(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】駆動ユニット及び駆動アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20230911BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20230911BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20230911BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20230911BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/26 ZHV
B60K6/36
B60K6/46
H02K7/116
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515015
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 DE2021100629
(87)【国際公開番号】W WO2022048702
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】102020123116.4
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー フォイト
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン レーマン
【テーマコード(参考)】
3D202
5H607
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202EE00
3D202EE02
3D202EE13
3D202EE23
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE34
5H607EE36
5H607EE41
5H607FF22
(57)【要約】
本発明は、電気駆動可能な自動車、特にハイブリッド自動車の駆動トレイン用の駆動ユニットと、駆動アセンブリと、に関する。駆動ユニット(1)は、電気駆動可能な自動車の駆動トレイン用に設計されており、発電機動作のために設計された第1の電気回転機(20)と、駆動モータ動作のために設計された第2の電気回転機(30)と、トランスミッション(40)と、を備える。第1の電気回転機(20)の回転子(21)は、内燃機関(70)の出力要素(71)への機械的な直接結合のために設計されており、第2の電気回転機(30)の回転子(31)は、トランスミッション(40)の入力(41)に回転結合されているか、又は回転結合可能であり、第1の電気回転機(20)とトランスミッション(40)との間には、いかなるトルク伝達接続も有しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動可能な自動車の駆動トレイン用の駆動ユニット(1)であって、発電機動作のために設計された第1の電気回転機(20)と、駆動モータ動作のために設計された第2の電気回転機(30)と、トランスミッション(40)と、を備え、前記第1の電気回転機(20)の回転子(21)が、内燃機関(70)の出力要素(71)への直接的な機械結合のために設計され、かつ前記第2の電気回転機(30)の回転子(31)が、回転に対して固定された様態で、前記トランスミッション(40)の入力(41)に結合されているか、又は結合可能である駆動ユニットであり、前記第1の電気回転機(20)と前記トランスミッション(40)との間にはトルク伝達接続が存在しないことを特徴とする、駆動ユニット。
【請求項2】
前記第1の電気回転機(20)が、内部回転子機械として設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第1の電気回転機(20)が、外部回転子機械として設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記第1の電気回転機(20)の前記回転子(21)が、前記内燃機関(70)を動作させるためのフライホイールとして設計されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記電気回転機(20、30)の前記回転子(21、31)の回転軸(23、33)が、軸平行で、又は同軸で配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記第1の電気回転機(20)が、前記トランスミッション(40)から空間上分けられている発電機コンパートメント(100)内に配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記トランスミッション(40)が、少なくとも1つ以上の変速比段を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記第1の電気回転機及び/又は前記第2の電気回転機(30)が、流体による冷却のために構成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記2つの電気回転機(20、30)が、互いに直接的に導電的な様態で、若しくはパワーエレクトロニクスを介して接続されているか、又は蓄電要素によって互いに接続されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の駆動ユニット(1)を有し、かつ内燃機関(70)を有する駆動アセンブリ(2)であって、前記内燃機関(70)が、前記内燃機関(70)の出力要素(71)によって、前記第1の電気回転機(20)の前記回転子(21)へと、回転に対して固定された様態で直接結合されている、駆動アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動可能な自動車、特にハイブリッド自動車の駆動トレイン用の駆動ユニットと、駆動アセンブリと、に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動アセンブリ又は駆動トレインに組み込まれ、内燃機関及び2つの電気機械を使用する様々な駆動ユニットが背景技術から知られている。そのようなタイプの対応する構築は、例えば、米国特許出願第2016/0218584(A1)号から知られている。
【0003】
独国特許第11 2015 006 071(T5)号には、内燃機関の動力を使用して電気エネルギーを発生させることができる発電機と、電気エネルギーによって駆動されてホイールを駆動する電気モータと、発電機及び電気モータを収容するハウジングと、発電機及び電気モータを制御する電力制御装置と、を備えるハイブリッド車両駆動システムが開示されている。発電機と電気モータは、ハウジング内に同一軸線上に並んで配置されている。
【0004】
国際公開第2019/101264(A1)号には、ハイブリッド自動車用の駆動トレインが開示されている。この駆動トレインは、トランスミッション入力シャフトを備えており、トランスミッション入力シャフトは、トルクを伝達するように第1のサブ駆動トレインを介して第1の電気機械及び内燃機関に動作可能に接続されており、かつ、トルクを伝達するように第2のサブ駆動トレインを介して第2の電気機械に動作可能に接続されている。2つの電気機械は、互いに同軸かつ軸方向に隣接して配置されている。
【0005】
欧州特許第1502791(B1)号及び欧州特許第1847411(B1)号は、各々、複数の電気回転機を有するハイブリッド車両用のハイブリッドトランスミッションを開示している。電気機械は、径方向に互いに内側に埋め込まれるように配置される。この場合は、径方向外側の電気回転機は外部回転子として設計されている。
【0006】
自動車の駆動システムは、例えば、独国特許第10 19 132 941号からも知られている。この出願は、電気駆動可能な自動車、特にハイブリッド自動車の駆動トレイン用の駆動ユニットに関し、駆動ユニットは、第1の電気回転機及び第2の電気回転機、並びに第1のシャフト及び第2のシャフトを備える。第1の電気回転機の回転子は、回転に対して固定された様態で第1のシャフトに接続されており、第2の電気回転機の回転子は、回転に対して固定された様態で第2のシャフトに接続されている。駆動ユニットは更に、第1の電気回転機の回転子をトルク伝達のために第2のシャフトに接続可能にするか、又は接続する分離クラッチを有する。
【0007】
日産自動車株式会社は、内燃機関と駆動輪との間で発電機及び電気モータの両方を使用する「e-POWER」構成を発表した。
【0008】
以前に発表された、2つの電気回転機を有するハイブリッドドライブでは、通常、内燃機関の出力を、ハイブリッドトランスミッションを装備した車両のドライブ、例えば、駆動軸に機械的に結合することができた。多くの設計において、このために分離クラッチが使用されている。
【0009】
この実施形態は、特に、時速130kmを超える速度での連続運転動作のための備えを有する車両に関して、駆動ユニットの並列動作、又は純粋に内燃機関によって駆動される車両駆動さえも実施できるという利点を有しこれは、電気駆動の効率が通常、速度の上昇に伴い低下するからである。
【0010】
しかし、駆動ユニットを複数の電気回転機と一体化してハイブリッド自動車用の駆動アセンブリするためには、設置スペースの要件が厳しい。
【0011】
軸方向に特に短い駆動アセンブリは、特に、そのような駆動ユニットが自動車におけるいわゆる前方横向き配置(front-transverse arrangement)に使用される場合に有利であり、前方横向き配置では、電気回転機及び内燃機関が前輪駆動ユニットとして使用され、電気回転機及び内燃機関のそれぞれの回転軸が自動車の長手方向に対して横方向に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記に基づき、本発明の目的は、最適な動作を、経済的な設計で、かつ省スペースな様態で確保する駆動ユニットと、そのような駆動ユニットを装備した駆動アセンブリと、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、請求項1に記載の本発明による駆動ユニットによって達成される。駆動ユニットの有利な実施形態は、従属請求項2~9に列挙されている。また、請求項10に記載の駆動ユニットを有する駆動アセンブリが提供される。
【0014】
請求項の特徴は、技術的に有用な任意の様態で、組み合わせることができ、以下の記述からの説明並びに図面からの特徴はまた、本発明の補助的な実施形態を含む、本目的のために考慮に入れることができる。
【0015】
本発明に関連して、「軸方向」及び「径方向」という用語は、常に、駆動ユニットの電気回転機の回転軸を指す。
【0016】
本発明は、電気駆動可能な自動車の駆動トレイン用の駆動ユニットに関し、駆動ユニットは、発電機動作のために設計された第1の電気回転機と、駆動モータ動作のために設計された第2の電気回転機と、トランスミッションと、を備え、第1の電気回転機の回転子は、内燃機関の出力要素への直接的な機械結合のために設計されている。第2の電気回転機の回転子は、回転に対して固定された様態で、トランスミッションの入力に結合されているか、又は結合可能である。第1の電気回転機とトランスミッションとの間にはトルク伝達接続が存在しない。
【0017】
この駆動ユニットは、いわゆるハイブリッドトランスミッションとして特徴付けることができる。
【0018】
これは、駆動ユニットが、第1の電気機械と内燃機関との間にのみ、機械的な直接接続であって、トルクロックされており、特に長期にわたる接続、例えば、固定ねじ接続を確立するように、又は、トルク伝達経路を実装するように構成されていることを意味する。この場合、伝達されるトルクの大きさ又は回転速度に影響を与えることができない機械要素が、第1の電気回転機又はその回転子と、内燃機関又はその出力側との間に配置されているかどうかは重要ではない。
【0019】
電気回転機及び/又は内燃機関からトランスミッションへのトルクの伝達は、設計によって排除されている。
【0020】
内燃機関があることで、内燃機関からトルクを供給することにより、第1の電気回転機を発電機モードで動作させることができる。それによって生成された電気エネルギーは、車両の推進のために、直接又はバッテリへの一時的な蓄積を介して、第2の電気回転機に供給され得、トランスミッションによって第2の電気回転機の回転子の回転がステップアップ又はステップダウンされる。このようにして、駆動ユニットを装備した自動車の駆動輪を駆動することができる。
【0021】
クラッチがなく、第1の電気回転機とトランスミッションとの間、又は内燃機関とトランスミッションとの間にトルクを伝達する更なる要素がないという事実は、設置スペースや、必要な個別の部品の製造及びそれらの組み立てにおける複雑さに関して有利である。
【0022】
1つの特定の実施形態では、駆動ユニット全体がクラッチなしで実装され得る。
【0023】
したがって、特にコンパクトな設計のハイブリッド車両駆動トレインを実装することができる。
【0024】
第1の電気回転機の固定子は、駆動ユニットのハウジングにしっかりと接続されており、また、領域によっては当該ハウジングから形成されている。
【0025】
内燃機関は、有利にはドライブシャフトによって、発電機として設計された第1の電気回転機へのトルクロックされた接続を有する。特に、内燃機関と第1の電気回転機との間にはギア比が存在しないことが提供される。
【0026】
したがって、直列式車両用の2つの電気機械トランスミッションには、特に互いに同軸配置された2つの電気回転機が備えられ、2つの電気回転機の一方が発電機として設計され、もう一方が駆動機械として設計される。内燃機関は車両のホイールに結合されていないので、さもなければ慣用的なクラッチを配置する必要がなくなり、クラッチと係合するための作動装置も同様である。
【0027】
特に、第1の電気回転機は、内部回転子機械として設計され得る。
【0028】
代替的実施形態では、第1の電気回転機は、外部回転子機械として設計される。
【0029】
両方の実施形態において、第1の電気回転機の回転子が、内燃機関のクランクシャフトに直接結合されること、特にボルト留めされることが有利に提供される。
【0030】
代わりに又は追加で、第2の電気回転機が、内部回転子機械又は外部回転子機械として設計されることが提供され得る。
【0031】
第1の電気回転機の回転子の内部回転子としての実施形態は、特に、内燃機関における回転ムラ又はトルク変動を低減するのに比較的低い質量慣性モーメントで十分である場合に考えられる。
【0032】
2つの電気回転機のうちの一方は、他方の対応する電気回転機によって径方向に境界が画成された領域内に、径方向及び軸方向に少なくとも部分的に配置され得る。結果として、軸方向において特にコンパクトな実施形態が得られる。
【0033】
できるだけ多くの同じ部品を使用するには、第1の電気回転機が内部回転子として設計された回転子を有し、第2の電気回転機が内部回転子として同様に設計された回転子を有すると有利である。あるいは、2つの回転子が外部回転子として設計されてもよい。
【0034】
第1の電気回転機の回転子は、有利には、内燃機関を動作させるためのフライホイールとして設計され得る。
【0035】
したがって、この場合、第1の電気機械の回転子の質量慣性モーメントは、内燃機関を動作させるために使用され得る。これにより、内燃機関における回転ムラ又はトルク変動を低減することができる。この実施形態は、第1の電気回転機の回転子が外部回転子として実装され、それに応じて大きな質量慣性モーメントを有する場合に特に考えられる。
【0036】
更に、第1の電気回転機の回転子の質量慣性モーメントは、特に内燃機関の始動時に使用することができる。
【0037】
電気回転機の回転子の回転軸は、軸平行で、又は同軸で配置され得る。
【0038】
1つの特定の実施形態では、電気回転機の回転子の回転軸が同軸で配置されることが提供される。
【0039】
駆動ユニットの更に有利な実施形態では、第1の電気回転機が、トランスミッションから空間上分けられた発電機コンパートメント内に配置されることが提供される。
【0040】
この発電機コンパートメントは、トランスミッション又は第2の電気回転機とは本質的に独立して温度制御できるという利点を有する。特に、第1の電気回転機がオイル冷却又は水冷とともに実装される場合、発電機コンパートメントが媒体、例えば、オイル又は水で少なくとも部分的に充填され得る。
【0041】
代替的実施形態では、発電機コンパートメントはまた、ドライスペースとして設計されてもよい。これは、第1の電気回転機が水冷される固定子を装備している場合に特に可能であり、結果として、追加の冷却は必要ない。この実施形態は、発電機コンパートメント内で漏れが生じ得ず、結果として、必要な媒体分配による圧力損失も存在しないという利点を有し、これは効率の上昇を伴う。トランスミッションはギアコンパートメント内に配置されてもよく、特に、第2の電気回転機が同様にギアコンパートメント内に配置され得る。
【0042】
更に、第2の電気回転機はまた、トランスミッションから空間上分けられ得る。
【0043】
トランスミッションから電気回転機を密閉するための対策を講じる必要がほとんどないか、又は全くないため、ドライスペース内にそれぞれの電気回転機を配置することは、組み立てに関しても利点を有する。
【0044】
有利には、トランスミッションは、トランスミッションに結合された第1の変速比段及び第2の変速比段を備える。
【0045】
変速比段は、特に、遊星歯車ユニット又は遊星歯車構成の構成要素として設計されてもよい歯車のペアに基づいて設計される。
【0046】
代替的実施形態では、トランスミッションは、変速比段を1つだけ、又は変速比段を3つ以上有してもよい。
【0047】
しかし、変速比段を使用してステップダウンを実装することも可能である。
【0048】
更に、トランスミッションは、トルクロックされた様態で第2の変速比段に結合されたディファレンシャルギアを有してもよい。ディファレンシャルギアの出力要素はドライブシャフトであってもよいし、駆動ユニットを装備した自動車の駆動要素であってもよい。
【0049】
第1の変速比段の出力ホイール及び第2の変速比段の駆動輪は、特に低摩耗のトルク伝達が可能であるように、トランスミッションの中間シャフト上に配置されてもよい。
【0050】
駆動ユニットの効率を高めるために、第1の電気回転機及び/又は第2の電気回転機は、流体によって冷却されるように構成され得る。
【0051】
特に、オイル冷却、水冷、又はそれらの組み合わせが提供されてもよい。第2の電気回転機が純粋に水冷される場合、オイルで満たされたギアコンパートメントから密閉すると有利である。
【0052】
特に、電気駆動が多く、発電機動作が稀な車両では、2つの電気回転機を別々に冷却することにより、第1の電気回転機が発電機として使用されていないときに、エネルギー損失を最小化するためにその冷却動作をオフにするか、又は低減することができるという利点がある。
【0053】
異なる動作モードを実施するために、2つの電気回転機は、電気的に互いに接続され得るか、又は蓄電要素によって互いに接続され得る。
【0054】
更なる実施形態では、2つの電気回転機は、パワーエレクトロニクスを介して電気的に間接的に互いに結合されてもよい。
【0055】
したがって、最初に述べた実施形態では、2つの電気回転機の間に直接電気接続が存在するため、発電機動作中に第1の電気回転機によって生成された電気エネルギーを、任意選択的にパワーエレクトロニクスを介して、モータ動作を実施するために第2の電気回転機に提供することができる。
【0056】
このようにすると、内燃機関を動作させるのに、蓄えられた電気エネルギーが必要とされない。
【0057】
2番目に述べた選択肢では、最初、内燃機関の動作中に電気エネルギーが生成され、このエネルギーが、例えば、バッテリなどの蓄電要素内に蓄えられ、そこから、後の時点でモータ動作を実施するために第2の電気回転機に提供され得る。
【0058】
一般に、この場合、前述の2つの選択肢を組み合わせた動作、すなわち、第1の電気回転機の発電機動作、及び蓄電要素の充電による第2の電気回転機への同時給電も可能である。更に、これは負荷点の増加又はシフトを可能にし、駆動ユニットの動作時により高いレベルの効率性を保証する。
【0059】
本発明の別の態様は、説明した駆動ユニットと内燃機関とを備える駆動アセンブリであって、内燃機関は、内燃機関の出力要素によって、回転に対して固定された様態で、第1の電気回転機の回転子に直接結合されている。
【0060】
したがって、駆動アセンブリは、第1の電気回転機と内燃機関との間にクラッチ及び振動ダンパが配置されないように設計されている。
【0061】
より多くの設置スペース又は費用を必要とするユニット、例えばクラッチ又は振動ダンパを内燃機関と第1の電気回転機との間で省くことができるので、この駆動アセンブリは、設置スペース及び費用に関して有利に設計され得るという利点を有する。
【0062】
特に、第1の電気回転機の回転子と内燃機関との間に歯車段又はギア比及び/若しくはスプラインが配置されないことが提供される。
【0063】
内燃機関の出力要素、特に内燃機関のクランクシャフトと、トランスミッションとの間に、内燃機関によって提供されるトルクの伝達に関する機械的な接続がないことから、内燃機関からの振動する回転運動又はトルク変動を減衰する必要もなく、よって、内燃機関の出力においてねじり振動ダンパを配置する必要がない。
【0064】
したがって、上記駆動アセンブリは、駆動ユニットの純粋な直列動作を可能にし、したがって、距離(レンジ)を延ばすことを目的として、燃料からの化学エネルギーが電気エネルギーに変換され、車両を駆動するために提供される、いわゆるレンジエクステンダーモードでのハイブリッド車両の動作も可能にする。
【0065】
特に、第1の電気回転機の回転子が十分に大きな質量慣性モーメントを有する場合、第1の電気回転機の回転子は内燃機関のフライホイールとして機能することができる。
【0066】
上記駆動アセンブリは、130km/h未満の長時間運転動作用のために構成された車両に特に有利に使用される。これらの車両は、第2の電気回転機による車両の推進を確保すると同時に、内燃機関からの車両駆動を容易に省くことができる。したがって、内燃機関の出力をトランスミッション又は駆動軸に機械的に結合するための分離クラッチ、及びそのために必要な作動装置を省くことができる。
【0067】
本発明による駆動ユニット及び内燃機関を備えている本発明による駆動アセンブリを備えた自動車、特にハイブリッド車両を動作させるときには、例えば、以下の運転動作モードが有効となる。
【0068】
-電気駆動及び回生:
第2の電気回転機は、牽引機として、又は発電機として作動される。内燃機関及び第1の電気回転機は動作していない。
【0069】
-直列駆動及び充電:
内燃機関が第1の電気回転機によって始動され、内燃機関は、第1の電気回転機を駆動することができ、その結果、第1の電気回転機は、自動車のバッテリを充電するための発電機として作動される。第2の電気回転機は、牽引機として作動される。
【0070】
いわゆるレンジエクステンダーモードでの運転戦略は、推進のために主に車両バッテリから電気エネルギーを引き出し、内燃機関が第1の電気回転機を駆動し、よって機械エネルギーが電気エネルギーに変換される車両の航続距離を延ばすことに基づいている。
【0071】
上記に説明された発明は、好ましい実施形態を示す添付図面を参照して重要な技術的背景に対して以下に詳細に説明される。本発明は、全くの模式的な図面によって何ら制限されることはなく、図面に示された実施形態は、示された寸法に制限されないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】第1の実施形態の駆動ユニットを有する駆動アセンブリの概略図である。
【
図2】第2の実施形態の駆動ユニットを有する駆動アセンブリの概略図である。
【
図3】第2の実施形態の駆動ユニットを有する駆動アセンブリの断面図である。
【
図4】駆動ユニットを有する駆動アセンブリの冷却システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
最初に、
図1及び
図2の概略図によって、駆動ユニット1及び駆動アセンブリ2を説明する。
【0074】
これらの図に示される駆動ユニット1は、ハウジング10内に配置された第1の電気回転機20及び第2の電気回転機30を含む。
【0075】
図1に示される駆動ユニット1の第1の電気回転機20は外部回転子機械として設計されており、よって、第1の電気回転機20の回転子21は、第1の電気回転機20の固定子22の径方向外側に配置されている。
【0076】
図2に示される駆動ユニット1の第1の電気回転機20は内部回転子機械として設計されており、よって、第1の電気回転機20の回転子21は、第1の電気回転機20の固定子22の径方向内側に配置されている。
【0077】
第2の電気回転機は、
図1及び
図2に示される両方の例示的実施形態において内部回転子機械として設計されており、よって、第2の電気回転機30の回転子31は、第2の電気回転機30の固定子32の径方向内側に配置されている。
【0078】
図1及び
図2に示される両方の例示的な実施形態において、第1の電気回転機20の回転軸23及び第2の電気回転機30の回転軸33は同軸で配置されている。
【0079】
駆動アセンブリ2を形成するために、第1の電気回転機20の回転子21は、内燃機関70の出力要素71に直接結合されている。特に、この出力要素71は、内燃機関70のクランクシャフトであってもよい。
【0080】
これは、内燃機関70又はその出力要素71が、直接接続80によって第1の電気回転機20の回転子21に結合されていることを意味し、結果として、トルクを変更することなく、特にクラッチ又はトランスミッションの中間係合なしに、かつ、特に周方向クリアランスを有するトルク伝達要素の中間係合なしに、結合されていることを意味する。
【0081】
これにより、特に軸方向に非常に省スペースになるように駆動ユニット1又は駆動アセンブリ2を設計することができる。
【0082】
第2の電気回転機30の回転子31は、回転に対して固定された様態で、トランスミッション40の入力41を形成するシャフト42に接続される。
【0083】
これにより、第2の電気回転機30によって提供されるトルクを、図示のトランスミッション40に伝達することができる。
【0084】
このトランスミッション40は、第1の変速比段43及び第2の変速比段44を有する。第1の変速比段43は、第1の歯車51を介してシャフト42上で、また中間シャフト50とかみ合う第2の歯車52を介して中間シャフト50上で実装される。シャフト42は、ピボットベアリングを用いてハウジング10内に取り付けられる。
【0085】
第2の変速比段44は、中間シャフト50上に配置された第3の歯車53と、第3の歯車53の歯部とかみ合う外側歯部を有するディファレンシャルギア60の駆動要素61とを介して実装される。
【0086】
このようにすることで、第2の電気回転機30から提供されるトルクを、トランスミッション40を介してディファレンシャルギア60に伝達することができ、トルクはディファレンシャルギアからホイールドライブシャフト62に供給される。
【0087】
第1の電気回転機20と第2の電気回転機30との間には電気接続があり、この電気接続90は有利には、蓄電要素としてのバッテリ(ここでは不図示)及び/又はパワーエレクトロニクス(ここでは不図示)を含む。
【0088】
駆動アセンブリ2は、内燃機関70の動作中に第1の電気回転機20が発電機として駆動されることを可能にし、したがって、機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、電気モータの動作中にトルクを生成する第2の電気回転機30の電気接続90を介して提供され得る。このトルクは、自動車の推進のために使用することができる。
【0089】
この場合、第1の電気回転機20からのトルクが電気モータから提供され、自動車の推進のために使用されることは前提とはされていない。したがって、第1の電気回転機20と出力との間、及び/又は第1の電気回転機20と内燃機関70との間に、トルクに影響を及ぼす伝達要素も必要ないので、このように設計された駆動アセンブリ2の設置スペース要件は非常に低い。
【0090】
蓄電要素を有する有利な設計では、第1の電気回転機20によって生成された電気エネルギーを、第2の電気回転機30によって機械エネルギーに変換する前に、中間的に蓄えることができる。
【0091】
更に、これは負荷点の増加又はシフトを可能にし、駆動ユニットの動作時により高いレベルの効率性を保証する。
【0092】
駆動アセンブリ2は、内燃機関70における化学エネルギーの変換を伴うが、最適な内燃機関70の効率レベルで、単純かつ省スペースな様態で電気モータ駆動動作の航続距離を延ばすことを可能にする。
【0093】
図3は、
図2の概略図に示される駆動ユニット1の断面図を示す。
【0094】
図2に関連して既に述べた構成要素又はユニットに加えて、
図3は、発電機として構成された第1の電気回転機20が、トランスミッション40の要素が配置されているギアコンパートメント45から本質的に空間上分けられている発電機コンパートメント100内に配置されていることを示している。
【0095】
これにより、両コンパートメント45、100内の構成要素を別々に潤滑及び/又は冷却することができる。
【0096】
更に、
図3は、駆動ユニット1の上側に配置され、ハウジング10に接続されたパワーエレクトロニクス110を示す。
【0097】
図3に示される駆動ユニットの更なる構成要素は、パーキングロック111、オイル回収容器112、及び、電気回転機20、30の電気接続のための高電圧端子113を含む。
【0098】
図4は、駆動ユニット1の冷却及び潤滑のためのオプションを概略的に示す。この図は、クーラントを冷却要素からパワーエレクトロニクスに、したがってトランスミッションにも供給するように構成されたクーラント入口120を示している。
【0099】
クーラントは、クーラント入口120から、第2の電気回転機の固定子に割り当てられた第2のクーラント回路122に到達し、その後、オーバーフロー領域124を介して、第1の電気回転機の固定子に割り当てられた第1のクーラント回路121に到達する。
【0100】
その後、クーラントは、クーラント出口123を介して外部冷却要素に戻され得る。
【0101】
潤滑は、とりわけオイル回収要素130によって実施され、オイル回収要素130からのオイルがディファレンシャルギア80によって飛び散り、回収される。そこから、オイルはオイル分配要素131、特にシャフトによってリターン132に戻され得、リターンはオイルをサンプに運ぶ。
【0102】
オイル回収要素からのオイルは、潤滑のために、オイル分配要素を介して全ての必要な箇所(例えば、ベアリング/歯部)に有利に供給される。
【0103】
本明細書で提案する駆動ユニット及び駆動アセンブリは、経済的な設計かつ省スペースな様態で最適な動作を可能にする。
【符号の説明】
【0104】
1 駆動ユニット
2 駆動アセンブリ
10 ハウジング
20 第1の電気回転機
21 第1の電気回転機の回転子
22 第1の電気回転機の固定子
23 第1の電気回転機の回転軸
30 第2の電気回転機
31 第2の電気回転機の回転子
32 第2の電機回転機固定子
33 第2の電機回転機の回転軸
40 トランスミッション
41 トランスミッション入力
42 シャフト
43 第1の変速比段
44 第2の変速比段
45 ギアコンパートメント
50 中間シャフト
51 第1の歯車
52 第2の歯車
53 第3の歯車
60 ディファレンシャルギア
61 ディファレンシャルギアの駆動要素
62 ホイールドライブシャフト
70 内燃機関
71 内燃機関の出力要素
80 直接接続
90 電気接続
100 発電機コンパートメント
110 パワーエレクトロニクス
111 パーキングロック
112 オイル回収容器
113 高電圧端子
120 クーラント入口
121 第1のクーラント回路
122 第2のクーラント回路
123 クーラント出口
124 オーバーフロー領域
130 オイル回収要素
131 オイル分配要素
132 サンプへのオイルリターン
【国際調査報告】