であり得る。本明細書においてさらに記載される培養工程(本明細書において記載される作用物質との接触)は、さらに長く、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日またはそれ以上の日数であり得る。
【0189】
培養状態の細胞を表すために、様々な用語が使用される。細胞培養とは、一般に、生存生物から採取され、制御された条件下で成長させた細胞を指す。初代細胞培養物とは、生物から直接、かつ最初の継代培養の前に採取された細胞、組織または器官の培養物である。細胞は、細胞の成長または分裂を促進する条件下で成長培地に入れられた際に培養状態で拡大増殖され、細胞のさらに大きな集団をもたらす。細胞を培養状態で拡大増殖させる場合、細胞増殖の速度は、典型的には、別名倍加時間として知られる、細胞が数を2倍にするのに必要な時間の量によって測定される。
【0190】
継代培養の各回は、継代と呼ばれる。細胞が継代培養されると、それらは継代されたと称される。特定の細胞集団または細胞株は、それが継代された回数によって言及または特徴付けられることがある。例えば、10回継代された培養細胞集団は、P10培養物と称され得る。初代培養物、すなわち、組織から細胞を単離した後の最初の培養物は、P0と命名される。最初の継代培養後、細胞は、二次培養物(P1または継代1)として記載される。2回目の継代培養後、細胞は、三次培養物(P2または継代2)になり、以下同様である。継代の期間中に多くの集団倍加が存在し得、したがって、培養物の集団倍加の数は、継代数よりも大きいことが当業者によって理解されるであろう。継代間の期間中の細胞の拡大増殖(すなわち、集団倍加の数)は、限定されることなく、播種密度、基質、培地、および継代間の時間を含む多くの因子に依存する。
【0191】
一態様では、細胞は、数時間(約3時間)~約14日間、またはその間の任意の時間単位の整数値にわたって培養され得る。T細胞培養に適切な条件には、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-ガンマ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF-ベータおよびTNF-α、または当業者に公知の細胞成長のための任意の他の添加剤を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、Minimal Essential MediaもしくはRPMI Media 1640、またはX-vivo 15、(Lonza))が含まれる。細胞成長のための他の添加剤には、限定されることなく、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が含まれる。培地には、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15およびX-Vivo 20、Optimizerが含まれ得、これらには、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが加えられており、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)、もしくは規定された一連のホルモン、ならびに/もしくはT細胞の成長および拡大増殖に十分な量のサイトカインが補充されている。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞培養物には含まれない。標的細胞は、成長を補助するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)で維持される。
【0192】
T細胞を培養するために使用される培地は、T細胞を共刺激することができる作用物質を含むことができる。例えば、CD3を刺激することができる作用物質はCD3に対する抗体であり、CD28を刺激することができる作用物質はCD28に対する抗体である。本明細書において開示される方法によって単離された細胞は、約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約600倍、約700倍、約800倍、約900倍、約1000倍、約2000倍、約3000倍、約4000倍、約5000倍、約6000倍、約7000倍、約8000倍、約9000倍、約10,000倍、約100,000倍、約1,000,000倍、約10,000,000倍またはそれ以上だけ拡大増殖され得る。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍またはそれ以上の範囲で拡大増殖する。一態様では、ヒトT制御性細胞は、抗CD3抗体被覆KT64.86人工抗原提示細胞(aAPC)を介して拡大増殖される。T細胞を拡大増殖および活性化する方法は、その内容全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,754,482号、米国特許第8,722,400号および米国特許第9,555,105号に見出され得る。
【0193】
一態様では、T細胞を拡大増殖させる方法は、さらなる用途のために拡大増殖したT細胞を単離する工程をさらに含むことができる。別の態様では、拡大増殖させる方法は、拡大増殖したT細胞のその後のエレクトロポレーションと、それに続く培養とをさらに含むことができる。その後のエレクトロポレーションは、T細胞の拡大増殖した集団に、作用物質をコードする核酸を導入する、例えば、拡大増殖したT細胞を形質導入する、拡大増殖したT細胞をトランスフェクトする、または拡大増殖したT細胞に核酸をエレクトロポレーションする工程を含むことができ、作用物質は、T細胞をさらに刺激する。作用物質は、例えば、さらなる拡大増殖、エフェクター機能、または別のT細胞機能を刺激することによって、T細胞を刺激することができる。
【0194】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子によって形質導入されている細胞は、免疫細胞の異種集団内の全細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上を構成する。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子によって形質導入されている細胞は、T細胞の異種集団内のT細胞またはCD8+ 細胞もしくはCD4+ 細胞または制御性T細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上を構成する。
【0195】
いくつかの態様では、CARを含む細胞は、免疫細胞の異種集団内の全細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上を構成する。いくつかの態様では、CARを含む細胞は、T細胞の異種集団内のT細胞またはCD8+ 細胞もしくはCD4+ 細胞または制御性T細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上を構成する。
【0196】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と該粒子によって形質導入されている細胞との比は、少なくとも1000:1、少なくとも333:1、少なくとも100:1、少なくとも33:1、少なくとも10:1、少なくとも3:1、少なくとも1:1、少なくとも1:3、少なくとも1:10、少なくとも1:33、少なくとも1:100、少なくとも1:333、少なくとも1:1000である。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と該粒子によって形質導入されている細胞との比は、1000:1以下、333:1以下、100:1以下、33:1以下、10:1以下、3:1以下、1:1以下、1:3以下、1:10以下、1:33以下、1:100以下、1:333以下、1:1000以下である。
【0197】
ある特定の態様では、免疫細胞の異種集団、または任意でその中のT細胞は、約100万~約1000億個の細胞、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値の範囲の集団サイズで、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させられる。ある特定の態様では、免疫細胞の異種集団、または任意でその中のT細胞は、約100万~約1000億個の細胞、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値の範囲の細胞集団サイズで、合計1×109個のコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させられる。ある特定の態様では、免疫細胞の異種集団、または任意でその中のT細胞は、約100万~約1000億個の細胞、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値の範囲の細胞集団サイズで、合計1×108個のコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させられる。ある特定の態様では、免疫細胞の異種集団、または任意でその中のT細胞は、約100万~約1000億個の細胞、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値の範囲の細胞集団サイズで、合計1×107個のコカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させられる。
【0198】
F. コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸およびベクター(核酸ベクター)、ならびに該糖タンパク質を含有する粒子
コドン最適化
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質は、コドン最適化されたヌクレオチド配列によってコードされる。該ウイルス粒子を含む組成物のいくつかの態様では、ウイルス力価およびウイルス形質導入効率を増加させることができる。該粒子のいくつかの態様では、ウイルス形質導入効率を増加させることができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、コドン最適化によって、予想外にも、ウイルス粒子をコードする核酸をプロデューサー細胞が発現するのがさらに効率的になったため、コドン最適化された核酸は、ウイルス力価およびウイルス形質導入を増加させることができると考えられる。
【0199】
したがって、一局面では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸が提供され、任意で、該タンパク質をコードする核酸はコドン最適化されている。
【0200】
別の局面では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含むベクターが提供され、任意で、該タンパク質をコードする核酸はコドン最適化されている。
【0201】
コドン最適化されたヌクレオチド配列は、ヒト、ウサギ、ラット、マウス、ムース、ウマ、ロバ、モルモット、ハムスター、サル、大型類人猿、チンパンジー、ゴリラ、ボノボ、ウシ、ネコ、イヌ、非ヒト霊長類; 鳥; 爬虫類; 魚; ショウジョウバエを含む昆虫; 軟体動物(Mollusca)、ならびに他の形態の脊椎動物および無脊椎動物、例えば、旧口動物(Protostomia)、新口動物(Deuterostomia)、脊索動物(Chordata)、歩帯動物(Ambulacraria)、冠輪動物(Lophotrochozoa)、らせん卵割動物(Spiralia)、脱皮動物(Ecdysozoa)、節足動物(Arthropoda)、タクトポダ(Tactopoda)、汎節足動物(Panarthropoda)、担顎動物(Gnathifera)、プラチトロコゾア(Platytrochozoa)、吸啜動物(Rouphozoa)、腹毛動物(Gastrotricha)、扁形動物(Platyhelminthes)、中生動物(Mesozoa)、環形動物(Annelida)、クリトトロコゾア(Krytotrochozoa)などを含む哺乳動物に対して最適化され得る。あるいは、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、原生動物、細菌および古細菌を含む単細胞生物に対して最適化され得る。ヒト、獣医学動物(すなわち、家畜)、ならびにベンチサイドおよび前臨床モデルで使用される動物に対するコドン最適化が好ましい。
【0202】
好ましい態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列; 90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(すなわち、付加、欠失、置換およびそれらの組合せ)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその改変を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの好ましい態様では、上記の塩基対改変および相同性率は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のさらなるコドン最適化から得ることができるか、またはSEQ ID NO:1によってコードされるアミノ酸配列に変化を導入するために得ることができる。
【0203】
好ましい態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含む核酸ベクターは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列; 90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(すなわち、付加、欠失、置換およびそれらの組合せ)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその改変を有するヌクレオチド配列を含む。好ましい態様では、核酸ベクターは、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列; 90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(すなわち、付加、欠失、置換およびそれらの組合せ)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその改変を有するヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの好ましい態様では、上記の塩基対改変および相同性率は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列のさらなるコドン最適化から得ることができるか、またはSEQ ID NO:1によってコードされるアミノ酸配列に変化を導入するために得ることができる。
【0204】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む核酸発現ベクターは、核酸発現ベクターの産生に使用される宿主細胞に、当業者に公知の任意の手段によって導入され得る。次いで、宿主細胞は、核酸発現ベクターの増幅を提供する。
【0205】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む核酸発現ベクターは、レトロウイルス粒子の産生に使用されるプロデューサー細胞に、当業者に公知の任意の手段によって導入され得る。核酸発現ベクターは、所望であれば、トランスフェクションのためのウイルス配列を含むことができる。核酸発現ベクターは、融合、エレクトロポレーション、微粒子銃、トランスフェクション、リポフェクションなどによって、プロデューサー細胞または宿主細胞のいずれかに導入され得る。宿主細胞およびプロデューサー細胞は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸ベクターの導入前に培養状態で成長および拡大増殖され、続いて、核酸ベクターの導入および組込みのための適切な処理が行われ得る。次いで、いくつかの態様では、宿主細胞およびプロデューサー細胞は、拡大増殖され、ベクターに存在するレポーティング遺伝子(reporting gene)またはトランスフェクションマーカーもしくは形質導入マーカーによってスクリーニングされ得る。使用され得る様々なマーカーは当技術分野において公知であり、それらには、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性、アンピシリン耐性、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、mcherry、ベータ-gal、lacZなどが含まれ得る。一般に、抗生物質耐性遺伝子は、宿主細胞が核酸ベクターによってトランスフェクトされているかどうかを決定するために使用され得る。一般に、蛍光タンパク質を使用して、プロデューサー細胞が核酸ベクターによってトランスフェクトされているかどうかを決定することができる。本明細書において使用される場合、用語「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」は、別段の指定がない限り、区別なく使用される。
【0206】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列をさらに含む。
【0207】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含むベクターは、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列をさらに含む。
【0208】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は、SEQ ID NO:4のヌクレオチド配列、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列を含む。
【0209】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含むベクターは、SEQ ID NO:4のヌクレオチド配列、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列を含む。
【0210】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は、SEQ ID NO:4のヌクレオチド配列、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列からなる。
【0211】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含むベクターは、SEQ ID NO:4のヌクレオチド配列、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、90%~99%、95%~99%、96%~99%、97%~99%、98%~99%、もしくは99%~99.9%のその相同性を有するヌクレオチド配列; 1~10個のその塩基対改変(付加、欠失または置換を含む)を有するヌクレオチド配列; 1~20個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~30個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~40個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 1~50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; 少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個もしくは少なくとも50個のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列; または50個未満、45個未満、40個未満、35個未満、30個未満、25個未満、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満もしくは1個未満のその塩基対改変を有するヌクレオチド配列からなる。
【0212】
あるいは、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸は、任意の市販の核酸ベクター、任意の専売の核酸ベクター、または任意の新たに合成された核酸ベクターに導入され得る。以下のベクターは、例として提供されており、いずれにせよ限定として解釈されるべきではない:細菌:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene,La Jolla,Calif.,USA); pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540およびpRIT5(Pharmacia,Uppsala,Sweden)。真核生物:pBacb1EG-irEG、pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(Pharmacia)、pMD1、およびpMD2。発現ベクターは、選択マーカー、複製起点、制限酵素切断部位、およびベクターの増幅、複製、操作または維持を提供する他の特徴を含むことができる。
【0213】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸配列は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むかまたはコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化されたレトロウイルス粒子を産生するのに必要な他のタンパク質、酵素またはウイルスエレメントをコードする核酸配列とは別個の核酸またはベクター上にある。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸配列は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むかまたはコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化されたレトロウイルス粒子を産生するのに必要な少なくとも1つの他のタンパク質、酵素またはウイルスエレメントをコードする核酸配列と同じ核酸またはベクター上にある。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸配列は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むかまたはコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化されたレトロウイルス粒子を産生するのに必要なあらゆる他のタンパク質、酵素またはウイルスエレメントをコードする核酸配列と同じ核酸またはベクター上にある。
【0214】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、1つもしくは複数のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質コード配列またはコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質コード配列を含む核酸を含み、レトロウイルス粒子産生に必要なウイルスエレメントの1つまたは複数のコード配列は、リンカーによって分離されている。本開示において使用するためのリンカーは、複数のタンパク質が、同じ核酸配列(例えば、マルチシストロン性配列またはバイシストロン性配列)によってコードされることを可能にし、複数のタンパク質は、別個のタンパク質成分に解離されるポリタンパク質として翻訳される。例えば、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質コード配列と、レトロウイルス粒子産生に必要なウイルスエレメント(すなわち、タンパク質、酵素、ならびにシス作用エレメントおよびトランス作用エレメントを含むエレメント、またはRev、Gag/Pol、ψ、LTR、RRE(rev応答エレメント)、Env、Vif、Vpu、VprおよびTatを含むタンパク質)のコード配列とを含む、本開示の核酸に使用するためのリンカーは、リンカーによって分離され、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質ならびにウイルスエレメント、酵素およびエレメントが、別個のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質ならびにレトロウイルスタンパク質、酵素およびエレメント(すなわち、Rev)に解離されるポリタンパク質として翻訳されることを可能にする。
【0215】
いくつかの態様では、リンカーは、配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、タンパク質コード領域のATGなどの開始コドンへの直接的な配列内リボソーム進入を促進し、それによって、遺伝子のキャップ非依存性翻訳をもたらすエレメントを指す。限定されることなく、ウイルスmRNA源または細胞mRNA源、例えば免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)から得られるIRES; 血管内皮増殖因子(VEGF); 線維芽細胞増殖因子2; インスリン様増殖因子; 翻訳開始因子eIF4G; 酵母転写因子TFIIDおよびHAP4; ならびに例えば、カルジオウイルス、ライノウイルス、アフトウイルス、HCV、Friendマウス白血病ウイルス(FrMLV)およびMoloneyマウス白血病ウイルス(MoMLV)から得られるIRESを含む様々な配列内リボソーム進入部位が当業者に公知である。当業者であれば、本明細書において使用するための適切なIRESを選択することができるであろう。
【0216】
いくつかの態様では、リンカーは、自己切断ペプチドをコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「自己切断ペプチド」または「2Aペプチド」は、複数のタンパク質が、翻訳時に成分タンパク質に解離するポリタンパク質としてコードされることを可能にするオリゴペプチドを指す。用語「自己切断」の使用は、タンパク質切断反応を暗示することを意図しない。限定されることなく、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のメンバー、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV0、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(TaV)およびブタテッショウウイルス-1(PTV-1); ならびにカリオウイルス(cariovirus)、例えば、タイロウイルス(Theilovirus)および脳心筋炎ウイルスに見られるものを含む様々な自己切断ペプチドまたは2Aペプチドが当業者に公知である。FMDV、ERAV、PTV-1およびTaVに由来する2Aペプチドは、本明細書においてそれぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」および「T2A」と呼ばれる。当業者であれば、本明細書において使用するための適切な自己切断ペプチドを選択することができるであろう。
【0217】
いくつかの態様では、リンカーは、フューリン切断部位をコードする核酸配列をさらに含む。フューリンは、トランスゴルジに存在し、タンパク質前駆体をその分泌前に処理する、遍在的に発現されるプロテアーゼである。フューリンは、そのコンセンサス認識配列のCOOH-末端で切断する。限定されることなく、Arg-X1-Lys-Arg(SEQ ID NO:29)またはArg-X1-Arg-Arg(SEQ ID NO:30)、X2-Arg-X1-X3-Arg(SEQ ID NO:31)およびArg-X1-X1-Arg(SEQ ID NO:32)、例えば、Arg-Gln-Lys-Arg(SEQ ID NO:33)を含む様々なフューリンコンセンサス認識配列(または「フューリン切断部位」)が当業者に公知であり、ここで、X1は任意の天然に存在するアミノ酸であり、X2はLysまたはArgであり、X3はLysまたはArgである。当業者であれば、本発明に使用するための適切なフューリン切断部位を選択することができるであろう。
【0218】
いくつかの態様では、リンカーは、フューリン切断部位と2Aペプチドとの組合せをコードする核酸配列を含む。例には、限定されることなく、フューリンおよびF2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびE2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびP2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびT2Aをコードする核酸配列を含むリンカーが挙げられる。当業者であれば、本明細書において使用するための適切な組合せを選択することができるであろう。そのような態様では、リンカーは、フューリンと2Aペプチドとの間にスペーサー配列をさらに含むことができる。限定されることなく、グリシンセリン(GS)スペーサー、例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:5)および(GGGS)n(SEQ ID NO:6)を含む様々なスペーサー配列が当技術分野において公知であり、式中、nは、少なくとも1の整数を表す。例示的なスペーサー配列は、限定されることなく、
などを含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者であれば、適切なスペーサー配列を選択することができるであろう。
【0219】
ある特定の態様では、ベクターは、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質の発現が転写調節エレメントの制御下にあるように構造化および配置され得る。好ましい態様では、ベクターは、転写調節エレメントをさらに含むことができ、転写調節エレメントは、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質の上流に(すなわち、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5'方向に)あり、任意で、転写調節エレメントは、コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸の発現(すなわち、転写、したがって、任意で翻訳)を制御する。いくつかの態様では、転写調節エレメントは、構成的に活性であるか、または構成的プロモーターである。例示的な態様では、構成的に活性な転写調節エレメント、または構成的プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV主要前初期プロモーター(CMV IE1); マウス幹細胞ウイルスプロモーター; EF-1アルファ; IIRC; またはSV40である。他の態様では、転写調節エレメントの活性は誘導性であるか、または転写調節エレメントは誘導性プロモーターである。いくつかの態様では、転写調節エレメントは、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターなどの真核生物プロモーターである。原核生物プロモーターおよび真核生物プロモーター、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーター、ならびに複製起点を含む他の転写調節エレメントは、例えば、参照により組み入れられる、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Joseph F.Sambrook and David W.Russell,eds.; 3rd Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2001)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Michael R.Green and Joseph F.Sambrook,eds.; 4th Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2012)に見出され得る。これらのプロモーターは、本明細書において企図される。
【0220】
ある特定の態様では、ベクターは、レトロウイルス粒子を産生するために必要なタンパク質、酵素およびウイルスエレメント(すなわち、シス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)の発現が転写調節エレメントの制御下にあるように、構造化および配置され得る。好ましい態様では、ベクターは、転写調節エレメントをさらに含むことができ、転写調節エレメントは、レトロウイルス粒子を産生するために必要なタンパク質、酵素およびウイルスエレメント(すなわち、シス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)の上流に(すなわち、5'方向に)あり、任意で、転写調節エレメントは、レトロウイルス粒子を産生するために必要なタンパク質、酵素およびウイルスエレメント(すなわち、シス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)をコードする核酸の発現(すなわち、転写または翻訳)を制御する。いくつかの態様では、転写調節エレメントは、構成的に活性であるか、または構成的プロモーターである。例示的な態様では、構成的に活性な転写調節エレメント、または構成的プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV主要前初期プロモーター(CMV IE1); マウス幹細胞ウイルスプロモーター; EF-1アルファ; IIRC; またはSV40である。他の態様では、転写調節エレメントの活性は誘導性であるか、または転写調節エレメントは誘導性プロモーターである。いくつかの態様では、転写調節エレメントは、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターなどの真核生物プロモーターである。原核生物プロモーターおよび真核生物プロモーター、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む他の転写調節エレメントは、例えば、参照により組み入れられる、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Joseph F.Sambrook and David W.Russell,eds.; 3rd Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2001)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Michael R.Green and Joseph F.Sambrook,eds.; 4th Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2012)に見出され得る。これらのプロモーターは、本明細書において企図される。
【0221】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするベクターおよび核酸は、プロデューサー細胞への導入の前、したがってウイルス粒子の産生の前に、増幅または産生されなければならない。いくつかの態様では、レトロウイルス粒子産生に必要な他のタンパク質、酵素およびエレメントをコードするベクターおよび核酸は、プロデューサー細胞への導入、したがってレトロウイルスタンパク質の産生の前に増幅または産生されなければならない。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするベクターおよび核酸は、転写制御エレメントがプロデューサー細胞内でコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質の転写、したがって翻訳を促進し、それにより、プロデューサー細胞がレトロウイルス粒子を産生するように、構造化および配置されなければならない。いくつかの態様では、レトロウイルス粒子の産生に必要なタンパク質、酵素、ウイルスエレメント(すなわち、revおよびgag/polを含むシス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)をコードするベクターおよび核酸は、転写制御エレメントがプロデューサー細胞内でタンパク質、酵素、ウイルスエレメント(すなわち、revおよびgag/polを含むシス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)の転写、したがって翻訳を促進し、それにより、プロデューサー細胞がレトロウイルス粒子を産生するように構造化および配置されなければならない。
【0222】
コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質、またはレトロウイルス粒子の産生に必要なタンパク質、酵素、ウイルスエレメント(すなわち、revおよびgag/polを含むシス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)をコードする核酸およびベクターを増幅または産生するために、細菌細胞、酵母細胞および動物細胞が使用され得る。
【0223】
細菌細胞内での増幅では、好適なプロモーターには、限定されることなく、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPおよびtrcが含まれる。
【0224】
真核細胞内での増幅、または真核細胞内での発現では、好適なプロモーターには、限定されることなく、軽鎖または重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーターおよびエンハンサーエレメント; サイトメガロウイルス前初期プロモーター; 単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター; 初期および後期SV40プロモーター; レトロウイルス由来の長反復配列に存在するプロモーター; マウスメタロチオネイン-Iプロモーター; ならびに当技術分野において公知の様々な組織特異的プロモーターが含まれる。可逆的誘導性プロモーターを含む好適な可逆的プロモーターが、当技術分野において公知である。そのような可逆的プロモーターは、多くの生物、例えば、真核生物および原核生物から単離および誘導され得る。第2の生物、例えば、第1の原核生物および第2の真核生物、第1の真核生物および第2の原核生物などに使用するための、第1の生物に由来する可逆的プロモーターの改変は、当技術分野において周知である。そのような可逆的プロモーター、およびそのような可逆的プロモーターに基づくが追加の制御タンパク質も含む系には、限定されることなく、アルコール調節型プロモーター(alcohol regulated promoter)(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(A1cR)に応答性のプロモーターなど)、テトラサイクリン調節型プロモーター(tetracycline regulated promoter)(例えば、TetActivators、TetON、TetOFFを含むプロモーター系など)、ステロイド調節型プロモーター(steroid regulated promoter)(例えば、ratグルココルチコイド受容体プロモーター系、ヒトエストロゲン受容体プロモーター系、レチノイドプロモーター系、甲状腺プロモーター系、エクジソンプロモーター系、ミフェプリストンプロモーター系など)、金属調節型プロモーター(metal regulated promoter)(例えば、メタロチオネインプロモーター系など)、病原性関連調節型プロモーター(pathogenesis-related regulated promoter)(例えば、サリチル酸調節型プロモーター(salicylic acid regulated promoter)、エチレン調節型プロモーター(ethylene regulated promoter)、ベンゾチアジアゾール調節型プロモーター(benzothiadiazole regulated promoter)など)、温度調節型プロモーター(temperature regulated promoter)(例えば、熱ショック誘導性プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズ熱ショックプロモーターなど)、光調節型プロモーター(light regulated promoter)、合成誘導性プロモーターなどが含まれる。
【0225】
いくつかの態様では、宿主細胞およびプロデューサー細胞は、同じ細胞株に由来し得る。いくつかの態様では、宿主細胞およびプロデューサー細胞はHEK293-T細胞である。したがって、いくつかの態様では、プロモーターは、一般にあらゆる細胞内で、または選択的にプロデューサー細胞内で、または特異的にプロデューサー細胞内で発現され得る。いくつかの態様では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーターまたはNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる。例えば、Salmon et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:7739; およびMarodon et al.(2003)Blood 101:3416を参照されたい。別の例として、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、NcrI(p46)プロモーターの使用によって達成され得る。例えば、Eckelhart et al.Blood(2011)117:1565を参照されたい。
【0226】
増幅のための酵母宿主細胞内での発現では、好適なプロモーターは、構成的プロモーター、例えば、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなど; または調節可能なプロモーター、例えば、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHOSプロモーター、CUP1プロモーター、GALTプロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーターおよびAOX1(例えば、ピキア(Pichia)に使用するために)である。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベルの範囲内である。原核生物宿主細胞に使用するのに適したプロモーターには、限定されることなく、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター; trpプロモーター; lacオペロンプロモーター; ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター; trcプロモーター; tacプロモーターなど; araBADプロモーター; インビボ調節型プロモーター(in vivo regulated promoter)、例えば、ssaGプロモーターまたは関連プロモーター(例えば、米国特許出願公開第20040131637号を参照)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller,J.Bacteriol.(1991)173(1):86-93; Alpuche-Aranda et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1992)89(21):10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al.Mol.Micro.(1992)6:2805-2813)など(例えば、Dunstan et al.,Infect.Immun.(1999)67:5133-5141; McKelvie et al.,Vaccine(2004)22:3243-3255; およびChatfield et al.,Biotechnol.(1992)10:888-892を参照); sigma70プロモーター、例えば、コンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBankアクセッション番号AX798980、AX798961およびAX798183を参照); 静止期プロモーター(stationary phase promoter)、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど; 病原性アイランドSPI-2に由来するプロモーター(例えば、国際公開公報第96/17951号を参照); actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al.,Infect.Immun.(2002)70:1087-1096を参照); rpsMプロモーター(例えば、Valdivia and Falkow Mol.Microbiol.(1996).22:367を参照); tetプロモーター(例えば、Hillen,W.and Wissmann,A.(1989)In Saenger,W.and Heinemann,U.(eds),Topics in Molecular and Structural Biology,Protein--Nucleic Acid Interaction.Macmillan,London,UK,Vol.10,pp.143-162を参照); SP6プロモーター(例えば、Melton et al.,Nucl.Acids Res.(1984)12:7035を参照)などが含まれる。大腸菌などの原核生物に使用するのに適した強力なプロモーターには、限定されることなく、Trc、Tac、T5、T7およびPLambdaが含まれる。細菌宿主細胞に使用するためのオペレーターの非限定的な例には、ラクトースプロモーターオペレーター(LacIリプレッサータンパク質は、ラクトースと接触すると立体配座を変化させ、それによって、Ladリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを妨げる)、トリプトファンプロモーターオペレーター(TrpRリプレッサータンパク質は、トリプトファンと複合体化すると、オペレーターに結合する立体配座を有する; TrpRリプレッサータンパク質は、トリプトファンの非存在下では、オペレーターに結合しない立体配座を有する)およびtacプロモーターオペレーター(例えば、deBoer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1983)80:21-25を参照)が挙げられる。
【0227】
好適なプロモーターの他の例には、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が挙げられる。このプロモーター配列は、それに機能的に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を促進することができる強力な構成的プロモーター配列である。限定されることなく、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)長反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、EF-1アルファプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、限定されることなく、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターを含む他の構成的プロモーター配列も使用することができる。さらに、態様は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも企図される。誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望まれる場合に、機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることができるか、または発現が望まれない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、限定されることなく、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0228】
いくつかの態様では、好適なプロモーターを含有する遺伝子座または構築物または導入遺伝子は、誘導可能な系の誘導によって不可逆的に切り替えられる。不可逆的スイッチの誘導に適した系は当技術分野において周知であり、例えば、不可逆的スイッチの誘導は、Cre-lox媒介性組換えを利用することができる(例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、Fuhrmann-Benzakein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)28:e99を参照)。不可逆的に切替え可能なプロモーターの生成では、当技術分野において公知のリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などの任意の好適な組合せを使用することができる。本明細書において他の箇所に記載される部位特異的組換えを行うための方法、機構および要件は、不可逆的に切り替えられたプロモーターを生成する際に使用され、当技術分野において周知である。例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、Grindley et al.Annual Review of Biochemistry(2006)567-605; およびTropp,Molecular Biology(2012)(Jones&Bartlett Publishers,Sudbury,Mass.)を参照されたい。
【0229】
発現ベクターは、異種タンパク質(すなわち、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質; レトロウイルス粒子産生に必要なタンパク質、酵素およびエレメント(すなわち、revおよびgag/polなどのシス作用遺伝子およびトランス作用遺伝子)TCRおよびCAR)をコードする核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を一般に有する。発現宿主内で機能的な選択マーカーが存在し得る。好適な発現ベクターには、限定されることなく、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:10319-23; Takahashi et al.,J.Virol.(1999)73:7812-7816を参照); レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳癌ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)などを含むレトロウイルスベクターの全体または一部が含まれる。
【0230】
一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点と、プロモーター配列と、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位と、1つまたは複数の選択マーカーとを含有する(例えば、国際公開公報第01/96584号、国際公開公報第01/29058号および米国特許第6,326,193号)。
【0231】
G. コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質を含有する粒子を作製するためのプロデューサー細胞、導入遺伝子(すなわち、キメラ抗原受容体をコードする核酸)をさらに含有する粒子、およびそれらを作製する方法
別の局面では、本明細書において開示される核酸ベクター、本明細書において開示される核酸、または本明細書において開示されるコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含む細胞が提供される。一態様では、細胞はプロデューサー細胞である。一態様では、プロデューサー細胞は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含有するかまたはコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化されている粒子またはウイルス粒子を産生する。一態様では、プロデューサー細胞は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含有するかまたはコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってエンベロープ化されている粒子またはウイルス粒子を産生し、CARをコードする核酸をさらに含む。プロデューサー細胞は、一般に、不死化細胞株および初代細胞株を含む真核細胞であり得るが、昆虫細胞および昆虫細胞株も含み得る。不死化細胞株は、HEK293細胞を含み得る。不死化細胞株は、HEK293-T細胞をさらに含み得る。他のプロデューサー細胞は、例えば、参照により組み入れられる、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Joseph F.Sambrook and David W.Russell,eds.; 3rd Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2001)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Michael R.Green and Joseph F.Sambrook,eds.; 4th Ed.; Vols.1,2,and 3; Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2012)に見出され得る。これらのプロデューサー細胞は、本明細書において企図される。
【0232】
ある特定の態様では、プロデューサー細胞株は、細胞(例えば免疫細胞)に、CARをコードするヌクレオチド配列を含む移入プラスミドと、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターと、レトロウイルスRevタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドと、レトロウイルスGagタンパク質およびレトロウイルスPolタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプラスミドとを導入することによって生成される。本明細書において他の箇所で詳細に説明される任意のCARが企図される。ある特定の態様では、導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルスベクターの量よりも多い。ある特定の態様では、導入される移入プラスミドの量は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターの量の少なくとも2倍(×)、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×または20×である。ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。ある特定の態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質は、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、ベクターは、SEQ ID NO:4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0233】
プロデューサー細胞を作製する方法は、限定されることなく、任意で、プロデューサー細胞がウイルス粒子を産生するのに必要または有用なウイルスタンパク質、酵素およびエレメントをコードする核酸とともに、本開示のコカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸ベクターまたは核酸によって、細胞を形質転換、トランスフェクトまたは形質導入する工程を含み得る。本開示のプロデューサー細胞を生成するための追加の方法には、限定されることなく、化学的形質転換方法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームまたはカチオン性ポリマーを使用する)、非化学的形質転換方法(例えば、ヌクレオフェクションを含むエレクトロポレーション; 光変換; 遺伝子電子導入; または流体力学的送達)、または粒子に基づく方法(例えば、遺伝子銃を使用するインパルフェクション(impalefection)、またはマグネトフェクション)が含まれる。次いで、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸と、レトロウイルス粒子の産生に必要な他の核酸およびベクターとを含む核酸またはベクターによってトランスフェクトされたプロデューサー細胞は、エクスビボで拡大増殖され得る。プロデューサー細胞株は、一過性にトランスフェクトされて、コカルベシクロウイルスベクター粒子を産生することができる。プロデューサー細胞株は、レンチウイルスの構築に必要なあらゆる成分を安定に発現するように生成され得、これにより、ベクターの力価および品質を高めることができる。
【0234】
核酸ベクターを細胞に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。例えば、Sambrook and Russell,eds.,(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New Yorkを参照されたい。核酸ベクターを細胞に導入するための化学的方法には、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質に基づく系が含まれる。
【0235】
使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,MOから入手することができ、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,NY)から入手することができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の保存溶液は、約-20℃で保存され得る。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用され得る。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成された様々な単一および多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けられ得る。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると自然に形成される。脂質成分は、閉じた構造の形成前に自己再配列を受け、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとることができるか、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在することができる。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0236】
外因性核酸または外因性核酸ベクターを細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、細胞内の核酸の存在を確認するために様々なアッセイを行うことができる。そのようなアッセイには、例えば、分子生物学的アッセイ、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、任意で従来のPCR、またはリアルタイムPCRが続く逆転写PCR; 例えば、免疫学的手段、例えば、ELISAおよびウエスタンブロットによって、または本発明の範囲内に入る作用物質を同定するための本明細書において記載されるアッセイによって、特定のペプチド、例えば、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質の存在または非存在を検出する生化学アッセイが含まれる。いくつかの態様では、核酸または核酸ベクターは、細胞によって発現されるように構造化および配置される、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子などのレポーティング遺伝子を含み、それによって、細胞にレポーティング遺伝子を発現させる。好適なレポーター遺伝子には、限定されることなく、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。
【0237】
例えば、HEK293-T細胞は、GFPレポーティング遺伝子を有する核酸または核酸ベクターによってトランスフェクトされると蛍光を発することができる。次いで、これらの蛍光HEK293-T細胞を蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーまたはFACSによって評価し、GFPの発現レベルに基づいて定量および選別することができる。レポータータンパク質またはRNAの発現レベルは、トランスフェクションの量、およびプロデューサー細胞が粒子を産生する能力、および細胞がコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子に、導入遺伝子、すなわち、キメラ抗原受容体をコードする核酸を包装する能力の代用として使用され得る。例えば、GFPの発現レベル、および付随する蛍光は、トランスフェクションの量、およびプロデューサー細胞が粒子を産生する能力、および細胞がコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子に、導入遺伝子、すなわち、キメラ抗原受容体をコードする核酸を包装する能力の代用として使用され得る。
【0238】
いくつかの態様では、レポーター遺伝子は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸ベクターまたは核酸上にコードされる。いくつかの態様では、レポーター遺伝子は、レトロウイルス粒子の産生に必要なシス作用遺伝子またはトランス作用遺伝子、タンパク質、酵素およびウイルスエレメントをコードする核酸または核酸ベクター上にコードされる。いくつかの態様では、レポーター遺伝子は、ウイルス粒子内のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質によってカプセル化される導入遺伝子上にコードされる。いくつかの態様では、複数のレポーター遺伝子が使用され、例えば、非限定的な例として、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸ベクターまたは核酸は、GFPレポーター遺伝子をコードすることができ、レトロウイルス粒子の産生に必要なシス作用遺伝子またはトランス作用遺伝子、タンパク質、酵素およびウイルスエレメントをコードする核酸または核酸ベクターは、黄色蛍光タンパク質(YFP)をさらにコードすることができ、導入遺伝子は、mCherryをコードすることができる。
【0239】
一態様では、プロデューサー細胞に導入される、レトロウイルス粒子をコードする核酸はRNAである。別の態様では、RNAは、インビトロ転写RNAまたは合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成鋳型を使用したインビトロ転写によって産生され得る。任意の供給源由来の関心対象のDNAは、適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用して、PCRによって、インビトロmRNA合成のための鋳型に直接変換され得る。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、またはDNAの任意の他の適切な供給源であり得る。
【0240】
PCRを使用して、mRNAのインビトロ転写のための鋳型を生成することができ、次いでこれを細胞に導入する。PCRを行う方法は、当技術分野において周知である。PCRに使用するためのプライマーは、PCRの鋳型として使用されるDNAの領域に実質的に相補的な領域を有するように設計される。
【0241】
本明細書において使用される「実質的に相補的」は、プライマー配列内の塩基の大部分または全部が相補的であり、その結果、ヌクレオチド配列がPCRに使用されるアニーリング条件下で意図するDNA標的とアニーリングまたはハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を指す。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分に実質的に相補的であるように設計され得る。例えば、プライマーは、5'UTRおよび3'UTRを含む、細胞内で通常転写される遺伝子の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計され得る。プライマーはまた、関心対象の特定のドメインをコードする遺伝子の一部を増幅するように設計され得る。一態様では、プライマーは、5'UTRおよび3'UTRの全部または一部を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野において周知の合成方法によって生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されるDNA配列の上流にある、DNA鋳型上のヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「上流」は、コード鎖と比較して、増幅されるDNA配列に対する位置5を指すために本明細書において使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるDNA配列の下流にある、二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「下流」は、コード鎖と比較して、増幅されるDNA配列に対する位置3'を指すために本明細書において使用される。
【0242】
RNAの安定性または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用することができる。RNAは、好ましくは、5'UTRおよび3'UTRを有する。一態様では、5'UTRは、0~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加される5'UTR配列および3'UTR配列の長さは、限定されることなく、UTRの様々な領域にアニーリングする、PCR用のプライマーを設計することを含む様々な方法によって変更され得る。この手法を使用して、当業者であれば、転写RNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要な5'UTRおよび3'UTRの長さを改変することができる。
【0243】
5'UTRおよび3'UTRは、関心対象の遺伝子の天然に存在する内因性の5'UTRおよび3'UTRであり得る。あるいは、関心対象の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列は、UTR配列をフォワードプライマーおよびリバースプライマーに組み込むことによって、または鋳型の任意の他の改変によって付加され得る。関心対象の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性または翻訳効率を改変するために有用であり得る。例えば、3'UTR配列内のAUリッチエレメントがmRNAの安定性を低下させ得ることが知られている。したがって、3'UTRは、当技術分野において周知のUTRの特性に基づいて転写RNAの安定性を増加させるように選択または設計され得る。
【0244】
一態様では、5'UTRは、内因性遺伝子のコザック配列を含有し得る。あるいは、関心対象の遺伝子に対して内因性でない5'UTRが上記のようにPCRによって付加されている場合、コンセンサスコザック配列は、5'UTR配列を付加することによって再設計され得る。コザック配列は、一部のRNA転写物の翻訳効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするためにあらゆるRNAに必要であるとは思われない。多くのmRNAに対するコザック配列の必要性は、当技術分野において公知である。他の態様では、5'UTRは、RNAゲノムが細胞内で安定であるRNAウイルスに由来し得る。他の態様では、様々なヌクレオチド類似体を3'UTRまたは5'UTRに使用して、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げることができる。
【0245】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNA鋳型からRNAを合成することを可能にするために、転写される配列の上流で、転写のプロモーターをDNA鋳型に結合させるべきである。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5'末端に付加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に組み込まれる。一態様では、プロモーターは、本明細書において他の箇所に記載されているように、T7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、限定されることなく、T3 RNAポリメラーゼプロモーターおよびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれる。T7プロモーター、T3プロモーターおよびSP6プロモーターに関するコンセンサスなヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。
【0246】
一態様では、mRNAは、5'末端および3'ポリ(A)テールの両方に、細胞内のリボソーム結合、翻訳の開始、および安定性mRNAを決定するキャップを有する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNAでは、RNAポリメラーゼは、真核細胞内での発現に適していない長いコンカテマー産物を産生する。3'UTRの末端で線状化されたプラスミドDNAの転写は、転写後にポリアデニル化されていても真核生物トランスフェクションでは有効でない正常なサイズのmRNAをもたらす。
【0247】
線状DNA鋳型では、ファージT7 RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を超えて転写物の3'末端を伸長させることができる(Schenborn and Mierendorf,Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985); Nacheva and Berzal-Herranz,Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003)。
【0248】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、100Tテール(サイズは50~5000Tであり得る)などのポリTテールを含有するリバースプライマーを使用することによってPCR中に、または限定されることなく、DNAライゲーションもしくはインビトロ組換えを含む任意の他の方法によるPCR後に作製され得る。ポリ(A)テールはまた、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低減する。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写RNAの安定性と正に相関する。一態様では、ポリ(A)テールは、100~5000個のアデノシンである。
【0249】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼを使用したインビトロ転写後にさらに伸長され得る。一態様では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増加させると、RNAの翻訳効率が約2倍増加する。さらに、3'末端への様々な化学基の結合は、mRNA安定性を高めることができる。そのような結合は、改変/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有することができる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用して、ポリ(A)テールにATP類似体を組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに高めることができる。
【0250】
5'キャップはまた、RNA分子に安定性を提供する。好ましい態様では、本明細書において開示される方法によって産生されるRNAは、5'キャップを含む。5'キャップは、当技術分野において公知であり、本明細書において記載される技術を使用して提供される(Cougot,et al.,Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001); Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001); Elango,et al.,Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005))。
【0251】
いくつかの態様では、RNA、例えばインビトロ転写RNAは、細胞にエレクトロポレーションされる。細胞の透過性および生存性を促進する因子、例えば、糖、ペプチド、脂質、タンパク質、酸化防止剤および界面活性剤を含有し得る、細胞エレクトロポレーションに適した任意の溶質が含まれ得る。
【0252】
いくつかの態様では、本開示のコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸または核酸ベクターは、RNA、例えばインビトロ合成RNAである。任意の公知の方法を使用して、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするRNA、ウイルス粒子を産生するのに必要かつ十分なエレメントをコードするRNA、またはTCRもしくはCARをコードするRNAを合成することができる。RNAを宿主細胞に導入する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al.Cancer Res.(2010)15:9053を参照されたい。コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするRNAと、ウイルス粒子を産生するのに必要かつ十分なエレメントをコードするRNAと、導入遺伝子をコードするRNA、またはTCRもしくはCARをコードする核酸とを宿主細胞に導入することは、インビトロ、エクスビボまたはインビボで行うことができる。
【0253】
該方法はまた、例えば、プロモーター、またはインプットRNAの量を変化させることによって広範囲にわたって発現レベルを制御する能力を提供し、発現レベルを個別に調節することを可能にする。さらに、mRNA産生のPCR系技術は、様々な構造とそれらのドメインの組合せとを有するmRNAの設計を大幅に容易にする。
【0254】
インビトロ転写RNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝子改変は、ともに様々な動物モデルを対象に連続的に試験されている2つの異なる戦略を利用する。細胞は、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによってインビトロ転写RNAによってトランスフェクトされる。移入されたIVT-RNAの長期発現を達成するために、様々な改変を使用してIVT-RNAを安定化することが望ましい。
【0255】
インビトロ転写のための鋳型として標準化された様式で利用され、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝子改変されているいくつかのIVTベクターが文献において公知である。現在、当技術分野において使用されているプロトコルは、以下の構造、すなわち、RNA転写を可能にする5'RNAポリメラーゼプロモーター、続いて、非翻訳領域(UTR)が3'および/または5'のいずれかで隣接する関心対象の遺伝子、ならびに50~70Aヌクレオチドを含有する3'ポリアデニルカセットを有するプラスミドベクターに基づいている。インビトロ転写の前に、環状プラスミドは、II型制限酵素(認識配列は切断部位に対応する)によってポリアデニルカセットの下流で線状化される。したがって、ポリアデニルカセットは、転写物内の後のポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、一部のヌクレオチドは、線状化後に酵素切断部位の一部として残り、3'末端でポリ(A)配列を伸長またはマスクする。この非生理学的オーバーハングが、そのような構築物から細胞内に産生されるウイルスタンパク質の量に影響を及ぼすかどうかは明らかではない。
【0256】
別の局面では、RNA構築物は、エレクトロポレーションによって細胞に送達される。例えば、米国特許第2004/0014645号、米国特許第2005/0052630号、米国特許第2005/0070841号、米国特許第2004/0059285号、米国特許第2004/0092907号に教示されているような、哺乳動物細胞への核酸構築物のエレクトロポレーションの製剤および方法を参照されたい。任意の公知の細胞型のエレクトロポレーションに必要な電界強度を含む様々なパラメーターは、関連する研究文献、ならびに当分野の多数の特許および出願において一般的に公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、米国特許第7,171,264号および米国特許第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションの治療用途のための装置は市販されており、例えば、MedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics,San Diego,Calif.)であり、米国特許第6,567,694号、米国特許第6,516,223号、米国特許第5,993,434号、米国特許第6,181,964号、米国特許第6,241,701号および米国特許第6,233,482号などの特許に記載されている。エレクトロポレーションはまた、例えば、米国特許第20070128708号に記載されているように、インビトロで細胞のトランスフェクションに使用することができる。エレクトロポレーションを利用して、インビトロで細胞に核酸を送達することもできる。したがって、当業者に公知の多くの利用可能な装置およびエレクトロポレーション系のいずれかを利用する、発現構築物を含む核酸の細胞へのエレクトロポレーション媒介投与は、関心対象のRNAを標的細胞に送達するための刺激的な新しい手段を提示する。
【0257】
いくつかの態様では、プロデューサー細胞は、自己不活性化であるか、またはヘルパー核酸ベクター細胞を欠く細胞に感染すると自己増殖する能力を欠くレトロウイルスを含むレトロウイルスを産生するように構造化および配置されたヘルパー核酸ベクターを含む。したがって、ヘルパー核酸ベクターは、粒子またはウイルス粒子の産生に必要かつ十分な酵素、タンパク質およびウイルスエレメントをコードし、発現させることができる。例示的なタンパク質、酵素およびエレメントには、Rev、Gag/Pol、ψ、LTR、RRE(rev応答エレメント)、Vif、Vpu、Vpr、Tat、Nefを含むシス作用エレメントおよびトランス作用エレメント、またはタンパク質、ならびにコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質以外の他のエンベロープタンパク質が含まれる。いくつかの態様では、エレメントの不完全なレパートリーが提供され、レンチウイルス機能に必須でないレパートリーは省略される。したがって、いくつかの態様では、エレメントまたはタンパク質は、Gag、Pol、TatおよびRevである。
【0258】
一態様では、1つの核酸ベクターはgag遺伝子およびpol遺伝子をコードすることができ、別の核酸ベクターはrev遺伝子をコードすることができ、第3の核酸ベクターは本明細書において開示されるコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むエンベロープタンパク質をコードすることができ、第4の核酸ベクターは関心対象の導入遺伝子をコードすることができ、導入遺伝子は例えばCARまたはTCRである。
【0259】
別の局面では、プロデューサー細胞はまた、例えばCARを含む関心対象の導入遺伝子をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、関心対象の導入遺伝子は、プロデューサー細胞がレトロウイルス粒子を産生する際にレトロウイルス粒子にカプセル化される。いくつかの態様では、関心対象の導入遺伝子はCARである。いくつかの態様では、CARまたはTCRは、レトロウイルス粒子が関心対象の細胞に感染すると、関心対象の細胞が導入遺伝子、好ましくはCARまたはTCRを発現(転写および翻訳)し、さらに好ましくは、細胞が関心対象の細胞の表面でCARを好ましくは発現するように、関心対象の導入遺伝子にコードされる。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することができるが、TCRまたはCARの組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする。
【0260】
一局面では、レトロウイルスGagタンパク質をコードする核酸、レトロウイルスPolタンパク質をコードする核酸、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を含む1つまたは複数のプラスミドベクターまたは核酸ベクターと細胞を接触させる工程を含む、コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子を生成する方法が提供される。いくつかの態様では、Gagタンパク質またはPolタンパク質は、ベルパオウイルス科、メタウイルス科、シュードウイルス科、レトロウイルス科(例えばHIV)、カリモウイルス科(例えば、VII群ウイルス科)を含むオルテルウイルス目; アルファレトロウイルス属、ベータレトロウイルス属、ガンマレトロウイルス属、デルタレトロウイルス属、イプシロンレトロウイルス属、レンチウイルス属を含むオルソレトロウイルス亜科; ボビスプーマウイルス属、エクイスプーマウイルス属、フェリスプーマウイルス属、プロシミイスプーマウイルス属、シミイスプーマウイルス属を含むスプーマレトロウイルス亜科に由来する。好ましい態様には、オルソレトロウイルス亜科粒子、アルファレトロウイルス粒子、ベータレトロウイルス粒子、デルタレトロウイルス粒子、イプシロンレトロウイルス粒子、ガンマレトロウイルス粒子、レンチウイルス粒子、スプーマレトロウイルス亜科粒子、ボビスプーマウイルス粒子、エクイスプーマウイルス粒子、フェリスプーマウイルス粒子、プロシミイスプーマウイルス粒子およびシミイスプーマウイルス粒子が含まれる。いくつかの好ましい態様では、Gagタンパク質またはPolタンパク質は、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルスおよびイプシロンレトロウイルスから選択されるレトロウイルスに由来するか、またはそれらから得られる。
【0261】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質の発現のためのプラスミドまたは核酸ベクターは、前記のようにコドン最適化されていることを含む、コドン最適化されているヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質の発現のためのプラスミドまたは核酸ベクターは、前記のようにコドン最適化されていることを含む、コドン最適化されている、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質の発現のためのプラスミドまたは核酸ベクターは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:4のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質の発現のためのプラスミドまたは核酸ベクターは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする。
【0262】
H. T細胞受容体
いくつかの態様では、粒子、核酸ベクター、核酸および/または細胞は、免疫細胞またはその前駆体(例えば改変T細胞)が外因性T細胞受容体(TCR)を含むように該免疫細胞またはその前駆体を改変するための組成物および方法を提供することができる。したがって、いくつかの態様では、細胞は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むレトロウイルス粒子による形質導入後に、特異的T細胞受容体(TCR)遺伝子(例えば、アルファ/ベータTCRをコードする核酸)を発現するように改変されている。ある特定の態様では、組成物または方法は、天然TCRのノックアウトまたはノックダウンを引き起こす核酸をさらに含むことができる。
【0263】
TCRまたはその抗原結合部分には、標的ポリペプチドのペプチドエピトープまたはT細胞エピトープ、例えば、腫瘍タンパク質、ウイルスタンパク質または自己免疫タンパク質の抗原を認識するものが含まれる。ある特定の態様では、TCRは、T細胞を所望の標的に導き直す。ある特定の態様では、TCRは、腫瘍関連抗原に対する結合特異性を有する。別の態様では、特異的TCRは、野生型TCRよりも標的細胞表面抗原に対して高い親和性を有する。
【0264】
TCRは、抗原に応答してT細胞の活性化に関与する6つの異なる膜結合鎖から構成されるジスルフィド結合ヘテロ二量体タンパク質である。アルファ/ベータTCRおよびガンマ/デルタTCRが存在する。アルファ/ベータTCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む。TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般に、アルファ/ベータT細胞と呼ばれる。ガンマ/デルタTCRは、TCRガンマ鎖およびTCRデルタ鎖を含む。TCRガンマ鎖およびTCRデルタ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般に、ガンマ/デルタT細胞と呼ばれる。本開示のTCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含むTCRである。
【0265】
TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変領域および定常領域からそれぞれ構成される。TCRアルファ鎖可変領域およびTCRベータ鎖可変領域は、標的抗原に対するTCRの親和性に必要である。各可変領域は、標的抗原への結合を提供する3つの超可変領域または相補性決定領域(CDR)を含む。TCRアルファ鎖の定常領域、およびTCRベータ鎖の定常領域は、細胞膜に近接している。TCRは、膜貫通領域および短い細胞質尾部をさらに含む。CD3分子は、TCRヘテロ二量体と一緒に構築される。CD3分子は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として知られる、チロシンリン酸化のための特徴的な配列モチーフを含む。近位シグナル伝達事象はCD3分子を介して媒介されるため、TCR-CD3複合体相互作用は、細胞認識事象の媒介に重要な役割を果たす。
【0266】
TCRの刺激は、抗原ペプチドをT細胞に提示し、TCRと相互作用して一連の細胞内シグナル伝達カスケードを誘導する、抗原提示細胞上の主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC)によって引き起こされる。TCRの関与は、細胞増殖、サイトカイン産生および/または活性化誘導細胞死をもたらす正および負のシグナル伝達カスケードの両方を開始させる。
【0267】
TCRは、野生型TCR、高親和性TCRおよび/またはキメラTCRであり得る。高親和性TCRは、野生型TCRよりも標的抗原に対して高い親和性を付与する、野生型TCRへの改変の結果であり得る。高親和性TCRは、親和性成熟TCRであり得る。TCRを改変する方法、および/またはTCRの親和性成熟は、当業者に公知である。TCRを操作および発現させるための技術には、限定されることなく、それぞれのサブユニットを接続する天然ジスルフィド架橋を含むTCRヘテロ二量体の産生が含まれる(Garboczi,et al.,(1996),Nature 384(6605):134-41; Garboczi,et al.,(1996),J.Immunol 157(12):5403-10; Chang et al.,(1994),PNAS USA 91:11408-11412; Davodeau et al.,(1993),J.Biol.Chem.268(21):15455-15460; Golden et al.,(1997),J.Imm.Meth.206:163-169; 米国特許第6,080,840号)。
【0268】
いくつかの態様では、外因性TCRは、完全TCRまたはその抗原結合部分もしくは抗原結合断片である。いくつかの態様では、TCRは、αβ形態またはγδ形態のTCRを含むインタクトTCRまたは全長TCRである。いくつかの態様では、TCRは、全長TCR未満であるが、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する、例えば、MHC-ペプチド複合体に結合する抗原結合部分である。場合によっては、TCRの抗原結合部分または抗原結合断片は、全長TCRまたはインタクトTCRの構造ドメインの一部のみを含有し得るが、それでも、完全TCRが結合するMHC-ペプチド複合体などのペプチドエピトープに結合することができる。場合によっては、抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α鎖および可変β鎖を含有する。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHCまたはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域(CDR)を含有する。
【0269】
いくつかの態様では、TCRの可変ドメインは、一般に抗原認識ならびに結合能力および特異性に対する主な寄与因子である超可変ループまたはCDRを含有する。いくつかの態様では、TCRのCDR、またはそれらの組合せは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全部または実質的に全部を形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは、一般にフレームワーク領域(FR)によって分離されており、これにより、CDRと比較してTCR分子間の変動性は一般に少ない(例えば、Jores et al,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.87:9138,1990; Chothia et al.,EMBO J.7:3745,1988を参照; また、Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55,2003を参照)。いくつかの態様では、CDR3は、抗原結合もしくは特異性に関与する主なCDRであるか、または抗原認識のため、および/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用のために所与のTCR可変領域上の3つのCDRの中で最も重要である。いくつかの状況では、アルファ鎖のCDR1は、特定の抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、ベータ鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用、もしくはMHC-ペプチド複合体のMHC部分の認識に最も強く寄与するか、またはそれに関与する一次CDRである。いくつかの態様では、β鎖の可変領域は、一般に超抗原結合に関与し、抗原認識には関与しないさらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含有し得る(Kotb(1995)Clinical Microbiology Reviews,8:411-426)。
【0270】
いくつかの態様では、TCRは、可変アルファドメイン(Vα)、可変ベータドメイン(Vβ)、および/またはそれらの抗原結合断片を含有する。いくつかの態様では、TCRのα鎖および/またはβ鎖はまた、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質尾部を含有し得る(例えば、Janeway et al.,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,3 Ed.,Current Biology Publications,p.4:33,1997を参照)。いくつかの態様では、α鎖定常ドメインは、TRAC遺伝子(IMGT命名法)によってコードされるか、またはその変異体である。いくつかの態様では、β鎖定常領域は、TRBC1遺伝子もしくはTRBC2遺伝子(IMGT命名法)によってコードされるか、またはその変異体である。いくつかの態様では、定常ドメインは、細胞膜に隣接している。例えば、場合によっては、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、2つの膜遠位可変ドメインとを含有し、可変ドメインは、CDRをそれぞれ含有する。
【0271】
TCRの様々なドメインまたは領域を決定または同定することは、当業者のレベルの範囲内である。いくつかの局面では、TCRの残基は、公知であるか、またはInternational Immunogenetics Information System(IMGT)ナンバリングシステムに従って同定され得る(例えば、www.imgt.orgを参照; また、Lefranc et al.(2003)Developmental and Comparative Immunology,2&; 55-77; およびThe T Cell Factsbook 2nd Edition,Lefranc and LeFranc Academic Press 2001を参照)。このシステムを使用すると、TCR Va鎖および/またはVβ鎖内のCDR1配列は、両端の値を含めて残基番号27~38に存在するアミノ酸に対応し、TCR Va鎖および/またはVβ鎖内のCDR2配列は、両端の値を含めて残基番号56~65に存在するアミノ酸に対応し、TCR Va鎖および/またはVβ鎖内のCDR3配列は、両端の値を含めて残基番号105~117に存在するアミノ酸に対応する。当業者に公知の他のナンバリングシステムが存在することから、IMGTナンバリングシステムは決して限定するものと解釈されるべきではなく、TCRの様々なドメインまたは領域を同定するために利用可能なナンバリングシステムのいずれかを使用することは当業者のレベルの範囲内である。
【0272】
いくつかの態様では、TCRは、例えば、単数または複数のジスルフィド結合によって連結された2つの鎖αおよびβ(または任意でγおよびδ)のヘテロ二量体であり得る。いくつかの態様では、TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによって、TCRの2つの鎖を連結する短い接続配列を含有し得る。いくつかの態様では、TCRは、TCRが定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含有するように、α鎖およびβ鎖の各々に追加のシステイン残基を有し得る。いくつかの態様では、定常ドメインおよび可変ドメインの各々は、システイン残基によって形成されたジスルフィド結合を含有する。
【0273】
いくつかの態様では、記載される細胞を操作するためのTCRは、実質的に全長のコード配列が容易に利用可能な、Vα鎖、β鎖の配列などの公知のTCR配列から生成されるものである。細胞源からV鎖配列を含む全長TCR配列を得る方法は周知である。いくつかの態様では、TCRをコードする核酸は、所与の単数もしくは複数の細胞内の、もしくは所与の単数もしくは複数の細胞から単離されたTCRコード核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または公的に利用可能なTCR DNA配列の合成などの様々な供給源から得ることができる。いくつかの態様では、TCRは、生物学的供給源、例えば、T細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に利用可能な供給源などの細胞から得られる。いくつかの態様では、T細胞は、インビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様では、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識から合成的に生成され得る。いくつかの態様では、標的抗原(例えば癌抗原)に対する高親和性T細胞クローンが同定され、患者から単離され、細胞に導入される。いくつかの態様では、標的抗原のTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系またはHLA)を用いて操作されたトランスジェニックマウスで生成されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al.(2009)Clin.Cancer Res.15:169-180およびCohen et al.(2005)J.Immunol.175:5799-5808を参照。いくつかの態様では、標的抗原に対するTCRを単離するために、ファージディスプレイが使用される(例えば、Varela-Rohena et al.(2008)Nat.Med.14:1390-1395およびLi(2005)Nat.Biotechnol.23:349-354を参照。
【0274】
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されているものである。いくつかの態様では、特定のMHC-ペプチド複合体に対して増大した親和性を有するなど、特性が変化したTCRを生成するために、指向性進化法が使用される。いくつかの態様では、指向性進化は、限定されることなく、酵母ディスプレイ(Holler et al.(2003)Nat.Immunol.,4,55-62; Holler et al.(2000)Proc Natl.Acad.Sci.U S A,97,5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al.(2005)Nat.Biotechnol.,23,349-54)またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al.(2008)J.Immunol.Methods,339,175-84)を含むディスプレイ法によって達成される。いくつかの態様では、ディスプレイ手法は、公知の親TCRまたは参照TCRを操作または改変することを伴う。例えば、場合によっては、CDRの1つまたは複数の残基が変異しており、所望の標的抗原に対する増大した親和性などの所望の変化した特性を有する変異体が選択される、変異誘発TCRを作製するための鋳型として、野生型TCRが使用され得る。
【0275】
記載されるいくつかの態様では、TCRは、導入された単数または複数のジスルフィド結合を含有することができる。いくつかの態様では、天然ジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様では、天然鎖間ジスルフィド結合を形成する(例えば、α鎖およびβ鎖の定常ドメイン内の)天然システインのうちの1つまたは複数は、セリンまたはアラニンなどの別の残基によって置換されている。いくつかの態様では、導入されたジスルフィド結合は、アルファ鎖およびベータ鎖上、例えば、α鎖およびβ鎖の定常ドメイン内の非システイン残基をシステインに変異させることによって形成され得る。TCRの例示的な非天然ジスルフィド結合は、公開された国際PCT出願WO2006/000830およびWO2006/037960に記載されている。いくつかの態様では、システインは、α鎖の残基Thr48およびβ鎖のSer57、α鎖の残基Thr45およびβ鎖のSer77、α鎖の残基Tyr10およびβ鎖のSer17、α鎖の残基Thr45およびβ鎖のAsp59、ならびに/またはα鎖の残基Ser15およびβ鎖のGlu15に導入され得る。いくつかの態様では、組換えTCR内の非天然システイン残基の存在(例えば、1つまたは複数の非天然ジスルフィド結合をもたらす)は、天然TCR鎖を含有するミスマッチTCR対の発現よりも、それが導入された細胞内で所望の組換えTCRの産生を促進することができる。
【0276】
いくつかの態様では、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、正に帯電している。場合によっては、TCR鎖は、細胞質尾部を含有する。いくつかの局面では、TCRの各鎖(例えば、アルファまたはベータ)は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメインと、1つの免疫グロブリン定常ドメインと、膜貫通領域と、C末端に短い細胞質尾部とを有することができる。いくつかの態様では、例えば、細胞質尾部を介したTCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質と結合している。場合によっては、この構造により、TCRがCD3およびそのサブユニットのような他の分子と結合できるようになる。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含有するTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達機構または複合体の不変サブユニットと結合することができる。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3y鎖、CD35鎖、CD3s鎖およびCD3ζ鎖)の細胞内尾部は、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つまたは複数の免疫受容体チロシン活性化モチーフ、すなわちITAMを含有する。
【0277】
いくつかの態様では、TCRは全長TCRである。いくつかの態様では、TCRは抗原結合部分である。いくつかの態様では、TCRは二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様では、TCRは単鎖TCR(sc-TCR)である。TCRは、細胞結合形態または可溶性形態であり得る。いくつかの態様では、提供される方法の目的のために、TCRは、細胞の表面に発現される細胞結合形態である。いくつかの態様では、dTCRは、TCR α鎖可変領域配列に対応する配列がTCR α鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合した第1のポリペプチドと、TCR β鎖可変領域配列に対応する配列がTCR β鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合した第2のポリペプチドとを含有し、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとは、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの態様では、結合は、天然二量体αβ TCRに存在する天然鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。いくつかの態様では、鎖間ジスルフィド結合は、天然TCRには存在しない。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数のシステインは、dTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列に組み込まれ得る。場合によっては、天然ジスルフィド結合および非天然ジスルフィド結合の両方が望ましいことがある。いくつかの態様では、TCRは、膜に固定するための膜貫通配列を含有する。いくつかの態様では、dTCRは、可変αドメインと、定常αドメインと、定常αドメインのC末端に結合した第1の二量体化モチーフとを含有するTCR α鎖、および可変βドメインと、定常βドメインと、定常βドメインのC末端に結合した第1の二量体化モチーフとを含むTCR β鎖を含有し、第1の二量体化モチーフと第2の二量体化モチーフとは容易に相互作用して、第1の二量体化モチーフ内のアミノ酸と第2の二量体化モチーフ内のアミノ酸との間に、TCR α鎖とTCR β鎖とを連結する共有結合を形成する。
【0278】
いくつかの態様では、TCRは、MHC-ペプチド複合体に結合することができる、α鎖およびβ鎖を含有する一本鎖アミノ酸であるsc-TCRである。典型的には、scTCRは、当業者に公知の方法を使用して生成され得、例えば、国際公開PCT出願WO96/13593、WO96/18105、W099/18129、WO04/033685、WO2006/037960、WO2011/044186; 米国特許第7,569,664号; およびSchlueter,C.J.et al.J.Mol.Biol.256,859(1996)を参照されたい。いくつかの態様では、scTCRは、TCR α鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第1のセグメントと、TCR β鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCR β鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成された第2のセグメントと、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列とを含有する。いくつかの態様では、scTCRは、TCR β鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第1のセグメントと、TCR α鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCR α鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成された第2のセグメントと、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列とを含有する。いくつかの態様では、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成された第1のセグメントと、配列β鎖細胞外定常および膜貫通配列のN末端に融合したβ鎖可変領域配列によって構成された第2のセグメントと、任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列とを含有する。いくつかの態様では、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したTCR β鎖可変領域配列によって構成された第1のセグメントと、α鎖細胞外定常ドメイン配列および膜貫通配列を含む配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成された第2のセグメントと、任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列とを含有する。いくつかの態様では、scTCRがMHC-ペプチド複合体に結合するためには、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように、a鎖およびβ鎖を対合させなければならない。scTCRにおいてαとβとの対合を促進する様々な方法が当技術分野において周知である。いくつかの態様では、a鎖とβ鎖とを連結して一本鎖ポリペプチドを形成するリンカー配列が含まれる。いくつかの態様では、リンカーは、α鎖のC末端とβ鎖のN末端との間の距離にまたがるのに十分な長さを有するべきであるか、またはその逆も同様であるが、リンカーの長さが、標的ペプチド-MHC複合体へのscTCRの結合を遮断または低減するほど長くないことも保証する。いくつかの態様では、第1のTCRセグメントと第2のTCRセグメントとを連結する、sc-TCRのリンカーは、TCR結合特異性を保持しながら、一本鎖ポリペプチドを形成することができる任意のリンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカー配列は、例えば、式-P-AA-P-を有することができ、式中、Pはプロリンであり、AAは、アミノ酸がグリシンおよびセリンであるアミノ酸配列を表す。いくつかの態様では、第1のセグメントと第2のセグメントとは、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対合される。したがって、場合によっては、リンカーは、第1のセグメントのC末端と第2のセグメントのN末端との間の距離にまたがるのに十分な長さを有するか、またはその逆も同様であるが、標的リガンドへのscTCRの結合を遮断または低減するほど長すぎない。いくつかの態様では、リンカーは、10~45個または約10~45個のアミノ酸、例えば、10~30個のアミノ酸または26~41個のアミノ酸残基、例えば、29、30、31または32個のアミノ酸を含有することができる。いくつかの態様では、scTCRは、一本鎖アミノ酸の残基間にジスルフィド結合を含有し、これにより、場合によっては、一本鎖分子のα領域とβ領域との間の対合の安定性が促進され得る(例えば、米国特許第7,569,664号を参照)。いくつかの態様では、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基を一本鎖分子のβ鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する共有ジスルフィド結合を含有する。いくつかの態様では、ジスルフィド結合は、天然dTCRに存在する天然ジスルフィド結合に対応する。いくつかの態様では、天然TCR内のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様では、ジスルフィド結合は、例えば、scTCRポリペプチドの第1および第2の鎖領域の定常領域細胞外配列に1つまたは複数のシステインを組み込むことによって導入された非天然ジスルフィド結合である。例示的なシステイン変異には、上記のいずれかが含まれる。場合によっては、天然ジスルフィド結合および非天然ジスルフィド結合の両方が存在し得る。
【0279】
いくつかの態様では、dTCRまたはscTCRを含むTCRのいずれかは、T細胞の表面上に活性TCRを生じるシグナル伝達ドメインに連結され得る。いくつかの態様では、TCRは、細胞の表面に発現される。いくつかの態様では、TCRは、膜貫通配列に対応する配列を含有する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、Ca膜貫通ドメインまたはCP膜貫通ドメインであり得る。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、非TCR起源、例えば、CD3z、CD28またはB7.1由来の膜貫通領域に由来し得る。いくつかの態様では、TCRは、細胞質配列に対応する配列を含有する。いくつかの態様では、TCRは、CD3zシグナル伝達ドメインを含有する。いくつかの態様では、TCRは、CD3とTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、結合特性などの1つまたは複数の特性が変化した、組換え産生された天然タンパク質またはその変異型であり得る。いくつかの態様では、TCRは、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物などの様々な動物種の1つに由来し得る。
【0280】
いくつかの態様では、TCRは、抗原標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含む。標的抗原は、抗原標的細胞に関連するいずれかの種類のタンパク質またはそのエピトープを含み得る。例えば、TCRは、標的細胞の特定の疾患状態を示す、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含み得る。いくつかの態様では、標的抗原は、プロセシングされ、MHCによって提示される。
【0281】
I. 遺伝子改変された免疫細胞の産生方法
本開示は、腫瘍免疫療法、例えば養子免疫療法のための改変された免疫細胞またはその前駆体(例えばT細胞)を産生または生成する方法を提供する。細胞は、一般に、外因性受容体をコードする導入遺伝子を含むコカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子を標的細胞に感染させることによって、外因性受容体(例えば、TCRおよび/またはCAR)をコードする1つまたは複数の遺伝子操作された核酸を導入することによって操作される。
【0282】
ある特定の態様では、外因性TCRおよび/またはCARをコードする核酸は、レトロウイルス形質導入を介して細胞に導入される。ある特定の態様では、ウイルス形質導入は、免疫細胞または前駆細胞を、外因性TCRおよび/またはCARをコードする核酸を含むレトロウイルス粒子またはレトロウイルスベクターと接触させることを含む。
【0283】
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノムに組み込まれ、大量の外来遺伝物質を送達し、広範囲の種および細胞型に感染し、特別な細胞株に包装され得る。いくつかの態様では、レトロウイルスベクターは、任意で複製欠損または自己不活性化であるレトロウイルスを産生するために、特定の位置でレトロウイルスゲノムに核酸(例えば、外因性TCRおよび/またはCARをコードする核酸)を挿入することによって構築される。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することができるが、TCRおよび/またはCARの組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とし得る。
【0284】
本明細書において開示されるコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含むかまたはそれによってカプセル化されたレトロウイルスを細胞に形質導入する方法は、レンチウイルスのいずれか1つの亜科、属または偽型に限定されず、前記のように、レトロウイルスは、レトロウイルスの複数の亜科、属および偽型のエレメントを含み得る。いくつかの態様では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含むレンチウイルスが好ましい。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスに由来し、レンチウイルスは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含有する複雑なレトロウイルスである(例えば、米国特許第6,013,516号および米国特許第5,994,136号を参照)。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重減衰させることによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefが欠失されて、ベクターが生物学的に安全になっている。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、例えば、TCRまたはCARをコードする核酸の遺伝子移入および発現のためにインビボおよびエクスビボで使用され得る(例えば、米国特許第5,994,136号を参照)。
【0285】
いくつかの態様では、免疫細胞をコカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子と接触させることによってTCRまたはCARをコードする核酸配列を送達する方法は、遺伝子操作されたTリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、および治療的に関連する子孫を生じさせることができるマクロファージを含む遺伝子操作された細胞をもたらす。ある特定の態様では、遺伝子操作された細胞は、自己細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、T細胞疲弊に耐性である。
【0286】
いくつかの態様では、免疫細胞(例えばT細胞)は、CARもしくはTCRをコードする核酸とコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質とを含有する粒子、またはCARもしくはTCRをコードする核酸とコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質とを含有する粒子を含む組成物の導入前、導入中、または導入後にインキュベートまたは培養され得る。いくつかの態様では、細胞(例えばT細胞)は、外因性受容体をコードするウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)による細胞の形質導入前、形質導入中または形質導入後など、接触前、接触中または接触後にインキュベートまたは培養され得る。いくつかの態様では、該方法は、該粒子との接触前に、刺激作用物質または活性化作用物質(例えば抗CD3/抗CD28抗体)によって細胞を活性化または刺激する工程を含む。いくつかの態様では、作用物質の導入前に、細胞は、例えば、任意の刺激作用物質または活性化作用物質の除去によって静置させられる。いくつかの態様では、作用物質の導入前に、刺激作用物質もしくは活性化作用物質および/またはサイトカインは除去されない。
【0287】
J. コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子にカプセル化され、TCRおよび/またはCARをコードする核酸および発現ベクター
本開示は、コカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸およびベクター、該タンパク質を含み、カプセル化するレトロウイルス粒子、ならびに該ウイルス粒子を産生する細胞を提供するが、本開示はまた、該粒子によってカプセル化された核酸およびベクターを提供し、これらの核酸およびベクターは、レトロウイルス粒子に感染した細胞に形質導入され得る導入遺伝子をコードする。したがって、本開示は、外因性TCRまたは外因性CARをコードする核酸およびベクターを提供し、核酸およびベクターは、レトロウイルス粒子内に包装され得る。一態様では、本開示の核酸は、外因性TCRをコードする核酸配列を含む。一態様では、本開示の核酸は、外因性CARをコードする核酸配列を含む。
【0288】
いくつかの態様では、本開示の核酸またはベクターは、例えば哺乳動物細胞内での本明細書において記載されるTCRおよび/またはCARの産生のために提供される。いくつかの態様では、本開示の核酸またはベクターは、TCRまたはCARをコードする核酸の増幅を提供する。
【0289】
本明細書において記載されるように、本開示のTCRは、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む。したがって、本開示は、TCRアルファ鎖をコードする核酸、およびTCRベータ鎖をコードする核酸を提供する。いくつかの態様では、TCRアルファ鎖をコードする核酸は、TCRベータ鎖をコードする核酸とは別個である。例示的な態様では、TCRアルファ鎖をコードする核酸とTCRベータ鎖をコードする核酸とは、同じ核酸内に存在する。
【0290】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、TCRアルファ鎖コード配列とTCRベータ鎖コード配列とを含む核酸を含む。いくつかの態様では、本開示の核酸は、TCRアルファ鎖コード配列と、リンカーによって分離されたTCRベータ鎖コード配列とを含む核酸を含む。本開示において使用するためのリンカーは、複数のタンパク質が、同じ核酸配列(例えば、マルチシストロン性配列またはバイシストロン性配列)によってコードされることを可能にし、複数のタンパク質は、別個のタンパク質成分に解離されるポリタンパク質として翻訳される。例えば、TCRアルファ鎖コード配列とTCRベータ鎖コード配列とを含む、本開示の核酸に使用するためのリンカーは、TCRアルファ鎖とTCRベータ鎖とが、別個のTCRアルファ鎖成分とTCRベータ鎖成分とに解離するポリタンパク質として翻訳されることを可能にする。
【0291】
いくつかの態様では、リンカーは、配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、タンパク質コード領域のATGなどの開始コドンへの直接的な配列内リボソーム進入を促進し、それによって、遺伝子のキャップ非依存性翻訳をもたらすエレメントを指す。限定されることなく、ウイルスmRNA源または細胞mRNA源、例えば免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)から得られるIRES; 血管内皮増殖因子(VEGF); 線維芽細胞増殖因子2; インスリン様増殖因子; 翻訳開始因子eIF4G; 酵母転写因子TFIIDおよびHAP4; ならびに例えば、カルジオウイルス、ライノウイルス、アフトウイルス、HCV、Friendマウス白血病ウイルス(FrMLV)およびMoloneyマウス白血病ウイルス(MoMLV)から得られるIRESを含む様々な配列内リボソーム進入部位が当業者に公知である。当業者であれば、本明細書において使用するための適切なIRESを選択することができるであろう。
【0292】
いくつかの態様では、リンカーは、自己切断ペプチドをコードする核酸配列を含む。本明細書において使用される場合、「自己切断ペプチド」または「2Aペプチド」は、複数のタンパク質が、翻訳時に成分タンパク質に解離するポリタンパク質としてコードされることを可能にするオリゴペプチドを指す。用語「自己切断」の使用は、タンパク質切断反応を暗示することを意図しない。限定されることなく、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のメンバー、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV0、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(TaV)およびブタテッショウウイルス-1(PTV-1); ならびにカリオウイルス(cariovirus)、例えば、タイロウイルス(Theilovirus)および脳心筋炎ウイルスに見られるものを含む様々な自己切断ペプチドまたは2Aペプチドが当業者に公知である。FMDV、ERAV、PTV-1およびTaVに由来する2Aペプチドは、本明細書においてそれぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」および「T2A」と呼ばれる。当業者であれば、本明細書において使用するための適切な自己切断ペプチドを選択することができるであろう。
【0293】
いくつかの態様では、リンカーは、フューリン切断部位をコードする核酸配列をさらに含む。フューリンは、トランスゴルジに存在し、タンパク質前駆体をその分泌前に処理する、遍在的に発現されるプロテアーゼである。フューリンは、そのコンセンサス認識配列のCOOH-末端で切断する。様々なフューリンコンセンサス認識配列(または「フューリン切断部位」)が当業者に公知である。
【0294】
いくつかの態様では、リンカーは、フューリン切断部位と2Aペプチドとの組合せをコードする核酸配列を含む。例には、限定されることなく、フューリンおよびF2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびE2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびP2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびT2Aをコードする核酸配列を含むリンカーが挙げられる。当業者であれば、本明細書において使用するための適切な組合せを選択することができるであろう。そのような態様では、リンカーは、フューリンと2Aペプチドとの間にスペーサー配列をさらに含むことができる。様々なスペーサー配列が当技術分野において公知である。
【0295】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、転写制御エレメント、例えば、プロモーターおよびエンハンサーなどに機能的に連結され得る。好適なプロモーターエレメントおよびエンハンサーエレメントは、当業者に公知である。
【0296】
ある特定の態様では、外因性TCRおよび/またはCARをコードする核酸は、プロモーターと機能的に連結している。ある特定の態様では、プロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターである。
【0297】
プロデューサー細胞に導入する前、およびコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質にカプセル化する前に、CARまたはTCRをコードするベクターを産生することが必要である場合がある。したがって、プロデューサー細胞に導入する前に、外因性TCRまたは外因性CARをコードするベクターを宿主細胞内で増幅するかまたは発現させることが必要である場合がある。細菌細胞内での発現では、好適なプロモーターには、限定されることなく、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPおよびtrcが含まれる。真核細胞内での発現では、好適なプロモーターには、限定されることなく、軽鎖および/または重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーターおよびエンハンサーエレメント; サイトメガロウイルス前初期プロモーター; 単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター; 初期および後期SV40プロモーター; レトロウイルス由来の長反復配列に存在するプロモーター; マウスメタロチオネイン-Iプロモーター; ならびに当技術分野において公知の様々な組織特異的プロモーターが含まれる。可逆的誘導性プロモーターを含む好適な可逆的プロモーターが、当技術分野において公知である。そのような可逆的プロモーターは、多くの生物、例えば、真核生物および原核生物から単離および誘導され得る。第2の生物、例えば、第1の原核生物および第2の真核生物、第1の真核生物および第2の原核生物などに使用するための、第1の生物に由来する可逆的プロモーターの改変は、当技術分野において周知である。そのような可逆的プロモーター、およびそのような可逆的プロモーターに基づくが追加の制御タンパク質も含む系には、限定されることなく、アルコール調節型プロモーター(alcohol regulated promoter)(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(A1cR)に応答性のプロモーターなど)、テトラサイクリン調節型プロモーター(tetracycline regulated promoter)(例えば、TetActivators、TetON、TetOFFを含むプロモーター系など)、ステロイド調節型プロモーター(steroid regulated promoter)(例えば、ratグルココルチコイド受容体プロモーター系、ヒトエストロゲン受容体プロモーター系、レチノイドプロモーター系、甲状腺プロモーター系、エクジソンプロモーター系、ミフェプリストンプロモーター系など)、金属調節型プロモーター(metal regulated promoter)(例えば、メタロチオネインプロモーター系など)、病原性関連調節型プロモーター(pathogenesis-related regulated promoter)(例えば、サリチル酸調節型プロモーター(salicylic acid regulated promoter)、エチレン調節型プロモーター(ethylene regulated promoter)、ベンゾチアジアゾール調節型プロモーター(benzothiadiazole regulated promoter)など)、温度調節型プロモーター(temperature regulated promoter)(例えば、熱ショック誘導性プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズ熱ショックプロモーターなど)、光調節型プロモーター(light regulated promoter)、合成誘導性プロモーターなどが含まれる。
【0298】
いくつかの態様では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーターまたはNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる。例えば、Salmon et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:7739; およびMarodon et al.(2003)Blood 101:3416を参照されたい。別の例として、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、NcrI(p46)プロモーターの使用によって達成され得る。例えば、Eckelhart et al.Blood(2011)117:1565を参照されたい。
【0299】
酵母細胞内での発現では、好適なプロモーターは、構成的プロモーター、例えば、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなど; または調節可能なプロモーター、例えば、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHOSプロモーター、CUP1プロモーター、GALTプロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーターおよびAOX1(例えば、ピキアに使用するために)である。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベルの範囲内である。原核生物宿主細胞に使用するのに適したプロモーターには、限定されることなく、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター; trpプロモーター; lacオペロンプロモーター; ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター; trcプロモーター; tacプロモーターなど; araBADプロモーター; インビボ調節型プロモーター(in vivo regulated promoter)、例えば、ssaGプロモーターまたは関連プロモーター(例えば、米国特許出願公開第20040131637号を参照)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller,J.Bacteriol.(1991)173(1):86-93; Alpuche-Aranda et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1992)89(21):10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al.Mol.Micro.(1992)6:2805-2813)など(例えば、Dunstan et al.,Infect.Immun.(1999)67:5133-5141; McKelvie et al.,Vaccine(2004)22:3243-3255; およびChatfield et al.,Biotechnol.(1992)10:888-892を参照); sigma70プロモーター、例えば、コンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBankアクセッション番号AX798980、AX798961およびAX798183を参照); 静止期プロモーター(stationary phase promoter)、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど; 病原性アイランドSPI-2に由来するプロモーター(例えば、国際公開公報第96/17951号を参照); actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al.,Infect.Immun.(2002)70:1087-1096を参照); rpsMプロモーター(例えば、Valdivia and Falkow Mol.Microbiol.(1996).22:367を参照); tetプロモーター(例えば、Hillen,W.and Wissmann,A.(1989)In Saenger,W.and Heinemann,U.(eds),Topics in Molecular and Structural Biology,Protein--Nucleic Acid Interaction.Macmillan,London,UK,Vol.10,pp.143-162を参照); SP6プロモーター(例えば、Melton et al.,Nucl.Acids Res.(1984)12:7035を参照)などが含まれる。大腸菌などの原核生物に使用するのに適した強力なプロモーターには、限定されることなく、Trc、Tac、T5、T7およびPLambdaが含まれる。細菌宿主細胞に使用するためのオペレーターの非限定的な例には、ラクトースプロモーターオペレーター(LacIリプレッサータンパク質は、ラクトースと接触すると立体配座を変化させ、それによって、Ladリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを妨げる)、トリプトファンプロモーターオペレーター(TrpRリプレッサータンパク質は、トリプトファンと複合体化すると、オペレーターに結合する立体配座を有する; TrpRリプレッサータンパク質は、トリプトファンの非存在下では、オペレーターに結合しない立体配座を有する)およびtacプロモーターオペレーター(例えば、deBoer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1983)80:21-25を参照)が挙げられる。
【0300】
好適なプロモーターの他の例には、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が挙げられる。このプロモーター配列は、それに機能的に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を促進することができる強力な構成的プロモーター配列である。限定されることなく、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)長反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、EF-1アルファプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、限定されることなく、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターを含む他の構成的プロモーター配列も使用することができる。さらに、態様は、構成的プロモーターの使用に限定されない。誘導性プロモーターも企図される。誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望まれる場合に、機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることができるか、または発現が望まれない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、限定されることなく、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0301】
いくつかの態様では、好適なプロモーターを含有する遺伝子座または構築物または導入遺伝子は、誘導可能な系の誘導によって不可逆的に切り替えられる。不可逆的スイッチの誘導に適した系は当技術分野において周知であり、例えば、不可逆的スイッチの誘導は、Cre-lox媒介性組換えを利用することができる(例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、Fuhrmann-Benzakein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)28:e99を参照)。不可逆的に切替え可能なプロモーターの生成では、当技術分野において公知のリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などの任意の好適な組合せを使用することができる。本明細書において他の箇所に記載される部位特異的組換えを行うための方法、機構および要件は、不可逆的に切り替えられたプロモーターを生成する際に使用され、当技術分野において周知である。例えば、参照によりその開示が本明細書に組み入れられる、Grindley et al.Annual Review of Biochemistry(2006)567-605; およびTropp,Molecular Biology(2012)(Jones&Bartlett Publishers,Sudbury,Mass.)を参照されたい。
【0302】
CARまたはTCRをコードする核酸は、発現ベクターおよび/またはクローニングベクター内に存在することができる。発現ベクターは、選択マーカー、複製起点、およびベクターの複製、改変または維持を提供する他の特徴を含むことができる。好適な発現ベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが含まれる。多数の好適なベクターおよびプロモーターが当業者に公知である。多くは、主題組換え構築物を生成するために市販されている。好適な発現ベクターには、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:10319-23; Takahashi et al.,J.Virol.(1999)73:7812-7816を参照); レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳癌ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)などを含むレトロウイルスベクターの全体または一部が含まれる。使用に適した追加の発現ベクターには、例えば、限定されることなく、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクターおよび操作されたハイブリッドウイルスベクターなどがある。ウイルスベクター技術は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al.,2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NY)、ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。
【0303】
発現ベクターは、一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するためにプロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を有する。発現宿主内で機能的な選択マーカーが存在し得る。
【0304】
一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点と、プロモーター配列と、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位と、1つまたは複数の選択マーカーとを含有する(例えば、国際公開公報第01/96584号、国際公開公報第01/29058号および米国特許第6,326,193号)。
【0305】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子を使用して、TCRまたはCARを免疫細胞またはその前駆体(例えばT細胞)に導入することができる。いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子は、その中にコードされるTCRまたはCARの機能的発現を補助する追加的なエレメントを含む。いくつかの態様では、TCRまたはCARをコードする核酸を含む発現ベクターは、哺乳動物プロモーターをさらに含む。一態様では、ベクターは、伸長因子-1-アルファプロモーター(EF-1αプロモーター)をさらに含む。EF-1αプロモーターの使用は、下流の導入遺伝子(例えば、TCRおよび/またはCARをコードする核酸配列)の発現効率を高めることができる。生理学的プロモーター(例えばEF-1αプロモーター)は、組込み媒介遺伝毒性を誘導する可能性が低く、幹細胞を形質転換するレトロウイルスベクターの能力を無効にすることができる。コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子に使用するのに適した他の生理学的プロモーターは、当業者に公知であり、核酸ベクターの例示的な態様に組み込まれ得る。
【0306】
いくつかの態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子は、力価および遺伝子発現を改善することができる非必須シス作用配列をさらに含む。非必須シス作用配列の1つの非限定的な例は、効率的な逆転写および核取込みに重要な中央ポリプリントラクトおよび中央終結配列(cPPT/CTS)である。他の非必須シス作用配列は、当業者に公知であり、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子に組み込まれ得る。いくつかの態様では、CARまたはTCRをコードする核酸ベクターは、転写後調節エレメントをさらに含む。転写後調節エレメントは、RNA翻訳を改善し、導入遺伝子発現を改善し、RNA転写物を安定化することができる。転写後調節エレメントの一例には、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)がある。したがって、いくつかの態様では、核酸ベクターは、WPRE配列をさらに含む。様々な転写後調節エレメントが当業者に公知であり、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子、またはその中に含有され得る核酸ベクターに組み込まれ得る。ベクターは、RNA輸送のためのrev応答エレメント(RRE)、パッケージング配列、ならびに5'および3'長反復配列(LTR)などの追加のエレメントをさらに含み得る。用語「長反復配列」または「LTR」は、U3領域、R領域およびU5領域を含むレトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRは、一般に、レトロウイルス遺伝子の発現に必要な機能(例えば、遺伝子転写物の促進、開始およびポリアデニル化)、およびウイルス複製に必要な機能を提供する。一態様では、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子、およびその中に含有され得る核酸ベクターは、3'U3欠失LTRを含む。したがって、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子、またはその中に含有され得る核酸ベクターは、導入遺伝子の機能的発現の効率を高めるために、本明細書において記載されるエレメントの任意の組合せを含むことができる。例えば、コカルベシクロウイルスエンベロープ化偽型レトロウイルスベクター粒子、またはその中に含有され得る核酸は、TCRまたはCARをコードする核酸に加えて、WPRE配列、cPPT配列、RRE配列、5'LTR、3'U3欠失LTR'を含むことができる。
【0307】
例示的な態様のベクターは、自己不活性化ベクターであり得る。本明細書において使用される場合、用語「自己不活性化ベクター」は、3'LTRエンハンサープロモーター領域(U3領域)が改変されている(例えば、欠失または置換によって)ベクターを指す。自己不活性化ベクターは、初回のウイルス複製を過ぎるとウイルス転写を防止することができる。その結果、自己不活性化ベクターは、一度だけ宿主ゲノム(例えば哺乳動物ゲノム)に感染し、次いで組み込まれることができ、それ以上は感染することができない。したがって、自己不活性化ベクターは、複製能のあるウイルスを作り出すリスクを大幅に低下させることができる。
【0308】
本明細書において言及または引用される論文、特許および特許出願ならびに他のすべての文書および電子的に利用可能な情報の内容は、あたかも各個々の刊行物が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。出願人は、そのような物品、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書からのありとあらゆる材料および情報を本出願に物理的に組み入れる権利を留保する。
【0309】
本発明をその特定の態様を参照して説明してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物を置き換えることができることを当業者は理解すべきである。本明細書において開示される態様の範囲から逸脱することなく、好適な均等物を使用して、本明細書において記載される方法の他の好適な改変および適合を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程または工程を本発明の目的、趣旨および範囲に適合させるために、多くの改変を行うことができる。そのようなすべての改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。ここで、ある特定の態様を詳細に説明してきたが、これは、例示のみを目的として含まれ、限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによってさらに明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0310】
実験例
次に、本発明を以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されず、むしろ、本明細書において提供される教示の結果として明らかなすべての変形例を包含する。
【0311】
材料および方法
(表1)アミノ酸配列およびヌクレオチド配列
【0312】
実施例1:
コカルベシクロウイルスエンベロープ糖タンパク質(Cocal-G)をコードする核酸配列をコドン最適化し(SEQ ID NO:1)、pTRP発現プラスミドにクローニングした(
図1~2)(SEQ ID NO:4)。
【0313】
Gagタンパク質およびPolタンパク質(例えば「gag/polプラスミド」)ならびにRevタンパク質(例えば「revプラスミド」)をコードする移入プラスミドおよびヘルパープラスミド(
図4)とともに、Cocal-GをコードするプラスミドをHEK293-T細胞にトランスフェクトして、Cocal-Gエンベロープ化レンチウイルス粒子を生成した。VSV-Gエンベロープ化粒子を、移入プラスミドおよびヘルパープラスミドとともに、インディアナベシクロウイルス(水疱性口内炎ウイルスまたは水疱性口内炎インディアナウイルスとしても知られる)エンベロープ糖タンパク質(VSV-G)をコードするプラスミドによってトランスフェクトしたHEK293-T細胞から生成し、対照として使用した。
【0314】
最初に、revプラスミド18μg、gag/polプラスミド18μg、VSV-GプラスミドまたはCocal-Gプラスミド7μg、および緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする移入プラスミド(すなわち、レトロウイルス粒子にカプセル化されたプラスミド)15μgを使用した。Cocal-Gエンベロープ化レンチウイルス粒子およびVSV-Gエンベロープ化レンチウイルス粒子を得、濃縮し、CD3/28ビーズ刺激初代ヒトCD4 T細胞に感染させるために使用した。ウイルスに感染した初代ヒトCD4 T細胞はGFPを発現し、これをフローサイトメトリーによって検出した。結果から、Cocal-Gエンベロープ化レンチウイルス粒子に感染した初代CD4細胞は、VSV-Gエンベロープ化レンチウイルス粒子に感染した細胞よりも高い形質導入効率を示したことが示された(
図4、上2つのパネル、および
図5)。
【0315】
次に、Cocal-Gプラスミドの濃度を低下させ(7μgから3μg)、移入プラスミドの濃度を増加させた(15μgから27μg)(
図4、下2つのパネル、および
図5)。改変された濃度のCocal-Gプラスミドおよび移入プラスミド(
図4、下2つのパネル、および
図5)を除いて、HEK293-T細胞トランスフェクションを上記のように行った。結果から、Cocal-Gプラスミドの濃度を低下させると、ウイルス形質導入効率が向上することが実証された(
図4、下2つのパネル、および
図5)。さらに、低濃度のCocal-Gプラスミドを維持しながら同時に移入プラスミドの濃度を増加させても、形質導入効率に影響を及ぼさなかった。重要なことに、Cocal-Gプラスミドの濃度を低下させると、細胞毒性が低下し、移入プラスミドの濃度を増加させると、さらに高い力価のウイルスを増殖させることが可能になる。したがって、これらのプラスミド濃度を調整することは、レンチウイルスベクターの大規模化増殖に重要であり、患者を治療するために使用される安全なGMP準拠製品(例えばCAR T細胞)を生成する点で重要な意味を有する。
【0316】
同様の結果が、CD8+ T細胞を使用して得られた。増加したエンベロープ(Cocal-G)プラスミドおよび減少した移入プラスミドを使用して生成したCocal-G ENVレンチウイルスベクターは、CD8+ T細胞内の形質導入効率を高めた(
図6)。
【0317】
コカル-g EnvまたはVSV-g Envのいずれかを使用して、CD4に基づくCARをコードするレンチウイルスベクター(HIV)を生成した。各ベクターの希釈物をCD8 T細胞に形質導入し、数日後にCD4を用いて培養物を染色した。データから、コカルEnvを用いて作製したベクターは、VSV-gを用いて作製したベクターよりも高い力価を有することが示された(
図7)。
【0318】
他の態様
本明細書における変数の任意の定義における要素の一覧の列挙は、列挙された要素の任意の単一の要素または組合せ(または部分的組合せ)としてのその変数の定義を含む。本明細書における態様の列挙は、その態様を任意の単一の態様として、または任意の他の態様もしくはその一部と組み合わせて含む。
【0319】
本明細書において引用される特許、特許出願および刊行物のそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本発明を特定の態様を参照して開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形例が当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および均等な変形例を含むと解釈されることを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】