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特表2023-539895延伸されたガラスの特性を改善するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】延伸されたガラスの特性を改善するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
C03B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514742
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021046063
(87)【国際公開番号】W WO2022051077
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/073,626
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アラム,ザカリア
(72)【発明者】
【氏名】ビッソン,アントワーヌ ガストン デニス
(72)【発明者】
【氏名】フレドホルム,アラン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ピエロン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】テリエ,グザヴィエ
(57)【要約】
ガラス物品を製造するための装置および方法が、ガラス送出装置であって、幅方向に延在し、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している送出オリフィスを備えたガラス送出装置を有している。この装置および方法はさらに、第1の縁部領域および第2の縁部領域付近で送出オリフィスに近接している冷却機構、および中央領域付近で送出オリフィスに近接している加熱機構を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品を製造する方法であって、
ガラス送出装置からのガラスリボンを成形するステップであって、前記ガラスリボンは、前記ガラス送出装置の送出オリフィスの下方で幅方向に延在しており、前記ガラスリボンは、前記幅方向で、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している、成形するステップ、
前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近に、前記送出オリフィスに近接して冷却機構を位置決めするステップ、および
前記中央領域付近に、前記送出オリフィスに近接して加熱機構を位置決めするステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記加熱機構を、前記中央領域付近に、前記送出オリフィスに近接して位置決めする前に、前記冷却機構を、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近に、前記送出オリフィスに近接して位置決めする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記冷却機構を位置決めするステップは、熱伝導部材を通して作動流体を流すステップをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに接触する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記冷却機構を位置決めするステップは、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに気体流体を流すステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記冷却機構を位置決めするステップは、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域から相対的に遠い第1の位置と、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域に相対的に近い第2の位置との間で前記冷却機構を動かすステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記加熱機構は、2つの同一平面の断熱プレートを有していて、前記断熱プレートはそれぞれ、前記送出オリフィスから相対的に遠い第1の位置と、前記送出オリフィスに相対的に近い第2の位置との間で可動である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ガラス物品製造装置であって、
ガラス送出装置であって、幅方向に延在し、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している送出オリフィスを備えたガラス送出装置、
前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で前記送出オリフィスに近接している冷却機構、および
前記中央領域付近で前記送出オリフィスに近接している加熱機構
を備える、ガラス物品製造装置。
【請求項9】
前記冷却機構は、作動流体を通流させるように構成された熱伝導部材を備える、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記熱伝導部材は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに接触する、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記冷却機構は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに気体流体を流すように構成されている、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記冷却機構は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域から相対的に遠い第1の位置と、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域に相対的に近い第2の位置との間で可動である、請求項8記載の装置。
【請求項13】
前記加熱機構は、2つの同一平面の断熱プレートを有していて、前記断熱プレートは、それぞれ、前記送出オリフィスから相対的に遠い第1の位置と、前記送出オリフィスに相対的に近い第2の位置との間で可動である、請求項8記載の装置。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造されるガラス物品。
【請求項15】
請求項14記載のガラス物品を備えた電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2020年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/073,626号の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラスを成形するための装置および方法に関し、より詳細には、改善された特性を有するガラスを成形するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス物品、例えばテレビ、および電話機やタブレットのような携帯機器を含むディスプレイ用途のためのガラスシートの製造においては、溶融ガラスを成形装置から流してガラスリボンへと変えることにより、溶融ガラスをガラスシートへと成形することができる。このようなプロセスは、典型的には、ガラスリボンが冷えるときにガラスリボンに引張力を加えることを含む。ガラス組成およびガラスの所望の厚さに応じて、許容可能な特徴、例えば厚さの均一性を有するガラスシートを妥当な引張力を用いて製造する際には、大きな課題が存在する場合がある。さらに、ガラスリボンの幅は、成形装置の下方で収縮する傾向にあり、このことは、一般にリボン縮幅と呼ばれる現象である。このような縮みは、所与のプロセスにより、使用可能なガラスの体積を減じるだけでなく、厚さの均一性などの特徴に不利に影響するおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、比較的均一な厚さを有するガラスシート、例えば、いっそう広幅かつ薄いガラスシートを様々な異なるガラス組成物から製造することが所望されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示される実施形態は、ガラス物品を製造する方法を含む。この方法は、ガラス送出装置からのガラスリボンを成形することを含む。このガラスリボンは、ガラス送出装置の送出オリフィスの下方で幅方向に延在しており、幅方向で、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している。この方法はさらに、第1の縁部領域および第2の縁部領域付近に、送出オリフィスに近接して冷却機構を位置決めすることを含む。さらに、この方法は、中央領域付近に、送出オリフィスに近接して加熱機構を位置決めすることを含む。
【0006】
本明細書に開示される実施形態はさらに、ガラス物品を製造するための装置を含む。この装置は、ガラス送出装置を有していて、このガラス送出装置は、幅方向に延在し、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している送出オリフィスを備えている。この装置はさらに、第1の縁部領域および第2の縁部領域付近で送出オリフィスに近接している冷却機構を有している。さらに、この装置は、中央領域付近で送出オリフィスに近接している加熱機構を有している。
【0007】
本明細書に開示された実施形態の付加的な特徴および利点を以下の詳細な説明に記載するが、その一部は、当該説明から当業者に容易に明らかとなるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む、本明細書に記載した開示の実施形態を実施することにより、当業者に認識されるであろう。
【0008】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、特許請求される実施形態の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図した実施形態を提示することを理解されたい。添付図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を例示し、説明と共に、その原理および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガラス製造装置およびガラス製造プロセスの概略図である。
図2】送出オリフィスを有する送出装置を含むガラス製造装置の概略的な端面図である。
図3図2のガラス製造装置の一部を概略的に示す側面図である。
図4】本明細書の実施形態による、冷却機構と加熱機構とを含む例示的なガラス製造装置の概略的な底面図である。
図5】本明細書の実施形態による、冷却機構と加熱機構とを含む例示的なガラス製造装置の概略的な底面図である。
図6】本明細書の実施形態による、冷却機構と加熱機構とを含む例示的なガラス製造装置の概略的な端面図である。
図7A】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の上方から見た概略的な破断図である。
図7B】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の側方から見た概略的な破断図である。
図8A】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の上方から見た概略的な破断図である。
図8B】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の側方から見た概略的な破断図である。
図9A】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の上方から見た概略的な破断図である。
図9B】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の側方から見た概略的な破断図である。
図10A】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の上方から見た概略的な破断図である。
図10B】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の側方から見た概略的な破断図である。
図11図6の領域「Y」に示された例示的なガラス製造装置の一部の概略的な端面図である。
図12A】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の上方から見た概略図である。
図12B】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の側方から見た概略図である。
図13A】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の上方から見た概略図である。
図13B】本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構の側方から見た概略図である。
図14】例示的なガラス製造装置の一部を示す概略的な上面図である。
図15図4の領域「X」に示された例示的なガラス製造装置の一部を示す概略的な上面図である。
図16】送出オリフィスから流れるガラスリボンの概略的な側面図である。
図17】モデル化された縁部対中央部の粘度比とガラスリボン幅との間の関係を様々な条件下で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の好適な本実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。同じまたは同様の部分を参照するためには、図面全体にわたり可能な限り同じ参照番号を用いる。ただし、本開示は多くの異なる形態で実現可能であり、本明細書に記載した実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0011】
本明細書では、範囲は「約」1つの特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から、かつ/または別の特定の値までを含む。同様に、例えば、先行詞「約」の使用により値が近似値として表現されるときは、特定の値が別の実施形態をなすことを理解されたい。さらに、各範囲の終端点は、他の終端点と関連して、あるいは他の終端点とは独立して、両方で有意であることが理解される。
【0012】
本明細書で使用される方向を示す用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上部、下部は、図示した図を参照してのみ記載され、絶対的な方向を意味しようとするものではない。
【0013】
特に明記されない限り、本明細書に記載されているどの方法も、そのステップが特定の順序で実施されることを、または装置の何らかの特定の向きが必要であることを、要求するものとして解釈されることを意図していない。したがって、方法請求項が、それらのステップが従うべき順序を実際に示していない場合、またはいずれの装置請求項も個々の構成要素に対する順序または方向を実際に示していない場合、またはそれらのステップを特定の順序に限定することが請求項または詳細な説明において具体的に言及されていない場合、または装置の構成要素に対する特定の順序または方向が記載されていない場合には、順序または方向を推定することは、いかなる点でも意図されていない。このことは、解釈のための明示されていない任意の可能な基本について当てはまり、ステップの配置、操作フロー、構成要素の順序、または構成要素の方向に関する論理的な事項、文法体系または句読点から派生する明白な意味、および明細書に記載されている実施形態の数またはタイプを含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、明記されない限り、複数形も含む。したがって、例えば「a」構成要素という記載は、明記されない限りは、2つ以上のそのような構成要素を有した態様も含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「加熱機構」という用語は、ガラスリボンの少なくとも一部の温度を上昇させる機構、またはこのような加熱機構が存在しない条件に対して相対的に減じられた、ガラスリボンの少なくとも一部からの熱伝達を提供する機構を意味する。温度上昇または熱伝達低減は、伝導、対流、または放射のうちの少なくとも1つによってもたらすことができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「冷却機構」という用語は、このような冷却機構が存在しない条件に対して相対的に増大させられた、ガラスリボンの少なくとも一部からの熱伝達を提供する機構を意味する。熱伝達増大は、伝導、対流、または放射のうちの少なくとも1つによってもたらすことができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「溶融ガラス」という用語は、その液相温度(それを上回ると、結晶相がガラスと平衡状態で共存し得ない温度)以上であるガラス組成物を意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「液相粘度」という用語は、液相温度にあるガラス組成物の粘度を意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「送出オリフィスに近接」という用語は、ガラス送出装置の送出オリフィスの少なくとも一部に対して約50ミリメートル以下の距離を意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、ガラスリボンの「第1の縁部領域付近」という用語は、ガラスリボンの幅方向でガラスリボンの中央領域または第2の縁部に対するよりも、ガラスリボンの幅方向でガラスリボンの第1の縁部に対してより近くにある位置を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、ガラスリボンの「第2の縁部領域付近」という用語は、ガラスリボンの幅方向でガラスリボンの中央領域または第1の縁部に対するよりも、ガラスリボンの幅方向でガラスリボンの第2の縁部に対してより近くにある位置を意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、ガラスリボンの「中央領域付近」という用語は、ガラスリボンの幅方向でガラスリボンの第1の縁部または第2の縁部に対するよりも、ガラスリボンの幅方向でガラスリボンの中央領域に対してより近くにある位置を意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「熱伝導性」という用語は、25℃で約10W/m・K以上の熱伝導率を有する材料を意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「断熱性」という用語は、25℃で約2W/m・K以下の熱伝導率を有する材料を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「相対的に遠い」という用語は、物体、装置または領域に「相対的に近い」距離の少なくとも2倍、その物体、装置または領域から遠い距離を意味する。
【0026】
図1には、例示的なガラス製造装置10が示されている。いくつかの例では、ガラス製造装置10は、ガラス溶融炉12を有していてよく、ガラス溶融炉は、溶融容器14を含んでいてよい。溶融容器14に加えて、ガラス溶融炉12は、(本明細書においてより詳しく後述するように)原材料を加熱して原材料を溶融ガラスへ変換する加熱要素などの1つ以上の追加の構成要素を含む。別の例では、ガラス溶融炉12は、溶融容器近傍からの熱損失を低減する熱管理装置(例えば、断熱構成要素)を含んでいてよい。さらに別の例では、ガラス溶融炉12は、原材料をガラス溶融物へと溶融させることのできる電子デバイスおよび/または電気機械装置を含んでいてよい。さらに、ガラス溶融炉12は、支持構造体(例えば、支持シャシ、支持部材等)またはその他の構成要素を含んでいてよい。
【0027】
ガラス溶融容器14は、典型的には、耐火性材料、例えば耐火性セラミック材料、例えばアルミナまたはジルコニアを含む耐火性セラミック材料から成る。いくつかの例では、ガラス溶融容器14は、耐火性セラミックレンガから構成されていてよい。ガラス溶融容器14の特定の実施形態を、以下に詳しく説明する。
【0028】
いくつかの例では、ガラス溶融炉は、ガラス基板、例えば所定の連続した長さのガラスリボンを製作するためのガラス製造装置の構成要素として組み込まれていてよい。いくつかの例では、本開示のガラス溶融炉は、スロットドロー装置、フロートバス装置、フュージョン法のようなダウンドロー装置、アップドロー装置、プレスロール装置、チューブドロー装置、または本明細書に開示される態様により利益を得る任意の他のガラス製造装置を含むガラス製造装置の構成要素として組み込まれていてよい。
【0029】
ガラス製造装置10は、オプションとして、ガラス溶融容器14に対して相対的に上流に位置する上流側ガラス製造装置16を含むことができる。いくつかの例では、上流側ガラス製造装置16の一部または全部は、ガラス溶融炉12の一部として組み込まれていてよい。
【0030】
図示した例に示されているように、上流側ガラス製造装置16は、貯蔵容器18と、原材料送出装置20と、原材料送出装置に接続されたモータ22とを含むことができる。貯蔵容器18は、矢印26で示されているようにガラス溶融炉12の溶融容器14内に供給することができる一定量の未加工バッチ材料24を貯蔵するように構成されていてよい。未加工バッチ材料24は、典型的には、1種以上のガラス成形金属酸化物および1種以上の改質剤を含む。いくつかの例では、原材料送出装置20が、貯蔵容器18から溶融容器14へと予め規定された量の未加工バッチ材料24を送出するように、原材料送出装置20をモータ22によって駆動することができる。別の例では、モータ22は、溶融容器14の下流で測定された溶融ガラスレベルに基づいて制御される速度で未加工バッチ材料24を導入するように、原料送出装置20に動力を与えることができる。その後、溶融ガラス28を成形するために、溶融容器14内の未加工バッチ材料24を加熱することができる。
【0031】
ガラス製造装置10は、オプションとして、ガラス溶融炉12に対して相対的に下流に位置する下流側ガラス製造装置30を含むこともできる。いくつかの例では、下流側ガラス製造装置30の一部は、ガラス溶融炉12の一部として組み込まれていてよい。いくつかの例では、後述する第1の接続管路32、または下流側ガラス製造装置30の他の部分は、ガラス溶融炉12の一部として組み込まれていてよい。第1の接続管路32を含む下流側ガラス製造装置のエレメントは、貴金属から形成されていてよい。適切な貴金属には、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびパラジウムまたはそれらの合金から成る金属群から選択される白金族元素が含まれる。例えば、ガラス製造装置の下流側の構成要素は、約100質量%~約60質量%の白金と約0質量%~約40質量%のロジウムとを含む白金・ロジウム合金から形成されてよい。しかしながら、別の適切な金属は、モリブデン、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、およびそれらの合金を含んでいてよい。酸化物分散型強化(ODS)貴金属合金も可能である。
【0032】
下流側ガラス製造装置30は、溶融容器14の下流に位置し、上述した第1の接続管路32を介して溶融容器14に連結された、清澄容器34などの第1の調整(すなわち、処理)容器を含むことができる。いくつかの例では、溶融ガラス28は、溶融容器14から清澄容器34へと第1の接続管路32を介して重力により供給されてよい。例えば、重力により、溶融ガラス28を、溶融容器14から清澄容器34へと、第1の接続管路32の内部通路を通過させることができる。しかしながら、他の調整容器が、溶融容器14の下流に、例えば、溶融容器14と清澄容器34との間に配置されていてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、調整容器は、溶融容器と清澄容器との間で使用されてよく、この場合、一次溶融容器からの溶融ガラスは、溶融プロセスを継続するためにはさらに加熱され、または清澄容器に入る前に溶融容器内の溶融ガラスの温度よりも低い温度まで冷却される。
【0033】
清澄容器34内では、様々な技術によって、溶融ガラス28から気泡を除去することができる。例えば、未加工バッチ材料24は、加熱されると化学還元反応を起こして酸素を放出する酸化スズなどの多価化合物(すなわち、清澄剤)を含んでいてよい。他の適切な清澄剤には、以下に限定されるものではないが、ヒ素、アンチモン、鉄およびセリウムが含まれる。清澄容器34は、溶融容器温度を超える温度まで加熱され、これにより溶融ガラスと清澄剤とが加熱される。熱によって誘導される清澄剤の化学還元によって生じた酸素気泡は、清澄容器内の溶融ガラスを通って上昇し、このとき、溶融炉内で形成された溶融ガラス中の気体は、清澄剤によって生じた酸素気泡に拡散可能または合体可能となる。次いで、膨張した気泡は、清澄容器内の溶融ガラスの自由表面へと上昇することができ、その後、清澄容器から排気可能となる。酸素気泡は、さらに、清澄容器内の溶融ガラスの機械的な混合物を誘導することができる。
【0034】
下流側ガラス製造装置30は、さらに、例えば溶融ガラスを混合するための混合容器36のような別の調整容器を含むことができる。混合容器36は、清澄容器34の下流に配置されていてよい。混合容器36は、均質なガラス溶融組成物を形成するために使用することができ、これにより、さもないと清澄容器を出た清澄された溶融ガラス内に存在する場合がある化学的不均質または熱的不均質のコードが低減される。図示したように、清澄容器34は、第2の接続管路38を介して混合容器36に連結されてよい。いくつかの例では、溶融ガラス28は、清澄容器34から混合容器36へと第2の接続管路38を介して重力により供給されてよい。例えば、重力により、溶融ガラス28を、清澄容器34から混合容器36へと、第2の接続管路38の内部通路を通過させることができる。混合容器36は清澄容器34の下流に図示されているが、混合容器36は清澄容器34の上流に配置されていてもよいことに留意されたい。いくつかの例では、下流側ガラス製造装置30は、複数の混合容器、例えば、清澄容器34の上流の混合容器と清澄容器34の下流の混合容器とを有していてもよい。これらの複数の混合容器は、同じ設計であってよく、または異なる設計であってもよい。
【0035】
下流側ガラス製造装置30は、さらに、混合容器36の下流に位置していてよい送出容器40のような別の調整容器を含むことができる。送出容器40は、下流側成形装置内へ供給すべき溶融ガラス28を調整してもよい。例えば、送出容器40は、出口管路44を介した成形体42への溶融ガラス28の一貫した流れを調節しかつ/または提供するアキュムレータおよび/または流れコントローラとして機能することができる。図示したように、混合容器36は、第3の接続管路46を介して送出容器40に連結されてよい。いくつかの例では、溶融ガラス28は、混合容器36から送出容器40へと第3の接続管路46を介して重力により供給されてよい。例えば、重力により、溶融ガラス28を、混合容器36から送出容器40へと、第3の接続管路46の内部通路を通して移動させることができる。
【0036】
下流側ガラス製造装置30は、さらに、上述したガラス送出装置42と入口管路50とを有した成形装置48を含むことができる。出口管路44を、送出容器40から成形装置48の入口管路50へと溶融ガラス28を送出するように配置することができる。例えば、出口管路44は、入口管路50内に、入口管路50の内表面から離隔されて入れ子状に配置されてよく、これにより、出口管路44の外表面と入口管路50の内表面との間に位置する溶融ガラスの自由表面が提供される。ガラス送出装置42は、送出オリフィス(例えば、図3に示された送出スロット142)を有することができ、溶融ガラスは、この送出オリフィスを通って流れて、単一のガラスリボン58を生成し、このガラスリボンは、ガラスリボンに、例えば重力、エッジロール72、および引張ロール82によって張力をかけることにより、延伸または流れ方向60で延伸されて、ガラスが冷却されガラスの粘性が増大するときにガラスリボンの寸法が制御される。したがって、ガラスリボン58は、粘弾性転移を経て、ガラスリボン58に安定した寸法特徴を与える機械的性質を獲得する。ガラスリボン58は、いくつかの実施形態では、ガラス分離装置100によって、ガラスリボンの弾性領域で個々のガラスシート62に分離されてもよい。次いで、ロボット64が、グリップ工具65を使用して、個々のガラスシート62をコンベヤシステムに搬送することができ、その後、個々のガラスシートをさらに処理することができる。
【0037】
図2は、送出オリフィス(送出スロット142)を有するガラス送出装置42を含むガラス製造装置10の概略的な端面図を示す。送出スロット142から溶融ガラスが流れて、ガラスリボン58が成形される。特に、ガラスリボン58は、ガラス送出装置42から出て、破線の曲線矢印によって示された方向でそれぞれ回転する第1の成形ロール180Aと第2の成形ロール180Bとの間を流れる。ガラスリボン58は、例えば重力、対向するエッジロール72Aおよび72Bのセット、および対向する引張ロール82Aおよび82Bのセットによってガラスリボンに張力を加えることによりさらに延伸させることができ、ガラスが冷却されガラスの粘性が上昇する際に、ガラスリボン58の寸法を制御することができる。また図2は、1セットの対向するエッジロールおよび引張ロールを示しているが、本発明で開示される実施形態は、2セット以上の対向するエッジロールおよび/または2セット以上の対向する引張ロールを有していてもよい。
【0038】
特定の例示的な実施形態では、成形ロール180Aおよび180Bは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/070236号に示され、記載された成形ロールと同様に構成することができる。成形ロール180Aおよび180Bは、成形ロール180Aおよび180Bとガラスリボン58との間に、制御可能な接着力を提供するように構成されていてよい。成形ロール180Aおよび180Bの直径は、いかなる特定の値にも限定されないが、例えば、約20mm~約500mmの範囲にあってよく、その間のすべての範囲および部分範囲にあってもよい。さらに、成形ロール180Aおよび180Bは、耐火材料から構成されてよく、この耐火材料は、いかなる特定の耐火材料にも限定されないが、金属材料(例えば、ステンレス鋼)および/または耐火性セラミック材料を含んでいてもよい。
【0039】
成形ロール180Aおよび180Bは、その温度を制御するための、冷却機構などの1つ以上の機構を含んでいてもよく、この場合、冷却流体は、成形ロール180Aおよび180Bを通ってまたはその周囲を流れる。例えば、成形ロール180Aおよび180Bは、冷却流体を通流させるように構成された少なくとも1つの通路(図示せず)を有していてよい。温度制御機構の構造に応じて、冷却流体は、液体、例えば水、または気体、例えば窒素または空気を含むことができる。
【0040】
ガラス送出装置42と成形ロール180Aおよび180Bとの間の最も近い距離は、いかなる特定の値にも限定されないが、例えば、約10mm~約1,000mmの範囲にあってよく、その間のすべての範囲および部分範囲にあってもよい。
【0041】
図3は、図2に示されたガラス製造装置10の一部を概略的に示す側面図を示している。図3に示されているように、溶融ガラスは、ガラス送出装置42の送出スロット142から流れて、ガラスリボン58を成形し、ガラスリボンは、第1の成形ロール180Aと第2の成形ロール180B(図3には図示せず)との間を流れる。送出スロット142の下方で、ガラスリボン58は、(図3に矢印「W」で示された)幅方向に延在している。図3に示されたように、幅方向でのガラスリボン58の延在は、送出スロット142と第1の成形ロール180Aとの間で、短縮されるまたは縮む(この縮みは、矢印「A」で示されている)。さらに図16に示されたように、ガラスリボン58は、幅方向で、第1の縁部領域「E1」と、中央領域「C」と、第2の縁部領域「E2」とを含む。
【0042】
図4は、本明細書の実施形態による冷却機構300と加熱機構200とを含む例示的なガラス製造装置10の概略的な底面図を示している。特に、冷却機構300は、第1の縁部領域「E1」付近に、送出スロット142に近接した、第1の冷却機構300Aおよび対向する第2の冷却機構300Bを含む。冷却機構300はさらに、第2の縁部領域「E2」付近に、送出スロット142に近接した、第3の冷却機構300Cおよび対向する第4の冷却機構300Dを含む。加熱機構200は、中央領域「C」付近に、送出スロット142に近接した、第1の加熱機構200Aおよび対向する第2の加熱機構200Bを含む。
【0043】
図5は、本明細書の実施形態による冷却機構300と加熱機構200’とを含む例示的なガラス製造装置10の概略的な底面図を示している。図4の例示的なガラス製造装置と同様に、冷却機構300は、第1の縁部領域「E1」付近に、送出スロット142に近接した、第1の冷却機構300Aおよび対向する第2の冷却機構300Bを含む。冷却機構300はさらに、第2の縁部領域「E2」付近に、送出スロット142に近接した、第3の冷却機構300Cおよび対向する第4の冷却機構300Dを含む。加熱機構200’は、中央領域「C」付近に、送出スロット142に近接した、第1の加熱機構200A’および対向する第2の加熱機構200B’を含む。図4の加熱機構200とは異なり、加熱機構200’の第1の加熱機構200A’と第2の加熱機構200B’とはそれぞれ、送出スロット142に近接した湾曲縁部を有していて、これにより、第1の加熱機構200A’と送出スロット142との間の最も近い距離、および第2の加熱機構200B’と送出スロット142との間の最も近い距離は、中央領域「C」に沿って幅方向で変化する。
【0044】
図6は、本明細書の実施形態による冷却機構300と加熱機構200とを含む例示的なガラス製造装置10の概略的な端面図を示している。図4の例示的なガラス製造装置と同様に、冷却機構300は、送出スロット142に近接した、第1の冷却機構300Aおよび対向する第2の冷却機構300Bを含む。さらに、図4の例示的なガラス製造装置と同様に、加熱機構200は、送出スロット142に近接した、第1の加熱機構200Aおよび対向する第2の加熱機構200Bを含む。さらに、図2のガラス製造装置と同様に、ガラス製造装置10は、対向する第1および第2の成形ロール180Aおよび180B、対向する第1および第2のエッジロール72Aおよび72B、および対向する第1および第2の引張ロール82Aおよび82Bを含む。
【0045】
図4図6に示されたように、加熱機構200または200’は、第1の加熱機構200Aまたは200A’と、第2の加熱機構200Bまたは200B’とを有していて、この場合、第1および第2の加熱機構は、集合的に、2つの同一平面の断熱プレートを有していて、これらの断熱プレートは、それぞれ、送出スロット142から相対的に遠い第1の位置と、送出スロット142に相対的に近い第2の位置との間で可動である。例えば、このようなプレートは、(図4図6に矢印「S」で示したように)前述の第1の位置と第2の位置との間で摺動可能であってよい。このような摺動運動は、当業者に公知の方法により、例えばサーボモータおよび/またはカウンタウェイト機構等を利用して、可能であってよい。
【0046】
特定の例示的な実施形態では、加熱機構200または200’の同一平面の断熱プレートは、25℃で約2W/m・K以下、例えば25℃で約1W/m・K以下、さらに例えば25℃で約0.5W/m・K以下、さらに例えば25℃で約0.2W/m・K以下、さらに例えば25℃で約0.1W/m・K以下の、25℃で約0.001W/m・K~25℃で約2W/m・K、例えば25℃で約0.01W/m・K~25℃で約1W/m・K、さらに例えば25℃で約0.05W/m・K~25℃で約0.5W/m・Kを含む熱伝導率を有する材料から成っていてよい。
【0047】
いかなる特定の材料にも限定されないが、特定の例示的な実施形態では、加熱機構200または200’の同一平面の断熱プレートは、耐火断熱性セラミック材料、例えば、これに限定されるものではないが、Zircar Ceramics社製のアルミナを含む耐火断熱性材料を含む、アルミナまたはムライトのうちの少なくとも1つを含む耐火断熱性セラミック材料から選択される少なくとも1つの材料を含んでいてよい。
【0048】
特定の例示的な実施形態では、加熱機構200または200’の同一平面の断熱プレートは、送出スロット142および/またはガラスリボン58と加熱機構200または200’との間の放射熱伝達を最小限に抑えるために、低放射率表面層を含んでいてよい。例示的な、低放射率表面層材料には、ポリッシングされた白金などのポリッシングされた金属が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
図7Aおよび図7Bはそれぞれ、本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構300の上方から見た破断図および側方から見た破断図を概略的に示している。冷却機構300は、熱伝導部材302と流体管路304とを含む。流体管路304は、作動流体が通流することができるように構成されており、この場合、図7Aに示されたように、作動流体は、矢印「FI」により示されたように流体管路304に入り、矢印「FO」により示されたように流体管路304から出ていく。さらに、図7Aおよび図7Bに示されたように、流体管路304は、熱伝導部材302を通って延在しており、これにより冷却機構300は、流体管路304を介した熱伝導部材302を通る作動流体の流れを有している。
【0050】
特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材302および/または流体管路304は、25℃で約10W/m・K以上、例えば25℃で約50W/m・K以上、さらに例えば25℃で約100W/m・K以上、さらに例えば25℃で約250W/m・K以上の、25℃で約10W/m・K~25℃で約1,000W/m・K、例えば25℃で約50W/m・K~25℃で約500W/m・Kを含む熱伝導率を有する材料から成る。
【0051】
いかなる特定の材料にも限定されるものではないが、特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材302および/または流体管路304は、銅、アルミニウム、銀、金、白金、またはニッケルおよびそれらの合金から選択される少なくとも1種の材料を含んでいてよい。
【0052】
本明細書に開示される実施形態には、作動流体が、液体、例えば水、または気体、例えば空気、窒素、または希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を含むものが含まれる。作動流体の流量および温度は、冷却機構300と送出スロット142および/またはガラスリボン58との間の所望の熱伝達度が生じるように、当業者に公知の方法によって調節または変更することができる。
【0053】
図8Aおよび図8Bはそれぞれ、本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構300’の上方から見た破断図および側方から見た破断図を概略的に示している。冷却機構300’は、流体管路308と310とを支持し接続する接続部材306を含む。流体管路308と310とは、作動流体が通流することができるように構成されており、この場合、図8Aに示されたように、作動流体は、矢印「FI’」により示されたように流体管路308と310とに入り、矢印「FO’」により示されたように流体管路308と310とから出ていく。
【0054】
いかなる特定の材料にも限定されるものではないが、特定の例示的な実施形態では、接続部材306ならびに/または流体管路308および310は、金属および/またはセラミック材料、例えば、耐火性金属および/またはセラミック材料を含んでいてよい。
【0055】
本明細書に開示される実施形態には、作動流体が、気体、例えば空気、窒素、または希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を含んでいて、冷却機構300’が、第1の縁部領域「E1」および第2の縁部領域「E2」付近で送出スロット142上に気体流体な流れを有しているものが含まれる。気体流体の流量および温度は、冷却機構300’と送出スロット142および/またはガラスリボン58との間の所望の熱伝達度が生じるように、当業者に公知の方法によって調節または変更することができる。
【0056】
図9Aおよび図9Bはそれぞれ、本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構300’’の上方から見た破断図および側方から見た破断図を概略的に示している。冷却機構300’’は、熱伝導部材312と流体管路314とを含む。流体管路314は、作動流体が通流することができるように構成されており、この場合、図9Bに示されたように、作動流体は、矢印「FI’’」により示されたように流体管路314に入り、矢印「FO’’」により示されたように流体管路314から出ていく。さらに、図9Aおよび図9Bに示されたように、流体管路314は、熱伝導部材312を通って延在しており、これにより冷却機構300’’は、流体管路314を介した熱伝導部材312を通る作動流体の流れを有している。
【0057】
特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材312および/または流体管路314は、25℃で約10W/m・K以上、例えば25℃で約50W/m・K以上、さらに例えば25℃で約100W/m・K以上、さらに例えば25℃で約250W/m・K以上の、25℃で約10W/m・K~25℃で約1,000W/m・K、例えば25℃で約50W/m・K~25℃で約500W/m・Kを含む熱伝導率を有する材料から成る。
【0058】
いかなる特定の材料にも限定されるものではないが、特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材312および/または流体管路314は、銅、アルミニウム、銀、金、白金、またはニッケルおよびそれらの合金から選択される少なくとも1種の材料を含んでいてよい。
【0059】
本明細書に開示される実施形態には、作動流体が、液体、例えば水、または気体、例えば空気、窒素、または希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を含むものが含まれる。作動流体の流量および温度は、冷却機構300’’と送出スロット142および/またはガラスリボン58との間の所望の熱伝達度が生じるように、当業者に公知の方法によって調節または変更することができる。
【0060】
図10Aおよび図10Bはそれぞれ、本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構300’’’の上方から見た破断図および側方から見た破断図を概略的に示している。冷却機構300’’’は、熱伝導部材312’と流体管路314’とを含む。流体管路314’は、作動流体が通流することができるように構成されており、この場合、図10Aおよび図10Bに示されたように、作動流体は、矢印「FI’’」により示されたように流体管路314’に入り、矢印「FO’’」により示されたように流体管路314’から出ていく。さらに、図10Aおよび図10Bに示されたように、流体管路314’は、熱伝導部材312’を通って延在しており、これにより冷却機構300’’’は、流体管路314’を介した熱伝導部材312’を通る作動流体の流れを有している。
【0061】
特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材312’および/または流体管路314’は、25℃で約10W/m・K以上、例えば25℃で約50W/m・K以上、さらに例えば25℃で約100W/m・K以上、さらに例えば25℃で約250W/m・K以上の、25℃で約10W/m・K~25℃で約1,000W/m・K、例えば25℃で約50W/m・K~25℃で約500W/m・Kを含む熱伝導率を有する材料から成る。
【0062】
いかなる特定の材料にも限定されるものではないが、特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材312’および/または流体管路314’は、銅、アルミニウム、銀、金、白金、またはニッケルおよびそれらの合金から選択される少なくとも1種の材料を含んでいてよい。
【0063】
本明細書に開示される実施形態には、作動流体が、気体、例えば空気、窒素、または希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を含んでいて、冷却機構300’’’が、第1の縁部領域「E1」および第2の縁部領域「E2」付近で送出スロット142上に気体流体の流れを有しているものが含まれる。気体流体の流量および温度は、冷却機構300’’’と送出スロット142および/またはガラスリボン58との間の所望の熱伝達度が生じるように、当業者に公知の方法によって調節または変更することができる。
【0064】
いかなる特定の温度範囲にも限定されないが、図7A図10Bに示したような特定の例示的な実施形態では、作動流体は、約0℃~約100℃、例えば約10℃~約90℃、さらに例えば約20℃~約80℃の範囲の温度を有することができる。
【0065】
図7A図7Bおよび図9A図10Bに示したような特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材302,312または312’は、第1の縁部領域「E1」および第2の縁部領域「E2」付近で送出スロット142に接触している。例えば、図11は、図6の領域「Y」に示された例示的なガラス製造装置10の一部の概略的な端面図を示しており、この場合、冷却機構300’’の熱伝導部材312は、ガラス送出装置42の送出スロット142に接触している。冷却機構300’’は、作動流体が通流することができるように構成された流体管路314を含む。
【0066】
冷却機構300’’と送出スロット142との間の物理的接触により、熱伝導部材312と送出スロット142との間の伝導性熱伝達を生じさせることができる。冷却機構300’’と送出スロット142との間の距離は、図11に矢印「D」で示されたように調節可能であり、この場合、冷却機構300’’は、送出スロット142と物理的に接触する位置と、冷却機構300’’が送出スロット142から相対的に遠くにあり、これにより冷却機構300’’と送出スロット142との間に空気ギャップが延在する別の位置との間で動くことができる。送出スロット142に対して相対的な冷却機構300’’の運動は、例えばサーボモータおよび/またはカウンタウェイト機構等の使用による当業者により公知の方法により可能とすることができる。
【0067】
図12Aおよび図12Bはそれぞれ、本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構300’’’’の上方から見た図および側方から見た図を概略的に示している。冷却機構300’’’’は、作動流体が通流することができるように構成された熱伝導部材322を含み、この場合、図12Aおよび図12Bに示されたように、作動流体は、矢印「FI’’’」により示されたように伝導部材322に入り、矢印「FO’’’」により示されたように伝導部材322から出ていく。
【0068】
図13Aおよび図13Bはそれぞれ、本明細書に開示された実施形態による例示的な冷却機構300’’’’の上方から見た図および側方から見た図を概略的に示している。冷却機構300’’’’は、作動流体が通流することができるように構成された熱伝導部材324を含み、この場合、図13Aおよび図13Bに示されたように、作動流体は、矢印「FI’’’」により示されたように伝導部材324に入り、矢印「FO’’’」により示されたように伝導部材324から出ていく。
【0069】
いかなる特定の材料にも限定されるものではないが、特定の例示的な実施形態では、熱伝導部材322または324は、銅、アルミニウム、銀、金、白金、またはニッケルおよびそれらの合金から選択される少なくとも1種の材料を含んでいてよい。
【0070】
図14は、例示的なガラス製造装置10の一部の概略的な上面図を示しており、送出スロット142に対して相対的な2つの冷却機構300’’’’の位置決めを示している。図14に示されたように、冷却機構300’’’’は、送出スロット142に近接して位置することができ、これは、例えばサーボモータおよび/またはカウンタウェイト機構等の使用による当業者により公知の方法により行うことができる。さらに、冷却機構300’’’’のそれぞれと送出スロット142との間の相対距離がほぼ同じになるように、または異なるように、冷却機構300’’’’は、送出スロット142に対して相対的に互いに独立的に位置していてよい。さらに、冷却機構300’’’’は、図15につき説明するように矢印「D」および「I」で示された方向で、送出スロット142に対して相対的に動かされてよい。冷却機構300’’’’は、例えば伝導部材322または伝導部材324のような同じ伝導部材または異なる伝導部材を有していてもよい。
【0071】
図15は、図4の領域「X」に示された例示的なガラス製造装置10の一部の概略的な上面図を示している。第1の加熱機構200Aと第1の冷却機構300Aとの相対運動は、矢印「S」、「D」および「I」で示されており、この場合、送出スロット142から相対的に遠い第1の位置と、送出スロット142に相対的に近い第2の位置との間の第1の加熱機構200Aの運動は、矢印「S」で示されており、送出スロット142から相対的に遠い第1の位置と、送出スロット142に相対的に近い第2の位置との間の第1の冷却機構300Aの運動は、矢印「D」で示されており、第1の加熱機構200Aから相対的に遠い第1の位置と、第1の加熱機構200Aに相対的に近い第2の位置との間の第1の冷却機構300Aの運動は、矢印「I」で示されている。第1の加熱機構200Aの運動および/または第1の冷却機構300Aの運動は、例えばサーボモータおよび/またはカウンタウェイト機構等の使用による当業者により公知の方法により可能とすることができる。
【0072】
図11および図4および図5を参照すると、特定の例示的な実施形態では、第1の冷却機構300A、第2の冷却機構300B、第3の冷却機構300Cおよび/または第4の冷却機構300Dを含む冷却機構300は、第1の加熱機構200もしくは200’および/または第2の加熱機構200もしくは200’を含む加熱機構200または200’が、中心領域「C」付近で送出スロット142に近接して位置決めされる前に、第1の縁部領域「E1」および/または第2の縁部領域「E2」付近で送出スロット142に近接して位置決めされてよい。
【0073】
図16は、送出スロット142から流れるガラスリボン58の概略的な側面図を示している。図16からわかるように、ガラスリボン58は、第1の縁部領域「E1」と、中央領域「C」と、第2の縁部領域「E2」とを含む。さらに図16からわかるように、ガラスリボン58は、送出スロット142のすぐ下方では第1の幅寸法「W1」で延在しており、送出スロットから所定の距離(例えば、1メートル)を置いた下方では第2の幅寸法「W2」で延在している。
【0074】
特定の例示的な実施形態では、ガラスリボン58の第2の幅寸法「W2」は、送出スロット142の下方に約1メートルの距離を置いたところにあり、ガラスリボン58の第1の幅寸法「W1」の約80%以上、例えば85%以上、さらに例えば90%以上であって、これは、第1の幅寸法「W1」の約80%~約95%、例えば約85%~約90%を含む。
【0075】
特定の例示的な実施形態では、送出スロット142のすぐ下方のガラスリボン58の第1の縁部領域「E1」および第2の縁部領域「E2」の平均粘度は、送出スロット142のすぐ下方のガラスリボン58の中央領域「C」の平均粘度の約5倍以上であり、例えば約10倍以上、さらに例えば約15倍以上であり、例えば約5倍~約20倍であり、さらに例えば約10倍~約15倍である。
【0076】
このような実施形態では、送出スロット142のすぐ下方のガラスリボン58の中央領域「C」の平均粘度は、例えば約10ポアズ(約10Pa・s)~約10ポアズ(約10Pa・s)の範囲であってよく、例えば約5×10ポアズ(約5×10Pa・s)~約5×10ポアズ(約5×10Pa・s)であってよい。このような実施形態では、送出スロット142のすぐ下方のガラスリボン58の第1の縁部領域「E1」および第2の縁部領域「E2」の平均粘度は、例えば、約5×10ポアズ(約5×10Pa・s)~約10ポアズ(約10Pa・s)の範囲であってよく、例えば約5×10ポアズ(約5×10Pa・s)~約10ポアズ(約10Pa・s)であってよい。
【0077】
図17は、モデル化された縁部対中央部の粘度比とガラスリボン幅との間の関係を様々な条件下で示すグラフであり、ここで送出スロットのすぐ下方のガラスリボン幅は約600mmであり、Y軸上に示されたリボン幅は送出スロットの少なくとも約1メートル下方におけるものである。図17からわかるように、縁部対中央部の粘度比が上昇するにつれ、送出スロットの少なくとも1メートル下方におけるガラスリボン幅は増大する、または換言すると、縁部対中央部の粘度比が上昇するほど、ガラスリボンの縮みは減じられる。
【0078】
特定の例示的な実施形態では、ガラスリボン58は、約100キロポアズ(kP)(約10kPa・s)以下の液相粘度、例えば約100ポアズ(P)(約10Pa・s)~約100キロポアズ(kP)(約10kPa・s)の範囲の液相粘度、さらに例えば約500ポアズ(P)(約50Pa・s)~約50キロポアズ(kP)(約5kPa・s)の範囲の液相粘度、さらには例えば約1キロポアズ(kP)(約0.1kPa・s)~約20キロポアズ(kP)(約2kPa・s)の範囲の液相粘度をならびにその間のすべての範囲および部分範囲を有するガラス組成物を有することができる。
【0079】
特定の例示的な実施形態では、ガラスリボンは、約900℃以上の液相温度、例えば、約900℃~約1,450℃の範囲の液相温度、さらに例えば約950℃~約1,400℃の範囲の液相温度、さらに例えば約1,000℃~約1,350℃の範囲の液相温度を有するガラス組成物を有することができる。
【0080】
上記実施形態をスロットドロー法に関して説明してきたが、このような実施形態は、他のガラス成形法、例えばフュージョン法、フロート法、アップドロー法、チューブドロー法およびプレスロール法にも適用可能であることを理解されたい。
【0081】
当業者には、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に対して様々な修正および変更を行うことができることは明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれ同等なものの範囲内にある限り、本開示のそのような修正および変形を包含することが意図されている。
【0082】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0083】
実施形態1
ガラス物品を製造する方法であって、
ガラス送出装置からのガラスリボンを成形するステップであって、前記ガラスリボンは、前記ガラス送出装置の送出オリフィスの下方で幅方向に延在しており、前記ガラスリボンは、前記幅方向で、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している、成形するステップ、
前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近に、前記送出オリフィスに近接して冷却機構を位置決めするステップ、および
前記中央領域付近に、前記送出オリフィスに近接して加熱機構を位置決めするステップ
を含む、方法。
【0084】
実施形態2
前記加熱機構を、前記中央領域付近に、前記送出オリフィスに近接して位置決めする前に、前記冷却機構を、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近に、前記送出オリフィスに近接して位置決めする、実施形態1記載の方法。
【0085】
実施形態3
前記冷却機構を位置決めするステップは、熱伝導部材を通して作動流体を流すステップをさらに含む、実施形態2記載の方法。
【0086】
実施形態4
前記作動流体は液体を含む、実施形態3記載の方法。
【0087】
実施形態5
前記作動流体は気体を含む、実施形態3記載の方法。
【0088】
実施形態6
前記熱伝導部材は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに接触する、実施形態3記載の方法。
【0089】
実施形態7
前記冷却機構を位置決めするステップは、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに気体流体を流すステップをさらに含む、実施形態1記載の方法。
【0090】
実施形態8
前記冷却機構を位置決めするステップは、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域から相対的に遠い第1の位置と、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域に相対的に近い第2の位置との間で前記冷却機構を動かすステップをさらに含む、実施形態1記載の方法。
【0091】
実施形態9
前記加熱機構は、2つの同一平面の断熱プレートを有していて、前記断熱プレートはそれぞれ、前記送出オリフィスから相対的に遠い第1の位置と、前記送出オリフィスに相対的に近い第2の位置との間で可動である、実施形態1記載の方法。
【0092】
実施形態10
溶融ガラスは、約100キロポアズ(kP)(約10kPa・s)以下の液相粘度を有している、実施形態1記載の方法。
【0093】
実施形態11
前記ガラスリボンは、前記送出オリフィスのすぐ下方では第1の幅寸法で延在しており、前記送出オリフィスから約1メートル下方では第2の幅寸法で延在しており、前記第2の幅寸法は、前記第1の幅寸法の約80%以上である、実施形態1記載の方法。
【0094】
実施形態12
前記送出オリフィスのすぐ下方の前記ガラスリボンの前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域の平均粘度は、前記送出オリフィスのすぐ下方の前記ガラスリボンの前記中央領域の平均粘度の約5倍以上である、実施形態1記載の方法。
【0095】
実施形態13
ガラス物品製造装置であって、
ガラス送出装置であって、幅方向に延在し、第1の縁部領域、中央領域、および第2の縁部領域を有している送出オリフィスを備えたガラス送出装置、
前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で前記送出オリフィスに近接している冷却機構、および
前記中央領域付近で前記送出オリフィスに近接している加熱機構
を備える、ガラス物品製造装置。
【0096】
実施形態14
前記冷却機構は、作動流体を通流させるように構成された熱伝導部材を備える、実施形態13記載の装置。
【0097】
実施形態15
前記作動流体は液体を含む、実施形態14記載の装置。
【0098】
実施形態16
前記作動流体は気体を含む、実施形態14記載の装置。
【0099】
実施形態17
前記熱伝導部材は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに接触する、実施形態14記載の装置。
【0100】
実施形態18
前記冷却機構は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域付近で、前記送出オリフィスに気体流体を流すように構成されている、実施形態13記載の装置。
【0101】
実施形態19
前記冷却機構は、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域から相対的に遠い第1の位置と、前記第1の縁部領域および前記第2の縁部領域に相対的に近い第2の位置との間で可動である、実施形態13記載の装置。
【0102】
実施形態20
前記加熱機構は、2つの同一平面の断熱プレートを有していて、前記断熱プレートは、それぞれ、前記送出オリフィスから相対的に遠い第1の位置と、前記送出オリフィスに相対的に近い第2の位置との間で可動である、実施形態13記載の装置。
【0103】
実施形態21
実施形態1記載の方法により製造されるガラス物品。
【0104】
実施形態22
実施形態21記載のガラス物品を備えた電子デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】