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特表2023-539869情報処理装置および情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230912BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230912BHJP
   G16Y 10/05 20200101ALI20230912BHJP
   G01W 1/10 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/04
G16Y10/05
G01W1/10 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513530
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021030665
(87)【国際公開番号】W WO2022045021
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2020145145
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、イノベーション創出強化研究推進事業『施設園芸の主要病害発生予測AIによる総合的病害予測・防除支援ソフトウェア開発』委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000232564
【氏名又は名称】バイエルクロップサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】将来の温室の内部の環境の予測についての正確性を向上させる。
【解決手段】
作物が栽培される温室(3A、3B)の設置場所の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部(140)と、大気外日射量と気象予測情報を入力として温室(3A、3B)の内部の環境に関する実績情報に基づいて温室内環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部(131)と、温室内環境予測モデルを用いて、温室(3A、3B)の環境を予測する予測部(132)と、予測された温室(3A、3B)の内部の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部(133)と、を備える情報処理装置(100)が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物が栽培される温室(3A、3B)の設置場所の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部(140)と、
前記大気外日射量と気象予測情報を入力として前記温室(3A、3B)の内部の環境に関する実績情報に基づいて温室内環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部(131)と、
前記温室内環境予測モデルを用いて、前記温室(3A、3B)の環境を予測する予測部(132)と、
予測された前記温室(3A、3B)の内部の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部(133)と、
を備える情報処理装置(100)。
【請求項2】
前記大気外日射量算出部(140)は、前記設置場所の住所から求められる緯度および経度に基づいて前記大気外日射量を算出する、請求項1に記載の情報処理装置(100)。
【請求項3】
前記温室内環境予測モデルへ入力される情報は、予測対象時刻における前記大気外日射量に関する情報を含む、請求項1または2に記載の情報処理装置(100)。
【請求項4】
前記予測情報は、前記温室の内部における気温、湿度、日射量、二酸化炭素濃度、土壌温度および土壌水分量のうち少なくとも1つに関する情報を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置(100)。
【請求項5】
前記予測情報は、病害虫の発生に関する情報を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置(100)。
【請求項6】
前記予測情報は、雑草の発生に関する情報を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置(100)。
【請求項7】
前記予測情報は、前記作物の収穫量および品質のうち少なくとも1つに関する情報を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置(100)。
【請求項8】
前記予測情報は、前記作物への潅水が必要となる日時または量に関する情報を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置(100)。
【請求項9】
作物が栽培される温室の設置場所の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部(140)と、
前記大気外日射量と気象予測情報を入力として前記温室の環境に関する実績情報に基づいて温室内環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部(131)と、
前記温室内環境予測モデルを用いて、前記温室の環境を予測する予測部(132)と、
予測された前記温室の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部(133)と、
を備える情報処理システム(1)。
【請求項10】
作物が栽培される露地(3C)の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部(140)と、
前記大気外日射量と気象予測情報を入力として前記露地(3C)の環境に関する実績情報に基づいて露地環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部(131)と、
前記露地環境予測モデルを用いて、前記露地の環境を予測する予測部(132)と、
予測された前記露地(3C)の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部(133)と、
を備える情報処理装置(100)。
【請求項11】
前記露地(3C)の位置は、前記露地(3C)の住所から求められる緯度および経度により特定される、請求項10に記載の情報処理装置(100)。
【請求項12】
作物が栽培される露地(3C)の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部(140)と、
前記大気外日射量と気象予測情報を入力として前記露地(3C)の環境に関する実績情報に基づいて露地環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部(131)と、
前記露地環境予測モデルを用いて、前記露地(3C)の環境を予測する予測部(132)と、
予測された前記露地(3C)の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部(133)と、
を備える情報処理システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農家では、作物に発生する害虫を駆除しないまま作物を栽培すると収量や品質の低下などの問題を引き起こすため、害虫の発生を予測して害虫を駆除することが求められる。そして近年では、害虫の発生時期を予測する技術が確立されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、気象情報から将来の環境情報を入手し、該環境情報から害虫の成長度合いを予測することによって、害虫の発生時期を農業従事者に通知することのできる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-184232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、天気予報等の気象予測情報は予測対象となる日時が先であるほど情報精度が低下する。特に気象情報に含まれる日射量は、雲のタイプ(巻雲、高積雲、積雲等)によっても誤差が生じるため、正確な予測が難しいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、露地や温室内部における作物の栽培に必要な環境情報の予測精度を向上させ、精度の高い予測情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
作物が栽培される温室の設置場所の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部と、上記大気外日射量と気象予測情報を入力として上記温室の内部の環境に関する実績情報に基づいて温室内環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部と、上記温室内環境予測モデルを用いて、上記温室の環境を予測する予測部と、予測された上記温室の内部の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部と、を備える情報処理装置、または情報処理システムが提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
作物が栽培される露地の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する大気外日射量算出部と、上記大気外日射量と気象予測情報を入力として上記露地の環境に関する実績情報に基づいて露地環境予測モデルの機械学習を行う機械学習部と、上記露地環境予測モデルを用いて、上記露地の環境を予測する予測部と、予測された上記露地の環境に関する予測情報の出力を制御する出力制御部と、を備える情報処理装置または情報処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、コストを抑制しながら、将来の温室の内部または露地の環境の予測についての正確性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置または情報処理システムの概要を説明するための図である。
図2】同実施形態に係る情報処理装置または情報処理システムの概略的な機能構成の例を示すブロック図である。
図3】同実施形態に係る情報処理サーバの機械学習処理の例を概念的に示すフローチャートである。
図4】同実施形態に係る情報処理サーバの予測処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<<1.概要>>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の概要を説明するための図である。
【0013】
情報処理システム1は、気象情報および温室の内部または露地の環境についての情報等を収集する収集機能、および収集した情報に基づく温室の内部または露地の環境の予測機能を有する。また、情報処理システム1は、予測機能により得られる予測情報を提示する提示機能を有してもよい。
【0014】
具体的には、情報処理システム1は、情報収集機能および情報配信機能を有する情報処理サーバ100、情報閲覧機能および情報入力機能を有する情報処理端末200、並びに温室3A、3B、および露地3Cにそれぞれ設けられ、観測機能および観測情報配信機能を有する計測制御装置300(300A~300C)を備える。
【0015】
尚、以下の実施例では、温室の内部の環境についての情報収集機能、および温室の内部の環境についての予測機能について説明を行うが、露地栽培においても、温室内環境予測モデルを露地環境予測モデルへ置き換えることにより本発明を適用することができる。
【0016】
情報処理サーバ100内に設けられる大気外日射量算出部140は、温室3A、3Bの位置情報に基づいて、温室3A、3Bの設置場所の各日における各時間帯の大気外日射量を算出する。記憶部120は算出された各日における各時間帯の大気外日射量を蓄積する。温室3A、3Bの設置場所の位置情報は、設置場所の住所から緯度および経度として求めることができる。位置情報は、温室3A、3Bに設置されたGPS端末500A、500Bから得ることもできる。あるいは、位置情報は、温室3A、3Bの正確な経度および緯度でなくても、例えば、温室3A、3Bが設置される市区町村を代表する地点、例えばそれらの庁舎の所在地から求めた緯度および経度でもよい。あるいは、予め温室3A、3Bの緯経度がわかっている場合には、情報処理端末200に温室3A、3Bの緯度および経度を入力し、情報サーバに転送しても良い。
【0017】
このように、情報処理サーバ100は、GPS端末500A、500Bまたは情報処理端末200から温室3A、3Bの位置情報を、また、気象情報サーバ400から気象情報(気象予測情報を含む)を収集する。ここで、気象予測情報とは、天気予報など、将来における未観測の気象情報を意味する。そして、情報処理サーバ100は、位置情報に基づいて大気外日射量算出部140で算出された大気外日射量、および収集された気象情報を温室内環境予測モデルに入力する。次に、情報処理サーバ100は、温室内環境予測モデルから出力される温室3の内部の将来の環境の予測情報を出力し、情報処理端末200へ配信する。
【0018】
さらに、情報処理サーバ100は、機械学習された温室内環境予測モデルを用いる。かかる機械学習は、少なくとも大気外日射量および気象観測情報を入力として、温室の内部の環境に関する実績情報に基づいて行われるものである。ここで、気象観測情報とは、過去の天気など、過去において観測された気象情報を意味する。
【0019】
例えば、情報処理サーバ100は、機械学習機能を有してもよい。具体的には、情報処理サーバ100は、計測制御装置300A、300Bから温室の内部の環境に関する実績情報を取得する。また、情報処理サーバ100は、GPS端末500A、500Bまたは情報処理端末200から温室3A、3Bの位置情報を取得する。さらに、情報処理サーバ100は気象情報サーバ400から気象観測情報を取得する。そして、情報処理サーバ100は、温室3A、3Bの位置情報から算出される大気外日射量と、気象観測情報と、温室の内部の環境に関する実績情報とに基づいて、温室内環境予測モデルの機械学習を行う。
【0020】
このように、機械学習された温室内環境予測モデルを用いることにより、大気外日射量および気象予測情報を入力とするだけで、将来の温室の内部の環境を予測することが可能となる。大気外日射量を機械学習の入力に含めることによって、温室内部の環境予測の正確性を向上させることが可能となる。
【0021】
尚、本発明は、温室内の環境予測に限られず露地栽培であっても同様に実施することができる。
作物が栽培される露地3Cの緯度および経度の情報を情報処理端末から入力するか、あるいはGPS端末500Cから位置情報を入手することによって大気外日射量を算出し、該大気外日射量、気象観測情報、および露地3Cの環境に関する実績情報とに基づいて、露地環境予測モデルの機械学習を行うようにしても良い。
以下の説明においては、「温室」および「温室の内部」を「露地」と、「温室内環境予測モデル」を「露地環境予測モデル」と読み替えて、露地栽培においても同様に本発明を実施できる。
【0022】
また、上述した情報処理サーバ100の機能は、複数の装置で実現されてもよい。
例えば、上述した情報処理サーバ100の機能は、複数の装置を有するクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、図1では、情報処理端末200がスマートフォンのような携帯通信端末である例を説明したが、情報処理端末200は据置型のパーソナルコンピュータなどの情報通信装置であってもよい。
【0023】
<<2.本発明の一実施形態>>
以上、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の概要について説明した。次に、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の詳細について説明する。
【0024】
<2.1.システムの構成>
まず、図2を参照して、情報処理システム1の機能構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の概略的な機能構成の例を示すブロック図である。
【0025】
図2に示したように、情報処理システム1は、情報処理サーバ100、情報処理端末200および計測制御装置300を備える。情報処理サーバ100、情報処理端末200および計測制御装置300ならびに後述する気象情報サーバ400とGPS端末500は、通信ネットワークを介して接続されている。これらの装置は、例えばインターネットなどのWAN(Wide Area Network)を介して接続される。
【0026】
(情報処理サーバ)
情報処理サーバ100は、情報処理装置として動作し、通信部110、記憶部120、制御部130、および大気外日射量算出部140を備える。
【0027】
(通信部)
通信部110は、情報処理端末200、計測制御装置300、気象情報サーバ400およびGPS端末500と通信する。具体的には、通信部110は、計測制御装置300から温室の内部の環境に関する実績情報、気象情報サーバ400から気象情報、GPS端末500から温室の位置情報を受信する。また、通信部110は、出力制御部133により出力される情報を送信する。例えば、通信部110は、温室3A、3Bの内部の環境に関する予測情報を、情報処理端末200、または計測制御装置300へ送信し得る。
【0028】
通信部110は、例えば、ネットワークに接続するための通信インタフェース等により実現される。
【0029】
(記憶部)
記憶部120は、制御部130の処理に関する情報を記憶する。具体的には、記憶部120は、通信部110により受信された情報(例えば、温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報、気象情報、温室の位置情報等)を記憶する。また、記憶部120は、温室内環境予測モデルを記憶する。
【0030】
記憶部120は、例えば、データ格納用のストレージ装置等により実現される。
【0031】
(大気外日射量算出部)
大気外日射量算出部140は、温室3A、3Bが設置されている位置(緯度、経度)を記憶部120から取得して、大気外日射量を算出する。大気外日射量算出部140は、予測部132が参照する都度、参照された時間帯の大気外日射量を計算してもよい。日本国内の場合、大気外日射量Qは、任意の緯度(北緯)φ0 、経度(東経)λ0 を用いて、(1)式により算出することができることが知られている。ここで、dnは1月1日から大気外日射量を算出する対象日までの経過日数であり、対象時間は日本標準時(JST)HH時MM分である。また、δは予測対象日の太陽赤緯、rは地心太陽距離、Eqは均時差、hはHH時MM分のときの太陽の時角である。
【0032】
φ[rad]=φ0[度]×π/180
λ[rad]=λ0[度]×π/180
φ0=2π(dn[日]-1)/365[日]
δ[度]=0.006918-0.399912cos(φ0)+0.070257sin(φ0)-0.006758cos(2φ0)+0.000907sin(2φ0)-0.002697cos(3φ0)+0.001480sin(3φ0)
r[天文単位]=1/{1.000110+0.034221cos(φ0)+0.001280sin(φ0)+0.000719cos(2φ0)+0.000077sin(2φ0)}^0.5
Eq[時間]=0.000075+0.001868cos(φ0)-0.032077sin(φ0)-0.014615cos(2φ0)-0.040849sin(2φ0)
JST[時間]=HH[時]+MM[分]/60
h[時間]=(JST-12)π/12+(λ-135π/180)+Eq
α[時間]=arcsin{sin(φ)sin(δ)+cos(φ)cos(δ)cos(h)}
Q[W/m]=1367[W/m]×(1/r)^(2)×sin(α) (1)
【0033】
(制御部)
制御部130は、情報処理サーバ100の動作を全体的に制御する。具体的には、制御部130は、図2に示したように機械学習部131、予測部132および出力制御部133を備え、温室3A、3Bの内部の環境の予測に係る処理を制御する機能を有する。制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)により構成される演算処理装置および制御装置等により実現される。
【0034】
(機械学習部)
機械学習部131は、温室内環境予測モデルの機械学習を行う。具体的には、機械学習部131は、記憶部120に記憶される温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報、当該実績情報に対応する気象観測情報、および当該実績情報に対応する大気外日射量に基づいて、温室内環境予測モデルの機械学習を行う。
【0035】
詳細には、機械学習部131は、過去の所定期間における温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報、当該所定期間における気象観測情報、および温室の位置情報から算出される当該所定期間における大気外日射量を記憶部120から取得する。そして、機械学習部131は、大気外日射量と気象観測情報を入力とし、温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報を出力とする教師データを用いて、温室内環境予測モデルの機械学習を行う。機械学習後の温室内環境予測モデルは、記憶部120に記憶される。
【0036】
なお、温室内環境予測モデルに入力される気象観測情報として、例えば、温室3A、3Bの外部の気温、相対湿度、日射量、雨量の実績値等が挙げられる。また、温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報として、例えば、温室の内部の気温および相対湿度の実績値等が挙げられる。その他、温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報として、温室3A、3Bの内部の二酸化炭素濃度または土壌水分量等を示す実績値等が挙げられる。
【0037】
また、上述した気象観測情報の他に、温室内環境予測モデルに入力される情報として、例えば、気象の観測時刻(観測対象時刻)に関する情報が用いられてもよい。また、当該観測対象時刻に関する情報は、観測対象時刻が属する時間帯についての情報であってもよい。
【0038】
温室3A、3Bでは、工場とは異なり、日射の有無や朝晩の寒暖の変化により、温室3A、3Bの外部のみならず、温室3A、3Bの内部の温度や湿度等の気象等の環境は1日の間に大きく変化し得る。そのため、温室内環境予測モデルに入力される情報として、時間帯等の時刻に関する情報が用いられることで、温室3A、3Bの内部の環境の時系列変化を考慮することができる。したがって、温室3A、3Bの内部の環境の予測についての正確性を向上することが可能となる。
【0039】
また、気象の観測対象時刻に関する情報は、気象の観測対象時刻が属する月についての情報であってもよい。温室3A、3Bの内部の環境は、1日の間のみならず、1年における季節によっても大きく変動しうる。そのため、温室内環境予測モデルに入力される情報として、観測対象時刻が属する月の情報が用いられることで、温室3の内部の環境のより長いスパンにおける時系列変化を考慮することができる。したがって、温室3A、3Bの内部の環境の予測についての正確性を向上することが可能となる。
【0040】
また、温室内環境予測モデルに入力される情報として、例えば、温室3A、3Bを識別する識別情報が用いられてもよい。複数の温室3A、3Bの間においては、温室3A、3Bの構造、温室3A、3Bに設けられる温室の内部の環境を制御する制御機器の有無および性能、または温室3A、3Bの設置位置の違いによって、温室の内部の環境が大きく異なりうる。そこで、温室内環境予測モデルに入力される情報として温室3A、3Bを識別する識別情報が用いられることで、温室3A、3Bごとに適した温室内環境予測モデルを構築することが可能である。
【0041】
なお、かかる温室内環境予測モデルは、温室3A、3Bごとに独立して構築されてもよい。一方、例えば、複数の温室3A、3Bが所定の領域内に密集している場合、かかる所定の領域における温室外の気象等の環境は一様であることが多い。そのため、温室3A、3Bを識別する識別情報を温室内環境予測モデルに入力される情報として用いることで、一の共通する温室内環境予測モデルを構築するだけで、複数の温室3内の環境を十分高い精度で予測することができる。
【0042】
本明細書では、以下、温室の設置場所の緯度および経度等から算出される大気外日射量情報、気象観測(予測)情報、時刻に関する情報、温室3A、3Bの識別情報および環境制御機器に関する情報等を、入力情報とも称する。これらの入力情報は、定量的なデータであっても、定性的なデータであってもよい。また、これらの入力情報は、連続データであってもよいし、複数段階に区分された離散データであってもよい。
【0043】
例えば、温室内環境予測モデルにおける温室3A、3Bの内部の気温および相対湿度についての予測式は、下記式(1)および式(2)のように表されてもよい。
【0044】
Tin=A1×Tout+A×S+Z1(t) ・・・(1)
【0045】
Hin=B×Aout+B×S+Z(t)+M(t) ・・・(2)
【0046】
ここで、各変数は以下のように定義される。
Tin:温室3A、3Bの内部の気温の予測値
Tout:温室3A、3Bの外部の気温の予測値
S:大気外日射量の予測値
(t)、Z(t):予測対象時刻の属する時間帯に対応する変数
Hin:温室3の内部の相対湿度の予測値
Hout:温室3の外部の相対湿度の予測値
M(t):予測対象時刻の属する月に対応する変数
【0047】
また、係数A、A、BおよびB2、並びに変数Z(t)、Z(t)およびM(t)は、例えば、後述する機械学習を行うことにより算出される。
【0048】
なお、機械学習部131は、公知の機械学習モデルを用いて、温室内環境予測モデルを構築しうる。なお、上記の機械学習モデルは、既存の機械学習モデルのうち、温室内環境予測モデルの機械学習に利用可能なモデルのいずれであってもよい。例えば、機械学習モデルは、線形回帰、カルマンフィルタ等のフィルタ、サポートベクタマシン、ランダムフォレスト、近傍法、ディープラーニング等のニューラルネットワークまたはベイジアンネットワークなどを用いた計算モデルであってよい。
【0049】
また、機械学習部131は、後述する予測部132により得られる予測情報と、当該予測情報に対応する予測対象時刻における温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報とに基づいて、温室内環境予測モデルを更新してもよい。これにより、予測情報と実績情報との乖離の程度に応じて、温室内環境予測モデルを自動的に修正することができる。したがって、温室の内部の環境の予測に係る精度を高く維持することが可能となる。
【0050】
詳細には、機械学習部131は、逐次得られる大気外日射量および気象観測情報等を入力データとして、逐次得られる温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報を教師データとして用い、適宜機械学習を行うことで、温室内環境予測モデルの係数等を自動的に最適化することが可能となる。機械学習を用いて逐次温室内環境予測モデルを更新することで、当該予測システムが新規に導入された温室についても、線形モデル等による過去の実績情報のみからの予測よりも、短期間で、かつ精度の高い、温室3A、3Bの内部の環境に関する予測情報を提供することができる。
【0051】
なお、機械学習による温室内環境予測モデルの更新において、機械学習に用いられる技術によって以下のような利点が得られる。例えば、カルマンフィルタは、予測情報における予測値と実績情報における実測値との差を考慮して、温室内環境予測モデルを構成する係数を定期的に調整することができる。これにより、日ごとの変化や、季節ごとの変化に対応することができる。また、例えば、ニューラルネットワークは、線形モデルやカルマンフィルタでは予測が困難である非線形の変化(例えば暖房機等の温室環境制御装置の設定の変更等)にも容易に対応することができる。これらの機械学習に関する技術は、複合的に用いられてもよい。
【0052】
(予測部)
予測部132は、温室内環境予測モデルを用いて、大気外日射量と気象予測情報から温室3の内部の環境を予測する。具体的には、予測部132は、記憶部120に記憶される温室内環境予測モデル、大気外日射量算出部140によって算出される大気外日射量、および気象情報サーバ400から取得した気象予測情報に基づいて、当該大気外日射量および気象予測情報に対応する時刻または期間における温室3A、3Bの内部の環境を予測し、予測情報を生成する。
【0053】
詳細には、予測部132は、現在または将来の所定時点または所定期間における大気外日射量、気象予測情報、およびすでに機械学習部131により構築された温室内環境予測モデルを記憶部120から取得する。そして、予測部132は、大気外日射量および気象予測情報を温室内環境予測モデルに入力し、かかる温室内環境予測モデルから上記所定時点または所定期間における温室3A、3Bの内部の環境に関する予測情報を生成する。かかる予測情報は、記憶部120に記憶される。
【0054】
なお、機械学習部131による機械学習に用いられた情報は、予測部132による予測処理にも温室内環境予測モデルへ入力される情報として用いられてもよい。例えば、気象の予測対象時刻(時間帯および月を含む)に関する情報、温室3A、3Bを識別する識別情報、または環境制御機器に関する情報が用いられてもよい。これらの情報を気象予測情報と併せて複合的に用いることにより、予測情報の精度をより高くすることができる。
【0055】
また、温室3の内部の環境に関する予測情報として、実績情報と同様に、例えば、温室3A、3Bの内部の気温および相対湿度の予測値、日射量の予測値等が挙げられる。その他、温室3の内部の環境に関する予測情報として、温室3の内部の二酸化炭素濃度、土壌温度、または土壌水分量等を示す予測値等が挙げられる。
【0056】
また、温室3の内部の環境に関する予測情報として、病害虫の発生についての情報であっても良い。
具体的には、予測部132は、過去の病害虫発生情報、当該過去の病害虫発生情報に対応する栽培情報、およびそれらに基づいた機械学習により構築された病害虫発生判定モデルを記憶部から取得する。そして、予測部132は、栽培情報を病害虫発生判定モデルに入力し、当該病害虫発生判定モデルから所定時点または所定期間における温室3A、3Bの内部の病害虫の発生についての情報を生成する。ここで栽培情報とは、作物情報、栽培地情報、病害虫情報、薬剤情報、栽培地観測情報、気象情報等を含む。
【0057】
また、温室3の内部の環境に関する予測情報として、雑草の発生についての情報であっても良い。
具体的には、予測部132は、過去の雑草発生情報、当該過去の雑草発生情報に対応する栽培情報、およびそれらに基づいた機械学習により構築された雑草発生判定モデルを記憶部から取得する。そして、予測部132は、栽培情報を雑草発生判定モデルに入力し、当該雑草発生判定モデルから所定時点または所定期間における温室3A、3Bの内部の雑草の発生についての情報を生成する。
【0058】
また、温室3の内部の環境に関する予測情報として、農作物の収穫量または農作物の品質についての情報であっても良い。
具体的には、予測部132は、過去の農作物の所定期間内における収穫量または品質、当該所定期間内の栽培情報、およびそれらに基づいた機械学習により構築される農作物収穫量モデルまたは農作物品質モデルを記憶部から取得する。そして、予測部132は、栽培情報をそれぞれのモデルに入力し、当該モデルから所定時点または所定期間における農作物の収穫量または品質についての情報を生成する。
【0059】
また、温室3の内部の環境に関する予測情報として、潅水(水やり)の推奨日時または量についての情報であっても良い。
具体的には、予測部132は、過去の農作物の所定期間内における収穫量または品質、当該所定期間内の栽培情報、およびそれらに基づいた機械学習により構築される農作物収穫量モデルまたは農作物品質モデルを記憶部から取得する。そして、予測部132は、栽培情報をそれぞれのモデルに入力し、当該モデルから所定期間における農作物の収穫量または品質についての情報を生成する。
【0060】
(出力制御部)
出力制御部133は、予測部132により生成された予測情報の出力を制御する機能を有する。
【0061】
例えば、出力制御部133は、予測情報についての表示情報を生成し得る。かかる表示情報として、例えば、予測部132による予測対象時刻(期間を含む)における温室3A、3Bの内部の環境の予測結果、例えば、温室3の内部の気温、相対湿度、日射量、二酸化炭素濃度、土壌温度、土壌水分量の予測値が含まれる。さらには例えば、病害中の発生確率、作物の収穫量、作物の品質、作物への潅水必要時期の予測値が含まれる。より詳細には、出力制御部133は、提供要求情報が通信部110により受信されると、提供要求情報から特定される時刻または期間の予測情報を取得する。そして、出力制御部133は、取得された予測情報を加工することにより表示情報を生成し、生成された表示情報を通信部110に出力し得る。また、出力制御部133は、取得された予測情報を表示情報に加工せずに通信部110に出力してもよい。
【0062】
なお、出力制御部133により出力制御される予測情報の出力態様は特に限定されない。例えば、出力制御部133は、予測情報を、文字、音声、バイブレーションによる振動、発光等の各種態様により出力するよう制御してもよい。
【0063】
(情報処理端末)
情報処理端末200は、図2に示すように、操作入力部210、制御部220、通信部230および表示部240を備える。
【0064】
(操作入力部)
操作入力部210は、情報処理端末200に対する操作を受け付ける機能を有する。具体的には、操作入力部210は、入力される操作を受け付け、受け付けられる操作に応じて各種情報を生成する。生成された各種情報は、制御部220に出力される。ここで、操作入力部210により生成される各種情報とは、例えば、提供要求情報または機器操作情報である。提供要求情報は、表示情報の提供の情報処理サーバ100への要求を示す情報である。また、機器操作情報は、計測制御装置300に対する温室3の環境制御機器への操作内容を示す情報である。例えば、表示部240により入力画面が表示され、ユーザが入力画面に対して操作することにより、上述した各種情報が生成される。
【0065】
また、操作入力部210は、温室3A、3Bの緯度および経度の情報入力を受け付ける。そして通信部230を介して通信部110に緯度および経度のデータが転送され、記憶部120に保存される。その後大気外日射量算出部140から当該緯度および経度データが呼び出され、大気外日射量が算出される。
【0066】
なお、操作入力部210は、例えば、ボタン、キーボードまたはタッチパネル等により実現される。
【0067】
(制御部)
制御部220は、情報処理端末200の動作を全体的に制御する。具体的には、制御部220は、通信部230および表示部240の動作を制御する。例えば、制御部220は、操作入力部210により生成された情報を通信部230に送信させる。また、制御部220は、情報処理サーバ100から提供される表示情報に基づいて画像情報を生成し、表示部240に画像情報を提供することにより画像を表示させる。
【0068】
なお、制御部220は、例えば、CPU、ROMおよびRAMにより構成される演算処理装置および制御装置等により実現され得る。
【0069】
(通信部)
通信部230は、情報処理サーバ100と通信する。具体的には、通信部230は、情報処理サーバ100へ操作入力部210により生成された提供要求情報を送信する。また、通信部230は、情報処理サーバ100から表示情報を受信する。なお、情報処理端末200は、計測制御装置300または気象情報サーバ400と通信し、温室3の内部の環境に関する実績情報や気象情報を受信し、または機器操作情報を送信してもよい。
【0070】
なお、通信部230は、例えば、ネットワークに接続するための通信インタフェース等により実現される。
【0071】
(表示部)
表示部240は、制御部220の指示に基づいて画像を表示する。具体的には、表示部240は、制御部220から提供される画像情報に基づいて情報表示画面および操作入力画面を表示する。
【0072】
なお、表示部240は、ディスプレイ等の表示装置により実現される。また、操作入力部210と表示部240の機能は、例えばタッチパネル等により一体化して実現されてもよい。
【0073】
(計測制御装置)
計測制御装置300は、温室3A,3Bに設置され、温室3A,3Bの内部の環境の計測および制御に関する機能を有する。詳細には、計測制御装置300は、温室3A,3Bの内部に設けられたセンサから信号を取得し、温室3A,3Bの内部の環境に関する実績情報を生成する。
【0074】
通信部は、情報処理サーバ100または情報処理端末200と通信する。例えば、通信部は、生成された温室3の内部の環境に関する実績情報を情報処理サーバ100または情報処理端末200に送信する。なお、通信部は、実績情報が生成される度に送信を行ってもよく、所定の時間間隔で送信を行ってもよい。また、通信部は、実績情報以外の情報、例えば、温室3A,3Bを識別する識別情報および環境制御機器に関する情報を送信してもよい。なお、通信部は、例えば、ネットワークに接続するための通信インタフェース等により実現される。
【0075】
制御部は、センサにより生成された信号に基づいて温室3A,3Bの内部の環境に関する実績情報を生成する。また、制御部は、情報処理サーバ100から取得した温室3A,3Bの内部の環境に関する予測情報や、情報処理端末200から取得した機器操作情報に基づいて、環境制御機器の制御を行ってもよい。
【0076】
記憶部は、制御部により生成された温室3A,3Bの内部の環境に関する実績情報や、通信部を介して取得された温室3の内部の環境に関する予測情報または機器操作情報等を記憶する。なお、記憶部は、センサにより生成された信号のデータそのものを記憶してもよい。なお、記憶部は、例えば、データ格納用のストレージ装置等により実現される。
【0077】
なお、温室3A,3Bの内部に設けられるセンサは、例えば、温度センサ、湿度センサ、日射センサ、二酸化炭素濃度センサまたは土壌水分センサなどのセンサである。また、かかるセンサとして、例えば、撮像センサおよび水分量センサが設けられてもよい。また、計測制御装置300は、温室3A,3Bの内部に設置されてもよいし、温室3A,3Bの外部に設置されてもよい。
【0078】
(気象予測サーバ)
気象情報サーバ400は、気象情報を外部の装置に提供する。具体的には、気象情報サーバ400は、気象情報が情報処理サーバ100から要求されると、要求された気象情報に情報処理サーバ100へ送信する。例えば、気象情報は、気温、湿度、日射量または雨量を示す情報である。かかる気象情報は、気象観測情報および気象予測情報を含む。気象観測情報は現在または過去に実際に観測された気象情報である。また、気象予測情報は、現在以降において予測されている気象情報である。
【0079】
次に、温室内環境予測モデルの機械学習処理の流れについて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る情報処理サーバ100の機械学習処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0080】
情報処理サーバ100は、温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報、温室3A、3Bの位置情報、および気象観測情報を取得する(ステップS601)。具体的には、計測制御装置300から受信した実績情報、気象情報サーバ400から受信した気象観測情報、情報処理端末200により入力される温室3A、3Bの緯度および経度の情報またはGPS端末500から受信した温室3A、3Bの位置情報が通信部110を介して記憶部120に保存される。
【0081】
次に、大気外日射量算出部140は、記憶部120に保存された温室3A,3Bの緯度および経度情報を記憶部120から取得し、所定の時刻または期間における大気外日射量の算出を行う。算出された大気外日射量は記憶部120に保存される(ステップS602)。
【0082】
次に、機械学習部131は、記憶部120に蓄積された温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報、大気外日射量、気象観測情報を取得すると同時に記憶部120に記憶されている温室内環境予測モデルを取得する(ステップS603)。なお、かかる温室内環境予測モデルは、既に機械学習部131により学習されたものであってもよいし、未学習のものであってもよい。
【0083】
次に、情報処理サーバ100は、温室3A,3Bの内部の環境に関する実績情報、大気外日射量および気象観測情報を用いて温室内環境予測モデルを更新する(ステップS604)。具体的には、機械学習部131は、複数の機械学習モデルのうちの1つを選択し、選択された機械学習モデルと温室3A、3Bの内部の環境に関する実績情報、当該実績情報に対応する大気外日射量および当該実績情報に対応する気象観測情報とを用いて温室内環境予測モデルの機械学習を行う。
【0084】
なお、この際、機械学習部131は、気象観測情報の他に、気象の観測対象時刻に関する情報、温室3A,3Bを識別する識別情報等の入力情報をさらに用いて温室内環境予測モデルの機械学習を行ってもよい。
【0085】
また、機械学習部131は、機械学習により得られた新たな温室内環境予測モデルにテスト用入力データを入力し、出力された値とテスト用出力データとを比較することにより温室内環境予測モデルの正確性を算出してもよい。
【0086】
次に、情報処理サーバ100は、更新後の温室内環境予測判定モデルを記憶する(ステップS605)。具体的には、機械学習部131は、更新後の温室内環境予測判定モデルを記憶部120に記憶させる。なお、ステップS604において、温室内環境予測モデルの正確性を算出した場合において、当該算出値が所定の閾値以上である場合に限り、機械学習部131は、更新後の温室内環境予測判定モデルを記憶してもよい。また、当該算出値が所定の閾値未満である場合は、再度温室内環境予測判定モデルの更新処理が行われてもよい。
【0087】
次に、温室内環境予測モデルの機械学習処理の流れについて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る情報処理サーバの予測処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0088】
情報処理サーバ100は、予測対象の温室3A、3Bおよび予測対象時刻を設定する(ステップS801)。具体的には、予測部132は、情報処理端末200から取得した提供要求情報から、気象の予測対象である温室3A、3Bおよび気象の予測対象時刻を設定する。
【0089】
次に、情報処理サーバ100は、指定された予測対象時刻における大気外日射量および気象観測情報等を取得する(ステップS802)。具体的には、予測部132は、指定された予測対象時刻における大気外日射量および気象観測情報や、他の入力情報を記憶部120から取得する。
【0090】
次に、情報処理サーバ100は、温室内環境予測モデルを取得する(ステップS803)。具体的には、予測部132は、記憶部120に記憶されている温室内環境予測モデルを取得する。
【0091】
次に、情報処理サーバ100は、温室内環境予測モデルを用いて温室3A、3Bの内部の環境に関する予測情報を生成する(ステップS804)。具体的には、予測部132は、大気外日射量、気象観測情報や他の入力情報を温室内環境予測モデルに入力する。そして、予測部132は、かかる温室内環境予測モデルから予測結果を得て、当該予測結果を基に温室3A、3Bの内部の環境に関する予測情報を生成する。
【0092】
そして、情報処理サーバ100は、生成された温室3A、3Bの内部の環境に関する予測情報を記憶する(ステップS805)。具体的には、予測部132は、生成された予測情報を記憶部120に記憶させる。
【0093】
<2.3.まとめ>
このように、本発明の一実施形態によれば、情報処理サーバ100は、温室3の内部の環境に関する実績情報に基づいて、大気外日射量および気象観測情報を入力とする温室内環境予測モデルの機械学習を行う。そして、情報処理サーバ100は、当該機械学習により得られる温室内環境予測モデルを用いて、気象予測情報から温室3A,3Bの内部の環境に関する予測情報を出力する。
【0094】
かかる構成により、天気予報等の気象予測情報のみに頼らず、大気外日射量情報を併用することにより、温室3A,3Bの内部の環境を予測することができる。したがって、温室3の内部の環境についての正確性を維持することが可能である。また、大気外日射量および気象予測情報以外にも、予測対象時刻(観測対象時刻)に関する情報や、温室に関する情報を用いることにより、環境の時系列変化や、したがって、温室3A,3Bの内部の環境に関する予測精度を向上させることができる。
【0095】
また、かかる温室内環境予測モデルは、情報処理サーバ100による予測処理の運用に並行して、蓄積される実績情報と予測情報とを用いたフィードバックにより適宜更新され得る。これにより、温室内環境予測モデルは、人の手を介さずに、自動的に改善され得る。よって、モデルの改善にかかる時間および費用を低減し、かつ、定量データに基づくモデルの改善が可能となる。
【0096】
尚、以上述べてきた温室内環境予測モデルに基づく予測情報の生成は、露地栽培においても同様に実施することが可能である。温室内に設置される計測制御装置300Cを作物が栽培される露地に設置することによって、露地における環境の実測値を得ることができる。そして、当該露地の緯度および経度情報またはGPS端末500Cから得られる位置情報に基づき算出される大気外日射量、気象サーバから得られる気象観測情報を入力とする露地環境予測モデルの機械学習を行うことによって、温室における本願発明と同様に予測情報を出力することができる。
【0097】
<<4.むすびに>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0098】
例えば、上記実施形態では、温室内環境予測モデルに入力される情報は大気外日射量情報、気象予測情報、識別情報および環境制御機器に関する情報である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、温室内環境予測モデルに入力される情報として、温室の外部に設置されるセンサから得られる情報が用いられてもよい。かかるセンサは、例えば環境センサ等であってもよく、既設のセンサが用いられてもよい。環境センサは、例えば、温室外に設けられる土壌センサ、雨量計、温度計または湿度計等であってもよい。
【0099】
また、上記の実施形態のフローチャートに示されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的にまたは個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【0100】
また、情報処理サーバ100に内蔵されるハードウェアに上述した情報処理サーバ100の各機能構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該コンピュータプログラムが記憶された記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0101】
1 情報処理システム、3A 温室、3B 温室、3C 露地、100 情報処理サー
バ、110 通信部、120 記憶部、130 制御部、131 機械学習部、132
予測部、133 出力制御部、140 大気外日射量算出部、200 情報処理端末、2
10 操作入力部、220 制御部、230 通信部、240 表示部、300 計測制
御装置、400 気象情報サーバ、500 GPS端末。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】