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特表2023-539856ねじ要素のコーティング方法、ねじ要素及びパイプ接続装置
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  • 特表-ねじ要素のコーティング方法、ねじ要素及びパイプ接続装置 図1
  • 特表-ねじ要素のコーティング方法、ねじ要素及びパイプ接続装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ねじ要素のコーティング方法、ねじ要素及びパイプ接続装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/028 20060101AFI20230912BHJP
   F16B 33/06 20060101ALI20230912BHJP
   F16L 15/08 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F16L19/028
F16B33/06 Z
F16L15/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513275
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 IB2021057799
(87)【国際公開番号】W WO2022043897
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】20193157.3
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504117534
【氏名又は名称】テーイー・アウトモティーフェ(ハイデルベルク)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュターン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイク ゲオルク
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014CA01
(57)【要約】
ねじ要素、特にパイプ2、好ましくは自動車用パイプを接続するためのねじ要素をコーティングする方法を提供する。ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山3と、少なくとも1つのねじ山のない接触面4,5と、を有する。ねじ山3の少なくとも所定の領域は第1のコーティング7を有する。ねじ山のない接触面4,5の少なくとも所定の領域は第2のコーティング8を有する。ねじ山3の第1のコーティング7及びねじ山のない接触面4,5の第2のコーティング8は、プラズマコーティングによりねじ山又はねじ山のない接触面にそれぞれ適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ要素、特にパイプ(2)、好ましくは自動車用パイプを接続するためのねじ要素をコーティングする方法であって、
前記ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山(3)と、少なくとも1つのねじ山のない接触面(4、5)と、を有し、
前記ねじ山(3)の少なくとも所定の領域は、第1のコーティング(7)を有し、
前記ねじ山のない接触面の少なくとも所定の領域は、第2のコーティング(8)を有し、
前記ねじ山(3)の前記第1のコーティング(7)及び前記ねじ山のない接触面(4、5)の前記第2のコーティング(8)は、いずれもプラズマコーティングにより前記ねじ山(3)又は前記ねじ山のない接触面(4、5)にそれぞれ適用される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のコーティング(7)は、摩擦値μ1を有し、
前記第2のコーティング(8)は、摩擦値μ2を有し、
前記第1の摩擦値μ1は、前記第2の摩擦値μ2よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の摩擦値μ1は、前記第2の摩擦値μ2の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のコーティングの層厚は、1μm~25μm、特に2μm~20μmであり、及び/又は、前記第2のコーティングの層厚は、5μm~100μm、特に5μm~50μmである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ねじ要素は、ねじボルト又はねじ込み継ぎ手(1)であり、雄ねじを構成するねじ山(3)を有し、少なくとも所定の領域に前記第1のコーティング(7)を有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ねじ込み継ぎ手(1)の端面は、ねじ山のない接触面(4)を有し、当該ねじ山のない接触面(4)の少なくとも所定の領域に第2のコーティング(8)が設けられ、及び/又は、
前記ねじ込み継ぎ手(1)のねじ頭(6)のねじ山側の下面は、ねじ山のない接触面(5)を有し、当該接触面の少なくとも所定の領域に第2のコーティングが設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコーティング(7)及び前記第2のコーティング(8)のための前記プラズマコーティングは、常圧又は大気圧で行われる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマコーティングは物理蒸着及び/又は化学的蒸着として行われる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマコーティングのためプラズマコーティング装置(14)を使用し、
前記第1のコーティング(7)のための材料及び/又は前記第2のコーティング(8)のための材料は、粉末として前記プラズマコーティング装置(14)に供給される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
プラズマコーティング装置(14)内における前記第1のコーティング(7)のための材料及び/又は前記第2のコーティング(8)のための材料は気相に変換され、その後、前記ねじ山(3)及び/又は前記ねじ山のない接触面(4、5)に固体で蒸着される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
金属、金属塩、ポリマーからなる群から選択された少なくとも1つの材料が、前記第1のコーティング及び前記第2のコーティングの少なくとも一方に使用される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ねじ要素、特に請求項1~11のいずれかに記載の方法により製造されたねじ要素、好ましくはパイプ(2)、特に自動車用パイプを接続するためのねじ要素であって、
前記ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山(3)と、少なくとも1つのねじ山のない接触面(4、5)と、を有し、
前記ねじ山(3)の少なくとも所定の領域は、第1のコーティング(7)を有し、
前記ねじ山のない接触面(4、5)の少なくとも所定の領域は、第2のコーティング(8)を有し、
前記ねじ山(3)の前記第1のコーティング(7)及び前記ねじ山のない接触面(4、5)の前記第2のコーティング(8)は、いずれもプラズマコーティングによりそれぞれ適用される、ことを特徴とするねじ要素。
【請求項13】
特に請求項1~11のいずれかに記載の方法により製造されたねじ要素又は請求項12に記載のねじ要素により、パイプ、特に自動車用パイプを接続するためのパイプ接続装置であって、
前記パイプ(2)は前記ねじ要素に接続され、前記ねじ要素は、ねじ込み式接続により接続要素に接続される、ことを特徴とするパイプ接続装置。
【請求項14】
前記ねじ要素は、軸方向孔を有するねじ込み継ぎ手(1)であり、当該軸方向孔はパイプ(2)を貫通し、
前記パイプ(2)の端部は、フレア(9)を有し、
前記ねじ山のない接触面(4)は、前記第2のコーティング(8)を有し、
前記ねじ込み継ぎ手(1)の端面における前記ねじ山のない接触面(4)は、前記フレア(9)の後方側に当接する、ことを特徴とする請求項13に記載のパイプ接続装置。
【請求項15】
自動車構造における、好ましくは燃料経路又は油圧経路、特にブレーキラインのための、請求項12に記載のねじ要素、又は、請求項13又は14に記載のパイプ接続装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2020年8月27日に出願された、欧州特許出願第20193157.3号の利益を主張するPCT出願であり、その全内容が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ねじ要素、特にパイプ接続用のねじ要素、好ましくは自動車パイプ接続用のねじ要素をコーティングする方法に関する。ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山と、少なくとも1つのねじ山のない接触面と、を有する。ねじ山の少なくとも所定の領域は第1のコーティングを有し、少なくともねじ山のない接触面の少なくとも所定の領域は第2のコーティングを有する。さらに、本開示は、対応するねじ要素、及び、ねじ要素によりパイプを接続するためのパイプ接続装置に関する。
【背景技術】
【0003】
前述したような方法、並びに対応するねじ要素及びパイプ接続装置は、様々な構成のものが知られている。ねじ要素は、ねじ込み継ぎ手として設計され、このねじ込み継ぎ手を用いて、パイプ、特に自動車用パイプが接続要素に接続される。例えば、パイプは、自動車のブレーキ液用のパイプとして使用される。
【0004】
ねじ要素又はねじ込み継ぎ手に特殊なコーティングを施すことにより摩擦値に影響が生じることは周知である。例えば、ねじ込み継ぎ手のねじ山のコーティングは、ねじ込み継ぎ手のねじ山のない接触面、例えば、ねじ頭の下側及び/又はねじ込み継ぎ手の端面のコーティングよりも高い摩擦値を有することが知られている。ねじの所定の領域において高い摩擦値を有するコーティングは、ねじ接続部の偶発的な脱離の防止を目的としている。これに対し、ねじ山のない接触面における摩擦値の低いコーティングは、接続される部品やパイプ端部へのねじれ応力の伝達を減少させる。これにより、望ましくないねじ接続部の緩みにつながるねじ込み工程におけるパイプのねじれ及び結果生じる逆トルクを回避することが可能となる。
【0005】
現在までに知られているこのようなねじ要素のコーティング方法として、特に湿式化学的方法又はガルバノ技術方式が注目されている。これらの方法の欠点として、適用されるコーティングの摩擦値がねじ要素によって著しく異なることがあることが分かった。このため、ねじ要素が規格で定められた要件に適合しているか否かを判断するために、時間及び費用を要する試験が必要となる。このような既知の方法では、コーティングを被コーティング面に十分に均一に適用できないことがある。被コーティング面において摩擦値が異なることがあるが、当然ながら、これは望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対して、本開示の基礎となる技術的課題は、冒頭で述べた種類の方法を提供することであり、これにより、上述の欠点を効果的に回避する。本開示は、さらに、対応するねじ要素及び対応するパイプ接続装置を提供するという技術的課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための本開示の教示は、ねじ要素、特に、パイプ、好ましくは自動車パイプの接続用のねじ要素をコーティングする方法を含む。ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山と、少なくとも1つのねじ山のない接触面と、を有する。ねじ山の少なくとも所定の領域は、第1のコーティングを有し、ねじ山のない接触面の少なくとも所定の領域は、第2のコーティングを有する。ねじ山の第1のコーティングと、一つ又は複数のねじ山のない接触面の第2のコーティングとは、プラズマコーティングによりねじ山又はねじ山以外の接触面に適用される。本開示の好ましい実施例によれば、ねじ山のねじ面の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%に第1のコーティングが適用される。ねじ要素のねじ山のない接触面の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%に、第2のコーティングが適用されることが望ましい。
【0008】
本開示は、プラズマ法により第1のコーティング及び第2のコーティングを適用することにより、コーティングされたねじ要素の領域の摩擦値を再現性よく設定し、順次コーティングされるねじ要素について、各々の面の摩擦値をほぼ一定に保つことが可能になるという知見に基づいている。さらに、本開示は、第1のコーティング及び第2のコーティングを各々のコーティングされる面に非常に均一に適用することができるという知見に基づいている。摩擦値は、コーティングされる面において略一定である。
【0009】
本開示は,第1のコーティングが摩擦値μ1を有し、第2のコーティングが摩擦値μ2を有し、第1の摩擦値μ1は第2の摩擦値μ2よりも大きい、ことを含む。本開示の特に好ましい実施例において、第1の摩擦値μ1は、第2の摩擦値μ2の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、特に好ましくは少なくとも4倍である。
【0010】
本開示の実施例によれば、第1のコーティングの層厚は、1μm~25μm、特に2μm~20μmである。第2のコーティングの層厚は、5μm~100μm、特に5μm~50μmであることが好ましい。
【0011】
本開示の特に好ましい実施例によれば、摩擦値μ1を有する第1のコーティングは、ねじ山にのみ適用され、摩擦値μ2を有する第2のコーティングは、少なくとも1つのねじ山のない接触面にのみ適用される。この実施例では、次に、第1のコーティングは、ねじ山にのみ適用され、少なくとも1つのねじ山のない接触面には適用されず、第2のコーティングは、少なくとも1つのねじ山のない接触面にのみ適用される。
【0012】
本開示の方法に係る他の実施例では、摩擦値μ1を有する第1のコーティングは、ねじ山と、少なくとも1つのねじ山のない接触面との両方に適用され、摩擦値μ2を有する第2のコーティングは、第1のコーティングを覆うように、少なくとも1つのねじ山のない接触面に適用される。次いで、本実施例では、最初に、ねじ要素全体又はねじ要素の少なくともねじ山及び少なくとも1つのねじ山のない接触面に第1のコーティングを適用し、次に、1つのねじ山のない接触面の所定の領域又は複数のねじ山のない接触面の所定の領域において第2のコーティングを第1のコーティングに適用する。これにより、第2のコーティングが1つのねじ山のない接触面又は複数のねじ山のない接触面上で外面を形成する。
【0013】
本開示の特に好ましい一実施例は、使用されるねじ要素は、ねじボルト又はねじ込み継ぎ手であり、雄ねじを有するように設計されたねじ山を有し、少なくとも所定の領域に第1のコーティングを有することを特徴とする。本開示は、ねじ込み継ぎ手の端面がねじ山のない接触面を有し、この接触面の少なくとも所定の領域に第2のコーティングが設けられることを含む。さらに、本開示は、ねじ込み継ぎ手のねじ頭におけるねじ側の下面がねじ山のない接触面を有し、この接触面の少なくとも所定の領域に第2のコーティングが設けられることを含む。
【0014】
本開示によれば、第1のコーティング及び第2のコーティングは、プラズマコーティングにより適用される。本開示の特に好ましい実施例は、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングのためのプラズマコーティングが、常圧又は大気圧で行われることを特徴とする。プラズマコーティングは、基本的に、他の圧力下、例えば真空下で行ってもよい。本開示は、プラズマコーティングが物理蒸着又は化学蒸着として行われることを含む。
【0015】
有利には、プラズマコーティングのためにプラズマコーティング装置が使用され、第1のコーティングのための材料及び/又は第2のコーティングのための材料は、粉末としてプラズマコーティング装置に供給される。プラズマコーティング装置内における第1のコーティングのための材料及び/又は第2のコーティングのための材料は気相に変換され、その後、固体でねじ山及び/又は少なくとも1つのねじ山のない接触面に蒸着される。
【0016】
コーティングされるねじ山の面及び/又は少なくとも1つのねじ山のない接触面はコーティング前に洗浄され、好ましくはプラズマコーティング装置により洗浄されるか、もしくは、プラズマジェットによって洗浄されることが効果的であることが分かった。その後、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングによるコーティングが行われる。
【0017】
「金属、金属塩、ポリマー」からなる群の少なくとも一つの材料又は少なくとも一つの物質を第1のコーティング及び/又は第2のコーティングに使用することが望ましい。プラズマコーティングにより適用される第1のコーティング及び/又は第2のコーティングは、基本的に又は本質的に、種々の有機及び/又は有機金属化合物及び/又はこれらの混合物からなる。第1のコーティングは、有利には、金属塩として金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム及び/又は酸化鉄を含む。本開示の枠組みにおいて、ポリマーとしては、特にポリオレフィン、ポリイミド、フルオロポリマー及びポリアミドである。実施例の変形例では、第1のコーティングは、ポリマーとしてポリアミド及び/又はポリイミドを含む。
【0018】
有利には、第2のコーティングは、コーティングの摩擦値を低減する潤滑剤を含む。好ましくは、本実施例は、フルオロポリマー、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び/又は硫化モリブデン(MoS)を含む。本開示の一実施例によれば、第1のコーティング及び/又は第2のコーティングは、「ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、金属、金属塩」からなる群から選択された少なくとも1つの材料又は少なくとも1つの物質を含む。
【0019】
また、本開示の主題は、特にパイプ、好ましくは自動車用パイプを接続するためのねじ要素に関する。ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山と、少なくとも1つのねじ山のない接触面と、を有する。ねじ山の少なくとも所定の領域は、第1のコーティングを有し、ねじ山のない接触面の少なくとも所定の領域は、第2のコーティングを有する。ねじ山の第1のコーティング及び少なくとも1つのねじ山のない接触面の第2のコーティングはプラズマコーティングにより適用される。本開示の特に好ましい実施例では、ねじ要素は、雄ねじを有するねじ込み継ぎ手である。このねじ山の少なくとも所定の領域は、第1のコーティングでコーティングされる。
【0020】
さらに、本開示の主題は、ねじ要素により、パイプ、特に自動車用パイプを接続するためのパイプ接続装置に関する。パイプは、ねじ要素に接続される。ねじ要素は、ねじ込み式接続を介して接続要素に接続される。ねじ要素は、本開示に従ってコーティングされる。有利には、本開示によるパイプ接続装置のねじ要素は、軸方向孔を有するねじ込み継ぎ手であり、軸方向孔はパイプを貫通する。パイプのパイプ端部はフレアを有する。ねじ山のない接触面は、第2のコーティングを有し、フレアの後方側において、ねじ込み継ぎ手の端面に当接する。ねじ込み継ぎ手の端面におけるねじ山のない接触面は第2のコーティングを有する。第2のコーティングがパイプのフレアの後方側に当接する。
【0021】
本開示は、定義された態様で設定された摩擦値をそれぞれ有する2つの異なるコーティングを含むねじ要素を、本開示による方法により再現可能に形成することができることを見出したことに基づく。本開示によるプラズマコーティングにより順次コーティングされるねじ要素には、2つのコーティングの摩擦値にほとんど差がない。これにより、個々のねじ要素が摩擦値に関する要件を満たすか否かを判断するための、時間と費用を要する試験を省略することが可能となる。さらに、本開示は、本開示によるプラズマコーティングにより形成された異なる層が、その表面に亘って非常に均一に形成され、コーティングされた表面における摩擦値は明確に相違していないという知見に基づいている。本開示による方法は、湿式化学的又はガルバノ技術処理ステップを伴わずに完全に行うことができる。本開示によるコーティング手段は、容易にかつ少ない労力で、特に費用効率良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、本開示を、例示的な実施例のみを示す図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1図1は、ねじ込み継ぎ手として設計された本開示によるねじ要素の長手方向の断面図である。
図2図2は、図1によるねじ込み継ぎ手及び接続されたパイプを備えたパイプ接続装置を示す図である。
図3図3は、本開示による方法を実施するためのプラズマコーティング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図は、ねじ込み継ぎ手1として設計された本開示によるねじ要素を示し、このねじ要素は、好ましくは、例示的な実施例では、パイプ2を接続するために提供される。特に、パイプ2は、自動車用パイプを含む。ねじ込み継ぎ手1は、ねじ山3と、ねじ山のない接触面4,5と、を有する。ねじ山のない接触面4は、ねじ込み継ぎ手1の端面に設けられている。ねじ込み継ぎ手1は、ねじ頭6を有し、ねじ山側に位置するねじ頭6の下面にねじ山のない接触面5が設けられている。
【0024】
例示的な実施例では、ねじ込み継ぎ手1のねじ山3又は雄ねじは、好ましくは、第1のコーティング7が完全に施されている。例示的な実施例において、2つのねじ山のない接触面4,5は、好ましくは、第2のコーティング8が完全に施されている。第1のコーティング7の摩擦値μ1は、第2のコーティング8の第2の摩擦値μ2よりも大きい。例示的な実施例では、第1の摩擦値μ1は、好ましくは、第2の摩擦値μ2の5倍である。例示的な実施例において、ねじ込み継ぎ手1は、好ましくは、金属又は本質的に金属から形成される。
【0025】
図1に示すねじ込み継ぎ手1の好ましい実施例では、プラズマコーティングにより、ねじ山3の所定の領域に第1のコーティング7が適用される。第1のコーティング7はより高い摩擦値μ1を有する。第1のコーティング7は、ねじ山3の所定の領域において、ねじ込み継ぎ手1の外面を形成する。第2のコーティング8は、より低い摩擦値μ2を有する。第2のコーティング8は、プラズマコーティングにより、ねじ山のない接触面4,5の所定の領域に適用される。第2のコーティング8は、ねじ山のない接触面4,5の所定の領域において、ねじ込み継ぎ手1の外面を形成する。
【0026】
図2は、本開示に従って生成された動作状態のねじ込み継ぎ手1又はねじ込み継ぎ手1を備えた本開示によるパイプ接続装置を示している。例示的な実施例では、パイプ2は、好ましくは、ねじ込み継ぎ手1を軸方向に貫通する。パイプ2の端部は、例示的な実施例では、フレア(flare)9の状に設計された面要素を有する。例示的な実施例では、金属製のフレア9は、好ましくは、パイプ端部に一体成形される。図2による例示的な実施例では、ねじ込み継ぎ手1は、接続ブロック10として設計された接続要素にねじ込まれる。例示的な実施例では、接続ブロック10は、一体化された第2のパイプ11を有する。ねじ込み継ぎ手1の端面シール面12は、フレア9を接続ブロック10の接続面に対して押圧する。このため、ねじ込み継ぎ手1のねじ山3又は雄ねじは、接続ブロック10のブラインドホール13にねじ込まれる。例示的な実施例では、ブラインドホール13は、対応する相補的な雌ねじを有する。ねじ込み継ぎ手1のねじ山3又は雄ねじは、プラズマコーティングにより適用された第1のコーティング7を備える。ねじ込み継ぎ手の端面におけるねじ山のない接触面4は、同様にプラズマコーティングにより適用された第2のコーティング8を有する。同様に、ねじ頭6のねじ側の下面におけるねじ山のない接触面5は、プラズマコーティングにより適用された第2のコーティング8を有する。
【0027】
図3は、本開示による方法に適したプラズマコーティング装置14を示している。図3に示す例示的な実施例では、プラズマコーティング装置14は、ねじ込み継ぎ手1の端面におけるねじ山のない接触面4に、より低い摩擦値μ2を有する第2のコーティング8を適用するために使用される。通常の態様では、プラズマコーティング装置は、電極15と、ガス供給ライン16と、を有する。例示的な実施例では、コーティング用の材料は、好ましくは、粉末として、流路17を通して供給される。プラズマジェット18は、コーティングされる面の上方に配設される。好ましい実施例では、コーティングされる表面は、既に上で指摘したように、プラズマコーティング装置又はそのプラズマジェット18によってプラズマコーティングを行う前に洗浄されてもよい。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イプ(2)を接続するためのねじ要素をコーティングする方法であって、
前記ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山(3)と、少なくとも1つのねじ山のない接触面(4、5)と、を有し、
前記ねじ山(3)の少なくとも所定の領域は、第1のコーティング(7)を有し、
前記ねじ山のない接触面の少なくとも所定の領域は、第2のコーティング(8)を有し、
前記ねじ山(3)の前記第1のコーティング(7)及び前記ねじ山のない接触面(4、5)の前記第2のコーティング(8)は、いずれもプラズマコーティングにより前記ねじ山(3)又は前記ねじ山のない接触面(4、5)にそれぞれ適用される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のコーティング(7)は、摩擦値μ1を有し、
前記第2のコーティング(8)は、摩擦値μ2を有し、
前記第1の摩擦値μ1は、前記第2の摩擦値μ2よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の摩擦値μ1は、前記第2の摩擦値μ2の少なくとも2倍である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のコーティングの層厚は、1μm~25μmであり、及び/又は、前記第2のコーティングの層厚は、5μm~100μmである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ねじ要素は、ねじボルト又はねじ込み継ぎ手(1)であり、雄ねじを構成するねじ山(3)を有し、少なくとも所定の領域に前記第1のコーティング(7)を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ねじ込み継ぎ手(1)の端面は、ねじ山のない接触面(4)を有し、当該ねじ山のない接触面(4)の少なくとも所定の領域に第2のコーティング(8)が設けられ、及び/又は、
前記ねじ込み継ぎ手(1)のねじ頭(6)のねじ山側の下面は、ねじ山のない接触面(5)を有し、当該接触面の少なくとも所定の領域に第2のコーティングが設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコーティング(7)及び前記第2のコーティング(8)のための前記プラズマコーティングは、常圧又は大気圧で行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマコーティングは物理蒸着及び/又は化学的蒸着として行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマコーティングのためプラズマコーティング装置(14)を使用し、
前記第1のコーティング(7)のための材料及び/又は前記第2のコーティング(8)のための材料は、粉末として前記プラズマコーティング装置(14)に供給される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
プラズマコーティング装置(14)内における前記第1のコーティング(7)のための材料及び/又は前記第2のコーティング(8)のための材料は気相に変換され、その後、前記ねじ山(3)及び/又は前記ねじ山のない接触面(4、5)に固体で蒸着される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
金属、金属塩、ポリマーからなる群から選択された少なくとも1つの材料が、前記第1のコーティング及び前記第2のコーティングの少なくとも一方に使用される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
求項1又は2に記載の方法により製造された、パイプ(2)を接続するためのねじ要素であって、
前記ねじ要素は、少なくとも1つのねじ山(3)と、少なくとも1つのねじ山のない接触面(4、5)と、を有し、
前記ねじ山(3)の少なくとも所定の領域は、第1のコーティング(7)を有し、
前記ねじ山のない接触面(4、5)の少なくとも所定の領域は、第2のコーティング(8)を有し、
前記ねじ山(3)の前記第1のコーティング(7)及び前記ねじ山のない接触面(4、5)の前記第2のコーティング(8)は、いずれもプラズマコーティングによりそれぞれ適用される、ことを特徴とするねじ要素。
【請求項13】
求項12に記載のねじ要素によりパプを接続するためのパイプ接続装置であって、
前記パイプ(2)は前記ねじ要素に接続され、前記ねじ要素は、ねじ込み式接続により接続要素に接続される、ことを特徴とするパイプ接続装置。
【請求項14】
前記ねじ要素は、軸方向孔を有するねじ込み継ぎ手(1)であり、当該軸方向孔はパイプ(2)を貫通し、
前記パイプ(2)の端部は、フレア(9)を有し、
前記ねじ山のない接触面(4)は、前記第2のコーティング(8)を有し、
前記ねじ込み継ぎ手(1)の端面における前記ねじ山のない接触面(4)は、前記フレア(9)の後方側に当接する、ことを特徴とする請求項13に記載のパイプ接続装置。
【請求項15】
自動車構造における燃料経路又は油圧経路のための、請求項12に記載のねじ要素の使用。
【国際調査報告】