(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】画像表示装置用積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230912BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20230912BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230912BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230912BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230912BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230912BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230912BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230912BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230912BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20230912BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
B32B27/36
B32B7/12
C09J201/00
C09J11/08
C09J7/35
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514159
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020033339
(87)【国際公開番号】W WO2022049687
(87)【国際公開日】2022-03-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】502123975
【氏名又は名称】ヘレウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】紺野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】レーフェニッヒ ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲也
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
4F100
4J004
4J040
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149AB11
2H149BA02
2H149CA02
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2H291FA94Z
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2H291FB22
2H291GA23
2H291LA04
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2H291LA07
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
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4F100AH06A
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4J040LA01
4J040LA02
4J040LA10
5G435AA01
5G435AA16
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435KK07
(57)【要約】
画像表示装置用積層体は、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物より形成される粘着剤層と、前記粘着剤層の両面のうち一方の面に位置する画像表示素子と、前記粘着剤層の他方の面に位置する偏光フィルムとを少なくとも有し、前記粘着剤層の一方の面に、離型層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材を、前記粘着剤層と前記離型層とが隣接するように設け、かつ他方の面に前記偏光フィルムを設けた供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗値が1×1012Ω/□以下であり、前記保護材が剥離された供試材のヘイズ値が2%以下であり、かつ、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
y/x<10・・・(1)
(ここで、xは、前記供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。
また、yは、前記供試材を気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物より形成される粘着剤層と、
前記粘着剤層の両面のうち一方の面に位置する画像表示素子と、
前記粘着剤層の他方の面に位置する偏光フィルムと
を少なくとも有し、
前記粘着剤層の一方の面に、離型層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材を、前記粘着剤層と前記離型層とが隣接するように設け、かつ他方の面に前記偏光フィルムを設けた供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗値が1×10
12Ω/□以下であり、前記保護材が剥離された供試材のヘイズ値が2以下であり、かつ、下記式(1)を満たすことを特徴とする、画像表示装置用積層体。
y/x<10・・・(1)
(ここで、xは、前記供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。
また、yは、前記供試材を気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。)
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤(D)をさらに含有する、請求項1に記載の画像表示装置用積層体。
【請求項3】
前記粘着剤組成物は、両親媒性化合物である分散剤(E)をさらに含有し、
前記分散剤(E)は、3価以上の多価アルコールのエーテルもしくはエステル、またはオキシアルキレン鎖を有するノニオン化合物である、請求項1または2に記載の画像表示装置用積層体。
【請求項4】
前記供試材について、気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記供試材のヘイズ値が2以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置用積層体。
【請求項5】
前記偏光フィルムは、一方または両方の面にフィルム保護層を備え、
前記フィルム保護層が、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)によって構成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像表示装置用積層体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示装置用積層体を備えた、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置用積層体及び画像表示装置に関し、特に、表面抵抗値が低く、かつ、ヘイズの低い粘着剤層を備えた画像表示装置用積層体と、それを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置における光学部材の貼り合わせには粘着剤が用いられており、光学部材の貼り合わせに用いられる粘着剤は、画像表示素子から発せられる表示画像を構成する光に対して、透明であることが求められている。
【0003】
ここで、画像表示装置を構成する際に、粘着剤によって貼り合わせられる光学部材としては、偏光フィルム等の光学フィルムや、透明導電フィルム、ワイドビューフィルムなどが挙げられる。このうち、偏光フィルムは、二色性を有する色素をポリビニルアルコール等の高分子フィルムに吸着させ、延伸および配向させることによって作製される。そして、延伸および配向させた後の高分子フィルムの表面には、トリアセチルセルロース(TAC)やポリシクロオレフィン(COP)などからなる保護フィルムが設けられる。
【0004】
特許文献1には、液晶表示パネルの表面側に抵抗膜方式のタッチパネルが一体化されたタッチパネル付き液晶表示装置が記載されており、トリアセチルセルロース(TAC)からなる一対の保護層の間に偏光フィルム(偏光層)が挟まれて構成された液晶表示パネルの偏光板に、酸化インジウムスズ(ITO)等からなる透明導電膜を形成してタッチパネルの可撓電極として用いる画像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、画像表示装置における画像表示に異常を生じさせないために、光学部材を構成する各種部材への静電気の蓄積を起こり難くすることが求められている。特に、光学部材の貼り合わせに用いられる粘着剤層に静電気を蓄積させないために、粘着剤層の導電性を高めることが求められている。
【0007】
ここで、粘着剤層の導電性を高める方法として、粘着剤に導電性高分子等の導電材を配合する方法が考えられる。しかしながら、粘着剤に導電材を配合する方法では、粘着剤層の導電性が高められる代わりに、粘着剤層のヘイズが大きくなって光線透過率が低下していた。そのため、粘着層の表面抵抗率を低くして帯電防止性能をさらに高めながら、画像表示装置における光線透過率をより高めることが求められている。
【0008】
さらに、近年、画像表示装置は、様々な用途や環境下で用いられるようになっており、例えば室温の環境下に限られず、高温多湿などの過酷な環境下においても用いられることも多い。ここで、高温多湿の環境としては、例えば、熱帯地域や車両の内部、屋外に設けられる機器の内部が挙げられる。そのため、このような過酷な環境下においても用いることが可能な画像表示装置に用いられる積層体が求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてされたものであり、低抵抗値と低ヘイズとを両立し、かつ高温多湿の環境下でも用いることが可能な画像表示装置用積層体及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成したときに、表面抵抗値およびヘイズ値が小さく、かつ高温多湿の環境下でも表面抵抗値の低下が起こり難くなり、それにより上記目的を達成できることを見出した。
【0011】
(1)本発明の第1の発明は、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物より形成される粘着剤層と、前記粘着剤層の両面のうち一方の面に位置する画像表示素子と、前記粘着剤層の他方の面に位置する偏光フィルムとを少なくとも有し、前記粘着剤層の一方の面に、離型層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材を、前記粘着剤層と前記離型層とが隣接するように設け、かつ他方の面に前記偏光フィルムを設けた供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗値が1×1012Ω/□以下であり、前記保護材が剥離された供試材のヘイズ値が2%以下であり、かつ、下記式(1)を満たすことを特徴とする、画像表示装置用積層体である。
y/x<10・・・(1)
(ここで、xは、前記供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。また、yは、前記供試材を気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。)
【0012】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤(D)をさらに含有する、画像表示装置用積層体である。
【0013】
(3)本発明の第3の発明は、第1から第2の発明のいずれかにおいて、前記粘着剤組成物は、両親媒性化合物である分散剤(E)をさらに含有し、前記分散剤(E)は、3価以上の多価アルコールのエーテルもしくはエステル、またはオキシアルキレン鎖を有するノニオン化合物である、画像表示装置用積層体である。
【0014】
(4)本発明の第4の発明は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記供試材について、気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記供試材のヘイズ値が2%以下である、画像表示装置用積層体である。
【0015】
(5)本発明の第5の発明は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記偏光フィルムは、一方または両方の面にフィルム保護層を備え、前記フィルム保護層が、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)によって構成される、画像表示装置用積層体である。
【0016】
(6)本発明の第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかにおける画像表示装置用積層体を備えた、画像表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低抵抗値と低ヘイズとを両立し、かつ高温多湿の環境下でも用いることが可能な画像表示装置用積層体及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に従う画像表示装置用積層体の構造を示した断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に従う画像表示装置用積層体における、粘着剤層の評価に用いられる供試材の構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0020】
≪画像表示装置用積層体について≫
本発明の画像表示装置用積層体は、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物より形成される粘着剤層と、前記粘着剤層の両面のうち一方の面に位置する画像表示素子と、前記粘着剤層の他方の面に位置する偏光フィルムとを少なくとも有し、前記粘着剤層の一方の面に、離型層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材を、前記粘着剤層と前記離型層とが隣接するように設け、かつ他方の面に前記偏光フィルムを設けた供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗値が1×1012Ω/□以下であり、前記保護材が剥離された供試材のヘイズ値が2%以下であり、かつ、下記式(1)を満たすものである。
y/x<10・・・(1)
(ここで、xは、前記供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。
また、yは、前記供試材を気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で前記保護材を剥離した際の、前記粘着剤層の表面抵抗率である。)
【0021】
本発明の画像表示装置用積層体では、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物によって形成される粘着剤層を用いることで、粘着剤層における表面抵抗値およびヘイズ値が小さくなり、かつ高温多湿の条件においても粘着剤層の表面抵抗値の低下が起こり難くなる。そのため、低抵抗値と低ヘイズとを両立し、かつ高温多湿の環境下でも用いることが可能な画像表示装置用積層体及び画像表示装置を得ることができる。
【0022】
ここで、本発明の画像表示装置用積層体10は、
図1に示すように、粘着剤層11と、粘着剤層11の両面のうち一方の面に位置する画像表示素子12と、粘着剤層11の他方の面に位置する偏光フィルム13とを少なくとも有する。
【0023】
<粘着剤層>
粘着剤層11は、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物より形成される。これにより、高い導電性を有するとともに、粘着性高分子(A)が架橋されて機械的強度の高い層が形成されるため、画像表示素子および偏光フィルムを強固に固定することができる。特に、本発明の画像表示装置用積層体10では、粘着剤層11が高い耐湿性を有するため、高温多湿の環境下においても、偏光フィルムや画像表示素子の剥がれを起こり難くすることができる。
【0024】
粘着剤層11を形成する粘着剤組成物としては、粘着性高分子(A)と、共役系高分子およびポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)とを含有する組成物を用いることができる。なお、粘着剤層11を形成する粘着剤組成物の詳細については、後述する。
【0025】
粘着剤層11は、
図2に示すような、一方の面に、離型層21aを有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材21を、粘着剤層11と離型層21aとが隣接するように設け、かつ他方の面に偏光フィルム13を設けた供試材20について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材21を剥離した際の表面抵抗値が、1×10
12Ω/□以下の範囲であり、1×10
11Ω/□以下の範囲が好ましく、1×10
10Ω/□以下の範囲がより好ましい。これにより、粘着剤層11に高い帯電防止性が付与されるため、画像表示装置において表示される画像に異常を生じ難くすることができる。
【0026】
また、粘着剤層11は、一方の面に、離型層21aを有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材21を、粘着剤層11と離型層21aとが隣接するように設け、かつ他方の面に偏光フィルム13を設けた供試材20について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材21を剥離した際のヘイズ値(すなわち、粘着剤層11が貼り付けられた偏光フィルム13のヘイズ値)が、2%以下の範囲であり、1%以下の範囲であることが好ましい。これにより、粘着剤層11の透明性が高められるため、有機EL素子や液晶表示素子を用いた画像表示装置の用途にも、粘着剤層11を好ましく用いることができる。なお、粘着剤層11におけるヘイズ値(曇り度)は、全光線透過率をTtとし、拡散透過率をTdとした場合、(Td/Tt)×100(%)によって求められる値である。
【0027】
また、粘着剤層11は、一方の面に、離型層21aを有するポリエチレンテレフタレート(PET)からなる保護材21を、粘着剤層11と離型層21aとが隣接するように設け、かつ他方の面に偏光フィルム13を設けた供試材20について、気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材21を剥離した際の、供試材20のヘイズ値(すなわち、粘着剤層11が貼り付けられた偏光フィルム13のヘイズ値)が3%以下の範囲であることが好ましく、2%以下の範囲であることがより好ましい。これにより、60℃までの高温や、相対湿度90%までの高湿度の環境下においても、特に粘着剤層11が高い透明性を維持することができるため、高温多湿などの過酷な環境下においても、画像表示装置において表示される画像への曇りを生じ難くすることができる。
【0028】
また、粘着剤層11は、光線透過率が高いものであることが好ましい。特に、粘着剤層11が貼り付けられた偏光フィルム13の全光線透過率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、90%以上がさらに好ましい。このように、粘着剤層11が貼り付けられた偏光フィルム13の全光線透過率を高めることで、画像表示装置用積層体1の全体の光線透過率も高められるため、画像表示装置における用途に画像表示装置用積層体1を好ましく用いることができる。
【0029】
また、粘着剤層11は、下記式(1)を満たすものである。
y/x<10・・・(1)
ここで、xは、供試材20について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材21を剥離した際の、粘着剤層11の表面抵抗率である。また、yは、供試材20を、気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材21を剥離した際の、粘着剤層11の表面抵抗率である。粘着剤層11が上記式(1)の関係を満たすことで、気温23℃、相対湿度50%の常温環境下のみならず、60℃までの高温や、相対湿度90%までの高湿度の環境下においても、粘着剤層11の表面抵抗率の変動が小さくなる。そのため、高温多湿などの過酷な環境下においても、画像表示装置において表示される画像に、異常を生じ難くすることができる。特に、上記式(1)で表されるy/xの値は、8未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
【0030】
粘着剤層11の膜厚は、後述する粘着剤組成物の種類に応じて設定され、例えば0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上の膜厚を有する。他方で、この粘着剤層11は、例えば100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下の膜厚を有する。
【0031】
<画像表示素子>
画像表示素子12は、粘着剤層11の両面のうち一方の面に位置する素子である。ここで、画像表示素子12としては、粘着剤層11と接する面から光を発して画像を表示する素子が挙げられ、その一例として有機EL素子や液晶表示素子が挙げられる。本発明の画像表示装置用積層体10では、画像表示素子12から発せられる光が、粘着剤層11および偏光フィルム13を透過するように構成される。
【0032】
ここで、画像表示素子12のうち粘着剤層11と接する表面の材質は、粘着剤層11に対して粘着性を有する材料からなり、例えばガラス板が挙げられる。ガラス板を用いることにより、粘着剤層11を介して偏光フィルムを強固に固定することができる。
【0033】
<偏光フィルム>
偏光フィルム13は、粘着剤層11の他方の面に位置する光学部材である。すなわち、偏光フィルム13は、粘着剤層11の両面のうち一方の面に隣接して画像表示素子12が設けられるとき、粘着剤層11の他方の面に隣接して設けられる。これにより、画像表示素子12と偏光フィルム13が、粘着剤層11によって固定される。
【0034】
偏光フィルム13は、一方または両方の面にフィルム保護層を備えることが好ましい。特に、偏光フィルム13は、
図2に示すように、偏光子14の両面にフィルム保護層15a、15bが形成されることがより好ましい。これにより、偏光フィルム13のうち、特に損傷しやすい偏光子14を、適切に保護することができる。
【0035】
このうち、偏光子14は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子14としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子14が好適である。
【0036】
偏光子14の厚さは、特に制限されないが、偏光フィルム13に粘着剤層11を形成したときのヘイズ値を大きくしない観点では、50μm以下であることが好ましい。
【0037】
偏光子14の偏光度も、特に制限されないが、画像表示素子12によって表示される画像を高精彩に表示するとともに、ヘイズ値を大きくしない観点では、90%以上であることが好ましい。
【0038】
他方で、フィルム保護層15a、15bは、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂によって構成される。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、シクロオレフィンポリマー(COP)等の環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。その中でも、粘着剤層11に隣接するフィルム保護層15bの構成材料としては、粘着剤層11に対する粘着性の観点から、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはトリアセテートセルロース(TAC)によって構成されることが好ましい。特に、フィルム保護層15bの構成材料としては、粘着剤層11の導電性高分子(B)に含まれる酸に対する耐久性を高めることで、画像表示装置用積層体10の耐久性を高める観点や、高温多湿の環境下における粘着剤層11の導電性の低下を起こり難くする観点では、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはトリアセテートセルロース(TAC)によって構成されることが好ましい。
【0039】
本発明で用いられる偏光フィルム13は、優れたガスバリア性、特に水蒸気バリア性を有することが好ましい。より具体的には、本発明の偏光フィルム13は、透湿度が1500.0g/m2・24h以下であることが好ましく、1000.0g/m2・24h以下であることがより好ましく、500.0g/m2・24h以下であることがさらに好ましく、300.0g/m2・24h以下であることがさらに好ましい。これにより、粘着剤層11に水蒸気が届き難くなるため、高温多湿の環境下における偏光フィルム13や画像表示素子12の粘着剤層11からの剥離を、より一層起こり難くすることができる。なお、本明細書における透湿度は、JIS Z0208に基づいて測定される、気温40℃、相対湿度90%の環境下における透湿度(水蒸気透過率)である。
【0040】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置用積層体1は、画像表示装置に好ましく用いることができる。すなわち、上述の画像表示装置用積層体1を備えた、画像表示装置を構成することが好ましい。ここで、画像表示装置としては、画像表示素子12によって発せられる光を用いて画像を表示する装置を挙げることができ、より具体的には、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を挙げることができる。
【0041】
また、画像表示装置には、画像表示装置用積層体の他に、他の光学部材を備えてもよい。そのような光学部材としては、板、シート又はフィルム等の形状を有する部材が挙げられ、一例として、バックライト、拡散層、アンチグレア層、反射防止膜、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散シート、位相差板、楕円偏光板、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム及び表面保護フィルムなどが挙げられる。
【0042】
≪粘着剤組成物について≫
本発明の画像表示装置用積層体10の粘着剤層11は、粘着性高分子(A)と、共役系高分子及びポリアニオンを含む導電性高分子(B)と、架橋剤(C)を含有する粘着剤組成物より形成される。この粘着剤組成物は、シランカップリング剤(D)と、両親媒性化合物である分散剤(E)とをさらに含有することが好ましい。
【0043】
なお、本明細書における「溶液」は、分散液も含む概念であり、溶媒又は分散媒に溶解又は分散している状態を指す。
【0044】
<粘着性高分子(A)>
本発明の粘着剤組成物に用いられる粘着性高分子(A)は、少なくとも使用温度において粘着性を有する高分子であり、室温で粘着性を有することが好ましい。粘着性高分子は、(メタ)アクリル系の単位構造を繰り返してなるものであることが好ましく、共重合体であってもよい。このような粘着性高分子を用いることで、粘着剤組成物の粘着物性を好適に調整することができる。ここで、本明細書での(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0045】
ここで、(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性不飽和結合を有するモノマーの重合によって形成されるものを用いることができる。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位((メタ)アクリル酸エステル成分単位)を、単量体換算で50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上の量で有している。(メタ)アクリル系ポリマーの具体例としては、アクリル酸n-ブチル/アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合体、アクリル酸n-ブチル/アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル/アクリル酸の共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル/アクリル酸の共重合体、アクリル酸2-メトキシエチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル/アクリル酸の共重合体、アクリル酸2-メトキシエチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル/アクリルアミドの共重合体を例示することができる。
【0046】
(メタ)アクリル系ポリマーの繰り返し単位を誘導する(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~20のアルキル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数3~14の脂環族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数6~14の芳香族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルを用いることができる。
【0047】
ここで、炭素数1~20のアルキル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルを例示することができる。炭素数3以上のアルキル基については、直鎖構造であっても分岐構造を有していてもよい。
【0048】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、炭素数4以上のアルキル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルを用いることが好ましい。また、粘着性高分子を構成する繰り返し単位のうち、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の割合を、50質量%以上とすることが好ましく、65質量%以上とすることがより好ましく、80質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0049】
他方で、炭素数3~14の脂環族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルを例示することができ、炭素数6~14の芳香族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0050】
また、(メタ)アクリル系ポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよい。このような単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩、エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物及び酸無水物、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類を例示することができる。上記単量体は単独であるいは組み合わせて、(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
【0051】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、室温下で粘着性を付与する観点から、50,000以上2,000,000以下、さらに好ましくは200,000以上1,800,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると、得られる粘着剤層の耐熱性能が著しく低下することがあり、重量平均分子量が2,000,000を超えると、均一な流延が困難になることがある。ここで、(メタ)アクリル系ポリマーをはじめ、粘着性高分子の重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって求めることができる。
【0052】
また、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、同様に室温下で粘着性を付与する観点から、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-40℃以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは-50℃以下である。他方で、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の下限は、特に限定されないが、-85℃としてもよい。
【0053】
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、当該ポリマーを構成するモノマー単位からなるホモポリマーのガラス転移温度(Tg1~Tgm)と、それらの含有割合(W1~Wm)とから、Foxの式により算定することができる。
Foxの式:1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
前記Foxの式における、各モノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度(Tg1~Tgm)は、例えば、Polymer Handbook Fourth Edition(Wiley-Interscience社、2003年)に記載の値を用いることができる。
【0054】
また、(メタ)アクリル系ポリマーにはヒドロキシル基が含まれる場合があるが、本発明における導電性高分子との混合性の観点から、当該ポリマーの水酸基価としては150mgKOH/g以下、好ましくは75mgKOH/g以下、さらに好ましくは40mgKOH/g以下である。ここで、ポリマーの水酸基価は、例えばJIS K 0070-1992で規定される中和滴定法により測定することができる。
【0055】
なお、本発明における粘着剤組成物では、粘着性高分子を、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0056】
また、粘着性高分子は、粘着剤組成物の作製を容易にするため、後述する溶媒又は分散媒(F)に溶解又は分散した状態で、粘着剤組成物の作製に用いてもよい。
【0057】
<導電性高分子(B)>
本発明の粘着剤組成物に含まれる導電性高分子(B)は、共役系高分子(B1)及びポリアニオン(B2)を含むものである。導電性高分子(B)は、酸化剤(B3)を含んでもよい。より具体的には、導電性高分子(B)は、少なくともポリアニオン(B2)の存在下で、モノマーを酸化的に重合して共役系高分子(B1)を形成することで、得られるものであり、その一例として、共役系高分子(B1)とポリアニオン(B2)の錯体を挙げることができる。
【0058】
本発明の粘着剤組成物における導電性高分子(B)の濃度は、粘着性高分子(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上とする。導電性高分子(B)の濃度を0.01質量部以上にすることで、粘着剤組成物から粘着層を形成させたときに、粘着層の表面抵抗率を下げることができるため、粘着層を剥離させたときの静電気の発生を抑えることができる。他方で、導電性高分子(B)の濃度は、粘着性高分子(A)100質量部に対して、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下とする。導電性高分子(B)の濃度を20.0質量部以下にすることで、粘着剤組成物の混合安定性を高めて粘着剤組成物への凝集沈殿物の形成を低減させることができ、且つ、粘着層における光線透過率を高めてヘイズ値を小さくすることができる。
【0059】
[共役系高分子(B1)]
導電性高分子(B)に含まれる共役系高分子(B1)としては、π電子共役系の高分子が好ましく、電気伝導性ポリマーとして存在するポリチオフェンを含むことがより好ましい。
【0060】
ポリチオフェンは、好ましくは、一般式(I)の繰り返し単位を含む。
【化1】
ここで、一般式(I)におけるR
4及びR
5は、互いに独立に、各々、H、置換されていてもよいC
1-C
18アルキルラジカル又は置換されていてもよいC
1-C
18アルコキシラジカルを表し、R
4及びR
5は一緒に、置換されていてもよいC
1-C
8アルキレンラジカル(この置換されていてもよいC
1-C
8アルキレンラジカルにおいて、1以上のC原子は、O若しくはSから選択される1以上の同一の若しくは異なるヘテロ原子によって置き換えられてもよく、好ましくはC
1-C
8ジオキシアルキレンラジカルである)、置換されていてもよいC
1-C
8オキシチアアルキレンラジカル、又は置換されていてもよいC
1-C
8ジチアアルキレンラジカル、又は置換されていてもよいC
1-C
8アルキリデンラジカル(この置換されていてもよいC
1-C
8アルキリデンラジカルにおいて、少なくとも1つのC原子は、O若しくはSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられてもよい)を表す。
【0061】
より好ましくは、一般式(I-a)及び/又は(I-b)の繰り返し単位を含むポリチオフェンである。
【化2】
ここで、一般式(I-a)及び一般式(I-b)のうち、
Aは、置換されていてもよいC
1-C
5アルキレンラジカル、好ましくは置換されていてもよいC
2-C
3アルキレンラジカルを表し、
YはO又はSを表し、
R
6は、直鎖状若しくは分枝状の、置換されていてもよいC
1-C
18アルキルラジカル、好ましくは直鎖状若しくは分枝状の、置換されていてもよいC
1-C
14アルキルラジカル、置換されていてもよいC
5-C
12シクロアルキルラジカル、置換されていてもよいC
6-C
14アリールラジカル、置換されていてもよいC
7-C
18アラルキルラジカル、置換されていてもよいC
7-C
18アルカリールラジカル、置換されていてもよいC
1-C
4ヒドロキシアルキルラジカル、又はヒドロキシルラジカルを表し、
yは、0~8の整数、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは0又は1を表し、
複数のラジカルR
6がAに結合されている場合、それらは、同じであってもよいし又は異なってもよい。
【0062】
ここで、一般式(I-a)は、置換基R6が、アルキレンラジカルAにy個結合されていてもよいと理解されるべきである。
【0063】
さらに好ましくは、一般式(I)の繰り返し単位を含むポリチオフェンは、一般式(I-aa)及び/又は一般式(I-ab)の繰り返し単位を含むポリチオフェンである。
【化3】
ここで、一般式(I-aa)及び一般式(I-ab)におけるR
6及びyは、上述の一般式(I-a)及び一般式(I-b)で説明したとおりである。
【0064】
最も好ましくは、一般式(I)の繰り返し単位を含むポリチオフェンは、一般式(I-aaa)及び/又は一般式(I-aba)のポリチオフェンを含むポリチオフェンである。
【化4】
【0065】
本明細書において、接頭辞「ポリ」は、複数の同一の又は異なる繰り返し単位が当該ポリチオフェンの中に含まれるということを意味すると理解されたい。このポリチオフェンは、合計n個の、一般式(I)の繰り返し単位を含み、nは2~2,000、好ましくは2~100の整数であることができる。ポリチオフェン内の一般式(I)の繰り返し単位は、いずれも同一であってもよいし又は異なってもよい。いずれも同一の一般式(I)の繰り返し単位を含むポリチオフェンが好ましい。
【0066】
共役系高分子(B1)の末端基は、各々Hを有することが好ましい。
【0067】
共役系高分子(B1)としては、特に好ましくは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンオキシチアチオフェン)又はポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、すなわち、Y=Sである式(I-aaa)、(I-aba)又は(I-b)の繰り返し単位を含むホモポリチオフェンであり、その中でも、(I-aaa)の繰り返し単位を含むホモポリマー(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))が最も好ましい。
【0068】
また、共役系高分子(B1)はカチオン性であり、「カチオン性」は、当該ポリチオフェン主鎖上に存在する電荷のみに関する。ラジカルR4及びR5の置換基に応じて、上記ポリチオフェンは、構造単位に正電荷及び負電荷を有していてもよく、この場合この正電荷はポリチオフェン主鎖上に存在し、負電荷は、スルホネート又はカルボキシレート基によって置換されたラジカルR上に存在してもよい。その場合、このポリチオフェン主鎖の正電荷は、ラジカルR上に存在してもよいアニオン性基によって一部又は完全に飽和していてもよい。全体で見ると、これらの場合のポリチオフェンは、カチオン性であってもよく、電荷を帯びていなくてもよく、又はアニオン性でさえあってもよい。とはいうものの、本発明に関しては、それらはすべてカチオン性ポリチオフェンと考えられる。なぜなら、このポリチオフェン主鎖上の正電荷が重要だからである。正電荷は式には示されていない。なぜなら、その正電荷は共役して非局在化しているからである。正電荷の数は、しかしながら、少なくとも1であり且つ多くともnである(ここでnはこのポリチオフェン内の(同一の又は異なる)すべての繰り返し単位の総数である)。
【0069】
共役系高分子(B1)の基となるチオフェンモノマーとしては、置換されていてもよい3,4-アルキレンジオキシチオフェンを用いることができ、例として、一般式(II)によって表すことができる。
【化5】
ここで、一般式(II)における、A、R
6及びyは、式(I-a)で説明した意味を有する。特に、複数のラジカルR
6がAに結合されている場合、それらは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0070】
より好ましいチオフェンモノマーとしては、置換されていてもよい3,4-エチレンジオキシチオフェンを用いることができ、最も好ましくは、非置換3,4-エチレンジオキシチオフェンを用いることができる。
【0071】
[ポリアニオン(B2)]
導電性高分子にドーパントとして含まれるポリアニオン(B2)としては、ホモポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の構造を有するものが挙げられ、その中でも、ブロック共重合体構造を有するものを用いることが好ましい。また、ポリアニオン(B2)としては、一分子中にアニオンを複数有するものを用いることができ、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホン酸を分子中に有する(メタ)アクリル酸エステル等のホモポリマー、あるいはそれらの共重合体のように、少なくとも部分的にスルホン化されたポリマーが挙げられる。中でも、少なくとも部分的にスルホン化されたブロック共重合体を用いることが好ましい。また、水添又は未水添のジエン構造を有するものを用いることが好ましく、例えばスルホン化合成ゴムを用いることができる。スルホン化合成ゴムは、少なくとも部分的にスルホン化された、スチレン単位とジエン単位とを有するブロックコポリマーである。このようなブロック共重合体構造を有するポリアニオン(B2)を用いることで、導電性高分子が有機溶剤に溶解又は分散しやすくなる。このため、粘着層の透明性を維持しつつ、粘着層の表面抵抗率を低減させることができ、粘着剤組成物から形成される粘着層を剥離した際の静電気の発生を低減させることができる。
【0072】
本明細書において、用語「スルホン化」は、関与するスチレン単位及び/又はジエン単位において、好ましくは水素化されていてもよいブタジエン又はイソプレン単位において、これらの単位の少なくとも1つのC原子に硫黄原子を介して-SO3X基が結合されている(Xは、H+、NH4
+、Na+、K+又はLi+からなる群から選択されることが好ましい)ことを意味すると理解される。-SO3X基が、ほぼすべて、スチレン単位に結合されており、従ってスルホン化スチレン単位が存在する場合が特に好ましい。
【0073】
また、本明細書において、用語「水素化された、部分的にアルキル置換されていてもよいスチレン-ジエンブロックコポリマー」又は「水素化された、スチレン-イソプレンブロックコポリマー」は、それぞれ、ジエン単位の二重結合は水素化すなわち水添されているが、スチレン単位の芳香環系は水素化すなわち水添されていないブロックコポリマーを意味すると理解される。さらに、用語「スチレン-ジエンブロックコポリマー」は、少なくともスチレン及びジエンモノマー単位を含むポリマーを意味すると理解され、従って、さらなるコモノマーの存在は排除されない。
【0074】
また、本明細書において、用語「アルキル置換されたスチレン-ジエンブロックコポリマー」は、スチレン単位がアルキル置換されているブロックコポリマーを意味すると理解され、この場合、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基がアルキル置換基として考慮される。
【0075】
ここで、「スルホン化スチレン単位」は、好ましくは、単位(III)を意味すると理解される。
【化6】
【0076】
また、「スルホン化ブタジエン単位」は、好ましくは、例えば単位(IV)を意味すると理解される。
【化7】
【0077】
単位(III)及び(IV)に示される酸の代わりに、そのスルホネート基は、塩の形態で、例えばアンモニウム塩又はアルカリ塩の形態で、特にNa+、K+又はLi+の塩の形態で結合されていてもよい。
【0078】
好ましくは、導電性高分子にスルホン化合成ゴムとして含まれる水素化されているか又は水素化されていない、部分的にアルキル置換されていてもよいスチレン-ジエンコポリマーは、好ましくは、スチレン-ジエンコポリマー(これは、任意に、水素化されていてもよい)をスルホン化することにより得ることができる。
【0079】
当該水素化されているか又は水素化されていない、部分的にアルキル置換されていてもよいスチレン-ジエンコポリマーは、基本的に、スチレン-ジエンブロックコポリマーである。本発明に関する「ブロック」は、好ましくは、互いに連続する少なくとも2、好ましくは少なくとも4、さらにより好ましくは少なくとも6、さらにより好ましくは少なくとも8、最も好ましくは少なくとも10の同一のモノマー単位からなるポリマー単位であると理解される。
【0080】
従って、この水素化されているか又は水素化されていないブロックコポリマーは、スチレン単位だけがブロック的に存在するコポリマー、ジエン単位(若しくはジエン単位の水素化された形態)だけがブロック的に存在するコポリマー、又はジエン単位(若しくはジエン単位の水素化された形態)及びスチレン単位の両方がブロック的に存在するコポリマーであってもよい。例えばモノマー状のスチレン単位及びジエン単位(若しくはジエン単位の水素化された形態)に加えてスチレンブロックが存在する水素化されているか若しくは水素化されていないブロックコポリマー、モノマー状のスチレン単位及びジエン単位(若しくはジエン単位の水素化された形態)に加えてジエンブロック(若しくはジエン単位の水素化された形態のブロック)が存在する水素化されているか若しくは水素化されていないブロックコポリマー、モノマー状のジエン単位(若しくはジエン単位の水素化された形態)に加えてスチレンブロック及びジエンブロック(若しくはジエン単位の水素化された形態のブロック)が存在する水素化されているか若しくは水素化されていないブロックコポリマー、モノマー状のスチレン単位に加えてスチレンブロック及びジエンブロック(若しくはジエン単位の水素化された形態のブロック)が存在する水素化されているか若しくは水素化されていないブロックコポリマー、又はモノマー状のジエン単位(若しくはジエン単位の水素化された形態)及びモノマー状のスチレン単位に加えてスチレンブロック及びジエンブロック(若しくはジエン単位の水素化された形態のブロック)が存在する水素化されているか若しくは水素化されていないブロックコポリマーも想定される。
【0081】
特定の実施形態によれば、スルホン化合成ゴムは、ブロックAがスルホン化ポリスチレンブロックに対応し、ブロックBが水素化されているか又は水素化されていない、しかしながら好ましくは水素化されたポリイソプレンブロック(完全水素化ポリイソプレンブロックは、化学的には、交互共重合したエチレン-プロピレン単位のブロックに対応する)に対応する構造A-B-Aを持つ、水素化されているか又は水素化されていない、好ましくは水素化されたスチレン-イソプレンブロックコポリマーを含む。ブロックA及びBの長さは、好ましくは少なくとも5モノマー単位、特に好ましくは少なくとも10単位、最も好ましくは少なくとも20単位である。
【0082】
別の特定の実施形態によれば、スルホン化合成ゴムは、ブロックAがtert-ブチル基で少なくとも部分的に置換されているポリスチレンブロックに対応し、ブロックBが水素化されているか又は水素化されていない、しかしながら好ましくは水素化されたポリイソプレンブロック(完全水素化ポリイソプレンブロックは、化学的には、交互共重合したエチレン-プロピレン単位のブロックに対応する)に対応し、ブロックCがスルホン化ポリスチレンブロックに対応する構造A-B-C-B-Aを持つ、水素化されているか又は水素化されていない、好ましくは水素化されたスチレン-イソプレンブロックコポリマーを含む。ブロックA、B及びCの長さは、好ましくは少なくとも5モノマー単位、特に好ましくは少なくとも10単位、最も好ましくは少なくとも20単位である。このようなコポリマーは、例えば、米国、ヒューストンのKraton Polymers社から、製品名NEXAR(登録商標)で入手することができる。
【0083】
スルホン化のために使用される水素化されているか若しくは水素化されていないスチレン-ジエンブロックコポリマーにおける、ジエン単位に対するスチレン単位の質量比に関しては、基本的には限定はない。例えば、当該ブロックコポリマーは、5~95質量%、特に好ましくは15~80質量%、最も好ましくは25~65質量%の重合したスチレンと、95~5質量%、好ましくは80~15質量%、最も好ましくは65~25質量%の重合した水素化されていてもよいジエンに基づくことができ、このとき、水素化されていてもよいジエン及びスチレンの総量は、好ましくは100質量%である。しかしながら、このスチレン単位及び水素化されていてもよいジエン単位に加えてさらなるモノマー単位が当該ブロックコポリマーの中に存在する場合には、この総量は、合計して100質量%になる必要はない。
【0084】
このスルホン化合成ゴムは、1000~10,000,000g/molの範囲、特に好ましくは10,000~1,000,000g/molの範囲、最も好ましくは100,000~1,000,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有することがさらに好ましい。この分子量は、明確な分子量を持つポリマーを使用して、特に水非混和性の溶媒又は分散媒の場合にはポリスチレンを使用し、又は、水混和性の溶媒又は分散媒の場合にはポリスチレンスルホン酸を使用して、ゲル透過クロマトグラフィによって決定される。
【0085】
導電性高分子(B)における共役系高分子(B1)とポリアニオン(B2)との質量比(共役系高分子:ポリアニオン)は、好ましくは1:0.1~1:100の範囲、より好ましくは1:0.2~1:20の範囲、さらに好ましくは1:0.5~1:10の範囲にある。
【0086】
[酸化剤(B3)]
導電性高分子(B)には、酸化剤(B3)やその反応物が含まれていてもよい。スルホン化合成ゴムの存在下でのチオフェンモノマーの重合反応は、酸化剤(B3)を用いることで酸化的に行われるからである。
【0087】
酸化剤(B3)としては、例えばtert-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジイソブチリルペルオキシド、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジデカノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミルペルオキシド等の有機過酸化物を、酸化剤として用いることができる。例えば2,2’-アゾジイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物や、過硫酸アンモニウム等の無機の酸化剤も使用することができる。
【0088】
また、酸化剤(B3)としては、実務面の理由から、安価で取扱いが容易な酸化剤を用いてもよい。その一例としては、例えばFe2(SO4)3、FeCl3、Fe(ClO4)3等の鉄(III)塩、並びに有機酸の鉄(III)塩及び有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩が挙げられる。C1-C20アルカノールの硫酸ヘミエステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸のFe(III)塩が、有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩の例として挙げられる。以下のものが、有機酸の鉄(III)塩の例として挙げられる:C1-C20アルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸及びドデカンスルホン酸、のFe(III)塩;脂肪族C1-C20カルボン酸、例えば2-エチルヘキシルカルボン酸、のFe(III)塩;脂肪族ペルフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びペルフルオロオクタン酸、のFe(III)塩;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸、のFe(III)塩;並びにとりわけ、C1-C20アルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸、のFe(III)塩。有機酸の鉄(III)塩は、それらが有機溶剤に、特に水非混和性の有機溶剤に部分的に又は完全に可溶であるという応用面での大きな長所を有する。
【0089】
<架橋剤(C)>
本発明における粘着剤組成物は、架橋剤(C)を含有する。これにより、少なくとも粘着性高分子(A)を架橋して高熱耐久性および湿熱耐久性に優れた粘着剤層を形成するとともに、その両面に位置する画像表示素子および偏光フィルムを強固に固定することができる。
【0090】
架橋剤(C)としては、例えばイソシアネート化合物や、エポキシ化合物、金属キレート化合物のように、粘着性高分子(A)に含まれる架橋性基と反応し得るものを用いることができる。架橋剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
このうち、イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が通常用いられ、好ましくは2~8である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、粘着性高分子(A)との架橋反応の効率を高める点や、粘着剤層の柔軟性を保つ点で好ましい。
【0092】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。このうち、脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。また、脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0093】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0094】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ、高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0095】
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。このようなイソシアネート化合物としては、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体が、東ソー株式会社から、製品名コロネートLで入手することができる。
【0096】
本発明における粘着剤組成物は、架橋剤(C)を、粘着性高分子(A)100質量部に対して、0.01~10質量部含有する。下限値としては、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上である。上限値としては、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下である。架橋剤(C)の含有量は、少なすぎると適切な架橋を達成することができず、多すぎると粘着力が発現しにくくなる。
【0097】
<シランカップリング剤(D)>
本発明における粘着剤組成物は、さらにシランカップリング剤(D)を含有することが好ましい。シランカップリング剤(D)は、粘着性高分子(A)と組み合わせることで、高温多湿の環境下における偏光フィルムや画像表示素子の剥がれを起こり難くする成分である。特に、画像表示素子の表面がガラス基板等の無機化合物からなる場合であっても、粘着剤層を被着体に対して強固に接着させる作用をもたらす成分である。
【0098】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤が挙げられる。特に、応力緩和性等の観点で、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0099】
本発明における粘着剤組成物における、シランカップリング剤(D)の含有量は、粘着性高分子(A)100質量部に対して、通常1質量部以下、好ましくは0.01~0.8質量部、より好ましくは0.05~0.5質量部である。シランカップリング剤(D)の含有量をこの範囲内にすることで、高温多湿の環境下における偏光板の剥がれを起こり難くし、また、高温環境下におけるシランカップリング剤(D)のブリードを起こり難くすることができる。
【0100】
<分散剤(E)>
本発明における粘着剤組成物は、両親媒性化合物である分散剤(E)をさらに含有することが好ましい。分散剤(E)として、このような両親媒性化合物を含有することで、より低い表面抵抗率を安定して粘着剤層にもたらすことができ、また、粘着剤層のヘイズ値を低減させて光線透過率を高めることができる。
【0101】
分散剤(E)である両親媒性化合物としては、水系の溶剤(溶媒又は分散媒)と非水系の溶剤の両方に対して高い親和性を有する化合物が挙げられ、分子内に親水基と疎水基を有する非イオン性の化合物が好ましい。
【0102】
このうち、非イオン性の両親媒性化合物としては、3価以上の多価アルコールのエーテル若しくはエステル、又はオキシアルキレン鎖を有するノニオン化合物が好ましい。その中でも、3価以上の多価アルコールのエステルがより好ましく、3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルであり且つポリオキシアルキレン構造を有しない化合物がさらに好ましい。特に、3価以上の多価アルコールのエステルを用いることで、基材の種類による表面抵抗率や帯電防止性への影響を軽減することができる。
【0103】
その中でも、3価以上の多価アルコールのエーテル及びエステルは、分子中に、水酸基やエーテル結合、エステル結合を、合計で3個以上有する化合物である。また、オキシアルキレン鎖を有するノニオン化合物としては、オキシエチレンやオキシプロピレンを繰り返し構造単位とする化合物が挙げられ、オキシアルキレン鎖における繰り返し単位数は、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。これらの化合物では、水酸基、エーテル結合及びエステル結合において親水性が奏される。
【0104】
非イオン性の両親媒性化合物の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体;ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ソルビタンオクタデカン酸エステル、ソルビタンラウリン酸エステル、ソルビタンオレイン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖オレイン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド;ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等を単位構造として有するブロックコポリマー;等が挙げられる。
【0105】
分散剤(E)の含有量は、粘着性高分子(A)100質量部に対して、例えば0.1量部以上、より好ましくは0.3質量部以上に調整することが好ましい。また、分散剤(E)の含有量は、粘着性高分子(A)100質量部に対して、例えば10.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下に調整することが好ましい。
【0106】
<溶媒又は分散媒>
粘着剤組成物は、非水系の溶媒や分散媒を含有してもよい。このような非水系の溶媒や非水系の分散媒を用いることで、粘着剤組成物への粘着性高分子(A)や導電性高分子(B)の溶解及び分散を促進することができ、それにより粘着剤組成物への凝集沈殿物の形成を低減させることができる。
【0107】
溶媒及び分散媒としては、粘着性高分子(A)や導電性高分子(B)を作製する際に用いた溶媒や分散媒をそのまま用いてもよい。溶媒及び分散媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン若しくはシクロヘプタン等の直鎖状、分枝状若しくは環状の脂肪族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素、例えばメタノール、エタノール、iso-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の1価又は2価のアルコール、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、アニソール等のエーテル、例えばジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリクロロエタン及びトリクロロエテン等のハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル等の脂肪族ニトリル、例えばジメチルスルホキシド若しくはスルホラン等の脂肪族スルホキシド及びスルホン、例えばメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド若しくはジメチルホルムアミド等の脂肪族カルボン酸アミド、例えばアセトン、メチルエチルケトン若しくはメチル-t-ブチルケトン等のケトン、例えば酢酸メチル、酢酸エチル若しくは酢酸ブチル等のエステル、又はこれらの混合物が挙げられる。その中でも、溶媒及び分散媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、アニソールより選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0108】
<その他の成分>
粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに酸化防止剤、光安定剤、金属腐食防止剤、粘着賦与剤、可塑剤、帯電防止剤、リワーク剤等を配合することもできる。また、導電性高分子の導電性を高める目的で、高導電化助剤等の種々の成分が含まれていてもよい。
【0109】
また、粘着剤組成物に含まれる水分量も少ないことが好ましい。より具体的には、粘着剤組成物における水の濃度は、好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0.01質量%未満である。粘着剤組成物に含まれる水分量を低減させることで、粘着剤組成物への凝集沈殿物の形成を低減させることができ、また、粘着層の表面抵抗率を低減させることができる。
【0110】
<粘着剤層の形成>
上述の粘着剤組成物を、必要に応じて前処理された、画像表示素子12や偏光フィルム13、保護材21に塗布することで、粘着剤層11を形成することができる。
【0111】
ここで、粘着剤組成物を塗布する画像表示素子12や偏光フィルム13は、平坦な表面を有するものであればよい。
【0112】
また、保護材(セパレータ)21は、画像表示素子12や偏光フィルム13の表面に着脱可能に設けられるものであり、上述の供試材20において粘着剤層11を一時的に保護する目的のほか、粘着剤組成物から粘着剤層11を得る際の乾燥および熟成による加熱から、画像表示素子12や偏光フィルム13を保護する目的でも用いられる。保護材21としては、保護材21と同時に粘着剤層11に粘着する画像表示素子12または偏光フィルム13よりも、粘着剤層11に対する粘着力の弱い材料を用いることができる。より具体的には、偏光フィルム13のフィルム保護層15bが、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはトリアセテートセルロース(TAC)によって構成される場合、保護材21としては、例えば、剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや、ポリエチレンフィルムを用いることができる。
【0113】
画像表示素子12や偏光フィルム13、保護材21に粘着剤組成物を塗布する手段としては、公知の手段を用いることができ、例えば、ワイヤーバーコート、スピンコーティング、ディッピング(浸漬)、注ぎ込み、滴下、注入、噴霧、ドクターブレード塗布、塗装又は印刷の手段を用いて行うことができる。このうち、印刷の手段としては、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、オフセット印刷又はパッド印刷の手段を用いることができる。
【0114】
画像表示素子12や偏光フィルム13、保護材21に塗布する粘着剤組成物の乾燥前膜厚は、粘着剤組成物における非揮発分の濃度や、乾燥後の粘着剤層の厚さに応じて設定される。例えば、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上の厚さで光学部材に塗布することができ、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下の厚さで、画像表示素子12や偏光フィルム13、保護材21に塗布することができる。
【0115】
次いで、塗布された粘着剤組成物から、溶媒や分散媒を少なくとも部分的に除去した後、得られる塗膜について架橋反応を進めることで、粘着剤層11を得ることができる。このうち、溶媒や分散媒の除去は、通常は50~150℃、好ましくは60~100℃で、通常は1~10分間、好ましくは2~7分間乾燥させることで行うことができる。また、塗膜に対する架橋剤(C)による架橋反応の進行は、通常は1日以上、好ましくは3~10日間にわたり、通常は5~60℃、好ましくは15~40℃の温度で、通常は相対湿度30~70%、好ましくは相対湿度40~70%の環境下で静置して熟成させることが好ましい。
【0116】
ここで、保護材21に粘着剤組成物を塗布して形成される塗膜を用いて、画像表示素子12と偏光フィルム13を貼り合わせる場合、粘着剤層11のうち保護材21がない側の面に画像表示素子12及び偏光フィルム13のうち一方を貼り合わせ、熟成によって架橋反応を進行させた後に保護材21を剥がし、保護材21を剥がした箇所に、画像表示素子12及び偏光フィルム13のうち他方を貼り合わせるようにしてもよい。
【実施例】
【0117】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0118】
<粘着性高分子(A)溶液の準備>
粘着性高分子(A)として、アクリル酸n-ブチルと、アクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合体(重量平均分子量50万、ガラス転移温度-48℃、水酸基価5mgKOH/g)を以下の手順で作製した。まず、攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、アクリル酸n-ブチル(291g)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(9.0g)、酢酸エチル(580g)を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を66℃に加熱した。次いで、十分に窒素ガス置換した開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.15g)を攪拌しながらフラスコ内に添加し、フラスコ内の内容物の温度を65~66℃に3時間にわたって維持した。その後、75℃に加熱して5時間かけて還流を行い、最後に酢酸エチル(120g)を添加して粘着性高分子(A)溶液を得た。この粘着性高分子(A)溶液は、モノマー重量比でアクリル酸n-ブチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル/アクリル酸=97/3であるアクリルポリマーと、酢酸エチルを溶剤として含有するものである。
【0119】
得られた粘着性高分子溶液について、重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下のGPC測定条件に従って測定した。
<GPC測定条件>
・測定装置:HLC-8120GPC(東ソー株式会社製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー株式会社製)
(1)TSK-GEL HXL-H (ガードカラム)
(2)TSK-GEL G7000HXL
(3)TSK-GEL GMHXL
(4)TSK-GEL GMHXL
(5)TSK-GEL G2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1cm3/min
・カラム温度:40℃
【0120】
<導電性高分子(B)の準備>
1リットルの三口フラスコに、ポリアニオン(B2)であるスルホン化ブロック共重合体の溶液(Kraton社製、商品名:Nexar MD9260、不揮発分11%)(75.0g)、酸化剤(B3)であるベンゾイルペルオキシド(9.4g)及びp-トルエンスルホン酸(2.8g)、溶剤であるアニソール(262.0g)を入れて混合し、窒素雰囲気下で30分間攪拌した。次いで、60℃に昇温した後、共役系高分子(B1)のモノマーである3,4-エチレンジオキシチオフェン(4.95g)を加え、40分の時間をかけて追加のアニソール(40.0g)を滴下した。その後、60℃の温度で3時間にわたり攪拌した。室温に戻した後で、得られた分散液を一晩静置し、上澄みを傾瀉によって取り出すことで、均一な分散液を得た。得られた分散液(20.0g)に酢酸ブチル(20.0g)を加え、超音波を用いて分散させることで、導電性高分子(B)としてNexar MD9260と3,4-エチレンジオキシチオフェンとの錯体を含む分散液を得た。このとき、導電性高分子の分散液に含まれる水の含有量は、分散媒の全質量に対して800ppmであった。また、導電性高分子の分散液における不揮発分の含有量は1.2質量%であり、不揮発分の導電率は5.8S/cmであった。
【0121】
<架橋剤(C)の準備>
架橋剤(C)として、ポリイソシアネート系硬化剤(東ソー株式会社製、商品名:コロネートL)を用いた。
【0122】
シランカップリング剤(D)として、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE-403)を用いた。
【0123】
分散剤(E)として両親媒性化合物を用い、より具体的にはソルビタンモノオクタデカノアート(Croda社製、商品名Span60)を用いた。
【0124】
<粘着剤組成物の作製>
表1に示す種類の粘着性高分子(A)、導電性高分子(B)、架橋剤(C)、シランカップリング剤(D)及び分散剤(E)を、表1に示す質量比になるようにミキサーに仕込み、攪拌混合することで、各実施例及び比較例に用いる粘着剤組成物を得た。
【0125】
他方で、偏光フィルムとして、実施例1~6と、比較例2、3では、偏光子の表面にシクロオレフィンポリマー(COP)からなるフィルム保護層が形成された偏光フィルムを用いた。この偏光フィルムは、フィルム保護層の厚みがそれぞれ40μm、偏光子の厚みが40μmであり、透湿度が20g/(m2・24h)であり、気温60℃、相対湿度90%の環境下で500時間にわたり保持する前後の寸法変化率が2%である。
【0126】
また、実施例7の偏光フィルムとしては、偏光子の表面にポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるフィルム保護層が形成された偏光フィルムを用いた。この偏光フィルムは、フィルム保護層の厚みがそれぞれ40μm、偏光子の厚みが40μmであり、透湿度が60g/(m2・24h)である。
【0127】
また、実施例8の偏光フィルムとしては、偏光子の表面にポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム保護層が形成された偏光フィルムを用いた。この偏光フィルムは、フィルム保護層の厚みがそれぞれ40μm、偏光子の厚みが40μmであり、透湿度が40g/(m2・24h)である。
【0128】
また、実施例9、10の偏光フィルムとしては、偏光子の表面にトリアセテートセルロース(TAC)からなるフィルム保護層が形成された偏光フィルムを用いた。この偏光フィルムは、フィルム保護層の厚みがそれぞれ40μm、偏光子の厚みが40μmであり、透湿度が400g/(m2・24h)である。
【0129】
また、比較例1の偏光フィルムとしては、偏光子の表面にトリアセテートセルロース(TAC)からなるフィルム保護層が形成された偏光フィルムを用いた。この偏光フィルムは、フィルム保護層の厚みがそれぞれ10μm、偏光子の厚みが40μmであり、透湿度が1100g/(m2・24h)である。
【0130】
各実施例及び比較例について、それぞれ、剥離処理が施された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の、剥離処理が施されている面に、ドクターブレードを用いて粘着剤組成物を塗布し、90℃で3分間乾燥して、乾燥膜厚25μmの塗膜を有する粘着シートを得た。次いで、この粘着シートのうち塗膜が露出している面に偏光フィルムを貼り合わせ、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させ、その後、90mm×160mmの大きさに裁断した。それにより、厚さ25μmの粘着剤層の一方の面に、離型層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる保護材を有し、他方の面に偏光フィルムを有する供試材を得た。得られた供試材について、以下の条件で表面抵抗率及びヘイズ値を測定した。
【0131】
<供試材の特性評価>
(表面抵抗率の測定)
得られた供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材を剥離した際の、粘着剤層の表面抵抗率を測定し、その測定値を常温の表面抵抗率xとした。ここで、粘着剤層の表面抵抗率の測定は、抵抗率計(ハイレスタUX MCP-HT800、日東精工アナリテック株式会社製)を用い、印加電圧1000Vで、JIS-K-6911に準じて表面抵抗率の測定を行った。常温の表面抵抗率xの結果を、表1に示す。
【0132】
また、得られた供試材について、気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材を剥離した際の、粘着剤層の表面抵抗率を測定し、その測定値を高温多湿環境においた後の表面抵抗率yとした。そして、上述の常温の表面抵抗率xに対する、高温多湿環境においた後の表面抵抗率yの比(y/x比)を求めた。高温多湿環境においた後の表面抵抗率yと、y/x比の結果を、表1に示す。
【0133】
(ヘイズ値の測定)
また、得られた供試材について、気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材を剥離した際の供試材のヘイズ値(%)を測定し、その測定値を常温のヘイズ値xとした。また、得られた供試材について、気温60℃、相対湿度90%の環境下に500時間にわたり保持した後、80℃で1時間乾燥させ、その後気温23℃、相対湿度50%の環境下で保護材を剥離した際の供試材のヘイズ値(%)を測定し、その測定値を高温多湿環境においた後のヘイズ値yとした。ここで、供試材のヘイズ値(すなわち、粘着剤層が貼り付けられた偏光フィルムのヘイズ値)は、それぞれヘイズメーター(HM-150、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。常温のヘイズ値z1と、高温多湿環境においた後のヘイズ値z2の結果を、表1に示す。
【0134】
【0135】
(特性評価の結果)
常温の表面抵抗率xについては、表1に示すとおり、実施例1~10では、粘着剤組成物に導電性高分子(B)を含んでおり、かつ、常温の表面抵抗率xがいずれも1×1012Ω/□以下、より具体的には1×1010Ω/□以下であった。これに対し、比較例3では、粘着剤組成物に導電性高分子(B)を含んでいないときに、常温の表面抵抗率xが1×1012Ω/□を超えていた。このことから、実施例1~10の画像表示装置用積層体では、粘着剤組成物に導電性高分子(B)を含有させることによって、常温での粘着剤層の表面抵抗率xが低くなることが推察される。
【0136】
また、高温多湿環境においた後の表面抵抗率yについては、表1に示すとおり、実施例1~10では、粘着剤組成物に導電性高分子(B)を含んでおり、かつ、高温多湿環境においた後の表面抵抗率yがいずれも1×1013Ω/□未満、より具体的には1×1011Ω/□未満であった。これに対し、比較例3では、粘着剤組成物に導電性高分子(B)を含んでいないときに、高温多湿環境においた後の表面抵抗率yが1×1012Ω/□を超えていた。このことから、実施例1~10の画像表示装置用積層体では、粘着剤組成物に導電性高分子(B)を含有させることによって、高温多湿環境においた後の粘着剤層の表面抵抗率yも低くなることが推察される。
【0137】
また、常温の表面抵抗率xに対する、高温多湿環境においた後の表面抵抗率yの比(y/x比)については、表1に示すとおり、実施例1~10では、y/x比がいずれも10未満、より具体的には4未満であった。これに対し、比較例1では、y/x比が10を超えていた。このことから、実施例1~10の画像表示装置用積層体は、高温多湿環境においた前後における表面抵抗率の変化が小さいことがわかる。
【0138】
また、常温のヘイズ値z1については、表1に示すとおり、実施例1~10では、常温のヘイズ値z1がそれぞれ2%以下、より具体的には1.8%以下であった。これに対し、比較例1では、常温のヘイズ値z1が2%を超えていた。このことから、実施例1~10の画像表示装置用積層体は、ヘイズ値が小さく、高い透明性を有することがわかる。
【0139】
従って、実施例1~10の画像表示装置用積層体は、常温での粘着剤層の表面抵抗率が低く、高温多湿環境においた前後における表面抵抗率の変化が小さく、かつ、ヘイズ値が小さいため、低抵抗値と低ヘイズとを両立し、かつ高温多湿の環境下にも耐えるものであることが推察される。
【国際調査報告】