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特表2023-539851無電解析出のための表面コンディショナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】無電解析出のための表面コンディショナー
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20230912BHJP
   C23C 18/28 20060101ALI20230912BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20230912BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230912BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C23C18/18
C23C18/28
C23C18/31 Z
C08K3/08
C08L101/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513162
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 SG2021050538
(87)【国際公開番号】W WO2022055426
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10202008720P
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジャン ロン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕崇
【テーマコード(参考)】
4J002
4K022
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002AA071
4J002DA086
4J002DA116
4J002FD206
4J002GT00
4J002HA03
4K022AA14
4K022BA14
4K022CA03
4K022CA05
4K022CA06
4K022CA16
4K022CA19
4K022CA20
4K022CA21
4K022CA22
4K022DA01
4K022DB02
4K022DB28
(57)【要約】
金属の無電解析出のために表面をコンディショニングする組成物が開示される。前記組成物は、モノマーの複数の繰り返し単位を含むポリマー界面活性剤であって、前記複数の繰り返し単位の各々が官能基を含む、前記ポリマー界面活性剤と、金属イオンと、水とを含み、前記複数の繰り返し単位の各々における前記官能基は前記金属イオンと錯体を形成する。好ましい実施形態において、前記官能基はアミンであり、前記界面活性剤はポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを含む。前記金属イオンは、コバルト、ロジウム、パラジウム、または銀を含む。前記組成物を形成する方法、ならびに前記組成物を使用する無電解析出方法もまた、本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を金属の無電解析出のためにコンディショニングする組成物であって、
モノマーの複数の繰り返し単位を含むポリマー界面活性剤であって、前記複数の繰り返し単位の各々が官能基を含む、ポリマー界面活性剤と、
金属イオンと、
水と、
を含み、
前記複数の繰り返し単位の各々における前記官能基は、前記金属イオンと錯体を形成する、
前記組成物。
【請求項2】
前記複数の繰り返し単位が同一の官能基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記官能基がアミンを含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー界面活性剤が、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー界面活性剤が、0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属イオンが、コバルト、ロジウム、パラジウム、または銀を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属イオンが0.01重量%~0.02重量%の範囲で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アルカリ金属塩基をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルカリ金属塩基が、0.1M~0.5Mの濃度で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を形成する方法であって、
水中の金属イオンを含む金属塩溶液を形成することと、
ポリマー界面活性剤を含むポリマー界面活性剤溶液であって、前記ポリマー界面活性剤はモノマーの複数の繰り返し単位を含み、前記複数の繰り返し単位の各々は官能基を含む、前記ポリマー界面活性剤を含むポリマー界面活性剤溶液を形成することと、
前記金属塩溶液と前記ポリマー界面活性剤溶液とを混合して、前記組成物を形成すること、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記金属塩溶液を形成することが、金属塩を水に溶解することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属塩溶液を形成することが、前記金属イオンが0.02重量%~0.2重量%の濃度で存在するように前記金属塩を水に溶解することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー界面活性剤溶液を形成することが、前記ポリマー界面活性剤を水に溶解することを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー界面活性剤溶液を形成することが、前記ポリマー界面活性剤が0.2重量%~1.0重量%の濃度で存在するように、前記ポリマー界面活性剤を水に溶解することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属塩溶液と前記ポリマー界面活性剤溶液とを混合することが、前記金属塩溶液と前記ポリマー界面活性剤溶液とを等体積で混合することを含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属塩溶液と前記ポリマー界面活性剤溶液とを混合する時に形成される混合物中にアルカリ金属塩基を溶解させることをさらに含み、前記混合物にアルカリ金属塩基を溶解させることは、前記アルカリ金属塩基を0.1M~0.5Mの濃度にするように溶解させることを含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
無電解析出方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物で表面を処理することと、
前記表面を触媒金属塩溶液と接触させて、触媒処理表面を形成することと、
前記触媒処理表面を還元剤と接触させて、金属被覆表面を形成することと、
前記金属被覆表面を、前記金属被覆表面への金属の無電解析出のためのめっき浴と接触させること、
を含む、前記方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記組成物で前記表面を処理することが、
前記組成物を加熱することと、
前記表面の存在下で前記組成物を撹拌すること、
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記組成物を加熱することが、前記組成物を40℃~60℃の範囲の温度に加熱することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記還元剤がNaPOを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒金属塩溶液が、10ppm~30ppmの濃度で存在する触媒金属塩を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記表面を前記触媒金属塩溶液と接触させる前に、前記表面を水で洗浄することと、
前記触媒処理表面を前記還元剤と接触させる前に、前記触媒処理表面を水で洗浄することと、
前記金属被覆表面を前記めっき浴と接触させる前に、前記金属被覆表面を水で洗浄すること、
をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面をその表面上への金属の無電解析出のためにコンディショニングするための組成物に関する。本開示はまた、前記組成物を形成する方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
表面または基板上への金属の無電解析出(例えば無電解メッキ)の伝統的方法は、表面または基板上に金属を析出させる前に、その表面または基板上に触媒を塗布することを含む。
【0003】
ある報告例では、パラジウムスズコロイドを基板上に吸着させる。そのパラジウムスズコロイドは触媒として使用される。続いて、この触媒化された基板を濃硫酸にさらすことで、その基板上にパラジウムを形成する。このようなコロイドの使用は、コロイドが凝集して沈殿物を形成する傾向があるという欠点の影響を受けやすい。凝集したコロイド触媒は、基板上にパラジウムの不均一な被覆を生じるし、触媒沈殿物はその基板を均一に被覆すらしないから、被覆処理の歩留まりが不十分になる。これに対処するために、より多量の触媒を使用するかまたはメッキ実施期間を増加させる方法が開発された。しかしながら、このような方法は不経済なものになるか、またはより長い処理時間を必要とする。
【0004】
したがって、上述した欠点のうちの1つ以上に対処する解決策を提供する需要がある。その解決策は、表面または基板上への金属の改善された無電解析出を少なくとも提供するのがよいであろう。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、表面を金属の無電解析出のためにコンディショニングする組成物が提供され、前記組成物は、
モノマーの複数の繰り返し単位を含むポリマー界面活性剤であって、前記複数の繰り返し単位の各々が官能基を含む、ポリマー界面活性剤と、
金属イオンと、
水とを含み、
前記複数の繰り返し単位の各々における前記官能基は、前記金属イオンと錯体を形成する。
【0006】
別の態様では、第1の態様のうちの様々な実施形態に記載の組成物を形成する方法が提供され、この方法は、
水中の金属イオンを含む金属塩溶液を形成することと、
ポリマー界面活性剤を含むポリマー界面活性剤溶液であって、前記ポリマー界面活性剤はモノマーの複数の繰り返し単位を含み、前記複数の繰り返し単位の各々は官能基を含む、前記ポリマー界面活性剤溶液を形成することと、
前記金属塩溶液と前記ポリマー界面活性剤溶液とを混合して、前記組成物を形成すること、
を含む。
【0007】
別の態様では、無電解析出方法が提供され、前記方法は、
第1の態様の様々な実施形態に記載される組成物で表面を処理することと、
前記表面を触媒金属塩溶液と接触させて、触媒処理表面を形成することと、
前記触媒処理表面を還元剤と接触させて、金属被覆表面を形成することと、
前記金属被覆表面を、前記金属被覆表面への金属の無電解析出のためのめっき浴と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、概して、本開示の原理を例証することに重点が置かれている。以下の説明では、本開示の様々な実施形態が、以下の図面を参照して説明される。
図1図1は、本開示の表面コンディショナーを使用した基板上への金属の無電解析出の概略図を示す。ステップ100において、ポリマー基板を、加熱した(45℃)表面コンディショナーに浸漬し撹拌下で3分間処理する。次に、その基板を脱イオン水10ですすぐ。その後、次のステップ102において、その基板を、低濃度PdClイオン溶液(10ppm~30ppm)中に、室温(例えば20℃~40℃)で撹拌(例えば、かき混ぜる)下で5分間浸漬することによって触媒化する。このような触媒溶液に浸漬することにより、基板の表面がPd触媒イオンで下塗りされた状態になる。次に、基板を脱イオン水12ですすぐ。次に、ステップ104において、基板上のPd触媒を、還元剤(例えば、0.2M NaPO)中に室温(例えば20℃~40℃)下で撹拌せずに1分間浸漬することによって還元する。次に、基板を脱イオン水14ですすぐ。その後、ステップ106において、基板を、その基板上にメッキされる所望の金属の無電解析出のために配合されためっき浴に浸漬する。
図2図2は、本開示の表面コンディショナーで処理された基板表面(画像の左側参照)と処理されていない基板表面(画像の右側参照)との比較を示す。表面コンディショナーで処理されると、ポリマー基板は、無電解析出を成功裏に進めることができる。処理されていない表面は、同一の触媒化処置を受けても無電解析出を発生しない。
図3図3は、ポリアリルアミンによるニッケルイオンの錯化の紫外可視(UV-vis)分光分析を示す。634nmでの新しいピークの形成ならびに660nmおよび730nmでのニッケルイオンの特徴的なピークの消失は、アミン基界面活性剤によるニッケルイオンの錯化を示す。
図4図4は、重要な無電解金属析出パラメータについて予想される結果を列挙する表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、例示として、本開示が実施され得る特定の詳細および実施形態を示す添付の図面を参照する。
一実施形態の文脈において説明される特徴は、他の実施形態における同じまたは類似の特徴に対応して適用可能であり得る。一実施形態の文脈において説明される特徴は、他の実施形態において明示的に説明されていなくても、他の実施形態に対応して適用可能であり得る。さらに、一実施形態の文脈において特徴について記載されるような追加および/または組み合わせおよび/または代替は、他の実施形態における同じまたは類似の特徴に対応して適用可能であり得る。
【0010】
本開示は、表面をその表面上への金属の無電解析出のためにコンディショニングするための組成物に関する。表面は、基板の表面であってもよい。言い換えれば、組成物は、基板上への金属の無電解析出のために使用することができる。本開示の組成物は、表面をその表面上への金属の無電解析出のためにコンディショニングするので、本開示において「表面コンディショナー」と称され得る。「無電解析出(electroless deposition)」と「無電解メッキ(electroless plating)」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0011】
本開示はまた、本組成物を形成する方法および本組成物の使用に関する。本組成物の使用は、本組成物を使用する無電解析出方法を含み得る。
本組成物、本組成物を形成する方法、本組成物の使用の様々な実施形態の詳細、および当該様々な実施形態に関連する利点を以下に説明する。
【0012】
本開示において、表面を金属の無電解析出のためにコンディショニングする組成物が提供される。本組成物は、ポリマー界面活性剤を含み得る。ポリマー界面活性剤は、モノマーの複数の繰り返し単位を含み得るか、またはモノマーの複数の繰り返し単位から形成され得る。前記複数の繰り返し単位の各々は、官能基を有し得る。換言すると、そのポリマー界面活性剤は、前記複数の繰り返し単位から生じる或る官能基を複数有し得る。
【0013】
ポリマー界面活性剤上に存在する複数の官能基は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、ポリマー界面活性剤は、複数の或る官能基と複数の別の官能基とを有し得る。ポリマー界面活性剤が2種類以上の官能基を含有する場合、ポリマー界面活性剤はコポリマーであり得る。コポリマーは、ランダムコポリマーまたはジブロックコポリマーであってもよい。様々な実施形態において、複数の繰り返し単位は、同じ官能基であり得るか、または同じ官能基を含み得る。
【0014】
様々な実施形態において、官能基はアミンを含み得る。様々な実施形態において、ポリマー界面活性剤は、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを含み得る。様々な実施形態では、ポリマー界面活性剤は、0.1重量%~0.5重量%、0.2重量%~0.5重量%、0.3重量%~0.5重量%、0.4重量%~0.5重量%、0.1重量%~0.2重量%、0.1重量%~0.3重量%、0.1重量%~0.4重量%等の範囲で存在し得る。このような範囲は、粘性が高すぎたり、表面張力を過度に低下させたりすることなく、基板を湿らすのに有利である。使用されるポリマー界面活性剤が少なすぎる(このような範囲より低い)場合、ポリマー界面活性剤の湿潤効果および本組成物によって与えられる触媒活性の増強は、適切に達成されない。多すぎる量が使用される場合、コンディショナーの過剰な泡立ちおよび高粘性が生じ得る。
【0015】
本組成物は金属イオンを含む。ポリマー界面活性剤の官能基は、配位結合を介してその金属イオン(例えばカチオン)と錯体を形成し得る。例えば、ポリマー界面活性剤の官能基がアミンを含む場合、このアミン中の窒素は金属カチオンと錯体を形成し得る。さらに有利なことに、本組成物中の金属イオンは、後で無電解メッキに使用されるPdCl触媒溶液を少量にできる(例えば無電解メッキ実施期間における少ないPdローディング)。例えば、その後の無電解メッキに使用されるPdCl触媒溶液は、無電解メッキのためのPdイオンがより低い濃度であり得る。従来の無電解メッキでは、高いPdCl濃度(すなわち、高いPdローディング)が無電解メッキに必要とされる傾向がある。そのような従来の高濃度の使用を、本組成物および本方法によって回避することができる。様々な実施形態において、金属イオンは、コバルト、ロジウム、パラジウム、または銀を含み得る。種々の実施形態において、前記複数の繰り返し単位の各々における官能基、例えばアミン等は、金属イオンと相互作用し金属イオンと錯体を形成する。例えば、ポリマー界面活性剤は、基板の表面張力を低下させることによって基板の表面に接着し得る。また、無電解メッキを受けるほとんどのポリマー基板は、エッチングされた表面を有し得るので、基板の表面は、多数の空洞、高い表面粗さ、ならびに-COOHおよび-OHのような遊離官能基を有する傾向がある。次いで、界面活性剤は、(i)官能基を介する1つ以上のタイプの結合、および(ii)物理的接着または吸収を介して表面に接着し得る。
【0016】
様々な実施形態において、金属イオンは、0.01重量%~0.02重量%、0.01重量%~0.015重量%、0.015重量%~0.02重量%等の範囲で存在し得る。使用される金属イオンの濃度は、使用されるポリマー界面活性剤の濃度と相関し得る。換言すれば、使用されるポリマー界面活性剤の量と使用される金属イオンの量とは、互いに依存し得る。使用される金属イオンが少なすぎると、触媒活性の増強におけるコンディショナーの有効性が損なわれる場合がある。使用される金属イオンが多すぎる場合、過剰な金属イオンは、ポリマー界面活性剤によって錯体化されない場合があり、アルカリ塩基の存在下で金属水酸化物をもたらし得、これは次に本組成物を汚損してしまう可能性がある。様々な実施形態において、金属イオンは、金属イオン-ポリマー界面活性剤錯体の形態で金属イオンを有するが、0.02重量%~0.02重量%の範囲で存在し得る。
【0017】
上述したように、本組成物は、アルカリ金属塩基をさらに含み得る。アルカリ金属塩基は任意であり得る。アルカリ金属塩基は、溶液のpHを調整するために使用され得る。様々な実施形態において、アルカリ金属塩基は、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであり得るか、またはそれらを含み得る。アルカリ金属塩基は、0.1M~0.5M、0.2M~0.5M、0.3M~0.5M、0.4M~0.5M、0.1M~0.2M、0.1M~0.3M、0.1M~0.4M等の濃度で存在し得る。
【0018】
本組成物は水を含む。水は、ポリマー界面活性剤およびその中に溶解される金属イオンに対して相溶性の溶媒として働く。言い換えれば、本組成物は水性組成物である。
本開示は、上述の第1の態様の様々な実施形態に記載される前記組成物を形成する方法を含む。第1の態様の本組成物について記載される実施形態および利点は、本明細書において後に記載される本組成物を形成する本方法についても同様に有効であり得、逆もまた同様に有効であり得る。様々な実施形態および利点が既に上述されており、本明細書で実証される実施例において説明されているので、それらは簡潔さのために繰り返されないものとする。
【0019】
本組成物を形成する本方法は、水中の金属イオンを含む金属塩溶液を形成することと、ポリマー界面活性剤を含むポリマー界面活性剤溶液であって、前記ポリマー界面活性剤はモノマーの複数の繰り返し単位を含み、前記複数の繰り返し単位の各々は官能基を含む、前記ポリマー界面活性剤溶液を形成することと、前記金属塩溶液と前記ポリマー界面活性剤溶液とを混合して混合物を形成することを含む。その混合物は、本組成物を構成し得る。
【0020】
様々な実施形態において、金属塩溶液を形成することは、金属塩を水に溶解することを含み得る。水に溶解された金属塩溶液は、本組成物の金属イオンを与える。非限定的な例として、表面または基板上にメッキされる金属がパラジウムである場合、前記金属塩溶液および、ゆえに金属イオンは、それぞれ塩化パラジウム(II)(PdCl)溶液およびパラジウム(Pd)イオンであり得る。メッキされる金属に応じて、他の金属塩溶液が使用され得る。
【0021】
様々な実施形態において、金属塩溶液を形成することは、金属イオンが0.02重量%~0.2重量%、0.02重量%~0.04重量%、0.02重量%~0.03重量%、0.03重量%~0.04重量%等の濃度で存在するように、水に金属塩を溶解させることを含み得る。
【0022】
様々な実施形態において、ポリマー界面活性剤溶液を形成することは、ポリマー界面活性剤を水に溶解することを含み得る。ポリマー界面活性剤溶液を形成することは、ポリマー界面活性剤が0.2重量%~1.0重量%、0.3重量%~1.0重量%、0.4重量%~1.0重量%、0.5重量%~1.0重量%、0.6重量%~1.0重量%、0.7重量%~1.0重量%、0.8重量%~1.0重量%、0.9重量%~1.0重量%等の濃度で存在するように、水にポリマー界面活性剤を溶解することを含み得る。前記ポリマー界面活性剤の様々な実施形態は上述されているので、簡潔さのために繰り返されないものとする。
【0023】
本方法において、金属塩溶液とポリマー界面活性剤溶液とを混合することは、金属塩溶液とポリマー界面活性剤溶液とを等体積で混合することを含み得る。
本方法は、金属塩溶液とポリマー界面活性剤溶液とを混合する時に形成される混合物にアルカリ金属塩基を溶解させることをさらに含み得る。アルカリ金属塩基を混合物に溶解させることは任意であってもよい。本発明の方法において、前記混合物にアルカリ金属塩基を溶解させることは、アルカリ金属塩基を0.1M~0.5M、0.2M~0.5M、0.3M~0.5M、0.4M~0.5M、0.1M~0.2M、0.1M~0.3M、0.1M~0.4M等の濃度にするように溶解させることを含み得る。
【0024】
本開示は、無電解析出方法をさらに含む。本方法は、上述の第1の態様の様々な実施形態に記載されている本組成物の使用を含む。第1の態様の本組成物および本組成物を形成する本方法について記載される実施形態および利点は、本明細書において後述する本無電解析出方法についても同様に有効であり得、逆もまた同様に有効であり得る。様々な実施形態および利点が既に上述されており、本明細書で実証される実施例において説明されているので、それらは簡潔さのために繰り返されないものとする。
【0025】
本無電解析出方法は、上述の第1の態様の様々な実施形態に記載される前記組成物を用いて表面を処理することと、表面を触媒金属塩溶液と接触させて触媒処理表面を形成することと、触媒処理表面を還元剤と接触させて金属被覆表面を形成することと、その金属被覆表面を、前記金属被覆表面への金属の無電解析出のためのめっき浴と接触させることを含み得る。
【0026】
本無電解析出方法において、前記表面を前記組成物で処理することは、前記組成物を加熱すること、および前記表面の存在下で前記組成物を撹拌することを含む。非限定的な例として、前記表面または前記基板は、既に加熱されている本組成物中に浸漬され得る。有利なこととして、これは、無電解析出の速度を上げる(すなわち、その上にメッキされる金属の被覆反応の反応速度を改善する)こと、ならびにその上にメッキされる金属の均一性を改善することを助ける。様々な実施形態において、組成物を加熱することは、組成物を40℃~60℃、45℃~60℃、50℃~60℃、55℃~60℃、40℃~55℃、40℃~50℃、40℃~45℃等の範囲内の温度へ加熱することを含み得る。温度がより低い場合、表面コンディショニングステップの実施期間や多量の表面コンディショナーを使用することが必要になる場合があるが、これらは基板を潜在的に損傷したり基板の表面特性を望ましくないように改変する。温度が高すぎると、前記溶液からの水の過剰な蒸発が生じたり、金属錯体濃度が変化する可能性がある。ある特定の非限定的な実施形態では、表面または基板は、45℃に予め加熱されている本組成物中に浸漬され得る。
【0027】
様々な実施形態において、還元剤は、NaPOであり得るか、またはNaPOを含み得る。金属触媒を表面上で金属に還元するのに適した他の還元剤を使用し得る。
【0028】
様々な実施形態において、触媒金属塩溶液は、10ppm~30ppm、20ppm~30ppm、10ppm~20ppm等の濃度で存在する触媒金属塩を含み得る。濃度がより高い場合、高濃度のPdが洗い流されるので、その後の洗浄処置の間の触媒損失が多くなり得る。これは、廃水からPdを回収するための追加のコストを発生させる。濃度が低すぎる場合、触媒効果を達成することが困難である可能性がある。触媒金属塩は、本組成物の金属イオンと異なる金属イオンまたは同じ金属イオンを提供し得る。換言すれば、無電解メッキに用いられる触媒金属塩は、本表面コンディショナーに用いられる金属塩に依存しない。表面コンディショナーを調製するための金属塩は、無電解めっき浴の金属塩と異なるかまたは同一の金属イオンを含有し得る。
【0029】
様々な実施形態において、本無電解析出方法は、表面を触媒金属塩溶液と接触させる前に、表面を水(例えば、脱イオン水)で洗浄することをさらに含み得る。様々な実施形態において、本無電解析出方法は、触媒処理表面を還元剤と接触させる前に、触媒処理表面を水(例えば、脱イオン水)で洗浄することをさらに含み得る。様々な実施形態において、本無電解析出方法は、金属被覆表面をめっき浴と接触させる前に、金属被覆表面を水(例えば、脱イオン水)で洗浄することをさらに含み得る。
【0030】
「実質的に」という語は、「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合がある。必要な場合、「実質的に」という語は、本開示の定義から省略され得る。
【0031】
様々な実施形態の文脈において、特徴または要件に関して使用される冠詞「a」、「an」、および「the」は、特徴または要件のうちの1つ以上への言及を含む。
様々な実施形態の文脈において、数値に適用される「約」または「およそ」という用語は、正確な値および妥当な分散を包含する。分散は、±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、±0.1%等であり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、それに関連づけられた列挙項目のいずれか1つ以上および当該列挙項目のすべての組み合わせを含む。
別段の指定がない限り、「含んでいる(comprising)」および「含む(comprise)」という用語、ならびにそれらの文法的変形は、列挙された要件を含むが、列挙されていない追加の要件も包含するように、「オープン」または「包括的」言語を意図的に表す。
実施例
本開示は、表面または基板を前処理して、その上への無電解金属析出、例えば無電解ニッケル析出および無電解銅析出を促進させる一方で、析出/メッキを達成するために従来必要であった触媒ローディングを低減させるための表面コンディショナーに関する。表面または基板は、非金属、非導電性、および/またはポリマーであってもよい。
【0033】
表面コンディショナーは、金属イオンと錯体を形成することが可能な官能基(アミン基等)の複数の繰り返し単位から構成されるポリマー界面活性剤を含み得る。例えば、ポリマー界面活性剤は、表面または基板上にメッキされる対象金属(すなわち、所望の金属)を含有する金属塩と共に脱イオン水に溶解され得る。基板を、ポリマー界面活性剤、金属塩および水を含有する溶液(すなわち、表面コンディショナー)に浸漬し、続いて、基板を、十分に低い濃度の触媒を有する触媒金属塩溶液(例えば、PdCl溶液等の低パラジウム(Pd)触媒イオン溶液)に浸漬する場合がある。ポリマー界面活性剤は、金属塩および(この場合の例として)Pdイオンを捕捉して、基板上に広がって付着するようになる。次いで、還元金属(例えば、Pd)によって基板を被覆させるための還元剤溶液(例えば、0.2M NaPO)中に基板を浸漬する。このPdは無電解メッキを誘導する触媒として働く。
【0034】
本表面コンディショナー、表面コンディショナーを形成する方法、および表面コンディショナーを使用する無電解析出方法は、以下に説明されるように、非限定的な例としてさらに詳細に記載される。
【0035】
実施例1 材料
本表面コンディショナーを構成する成分としては、ポリマー界面活性剤、金属イオンを提供する金属塩、(任意で)強アルカリ金属塩基、および脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ポリマー界面活性剤は、1つ以上の官能基の複数の繰り返し単位を含み得、1つ以上の官能基の各々は、金属イオンと錯体を形成し得る。前記官能基の非限定的な例としては、アミン基が挙げられる。
【0037】
金属塩は金属イオンを含有し得、金属イオンは、表面または基板上にメッキされる金属に形成可能である。
実施例2 表面コンディショナーの調製
本表面コンディショナーの調製を以下に記載する。
【0038】
対象金属(すなわち、表面または基板上にメッキされる金属)を含有する金属塩は、最初に脱イオン水に溶解されて金属塩溶液を形成する。金属塩溶液は、重量(wt%)で0.02%~0.04%の範囲の金属イオン濃度を有し得る。
【0039】
ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等の1つ以上の繰り返し官能基(例えば、各々がアミン基を有する複数の繰り返し単位)を有する長鎖界面活性剤が選択され、脱イオン水に溶解されて、0.2重量%~1.0重量%の範囲の濃度を有する界面活性剤溶液を形成する。
【0040】
界面活性剤溶液を金属塩溶液に等体積でゆっくり添加して混合物を形成し、コンディショナーの所望の体積が達成されるまで添加する。紫外可視(UV-vis)分光法を実施することで、すべての金属イオンが界面活性剤により完全に錯形成されたこと、および錯形成されていない金属イオンの痕跡がないことを特性評価および確認することができる。
【0041】
強アルカリ金属塩基(例えば、KOH)は、表面コンディショナーを形成するために、0.1M~0.5Mの範囲の濃度で存在するように混合物中に溶解され得る。
コンディショナーの最終組成は、例えば、0.1重量%~0.5重量%の界面活性剤、0.01重量%~0.02重量%の金属イオン、および0.1M~0.5Mのアルカリ金属塩基であり得る。
【0042】
実施例3 本表面コンディショナーを使用する無電解析出
ポリマー表面または基板(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)プレート)を、加熱した(例えば、45℃)表面コンディショナーに浸漬し撹拌下で、一例として3分間、処理する。
【0043】
次いで、処理された基板を脱イオン水中で5~10秒間すすぐことによって洗浄する。次いで、処理された基板を、室温(例えば、20℃~40℃)下で低濃度PdClイオン溶液(10ppm~30ppm)中に浸漬し、5分間撹拌する(例えば、かき混ぜる)ことによって触媒化する。当該低濃度PdClイオン溶液は、触媒金属塩溶液の非限定的な例である。触媒金属塩溶液は、表面コンディショナーを調製するために使用される金属塩溶液とは異なる。表面コンディショナーのための金属塩溶液は、ポリマー界面活性剤で錯化された金属イオンを有する。しかしながら、触媒金属塩溶液にはポリマー界面活性剤が存在せずかつ触媒金属塩溶液には添加剤が含まれていないので、触媒金属塩溶液中には、触媒金属塩溶液由来の金属イオンが遊離金属イオンとして存在し得る。PdClの使用は、限定を意味するものではなく、本表面コンディショナーおよび表面または基板上への金属の無電解析出におけるその使用を実証するための単なる例である。銀(Ag)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)等のイオン等金属イオンを含有する無電解メッキのための他のイオン性触媒溶液もまた機能した。
【0044】
次いで、処理された基板を脱イオン水中で5~10秒間すすぐことによって洗浄する。
次いで、処理された基板を還元剤(例えば、0.2M NaPOまたは金属の無電解メッキに好適な任意の他の還元剤)に室温(例えば、20℃~40℃)下で撹拌せずに1分間浸漬し、Pd金属を有する触媒化基板を形成する。
【0045】
次いで、Pd金属を有する触媒化基板を、脱イオン水中で5~10秒間すすぐことによって洗浄する。
最後に、Pd金属を有する触媒化基板を、所望の金属メッキの無電解析出のために配合されためっき浴中に浸漬する。めっき浴溶液の非限定的な例は、0.2M クエン酸ナトリウムと、0.5M ホウ酸と、15g/L 硫酸ニッケル(II)六水和物と、37.5g/L次亜リン酸ナトリウム一水和物とを含有するニッケル無電解めっき浴であり得る。Uyemura「Mekongka NEN」メッキ溶液またはOkuno「Chemical Nickel EXC」メッキ溶液等の市販のニッケルめっき浴を利用することができる。
【0046】
本開示は、特定の実施形態を参照して具体的に示され説明されているが、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更が本開示においてなされ得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、それゆえに特許請求の範囲の均等範囲内に入るすべての変更が包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】