(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】炭素担持白金族金属触媒、その製造方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
B01J 27/24 20060101AFI20230912BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230912BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20230912BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20230912BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20230912BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B01J27/24 M
B01J37/04 102
B01J37/16
H01M4/92
H01M4/96 B
H01M4/88 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513711
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2021114752
(87)【国際公開番号】W WO2022042640
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010877409.7
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010877417.1
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011012719.9
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】栄峻峰
(72)【発明者】
【氏名】趙紅
(72)【発明者】
【氏名】謝南宏
(72)【発明者】
【氏名】張家康
(72)【発明者】
【氏名】彭茜
(72)【発明者】
【氏名】王厚朋
(72)【発明者】
【氏名】顧賢睿
(72)【発明者】
【氏名】張雲閣
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA08C
4G169BA21C
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4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC69A
4G169BC70A
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4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BC75C
4G169BD01C
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4G169BD06B
4G169BD06C
4G169BD08A
4G169BD12C
4G169BE06C
4G169BE08C
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4G169FC09
5H018BB01
5H018BB05
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5H018EE08
5H018HH00
5H018HH02
5H018HH05
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5H018HH08
5H018HH10
(57)【要約】
本発明は、白金-炭素触媒、その製造方法およびその応用に関する。白金-炭素触媒のXPS分析のN1sスペクトルピークの中で、399evと400.5evとの間の特徴的なピークの存在を除き、395evと405evとの間に他の特徴的なピークは存在せず;および、白金-炭素触媒の担体は、窒素ドープ導電性カーボンブラックである。本発明では、白金-炭素触媒の担体である導電性カーボンブラックを改質させ、ドープ元素のドープ形態を制御する方法によって、白金-炭素触媒の質量比活性および電気化学的面積を著しく改善し、さらに、白金-炭素触媒の安定性および炭素腐食を阻止する能力もまた改善し得る。さらに、本発明は、白金-炭素触媒を製造するための簡単な方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素担持白金族金属触媒のXPS分析でのN
1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有し、ならびに、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さないか、あるいは実質的に有さず、
前記炭素担持白金族金属触媒の担体は、窒素ドープ導電性カーボンブラックであり、
前記炭素担持白金族金属触媒は、20重量%~70重量%、好ましくは40重量%~70重量%の含有量で白金を含むことを特徴とする、炭素担持白金族金属触媒。
【請求項2】
前記炭素担持白金族金属触媒の前記担体は、硫黄-窒素ドープ導電性カーボンブラックであることを特徴とする、請求項1に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【請求項3】
XPS分析でのS
2Pスペクトルピークについて、160evと170evとの間では、163evと166evとの間のピーク面積は92%超を占め、または95%を超え、または98%を超え、または163evと166evとの間のみにピークが存在することを特徴とする、請求項1に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【請求項4】
前記導電性カーボンブラックは、一般的な導電性カーボンブラック(common conductive carbon black)、スーパー導電性カーボンブラック(super conductive carbon black)またはエキストラ導電性カーボンブラック(extra conductive carbon black)であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【請求項5】
前記白金族金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、およびルテニウム(Ru)から選択され、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、およびイリジウムから選択され、さらに好ましくは白金およびパラジウムから選択され、例えば白金であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【請求項6】
前記炭素担持白金族金属触媒は、抵抗率が10Ω・m未満であり、好ましくは2Ω・m未満であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【請求項7】
請求項1~11のいずれか1項に記載の炭素担持白金族金属触媒を、水素燃料電池のアノードおよび/またはカソードに用いることを特徴とする、水素燃料電池。
【請求項8】
窒素ドープ導電性カーボンブラックであり、
XPS分析でのN
1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さないことを特徴とする、炭素材料。
【請求項9】
以下の(1)~(3)の工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の炭素担持白金族金属触媒の製造方法:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、窒素源の浸漬工程;
(2)前記工程(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体中にて8℃/分~15℃/分の昇温速度で1000℃~1500℃に加熱した後、0.5時間~10時間恒温処理を行い、窒素ドープ炭素材料を得る、前記窒素ドープ炭素材料の製造工程;ならびに、
(3)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料を担体として、白金族金属を担持する、前記白金族金属の担持工程であり、
前記炭素材料は、好ましくは導電性カーボンブラックである、工程。
【請求項10】
工程(2)にて、前記恒温処理を1150℃~1450℃の温度で行うことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記窒素源が、アンモニア水または尿素であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素材料と前記窒素源との重量比は、含まれる前記窒素の元素として計算して、30:1~1:2であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記炭素材料は、XPS分析にて4重量%超の酸素含有量を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記白金族金属を担持する前記工程は、以下の(a)~(c)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法:
(a)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料と白金族金属前駆体とを水相に分散させ、pH値を8~12に調整すること;
(b)還元のために還元剤を加えること;および
(c)固体を分離し、後処理に供して、白金-炭素触媒を得ること。
【請求項15】
前記白金族金属前駆体は、クロロ白金酸、クロロ白金酸カリウム、またはクロロ白金酸ナトリウムであり、
前記白金族金属前駆体の濃度が、0.5mol/L~5mol/Lであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(b)にて、前記還元剤は、クエン酸、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、エチレングリコール、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウムおよびグリセロールからなる群から選択され、
前記還元剤の前記白金に対するモル比は2~100であり、
前記還元は50℃~150℃の温度で2時間~15時間行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、炭素担持白金族金属触媒、その製造方法およびその応用に関する。特に、プロトン膜水素燃料電池用の炭素担持白金族金属触媒、その製造方法およびその応用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
酸素還元反応(ORR)は電気化学分野における重要な反応であり、例えば、燃料電池および金属空気電池において、酸素還元反応は電池性能に影響を及ぼす主な要因である。原子をドープした炭素材料は、酸素還元反応のための触媒として直接使用することができる。酸素還元触媒として使用される場合、窒素、リン、ホウ素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などの元素を炭素材料にドープすることが文献に報告されており、ここで窒素は、炭素原子の半径と近い半径を有し、かつ炭素格子に容易に組み込まれるため、最も一般的に使用されるドープ元素である。燃料電池触媒として直接使用されるドープ炭素材料の報告は多く存在するが、白金-炭素触媒と比較すると大きな差がある。
【0003】
今日まで、最も効果的な酸素還元触媒は白金-炭素触媒であるが、白金-炭素触媒は依然として欠点を有する。一方では、白金資源は希少であり、高価である。また一方では、現在使用されている市販の白金-炭素触媒は、不十分な白金金属分散を有し、凝集および不活性化しやすく、水素燃料電池のカソードでの白金の溶解および凝集に起因して白金の表面積が明らかに経時的に還元され、それによって燃料電池の耐用年数に影響を及ぼす。先行技術は主に、白金の粒径、形態および構造、ならびに担体の比表面積および細孔構造を制御することによって白金-炭素触媒の性能を改善するものであるが、炭素担体を改質することによって白金-炭素触媒の性能を改善するという文献の報告もまた存在する。
【0004】
炭素担体は、触媒の比表面積を改善し、金属粒子の凝集を低減し、金属利用率を改善することができる。炭素担体の白金担持量を増加させることにより、より薄い厚さおよびより良い性能を有する膜電極をもたらすことができるが、白金担持量を大幅に増加させる場合には、白金金属粒子の蓄積が容易に起こり、活性部位の利用率が急激に低下する。さらに、実用化されている水素燃料電池の白金-炭素触媒の白金担持量は少なくとも20重量%以上であり、化学的な白金-炭素触媒(白金担持量が5重量%未満)と比較して、製造が非常に困難である。
【0005】
プロトン交換膜燃料電池における炭素腐食に起因する白金-炭素触媒の不活性化の問題は、当該技術分野において非常に注目されている。さらに、白金は炭素腐食速度を加速させ、担持される白金の量が多いほど炭素腐食はより速くなる。一方で、炭素担体の欠陥部位が多いほど有利に白金担持量を増加させるが、同時に炭素腐食がそれに応じて増強される。また一方で、黒鉛化度が高くなると炭素腐食を緩和するが、炭素担体表面を化学的に不活性にし、白金を炭素担体上に均一に分散させることを困難にする。
【0006】
前述の背景技術で開示された情報は、本発明の背景に対する理解を深めるためだけのものであり、したがって、当業者にまだ知られていない情報を含み得る。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の第1の目的は、特に白金担持量が多い場合において、重量比活性および電気化学的面積を著しく改善することができる炭素担持白金族金属触媒を提供することである。本発明の第2の目的は、上述の目的に基づいて、触媒の総合的な性能を改善し、特に重量比活性および電気化学的面積を著しく改善することである。本発明の第3の目的は、上述の目的に基づいて、炭素担持白金族金属触媒の炭素腐食抵抗力を改善することである。本発明の第4の目的は、上述の目的に加えて、炭素担持白金族金属触媒の簡単な製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、以下の詳細な考察および本発明の実施例から明らかであろう。
【0008】
上記目的の1つ以上を達成するために、本発明は、以下の態様の技術的な解決策を提供する。
【0009】
〔1〕炭素担持白金族金属触媒のXPS分析でのN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有し、ならびに、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さないか、あるいは実質的に有さず、
前記炭素担持白金族金属触媒の担体は、窒素ドープ導電性カーボンブラックであり、
前記炭素担持白金族金属触媒は、20重量%~70重量%、好ましくは40重量%~70重量%、例えば45重量%~65重量%であり得る含有量で白金を含むことを特徴とする、炭素担持白金族金属触媒。
【0010】
〔2〕前記炭素担持白金族金属触媒の担体は、硫黄-窒素ドープ導電性カーボンブラックである、態様〔1〕に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【0011】
〔3〕XPS分析でのS2Pスペクトルピークについて、160evと170evとの間では、163evと166evとの間のピーク面積は92%超を占め、または95%を超え、または98%を超え、または163evと166evとの間のみにピークが存在することを特徴とする、態様〔1〕に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【0012】
〔4〕前記導電性カーボンブラックは、一般的な導電性カーボンブラック(common conductive carbon black)、スーパー導電性カーボンブラック(super conductive carbon black)またはエキストラ導電性カーボンブラック(extra conductive carbon black)であることを特徴とする、態様〔1〕に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【0013】
〔5〕前記白金族金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、およびルテニウム(Ru)から選択され、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、およびイリジウムから選択され、さらに好ましくは白金およびパラジウムから選択され、例えば白金であることを特徴とする、態様〔1〕に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【0014】
〔6〕前記炭素担持白金族金属触媒は、抵抗率が10Ω・m未満であり、好ましくは2Ω・m未満であることを特徴とする、態様〔1〕に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【0015】
〔7〕態様〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の炭素担持白金族金属触媒を、水素燃料電池のアノードおよび/またはカソードに用いることを特徴とする、水素燃料電池。
【0016】
〔8〕窒素ドープ導電性カーボンブラックであり、XPS分析でのN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さないことを特徴とする、炭素材料。
【0017】
〔9〕以下の(1)~(3)の工程を含む、態様〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の炭素担持白金族金属触媒の製造方法:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、(任意に、少量のエタノールを必要に応じてさらに加えて(例えば、炭素材料を20%エタノール水溶液に分散させる))、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、炭素源の浸漬工程;
(2)前記工程(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体中にて8℃/分~15℃/分の昇温速度で1000℃~1500℃に加熱した後、0.5時間~10時間恒温処理を行い、窒素ドープ炭素材料を得る、前記窒素ドープ炭素材料の製造工程;ならびに、
(3)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料を担体として、白金族金属を担持する、前記白金族金属の担持工程であり、
前記炭素材料は、好ましくは導電性カーボンブラックである、工程。
【0018】
〔10〕工程(2)にて、前記恒温処理を1150℃~1450℃の温度で行うことを特徴とする、態様〔9〕に記載の方法。
【0019】
〔11〕前記窒素源が、アンモニア水または尿素であることを特徴とする、態様〔9〕に記載の方法。
【0020】
〔12〕前記炭素材料と前記窒素源との重量比は、含まれる前記窒素の元素として計算して、30:1~1:2であることを特徴とする、態様〔9〕に記載の方法。
【0021】
〔13〕前記炭素材料は、XPS分析にて4重量%超の酸素含有量を有することを特徴とする、態様〔6〕に記載の方法。
【0022】
〔14〕前記白金族金属を担持する前記工程は、以下の(a)~(c)を含むことを特徴とする、態様〔9〕に記載の方法:
(a)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料と白金族金属前駆体とを水相に分散させ、pH値を8~12に調整すること;
(b)還元のために還元剤を加えること;および
(c)固体を分離し、後処理に供して、白金-炭素触媒を得ること。
【0023】
〔15〕前記白金族金属前駆体は、クロロ白金酸、クロロ白金酸カリウム、またはクロロ白金酸ナトリウムであり、
前記白金族金属前駆体の濃度が、0.5mol/L~5mol/Lであることを特徴とする、態様〔14〕に記載の方法。
【0024】
〔16〕前記工程(b)にて、前記還元剤は、クエン酸、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、エチレングリコール、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウムおよびグリセロールからなる群から選択され、
前記還元剤の前記白金に対するモル比は2~100であり、
前記還元は50℃~150℃の温度で2時間~15時間行われることを特徴とする、態様〔14〕に記載の方法。
【0025】
いかなる公知の理論にも限定されるものではないが、好ましくは、(例えば、本発明の実施例にて開示および議論されるような)163evと166evとの間の特徴的なピークの実験データの分析に基づいて、163evと166evとの間の特徴的なピークは、チオフェン性硫黄の特徴的なピークであると考えられる。一実施形態では、好ましくは、チオフェン性硫黄の特徴的なピークは、双峰性であると考えられる。
【0026】
ヘテロ原子および炭素材料は様々な結合様式を有し、ヘテロ原子間には様々な相互作用が存在し、ヘテロ原子と炭素材料との結合様式およびヘテロ原子間の相互作用は、異なる製造方法、ならびに原料、ならびにドーププロセスにおける異なる操作工程および条件によって影響を受ける可能性があり、その結果、ヘテロ原子および炭素材料の特性は大きく異なり、ヘテロ原子および炭素材料の機能は著しく変化する。本分野では、ヘテロ原子と炭素材料との結合様式、およびヘテロ原子間の相互作用を制御する方法が、原子をドープする際の難点である。本発明の研究は、導電性カーボンブラックにドープする場合、ヘテロ原子と導電性カーボンブラックとの結合様式およびヘテロ原子間の相互作用を制御することにより、独自の特性を有する炭素材料を製造することができ、その結果、比活性および電気化学的面積を明らかに改善し、触媒の総合的な性能を改善し、比活性および電気化学的面積の安定性を改善し、炭素担持白金族金属触媒の炭素腐食抵抗力を改善すること等を見出した。
【0027】
従来技術と比較して、本発明は、以下の有益な技術的効果を達成することができる。
【0028】
1.本発明は、独自の特性を持つ原子がドープされた表面を有する導電性カーボンブラックの種類を、簡単な方法によって製造する。既存のドープ炭素材料と比較して、導電性カーボンブラックの表面にドープされた硫黄は、チオフェン性硫黄の形態でのみ存在し、表面にドープされた窒素は、ピロール性窒素の形態でのみ存在することができる。これらの特徴は、炭素担持白金族金属触媒の重量比活性および電気化学的面積を明らかに改善することができる。さらに、導電性カーボンブラックの表面にリンおよび/またはホウ素をドープすることができ、ここで表面にドープされたリンは132.5evと134.5evとの間でのみ特徴的なピークを有し、表面にドープされたホウ素は189evと191evとの間でのみ特徴的なピークを有することができる。その結果、炭素担持白金族金属触媒の総合的な性能を改善することができ、特に、重量比活性と、電気化学的面積の安定性とを改善することができる。さらに、導電性カーボンブラックの表面は、複数(例えば、3または4)のヘテロ元素をドープさせることができ、このことは炭素担持白金族金属触媒の炭素腐食抵抗力を改善するのに有利である。
【0029】
2.本発明のドープ導電性カーボンブラックは、白金担持量の多い炭素担持白金族金属触媒の製造に適しており、白金族金属担持量が70重量%に達する際には、優れた総合的な触媒性能と炭素腐食抵抗力とを有する。
【0030】
3.実用での水素燃料電池用の炭素担持白金族金属触媒の白金担持量は、通常20重量%以上であり、優れた性能を有する白金族金属担持量の多い触媒を製造することは、非常に困難である。化学還元法は簡単な方法であるが、白金族金属の利用率は低く、触媒活性は比較的低い。しかし、本発明により製造されたドープ導電性カーボンブラックを担体として使用し、水相中での化学還元法を採用する場合、良好な重量比活性および安定性の両方を有する白金担持量の多い触媒を容易に製造することができる。
【0031】
本発明は、実施例として、以下の例示的な実施形態、またはその組合せを提供する。
【0032】
本発明の第1の一連の例示的な実施形態は、以下を含む。
【0033】
1、XPS分析のN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さないことを特徴とする、白金-炭素触媒。
【0034】
2.前記白金は、触媒の重量に基づいて、20重量%~70重量%、好ましくは40重量%~70重量%の含有量で白金を含むことを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の白金-炭素触媒。
【0035】
3.前記白金-炭素触媒は、抵抗率が10Ω・m未満であることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の白金-炭素触媒。
【0036】
4.前記炭素担持白金族金属触媒の前記担体は、窒素ドープ導電性カーボンブラック、窒素ドープグラフェン、または窒素ドープカーボンナノチューブであることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の炭素担持白金族金属触媒。
【0037】
5.前記導電性カーボンブラックは、EC-300J、EC-600JD、ECP600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2であることを特徴とする、例示的な実施形態4に記載の白金-炭素触媒。
【0038】
6.以下の(1)~(3)を含む、炭素担持白金族金属触媒の製造方法:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、炭素源の浸漬工程;
(2)前記工程(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体中にて8℃/分~15℃/分の昇温速度で1000℃~1500℃に加熱した後、0.5時間~10時間恒温処理を行い、窒素ドープ炭素材料を得る、前記窒素ドープ炭素材料の製造工程;ならびに、
(3)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料を担体として、白金族金属を担持する、白金の担持工程。
【0039】
7.工程(2)にて、前記恒温処理を1150℃~1450℃の温度で行うことを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0040】
8.前記窒素源が、アンモニア水または尿素であることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0041】
9.前記炭素材料と前記窒素源との重量比は、含まれる前記窒素の元素として計算して、30:1~1:2であることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0042】
10.前記炭素材料が、導電性カーボンブラック、グラフェン、またはカーボンナノチューブであることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0043】
11.前記導電性カーボンブラックは、EC-300J、EC-600JD、ECP-600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2であることを特徴とする、例示的な実施形態10に記載の方法。
【0044】
12.前記炭素材料は、XPS分析にて4重量%超の酸素含有量を有することを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0045】
13.前記炭素材料は、抵抗率が10Ω・m未満であることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0046】
14.前記炭素材料は、比表面積が10m2/g~2000m2/gであることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0047】
15.前記白金の担持工程は、以下の(a)~(c)を含むことを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法:
(a)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料と白金前駆体とを水相に分散させ、pH値を8~12に調整すること;
(b)還元のために還元剤を加えること;および
(c)固体を分離し、後処理に供して、白金-炭素触媒を得ること。
【0048】
16.前記白金族金属前駆体は、クロロ白金酸、クロロ白金酸カリウム、またはクロロ白金酸ナトリウムであり、
前記白金族金属前駆体の濃度が、0.5mol/L~5mol/Lであることを特徴とする、例示的な実施形態15に記載の方法。
【0049】
17.前記工程(b)にて、前記還元剤は、クエン酸、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、エチレングリコール、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウムおよびグリセロールからなる群から選択され、
前記還元剤の前記白金に対するモル比は2~100であり、
前記還元は50℃~150℃の温度で2時間~15時間行われることを特徴とする、例示的な実施形態15に記載の方法。
【0050】
18.前記触媒は、例示的な実施形態6~17のいずれか1つに記載の方法によって製造されることを特徴とする、白金-炭素触媒。
【0051】
19.例示的な実施形態1~5および18のいずれか1つに記載の前記白金-炭素触媒を、水素燃料電池のアノードおよび/またはカソードに用いることを特徴とする、水素燃料電池。
【0052】
本発明の第2の一連の例示的な実施形態は、以下を含む。
【0053】
1.炭素担体と、前記炭素担体上に担持された白金金属とを含み、前記炭素担体は硫黄-窒素ドープ炭素材料であり、
XPS分析でのS2Pスペクトルについて、160evと170evとの間では、163evと166evとの間のみに特徴的なピークが存在することを特徴とする、白金-炭素触媒。
【0054】
2.XPS分析でのN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、390evと410evとの間に他の特徴的なピークを有さないことを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の白金-炭素触媒。
【0055】
3.白金は、前記触媒の重量に基づいて、20重量%~70重量%、好ましくは40重量%~70重量%の含有量で含まれることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の白金-炭素触媒。
【0056】
4.163evと166evとの間の特徴的なピークは、163.4±0.5evおよび164.7±0.5evに位置することを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の白金-炭素触媒。
【0057】
5.前記硫黄-窒素ドープ炭素材料が、硫黄-窒素ドープ導電性カーボンブラック、硫黄-窒素ドープグラフェン、または硫黄-窒素ドープカーボンナノチューブであることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の白金-炭素触媒。
【0058】
6.以下の(1)および(2)を含む、白金-炭素触媒の製造方法:
(1)硫黄-窒素ドープ炭素材料を製造する工程;
(2)前記工程(1)で得られた前記硫黄-窒素ドープ炭素材料を担体として用いて、白金を担持する工程;
ここで、前記工程(1)は、硫黄をドープする操作および窒素をドープする操作を含み、
前記硫黄をドープする操作は、チオフェンを含有する不活性ガス中に前記炭素材料を置いて、1000℃~1500℃で0.5時間~10時間処理することを含み、
前記窒素をドープする操作は、前記硫黄をドープする操作の前、後、または同時に行われる。
【0059】
7.前記炭素材料とチオフェンとの重量比は、チオフェンに含まれる前記硫黄の元素として計算して、20:1~2:1であることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0060】
8.前記硫黄をドープする操作を1150℃~1450℃の温度で行うことを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0061】
9.前記炭素材料と前記窒素源との重量比は、前記窒素源に含まれる前記窒素の元素として計算して、30:1~1:2であることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0062】
10.前記炭素材料は、導電性カーボンブラック、グラフェン、またはカーボンナノチューブであることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0063】
11.前記炭素材料は、抵抗率が10Ω・m未満であり、比表面積が10m2/g~2000m2/gであることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の方法。
【0064】
12.前記白金を担持する工程は、以下の(a)~(c)を含む、例示的な実施形態6に記載の方法:
(a)前記(1)で得られた前記窒素ドープ炭素材料と白金族金属前駆体とを水相に分散させ、pH値を8~12に調整すること;
(b)還元のために還元剤を加えること;および
(c)固体を分離し、後処理に供して、前記白金-炭素触媒を得ること。
【0065】
13.(a)において、前記白金前駆体は、クロロ白金酸、クロロ白金酸カリウム、またはクロロ白金酸ナトリウムであり、
前記白金前駆体の濃度は、0.5mol/L~5mol/Lであることを特徴とする、例示的な実施形態12に記載の方法。
【0066】
14.工程(b)にて、前記還元剤は、クエン酸、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、エチレングリコール、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウムまたはグリセロールからなる群から選択され、
前記還元剤の前記白金に対するモル比は2~100であり、
前記還元は60℃~90℃の温度で4時間~15時間行われることを特徴とする、例示的な実施形態12に記載の方法。
【0067】
15.以下の(1)~(3)を含む、白金-炭素触媒の製造方法:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、炭素源の浸漬工程;
(2)(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体を含むチオフェン中にて、1000℃~1500℃で、0.5時間~10時間処理して、窒素ドープ炭素材料を得る、前記硫黄-窒素ドープ炭素材料の製造工程;ならびに、
(3)(2)で得られた前記硫黄-窒素ドープ炭素材料を担体として用いて、白金を担持する工程。
【0068】
16.前記触媒は、例示的な実施形態6~15のいずれか1つに記載の方法によって製造されることを特徴とする、白金-炭素触媒。
【0069】
17.例示的な実施形態1~5および16のいずれか1つに記載の白金-炭素触媒を、水素燃料電池のアノードおよび/またはカソードに用いることを特徴とする、水素燃料電池。
【0070】
本発明の第3の一連の例示的な実施形態は、以下を含む。
【0071】
1.XPS分析でのN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さないことを特徴とする、窒素ドープ炭素材料。
【0072】
2.前記窒素ドープ炭素材料は、XPS分析にて、0.1重量%~10重量%の窒素含有量を有することを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の窒素ドープ炭素材料。
【0073】
3.前記窒素ドープ炭素材料は、XPS分析にて、4重量%超の酸素含有量を有することを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の窒素ドープ炭素材料。
【0074】
4.前記炭素材料は、抵抗率が10Ω・m未満であることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の窒素ドープ炭素材料。
【0075】
5.前記窒素ドープ炭素材料は、比表面積が10m2/g~2000m2/gであることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の窒素ドープ炭素材料。
【0076】
6.前記窒素ドープ炭素材料が、窒素ドープ導電性カーボンブラック、窒素ドープグラフェン、または窒素ドープカーボンナノチューブであることを特徴とする、例示的な実施形態1に記載の窒素ドープ炭素材料。
【0077】
7.前記導電性カーボンブラックは、EC-300J、EC-600JD、ECP600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2であることを特徴とする、例示的な実施形態6に記載の窒素ドープ炭素材料。
【0078】
8.前記炭素担体は、窒素ドープ導電性カーボンブラックであり、XPS分析でのN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さず、
XPS分析にて、酸素含有量が4重量%~15重量%であり、窒素含有量が0.2重量%~5重量%であり、ならびに
比表面積が200m2/g~2000m2/gであることを特徴とする、白金-炭素触媒用の炭素担体。
【0079】
9.前記導電性カーボンブラックは、EC-300J、EC-600JD、ECP600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2であることを特徴とする、例示的な実施形態8に記載の炭素担体。
【0080】
10.以下の(1)および(2)を含む、窒素ドープ炭素材料の製造方法:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、炭素源の浸漬工程;
(2)(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体中にて8℃/分~15℃/分の昇温速度で1000℃~1500℃に加熱した後、0.5時間~10時間恒温処理を行う、窒素ドープ炭素材料の製造工程。
【0081】
11.(2)において、前記恒温処理を1150℃~1450℃の温度で行うことを特徴とする、例示的な実施形態10に記載の方法。
【0082】
12.前記窒素源が、アンモニア水または尿素であることを特徴とする、例示的な実施形態10に記載の方法。
【0083】
13.前記炭素材料と前記窒素源との重量比は、前記窒素源に含まれる前記窒素の元素として計算して、30:1~1:2であり、好ましくは25:1~1:1.5であることを特徴とする、例示的な実施形態10に記載の方法。
【0084】
14.実施形態1~9のいずれか1つに記載の窒素ドープ炭素材料または炭素担体の、電気化学における電極材料としての使用。
【0085】
15.例示的な実施形態1~9のいずれか1つに記載の窒素ドープ炭素材料または炭素担体を用いることを特徴とする、燃料電池。
【0086】
16.前記燃料電池は、水素燃料電池であることを特徴とする、例示的な実施形態15に記載の燃料電池。
【0087】
17.例示的な実施形態1~9のいずれか1つに記載の窒素ドープ炭素材料または炭素担体を用いることを特徴とする、金属空気電池。
【0088】
18.前記金属空気電池が、リチウム空気電池であることを特徴とする、例示的な実施形態17に記載の金属空気電池。
【0089】
以下、本発明のさらなる特徴および利点を実施形態にて説明する。
【0090】
〔図面の簡単な説明〕
〔実施形態I〕
図I-1は、実施例1の窒素ドープ炭素担体のXPSスペクトルを示す。
【0091】
図I-2は、実施例3の窒素ドープ炭素担体のXPSスペクトルを示す。
【0092】
図I-3は、実施例5の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0093】
図I-4は、実施例5の白金-炭素触媒の5000サイクル前後の分極曲線を示す。
【0094】
図I-5は、実施例6の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0095】
図I-6は、実施例7の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0096】
図I-7は、実施例8の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0097】
図I-8は、比較例3の白金-炭素触媒の5000サイクル前後の分極曲線を示す。
【0098】
〔実施形態II〕
図II-1は、実施例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0099】
図II-2は、実施例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【0100】
図II-3は、実施例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0101】
図II-4は、実施例II-3の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0102】
図II-5は、実施例II-4の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0103】
図II-6は、実施例II-5の白金-炭素触媒のTEMパターンを示す。
【0104】
図II-7は、実施例II-5の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【0105】
図II-8は、実施例II-5の白金-炭素触媒中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0106】
図II-9は、実施例II-5の白金-炭素触媒中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【0107】
図II-10は、実施例II-7の白金-炭素触媒中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0108】
図II-11は、実施例II-7の白金-炭素触媒中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【0109】
図II-12は、比較例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0110】
図II-13は、比較例II-1の白金-炭素触媒のTEMパターンを示す。
【0111】
図II-14は、比較例II-1の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【0112】
図II-15は、比較例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0113】
図II-16は、比較例II-3の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【0114】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の保護範囲はこれらの実施形態またはその原理的な説明に限定されるものではなく、保護範囲は特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
【0115】
本明細書の文脈において、具体的に論じられていない任意の特徴または技術的手段は、別段の指示がない限り、いかなる実質的な変更もなしに、当該技術分野で公知の意味合いで理解される。さらに、本明細書に記載された任意の実施形態は、本明細書に記載された1つ以上の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、これによって形成された技術的な解決策または技術的思想は当初の開示または当初の記載の一部とみなされるが、その組合せが明らかに不合理であると当業者が信じない限り、本明細書によって開示または予期されない新しい内容とみなすことはできない。
【0116】
本明細書によって開示される全ての特徴は任意に組み合わせることができ、組合せが明らかに不合理であると当業者が考えない限り、本発明の開示として理解されるべきである。本明細書によって開示される数値点は実施例中の具体的に言及された個々の数だけでなく、それぞれの数値範囲の端点も含む。該数値点の組合せによって形成される範囲のいずれもが、本明細書によって開示または記載されたものとみなされるべきである。
【0117】
本明細書で使用される技術用語および科学用語は本明細書で具体的に与えられる定義によって定義されるが、定義の与えられていない他の用語は当該技術分野における通常の意味に従って理解される。
【0118】
本発明中の「ドープ元素」は、窒素、リン、ホウ素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むか、またはこれらの元素から選択される。
【0119】
本発明において、元素「がドープされた」材料は、具体的に言及される1つ以上の元素が材料中にドープされることを意味するが、該材料は具体的に言及される1つ以上の他の元素(特に当該技術分野で一般的に使用される元素)がドープされ得る。
【0120】
本発明において、材料が「ドープされた」元素は、具体的に言及される1つ以上の元素が材料中にドープされることを意味するが、一実施形態では、該材料は、具体的に言及される1つ以上の元素以外の他の元素によってドープされ得、好ましくは、該材料は、具体的に言及される1つ以上の元素以外の他のドープ元素を含まない。
【0121】
本発明において、文脈またはそれ自体の定義に従って、「ドープ元素を含有する炭素材料」として独自に識別することが可能な場合を除き、「炭素材料」の他の参照は、ドープ元素を含有しない炭素材料を指す。炭素材料の下位概念も同様に適用される。
【0122】
本発明において、「カーボンブラック(carbon black)」および「カーボンブラック(carbonblack)」は、他方を代用するのに交換可能な用語である。本発明において、本発明の炭素材料に使用され得るグラフェン、カーボンナノチューブおよび導電性カーボンブラックはそれぞれ、当該技術分野でよく知られた概念を有し、互いに異なった概念に属する。しかし、本発明によれば、ある炭素材料は当業者によって十分に認識される炭素材料の範囲内にとどまる限り、低い含有量で1つ以上の他の炭素材料を含み得る。例えば、「グラフェン」は様々な理由により、微量(例えば、1重量%未満、または0.1重量%未満)の導電性カーボンブラックおよび/またはカーボンナノチューブを含有し得る。好ましくは、例えば、本発明の目的のために、導電性カーボンブラックは5重量%未満、好ましくは2重量%未満のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含む。
【0123】
本発明において、「不活性ガス」は、本発明の製造プロセス中にドープされた炭素材料の特性に何ら大きな影響を及ぼさないガスを意味する。炭素材料の下位概念も同様である。
【0124】
本発明で定義される数値範囲は、数値範囲の端点を含む。本明細書に開示される「範囲」は、下限および上限(例えば、1つ以上の上限を伴う1つ以上の下限)として与えられる。所定の範囲は、所定の範囲の境界を定義する下限および上限を選択することによって定義され得る。この方法で定義される全ての範囲が包括され、組み合わせることができる。すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、60~110および80~120の範囲が特定のパラメータのために列挙される場合、60~120および80~110の範囲がまた意図されると理解される。さらに、列挙された下限が1および2であり、列挙された上限が3、4および5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、および2~5が全て意図される。
【0125】
本発明において、別段の指示がない限り、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」および類似の用語は、広い定義様式として構成されるが、狭い定義様式を包含するとも解釈されるべきである。例えば、「含む(comprising)」は、列挙されていない他の要素も含まれ得る場合を意味するが、列挙された要素のみを含む場合の開示も意味する。さらに、本明細書で使用されるように、「含む(comprising)/含む(including)」は、言及される特徴、整数、工程、または構成要素の存在を特定すると解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、構成要素、またはそれらの群の存在または追加を除外しない。さらに、用語「含む(comprising)」は、用語「実質的に~からなる」および用語「~からなる」によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、用語「実質的に~からなる」は、用語「~からなる」によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0126】
本発明において、本明細書で言及される全ての実施形態および好ましい実施形態は、別段の指示がない限り、新しい技術的な解決策を形成するために互いに組み合わせることができる。特に、例えば、本発明の実施形態IおよびIIについて、本明細書で言及される技術的特徴および技術的な解決策は、その組み合わせが本発明の趣旨に反しない限り、内部におよび互いに組み合わせることができる。
【0127】
本発明において、本明細書で言及される全ての技術的特徴および好ましい技術的特徴は、別段の指示がない限り、新しい技術的な解決策を形成するために互いに組み合わせることができる。
【0128】
本発明において、文脈またはそれ自体の定義から明らかでない限り、「細孔容積」の参照は全て、P/P0が最大での単一部位吸着の総細孔容積を指す。
【0129】
本発明において、「395evと405evとの間に他の特徴的なピークを実質的に有さない」とは、399evと400.5evとの間の特徴的なピーク(例えば、好ましくはピロール性窒素の特徴的なピーク)を除き、他の特徴的なピークのピーク面積はいずれも10%未満、好ましくは5%未満を占めることを意味する。
【0130】
〔実施形態I〕
本発明の実施形態Iは、XPS分析でのN1sスペクトルピークについて、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、395evと405evとの間に他の特徴的なピークを有さない、白金-炭素触媒を提供する。
【0131】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒は、窒素以外のドープ元素を含有しない。
【0132】
実施形態Iの1つの実施形態において、白金族金属は白金である。
【0133】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒は、白金以外の金属元素を含まない。
【0134】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒は、触媒の重量に基づいて、0.1重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、より好ましくは40重量%~70重量%の含有量で白金を含む。
【0135】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒は、抵抗率が10.0Ω・m未満、好ましくは2Ω・m未満である。
【0136】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒は、比表面積が80m2/g~1500m2/g、好ましくは100m2/g~200m2/gである。
【0137】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒の担体は、窒素ドープ導電性カーボンブラック、窒素ドープグラフェンまたは窒素ドープカーボンナノチューブである。
【0138】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒について、導電性カーボンブラックは、Ketjen blackシリーズの超導電性カーボンブラック(superconducting carbon black)、Cabotシリーズの導電性カーボンブラック、およびEVONIK-DEGUSSA社製シリーズの導電性カーボンブラックのうちの1つ以上であり得、好ましくはKetjen black EC-300J、Ketjen black EC-600JD、Ketjen black ECP-600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2のうちの1つ以上であり得る。
【0139】
本発明の実施形態Iはまた、下記(1)~(3)を含む炭素担持白金族金属触媒の製造方法を提供する:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、炭素源の浸漬工程;
(2)前記工程(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体中にて8℃/分~15℃/分の昇温速度で1000℃~1500℃に加熱した後、0.5時間~10時間恒温処理を行い、窒素ドープ炭素材料を得る、窒素ドープ炭素材料の製造工程;ならびに、
(3)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料を担体として、白金族金属(例えば、白金)を担持する、白金族金属(例えば、白金)の担持工程。
【0140】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、恒温処理は、1000℃~1500℃、好ましくは1150℃~1450℃の温度で、0.5時間~10時間、好ましくは1時間~5時間、より好ましくは2時間~4時間で、行い得る。
【0141】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、窒素源が、アンモニア水および/または尿素であり得る。
【0142】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、窒素源に含まれる窒素の元素として計算して、炭素材料と窒素源との重量比は、30:1~1:2、好ましくは25:1~1:1.5である。
【0143】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、導電性カーボンブラック、グラフェン、またはカーボンナノチューブであり得る。
【0144】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、導電性カーボンブラックは、一般的な導電性カーボンブラック(common conductive carbon black)、スーパー導電性カーボンブラック(super conductive carbon black)またはエキストラ導電性カーボンブラック(extra conductive carbon black)であり得、例えば、導電性カーボンブラックは、Ketjen blackシリーズの超導電性カーボンブラック、Cabotシリーズの導電性カーボンブラック、およびEVONIK-DEGUSSA社製シリーズの導電性カーボンブラックのうちの1つ以上であり得、好ましくはKetjen black EC-300J、Ketjen black EC-600JD、Ketjen black ECP-600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2のうちの1つ以上であり得る。
【0145】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、導電性カーボンブラックの製造方法および原料は限定されない。導電性カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスカーボンブラック等を用いることができる。
【0146】
実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、導電性カーボンブラックのID/IG値は、通常0.8~5であり、好ましくは1~4である。ラマンスペクトルについて、1320cm-1付近のピークはDピークであり、1580cm-1付近のピークはGピークであり、IDはDピークの強度を表し、IGはGピークの強度を表す。
【0147】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、グラフェンまたはカーボンナノチューブは、酸化処理されていないグラフェンまたはカーボンナノチューブであり得、あるいは酸化処理されたグラフェンまたはカーボンナノチューブであり得る。
【0148】
本発明の実施形態Iによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、XPS分析にて、4重量%以上、好ましくは4重量%~15重量%の酸素含有量を有する。
【0149】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、抵抗率が10Ω・m未満、好ましくは5Ω・m未満、より好ましくは2Ω・m未満である。
【0150】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(1)における炭素材料は、比表面積が10m2/g~2000m2/gであり、細孔容積が0.2mL/g~6.0mL/gである。
【0151】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、窒素ドープ炭素材料を製造する実施形態において、炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬(一般的には、12時間~72時間)し、乾燥(一般的には、70℃~120℃)して、次いで管状炉に入れ、加熱(任意に、8℃/分~15℃/分の昇温速度)して、次いで高温(1000℃~1500℃、好ましくは1150℃~1450℃)で一定時間(0.5時間~10時間であり得、一般的には1時間~5時間)処理し、その結果窒素ドープ炭素材料を得る。
【0152】
本発明の実施形態Iによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(2)で製造された窒素ドープ炭素材料は、水相中に容易に分散させることができる。しかし、Ketjen blackなどの一部の炭素材料を水相中に直接分散させることは困難である。
【0153】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によると、白金族金属(例えば、白金)の担持工程は、以下の(a)~(c)を含む:
(a)前記工程(2)で得られた前記窒素ドープ炭素材料と白金族金属前駆体(例えば、白金前駆体)とを水相に分散させ、pH値を8~12に調整すること(好ましくは、pH値を10±0.5に調整すること);
(b)還元のために還元剤を加えること;および
(c)固体を分離し、後処理に供して、炭素担持白金族金属(例えば、炭素担持白金)触媒を得ること。
【0154】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、白金族金属前駆体(例えば、白金前駆体)は、クロロ白金酸、クロロ白金酸カリウム、またはクロロ白金酸ナトリウムであり、白金族金属前駆体(例えば、白金前駆体)の濃度は、0.5mol/L~5mol/Lである。
【0155】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(a)において、水相のpHは、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を用いて調整する。
【0156】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(b)にて、還元剤は、クエン酸、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、エチレングリコール、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウム、およびグリセロールから選択される1つ以上である。
【0157】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(b)にて、前記還元剤の前記白金に対するモル比は2~100である。
【0158】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(b)にて、還元は、50℃~150℃、好ましくは60℃~90℃の温度で、4時間~15時間、好ましくは8時間~12時間行われる。
【0159】
本発明の実施形態Iの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、後処理は、洗浄、濾過および乾燥を含む。
【0160】
本発明の実施形態Iはまた、上述の本発明の実施形態Iのいずれかの実施形態の方法によって製造される炭素担持白金族金属触媒を提供する。
【0161】
本発明の実施形態Iはまた、水素燃料電池のアノードおよび/またはカソードにおいて、上述の本発明の実施形態Iのいずれかの実施形態による炭素担持白金族金属触媒を使用する水素燃料電池を提供する。
【0162】
本発明は、ピロール性窒素の形態で窒素を炭素材料の表面上にドープするという簡単な方法を用いることで、水素燃料電池のアノード水素酸化反応またはカソード酸素還元反応のための白金-炭素電極触媒を製造する。このことは、同じ炭素材料および白金担持量を有する従来の触媒と比較して、より高い半波電位を有し、特に、触媒のECSA、ならびに重量比活性および安定性を著しく改善する。
【0163】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例では、ECSAは、55m2g-1-Pt以上であり、例えば、55m2g-1-Pt~140m2g-1-Ptの範囲である。
【0164】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例では、5000サイクル後の重量比活性の低減は10%未満である。
【0165】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例では、半波電位が0.88V超であり、例えば、0.88V~0.92Vである。
【0166】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例では、重量比活性は、0.11Amg-1-Pt超であり、例えば0.11Amg-1-Pt~0.44Amg-1-Ptである。
【0167】
実施形態Iの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒は、白金-炭素触媒である。
【0168】
〔実施形態II〕
本発明の実施形態IIは、炭素担体と前記炭素担体上に担持された白金金属とを含み、前記炭素担体は硫黄-窒素ドープ炭素材料であり、XPS分析でのS2Pスペクトルピークについて、160evと170evとの間では、163evと166evとの間のみに特徴的なピークが存在する炭素担持白金族金属触媒を提供する。
【0169】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、硫黄および窒素以外のドープ元素を含まない。
【0170】
実施形態IIの1つの実施形態において、白金族金属は白金である。
【0171】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は白金以外の金属元素を含まない。
【0172】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)のXPS分析は、163evと166evとの間のみに特徴的なピークが存在するS2Pスペクトルピークを示す。
【0173】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)のXPS分析は、166evと170evとの間に特徴的なピークを有さない。
【0174】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)のXPS分析は、399evと400.5evとの間に特徴的なピークを有するが、390evと410evとの間に他の特徴的なピークを有さないN1sスペクトルピークを示す。
【0175】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)のXPS分析は、399evと400.5evとの間に1つまたは2つの特徴的なピークを有するN1sスペクトルピークを示す。
【0176】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、触媒の重量に基づいて、0.1重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、より好ましくは40重量%~70重量%の含有量で白金を含む。
【0177】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、抵抗率が10.0Ω・m未満、好ましくは2.0Ω・m未満である。
【0178】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、比表面積が80m2/g~1500m2/g、好ましくは100m2/g~200m2/gである。
【0179】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)について、硫黄-窒素ドープ炭素材料は、硫黄-窒素ドープ導電性カーボンブラック、硫黄-窒素ドープグラフェン、または硫黄-窒素ドープカーボンナノチューブである。導電性カーボンブラックは、Ketjen blackシリーズの超導電性カーボンブラック、Cabotシリーズの導電性カーボンブラック、およびEVONIK-DEGUSSA社製シリーズの導電性カーボンブラックのうちの1つ以上であり得、好ましくはKetjen black EC-300J、Ketjen black EC-600JD、Ketjen black ECP-600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2のうちの1つ以上であり得る。グラフェンまたはカーボンナノチューブは、酸化処理されたグラフェンまたはカーボンナノチューブ、または酸化処理されていないグラフェンまたはカーボンナノチューブであり得る。
【0180】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)について、163evと166evとの間の特徴的なピークは双峰性であり、いくつかの実施例II-では、2つのピークがそれぞれ163.4±0.5evおよび164.7±0.5evに位置する。
【0181】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、XPS試験によって測定する炭素担持白金族金属触媒の担体の重量に基づいて、0.2重量%~3重量%の含有量で硫黄を含み、0.1重量%~5重量%の含有量で窒素を含む。
【0182】
本発明の実施形態IIはまた、以下の(1)および(2)を含む、炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)の製造方法を提供する:
(1)硫黄-窒素ドープ炭素材料を製造する工程;
(2)前記工程(1)で得られた硫黄-窒素ドープ炭素材料を担体として用いて、白金族金属(例えば、白金)を担持する工程;
ここで、前記工程(1)は、硫黄をドープする操作および窒素をドープする操作を含み、
前記硫黄をドープする操作は、チオフェンを含有する不活性ガス中に前記炭素材料を置いて、1000℃~1500℃(好ましくは、恒温処理)で、0.5時間~10時間処理することを含み、
前記窒素をドープする操作は、前記硫黄をドープする操作の前、後、または同時に行われる。
【0183】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、硫黄をドープする操作において、必要に応じて、温度を8℃/分以上の速度(8℃/分~15℃/分であり得る)で昇温する。
【0184】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、窒素をドープする操作が、硫黄をドープする操作の前、後、または同時に行われる場合、任意の従来公知の窒素をドープする方法を用いることができる。一実施形態では、窒素をドープする操作は、硫黄をドープする操作の前に行われ、炭素材料と窒素源とを混合し、不活性ガス中で0.5時間~10時間、300℃~1500℃(好ましくは、一定の温度で処理される)で処理される。別の実施形態では、窒素をドープする操作は、硫黄をドープする操作の後に行われ、硫黄をドープされた炭素材料と窒素源とを混合し、不活性ガス中で0.5時間~10時間、300℃~1500℃(好ましくは、一定の温度で処理される)で処理される。
【0185】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、窒素をドープする操作は、硫黄をドープする操作と同時に行われ、硫黄をドープする操作と同じ操作条件を用いてもよい。一実施形態では、炭素材料は窒素源と混合され、次いで、硫黄をドープする操作と同じ条件下で、窒素をドープする操作および硫黄をドープする操作に同時に供される。
【0186】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、チオフェンに含まれる硫黄の元素として計算して、炭素材料とチオフェンとの重量比は20:1~2:1、好ましくは、10:1~4:1の比、より好ましくは8:1~4:1である。
【0187】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、硫黄をドープする操作は、好ましくは1100℃~1400℃、より好ましくは1200℃~1400℃の温度で行われる。
【0188】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、硫黄をドープする操作および窒素をドープする操作は、それぞれ1時間~5時間、好ましくは2時間~4時間行われる。
【0189】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、窒素源に含まれる窒素の元素として計算して、炭素材料と窒素源との重量比は30:1~1:2、好ましくは、25:1~1:1.5の比である。
【0190】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、本発明による硫黄-窒素ドープ炭素材料のXPS分析は、160evと170evとの間でのS2Pスペクトルピークについて、163evと166evとの間のみに特徴的なピークが存在することを示す。
【0191】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、本発明による炭素担持白金族金属触媒について、163evと166evとの間の特徴的なピークは双峰性ピークであり、いくつかの実施例II-では、2つのピークがそれぞれ163.7±0.5evおよび165.0±0.5evに位置する。
【0192】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、導電性カーボンブラック、グラフェン、またはカーボンナノチューブであり得る。導電性カーボンブラックは、一般的な導電性カーボンブラック、スーパー導電性カーボンブラックまたはエキストラ導電性カーボンブラックであり得、例えば、導電性カーボンブラックは、Ketjen blackシリーズの超導電性カーボンブラック、Cabotシリーズの導電性カーボンブラック、およびEVONIK-DEGUSSA社製シリーズの導電性カーボンブラックのうちの1つ以上であり得、好ましくはKetjen black EC-300J、Ketjen black EC-600JD、Ketjen black ECP-600JD、VXC72、Black pearls 2000、PRINTEX XE2-B、PRINTEX L6、またはHIBLAXK 40B2のうちの1つ以上であり得る。グラフェンまたはカーボンナノチューブは、酸化処理されたグラフェンまたはカーボンナノチューブ、または酸化処理されていないグラフェンまたはカーボンナノチューブであり得る。
【0193】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、導電性カーボンブラックの製造方法および原料は限定されない。導電性カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスカーボンブラック等を用いることができる。
【0194】
実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、通常ID/IG値が0.8~5であり、好ましくは1~4である。ラマンスペクトルについて、1320cm-1付近のピークはDピークであり、1580cm-1付近のピークはGピークであり、IDはDピークの強度を表し、IGはGピークの強度を表す。
【0195】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、抵抗率が10Ω・m未満、好ましくは5Ω・m未満、より好ましくは2Ω・m未満であってもよい。
【0196】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料は、XPS分析にて、酸素含有量が2重量%超、例えば2重量%~15重量%、好ましくは2.5重量%~12重量%である。
【0197】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、炭素材料の比表面積および細孔容積は、広範囲にわたって変化し得る。通常、比表面積は10m2/g~2000m2/gであり、細孔容積は0.02mL/g~6mL/gである。
【0198】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、一実施形態において、工程(1)における炭素材料は、200m2/g~2000m2/gの比表面積を有する導電性カーボンブラックである。
【0199】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、不活性ガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスであり得る。
【0200】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、硫黄をドープする操作の一実施形態において、炭素材料を管状炉に入れ、チオフェンを含むキャリアガスを導入し、管状炉を8℃/分~15℃/分の速度で1000℃~1500℃に加熱し、続いて0.5時間~10時間の恒温処理を行う。
【0201】
キャリアガスは、窒素ガスまたはアルゴンガスであり得る。
【0202】
キャリアガスは、チオフェンを0.1体積%~5.0体積%で含み得る。
【0203】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、白金族金属(例えば、白金)の担持工程は、以下の(a)~(c)を含む:
(a)前記工程(1)で得られた前記硫黄-窒素ドープ炭素材料と白金族金属前駆体とを水相に分散させ、pH値を8~12に調整すること(好ましくは、pH値を10±0.5に調整すること);
(b)還元のために還元剤を加えること;および
(c)固体を分離し、後処理に供して、炭素担持白金族金属(例えば、炭素担持白金)触媒を得ること。
【0204】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(a)において、白金族金属前駆体(例えば、白金前駆体)は、クロロ白金酸、クロロ白金酸カリウム、またはクロロ白金酸ナトリウムであり、白金族金属前駆体(例えば、白金前駆体)の濃度は、0.5mol/L~5mol/Lである。
【0205】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(a)において、水相のpHは、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を用いて調整する。
【0206】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(b)にて、還元剤は、クエン酸、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、エチレングリコール、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、水素化ホウ素ナトリウム、およびグリセリンから選択される1つ以上である。
【0207】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(b)にて、還元剤の白金に対するモル比は、2~100である。
【0208】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(b)にて、還元は、50℃~150℃、好ましくは60℃~90℃の温度で、4時間~15時間、好ましくは8時間~12時間行われる。
【0209】
本発明の実施形態IIによる炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(1)で製造された硫黄-窒素ドープ炭素材料を水相中に容易に分散させることができる。しかし、Ketjen blackなどの一部の炭素材料を水相中に直接分散させることは困難である。
【0210】
本発明の実施形態IIの炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、後処理は、洗浄、濾過および乾燥を含む。
【0211】
本発明の実施形態IIはまた、以下の(1)~(3)を含む、炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)の製造方法を提供する:
(1)炭素材料と窒素源水溶液とを混合し、浸漬して、窒素源浸漬炭素材料を得る、炭素源の浸漬工程;
(2)工程(1)で得られた前記窒素源浸漬炭素材料を、不活性気体を含むチオフェン中にて1000℃~1500℃(好ましくは、恒温処理)で、0.5時間~10時間処理して、窒素ドープ炭素材料を提供する、硫黄-窒素ドープ炭素材料の製造工程;ならびに、
(3)前記工程(2)で得られた前記硫黄-窒素ドープ炭素材料を担体として用いて、白金族金属(例えば、白金)を担持する工程。
【0212】
炭素担持白金族金属触媒の製造方法によれば、工程(1)の窒素源浸漬炭素材料を最初に乾燥させ、次いで工程(2)を行う。
【0213】
実施形態IIの1つの実施形態において、本実施形態の炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)の製造方法によって製造される。
【0214】
本発明の実施形態IIはまた、水素燃料電池のアノードおよび/またはカソードにおいて、上述の本発明の実施形態IIのいずれかの実施形態による炭素担持白金族金属触媒を使用する水素燃料電池を提供する。
【0215】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、5000サイクル後の重量比活性の低減が10%未満である。
【0216】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例II-では、ECSAは68.93m2g-1-Pt以上であり、例えば、60.0m2g-1-Pt~100.0m2g-1-Ptである。
【0217】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例II-では、半波電位は0.890V超(例えば、0.89V~0.91V)である。
【0218】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明による炭素担持白金族金属触媒(例えば、白金-炭素触媒)は、酸素還元反応に使用される場合、いくつかの実施例II-では、重量比活性は0.15Amg-1-Pt超(例えば、0.15Amg-1-Pt~0.35Amg-1-Pt)である。
【0219】
従来の水素燃料電池用の炭素担持白金族金属の比較的低い重量比活性および不十分な安定性と比較して、本発明は、硫黄および窒素を特定の形態で炭素担体の表面にドープすることによって、炭素担持白金族金属触媒の重量比活性および安定性、特に、白金担持量の多い炭素担持白金族金属触媒の重量比活性および安定性を明らかに改善する。
【0220】
実施形態IIの1つの実施形態において、本発明の炭素担持白金族金属触媒は白金-炭素触媒である。
【0221】
〔実施例〕
以下、具体的な実施例を参照して、本発明を詳しく説明する。以下の実施例は当業者が本発明をさらに理解するのに役立つことができるが、いずれの方法も本発明を限定することを意図するものではない。
【0222】
別段の指示がない限り、本発明で使用される全ての試薬は化学的に純粋であり、全ての試薬は市販されている。
【0223】
〔実施形態I〕
試薬、機器および試験
本発明は、X線光電子スペクトル分析器(XPS)によって材料の表面上の元素を検出する。使用したX線光電子スペクトル分析器は、Avantage V5.926ソフトウェアを搭載したVG Scientifc社製のESCALab 220i-XL型線電子分光計であり、X線光電子スペクトル分析器の分析条件および試験条件は、励起源が330Wの単色化A1K α X線であり、分析試験時の基礎真空が3×10-9mbarであった。さらに、電子結合エネルギーを元素の炭素のC1sピーク(284.3eV)で補正し、後期ピークフィッティングソフトウェアは、XPSPEAKであった。
【0224】
元素分析のための機器、方法および条件は、元素分析器(Vario EL Cube)、1150℃の反応温度、5mgの試料の秤量、850℃の還元温度、200mL/分のキャリアガスヘリウムの流量、30mL/分の酸素の流量、および70秒間の酸素の導入を含んだ。
【0225】
白金-炭素触媒中の白金の含有重量を測定するための機器、方法および条件は、製造されたPt/C触媒を30mg取り、王水30mLを添加し、120℃で12時間凝縮および還流し、室温まで冷却し、希釈のために上澄み液を取り、ICP-AESにより上澄み液中のPt含有量を測定することを含んだ。
【0226】
本発明で使用した高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)は、JEM-2100(HRTEM)(日本電子株式会社製)であり、高分解能透過型電子顕微鏡の試験条件は、200kVの加速電圧を含んだ。試料中のナノ粒子の粒径は、電子顕微鏡画像によって測定した。
【0227】
BET試験方法:本発明において、試料の細孔構造特性を、Quantachrome AS-6B型分析器によって測定し、触媒の比表面積および細孔容積を、Brunauer-Emmett-Taller(BET)法によって求め、細孔分布曲線を、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法による脱着曲線を算出することによって求めた。
【0228】
本発明のラマン検出は、日本HORIBA社製の、レーザー波長532nmを有するLabRAM HR UV-NIR型レーザー共焦点ラマン分光計を使用した。
【0229】
電気化学的性能試験:機器は、Solartron analytical EnergyLab、およびPrinceton Applied Research(モデル636A)であった。方法および試験条件は、触媒の分極曲線LSVを、0.1M HClO4で飽和させたO2中で、1600rpmで測定し、CV曲線を0.1M HClO4中で、Ar雰囲気下で測定し、電気化学的活性領域ECSAを計算した。安定性は、0.1M HClO4で飽和されたO2中で、0.6V~0.95Vの範囲内で、5000サイクルの間スキャンすることによって測定し、次いで上述のLSVおよびECSAを測定した。測定中、触媒は均一に分散したスラリー中に調製され、直径5mmのガラス状炭素電極上に塗布された。電極上の触媒の白金含有量は、3μg~4μgであった。
【0230】
抵抗率試験:4プローブ抵抗率試験機を使用した。機器モデルKDY-1、および方法および試験条件:印加圧力は3.9±0.03MPaであり、電流は500±0.1mAであった。
【0231】
VXC72(Vulcan XC72、Kabot社製、米国)は、Suzhou Yilongcheng energy science and technology Co.,Ltd.から購入した。上記の機器および方法による試験結果は、比表面積が258m2/gであり、細孔容積が0.388mL/gであり、酸素含有量が8.72重量%であり、ID/IGが1.02であり、抵抗率が1.22Ω・mを示した。
【0232】
Ketjenblack ECP600JD(ライオン社製、日本)は、Suzhou Yilongcheng energy science and technology Co.,Ltd.から購入した。上記の機器および方法による試験結果は、比表面積が1362m2/gであり、細孔容積が2.29mL/gであり、酸素含有量が6.9重量%であり、ID/IGが1.25であり、抵抗率が1.31Ω・mを示した。
【0233】
市販の白金-炭素触媒(Johnson Matthey社の商標HISPEC4000)を、Alfa Aesarから購入した。試験結果は、白金含有量が40.2重量%を示した。
【0234】
〔実施例1〕
本実施例は、本発明による窒素ドープ炭素担体の調製を説明する。
【0235】
1gのVulcan XC72を20mLの2.5重量%アンモニア水に24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、管状炉に入れ、該管状炉を8℃/分の速度で1100℃に加熱し、3時間の恒温処理を行い、自然冷却して、炭素担体Aと称する窒素ドープ炭素担体を得た。
【0236】
試料の特性および試験
XPS分析による窒素含有重量は1.43%であり、XPS分析による酸素含有重量は9.31%であり、比表面積は239m2/gであり、抵抗率は1.28Ω・mであった。
【0237】
図1は、実施例1の炭素担体AのXPSスペクトルを示す。
【0238】
〔実施例2〕
本実施例は、本発明による窒素ドープ炭素担体の調製を説明する。
【0239】
1gのVulcan XC72を15mlの0.7重量%尿素水溶液に24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、管状炉に入れ、該管状炉を10℃/分の速度で1200℃に加熱し、3時間の恒温処理を行い、自然冷却して、炭素担体Bと称する窒素ドープ炭素担体を得た。
【0240】
試料の特性および試験
XPS分析による窒素含有重量は0.68%であり、XPS分析による酸素含有重量は8.92%であり、抵抗率は1.25Ω・mであった。
【0241】
〔実施例3〕
本実施例は、本発明による窒素ドープ炭素担体の調製を説明する。
【0242】
10mLの無水エタノールを1gのKetjenblack ECP600JDに加え、次いで25mLの10重量%アンモニア水を加えて24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、次いで管状炉に入れ、該管状炉を8℃/分の速度で1100℃に加熱し、3時間恒温処理を行い、自然冷却して、炭素担体Cと称する窒素ドープ炭素担体を得た。
【0243】
試料の特性および試験
XPS分析による窒素含有重量は1.48%であり、XPS分析による酸素含有重量は11.22%であり、比表面積は1369m2/gであり、抵抗率は1.36Ω・mであった。
【0244】
図2は、実施例3の炭素担体CのXPSスペクトルを示す。
【0245】
〔実施例4〕
本実施例は、本発明による窒素ドープ炭素担体の調製を説明する。
【0246】
10mLの無水エタノールを1gのKetjenblack ECP600JDに加え、次いで20mlの1重量%尿素水を加えて24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、管状炉に入れ、該管状炉を10℃/分の速度で1300℃に加熱し、3時間恒温処理を行い、自然冷却して炭素担体Dと称する窒素ドープ炭素担体を得た。
【0247】
試料の特性および試験
XPS分析による窒素含有重量は1.31%であり、XPS分析による酸素含有重量は9.54%であり、抵抗率は1.34Ω・mであった。
【0248】
〔実施例5〕
本実施例は、本発明による白金-炭素触媒の調製を説明するために提供する。
【0249】
炭素担体Aを、炭素担体1g当たり水250mLの割合で脱イオン水に分散させ、炭素担体1g当たりクロロ白金酸3.4mmolを加え、超音波分散させて懸濁液を形成し、1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を加えて系のpH値を10に調整し、懸濁液を80℃に加熱し、撹拌しながらギ酸を加えて還元反応させ、ギ酸とクロロ白金酸とのモル比を50:1とし、該反応を10時間続けて、該反応から得られた混合物を濾過し、濾液のpH値が中性になるまで脱イオン水を用いて洗浄し、濾過し、100℃で乾燥させて、白金-炭素触媒を得た。
【0250】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、39.7%であった。
【0251】
図3は、実施例5の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0252】
図4は、実施例5の白金-炭素触媒の5000サイクル前後の分極曲線を示す。
【0253】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0254】
〔実施例6〕
本実施例は、白金-炭素触媒の調製を説明するために提供される。
【0255】
実施例2で製造された炭素担体Bを使用し、炭素担体1g当たり1.3mmolのクロロ白金酸を添加したこと以外は、実施例5の方法に従って白金-炭素触媒を製造した。
【0256】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、20.1%であった。
【0257】
図5は、実施例6の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0258】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0259】
〔実施例7〕
本実施例は、本発明による白金-炭素触媒の調製を説明するために提供される。
【0260】
炭素担体Cを、炭素担体1g当たり水250mLの割合で脱イオン水に分散させ、炭素担体1g当たりクロロ白金酸12mmolを加え、超音波分散させて懸濁液を形成し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えて系のpH値を10に調整し、懸濁液を80℃に加熱し、撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元反応させ、還元剤と白金前駆体とのモル比を5:1とし、該反応を12時間続け、該反応から得られた混合物を濾過し、溶液のpH値が中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥させて、炭素担持白金触媒を得た。
【0261】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、70.0%であった。
【0262】
図6は、実施例7の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0263】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0264】
〔実施例8〕
本実施例は、白金-炭素触媒の調製を説明するために提供される。
【0265】
実施例4で製造された炭素担体Dを使用し、炭素担体1g当たり1.3mmolのクロロ白金酸を添加したこと以外は、実施例7の方法に従って白金-炭素触媒を製造した。
【0266】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、20.1%であった。
【0267】
図7は、実施例8の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【0268】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0269】
〔比較例1〕
担体がVulcan XC72であること以外は、実施例5の方法に従って、白金-炭素触媒を製造した。
【0270】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、40.1%であった。
【0271】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0272】
〔比較例2〕
担体がKetjenblack ECP600JDであり、炭素担体1g当たり200mLの水および50mLのエタノールを、Ptを担持する際の分散に使用したこと以外は、実施例7の方法に従って白金-炭素触媒を製造した。
【0273】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、69.7%であった。
【0274】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0275】
〔比較例3〕
白金-炭素触媒は、HISPEC 4000の商標で購入された市販の触媒であった。
【0276】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、40.2%であった。
【0277】
図8は、比較例3の白金-炭素触媒の5000サイクル前後の分極曲線を示す。
【0278】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表1に示す。
【0279】
【0280】
〔実施形態II〕
試薬、機器および試験
本発明は、X線光電子スペクトル分析器(XPS)によって材料の表面上の元素を検出する。使用したX線光電子スペクトル分析器は、Avantage V5.926ソフトウェアを搭載したVG Scientifc社製のESCALab 220i-XL型線電子分光計であり、X線光電子スペクトル分析器の分析条件および試験条件は、励起源が330wの単色化A1K α X線であり、分析試験時の基礎真空が3×10-9mbarであった。さらに、電子結合エネルギーを元素の炭素のC1sピーク(284.3eV)で補正し、後期ピークフィッティングソフトウェアは、XPSPEAKであった。分光写真中のチオフェン性硫黄および窒素の特徴的なピークは、ピークフィッティング後の特徴的なピークであった。
【0281】
元素分析のための機器、方法および条件は、元素分析器(Vario EL Cube)、1150℃の反応温度、5mgの試料の秤量、850℃の還元温度、200mL/分のキャリアガスヘリウムの流量、30mL/分の酸素の流量、および70秒間の酸素の導入を含んだ。
【0282】
白金-炭素触媒中の白金の含有重量を測定するための機器、方法および条件は、製造されたPt/C触媒を30mg取り、王水30mLを添加し、120℃で12時間凝縮および還流し、室温まで冷却し、希釈のために上澄み液を取り、ICP-AESにより上澄み液中のPt含有量を測定することを含んだ。
【0283】
本発明で使用した高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)は、JEM-2100(HRTEM)(日本電子株式会社製)であり、高分解能透過型電子顕微鏡の試験条件は、200kVの加速電圧を含んだ。試料中のナノ粒子の粒径は、電子顕微鏡画像によって測定した。
【0284】
BET試験方法:本発明において、試料の細孔構造特性を、Quantachrome AS-6B型分析器によって測定し、触媒の比表面積および細孔容積を、Brunauer-Emmett-Taller(BET)法によって求め、細孔分布曲線を、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法による脱着曲線を算出することによって求めた。
【0285】
本発明のラマン検出は、日本HORIBA社製の、レーザー波長532nmを有するLabRAM HR UV-NIR型レーザー共焦点ラマン分光計を使用した。
【0286】
電気化学的性能試験:機器は、Solartron analytical EnergyLab、およびPrinceton Applied Research(モデル636A)であった。方法および試験条件は、触媒の分極曲線LSVを、0.1M HClO4で飽和されたO2中で、1600rpmで測定し、CV曲線を0.1M HClO4中で、Ar雰囲気下で測定し、電気化学的活性領域ECSAを計算した。電気化学的性能試験:機器は、Solartron analytical EnergyLab、およびPrinceton Applied Research(モデル636A)であった。方法および試験条件は、触媒の分極曲線LSVを、0.1M HClO4で飽和されたO2中で、1600rpmで測定し、CV曲線を0.1M HClO4中で、Ar雰囲気下で測定し、電気化学的活性領域ECSAを計算した。安定性は、0.1M HClO4で飽和されたO2中で、0.6V~0.95Vの範囲内で、5000サイクルの間スキャンすることによって測定し、次いで上述のLSVおよびECSAを測定した。安定性は、0.1M HClO4で飽和されたO2中で、0.6V~0.95Vの範囲内で、5000サイクルの間スキャンすることによって測定し、次いで上述のLSVおよびECSAを測定した。測定中、触媒は均一に分散したスラリー中に調製され、直径5mmのガラス状炭素電極上に塗布された。電極上の触媒の白金含有量は、3μg~4μgであった。
【0287】
抵抗率試験:4プローブ抵抗率試験機を使用した。機器モデルKDY-1、および方法および試験条件:印加圧力は3.9±0.03MPaであり、電流は500±0.1mAであった。
【0288】
VXC72(Vulcan XC72、Kabot社製、米国)は、Suzhou Yilongcheng energy science and technology Co.,Ltd.から購入した。上記の機器および方法による試験結果は、比表面積が258m2/gであり、細孔容積が0.388mL/gであり、酸素含有量が8.72重量%であり、ID/IGが1.02であり、抵抗率が1.22Ω・mを示した。
【0289】
Ketjenblack ECP600JD(ライオン社製、日本)は、Suzhou Yilongcheng energy science and technology Co.,Ltd.から購入した。上記の機器および方法による試験結果は、比表面積が1362m2/gであり、細孔容積が2.29mL/gであり、酸素含有量が6.9重量%であり、ID/IGが1.25であり、抵抗率が1.31Ω・mを示した。
【0290】
市販の白金-炭素触媒(Johnson Matthey社の商標HISPEC4000)を、Alfa Aesarから購入した。試験結果は、白金含有量が40.2重量%を示した。
【0291】
〔実施例II-1〕
本実施例は、硫黄-窒素ドープ炭素材料の調製を説明するために提供される。
【0292】
1gのVulcan XC72を20mLの2重量%アンモニア水に24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、次いで管状炉に入れ、チオフェンを充填したバブリングボトルを通過させた後のキャリアガス(窒素)を管状炉に供給し、10℃/分の速度で1200℃に加熱し、3時間恒温処理を行い、自然冷却して、担体Aと称する硫黄-窒素ドープ炭素材料を得た。Vulcan XC72とチオフェンとの重量比は3:1であり、チオフェンをチオフェンに含まれる硫黄として計算した。チオフェンの量は、キャリアガスの供給速度によって制御し、異なるチオフェンの量に対応するキャリアガスの供給速度は、供給時間に応じて事前に調整した。
【0293】
試料の特性および試験
I.硫黄-窒素ドープ炭素材料
XPS分析による硫黄含有重量は1.25%であり、
XPS分析による窒素含有重量は0.54%であり、
比表面積は211m2/gであり、細孔容積は0.421mL/gであり、
抵抗率は1.31Ω・mであった。
【0294】
図II-1は、実施例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0295】
図II-2は、実施例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【0296】
〔実施例II-2〕
1gのVulcan XC72を20mLの20重量%アンモニア水に24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、次いで管状炉に入れ、チオフェンを充填したバブリングボトルを通過させた後のキャリアガス(窒素)を管状炉に供給し、10℃/分の速度で1300℃に加熱し、3時間熱処理を行い、自然冷却して、担体Bと称する硫黄-窒素ドープ炭素材料を得た。Vulcan XC72とチオフェンとの重量比は9:1であり、チオフェンをチオフェンに含まれる硫黄として計算した。チオフェンの量は、キャリアガスの供給速度によって制御し、異なるチオフェンの量に対応するキャリアガスの供給速度は、供給時間に応じて事前に調整した。
【0297】
試料の特性および試験
XPS分析による硫黄含有重量は0.91%であり、XPS分析による窒素含有重量は0.62%であり、抵抗率は1.29Ω・mであった。
【0298】
図II-3は、実施例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0299】
〔実施例II-3〕
10mLの無水エタノールを1gのKetjenblack ECP600JDに加え、20mLの20重量%アンモニア水を加えて24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、次いで管状炉に入れ、チオフェンを充填したバブリングボトルを通過させた後のキャリアガス(窒素)を管状炉に供給し、10℃/分の速度で1200℃に加熱し、3時間恒温処理を行い、自然冷却して、担体Cと称する硫黄-窒素ドープ炭素材料を得た。Ketjenblack ECP600JDとチオフェンとの重量比は8:1であり、チオフェンをチオフェンに含まれる硫黄として計算した。チオフェンの量は、キャリアガスの供給速度によって制御し、異なるチオフェンの量に対応するキャリアガスの供給速度は、供給時間に応じて事前に調整した。
【0300】
試料の特性および試験
I.硫黄-窒素ドープ炭素材料
XPS分析による硫黄含有重量は0.72%であり、XPS分析による窒素含有重量は1.84%であり、比表面積は1317m2/gであり、抵抗率は1.38Ω・mであった。
【0301】
図II-4は、実施例II-3の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0302】
〔実施例II-4〕
本実施例は、硫黄-窒素ドープ炭素材料の調製を説明するために提供される。
【0303】
1gのVulcan XC72を20mLの2重量%アンモニア水に24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、次いで管状炉に入れ、窒素ガスによる保護下で、10℃/分の速度で1200℃に加熱し、3時間恒温処理を行い、次いでチオフェンを充填したバブリングボトルを通過させた後のキャリアガス(窒素)を管状炉に供給し、1200℃で3時間恒温処理を続け、自然冷却して、担体Dと称する硫黄-窒素ドープ炭素材料を得た。Vulcan XC72とチオフェンとの重量比は3:1であり、チオフェンをチオフェンに含まれる硫黄として計算した。チオフェンの量はキャリアガスの供給速度によって制御し、異なるチオフェンの量に対応するキャリアガスの供給速度は、供給時間に応じて事前に調整した。
【0304】
試料の特性および試験
I.硫黄-窒素ドープ炭素材料
XPS分析による硫黄含有重量は1.14%であり、XPS分析による窒素含有重量は0.14%であった。
【0305】
図II-5は、実施例II-4の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0306】
〔実施例II-5〕
本実施例は、本発明による白金-炭素触媒の調製を説明するために提供される。
【0307】
炭素担体Aを、炭素担体1g当たり水250mLの割合で脱イオン水に分散させ、炭素担体1g当たりクロロ白金酸3.4mmolを加え、超音波分散させて懸濁液を形成し、1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を加えて系のpH値を10に調整し、懸濁液を80℃に加熱し、撹拌しながらギ酸を加えて還元反応させ、ギ酸とクロロ白金酸とのモル比を50:1とし、該反応を10時間続け、該反応から得られた混合物を濾過し、濾液のpH値が中性になるまで脱イオン水を用いて洗浄し、濾過し、100℃で乾燥して、白金-炭素触媒を得た。
【0308】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、39.9%であった。
【0309】
図II-6は、実施例II-5の白金-炭素触媒のTEMパターンを示す。
【0310】
図II-7は、実施例II-5の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【0311】
図II-8は、実施例II-5の白金-炭素触媒中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0312】
図II-9は、実施例II-5の白金-炭素触媒中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【0313】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表II-1に示す。
【0314】
〔実施例II-6〕
本実施例は、本発明による白金-炭素触媒の調製を説明するために提供される。
【0315】
実施例II-2で調製した炭素担体Bを使用し、炭素担体1g当たり1.3mmolのクロロ白金酸を添加したこと以外は、実施例II-5の方法に従って白金-炭素触媒を調製した。
【0316】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、20.3%であった。
【0317】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表II-1に示す。
【0318】
〔実施例II-7〕
本実施例は、本発明による白金-炭素触媒の調製を説明するために提供され。
【0319】
炭素担体Cを、炭素担体1g当たり水250mLの割合で脱イオン水に分散させ、炭素担体1g当たりクロロ白金酸12mmolを加え、超音波分散させて懸濁液を形成し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えて系のpH値を10に調整し、懸濁液を80℃に加熱し、撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元反応させ、還元剤と白金前駆体とのモル比を5:1とし、該反応を12時間続け、該反応から得られた混合物を濾過し、溶液のpH値が中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥して、炭素担持白金触媒を得た。
【0320】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、69.8%であった。
【0321】
図II-10は、実施例II-7の白金-炭素触媒中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0322】
図II-11は、実施例II-7の白金-炭素触媒中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【0323】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表II-1に示す。
【0324】
〔実施例II-8〕
本実施例は、本発明による白金-炭素触媒の調製を説明するために提供される。
【0325】
実施例II-4で調製した炭素担体Dを使用したこと以外は、実施例II-5の方法に従って、白金-炭素触媒を調製した。
【0326】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、39.9%であった。
【0327】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表II-1に示す。
【0328】
〔比較例II-1〕
管状炉を3℃/分の速度で1200℃に加熱したこと以外は、実施例II-1と同じ方法で、硫黄-窒素ドープ炭素材料を調製した。
【0329】
炭素担体が比較例II-1で調製した硫黄-窒素ドープ炭素材料であること以外は、実施例II-5と同じ方法で、白金-炭素触媒を調製した。
【0330】
試料の特性および試験
I.硫黄-窒素ドープ炭素材料
XPS分析による硫黄含有重量は1.29%であり、XPS分析による窒素含有重量は0.58%であり、抵抗率は1.32Ω・mであった。
【0331】
図II-12は、比較例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0332】
II.白金-炭素触媒
白金-炭素触媒の白金含有重量は、40.1%であった。
【0333】
図II-13は、比較例II-1の白金-炭素触媒のTEMパターンを示す。
【0334】
図II-14は、比較例II-1の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【0335】
〔比較例II-2〕
硫黄-窒素ドープ炭素材料の製造時に、700℃の温度で恒温処理を行ったこと以外は、実施例II-1と同じ方法で、硫黄-窒素ドープ炭素材料を調製した。
【0336】
試料の特性および試験
比較例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料について、XPS分析による硫黄含有重量は0.967%であり、XPS分析による窒素含有重量は、0.92%であった。
【0337】
図II-15は、比較例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【0338】
〔比較例II-3〕
白金-炭素触媒は、HISPEC 4000の商標で購入された市販の触媒であった。
【0339】
試料の特性および試験
白金-炭素触媒の白金含有重量は、40.2%であった。
【0340】
図II-16は、比較例II-3の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【0341】
〔比較例II-4〕
10mLの無水エタノールを1gのKetjenblack ECP600JDに加え、次いで25mLの10重量%アンモニア水を加えて24時間浸漬し、100℃のオーブンで乾燥し、次いで管状炉に入れ、該管状炉を8℃/分の速度で1100℃に加熱し、3時間、一定の温度で担持処理を行い、自然冷却して、窒素ドープ炭素担体を得た。
【0342】
上記の窒素ドープ炭素担体を、炭素担体1g当たり水250mLの割合で脱イオン水に分散させ、炭素担体1g当たりクロロ白金酸12mmolを加え、超音波分散させて懸濁液を形成し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えて、系のpH値を10に調整し、懸濁液を80℃に加熱し、撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元反応させ、還元剤と白金前駆体とのモル比を5:1とし、該反応を12時間続け、該反応から得られた混合物を濾過し、溶液のpH値が中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥して、炭素担持白金触媒を得た。
【0343】
試料の特性および試験
窒素ドープ炭素担体について、XPS分析による窒素含有重量は、1.48%であった。
【0344】
白金-炭素触媒の白金含有重量は、70.0%であった。
【0345】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表II-1に示す。
【0346】
〔比較例II-5〕
Ketjenblack ECP600JDを管状炉に入れ、チオフェンを充填したバブリングボトルを通過させた後のキャリアガス(窒素)を管状炉に供給し、10℃/分の速度で1200℃に加熱し、3時間一定の温度で処理を行い、自然冷却して、硫黄ドープ炭素担体を得た。Ketjenblack ECP600JDとチオフェンとの重量比は20:1であり、チオフェンをチオフェンに含まれる硫黄として計算した。チオフェンの量はキャリアガスの供給速度によって制御し、異なるチオフェンの量に対応するキャリアガスの供給速度は、供給時間に応じて事前に調整した。
【0347】
上記硫黄ドープ炭素担体を、炭素担体1g当たり水250mLの割合で脱イオン水に分散させ、炭素担体1g当たりクロロ白金酸12mmolを加え、超音波分散させて懸濁液を形成し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えて、系のpH値を10に調整し、懸濁液を80℃に加熱し、撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元反応させ、還元剤と白金前駆体とのモル比を5:1とし、該反応を12時間続け、該反応から得られた混合物を濾過し、溶液のpH値が中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥して、炭素担持白金触媒を得た。
【0348】
試料の特性および試験
硫黄ドープ炭素担体について、XPS分析による硫黄含有重量は、0.76%であった。
【0349】
白金-炭素触媒の白金含有重量は、70.2%であった。
【0350】
白金-炭素触媒性能試験の結果を、表II-1に示す。
【0351】
【0352】
図II-12および
図II-15に示すように、本発明によらない硫黄ドープ炭素材料は、(分析によりチオフェン性硫黄の特徴的なピークと推定された)163evと166evとの間の特徴的なピークを含むだけでなく、酸化状態の硫黄も含んでいた。
【0353】
表II-1に示すように、実施例を比較例II-3と比較すると、硫黄-窒素ドープ導電性カーボンブラックは、白金-炭素触媒のECSAおよび重量比活性および安定性を著しく改善した。
【0354】
表II-1に示すように、実施例II-7と比較例II-4および比較例II-5とを比較すると、163evと166evとの間の特徴的なピークまたは単一のピロール性窒素を有する導電性カーボンブラックに比べ、163evと166evとの間の特徴的なピークおよび単一のピロール性窒素を有する導電性カーボンブラックは、白金-炭素触媒の総合的な性能、例えばその重量比活性および安定性を同時に改善することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0355】
【
図I-1】
図I-1は、実施例1の窒素ドープ炭素担体のXPSスペクトルを示す。
【
図I-2】
図I-2は、実施例3の窒素ドープ炭素担体のXPSスペクトルを示す。
【
図I-3】
図I-3は、実施例5の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【
図I-4】
図I-4は、実施例5の白金-炭素触媒の5000サイクル前後の分極曲線を示す。
【
図I-5】
図I-5は、実施例6の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【
図I-6】
図I-6は、実施例7の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【
図I-7】
図I-7は、実施例8の白金-炭素触媒のXPSスペクトルを示す。
【
図I-8】
図I-8は、比較例3の白金-炭素触媒の5000サイクル前後の分極曲線を示す。
【
図II-1】
図II-1は、実施例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-2】
図II-2は、実施例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【
図II-3】
図II-3は、実施例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-4】
図II-4は、実施例II-3の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-5】
図II-5は、実施例II-4の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-6】
図II-6は、実施例II-5の白金-炭素触媒のTEMパターンを示す。
【
図II-7】
図II-7は、実施例II-5の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【
図II-8】
図II-8は、実施例II-5の白金-炭素触媒中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-9】
図II-9は、実施例II-5の白金-炭素触媒中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【
図II-10】
図II-10は、実施例II-7の白金-炭素触媒中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-11】
図II-11は、実施例II-7の白金-炭素触媒中の窒素のXPSスペクトルを示す。
【
図II-12】
図II-12は、比較例II-1の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-13】
図II-13は、比較例II-1の白金-炭素触媒のTEMパターンを示す。
【
図II-14】
図II-14は、比較例II-1の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【
図II-15】
図II-15は、比較例II-2の硫黄-窒素ドープ炭素材料中の硫黄のXPSスペクトルを示す。
【
図II-16】
図II-16は、比較例II-3の白金-炭素触媒の分極曲線を示す。
【国際調査報告】