(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】FABP5阻害剤を使用して癌を使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230911BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230911BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230911BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230911BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230911BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/132 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20230911BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K31/495
A61K31/496
A61K31/439
A61K31/4439
A61K31/132
A61K31/40
A61K31/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514865
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 IB2021058054
(87)【国際公開番号】W WO2022049529
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202041038258
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039020
【氏名又は名称】オーリジーン オンコロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラ,ムラリドハラ
(72)【発明者】
【氏名】カレ,レーナ
(72)【発明者】
【氏名】チッカーナ,ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】ナタラジ,ヴィジャヤシャンカール
(72)【発明者】
【氏名】パニグラフィ,スニール クマール
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC16
4C086BC50
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤を、処置を必要としている対象に投与することによって、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌を処置する方法を記載している。本発明は、FABP5阻害剤を対象に投与する工程を含む、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する対象の癌、特に血液癌および固形腫瘍を処置する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、B細胞受容体シグナル伝達(BCR)の調節不全またはT細胞受容体シグナル伝達(TCR)の調節不全である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、BCRの調節不全である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
BCRの調節不全はBCRシグナル伝達メディエーターの遺伝子変化に関連する、請求項2~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
BCRシグナル伝達メディエーターは、CD79、BTK、MALT1、BCL-10、BCL2、TRAF2、TRAF6、TAKl、CARD9、CARD10(またはCARMA3)、CARD11(またはCARMA1)、CARD14(またはCARMA2)、TABl、TAB2、TAB3、TAKl、IKKα、IKKβ、IKKγ、AP11、AP12、AP13、AP14、またはA20である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の調節不全はさらに、IKBKB、NFKBIA、NFKBIE、TNFAIP3、TRAF3、TRAF2、BIRC3、MAP3K14、IKK複合体、CBM複合体、NF-κB標的遺伝子、またはMAPK標的遺伝子の遺伝子変化に関連する、請求項2~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の調節不全はさらに、TCF3遺伝子またはID3遺伝子の遺伝子変化に関連する、請求項2~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、TCRの調節不全である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
T細胞受容体(TCR)シグナル伝達の調節不全は、TCRシグナル伝達メディエーターの遺伝子変化に関連する、請求項1~2および8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記TCRシグナル伝達メディエーターは、FYN、ITK、SYK、PLC-γ、MALT1、BCL-10、BCL2、TRAF2、TRAF6、TAKl、CARD9、CARD10(またはCARMA3)、CARD11(またはCARMA1)、CARD14(またはCARMA2)、FABP5、TABl、TAB2、TAB3、TAKl、IKKα、IKKβ、IKKγ、AP11、AP12、AP13、AP14、またはA20である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記FABP5阻害剤はFABP5に不可逆的に結合して共有結合を形成する、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記FABP5阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体であり:
【化1】
式中、
Aはアリールまたはヘテロアリールを表し、
XはN-Ryを表すか、または存在せず、
YはO、S、またはNCNを表し、
Bはアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、およびオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
1はアルキルを表し、R
2は水素またはアルキルを表し、あるいは、R
1とR
2は、それらが結合している炭素原子と一体となって3員~5員のシクロアルキル環を形成し、
R
3は-C(O)R
a、-S(O)
2R
a、-NHS(O)
2R
a、-NR
bC(O)R
a、=NOR
a、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、または(ヘテロシクロアルキル)アルキル-を表し、ヘテロアリールとヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、オキソ、および-C(O)R
xから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシアリール、ヒドロキシアルキル、アセチレン、アシル、ヒドロキシ、シクロアルキル、または-N(R
x)
2を表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換され、
R
aはアルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、アリール、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、アルコキシアリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、カルボン酸、エステル、チオエステル、オキソ(=O)、および-C(O)R
xから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
xは水素、アルキル、アルケニル、アシル、または-C(O)-シクロアルキルを表し、
R
yは水素またはアルキルを表し、
R
bは水素、アルキル、またはアルケニルを表し、
「m」は0、1、2、または3を表す、
請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
Bはヘテロシクロアルキルを表す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Bは
【化2】
を表す、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
R
1はアルキルを表し、および、R
2は水素を表す、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
R
1とR
2は、それらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル環またはシクロペンチル環を形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
Aはアリールを表す、請求項12~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記FABP5阻害剤は、式(IA)
【化3】
の化合物の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有する、請求項1または12に記載の方法。
【請求項19】
Bは5員または6員のシクロアルキルを表す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Bは5員または6員のヘテロシクロアルキルを表す、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
Aはアリールを表す、請求項18~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
R
3は-NHS(O)
2R
aまたは-NR
bC(O)R
aを表す、請求項18~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記FABP5阻害剤は、式(IB)
【化4】
の化合物の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有する、請求項1または12に記載の方法。
【請求項24】
Bはアルキル、ハロ、またはオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
Bは5員または6員のヘテロシクロアルキルを表す、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記FABP5阻害剤は、式(IC)
【化5】
の化合物の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有する、請求項1または12に記載の方法。
【請求項27】
R
1はアルキルを表し、R
2は水素またはアルキルを表す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
R
1とR
2は、それらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピルまたはシクロペンチルを形成する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
R
3は-C(O)R
xで任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す、請求項26~28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
R
4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、またはシクロアルキルを表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換される、請求項26~29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
前記FABP5阻害剤は、式(ID)
【化6】
の化合物の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有する、請求項1または12に記載の方法。
【請求項32】
R
aはアルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルケニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、ハロ、アリール、ハロアルキル、またはカルボン酸から選択される1つ以上の基で任意選択で置換される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
R
aはアルキルまたはハロアルキルで置換されるアルケニルを表す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記FABP5阻害剤は、式(IE)
【化7】
の化合物の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有する、請求項1または12に記載の方法。
【請求項35】
前記FABP5阻害剤は、式(IF)、(IG)、または(IH)
【化8】
の化合物の構造あるいはその薬学的に許容可能な塩または立体異性体を有する、請求項1または12に記載の方法。
【請求項36】
前記FABP5阻害剤は、以下から選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体である、請求項1または12に記載の方法。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【請求項37】
癌細胞との接触は、処置を必要としている対象において生じ、それによって、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌を処置する、請求項1-36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記対象は、リンパ球受容体(例えば、B細胞受容体およびT細胞受容体)シグナル伝達経路の異常な活性を特徴とする癌を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象は、B細胞受容体シグナル伝達経路の異常な活性を特徴とする癌を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象は、T細胞受容体シグナル伝達経路の異常な活性を特徴とする癌を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する対象の癌を処置する方法であって、治療有効量のFABP5阻害剤を、処置を必要としている前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項42】
前記癌はB細胞癌またはT細胞癌である、請求項37~39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
癌の処置は、B細胞腫瘍細胞、T細胞腫瘍細胞、および/またはそれらの転移の増殖を阻害することを含む、請求項37~39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記癌はB細胞癌である、請求項37~43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
B細胞癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性化B細胞びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)、胚中心びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(GCB DLBCL)、縦隔原発B細胞リンパ腫(PMBL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、結節外辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記B細胞癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球白血病(CLL)、または多発性骨髄腫である、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記B細胞癌は、濾胞性リンパ腫、活性化B細胞(ABC)型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、胚中心B細胞(GCB)型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル層リンパ腫(MZL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、縦隔原発性B細胞リンパ腫(PMBCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫、MALTリンパ腫である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記癌はT細胞癌である、請求項37~43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
前記T細胞癌はT細胞白血病またはT細胞リンパ腫である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記T細胞癌は、非特定型末梢T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、血液免疫芽細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、分芽型NK細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、肝脾(hematosplenic)ガンマ-デルタT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻のNK/Tリンパ腫、および処置に関連するT細胞リンパ腫から選択されるT細胞悪性腫瘍である、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記T細胞癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-CLL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、または成人T細胞リンパ腫(ATCL)である、請求項48~50のいずれか1つに記載の方法。
【請求項52】
対象における固形腫瘍を処置する方法であって、治療有効量のFABP5阻害剤を、処置を必要としている前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項53】
前記固形腫瘍は、前立腺、脳、頭頸部、子宮頸部、結腸、膵臓、膀胱、胃、皮膚、食道、肝臓、胆管、または腎臓の腫瘍である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記FABP5阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体であり、
【化9】
式中、
Aはアリールまたはヘテロアリールを表し、
XはN-Ryを表すか、または存在せず、
YはO、S、またはNCNを表し、
Bはアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、およびオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
1はアルキルを表し、R
2は水素またはアルキルを表し、あるいは、R
1とR
2は、それらが結合している炭素原子と一体となって3員~5員のシクロアルキル環を形成し、
R
3は-C(O)R
a、-S(O)
2R
a、-NHS(O)
2R
a、-NR
bC(O)R
a、=NOR
a、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、または(ヘテロシクロアルキル)アルキル-を表し、ヘテロアリールとヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、オキソ、および-C(O)R
xから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシアリール、ヒドロキシアルキル、アセチレン、アシル、ヒドロキシ、シクロアルキル、または-N(R
x)
2を表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換され、
R
aはアルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、アリール、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、アルコキシアリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、カルボン酸、エステル、チオエステル、オキソ(=O)、および-C(O)R
xから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
xは水素、アルキル、アルケニル、アシル、または-C(O)-シクロアルキルを表し、
R
yは水素またはアルキルを表し、
R
bは水素、アルキル、またはアルケニルを表し、
「m」は0、1、2、または3を表す、請求項41~53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項55】
前記FABP5阻害剤は、請求項12~36のうちのいずれか1つで詳述されるような化合物である、請求項41~54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記癌細胞を別の治療剤と接触させる工程をさらに含む、請求項1~40のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
別の治療剤を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項41~55のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年9月4日に出願されたインド仮特許出願第202041038258号の利点を主張するものであり、これらの明細書は全体として引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、処置を必要としている対象にFABP5阻害剤を投与することにより、癌を処置する方法に関する。特に、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する対象のリンパ系癌を処置する方法であって、処置を必要としている対象にFABP5阻害剤を投与する工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
B細胞とT細胞は、効果的な適応免疫応答を開始する際の主要な役割を担っている。これらの細胞は、抗原を効果的に認識する特異的な受容体:それぞれB細胞抗原受容体(BCR)およびT細胞抗原受容体(TCR)を発現する。BCRは、IgαおよびIgβ(CD79aおよびCD79b)ヘテロダイマーとして知られている不変異体との複合体におけるIgMまたはIgDサブクラスのいずれかの高度に可変な膜結合型免疫グロブリンで構成される膜貫通複合体である(Tolar et al. Immunol Rev 232: 34-41, 2009)。BCR免疫グロブリン配列は、これらのタンパク質をコードする遺伝子がB細胞の発育中に再構成と体細胞超変異を経験し、高度なタンパク質の多様性(1011以上の異なる受容体)を生み出すため、非常に多様性がある(Schatz and Ji, Nat Rev Immunol 11: 251 -263, 2011)。TCRはさらに、αβ二量体またはγδ二量体という非常に多様な抗原結合サブユニットを特徴としている(Davis, Semin Immunol 16: 239-243, 2004; Krogsgaard and Davis 2005, Nat Immunol 6: 239-245)。これらは不変のCD3サブユニットγε、δε、ζζζに連結し、原形質膜におけるγδとαβサブユニットの輸送と安定性に必要不可欠である。
【0004】
BおよびTリンパ球の活性化は、効率的な適応免疫応答の生成における重要な事象であり、シグナル伝達経路の多様なネットワークによって制御されている。B細胞やT細胞の活性化に関与するこの複雑なシグナル伝達は、広範囲に研究されている。これらの細胞の発癌活性化と複数の下流の異常なシグナル伝達機構が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびその他のB細胞やT細胞の癌などの様々なリンパ性悪性腫瘍の主な原因である。カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11またはCARMA1)--B細胞CLL/リンパ腫10(BCL10)--MALT1パラカスパーゼ(MALT1)[CBM]シグナロソーム複合体は、リンパ球の活性化、増殖、生存、代謝につながるNF-kB経路の重要な制御因子であり、CBM成分と下流エフェクターにおける調節不全は多様なグループのヒト原発性免疫不全疾患に潜在的に関連し得ることを裏付ける多くの証拠がある(Henry Y.Lu et al、 Frontiers in Immunology, 2018, Vol.9, Art.2078)。そのため、BCRまたはTCRシグナル伝達経路を標的とすることは、リンパ性悪性腫瘍および免疫不全疾患の治療に対する潜在的な治療利点を有すると考えられている。
【0005】
脂肪酸結合タンパク質-5(FABP5)または表皮FABPは、低分子量の脂質結合タンパク質ファミリーに属する。FABP5は、疎水性リガンドの結合、貯蔵、および適切な細胞区画への輸送に関与している。FABP5は、長鎖脂肪酸(LCFA)の取り込みと輸送に関与し、細胞シグナル伝達、遺伝子制御、細胞の増殖と分化に重要な役割を果たす。最近の研究では、FABP5が細胞の成長と分化に関連する遺伝子発現の制御に重要な役割を果たすことが示唆されている。FABP5の発現量は、複数の種類の癌において、悪性度と密接な関係があった。FABP5は、胆管細胞癌および肝細胞癌(Ohata et al., Cancer Med. 2017, May 6(5):1049-1061, Fujii et al. Proteomics, 5: 1411-1422, 2005, Jeong et al. Oncol Rep. 2012 Oct; 28(4):1283-92)、前立腺癌(Al-Jameel et al., Oncotarget. 2017, May 9; 8(19): 31041-31056 Adamson et al., Oncogene. 2003 May 8; 22(18):2739-49; Kawaguchi et al., Biochem J. 2016 Feb 15; 473(4):449-61; Morgan et al., Int J Oncol. 2008 Apr; 32(4):767-75; Morgan et al., PPAR Res. 2010; 2010:234629; Myers et al., J Cancer. 2016, Jul 5; 7(11):1452-64, Senga et al. Oncotarget, 2018, Vol. 9, (No. 60), pp: 31753-31770; Carbonetti et al. Sci Rep. 2019, Dec 12; 9(1):18944, Carbonetti et al. Prostate. 2020, Jan 80(1): 88-98)、神経膠腫(Barbus et al., 2011, J Natl Cancer Inst 103:598-606)、経口扁平上皮癌(Fang et al., J Oral Pathol Med (2010) 39: 342~348; Masouye et al Dermatology. 1996, 192:208-213; Watanabe et al., J. Dermatol Sci. 16 (1), 17e22. 1997)、子宮頚癌(Wang et al., Br. J. Cancer 110 (7), 1748e1758, 2014c; Wang et al., 2016 Nov Tumour Biol. 37(11), 14873e14883)、大腸癌(Kawaguchi et al., Biochem. J. 473 (4), 449e461, 2016a, FEBS Open Bio 6 (3).5463.12031.2016b; Koshiyama et al., Biomed. Chromatogr. 27 (4), 440e450 2013; Petrova et al., Clin. Biochem. 41 (14e15), 1224e1236, 2008)、膵臓癌(Sinha et al., Electrophoresis 20 (14), 2952e2960,1999)、膀胱癌(Chen et al., J. Int. Med. Res. 39 (2), 533e540, 2011)、乳癌(Kannan-Thulasiraman et al., J. Biol. Chem., 285 (25), 19106e19115, 2010; Levi et al., Cancer Res. 73 (15), 4770e4780, 2013; Liu et al., Am. J. Pathol. 178 (3), 997e1008, 2011a, Mol. Cancer 14, 129, 2015a; Powell et al., Oncotarget 6 (8), 6373e6385, 2015; Thulasiraman et al., BMC Cancer 14 (724),2014; Zhang et al., Oncotarget 6 (34), 35830e35842, 2015)、胃癌(Zhao et al., Oncol Lett. 2017; 14(4): 4772), Pan et al. Cancer Cell Int. 2019, 19:69)、乳癌(Levi et al., Cancer Res. 73:4770-4780, 2013)、ブドウ膜黒色腫(Xu et al., Oncol Lett. 2020; 19(3):)、食道癌(Ogawa et al., 2008, Dis Esophagus 21:288-297)、腎細胞癌(Lv et al., Int J Oncol. 2019, Apr; 54(4):1221-1232)を含むいくつかの癌で上方制御される。FABP5は発癌時にエピジェネティックな機構を介して高度に上方制御される(Kawaguchi, The Biochemical journal, 473 (2016) 449-461)。細胞内シグナル伝達の調節におけるFABP5の機能は広く研究されており、FABP5がEGFR、VEGFR、NFkB、およびPPARの経路に関与しており、様々な固形腫瘍の病因に一定の役割を果たしていることを示唆している。しかしながら、BCRまたはTCRシグナル伝達経路の下流で起こる異常なシグナル伝達事象へのFABP5の直接的な関与、およびリンパ性悪性腫瘍またはその他の関連疾患の治療のためにFABP5を標的とすることの治療的有用性は、まだ報告されていない。
【0006】
国際出願WO/2009/053715、WO/2011/163195、WO/2012/154518、WO/2015/091532、WO/2015/140055、WO/2016/087994、WO/2016/106629、WO/2018/053189、WO/2019/089512、WO/2019/149164などは、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、PI3Kアイソフォーム特異的阻害剤、およびSYK阻害剤などの、BCRシグナル伝達を標的とすることができる化合物とその誘導体を報告しており、B細胞悪性腫瘍の治療において効果があるとされてきた。しかしながら、これらの薬剤が有効となるのは、BCR経路の活性化が、組織微小環境に存在する微生物抗原または自己抗原によるBCR刺激、BCR複合体内の活性化変異、または目的の標的(阻害剤によってはBTK、PI3Kdelta、SYKなど)の上流のシグナル伝達成分、およびリガンド非依存性の持続性(tonic)BCRシグナル伝達による場合のみである。BCR経路の活性化がCARD11およびTNFAIP3の変異などの下流の変化によるもの、およびそれ以外の変化によるものである癌では、これらは臨床効果を示さない。
【0007】
上記の理由により、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびその他のB細胞癌およびT細胞癌の治療、さらには免疫不全疾患の治療のために、リンパ球受容体経路を調節することができる化合物が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、部分的には、癌を処置する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法に基づく。本開示はさらに、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全経路の調節不全に関連する血液学的癌細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤に接触させる工程を含む方法に関する。
【0009】
1つの態様において、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、以下に記載される式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体と癌細胞を接触させる工程を含む、方法に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、FABP5活性を抑制および/または阻害することができる式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体と癌細胞を接触させる工程を含む、方法に関する。例えば、これらの化合物は、リンパ球受容体(例えば、B細胞受容体およびT細胞受容体)シグナル伝達経路の異常なまたは望ましくない活性を特徴とする1つ以上の疾患を処置するために使用することができる。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、B細胞癌細胞またはT細胞癌細胞をFABP5阻害剤と接触させることにより、B細胞癌細胞またはT細胞癌細胞の増殖を阻害することに関する。B細胞癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、または多発性骨髄腫であり得る。T細胞癌はT細胞白血病またはT細胞リンパ腫であり得る。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、固形腫瘍をFABP5阻害剤と接触させることによって、固形腫瘍の増殖を阻害する工程を含む。固形腫瘍は、前立腺、脳、頭頸部、子宮頸部、結腸、膵臓、膀胱、胃、皮膚、食道、肝臓、胆管、または腎臓の腫瘍であり得る。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、対象においてリンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する癌を処置する方法であって、治療有効量のFABP5阻害剤を、処置を必要としている対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、対象における血液学的癌を処置する方法であって、治療有効量のFABP5阻害剤を、処置を必要としている対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】OCI-LY3細胞株における化合物23対イブルチニブ(BTK阻害剤)の抗増殖活性
【
図3A】化合物23を用いる処置におけるOCI-LY10細胞のRelB蓄積
【
図3B】化合物23を用いる処置におけるOCI-LY10細胞のA20切断の阻害
【
図5A】NF-kBレポーターアッセイ中の化合物23のEC
50
【
図5B】NFATレポーターアッセイ中の化合物23のEC
50
【
図6A】ヒトDLBCL腫瘍モデルにおける化合物23のインビボ腫瘍増殖の阻害
【
図6B】ヒトDLBCL腫瘍モデルにおける化合物23による処置時の循環性IL-10の阻害
【
図6C】ヒトDLBCL腫瘍モデルにおける化合物23による処置時の腫瘍におけるIL-10の阻害
【
図7】OCI-Ly10細胞におけるFABP5に関する細胞サーマルシフトアッセイ
【発明を実施するための形態】
【0016】
各実施形態は、本開示の制限ではなく、本開示の説明により提供される。実際に、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、本開示において様々な修正と変更を行うことができることは、当業者に明白である。例えば、1つの実施形態の一部として例示されまたは記載される特徴が、別の更なる実施形態をもたらすために別の実施形態に使用され得る。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で生ずるようにそのような修正と変更をカバーする。本開示の他の目的、特徴、および態様は、以下の詳細な記載に開示されるか、または以下の詳細な記載に由来し得る。本議論が例示的な実施形態のみの記載であり、本開示のより広範囲の態様を制限すると解釈されるものでないことは、当業者によって理解されたい。
【0017】
本発明は、癌細胞におけるリンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を調整する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0018】
特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達は、B細胞受容体シグナル伝達(BCR)またはT細胞受容体シグナル伝達(TCR)である。特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達はB細胞受容体シグナル伝達(BCR)である。
【0019】
特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、B細胞受容体シグナル伝達(BCR)の調節不全またはT細胞受容体シグナル伝達(TCR)の調節不全である。特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、B細胞受容体シグナル伝達(BCR)の調節不全である。
【0020】
いくつかの実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、リンパ球受容体シグナル伝達メディエーターの遺伝子変化に関連する。いくつかの実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、B細胞受容体シグナル伝達メディエーターまたはT細胞受容体シグナル伝達メディエーターの遺伝子変化に関連する。
【0021】
特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達メディエーターの遺伝子変化は、リンパ球の過剰活性化を引き起こすリンパ球受容体シグナル伝達メディエーターの過剰発現をもたらす変異、欠失、または他の変化を含む。特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達メディエーターの遺伝子変化は、突然変異(機能の喪失、または有害なものもしくは活性化させるもの)、転座、増幅、またはゲノム再編成、もしくはリンパ性悪性腫瘍につながるリンパ球受容体シグナル伝達メディエーターの過剰発現または過剰活性化を導くことを含む他の変化を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、B細胞受容体シグナル伝達メディエーターの遺伝子変化に関連する。いくつかの実施形態では、B細胞受容体シグナル伝達メディエーターの調節不全は、突然変異(機能の喪失、または有害なものもしくは活性化させるもの)、転座、増幅、またはゲノム再編成、もしくはB細胞受容体シグナル伝達メディエーターの過剰発現または過剰活性化を導くことを含む他の変化を含む。特定の実施形態では、BCRシグナル伝達メディエーターは、CD79、BTK、MALT1、BCL-10、BCL2、TRAF2、TRAF6、TAKl、CARD9、CARD10(またはCARMA3)、CARD11(またはCARMA1)、CARD14(またはCARMA2)、TABl、TAB2、TAB3、TAKl、IKKα、IKKβ、IKKγ、AP11、AP12、AP13、AP14、またはA20である。
【0023】
特定の実施形態では、BCRシグナル伝達メディエーターは、CD79、BTK、MALT1、BCL-10、BCL2、TRAF2、TRAF6、TAKl、CARD10(またはCARMA3)、CARD11(またはCARMA1)、CARD14(またはCARMA2)、TABl、TAB2、TAB3、TAKl、IKKα、IKKβ、IKKγ、またはA20である。さらなる実施形態では、BCRシグナル伝達メディエーターは、CD79、BTK、MALT1、BCL-10、BCL2、TRAF2、TRAF6、TAKl、CARD11(またはCARMA1)、CARD14(またはCARMA2)、TAKl、IKKα、IKKβ、IKKγ、またはA20である。
【0024】
さらなる実施形態では、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の調節不全はさらに、IKBKB、NFKBIA、NFKBIE、TNFAIP3、TRAF3、TRAF2、BIRC3、MAP3K14、IKK複合体、CBM複合体、NF-κB標的遺伝子、またはMAPK標的遺伝子の遺伝子変化に関連する。特定の実施形態では、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の調節不全はさらに、IKBKB、NFKBIA、NFKBIE、TNFAIP3、TRAF3、TRAF2、BIRC3、MAP3K14、IKK複合体、CBM複合体、またはNF-κB標的遺伝子の遺伝子変化と関連する。いくつかの実施形態では、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の調節不全はさらに、TCF3遺伝子またはID3遺伝子の変化に関連する。
【0025】
特定の実施形態では、BCRシグナル伝達刺激は、分子および機能的証拠によって示唆されるように、腫瘍細胞と抗原との間の微小環境接触を介して生じる。
【0026】
特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達はT細胞受容体シグナル伝達(TCR)である。特定の実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、T細胞受容体シグナル伝達(TCR)の調節不全である。いくつかの実施形態では、リンパ球受容体シグナル伝達の調節不全は、T細胞受容体シグナル伝達メディエーターの遺伝子変化に関連する。いくつかの実施形態では、T細胞受容体シグナル伝達メディエーターの調節不全は、突然変異(機能の喪失、または有害なものもしくは活性化させるもの)、転座、増幅、またはゲノム再編成、もしくはT細胞受容体シグナル伝達メディエーターの過剰発現または過剰活性化を導くことを含む他の変化を含む。
【0027】
特定の実施形態では、TCRシグナル伝達メディエーターは、FYN、ITK、SYK、PLC-γ、MALT1、BCL-10、BCL2、TRAF2、TRAF6、TAKl、CARD9、CARD10(またはCARMA3)、CARD11 (またはCARMA1)、CARD14(またはCARMA2)、FABP5、TABl、TAB2、TAB3、TAKl、IKKα、IKKβ、IKKγ、AP11、AP12、AP13、AP14、またはA20である。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、B細胞受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。特定の好ましい実施形態では、本発明は、B細胞受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体と癌細胞を接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、T細胞受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。特定の好ましい実施形態では、本発明は、T細胞受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体と癌細胞を接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0030】
特定の実施形態では、細胞は処置を必要としている対象内に存在する。特定の実施形態では、対象は、リンパ球受容体(例えば、B細胞受容体およびT細胞受容体)シグナル伝達経路の異常な活性を特徴とする癌を有する。
【0031】
特定の実施形態では、対象は、B細胞受容体シグナル伝達経路の異常な活性を特徴とする癌を有する。
【0032】
特定の実施形態では、対象は、T細胞受容体シグナル伝達経路の異常な活性を特徴とする癌を有する。
【0033】
特定の実施形態では、細胞との接触は、処置を必要としている対象において生じ、それによって、癌、免疫障害、または免疫不全障害から選択される疾患または障害を処置する。
【0034】
特定の実施形態では、細胞との接触は、処置を必要としている対象において生じ、それによって、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌を処置する。
【0035】
特定の実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する対象の癌の処置においてFABP5阻害剤として使用するための式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のFABP5阻害剤は、FABP5に共有結合および/または不可逆的に結合するものである。特定の実施形態では、本発明のFABP5阻害剤は、FABP5に不可逆的に結合して共有結合を形成する。いくつかの実施形態では、対象は、共有結合性のおよび/または不可逆的なFABP5阻害剤で処置される。
【0037】
特定の実施形態では、FABP5阻害剤は、α-トルキシル酸誘導体(Berger et al, PLoS One. 2012; 7(12): e50968に記載されるように)、トリアゾロピリミジノン誘導体(WO2010056631に記載されるように)、およびシクロブタン誘導体(US201902013に記載されるように)を含む。
【0038】
式(I)の化合物
特定の実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞を脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供し、FABP5阻害剤は、式(I)の構造またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し:
【0039】
【化1】
式中、
Aはアリールまたはヘテロアリールを表し、
XはN-Ryを表すか、または存在せず、
YはO、S、またはNCNを表し、
Bはアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、
アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、およびオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
1はアルキルを表し、R
2は水素またはアルキルを表し、あるいは、R
1とR
2は、それらが結合している炭素原子と一体となって3員~5員のシクロアルキル環を形成し、
R
3は-C(O)R
a、-S(O)
2R
a、-NHS(O)
2R
a、-NR
bC(O)R
a、=NOR
a、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、または(ヘテロシクロアルキル)アルキル-を表し、ヘテロアリールとヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、オキソ、および-C(O)R
xから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシアリール、ヒドロキシアルキル、アセチレン、アシル、ヒドロキシ、シクロアルキル、または-N(R
x)
2を表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換され、
R
aはアルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、アリール、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、アルコキシアリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、カルボン酸、エステル、チオエステル、オキソ(=O)、および-C(O)R
xから選択される1つ以上の基で任意選択で置換され、
R
xは水素、アルキル、アルケニル、アシル、または-C(O)-シクロアルキルを表し、
R
yは水素またはアルキルを表し、
R
bは水素、アルキル、またはアルケニルを表し、
「m」は0、1、2、または3を表す。
【0040】
1つの実施形態にしたがって、XはNHを表す。特定の実施形態では、Xは存在しない。
【0041】
1つの実施形態にしたがって、YはOを表す。1つの実施形態にしたがって、Aはアリールを表す。特定の実施形態では、Aはフェニルを表す。
【0042】
特定の実施形態では、Aは、R4の「m」の出現によって置換されるフェニルを表す。特定の実施形態では、mは1、2、または3を表す。特定の実施形態では、「m」は1または2を表す。
【0043】
1つの実施形態にしたがって、Bはアルキル、ハロ、またはオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換されたシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを表す。
【0044】
特定の実施形態では、Bはシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを表し、ヘテロシクロアルキルはオキソで任意選択で置換される。
【0045】
特定の実施形態では、Bはヘテロシクロアルキルを表す。特定の実施形態では、Bは5員~6員のヘテロシクロアルキルを表す。特定の実施形態では、Bは
【0046】
【0047】
1つの実施形態にしたがって、R1はアルキルを表し、
R2は水素を表す。
【0048】
特定の実施形態では、R1とR2は、それらが結合している炭素原子と一体となって3員~5員のシクロアルキル環を形成する。
【0049】
特定の実施形態では、R1とR2は、それらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル環またはシクロペンチル環を形成する。
【0050】
特定の実施形態では、R1とR2は、それらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル環を形成する。
【0051】
1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Ra、-NHS(O)2Ra、または-NRbC(O)Raを表す。
【0052】
1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Raを表し、
Raは式(I)の化合物において定義される通りである。
【0053】
特定の実施形態では、Raはアルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルケニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、アルキル、ハロ、アリール、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アミノアルキル、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、アルコキシアリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、カルボン酸、エステル、チオエステル、またはオキソ(=O)、もしくは-C(O)Rxから選択される1つ以上の群で任意選択で置換される。
【0054】
1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Rxで任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す。
【0055】
特定の実施形態では、Rbは水素またはアルキルを表す。
【0056】
1つの実施形態にしたがって、R4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、またはシクロアルキルを表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換される。
【0057】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IA)の化合物の構造:
【0058】
【化3】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;A、R
1、R
2、R
3、R
4、B、X、およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0059】
式(IA)の化合物の1つの実施形態にしたがって、XはNHを表す。式(IA)の化合物の1つの実施形態にしたがって、Aはアリールを表す。
【0060】
式(IA)の化合物の特定の実施形態では、Aはフェニルを表す。
【0061】
式(IA)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Bは、アルキル、ハロ、またはオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換されるシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを表す。
【0062】
式(IA)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Bは5員または6員のシクロアルキルを表す。式(IA)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Bはシクロペンチル環またはシクロヘキシル環を表す。
【0063】
式(IA)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Ra、-S(O)2Ra、NHS(O)2Ra、-NRbC(O)Ra、または=NORaを表す。
【0064】
式(IA)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R3は-NHS(O)2Raまたは-NRbC(O)Raを表し、RaとRbは式(I)の化合物において定義される通りである。
【0065】
式(IA)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、またはシクロアルキルを表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換される。
【0066】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IB)の化合物の構造:
【0067】
【化4】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;A、R
1、R
2、R
3、R
4、B、およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0068】
式(IB)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Aはアリールを表す。
【0069】
式(IB)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Bはアルキル、ハロ、またはオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換される。
【0070】
式(IB)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Bはアルキル、ハロ、またはオキソから選択される1つ以上の基で任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す。
【0071】
式(IB)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Bは5員または6員のヘテロシクロアルキルを表す。
【0072】
式(IB)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Rxで任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す。
【0073】
式(IB)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、またはシクロアルキルを表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換される。
【0074】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IC)の化合物の構造:
【0075】
【化5】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;A、R
1、R
2、R
3、R
4、およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0076】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Aはアリールを表す。
【0077】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R1はアルキルを表し、
R2は水素またはアルキルを表す。
【0078】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R1とR2は、それらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピル環またはシクロペンチル環を形成する。
【0079】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R3は任意選択で置換されたヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、または(ヘテロシクロアルキル)アルキル-を表す。
【0080】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Rxで任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す。
【0081】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R3は-C(O)Rxで任意選択で置換されるヘテロシクロアルキルを表す。
【0082】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、またはシクロアルキルを表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換される。
【0083】
式(IC)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、「m」は2を表す。
【0084】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(ID)の化合物の構造:
【0085】
【化6】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;A、R
1、R
2、R
4、R
a、および「m」は、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0086】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Aはアリールを表す。
【0087】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R1はアルキルを表し、
R2は独立して水素を表す。
【0088】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Raはアルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルケニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、ハロ、アリール、ハロアルキル、またはカルボン酸から選択される1つ以上の基で任意選択で置換される。
【0089】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Raはアルケニルまたはハロアルキルで置換されるアルケニルを表す。
【0090】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はアルキル、ハロ、ハロアルキル、またはシクロアルキルを表し、シクロアルキルはアルキルで任意選択で置換される。
【0091】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はハロを表す。
【0092】
式(ID)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、mは2を表す。
【0093】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IE)の化合物の構造:
【0094】
【化7】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;A、R
4、R
a、およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0095】
式(IE)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Aはアリールを表す。
【0096】
式(IE)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Raはアルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルケニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、ハロ、アリール、ハロアルキル、またはカルボン酸から選択される1つ以上の基で任意選択で置換される。
【0097】
式(IE)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はハロを表す。
【0098】
式(IE)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、mは2を表す。
【0099】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IF)の化合物の構造:
【0100】
【化8】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;R
4、R
a、およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0101】
式(IF)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、Raはアルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルを表し、アルケニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルは、ハロ、アリール、ハロアルキル、またはカルボン酸から選択される1つ以上の基で任意選択で置換される。
【0102】
式(IF)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はハロを表す。
【0103】
式(IF)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、mは2を表す。
【0104】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IG)の化合物の構造:
【0105】
【化9】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;R
1、R
2、R
4、およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0106】
式(IG)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R1はアルキルを表し、R2は独立して水素を表す。
【0107】
式(IG)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はハロを表す。
【0108】
式(IG)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、mは2を表す。
【0109】
さらに別の実施形態では、FABP5阻害剤は、式(IH)の化合物の構造:
【0110】
【化10】
または、その薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を有し;R
4およびmは、式(I)の化合物において定義される通りである。
【0111】
式(IH)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はハロを表す。
【0112】
式(IH)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、R4はクロロを表す。
【0113】
式(IH)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の1つの実施形態にしたがって、mは2を表す。
【0114】
特定の実施形態では、本発明のFABP5阻害剤は、式(IA)の化合物、式(IB)の化合物、式(IC)の化合物、式(ID)の化合物、式(IE)の化合物、式(IF)の化合物、式(IG)の化合物、または式(IG)の化合物の構造、あるいはその薬学的に許容可能な塩または立体異性体を有する。
【0115】
特定の実施形態では、本発明は、シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、式(IA)の化合物、式(IB)の化合物、式(IC)の化合物、式(ID)の化合物、式(IE)の化合物、式(IF)の化合物、式(IG)の化合物、または式(IG)の化合物のいずれか、あるいはその薬学的に許容可能な塩または立体異性体と、癌細胞を接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0116】
さらに別の実施形態にしたがって、FABP5阻害剤は、以下から選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を含む。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
特定の実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、表-Iで明記される化合物のいずれかまたはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体と癌細胞を接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0127】
処置方法
いくつかの実施形態では、本開示は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を調節する際における、本明細書に記載されるような脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤の使用を提供する。
【0128】
特定の実施形態では、本開示は、リンパ球受容体シグナル伝達経路に関連する癌細胞の増殖を阻害する際における本明細書に記載されるような脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤の使用を提供する。
【0129】
特定の実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する対象の癌を処置する方法を提供し、上記方法は、処置を必要としている対象に、治療有効量の本明細書に記載されるような脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)阻害剤またはその薬学的に許容可能な許容可能な塩を投与する工程を含む。特定の実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する対象の癌を処置する方法を提供し、上記方法は、処置を必要としている対象に、上記の実施形態にかかる式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を投与する工程を含む。
【0130】
特定の実施形態では、疾患または障害は癌である。いくつかの実施形態では、癌は血液の癌である。特定の実施形態では、癌はB細胞癌またはT細胞癌である。特定の実施形態では、疾患または障害の処置は、B細胞腫瘍細胞、T細胞腫瘍細胞、および/または転移の増殖を阻害することを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、癌は白血病、リンパ腫、または骨髄腫の中から選択される。特定の実施形態では、癌はB細胞癌である。特定の実施形態では、本発明は、B細胞受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する対象のB細胞癌を処置する方法を提供し、上記方法は、処置を必要としている対象に、上記の実施形態にかかる式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を投与する工程を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、B細胞癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性化B細胞びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)、胚中心びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(GCB DLBCL)、縦隔原発B細胞リンパ腫(PMBL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、結節外辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症である。
【0133】
特定の実施形態では、B細胞癌は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球白血病(CLL)、または多発性骨髄腫である。特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、活性化B細胞(ABC)型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、胚中心B細胞(GCB)型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル層リンパ腫(MZL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、縦隔原発性B細胞リンパ腫(PMBCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫、またはMALTリンパ腫である。
【0134】
特定の実施形態では、B細胞癌はCLLである。
【0135】
特定の実施形態では、癌はT細胞癌である。特定の実施形態では、本発明は、T細胞受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する対象のT細胞癌を処置する方法を提供し、上記方法は、処置を必要としている対象に、上記の実施形態にかかる式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を投与する工程を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、T細胞癌はT細胞白血病またはT細胞性リンパ腫である。特定の実施形態では、T細胞悪性腫瘍は、非特定型末梢T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma not otherwise specified)(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、血液免疫芽細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、分芽型NK細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、肝脾(hematosplenic)ガンマ-デルタT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻のNK/T細胞リンパ腫、または処置に関連するT細胞リンパ腫である。特定の実施形態では、T細胞癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-CLL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、または成人T細胞リンパ腫(ATCL)である。
【0137】
特定の実施形態では、本発明は腫瘍をFABP5阻害剤に接触させることによって固形腫瘍の増殖を阻害することを含む。特定の実施形態では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置する方法であって、治療有効量のFABP5阻害剤を、処置を必要としている対象に投与する工程を含む、方法を提供する。固形腫瘍は、前立腺、脳、頭頸部、子宮頸部、結腸、膵臓、膀胱、胃、皮膚、食道、肝臓、胆管、または腎臓の腫瘍であり得る。
【0138】
特定の実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害するための薬剤の製造におけるFABP5阻害剤の使用を提供する。
【0139】
医薬組成物
医薬組成物は、経口または吸入の経路によって投与されることもあれば、非経口投与経路によって投与されることもある。例えば、組成物は、経口、静脈内注入、局所、腹腔内、静脈内、髄腔内、または座薬として投与され得る。非経口投与の例としては、限定されないが、関節内(関節における)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下の経路が挙げられる。適切な液体組成物は、水性または非水性の等張無菌注射液であってよく、製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁液を含み得る。経口投与、非経口投与、皮下投与、および静脈内投与が好ましい投与方法である。
【0140】
本開示の化合物の投与量は、患者の年齢、体重、または症状、ならびに化合物の効力または治療効果、投与レジメン、および/または治療時間に依存して変化する。一般に、適切な投与経路は、例えば、経口、点眼、直腸、経粘膜、局所、または腸内の投与;筋肉内、皮下、髄内注射、ならびに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内の注射を含む、非経口送達;を含み得る。本開示の化合物は、投与レジメンあたり、0.5mgまたは1mgから最大で500mg、1g、または2gまでの量で投与され得る。投与量は、1週間に1回、3日に1回、2日に1回、1日に1回、1日に2回、1日に3回、またはそれよりも頻繁に投与され得る。代替的な実施形態では、特定の成人において、化合物は、医師によって指定された期間、静脈内投与によって連続的に投与され得る。投与量が様々な条件によって影響されるため、特定の場合には、企画された用量範囲よりも少ない量または多い量が実施され得る。医師は、治療処置を受けている患者に対する適切な投与量を容易に決定することができる。
【0141】
特定の実施形態では、本発明は、FABP5を阻害し、それによってリンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する際に使用するための、式(I)の少なくとも1つの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
【0142】
特定の実施形態では、医薬組成物は、FABP5を阻害し、それによってリンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌細胞の増殖を阻害する際に使用するための、抗癌剤、化学療法剤、および抗増殖性化合物から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む。
【0143】
特定の実施形態では、医薬組成物は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する癌を有する患者を処置するのに役立つ。特定の実施形態では、医薬組成物は、B細胞癌、例えば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性化B細胞びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)、胚中心びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(GCB DLBCL)、縦隔原発B細胞リンパ腫(PMBL)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、結節外辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症を有する患者の処置に有用である。
【0144】
特定の実施形態では、医薬組成物は、T細胞癌、例えば、非特定型末梢T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma not otherwise specified)(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、血液免疫芽細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、分芽型NK細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、肝脾(hematosplenic)ガンマ-デルタT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻のNK/Tリンパ腫、または処置に関連するT細胞リンパ腫を有する患者の処置に有用である。特定の実施形態では、T細胞癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-CLL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、または成人T細胞リンパ腫(ATCL)である。
【0145】
特定の実施形態では、医薬組成物は、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、またはMALTリンパ腫を有する患者の処置に有用である。特定の実施形態では、医薬組成物はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者の処置に有用である。
【0146】
本開示の組成物および方法は、処置を必要としている対象を処置するために利用されてもよい。特定の実施形態では、対象は哺乳動物、例えば、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与する際、組成物または化合物は好ましくは、例えば、本開示の式(I)の化合物および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物として投与される。薬学的に許容可能な担体は、当該技術分野に周知であり、水溶液、例えば、水または生理学的な緩衝食塩水、あるいは他の溶媒またはビヒクル、例えば、グリコール、グリセロール、およびオリーブオイルなどのオイル、または注射可能な有機酸エステルを含む。好ましい実施形態では、このような医薬組成物がヒトへの投与用、特に侵襲的な投与経路(すなわち、上皮バリアを介する輸送または拡散を回避する、注射または移植などの経路)用である場合に、水溶液は発熱物質を含まないか、または実質的に発熱物質を含まない。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出を効果的にするために、または1つ以上の細胞、組織、もしくは器官を選択的に標的とするために、選択され得る。医薬組成物は、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成用凍結乾燥剤(lyophile)、粉末、溶液、シロップ、座薬、注射などの投与単位形態であり得る。組成物はさらに、経皮送達システム、例えば、皮膚パッチ中に存在することができる。組成物はさらに、局所投与に適した溶液、例えば、点眼剤中に存在することができる。
【0147】
薬学的に許容可能な担体は、例えば、本開示の式(I)の化合物などの化合物を安定化させ、上記化合物の溶解度を増加させ、または上記化合物の吸収を高めるように作用する生理学的に許容可能な薬剤を含み得る。そのような生理学的に許容可能な薬剤としては、例えば、グルコース、スクロース、またはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、あるいは他の安定化剤または賦形剤などが挙げられる。生理学的に許容可能な薬剤を含む薬学的に許容可能な担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。医薬組成物の調製物は、自己乳化型薬物送達システムまたは自己微乳化型薬物送達システムであり得る。医薬組成物(調製物)はさらに、リポソームまたは他のポリマーマトリックスであり得、これは、例えば、本開示の式(I)の化合物を内部に取り込むことができる。例えば、リン脂質または他の脂質を含むリポソームは、製造および投与が比較的簡単である、無毒で、生理学的に許容可能で、および代謝可能な担体である。
【0148】
「薬学的に許容可能な」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、あるいは他の問題または合併症なく、人間と動物の組織との接触使用に適していて、合理的なベネフィット・リスク比と釣り合っている、こうした化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すように本明細書では用いられる。
【0149】
本明細書で使用されるような「薬学的に許容可能な担体」という語句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくはカプセル化材料などの、薬学的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合可能であり、かつ患者に有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として機能することができる物質のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプンやジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースとその誘導体;(4)粉末状トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターや座剤用ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および、(21)医薬製剤中で利用される他の非毒性の適合物質。
【0150】
医薬組成物(調製物)は、例えば、経口(例えば、水性または非水性の溶液または懸濁液、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、粉末、顆粒、舌に適用するためのペーストなどの水薬を含む);口腔粘膜を介した吸収(例えば、舌下);肛門、直腸、または膣(例えば、ペッサリー、クリーム、またはフォームとして);非経口的(例えば、滅菌溶液または懸濁液として、筋肉内、静脈内、皮下、または髄腔内を含む);経鼻的;腹腔内;皮下;経皮的(例えば、皮膚に塗布するパッチとして);および、局所的に(例えば、皮膚に塗布するクリーム、軟膏、または噴霧剤として、あるいは点眼薬として)を含む多くの投与経路のいずれかによって対象に投与することができる。化合物はさらに、吸入のために製剤化されてもよい。特定の実施形態では、化合物は、滅菌水に単に溶解または懸濁させてもよい。適切な投与経路およびそれに適した組成物の詳細は、例えば、米国特許第6,110,973号、第5,763,493号、第5,731,000号、第5,541,231号、第5,427,798号、第5,358,970号、および第4,172,896号、ならびに上記文献で引用された特許に記載されている。
【0151】
製剤は、単位剤形で都合良く提示され得、薬学の技術分野で周知の任意の方法により調製され得る。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、処置されている宿主および特定の投与形態に依存して変動する。単一の剤形を生成するために担体物質と組み合わされ得る有効成分の量は通常、治療効果を生み出す化合物の量である。通常、100パーセントの中から、この量は、有効成分の約1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0152】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本開示の式(I)の化合物などの活性化合物を、担体および任意選択で、1つ以上の副成分と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、本開示の化合物を、液体担体、または細かく分割された固体担体、またはその両方と均一にかつ密接に会合させ、その後、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0153】
経口投与に適した本開示の製剤は、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、カシェ(cachets)、ピル、錠剤、ロゼンジ(フレーバーベース、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用)、凍結乾燥剤(lyophile)、粉末、顆粒の形態であってもよく、あるいは水性または非水性の液体中の溶液または懸濁液として、あるいは水中油型または油中水型の液体エマルジョンとして、あるいはエリキシルまたはシロップとして、あるいはトローチ(pastilles)(不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用)、および/または口腔洗浄薬としてであってもよく、それぞれは有効成分としてあらかじめ決められた量の本開示の化合物を含有している。組成物または化合物は、ボーラス、舐剤、またはペーストとしても投与され得る。
【0154】
経口投与のための固形剤形(カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセル剤、錠剤、丸剤、ドラジェ、粉末、顆粒剤など)を調製するために、有効成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容可能な担体、および/あるいは、以下のいずれかと混ぜられる:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの、充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセリンなどの保水剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶液緩染剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土(bentonite clay)などの吸収性物質;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの滑沢剤;(10)修飾シクロデキストリンおよび未修飾シクロデキストリンなどの錯化剤;ならびに、(11)着色料。カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、錠剤、および丸剤の場合には、医薬組成物はさらに緩衝剤を含むことがある。同様のタイプの固形組成物は、高分子量ポリエチレングリコールなどと同様にラクトースまたは乳糖としてこうした賦形剤を使用する、柔らかくまたは固く充填されたゼラチンカプセル中の充填剤として使用されてもよい。
【0155】
錠剤は、任意選択で1つ以上の副成分とともに、圧縮または成形によって作られてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコラートまたは架橋したカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、あるいは分散剤を使用して調製されてもよい。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作られ得る。
【0156】
錠剤と、医薬組成物の他の固形剤形、例えば、ドラジェ、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、丸剤、および顆粒は、任意選択で、腸溶性コーティングおよび医薬製剤技術において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルでスコア化または調製することができる。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために比率を変えたヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを使用して、内部の有効成分の遅延放出または制御放出を提供するように製剤化することもできる。それらは、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、または、滅菌水に溶解させることができる無菌の固形組成物の形態の滅菌剤、またはいくつかの他の無菌の注射可能な培地に使用直前に組み込むことによって、滅菌され得る。これらの組成物は任意選択で不透明化剤(opacifying agent)をさらに含んでもよく、任意選択で、遅延した方法で、胃腸管の特定の部分において有効成分のみを、またはそれを優先的に放出する組成物であってもよい。使用され得る埋め込み組成物の例としては、高分子物質およびワックスが挙げられる。適切な場合に、上記活性な賦形剤の1つ以上を用いて、有効成分はさらにミクロカプセル化形態であってもよい。
【0157】
経口投与に有用な液体剤形は、薬学的に許容可能なエマルジョン、再構成用凍結乾燥剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤を含んでいる。有効成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で共通して使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、シクロデキストリンおよびその誘導体、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実、落花生、トウモロコシ、胚、オリーブ、カスター、および胡麻の油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。
【0158】
不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はさらに、湿潤剤、乳化剤、および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色料、芳香剤、および保存剤などのアジュバントを含み得る。
【0159】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシレート化(ethoxylated)イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天とトラガント、およびこれらの混合物としての懸濁化剤を含んでもよい。
【0160】
直腸、膣内、または尿道の投与のための医薬組成物の製剤は坐薬として示されることがあり、これは、1つ以上の活性化合物を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックス、またはサリチル酸塩を含む、1つ以上の適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することにより調製されてもよく、これは室温では固体であるが体温では液体であるため、直腸または膣腔内で溶けて活性化合物を放出する。
【0161】
口への投与のための医薬組成物の製剤は、口腔洗浄薬または口腔スプレー、あるいは口腔軟膏として提示され得る。
【0162】
代替的または追加的に、組成物は、カテーテル、ステント、ワイヤ、または他の管腔内デバイスを介した送達のために製剤化されてもよい。このようなデバイスを介した送達は、膀胱、尿道、尿管、直腸、または腸への送達に特に有用であり得る。
【0163】
膣内投与に適している製剤は、当該技術分野で適切であると知られているそのような担体を含有している、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤も含む。
【0164】
局所または経皮投与のための剤形は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入薬を含む。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容可能な担体、および必要に応じて防腐剤、緩衝剤、または必要とされ得る噴霧剤と混ぜられてもよい。
【0165】
軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性脂肪と植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、滑石、および酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含むこともある。
【0166】
粉末とスプレーは、活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含むこともある。スプレーはさらに、従来の噴霧剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素(chlorofluorohydrocarbons)と、揮発性の非置換の炭化水素、例えば、ブタンおよびプロパンを含むことができる。
【0167】
経皮パッチは、身体への本開示の化合物の制御送達を提供するという追加の利点を持つ。このような剤形は、適切な培地中に活性化合物を溶解または分散することによって作ることができる。皮膚への化合物の流動を増加させるために、吸収促進剤も使用することができる。そのような流動の速度は、律速膜(rate controlling membrane)を提供することによって、あるいはポリマーマトリックスまたはゲル中で化合物を分散させることによって、制御され得る。
【0168】
眼科用製剤、眼軟膏、粉末、溶液なども、本開示の範囲内にあるものとして企図される。例示的な眼科用製剤は、米国公開第2005/0080056号、第2005/0059744号、第第2005/0031697号、および第2005/004074号と、米国特許第6,583,124号に記載されており、これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。必要に応じて、液体の眼科用製剤は、涙液、眼房水、または硝子体液と同様の特性を有するか、またはそのような体液と適合性がある。好ましい投与経路は、局所投与(例えば、点眼薬などの局所投与、またはインプラントを介した投与)である。
【0169】
坐薬も本開示の範囲内であるとして企図される。
【0170】
本明細書で使用されるような語句「非経口投与」および「非経口投与される」とは、通常注入による、腸内投与と局所投与以外の投与方式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、脊髄内くも膜下、脊髄内、および胸骨内の注射と注入を含む。
【0171】
非経口適用に適した医薬組成物は、1つ以上の活性化合物を、1つ以上の薬学的に許容可能な無菌の等張水溶液または非水性の溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、あるいは使用の直前に無菌の注入可能な溶液または分散液に再構成され得る無菌の粉末と組み合わせて、含んでもよく、これらは抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を対象のレシピエントの血液と等張にする溶質、あるいは懸濁化剤または増粘剤を含み得る。
【0172】
本開示の医薬組成物中で使用され得る適切な水性および非水性の担体の例は、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、オリーブオイルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機酸エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散の場合に必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0173】
これらの組成物はさらに、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含み得る。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤を含めることによって確実にすることができる。糖や塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含ませることが望ましい場合もある。加えて、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅れさせる薬剤を含ませることによって、注入可能な医薬形態の持続的吸収が引き起こされ得る。
【0174】
場合によっては、薬物の効果を引き延ばすために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶解度が乏しい結晶または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。その後、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは順に、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。代替的に、非経口投与された薬物形態の吸収を遅らせることは、薬物を油のビヒクル(oil vehicle)中に溶解または懸濁することによって達成される。
【0175】
注射可能なデポー形態(depot forms)は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で対象の化合物のマイクロカプセル化マトリックス(microencapsule matrices)を形成することによって作られる。薬物対ポリマーの比率、および利用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物類)を含む。注射可能なデポー製剤は、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を閉じ込めることによっても調製される。
【0176】
本開示の方法における使用のために、活性化合物は、それ自体として、または薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、例えば、0.1~99.5%(より好ましくは、0.5~90%)の有効成分を含む医薬組成物として、与えられてもよい。
【0177】
導入方法は、再充電可能なデバイスまたは生分解性デバイスによっても提供され得る。タンパク質性バイオ医薬品を含む薬物の制御送達のために、近年、様々な遅延放出性ポリマーデバイスが開発され、インビボで試験されている。生分解性ポリマーと非分解性ポリマーの両方を含む様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位における化合物の徐放のためのインプラントを形成することができる。
【0178】
医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対して有害となることなく、特定の患者、組成物、および投与方式に関して所望の治療効果を達成するのに有効である有効成分の量を得るために、変更されてもよい。
【0179】
選択された投与量レベルは、利用される特定の化合物または化合物の組み合わせ、あるいはそのエステル、塩、またはアミドの活性、投与経路、投与の時間、利用されている特定の化合物の排出の速度、処置の持続時間、他の薬物、利用される特定の化合物と組み合わせて使用される化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、疾病、健康状態、および以前の病歴を含む様々な要因、ならびに医学の分野で周知の同様の要因に依存する。
【0180】
当該技術分野において通常の技術を有している医師または獣医は、治療有効量の必要とされる医薬組成物を容易に判定および処方することができる。例えば、医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために、必要とされるよりも低いレベルで医薬組成物または化合物の投与を開始することができ、かつ所望の治療効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることができる。「治療有効量」とは、所望の治療効果を引き出すのに十分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴に応じて変化することが一般に理解される。有効量に影響を及ぼす他の要因としては、限定されないが、患者の状態の重症度、処置されている障害、化合物の安定性、および必要に応じて、本開示の式(I)の化合物とともに投与されている別のタイプの治療剤が挙げられ得る。より大きな総投与量が、薬剤の複数回の投与によって送達され得る。有効性および投与量を決定する方法は、当業者に知られている(Isselbacher et al. (1996) Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed., 1814-1882, herein incorporated by reference)。
【0181】
一般に、本開示の組成物および方法において使用される活性化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物のその量になる。こうした有効量は一般に上に記載された要因に依存する。
【0182】
望ましい場合には、活性化合物の有効な一日用量は、任意選択で単位剤形で、一日のうちで適切な間隔を空けて、1、2、3、4、5、6回またはそれ以上の分割用量で別々に投与され得る。本開示の特定の実施形態では、活性化合物は一日2または3回毎日投与され得る。好ましい実施形態では、活性化合物は毎日1回投与される。
【0183】
この処置を受ける患者は、霊長類、特にヒト、および他の哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ、ならびに、家禽およびペット一般を含む、処置を必要としているあらゆる動物である。
【0184】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤と、着色料、剥離剤、コーティング剤、甘味料、調味料、および芳香剤、防腐剤、ならびに抗酸化剤も組成物中に存在し得る。
【0185】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、αトコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;および、(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などなどの金属キレート化剤を含む。
【0186】
投与方法
本開示の化合物は、単一の薬物(単剤療法)として、または1つ以上の他の治療剤と一緒に(併用療法)、使用することができる。化合物は、それ自体で使用されてもよく、または、好ましくは、化合物が1つ以上の薬学的に許容可能な材料と混合された医薬組成物中で使用される。
【0187】
1つの実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全を有する癌細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を別の治療剤と接触させる工程をさらに含む、方法を提供する。
【0188】
1つの実施形態では、本発明は、リンパ球受容体シグナル伝達経路の調節不全に関連する対象の癌を処置する方法であって、別の治療剤を対象に投与する工程をさらに含む、方法を提供する。
【0189】
1つの実施形態では、本明細書に記載されるFABP5阻害剤または薬学的に許容可能な塩と組み合わされる潜在的な治療剤としては、限定されないが、生物学的薬剤、免疫チェックポイントモジュレーター、エピジェネティックモジュレーター、腫瘍崩壊ウイルス、および細胞毒性剤などの化学療法剤が挙げられる。
【0190】
特定の実施形態では、本発明のFABP5阻害剤、すなわち、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体は、単一の薬物として、または他の治療剤との組み合わせのいずれかで投与することができる。
【0191】
1つの実施形態では、本発明のFABP5阻害剤は、対象への他の治療剤の投与の前に、1、2、3、4、5、6、8、10、12、18、または24時間、1、2、3、4、5、6、または7日、1、2、3、または4週間、あるいはこれらの任意の組み合わせで対象に投与される。
【0192】
1つの実施形態では、治療剤は、本発明のFABP5阻害剤の、対象への投与の前に、1、2、3、4、5、6、8、10、12、18、または24時間、1、2、3、4、5、6、または7日、1、2、3、または4週間、あるいはこれらの任意の組み合わせで対象に投与される。別の実施形態では、本発明のFABP5阻害剤および治療剤は、順次投与される。
【0193】
本明細書で使用されるように、「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、非分裂細胞ではまったく複製がないか、最小限の複製しか示さない一方で、インビトロまたはインビボのいずれかで、前記分裂細胞の成長を遅らせるおよび/または溶解を誘導する目的で、分裂細胞(例えば、癌細胞などの増殖細胞)において選択的に複製することができるウイルスを指す。典型的には、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルス粒子(またはビリオン)にパッケージ化されたウイルスゲノムを含み、感染性である(すなわち、宿主細胞または対象に感染し侵入することができる)。
【0194】
特定の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レオウイルス、ニューキャッスル病ウイルス(NDV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス(Sinbis virus)、アデノウイルス、およびポックスウイルス、ならびにヘルペスウイルス(HSV)からなる群から選択される。
【0195】
本明細書で使用されるように、免疫チェックポイントモジュレーターは、PD-1、PD-Ll、またはCTLA-4の活性に拮抗するアンタゴニスト分子である。例示的な免疫チェックポイントモジュレーターは、限定されないが、以下を含む:
i.PD-1阻害剤、例えば、ペンブロリズマブ(旧MK-3475またはランブロリズマブ、キイトルーダ(登録商標))、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、PDR001、およびセミプリマブ。
ii.PD-L1阻害剤、例えば、アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))、アベルマブ(バベンチオ(登録商標))、デュルバルマブ(イミフィンジ(登録商標))、BMS-936559、CK-301(Iwai, et ak, Journal of Biomedical Science, (2017) 24:26)
iii.CTLA4アンタゴニスト、例えば、好ましくは約10mg/kgの用量で投与されるヒト抗CTLA4抗体である、イピリムマブ(MDX-010またはMDX-101としても知られている)、および好ましくは約15mg/kgの用量で投与されるヒト抗CTLA4抗体であるトレメリムマブ。さらに、2009年12月にオンラインで公開されたSammartino, et a , Clinical Kidney Journal, 3(2): 135-137 (2010)を参照のこと。
【0196】
本明細書で使用されるように、「エピジェネティックモジュレーター」という用語は、このような薬剤との接触時または接触後、あるいは上記薬剤の投与時または投与後に、細胞のDNAのエピジェネティック状態(例えば、メチル化状態)を変化させる薬剤を指す。特定の実施形態では、エピジェネティックモジュレーターは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(HDACi)を含む。特定の実施形態では、HDACは、クラスIのHDAC、クラスIIAのHDAC、クラスIIBのHDAC、クラスIVのHDAC、またはこれらの任意の組み合わせであり得、あるいはHDACは、亜鉛含有触媒ドメインを含み得る。特定の実施形態では、HDACiは、HDACの亜鉛含有触媒ドメインに結合することができる。特定の実施形態では、HDACiは、ヒドロキサム酸またはその塩、環状テトラペプチド、デプシペプチド、ベンズアミド、求電子ケトン、脂肪族酸またはその塩、あるいはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される化学部分を含み得る。例えば、特定の実施形態では、HDACiは、eボリノスタット、ロミデプシン、チダミド(Chidamide)、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸またはその塩の選択、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(CHR-2845)、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ACY-241、およびこれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝物、異性体、またはプロドラッグから選択される。
【0197】
特定の実施形態では、エピジェネティックモジュレーターは、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)を含む。特定の実施形態では、DNMTはDNMTl、DNMT-3a、DNMT-3b、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。特定の実施形態では、DNMTiは、ヌクレオシドアナログ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小分子酵素阻害剤、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。例えば、特定の実施形態では、DNMTiは、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、エピガロカテキンガレート、MG98、RG108、プロカインアミド、ヒドララジン、およびこれらの任意の組み合わせ、あるいはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝物、異性体、またはプロドラッグから選択される。
【0198】
1つの実施形態では、化学療法剤は癌の処置に役立つ化合物である。1つの実施形態では、本発明の化合物(すなわちその薬学的に許容可能な組成物)は、化学療法剤と組み合わせて投与され、上記化学療法剤は、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、エピガロカテキンガレート、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、フルベストラント(フェソロデックス(登録商標)、AstraZeneca)、スニチニブ(スーテント(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(フェマーラ(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシレート(グリベック(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(finasunate)(バタラニブ(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(エロキサチン(ELOXATIN)(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、ラパミューン(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(タイケルブ(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(lonafamib)(SCH 66336)、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標)Bayer Labs)、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシトキサン(登録商標) シクロホスファミド(cyclosphosphamide);ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine)を含む、エチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(トポテカンとイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビセレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾンとプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリドとデュタステリドを含む5α還元酵素;ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成アナログ、kW-2189とCB1-TM1を含む));eleutherobin;パンクラチスタチン(pancrati statin);サルコジクチインA(a sarcodictyin);スポンギスタチン;クロラムブチル、クロルナファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1lとカリケアマイシンcoll(Angew Chem. Intl. Ed. Engl. 1994 33 : 183-186)などの抗生物質;ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ネオカルチノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団と同様に)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti-adrenals);フォリン酸(frolinic acid)などの、葉酸補充薬(folic acid replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシンとアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール(mopidamnol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKR多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラキュリンA、ロリジン(roridin)A、およびアングイジン(anguidine);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシッド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、アブラキサン(登録商標)(クレモフォールを含まない)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, 111.)、およびタキソテール(登録商標)(ドセタキセル、doxetaxel;Sanofi-Aventis);クロラムブシル(chloranmbucil);ジェムザール(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤 RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)レチン酸などのレチノイド;および上記のもののいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、および誘導体を含む。
【0199】
1つの実施形態では、生物製剤は、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(A VASTESTR、Genentech);セツキシマブ(アービタックス(ERBITUX)(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(リツキサン(登録商標)、Genentech/Biogen Idee)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(ベキサール、Corixia)、および抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標)、Wyeth)を含む。本発明の化合物と組み合わせて薬剤としての治療可能性を有するさらなるヒト化モノクローナル抗体は、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネウズマブ(bapineuzumab)、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブ・テトラキセタン、タドシツズマブ、タリツマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビツマブ、ウルトキサズマブ(urtoxazumab)、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、およびインターロイキン12 p40タンパク質を認識するように遺伝子組換えされた組換え体の排他的にヒト配列の完全長IgGi λ抗体である抗インターロイキン12(ABT-874/J695、Wyeth ResearchおよびAbbott Laboratories)を含む。
【0200】
定義
他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本明細書における主題が属する技術分野における当業者によって、一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、特に断りのない限り、以下の用語は、本発明の理解を容易にするために示された意味を有する。
【0201】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が他のものを明確に明示していない限り、複数の基準を包含する。
【0202】
本明細書で使用されるように、「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、その後に記載される事象または状況が生じることもあれば生じないこともあるということ、およびその記載が、事象または状況が生じる実例と生じない実例を含むことを意味している。例えば、「任意選択で置換されたアルキル」は、前記アルキル基が置換され得る事象または状況と、アルキル基が置換されない事象または状況とを指す。1つの実施形態では、「任意選択で置換された」という表現は、「置換または非置換の」と交換可能に呼ばれ得る。
【0203】
「置換された」という用語は、骨格の1つ以上の炭素上で水素を置き換える置換基を持つ部分を指す。「置換」または「~で置換される」は、そのような置換が置換された原子および置換基の許容された原子価に従うものであり、かつ、置換の結果、例えば、再構成、環化、除去などによる変形を自発的に受けない、安定した化合物がもたらされるという、暗黙の条件を含んでいる。本明細書で使用されるように、「置換される」という用語は、有機化合物の許容可能な置換基をすべて含むものと企図される。広範囲の態様では、許容可能な置換基は、有機化合物の非環式および環式の、分岐および未分岐の、炭環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の置換基を含む。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して1つ以上であり、かつ、同じものまたは異なるものであり得る。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の任意の許容可能な置換基を有し得る。置換基は、本明細書に記載される任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、オキソ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、あるいは芳香族部分またはヘテロ芳香族部分を含み得る。置換基は、適切な場合に、それ自体で置換され得ることが当業者によって理解される。「非置換の」と具体的に明記されていない限り、本明細書中の化学部分への言及は、置換された変異体を含むものと理解される。例えば、「アリール」基または部分に対する言及は、置換および非置換の変異体の両方を暗黙に含んでいる。
【0204】
本明細書で使用されるように、「アルキル」という用語は、限定されないが、C1-C10直鎖アルキル基またはC3-C10分岐鎖アルキル基を含む、飽和した脂肪族基を指す。好ましくは、「アルキル」基は、C1-C6直鎖アルキル基またはC3-C6分岐鎖アルキル基を指す。1つの実施形態では、「アルキル」基は、C1-C4直鎖アルキル基またはC3-C8分岐鎖アルキル基を指す。「アルキル」の例としては、限定されないが、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、neo-ペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、1-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、1-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、および4-オクチルが挙げられる。「アルキル」基は任意選択で置換されてもよい。
【0205】
本明細書で使用されるように、「ヘテロアルキル」という用語は、炭素原子の1つ以上がS、O、P、およびNから選択されたヘテロ原子と取り替えられた、直鎖または分岐鎖のアルキル基を指し、「アルキル」基は上に定義される通りである。例示的な「ヘテロアルキルは、アルキルエーテル、2級および3級のアルキルアミン、アミド、硫化アルキル、ならびに二硫化アルキルを含む。この基は末端基または架橋基であってもよい。
【0206】
本明細書で使用されるように、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素炭素二重結合を含み、かつ、直鎖状または分岐状またはこれらの組み合わせであり得る炭素鎖を指す。「アルケニル」の例としては、限定されないが、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1-プロペニル、2-ブテニル、および2-メチル-2-ブテニルが挙げられるが。
【0207】
類推によって、「アルケニレン」という表現は、上記で定義されるような二価「アルケニル」ラジカルを指す。
【0208】
本明細書で使用されるように、「アルキニル」という用語は、原子の数が2~6の範囲にある、1つ以上の三重結合を有する直鎖状または分岐状の炭素鎖を指す。
【0209】
類推によって、「アルキニレン」という表現は、上記で定義されるような二価「アルキニル」ラジカルを指す。
【0210】
本明細書で使用されるように、「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルを意味し、ハロおよびアルキル基は上に定義される通りである。「ハロ」という用語は、本明細書では「ハロゲン」と交換可能に使用され、F、Cl、Br、またはIを意味する。1つの実施形態では、ハロアルキルは(C1-C6)アルキルを含み、好ましくは(C1-C4)アルキルを含む。「ハロアルキル」の例としては、限定されないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチル、および2,2,2-トリフルオロエチルが挙げられる。
【0211】
本明細書で使用されるように、「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて-OHを意味する。
【0212】
本明細書で使用されるように、「ヒドロキシアルキル」または「ヒドロキシルアルキル」は、1つ以上のヒドロキシル基で置換されたアルキルを意味し、アルキル基は上に定義される通りである。1つの実施形態では、ヒドロキシアルキルは(C1-C6)アルキルを含み、好ましくは(C1-C4)アルキルを含む。「ヒドロキシアルキル」の例としては、限定されないが、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、およびプロパン-2-オールが挙げられる。
【0213】
「エステル」という用語は、本明細書で使用されるように、基-C(O)OR11を指し、R11はヒドロカルビル基を表す。
【0214】
「カルボキシ」または「カルボン酸」という用語は、本明細書で使用されるように、式-CO2Hによって表される基を指す。
【0215】
「チオエステル」という用語は、本明細書で使用されるように、基-C(O)SR11または-SC(O)R11を指し、R11はヒドロカルビルを表す。
【0216】
本明細書で使用されるように、「ヒドロカルビル」という用語は、炭化水素特徴を有する分子の残存部分に直接結合した炭素原子を有する基である。
【0217】
本明細書で使用されるように、「オキソ」という用語は、=O基を指す。
【0218】
本明細書で使用されるように、「アルコキシ」という用語は、基-O-アルキルを指し、アルキル基は上に定義される通りである。例示的なC1-C10アルコキシ基としては、限定されないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、またはt-ブトキシが挙げられる。1つの実施形態では、「アルコキシ」基はC1-C6アルコキシ基を指す。1つの実施形態では、「アルコキシ」基はC1-C4アルコキシ基を指す。アルコキシ基は、1つ以上の適切な基で任意選択で置換することができる。
【0219】
本明細書で使用されるように、「アルコキシアリール」という用語は、結合したアリール基である、基-O-アルキルを指し、アルキルとアリール基は本明細書で定義される通りである。
【0220】
本明細書で使用されるように、「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0221】
本明細書で使用されるように、「アミノ」は、-NH2基を指す。
【0222】
本明細書で使用されるように、「アミド」は-CONH2基を指す。
【0223】
本明細書で使用されるように、「アルキルアミノ」または「シクロアルキルアミノ」は、前記基の窒素原子が1つまたは2つのアルキルまたはシクロアルキル基にそれぞれ結合している、-NH2基を指す。「アルキルアミノ」および「シクロアルキルアミノ」基の代表的な例としては、限定されないが、-NHCH3および-NH-シクロプロピルが挙げられる。「アルキルアミノ」という用語は、ジアルキルアミノ(例えば、-N(CH3)2)基をさらに含む。
【0224】
「アミノアルキル」は上に定義されるようなアルキル基を指し、アルキル基の水素原子の1つ以上が、上に定義されるようなアミノ基と取り替えられている。アミノアルキル基の代表的な例としては、限定されないが、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、-CH(CH3)NH2、-CH2CH(CH3)NH2が挙げられる。アミノアルキル基は非置換であり得るか、1つ以上の適切な基で置換され得る。
【0225】
本明細書で使用されるように、「シクロアルキル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて、-C3-C10飽和環状炭化水素環を意味する。シクロアルキルは、単環式であってもよく、典型的には3~7個の炭素環原子を含む。単環式のシクロアルキルの例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる。シクロアルキルは代替的に、多環式であってもよく、または2つ以上の環を含んでもよい。多環式のシクロアルキルの例としては、架橋式、縮合式、およびスピロ環式のカルボシクリルが挙げられる。
【0226】
本明細書で使用されるように、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、O、N、S、S(O)、S(O)2、NH、またはC(O)から選択される少なくとも1つのヘテロ原子またはヘテロ基を有する3~15員の非芳香族の、飽和または部分飽和の、単環または多環式の環系を指し、残りの環原子は炭素、酸素、窒素、および硫黄からなる群から独立して選択される。「ヘテロシクロアルキル」という用語はさらに、O、N、S、S(O)、S(O)2、NH、またはC(O)から選択される少なくとも1つのヘテロ原子またはヘテロ基を有する架橋式または二環式の環系を指す。「ヘテロシクロアルキル」の例としては、限定されないが、アゼチジニル、オキセタニル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,4-ジオキサニル、ジオキシドチオモルホリニル、オキサピペラジニル、オキサピペリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロピラニル、インドリニル、インドリニルメチル、アザ-ビシクロオクタニル、アゾシニル、クロマニル、キサンテニル、およびこれらのN-オキシドが挙げられる。ヘテロシクロアルキル置換基の結合は、炭素原子またはヘテロ原子のいずれかを介して起こり得る。ヘテロシクロアルキル基は、1つ以上の前述の基によって、1つ以上の適切な基で任意選択で置換され得る。好ましくは、「ヘテロシクロアルキル」は、イミダゾリジニル、ピロリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,4-ジオキサニル、およびこれらのN-オキシドからなる群から選択される5~6員の環を指す。より好ましくは、「ヘテロシクロアルキル」は、アゼチジニル、ピロリジニル、モルホリニル、およびピペリジニルを含む。すべてのヘテロシクロアルキルは、1つ以上の前述の基によって任意選択で置換される。
【0227】
本明細書で使用されるように、「(ヘテロシクロアルキル)アルキル」という用語は、基アルキル、結合したヘテロシクロアルキル基を指し、「アルキル」および「ヘテロシクロアルキル」基は明細書で定義される通りである。
【0228】
本明細書で使用されるように、「ヘテロアリール」という用語は、5~20個の環原子、好適には5~10個の環原子を含む芳香族複素環系を指し、これは単一の環(単環)、あるいは互いに融合または共有結合した複数の環(二環、三環、または多環)であってもよい。好ましくは、「ヘテロアリール」は、5員~6員の環である。環は、N、O、およびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含んでもよく、ここで、NまたはS原子は任意選択で酸化されるか、またはN原子は任意選択で四級化される。ヘテロアリール部分の任意の適切な環位置は、定義された化学構造に共有結合してもよい。
【0229】
ヘテロアリールの例としては、限定されないが、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、シンノリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1H-テトラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアジニル、フタラジニル、チアントレン、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、9H-カルバゾリル、α-カルボリン、インドリジニル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピロロピリジル、ピラゾロピリミジル、フロピリジニル、プリニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾトリアジアゾリル、カルバゾリル、ジベンゾチエニル、アクリジニルなどが挙げられる。好ましくは、「ヘテロアリール」は、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、シンノリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1H-テトラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、およびピリダジニルからなる群から選択される5~6員の環を指す。より好ましくは、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、およびフラニルである。すべてのヘテロアリールは、1つ以上の前述の基によって任意選択で置換される。
【0230】
本明細書で使用されるように、「アリール」という用語は、約6~14個の炭素原子の任意選択で置換された単環式、二環式、または多環式の芳香族炭化水素環系を指す。1つの実施形態では、「アリール」はC6-C10アリール基を指す。C6-C14アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、フルオレニル、インダニル、ビフェニレニル、およびアセナフチルが挙げられる。アリール基は非置換であり得るか、1つ以上の適切な基で置換され得る。
【0231】
本明細書で使用されるように、「アリールオキシ」という用語は、基-O-アリールを指し、アリール基は上で定義される通りである。例示的な「アリールオキシ」基としては、限定されないが、フェノキシまたはナフチル-オキシが挙げられる。
【0232】
「アシル」という用語は、基R-CO-を指し、Rは上で定義される任意選択で置換されるアルキル基である。「アシル」基の例としては、限定されないが、CH3CO-、CH3CH2CO-、CH3CH2CH2CO-、または(CH3)2CHCO-が挙げられる。
【0233】
本明細書で使用されるように、「B細胞癌」および「T細胞癌」は、それぞれBリンパ球またはB細胞(骨髄由来細胞)およびTリンパ球またはT細胞(胸腺由来細胞)として知られている白血球の不均一な癌のグループを指す。B細胞癌およびT細胞癌の広範な例としては、白血病(血液中に存在する)およびリンパ腫(リンパ節に存在する)、例えば、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、T細胞白血病、およびB細胞リンパ腫が挙げられる。
【0234】
本明細書で使用されるように、「化合物」という用語は、本発明で開示される化合物を含む。
【0235】
本明細書で使用されるように、「含む(comprise)」または「含むこと(comprising)」という用語は、含む(include)の意味で通常は使用され、つまり、1つ以上の機能または成分の存在を許容する。
【0236】
本明細書で使用されるように、「または」という用語は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。
【0237】
本明細書で使用されるように、「含むこと(including)」という用語は、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」といった他の形態と同じく、限定的なものではない。
【0238】
本明細書で使用されるように、「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分を含む生成物、加えて、特定の量の特定の成分の組み合わせから、直接的または間接的に生じる生成物を包含するように意図されている。「薬学的に許容可能な」によって、担体、希釈剤、または賦形剤は、製剤の他の成分と適合性がなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0239】
本明細書で使用されるように、「医薬組成物」という用語は、治療有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体、および薬学的に許容可能な担体を含む組成物を指す。
【0240】
医薬組成物は通常、約1重量%~99重量%、例えば、約5重量%~75重量%、または約10重量%~約30重量%の式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む。医薬組成物中の式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の量の範囲は、約1mg~約1000mg、または約2.5mg~約500mg、または約5mg~約250mg、または1mg~1000mgの広い範囲内に入るか、あるいは前述の範囲より高いか低いかであり得る。
【0241】
本明細書で使用されるように、「遺伝子改変」という用語は、DNA配列、mRNA配列、タンパク質配列、遺伝子発現(mRNAまたはタンパク質量のいずれか)の変化、またはそれらの組み合わせにつながるゲノムの任意の変化を指す。遺伝子改変としては、限定されないが、有害突然変異(例えば、遺伝子機能または遺伝子発現のいずれかを低下または消失させる変異)、機能喪失変異、機能獲得変異などが挙げられる。遺伝子改変としては、感染した宿主細胞(例えば、ヒトパピローマウイルス)のゲノムへのウイルス性遺伝物質の挿入が含まれる。遺伝子改変としてはさらに、マイクロサテライトまたはDNAの他の反復tract(例えば、ショートタンデム反復または単純配列反復)が挙げられる。
【0242】
本明細書で使用されるように、「機能喪失」(LOF)変異は、遺伝子の変異または対立遺伝子を指し、その結果、遺伝子産物(コードされたタンパク質など)は、細胞または生物(ヒト細胞またはヒトを含む)において正常以下の機能を有するか、またはいかなる機能も有していない。対立遺伝子が完全に機能を失っている場合(ヌル対立遺伝子)、それはしばしば無形質変異(amorphic mutation)と呼ばれる。機能喪失変異に関連する表現型は、しばしば劣性である。
【0243】
本明細書で使用されるように、遺伝子(例えば、腫瘍形成性ドライバー遺伝子)に言及する場合の「過剰発現」という用語は、正常レベルと比較して遺伝子に対応するmRNA、タンパク質、またはそれらの組み合わせの任意の増加を指す。
【0244】
本明細書で使用されるように、「処置する」、「処置すること」、および「処置」という用語は、疾患および/またはそれに付随する症状を緩和または消失させる方法を指す。
【0245】
本明細書で使用されるように、「防ぐ」、「防ぐこと」、および「予防」という用語は、疾患および/またはそれに付随する症状の発症を防ぐ方法、あるいは対象が疾患を獲得することを妨げる方法を指す。本明細書で使用されるように、「予防する」、「予防すること」、および「予防」はさらに、疾患および/またはそれに付随する症状の発症を遅らせること、ならびに対象が疾患を獲得するリスクを減らすことを含む。
【0246】
本明細書で使用されるように、「患者」と交換可能であり得る「対象」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトを指す。
【0247】
本明細書で使用されるように、「治療有効量」は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の量、あるいは、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体を含む組成物の量であって、本明細書に記載される疾患または障害に苦しむ特定の患者において、とりわけ、癌に関連する疾患または障害におけるそれらの使用において、所望の治療反応または薬学的応答を生じさせるのに有効な量を指す。とりわけ、「治療有効量」という用語は、投与されたときに、処置される疾患または障害におけるポジティブな変化を誘導するか、または対象において処置されてい疾患または障害に関連する症状の1つ以上の発症を予防するか、ある程度まで緩和するのに十分である、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは立体異性体の量を含む。化合物の治療量に関して、健全な医学的判断の範囲内で、対象の処置に使用される化合物の量は、過度または重度の副作用を回避するために十分に低いことも考慮することができる。化合物または組成物の治療有効量は、治療されている特定の疾病、処置または予防されている疾病の重症度、処置の期間、同時治療の性質、エンドユーザーの年齢および身体的状態、利用される特定の薬学的に許容可能な担体を採用した特定の化合物または組成物によって変化する。
【0248】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本発明の化合物を適当な酸または塩基と反応させることによって得られる生成物を指す。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、およびMnの塩などの適切な無機塩基に由来するものが挙げられる。薬学的に許容可能な無毒な酸付加塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸塩、またはp-トルエンスルホン酸塩などの無機酸で形成したアミノ基の塩である。本発明の特定の化合物(式(I)の化合物)は、リジン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミン、またはメトホルミンなどの種々の有機塩基と薬学的に許容可能な塩を形成することができる。適切な塩基塩としては、限定されないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、または亜鉛の塩が挙げられる。
【0249】
本発明はさらに、医薬投与のために開示された化合物を製剤化するための方法も提供する。
【0250】
好ましい実施形態では、このような医薬組成物がヒトへの投与用、特に侵襲的な投与経路(すなわち、上皮バリアを介する輸送または拡散を回避する、注射または移植などの経路)用である場合に、水溶液は発熱物質を含まないか、または実質的に発熱物質を含まない。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出を効果的にするために、または1つ以上の細胞、組織、もしくは器官を選択的に標的とするために、選択され得る。医薬組成物は、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成用凍結乾燥剤(lyophile)、粉末、溶液、シロップ、座薬、注射などの投与単位形態であり得る。組成物はさらに、経皮送達システム、例えば、皮膚パッチ中に存在することができる。組成物はさらに、局所投与に適した溶液、例えば、点眼剤中に存在することができる。
【0251】
「立体異性体」という用語は、式(I)の化合物がキラルであるときはいつでも、または、1つ以上の二重結合を有するとき、式(I)の化合物の任意のエナンチオマー、ジアステレオマー、または幾何異性体を指す。式(I)および関連する式の化合物がキラルである場合、それらは、ラセミ体または光学的に活性なエナンチオマー形態で存在することができる。本発明が、D-異性体およびL-異性体、およびそれらの混合物と同様に、ジアステレオマー、エナンチオマー、およびエピマーの形態を含む、すべての立体化学の異性体の形態を包含することを理解されたい。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販の出発物質から、またはエナンチオマー生成物の混合物の調製によって合成的に調製され得、その後、ジアステレオマーの混合物への転換などの分離に続いて、分離または再結晶、クロマトグラフ法、キラルクロマトグラフィーカラム上のエナンチオマーの直接分離、または当該技術分野で知られている任意の他の適切な方法によって合成的に調製され得る。特定の立体化学の出発化合物は、市販であるか、または当該技術分野で知られている技術によって作られ分解され得るかのいずれかである。加えて、本発明の化合物は幾何異性体として存在し得る。本発明は、すべてのシス(cis)、トランス(trans)、合成(syn)、抗(anti)、エントゲーゲン(entgegen)(E)、およびツザーメン(zusammen)(Z)の異性体に加え、それらの適切な混合物を含む。
【0252】
本発明の化合物は、単一の薬物として、または、化合物が様々な薬理学的に許容可能な材料と混合された医薬組成物として、使用されてもよい。
【0253】
本発明の化合物は典型的には、医薬組成物の形態で投与される。そのような組成物は、医薬技術において周知の手順を用いて調製することができ、少なくとも1つの本発明の化合物を含んでいる。本特許出願の医薬組成物は、本明細書に記載される1つ以上の化合物、および1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。典型的には、薬学的に許容可能な賦形剤は、規制当局によって承認されているか、またはヒトもしくは動物の使用に対して一般に安全とみなされている。薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定されないが、担体、希釈剤、滑沢剤および潤滑剤、防腐剤、緩衝剤、キレート剤、ポリマー、ゲル化剤、粘性剤、および溶媒が挙げられる。
【0254】
医薬組成物は、経口、非経口、または吸入経路で投与することができる。非経口投与の例としては、注射による投与、経皮投与、経粘膜投与、経鼻投与、および経肺投与が挙げられる。
【0255】
適切な担体の例としては、限定されないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ピーナッツ油、オリーブ油、ゼラチン、ラクトース、白土、スクロース、デキストリン、炭酸マグネシウム、糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸、セルロースの低級アルキルエーテル、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸エステル、ならびにポリオキシエチレンが挙げられる。
【0256】
医薬組成物はさらに、1つ以上の薬学的に許容可能な補助剤、湿潤剤、懸濁化剤、保存剤、緩衝剤、甘味剤、香味剤、着色剤、または前述の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0257】
医薬組成物は、従来の形態、例えば、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、注射剤、または局所適用のための生成物であってもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、所望の放出プロファイルを提供するように製剤化され得る。
【0258】
純粋な形態または適切な医薬組成物での本発明の化合物の投与は、医薬組成物の認められた投与経路のいずれかを用いて実施することができる。投与経路は、特許出願の活性化合物を適切なまたは所望の作用部位に効果的に輸送する任意の経路であってもよい。適切な投与経路としては、限定されないが、経口、鼻腔、頬、経皮、皮内、経皮、非経口、直腸、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、または局所が挙げられる。
【0259】
固形の経口製剤としては、錠剤、カプセル(軟ゼラチンまたは硬ゼラチン)、ドラジェ(粉末またはペレット形態の活性成分を含む)、トローチ、およびロゼンジが挙げられる。
【0260】
液体製剤としては、限定されないが、シロップ、エマルジョン、および無菌の注射液、例えば、懸濁液または溶液が挙げられる。
【0261】
化合物の局所投与形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、粉末、溶液、目薬または耳薬、含浸ドレッシングが挙げられ、防腐剤、薬物の浸透を助ける溶媒などの適切な従来の添加剤を含むことができる。
【0262】
本特許出願の医薬組成物は、文献で知られている従来の技術によって調製することができる。
【0263】
本明細書に記載される疾患または障害の処置に使用するための化合物の適切な用量は、関連技術の当業者によって決定することができる。治療用量は一般に、動物試験に由来する予備的な証拠に基づいて、ヒトにおける用量範囲研究を通じて特定される。用量は、望ましくない副作用を引き起こすことなく、所望の治療上の利益をもたらすのに十分でなければならない。投与様式、剤形、および適切な医薬賦形剤も、当業者によってうまく利用および調整され得る。すべての変更および修正は、本特許出願の範囲内で想定される。
【0264】
本開示の化合物の調製のための合成手順は、WO2019142126 A1に記載されており、これはその全体が本明細書に組み込まれる。この開示の化合物の調製のための合成手順は、その全体の中に本明細書に取り込まれたWO2019142126 A1に述べられていた。
【0265】
実施例-1:血液癌細胞株における抗増殖活性の決定
OCI-LY3細胞(DSMZ ACC 761)、OCI-LY10(DSMZ ACC 722)を、IMDM完全培地を用いて、96ウェルの黒くて透明な平底プレート(96 well flat black clear bottom plate(Corning,Cat.No 3904)にプレーティングした。ファイファー(ATCC CRL-2632)、TMD8(CVCL_A442)、HBL-1(CVCL_4213)、DOHH2(DSMZ ACC 47)、CCRF-CEM[ATCC CCL-119]、CUTLL-1(CVCL_4966)、およびNCI-H929[H929]ATCC CRL-9068を、RPMI-1640完全培地を用いて、96ウェルの黒くて透明な平底プレート(Corning,Cat.No 3904)にプレーティングした。
【0266】
24時間後、本発明の選択された化合物を、DMSO(Sigma Cat no.D2650)中で作られた10mMストックから細胞に添加した。CTG読み取りは、化合物の添加の日に行い、0日目の読み取りとして標識された。各濃度の化合物を3連で試験し、DMSOの濃度が細胞内の最終的な割合0.1を超えないようにした。3日間(72時間)のインキュベーション後、100μlのCellTiter Glo(登録商標)試薬(Promega、Cat.no G7572)を用いてアッセイを終了させた。CellTiter Glo(登録商標)発光試薬は、細胞数と代謝活性の指標となる存在しているATPの定量化に基づいて、生存細胞数を決定する。発光の読み取りはVictor-3機器で行われた。データは、グラフパッドプリズムソフトウェアを使用して分析された。結果は表-IIに示す通りである。陽性対照(100%の生存率)=0.3%DMSOを含む完全培地中の細胞;陰性対照/ブランク(0%の生存率)=0.1%DMSOを含む培地のみ。
【0267】
【0268】
上記(表-II)に示すように、ほとんどの癌細胞株において、本発明の化合物であるFABP5阻害剤の効力は、BTK阻害剤イブルチニブの効力と一致し、BTK阻害剤イブルチニブが有効な癌適応症におけるFABP5阻害剤の可能性を裏付けた。興味深いことに、OCI-LY3(ABC-DLBCL)、CCRF-CEM、CUTLL-1(いずれもT細胞性急性リンパ芽球性白血病)、およびH929(多発性骨髄腫)を含む選択された細胞株では、FABP5阻害剤である化合物23(Cpd 23)は強力な抗増殖活性を示し、BTK阻害剤のイブルチニブは活性ではなかった。さらに、CARD11(BTKの下流のシグナル伝達中間体)に活性化変異が存在するため、BTK阻害剤に耐性を有する細胞株であるOCI-LY3(ABC-DLBCL)(
図1)においても、化合物23は強力な抗増殖活性を示した。イブルチニブに対して本質的に耐性を有するこれらの細胞株におけるFABP5阻害剤の強力な活性は、FABP5阻害剤がBTK阻害剤耐性の癌の処置に使用できることを裏付けている。
【0269】
実施例-2:細胞のMALT1活性の阻害
OCI-LY3細胞を指定濃度の化合物23(基準としてMALT1阻害剤MI-2を使用した)と一晩インキュベートし、その後、ライセートをMALT1と共有結合できるビオチン化活性部位プローブ(ペプチド)とインキュベートした。この後、ストレプトアビジンコンジュゲートビーズ(Millipore cat # S1638)を用いてライセートをプルダウンし、その後、ウエスタンブロットを用いてストレプトアビジンラベル(R&D systems cat no Dy998)を検出した(
図2)。
【0270】
実施例-3:MALT1基質の安定化
OCI-LY3細胞(DSMZ ACC 761)を、完全IMDM培地を有する6ウェルプレートに播種し、ある濃度範囲の化合物と40時間インキュベートした。その後、RelB(CST cat.No.4922)、A20(Cell Signaling technologies 4625S)、およびβアクチン(Sc-69879)に対する抗体を用いて、これらの細胞ライセートを用いるウエスタンブロットを行った。RelBとβ-アクチンのバンド強度は、Image studioソフトウェアを使用して生データの画像ファイルから推定し、エクセルシートにエクスポートされた。ブロットをティッシュペーパーで乾燥させ、LICOR Odyssey(商標)赤外線スキャナーで800および680チャンネルでスキャンした(
図3Aおよび3B)。
【0271】
実施例-4:サイトカイン放出の阻害
IL-6分泌に対する化合物23の影響の評価のために、OCI-LY3細胞(DSMZ ACC 761)を、完全なIMDM培地を有する96ウェルプレート(Corning cat no. CLS3596)に播種し、ある濃度範囲の化合物と19時間インキュベートした。19時間のインキュベーション後、新鮮な96ウェルプレートを遠心分離することによって培養上清を96ウェルプレートに集め、それをELISAに使用するまで-70±10℃で保存した。上清はヒトIL-6測定用に処理された。ELISAは、製造業者のプロトコル(R&D System DY206)に従って実施した。パーセントIL-6阻害を以下に列挙するように計算し、Graph Pad Prism、バージョン7.03ソフトウェアを用いて、試験アイテムのそれぞれの濃度に対してプロットすることで、IC
50値を算出した。結果を
図4Aに示す。
【0272】
IL-10分泌に対する化合物23の影響の評価のために、OCI-Ly10細胞(DSMZ ACC 722)を、完全なIMDM培地を有する96ウェルプレート(Corning cat no. CLS3596)に播種し、ある濃度範囲の化合物と16時間インキュベートした。16時間のインキュベーション後、新鮮な96ウェルプレートを遠心分離することによって培養上清を96ウェルプレートに集め、それをELISAに使用するまで-70±10℃で保存した。上清はヒトIL-10測定用に処理された。ELISAは、以下の製造業者のプロトコル(R&D System DY217)に従って実施した。既知濃度の標準品とELISA後に得られたそれぞれの吸光度値を用いて、標準グラフをプロットした。pg/mlでのIL-10濃度を、Graph Pad Prism、バージョン7.03ソフトウェアを用いて、試験アイテムのそれぞれの濃度に対してプロットすることで、IC
50値を算出した。パーセントIL-6阻害を以下に列挙するように計算し、Graph Pad Prism、バージョン7.03ソフトウェアを用いて、試験アイテムのそれぞれの濃度に対してプロットすることで、IC
50値を算出した。その結果を
図4Bに示す。
【0273】
実施例-5:NFATとNF-kBの阻害
NFATレポーターアッセイ:
Jurkat細胞を96ウェルの白色平底プレート(Corning #3912)のRPMI完全培地に播種し、化合物23と16時間インキュベートし、その後、PMA(1μM)およびイオノマイシン(4μM)で刺激した。6時間後、NFATレポーター分析を製造業者のプロトコルに従って行った(BPS Biosciences # 60621)。
【0274】
NF-kBレポーターアッセイ:
Jurkat細胞を96ウェルの白色平底プレート(Corning #3912)のRPMI完全培地に播種し、化合物23と1時間インキュベートし、その後、PMA(1μM)およびイオノマイシン(4μM)で刺激した。6時間後、NF-kBレポーター分析を製造業者のプロトコルに従って行った(BPS Biosciences # 60651)。
【0275】
【0276】
実施例-6:ヒトDLBCL腫瘍モデルにおけるインビボの腫瘍増殖阻害
メスNOD-SCIDマウスにおけるOCI-LY10ヒトDLBCLモデル内での化合物23の抗腫瘍活性を評価するために、ビヒクル、化合物23、およびイブルチニブの投与を開始した。処置は、1日1回30~50mpk、1日2回30mpkの用量で21日間、経口投与経路で投与した。総合的な有効性と忍容性は、処置期間中に観察された腫瘍体積と体重の変化に基づいて評価された。処置の21日目に、最終用量の投与の4、6、および24時間後にすべての処置群の動物を屠殺した。サイトカイン(ヒトIL-10)の測定は、ELISAキット(R&D systems # DY217B)を用いて、血清および腫瘍のサンプルにおいて、製造者の指示通りに行った。結果を
図6A、
図6B、および
図6Cに示す。
【0277】
実施例-7:OCI-Ly10細胞におけるFABP5の細胞サーマルシフトアッセイ
OCI-Ly10細胞(120万細胞/ウェル)を12ウェルプレートに播種し、化合物23の連続希釈液で、24時間処理した(対照として0.1%DMSOが含まれていた)。各処理の細胞を採取し、50μLのPBSに再懸濁し、サーマルサイクラーを使用してPCRチューブ内で熱変性(62℃、5分間)させた。PCRチューブを氷上に移し、非熱変性(NHD)対照チューブを含むすべてのチューブにPMSFを有する10μLのCST溶解緩衝液を添加し、よく混合し、内容物を1.5mLチューブに移した。チューブを氷上で30分間インキュベートした後、10秒間超音波処理を行い、15000rpmで15分間遠心分離した。上清を1.5mLチューブに移し、10μLのプロテインローディングダイ(Protein loading dye)を添加して、ウエスタンブロット用のサンプルを調製した。サンプルを95℃で5~8分間煮沸し、15%SDS PAGEゲル(50V)を用いて分離し、PVDF膜に移した(35V、70分)。PVDF膜を、LICORブロッキングバッファーを用いて室温で1時間ブロッキングし、FABP5一次抗体(Sino Biologicals #12581-T5;ブロッキングバッファー中の1:2000希釈)と4℃で一晩インキュベートした。膜をTBSTで洗浄(3X)し、IRDYE-800抗ウサギ抗体(ブロッキングバッファー中の1:10000希釈)と、室温で1時間インキュベートした。膜をTBSTで洗浄(3X)し、Licorスキャナーを用いて画像を取得した。結果を
図7に示す。
【0278】
引用による組み込み
本明細書で言及されるすべての公報および特許は、あたかも個々の公報または特許が引用によって組み込まれるように具体的かつ個々に示されるように、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。対立が生じる場合には、本明細書における任意の定義を含む本出願が優先する。
【0279】
同等物
主題の発明の特異的な実施形態が議論されている一方で、上記の明細書は実例的であるが限定的ではない。本発明の多くの変化が、本明細書および以下の特許請求の範囲の精査に際して当業者に明白となる。本発明の完全な範囲は、等価物の十分な範囲に沿った特許請求の範囲と、そのような変化に沿った明細書への言及によって決定されるべきである。