(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-19
(54)【発明の名称】非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20060101AFI20230911BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230911BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230911BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230911BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230911BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230911BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230911BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230911BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/13
G01N33/50 Z
C07K16/00
C12N15/09 100
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515139
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2021116282
(87)【国際公開番号】W WO2022048604
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202010924095.1
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523078797
【氏名又は名称】北京仁源欣生生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王皓毅
(72)【発明者】
【氏名】叶建華
(72)【発明者】
【氏名】高暉
(72)【発明者】
【氏名】杜小明
(72)【発明者】
【氏名】▲うー▼毅
(72)【発明者】
【氏名】周鵬
(72)【発明者】
【氏名】項光海
(72)【発明者】
【氏名】王天姿
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA37
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本願は、非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法及びその使用に関し、該当製造方法は、非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップと、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップとを含む。得られた非ヒト哺乳動物又はその子孫は、重鎖抗体の生産に使用できる。本願の製造方法を用いて取得した非ヒト哺乳動物は、いずれの抗体重鎖可変領域及び定常領域をコードする外来遺伝子を導入せず、それ自体のゲノム中の抗体重鎖可変領域をコードするすべてのVDJ遺伝子を直接利用することにより、重鎖可変領域の再配列により多様性がよりよい重鎖抗体を生成することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップと、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップと、を含む、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法。
【請求項2】
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップは、
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインのみが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域が発現されないか又は正確に発現されないようにするステップである、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップは、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
IgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む目標遺伝子をノックアウトするステップと、を含む、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法。
【請求項5】
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップは、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のみをノックアウトするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップである、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記目標遺伝子は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする最後の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列である、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
目標遺伝子をノックアウトするステップと、を同じ操作ステップで完了するか、又は異なる操作ステップで完了する、
ことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記非ヒト哺乳動物は齧歯類動物であり、選択可能に、前記齧歯類動物はラット又はマウスであり、さらに選択可能に、前記齧歯類動物はマウスであり、より一層、前記マウスはC57BL/6マウス又はBALB/cマウスである、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3である、
ことを特徴とする請求項3、6、7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
非ヒト哺乳動物がC57BL/6マウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2cであり、
非ヒト哺乳動物がBALB/cマウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2aである、
ことを特徴とする請求項3、6、7、8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記非ヒト哺乳動物のゲノムにはκ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記非ヒト哺乳動物でκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができる、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
遺伝子をノックアウトする方法には、遺伝子ターゲティング技術、CRISPR/Cas9法、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ法、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ法のうちの1つ又は複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記非ヒト哺乳動物又はその子孫は、重鎖抗体の生産に使用される、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
C57BL/6マウス又はその子孫の製造方法であって、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、抗体IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域をコードする遺伝子をノックアウトするステップと、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、を含む、
ことを特徴とするC57BL/6マウス又はその子孫の製造方法。
【請求項15】
前記C57BL/6マウスのゲノムには、κ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記C57BL/6マウスがκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができる、
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
遺伝子をノックアウトする方法には、遺伝子ターゲティング技術、CRISPR/Cas9法、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ法、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ法のうちの1つ又は複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンからIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンまでのすべてのヌクレオチド配列をノックアウトする、
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAを使用し、
選択可能に、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは配列番号11、配列番号12である、
ことを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記C57BL/6マウス又はその子孫は、重鎖IgG2c抗体の生産に使用される、
ことを特徴とする請求項14~19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
C57BL/6マウス又はその子孫の製造方法であって、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgM重鎖定常領域をコードする遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、を含む、
ことを特徴とするC57BL/6マウス又はその子孫の製造方法。
【請求項22】
前記C57BL/6マウスのゲノムには、κ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記C57BL/6マウスがκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができる、
ことを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
遺伝子をノックアウトする方法には、遺伝子ターゲティング技術、CRISPR/Cas9法、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ法、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ法のうちの1つ又は複数が含まれる、
ことを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンをノックアウトし、さらに、マウスの、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンからIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンまでのすべてのヌクレオチド配列をノックアウトする、
ことを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項25】
遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流及び下流を標的とするsgRNAを使用し、さらに、マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAを使用する、
ことを特徴とする請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号5及び配列番号6を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号7及び配列番号8を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号13及び配列番号14であり、及び/又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号15及び配列番号16であり、及び/又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号11及び配列番号12である、
ことを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記C57BL/6マウス又はその子孫は、重鎖IgG2c抗体の生産に使用される、
ことを特徴とする請求項20~27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップを含む、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法。
【請求項30】
前記非ヒト哺乳動物は齧歯類動物であり、選択可能に、前記齧歯類動物はラット又はマウスであり、さらに選択可能に、前記齧歯類動物はマウスであり、より一層、前記マウスはC57BL/6マウス又はBALB/cマウスである、
ことを特徴とする請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
前記非ヒト哺乳動物又はその子孫は、請求項21に記載の非ヒト哺乳動物又はその子孫を構築するために用いられる、
ことを特徴とする請求項29又は30に記載の製造方法。
【請求項32】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項4~13のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項14~20のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫、請求項21~28のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫の、目標重鎖抗体のスクリーニングにおける使用。
【請求項33】
目標重鎖抗体のスクリーニングの際に、ファージディスプレイ法を採用し、
好ましくは、前記目標重鎖抗体のスクリーニングは、C反応性タンパク質、コロナウイルスSタンパク質又はコロナウイルスNタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体をスクリーニングすることである、
ことを特徴とする請求項32に記載の使用。
【請求項34】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項4~13のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項14~20のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫、請求項21~28のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫を免疫動物として使用してスクリーニングすることを含む、目標重鎖抗体のスクリーニングの方法。
【請求項35】
目標重鎖抗体のスクリーニングの際に、ファージディスプレイ法を採用し、
好ましくは、前記目標重鎖抗体のスクリーニングは、C反応性タンパク質、コロナウイルスSタンパク質又はコロナウイルスNタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体をスクリーニングすることである、
ことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、請求項4~13のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、請求項14~20のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来するか、請求項21~28のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来するか、請求項29~31のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来する、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物細胞又は細胞株又は初代細胞培養物。
【請求項37】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、請求項4~13のいずれか1項に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、請求項14~20のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来するか、請求項21~28のいずれか1項に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来するか、又は請求項29~31のいずれか1項に記載の製造方法での構築由来の非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来する、
ことを特徴とする摘出組織又は摘出器官又はその培養物。
【請求項38】
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNA、又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流及び下流を標的とするsgRNA、又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2cをコードする1番目のエクソン下流を標的とするsgRNA、を含む、
ことを特徴とするsgRNA組成物。
【請求項39】
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号5及び配列番号6を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号7及び配列番号8を含む、
ことを特徴とする請求項38に記載のsgRNA組成物。
【請求項40】
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号13及び配列番号14であり、及び/又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号15及び配列番号16であり、及び/又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号11及び配列番号12である、
ことを特徴とする請求項38に記載のsgRNA組成物。
【請求項41】
sgRNAをコードする1セグメント以上のDNA配列を含み、前記sgRNAの標的配列は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするもの、又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするもの、又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするもの、又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするものから選択される1つである、
ことを特徴とするノックアウトベクター。
【請求項42】
骨格がsgRNA発現ベクターである、
ことを特徴とする請求項41に記載のノックアウトベクター。
【請求項43】
請求項41~42のいずれか1項に記載のノックアウトベクターを含む、
ことを特徴とする細胞。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2020年9月4日に提出された、出願番号が202010924095.1であり、発明名称が「非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法及びその使用」の中国特許出願の優先権を主張しており、そのすべての内容は、引用で本発明に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、バイオ技術の分野に関し、具体的には、重鎖抗体の生産に使用できる非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体は、2本の同じ重鎖(H鎖)と2本の同じ軽鎖(L鎖)とが鎖間の非共有結合又はジスルフィド結合により連結されてなる4本のペプチド鎖構造である。抗体重鎖には、重鎖定常領域(CH)及び重鎖可変領域(VH)が含まれ、ここで、IgD、IgG、IgAの重鎖定常領域にはCH1、ヒンジ領域Hinge、CH2及びCH3という4つのドメインが含まれ、IgM及びIgEにはCH1、CH2、CH3及びCH4という4つのドメインが含まれ(Janeway’s Immunobiology,9th Edition)、重鎖定常領域のCH1ドメインは、ジスルフィド結合により軽鎖定常ドメインに連結され、重鎖可変領域には、相補性決定領域(CDR)の超可変領域及び相対的に保存されているフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が含まれ、重鎖可変領域には、アミノ基末端からカルボキシル基末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で排列した3つのCDR及び4つのFRが含まれる。
【0004】
抗体の重鎖定常領域の抗原特異性の違いに応じて、抗体には、IgM、IgD、IgG、IgE、IgAという5つのクラスがある。同じクラスの抗体は、依然としてその重鎖定常領域の抗原特異性に若干の差異があるため、幾つかのサブクラスに分類でき、例えば、人のIgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等が含まれ、人のIgAにはIgA1、IgA2等が含まれ、異なる哺乳動物の間(例えば人、アルパカ及びマウス)、異なる品種のマウスの間(例えばC57BL/6マウス及びBALB/cマウス)の抗体のサブクラスの種類は異なる可能性がある。
【0005】
抗体重鎖に関連する遺伝子は、L、V、D、J、Cという5つの遺伝子断片を含み、ここで、重鎖可変領域はV、D、Jという3つの遺伝子断片によってコードされ、重鎖定常領域はC遺伝子断片によってコードされる。ヒトの抗体重鎖遺伝子には、機能的な約40個のV遺伝子、23個のD遺伝子、6個のJ遺伝子及び9個のC遺伝子(ソース:Janeway’s Immunobiology,9th Edition,Page 177)を含む。IgM重鎖定常領域をコードする遺伝子はIghm遺伝子(Immunoglobulin heavy constant mu)であり、IgD重鎖定常領域をコードする遺伝子はIghd遺伝子(Immunoglobulin heavy constant delta)であり、IgG重鎖定常領域をコードする遺伝子はIghg(Immunoglobulin heavy constant gamma)であり、IgA重鎖定常領域をコードする遺伝子はIgha(Immunoglobulin heavy constant alpha)などであり、対応して、IgG1重鎖定常領域をコードする遺伝子はIghg1(Immunoglobulin heavy constant gamma 1)であり、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子はIghg3(Immunoglobulin heavy constant gamma 3)であり、IgG2b重鎖定常領域をコードする遺伝子はIghg2b(Immunoglobulin heavy constant gamma 2b)である。重鎖可変領域の再配列により、多様性を有する抗体が生成される。成熟B細胞は、抗原に刺激された後に分泌型抗体IgMを生成し、再度抗原に刺激された後に2回目の再配列が起こり、膜上に発現と分泌される免疫グロブリンの種類は、親和性の低いIgMから親和性の高いIgG、IgA、IgE等の他のクラス又はサブクラスの免疫グロブリンにスイッチし、このような現象はクラススイッチ(Class switch)又はアイソタイプスイッチ(Isotype switch)と呼ばれる。
【0006】
重鎖抗体(heavy chain antibody)は、重鎖のみを有する抗体(heavy chain only antibody)とも呼ばれ、2本の重鎖のみからなる免疫グロブリン抗体を指す。天然に存在する重鎖抗体は、自然界のラクダ科動物及びサメの体内に存在する。ラクダ科動物の生殖系列における重鎖遺伝子座には、重鎖定常領域をコードする遺伝子断片が含まれ、成熟期間中に、再配列されたVDJ結合領域は、IgGヒンジ領域をコードする遺伝子断片の5’末端にスプライシングされることにより、軽鎖との結合を媒介するCH1領域が欠如するようになったため、軽鎖と結合することができず、IgG2及びIgG3重鎖抗体が生成される。遺伝子を利用して動物を修飾する方法も重鎖抗体を生成することができ、生成された重鎖抗体の分類方式も抗体の重鎖定常領域における抗原特異性の違いに応じたものである。
【0007】
重鎖抗体は、従来の抗体の分子量(150~160kDa)と比べて、はるかに小さく、IgG2c重鎖抗体の1本の重鎖は約40kDaであり、それにより、抗原識別特異性の重鎖可変領域は約15kDaしかないことが決定される。重鎖抗体の特徴は、分子量が小さく、一部の隠れたエピトープと結合することができ、抗体を得にくい標的点に特に適している。
【0008】
当該背景技術部分に開示されている情報は、本願の全体的な背景に対する理解を高めることを意図するだけで、当業者に知られている従来技術を構成することを認めるか、又はそのような情報を何らかの形で暗示するものとみなされるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法及びその使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の目的を実現するために、本願は、下記の技術案を提供する。
【0011】
本願の第1態様では、非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法を提供し、当該方法は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップと、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップと、を含む。
【0012】
上記の製造方法は、可能な実現形態において、非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップは、
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインのみが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップ、又は
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域が発現されないか又は正確に発現されないようにするステップである。
【0013】
上記の製造方法は、可能な実現形態において、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップは、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップである。
【0014】
本願は、非ヒト哺乳動物をさらに提供し、その体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されず、その体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子はCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しない。
【0015】
上記の非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、その体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないステップは、
IgM重鎖定常領域のCH1ドメインのみが発現されないか又は正確に発現されないステップ、又は、
IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域が発現されないか又は正確に発現されないステップである。
【0016】
上記の非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、その体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子がCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップは、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子がCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップ、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しなく、且つ、IgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つがCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップ、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しなく、且つ、IgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つがCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップ、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を発現しないか又は正確に発現しなく、且つ、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子がCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップ、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現し、且つ、IgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つがCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップ、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現し、且つ、IgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つがCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップ、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現し、且つ、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子がCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないステップである。
【0017】
本願の第2態様では、非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法を提供し、当該方法は、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
IgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む目標遺伝子をノックアウトするステップとを含む。
【0018】
本願は、さらに、非ヒト哺乳動物を提供し、そのゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列及び目標遺伝子がノックアウトされ、前記目標遺伝子は、
IgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0019】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップは、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のみをノックアウトするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップである。
【0020】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、前記目標遺伝子が、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする最後の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列である。
【0021】
上記の製造方法は、可能な実現形態において、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
目標遺伝子をノックアウトするステップと、を同じ操作ステップで完了するか、又は異なる操作ステップで完了する。
【0022】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、前記非ヒト哺乳動物は齧歯類動物であり、選択可能に、前記齧歯類動物はラット又はマウスであり、さらに選択可能に、前記齧歯類動物はマウスであり、より一層、前記マウスはC57BL/6マウス又はBALB/cマウスである。
【0023】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3である。
【0024】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、非ヒト哺乳動物がC57BL/6マウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2cであり、
非ヒト哺乳動物がBALB/cマウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2aである。
【0025】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、前記非ヒト哺乳動物のゲノムにはκ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記非ヒト哺乳動物でκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができる。
【0026】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、遺伝子をノックアウトする方法には、遺伝子ターゲティング技術、CRISPR/Cas9法、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ法、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ法のうちの1つ又は複数が含まれる。
【0027】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、前記非ヒト哺乳動物又はその子孫は、重鎖抗体の生産に使用される。
【0028】
本願の第3態様では、C57BL/6マウス又はその子孫の製造方法を提供し、当該方法は、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、抗体IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域をコードする遺伝子をノックアウトするステップと、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップとを含む。
【0029】
本願は、さらに、そのゲノムのうち、抗体IgM、IgD、IgG1、IgG2b、IgG3の重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列と、ゲノムのうち、抗体IgG2cの重鎖定常領域をコードする遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列とがノックアウトされるC57BL/6マウスを提供する。
【0030】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、前記C57BL/6マウスのゲノムには、κ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記C57BL/6マウスがκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができる。
【0031】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、遺伝子をノックアウトする方法には、遺伝子ターゲティング技術、CRISPR/Cas9法、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ法、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ法のうちの1つ又は複数が含まれる。
【0032】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンからIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンまでのすべてのヌクレオチド配列がノックアウトされた。
【0033】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA及びマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAを使用した。
【0034】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含む。
【0035】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは配列番号11、配列番号12である。
【0036】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、前記C57BL/6マウス又はその子孫は、重鎖IgG2c抗体の生産に使用される。
【0037】
本願の第4態様では、C57BL/6マウス又はその子孫の製造方法を提供し、当該方法は、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgM重鎖定常領域をコードする遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、を含む。
【0038】
本願は、さらに、そのゲノムのうち、IgM重鎖定常領域をコードする遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列と、そのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列とがノックアウトされるC57BL/6マウスを提供する。
【0039】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、前記C57BL/6マウスのゲノムには、κ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記C57BL/6マウスがκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができる。
【0040】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、遺伝子をノックアウトする方法には、遺伝子ターゲティング技術、CRISPR/Cas9法、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ法、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ法のうちの1つ又は複数が含まれる。
【0041】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンをノックアウトし、さらに、マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンからIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンまでのすべてのヌクレオチド配列をノックアウトする。
【0042】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流及び下流を標的とするsgRNAを使用し、さらに、マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA及びマウスのIgG2cをコードする1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAを使用した。
【0043】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号5及び配列番号6を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号7及び配列番号8を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含む。
【0044】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号13及び配列番号14であり、及び/又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号15及び配列番号16であり、及び/又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号11及び配列番号12である。
【0045】
上記の製造方法又はC57BL/6マウスは、可能な実現形態において、前記C57BL/6マウス又はその子孫は、重鎖IgG2c抗体の生産に使用される。
【0046】
本願の第5態様では、非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法を提供し、当該方法は、非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップを含む。
【0047】
本願は、さらに、ゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列がノックアウトされた非ヒト哺乳動物を提供する。
【0048】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、前記非ヒト哺乳動物は齧歯類動物であり、選択可能に、前記齧歯類動物はラット又はマウスであり、さらに選択可能に、前記齧歯類動物はマウスであり、より一層、前記マウスはC57BL/6マウス又はBALB/cマウスである。
【0049】
上記の製造方法又は非ヒト哺乳動物は、可能な実現形態において、前記非ヒト哺乳動物又はその子孫は、上記の非ヒト哺乳動物又はその子孫の構築に使用される。
【0050】
本願の第6態様では、上記の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、上記の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫、及び上記の非ヒト哺乳動物、上記のC57BL/6マウスの目標重鎖抗体のスクリーニングにおける使用を提供する。
【0051】
上記の使用は、可能な実現形態において、目標重鎖抗体のスクリーニングの際に、ファージディスプレイ法を採用する。
【0052】
上記の使用は、可能な実現形態において、前記目標重鎖抗体のスクリーニングは、C反応性タンパク質、コロナウイルスSタンパク質又はコロナウイルスNタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体をスクリーニングすることである。
【0053】
本願の第7態様では、目標重鎖抗体のスクリーニングの方法を提供し、当該方法は、上記の第1態様に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、上記の第2態様に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、上記の第3態様に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫、又は上記の第4態様に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫を、免疫動物として使用してスクリーニングすることを含む。
【0054】
上記の方法は、可能な実現形態において、目標重鎖抗体のスクリーニングの際に、ファージディスプレイ法を採用する。
【0055】
上記の方法は、可能な実現形態において、前記目標重鎖抗体のスクリーニングは、C反応性タンパク質、コロナウイルスSタンパク質又はコロナウイルスNタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体をスクリーニングすることである。
【0056】
本願の第8態様では、非ヒト哺乳動物細胞又は細胞株又は初代細胞培養物を提供し、前記非ヒト哺乳動物細胞又は細胞株又は初代細胞培養物は上記の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、又は上記の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来する。
【0057】
本願の第9態様では、上記の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、上記の的製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来する摘出組織又は摘出器官又はその培養物を提供する。
【0058】
本願の第10態様では、sgRNA組成物を提供し、前記sgRNA組成物は、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNA、又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流及び下流を標的とするsgRNA、又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2cをコードする1番目のエクソン下流を標的とするsgRNA、を含む。
【0059】
上記のsgRNA組成物は、可能な実現形態において、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号5及び配列番号6を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号7及び配列番号8を含む。
【0060】
上記のsgRNA組成物は、可能な実現形態において、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号13及び配列番号14であり、及び/又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号15及び配列番号16であり、及び/又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号11及び配列番号12である。
【0061】
本願の第11態様では、sgRNAをコードする1セグメント以上のDNA配列を含むノックアウトベクターを提供し、前記sgRNAの標的配列は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするもの、又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするもの、又は、
又は、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするもの、又は、
又は、マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするものから選択される1つである。
【0062】
上記のノックアウトベクターは、可能な実現形態において、前記ノックアウトベクターの骨格は、sgRNA発現ベクターである。
【0063】
本願の第12態様では、上記のノックアウトベクターを含む細胞を提供する。
【0064】
正確に発現しないということについて、正確に発現しないということに対照的なのは正確に発現するということであり、本願において、正確に発現するということ及び正確に発現しないということは、実際には、両方とも本分野で一般的に理解される意味を有する。例えば、CH1ドメインを正確に発現しないということとは、ゲノムレベルの突然変異又は欠失により重鎖定常領域のCH1ドメインを正確に発現しなく、それによりCH1ドメインが軽鎖との結合能力を喪失するということを意味する。例えば、重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするエクソンの上流と下流の各10個のヌクレオチド内の突然変異又は欠失により、CH1ドメインが軽鎖との結合能力を喪失する。また例えば、IgG重鎖定常領域をコードする遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現しないということは、当該遺伝子の発現により得られた免疫グロブリン抗体は抗体効果を有さないということを意味し、これに対して、IgG重鎖定常領域をコードする遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域を正確に発現するということは、当該遺伝子の発現により得られた免疫グロブリン抗体が抗体効果を有するということを意味する。
【0065】
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子とは、IgG重鎖定常領域をコードする遺伝子座上に、IgG重鎖定常領域をコードする各遺伝子が上流から下流の順に配列されている順番を意味する。
【発明の効果】
【0066】
本願は、非ヒト哺乳動物がIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップと、IgG重鎖定常領域をコードする1つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップとにより、非ヒト哺乳動物又はその子孫を製造し、得られた非ヒト哺乳動物又はその子孫は、重鎖抗体の生産に使用できる。本願の製造方法を用いて取得した非ヒト哺乳動物は、いずれの抗体重鎖可変領域及び定常領域をコードする外来遺伝子を導入せず、それ自体のゲノム中の抗体重鎖可変領域をコードするすべてのVDJ遺伝子を直接利用することにより、重鎖可変領域の再配列により多様性がよりよい重鎖抗体を生成することができる。
【0067】
免疫学では、一般に、IgMはB細胞の発育に対して極めて重要であり、B細胞の発育は抗体の生成に対して極めて重要であると考えている。本願は、実験により、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードする遺伝子を発現しなくても、さらには、IgM重鎖定常領域をコードする遺伝子及びIgD重鎖定常領域をコードする遺伝子を削除しても、非ヒト哺乳動物の免疫成熟に有意な影響を与えず、すべてのマウスが正常に生存し、依然として力価の高い免疫反応を発生でき、且つ、発明者は、スクリーニングにより特異性が強く、親和性が高い重鎖抗体を得た。
【0068】
遺伝子改変の、IgG重鎖定常領域をコードする遺伝子を選択することにより、特定のサブクラスの重鎖IgG抗体を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
1つ以上の実施例は、それに対応する図面における写真で例示的な説明を行い、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではない。本明細書に使用される単語「例示的」は、「例、実施例又は説明性として使用される」ことを意味する。本明細書で「例示的」として説明されるいずれの実施例も、必ずしも他の実施例よりも好ましいまたは優れるものとして解釈されるべきではない。
【
図1】本願の実施例1に係るマウスの抗体重鎖可変領域及び定常領域の遺伝子部位の模式図である。
【
図2】本願の実施例1における、Ighm-d-gマウスを製造するsgRNA標的決定戦略の模式図である。第2行中のボックスはエクソンを示し、白色ボックスはノックアウトされた遺伝子断片を示し、数字はエクソン番号である。五角星形はsgRNAの標的点の位置を示す。矢印は、遺伝子型同定のプライマーに対する位置を表す。
【
図3】本願の実施例1における、Ighm-d-gマウスに対して遺伝子型同定を行ったPCRのゲル電気泳動図の模式図であり、wt:野生型、+/-:ヘテロ接合体、-/-:ノックアウトホモ接合体である。
【
図4】本願の実施例2における、抗原タンパク質としてCRP(ヒトC反応性タンパク質)を使用してIghm-d-gホモ接合型マウスを免疫させた後の血清力価検出結果の模式図であり、1回目免疫後及び未免疫時の血清力価はいずれも低く、両線は重なっている。
【
図5A】本願の実施例5における、Ighm-d-gホモ接合型マウスのIgG2c抗体重鎖遺伝子のVHセグメントのコロニーPCR図である。
【
図5B】本願の実施例5における、Ighm-d-gホモ接合型マウスが発現したIgG2c抗体の重鎖アミノ酸配列の比較図である。
【
図6】本願の実施例6における、重鎖抗体ファージライブラリーから陽性クローンをスクリーニングしてシークエンシングを行った比較図である。
【
図7】本願の実施例7における、精製D4-12の抗原CRPに対する特異性識別のELISA結果である。
【
図8】本願の実施例8における精製5S-12の抗原CRPに対する特異性識別のELISA結果であり、ここで、OVA-D5S-12及びBSA-D5S-12の両線のOD450値が非常に低く、線は重なっている。
【
図9】本願の実施例8における、D5S-12重鎖抗体の親和性測定結果である。
【
図10】本願の実施例9における、IghMマウスを製造するsgRNA標的決定戦略の模式図である。黒色ボックスはエクソンを示し、ここで、数字はエクソン番号である。五角星形記号はsgRNAの標的点の位置を示す。矢印は遺伝子型同定のプライマーを示す。
【
図11】本願の実施例9におけるPCR同定のIghMマウス遺伝子型の例示である。Ighm野生型遺伝子は約600bpバンドを生成し、Ighmノックアウト遺伝子は、約300bpバンドを生成する。数字はマウスサンプル番号を示し、+:野生型対照、-:ブランク対照である。
【
図12】本願の実施例10におけるIghMホモ接合型マウスが発現したIgM抗体重鎖アミノ酸配列図である。
【
図13】本願の実施例11におけるIghM-3G3マウスを製造するsgRNA標的決定戦略の模式図である。黒色ボックスはエクソンを示し、ここで、数字は、エクソン番号である。五角星形記号はsgRNAの標的点の位置を示す。矢印は遺伝子型同定のプライマーを示す。
【
図14】本願の実施例11におけるIghM-3G3マウスに対して遺伝子型同定を行ったPCRゲル電気泳動図の模式図であり、wt:野生型、+/-:ヘテロ接合体、-/-:ノックアウトホモ接合体である。
【
図15】本願の実施例12におけるCRP(ヒトC反応性タンパク質)を抗原タンパク質として使用してIghM-3G3ホモ接合型マウスを免疫させた後の血清力価検出結果の模式図であり、1回目免疫後及び2回目免疫後の血清力価は両方とも非常に低く、両線が重なっている。
【
図16A】本願の実施例13におけるIghM-3G3ホモ接合型マウスのIgG2c抗体重鎖遺伝子のVHセグメントのコロニーPCR図である。
【
図16B】本願の実施例13におけるIghM-3G3ホモ接合型マウスが発現したIgG2c抗体の重鎖アミノ酸配列の比較図である。
【
図17】本願の実施例15に言及された、コロナウイルスSタンパク質抗原を用いてIghM-3G3ホモ接合型マウスを免疫させる状況で、それぞれ、未免疫、2回目の免疫1週間後、3回目の免疫1週間後及び4回目の免疫1週間後に採血し、PBSを用いて血清を倍率希釈した後、ELISAで血清力価を検出した結果図である。
【
図18A】本願の実施例16に言及された、コロナウイルスSタンパク質抗原で免疫させたIghM-3G3ホモ接合型マウスのIgG2c抗体重鎖遺伝子のコロニーPCR同定図である。
【
図18B】本願の実施例17に言及された、コロナウイルスSタンパク質抗原で免疫させたIghM-3G3ホモ接合型マウスのIgG2c抗体重鎖遺伝子がファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニングを経た後に得られた陽性クローンのCDR領域のアミノ酸配列の比較図である。
【
図19】本願の実施例17に言及された、ELISA法で抗体S-9、S-19、S-27及びS-47が抗原コロナウイルスSタンパク質を特異性識別し且つそれと結合することができるか否かを検出した結果図である。
【
図20A】本願の実施例18における、コロナウイルスSタンパク質抗原を用いてIghM-DG1ホモ接合型マウスを免疫させる状況で、それぞれ、未免疫、2回目の免疫1週間後、3回目の免疫1週間後及び4回目の免疫1週間後に採血し、PBSを用いて血清を倍率希釈した後、ELISAで血清力価を検出した結果図である。
【
図20B】上記のコロナウイルスSタンパク質抗原で免疫させたIghM-DG1ホモ接合型マウスについて、ファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニング後に得られた陽性クローンのCDR領域のアミノ酸配列の比較図である。
【
図21】本願の実施例18に言及された、ELISA法で抗体S-1、S-7、S-12、S-17、S19、S-25、S-51及びS-65が抗原コロナウイルスSタンパク質を特異性識別し且つそれと結合することができるか否かを検出した結果図である。
【
図22A】本願の実施例19に言及された、コロナウイルスNタンパク質抗原を用いてIghM-DG1ホモ接合型マウスを免疫させる状況で、それぞれ、未免疫、2回目の免疫1週間後、3回目の免疫1週間後及び4回目の免疫1週間後に採血し、PBSを用いて血清を倍率希釈した後、ELISAで血清力価を検出した結果図である。
【
図22B】上記のコロナウイルスNタンパク質抗原で免疫させたIghM-DG1ホモ接合型マウスについて、ファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニング後に得られた陽性クローンのCDR領域のアミノ酸配列の比較図である。
【
図23】本願の実施例19に言及された、ELISA法で抗体N-1、N-2、N-3、N-5及びN-23が抗原コロナウイルスSタンパク質を特異性識別し且つそれと結合できるか否かを検出した結果図である。
【
図24】本願の実施例20に言及された、MDG1マウス及び野生型マウスの骨髄における各免疫グロブリン遺伝子の相対的な発現量の比較である。A~D図は、それぞれ、両遺伝子型マウスの骨髄中でμ遺伝子、γ2c遺伝子、γ2c遺伝子がμ遺伝子、α遺伝子に対する相対的な発現量である。MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、WTは野生型マウスであり、BMは骨髄であり、ハウスキーピング遺伝子であるGapdh遺伝子を内部標準とし、n=4であり、2
-ΔΔCtの計算方法でデータ分析を行い、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、***はp<0.01を意味する。
【
図25】本願の実施例20に言及された、MDG1マウス及び野生型マウスの脾臓における各免疫グロブリン遺伝子の相対的な発現量の比較である。A~D図は、それぞれ、両遺伝子型マウスの脾臓中でμ遺伝子、γ2c遺伝子、γ2c遺伝子のμ遺伝子、α遺伝子に対する相対的な発現量である。MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、WTは野生型マウスであり、ハウスキーピング遺伝子であるGapdh遺伝子を内部標準とし、n=4であり、2
-ΔΔCtの計算方法でデータ分析を行い、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、**はp<0.01を意味する。
【
図26】本願の実施例20に言及された、MDG1マウス及び野生型マウスの小腸における各免疫グロブリン遺伝子の相対的な発現量の比較である。A~D図は、それぞれ、両遺伝子型マウスの小腸中でμ遺伝子、γ2c遺伝子、γ2c遺伝子のμ遺伝子、α遺伝子に対する相対的な発現量である。MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、WTは野生型マウスであり、SIは小腸であり、ハウスキーピング遺伝子であるGapdh遺伝子を内部標準とし、n=4であり、2
-ΔΔCtの計算方法でデータ分析を行い、2尾T検定を用いて統計学的分析を行った。
【
図27】本願の実施例21に言及された、Western BlotでMDG1マウスの血清中でのIgG2cの発現パターンを検出する。WTは野生型マウスを表し、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスを表す。
図Aは、還元条件でのIgG2cの発現パターンの検出であり、
図Bは、非還元条件でのIgG2cの発現パターンの検出であり、野生型マウスの血清を20倍希釈し、MDG1マウスの血清を100倍希釈し、Goat Anti-Mouse IgG2c heavy chain(HRP)を10000倍希釈する。
【
図28】本願の実施例22に言及された、静止状態下でMDG1マウス及び野生型マウスの血清における各免疫グロブリンの発現量の比較である。A~F図は、それぞれ、両遺伝子型マウスの血清でIgM、IgG2c、野生型マウスのIgM、MDG1マウスのIgG2c、総IgG、IgA、IgEの発現量である。n=20であり、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、*はp<0.05を意味し、****はp<0.01を意味する。
【
図29】本願の実施例23に言及された、MDG1マウスの骨髄におけるB細胞の発育状況である。A~C図は、それぞれ、骨髄B細胞、未熟B細胞/成熟B細胞、pro-B細胞/pre-B細胞の集団分け状態であり、D~F図は、それぞれ、骨髄B細胞、pro-B細胞及びpre-B細胞の比率及び数である。WTは野生型マウスであり、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、pro-B cellはpro-B細胞であり、pre-B cellはpre-B細胞である。n=6であり、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、*はp<0.05を意味し、***はp<0.01を意味する。
【
図30】本願の実施例23に言及された、MDG1マウスの脾臓におけるB細胞の発育状況である。A~D図は、それぞれ脾臓B細胞、IgG2c+/IgM+B細胞、濾胞B細胞/辺縁B細胞/移行期B細胞、形質細胞の集団分け状態であり、E~H図は、それぞれ脾臓B細胞、IgG2c+/IgM+B細胞、形質細胞、濾胞B細胞/辺縁B細胞/移行期B細胞の比率及び数である。WTは野生型マウスであり、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、FO Bは濾胞B細胞であり、T Bは移行期B細胞であり、MZ Bは辺縁B細胞であり、plasmaは形質細胞であり、n=4であり、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、*はp<0.05を意味し、**はp<0.01を意味する。
【
図31】本願の実施例23に言及された、MDG1マウスの腹膜腔におけるB細胞の発育状況である。
図A及び
図Bは、それぞれ、腹膜腔B細胞、B1a/B1b/B2細胞の集団分け状態であり、
図Cは、それぞれ腹膜腔B細胞、B1a細胞、B1b細胞及びB2細胞の比率である。WTは野生型マウスであり、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスである。n=7であり、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、*はp<0.05を意味し、**はp<0.01を意味する。
【
図32】本願の実施例25に言及された、クロラムフェニコール免疫後の野生型マウス及びMDG1マウスの血清における抗原特異性抗体の相対的な発現量の変化傾向である。A~Eは、それぞれ、クロラムフェニコール特異性のIgM、IgG2c、IgG、IgA、IgEの相対的な発現量であり、横座標は免疫回数を表し、LMSはクロラムフェニコールを表し、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、WTは野生型マウスであり、n=7である。
【
図33】本願の実施例25に言及された、アトラジン免疫後の野生型マウス及びMDG1マウスの血清における抗原特異性抗体の相対的な発現量の変化傾向である。A~Eは、それぞれアトラジン特異性のIgM、IgG2c、IgG、IgA、IgEの相対的な発現量であり、横座標は免疫回数を表し、ATLJはアトラジンを表し、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、WTは野生型マウスであり、n=3である。
【
図34】本願の実施例26に言及された、抗原免疫後の野生型マウス及びMDG1マウスの脾臓における胚芽中心B細胞及び形質細胞の発育である。A~E図は、それぞれ免疫後の脾臓B細胞、胚芽中心B細胞、IgG2c+胚芽中心B細胞、形質細胞、IgG2c+形質細胞の発育状況であり、F~J図は、それぞれ免疫後の脾臓B細胞、胚芽中心B細胞、IgG2c+胚芽中心B細胞、形質細胞、IgG2c+形質細胞の比率及び数である。WTは野生型マウスであり、MDG1はホモ接合体ノックアウトマウスであり、n=6であり、2尾T検定を用いて統計学的分析を行い、*はp<0.05を意味し、**はp<0.01を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本願の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本願の実施例の技術案について明確で、完全に説明するが、説明される実施例は、本願の一部の実施例にすぎず、全部の実施例ではないことは明らかである。当業者が本願の実施例に基づいて創造的な労働なしに得られたすべての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲内に属する。
【0071】
また、本願をよいよく説明するために、以下の具体的な実施形態では、多くの具体的な詳細が与えられた。当業者であれば、一部の具体的な詳細がなくても、本願を同様に実施できることを理解するべきであろう。一部の実施例において、本願の趣旨を突出させるために、当業者によく知られている原材料、要素、方法、手段などについては詳細に説明していない。
【0072】
特に明示した場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む」又は「含有する」又は「含んでいる」などの変形などは、他の要素又は他の構成部分を排除せず、述べられた要素又は構成部分を含むと理解されるべきである。
【0073】
以下の実施例に用いられる実験材料及びその供給源は、
px330プラスミドベクター、Addgeneから購入、プラスミド番号#58778、
pEASY-T5 Zero Cloningベクター、全式金生物技術有限公司(TransGen Biotech Co., Ltd.)から購入、製品番号:CT501-01、
TOP10コンピテント細胞、天根生化学技有限公司から購入、製品番号:CB104、
PET28ベクター、武漢ビョウ霊生物科技有限公司から購入、製品番号:P31003、
HiPure Total RNA Plusmini Kit、美基美から購入、製品番号R4121、
HiPure Gel Pure Micro Kit、美基美から購入、製品番号D2110、
HiPure Tissue DNAmini Kit、美基美から購入、製品番号D3121、
2×M5 Hiper plus Taq HiFi PCR mix、聚合美から購入、製品番号MF002-plus、
逆転写試薬5X All-In-One RT MasterMix、abmgoodから購入、製品番号490、
DNA marker 東盛から購入、製品番号M1061/M1062)、
タンパク質marker、Thermoから購入、製品番号26617、
Hieff qPCR SYBR Green Master Mix、Yeasenから購入、製品番号11201ES08、
APC/Cy7 anti-mouse CD38 Antibody、Biolegendから購入、製品番号102727、
APC/Cy7 anti-mouse IgM Antibody、Biolegendから購入、製品番号406515、
CD45R (B220) Monoclonal Antibody (RA3-6B2), APC、 eBioscienceから購入、製品番号85-17-0452-82
anti-CD23 antibody(Allophycocyanin)、Abcamから購入、製品番号ab25457、
CD45R (B220) Monoclonal Antibody (RA3-6B2), eFluor 450、eBioscienceから購入、製品番号85-48-0452-82、
BV421 Rat Anti-Mouse CD138、BD Horizonから購入、製品番号 562610、
CD19 Monoclonal Antibody (eBio1D3 (1D3)), eFluor 506、eBioscienceから購入、製品番号85-69-0193-80、
CD43 Monoclonal Antibody (eBioR2/60), PE、eBioscienceから購入、製品番号85-12-0431-81、
CD23 Monoclonal Antibody (B3B4), PE、eBioscienceから購入、製品番号 85-12-0232-82、
Anti-CD5 antibody [53-7.3] (Phycoerythrin)、Abcamから購入、製品番号 ab114078、
CD21/CD35 Monoclonal Antibody (eBio8D9 (8D9)), PE-Cyanine7、eBioscienceから購入、製品番号85-25-0211-80、
PE-CyTM7 Hamster Anti-Mouse CD95、BD Pharmingenから購入、製品番号553653、
CD19 Monoclonal Antibody PE-Cyanine7、eBioscienceから購入、製品番号25-0193-82、
IgM Monoclonal Antibody (eB121-15F9), PE-Cyanine7、eBioscienceから購入、製品番号85-25-5890-82、
CD43 Monoclonal Antibody (eBioR2/60), FITC、eBioscienceから購入、製品番号85-11-0431-85、
Mouse IgG2c Antibody - FITC Conjugated、Aviva system biologyから購入、製品番号OASA06628、
7-AAD Viability Staining Solution、eBioscienceから購入、製品番号85-00-6993-50、
Goat Anti-Mouse IgG2c heavy chain (HRP)、Abcamから購入、製品番号ab97255、
ECL Prime Western Blot Dtection reagent、GEから購入、製品番号RPN2236、
Mouse IgM ELISA Quantitation Set、bethylから購入、製品番号E90-101、
Mouse IgG2c ELISA Quantitation Set、bethylから購入、製品番号E90-136、
Mouse IgG ELISA Quantitation Set、bethylから購入、製品番号E90-131、
Mouse IgA ELISA Quantitation Set、bethylから購入、製品番号E90-103、
Mouse IgE ELISA Quantitation Set、bethylから購入、製品番号E90-115、
TMB Substrate Set、Biolegendから購入、製品番号421101、
Freund’s Adjuvant complete、sigmaから購入、製品番号F5881、
Freund’s Adjuvant incomplete、sigmaから購入、製品番号F5506である。
【0074】
第1部分、Ighm-d-gホモ接合型マウス及びその免疫結果
実施例1、Ighm-d-gホモ接合型マウス(本明細書では、MDG1マウスとも呼ばれる)の製造
Ighm-d-gマウスとは、Ighm遺伝子、Ighd遺伝子、Ighg3遺伝子、Ighg1遺伝子、Ighg2b遺伝子及びIghg2c遺伝子上に位置する1個目エクソンがノックアウトされたC57BL/6マウスを指し、当該エクソンは、IgG2c重鎖のCH1ドメインをコードすることを担当する。以下のステップにより、Ighm-d-gホモ接合型マウスを製造する。
【0075】
(1)核酸分子の取得
C57BL/6マウスの抗体重鎖可変領域及び定常領域の遺伝子部位の模式図は
図1に示すとおりであり、
図2に示すような標的決定戦略を設計して、マウスIghm、Ighd、Ighg3、Ighg1、Ighg2b遺伝子及びIghg2c中のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトする。発明者は、マウスのIghm遺伝子の1個目エクソンの上流からsgRNAの標的配列(配列番号1、配列番号2)を選択し、マウスのIghg2cの1個目エクソンの下流からsgRNA標的配列(配列番号3、配列番号4)を選択して、標的配列に応じてsgRNA配列を設計し、具体的には、表1に示すとおりである。
【0076】
【0077】
(2)核酸分子を骨格プラスミドに構築して、インビトロ転写でsgRNAを得た。
sgRNA配列をコードする合成した正方向及び逆方向のDNA oligoをアニーリングにより相補的な二本鎖に形成し、T4リガーゼを利用してsgRNA発現ベクター(px330)に連結し、連結後に、専門的なシークエンシング会社のシークエンシングにより検証し、結果は、目的のプラスミドを取得したことを表し、さらに、インビトロ転写によりsgRNAが得られた。
【0078】
(3)宿主動物の受精卵に前記sgRNA及びCas9タンパク質を導入する。
マウスの排卵を誘発し、インビトロ受精を行い、受精卵をインキュベートし、その後、sgRNAとCas9タンパク質とを混合し、マウスの受精卵を電気トランスフェクションする方法又は微量注射する方法でCas9タンパク質(又はCas9 mRNA、市場で購入可能)をsgRNAと一緒にマウスの受精卵に注射した。
【0079】
(4)上記のsgRNA及びCas9タンパク質を含有する細胞を宿主動物の体内に植え込んだ。
上記の受精卵細胞を代理母マウスの体内に植え込んで、F0世代キメラマウスを製造できた。マウスの尾からのゲノムDNAの抽出及びPCR検出により、F0世代マウスのうちノックアウトを受けた個体を検出した。遺伝子ノックアウトマウスに対してシークエンシングを行い、標的配列が削除されたことを確認した。遺伝子が正確にノックアウトされたF0世代キメラマウスを選別して、後続の繁殖及び同定に使用した。
【0080】
PCR用プライマーIghm-d-g-1F及びIghm-d-g-1Rで、ノックアウト遺伝子(
図2の矢印に示すとおり)を検出でき、プライマーIghd-2F及びIghd-2Rで野生型遺伝子(
図2の矢印に示すとおり)を検出でき、各プライマーの配列は表2に示すとおりであり、Ighm-d-gマウスのうちノックアウトを受けた個体を検出する際のPCR結果の模式図は
図3に示すとおりである。Ighm-d-gホモ接合体ノックアウト遺伝子を、プライマーIghm-d-g-1F及びIghm-d-g-1Rを用いて増幅することで、大きさが約700bpの目的のバンドを取得でき(左図に示すとおり)、プライマーIghd-2F及びIghd-2Rを用いて増幅することで、バンドを取得できず(右図に示すとおり)、Ighm-d-g野生型遺伝子を、プライマーIghm-d-g-1F及びIghm-d-g-1Rを用いて増幅することで、バンドを取得できず(左図に示すとおり)、プライマーIghd-2F及びIghd-2Rを用いて増幅することで、大きさが約600bpの目的のバンドを取得した(右図に示すとおり)。
【0081】
【0082】
(5)ヘテロ接合、ホモ接合の遺伝子ノックアウトマウスの繁殖
標的遺伝子がノックアウトされたF0世代マウスを野生型マウスと交尾させてF1世代マウスを取得し、マウスの尾からのゲノムの抽出及びPCR検出により、安定的に遺伝できる遺伝子ノックアウト陽性F1世代ヘテロ接合体マウスを選別した。続いて、F1世代ヘテロ接合体マウスを互いに交尾させると、遺伝子ノックアウト陽性F2世代ホモ接合体マウス、即ちIghm-d-gホモ接合型マウスを取得できた。取得したF1世代ヘテロ接合又はF2世代ホモ接マウスに対して遺伝子型同定を行う方法は、ステップ(4)と同じである。
【0083】
実施例2、抗原免疫反応及び力価検出
ヒトC反応性タンパク質(CRP)を用いてIghm-d-gホモ接合型マウスを免疫させた。
【0084】
免疫方法は、次のとおりである。6~8週齢の雄マウスを選択して、抗原ヒトC反応性タンパク質(CRP、A-5172、佰橋瑞景)に等量の完全フロイントアジュバント(F5881、Sigma)を添加して、水を滴下して融解しない状態に乳化し、マウスへの初回免疫のための皮下多点注射に使用され、初回免疫注射量は100μg/匹マウスであり、初回免疫後、2週間毎に後続の皮下免疫を行い、CRP抗原に等量のフロイント不完全アジュバント(F5506、Sigma)を加えて乳化した後、マウスに皮下多点注射し、毎回の注射量は100μg/匹マウスである。
【0085】
血清力価の検出方法は次のとおりである。CRP抗原を2μg/mLに希釈し、100μlを取ってポリスチレン酵素結合検出プレートに入れてからプレートをコーティングし、HRP-ヤギ抗マウスIgG-Fc(Jackson 115-035-071)を用いて血清中でCRP抗原と特異的に結合する特異性IgG2c抗体重鎖を検出する。
【0086】
図4に示すように、それぞれ未免疫、1回目の免疫1週間後、2回目の免疫1週間後、3回目の免疫1週間後に採血し、PBSで血清を希釈し、1:500希釈度から始まって倍率希釈を行い、ELISAで検出した血清力価は、未免疫及び1回目免疫のマウス体内には抗原CRPと結合する特異性抗体が現れず、2回目免疫後から、マウス体内に抗原と結合する特異性IgG2c抗体が現れ、3回目免疫後には、力価がさらに向上せず、その血清力価は1:8000程度で、次のステップの抗体遺伝子の調用実験に使用できる。
【0087】
実施例3、未免疫Ighm-d-gホモ接合型マウス及びCRP抗原免疫後のIghm-d-gホモ接合型マウスの脾臓、胸腺、リンパ節及び器官の検査
上記の実施例2に続き、マウスを二酸化炭素無呼吸法により安楽死させた。解剖して胸腺、脾臓、腸間膜リンパ節、顎下リンパ節など、及び、心、肝、肺、腎臓などの複数の器官の大きさ及び形態を観察し、解剖学的に、未免疫Ighm-d-gホモ接合型マウス及び抗原免疫後のIghm-d-gホモ接合型マウスの胸腺、腸間膜リンパ節、顎下リンパ節、主要臓器のいずれにも明らかな異常がないことを示した。
【0088】
実施例4、抗原免疫により特異性IgG2c重鎖抗体を生成する
上記の実施例2に続き、CRP抗原免疫マウスの血清タンパク質ブロッティングを行う。免疫後のマウス血清2μLを取って、100μLのPBSを入れ、10μLのCRP抗原-Sepharoseフィラーと室温で60分間反応させた後、6000rpmで30秒遠心分離して、上清を捨てる。フィラーをPBSで3回洗浄し、10μLのPBSで再懸濁させて煮沸し、12%SDS-PAGE電気泳動を経て、PVDF膜に移行した後、それぞれHRP-ヤギ抗マウスIgG-Fc(Jackson、115-035-071、重鎖の検出に使用)抗体及びHRP-ヤギ抗マウスIg軽鎖(Jackson、115-035-174)抗体で反応させて、さらに発色させる。
【0089】
本願の設計により、マウスIgM、IgD、IgG1、IgG2b、IgG3の遺伝子がノックアウトされたため、抗原タンパク質でIghm-d-gホモ接合型マウスを免疫させると、IgG2cサブクラス抗体のみを生成し、且つ、IgG2c重鎖のCH1遺伝子がノックアウトされたため、抗原タンパク質でIghm-d-gホモ接合型マウスを免疫させると、IgG2c重鎖抗体(CH1ドメインを含まない)を生成でき、IgG2c単独1本の重鎖の分子量は約40KD程度である。抗原タンパク質で免疫させた後のIghm-d-gホモ接合型マウスに生成された抗体は、分離、電気泳動及び発色等のステップを経た後、大きさが80KDのバンドの左右に抗原CRPと特異的に結合するバンドが現れ、これは、理論のIgG2c重鎖の二量体分子量に一致し、且つ、HRP-ヤギ抗マウスIg軽鎖(Jackson、115-035-174)抗体と結合しなかった二量体を含んだ。
【0090】
実施例5、IgG2c重鎖抗体遺伝子の調用
上記の実施例2に続き、CRP抗原でIghm-d-gホモ接合型マウスを免疫させて、血清力価を検出した後、マウスを安楽死させて、脾臓細胞を採取し、Trizol溶解を経て、総RNAを抽出して逆転写してcDNAを得、下記のようなIgG2cサブ型抗体特異性プライマーを使用して、PCRにより重鎖可変領域及びそれに連結されている重鎖定常領域を増幅する。
MHV1:ATGAAATGCAGCTGGGGCATSTTCTTC(配列番号21)、
MHV2:ATGGGATGGAGCTRTATCATSYTCTT(配列番号22)、
MHV3:ATGAAGWTGTGGTTAAACTGGGTTTTT(配列番号23)、
MHV4:ATGRACTTTGGGYTCAGCTTGRTTT(配列番号24)、
MHV5:ATGGGACTCCAGGCTTCAATTTAGTTTTCCTT(配列番号25)、
MHV6: ATGGCTTGTCYTTRGSGCTRCTCTTCTGC(配列番号26)、
MHV7: ATGGRATGGAGCKGGRGTCTTTMTCTT(配列番号27)、
MHV8: ATGAGAGTGCTGATTCTTTTGTG(配列番号28)、
MHV9: ATGGMTTGGGTGTGGAMCTTGCTTATTCCTG(配列番号29)、
MHV10: ATGGGCAGACTTACCATTCTCATTCCTG(配列番号30)、
MHV11: ATGGATTTTGGGCTGATTTTTTTTATTG(配列番号31)、
MHV12: ATGATGGTGTTAAGTCCTTCTGTACC(配列番号32)、
組み合わせB6_IgG2c_CH2 R1:5’- TGGTCCACCCAAGAGGTCTG-3’(配列番号33)。
【0091】
PCR反応体系は、表3に示すとおりである。
【0092】
【0093】
PCR反応プロセス:98°Cで、2min--30回の循環(各循環は98°Cで、10s--50°Cで、20s--72°Cで、40s)--72°Cで、5min--16°C。
【0094】
取得したPCR増幅産物をpEASY-T5 Zero Cloningベクターに連結し、TOP10のコンピテント細胞を形質転換してLBプレートに塗り、11個のクローンをランダムに選択して、コロニーPCRで陽性であると同定したクローンに対してシークエンシングを行った(
図5Aに示すように、大きさが650bpであるバンドが陽性バンドである)。
【0095】
陽性クローンのシークエンシング結果(
図5Bに示すように)により、Ighm-d-gホモ接合型マウスに生成されたIgG2c抗体重鎖可変領域であるFR4領域は、IgG2c Hinge領域(抗体ヒンジ領域)に直接連結され、抗体重鎖の構造がVH-CH1-Hinge-CH2-CH3であるため、VH領域はまた詳細にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4に分けられ得ることが示され、
図5Bから分かるように、Ighm-d-gホモ接合型マウスに生成されたIgG2c抗体重鎖可変領域であるFR4領域は、Hinge領域(抗体ヒンジ領域)に直接連結され、IgG2c CH1エクソンのノックアウトに成功したことを説明する。
【0096】
実施例6、CRP抗原特異性IgG2c重鎖抗体可変領域のファージディスプレイライブラリの構築及びパンニング
I、ファージディスプレイライブラリの構築
上記の実施例2に続き、CRP免疫したIghm-d-gホモ接合型マウスの脾臓から総RNAを抽出し、oligo(Dt)を使用してcDNA(TAKAR 6110A cDNA合成キット)を製造し、入れ子式PCRを用いてPCR増幅を2回行って重鎖抗体遺伝子を得た。
【0097】
1回目のPCR過程は、実施例5で言及したPCR過程と完全に同じである。
【0098】
2回目のPCRに使用されるプライマー、反応体系、反応プロセスは下記のとおりである。
MHVF1-SfiI:ATGCCATGACTGTggcccaggcggcc GAG GTG AAG CTT CTC GAG TCT GG(配列番号34)、
MHVF2-SfiI:CATGCCATGACTGTggcccaggcggcc SAG GTS CAG CTG MAG GAG TCWGG(配列番号35)、
MHVF3-SfiI:CATGCCATGACTGTggcccaggcggcc GCC GAG GTC CAG CTG CAA CAA TCT GG(配列番号36)、
MHVF4-SfiI:CATGCCATGACTGTggcccaggcggcc SAG GTY CAR CTK CAG CAG YCT GG(配列番号37)、
MHVF5-SfiI:CATGCCATGACTGT ggcccaggcggcc GAR GTG AAG CTT GWG GAG TCT GG(配列番号38)、
B6-IgG2c-Hin-Sfi1:ACTCGCGGCCGGCCTGGCCTGTTATGGGCACTCTGGG(配列番号39)、
反応体系は、表4に示すとおりである。
【0099】
【0100】
PCR反応プロセス:98°Cで、2min--30回の循環(各循環は、98°Cで、10s--65°Cで、20s--72°Cで、40s)--72°Cで、5min--16°C。
【0101】
PCR増幅産物をSfiI(FD1824、Thermo)で酵素切断し、アガロース・ゲル電気泳動して、目的の産物ゲルを回収してから、ゲルが回収された目的の断片をSfiIで酵素切断したpComb3XSSベクター上にクローンした。R2738電気コンピテント細胞を電気トランスフェクションし、IgG2c重鎖抗体ライブラリーを製造してパンニングを複数回行う。複数の陽性クローンを選択して、シークエンシングと同定のために送り、結果は
図6に示すとおりである。
【0102】
II、パンニング
1.パンニング
1)コーティング:CRP抗原をコーティング液で100μg/mLに希釈し、酵素標識プレート(100μL/ウェル)の2つのウェルに入れ、4℃でコーティングして一晩置いた。
2)密閉:コーティング液を吸い出し、PBSでプレートを3回洗い、300μLの4%脱脂ミルクを用いて密閉し(2回目、3回目、4回目、5回目の密閉液は4%BSAである)、37℃で2hインキュベートした。
3)結合:密閉液を吸い出し、PBSでプレートを3回洗い、100μLのファージディスプレイライブラリを入れ、37℃で1hインキュベートした。
4)洗浄:結合していないファージを吸出し、PBSTで洗浄した(本願では、パンニングを計5回行い、1回目、2回目ではそれぞれPBSTで3回洗浄し、3回目、4回目、5回目ではそれぞれPBSTで10回洗浄した)。
5)溶出:100μLのGly-HCl(pH3.0)を入れ、37℃で、分注器を用いて5min間緩やかに数回ピペットした。
6)中和:ウェル中の液体を遠心分離管に吸い出し、15μLの中和緩衝液(1MのTirs-Hcl、PH=8.8)を予め加えて均一に混合した。
7)10μLの中和後の溶出液を取ってタイターを測定し、残りの溶出液を増幅して培養した後、次の回のパンニングに使用した。
【0103】
2.ファージの増幅と精製
1)中和後の溶出液を5mLのER2738菌液(菌株を市場で購入、OD600は約0.5~0.7である)に加え、均一に混合した。
2)37℃の恒温槽に30min静置し、その後、37℃の条件で、180rpmで1h培養した。
3)培養物を20mLのLB培地に入れ、37℃の条件で、180rpmで2h培養した。
4)20μLのヘルパーファージM13KO7(2×109cfu)(NEB社から購入、製品番号はN03158である)を入れて、均一に混合した。
5)37℃の恒温槽に30min静置し、その後、37℃の条件で、180rpmで1h培養した後にアンピシリン抗生物質を入れた。
6)37℃で、180rpmで1h培養した後に8000rpmで5min遠心分離した。
7)25mLのLB培地/Amp/kanを用いて再懸濁させて、沈殿させ、30℃の条件で、180rpmで一晩(約14h)培養した。
8)4℃で、8000rpmで10min遠心分離し、上清を採集した。
9)1/5体積のPEG-NaCl溶液を入れ、4℃で約4~6h静置した。
10)4℃で、12000rpmで20min遠心分離し、上清を捨てた。
11)沈殿物を1mLで再懸濁させ、10μLを取ってタイターを測定した。
【0104】
3.タイターの測定
1)PBSで被検ファージを希釈し(10μLのファージを990μLのPBSに入れて10-2にする)、それぞれ、10μLの希釈後のファージを取って200μLのER2738菌液に入れ、均一に混合した。
2)感染された培養物を37℃で30min静置培養した。
3)LB+Amp+耐性プレートに塗った。
4)37℃で逆置きして、一晩培養した。
5)コロニーをカウントし、タイターを計算した。
【0105】
III、IgG2c重鎖抗体可変領域ライブラリーを製造してパンニングを5回行った後の結果は、表5に示すとおりである。
【0106】
【0107】
パンニングを合計5回行い、上記の表から分かるように、出力されたファージに有意な濃縮があり、PHAGE-ELISA実験により陽性クローンを選別してシークエンシングと同定のために送った。
【0108】
実施例7、CRP抗原特異性IgG2c重鎖抗体可変領域の原核での発現と生物学的活性の同定
上記の実施例6に続き、シークエンシング配列を分析し、前の5回のパンニングで繰り返して出現したD4-12(表6に示すようなヌクレオチド配列及びアミノ酸配列)を選択してBL21大腸菌にトランスフェクションし、16℃で、異なる濃度のIPTGを入れて原核での発現を誘導し、超音波破砕を経て上清を採集してニッケル親和性カラム精製を行った。
【0109】
特異性抗原CRP及び無関係のタンパク質OVA(2μg/mL)をコーティングし、精製されたD4-12を用いて段階希釈を行い、ELISAで検出し、結果は、精製されたD4-12重鎖抗体可変領域は、抗原CRPを特異性識別し且つそれと結合することができ、良い濃度依存性を示すことを示し、
図7に示すとおりである。
【0110】
【0111】
実施例8、CRP抗原特異性IgG2c重鎖抗体可変領域の真核での発現と生物学的活性の同定
上記の実施例6に続き、シークエンシング配列をさらに分析し、最も多く繰り返して出現した配列D5S-12(表7に示すようなヌクレオチド配列及びアミノ酸配列)を選択して真核での発現及び生物学的活性の同定を行った。KOP293細胞(珠海凱瑞)にトランスフェクションし、六日目に培養細胞の上清液を採集して、目的のタンパク質のニッケル親和性カラム精製を行った。
【0112】
【0113】
1、特異性抗原CRP及び無関係のタンパク質OVA又はBSA(2μg/mL)をコーティングし、精製されたD5S-12抗体を段階希釈し、ELISAで検出し、結果は、精製されたD5S-12重鎖抗体は、抗原CRPを特異性識別し且つそれと結合することができ、良い濃度依存性を示すことを示し、結果は
図8に示すとおりである。
【0114】
2、D5S-12重鎖抗体の親和性の測定:FORTEBIO-OCTETで、精製されたD5S-12重鎖抗体の抗原CRPに対する親和性を測定し、抗体を10μg/mLに希釈し、抗原CRPを200、100、50、25、12.5、6.25、3.13nMに希釈し、測定により、その親和性定数は、K
D(M)=9.87E-10、K
on(1/Ms)=8.55E+04、K
off(1/s)=8.44E-05であり、重鎖抗体D5S-12は抗原CRPに対して高い親和性を有し、結果は
図9に示すとおりである。
【0115】
第2部分、IghM-3G3ホモ接合型マウスの製造及びその免疫結果
IghM-3G3マウスとは、Ighm遺伝子上の1個目エクソン、Ighg3遺伝子、Ighg1遺伝子、Ighg2b遺伝子、及びIghg2c遺伝子上に位置する1個目エクソンがノックアウトされたC57BL/6マウスを指す。IghMホモ接合型マウス(即ちIghm遺伝子上の1個目エクソンがノックアウトされたC57BL/6マウス)を先に製造してから、IghMホモ接合型マウスに基づいてIghM-3G3ホモ接合型マウスを製造した。
【0116】
実施例9、IghMホモ接合型マウスの製造
IghMホモ接合型マウスの製造には、以下のステップが含まれる。
(1)核酸分子の取得
C57BL/6マウスの抗体重鎖可変領域及び定常領域の遺伝子部位の模式図は
図1に示すとおりであり、
図10に示すような標的決定戦略を設計して、マウスのIghm遺伝子中のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトした。
【0117】
マウスのIghm遺伝子中のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするために、マウスのIghm遺伝子の1個目エクソンの上流と下流から標的点を選択し、発明者は、マウスのIghm遺伝子上の1個目エクソンの上流からsgRNAの標的配列(配列番号1、配列番号2)を選択し、マウスのIghm遺伝子中の1個目エクソン下流からsgRNA標的配列(配列番号5、配列番号6)を選択し、標的配列に基づいてsgRNA配列を設計し、具体的には、表8に示すとおりである。
【0118】
【0119】
(2)核酸分子を骨格プラスミドに構築して、インビトロ転写でRNAを得た。
sgRNA配列の合成した正方向及び逆方向のDNA oligoをアニーリングにより相補的な二本鎖に形成し、T4リガーゼでsgRNA発現ベクター(px330)に連結し、連結した後、シークエンシング専門会社によりシークエンシングして検証し、結果は、目的のプラスミドを取得したことを表し、さらにインビトロ転写によりsgRNAを取得した。
【0120】
(3)宿主動物の受精卵に前記sgRNA及びCas9タンパク質を導入した。
マウスの排卵を誘発し、インビトロ受精を行い、受精卵をインキュベートし、その後、sgRNAとCas9タンパク質とを混合し、マウスの受精卵を電気トランスフェクションする方法又は微量注射する方法でCas9タンパク質(又はCas9 mRNA、市場で購入可能)をsgRNAと一緒にマウスの受精卵に注射した。
【0121】
(4)上記のsgRNA及びCas9タンパク質を含有する細胞を代理母動物の体内に植え込んだ。
上記の受精卵細胞を代理母マウスの体内に組み込んで、F0世代キメラマウスを製造できた。マウスの尾からのゲノムDNAの抽出及びPCR検出により、F0世代マウスのうちノックアウトを受けた個体を検出した。遺伝子ノックアウトマウスに対してシークエンシングを行い、標的配列が削除されたことを確認した。遺伝子が正確にノックアウトされたF0世代キメラマウスを選別して、後続の繁殖及び同定に使用した。
【0122】
PCR用プライマーIghm-F及びIghm-Rで、ノックアウト遺伝子を検出でき(如
図10の矢印に示すとおり)、プライマー配列は、表9を参照できる。
【0123】
【0124】
検出結果は、
図11を参照する。以上のプライマーを使用してPCR検出を行う際に、Ighm野生型遺伝子の増幅により約600bpのバンドを取得でき、Ighm CH1ノックアウト遺伝子の増幅により約300bpのバンドを取得できる。
図11から分かるように、クローン#1、#2、#3及び#6は、Ighm CH1ノックアウト遺伝子を含有する。遺伝子ノックアウトマウスに対してシークエンシングを行い、ノックアウトマウスのIghm遺伝子の1個目エクソンが削除されたことを確認した。
【0125】
(5)繁殖ヘテロ接合、ホモ接合の遺伝子ノックアウトマウス
標的遺伝子がノックアウトされたF0世代マウスと野生型マウスとを交尾させてF1世代マウスを取得し、マウスの尾からのゲノムの抽出及びPCR検出により、安定的に遺伝できる遺伝子ノックアウト陽性F1世代ヘテロ接合体マウスを選別した。続いて、F1世代ヘテロ接合体マウスを互いに交尾させると、遺伝子ノックアウト陽性F2世代ホモ接合体マウス、即ちIghMホモ接合型マウスを取得できる。取得したF1世代ヘテロ接合又はF2世代ホモ接マウスに対して遺伝子型同定を行う方法は、ステップ4と同じである。
【0126】
実施例10、IgM重鎖抗体遺伝子の調用
上記の実施例2にしたがってCRP抗原免疫を行った後、IghMホモ接合型マウスを安楽死させて脾臓細胞を採集し、Trizol溶解し、総RNAの抽出、及び逆転写によりcDNAを得、IgMサブ型抗体特異性プライマーを使用してPCRにより重鎖可変領域及びそれに連結された重鎖定常領域を増幅し、使用されるプライマー及びその配列は、
MHV1、MHV2、MHV3、MHV4、MHV5、MHV6、MHV7、MHV8、MHV9、MHV10、MHV11、MHV12(いずれも実施例5を参照できる)、
組み合わせB6 IghM CH2 R4:GTTCATCTCTGCGACAGC(配列番号46)である。
【0127】
PCR反応体系は表10に示すとおりである。
【0128】
【0129】
PCR反応プロセス:98°Cで、2min--30回の循環(各循環は98°Cで、10s--50°Cで、20s--72°Cで、40s)--72°Cで、5min--16°C。
【0130】
PCR増幅産物をpEASY-T5 Zero Cloningベクターに連結し、TOP10コンピテント細胞に形質転換して、LBプレート(アンピシリン抗性)に塗り、クローンを選択してコロニーPCRを行った。陽性クローンをシークエンシングのために送り、シークエンシング結果から分かるように、IghMホモ接合型マウスに発現されたIgM抗体重鎖可変領域FR4はCH2(開始アミノ酸配列AVAEMN)に直接連結され、結果は
図12に示すとおりであり、ゲノムIgM CH1のエクソンのノックアウトに成功した。
【0131】
実施例11、IghM-3G3ホモ接合型マウスの製造
IghM-3G3マウスホモ接合型の製造方法であって、当該方法は、下記のステップを含む。
(1)核酸分子の取得
C57BL/6マウスの抗体重鎖可変領域及び定常領域の遺伝子部位の模式図は
図1に示すとおりであり、
図13に示すような標的決定戦略を設計して、実施例9で取得したIghMホモ接合型マウスを基に、Ighg3遺伝子、Ighg1遺伝子、Ighg2b遺伝子、及びIghg2c遺伝子上に位置する1個目エクソンをさらにノックアウトした。
【0132】
マウスのIghm上のCH1ドメインをコードする第1エクソン、Ighg3、Ighg1、Ighg2b遺伝子、及びIghg2c上のCH1ドメインをコードする1個目エクソンをノックアウトするために、発明者は、IghMホモ接合型マウスを基に、マウスIghg3遺伝子の1個目エクソンの上流からsgRNAの標的配列(配列番号7、配列番号8)を選択し、マウスのIghg2c遺伝子の1個目エクソン下流からsgRNA標的配列(配列番号3、配列番号4)を選択して、標的配列に応じてsgRNA配列を設計し、具体的には、表11に示すとおりである。
【0133】
【0134】
(2)核酸分子を骨格プラスミドに構築して、インビトロ転写でRNAを得た。
合成したsgRNA配列の正方向及び逆方向のDNA oligoをアニーリングにより相補的な二本鎖に形成し、T4リガーゼでsgRNA発現ベクター(px330)に連結し、連結した後、シークエンシング専門会社によりシークエンシングして検証し、結果は、目的のプラスミドを取得したことを表し、さらにインビトロ転写によりsgRNAを取得した。
【0135】
(3)宿主動物の受精卵に前記sgRNA及びCas9タンパク質を導入した。
マウスの排卵を誘発し、インビトロ受精を行い、受精卵をインキュベートし、その後、sgRNAとCas9タンパク質とを混合し、マウスの受精卵を電気トランスフェクションする方法又は微量注射する方法でCas9タンパク質(又はCas9 mRNA、市場で購入可能)をsgRNAと一緒にマウスの受精卵に注射した。
【0136】
(4)上記のsgRNA及びCas9タンパク質を含有する細胞を宿主動物体内に植え込んだ。
上記の受精卵細胞を代理母マウスの体内に組み込んで、F0世代キメラマウスを製造できた。マウスの尾からのゲノムDNAの抽出及びPCR検出により、F0世代マウスのうちノックアウトを受けた個体を検出した。遺伝子ノックアウトマウスに対してシークエンシングを行い、標的配列が削除されたことを確認した。遺伝子が正確にノックアウトされたF0世代キメラマウスを選別して、後続の繁殖及び同定に使用した。
【0137】
PCR用プライマーIghg-1F及びIghg-1Rで、ノックアウト遺伝子を検出でき、プライマーIghg-2R及びIghg-1Fで、野生型遺伝子(
図13の矢印)を検出できる。プライマーの配列は、表12に示すとおりである。
【0138】
【0139】
PCRにより、IghM-3G3マウスに対して遺伝子型同定を行い(
図14)、Ighm遺伝子型のプライマーIghm-F及びIghm-Rを用いる同定:Ighm野生型遺伝子を増幅すると約600bpの目的の産物を取得できるため、ノックアウト遺伝子を増幅すると約300bpの目的の産物を取得できる。Ighg遺伝子型のプライマーIghg-1F、Ighg-1R及びIghg-2Rを用いる同定:Ighgノックアウト遺伝子を、プライマーIghg-1F及びIghg-2R用いて増幅することで約500bpの目的の産物を取得でき、プライマーIghg-1F及びIghg-1Rを用いて増幅することでバンドを取得することができず、Ighg野生型遺伝子をプライマーIghg-1F及びIghg-2Rで増幅することでバンドを取得できず、プライマーIghg-1F及びIghg-1Rで増幅することで約460bpの目的の産物を取得できる。+/-:ヘテロ接合体、wt:野生型、-/-:ノックアウトホモ接合体である。
【0140】
(5)ヘテロ接合、ホモ接合の遺伝子ノックアウトマウスの繁殖
標的遺伝子がノックアウトされたF0世代マウスと野生型マウスとを交尾させてF1世代マウスを取得し、マウスの尾からのゲノムの抽出及びPCR検出により、安定的に遺伝できる遺伝子ノックアウト陽性F1世代ヘテロ接合体マウスを選別した。続いて、F1世代ヘテロ接合体マウスを互いに交尾させると、遺伝子ノックアウト陽性F2世代ホモ接合体マウス、即ちIghM-3G3ホモ接合型マウスを取得できた。取得したF1世代ヘテロ接合又はF2世代ホモ接マウスに対して遺伝子型同定を行う方法は、ステップ4と同じである。
【0141】
実施例12、IghM-3G3ホモ接合型マウスの抗原免疫反応及び力価検出
ヒトC反応性タンパク質(CRP)を用いてIghM-3G3ホモ接合型マウスを免疫させた。
【0142】
免疫方法は次のとおりである。6~8週齢の雄マウスを選択して、抗原ヒトC反応性タンパク質(CRP、A-5172、佰橋瑞景)に等量の完全フロイントアジュバント(F5881、Sigma)を加え、水を滴下して融解しない状態に乳化すると、マウスへの初回免疫皮下多点注射に使用するものにすることができ、初回免疫注射量は100μg/匹マウスであり、初回免疫後、2週間毎に後続の皮下免疫を行い、CRP抗原に等量のフロイント不完全アジュバント(F5506、Sigma)を加えて乳化した後、マウスに皮下多点注射を行い、毎回の注射量は100μg/匹マウスである。
【0143】
血清力価の検出
血清力価の検出方法は次のとおりである。CRP抗原を2μg/mLに希釈し、100μlを取ってポリスチレン酵素結合検出プレートに入れてからプレートをコーティングし、HRP-ヤギ抗マウスIgG-Fc(Jackson、115-035-071)を用いて血清中でCRP抗原と特異的に結合する特異性IgG抗体を検出する。
【0144】
図15に示すように、それぞれ未免疫、1回目の免疫1週間後、3回目の免疫1週間後に採血し、PBSで血清を希釈し、1:500希釈度から始まって倍率希釈を行い、ELISAで検出した血清力価は、未免疫及び1回目免疫のマウス体内には抗原CRPと結合した特異性抗体が発生せず、3回目免疫後のその血清力価は1:32000程度であることを示した。
【0145】
実施例13、IgG2c重鎖抗体遺伝子の調用
CRP抗原でIghM-3G3ホモ接合型マウスを免疫させて、血清力価を検出した後、マウスを安楽死させて脾臓細胞を採集し、Trizol溶解、総RNAの抽出、逆転写によりcDNAを得、下記のようなIgG2cサブ型抗体特異性プライマーを使用して、PCRにより重鎖可変領域及びそれに連結されている重鎖定常領域を増幅した。
MHV1、MHV2、MHV3、MHV4、MHV5、MHV6、MHV7、MHV8、 MHV9、MHV10、MHV11、MHV12、組み合わせB6_IgG2c_CH2 R1の何れは、実施例5を参照し、
PCR反応体系、PCR反応プロセスは実施例5に示すとおりである。
【0146】
取得したPCR増幅産物をpEASY-T5 Zero Cloningベクターに連結し、TOP10のコンピテント細胞を形質転換してLBプレートに塗り、7個のクローンをランダムに選択して、コロニーPCRで陽性に同定されたものをシークエンシングのために送った(
図16Aに示すように、大きさが650bpのバンドが陽性バンドである)。
【0147】
陽性クローンのシークエンシング結果は、IghM-3G3ホモ接合型マウスに生成されたIgG2c抗体重鎖可変領域であるFR4領域はIgG2c Hinge領域(抗体ヒンジ領域)に直接連結され、抗体重鎖の構造がVH-CH1-Hinge-CH2-CH3であり、ここで、VH領域はまた詳細にFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4に分けられ得ることを示し(
図16Bに示すように)、IghM-3G3ホモ接合型マウスに生成されたIgG2c抗体重鎖可変領域であるFR4領域はHinge領域(抗体ヒンジ領域)に直接連結され、IgG2cのCH1エクソンのノックアウトに成功したことを説明する。
【0148】
実施例14、CRP抗原特異性IgG2c重鎖抗体可変領域のファージディスプレイライブラリの構築及びパンニング
上記の実施例13に続き、ファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニングのステップは実施例6と完全に同じであり、表13内のパラメータのみを調整し、パンニングを5回行った後の結果は、表13に示すとおりである。
【0149】
【0150】
パンニングを合計5回行い、表13から分かるように、出力されたファージに有意な濃縮があり、PHAGE-ELISA実験により陽性クローンを選択してシークエンシングと同定のために送り、表14に示すとおりである。
【0151】
【0152】
実施例15、IghM-3G3ホモ接合型マウスの抗原免疫反応及び力価検出
本実施例はコロナウイルスSタンパク質抗原でIghM-3G3ホモ接合型マウスを免疫させた。
【0153】
免疫方法は次のとおりである。6~8週齢の雄マウスを選択して、抗原コロナウイルスSタンパク質(SARS-CoV-2 (2019-nCoV) Spike S1-His Recombinant Protein、40591-V08H、義翹神州)に等量の完全フロイントアジュバント(F5881、Sigma)を加え、水を滴下して融解しない状態に乳化すると、マウスへの初回免疫皮下多点注射に使用するものにすることができ、初回免疫注射量は100μg/匹マウスであり、初回免疫後、2週間毎に後続の皮下免疫を行い、毎回の注射量は、いずれも100μg/匹マウスである。
【0154】
血清力価の検出
血清力価の検出方法は次のとおりである。コロナウイルスSタンパク質抗原を2μg/mLに希釈し、100μLを取ってポリスチレン酵素結合検出プレートに入れてからプレートをコーティングし、HRP-ヤギ抗マウスIgG-Fc(Jackson 115-035-071)を用いて血清中でCRP抗原と特異的に結合する特異性IgG抗体を検出する。
【0155】
それぞれ未免疫、2回目の免疫1週間後、3回目の免疫1週間後及び4回目の免疫1週間後に採血し、PBSで血清を希釈し、1:500希釈度から始まって倍率希釈を行い、ELISAで血清力価を検出し、その結果は
図17に示すとおりであり、
図17は、未免疫マウス体内では、抗原コロナウイルスSタンパク質と結合した特異性抗体が現れず、2回目免疫後のその血清力価は1:64000程度であることを示した。
【0156】
実施例16、IgG2c重鎖抗体遺伝子の調用
上記の実施例15にしたがって、コロナウイルスSタンパク質抗原でIghM-3G3ホモ接合型マウスを免疫させ、血清力価を検出した後、マウスを安楽死させて、その脾臓細胞を採集し、脾臓細胞に対してTrizol溶解、総RNAの抽出、逆転写を行ってcDNAを得、下記のようなIgG2cサブ型抗体特異性プライマーを使用して、PCRにより重鎖可変領域及びそれに連結されている重鎖定常領域を増幅した。
MHV1、MHV2、MHV3、MHV4、MHV5、MHV6、MHV7、MHV8、 MHV9、MHV10、MHV11、MHV12、組み合わせB6_IgG2c_CH2 R1の何れは、実施例5を参照し、
PCR反応体系、PCR反応プロセスは、実施例5に示すとおりである。
【0157】
取得したPCR増幅産物をpEASY-T5 Zero Cloningベクターに連結し、TOP10のコンピテント細胞に形質転換してLBプレートに塗り、23個のクローンをランダムに選択して、コロニーPCRにより陽性と同定されたクローンをシークエンシングのために送る(PCR結果は
図18Aに示すとおりであり、ここで、大きさが650bpのバンドが陽性バンドである)。
【0158】
実施例17、コロナウイルスSタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体可変領域のファージディスプレイライブラリの構築及びパンニング
上記の実施例16に続き、ファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニングのステップは、実施例6と完全に同じであり、パンニングを合計5回行い、毎回の出力されたファージに有意な濃縮があり、PHAGE-ELISA実験により陽性クローンを選択してシークエンシングと同定のために送り、表15に示すとおりである。これらの配列のCDR領域の類似点と相違点を分析し、その結果は
図18Bに示すとおりである。
【0159】
【0160】
シークエンシング配列を分析し、前の5回のパンニングで出現したS-9、S-19、S-27及びS-47(表15に示すようなアミノ酸配列)を選択してBL21大腸菌にトランスフェクションし、30℃で、異なる濃度のIPTGを加えて、原核での発現を誘導し、超音波破砕により上清液を採集して、ニッケル親和性カラム精製を行った。
【0161】
特異性抗原コロナウイルスSタンパク質及び無関係のタンパク質OVA(2μg/mL)をコーティングし、精製した後のS-9、S-19、S-27及びS-47抗体を段階希釈して、ELISA法で検出し、結果は、今回調用した重鎖抗体可変領域は抗原コロナウイルスSタンパク質を特異性識別し且つそれと結合しることができ、良い濃度依存性を表し、
図19に示すとおりである。
【0162】
実施例18、IghM-DG1ホモ接合型マウスの抗原免疫反応及び力価検出
本実施例では、コロナウイルスSタンパク質抗原を用いてIghM-DG1ホモ接合型マウスを免疫させた。
【0163】
マウスの抗原免疫操作及び血清力価検出のステップは、実施例15と完全に同じであり、その血清力価の検出結果は
図20Aに示すとおりであり、ファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニングのステップは、実施例6と完全に同じであり、パンニングを合計5回行い、毎回の出力されたファージに有意な濃縮があり、PHAGE-ELISA実験により陽性クローンを選択してシークエンシングと同定のために送り、表16に示すとおりである。そして、これらの配列のCDR領域の類似点と相違点を分析し、その結果は
図20Bに示すとおりである。
【0164】
【0165】
シークエンシング配列を分析し、前の5回のパンニングで出現したS-1、S-2、S-7、S-12、S-17、S19及びS-65抗体(表16に示すようなアミノ酸配列)のDNA配列を選択してPET28ベクターにクローンして、BL21大腸菌にトランスフェクションし、16℃で、異なる濃度のIPTGを加えて原核での発現を誘導し、超音波破砕を経て上清を採取し、ニッケル親和性カラム精製を行った。
【0166】
特異性抗原コロナウイルスSタンパク質及び無関係のタンパク質OVA(2μg/mL)をコーティングし、精製した後のS-1、S-7、S-12、S-17、S19、S-25、S-51及びS-65抗体を段階希釈して、ELISA法により検出し、結果は、今回調用した重鎖抗体可変領域は抗原コロナウイルスSタンパク質を特異性識別し且つそれと結合することができ、良い濃度依存性を表すことを示し、
図21に示すとおりである。
【0167】
実施例19、IgG2c重鎖抗体遺伝子の調用
本実施例では、コロナウイルスNタンパク質抗原を用いてMDG1ホモ接合型マウスを免疫させた。
【0168】
免疫方法及び血清力価の検出方法は、実施例15と完全に同じであり、免疫後の血清力価の検出結果は
図22Aに示すとおりである。本実施例に使用される抗原はコロナウイルスNタンパク質(SARS-CoV-2 (2019-nCoV) Nucleocapsid-His recombinant Protein、40588-V08B-B、義翹神州)である。
【0169】
ファージディスプレイライブラリの構築及び抗体パンニングのステップは実施例6と完全に同じであり、パンニングを合計5回行い、毎回の出力されたファージに有意な濃縮があり、PHAGE-ELISA実験により陽性クローンを選択してシークエンシングと同定のために送り、表17に示すとおりである。そして、これらの配列のCDR領域の類似点と相違点を分析し、
図22Bに示すとおりである。
【0170】
【0171】
陽性クローンのDNA配列をPET28ベクターにクローンし、BL21細菌に形質転換して、発現を誘導し、その後、ニッケルカラムで目的のタンパク質を精製し、ELISA法により抗体の特異性及び結合力を検出し、その結果は
図23に示すとおりであり、
図23の結果は、今回調用した重鎖抗体可変領域は抗原コロナウイルスSタンパク質を特異性識別し且つそれと結合することができ、良い濃度依存性を表すことを示す。
【0172】
実施例20、両遺伝子型マウスにおける各免疫グロブリン遺伝子の転写レベルの差を蛍光定量PCRで検出する
MDG1マウス及び野生型マウスの脾臓からRNAを抽出して、cDNAに逆転写し、cDNAを5倍希釈した後に5μLを取って蛍光定量PCR実験を行い、各遺伝子型から4匹の個体を選択し、各個体の各遺伝子に対して2つの技術を繰り返して行い、実験に使用されたプライマー及び増幅断片の長さは表18に示すとおりであり、蛍光定量PCR増幅体系は、表19に示すとおりである。
【0173】
【0174】
【0175】
増幅プロセス:
溶解曲線
65℃:1min
0.11℃/sの速度で95℃まで継続的に昇温
【0176】
プロセスが終了した後、溶解曲線に応じて数値の信頼度を判断し、その後、2
-ΔΔCt方法を用いて各免疫グロブリン遺伝子の転写産物の相対的な発現レベルを計算し、2尾T検定を利用して統計学的分析を行い、統計的結果は
図24、
図25及び
図26に示すとおりであり、これらの結果から分かるように、MDG1マウスは野生型マウスと比較して、骨髄、脾臓及び小腸中のμ遺伝子の転写産物の発現量が低く、γ2c遺伝子の転写産物の発現量が高く、且つ、MDG1マウスの3つの免疫組織におけるγ2c遺伝子の転写産物の発現量は、いずれも野生型マウスにおけるμ遺伝子の転写産物の発現量より高く、両遺伝子型マウスでは、α遺伝子の転写産物の発現量の統計学的差が見られなかった。
【0177】
実施例21、MDG1マウスの血清におけるIgG2cの発現パターンをWestern Blotで検出する
同じ遺伝的背景下で、8週齢の野生型マウス及びMDG1マウスの血清を採集してWestern Blot検出を行い、野生型マウスの血清をPBSで20倍希釈し、MDG1マウスの血清をPBSで100倍希釈し、還元条件で1mMのDTTを使用して分子内のジスルフィド結合を開き、Goat Anti-Mouse IgG2c heavy chain (HRP)抗体を10000倍希釈した。Western Blotの検出結果は
図27に示すとおりであり、
図27から分かるように、MDG1マウス血清におけるIgG2cの還元条件での分子量の大きさは約45kDaであり、非還元条件での分子量の大きさは約95kDaであり、CH1ドメイン及び軽鎖欠失の分子量の大きさに一致した。
【0178】
実施例22、MDG1マウスの血清におけるIgG2cの発現量をELISAで検出する
同じ遺伝的背景下で、8週齢の野生型マウス及びMDG1マウスの血清を採集して、二重抗体サンドイッチ法ELISAを使用して検出する。野生型マウスのIgMを2000倍希釈し、IgG2cを4000倍希釈し、IgGを10000倍希釈し、IgAを5000倍希釈し、IgEを20倍希釈し、MDG1マウスのIgMを2000倍希釈し、IgG2cを8000倍希釈し、IgGを10000倍希釈し、IgAを5000倍希釈し、IgEを20倍希釈した。マイクロプレートリーダーを使用して各サンプルウェルの450nmでの吸光値を読み取り、ELISA Calcを使用して、4つのパラメータのフィッティングに応じて検量線を得、各ウェルの免疫グロブリンの含有量を計算し、2尾T検定を用いて統計的分析を行った。
【0179】
結果は、
図28に示すとおりであり、
図28から分かるように、MDG1マウスの血清ではIgMが確かに発現されず、そのIgG2cの発現レベルは野生型マウスよりも有意に高く、野生型マウスにおけるIgMの発現レベルに相当し、野生型マウスには他のIgGサブ型が存在するため、その血清における総IgGの発現レベルはMDG1マウスよりも有意に高く、MDG1マウスの血清におけるIgEの発現レベルは野生型マウスよりも有意に低く、野生型マウスと比較して、IgAの発現レベルの統計学的差が見られなかった。
【0180】
実施例23、MDG1マウスの骨髄、脾臓及び腹膜腔B細胞の発育をフローサイトメトリーで検出する
骨髄B細胞:
同じ遺伝的背景下で、8週齢の野生型マウス及びMDG1マウスを6匹ずつ準備し、その下肢の2本の大腿骨及び脛骨を取って、FACSを用いて骨髄細胞を遠心分離管に入れ、短時間遠心分離した後、ACKを使用して再懸濁させ、70μmのろ過網で細胞懸濁液をろ過し、遠心分離した後に上清を捨て、1mLのFACSを加えて細胞を再懸濁させ、それから50μLの細胞を取って染色に使用し、10μLの細胞を取って40倍希釈してカウントし、骨髄B細胞の染色プロトコルは、表20に示すとおりである。
【0181】
脾臓B細胞:
同じ遺伝的背景下で、8週齢の野生型マウス及びMDG1マウスを4匹ずつ準備し、70μmろ過網を60mm皿に置き、1mLのACKを加え、その脾臓をろ過網上に置いて軽くすり、すりつぶした後の細胞懸濁液を収集して、短時間遠心分離した後、上清を捨て、1mLのFACSを加えて細胞を再懸濁させ、それから50μLの細胞を取って染色に使用し、10μLの細胞を取って40倍希釈してカウントし、脾臓B細胞の染色プロトコルは、表20に示すとおりである。
【0182】
腹膜腔B細胞:
同じ遺伝的背景下で、8週齢の野生型マウス及びMDG1マウスを7匹ずつ準備し、それの腹部を上向きにフォームボード上に固定し、腹部の表皮を切り開いて腹膜部分を露出させ、注射器で5mLのFACSを吸い取って腹膜腔に注入し、ピペットを使用して吹き吸いを2~3回行った後、細胞懸濁液を遠心分離管に収集し、短時間遠心分離した後、ACKを使用して再懸濁させ、70μmのろ過網で細胞懸濁液をろ過し、遠心分離した後に上清を捨て、200μLのFACSを加えて細胞を再懸濁させ、それから100μLの細胞を取って染色に使用し、腹膜腔B細胞の染色プロトコルは、表20に示すとおりである。
【0183】
【0184】
骨髄におけるB細胞のフローサイトメトリー結果は
図29に示すとおりであり、
図29結果は、次のことを示す。即ち、MDG1マウスは野生型マウスと比較して、骨髄におけるB細胞の比率及び数の統計学的差が見られず、pro-B細胞及びpre-B細胞の比率の統計学的差が見られなかったが、数が有意に低下し、IgMは成熟B細胞において高発現し、未熟B細胞において低発現し、MDG1マウスにはIgMを発現するμ遺伝子が欠失しているため、その体内での未熟B細胞及び成熟B細胞の発育状況を確認できないが、MDG1マウスにはIgG2c+B細胞が大量存在するため、このB細胞群の野生型マウスにおける比率が極めて低い。
【0185】
脾臓中のB細胞のフローサイトメトリー結果は
図30に示すとおりであり、
図30結果は、次のことを示す。即ち、MDG1マウスは野生型マウスと比較して、脾臓におけるB細胞の比率が有意に低いが、数の統計学的差が見られず、MDG1マウスの脾臓におけるIgG2c+B細胞の比率及び数は、野生型マウスにおけるIgM+B細胞の比率及び数より有意に高く、これは、野生型マウスのIgMが他の免疫グロブリンサブ型にクラススイッチして、組み換えられることが原因である可能性があり、今回のフローサイトメトリー実験に選択されたのは、未免疫刺激状態でのマウスであるため、野生型マウス及びMDG1マウスの脾臓内の形質細胞の比率及び数は両方とも低く、且つ、統計学的差が見られず、MDG1マウスの脾臓における濾胞B細胞、移行期B細胞及び辺縁B細胞の比率及び数は、野生型マウスと比較して、統計学的差が見られなかった。
【0186】
腹膜腔におけるB細胞のフローサイトメトリー結果は、
図31に示すとおりであり、
図31結果は、次のことを示す。即ち、MDG1マウスは野生型マウスと比較して、腹膜腔におけるB細胞の比率が有意に高く、MDG1マウス中で、IgM+B1a細胞の比率が有意に低下し、B1b及びB2細胞の比率が有意に向上した。
【0187】
実施例24、特定の抗原を使用して野生型マウス及びMDG1マウスに対して免疫刺激を行った
同じ遺伝的背景下で、6週齢の野生型マウス及びMDG1マウスを6~7匹ずつ準備し、BSAを接合するクロラムフェニコール及びアトラジンを使用して免疫実験を行い、マウス1匹あたり、毎回100μg/100μLで免疫した。初回免疫では、完全フロイントアジュバントを使用し、背部に50μL皮下注射し、腹腔に50μL注射し、免疫強化では、フロイント不完全アジュバントを使用し、腹腔に100μL注射し、免疫強化を合計4回行い、初回免疫の3日前、毎回の免疫強化の3日後に内眼角採血を行った。
【0188】
実施例25、免疫刺激後のマウス血清における抗原特異性抗体の相対的な発現量の変化傾向をELISAで検出する
上記の実施例24に続き、免疫刺激後の血清に大量存在するBSA特異性の抗体が検出結果を干渉することを回避するために、今回のELISA実験では、OVAを接合するクロラムフェニコール及びアトラジンをコーティング抗原として使用し、抗原コーティング量は200ng/100μL/ウェルであり、抗原特異性IgM、IgG2c、IgG及びIgAの検出中、血清の希釈倍数は4000倍であり、IgEの検出中、血清の希釈倍数は100倍であり、各サンプルウェルの一致性を保証するために、TMB発色液を加えた後、反応時間を20minに厳格に制御し、その後、マイクロプレートリーダーを利用して450nmでの吸光値を読み取り、免疫反応が発生しなかった個体を除き、抗原特異性抗体の相対的な発現量の変化傾向図をプロットした。
【0189】
クロラムフェニコール及びアトラジン特異性抗体の相対的な発現量の変化は、それぞれ
図32及び
図33に示すとおりであり、その結果は、次のことを示す。即ち、免疫応答の全体状況から見ると、クロラムフェニコールがアトラジンより免疫効果が優れている。MDG1マウスにおける抗原特異性IgG2cの変化傾向が野生型マウスにおけるIgG2cの変化傾向に類似し、野生型マウス中で継続的に低いレベルで発現するIgMと異なり、野生型マウスに他のIgGサブ型が存在するため、野生型マウス中の抗原特異性総IgGの含有量は、MDG1マウスより高く、また、MDG1マウス中の抗原特異性IgA及びIgEの相対的な発現量は、野生型マウスよりやや高い。
【0190】
実施例26、抗原免疫後、脾臓の胚芽中心B細胞及び形質細胞の発育の検出
抗原免疫後の野生型マウス及びMDG1マウスを6匹ずつ取り、70μmのろ過網を60mm皿に置き、1mLのACKを加え、その脾臓を取ってろ過網上に置いて軽くすり、すりつぶした後の細胞懸濁液を収集して、短時間遠心分離した後、上清を捨て、1mLのFACSを加えて細胞を再懸濁させ、それから20μLの細胞を取って染色に使用し、10μLの細胞を取って80倍希釈してカウントし、免疫後の脾臓B細胞の染色プロトコルは、表21に示すとおりである。
【0191】
【0192】
抗原免疫後のマウスの脾臓B細胞、胚芽中心B細胞及び形質細胞の発育状況は、
図34に示すとおりであり、
図34結果は、次のことを示す。即ち、MDG1マウスは野生型マウスと比較して、免疫後の脾臓B細胞の比率が有意に低いが、数の統計学的差が見られなかった。MDG1マウスは野生型マウスと比較して、胚芽中心B細胞の比率及び数は両方とも有意に低く、IgG2c+GC Bの比率が有意に高く、数の統計学的差が見られなかった。抗原免疫後のMDG1マウス及び野生型マウスにおいて、形質細胞及びIgG2c+形質細胞の比率及び数は、両方とも統計学的差が見られなかった。
【0193】
最後に説明すべきことは、以上の実施例は、本願の技術案を説明するために使用されるだけで、それを制限するものではない。前述の実施例を参照して、本願を詳細に説明したが、当業者であれば、前述の各実施例に記載の技術案を修正するか、又はそのうちの一部の技術的特徴を同等置換することができ、これらの修正や置換により、該当する技術案の本質が本願の実施例技術案の精神及び範囲から逸脱することはないことを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本願の非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法を用いて取得した非ヒト哺乳動物又はその子孫は、いずれの抗体重鎖可変領域及び定常領域をコードする外来遺伝子を導入せず、それ自体のゲノム中の抗体重鎖可変領域をコードするすべてのVDJ遺伝子を直接利用することにより、重鎖可変領域の再配列により多様性がよりよい重鎖抗体を生成することができる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップと、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップと、を含む、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法。
【請求項2】
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップは、
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域のCH1ドメインのみが発現されないか又は正確に発現されないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域が発現されないか又は正確に発現されないようにするステップ、及び/又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップは、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域のCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域のCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域のCH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを正確に発現するようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域のCH1ドメインを正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする2個目又は3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ、2つ又は3つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目及び2個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域のCH1ドメインを正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする3個目又は4個目の遺伝子のうちの1つ又は2つが、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする1個目、2個目及び3個目の遺伝子が、発現される際に、それによりコードされたIgG重鎖定常領域のCH1ドメインを正確に発現するようにし、且つ、非ヒト哺乳動物の体内でIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子が、発現される際に、CH1ドメインを発現しないか又は正確に発現しないようにするステップであり、
好ましくは、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、
さらに好ましくは、非ヒト哺乳動物がC57BL/6マウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2cであり、
さらに好ましくは、非ヒト哺乳動物がBALB/cマウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2aである、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
IgG重鎖定常領域をコードする1つ、2つ、3つ、4つ又は4つ以上の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む目標遺伝子をノックアウトするステップと、を含み、
上記ステップを同じ操作ステップで完了するか、又は異なる操作ステップで完了する、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法。
【請求項4】
前記非ヒト哺乳動物のゲノムにはκ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、
選択可能に、非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列をノックアウトするステップは、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のみをノックアウトするステップ、又は、
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップであり、
選択可能に、前記目標遺伝子は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする最後の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子からIgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列のすべてのヌクレオチド配列、又は、
IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列であり、
好ましくは、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、
さらに好ましくは、非ヒト哺乳動物がC57BL/6マウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2cであり、
さらに好ましくは、非ヒト哺乳動物がBALB/cマウスである場合、IgG重鎖定常領域をコードする1個目の遺伝子はIghg3であり、IgG重鎖定常領域をコードする2個目の遺伝子はIghg1であり、IgG重鎖定常領域をコードする3個目の遺伝子はIghg2bであり、IgG重鎖定常領域をコードする4個目の遺伝子はIghg2aである、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
C57BL/6マウス又はその子孫の製造方法であって、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、抗体IgM重鎖定常領域及びIgD重鎖定常領域をコードする遺伝子をノックアウトするステップと、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、を含む、
ことを特徴とするC57BL/6マウス又はその子孫の製造方法。
【請求項6】
前記C57BL/6マウスのゲノムには、κ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記C57BL/6マウスがκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができ、
選択可能に、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンからIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンまでのすべてのヌクレオチド配列をノックアウトし、
好ましくは、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAを使用し、さらに好ましくは、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは配列番号11、配列番号12であり、
選択可能に、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
C57BL/6マウス又はその子孫の製造方法であって、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgM重鎖定常領域をコードする遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、
C57BL/6マウスのゲノムのうち、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子からIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子までの遺伝子上の、CH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップと、を含む、
ことを特徴とするC57BL/6マウス又はその子孫の製造方法。
【請求項8】
前記C57BL/6マウスのゲノムには、κ軽鎖及び/又はλ軽鎖をコードする完全な遺伝子を含み、選択可能に、前記C57BL/6マウスがκ軽鎖及び/又はλ軽鎖を正常に発現することができ、
選択可能に、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンをノックアウトし、さらに、マウスの、IgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンからIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソンまでのすべてのヌクレオチド配列をノックアウトし、
好ましくは、遺伝子をノックアウトするステップにおいて、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流及び下流を標的とするsgRNAを使用し、さらに、マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAを使用し、
さらに好ましくは、前記マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、前記マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号13及び配列番号14であり、及び/又は、前記マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号15及び配列番号16であり、及び/又は、前記マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号11及び配列番号12であり、
選択可能に、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号5及び配列番号6を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号7及び配列番号8を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
非ヒト哺乳動物のゲノム上の、IgM重鎖定常領域のCH1ドメインをコードするヌクレオチド配列をノックアウトするステップを含み、
選択可能に、前記非ヒト哺乳動物は齧歯類動物であり、さらに選択可能に、前記齧歯類動物はラット又はマウスであり、より一層選択可能に、前記マウスはC57BL/6マウス又はBALB/cマウスである、
ことを特徴とする非ヒト哺乳動物又はその子孫の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項3又は4に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項5又は6に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫、請求項7又は8に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫の、目標重鎖抗体のスクリーニングにおける使用であって、
選択可能に、目標重鎖抗体のスクリーニングの際に、ファージディスプレイ法を採用し、
好ましくは、前記目標重鎖抗体のスクリーニングは、C反応性タンパク質、コロナウイルスSタンパク質又はコロナウイルスNタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体をスクリーニングすることである、
使用。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項3又は4に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫、請求項5又は6に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫、請求項7又は8に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫を免疫動物として使用してスクリーニングすることを含み、
選択可能に、目標重鎖抗体のスクリーニングの際に、ファージディスプレイ法を採用し、
好ましくは、前記目標重鎖抗体のスクリーニングは、C反応性タンパク質、コロナウイルスSタンパク質又はコロナウイルスNタンパク質抗原特異性IgG2c重鎖抗体をスクリーニングすることである、
ことを特徴とする目標重鎖抗体のスクリーニングの方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、請求項3又は4に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来するか、請求項5又は6に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来するか、請求項7又は8に記載の製造方法で構築したC57BL/6マウス又はその子孫に由来するか、請求項9に記載の製造方法で構築した非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来する、
非ヒト哺乳動物細胞又は細胞株又は初代細胞培養物又は摘出組織又は摘出器官又はその培養物。
【請求項13】
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNA、又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流及び下流を標的とするsgRNA、又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNA、及び、マウスのIgG2cをコードする1番目のエクソン下流を標的とするsgRNA、を含み、
好ましくは、sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号1及び配列番号2を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号3及び配列番号4を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流の標的配列は配列番号5及び配列番号6を含み、及び/又は、
sgRNAが標的とするマウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流の標的配列は配列番号7及び配列番号8を含み、
好ましくは、マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号9及び配列番号10であり、及び/又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号13及び配列番号14であり、及び/又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするsgRNAは、配列番号15及び配列番号16であり、及び/又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするsgRNAは、配列番号11及び配列番号12である、
ことを特徴とするsgRNA組成物。
【請求項14】
sgRNAをコードする1セグメント以上のDNA配列を含み、前記sgRNAの標的配列は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするもの、又は、
マウスのIgG2c重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするもの、又は、
マウスのIgM重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン下流を標的とするもの、又は、
マウスのIgG3重鎖定常領域をコードする遺伝子の1番目のエクソン上流を標的とするものから選択される1つであり、
選択可能に、骨格がsgRNA発現ベクターである、
ことを特徴とするノックアウトベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のノックアウトベクターを含む、
ことを特徴とする細胞。
【国際調査報告】