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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】蒸気発生器
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/36 20060101AFI20230911BHJP
   F22B 13/02 20060101ALI20230911BHJP
   F22B 13/04 20060101ALI20230911BHJP
   F22B 37/26 20060101ALI20230911BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20230911BHJP
   F22B 13/08 20060101ALI20230911BHJP
   F22B 29/02 20060101ALI20230911BHJP
   F23J 11/06 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
F22B37/36 Z
F22B13/02
F22B13/04
F22B37/26 A
F22B37/26 B
F23J1/00 Z
F22B13/08
F22B29/02
F23J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515013
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2021057697
(87)【国際公開番号】W WO2022049447
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】767635
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523076391
【氏名又は名称】マックウェル ペロ アンド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】マックウェル,サミュエル ジェームス
【テーマコード(参考)】
3K161
【Fターム(参考)】
3K161AA23
3K161BA04
3K161DA81
3K161EA41
3K161HA54
3K161HA55
3K161HA58
3K161HD02
3K161HD06
3K161LA38
(57)【要約】
移動可能な又は固定された蒸気発生器であって、出口がサイクロン部に接続された火室を含む。サイクロン部の出口は水管蒸気ボイラーに開口し、サイクロン部と水管蒸気ボイラーの接続は、サイクロン部が水管蒸気ボイラーを火室での火の放射熱から実質的に隔離するようにされている。構造シェルは、火室と、サイクロン部と、水管蒸気ボイラーとを格納し、格納された要素が使用中に故障した場合の格納容器を提供すると共に、使用中に蒸気発生器にかかるあらゆる構造負荷を負うように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器であって、
・燃料が燃焼されることができる火室と、
・サイクロン部への入口が前記火室の出口と連通するようにされた、前記火室に接続された前記サイクロン部と、
・前記サイクロン部からのガスが水管蒸気ボイラーに入るようにして、前記サイクロン部の出口に接続された前記水管蒸気ボイラーと、
・前記サイクロン部が前記水管蒸気ボイラーを、使用中の前記火室での火の放射熱から実質的に隔離するようにした、前記サイクロン部と前記水管蒸気ボイラーの間の接続と、
・前記火室と、前記サイクロン部と、前記水管蒸気ボイラーとを格納するようにされ、前記火室、サイクロン部及び水管ボイラーのいずれかが使用中に故障した場合の格納容器を提供するように構成された構造シェルと、
・前記火室、前記サイクロン部及び前記水管蒸気ボイラーが、使用時に前記蒸気発生器の構造部材として機能しないように、使用時に前記構造シェルが前記蒸気発生器に加わるあらゆる構造負荷を負うように更に構成されていることと
を含む、蒸気発生器。
【請求項2】
前記サイクロン部は、単一のサイクロンからなることを特徴とする、請求項1に記載の蒸気発生器。
【請求項3】
前記サイクロン部は2つ以上のサイクロンからなり、該サイクロンが直列又は並列に配置されている、請求項1記載の蒸気発生器。
【請求項4】
前記水管蒸気ボイラーが単管ボイラーである、請求項1から3のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項5】
前記水管蒸気ボイラーが多管ボイラーである、請求項1から3のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項6】
前記水管蒸気ボイラーが強制循環ボイラーである、請求項1から5のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項7】
前記水管蒸気ボイラーは、使用時に燃焼ガスが、前記ボイラーの長さ方向に実質的に平行な軸方向に流れるように設計されている、請求項1から6のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項8】
前記水管蒸気ボイラーは、使用中に燃焼ガスが、前記ボイラーの長さ方向に実質的に平行な軸方向と、更に前記ボイラーの長さ方向での複数の位置で、前記ボイラーの長さ方向に実質的に垂直である複数の半径方向とに流れるように設計されている、請求項1から7のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項9】
前記水管蒸気ボイラーは、少なくとも1つの螺旋状に巻かれたボイラー管を含む、請求項1から8のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項10】
前記火室が、本明細書で定義された乾式火室である、請求項1から9のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項11】
前記火室、前記サイクロン部、及び前記水管蒸気ボイラーは、水平軸に沿って互いに隣接して配置されている、請求項1から10のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項12】
前記火室、前記サイクロン部、及び前記水管蒸気ボイラーは、鉛直軸に沿って互いに隣接して配置されている、請求項1から10のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項13】
前記水管蒸気ボイラーの蒸気出口に接続された気水分離器を更に含む、請求項1から12のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項14】
前記気水分離器から排出された水を使用する際に、前記水管蒸気ボイラーに再循環される、請求項13に記載の蒸気発生器。
【請求項15】
使用時に前記気水分離器から蒸気を受け取るようにして前記気水分離器に接続された蒸気過熱器を更に含む、請求項13又は請求項14に記載の蒸気発生器。
【請求項16】
前記構造シェルの一端によって形成された煙室を更に含み、該煙室は、使用時に前記ボイラーを通過した燃焼ガスが前記煙室に入るように構成され、前記煙室は、前記燃焼ガスを排出するための煙道を備え、使用時に該煙道を通る通気を生成する通気生成構成を備えている、請求項1から15のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項17】
前記サイクロン部の1つのサイクロン又は各サイクロンのための入口部が、複数の周辺の羽根によって囲まれた中実の中央部分を含み、それにより使用時に前記火室の出口から前記サイクロン部に通過するガスが前記羽根を通過しなければならないようにし、前記羽根はそれぞれ、前記中実の中央部分の平面に対して鋭角に角度を付けられている、請求項1から16のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【請求項18】
前記羽根はそれぞれ、5°~80°の範囲の角度で、前記中実の中央部分の平面に対して角度を付けられている、請求項17に記載の蒸気発生器。
【請求項19】
前記羽根はそれぞれ、20°~30°の範囲の角度で、前記中実の中央部分の平面に対して角度を付けられる、請求項18に記載の蒸気発生器。
【請求項20】
それぞれの前記羽根の角度が調整可能である、請求項17又は請求項18に記載の蒸気発生器。
【請求項21】
使用時に前記水管蒸気ボイラーに給水する水ポンプを作動又は停止させるように構成された温度制御器に接続された温度プローブを更に含む、請求項1から20のいずれか1つに記載の蒸気発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器に関する。本発明のその発生器は、固体燃料、特に木材又は同様の固体バイオマス燃料、例えばバガス、堅果の殻によって燃料供給されるように特に設計されている。しかしながら、本発明の蒸気発生器は、石炭若しくはコークスのような固体化石燃料によって、又は純粋でない又は汚染された液体若しくはガス燃料を含む液体若しくはガス燃料によって燃焼されることも可能である。
【0002】
本発明の蒸気発生器は、特に車両(例えば機関車、トラクター又はトラック)の一部として使用するために設計されており、特にその用途に関して説明される。しかしながら、本発明の蒸気発生器は広範な用途に使用されることができ、車両での使用に限定されない。
【背景技術】
【0003】
先行技術の考察は、考察される先行技術が関連分野の一般常識の一部であることを意味するものではない。
【0004】
蒸気動力車では、燃料は火室で燃焼され、燃焼熱はボイラーで水の温度を摂氏100℃以上に上げて蒸気を生成するために使用される。この蒸気は、1つ以上のピストンを駆動するために使用される。ピストンの直線運動を車両の車輪の回転運動に変換するために、既知のタイプのリンク機構を使用することができる。あるいは、蒸気は、公知の方法で1つ以上のタービンを駆動するために使用されることができる。
【0005】
これまで、機関車の大半は、石炭、コークス又は石油の形態の化石燃料を燃焼するように設計されてきた。これらの燃料は、燃焼時に発熱量が多く、既知の熱特性で均一かつ確実に燃焼する傾向がある。更なる利点は、コークスや石油の燃料は火花の発生がより少ない傾向があることであり、そして石炭は火花のリスクを低減するために前洗浄されることができる。火花は鉄道の線路で火災を引き起こすことで知られており、バイオマス燃料は化石燃料よりも火花のリスクがかなり高いと考えられている。また、火花は燃料の損失を意味し、高い蒸気消費率で機関車ボイラーの効率を50%も低下させる。
【0006】
燃焼ガス中の燃料粒子(火花)のキャリーオーバーを低減するための既知の技術の1つは、炉ガスをサイクロンに導くことであり、サイクロンは燃料粒子を燃焼させる二次炉として、及び/又は燃料粒子と灰粒子の両方を凝集させて集める収集器として働くことができる。火花の原因となるのは燃料粒子であるため、このようにサイクロンを使用することは、火花のリスクも低減する。このタイプの配置は、固定炉に関して特許文献1に開示されている。
【0007】
バイオマス燃料の更なる既知の欠点は、バイオマス燃料は、燃焼させた時に発生する熱がより少ない傾向があり、したがって実用的であるには遥かに高いエンジン効率を必要とすることである。しかし、化石燃料を燃焼させることは環境保護の観点から望ましくなく、更に化石燃料は乏しくなってきており、より高価になってきている。したがって、バイオマス燃料が従来の蒸気ボイラーの燃料に使用されるなら、入手しやすく、すぐに交換可能であり、化石燃料に比べて安価であることを考慮すれば、バイオマス燃料の既知の欠点を克服することができたならば、それは燃料としての魅力的な提案である。
【0008】
従来の蒸気機関車は、主に煙管式のボイラーを用いている。
【0009】
本明細書において、「煙管ボイラー」という用語は、火室からの高温の燃焼ガスがボイラー内の管を通過し、その管はボイラーに含まれる大量の水に囲まれ、管の熱がこの大量の水を加熱して蒸気にするボイラーを指す。水はまた、二重壁の火室の水空間に水を循環させることによっても加熱される。それは、以下では「湿式」火室と称される。典型的には、ボイラーの蒸気出力の約30%が、湿式火室から生じる。
【0010】
本明細書において、「水管ボイラー」という用語は、火室からの高温の燃焼ガスがボイラーに収容される1本以上の管の外面上を通るボイラーを指し、加熱されて蒸気になる水はこの管を通って循環し、熱伝達は対流によって行われる。一般的には水管ボイラーのほとんどの設計はまた、「湿式」火室において放射状に熱を伝達し、火室は加熱されて蒸気になる水が循環する管で構成されている。
【0011】
煙管ボイラーは、水管ボイラーに比べて建設費が高く、また維持費もはるかに高い。また、煙管ボイラーは大量の水を含むため、運転開始時にこの水を冷えた状態から蒸気の作動圧まで加熱するのにかなりの時間を要する。逆に、運転終了時には加熱された大量の水がボイラー内に残されて冷え、これはエネルギーの著しい無駄を意味する。この設計の更なる欠点は、ボイラーの直径が大きいことで、ボイラー内で発生されることができる最大圧力が比較的低いレベル(通常、1平方インチ当たりおよそ350ポンド)に制限され、それは高いエンジン効率を達成するには低すぎるということである。また、効率的である大型の圧力容器(すなわちボイラー)と、使用時にそれが収容する高温水の存在は、重大な安全上のリスクも示す。
【0012】
上記のような欠点にもかかわらず、機関車の技術者たちは、一般に煙管ボイラーによって提供される大量の加熱水は、蒸気駆動車両の特徴である負荷の急激な変化に対応するために実際には不可欠であると考えてきた。長年に亘り、比較的小容量の水管ボイラーは、単に蒸気駆動車両では十分に機能しないであろうというのが一般通念である。
【0013】
大多数の機関車の設計では、機関車の熱交換器部分などの圧力系部品(水管か煙管かを問わず)は、機関車の耐荷重構造の重要な部分を形成している。これは、収容される流体の圧力と部品の加熱による膨張/収縮とによって生じる熱交換器での応力に加えて、機関車の動きによる構造的な応力を意味する。これは全体の応力を大幅に増大させて、システムの故障に大いに関与する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2804854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、バイオマス固体燃料を含む固体燃料を燃焼させて安全かつ効率的に蒸気を発生させ、同時に有害な排出物を低減することができる、小型で軽量の固体燃料蒸気発生器の設計である。
【0016】
本発明の更なる目的は、従来の機関車型ボイラーの一般的な形式とレイアウトでこれを実現し、それにより本発明が直接の代替品としての役割を果たし得るようにすることである。
【0017】
本発明の他の目的は、ボイラー胴が圧力系部品から機能的に独立している固体燃料蒸気発生器の設計であり、それによりボイラー胴は、圧力系部品に追加の応力を与えない発生器の構造要素であることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以下を含む蒸気発生器を提供する。
・燃料が燃焼されることができる火室、
・サイクロン部への入口が火室の出口と連通するようにされた、火室に接続されたサイクロン部、
・サイクロン部からのガスが水管蒸気ボイラーに入るようにして、サイクロン部の出口に接続された水管蒸気ボイラー、
・サイクロン部が水管蒸気ボイラーを、使用中の火室での火の放射熱から実質的に隔離するようにした、サイクロン部と水管蒸気ボイラーの間の接続、
・火室と、サイクロン部と、水管蒸気ボイラーとを格納するようにされ、火室、サイクロン部及び水管ボイラーのいずれかが使用中に故障した場合に格納容器を提供するように構成された構造シェル、
・火室、サイクロン部及び水管蒸気ボイラーが、使用時に蒸気発生器の構造部材として機能しないように、使用時に蒸気発生器に加わるあらゆる構造負荷を負うように更にされた構造シェル。
【0019】
好ましくは、サイクロン部は、単一のサイクロンである。しかしながら、サイクロン部は、サイクロンが直列又は並列に配置された1つより多くのサイクロンから構成されてもよい。水管蒸気ボイラーは、単管ボイラーであっても多管ボイラーであってもよく、好ましくは強制循環ボイラーである。
【0020】
水管蒸気ボイラーを通る燃焼ガスの流れは、半径方向又は軸方向、あるいはその2つの組み合わせであることができるが、好ましくは、軸方向の流れ(すなわち、水管蒸気ボイラーの長さ方向に実質的に平行)又は水管蒸気ボイラーの長さ方向における複数の半径方向の流れと組み合わされた軸方向の流れである。
【0021】
好ましくは、蒸気発生器は、水管蒸気ボイラーの蒸気出口に接続された気水分離器を更に含む。
【0022】
好ましくはまた、気水分離器から排出された水は、再循環されて水管蒸気ボイラーに戻される。気水分離器から排出された水は、給水加熱器に供給されてもよい。
【0023】
好ましくはまた、蒸気発生器は、蒸気過熱器を更に含む。
【0024】
好ましくは、蒸気発生器は、上記構造シェルの一端によって形成された煙室もまた含み、煙室は水管蒸気ボイラーを通過したガスが煙室に入るように配置され、煙室はそのガスを放出するための煙道を備え、煙道を通る通気をもたらすための通気生成構成を備える。
【0025】
好ましくは、サイクロン部の1つのサイクロン又は各サイクロンのための入口部は、複数の周辺の羽根によって囲まれた中実の中央部分を含み、それにより使用時に火室の出口からサイクロン部に通過するガスがその羽根を通過しなければならないようにする。その羽根はそれぞれ、上記中実の中央部分の平面に対して鋭角に角度を付けられる。各羽根の角度は、調整可能であってもよい。好ましくは、その羽根はそれぞれ、上記中実の中央部分の平面に対して、5°~80°の範囲で、最も好ましくは20°~30°の範囲で角度を付けられる。その羽根の目的は、サイクロン部内でサイクロン流を発生させることである。
【0026】
好ましくは、構造シェルは、図示されるような従来の煙管「機関車ボイラー」の形態を取る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
例示としてのみ、本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して詳細に説明される。
図1】本発明による固体燃料蒸気発生器の垂直断面図である。
図2図1の線2-2での断面図である。
図3図1の線3-3での断面図である。
図4】制御システムの図を含む、図1を簡略化した図である。
図5】多管ボイラーの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照すると、固体燃料蒸気発生器10は、火室11、単一のサイクロンの形態のサイクロン部12、及びボイラー13の3つの主要な部分で構成されている。これらの3つの部分は、水平に配置されるように描かれているが、これは必須ではない。それらは垂直に配置されること、すなわち、サイクロンが火室の垂直上方にあり、ボイラーがサイクロンの垂直上方にあることができる。火室11、サイクロン部12及びボイラー13、更に後述されるような付属機器は、これらの構成要素を格納して保護し、蒸気発生器の主要構造部材として機能する構造シェル10a内に格納されて、そのシェル内に格納された構成要素に対する構造応力を最小化する。火室及び/又はサイクロンは、水、空気又は他の冷却媒体が循環する冷却ジャケット(図示せず)を備えてもよく、結果として生じる加熱された媒体は、燃焼空気又はボイラー給水を予熱するために使用されてもよい。
【0029】
しかし、加熱された媒体は、蒸気を発生させるためではなく、主に火室及び/又はサイクロンを冷却するために使用される。このような構成は、「乾式」火室として知られている。
【0030】
「乾式」火室の使用は、火室内で生成された熱の実質的にすべてを燃料の燃焼に利用できることを意味する。つまり、「湿式」火室でのように、火室壁内の水を加熱するために火室壁に熱をほとんど消散しない。これは、燃料反応が完了するまで燃料の燃焼は高温に保たれて、汚染物質を大幅に低減することを意味する。
【0031】
「湿式」火室では、火室壁は水で満たされていて低温に保たれ、したがって燃焼ガスが壁と接触した場合に燃焼ガスを急冷する傾向がある。これは、揮発性有機化合物や煤が火室のガスに含まれることをもたらす。
【0032】
乾式火室の使用は、燃焼ガスからボイラー水への対流による効率的な熱伝達を提供する、低容量の強制循環式の熱交換器(後述)の採用により可能である。
【0033】
火室11は、耐熱材料(例えば、鋼、ステンレス鋼)で作られた筐体であり、内部及び/又は外部に耐高温の耐火被覆が施されていてもよい。その火室には、燃焼させる燃料が置かれる火格子14が取り付けられている。その火格子の下方に、公知の方法で灰受け15と灰排出扉16とが配置されている(図4には図示せず)。火室11は、断面がおおよそ長方形であるが、火室出口17に隣接する下側の壁11aが火格子14の平面に対して鈍角で傾斜しており、火室から隣接するサイクロン12へのガスの滑らかな移行部を提供し、サイクロン12の隣接部での過剰な加熱を回避する。
【0034】
第2の空気入口11bが下側の壁11aに形成されてもよく、これもまた、サイクロン12の隣接部分での過度の加熱を低減することを支援する。
【0035】
灰受け15は、断面において、火格子14から灰排出扉16に至るまで先細りになっている。
【0036】
火室11は、サイクロン12に対向する火室の壁に扉18を備えており、使用時には燃料は扉18を通じて供給されて、火格子14上に落ちる。扉18は旋回軸19で枢動され、開いた時に火室の内側に枢動する。ドア18が部分的に開いている時、それは二次燃焼空気の流れを火室内に導く。
【0037】
扉18は、単一の扉であっても、複数の扉であってもよい。使用される燃料供給システムのタイプに応じて、ドアは、図1に示される場所に、又は火室11の上部又は側部に配置されることができる。別の可能なものは、燃料補給機で下からの燃料供給として燃料を供給することである。
【0038】
蒸気発生器への空気の流れは、両矢印で示されている。空気は、ドア18が開いている時に火室に入れられ、ドア18はまた、それを通る又はその周囲の通気口を備えて形成されてもよい。空気はまた、火格子14の下側周囲の複数の入口20(ダンパー制御(図示せず)のある又はない)を通って入る。図示された設計は、利点があり得ることが想定される燃焼空気の予熱を提供しないが、この特徴は、例えばエンジン排気又は他の廃熱源を使用して、又は火室周りのエアジャケットによって、追加されることができる。
【0039】
火室出口17は、サイクロン12のための入口部を形成する。特に図2を参照すると、出口17は断面が円形であり、一連の周辺の角度のついた羽根23に囲まれた中実の中央部分22を有する。羽根は、内部で冷却されてもよい(図示せず)。
【0040】
各羽根23は、中央部分22の平面に対して鋭角に角度が付けられている。このように羽根に角度を付けることで、サイクロン12に入って火室を後にする燃焼ガス(図1では片矢印で示す)及び同伴粒子に旋回を与えて、渦を形成する。各羽根23は、中央部分22の平面に対して5~80°の範囲の角度を付けられることができるが、20~30°の範囲の角度が好ましい。角度は調整可能であってもよい。羽根23は、公知の方法で、空気力学的性能を向上させるために、湾曲及び/又は輪郭を付けられてもよい。
【0041】
サイクロン12は断面が円形であり、サイクロン出口に逆円錐台状部24を備える。サイクロン内では、旋回した燃焼ガスがサイクロンで円運動をし、より重い同伴粒子がサイクロンの外壁に向かって外側に移動する。サイクロンは、内側及び/又は外側を耐高温耐火物で被覆されることができ、蓄積された灰を除去することができるように、その最下地点に開口(図示せず)を備えて形成されている。
【0042】
図1には、サイクロン出口の別の設計が破線で示されている。逆円錐台状部24は、平面において長方形である、側面が直線の出口24aに置き換えられている。
【0043】
基本的に、サイクロンは、燃焼ガスが火室から出てボイラー13に入るまでの間で遅延を提供し、この遅延によって、ガス及びあらゆる同伴燃料粒子の完全燃焼を可能にする。完全燃焼のための十分な酸素が存在することを確実にするために、追加の空気がサイクロンに入れられてもよい。この空気は、サイクロン内の空気の旋回流を支援するために、接線方向に入れられてもよい。完全燃焼を達成すると、システムの全体的な効率が向上し、またすべて又はほぼすべての火花物質がサイクロンで燃焼を完了し、ボイラーを通って運ばれて排気システムに入ることができないという点で、サイクロンが火花防止器として機能することになる。これは、火花による火災リスクを効果的に排除する。更に、ほとんどの同伴粒子がサイクロン内で完全に燃焼されるか又はサイクロン内に堆積されるので、これは固体粒子がボイラー13内に運ばれてボイラー管の曲がりの間のガス通路を詰まらせる、及び/又は伝熱面の物理的浸食を引き起こすという問題を排除する。
【0044】
更に、サイクロン内のガスの速度を維持又は増加させることが必要であることが分かった場合(ある運転条件下で)、蒸気をサイクロン内に接線方向に入れることが可能である。
【0045】
サイクロンを配置することの追加の利点は、サイクロンが火室からボイラーを分離し、それにより火室からの放射熱から1本又は複数本のボイラー管を分離することである。これは、1本又は複数本のボイラー管の局所的な過熱を防止するのに役立つ。また、この配置により、ボイラーへの熱の供給が、ボイラーを通るガスの流れによって純粋に支配され、ボイラーの負荷に直接比例しない火室内の火からの放射熱によって支配されないため、蒸気発生器をより制御しやすくなる。このように、サイクロン部によってボイラーから火室を分離することで、低容積水管ボイラーの主な難点である負荷の変動が克服される。
【0046】
サイクロン内のガスの旋回作用は、サイクロンから出るガスの実質的に均一な温度をもたらす。これによりボイラーの運転状況が改善され、例えば、より均一な熱流束を受けることでボイラーの寿命が延びることによって、ボイラーの運転状況が改善される。これは、多管ボイラーでは、不均一な熱流束はボイラーの一部の管における不安定な流れ、及びその結果としての過熱を引き起こし得るので、多管ボイラーを使用する場合に特に有益である。
【0047】
ボイラー13は、図1~4では、中央のシリンダー26の周りに多層の螺旋状に巻かれた単一の管25を備えた単管ボイラーとして描かれている。しかし、ボイラーは、図5を参照して後述されるような多管ボイラーであることもできる。いずれの場合も、ボイラーは「水管」型であり、すなわち水が1本又は複数本の管を通って循環され、サイクロンを出てコイル状の単管又は多管の間の隙間を通過する高温ガスによって加熱される。
【0048】
バイオマス固体燃料を燃料とする蒸気機関車は、上述した理由に加えて、バイオマス燃料の燃焼は、比較的大きな割合の同伴固体粒子を生成する傾向があり、この粒子は単管の曲がりの間又は隣接する複数の管の空隙に詰まって、蒸気処理能力の低下をもたらすことがよく知られているので、これまで大部分が「煙管」型(すなわち、加熱される水に囲まれた管を燃焼ガスが通過する)であったことに注意されたい。
【0049】
ボイラー管については、螺旋状に巻かれた単管が、この構造は高効率の熱交換を提供し、製造が比較的安価であるので好ましい構成である。ボイラー管は、鋼又はステンレス鋼で作られることが想定される。使用される管の直径は、ボイラーの直径に依存する。例えば、240mmのボイラーの直径については、12.7mmの管の外径が適していることが分かっている。単管ボイラーの1つの可能な構成方法としては、螺旋状に巻かれた管の一連のユニットを形成し、これらのユニットの端を連結して1本の連続管を形成することである。これまで、単管ボイラーは主に液体燃料やガス燃料で使用されているが、これらの燃料は燃焼速度の制御が容易で、そのため蒸気温度の調節が可能であるためである。燃焼速度の制御による温度調節は、固体燃料が燃焼される火室では実用的な提案ではなく、そこでは一定の燃焼速度を用いて、以下で述べるような代わりの制御手段によって蒸気温度を調節できることが望ましい。
【0050】
加熱されて蒸気になる水(「給水」)は、入口27を通って単管の一端に供給され、単管の螺旋状に巻かれた層の隙間を通過する高温の燃焼ガス(片矢印で示す)によって加熱されながら、螺旋の全長を回転しながら通過する。蒸気は、出口パイプ28を通ってボイラーを出て、次にシリンダー26の中心部を通るパイプ29を通って、ボイラー13の端にある出口30へ下流に移動する。
【0051】
出口30は、蒸気を必要とする機器(例えば、エンジンのピストンやタービン)に直接接続されることもできるが、好ましくは、図4を参照して後述されるように、最初に気水分離器に、次に過熱器に向けられる。
【0052】
図示される実施形態では、ボイラーを通る高温の燃焼ガスの流れは、実質的に軸方向であり、すなわちボイラーの縦軸に沿っている。比較的長くて直径の小さいボイラーを通る軸方向のガス流は、最も高い熱伝達率、したがって最も高い効率を提供すると考えられる。しかしながら、他の形状のボイラー及び/又は別のボイラー管配置について、他のガス流パターンが好ましいことがある。例えば、高温の燃焼ガスをボイラーの中心部にある有孔管に通し、その管の穿孔を通って出すことによって、管の巻きの間の隙間を通すことができる。
【0053】
燃焼ガスはボイラーを通過して直ぐに煙室31に入り、煙道32から排出される。ピストンから排気された蒸気は、公知の方法で、煙道32を昇って通気するめに、煙室31に戻されてもよい。
【0054】
図5は、多管ボイラー40の概略図である。この構造では、両方とも螺旋状に巻かれた2つの同一の管41、42に、供給ライン43を通じて加熱されて蒸気になる水が供給される。供給ライン43は2つの支線44、45を提供して、それらが管41、42にそれぞれ接続される。各支線44、45は、小径のオリフィス46、47を備える。
【0055】
多管ボイラーでは、管の乾燥状態又は管に過度に水のある状態を防ぐために、確実にすべての管に実質的に等量の水が供給されることが重要である。これは、上述のような小径のオリフィスを備えた供給ラインを提供することによって、又は個別のポンプと個別の温度制御システムを用いて各ラインに供給することによって、実現されることができる。
【0056】
小径のオリフィスを使用することは、オリフィスが小径であるので、管を通して供給される水に大きな圧力降下を生じさせ、それにより管内での小さな圧力変化がそれらの管への水の供給に影響を与えないので、問題に対するより単純な解決策である。
【0057】
多管ボイラーは、2本より多くの管を有してもよい。多管ボイラーの制御は、以下で述べるように、単管ボイラーと同じ方法で実現される。
【0058】
蒸気発生器の安全かつ効率的な運転のためには、ボイラーへの水の供給(給水)、蒸気温度、蒸気圧力、及び燃焼速度(すなわち、燃料が火室内で燃焼する速度)を制御することが必要である。上述した蒸気発生器を制御するために様々な既知の制御システムを使用することができ、後述されるシステムは、必要な制御を実現するための単なる1つの可能な方法である。制御システムは、単管ボイラーを参照して後述されるが、多管ボイラーにも同様に適用可能である。
【0059】
特に図4を参照すると、給水制御は、水タンク65又は他の供給源から逆止弁52を通ってボイラー管25の入口27に水を供給する蒸気作動ポンプ50による。給水は、任意で、タンク65と入口27との間の給水加熱器(図示せず)において予熱されてもよい。ポンプ50は、好ましくは、蒸気駆動で直接作動するピストン型であり、後述するように、ポンプ50への蒸気の供給の開始及び停止によって、ボイラー管に供給される給水速度が制御される。逆止弁52は、ボイラー管25内の水がボイラーから流出してポンプ50に逆流するのを防ぐ。
【0060】
給水は、ボイラー管25に入ると、管の螺旋を回りながら通過し、上述したように通り抜けながら高温の燃焼ガスによって加熱される。ボイラー管出口30に到達する時までに、給水は主に蒸気となっているが、蒸気で運ばれるいくらかの水が存在する。この時点で蒸気は、温度制御器57に接続された温度プローブ56を通過する。温度制御器57は、温度プローブ56による測定温度が所定温度(通常は、ボイラーの最大圧力における飽和蒸気温度のわずかに上である)を超えると、水ポンプ50への蒸気供給を開始するように構成されている。そして、管25内の水位がほぼ出口30まで押されるまでポンプ50が作動される。これにより温度プローブ56が冷却されて、温度制御器57がポンプ50を停止させる。
【0061】
ボイラー管25を通る水の流れは不純物を排出し、また最大の熱伝達率を提供するので、ポンプ50の制御システムを、わずかに過剰な水をボイラー管25に供給するように設定することが有利である。これは、ボイラーからの安定した蒸気圧を提供する。
【0062】
ボイラー管出口30からの蒸気は、もちろん蒸気を必要とするあらゆる用途に直接使用されることができる。しかし、蒸気機関車での使用のためには、蒸気を過熱することが望ましい。最初に、出口30を出た蒸気/水が蒸気/水分離器55に送られて、蒸気を「乾燥」させる、すなわち運ばれた水を除去する。典型的には、分離器55は、既知のタイプのサイクロン分離器である。分離された乾燥した清浄な蒸気は、蒸気ライン60を通って分離器55を離れ、分離された高温水は分離器55の底部に蓄積される。
【0063】
蒸気ライン60は、過熱器要素61に接続されている。過熱器は、多数の既知のタイプの過熱器のいずれであってもよい。例えば、過熱器は、サイクロン出口とボイラー管の間に螺旋状に配置された水管62(図1)の形態であることができる。高温の燃焼ガスは、サイクロンを出た直後に過熱器の管の壁面を通過して、蒸気を過熱する。過熱器に入る及び/又は過熱器を出る蒸気の温度は、公知の方法で温度プローブ(図示せず)を用いて測定されることができる。過熱器から出る蒸気の温度を調節するために、凝縮水が制御された量で注入されてもよい。凝縮水は、蒸留されるため清浄で不純物がないので使用される。
【0064】
過熱器を出た蒸気は、エンジンのピストンやタービン(図4ではボックス80として示されている)に供給される。
【0065】
分離器から水を排出するための通常の構成は、分離器にフロート弁を設けることであり、フロート弁は一定量の水が溜まると自動的に開いて水を排出する。しかし、この方式は、分離器のスペースを占有するという欠点がある。
【0066】
本発明では、給水タンク65への出口ライン55aにある手動弁63を通って、分離器55から水が排水される。弁63を開くと、水は小径オリフィス64を通って排水されることができる。小径オリフィス64の存在により、システムでの圧力が維持される。ライン55aを通って排水された水は、給水タンク65に排水されるように示されているが、実際には、存在する場合には給水加熱器又は温水タンク(図示せず)に排水されてもよい。
【0067】
オリフィス64の直径は、給水加熱器からの排水が、ポンプ50によって供給される過剰な給水の量よりもわずかに大きくなるように設定される。これにより、すべての水が分離器から排水されることが保証される。
【0068】
弁63は、ボイラーが一定期間燃焼されていない時に、ボイラー圧力を保つために閉じられることができる。
【0069】
上述した排水システムは極めて単純であり、そして分離器から不純物を絶えず排出するという追加の利点を有することが理解される。
【0070】
更に、上記のシステムは、分離器自体で実際にいかなる装置も必要とせず、したがって分離器55は、他の可能であるであろうものよりも小さいことができる。あるいは、同様の機能を果たすために、既知のタイプの様々な蒸気トラップを用いることができる。
【0071】
水ポンプ50は、ポンプ50への蒸気の供給を制御する蒸気用電磁弁67によって制御される。ポンプ50に供給する蒸気ライン68は、気水分離器55からの蒸気ライン60に接続されているように描かれているが、実際には、蒸気供給のいずれの便利な部分に接続されてもよい。
【0072】
上記の構成に代わるものとして、ポンプ50を連続的に作動させ、給水ラインにバイパス弁を配置し、必要に応じてこの弁を開閉して給水を制御することも可能である。このシステムを採用した場合、給水をオンにするとシステムの圧力が上昇し、システムの残りは上記のように機能する。
【0073】
次に蒸気圧の制御と燃焼速度の制御について説明すると、蒸気圧は燃焼速度、つまり火室で燃料を燃焼させる速度によって実際には制御されるため、この2つの要素は関連している。燃焼速度は、システムでの通気によって制御される。
【0074】
加圧空気を供給することによって、システムで火室11に燃焼ガスを押し込むことが可能である。このシステムを採用した場合、粒状燃料は通常は加圧空気の供給と共に吹き込まれる。しかし、このようなシステムは比較的複雑であり、本発明については好ましくないが、それを採用することは可能である。
【0075】
好ましくは、空気及び燃焼ガスは、蒸気発生器の動作中に、通気システムによって煙室31内に発生する減圧によってシステムを通って引き込まれる。
【0076】
通気は、煙道32の下端71に隣接して煙室31に配置される排気ノズル70を、公知の方法で設けることによって生成される。ノズル70は、エンジン排気から蒸気が供給され、この蒸気は煙道32をまっすぐ上方に通過するように向けられ、したがって燃焼ガスを煙室31から煙道32の上方に引き込む。
【0077】
ノズル70によって提供される通気の量は、ボイラー圧力に応じて排気ノズル70の面積を調整することによってエンジンの背圧を変えるシステムによって提供され、それによりボイラー圧力が増加するとノズル面積が増加してエンジン背圧を減少させ、したがって通気をわずかに減少させる。ほとんどは、このシステムでの通気の発生は、蒸気消費量に比例する。背圧を調整することにより、余分な通気としてエネルギーを浪費することなく、最大限の効率を確保する。
【0078】
煙道32を通るガスの流れは、必要に応じて、ノズル70を取り囲み、蒸気(例えば、気水分離器55からの)が供給されるように構成された有孔コイル72を設けることによって増加されて、煙道32を通るガスの流速を迅速かつ制御可能に増加させてもよい。蒸気は、必要な時だけコイル72に供給され、手動又は自動で制御されることができる。
【0079】
より効果的な構成は、有孔コイル72に代えて、手動又は自動弁を介してボイラー圧力の蒸気を受け取る高圧蒸気膨張ノズルのリングを使用することである。
【0080】
蒸気発生器の迅速かつ正確な制御は、ボイラー管が火室11内での燃焼の放射熱から隔離されており、したがってボイラーからの蒸気発生速度は、主として燃焼ガスからボイラー管内の水/蒸気への対流による熱伝達によって決まるという事実によって支援される。したがって、ノズル70又はコイル/ノズル72に供給される蒸気の量を減らすことによって通気(煙道32を通るガスの流れ)を減らせば、これは直ちに蒸気発生量の減少をもたらす。これは、ボイラー管が火室の放射熱に曝されていると可能でない。
【0081】
上述したシステムは、非常に広い範囲のボイラー圧力、最大で数千ポンドの絶対圧/平方インチ(psia)で動作可能である。これは、飽和蒸気温度が同様に広い範囲を有することを意味する。例えば、ボイラーが非常に低圧で動作している場合、飽和蒸気出口温度は100℃まで低くなり得るが、より一般的にはボイラーは300psiから1000psiの間で動作しており、飽和蒸気温度は200℃から285℃の間である。一般的に、機関車のための過熱蒸気温度は約350~450℃である。
【0082】
上述した様々なシステムをまとめるのは、従来の煙管機関車ボイラーのシェルの形態を取る構造シェル10aである。このシェルは、いくつかの重要な機能を果たす。
【0083】
-火室、サイクロン部、水管ボイラー、気水分離器、煙室、及び関連機器をコンパクトにまとめて前面面積を小さくし、蒸気駆動車両の空気抵抗を減らすことができる。
【0084】
-また、蒸気駆動車両の既存の設計と直接的な互換性があるため、例えば鉄道、道路及び農業用機関車で簡単に取り換えられる代替品として使用することが可能である。
【0085】
-蒸気駆動車両は、一般的に蒸気発生器を、主要な又は補助的な構造部材として使用している。歴史的には、水管ボイラーが機関車用に適応された時に、圧力系部品も構造部材としての役割を果たした。しかし、機関車用途の動的状況下で発生する繰り返し荷重によって、漏れや配管のひび割れの問題がすぐに発生することが分かった。また、従来の水管ボイラーの強度不足により、機関車全体の構造もまた損なうこととなった。そのため、本発明が提供する構造シェルは、圧力系部品自体の重量以外の負荷から圧力系全体を解放することによって、この課題を克服している。
【0086】
-構造シェルのもう一つの役割は、安全性である。構造シェルと圧力系は、圧力系の重大な故障の場合であっても、シェルにかかる最大圧力が完全に安全な0.05MPaの圧力を超えないように設計されている。そのため、シェルは格納容器として機能し、圧力系の故障時に放出されるエネルギーを安全に封じ込めて消散させる。これは、シェルの内部容積を考慮して、その内部容積から、蒸気や水が圧力系から一度に放出されても、機関車蒸気発生器のシェル内で上述の安全な圧力を超えない蒸気や水の最大量を算出することによって実現される。
【0087】
-更に、構造シェルは、その中に格納される部品を保護し、そうでなければそれらの組み合わせが圧力系部品の激しい腐食を引き起こす雨/埃や、他の空気中の粒子状物質の蓄積に対して密閉する。重要なことに、構造シェルは、火室、サイクロン部又はボイラーに周囲空気が漏れ、多量の周囲空気が燃焼ガスを冷却し、蒸気発生器の効率を低下させることを防ぐ。
【符号の説明】
【0088】
10 蒸気発生器
10a 構造シェル
11 火室
12 サイクロン部
13 ボイラー
17 火室出口
22 中実の中央部分
23 羽根
25 ボイラー管
31 煙室
32 煙道
40 多管ボイラー
41 管
42 管
50 水ポンプ
55 蒸気/水分離器
56 温度プローブ
57 温度制御器
61 過熱器要素
65 給水タンク
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】