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特表2023-539850チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を調節する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を調節する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20230912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61K38/18 ZNA
A61P35/00
A61K9/127
A61K9/51
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/5377
A61K31/517
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513146
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 SG2021050500
(87)【国際公開番号】W WO2022045976
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10202008169Q
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508320723
【氏名又は名称】シンガポール ヘルス サービシーズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チョン、 フイ ティーン
(72)【発明者】
【氏名】メンデス、 ロドリゲス―ジュニア、 ドリバル
(72)【発明者】
【氏名】アイヤー、 ナラヤナン ゴパァラクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】レオン、 フイ、 サン
(72)【発明者】
【氏名】タン、 ダニエル、 シャオ-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】トー 、ダレン、 シェン ヨン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084DB52
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA37
4C084MA41
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA37
4C086MA41
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC42
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書において、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するEGFR関連がんの感受性を増大させる方法、ならびにEGFR関連がんに罹患している対象を治療する方法が開示されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するEGFR関連がんの感受性を増大させる方法であって、治療有効量の上皮増殖因子受容体アイソフォームDを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
EGFR関連がんに罹患している対象を治療する方法であって、
・有効量の上皮増殖因子受容体アイソフォームDを前記対象に投与すること;および
・前記EGFR関連がんを治療するために使用される有効量のチロシンキナーゼ阻害剤を前記対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項4】
前記上皮増殖因子受容体アイソフォームDが、エクソソームの上皮増殖因子受容体アイソフォームDである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記上皮増殖因子受容体アイソフォームDが、エクソソーム製剤、リポソーム製剤、ナノキャリアーおよびナノ粒子の1つまたは複数として提供される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、上皮増殖因子受容体アイソフォームDとは別々に、それの前に、それの後に、または、それと組み合わせて投与される、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、EGFR阻害剤である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、エルロチニブHCl、ラパチニブ、ダコミチニブ、TAE684、アファチニブ、ダサチニブ、saracatinib、veratinib、AEE788、WZ4002、icotinib、オシメルチニブ、BI1482694、ASP8273、EGF816、AZD3759、ナザルチニブ、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブおよびラパチニブからなる群から選択される;または前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、アファチニブおよびダコミチニブ、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記EGFR関連がんが、頭頸部がん、食道がん、膀胱がん、子宮頸部がん、皮膚がんおよび肺がんからなる群から選択される、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記頭頸部がんが、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)または口腔扁平上皮癌(OSCC)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記皮膚がんが、皮膚扁平上皮がんである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年8月25日に出願されたSG仮出願第10202008169Q号(参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、がんの治療において使用される化合物に対する応答を調節する化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
扁平上皮がん(SCC)は、再発、転移、および結果として死に至る傾向がある、世界的に最も一般的な致死性のがんの1種である。頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)は、このグループのがんの典型である。扁平上皮がんは、かなりの割合で上皮増殖因子受容体(EGFR)シグナル伝達依存性である証拠があるにもかかわらず、モノクローナル抗体および/またはチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)によるこのシグナル伝達経路の標的化は、ある程度の成功を収めているにすぎない。
【0004】
よって、チロシンキナーゼ阻害剤療法に対する腫瘍の応答を増大させる方法を提供するという、いまだ満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
一つの例において、本開示は、治療有効量の上皮増殖因子受容体アイソフォームDを、それを必要とする対象に投与することを含む、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するEGFR関連がんの感受性を増大させる方法に関する。
【0006】
別の例において、EGFR関連がんに罹患している対象を治療する方法であって、前記対象に有効量の上皮増殖因子受容体アイソフォームDを投与すること;および前記対象に前記EGFR関連がんを治療するために使用される有効量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与すること、を含む方法が開示される。
【0007】
本発明は、非限定的な実施例および添付の図面と組み合わせて考慮した場合に、詳細な説明に関してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、(A)ゲフィチニブに対する応答、ならびに(B)EGFR Q787Q G/G(WT)およびA/A細胞株についてのアイソフォームD mRNAとアイソフォームA mRNAの相対比を表すデータを示す。これは、EGFR一塩基多型(SNP)Q787Q A/Aを有する細胞株が、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)に対して感受性であることを示す。
【0009】
図2図2は、異なるタイムポイントに集められたNCC-HN19細胞由来の全細胞ライセートおよびエクソソームフラクションのウエスタンブロット解析の結果を示す。細胞質マーカーとしてTubbを使用し、エクソソームマーカーとしてCD9を使用した。このデータは、EGFRアイソフォームDが、エクソソーム/細胞外ベシクル(EV)内に存在していることを示す。
【0010】
図3図3は、エクソソーム/細胞外ベシクルなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN19細胞から精製されたエクソソーム(10% NCC-HN19 EV)で処理されたNCC-HN1細胞の結果を示す。このデータは、EGFRアイソフォームDを含むエクソソーム/細胞外ベシクルが、がん細胞をチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して感作し得ることを示す。
【0011】
図4図4は、NCC-HN19細胞由来のエクソソーム(EV)含有EGFRアイソフォームDの量を次第に増やした場合の、NCC-HN1細胞の用量依存性感作を示す。このデータは、エクソソームアイソフォームD依存性感作が用量依存的であることを示す。
【0012】
図5図5は、エクソソームなし(No EV)で処理された、EGFRアイソフォームD含有エクソソーム(ベクター対照、10% HN137P pLKO-1 EV)で処理された、またはEGFRアイソフォームDに対するshRNA#1(10% HN137P shIsoD_1 EV)もしくはshRNA#2(10% HN137P shIsoD_2 EV)によってノックダウンされたエクソソームで処理されたNCC-HN1細胞の結果を示す。このデータは、EGFRアイソフォームD単独の特異的な枯渇がチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)感作作用を低減させるので、がん細胞を感作するためにEV中のEGFRアイソフォームDが必要であることを示す。
【0013】
図6図6は、エクソソームなし(No EV)で処理された、ベクターのみのエクソソーム(10% 293T pBob EV)で処理された、またはEGFRアイソフォームD過剰発現エクソソーム(10% 293T pBob-IsoD EV)で処理されたNCC-HN1細胞の結果を示す。このデータは、EV中のEGFRアイソフォームD単独の異所性発現が、細胞をEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して感作するために十分であることを示す。
【0014】
図7図7は、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブおよびエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(オシメルチニブ、ラパチニブ、ナザルチニブおよびWZ4002)と組み合わせて、ベクター対照(pBob)またはEGFRアイソフォームD(pBob-IsoD)を発現する細胞由来のエクソソームで処理されている3つの初代HNSCC細胞株(NCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M)について得られたIC50値を示す。このデータは、異所性に発現されたEGFRアイソフォームDを有するEVが、いくつかのHNSCC細胞株を、第1世代、第2世代および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)のいずれに対しても感作し得ることを示す。
【0015】
図8図8は、ゲフィチニブ、アファチニブまたはダコミチニブと組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理されている、またはEGFRアイソフォームD(pBob-IsoD)を過剰発現する細胞(293TまたはNCC-HN1)由来のエクソソームで用量を次第に増やして(0.5×、1×および2×)処理されている3つの初代HNSCC細胞株(NCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M)について得られたIC50値を示す。このデータは、異所性に発現しているEGFRアイソフォームDを有するEVが、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する感作作用を多数のHNSCC細胞株において増強すること、およびこの感作が用量依存的であることを示す。
【0016】
図9図9は、エクソソームなし(No EV)で処理された、PitStop2単独(1μM PS2)で処理された、ベクターが発現しているエクソソーム(293T pBob EV)で処理された、EGFRアイソフォームDが発現しているエクソソーム(293T pBob-IsoD EV)で処理された、ベクターが発現しているエクソソームとPitStop2(293T pBob EV +1μM PS2)で処理された、アイソフォームDが発現しているエクソソームとPitStop2(293T pBob-IsoD EV +1μM PS2)で処理されたNCC-HN1細胞の結果を示す。このデータは、PitStop2によるクラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害が、アイソフォームD含有EVの感作作用を低減させることを示す。
【0017】
図10図10は、EV非存在下(No EV)で、または1%の細菌に産生させたEGFRアイソフォームD存在下(1% v/v Bac IsoD)もしくは10%の細菌に産生させたEGFRアイソフォームD存在下(10% v/v Bac IsoD)で、ゲフィチニブで処理されたNCC-HN1の生存(survival)率(%)を示す。このデータは、組換えEGFRアイソフォームDタンパク質は、単独では、がん細胞のTKIに対する感作を増強できないことを示す。
【0018】
図11図11は、異なるチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて、NCC-HN19、NCC-HN137Pおよび293T由来の細胞外ベシクル(EV)で共処理された場合の、異なる細胞株の生存率を示す。図11Aは、NCC-HN19EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で共処理されたNCC-HN1細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN19細胞由来のエクソソーム(1× NCC-HN19EV)で処理されたNCC-HN1細胞の生存率(%)を示す。図11Bは、NCC-HN19EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で共処理されたNCC-HN120M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN19細胞由来のエクソソーム(1× NCC-HN19EV)で処理されたNCC-HN120M細胞の生存率(%)を示す。図11Cは、NCC-HN19EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で共処理されたNCC-HN182M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN19細胞由来のエクソソーム(1× NCC-HN19EV)で処理されたNCC-HN182M細胞の生存率(%)を示す。図11Dは、NCC-HN137EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で共処理されたNCC-HN1細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN137P細胞由来のエクソソーム(1× NCC-HN137P EV)で処理されたNCC-HN1細胞の生存率(%)を示す。図11Eは、NCC-HN137EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で共処理されたNCC-HN120M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN137P細胞由来のエクソソーム(1× NCC-HN137P EV)で処理されたNCC-HN120M細胞の生存率(%)を示す。図11Fは、NCC-HN137EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で共処理されたNCC-HN182M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、またはNCC-HN137P細胞由来のエクソソーム(1× NCC-HN137P EV)で処理されたNCC-HN182M細胞の生存率(%)を示す。図11Gは、NCC-HN19EVおよびNCC-HN137EVと、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で共処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞のヒートマップを(概略として)示す。このヒートマップは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブおよびダコミチニブ)および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(TKI only)で処理された、またはNCC-HN19細胞由来のエクソソーム(NCC-HN19 EV)で処理された、もしくはNCC-HN137P細胞由来のエクソソーム(NC-HN137P EV)で処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞についてのIC50値を示す。図11Hは、第1世代(ゲフィチニブ)または第2世代(アファチニブおよびダコミチニブ)チロシンキナーゼ阻害剤と、ベクター対照293T細胞またはアイソフォームD発現293T細胞から単離されたエクソソームで共処理されたNCC-HN1細胞およびNCC-HN120M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ)、および第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブまたはダコミチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、または293T対照細胞由来のエクソソーム(1× 293T pBob EV)で処理された、またはアイソフォームD過剰発現293T細胞由来のエクソソーム(1× 293T pBob-IsoD EV)で処理されたNCC-HN1細胞およびNCC-HN120M細胞の生存率(%)を示す。このデータは、全体として、細胞(HN19およびHN137P)(これらは、内因的なEGFRアイソフォームDの発現が高い)から集められたEVは、種々のTKI耐性HNSCC細胞株(HN1、HN120MおよびHN182M)に適用された場合、TKI耐性HNSCC細胞株(HN1、HN120MおよびHN182M)を、第1世代、第2世代および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して感作することができることを示す。同様に、EVが、非HNSCC細胞株である293T(アイソフォームDが異所性に発現されている)から集められた場合、それらのEVは、同じTKI抵抗性HNSCC細胞株を、第1世代、第2世代および第3世代チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して感作することができる。
【0019】
図12図12は、エクソソームのEGFRアイソフォームDの量を次第に増やすことによって、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)処理に対する感受性が調節され得るか否かを表すデータを示す。図12Aは、NCC-HN19由来のEVと、ゲフィチニブ、アファチニブまたはダコミチニブで共処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ)または第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブまたはダコミチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、または相対量で0.5×(0.5× NCC-HN19 EV)、1×(1× NCC-HN19 EV)もしくは2×(2× NCC-HN19 EV)のNCC-HN19細胞由来のエクソソームで処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞の生存率(%)を示す。図12Bは、EGFRアイソフォームDを過剰発現する293T由来のEVと、ゲフィチニブ、アファチニブまたはダコミチニブで共処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ)または第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブまたはダコミチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、または相対量で0.5×(0.5× 293T pBob-IsoD EV)、1×(1× 293T pBob-IsoD EV)もしくは2×(2× 293T pBob-IsoD EV)のアイソフォームD発現293T細胞由来のエクソソームで処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞の生存率(%)を示す。図12Cは、アイソフォームD過剰発現NCC-HN1由来のEVと、ゲフィチニブ、アファチニブまたはダコミチニブで共処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞の結果を示す。グラフは、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ)または第2世代チロシンキナーゼ阻害剤(アファチニブまたはダコミチニブ)と組み合わせて、エクソソームなし(No EV)で処理された、または相対量で0.5×(0.5× NCC-HN1 pBob-IsoD EV)、1×(1× NCC-HN1 pBob-IsoD EV)または2×(2× NCC-HN1 pBob-IsoD EV)のアイソフォームD発現NCC-HN1細胞由来のエクソソームで処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞の生存率(%)を示す。このデータは、内因的なEGFRアイソフォームDの発現が高いHNSCC細胞(HN19)、内因的なアイソフォームDの発現は低いが、過剰発現するように操作されたHNSCC細胞(HN1 pBob-IsoD)または異所性に発現しているEGFRアイソフォームDを有する非HNSCC細胞(293T pBob-IsoD)のいずれに由来するEVも、がん細胞のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する感作を、用量依存的な様式で増強できるこを示す。
【0020】
図13図13は、プロテイナーゼK消化した際の、単離されたエクソソームのウエスタンブロット解析の結果を示す。NCC-HN19から単離されたエクソソームを、Triton-X 100の非存在下(-)または1% Triton-X 100存在下(+)で、0、15、30、60分間(min)プロテイナーゼK消化した。サンプルは、EGFRアイソフォームD、EpCAMおよびALIXの存在について分析した。各レーンに、同じ量の全タンパク質をロードした。このデータは、EGFRアイソフォームDが、EpCAMと同様の様式で、EV粒子の表面に位置することを示す。
【0021】
図14図14Aは、HNSCC細胞株由来の全細胞ライセート(TL)および細胞外フラクション(EV)のウエスタンブロット解析の結果を示す。図14Bは、得られたHNSCC細胞株のIC50値を表すヒートマップを示す。図14Cは、NCC-HN19 EV(上段のパネル)、NCC-HN137P EV(下段のパネル)またはEVなし(No EV)で共処理された細胞株HNCC-HN1、NCC-HN120MおよびHCC-HN182MのIC50値を示す。このデータは、HNSCC細胞、NCC-HN19およびNCC-HN137P(分泌されるEGFRアイソフォームDの相対レベルがより高い)が、EGFR-チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)処理に対してより感受性が高いことを示す。さらに、NCC-HN19またはNCC-HN137P由来のエクソソーム/EVとEGFR-チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の共適用は、内因的なEGFRアイソフォームDの発現が低いがん細胞株(HN1、HN120MおよびHN182M)の感作を増強する。
【0022】
図15図15は、EV非存在下(No EV)またはNCC-HN19 EV(上段のパネル)もしくはNCC-HN137P(下段のパネル)存在下でゲフィチニブ、アファチニブ、またはダコミチニブで処理された、shRNA対照(pLKO1 EV)、EGFRアイソフォームDに対するshRNA鎖#1(shIsoD_1)またはshRNA鎖#2(shIsoD_2)で安定トランスフェクションされたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182MのIC50値を示す。アスタリスクは、スチューデントt検定における有意を示す:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。このデータは、ノックダウンされたEGFRアイソフォームDを含むEVによるHNSCC細胞株の処理は感作作用が低減しているので、エクソソーム/EV上のEGFRアイソフォームDがEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)共処理における感作作用の増強のために必要であることを示している。
【0023】
図16図16は、shRNA対照(pLKO-1)、EGFRアイソフォームDに対するshRNA鎖#1(shIsoD_1)またはshRNA鎖#2(shIsoD_2)で安定トランスフェクションされたNCC-HN1およびNCC-HN137P細胞の(A)相対mRNAレベルおよび(B)ウエスタンブロット解析の結果を示す。TL:全細胞ライセート;EV:単離された細胞外ベシクルフラクション。ウエスタンブロットのために、等しい量のタンパク質を各レーンにロードする。エクソソームマーカーとしてCD9が使用される。画像は、3つの独立した細胞培養実験の代表的なブロッティングを示す。このデータは、図15の実験におけるmRNAおよびタンパク質に対して、アイソフォームDのレベルが相対的に低下していることを示す。
【0024】
図17図17は、Pitstop 2(PS2)非存在下または1μM Pitstop 2(PS2)存在下でベクター対照(pBob)またはEGFRアイソフォームD(pBob-IsoD)のいずれかを過剰発現するHEK293T由来のEVで共処理された、(A)ゲフィチニブ、(B)アファチニブ、または(C)ダコミチニブで処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182Mから得られたIC50値を示す。アスタリスクは、スチューデントt検定における有意を示す:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。このデータは、HNSCC細胞におけるクラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害は、第1または第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で共処理された場合、アイソフォームD含有EVの感作作用を低減させることを示す。
【0025】
図18図18は、EV添加の8時間後におけるPitStop2で処理されたNCC-HN1細胞、または処理されていない(無処理)NCC-HN1細胞の免疫蛍光アッセイを示す。初期エンドソームコンパートメントを標識するためにEEA1を使用した。このデータは、クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害が、EGFRアイソフォームDの細胞内への取り込みを妨げることを示す。
【0026】
図19図19は、標的細胞内のRab5Aのノックダウンが、アイソフォームDエクソソーム(EV)によって付与された感作作用を低減させることを示す。図19Aは、EV非存在下(No EV)、またはベクター(pBob)もしくはアイソフォームD(pBob-アイソフォームD)過剰発現HEK293T由来のEV存在下でゲフィチニブ、アファチニブ、またはダコミチニブで共処理された、siRNA対照(siCtrl)、siRab5A strand#1(siRab5A_1)またはsiRab5A strand#2(siRab5A_2)でトランスフェクションされたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182MのIC50値を示す。図19Bは、トランスフェクション後のRab5Aの相対mRNAレベルを示す。アスタリスクは、スチューデントt検定における有意を示す:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0027】
図20図20は、標的細胞内のRab7Aのノックダウンが、アイソフォームD EVによって付与された感作作用を低減させることを示す。図20Aは、EV非存在下(No EV)、またはベクター(pBob)もしくはアイソフォームD(pBob-アイソフォームD)過剰発現HEK293T由来のEV存在下で、ゲフィチニブ、アファチニブ、またはダコミチニブで共処理された、siRNA対照(siCtrl)、siRab7A strand#1(siRab7A_1)またはsiRab7A strand#2(siRab7A_2)でトランスフェクションされたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182MのIC50値を示す。図20Bは、トランスフェクション後のRab7Aの相対mRNAレベルを示す。アスタリスクは、スチューデントt検定における有意を示す:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0028】
図21図21は、標的細胞内のEEA1のノックダウンが、アイソフォームDエクソソーム(EV)によって付与された感作作用を低減させることを表すデータを示す。図21Aは、EV非存在下(No EV)で、またはベクター過剰発現HEK293T(pBob)もしくはEGFRアイソフォームD過剰発現HEK293T(pBob-アイソフォームD)由来のEV存在下で、ゲフィチニブ、アファチニブ、またはダコミチニブで共処理された、siRNA対照(siCtrl)、siEEA1 strand#1(siEEA_1)またはsiEEA1 strand#2(siEEA_2)でトランスフェクションされたNCC-HN1およびNCC-HN182MのIC50値を示す。図21Bは、トランスフェクション後のEEA1の相対mRNAレベルを示す。アスタリスクは、スチューデントt検定における有意を示す:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。まとめると、図17~21は、処理細胞におけるエンドサイトーシスプロセスの破壊は、アイソフォームD含有EVの感作作用を低減させるであろうということを示す。このデータは、アイソフォームD EVの感作作用のための、エンドサイトーシスプロセスによって果たされる役割(roley)を強調するものである。
【0029】
図22図22は、バフィロマイシンA1非存在下または0.5nMバフィロマイシンA1存在下でベクター対照(pBob)またはアイソフォームD(pBob-IsoD)のいずれかを過剰発現するHEK293T由来のEVで共処理された、ゲフィチニブで処理されたNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182MのIC50値を示す。このデータは、リソソーム阻害が、ゲフィチニブで共処理された場合に、細胞上のEGFRアイソフォームDエクソソーム(EV)の感作作用を増強することを示す。
【0030】
図23図23は、標的細胞中のRab11Aのノックダウンが、EGFRアイソフォームDエクソソーム(EV)によって付与された感作作用を増強することを表すデータを示す。EV非存在下(No EV)で、またはベクター(pBob)もしくはアイソフォームD(pBob-アイソフォームD)過剰発現HEK293T由来のEV存在下で、ゲフィチニブ、アファチニブ、またはダコミチニブで共処理された、SiRNA対照(siControl)またはsiRab11AでトランスフェクションされたNCC-HN1およびNCC-HN182MのIC50値が示されている。このデータは、エンドソームの細胞表面へのリサイクリングの破壊が、EGFRアイソフォームD EVの感作作用を増強することを示す。理論に拘束されるものではないが、これは、EGFRアイソフォームD EVがエンドソームコンパートメント内に保持されるためであると考えられる。
【0031】
図24図24は、免疫沈降アッセイ(IP)のウエスタンブロット解析によって示されるように、エクソソームのEGFRアイソフォームDが、標的細胞上のEGFRアイソフォームAと相互作用することを表すデータを示す。図24Aは、HEK293T過剰発現ベクター(pBob)またはアイソフォームD(IsoD)由来のEVで処理したNCC-HN1細胞において、沈降のためにEGFRアイソフォームD抗体を使用した結果を示し、図24Bは、沈降のためにEGFRアイソフォームA抗体を使用した結果を示す。NC:無処理陰性対照。理論に拘束されるものではないが、EGFRアイソフォームAは、細胞表面上のEGFRアイソフォームDに対する結合相手である可能性がある。
【0032】
図25図25は、EGFRアイソフォームDエクソソーム(EV)と、アファチニブで共処理された場合、HNSCC異種移植の腫瘍負荷が低減されたことを表す折れ線グラフを示す。NCC-HN120Mを皮下移植されたBulb/cヌードマウスに対して、毎日の5mg/kgアファチニブの経口投与、およびベクター過剰発現HEK293T由来EV(pBobEV)またはEGFRアイソフォームD過剰発現HEK293T由来EV(IsoDEV)の72時間間隔の腫瘍周辺注射レジメンを開始した。これは、EGFRアイソフォームD含有EVのチロシンキナーゼ阻害剤感作作用が、in vivoの患者由来異種移植モデルにおいて再現され得ることを示す。
【0033】
図26図26は、精製されたEGFRアイソフォームDタンパク質は、単独では、細胞をゲフィチニブに対して感作しないことを表すデータを示す。ゲフィチニブと、細菌で産生され、そこから精製された形態(A)、または哺乳動物HEK293F細胞で産生され、そこから精製された形態(B)のヒトEGFRアイソフォームDタンパク質とで共処理された場合の、NCC-HN1細胞の生存率アッセイの結果が示されている。アイソフォームD過剰発現HEK293T(10% 293T pBob-IsoDEV)由来のエクソソーム(EV)を、対照(B)として使用した。これは、EGFRアイソフォームDタンパク質は、単独(言い換えると、EVを伴わない(not asoociated with)EGFRタンパク質)では、このタンパク質が細菌で産生されるか、または哺乳動物系で産生されるかに関係なく、細胞をチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して感作できないことを裏付けるものである。
【0034】
図27図27は、アファチニブと細胞外ベシクルの共処理後、マウスの体重に変化が見られなかったことを表すデータを示す。矢印は、毎日のアファチニブ経口投与と、72時間ごとの細胞外ベシクル(EV)の腫瘍周辺注射の開始を示す。これは、図25においてマウスに対して施された療法は、実験の過程の間、副作用/毒性が最小限であったことを裏付けるものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
本明細書で使用される場合、用語「EGFR」は、「上皮増殖因子受容体」(これは、細胞外タンパク質リガンドの上皮増殖因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する受容体である膜貫通タンパク質である)を指す。上皮増殖因子受容体は、受容体のErbBファミリーのメンバーであり、4つの関連性が高い受容体チロシンキナーゼ:EGFR(ErbB-1)、HER2/neu(ErbB-2)、Her 3(ErbB-3)およびHer 4(ErbB-4)のサブファミリーである。多くの種類のがんにおいて、EGFRの発現または活性に影響する変異が、がんの原因になり得る。ヒトにおけるEGFRおよび他の受容体チロシンキナーゼのシグナル伝達の欠陥は、アルツハイマー病などの疾患と関連があり、一方で、過剰発現は、多種多様な腫瘍の発生と関連がある。受容体の細胞外ドメイン上のEGFR結合部位をブロックすること、または細胞内チロシンキナーゼ活性を阻害することのいずれかによるEGFRシグナル伝達の中断は、EGFR発現腫瘍の増殖を阻害し、患者の状態を改善し得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「EGFR-AS1」は、EGFR遺伝子によって発現されるイントロンおよびエクソン20に対応する2.8 kbの配列を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「アイソフォーム」または「タンパク質アイソフォーム」は、1つの同じ遺伝子によってコードされるタンパク質の異なる形態を指す。これらのタンパク質は、構造および組成の両方が相違していてもよく、これらの相違が、単一の遺伝子のmRNAの選択的スプライシング、可変的なプロモーターの使用、またはその他の転写後修飾によって調節される。この選択的スプライシングは、プロテオームの多様性に対して大きな影響を及ぼすことが示されている。産生されるタンパク質の特異性は、タンパク質の構造/機能、発現段階、さらには細胞の種類によってもたらされる。タンパク質が多数のサブユニットを有し、各サブユニットが多数のアイソフォームを有する場合、アイソフォーム形成は、より複雑になる。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「チロシンキナーゼ」は、細胞において、リン酸基をアデノシン三リン酸(ATP)から標的タンパク質に転移させることができる酵素を指す。これは、多くの細胞の機能において、「オン」スイッチまたは「オフ」スイッチとして機能する。チロシンキナーゼは、タンパク質キナーゼのサブクラスであり、その中のチロシンキナーゼは、リン酸基を、ATPから標的タンパク質の中のチロシン残基に転移させるので、そのように名付けられた。チロシンキナーゼには、2つの既知のファミリー、すなわち受容体チロシンキナーゼ(RTK)および非受容体または細胞質チロシンキナーゼが存在し、受容体チロシンキナーゼは、貫通ドメインと、1つまたは複数の細胞外リガンド結合ドメインを含む。細胞質チロシンキナーゼは、そのような貫通ドメインも、いかなる細胞外リガンド結合ドメインも有していない。
【0039】
上述の点に照らして、用語「TKI」は、チロシンキナーゼ阻害剤(これは、チロシンキナーゼを阻害する化合物または医薬品である)を指す。チロシンキナーゼは、シグナル伝達カスケードによって多くのタンパク質を活性化するために重要な酵素である。タンパク質は、リン酸基をタンパク質に付加すること(リン酸化)(この段階をTKIが阻害する)によって活性化される。TKIは、典型的には抗がん剤として使用される。第1世代チロシンキナーゼ阻害剤は、ATP結合部位に結合してEGFRによって誘導される下流のシグナル伝達の活性化をブロックすることによって働き、通常、可逆的阻害剤が含まれる。第2世代チロシンキナーゼ阻害剤は、より強力な薬物であり、ゲフィチニブ/エルロチニブに対して抵抗性である幅広い変異スペクトルに対して拡張された阻害性を有し、これらは、それらに限定されないが、主にErbBファミリーブロッカーであり、通常、不可逆的阻害剤が含まれる。ピリミジンコア構造を有する第3世代チロシンキナーゼ阻害剤は、元のexon19delおよびL858R変異に対する活性を維持しつつ、T790Mクローンを標的にするために創出された。C797部位に結合し、かつT790M変異に対する特異性を有するので、第3世代阻害剤は、第1世代阻害剤を使用した後のT790M抵抗性を有する患者について応答性を有している。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「エクソソームの」または「エクソソーム」は、ほとんどの真核細胞のエンドソームコンパートメント内で産生される膜結合細胞外ベシクル(EV)を指す。多胞体(MVB)は、エンドソーム内腔へのエンドソーム境界膜の陥入および出芽の結果として形成される膜結合腔内ベシクル(ILV)を含有する、エンドソームの特殊化したサブセットである。MVBが細胞表面(形質膜)と融合した場合、これらのILVはエクソソームとして放出される。エクソソームは、異なるカーゴ、例えば、それらに限定されないが、タンパク質、脂質、および核酸を含み得る。これらのカーゴは、特異的に選別され、エクソソームの中にパッケージングされる。エクソソームの中にパッケージングされる内容物は、細胞の種類に特異的であり、また、細胞の状態による影響も受ける。例えば、エクソソームマイクロRNA(exomiR)およびタンパク質が選別され、エクソソームの中にパッケージングされる。
【0041】
多細胞生物において、エクソソームおよびその他の細胞外ベシクル(EV)は、組織内に存在し、また、血液、尿、および脳脊髄液を含む生体液中にも見出され得る。それらは、また、in vitroで、培養細胞から増殖培地の中にも放出される。エクソソームのサイズは親となるMVBのサイズによって制限されるので、エクソソームは、一般に、ほとんどの他の細胞外ベシクルより小さく、直径が約30~150ナノメートル(nm)、すなわち、多くのリポタンパク質と同程度のサイズであるが、細胞よりもはるかに小さいと考えられている。本開示の文脈において、用語「エクソソーム」および「細胞外ベシクル」は、互換的に使用される。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「SNP」は、「一塩基多型」(これは、ゲノム配列中の一塩基(A、T、C、またはG)が、生物種のメンバー間、またはヒトにおける対になる染色体間で変化しているか、または異なっている場合に起こるDNA配列のバリエーションである)を指す。よって、本明細書で使用される場合、SNPは、少なくとも1つのアレル中の特定の物理的位置における異なる一塩基によって特徴付けられる、任意の多型である。特定の集団内の各個体は、一緒になってその個体に固有のDNAパターンを生み出す、多くの一塩基多型を有する。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「選択的スプライシング」は、単一の遺伝子が多数のタンパク質をコードするという結果をもたらす、遺伝子発現の間の制御されたプロセスを指す。このプロセスにおいて、遺伝子の特定のエクソン(すなわち、成熟RNAの一部になる遺伝暗号の部分)は、その遺伝子から生じる、最終的な、プロセシングを受けたメッセンジャーRNA(mRNA)の中に含まれるか、またはそこから除外され得る。除外された配列は、遺伝子の内側の領域であるイントラジェニック・リージョン(intragenic region)から取ってイントロン(intron)と呼ばれる。用語イントロンおよびエクソンは、遺伝子の中のDNA配列と、RNA転写物中の対応する配列の両方を指す。結果として、選択的にスプライシングされたmRNAから翻訳されたタンパク質は、そのアミノ酸配列、および、多くの場合、その生物学的な機能に違いがあるであろう。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「多型」は、例えば一つの動物種の中に、2つの以上の明確に異なる形態(モルフ)が存在することを指す。遺伝学において、(遺伝的)多型は、各ヒトゲノムをユニークなものにする、基本的には個体間の、DNA配列中の機能的にサイレントな差異を説明するために用いられる。言い換えると、遺伝的多型は、同じ集団における、そのうちの少なくとも2つの頻度が高い、多数の別々の対立遺伝子状態の存在である。慣習的に、高頻度とは、問題となっている集団の1%以上の頻度と定義される。遺伝的多型の一つの例は、一塩基多型(SNP)であり、これは、ゲノム中の特定の位置で起こる一塩基のバリエーションであり、ここで、各バリエーションは、集団の中に、いくらかの認識できる程度(例えば、前記集団の1%超)に存在する。
【0045】
詳細な説明
頭頸部扁平上皮がんにおいて、コホートベースのシーケンシング研究は、上皮増殖因子受容体(EGFR)のエクソン18~21における活性化変異を実証することができなかった。加えて、これらの腫瘍のサブセットはチロシンキナーゼ阻害剤療法に応答するであろうにもかかわらず、それらの研究は、EGFR増幅などの応答の既知の予測因子を同定または実証することもできなかった。これは、これらの腫瘍がEGFR進行性であるのは、非ゲノム性のメカニズムのためであることを示している。
【0046】
本明細書において、ゲノムおよびRNAの変化から同定されたバイオマーカーの組が開示されており、これによって、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害の効果が調節される。この情報は、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して例外的な応答を示す患者を研究することによって得られた。このデータは、少数派の患者において、上皮増殖因子受容体一塩基多型(SNP)が、特定の長鎖非コードRNA(lncRNA)、すなわちEGFR-AS1を生じさせ、これが上皮増殖因子受容体スプライシングを変化させ、それによって腫瘍を一般に使用される上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤に対して感作することを示している。理論に拘束されるものではないが、この効果は、内因的な上皮増殖因子受容体(EGFR)アイソフォームDの細胞レベルの調節によって媒介されると考えられる。実験データは、内因的な上皮増殖因子受容体アイソフォームDの細胞レベルの調節は、in vitro/ex vivoにおいて(培養中の患者由来細胞、患者由来の異種移植モデルなどにおいて)、腫瘍細胞をこれらの薬物に対して感作するのに十分であることを示しており、またin vivo(臨床のケースにおいて)で観察されている。
【0047】
また、本明細書において、野生型EGFR(これは、いかなる変異も含まないEGFR遺伝子である)を有する患者における上皮増殖因子受容体-チロシンキナーゼ阻害剤療法の効果を増強または調節するための共処理または併用療法としての、EGFRアイソフォームD(例えば、エクソソームのEGFRアイソフォームD)の使用も開示されている。
【0048】
一つの例において、アイソフォームDの外部的な適用が開示される。別の例において、そのような外部的な適用は、それらに限定されないが、上皮増殖因子受容体-チロシンキナーゼ阻害剤療法のための併用薬物、併用療法、および/または追加の治療剤の形態であり得る。
【0049】
一つの例において、EGFRアイソフォームDは、エクソソーム内に分泌される。別の例において、これらのEGFRアイソフォームD含有エクソソームは、それを必要とするヒトに投与される。さらに別の例において、EGFRアイソフォームD含有エクソソームは、それを必要とするヒトに投与されるべきものである。
【0050】
エクソソームのEGFRアイソフォームDは、また、培養中の患者由来の細胞に適用することもでき、それによって、EGFRアイソフォームDのそのような外部的な適用が、チロシンキナーゼ阻害剤療法またはチロシンキナーゼ阻害剤に対する細胞の感受性を増大させることが示されている。
【0051】
EGFRアイソフォームDのこの外部的または外因的な適用は、野生型EGFRにおけるチロシンキナーゼ阻害剤感受性を増大させるために、エンドサイトーシス経路を使用する。
【0052】
EGFRシグナル伝達の間、受容体ホメオスタシスおよびダウンレギュレーションは、エンドサイトーシスプロセスによって支配される。さらに、エンドサイトーシスプロセスは、特にEGFR特異的変異の文脈において、EGFRシグナル伝達に必須であり得ることを示唆する報告がある。したがって、エクソソームのEGFRアイソフォームDは、その感作作用を付与するために、これらのエンドサイトーシスプロセスによって表現型を発現するのかどうかを試験することが求められていた。この目的のために、クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害剤であるPitStop2が使用された。PitStop2は、EGFR依存性エンドサイトーシスの大部分を阻害することが知られている。結果は、PitStop2とEGFRアイソフォームD含有エクソソームの共処理によって、細胞をEGFRアイソフォームD単独によって処理した場合に得られた感作作用が反転することを示す(図9)。この結果は、EGFRアイソフォームD媒介性活性が、エンドサイトーシスプロセスによるEGFRシグナル伝達を必要とすることを示す。
【0053】
扁平上皮がん(それらに限定されないが、例えば、頭頸部がん、肺がん、食道がん、膀胱がん、および子宮頸部がん)を有する患者の大部分(>80~90%)について、これらのがんは、上皮増殖因子受容体(EGFR)経路に依存している。しかしながら、EGFRは一般に変異していないので、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)は、効果がわずかであるか、効果がない。このようなEGFRが野生型形態で存在するケースにおいて、エクソソームのEGFRアイソフォームDは、これらの患者に対して併用薬物として使用または投与され、それによって、そうでなければ非応答性であるこれらのがんに対するEGFR TKIの効果を増強し、またチロシンキナーゼ阻害剤のクラスの薬物に対する腫瘍の感受性および/または脆弱性を増大させ得る。
【0054】
EGFR依存性がんの例は、それらに限定されないが、頭頸部がん、扁平上皮癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、口腔扁平上皮癌(OSCC)、食道がん、膀胱がん、子宮頸がん、肺がん、皮膚扁平上皮がん(皮膚扁平上皮癌(cSCC)としても知られる)および非小細胞肺がん(NSCLC)である。一つの例において、EGFR関連がんは、それらに限定されないが、頭頸部がん、食道がん、膀胱がん、子宮頸がん、皮膚がん、および肺がんである。別の例において、頭頸部がんは、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)または口腔扁平上皮癌(OSCC)である。さらに別の例において、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。さらなる例において、がんは、皮膚がんである。別の例において、皮膚がんは、皮膚扁平上皮がんである。
【0055】
EGFR一塩基多型(SNP)(特にQ787Q A/A)を有する細胞株は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)に対して感受性であることが見出された。変異したEGFRを有するこのような細胞は、また、EGFRアイソフォームDのmRNA発現が上昇していることも示されている(図1参照)。
【0056】
EGFRアイソフォームDの局在を調べるために、これらの細胞株の1つ(NCC-HN19)に由来する分泌フラクションを試験した。EGFRアイソフォームDは培養上清、特に、細胞のエクソソームコンポーネントに存在することが見出された(図2)。以前の研究によって、細胞において、アイソフォームA発現に対するEGFRアイソフォームD発現の比率が高いと、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)感受性が生じること、およびEGFRアイソフォームDは、細胞外コンパートメントの中に分泌されることが示されている。理論に拘束されるものではないが、この感作作用は、移行させ得ると考えられた。この目的のために、高レベルのEGFRアイソフォームDを含有する細胞(NCC-HN19)の培養上清由来のエクソソームを、分子量カットオフフィルターを使用して単離し、続いて、通常は上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブに対して抵抗性である細胞(NCC-HN1)に適用した。次いで、IC50値を決定するために、これらの細胞を、エクソソーム処理あり、またはなしで、ゲフィチニブで処理した。その結果は、EGFRアイソフォームD含有エクソソームで処理された細胞は、ゲフィチニブ処理に対してより感受性が高かったことを示す(図3)。重要なことに、このチロシンキナーゼ阻害剤感受性に対する用量依存的効果が存在し、これは、適用されたエクソソームの量に比例して増大する(図4)。
【0057】
次に、エクソソームのEGFRアイソフォームDそれ自体が、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKI)感受性を付与するために必要であるか否かを確定することが求められた。EGFRアイソフォームDが、標的細胞において、ゲフィチニブ処理に対するこの感受性を調節するために必須のタンパク質であることを確証するために、EGFRアイソフォームD発現を、2つの異なるshRNAを使用してノックダウンした(図5)。このデータは、EGFRアイソフォームD発現が低下(ノックダウン)しているエクソソームを使用して標的細胞を処理した場合、対照(通常レベルで発現しているEGFRアイソフォームDを含むエクソソーム)と比較して、ゲフィチニブに対する感受性が低下していたことを示す。これは、そうでなければチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)処理に対して感受性ではない細胞に感作作用を付与するために、EGFRアイソフォームDが必要であることを示す。
【0058】
EGFRアイソフォームDが、それだけで、細胞をチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)処理に対して感作するために十分であるかどうかを確定するために、胎児腎細胞株であるHEK293T(これは、EGFRアイソフォームDを含有せず、また、治療用エクソソームを得るために一般に使用される)でEGFRアイソフォームDタンパク質を過剰発現させた。次いで、発現したタンパク質/エクソソームを精製し、標的細胞(このケースではHCC-HN1細胞)に適用した。過剰発現EGFRアイソフォームD含有エクソソームは、その後のゲフィチニブ処理に対する感受性を増強したことが認められた(図6)。
【0059】
後者の実験を、多数の異なる患者由来の細胞株に293T由来エクソソームEGFRアイソフォームDを適用し、続いて、異なるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)で処理することによって繰り返して行った。結果は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)とEGFRアイソフォームD含有エクソソームの共処理は、EGFR TKIに対する感受性を増大させることを示す(図7)。
【0060】
293T細胞由来の過剰発現したEGFRアイソフォームD含有エクソソームの量を次第に増やすことによって、EGFR TKIに対する感受性の増大における用量依存的効果が示された(図8)。さらに、精製した非エクソソームEGFRアイソフォームDの適用は、上述した系のいずれにおいても、チロシンキナーゼ阻害剤に対する応答に対して、効果がわずかであるか、効果がないことが示された(図10)。細菌系発現型のEGFRアイソフォームD(これは、エクソソームのパッケージングを欠いている)は、細胞に対して、エクソソームのEGFRアイソフォームDの投与と同じ効果を有していなかったことが示されている。単離されたEGFRアイソフォームDタンパク質の機能を調べるために、EGFRアイソフォームDタンパク質を、細菌系で過剰発現させ、続いて精製した。次いで、NCC-HN1細胞を、精製EGFRアイソフォームDタンパク質とゲフィチニブで共処理した。データは、EGFRアイソフォームDは、細菌内でエクソソームの中にパッケージングすることなく産生させた場合、細胞をゲフィチニブ処理に対して感作することができなかったことを示す。このデータを図10に示す。また、発現したEGFRアイソフォームDタンパク質は、膜結合型であると考えられ、よって、エクソソーム形態のタンパク質の必要性がさらに強調された。
【0061】
エクソソーム内のEGFRアイソフォームDの局在を確定するために、エクソソーム内腔の中への巨大分子の拡散の防止における、エクソソームの脂質膜の生化学的特性を利用した。プロテイナーゼKを、限られた期間(0~60分間)にわたって、脂質を破壊する界面活性剤の非存在下または存在下(1% Triton-X 100)で、精製されたエクソソームに適用した。結果として生じたEGFRアイソフォームDの存在または不存在は、エクソソームの表面結合タンパク質であるEpCAM、またはエクソソームの内腔タンパク質であるALIXと関連している。ウエスタンブロット解析からわかるように(図13参照)、EGFRアイソフォームD消化プロファイルは、EpCAMレベルと密接に関連しており、これは、EGFRアイソフォームDが、エクソソームの表面上に位置することを示している。
【0062】
よって、一つの例において、上皮増殖因子受容体アイソフォームDは、エクソソームの上皮増殖因子受容体アイソフォームD(本明細書において、「EGFR IsoD」とも呼ばれる)またはそのバリエーションである。さらに別の例において、上皮増殖因子受容体アイソフォームDは、エクソソーム製剤(例えば、ナノ粒子)として提供される。別の例において、上皮増殖因子受容体アイソフォームDは、エクソソーム製剤、リポソーム製剤、ナノキャリアーおよびナノ粒子のうちの1つまたは複数として提供される。
【0063】
ここに示されているデータは、エクソソームのEGFRアイソフォームDは、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)のためのゲフィチニブ療法において、ゲフィチニブ処理レジメンの有効性を改善するための、共治療剤として提供され得ることを示している。
【0064】
また、本明細書において、EGFR関連がんの治療のための組合せ療法において使用するための医薬の製造における、本明細書に開示されている上皮増殖因子受容体アイソフォームDの使用も開示されており、ここで、前記医薬は、チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与されるべきものである。このような例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、上皮増殖因子受容体アイソフォームDとは別々に、それの前に、それの後に、または、それと組み合わせて投与されるべきものであるか、または投与される。
【0065】
データによって、細胞のEGFRアイソフォームD依存性感作は、野生型EGFRを標的とする一連の異なるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)にわたって機能することが示されている。EGFRのエクソソームアイソフォームD存在下におけるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)細胞株の応答を試験するために、3つの初代細胞株、すなわちNCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182Mを使用した。診療で使用されている3世代のTKIを代表する8つのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)のパネル、すなわち、ゲフィチニブおよびエルロチニブ(第1世代);アファチニブおよびダコミチニブ(第2世代);ならびにラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002、およびオシメルチニブ(第3世代)を選択した。NCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞を、NCC-HN19およびNCC-HN137P細胞に由来するエクソソーム(EV)の存在下で、それぞれ独立して、8つのチロシンキナーゼ阻害剤で処理した。結果は(図11に示すように)、細胞は、内因的に発現されたEGFRアイソフォームDを含むエクソソーム(NCC-HN19およびNCC-HN137P由来のEV)で共処理された場合に、第1世代および第2世代のチロシンキナーゼ阻害剤に対して最も効率的に感作されることを示す(図11A~G)。図11Hは、HNSCC細胞もまた、過剰発現したEGFRアイソフォームDを含むエクソソーム(293T由来のEV)で共処理された場合に、第1世代(ゲフィチニブ)および第2世代(アファチニブおよびダコミチニブ)のチロシンキナーゼ阻害剤に対して感作されることを示す。
【0066】
よって、一つの例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR阻害剤である。別の例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、第1世代チロシンキナーゼ阻害剤である。さらに別の例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、第2世代チロシンキナーゼ阻害剤である。さらなる例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、第3世代チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0067】
チロシンキナーゼ阻害剤の例は、それらに限定されないが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、エルロチニブHCl、ラパチニブ、ダコミチニブ、TAE684、アファチニブ、ダサチニブ、saracatinib、veratinib、AEE788、WZ4002、icotinib、オシメルチニブ、BI1482694、ASP8273、EGF816、AZD3759、ナザルチニブ、およびそれらの組合せである。第1世代チロシンキナーゼ阻害剤の例は、それらに限定されないが、ゲフィチニブおよびエルロチニブである。第2世代チロシンキナーゼ阻害剤の例は、それらに限定されないが、アファチニブおよびダコミチニブである。第3世代チロシンキナーゼ阻害剤の例は、それらに限定されないが、ラパチニブ、ナザルチニブ、WZ4002、およびオシメルチニブである。一つの例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、それらに限定されないが、ゲフィチニブ、エルロチニブおよびラパチニブ、およびそれらの組合せである。別の例において、チロシンキナーゼ阻害剤は、それらに限定されないが、ゲフィチニブ、アファチニブおよびダコミチニブ、およびそれらの組合せである。
【0068】
さらなるデータによって、使用された用量に対する感作の程度における(任意と、予期されるEGFRアイソフォームDの定量化の両方の)用量反応が示される。エクソソームのアイソフォームDの量を次第に増やすことによってチロシンキナーゼ阻害剤処理に対する感受性が調節されるかどうかを調べるために、NCC-HN1、NCC-HN120MおよびNCC-HN182M細胞を、次第に増やした用量のNCC-HN19(内因的に発現されたアイソフォームD)、293TおよびNCC-HN1(強制発現アイソフォームD)に由来するEGFRアイソフォームDを含有するエクソソーム(EV)に暴露すると共に、ゲフィチニブ、アファチニブまたはダコミチニブ)の同時処理を行った。これらの実験は、チロシンキナーゼ阻害剤処理に対する細胞の感受性に対する用量依存的効果が存在し、それによって、エクソソームのEGFRアイソフォームDの量が次第に増えることによって、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性が次第に増大することを明確に示す。この情報を図12に示す。
【0069】
よって、一つの例において、治療有効量の上皮増殖因子受容体アイソフォームDを、それを必要とする対象に投与することを含む、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するEGFR関連がんの感受性を増大させる方法が開示される。別の例において、方法または使用は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の投与をさらに含む。また、本明細書において、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するEGFR関連がんの感受性を増大させるための医薬の製造における上皮増殖因子受容体アイソフォームDの使用も開示されている。また、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するEGFR関連がんの感受性の増大に使用するための上皮増殖因子受容体アイソフォームDも開示されている。
【0070】
別の例において、EGFR関連がんに罹患している対象を治療する方法であって、有効量の上皮増殖因子受容体アイソフォームDを前記対象に投与すること;および前記EGFR関連がんを治療するために使用される有効量のチロシンキナーゼ阻害剤を前記対象に投与することを含む方法が開示される。また、本明細書において、EGFR関連がんの治療に使用するための医薬の製造における、チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせた、上皮増殖因子受容体アイソフォームDの使用も開示されており、ここで、前記チロシンキナーゼ阻害剤は、前記EGFR関連がんを治療することができる。組み合わせた、とは、上皮増殖因子受容体アイソフォームDとチロシンキナーゼ阻害剤が、一緒にもしくは別々に投与され得ること、および/または別々のもしくは混合された剤形で投与され得ることを意味する。
【0071】
より多くのEGFRアイソフォームDを分泌するHNSCC細胞株(図14A)は、チロシンキナーゼ阻害剤に対してより感受性が高い(TKI;図14B)ことがさらに示される。内因的に(チロシンキナーゼ阻害剤)感受性の細胞(例えば、それらに限定されないが、HN19およびHN137P)由来の細胞外ベシクルを、チロシンキナーゼ阻害剤耐性細胞(例えば、それらに限定されないが、HN1、HN120M、およびHN182Mなど)に適用することによって、これらの耐性細胞は、ゲフィチニブ、アファチニブ、およびダコミチニブに対して感作される(図14C)。前記耐性細胞を本明細書に開示されている8つのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤のいずれか1つによって共処理することによって、同様の効果が示された(図11G)。
【0072】
2つのshRNA鎖を使用して追加の細胞株(HN137P)におけるアイソフォームDをノックダウンすることによって、ノックダウン研究を行った(図15)。図16に、相対的なmRNA(図16A)およびタンパク質(図16B)の定量化を示すことによって、ノックダウンの結果を示す。HN19細胞株とHN137P細胞株の両方において示されるように、アイソフォームDのノックダウンによって、ゲフィチニブ、アファチニブ、およびダコミチニブと共処理した際に増大した感受性を付与するというEGFRアイソフォームDを含む細胞外ベシクルの能力が低下する。
【0073】
クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害によって、TKIで共処理された場合の、アイソフォームDを含有する細胞外ベシクルの感作作用が低下することを示すために、クラスリン媒介エンドサイトーシス阻害剤(PitStop2)を使用した実験を行った。この実験において、(HN1に加えて)2つのさらなる細胞株、すなわちHN120MおよびHN182M細胞を追加し、ゲフィチニブ(図17A)、アファチニブ(図17B)、およびダコミチニブ(図17C)で共処理した。3つの全てのHNSCC細胞株において、PitStop2は、EGFRアイソフォームD細胞外ベシクルの感作作用を一貫して低下させることが示された。理論に拘束されるものではないが、PitStop2は、EGFRアイソフォームDを含有する細胞外ベシクルのエンドサイトーシスを阻害し、それによって、EGFRアイソフォームDが標的細胞に入ることを妨げると考えられる。次に、これが、標的細胞のチロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を低下させる(または、少なくとも、増大させない)と考えられる。免疫蛍光アッセイの結果によって、PitStop2で処理された細胞において、EGFRアイソフォームDは、細胞内コンパートメント内ではなく、細胞膜上に局在することが明らかになった(図18)。
【0074】
標的細胞におけるエンドサイトーシスプロセス(これは、EGFRアイソフォームDの感作作用を促進する)の役割および必要性をさらに確定するために、エンドサイトーシスカーゴを細胞膜から細胞内の内腔コンパートメントの中に輸送するために必須である一連のタンパク質を、体系的にノックダウンした。このようなタンパク質の1つは、例えば、前記のタンパク質Rab5A(これは、カーゴを細胞表面から初期エンドソームコンパートメントに輸送するために重要である)である。別のタンパク質(Rab7A)は、カーゴを初期エンドソームコンパートメントから後期エンドソームコンパートメントに輸送する役割を果たす。EEA1は、初期エンドソームコンパートメントに存在するスキャフォールドタンパク質である。
【0075】
第1に、HN1、HN120M、およびHN182M細胞において、Rab5Aをノックダウンした。続いて、これらの細胞を、過剰発現HEK293T細胞から得られたEGFRアイソフォームD細胞外ベシクルで共処理した。対照と比較して、EGFRアイソフォームD発現細胞外ベシクルによって付与された感作の低下が観察された(図19A)。図19Bは、siRab5Aノックダウンの相対的mRNAを示す。
【0076】
第2に、HN1、HN120M、およびHN182M細胞において、Rab7Aをノックダウンし、続いて、これらの細胞を、EGFRアイソフォームD過剰発現HEK293T細胞外ベシクルで共処理した。siRab5Aと同様に、対象と比較して、アイソフォームD発現EVによって付与された感作の低下が観察された(図20A)。図20Bは、siRab7Aノックダウンの相対的mRNAを示す。
【0077】
最後に、HN1およびHN182M細胞において、EEA1をノックダウンし、続いて、これらの細胞を、EGFRアイソフォームD過剰発現HEK293T細胞外ベシクルで共処理した。上述と一貫して、対照と比較して、EGFRアイソフォームD細胞外ベシクルによって付与された感作の低下(図21A)。図21Bは、siEEA1ノックダウンの相対的mRNAを示す。
【0078】
図20、21および22のデータは、まとめて考えた場合、EGFRアイソフォームD細胞外ベシクルが細胞に対してその感作作用を付与するために、細胞外ベシクルを、細胞コンパートメントの中に逆行性に輸送することが必要であることを示している。
【0079】
EGFRアイソフォームD細胞外ベシクル共処理の感受性の媒介においてリソソーム(これは、エンドソームの下流のコンパートメントである)が果たす役割を解明するために、リソソームコンパートメントを、阻害剤であるバフィロマイシンを使用して破壊した。さらに、エンドサイトーシスリサイクルプロセスを、siRab11A(これは、カーゴをエンドサイトーシスコンパートメントから細胞表面に順方法に輸送するために重要である)をノックダウンすることによって破壊した。
【0080】
本出願のより初めの方に、バフィロマイシンによるリソソーム阻害は、EGFRアイソフォームD細胞外ベシクルと共適用した場合、HN1のゲフィチニブに対する感受性を増大させることが示されていた。ここで、別の細胞株であるHN182Mで、同様のことが観察される(図22)。
【0081】
リサイクルプロセスがsiRab11Aで破壊された場合、EGFRアイソフォームD細胞外ベシクル処理細胞が示すゲフィチニブ、アファチニブ、およびダコミチニブに対する感受性は増大した(図23)。
【0082】
図25および26のデータは、EGFRアイソフォームDが標的細胞の細胞内コンパートメント内に保持されると、感作作用が増強されることを示す。
【0083】
EGFRアイソフォームD細胞外ベシクルの下流の標的、およびEGFRアイソフォームDとEGFRアイソフォームAの間の保存されたN末端ドメインの既知の存在を理解するために、免疫沈降アッセイを行って、これら2つのタンパク質が相互作用しているか否かを確認した。図24Aに、EGFRアイソフォームDによるEGFRアイソフォームAの30分間のプルダウンの結果を示す。リバースプルダウン(図24B)を行った場合、プルダウンのためにEGFRアイソフォームAタンパク質を使用した場合、EGFRアイソフォームDの濃度が上昇した。このデータは、EGFRアイソフォームAとEGFRアイソフォームDが相互作用していたことを示す。
【0084】
in vivoセッティングでEGFRアイソフォームDの治療効果を検討するために、Bulb/cヌードマウスにおける異種移植モデルを、HN120Mを皮下移植することによって作成した。図25のデータは、アファチニブとEGFRアイソフォームDの共投与が、対照と比較して、腫瘍増殖速度を低下させたことを示す。
【0085】
さらに、感作作用の付与におけるEGFRアイソフォームDの有効性に対する細胞外ベシクルのパッケージングの必要性および効果を確認した。EGFRアイソフォームDタンパク質を単独で産生させ、がん細胞に導入した。図26は、細菌または哺乳動物細胞(HEK293F)で産生させたEGFRアイソフォームDタンパク質は、その感作作用を付与できなかったことを示す。このデータは、EGFRアイソフォームDがその感作作用を付与するために、細胞外ベシクルまたはエクソソームの中へのパッケージングが必要であることを示していた。
【0086】
本明細書で提供されるデータは、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する細胞の感受性を増大させる薬剤としてのエクソソームの上皮増殖因子受容体(EGFR)アイソフォームDの使用および適用を強調し、それによって、薬物または併用薬物としての用途を裏付ける。また、ノックダウン研究および過剰発現研究によって、EGFRアイソフォームDが細胞外ベシクル(EV)またはエクソソームの形態で存在することが、細胞の種々のEGFR TKIに対する増大した感受性を付与するために必要かつ十分であることも示された。一つの例において、また、アイソフォームD過剰発現HEK293T細胞由来の細胞外ベシクル(EV)が、8つのチロシンキナーゼ阻害剤のパネルに対して、頭頸部小細胞癌(HNSCC)細胞を感作し得ることも示された。さらに、EGFRアイソフォームD含有細胞外ベシクル(EV)またはエクソソームの量を次第に増やすことによって、用量依存的な様式で、細胞外ベシクル(EV)またはエクソソームの感作作用が増強されることが実証された。最後に、アイソフォームDの感作作用におけるエンドサイトーシスの必要性が、PitStop 2(これは、クラスリン媒介エンドサイトーシス阻害剤である)を使用することによって示された。
【0087】
本明細書に例証的に記載されている本発明は、本明細書において具体的に開示されていない、いかなる(単数または複数の)エレメント、(単数または複数の)限定も存在しない状態で、適切に実施され得る。よって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」などは、限定することなく、包括的に解釈すべきである。さらに、本明細書で用いられている用語および表現は、限定の用語ではなく、説明の用語として使用されており、また、そのような用語および表現の使用において、示されている特徴、および記載されている特徴のいかなる同等物またはその部分も除外する意図はなく、特許請求されている発明の範囲内で、種々の改変が可能であることが認識される。よって、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示され、そこに具体化されている本発明の改変および変形は、当業者によって使用され得ること、およびそのような改変および変形は、本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0088】
本出願で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈に明らかに反しない限り、複数形への言及を含む。例えば、用語「遺伝子マーカー(a genetic marker)」は、複数の遺伝子マーカー(genetic markers)(その混合物および組合せを含む)を含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、製剤の成分の濃度の文脈において、典型的には示されている値の+/- 5%、より典型的には示されている値の+/- 4%、より典型的には示されている値の+/- 3%、より典型的には示されている値の+/- 2%、さらに典型的には示されている値の+/- 1%、さらに典型的には+/- 0.5%を意味する。
【0090】
本開示全体を通して、ある特定の実施形態は、レンジの形式で開示されているであろう。レンジの形式の説明は、単に便宜および簡潔性のためであり、開示されているレンジの範囲に対する変更できない限定と解釈すべきではない。したがって、レンジの説明は、そのレンジ内の全ての可能なサブレンジ、ならびに個々の数値を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、1~6などのレンジの説明は、その範囲内の1~3, 1~4, 1~5, 2~4, 2~6, 3~6などのサブレンジ、ならびに、個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなすべきである。これは、レンジの幅とは無関係にあてはまる。
【0091】
ある特定の実施形態は、また、本明細書において、幅広く、かつ一般的に記載されているであろう。一般的な開示の範囲内のより狭い種および一般性がより低いグループ分けもまた、それぞれ、本開示の一部を形成する。これには、除外される事項が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、属から任意の対照を除外する条件または否定的限定を含む実施形態の一般的な説明が含まれる。
【0092】
本発明は、本明細書において、幅広く、かつ一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内のより狭い種および一般性がより低いグループ分けもまた、それぞれ、本発明の一部を形成する。これには、除外される事項が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、属から任意の対照を除外する条件または否定的限定を含む本発明の一般的な説明が含まれる。
【0093】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲および非限定的な実施例の範囲内である。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループによって説明されている場合、当業者は、それによって、本発明が、マーカッシュグループのメンバーの任意の個々のメンバーまたはサブグループによっても説明されていると認識するであろう。
【実施例
【0094】
実験セクション
HEK293T細胞とは別に、本明細書に開示されている実験は、改変されていない患者由来の腫瘍培養または細胞株にエクソソームを適用して実施された。これらの患者由来の腫瘍培養または細胞株の同一性は、それらが由来する個々の患者の腫瘍とマッチングすることによって裏付けられ、それによって、それらの起源が裏付けられた(Chia et al., 2017)。これらの細胞株は、市販のものでも、不死化されたものでも、改変されたものでもない。
【0095】
細胞外ベシクル(EV)
細胞外ベシクル(EV)の収集および単離は、以前に説明されているようにして行った*。簡潔に言えば、細胞は、T-175組織培養フラスコ内で、条件培地(NCM)で増殖させた。72時間インキュベーションした後、NCMを集め、1,200 rpmで10分間遠沈して細胞デブリを除去した。次いで、上清を0.22μmフィルター(PES)でろ過し、濾液をAmicon(登録商標)Ultra-15遠心式フィルターユニット(Merck Millipore、Kenilworth、NJ)の中にロードした。この培地を濃縮し、1 × PBSで最終洗浄し、次いで、元の体積の1/60に再構成した。細胞外ベシクルバッチのばらつきを抑えるため、分析および処理のために、細胞外ベシクルを5バッチごとに1つのバッチにプールした。
【0096】
*参考文献:Rodrigues-Junior, D. M. et al. Circulating extracellular vesicle-associated TGFβ3 modulates response to cytotoxic therapy in head and neck squamous cell carcinoma. Carcinogenesis 1-13 (2019). doi:10.1093/carcin/bgz148
【0097】
細胞増殖アッセイおよびIC50値の決定
細胞を、96ウェル組織培養プレートにおいて、1,000~3,000細胞/ウェルの密度で、100μlの完全増殖培地に播種した。細胞を、処理の前に、1 × PBSで洗浄して、残存する培地残渣を除去した。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を完全増殖培地で段階希釈した後、各割合の細胞外ベシクル含有培地を、共処理として細胞に加えた。使用したEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ダコミチニブ、ナザルチニブ、WZ4002またはオシメルチニブ(Selleck Chemicals、Houston、TX)であり、一方で、ジメチルスルホキシド(DMSO)を対照として使用した。プレートを37℃で72時間インキュベートし、その後、細胞生存率を、CellTitre-Glo(登録商標)Luminescent Assay(Promega、Madison、WI)を使用して、メーカーの手順書に従って評価した。
【0098】
RNA分析
全mRNAを、Qiagen RNeasy Mini Kit(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、メーカーの手順書に従って抽出した。mRNAは、SuperScript II (Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、メーカーの手順書に従ってcDNAに変換し、iTaq Universal SYBR Green Supermix(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)リアルタイムPCR試薬を使用して、メーカーの手順書に従って定量した。反応は、以前に説明されているようにして、正規化対照の役割を果たすTBPを用いて3反復で行った。
【0099】
タンパク質分析
ウエスタンブロット解析のために、細胞ペレットまたは細胞外ベシクル(EV)サンプルをRIPA(1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、1× PBS)で溶解させ、14,000gで30分間遠心して清澄化し、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)で、メーカーの手順書に従ってタンパク質を定量した。同量のタンパク質をSDS-PAGEゲル(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)の各レーンにロードした。以前に説明されている通りの抗体*と、追加でCD9(#13174、Cell Signaling、Danvers, MA)、EpCAM(2626、Cell Signaling)およびALIX(2171、Cell Signaling)を使用した。
【0100】
shRNAノックダウンおよびRNAトランスフェクション
プラスミドpLKO.1ベクター、pLKO.1-shIsoD_A:TTGCTGAGTGAATGAACAAAT(配列番号1)、pLKO.1-shIsoD_B:AGCCAGCTGTGGGACAATTAT(配列番号2)およびpLKO.1-shIsoD_C:GCCAGCCTTCTCCGTAATTAG(配列番号3)を含むshRNAレンチウイルス粒子をSigma(St. Louis、MO)から購入した。メーカーの指示書に従ってpLKO.1-shIsoD_A粒子を感染させることによって、EGFRアイソフォームDノックダウン細胞shIsoD_1を作成し:pLKO.1-shIsoD_B粒子とpLKO.1-shIsoD_C粒子の同時感染によってshIsoD_2細胞を作成した。
【0101】
EGFRアイソフォームDの過剰発現
EGFRアイソフォームDオープンリーディングフレーム(NM_201284)を、プライマーGGATCCATTGGCTAGCATGCGACCCTCCGGGACG(配列番号4)およびCCTGCAGCTGCTCGAGTCAGTGGCAGGAGGAGGCC(配列番号5)によって、改変pCSC-SP-PW(pBob(Addgene)として知られる)のNheIおよびXhoIサイトに、メーカーの指示書に従ってPCRクローニングした。コンストラクトを、ViraPowerレンチウイルス発現システム(Invitrogen)によって、メーカーの指示書に従ってHEK293T細胞の中に同時トランスフェクションし、レンチウイルス粒子を作成した。NCC-HN1およびHEK293Tを、メーカーの指示書に従って形質導入し、安定細胞株を0.2μg/ml zeocinを使用して選択した。
【0102】
細菌EGFRアイソフォームD産生
EGFRアイソフォームDオープンリーディングフレーム(NM_201284)を、プライマーCGCGCGGCAGCCATATGATGCGACCCTCCGGGACG(配列番号6)およびCAGCCGGATCCTCGAGTCAGTGGCAGGAGGAGGCC(配列番号7)によって、pet15b (Merck)のNdeIおよびXhoIサイトにPCRクローニングした。このコンストラクトを、BL21DE3細胞(Invitrogen)に、メーカーの指示書に従って形質転換した。EGFRアイソフォームDタンパク質を1μM IPTGで誘導し、溶解バッファー(50mM Tris.HCl pH7.4、150mM NaCl、5mM βME、0.1% Triton X-100、10%グリセロール)で回収した。EGFRアイソフォームDを含有する細菌溶解物を、HisPur Ni-NTAクロマトグラフィーカートリッジ(ThermoFisher)を用い、バッファーA(50mM Tris.HCl pH7.4、150mM NaCl、5mM βME、0.1% Triton X-100、10%グリセロール、10mMイミダゾール)、バッファーB(50mM Tris.HCl pH7.4、1M NaCl、5mM βME、0.1% Triton X-100、10%グリセロール)、そして再度バッファーAによって連続的に洗浄して、アフィニティー精製した。EGFRアイソフォームDタンパク質を、溶出バッファー(50mM Tris.HCl pH7.4、150mM NaCl、5mM βME、0.1% Triton X-100、10%グリセロール、250mMイミダゾール)中に溶出させた。ウエスタンブロットによって確認したEGFRアイソフォームDフラクションをプールし、Amicon(登録商標)Ultra-15遠心式フィルターユニット(Merck、Millipore、Kenilworth、NJ)で脱塩した。
【0103】
プロテイナーゼK消化
70μgの単離されたエクソソームを、Triton X-100非存在下、または1% v/v Triton X-100存在下、37℃で、表示した通りの時間(図13参照)、1μg/mlプロテイナーゼK処理にかけた。表示した時間が経過したら、2× Laemmliローディングバッファー(Laemmeli loading buffer)(Bio-rad)を添加して、プロテイナーゼK活性を停止させた。続いて、サンプルをウェスタンブロッティングで分析した。
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【配列表】
2023539850000001.app
【国際調査報告】