(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】成分を分析するためのHタイプフィルタデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20230912BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230912BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C12M1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023512312
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 GB2021052172
(87)【国際公開番号】W WO2022038376
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518296506
【氏名又は名称】フルイディック・アナリティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】アスタナ,アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】デルポート,ジーン-ポール
(72)【発明者】
【氏名】デベニシュ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ケニヨン,ハナ
(72)【発明者】
【氏名】ブッツ,マレン
(72)【発明者】
【氏名】デニンガー,ビオラ
(72)【発明者】
【氏名】モーリング,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー,サイモン
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058GA06
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB20
4B029CC01
4B029DC02
4B029DG08
4B029FA15
4B029GA02
(57)【要約】
1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置が提供される。装置は、マイクロ流体デバイスを備える。各マイクロ流体デバイスは、サンプル流体の流れを分配チャネルに導入するためのサンプル入口ポートを有するサンプルチャネルと、補助流体の流れを分配チャネルに導入するための補助入口ポートを有する補助チャネルとを備える。分配チャネルは、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。各マイクロ流体デバイスは、2つ以上の毛細管チャネル、および出口ポートを備える。サンプル入口ポートおよび/または出口ポートは、拡張機構部をさらに含み、拡張機構部は、チャネルに隣接する先細部分およびポートに隣接する湾曲部分を含む。装置は、圧力源と、前記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器とをさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置であって、前記装置は、
1つまたは複数のマイクロ流体デバイスを含み、各デバイスは、
1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネルに導入するためのサンプル入口ポートを有するサンプルチャネルと、
補助流体の流れを第2の流速で前記細長い分配チャネルに導入するための補助入口ポートを有する補助チャネルと、を含み、
前記分配チャネルは、前記サンプル流体の流れから前記補助流体の流れへの前記成分の横方向の分配を可能にするように構成され、
下流に設けられ、前記分配チャネルと流体連通する2つ以上の毛細管チャネルと、
前記毛細管チャネルのそれぞれの下流に設けられた少なくとも1つの出口ポートと、を含み、
前記サンプル入口ポートおよび/または前記出口ポートは、前記チャネルと前記対応するポートとの間に拡張機構部をさらに含み、それにより、前記拡張機構部は、前記チャネルに隣接する先細部分および前記ポートに隣接する湾曲部分を含み、
前記装置は、
前記チャネルを通る前記流体の前記流れを制御するように構成された切り替え可能な圧力源と、
前記マイクロ流体デバイス上の前記毛細管チャネルおよび/または出口ポートのそれぞれにおいて、順次または同時に、前記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器と、
を含む、流体装置。
【請求項2】
前記毛細管チャネルのそれぞれの一部が、蛇行または曲がりくねった構成で配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サンプルチャネルおよび/または補助チャネルのそれぞれの一部が、蛇行構成または曲がりくねった構成で配置される、請求項1から2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記分配チャネルの上流に設けられた第2の検出器をさらに含み、前記第2の検出器は、前記サンプルチャネル内の前記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記チャネルのそれぞれが、100μm以下の最大幅または最大高さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記拡張機構部の前記湾曲部分が、0.05mmと0.4mmとの間の半径を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記サンプル入口ポートおよび/または前記出口ポートのそれぞれの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記補助入口ポートが、前記補助チャネルと前記対応する入口ポートとの間に拡張機構部をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記補助入口ポートが、前記補助入口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記マイクロ流体デバイスが、前記ポート内および/または前記チャネルの前記曲がりくねった部分内に検出位置を特定するように構成された活性位置検出ガイドをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記活性位置検出ガイドは、前記出口ポート内に検出位置を特定するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記活性位置検出ガイドが基準点である、請求項10から11に記載の装置。
【請求項13】
前記チャネルのそれぞれが、サンプルの付着を防ぎ、前記回路の効率的な充填を可能にするように構成されたコーティングを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記チャネルが40μmの最大寸法を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記チャネルが、それらの最大寸法に対して垂直に25μmまでの範囲を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記コーティングが親水性である、請求項13から15に記載の装置。
【請求項17】
前記コーティングが疎水性である、請求項13から15に記載の装置。
【請求項18】
各出口ポートが開放ポートである、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記ポートの前記表面を粗くすることができる、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記検出器が共焦点検出器であり、前記共焦点検出器が、前記ポート内および/または前記曲がりくねった部分内の前記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成される、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するデバイスおよび方法に関し、特に、各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を順次または同時に測定する方法に関する。本発明はまた、チップ上でマイクロ流体回路を開始状態にする際の改善に関し、特に、本発明は、マイクロ流体回路の毛細管充填を最適化して、サンプル測定の精度および/または正確さを改善するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体システムは、流体サンプルの操作、処理、または分析に使用される。分析システムでは、測定は通常、視覚システムまたは吸収/蛍光顕微鏡のいずれかを使用して光学的に実行され、流体が流れているか静止している間に行われる。よく知られている分析マイクロ流体技術は、Hフィルタ構成を使用する拡散サイジングである。
【0003】
拡散サイジングでは、流体が流れている間に測定が継続的に行われる。マイクロ流体拡散サイジング(MDS)は、粒子がマイクロ流体層流内で拡散する程度に基づいて粒子のサイズを測定するために使用される方法である。分子拡散率のミクロンスケール測定は、タンパク質のサイズを定義し、標識ベースと標識フリーの方法の利点を組み合わせた高感度のアプローチであることが示されている。
【0004】
マイクロ流体デバイスの検出領域は、通常、流体チャネルの拡張部で構成される。これは、特定の領域で光学検出に使用できる流体の量を増やし、システムの感度を高めることを目的としている。一般的なマイクロ流体デバイスは、プライミングまたは気泡形成中に空気が閉じ込められやすいことが知られており、精度がないおよび/または不正確な測定につながる。
【0005】
マイクロ流体システムは、携帯性が高く、費用対効果が高く、個別化医療の潜在的な用途を備えた感知プラットフォームに簡単に統合できる。多数のサンプルを処理する機能は、分析ユーザにとって共通の必要な条件である。このスループットの必要な条件に対する解決策は、複数のサンプルを別々のマイクロ流体回路で並行して実行することである。すべての回路を光学的に検出するには、すべての回路を同時に、またはほぼ同時に観察する必要がある。これには、複雑で高価な光学システムが必要である。
【0006】
したがって、製造業者の生産および開発費用を下げるのに役立つ装置および方法を提供する必要がある。特に、測定を行うのに必要な装置の複雑さを軽減する装置および方法を提供することが望ましい。
【0007】
さらに、チップ材料によって引き起こされる背景信号の量を最小限に抑え、所与の光学検出領域で利用可能な検出量を最大にすることによって、光学精度と感度を向上させる適切なチャネル形状を提供することも望ましい。したがって、オペレータがサンプルの光学的検出を実行するための費用効率の高い方法を提供することが求められている。
【0008】
追加的にまたは代替的に、背景信号はサンプル測定に干渉し得、したがって精度がないおよび/または不正確な測定につながり得るため、ユーザは測定中に背景信号を考慮することがよくある。例えば、マイクロ流体デバイス内の信号対背景ノイズ比が高いと、サンプルのサンプル測定値が歪められ、サンプルの検出または分析が、精度がないおよび/または不正確になり得る。
【0009】
現在の手順では、サンプル流体の流れとブランクの流体の流れを、Hフィルタ構成を備えたマイクロ流体デバイスに装填することができる。サンプル流体の流れとブランク流体の流れを接触させるマイクロ流体デバイス内に接合部が存在する。例えば、サンプル流体の流れよりも前に補助流体の流れが接合部に到達すると、エアトラップが形成され、したがって、これはマイクロ流体チップを欠陥品にするであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、マイクロ流体デバイス内でサンプルを検出する精度、正確さ、および感度を向上させるために、サンプル測定中に背景信号を考慮する適切な方法および装置を提供することが望ましい。したがって、オペレータが流体をマイクロ流体デバイスに装填し、サンプル測定値から背景信号を減算または除去するための解決策を提供する必要がある。
【0011】
さらに、マイクロ流体回路のチャネル内で気泡が形成されるリスクを回避または低減する流体でマイクロ流体回路またはデバイスを充填するための適切な方法および装置を提供することも望ましい。
【0012】
このような背景に直面して本発明は生じた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定する流体装置が提供される。装置は、1つまたは複数のマイクロ流体デバイスを備える。各マイクロ流体デバイスは、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネルに導入するためのサンプル入口ポートを有するサンプルチャネルと、補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネルに導入するための補助入口ポートを有する補助チャネルを備える。分配チャネルは、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。各マイクロ流体デバイスはさらに、分配チャネルの下流に設けられ、分配チャネルと流体連通する2つ以上の毛細管チャネル、および毛細管チャネルのそれぞれの下流に設けられる少なくとも1つの出口ポートを備える。サンプル入口ポートおよび/または出口ポートは、チャネルと対応するポートとの間に拡張機構部をさらに含み、それにより、拡張機構部は、チャネルに隣接する先細部分およびポートに隣接する湾曲部分を含む。装置は、チャネルを通る流体の流れを制御するように構成された切り替え可能な圧力源と、マイクロ流体デバイス上の毛細管チャネルおよび/または出口ポートのそれぞれにおいて、順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器とをさらに備える。
【0014】
装置は、複数のマイクロ流体デバイスを含む実施形態では、各マイクロ流体デバイスのいくつかの態様を組み合わせることができる。例えば、各デバイスからの補助チャネルは、装置全体に供給する単一の補助チャネルから生じ得る。さらに、マイクロ流体デバイスの毛細管チャネルは、そのデバイスの単一の出口ポートで組み合わせることができる。追加的にまたは代替的に、出口ポートは、同じ装置内の複数のデバイス間で共通であってもよい。これは、検出器がポートではなく毛細管チャネルおよび/または検出チャンバで検出する実施形態にのみ適用可能である。単一の真空源を装置に接続することができ、これは、すべてのデバイスに単一の出口ポートが設けられている場合、より簡単に達成される。
【0015】
拡張機構部は、サンプルと補助流体の流れを気泡なしで一緒にするように設計されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、装置は、サンプル入口ポートおよび/または出口ポートのそれぞれの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドをさらに備えることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、補助入口ポートは、補助チャネルと対応する入口ポートとの間に拡張機構部をさらに備えることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、補助入口ポートは、補助入口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを含むことができる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置が提供され、装置は、複数のマイクロ流体デバイスを含み、各デバイスは、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネルに導入するためのサンプル入口ポートを有するサンプルチャネルと、補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネルに導入するための補助入口ポートを有する補助チャネルと、を含み、分配チャネルは、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成され、下流に設けられ、分配チャネルと流体連通する2つ以上の毛細管チャネルと、毛細管チャネルのそれぞれの終点に設けられた出口ポートと、チャネルを通る流体の流れを制御するように構成された切り替え可能な圧力源と、マイクロ流体デバイスの毛細管チャネルおよび/または出口ポートのそれぞれにおいて、順次または同時に上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器と、を含む。
【0020】
本発明の別の態様によれば、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定する方法が提供される。この方法は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを細長い分配チャネルに第1の流速で導入するステップと、第2の流速で補助流体の流れを分配チャネルに導入するステップと、分配チャネル内で、定常状態分配に達するまで、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を提供するステップと、定常状態の流体の流れの少なくとも一部を分配チャネルの下流の2つ以上の毛細管チャネルに分離するステップと、定常状態分配に達した後、所定の時間に流体の流れを停止するステップと、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するステップを含むことができる。
【0021】
本発明は、主に拡散サイジングを使用して流体中のサンプルを分析する方法およびデバイスを提供するが、他の技術も適用可能である。サンプルは、血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、脳脊髄液サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、喀痰サンプル、または任意の他の水性サンプルであり得る。
【0022】
この方法は、1つまたは複数のHフィルタと、後で分析を実行できるように流れを停止できる流体制御システムとを備えるデバイスで実行される。これは、オペレータがサンプルの光学的検出を実行するための費用効率の高い方法を提供するため、有利である。さらに、本発明の装置および方法は、製造業者の生産および開発費用の削減にも役立ち得る。この方法はまた、測定が連続して行われるため、測定を行うために必要な装置の複雑さを軽減する。本発明の方法は、各Hフィルタからの各毛細管流に順次対処する1つまたは複数の光学システムによってすべてのHフィルタがアクセスされるように、複数のHフィルタをチップ上に取り付けることを可能にする。
【0023】
いくつかの実施形態では、装置は、生体分子がタンパク質、ペプチド、エキソソーム、抗体またはその抗体断片、DNAまたはDNA片、RNAまたはmRNAなどのヌクレオチド、タンパク質リンカーなどのタンパク質結合分子、多糖類、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチドである生体分子などの成分を特徴付けるために使用することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、同種抗体、自己抗体、または外部抗原に対して産生された抗体である。この文脈における「同種抗体」という用語は、臓器移植の分野において、HLAなどの外来分子を認識する抗体を指すために使用される。
【0024】
いくつかの実施形態では、生体分子は多生体分子混合物である。いくつかの実施形態では、生体分子は、抗体、単一ドメイン抗体、またはアプタマーなどの親和性試薬であってもよい。いくつかの実施形態では、多生体分子混合物は、抗体および抗原を含む。いくつかの実施形態では、多生体分子混合物中の1つの生体分子を標識することができ、または少なくとも2つ以上の生体分子を標識することができる。いくつかの実施形態では、目的の他の生体分子を検出するために、抗体または他の親和性試薬を標識することができる。標識は、蛍光標識または潜在的標識であり得る。場合によっては、例えば目的の抗体がサンプル中の他の抗体と混合されている場合、抗原が標識されていることが好ましい場合がある。
【0025】
本明細書の文脈において、「流体の流れを止める」という用語は、分配チャネルおよび毛細管チャネルを含むすべてのチャネルを通る流速が実質的にゼロであることを意味する。これは、デバイスの任意のチャネルを通る大量の流体の流れが本質的にないことを意味する。一実施形態では、これは、入口ポートと出口ポートとの間の任意の外部から加えられた圧力差を取り除くことによって達成される。行われている検出に応じて、1時間あたり1~100nlの範囲の非常に低いレベルの移動が依然として発生し得、検出量と比較して無視でき得る。成分の横方向の分配は、分配チャネルで継続し得る。例えば、拡散は依然として継続し得るが、定常状態の流体の流れは分配チャネルの端で分割されているため、下流の各毛細管チャネルの濃度は一定のままである。流体の流れが「停止」するためには、バルクの流れは、拡散から横方向に生じる変化よりも一桁小さくなければならない。
【0026】
サンプルの分析が分配チャネルの端をはるかに超えた位置で実行できるように、分配チャネルの下流に毛細管チャネルが提供される。毛細管チャネル内のサンプルの分析は、検出ステップが成分の横方向の分配または流れの停止時に分配チャネル内で継続し得る分離ステップによって妨げられないので有利である。成分の生物物理学的特性は、この方法を実行するために標識が必要ないため、天然の状態で測定できる。
【0027】
一例として、成分の拡散率は毛細管チャネル内で分析することができる。分配チャネルの端をはるかに超えた毛細管チャネル内の成分の拡散特性を分析することにより、ユーザは、拡散プロセスが検出に影響を与えないため、測定がより正確になることを知ることができる。
【0028】
次の5つの検出方法が考えられる:成分の分離後標識(これは、分配チャネルを超えて検出領域の前に色素の添加が必要な場合がある);1つまたは複数の成分の固有蛍光を検出する;1つまたは複数の成分の吸収を検出する;1つまたは複数の成分の散乱量を検出する;分離前にサンプルを色素で事前に標識する。
【0029】
1つまたは複数の成分の固有(または内部)蛍光が検出される場合、方法は、例えば、天然タンパク質上のトリプトファンなどの芳香族残基の蛍光を検出することを含み得る。検出されるのは天然タンパク質の蛍光であるため、このアプローチでは標識は必要ない。
【0030】
追加的または代替的に、サンプルを色素で事前標識する、すなわちサンプルの分離前に行うことができる。事前標識の利点は、通常、固有の蛍光または吸収測定と比較して、より感度の高い検出が可能になることである。さらに、分析は溶液中で実行できるため、事前標識はこれらの方法のいずれにも適用できる。溶液内測定の実行は、変性ゲルや表面での分析よりも生物学的条件をよりよく表している。
【0031】
毛細管チャネル内での検出は、分配チャネルの端をはるかに超えて、例えばリザーバー内で行うことができ、より大きな検出量を収集できるため、目的の成分を検出する感度を高めることができる。
【0032】
この方法を使用して、少なくとも1つの成分の複数の開始/停止分析を実行できる。これは、タイムラプス実験を実行できるため、有利である。特に、これにより、凝集研究や遅い相互作用、アセンブリまたは解離プロセスの調査など、長時間にわたるタンパク質のサイズの監視が可能になり得る。
【0033】
流体の流れの停止は、アッセイの開始からの任意の所定の時間に発生し得、停止は10秒から5時間の間の持続時間を有することができる。いくつかの実施形態では、流体の流れを停止することは、10秒、30秒間発生し得、または1分、2分、4分、5分、7分、または10分間発生し得る。小さな(0.5nm)分子のチャネルまたはチャンバ検出を行う場合、流体の流れを停止するのに10秒程度かかり得る。追加的にまたは代替的に、より大きな分子(30nm)(より遅い流速)を大量に収集するために検出チャンバ(ポート検出)を適切に行っている場合、所定の時間で流体の流れを停止するのに最大5分であり得る。追加的にまたは代替的に、所定の時間で流体の流れを停止することは、凝集反応などの遅いプロセスに従うために、最大5時間であり得る。
【0034】
本発明で開示されるように、特に明記しない限り、「ポート」という用語は、マイクロ流体デバイスに外部からアクセスできる位置を指す。言い換えれば、ポートはチップと周囲の環境との間の界面を提供する。
【0035】
ポートの検出は、様々な理由から普遍的に適切ではなく、その理由としては、気泡の存在、ポート内の濃度勾配の存在、ならびにサンプルの前を流れる不要な物質の存在が検出に及ぼす影響がある。しかし、ポートの形状を慎重に選択することで、これらの問題のいくつかを克服できるため、ポート検出が好ましい検出レジメンになる。ポート検出の使用には、ポート内にかなりの量の流体が存在するため、デバイス自体の材料に由来する背景に対するサンプル信号の比率が増加するという利点がある。つまり、ポートの背景検出は、デバイス内の他の形状の場合の背景検出に比べて低くなり、それは、光学系が遭遇する、デバイスを形成するプラスチックの量が少なくなるからである。
【0036】
デバイスは毛細管現象によって充填され、流れを停止および開始できるように流体の流れが厳密に制御されるため、サンプルに先行する不要な物質の量は既知であり、一定である。その結果、比較的簡単な方法で補正できる検出読み取り値の系統誤差が得られる。さらに、サンプルに先行する不要な物質の量は、nl量など非常に小さい場合があり、検出の読み取り値に大きな影響を与えない場合がある。
【0037】
毛細管充填を容易にするために必要なチャネルサイズは、毛細管充填が不要または予期されない同様の形状と比較して、システム量が非常に小さいものである。これにより、次いで、不要な物質の量が最小限に抑えられ、この物質の寄与が検出信号のより小さな割合になる。
【0038】
停止に入る所定の時間の選択は、所望のアッセイの状態に依存する。アッセイの開始後比較的短時間で停止に入った場合、アッセイは停止時にも進行中である。逆に、アッセイが開始されてからしばらくして停止に入った場合、横方向の拡散が発生し、平衡状態に達した定常状態に達し得る。
【0039】
定常状態の分配は、拡散または電気泳動によって発生し得る。定常状態分配は、流体の流れを横切る成分の分配が一定の速度で起こることを意味するように定義できる。-つまり、定常状態の分配が達成されると、所定の界面(フラックス)を横切る原子(またはモル)の数は、時間とともに一定になる。
【0040】
本明細書の本発明で開示されるように、別段の定義がない限り、「フラックス」という用語は、単位面積当たりの特性の流速と呼ばれる。いくつかの実施形態では、定常状態分配は、一定のフラックスを有する。
【0041】
検出器は、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を直接測定することができ、または、分配の代理測定が必要な場合があり、代理測定から上記または各成分の生物物理学的特性を推測する。
【0042】
いくつかの実施形態では、同時測定は、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルを横切る成分の生物物理学的特性を同時に測定するために、少なくとも2組の検出器を提供することを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、順次測定は、毛細管チャネル内の成分の生物物理学的特性を測定するための検出器を提供し、次いで、別の毛細管チャネル内の成分の生物物理学的特性を測定するために同じ検出器を移動させることを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、サンプル流体の流れおよび補助流体の流れを分配チャネルに流すステップは、分配チャネルにわたる圧力勾配の確立によって誘導される。圧力源(真空または正圧)を設けて、マイクロ流体チップ内へのサンプルおよび補助流体の均一/一定の圧力駆動の流れを誘導することができる。いくつかの実施形態では、圧力源はポンプとすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1の流速と第2の流速は実質的に同じであってもよい。サンプルチャネル内の第1の流速と補助チャネル内の第2の流速は、サンプルの一定の流速を提供するために同じにすることができ、補助流体は分配チャネルを通って流れる。あるいは、サンプルチャネルおよび補助チャネルを通る第1および第2の流速は異なっていてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、毛細管チャネルのそれぞれの一部は、蛇行構成または曲がりくねった構成で配置され得る。密に圧縮された毛細管チャネルにより、感度と信号対ノイズ比が向上する。いくつかの実施形態では、蛇行または曲がりくねった構成は、検出器で成分を検出するために測定を行うことができる流れ面積を増加させる。これは、単一の検出スポットで検出される毛細管チャネルの量を増加させ、したがって、目的の成分を検出する感度を高めることができるため、有利であり得る。
【0047】
さらに、毛細管チャネルの曲がりくねった構成は、チャネル内の気泡を減少または排除するのにも役立ち得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、サンプルチャネルおよび/または補助チャネルのそれぞれの一部は、蛇行構成または曲がりくねった構成で配置される。
【0049】
いくつかの実施形態では、毛細管チャネルの曲がりくねった部分の各セグメントまたは領域間の間隔を最小化することができる。いくつかの実施形態では、毛細管チャネルの曲がりくねった部分のセグメントまたは領域間の間隔は一定であってもよいし、間隔は毛細管チャネルの曲がりくねった領域全体に沿って変化してもよい。いくつかの実施形態では、曲がりくねった部分は、蛇行構成を含む。いくつかの実施形態では、曲がりくねった領域は螺旋構成を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、流体の流れを停止するステップは、解放可能なバルブを使用することによって達成され得る。流量デバイス全体の圧力を平衡化するために、圧力解放バルブを設けることができる。例えば、圧力解放バルブは、サンプルチャネル、補助チャネル、分配チャネル、および/または下流毛細管チャネルを平衡化するために提供され得る。
【0051】
チャネルを通る流体の流れを制御するために、チャネルの「オンチップ」抵抗を提供することができる。いくつかの実施形態では、分配チャネルの下流に提供される抵抗は、分配チャネルから上流に提供される抵抗よりも大きくてもよい。分配チャネルの上流の抵抗と比較して、分配チャネルの下流により大きな抵抗を提供することは、サンプルの付着効果を低減または回避するのに役立ち得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、分配チャネルの上流に提供される抵抗は、分配チャネルから下流に提供される抵抗よりも大きくてもよい。上流の抵抗は、分配チャネル内の流れのバランスを決定する上で支配的な要因になり得る。したがって、下流の抵抗のみを最小限に抑えることができ得る。オンチップ抵抗に必要な小さな形状は製造が難しいため、オンチップ抵抗を最小限に抑えることが重要である。
【0053】
いくつかの実施形態では、サンプルチャネル、補助チャネル、分配チャネル、または2つ以上の下流毛細管チャネルの抵抗は、チャネルの断面積、チャネルの縦横比、チャネルの長さおよび/またはチャネルの表面粗さのうちの1つまたは複数によって決定され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、2つ以上の毛細管チャネルから下流に流体連通する2つ以上のポートをさらに含み得る。毛細管チャネルのそれぞれは、流体連通状態にあり、毛細管チャネルから下流にあるポートをさらに含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、2つ以上の毛細管チャネルから流体連通し、下流にある2つ以上の検出チャンバをさらに含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、マイクロ流体チップ上のポートのそれぞれにおいて、順次または同時に上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するステップをさらに含んでもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、成分の検出は、サンプルの抽出またはさらなる成分の添加のために、外部からアクセス可能なポートで実行され得る。
【0058】
目的の成分の量は、毛細管チャネル内の量と比較して、ポート内で高くなり得る。したがって、ポート内の成分を測定すると、より高い検出感度が得られ得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、マイクロ流体チップ上の検出チャンバのそれぞれにおいて、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を順次または同時に測定するステップをさらに含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、流体の流れを停止するステップの間にインキュベーションステップをさらに含んでもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、さらなる成分をポートに提供するステップをさらに含んでもよい。さらなる成分は、目的の成分の信号増幅目的のためにポート内の成分に添加することができる色素であり得る。色素は、蛍光発生、酵素またはDNA標識であり得る。さらに、色素は強力な散乱体であり得る。ポート内の成分に添加された色素は、目的の成分に結合し得、増幅にはインキュベーションまたはサーマルサイクリングステップが必要である。
【0062】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、1つまたは複数の成分の拡散性、電気泳動、拡散泳動または熱泳動移動度を測定するステップをさらに含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、成分の横方向の分配は拡散によって生じる。本発明による装置および方法は、層流体制の下で動作する。層流では、流体の流れの混合はほとんどまたはまったくない。溶液中の成分は拡散によって移動し得るが、バルク流体は混合しない。横方向の拡散により、流体力学的半径の測定と、成分の他の生物物理学的特性の推定が可能になる。
【0064】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、サンプル流体の流れ中の成分の少なくとも1つの拡散係数を決定することをさらに含み得る。
【0065】
本発明のさらなる態様によれば、上述のように、チップ上でマイクロ流体分析を動作する方法が提供され、この方法は、補助流体を補助ポートに供給するステップと、毛細管現象によって回路が充填されるようにするステップと、毛細管チャネルの少なくとも1つにおいて背景信号を検出するステップと、分析されるサンプル流体の流れを分配チャネルに導入するステップと、分配チャネル内で、定常状態の分配に達するまで、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を提供するステップと、定常状態流体の流れの少なくとも一部を分配チャネルの下流の2つ以上の毛細管チャネルに分離するステップと、毛細管チャネルの少なくとも1つにおいて分析されるサンプルに関連するサンプル信号を検出するステップと、背景信号を差し引くことにより、検出されたサンプル信号を補正するステップとを含む。
【0066】
あるいは、方法は、毛細管チャネルの少なくとも1つにおいて背景信号を検出することと、サンプルポートにサンプルを提供することと、毛細管現象によって回路が充填されるようにするステップと、分析するサンプル流体の流れを分配チャネルに導入するステップと、分配チャネル内で、定常状態の分配に達するまで、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を提供するステップと、定常状態の流体の流れの少なくとも一部を分配チャネルの下流の2つ以上の毛細管チャネルに分離し、毛細管チャネルの少なくとも1つにおいて、分析されるサンプルに関連するサンプル信号を検出するステップと、背景信号を差し引くことにより、検出されたサンプル信号を補正するステップを含んでもよい。
【0067】
単一の入力を介して流体を回路に導入することにより、流体はシステム全体に流れ、すべてのチャネルから空気を押し出す。これにより、気泡がシステム内に閉じ込められることがないことが保証される。気泡がマイクロ流体チャネルをブロックし得るため、これは非常に重要である。2つの別々の入口から同時に流体を導入すると、サンプルとシステムの流体チャネルと分配チャネルの間の接合部に気泡が閉じ込められ、流体が意図したとおりに一緒に運ばれなくなるリスクがある。
【0068】
マイクロ流体回路全体にシステムまたは補助流体を導入することにより、出口で背景信号を検出でき、サンプル信号を補正して背景信号を除去できるため、得られるデータの品質が向上する。したがって、回路を補助流体でプライミングすることが好ましい。拡散が少ない場合、プライミング流体は、毛細管チャネル、検出チャンバ、または補助流体に拡散したサンプルの量を記録する出口ポートに追加の信号をもたらし得るため、サンプル流体ではなく補助流体で回路をプライミングすることがさらに好ましい。
【0069】
毛細管チャネルの少なくとも1つにおける背景信号を考慮することにより、第1の毛細管チャネルで測定されたサンプル付着を、他の毛細管チャネルで測定されたサンプル付着の合計と比較することができる。
【0070】
このプロトコルは、過剰量のシステム流体が回路を通して洗い流される最先端のシステムと比較して、使用される流体の量を減らすことができる。このプロトコルでは、サンプルの導入前に使用されるシステム流体の量は、マイクロ流体回路の量と同じである。この量は120nlの領域であり得る。これは、システム流体が高価であるか、供給が限られている場合に役立つ。
【0071】
いくつかの実施形態では、過剰なシステム流体で洗い流す方法論を使用して、システム流体は通常、水または緩衝液などの水溶液である。一実施形態では、システム流体はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。別の実施形態では、補助流体は、Tween20(PBST)などの界面活性剤を備えるリン酸緩衝生理食塩水である。しかし、より少量のシステム流体を使用できる場合は、サンプル流体と粘度が一致するシステム流体を提供するなど、特定のサンプル流体に合わせてシステム流体を特注するプロトコルを実行することがより達成可能になる。代替的または追加的に、これは、同じ試験が複数の異なるシステム流体で繰り返される状況において有利である。例えば、異なるpH値の複数のシステム流体で試験を繰り返す。
【0072】
いくつかの実施形態では、補助流体の粘度は、サンプル流体と同じ粘度と一致させることができ、逆もまた同様である。例えば、補助流体の粘度は、サンプル流体の粘度の20%、10%または5%以内であり得る。特に、システム流体は、ヒト血清または血漿であり得る。別の実施形態では、システム流体は、ヒト血清または血漿の粘弾性および光学特性、ならびにそれらのイオン濃度およびpHを模倣する緩衝溶液であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、サンプル流体の粘度および背景信号は、実験前後の液体充填レベルおよび各ポートの全蛍光を記録することによって測定され得る。例えば、後方反射光のz走査と、ポートなどの検出領域の内容物の蛍光測定を使用する。充填レベルの違いから、各ポートを出入りする量が得られ、形状チップ抵抗と合わせて粘度を計算できる。一緒に、粘度と背景信号を決定し、任意の実験の背景を補正するために使用できる。この補正は、粘度および背景信号が1つの回路で決定され、1つまたは複数の他の回路で補正が行われる場合、異なる回路に対して実装することもできる。
【0074】
いくつかの実施形態では、前のチャネルの測定、分析、および/または検出が完了するまでに成分の「拡散」が1つのチャネルで完了するように、負圧をチャネルに同時にまたは交互に加えることができる。したがって、これは、後のマイクロ流体デバイス/回路が読み出し前の最終状態になるまでの待機時間を短縮できるため、有利である。したがって、これにより、チャネル内の液体の蒸発のリスクが減少または低下する。
【0075】
本明細書に開示される本発明の別の態様では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置が提供され、装置は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネルに導入するためのサンプルチャネルと、第2の流速で補助流体の流れを細長い分配チャネルに導入するための補助チャネルとを含むデバイスを含み、分配チャネルは、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成され、到達した定常状態流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネルのそれぞれに移動するように、下流に設けられ、分配チャネルと流体連通する2つ以上の毛細管チャネルと、チャネルを通る流体の流れを制御するように構成された切り替え可能な圧力源と、デバイス上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器と、を含む。
【0076】
デバイスは流体デバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、デバイスはマイクロ流体チップであってもよい。
【0077】
本明細書に開示される本発明の別の態様では、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置が提供され、装置は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネルに導入するためのサンプルチャネルと、第2の流速で補助流体の流れを細長い分配チャネルに導入するための補助チャネルと、を含み、分配チャネルは、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成され、到達した定常状態流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネルのそれぞれに移動するように、下流に設けられ、分配チャネルと流体連通する2つ以上の毛細管チャネルと、チャネルを通る流体の流れを制御するように構成された切り替え可能な圧力源と、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器と、を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、上流および/または下流の抵抗は、チャネルのサイズおよび構成の結果として、マイクロ流体チップ上のみに提供され得る。いくつかの実施形態では、分配チャネルの下流の抵抗値は、分配チャネルの上流の値よりも大きい。これは、毛細管チャネルの曲がりくねった構成が検出領域として機能し得るため、有利であり得る。さらに、上流の抵抗が小さいため、補助ポートとサンプルポートを介した迅速なプライミングが可能である。さらに、上流抵抗が小さいため、回路の上流部分でのサンプル付着のリスクが軽減される。サンプル付着のリスクが低いことは、チャネルの表面に付着しているサンプルが検出領域に流れ込まず、したがって、測定された信号が予想より低い可能性があるため、有益である。抵抗の値は、形状構成および/またはチャネルの幅、高さ、および長さによって影響を受け得る。
【0079】
例えば、チャネル、すなわちサンプル、補助および/または毛細管チャネルの幅は、15~100μmの間であることができ、または20、μ、30、35または40μmであり得る。チャネルの高さは15~100μmの間であることができ、または20、25、30、35または40μmであり得る。チャネルの長さは10~200mmの間であることができ、または15、20、25、30、または35mmであることができる。上流の抵抗の値は、10~1000mbar/(μl/分)の間であり得、または、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230または240mbar/(μl/分)であり得る。下流の抵抗の値は、20~2000mbar/(μl/分)の間であり得、または、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、または670mbar/(μl/分)であり得る。
【0080】
マイクロ流体デバイスのチャネルによって提供される総抵抗を使用して、チャネルを通る流体の流速を決定できる。いくつかの実施形態では、デバイスの抵抗は、所与の圧力印加で分配チャネルを通る流体の十分な流速を可能にするように調整することができる。十分な流速とは、拡散チャネル内の拡散量が正確に測定可能な拡散係数をもたらす流速を指し得る。例えば、加えることができる真空圧は、0~1バールの間であり得る。追加的にまたは代替的に、0~10バールの間の正圧を入口に加えてもよい。デバイス内に「オンチップ」抵抗を設けると、チャネルに出入りする流体の流れを制御するのに役立つため、有利であり得る。
【0081】
さらなる例において、分配チャネルの下流の毛細管チャネルの幅は、約20μmであり得、分配チャネルから上流のサンプルおよび/または補助チャネルの幅は約25μmであり、チャネルの高さは約40μmであり得る。分配チャネルから上流のサンプルチャネルおよび/または補助チャネルの長さは、約12mmであり得る。分配チャネルの下流の毛細管チャネルの長さは、約28mmであり得る。上流抵抗は約60mbar/(μl/分)であり、下流抵抗は約300mbar/(μl/分)であり得る。
【0082】
複数のマイクロ流体デバイス間の抵抗が異なると、マイクロ流体デバイスのそれぞれの間のチャネルを通る流速の分配に違いが生じ得、マイクロ流体チップを介して引き出される補助流体とサンプル流体の量、および拡散チャネルの後に流れ得る流体の量を含む。複数のマイクロ流体デバイス全体でより均一な抵抗のセットを提供するために、各マイクロ流体チップの事前測定またはバッチ特性化された抵抗値を実行して、チャネルネットワークを通る流速の変化について測定サイズを補正できる。
【0083】
いくつかの実施形態では、同じ圧力として異なる範囲の拡散係数を測定できるように、拡散チャネルの異なる形状および/または異なる抵抗値を有する異なるマイクロ流体チップを提供することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、検出器は、チップ内の様々な検出位置に焦点を合わせるために移動するように構成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、検出器は、目的の成分の蛍光を測定するように構成できる光学検出器であってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、拡散チャネルは、サンプルチャネル、補助チャネル、および毛細管チャネルとともに、Hフィルタを形成することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、毛細管チャネルのそれぞれの一部は、蛇行構成または曲がりくねった構成で配置され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、流体装置は、ポートをさらに含んでもよい。ポートは、入口ポートまたは出口ポートであり得る。ポートは、サンプルまたは補助流体入口に設けることができる。各ポートは、マイクロ流体システムの特徴である。サンプル流体のメニスカスがポート量の上限を提供するように、各ポートに開放形状を設けることができる。これは、気泡を閉じ込めることができる閉じたポートよりも利点がある。入口ポートおよび出口ポートは、対応する形状を備えることができる。ポートは同一の形状を持ち得る。ポートには、さもなければ出口ポート全体に存在するであろう勾配を放散するのに役立ち得る環状リングを設けることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、毛細管チャネルのそれぞれは、ポートをさらに備える。ポート内の成分の濃度、量、または拡散率を測定することは、測定により多くの量を提供できるため、より正確な読み取りを提供する感度が向上するため、有利であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、流体装置は、検出チャンバをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、検出チャンバをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、毛細管チャネルのそれぞれは、検出チャンバをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、検出チャンバはポートであってもよい。例えば、検出は入口ポート、出口ポート、または入口ポートと出口ポートの両方で行うことができる。入口ポートと出口ポートの形状が類似している場合、または同一でさえある場合、入口と出口のポートの寄与は実質的に同じであるため、データから削除できるため、これは検出に役立ち得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ流体チップは、複数の検出領域を有し得る。検出領域は、検出ポートなどの検出チャンバであってもよく、および/または毛細管チャネルの蛇行部分または曲がりくねった部分など、チャネルの蛇行部分または曲がりくねった部分であってもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、デバイス、すなわちマイクロ流体デバイスは、背景光および蛍光を低減するために黒などの暗色で提供され得る。
【0093】
追加的にまたは代替的に、マイクロ流体デバイスなどのデバイスは、サンプルの付着を低減または防止するために付着防止コーティングでコーティングされ、したがって良好な感度を与えることができる。約1nMの感度は、~100万分子/mm^2で達成できる。コーティングは、エトキシル化ポリソルベートの非イオン性界面活性剤、またはポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドのうちの1つまたは複数であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、付着防止コーティングはエトキシル化ポリソルベートである。
【0094】
いくつかの実施形態では、デバイスは、1つまたは複数の基準点などの活性位置検出ガイドを備えてもよく、これは、ポート内および/またはチャネルの曲がりくねった部分内の検出位置、つまりX、Y、および/またはZ位置を検出するために利用できる。いくつかの実施形態では、位置検出ガイドは、1つまたは複数のポート自体または流体回路自体の任意の他の特徴であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、活性位置検出ガイドは、出口ポート内の検出位置を特定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、出口ポート内の検出位置を特定するための位置検出ガイドは、出口ポートであってもよい。活性位置検出ガイドを出口ポートの1つに使用すると、活性検出ガイドが出口ポートの正確な検出位置をより正確に特定できるため、有利であり得る。しかし、各排出口の位置を検出するのは時間がかかるプロセスであり得る。
【0096】
追加的にまたは代替的に、マイクロ流体デバイス上の特定の位置を決定するために、1つまたは複数のポートを利用することもできる。
【0097】
いくつかの実施形態では、分配チャネルの上流に検出器を設けることができ、検出器は、サンプルチャネル内の各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成される。次いで、同じ検出器を分配チャネルの下流に移動させて、毛細管チャネル内の各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、流体装置は、第2の検出器をさらに備えてもよく、第2の検出器は、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成されてもよい。分配チャネルの上流に第1の検出器を設け、分配チャネルの下流に第2のチャネルを設けることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、流体装置は、分配チャネルの上流に設けられた第2の検出器をさらに備えてもよく、第2の検出器は、サンプルチャネル内の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成されている。
【0100】
分配チャネルの上流に第2の検出器を設けることにより、背景信号を考慮して正確な測定値を得ることができる。システムの背景信号は補助チャネル内で測定され、背景信号は毛細管チャネル内のサンプル信号測定値から差し引くことができる。毛細管チャネルで検出された信号サンプルは、背景信号を差し引くことによって補正できる。
【0101】
いくつかの実施形態では、流体装置に共焦点検出器を設けることができる。マイクロ流体デバイス内の検出領域は、例えば、各次元で数百マイクロメートルを包含する共焦点検出スポットに適したサイズであってもよい。ポートで共焦点検出器を使用すると、流体内の生体分子の検出が液体充填高さに依存しないことを意味できるが、かなりの量の検出量が検出に依然として利用可能である。共焦点検出器は、ポート内および/またはチャネルの曲がりくねった部分内の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成され得る。共焦点スポットはまた、各次元で数百ナノメートルを包含もし得る。これは、位置依存性がさらに低くなり、背景光をさらに低減するために有利であり得る。より大きな共焦点スポットは、検出感度を高め得るより多くの蛍光分子を測定するのに有利である。
【0102】
1つまたは複数の検出器を検出システムの一部にすることができる。検出システムは、サンプル流体内の目的の生体分子を検出するために、流体装置に配置することができる。検出器は、(任意選択で同時の)蛍光読み出し用に複数の波長を有し得る。例えば、赤と緑の647nmおよび488nm励起の2色で、670、680、690、700nm(代わりに:660nmまたは670nmを超えるロングパスフィルタ)付近を中心とするまたは510、520、530、540nm(代わりに:500nmまたは510nmまたは520nmを超えるロングパスフィルタ)付近を中心とする発光を伴う。
【0103】
背景信号の発生源には、蛍光、吸収、補助流体からの反射および散乱、チップ材料、およびより広い光機械システムが含まれ得るが、これらに限定されない。さらに、システム流体が異なれば、背景信号レベルも異なり得る。例えば、水中のタンパク質は背景信号が低いが、適切ではない場合がある。代わりに、例えば、粘度の違いが読み取りに影響を与えないように、補助流体とサンプル流体の指数を一致させることが好ましい場合がある。その結果、血清は高レベルの背景を持っているという事実にもかかわらず、システム液と呼ばれることもある補助液として血清を使用することが好ましい場合がある。あるいは、物理的特性の一部をサンプル流体と共有する補助流体を使用することが好ましい場合がある。具体的には、補助流体は、サンプル流体と実質的に同じ屈折率、イオン濃度、pH、および/または粘度を有し得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、背景信号およびサンプル付着を考慮することによってHフィルタから正確な測定値を取得するための方法が提供され得る。この方法は、以下のステップを含むことができる:システムの背景信号がサンプルチャネルで測定され、背景信号が毛細管チャネルのそれぞれでの測定値から差し引かれ、分配比の背景補正測定値が導き出される。サンプルチャンネルで測定されたサンプル信号は測定され、濃度測定の補正メカニズムとして毛細管チャンネルのそれぞれの信号および/または背景信号の合計と比較され、サンプル付着のレベルが決定される。
【0105】
いくつかの実施形態では、検出器は、毛細管チャネルの曲がりくねった部分の縁から少なくとも1チャネル幅の領域内の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を決定するように構成される。
【0106】
検出器を毛細管チャネルの曲がりくねった部分の縁から少なくとも1チャネル幅離して配置することにより、装置内でチップを高精度に位置決めする必要がなくなる。
【0107】
いくつかの実施形態では、毛細管チャネルの曲がりくねった部分は、実質的に等しい長さの上流部分および下流部分を含むことができ、検出器は、上流部分の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するように構成することができる。
【0108】
検出器は、流体チャネルの曲がりくねった部分の上流部分、すなわち、曲がりくねった領域の終わりよりも曲がりくねった領域の始まりに近くに配置して、タンパク質付着によって影響を受けていないサンプルの検出を最大化することができる。したがって、これにより、測定用の入口チャネルに近い流体量が増え得る。いくつかの実施形態では、本発明の態様のいずれか1つによる流体装置は、ユーザインターフェースをさらに備えることができる。ユーザインターフェースは、マイクロ流体デバイスなどのデバイスを検出するように構成されている。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースはディスプレイパネルを有してもよい。
【0109】
使用時には、複数のマイクロ流体チップを含むチッププレートをユーザインターフェースに挿入することができ、ユーザインターフェースはどのマイクロ流体チップが使用されたかを検出する。次いで、ディスプレイパネルは、この情報をユーザに表示する。
【0110】
いくつかの実施形態では、NFCタグなどのタグを使用して、どのチャネルが使用されたかを定義し、ユーザインターフェース上に表示することができる。追加的にまたは代替的に、NFCタグまたは他のタグを使用して、本明細書で開示されるように抵抗補正で使用する較正データを保存することができる。
【0111】
本発明の別の態様によれば、複数の並列マイクロ流体回路を含むチップが提供され、各回路は、システム流体を回路に導入できるシステム流体入口ポートで始まるシステム流体入口チャネルと、サンプル流体を回路に導入することができるサンプル流体入口ポートから始まるサンプル流体入口チャネルと、を含み、サンプル入口ポートは、サンプル入口チャネルと対応する入口ポートの間に拡張機構部を含み、拡張機構部は、チャネルに隣接する先細部分と、ポートに隣接する湾曲部分とを含み、システム流体チャネルおよびサンプル流体チャネルの両方と流体連通する分配チャネルと、出口ポートで終わる2つの出口チャネルと、を含み、出口チャネルは分配チャネルと流体連通し、チャネルのそれぞれの最大幅または高さは50μm以下であり、出口ポートのそれぞれに真空源への接続をさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、拡張機構部の湾曲部分は、0.05mmから0.4mmの間の半径を有する。いくつかの実施形態では、拡張機構部の湾曲部分は、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、または0.35mmを超える半径を有し得る。いくつかの実施形態では、拡張機構部の湾曲部分は、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、または0.1mm未満の半径を有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、拡張機構部の湾曲部分は、0.2mmの半径を有する。
【0114】
いくつかの実施形態では、サンプルポートは、サンプル入口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドをさらに備える。いくつかの実施形態では、各入口ポートは、入口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを含む。いくつかの実施形態では、各出口ポートは、出口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、各入口ポートは、各入口チャネルと対応する入口ポートとの間に拡張機構部を含み、拡張機構部は、チャネルに隣接する先細部分と、ポートに隣接する湾曲部分とを含む。いくつかの実施形態では、各出口ポートは、各出口チャネルと対応する出口ポートとの間に拡張機構部を含み、拡張機構部は、チャネルに隣接する先細部分およびポートに隣接する湾曲部分を含む。
【0116】
チップは、毛細管力が優勢であるため、毛細管充填が可能になるようにチャネルが選択されるマイクロ流体レジメンに固有のものであり得る。チャネルの最大寸法は、チャネルがこのレジメンで動作するように選択される。本明細書に開示される本発明の目的の1つは、回路の迅速な充填を確実にしてデバイスの効率を高めることである。例えば、回路は、5分未満、好ましくは5~90秒の間で毛細管を完全に充填することができなければならない。
【0117】
拡張機構部は、2つのメニスカスの間に気泡が閉じ込められるのを回避するために、システムまたは補助流体へのサンプル流体(導入時)に、より平坦で滑らかなメニスカスを提供するように有益に設計することもできる。急な端を持つ直線毛細管は、メニスカスの間に気泡を閉じ込める傾向が高くなる。
【0118】
さらに、拡張機構部は、チャネルからポートに向かって拡張する先細部分と、ポートに到達するにつれて先細部分の端からさらに拡張する湾曲または丸み部分を有している。丸み部分は、半径0.05mm~0.4mmの間の円の半径に沿った形状になっている。これにより、ポートが毛細管力の下で充填されることが可能になる。そうでなければ、チャネルとポートとの間にある断面積の大きな段差に達すると流体が止まるからである。拡張機構部の丸み部分がない場合、拡張機構部の先細部分とポートとの間に階段状の移行がある。
【0119】
これにより、その時点でメニスカスが固定され、気泡が形成され得る。これは、サンプル入口で特に問題となる。これは、チップ全体をシステム流体で充填し、続いてサンプルを導入することが好ましい動作レジメンであるためである。拡張機構部の丸み部分が存在しない場合、サンプル流体チャネルの始点で拡張機構部の近くでサンプル流体とシステム流体との間に気泡が形成され得る。これらの気泡は、サンプル流体が分配チャネルに入るのを妨げ得るサンプル入口チャネルをブロックするのに十分であり得る。チャネルが気泡によって完全にブロックされず、サンプル流体が分配チャネルに流れ込むことに成功したとしても、気泡は分配チャネルの下流での検出を妨害する。
【0120】
拡張機構部の丸み部分からポートへの流れの効率は、ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在し、ポートとチャネルとの間の流体の流れを改善するようにさらに作用する流体ガイドの提供によってさらに支援され、ポートの周囲に流体の初期流体経路を提供する。ポートが円形の断面を有する場合、流体ガイドは環状であり得る。環の寸法は、チャネルの寸法に厳密に適合するように選択することができる。流体ガイドは、ポートの周囲全体に設けることができるのではなく、チャネル入口点に隣接するポートの領域にのみ設けることができる。
【0121】
流体ガイドの提供は、出口ポート内の流体の均一性にも寄与する。流体ガイドは、ポートが充填を開始する優先的な流体経路を提供する。流体ガイドが充填されると、ポートの残りの部分が充填され、ポート全体に顕著な濃度勾配が生じなくなる。これは、ポートで信号を検出する必要がある場合に重要である。
【0122】
システム流体チャネル、サンプル流体チャネル、分配チャネル、および2つの出口チャネルは、従来のHフィルタ構成を取ることができる。
【0123】
分配チャネルでは、サンプル流体がシステム流体と接触し、拡散によって分配が形成される。
【0124】
出口チャネルでの圧力管理接続の提供は、出口から流体を引き出すのではなく、回路を通して流体を押し出す接続が入口で提供される場合に存在するであろう汚染のリスクを低減する。
【0125】
いくつかの実施形態では、チャネルのそれぞれに、サンプルの付着を防ぎ、回路の効率的な充填を可能にするように構成されたコーティングを設けることができる。
【0126】
コーティングの選択は、タンパク質の付着によってサンプルを劣化させることなく、所望の迅速な充填を可能にするために重要である。
【0127】
いくつかの実施形態では、チャネルは40μmの最大寸法を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、チャネルは、それらの最大寸法に対して垂直に最大25μmの範囲を有する。
【0129】
妥当な時間枠内、すなわち1分以内にチップ全体を毛細管充填できるように、寸法は厳密に制御されている。例えば、25μm×40μmのチャネル構成は1分以内に充填できるが、25μmの寸法が30μmに拡大されると、充填に時間がかかりすぎる。
【0130】
さらに、寸法が変更されると回路の量も大幅に変化するため、大きなチャネルでは充填時間が大幅に長くなる。チャネルが小さいと流体力学的抵抗が高くなり、動作中に拡散チャネル内の流体の流速が減少し得る。
【0131】
チャネルの寸法を小さくすると、チャネル壁の表面積が減少するが、表面積と量の比率が増加するため、表面付着が発生するリスクが増加する。
【0132】
断面積の小さいチャネルを提供することで、毛細管の効率的な充填に寄与するだけでなく、ポート検出が実行可能な任意選択であることも保証され、サンプルを導入する前にチップ全体をシステム流体で充填することができるが、システム流体の量はまだ十分に少ないため、出口ポートでの意味のある測定が妨げられない。
【0133】
いくつかの実施形態では、コーティングは親水性であり得る。いくつかの実施形態では、コーティングは疎水性であり得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、補助流体またはサンプル流体は、流体とチャネル表面との間の接触角を減少させる、界面活性剤またはエタノールなどの溶媒または添加物を含み得る。低い接触角は、毛細管プライミングを支援するのに有利である。
【0135】
いくつかの実施形態では、チップは、8つのマイクロ流体回路を含み得る。本発明の目的のために、当業者は、1つのチップ上に任意の数のマイクロ流体回路を設けることができることを理解するであろう。例えば、チップは、8つを超えるマイクロ流体回路を含み得る。あるいは、チップは、8つ未満のマイクロ流体回路を含み得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、各出口ポートは開放ポートであり得る。開放ポートの提供は、プライミング中の流体の流れを停止する。さらに、開放ポート内に圧力が蓄積することはない。流体の流速は以前に拡張機構部によって遅くされていたが、特にサンプルと補助チャネルとの間、および/または補助チャネルと毛細管チャネルとの間のプライミングプロセス中に、開放ポートを提供することによって流れを完全に停止することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、拡張機構部は、少なくとも1つの試薬を含むように構成され得る。試薬は、拡張機構部に隣接するポートを介して提供され得る。
【0138】
これにより、試薬を含む拡張機構部に到達するまでチップがシステム液で充填されるため、チップの完全な自動充填が可能になる。次に、試薬はシステム流体と接触し、拡張機構部がシステム流体と試薬の混合物で完全に充填されると、毛細管現象の流れが拡張機構部からの試薬を組み込んだチップを充填する。
【0139】
本発明の文脈において、特に明記しない限り、「試薬」という用語はサンプル流体も意味することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、出口ポートの少なくとも1つの拡張機構部は、サンプルおよび補助流体の流れが拡張機構部の縁で互いに接触するときに、サンプルおよび補助流体の流れの混合物を形成するように構成され得る。拡張機構部の縁でのサンプルと補助流体間の接触により、流体間に空気が存在しないことが保証され、したがって、チャネル内に気泡が生成されない。
【0141】
いくつかの実施形態では、システム流体チャネルに親水性コーティングを設けることができる。親水性表面コーティングを設けることにより、システム流体チャネルへのシステム流体の装填中に気泡が混入しないように、表面がシステム流体によって確実に湿潤される。
【0142】
いくつかの実施形態では、分配チャネルの上流に設けられたチャネルには、親水性コーティングを設けることができる。追加的または代替的に、分配チャネルの下流に設けられたチャネルには、疎水性コーティングを設けることができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、サンプル流体チャネルに親水性コーティングを設けることができる。親水性表面コーティングを設けることにより、サンプル流体チャネルへのサンプル流体の装填中に気泡が混入しないように、表面がサンプル流体によって確実に湿潤される。
【0144】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのチャネルのそれぞれにポートを設けることができ、ポートの表面を粗くすることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、システム流体チャネルは、システム流体をシステム流体チャネルに装填することができ、ポートの表面を粗くすることができるポートを備えることができる。いくつかの実施形態では、サンプル流体チャネルには、サンプル流体を提供することができ、システム流体が流体間に気泡を形成することなく毛細管現象によってサンプル流体と一致することができ、ポートの表面を粗くすることができるポートを設けることができる。
【0146】
ポートの表面を粗くすることで、確実にシステム流体がポートに均一に移動するようにする。
【0147】
いくつかの実施形態では、真空源は、シリンジポンプまたはピストンポンプ、ロータリーポンプ、ダイアフラムポンプ、または蠕動ポンプなどのポンプである。
【0148】
本発明の別の態様によれば、本発明の前述の態様によるチップ上のマイクロ流体回路を開始状態にする方法が提供される。この方法は、システム流体チャネルを介してマイクロ流体回路全体をシステム流体で毛細管充填するステップと、チャネルまたはポートのうちの少なくとも1つで背景信号を検出するステップと、サンプル流体チャネルを通して、分析されるサンプルを含む流体を導入するステップと、出口に真空を接続して、マイクロ流体回路を通して流体を引き込むステップと、出口チャネルのうちの少なくとも1つにおいて、分析されるサンプルに関連するサンプル信号を検出するステップと、背景信号を除去することにより、検出されたサンプル信号を補正するステップとを含む。
【0149】
単一の入力を介して流体を回路に導入することにより、流体はシステム全体に流れ、すべてのチャネルから空気を押し出す。これにより、気泡がシステム内に閉じ込められることがないことが保証される。気泡がマイクロ流体チャネルをブロックし得るため、これは非常に重要である。2つの別々の入口から同時に流体を導入すると、サンプルとシステムの流体チャネルと分配チャネルとの間の接合部に気泡が閉じ込められ、流体が意図したとおりに一緒に運ばれなくなるリスクがある。
【0150】
マイクロ流体回路全体にシステム流体を導入することにより、出口で背景信号を検出でき、サンプル信号を補正して背景信号を除去できるため、得られるデータの品質が向上する。
【0151】
このプロトコルは、システム流体の過剰量が回路を通して洗い流される最先端のシステムと比較して、使用される流体の量を減らす。このプロトコルでは、サンプルの導入前に使用されるシステム流体の量は、マイクロ流体回路の量と同じである。この量は、例えば120nlのように、10nl~250nlの領域にあり得る。これは、システム流体が高価であるか、供給が限られている場合に役立つ。
【0152】
現在の実施では、過剰なシステム流体で洗い流す方法論を使用して、システム流体は典型的には水である。しかし、より少量のシステム流体を使用できる場合は、サンプル流体と粘度が一致するシステム流体を提供するなど、特定のサンプル流体に合わせてシステム流体を特注するプロトコルを実行することがより達成可能になる。代替的または追加的に、これは、同じ試験が複数の異なるシステム流体で繰り返される状況において有利である。例えば、異なるpH値の複数のシステム流体で試験を繰り返す。
【0153】
いくつかの実施形態では、主な実験の前に、チップ全体を緩衝溶液または水などの補助流体で充填して、背景測定を行うことができるようにする。これにより、背景値をサンプル測定値から差し引くことができるため、サンプル検出の精度を向上させることができる。
【0154】
さらに、本明細書に開示されるチップは、背景測定をチップ全体で行うことを可能にし、気泡閉じ込めのリスクを回避する。したがって、本明細書に記載の本発明は、マイクロ流体回路の性能信頼性を改善し、サンプル測定の精度を改善するのに役立つマイクロ流体回路の気泡のない充填を可能にする。
【0155】
ここで、本発明を、単なる例として、添付の図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【
図1】本発明による1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体デバイスを示す。
【
図2】
図1による1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体デバイスの代替実施形態を提供する。
【
図3】
図1による1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体デバイスの代替実施形態を示す。
【
図4】本発明によるHフィルタ構成を有する流体デバイスを示す。
【
図5A】毛細管チャネルなどの流体チャネルの実施形態を示す。
【
図5C】毛細管チャネルなどの流体チャネルの代替実施形態を示す。
【
図7】
図6によるマイクロ流体回路の代替実施形態を示す。
【
図8】本発明による拡張機構部および流体ガイドを有するポートを示す。
【
図9A】本発明によるユーザインターフェースを示す。
【
図9B】本発明によるユーザインターフェースを示す。
【
図9C】本発明によるユーザインターフェースを示す。
【
図9D】本発明によるユーザインターフェースを示す。
【
図9E】本発明によるユーザインターフェースを示す。
【
図11A】ポートの形状および砂時計形の励起プロファイルの形状の一実施形態を示す。
【
図12】最大の蛍光パワーの寄与を示すプロットを提供する。
【
図13】チップポートの焦点/Z位置の範囲にわたって取得された蛍光信号および後方反射励起信号を示すプロットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0157】
本明細書に開示される本発明は、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための装置および方法を提供する。成分は、生体分子と呼ばれることがある。成分の例は、タンパク質、ペプチド、エキソソーム、抗体またはその抗体断片、DNAまたはDNA片、RNA、siRNAまたはmRNAなどのヌクレオチド、または多糖であり得るが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書で定義されるように、特に明記しない限り、「生物物理学的特性」という用語は、蛍光分光法またはマイクロ拡散サイジング(MDS)などの生物物理学的技術を使用して測定または検出できる成分の物理的および/または化学的特性を指す。測定可能な生物物理学的特性の例としては、成分の流体力学的半径、拡散率、分子量、電荷、等電点、結合親和性、結合力、濃度、質量流束、濃度流束、および/または成分の拡散速度が挙げられるがこれらに限定されない。
【0159】
図1を参照すると、1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置8が提供される。流体装置8は、デバイス10を備える。デバイス10は、マイクロ流体デバイスであり得る。
図1に示されるように、サンプル入口ポート11は、サンプルをデバイス10に装填するために提供される。デバイス10は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネル16に導入するためのサンプルチャネル12を備える。
【0160】
補助流体を補助チャネル14に装填するために、補助入口ポート13が設けられる。補助流体は、例えば、緩衝溶液であり得るか、または水であり得る。補助チャネル14は、補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネル16に導入するために提供される。さらに、上流の追加抵抗チャネル15をサンプルチャネル12および/または補助チャネル14に設けて、流体の流れの流速を制御するのを助けることができる。補助入口ポート13は、補助流体の最初の読み取りを行うためにも使用することができる。
【0161】
補助入口ポート13およびサンプル入口ポート11は、開いた、すなわち蓋のない形状を有する。これにより、気泡の閉じ込めに利用できる場所が減少する。さらに、分配チャネル16、サンプル12、および補助チャネル14はすべて、コーティングを備えている。コーティング自体は疎水性であるが、チャネルが形成される未処理の材料よりも親水性がある。チャネル上にコーティングを設ける際に、入口ポート11、13もコーティングの層でコーティングされ、コーティングがない場合よりチャネルをより親水性にする。コーティングは、デバイス10の毛細管充填を助けるように選択される。ポートへのコーティングの提供は、チャネルのコーティング手順の加工物にすぎないが、全体にコーティングを提供すると、流体がポートを通過してチャネルに入るときに、コーティングされた表面とコーティングされていない表面との間の界面が回避される。
【0162】
分配チャネル16は、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。
【0163】
図1に示されるように、サンプルチャネル12および補助チャネル14の一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置される。サンプルチャネル12および補助チャネル14の曲がりくねった構成は、サンプルおよび/または補助チャネル12、14内の気泡を低減または排除するのに役立ち得る。
【0164】
2つ以上の毛細管チャネル18が下流に設けられ、分配チャネル16と流体連通して、到達した定常状態の流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネル18のそれぞれに移動するようにする。毛細管チャネル18のそれぞれの一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置される。密に圧縮された毛細管チャネルにより、感度が向上し、信号対ノイズ比が低下する。場合によっては、蛇行または曲がりくねった構成20は、検出器で成分を検出するために測定を行うことができる流れ面積を増加させる。これは、単一の検出スポットで検出される毛細管チャネルの量を増加させ、目的の成分を検出する感度を高めることができるため、有利であり得る。さらに、毛細管チャネル18の曲がりくねった構成20は、チャネル内の気泡を減少または排除するのにも役立ち得る。
【0165】
図1に示されるように、分配チャネル16内の流体は、少なくとも2つの毛細管チャネル18に流れる。毛細管チャネル18のそれぞれは、拡散および/または非拡散流体の流れを含むことができる。各毛細管チャネル18はさらに、蛇行構成20に配置された検出ゾーンまたは領域を備えてもよく、ここで、拡散および/または未拡散のサンプル流体の流れが、検出器を使用して検出することができる。
【0166】
さらに、各毛細管チャネル18に追加の抵抗チャネル22が提供される。追加の抵抗チャネル22は、チップ上で抵抗を提供するように構成される。チャネルを通る流体の流れを制御するために、チャネルの「オンチップ」抵抗が提供され得る。上流の抵抗は、分配チャネル内の流れのバランスを決定する上で支配的な要因になり得る。したがって、下流の抵抗のみを最小限に抑えることができ得る。オンチップ抵抗に必要な小さな形状は製造が難しいため、オンチップ抵抗を最小限に抑えることが重要である。
【0167】
各毛細管チャネル18はまた出口ポート26を備え、出口ポート26において、サンプル流体の流れの検出を実行することができ、または事前検出が入口ポート11、13で行われた状況でさらに実行することができる。出口ポート26内の成分の検出は、出口ポート26内で利用可能な成分の量がより多いという事実に起因して感度が増加するので、有利であり得る。場合によっては、出口ポート26で背景信号を検出することができる。背景信号を取得すると、サンプル信号を補正できるため、得られるデータの品質が向上するため、便利であり得る。
【0168】
出口ポート26は開いており、コーティングされていない材料よりも親水性が高くなるようにコーティングされている。コーティング材料は本質的に疎水性であり得るが、チャネルおよびポートが形成される材料はより疎水性であり、したがってチャネルをコーティングする効果はそれらの親水性を高めることである。出口ポート26は、開放形状を有し、それらの大きさの割合は、それらが毛細管充填を確実に停止するように選択される。ポート26からの蒸発が装置8の使用に重大な影響を及ぼさないように、ポート26の形状を選択することもできる。
【0169】
出口ポート26は、出口ポート26に近づくにつれて毛細管チャネルが徐々に広がるトランペット形状の入口を有する。出口ポート26は環状リングを含み、流体は優先的にトランペット部を通って環状リングの周りを流れる。理論に拘束されることを望むものではないが、この構成は、出口ポート26内の濃度勾配を減少させるか、または根絶さえするように見える。これは、次いで、出口ポート26の検出読み取りが、勾配を横切る単なるスナップショットではなく、ポート26の内容物全体の真の表現であることを意味する。
【0170】
環状リングの高さは40μmで、これは出口ポート26に流れ込むマイクロ流体チャネルの高さと同じである。これにより、そうでなければ気泡の収集の場所を提供し得るステップがないことが保証される。流体はチャネルに沿って流れ、トランペット形状の開口部を通って広がり、環状リングの周りを流れて、そうでなければ閉じ込められ得る空気を押し出す。次に、流体は、気泡が形成されないように空気全体を一様に置換しながら、出口ポート26に流入するように進む。
【0171】
ポートは、穴あけまたは成形によって製造することができる。それらの特徴は、製造方法に依存しない必要がある。
【0172】
図1を参照すると、切り替え可能な圧力源(添付の図面には示されていない)を設けることができ、流体チャネル12、14、16、18を通る流体の流れを制御するように構成されている。圧力源は、シリンジポンプまたは圧力ポンプなどのポンプであり得る。圧力ポンプは、サンプル流体チャネル12および/または補助流体チャネル14に接続可能であり、チャネルに沿って流体の流れを移動させる正圧源を提供することができる。代替的または追加的に、毛細管チャネル18に設けられた出口ポート26にシリンジポンプを接続可能であり、流体チャネルに沿って流体の流れを移動させることができる。
【0173】
検出器(添付の図面には示されていない)は、装置の設定とともに提供され得る。検出器は、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネル18のそれぞれにおいて、順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出して測定するように構成できる。追加的または代替的に、検出器は、マイクロ流体チップ上の出口ポート26のそれぞれにおいて順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成され得る。
【0174】
第2の検出器(添付図面には図示せず)を分配チャネル16の上流に設けることができる。第2の検出器は、サンプルチャネル12内の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成することができる。
【0175】
分配チャネルの上流に第2の検出器を設けることにより、背景信号を考慮して正確な測定値を得ることができる。システムの背景信号は補助チャネル内で測定され、背景信号は毛細管チャネル内のサンプル信号測定値から差し引くことができる。毛細管チャネルで検出された信号サンプルは、背景信号を差し引くことによって補正できる。
【0176】
マイクロ流体デバイスの形状は、分配チャネルの長さと幅、および全体的なチップ抵抗が、1~20nmの間の流体力学的半径を持つタンパク質などの典型的な生体分子のサイズ範囲に適した特定の構成にすることができる。デバイス内の圧力差は、-50~-1000mbarの間の圧力差を達成できる真空ポンプを使用して達成できる。分配チャネルの幅は、sqrt(Dt)に匹敵するものでなければならず、tは分配チャネルで費やされた時間すなわちt=L/v、Lはデフチャネルの長さ、vはチップ抵抗Rと圧力差dpが与えられた場合の平均流速、Dは典型的なタンパク質の拡散係数である。
【0177】
ほんの一例として、分配チャネルの幅は、5~100μmの間であることができ、または30、32、34、36、38、40、42、44、46または48μmを超えることができる。場合によっては、分配チャネルの幅は、50、48、46、44、42、40、38、36、34、または32μm未満であり得る。例えば、分配チャネルの幅は約40μmである。分配チャネルの長さは、1~100mmの間であり得るか、5、10、15、20、25、30、35、40、または45mmを超え得る。場合によっては、分配チャネルの長さは、50、45、40、35、30、25、20、15、または10mm未満であってもよい。例えば、分配チャネルの長さは約23mmである。マイクロ流体デバイスの総抵抗は、20~2000mbar/μl/分の間であり得るか、100、150、200、250、300、350、400、または450mbar/μl/分を超え得る。場合によっては、マイクロ流体デバイスの総抵抗は、500、450、400、350、300、250、200、または150mbar/μl/分未満であり得る。例えば、マイクロ流体デバイスの総抵抗は約250mbar/μl/分である。
【0178】
マイクロ流体デバイスは、背景光および蛍光を低減するために黒などの暗色で提供され得る。プラスチック製であり得るマイクロ流体デバイスは、射出成形技術によって製造できる。マイクロ流体デバイスは、着色剤および/または添加剤、例えばカーボンブラックで黒色にすることができる。
【0179】
本発明で開示される1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための方法は、
図1に示される流体装置で実行することができる。この方法は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを、0.01~10μl/分の領域の第1の流速で細長い分配チャネルに導入するステップと、第2の流速で補助流体の流れを分配チャネルに導入するステップと、分配チャネル内で、定常状態分配に達するまで、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を提供するステップと、定常状態の流体の流れの少なくとも一部を、分配チャネルの下流の2つ以上の毛細管チャネルに分離するステップと、定常状態分配に達した後、所定の時間に流体の流れを停止するステップと、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するステップとを含む。
【0180】
サンプルと補助流体の流れは、オンチップ抵抗を含み得るHフィルタの両側に装填される。圧力源(真空または正圧)を設けて、サンプルおよび補助流体の圧力駆動の流れをチップに誘導することができる。サンプルと毛細管チャネルの抵抗は、サンプルの流れを制御するのに役立つ。分配チャネルと下流の毛細管チャネルの両方で拡散平衡に達すると、流れを停止して光学検出を実行できる。
【0181】
流体の流れを止めるために、停止手段を使用することができる。停止手段は、平衡状態を維持しながら流体の流れを停止するために設けることができる。ほんの一例として、解放可能なバルブをデバイスに設けて、流体の流れを止めることができる。圧力解放バルブは、チップ全体の圧力を平衡化するために提供される。解放可能なバルブの例は、圧力解放バルブであり得る。流量デバイス全体の圧力を平衡化するために圧力解放バルブを設けることができる。例えば、圧力解放バルブは、サンプルチャネル、補助チャネル、分配チャネル、および/または下流毛細管チャネルを平衡化するために提供され得る。成分の定常状態分配に確実に到達できるようにするために、ユーザは、流体の流れを停止する前に、1つまたは複数の成分の定常状態分配に到達できるように、所定の時間を設定できる。
【0182】
サンプルの流れの検出は、毛細管チャネルなどの分配チャネルの端を越えた場所で実行できる。検出器は光学検出器であり得る。検出器は、高解像度カメラまたは光電子増倍管であり得る。
【0183】
追加の動作モードを実装して、複数の開始/停止分析を実行し、経時変化実験を実行できる。動作のさらなるモードは、流体が停止され、その後の分析の前に、インキュベーションステップなどの処理ステップを実行することであり得る。
【0184】
図2を参照すると、本発明に従って設定された装置8の実施形態が示されている。装置8は、マイクロ流体デバイスなどのデバイス10を備える。
図2に示されるように、サンプルポート11は、サンプルをデバイス10に装填するために提供される。デバイス10は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネル16に導入するためのサンプルチャネル12を備える。
【0185】
補助チャネル14に補助流体の流れを装填するために、補助入口ポート13が設けられている。補助チャネル14は、補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネル16に導入するように構成される。分配チャネル16は、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。
【0186】
2つ以上の毛細管チャネル18が下流に設けられ、分配チャネル16と流体連通して、到達した定常状態の流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネル18のそれぞれに移動するようにする。毛細管チャネル18のそれぞれの一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置され得る。
【0187】
図2に示されるように、1つまたは複数の上流検出チャンバ30、32が分配チャネル16の上流に提供される。1つまたは複数の上流検出チャンバを使用して、サンプルが補助流体に接触する前のサンプルの初期読み取り、およびまたサンプルに接触する前の補助流体の初期読み取りも提供することができる。これは、通常の水であり得る補助流体の読み取り値を知る必要があるため、検出システムを較正するのに役立つ。例えば、上流のサンプル検出チャンバ30がサンプルチャネル12上に提供され、上流の補助検出チャンバ32が補助チャネル14上に提供される。
【0188】
図2に示されるように、1つまたは複数の検出チャンバ34を、分配チャネル16の下流に提供し、毛細管チャネル18と流体連通させることができる。検出器は、下流検出チャンバ34のそれぞれにおける定常状態の流体の流れの少なくとも一部を検出するために提供され得る。1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性は、マイクロ流体チップ上の下流検出チャンバ34のそれぞれで順次または同時に測定することができる。
【0189】
さらに、各毛細管チャネル18に追加の抵抗チャネル22が提供される。追加の抵抗チャネル22は、チップ上で抵抗を提供するように構成される。
【0190】
毛細管チャネル18はまた、サンプル流体の流れの検出を行うことができる出口ポート26を含む。検出器を使用した出口ポート26内の成分の検出および分析は、出口ポート26内で利用可能な成分の量がより多いという事実による感度の増加があるため、有利であり得る。次いで、出口ポート26内で照合された流体の流れは、さらなる分析のために収集されるか、またはユーザによって廃棄され得る。
【0191】
図3を参照すると、本明細書に開示される本発明によるデバイス10の代替実施形態が提供される。
図3に示されるように、サンプルポート11は、サンプルをデバイス10に装填するために提供される。デバイス10は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネル16に導入するためのサンプルチャネル12を備える。補助チャネル14に補助流体の流れを装填するために、補助入口ポート13が設けられている。補助チャネル14は、補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネル16に導入するように構成される。分配チャネル16は、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。
【0192】
2つ以上の毛細管チャネル18が下流に設けられ、分配チャネル16と流体連通して、到達した定常状態の流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネル18のそれぞれに移動するようにする。毛細管チャネル18のそれぞれの一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置される。
【0193】
出口ポート26が下流に設けられ、毛細管チャネル18と流体連通する。検出器を用いた成分の検出および分析は、出口ポート26内で行うことができる。
【0194】
図4を参照すると、サンプルをデバイス10に装填するためのサンプルポート11が提供される。さらに、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネル16に導入するためのサンプルチャネル12を含むデバイス10が提供される。補助流体の流れを充填するために、補助入口ポート13が設けられている。補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネル16に導入するために、補助チャネル14が設けられる。サンプルおよび補助流体の流れは、真空または正圧を使用して、サンプルチャネル12および補助チャネル14にそれぞれ装填される。
【0195】
分配チャネル16は、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。サンプルチャネル12の一部および補助チャネル14の一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置される。
【0196】
2つ以上の毛細管チャネル18が下流に設けられ、分配チャネル16と流体連通して、到達した定常状態の流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネル18のそれぞれに移動するようにする。毛細管チャネル18のそれぞれの一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置される。出口ポート26が下流に設けられ、毛細管チャネル18と流体連通している。
【0197】
図4に示されるように、成分の検出は、毛細管チャネル18内で、より具体的には、毛細管チャネル18の曲がりくねった領域20内で行うことができる。
【0198】
図4に示すようにデバイスを使用すると、ユーザは背景信号を考慮して成分を正確に測定できる。背景信号のソースには、蛍光、吸収、補助流体からの反射および散乱、チップ材料、およびより広い光機械システムが含まれるが、これらに限定されない。
【0199】
図4に示すデバイス10の背景信号は、検出器を使用して補助チャネル14で測定することができる。特に、補助チャネル14の曲がりくねった領域14で背景測定を行うことができる。次いで、この背景信号を、下流毛細管チャネル18で得られた測定値から差し引いて、背景補正測定値を導き出すことができる。
【0200】
背景信号とサンプルの付着を考慮するには、次の手順が必要である。システムの背景信号は、サンプルチャネル12で、特にサンプルチャネル12の曲がりくねった領域20で測定される。次いで、この背景信号を、下流毛細管チャネル18で得られた測定値から差し引いて、分配比の背景補正測定値を導き出すことができる。サンプルチャネル12の曲がりくねった領域20で測定された信号が測定され、サンプルの付着をチェックするために、毛細管チャネル18の曲がりくねった領域20で下流で得られた測定値の合計と比較される。背景信号を考慮することにより、ユーザはサンプルの濃度測定値を補正することができる。
【0201】
図5Aから5Cを参照すると、流体チャネルの検出領域44の図が示されている。流体チャネルは、サンプルチャネル、補助チャネルおよび/または毛細管チャネルであり得る。光学検出領域であってもよい検出領域44は、マイクロ流体チャネルの近接したセグメント48によって作成することができる。検出領域は、
図5Aおよび5Bに示されるように、曲がりくねった構成44の形態であってもよい。
図5Aに示すような形状は、流体チャネル内に気泡が閉じ込められるリスクを大幅に低減できる。この形状により、流体の流れ内の成分の測定精度が大幅に向上する。曲がりくねった構成を含むチャネルの一部は、チップ上の流体抵抗ネットワークの一部を形成することができる。
【0202】
1つまたは複数の成分を含む流体の流れが検出領域44に入ると、流体の流れは、チップ上に設けられた圧力解放バルブによって検出領域44内で停止することができる。
図5Aおよび5Bに示すように、流体チャネルの曲がりくねった領域44内の1つまたは複数の成分を検出するために、検出器(添付の図面には図示せず)を設けることができ、曲がりくねった領域44の検出領域46を選択することができる。好ましくは、検出器は光学検出器である。
【0203】
流体チャネルの曲がりくねった部分44の各セグメントまたは領域48の間の間隔は互いに接近していてもよい。いくつかの実施形態では、チャネルの曲がりくねった部分44のセグメントまたは領域48間の間隔は、一定であってもよいし、チャネルの曲がりくねった領域44全体に沿って変化してもよい。いくつかの実施形態では、曲がりくねった部分は、蛇行構成を含む。
【0204】
曲がりくねった部分44の各セグメント48間の間隔は、約10から50μm離れているか、または10から30μm離れていてもよい。いくつかの例では、各セグメント48間の間隔は、10、15、20、25、30、35、40、または45μmを超えて離すことができる。一部の例では、各セグメント間の間隔は、50、45、40、35、30、25、20、または15μm未満あり得る。任意選択で、各セグメント間の間隔は約30μmである。
【0205】
セグメントまたは領域48間の間隔を狭くすると、チップ材料によって引き起こされる背景信号の量を最小限に抑え、所与の光学検出領域46に利用可能な検出量を最大にすることによって、光学精度および感度を向上させることができる。光学系に対するチップの高精度位置決めの必要性を回避するために、光学照明または検出は、
図5Aの検出領域46によって示されるように、検出領域内に良好に保たれる。
【0206】
図5Bを参照すると、毛細管チャネルなどの流体チャネルの検出領域44の代替実施形態の図が提供され、
図5Bは、検出領域46を検出領域44の入口端50に近づけることが可能であることを示している。サンプルの付着は、チャネルに沿って発生し得るため、検出領域44の入口端50よりも、検出領域44の出口端51でのサンプル付着が多くなる。したがって、検出領域44の入口端50付近に検出領域46を設けることにより、タンパク質付着によって影響を受けていないサンプルの検出を最大化することができる。
【0207】
さらに、毛細管チャネル、サンプルチャネルまたは補助チャネルであり得る流体チャネルの一部は、
図5Cに示されるように、螺旋構成52を含み得る。螺旋構成52の各セグメント48間の間隔は、10から50μm離すことができ、または10、15、20、25、30、35、40、または45μmを超えて離すことができる。いくつかの例では、螺旋構成52の各セグメント48間の間隔は、50、45、40、35、30、25、20、または15μm未満であり得る。
【0208】
任意選択で、螺旋構成52の各セグメント48間の間隔は約30μmである。光学的精度および感度を向上させるために、曲がりくねった領域の任意の形状または構成を提供できることを当業者は理解するであろう。
【0209】
本明細書に開示される本発明は、複数のマイクロ流体回路を含むマイクロ流体チップを提供する。本発明は、マイクロ流体チップを毛細管充填する方法にも関する。本明細書に開示されているように、特に明記しない限り、成分は生体分子と呼ばれることがある。成分の例は、タンパク質、ペプチド、エキソソーム、抗体または抗体断片、DNAまたはDNA片、RNA、siRNAまたはmRNAなどのヌクレオチド、または多糖であり得るが、これらに限定されない。
【0210】
本明細書で定義されるように、特に明記しない限り、「生物物理学的特性」という用語は、蛍光分光法またはマイクロ拡散サイジング(MDS)などの生物物理学的技術を使用して測定または検出できる成分の物理的および/または化学的特性を指す。測定可能な生物物理学的特性の例としては、成分の流体力学的半径、拡散率、分子量、電荷、等電点、結合親和性、結合力、濃度、質量流束、濃度流束、および/または成分の拡散速度が挙げられるがこれらに限定されない。
【0211】
図6を参照すると、チップ8が提供される。チップ8は、複数の並列マイクロ流体回路10を含む。マイクロ流体回路またはマイクロ流体デバイス10は、サンプル流体の流れおよび/または補助流体の流れなどの1つまたは複数の流体の流れで充填された毛細管であり得る。各マイクロ流体回路またはデバイス10は、システム流体を回路10に導入することができるシステム流体入口ポート13から始まるシステム流体入口または補助入口チャネルを備える。各マイクロ流体回路またはデバイス10はまた、サンプル流体を回路またはデバイス10に導入することができるサンプル流体入口ポート11で始まるサンプル流体入口チャネル12を備えてもよい。
【0212】
各入口ポート11、13は、入口ポート11、13の周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを備える。回路10は、各入口チャネル12、14と対応する入口ポート11、13との間に拡張機構部80をさらに備えることができ、それにより、拡張機構部80は、チャネルに隣接する先細部分と、ポートに隣接する湾曲部分とを備える。
【0213】
図6に示される拡張機構部80は、各チャネルと対応するポートとの間に設けられてもよく、これにより、液体を濡らすためのポート-チャネル接合部での突出した液体-空気界面の形成を助けることができる。拡張機構部は、チャネルからポートに向かって拡張する先細形状である。これにより、流体がチャネルとポートとの間に存在するような直径の大きなステップに達すると通常なら停止するため、毛細管力の下でポートを充填することができる。この効果は、ポートの周囲に流体のための最初の流れ経路を提供することによってポートに流体を引き込むようにさらに作用する環状「流体ガイド」の提供によってさらに支援される。ポートが円形の断面を有する場合、流体ガイドは環状であり得る。環の寸法は、チャネルの寸法に厳密に適合するように選択することができる。流体ガイドは、ポートの周囲全体に設けるのではなく、チャネル入口点に隣接するポートの領域にのみ設けることができる。
【0214】
分配チャネル16が提供され、システム流体または補助チャネル14およびサンプル流体チャネル12の両方と流体連通している。分配チャネル16はまた、出口ポート26で終わる2つの毛細管または出口チャネル18と流体連通している。サンプル入口チャネル12、システムまたは補助流体入口チャネル14は、分配チャネル16および毛細管または出口チャネル18とともに、Hフィルタ構成を形成することができる。
【0215】
チャネル12、14、16、18のそれぞれは、100μmまたは90、80、70、60、または50μm以下の最大幅または高さを有することができる。場合によっては、チャネルのそれぞれは、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50μm以下の最大幅または高さを有し得る。さらに、本明細書に開示されるマイクロ流体回路は、出口ポート26のそれぞれに真空源のための接続をさらに含む。
【0216】
図6を参照すると、サンプル流体の流れおよび/または補助流体の流れなどの1つまたは複数の流体の流れでマイクロ流体回路またはデバイスを毛細管充填するためのチップまたは流体装置8が提供される。流体装置8は、デバイス10を備える。
図6に示されるように、サンプル入口ポート11は、サンプルをデバイス10に装填するために提供される。デバイス10は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネル16に導入するためのサンプルチャネル12を備える。
【0217】
システム流体入口チャネル14に補助流体を装填するために、入口ポート13がシステム流体入口チャネル14上に設けられる。システム流体または補助流体は、例えば、緩衝溶液であり得るか、または水であり得る。補助チャネル14は、補助流体の流れを第2の流速で細長い分配チャネル16に導入するために提供される。さらに、上流の追加の抵抗チャネルをサンプルチャネル12および/または補助チャネル14に設けて、流体の流れの流速を制御するのを助けることができる。補助入口ポート13は、補助流体の最初の読み取りを行うためにも使用することができる。
【0218】
補助またはシステム入口ポート13およびサンプル入口ポート11は、開いた、すなわち蓋のない形状を有する。これにより、気泡の閉じ込めに利用できる場所が減少する。さらに、分配チャネル16、サンプル12、および補助チャネル14はすべて、コーティングを備えている。コーティング自体は疎水性であるが、チャネルが形成される未処理の材料よりも親水性がある。チャネル上にコーティングを設ける際に、入口ポート11、13もコーティングのモノマー層でコーティングされ、コーティングがない場合よりチャネルをより親水性にする。コーティングは、デバイス10の毛細管充填を助けるように選択される。ポートへのコーティングの提供は、チャネルのコーティング手順の加工物にすぎないが、全体にコーティングを提供すると、流体がポートを通過してチャネルに入るときに、コーティングされた表面とコーティングされていない表面との間の界面が回避される。
【0219】
分配チャネル16は、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成される。
【0220】
サンプル流体入口チャネル12およびシステム流体入口チャネル14の一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置され得る。サンプルチャネル12および補助チャネル14の曲がりくねった構成は、サンプルおよび/または補助チャネル12、14内の気泡を低減または排除するのに役立ち得る。
【0221】
図6に示されるように、2つ以上の毛細管チャネル18が下流に提供され、分配チャネル16と流体連通して、到達した定常状態流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネル18のそれぞれに移動するようにする。毛細管チャネル18のそれぞれの一部は、蛇行または曲がりくねった構成20で配置される。密に圧縮された毛細管チャネルにより、感度が向上し、信号対ノイズ比が低下する。場合によっては、蛇行または曲がりくねった構成20は、検出器で成分を検出するために測定を行うことができる流れ面積を増加させる。これは、単一の検出スポットで検出される毛細管チャネルの量を増加させるため、目的の成分を検出する感度を高めることができるので、有利であり得る。さらに、毛細管チャネル18の曲がりくねった構成20は、チャネル内の気泡を減少または排除するのにも役立ち得る。
【0222】
図6に示すように、分配チャネル16内の流体は、少なくとも2つの毛細管チャネル18に流れる。毛細管チャネル18のそれぞれは、拡散および/または非拡散流体の流れを含むことができる。各毛細管チャネル18はさらに、蛇行構成20に配置された検出ゾーンまたは領域を含んでもよく、ここで、拡散および/または未拡散のサンプル流体の流れは、検出器を使用して検出することができる。
【0223】
さらに、各毛細管チャネル18に追加の抵抗チャネルを設けることができる。追加的または代替的に、追加の抵抗チャネルを、各サンプル流体チャネルおよび/または各システム流体または補助入口チャネルに提供することができる。追加の抵抗チャネルは、チップ上で抵抗を提供するように構成できる。チャネルを通る流体の流れを制御するために、チャネルの「オンチップ」抵抗が提供され得る。上流の抵抗は、分配チャネル内の流れのバランスを決定する上で支配的な要因になり得る。したがって、下流の抵抗のみを最小限に抑えることができ得る。オンチップ抵抗に必要な小さな形状は製造が難しいため、オンチップ抵抗を最小限に抑えることが重要である。代替的または追加的に、下流の抵抗が上流の抵抗を超えてもよい。
【0224】
各毛細管チャネル18はまた出口ポート26を備え、出口ポート26において、サンプル流体の流れの検出を実行することができ、または事前検出が入口ポート11、13で行われた状況でさらに実行することができる。出口ポート26内の成分の検出は、出口ポート26内で利用可能な成分の量がより多いという事実に起因して感度が増加するので、有利であり得る。場合によっては、出口ポート26で背景信号を検出することができる。背景信号を取得すると、サンプル信号を補正できるため、得られるデータの品質が向上するため、便利であり得る。
【0225】
少なくとも1つの出口ポート26が下流に設けられ、毛細管チャネル18と流体連通する。検出器を用いた成分の検出および分析は、出口ポート26内で行うことができる。
【0226】
出口ポート26は開いており、コーティングされていない材料よりも親水性が高くなるようにコーティングされている。コーティング材料は本質的に疎水性であり得るが、チャネルおよびポートが形成される材料はより疎水性であり、したがってチャネルをコーティングする効果はそれらの親水性を高めることである。出口ポート26は、開放形状を有し、それらの大きさの割合は、それらが毛細管充填を確実に停止するように選択される。ポート26からの蒸発がチップ8の使用に重大な影響を及ぼさないように、ポート26の形状を選択することもできる。
【0227】
出口ポート26は、毛細管チャネル18が出口ポート26に近づくにつれて徐々に広がるトランペット形状の部分である拡張機構部80を有する。拡張は2つの部分で発生する。1つ目は、チャネルから外側に向かってまっすぐに側面が先細であり、2つ目は、チャネルがポートに到達するにつれて断面がさらに増加する曲線部分である。湾曲部分は半径0.2mmの円弧として形成されるが、円の半径は0.05mmと0.4mmとの間であってもよい。出口ポート26は環状リングを含み、流体は優先的にトランペット部を通って環状リングの周りを流れる。理論に拘束されることを望むものではないが、トランペット形状の入口の湾曲部分と環状リングとの組み合わせは、出口ポート26内の濃度勾配を低減または根絶さえするように見える。
【0228】
これは、順番に、出口ポート26の検出読み取りが、勾配を横切る単なるスナップショットではなく、ポート26の内容物全体の真の表現であることを意味する。
【0229】
環状リングの高さは40μmで、これは出口ポート26に流れ込むマイクロ流体チャネルの高さと同じである。これにより、そうでなければ気泡の収集の場所を提供し得るステップがないことが保証される。流体はチャネルに沿って流れ、トランペット形状の開口部を通って広がり、環状リングの周りを流れて、そうでなければ閉じ込められ得る空気を押し出す。次に、流体は、気泡が形成されないように空気全体を一様に置換しながら、出口ポート26に流入するように進む。
【0230】
ポートは、穴あけまたは成形によって製造することができる。それらの特徴は、製造方法に依存しない必要がある。
【0231】
さらに、ポートは親水性であってもよい。ポートの親水性の変更により、ポートに導入された水性試薬は、湿潤液体の突き出た界面とシームレスに融合する。これにより、チップ動作での気泡の導入が排除される。装填ポートの底部の粗さは、装填された試薬をポートに均一に拡散または吸い上げるように強化/設計することができる。
【0232】
図6を参照すると、切り替え可能な圧力源(添付の図面には図示せず)を設けることができ、流体チャネル12、14、16、18を通る流体の流れを制御するように構成されている。圧力源は、シリンジポンプまたは圧力ポンプなどのポンプであり得る。圧力ポンプは、サンプル流体チャネル12および/または補助流体チャネル14に接続可能であり、チャネルに沿って流体の流れを移動させる正圧源を提供することができる。代替的または追加的に、毛細管チャネル18に設けられた出口ポート26にシリンジポンプを接続して、流体チャネルに沿って流体の流れを移動させることができる。
【0233】
検出器(添付の図面には示されていない)は、装置の設定とともに提供され得る。検出器は、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネル18のそれぞれにおいて順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成することができる。追加的にまたは代替的に、検出器は、マイクロ流体チップ上の出口ポート26のそれぞれにおいて順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成され得る。
【0234】
第2の検出器(添付図面には図示せず)を分配チャネル16の上流に設けることができる。第2の検出器は、サンプルチャネル12内の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成することができる。
【0235】
分配チャネルの上流に第2の検出器を設けることにより、背景信号を考慮して正確な測定値を得ることができる。システムの背景信号は補助チャネル内で測定され、背景信号は毛細管チャネル内のサンプル信号測定値から差し引くことができる。毛細管チャネルで検出された信号サンプルは、背景信号を差し引くことによって補正できる。
【0236】
図6に示すデバイス10の背景信号は、検出器を使用して補助チャネル14で測定することができる。次いで、この背景信号を、下流毛細管チャネル18で得られた測定値から差し引いて、背景補正測定値を導き出すことができる。
【0237】
背景信号とタンパク質付着などのサンプル付着を考慮するには、次の手順が必要である。システムの背景信号は、サンプルチャネル12で、特にサンプルチャネル12の曲がりくねった領域20で測定される。次いで、この背景信号を、下流毛細管チャネル18で得られた測定値から差し引いて、分配比の背景補正測定値を導き出すことができる。サンプルチャネル12の曲がりくねった領域20で測定された信号が測定され、サンプルの付着をチェックするために、毛細管チャネル18の曲がりくねった領域20で下流で得られた測定値の合計と比較される。背景信号を考慮することにより、ユーザはサンプルの濃度測定値を補正することができる。
【0238】
図7に示されるように、1つまたは複数の流体の流れで充填された毛細管であり得る、マイクロ流体回路またはマイクロ流体デバイス10の代替の実施形態が提供される。各マイクロ流体回路またはデバイス10は、システム流体を回路10に導入することができるシステム流体入口ポート13から始まるシステム流体入口または補助入口チャネルを備える。各マイクロ流体回路またはデバイス10はまた、サンプル流体を回路またはデバイス10に導入することができるサンプル流体入口ポート11で始まるサンプル流体入口チャネル12を備えてもよい。
【0239】
各入口ポート11、13は、入口ポート11、13の周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを備える。回路10は、各入口チャネル12、14と対応する入口ポート11、13との間に拡張機構部80をさらに備えることができ、それにより拡張機構部80は、チャネルに隣接する先細部分と、ポートに隣接する湾曲部分とを備える。
【0240】
分配チャネル16が提供され、システム流体または補助チャネル14およびサンプル流体チャネル12の両方と流体連通している。分配チャネル16はまた、出口ポート26で終わる2つの毛細管または出口チャネル18と流体連通している。分配チャネル16を有するサンプル入口チャネル12およびシステムまたは補助流体入口チャネル14は、毛細管または出口チャネル18と共にHフィルタ構成を形成する。
【0241】
マイクロ流体回路内の流体チャネル12、14、18の一部は、遅延領域90を含み、これを使用して、1つまたは複数の流体の流れによる1つまたは複数のチャネルの毛細管充填を遅らせることができる。例えば、サンプル入口チャネル12、システム入口チャネル14および/または毛細管チャネル18は、遅延領域90を含み得る。遅延領域90は、毛細管充填をマイクロ流体回路上の好ましいチャネルにガイドするために使用することができる。これにより、試薬の導入時でも、汚染のない参照測定が可能になる。毛細管チャネル18内の遅延領域90は、試薬がマイクロ流体回路の自動充填の完了前に導入される場合、試薬の封じ込め領域として使用することもできる。継続的な毛細管充填により、様々なチャネルから試薬が引き込まれ続けるが、遅延または封じ込め領域90は依然として任意の試薬がマイクロ流体回路の参照測定位置に入るのを防ぐ。
【0242】
図8を参照すると、ポート26の周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイド82を備えるポート26が示されている。追加的にまたは代替的に、ポートは入口ポートであり得る。
図8に示されるように、ポート26は、この場合は
図8に示される毛細管チャネル18であるチャネルと、対応するポート26との間に拡張機構部80をさらに含む。拡張機構部80は、チャネル18に隣接する先細部分86と、ポート26に隣接する湾曲部分84とを備える。
【0243】
図9Aから9Eを参照すると、器具92の例が示され、チッププレート94上に存在する複数のマイクロ流体チップ96のそれぞれにおける流体中の1つまたは複数の成分の1つまたは複数の生物物理学的特性の測定値を通信するように構成されたユーザインターフェース98を含む。
【0244】
複数のマイクロ流体チップ96を含むチッププレート94は、どのマイクロ流体チップ96がチッププレート94上で使用されたかを検出するように動作する器具92に挿入されるように構成される。ユーザインターフェース、特に器具92に配置されたディスプレイパネル98は、次いで、この情報をユーザに表示することができる。ディスプレイは、各マイクロ流体チップ96に関する情報を提供する。この情報は、各マイクロ流体チップ96が使用されたかどうか、したがって次の実験に利用できるかどうかに関するバイナリ表示であり得る。場合によっては、ディスプレイは、実験中に使用中のプレート94の画像を表示することもできる。
【0245】
器具92はまた、チッププレート94上に配置された、バーコードなどの固有の認証印を検出して読み取るように構成されたリーダーモジュール(添付の図面には図示せず)を含んでもよい。固有の認証コードの他の形態をチッププレート上で使用することができる:例えば、固有の数字のセット、バッチコード、QRコード(登録商標)、または各チッププレート94に固有の文字と数字の組み合わせである。あるいは、認証印は、NFCまたはRFIDタグに保存されてもよい。チッププレート94がその有効期限を過ぎた場合、器具92は、
図9Eに示すように、この情報をユーザに表示することができる。
【0246】
例
以下の例は、本明細書に開示される本発明の1つまたは複数の態様および実施形態に適用可能である。
【0247】
活性位置検出
図10Aおよび10Bを参照すると、デバイスは、デバイスまたはマイクロ流体チップ上に提供される1つまたは複数の基準100を備えることができる。基準100を利用して、1つまたは複数のポートの位置および/または1つまたは複数のチャネルの曲がりくねった部分など、デバイス内の特定の特徴の検出位置、すなわちX、Yおよび/またはZ位置を決定することができる。
図10Aに示す基準100のカメラ画像、および基準検出アルゴリズムの出力を
図10Bに示す。内側リング101と外側リング103の直径は、それぞれ約0.96mmと1.04mmである。
【0248】
基準検出アルゴリズムの実装は次のようになり得る。チップの基準はカメラで光学的に画像化され、次に画像処理アルゴリズムを使用して、捕捉された画像内の基準の位置が特定される(以降、基準位置検出アルゴリズムと呼ばれる)。別のアルゴリズムでは、シャープネスメトリックを使用して焦点を数値で示す(以降、焦点検出アルゴリズムと呼ぶ)。位置決めアルゴリズムには、十字の特徴または円の特徴を使用することができる。
【0249】
焦点検出アルゴリズムは、捕捉された基準の画像に縁勾配プロセスを適用して、ピクセルからピクセルへの変化の大きさを示す。画像の焦点が合っていない場合、ピクセル間の差は、焦点が合っている画像の場合よりも小さくなる。結果として得られる縁勾配プロセスのピクセルの合計は、相対的な焦点の堅牢な指標を提供する。
【0250】
基準位置検出アルゴリズムは、基準の入力画像にも縁勾配を適用する。基準の円形の特徴の2つの縁は、画像内の基準を特定するために使用される。次に、予想される直径の適切なテンプレート円が画像と畳み込まれる。畳み込みの結果は、基準の中心にピーク値がある。得られたピーク値の信頼度は、ピーク周辺のピクセルのヒストグラムを分析し、それを画像全体のピクセルのヒストグラムと比較することで計算できる。信頼度の高い結果では、検出されたピークの周囲に高い値のピクセルの大部分が含まれるが、信頼度の低い結果では、高い値のピクセルの空間的な広がりが大きくなる。
【0251】
基準検出アルゴリズムは、予想される中心位置から±400μmのオフセット範囲、横方向の中心位置精度が約10μmの基準を確実に検出できる。
【0252】
位置決め精度は、アルゴリズムではなく、画像化システムの光学解像度によって基本的に制限され、レンズの解像度を上げることで向上させることができる。
【0253】
基準の代わりに、出口ポートやチャネルの特定の部分など、チップ上の他の特徴の位置を検出することができる。1つまたは複数の出口ポートまたは検出チャンバや検出チャネルなどのチャネルの特定の部分の位置を自動的に検出することは、光学検出器とチップ上の検出特徴の位置との最適な位置合わせを可能にするため、有利であり得る。
【0254】
検出位置微調整
いくつかの例では、品質チェックを提供するために、検出領域の明視野または蛍光画像を撮影することができる。これは、ユーザまたは装置が明視野画像を利用して光学検出器の位置を調整できることを意味する。光学検出器は蛍光検出器であり得る。いくつかの実施形態では、検出器は、光電子増倍管(PMT)検出器であり得る。PMT検出器の使用は、感度が高いため有利である。検出位置の微調整により、傷、ゴミ、付着物などの異常を回避することができる。このような異常を回避することで、信号のより正確な測定が可能になる。カメラを使用して明視野または蛍光画像を撮影することができる。カメラの使用は、領域を走査する必要なく画像を提供するため、有利であり得る。
【0255】
品質チェックは、気泡、繊維、または大きな傷などの極端な異常が特定された場合、測定データを破棄するためにも使用できる。
【0256】
共焦点検出
場合によっては、マイクロ流体デバイス上の検出ポートまたは検出チャンバなどの検出領域は、100nm~1mmの直径を有する(共焦点)検出スポットに対して十分に大きい直径を有し得る。ポートで共焦点検出を使用することは、検出測定がポートの液体充填高さに依存しない可能性があることを意味するが、それでも大きな検出量への十分なアクセスがある。
【0257】
いくつかの例では、サンプル流体の蛍光信号は、マイクロ流体デバイスの出口ポートまたは検出チャンバで測定することができる。マイクロ流体デバイスの出口ポートでは、検出チャンバまたはチャネルと比較して、より多くの量のサンプルが存在し得る。
【0258】
蛍光液体の増加した厚さをスケーリングすることにより、例えば、約1.2mm対150μmのように、蛍光信号を8倍強くすることができる。
【0259】
本明細書に開示されているように、特に明記しない限り、「共焦点」という用語は、最適化されたレンズとアパーチャの組み合わせを使用して、検出器で測定された全蛍光パワーに寄与するサンプル内の領域を制御することを意味する。これらの値を適切に設定すると、液体表面付近からの寄与が減少するため、液体の量の不確実性、およびそれによる液体の高さの不確実性は、推定サイズ比にほとんど影響を与えない。この蛍光検出量の横方向と軸方向の範囲を決定する2つのパラメーターは、対物レンズによって収集された蛍光の円錐の半角であり、これは、そのアパーチャ数(NA)と、焦点面での検出アパーチャの画像の半径に依存する。
【0260】
検出された蛍光信号のソースは、対物レンズの焦点面にある検出アパーチャの画像の周りに集中している。アパーチャと対物レンズNAは、ポートで位置加重サンプリングを作成すると考えることができる。出口ポートのほとんどは、励起光線が到達しないためサンプリングされていないか、検出されたパワー全体への寄与が少ない。おそらく最も重要なことは、本明細書に記載されている光学パラメーターを使用して、焦点面から1mm未満でパワーの寄与が1%(0.01)未満に低下することである。
【0261】
図11Aを参照すると、予想されるポートの形状とほぼ砂時計形の励起プロファイルを示す概略図が示されている。
図11Aに示すように、Sは基板102の上面である。Z-0は励起プロファイルのウエストの位置である。dは液体サンプルの深さである。
図11Bに示すように、得られた蛍光放射輝度の等高線図は、検出量がどのように制限されているかを示している。この場合、ビーム廃棄物は基板102の上に配置され、基板からの背景信号を低減する。また、水と空気の界面104を回避し、最大数の蛍光分子を捕捉するために可能な限り大きな検出量を有することが望ましい。
【0262】
いくつかの実施形態では、基板102は光学的に透明な材料から作ることができる。基板102は、弾性材料から作られてもよい。基板102は、以下の材料の1つまたは複数から作ることができる:ポリマー、熱可塑性プラスチック、フッ素樹脂、ガラス、石英ガラス、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、および/またはポリカーボネート。
【0263】
ほんの一例として、ポートの直径は100μm~25mmの間であり、または、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、5mm、10mm、15mm、または20mmを超え得る。場合によっては、ポートの直径は、25mm、20mm、15mm、10mm、5mm、1mm、900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、400μm、300μm、または200μm未満であってもよい。通常、ポートの直径は0.8mm、1.2mm、または2mmであり得る。
【0264】
ポートの高さは200mから5mmの間、または300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、または4mmを超え得る。場合によっては、ポートの高さは、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、400μm、または300μm未満であってもよい。通常、ポートの高さは0.8mm~2mmの間であり得る。
【0265】
共焦点スポットのZ深さ(放射輝度が1/e2に低下する距離によって与えられる)は、200nm~2mmの間であり得る。好ましくは、Z深さは、同様のサイズであるが、ポート高さの最大0.8倍か、ポート高さの0.5倍か、ポート高さの0.3倍、またはポート高さの0.1倍などのポートの高さよりも小さい。好ましくは、Z深さは約400μmである。
【0266】
粘度一致
補助流体の粘度は、サンプル流体の粘度と一致させることができる。例えば、補助流体の粘度は、サンプル流体の粘度の20%、10%、5%、または1%以内であるように選択され得る。サンプルと補助流体の粘度を一致させると、サンプルと補助チャネルの抵抗の形状部分が同じ場合、サンプルと補助流体の流速のバランスを取ることができる。
【0267】
1.2~2cPの間の粘度を有する補助流体を提供することにより、ヒト血清サンプルを模倣することが可能である。場合によっては、流体の粘度が1.6cPになることがある。場合によっては、PBSまたは水(好ましくはPBS)中の約14%グリセロールを提供して、ヒト血清を模倣することができる。サンプルの希釈を行う場合、サンプル流体および補助流体の粘度が約20%、10%、5%または1%以内に変化しないように、サンプル流体および補助流体を溶液で希釈することが好ましい。例えば、ヒト血清サンプル液は、PBSまたは水(好ましくはPBS)中の5~10%のHSA(ヒト血清アルブミン)の溶液で希釈することができ、または補助液(例えば、14%グリセロール)を14%グリセロールのPBSまたは水で希釈することができる。グリセロールは十分に不活性であり、容易に入手できるため、グリセロールを使用して粘度が一致した流体を作成することは有利である。
【0268】
サンプルと補助流体の粘度を一致させること、および、サンプルと補助流体を、粘度を実質的に変化させない他の流体で希釈することには、サンプルと補助流体の粘度が希釈後も同じであるという利点があり、したがって、(1)PBSなどの低粘度流体での動作と比較して、それらの相対流速は変化せず、(2)サンプルはほぼ均一な粘度フィールドで拡散する。
【0269】
粘度補正
サンプル流体(蛍光プローブなし)の粘性および蛍光背景信号などの背景信号は、実験の前後に各ポートの充填レベルおよび総蛍光を記録することによって測定することができる。例えば、後方反射励起光のz走査と、ポートなどの検出領域の内容物の蛍光測定を使用する。充填レベルの違いにより、各ポートを出入りした量が得られ、チップの形状抵抗と合わせて、チップのチャネルのそれぞれの粘度を計算できる。一緒に、粘度と背景信号を使用して、蛍光プローブを含む実験の背景を補正できる。マイクロ流体チップのすべてのチャネルがまったく同じ形状を持っていない限り、粘度補正を実行することは自明ではないことに注意されたい。言い換えれば、あるチャネルで測定された覆われていない背景蛍光値を、別のチャネルで測定されたサンプルの蛍光値から単純に差し引くことは不可能である。
【0270】
サンプル流体の粘度は、補助ポートの影響が無視できる2つの入口ポートの平均蛍光と、出口ポートの平均蛍光を比較することによって決定することもできる。サンプル流体の粘度が補助流体よりも低い場合、下流の蛍光は上流の蛍光よりも高くなり、逆の場合も同様である。測定された粘度は、背景補正のために蛍光値と一緒に使用することもできる。
【0271】
いずれの場合も、測定されたサイズは、測定または予測された粘度値に対して補正できる。
【0272】
実行時間調整
総実行時間は、以下の表1に示すように、測定または予測された粘度に従って調整できる。
表1-異なる流体力学的半径Rhの測定または予測された粘度に従って調整された合計実行時間
最小-最大実行時間は10秒-10時間である。
通常の実行時間は約1~15分である。
【表1】
【0273】
Z走査
最大量の蛍光信号を検出するために検出ポート内の最適な位置を検出するために、Z-走査を実行できる。この場合、マイクロ流体デバイスの底部を形成するフィルムを提供することができる。次に、チップの底部を形成するフィルムの位置を検出するために、後方反射励起光を記録しながら、光学検出器によってZ走査を実行できる。
【0274】
フィルムのZ位置が不明な場合は、広い走査範囲を選択できる。フィルムのZ位置が、例えば基準位置測定からおおよそわかっている場合、小さい走査範囲を選択することができる。基準Z位置が不明である一例では、Z走査範囲は1~1.5mmまたは1から5mmである。おおよその焦点位置が基準焦点検出アルゴリズムからすでに決定されている場合の典型的な走査範囲は、フィルム位置を特定する場合、200~400μmになる。液体と空気の界面を測定する場合、必然的に1~1.5mmの間の長い走査範囲が必要になり得る(Z走査プロット、下記参照)。
【0275】
フィルム上の最適な検出位置を特定するために、蛍光サンプルを測定するときの共焦点光学系の焦点位置決めは、特定されたチップフィルム位置に対して相対的に行われ、すなわち、基準位置であるZ=0のとき、これは、ポートを介して走査し、後方反射励起(BRE)光を測定することによって特定できる。焦点位置は、Z=0位置の上または下のいずれかになり得る。つまり、Z_focus=+/-dzである。
【0276】
図12を参照すると、プロットは、最大の蛍光パワーの寄与がフィルムと液体の界面から約0.200mmであることを示している。したがって、ポートからの蛍光信号を最大化するために、Z_focusの位置は約0.2mmである必要があり、光学系と共焦点スポットのターゲットサイズによって異なる。
【0277】
場合によっては、検出ポート内の液量にやむを得ない変動が生じることがある。したがって、0.2mmの最適値からのわずかな調整またはオフセット、つまり焦点をフィルムの表面に近づけることを使用して、液体の高さのばらつきの影響を減らすことができる。より小さなオフセットを使用する利点は、結果として生じる蛍光信号の分散が減少することである。しかし、結果として、検出量も減少し得る。このトレードオフが有利であり得る状況があり得る。特に、濃度の高いサンプルおよび/または明るいサンプルの場合、トレードオフが複数のポート/回路全体での分散の減少である場合、検出量の減少は問題にならない場合がある。最適値よりも高いオフセットを使用しても利点はないようである。したがって、z位置決めの範囲は-0.2~0.2mmである。場合によっては、z位置決めの範囲は-1mmから+5mmの間であり得る。
【0278】
液体レベル
図13を参照すると、蛍光液体で充填されたチップポートの焦点/Z位置の範囲にわたって取得された蛍光信号および後方反射励起信号を示すプロットが提供されている。
図13に示すプロットを分析して、ポート内の液体レベルを決定できる。
【0279】
最高強度のBREピークは空気膜界面からの反射であり、これはチップに対して焦点を正確に位置決めするために使用される。第2の強度の低いBREピークは、液体と空気の界面からの反射である。蛍光信号は、これら2つのBREピークの間の位置で最大値を示す。
【0280】
これらの2つのピーク間の距離は光路長(OPL)であり、液体/材料の屈折率を乗算することにより、液体の深さ/充填高さ/厚さに直接変換できる。サンプルの屈折率は、1.33(水)~1.37(ヒト血清)の範囲になる。
【0281】
充填高さの決定の精度は、励起放射照度と測定時間、および液体の屈折率推定によって制限されるBRE信号の信号対雑音比(したがって、2つのピーク位置を検出する能力)に依存する。
【0282】
充填高さの決定により、流体力学的抵抗の決定が可能になり、その後、チャネルの粘度または形状特性の決定が可能になる。追加的にまたは代替的に、充填高さを決定することは、液体の漏れ、閉塞、および/または乾燥のチェックなどの品質チェックプロセスを提供することもできる。
【0283】
事前測定またはバッチ特性化された抵抗値
複数のマイクロ流体デバイス間の抵抗が異なると、マイクロ流体デバイスのそれぞれの間のチャネルを通る流速の分配に違いが生じ得、マイクロ流体チップを介して引き出される補助流体とサンプル流体の量、および拡散チャネルの後に流れ得る流体の量を含む。複数のマイクロ流体デバイスにわたって一様な抵抗セットを提供するために、各マイクロ流体チップについて事前に測定された、またはバッチで特性化された抵抗値を実行して、チャネルネットワークを通る流速の変化について測定されたサイズを補正することができる。この情報は、NFCタグまたはQRコードなどのレーザーマーキングなどの任意の印形式で保存することができる。追加的にまたは代替的に、各個々の回路の抵抗値は、実験前、実験中、または実験後に測定することができ、記録された値を使用して測定サイズを補正することができる。これらの抵抗値は、NFCタグやレーザーマーキングなどの任意の印形式で保存できる。
【0284】
器具によるプライミング
本明細書に開示される器具は、毛細管現象によってチャネルを通って移動する液体-空気界面の固定および/または停止を克服するために、チップに小さな圧力パルスを与えることができる。したがって、より高いプライミング成功率を達成することができる。
【0285】
補助流体を補助ポートにピペッティングした後、サンプルポートのステップが流体ガイドの形状の結果として毛細管の流れを止めるまで、毛細管が充填される。これにより、サンプル流体と補助流体が接触して空気のない結合を形成するのを防ぐことができる。これは、サンプル流体がウェルの底に接触し、ポートの底の周りに空気の環を閉じ込めるためである。出口ポートで真空中で実行する前に、正圧(50~1000mbar)パルス(0.05~5秒)が出口ポートに適用され、サンプル補助ポートで2つの液体界面が接合され、流体経路に問題のある気泡が発生しない。したがって、気泡のない界面接続を達成するために、マイクロ流体における停止ステップの後に、逆圧力パルスが流体に結合することは明らかであろう。
【0286】
条項
【0287】
条項1
複数の並列マイクロ流体回路を含み、各回路は、システム流体を回路に導入することができるシステム流体入口ポートで始まるシステム流体入口チャネルと、サンプル流体を回路に導入することができるサンプル流体入口ポートから始まるサンプル流体入口チャネルと、を含み、各入口ポートは、入口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを備え、各入口チャネルと対応する入口ポートとの間に拡張機構部をさらに含み、拡張機構部は、チャネルに隣接する先細部分と、ポートに隣接する湾曲部分とを含み、システム流体チャネルおよびサンプル流体チャネルの両方と流体連通する分配チャネルと、出口ポートで終わる2つの出口チャネルと、を含み、出口チャネルは分配チャネルと流体連通し、チャネルのそれぞれの最大幅または高さは50μm以下であり、出口ポートのそれぞれに真空源への接続をさらに含む、チップ。
【0288】
条項2
拡張機構部の湾曲部分が、0.05mmと0.4mmとの間の半径を有する、条項1に記載のチップ。
【0289】
条項3
拡張機構部の湾曲部分が0.2mmの半径を有する、条項1から2のいずれか一項に記載のチップ。
【0290】
条項4
各出口ポートが、出口ポートの周囲の少なくとも一部の周りに延在する流体ガイドを含む、条項1から3のいずれか一項に記載のチップ。
【0291】
条項5
チャネルのそれぞれが、サンプルの付着を防ぎ、回路の効率的な充填を可能にするように構成されたコーティングを備える、条項1から4のいずれか一項に記載のチップ。
【0292】
条項6
チャネルが40μmの最大寸法を有する、条項1から5のいずれか一項に記載のチップ。
【0293】
条項7
チャネルが、その最大寸法に対して垂直に25μmの範囲を有する、条項1から6のいずれか一項に記載のチップ。
【0294】
条項8
コーティングが親水性である、条項1から7のいずれか一項に記載のチップ。
【0295】
条項9
コーティングが疎水性である、条項1から8のいずれか一項に記載のチップ。
【0296】
条項10
チップが8個のマイクロ流体回路を含む、条項1から9のいずれか一項に記載のチップ。
【0297】
条項11
各出口ポートが開放ポートである、条項1から10のいずれか一項に記載のチップ。
【0298】
条項12
拡張機構部が、少なくとも1つの試薬を含むように構成されている、条項1から11のいずれか一項に記載のチップ。
【0299】
条項13
システム流体チャネルが親水性コーティングを備えている、条項1から12のいずれか一項に記載のチップ。
【0300】
条項14
サンプル流体チャネルが親水性コーティングを備えている、条項1から13のいずれか一項に記載のチップ。
【0301】
条項15
システム流体チャネルが、システム流体をシステム流体チャネルに装填することができるポートを備え、ポートの表面を粗くすることができる、条項1から14のいずれか一項に記載のチップ。
【0302】
条項16
真空源がポンプである、条項1から15のいずれか一項に記載のチップ。
【0303】
条項17
この方法は、システム流体チャネルを介してマイクロ流体回路全体をシステム流体で毛細管充填するステップと、チャネルまたはポートのうちの少なくとも1つで背景信号を検出するステップと、サンプル流体チャネルを通して、分析されるサンプルを含む流体を導入するステップと、出口に真空を接続して、マイクロ流体回路を通して流体を引き込むステップと、出口チャネルのうちの少なくとも1つにおいて、分析されるサンプルに関連するサンプル信号を検出するステップと、背景信号を除去することにより、検出されたサンプル信号を補正するステップとを含む、条項1から16のいずれか一項に記載のチップ上のマイクロ流体回路を開始状態にする方法。
【0304】
その他の条項
【0305】
条項1
1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定する方法であって、この方法は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを細長い分配チャネルに第1の流速で導入するステップと、第2の流速で補助流体の流れを分配チャネルに導入するステップと、分配チャネル内で、定常状態分配に達するまで、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を提供するステップと、定常状態の流体の流れの少なくとも一部を分配チャネルの下流の2つ以上の毛細管チャネルに分離するステップと、定常状態分配に達した後、所定の時間に流体の流れを停止するステップと、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するステップとを含む、方法。
【0306】
条項2
サンプル流体の流れおよび補助流体の流れを分配チャネルに流すステップが、分配チャネルにわたる圧力勾配の確立によって誘導される、条項1に記載の方法。
【0307】
条項3
第1の流速と第2の流速が実質的に同じである、条項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【0308】
条項4
毛細管チャネルのそれぞれの一部が、蛇行構成または曲がりくねった構成で配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0309】
条項5
流体の流れを停止するステップが、解放可能なバルブを使用することによって達成される、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0310】
条項6
分配チャネルの上流に提供される抵抗が、分配チャネルの下流に提供される抵抗よりも大きい、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0311】
条項7
分配チャネルの下流に提供される抵抗が、分配チャネルの上流に提供される抵抗よりも大きい、条項1から5に記載の方法。
【0312】
条項8
サンプルチャネル、補助チャネル、分配チャネル、または2つ以上の下流毛細管チャネルの抵抗は、チャネルの断面積、チャネルの縦横比、チャネルの長さ、またはチャネルの表面粗さの1つまたは複数によって決定される、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0313】
条項9
2つ以上の毛細管チャネルから下流に流体連通する2つ以上のポートをさらに含む、条項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0314】
条項10
2つ以上の毛細管チャネルから流体連通し、下流にある2つ以上の検出チャンバをさらに含む、条項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0315】
条項11
マイクロ流体チップ上のポートのそれぞれにおいて、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を順次または同時に測定するステップをさらに含む、条項8に記載の方法。
【0316】
条項12
マイクロ流体チップ上の検出チャンバのそれぞれにおいて、順次または同時に上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するステップをさらに含む、条項9に記載の方法。
【0317】
条項13
流体の流れを停止するステップの間にインキュベーションステップをさらに含む、条項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0318】
条項14
1つまたは複数のポートにさらなる成分を提供するステップをさらに含む、条項12に記載の方法。
【0319】
条項15
1つまたは複数の成分の拡散性、電気泳動、拡散泳動または熱泳動移動度を測定するステップを含む、条項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0320】
条項16
成分の横方向の分配が拡散によって生じる、条項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【0321】
条項17
サンプル流体の流れ中の成分のうちの少なくとも1つの拡散係数を決定することをさらに含む、条項13から14に記載の方法。
【0322】
条項18
条項1から17のいずれか一項に記載のチップ上でマイクロ流体分析を動作する方法であって、この方法は、毛細管チャネルの少なくとも1つにおいて背景信号を検出するステップと、分析されるサンプル流体の流れを分配チャネルに導入するステップと、分配チャネル内で、定常状態の分配に達するまで、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を提供するステップと、定常状態の流体の流れの少なくとも一部を分配チャネルの下流の2つ以上の毛細管チャネルに分離するステップと、毛細管チャネルの少なくとも1つにおいて、分析されるサンプルに関連するサンプル信号を検出するステップと、背景信号を差し引くことにより、検出されたサンプル信号を補正するステップとを含む、方法。
【0323】
条項19
1つまたは複数の成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流体装置であって、装置は、1つまたは複数の成分を含むサンプル流体の流れを第1の流速で細長い分配チャネルに導入するためのサンプルチャネルと、第2の流速で補助流体の流れを細長い分配チャネルに導入するための補助チャネルと、を含み、分配チャネルは、定常状態分配に達した後、サンプル流体の流れから補助流体の流れへの成分の横方向の分配を可能にするように構成され、到達した定常状態流体の流れの少なくとも一部が毛細管チャネルのそれぞれに移動するように、下流に設けられ、分配チャネルと流体連通する2つ以上の毛細管チャネルと、チャネルを通る流体の流れを制御するように構成された切り替え可能な圧力源と、マイクロ流体チップ上の毛細管チャネルのそれぞれにおいて、順次または同時に、上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成された検出器と、を含む、流体装置。
【0324】
条項20
拡散チャネルが、サンプルチャネル、補助チャネル、および毛細管チャネルとともに、Hフィルタを形成する、条項19に記載の流体装置。
【0325】
条項21
毛細管チャネルのそれぞれの一部が蛇行または曲がりくねった構成で配置される、条項19から20に記載の流体装置。
【0326】
条項22
ポートをさらに備える、条項19から21に記載の流体装置。
【0327】
条項23
検出チャンバをさらに備える、条項19から22に記載の流体装置。
【0328】
条項24
分配チャネルの上流に設けられた第2の検出器をさらに備え、第2の検出器は、サンプルチャネル内の上記または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を検出および測定するように構成されている、条項19から23に記載の流体装置。
【0329】
本発明の様々なさらなる態様および実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0330】
「および/または」は、本明細書で使用される場合、2つの指定された特徴または成分のそれぞれの、他方を伴った、または伴わない特定の開示とみなされるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、(i)A、(ii)B、および(iii)AおよびBのそれぞれの特定の開示とみなされるべきであり、あたかもそれぞれが本明細書において個別に記載されているかのようである。
【0331】
文脈上別段の指示がない限り、上記の特徴の説明および定義は、本発明の任意の特定の態様または実施形態に限定されず、記載されるすべての態様および実施形態に等しく適用される。
【0332】
さらに、当業者は、本発明をいくつかの実施形態を参照して例として説明したが、開示された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく代替実施形態を構成することができることをさらに理解するであろう。
【国際調査報告】