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特表2023-539891医用画像内の医療機器の位置異常の自動検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】医用画像内の医療機器の位置異常の自動検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/12 20060101AFI20230912BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20230912BHJP
   G16H 30/40 20180101ALI20230912BHJP
【FI】
A61B6/12
A61B6/00 350D
G16H30/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514378
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021073594
(87)【国際公開番号】W WO2022048985
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2020129006
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】サールバチ アクセル
(72)【発明者】
【氏名】シラジトディノフ イリアス
(72)【発明者】
【氏名】シュタインマイスター レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】イットリヒ ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】レンガ マティアス
(72)【発明者】
【氏名】バルトルシャット イヴォ マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】グラス ミカエル
【テーマコード(参考)】
4C093
5L099
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093DA03
4C093FF16
4C093FF20
5L099AA26
(57)【要約】
本発明は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステム及び方法に関する。医用画像内の複数の基準点の位置が検出される。更に、医用画像内の医療機器の存在及び位置が検出される。複数の基準点の位置に基づいて医療機器の予想位置が決定され、医療機器の予想位置に対する医療機器の位置の近接度に基づいて、医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステムであって、
前記患者の少なくとも一部を含む前記医用画像を受信する入力ユニットと、
前記医用画像内の前記患者の前記解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置を検出し、且つ前記医用画像内の前記医療機器の存在及び第2の位置を検出する検出ユニットと、
前記患者の前記解剖学的構造の前記複数の基準点の前記第1の位置に基づいて、前記医療機器の予想位置を決定し、且つ前記医療機器の前記予想位置に対する前記医療機器の前記第2の位置の近接度に基づいて、前記医療機器の前記位置決めの正確さの尺度を提供する決定ユニットと、
前記医療機器の前記位置決めの前記正確さの前記尺度を出力する出力ユニットと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記検出ユニットは、前記医用画像内の、前記患者の前記解剖学的構造の前記複数の基準点の前記第1の位置と、前記医療機器の前記存在及び前記第2の位置と、を検出する第1の人工知能モジュールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の人工知能モジュールは、分類アプローチ、セグメンテーション手法、領域提案ネットワーク、又は経路探索アルゴリズムのうちの1つを使用するニューラルネットワークを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記決定ユニットは、前記医療機器の前記予想位置を決定する及び/又は前記医療機器の前記位置決めの前記正確さの前記尺度を提供する確率モデリングモジュールを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記確率モデリングモジュールは、前記複数の基準位置の前記第1の位置に基づいて前記医療機器の前記予想位置を決定するために、患者の解剖学的構造に対して正しい位置にある前記医療機器の医用画像を含む複数のデータセットから導出された確率モデルを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記患者の中に前記医療機器を挿入することによって引き起こされる合併症を検出する第2の人工知能モジュールを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記医療機器の前記位置決めの前記正確さの前記尺度は、前記医療機器の前記予想位置からの前記医療機器の前記第2の位置の尤度スコア及び/又は前記近接度を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証する請求項1から7のいずれか一項に記載のシステムを含む、X線装置。
【請求項9】
前記X線装置によって前記医用画像が取得された直後に、前記システムは、前記医療機器の前記位置決めの前記正確さの前記尺度を出力する、請求項8に記載のX線装置。
【請求項10】
医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するコンピュータ実施方法であって、
前記患者の少なくとも一部を含む前記医用画像を受信するステップと、
前記医用画像内の前記患者の前記解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置を検出するステップと、
前記医用画像内の前記医療機器の存在及び第2の位置を検出するステップと、
前記患者の前記解剖学的構造の前記複数の基準点の前記第1の位置に基づいて、前記医療機器の予想位置を決定するステップと、
前記医療機器の前記予想位置に対する前記医療機器の前記第2の位置との近接度に基づいて、前記医療機器の前記位置決めの正確さの尺度を提供するステップと、
前記医療機器の前記位置決めの前記正確さの前記尺度を出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
受信した前記医用画像は、胸部X線画像である、請求項10に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記患者の中に挿入された前記医療機器は、カテーテル又はチューブである、請求項10又は11に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
前記医療機器は、中心静脈カテーテルであり、前記位置決めの前記正確さは、前記患者の中に前記医療機器を挿入する間に、前記医療機器が気胸を引き起こさない点において定義されている、請求項10から12のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項14】
処理ユニット上で実行されると、請求項10から13のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法を実行するように前記処理ユニットに指示する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを実行する、処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステム、及び、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像は、複数の実用的な応用が可能な広範囲の検査であり、放射線科で最も一般的な検査タイプの1つである。1つの応用例は、位置異常の医療機器を検出することである。医療機器の位置を検出して評価するという臨床的な課題がある。医療機器の位置が間違っていると、その機能に影響を与えるだけでなく、追加の合併症を引き起こす可能性があるからである。例えば中心静脈カテーテル(CVC)の挿入は難しいことで有名であり、気胸を引き起こす可能性がある。例えば胸部X線(CXR)は、中心静脈カテーテル、気管内チューブ、栄養チューブなどの位置を評価するための主なモダリティと考えられている。したがって、ほとんどのCVC挿入後に、胸部X線撮影を行い、正しい位置を検証し、気胸があるかどうかが確認されている。
【0003】
更に、胸部X線は、比較的低コストで撮影時間が短いため、放射線科で最も一般的な検査の1つと考えられている。その結果、放射線科はCXRであふれ、レポートのターンアラウンド時間が大幅に増加する場合がある。多くの研究では、胸部X線のレポートのターンアラウンド時間は最大で数週間になることが示されている。胸部X線の評価の現在のワークフローでは、位置異常のCVCや気胸の発生を除外するためには、次のステップが伴う:胸部X線画像を取得する。検査の画像をPACSシステムに送り、作業リストの最後に入れられる。放射線科医がx時間後に胸部X線を検査する。CVCの位置異常が検出された場合、臨床医に直接報告される。それ以外の場合は、通常の報告が行われる。その後、医師はy時間後にレポートを受け取り、必要なステップを行う。時間x及びyはともに長く、数時間又は数日になる可能性があり、体内にCVCの位置異常があり、合併症が発生する可能性がある場合に問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
そのため、病院の放射線科医の作業負荷を軽減できる自動的な解決策が臨床的に必要とされている。特定の機器では、医療機器の位置異常を正確且つ適時に検出することが非常に重要になる場合がある。一般的な疾患分類やトリアージは大きな注目を集めているが、臨床応用を可能にする十分な精度を得ることは難しく困難であることで知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの理由から、上記の欠点がなく、医用画像内の医療機器の位置異常を確実に検出する、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステム及び方法があることが有利である。
【0006】
本発明は、医療機器の位置異常を自動的且つ確実に検出し、結果を医師に報告する、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、更なる実施形態は、従属請求項に組み込まれている。
【0008】
説明される実施形態は、同様に、医用画像中の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステム、及び医用画像中の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するコンピュータ実施方法に関する。実施形態の異なる組み合わせから相乗効果が生じる可能性があるが、これらは詳細には説明しない。
【0009】
更に、方法に関する本発明の全ての実施形態は、説明された通りのステップの順序で実行され得るが、これは、方法のステップの唯一且つ絶対不可欠な順序である必要はないことに留意されたい。本明細書に提示される方法は、以下に特に明記されていない限り、対応する方法の実施形態から逸脱することなく、開示されたステップの別の順序で実行することもできる。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステムが提供される。このシステムは、患者の少なくとも一部を含む医用画像を受信する入力ユニットと、医用画像内の患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置を検出し、且つ医用画像内の医療機器の存在及び第2の位置を検出する検出ユニットとを含む。システムは更に、患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置に基づいて、医療機器の予想位置を決定し、且つ医療機器の予想位置に対する医療機器の第2の位置の近接度に基づいて、医療機器の位置決めの正確さの尺度を提供する決定ユニットと、医療機器の位置決めの正確さの尺度を出力する出力ユニットとを含む。
【0011】
したがって、システムは、例えば中心静脈カテーテルである医療機器の位置を自動チェックできる。このシステムは、胸部X線画像といったX線画像であり得る医用画像を受信するユニットを含む。しかしながら、磁気共鳴断層撮影、コンピュータ断層撮影、超音波、陽電子放出断層撮影、又はSPECTといった別のイメージングモダリティも、システムの入力ユニットによって受信される医用画像を取得するために使用できる。この医用画像は、例えば胸部といった患者の解剖学的構造の少なくとも一部を描写する。また、画像内に患者の体の他の部分が描写されていてもよいし、全身を描写する画像が取得されてもよい。検出ユニットが、画像を分析し、画像内の少なくとも1つの基準点を検出する。この基準点の位置を第1の位置と呼ぶ。この基準点は、体の内臓器官の特定の決定可能な点又は位置であり得る。胸部X線画像に適している1つの特定の基準点は、気管が左右の主気管支に分かれる竜骨である。しかしながら、任意の他の点を、この点の位置を医用画像内で決定できる場合は、基準点として使用できる。しかしながら、本発明のほとんどの実施形態では、複数の基準点を使用して、その位置を検出する。少なくとも2つ又は3つの基準点によって、体の位置及び向きを決定でき、体内の医療機器のより確実な位置決めを提供できるからである。検出ユニットは更に、患者の体内に挿入可能な医療機器が体内にあり、且つ画像内に可視であるかどうかを検出する。特に、医療機器が医用画像内に検出される場合、検出ユニットは、医療機器の位置を検出及び決定し、この位置を第2の位置と呼ぶ。決定ユニットは、医療機器の予想位置を決定する。この予想位置は、体内の医療機器の正しい場所及び位置決めに対応し、体内で行われる検査によって規定されるか、又は医療機器が体内に挿入されている間に合併症を引き起こしていないという事実によって規定される。予想位置は、例えば検出された基準位置に対する位置を評価することによって、又は統計モデルを使用することによって決定される。更に、決定ユニットは、医療機器の検出された第2の位置を予想位置と比較する。医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。この正確さの尺度は、例えば医療機器が正しい位置にある確率、及び/又は予想位置の偏差若しくは予想位置に対する近接度である。更に、システムは、例えば医師に、正確さの尺度を提供する出力ユニットを含む。この出力ユニットには、ディスプレイや、正確さの尺度を示す少なくとも1つのライトが含まれる。
【0012】
したがって、システムは、解剖学的ランドマーク検出モジュールと、オブジェクト固有のランドマーク検出モジュールとを含むことができ、これらは、検出ユニットの一部であり得る。ランドマークは、第1の位置及び第2の位置にそれぞれ対応する。ランドマークの分布の統計モデルが、ランドマーク間の空間的相関を分析し、周囲の解剖学的コンテキストを有するオブジェクト位置を推定できる。分析の結果は、報告され、視覚化モジュールによって提供できる。これは、優れた解釈可能性を保証し、ロバスト性を向上させ、様々なモードの視覚化及びユーザフィードマックを可能にする。提案されるシステムは、放射線科医の作業負担を軽減し、患者の健康にハイリスクとなる医療オブジェクトの深刻な位置異常を自動検出し、緊急の症例を優先するのに役立つ可能性がある。例えば中心静脈カテーテル及び気管内チューブの位置は通常、解剖学的点である竜骨に対して評価される。竜骨は放射線科医を医療オブジェクトを正しく配置するための予想される領域にナビゲートする。
【0013】
本発明の一実施形態では、検出ユニットは、医用画像内の、患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置と、医療機器の存在及び第2の位置と、を検出する第1の人工知能モジュールを含む。
【0014】
医療オブジェクトの位置異常の自動検出システムの実施は、各医用イメージングモダリティについて解剖学的ランドマークのセットと、医療機器ランドマーク(例えば、ペースメーカの輪郭点やチューブ及びカテーテルの中心線点)の対応するセットとを規定することから開始する。解剖学的ランドマークのセット及びオブジェクト固有のランドマークのセットを所与として、任意のタイプのランドマーク検出モデル(例えば、従来式のコンピュータビジョンモデル又は深層学習モデル)が構築される。検出ユニット内に実装されるこのモデルは、医用画像を入力として取り、解剖学的ランドマークを出力する。医療機器が検出される場合は、オブジェクト固有のランドマークも出力する。解剖学的ランドマーク、即ち、基準点の第1の位置及び医療機器の第2の位置の検出は、人工知能モジュールによって行われる。
【0015】
本発明の一実施形態では、第1の人工知能モジュールは、分類アプローチ、セグメンテーション手法、領域提案ネットワーク、又は経路探索アルゴリズムのうちの1つを使用するニューラルネットワークを含む。
【0016】
人工知能モジュールは、ニューラルネットワークを含んでいてもよい。更に、自動位置検出のために、ニューラルネットワークに基づいた様々な実施形態も考慮できる。一実施形態では、多クラス分類問題として問題を形式化して、位置決めが正確か又は不正確かを分類できる。このために、CNNといった分類システムを使用できる。分類アプローチは、医療機器の位置に関する情報は提供しないが、セグメンテーション手法を考慮できる。UNetといった手法を使用して、心臓、肺、鎖骨、竜骨といった重要な領域、並びに医療機器を特定できる。セグメンテーションの後、医療機器の位置と周囲の臓器との関係によって新しい特徴が生成されて、医療機器の正しい位置が決定される。或いは、強化学習アルゴリズムを使用してもよい。強化学習アルゴリズムでは、医療機器の位置は、経路探索問題として規定できる。この方法は、医療機器上の開始点を必要とし、終わりまで医療機器に従う。開始点は、セグメンテーションの解剖学的構造の結果を使用して決定できる。
【0017】
本発明の一実施形態では、決定ユニットは、医療機器の予想位置を決定する及び/又は医療機器の位置決めの正確さの尺度を提供する確率モデリングモジュールを含む。
【0018】
本発明のこの実施形態では、ランドマーク分布統計モデル又は確率モデルを構築できる。そのために、医療機器が適切に配置されている医用画像が分析される。統計モデルは、任意の確率モデル(例えば、マルコフモデル、隠れマルコフモデル、ディープベイジアンネットワークなど)として実装できる。この統計モデルの2つの主な応用がある。1つは、解剖学的ランドマークを所与として、医療機器のランドマークの確率を予測することである。基準点の位置を所与として、医療機器の位置の確率と相関する異常スコアが提供される。正常及び正確な位置決めの偏差が高いほど、異常及び/又は優先度スコアが高くなる。第2の応用は、解剖学的ランドマークのセット、即ち、基準点の第1の位置を所与として、医療機器の予想される正しい位置を予測することである。この応用を使用して、計算された異常スコア及び優先度スコアを説明し、予想された正しい位置からの医療機器の偏差又は近接度を提供できる。
【0019】
多くの現代の機械学習アルゴリズム及び深層学習アルゴリズムは、解釈可能性レベルが低いという大きな欠点があり、これにより、臨床診療でそれらを使用することが困難である。対照的に、本発明のシステムは、予想されるオブジェクト位置と周囲の解剖学的構造との関係を明白に反映する。更に、計算された異常スコアを説明するために、目的のオブジェクトが配置される予想場所の視覚化を放射線科医に提供できる。このアプローチを使用すると、構造化された報告においてオブジェクトの位置(異常)を定量化及び自動化することができ、例えば中心静脈カテーテルの先端位置が、例えば3cmの垂直距離だけ、竜骨点より上方にあり過ぎることを出力できる。
【0020】
本発明の一実施形態では、確率モデリングモジュールは、複数の基準位置の第1の位置に基づいて医療機器の予想位置を決定するために、患者の解剖学的構造に対して正しい位置にある前記医療機器の医用画像を含む複数のデータセットから導出された確率モデルを含む。
【0021】
本発明のこの実施形態では、複数の患者の体内に医療機器が正確に位置決めされている複数のデータセットを分析することによって、確率モデルのトレーニング又は導出を達成できる。イメージングモダリティ毎に及び医療機器毎に位置異常のある医療オブジェクトの症例を集めることは困難なタスクであるため、このアルゴリズムは、正しく位置決めされた医療機器でのデータセットを使用して成長させることができる。この結果、本発明の提案されるシステムは、正しく位置決めされた医療機器でのみ学習を行うことによって、データ不足の問題を解決する。
【0022】
本発明の一実施形態では、システムは、患者の中に医療機器を挿入することによって引き起こされる合併症を検出する第2の人工知能モジュールを含む。
【0023】
本発明のこの実施形態では、医療機器の位置決めの正確さの尺度の決定に加えて、システムは、デバイスの挿入によって引き起こされる合併症を検出する第2の人工知能モジュールを含むことができる。合併症は、例えば気胸である。この合併症は、医療機器によって周囲の組織にもたらされる損傷によって直接に検出できる。
【0024】
本発明の一実施形態では、医療機器の位置決めの正確さの尺度は、医療機器の予想位置からの医療機器の第2の位置の尤度スコア及び/又は近接度を含む。
【0025】
したがって、位置決めの正確さの尺度は、異常スコア又は尤度スコアを含み、これらのスコアは、医療機器と解剖学的ランドマークとがよく一致している場合には、即ち、オブジェクトがうまく位置決めされている場合には高いスコアを有する。特に、オブジェクト位置の検出された構成は、解剖学的ランドマークの位置を所与として最も可能性の高いランドマークのコンステレーションと比較される。更に、医療機器がうまく位置決めされているかどうかを決定するために、正確さの尺度は、医療機器の予想位置、及び、医療機器のランドマークと解剖学的ランドマークに基づく医療機器の予想ランドマークとの間の計算された空間距離を含む。
【0026】
本発明の別の態様によれば、先行する実施形態のいずれかによる医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステムを含むX線装置が提供される。
【0027】
提案されるシステムは、X線装置上でそのまま実行することができるが、これに限定されない。提案されるシステムは、PACSシステムにおける胸部X線画像の評価にも使用できる。本発明による提案されるシステムは、放射線科医の作業リストの優先順位付けアプローチの一部であってもよい。本発明によるシステムは、優先度の高い症例を直ぐに報告するために、既存の画像取得装置に統合することもできる。システムは、PACSシステムに報告アルゴリズムとして統合することができる。更に、本発明によるシステムによって抽出された情報を使用して最終報告を生成できるため、放射線科医は、X線画像をそれ以降は診る必要がない。
【0028】
本発明の一実施形態では、X線装置によって医用画像が取得された直後に、システムが、医療機器の位置決めの正確さの尺度を出力する。
【0029】
したがって、臨床医は、例えば胸部X線が取得された後に直接フィードバックを得ることができる。医療機器の自動位置チェックの最終結果は、スマートライトフィードバックとして報告できる。スマートライトフィードバックでは、ライト及びその色を使用して、カテーテルの位置が正しいかどうかや、気胸が検出されるかどうかのユーザフィードバックが提供される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するコンピュータ実施方法が提供される。この方法は患者の少なくとも一部を含む医用画像を受信するステップと、医用画像内の患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置を検出するステップと、医用画像内の医療機器の存在及び第2の位置を検出するステップとを含む。方法は更に、患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置に基づいて、医療機器の予想位置を決定するステップと、医療機器の予想位置に対する医療機器の第2の位置との近接度に基づいて、医療機器の位置決めの正確さの尺度を提供するステップと、医療機器の位置決めの正確さの尺度を出力するステップとを含む。
【0031】
本発明によるコンピュータ実施方法は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動的に検証する。第1のステップでは、例えば胸部である、患者の少なくとも一部を含む医用画像が受信される。第2のステップでは、医用画像内の患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置が検出される。この基準点は、竜骨といった内臓器官の特定の明白に可視である特徴の指示である。第3のステップでは、医用画像内の医用機器の存在及び第2の位置が検出される。第4のステップでは、患者の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置に基づいて、医療機器の予想位置が決定される。第5のステップでは、医療機器の予想位置に対する医療機器の第2の位置との近接度に基づいて、医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。第6のステップでは、医師といったユーザに、医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。
【0032】
本発明の一実施形態では、受信した医用画像は、胸部X線画像である。
【0033】
しかしながら、本発明では、異なる医用イメージングモダリティで取得された画像も使用できる。更に、体の異なる部分又は更には前進が取得した画像内に描写されていてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態では、患者の中に挿入される医療機器は、カテーテル又はチューブである。
【0035】
患者の中に挿入されて、検出される医療機器は、カテーテル又はチューブであり得る。このカテーテル又はチューブは、例えば静脈又は呼吸系の一部の中に挿入され、体内をその目的場所(予想位置に対応する)まで誘導される。
【0036】
本発明の一実施形態では、医療機器は、中心静脈カテーテルであり、位置決めの正確さは、患者の中に医療機器を挿入する間に、また、医療機器が体内の正しい位置にある間に、医療機器が気胸を引き起こさない点において定義されている。
【0037】
この実施形態では、医療機器は、内頸静脈のうちの1つ、又は鎖骨下静脈のうちの1つの中に挿入して、竜骨の近くに配置できる中心静脈カテーテルである。この手順中に、カテーテルによって気胸といった合併症が引き起こされるリスクがあるため、本発明のこの実施形態に従って、患者の解剖学的構造に対するカテーテルの位置決めを自動的に検証できる。
【0038】
本発明の別の態様によれば、処理ユニット上で実行されると、先行する実施形態のいずれかによるコンピュータ実施方法を実行するように処理ユニットに指示するコンピュータプログラム要素が提供される。
【0039】
コンピュータプログラム要素は、1つ以上の処理ユニット上で実行され得る。これらの処理ユニットは、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証する方法を実行するように指示される。
【0040】
本発明の別の態様によれば、先行する実施形態によるコンピュータプログラム要素を実行する処理ユニットが提供される。
【0041】
この処理ユニットは、本発明によるコンピュータプログラム要素を実行する1つ以上の異なるデバイスに分散させてもよい。
【0042】
したがって、上記のどの態様によって得られる利点も、他の全ての態様にも同様に適用され、その逆も同様である。
【0043】
主旨としては、本発明は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステム及び方法に関する。医用画像内の複数の基準点の位置が検出される。更に、医用画像内の医療機器の存在及び位置が検出される。複数の基準点の位置に基づいて医療機器の予想位置が決定され、医療機器の予想位置に対する医療機器の位置の近接度に基づいて、医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。医療機器の位置決めの正確さの尺度が提供される。
【0044】
上記態様及び実施形態は、以下に説明される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。本発明の例示的な実施形態について、以下の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステムの概略図を示す。
図2図2は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するシステムを含むX線装置の概略図を示す。
図3図3は、基準点の第1の位置と、医療機器の第2の位置とが検出された医用画像を示す。
図4図4は、医用画像内の患者の解剖学的構造に対する医療機器の位置決めを自動検証するコンピュータ実施方法のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、医用画像180内の患者160の解剖学的構造に対する医療機器170の位置決めを自動検証するシステム100の概略図を示している。医用画像180は、X線装置の一部である画像取得ユニット150によって取得され、システム100の入力ユニット110によって受信される。検出ユニット120は医用画像180を受信し、医用画像180内の複数の基準点の第1の位置181を検出する。更に、検出ユニット120は、医用画像180内の医療機器170の存在及び第2の位置182も検出できる。これは、検出ユニット120内に含まれている第1の人工知能モジュール125によって達成できる。検出ユニット120は更に、医療機器170によって引き起こされる医用画像180内の合併症を検出する第2の人工知能モジュール126も含む。第1の位置181及び第2の位置182は、決定ユニット130に提供される。決定ユニット130は、確率モデリングモジュール135を含む。決定ユニット130は、患者160の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置181に基づいて、医療機器170の予想位置を決定し、また、医療機器170の予想位置に対する医療機器170の第2の位置182の近接度に基づいて、医療機器170の位置決めの正確さの尺度145を提供する。正確さの尺度には、例えば、予想位置からの医療機器170の第2の位置182の偏差の程度、正しい位置決めの確率、又は予想される正しい位置からの偏差が含まれる。出力ユニット140は、正確さの尺度145を、例えば医師に提供する。この出力には、医療機器170が正しい位置にあることを示す符号、又は医療機器170が特定の基準点の第1の位置181に対して特定の方向に特定の距離にあることを示す符号が含まれる。
【0047】
図2は、医用画像180内の患者160の解剖学的構造に対する医療機器170の位置決めを自動検証するシステム100を含むX線装置200の概略図を示している。X線装置200は更に、画像取得デバイス150を含む。X線装置200の画像取得デバイス150は、患者160の少なくとも一部の医用画像180を取得する。患者160には、カテーテルのような医療機器170が挿入されている。システム100は医用画像180を分析し、出力ユニット140を介して、正確さの尺度145を出力として提供する。
【0048】
図3は、基準位置の第1の位置181と、医療機器710の第2の位置182とが検出された医用画像180を示している。入力医用画像180は任意のイメージングモダリティで取得される。検出ユニット120は、複数の基準点の第1の位置181を解剖学的ランドマークのセットとして検出し、医療機器170の第2の位置182をデバイス固有ランドマークとして検出する。確率モデルのトレーニング段階では、ランドマーク分布の統計モデルが導出され、ランドマーク分布モデルがもたらされる。このモデルから、医療機器170の予想位置が導出される。医療機器170の予想位置と医療機器170の検出された第2の位置182とを比較することで、異常スコアが計算され、患者160内の医療機器170の位置決めの正確さの尺度145を返すことができる。
【0049】
図4は、医用画像180内の患者160の解剖学的構造に対する医療機器170の位置決めを自動検証するコンピュータ実施方法のブロック図を示している。この方法は、患者160の少なくとも一部を含む医用画像180を受信する第1のステップを含む。このステップの後、医用画像180内の患者160の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置181を検出する第2のステップが続く。第3のステップでは、医用画像180内の医用機器170の存在及び第2の位置182が検出される。第4のステップでは、患者160の解剖学的構造の複数の基準点の第1の位置181に基づいて、医療機器170の予想位置が決定される。このステップの後、医療機器170の予想位置に対する医療機器170の第2の位置182の近接度に基づいて、医療機器170の位置決めの正確さの尺度145を提供する第5のステップが続く。第6のステップでは、医療機器170の位置決めの正確さの尺度145の出力が提供される。
【0050】
1つの具体的な実装形態では、実際のランドマーク位置は(並進不変)構成ベクトルで記述することができる。詳細は次を参照されたい:T.V.Pham及びA.W.M.Smeuldersによる「Object recognition with uncertain geometry and uncertain part detection」、Computer vision and image understanding、第99巻、第2号、241~258頁、2005年:
=(x-x,…,x-x,y-y,…,y-y
ここで、xとyは、検出された医療機器に対応するランドマーク基準点の座標に関連する。多次元ガウス分布の仮定の下で、構成の確率は、次を介して推定できる:
p(z)=N2p-2(μ,Σ)
【0051】
欠落しているランドマークについては、条件付き確率分布も考慮できる:
【数1】
【0052】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的と見なされるべきであって、限定的と見なされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、図面、開示、及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。
【0053】
特許請求の範囲において、「含む」という語は、他の要素やステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
100 システム
110 入力ユニット
120 検出ユニット
125 第1の人工知能モジュール
126 第2の人工知能モジュール
130 決定ユニット
135 確率モデリングモジュール
140 出力ユニット
145 正確さの尺度
150 画像取得デバイス
160 患者
170 医療機器
180 医用画像
181 第1の位置
182 第2の位置
200 X線装置
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】