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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ベアリングアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20230912BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20230912BHJP
   F16C 19/30 20060101ALI20230912BHJP
   F16C 23/08 20060101ALI20230912BHJP
   F16C 29/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/16
F16C19/30
F16C23/08
F16C29/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514801
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2021074219
(87)【国際公開番号】W WO2022053382
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102020211329.7
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508282993
【氏名又は名称】アクティエボラゲット・エスコーエッフ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】リジュン・カオ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ツォイク
【テーマコード(参考)】
3J012
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB04
3J012BB03
3J012CB10
3J012FB07
3J012HB02
3J104AA02
3J104AA23
3J104AA33
3J104AA34
3J104BA05
3J104DA12
3J701AA04
3J701AA42
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA64
3J701BA53
3J701BA54
3J701FA41
(57)【要約】
第1の軌道要素(2)および第2の軌道要素(4)を備えたベアリングアセンブリ(1)が開示され、軌道要素(2、4)間にボール(6)が配置され、ボール(6)は、軌道要素(2、4)上に配置されている軌道(8)上を転動し、断面においてベアリングアセンブリ(1)は概念的に、ボール(6)の回転軸(A)およびボール(6)の回転軸(A)に垂直な軸(A)によって、時計回りに配置される4つの象限(I、II、III、IV)に分割され、ボール(6)は軌道(8)との4つの接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)を有し、各接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は4つの象限(I、II、III、IV)の1つにあり、第2の軌道要素(4)の軌道(8)は第1象限(I)および第2象限(II)にあり、第1の軌道要素(2)の軌道(8)は第3象限(III)および第4象限(IV)にあり、第1象限(I)の軌道(8-I)の曲率半径(R-I)の中心点(M-I)は第3象限(III)にあり、第2象限(II)の軌道(8-II)の曲率半径(R-II)の中心点(M-II)は第4象限(IV)にあり、第3象限(III)の軌道(8-III)の曲率半径(R-III)の中心点(M-III)は第1象限(I)にあり、第4象限(IV)の軌道(8-IV)の曲率半径(R-IV)の中心点(M-IV)は第2象限(II)にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軌道要素(2)および第2の軌道要素(4)を備えたベアリングアセンブリ(1)であって、前記第1の軌道要素(2)と前記第2の軌道要素(4)との間にボール(6)が配置され、前記ボール(6)は、前記第1の軌道要素(2)および前記第2の軌道要素(4)上に配置されている軌道(8)上を転動する、ベアリングアセンブリにおいて、断面において、前記ベアリングアセンブリ(1)は概念的に、ボール(6)の回転軸(A)および前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な軸(A)によって、時計回りに配置される4つの象限(I、II、III、IV)に分割され、前記ボール(6)は前記軌道(8)との4つの接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)を有し、各接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は前記4つの象限(I、II、III、IV)の1つにあり、前記第2の軌道要素(4)の前記軌道(8)は第1象限(I)および第2象限(II)にあり、前記第1の軌道要素(2)の前記軌道(8)は第3象限(III)および第4象限(IV)にあり、前記第1象限(I)の前記軌道(8-I)の曲率半径(R-I)の中心点(M-I)は前記第3象限(III)にあり、前記第2象限(II)の前記軌道(8-II)の曲率半径(R-II)の中心点(M-II)は前記第4象限(IV)にあり、前記第3象限(III)の前記軌道(8-III)の曲率半径(R-III)の中心点(M-III)は前記第1象限(I)にあり、前記第4象限(IV)の前記軌道(8-IV)の曲率半径(R-IV)の中心点(M-IV)は前記第2象限(II)にあることを特徴とする、ベアリングアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の軌道要素(2)の前記軌道(8-III、8-IV)の前記2つの曲率半径(R-III、R-IV)の交点は前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な軸上にあり、前記第2の軌道要素(4)の前記軌道(8-I、8-II)の前記2つの曲率半径(R-I、R-II)の交点は前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な軸上にある、請求項1に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項3】
前記曲率半径(R-I、R-II、R-III、R-IV)は同一である、請求項1または2に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項4】
前記接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は、前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な前記軸(A)からずれて配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項5】
前記ボール(6)の前記軌道(8)との前記接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は、前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直である前記軸(A)周りで、±20°、好ましくは±10°の範囲に配置されている、請求項4に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項6】
前記軌道(8)の前記曲率半径(R-I、R-II、R-III、R-IV)は可変半径である、請求項1から5のいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の軌道要素(2)および/または前記第2の軌道要素(4)は分割された軌道要素として構成され、前記ボール(6)と前記軌道(8)との間の前記接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)を制御するために予荷重機構が設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項8】
前記ベアリングアセンブリ(1)はボールベアリングであり、前記第1の軌道要素(2)は内輪またはシャフトディスクであり、前記第2の軌道要素(4)は外輪またはハウジングディスクである、請求項1から7のいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項9】
前記ボール(6)の前記回転軸(A)は前記ボールベアリング(1)の回転軸(A)に垂直または平行である、請求項8に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項10】
前記ベアリングアセンブリ(1)はリニアベアリングであり、前記第1の軌道要素(2)はレールであり、前記第2の軌道要素(4、12)はキャリッジである、請求項1から7のいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1に記載の第1の軌道要素および第2の軌道要素を備えたベアリングアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
高精度トランスミッション、特にロボットのジョイントまたは風力タービンブレードのベアリングにおいて、そこで使用されるベアリングは大抵、低速で360°未満の回転運動を実行しなければならない。同時に、径方向および軸方向力の両方、傾斜モーメント荷重、および荷重の組み合わせにより、複雑な荷重状況が発生する可能性がある。この目的のため、単一のベアリングとして使用することができるクロスローラベアリングがよく使用されるが、他のベアリングタイプであれば2つのベアリングが必要になるであろう。クロスローラベアリングは剛性が高く、走行精度が高く、間隙が小さい。クロスローラベアリングでは、45°傾斜したベアリングリング間に交互に連続して挿入される円筒ローラが使用される。このようなクロスローラベアリングは回転運動用途および線形運動用途の両方で知られている。
【0003】
しかしながら、円筒ローラでは、ローラと軌道面との間およびローラ側面と対向する軌道との間で摺動、いわゆる滑りがより頻繁に発生し、これは摩耗の増加につながる可能性がある。ローラ自体の間でも摺動が発生し、これはスペーサが有利になることにつながり、これによりひいてはベアリングの複雑さが増し、ベアリングの組み立てに追加の費用がかかる。摺動はまた、このようなベアリングにおける大きなエネルギー損失につながる。さらに、クロスローラベアリングにおいて、特に高荷重下でエッジ応力が発生する可能性がある。このエッジ応力は軌道の特別な輪郭によって弱められる可能性があるが、これらの輪郭は常に個々の荷重ケースに対してのみ提供され、他の荷重ケースでは荷重分散が不十分である。荷重方向がローラの回転軸に近いほど、ローラが支持する荷重は小さくなる。この結果、特定の荷重条件下で、使用可能なローラの50%のみが荷重を支持するという状況が生じる。さらに、いくつかの場合において、ローラが交互に配置されているため、ローラの半分が残りの半分より多くの荷重を支えることがあり、これにより不均一に分散された荷重ゾーンが作り出される。また、ローラを交互に配置すると、ローラを配置するために特別な機構が要求されるため、ベアリングの組み立てに追加の労力がかかる。
【0004】
軸方向力が支配的なときに荷重を支持する他の考えられる解決策は、たとえば、曲げモーメントを追加で支持しなければならないときの軸方向ボールベアリングまたは4点接触ボールベアリングである。しかしながら、これらのベアリングにはいくつかの欠点もある。軸方向ボールベアリングの径方向荷重剛性は最小であり、径方向荷重がベアリングリング間の偏心につながる可能性がある。遠心力により、軸方向ボールベアリングにおけるボールは摺動の増加を示す。ボールと軌道との間には2つの接触点しかないため、これは高い接触圧力につながる可能性がある。ボールと軌道との間の2つの接触点は荷重方向によって変化し、これによりボールの回転軸の動的変化が引き起こされ、したがって高い非一定の摺動およびしたがって大きなエネルギー損失が引き起こされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、エネルギー損失が少なく、径方向および軸方向荷重に対して安定したベアリングであり、コスト効率が良く、製造するのが簡単であるベアリングアセンブリを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は請求項1に記載のベアリングアセンブリによって達成される。
【0007】
ベアリングアセンブリは第1の軌道要素および第2の軌道要素を含み、軌道要素間にボールが配置されている。ボールはそれぞれ、軌道要素上に配置されている軌道上を転動する。
【0008】
ベアリングアセンブリは径方向ベアリングまたは軸方向ベアリングまたはリニアベアリングの形のボールベアリングとすることができる。径方向ベアリングの場合、第1の軌道要素および第2の軌道要素は内輪および外輪に対応する。軸方向ベアリングの場合、内輪および外輪(すなわち、第1の軌道要素および第2の軌道要素)はハウジングディスクおよびシャフトディスクと呼ばれる。リニアベアリングの場合、第1の軌道要素および第2の軌道要素はレールおよびキャリッジに対応する。
【0009】
低い摺動および摩擦損失ならびに高い曲げ剛性および軌道との低い最大接触圧力を可能にするため、ボールはそれぞれ軌道との4つの接触点を有する。これは、各ボールは合計4つの接触点、すなわち、軌道要素ごとに2つの接触点を有することを意味する。接触点において、それぞれの軌道とボールとは同じ接線を有し、曲率半径、すなわち、軌道の湾曲の曲率円の中心点と接触点との間の距離は、この接線に垂直になる。これら4つの接触点により、他のベアリングとは対照的に、接触圧力が分割され、接触応力およびひいては摩耗、摩擦および他の表面損傷がこれによって減少する。
【0010】
軸方向ベアリングとして使用することができる従来の4点接触ボールベアリングも4つの接触点を有するが、これらの接触点は理論上存在するのみである。動作中、4つの理論上の接触点の2つのみが有効であり、これはしたがってこれら2つの有効な接触点での高い接触圧力につながる。これとは対照的に、ここで提案するベアリングアセンブリにおいて、4つの接触点が常に有効であり、接触圧力はより良好に分散される。従来の4点接触ボールベアリングはさらに、接触点の法線方向が軸方向または径方向軸と整列していないため、軸方向および径方向の両方で接触剛性が減少している。さらに、このようなベアリングには、径方向荷重を支持することができるよう、高い軸方向予荷重が要求される。
【0011】
これを達成するため、断面においてベアリングアセンブリは概念的に、ボールの回転軸およびボールの回転軸に垂直な軸によって、時計回りに配置される4つの象限に分割される。ここでボールの回転軸は静止時の概念的な回転軸と見なされる。動作中、ボールの回転軸は固定されておらず、移動することができる。
【0012】
第2の軌道要素の軌道は第1象限および第2象限にあり、第1の軌道要素の軌道は第3象限および第4象限にある。第1象限の軌道の曲率半径の中心点は第3象限にあり、第2象限の軌道の曲率半径の中心点は第4象限にあり、第3象限の軌道の曲率半径の中心点は第1象限にあり、そして第4象限の曲率半径の中心点は第2象限にある。ここでボールの4つの接触点のそれぞれが4つの象限の1つにある。この特別な配置により、各ボールが常にその軌道との4つの接触点を有し、これらの接触点が荷重下でも維持されるということが達成される。従来の4点接触ボールベアリングでは、荷重下での動作時、2つのみまたは多くとも3つの接触点に荷重がかかる。軸方向ボールベアリングは2つの接触点のみで機能し、クロスローラベアリングも2つの接触線のみで機能する。4つの接触点はしたがって、ボールとの接触点ごとに、より低い接触圧力を生成し、たとえば、ベアリングアセンブリの摩耗を低減することができ、同時に接触点の配置により、径方向および軸方向荷重を支持することができる。
【0013】
ボールの使用により、ローラと比較してボールを特定の配向なく設置することができるため、ベアリングアセンブリの組み立てを簡素化することができる。ボールは、クロスローラベアリングから知られているように転動要素を交互に配向することが要求されない完全に対称的な要素であるため、ボールの使用はさらに有利である。これにより、クロスローラベアリングの場合のように要素の半分のみでなく、特別な条件下で機能するときでも、すべての転動要素がすべての軌道間で荷重を支えることが可能になる。さらに、ボールはその中心周りで自由に回転することができ、したがってその表面の任意の点で荷重を伝達することができる。これによりボールの表面が最大に活用され、接触がボール表面全体に分散され、したがって摩耗もボール表面全体に分散される。これとは対照的に、たとえば、クロスローラベアリングでは転動要素表面のいくつかの領域のみが摩耗する。
【0014】
ここに記載のベアリングアセンブリは、ローラベアリングの場合のように常に同じ点で追加の摩耗が発生することなく、総転動体ベアリングとして実現することができる。ボールとボールとが点状に接触するため、ボールの摩耗がほとんど発生しない。しかしながら、接触点はボールの表面上を「移動」し、したがって常に同じ点に荷重がかかるとは限らないため、これはボールについての総荷重が低くなることにつながる。これは、ローラベアリングとは対照的に、ボール体の配向が回転軸に対して変化するためである。あるいは、ケージを使用することもでき、完全なケージの代わりにスペーサを使用することも可能である。このベアリングアセンブリは、スペーサとケージとの両方を使用するためにボールの回転軸に沿った領域に十分なスペースを提供する。
【0015】
一実施形態によれば、第1の軌道要素の軌道の2つの曲率半径の交点はボールの回転軸に垂直な軸上にあり、第2の軌道要素の軌道の2つの曲率半径の交点もボールの回転軸に垂直な軸上にある。これらの軸は、共通の軸、特に回転軸に垂直にあり、ボールの中心点を通過する軸とすることもできる。交点は回転軸上にあることもできる。各軌道はしたがって、その中心点が一致しない2つの曲率半径を有し、各軌道は2つのセグメントで構成され、これらの間に移行部がある。2つの軌道間の移行部または2つの軌道の接触線は、ボールの中心点を通過し、仮想ボール回転軸に垂直である平面上にある。これら2つの曲率半径およびその特別な配置により、ボールが常に軌道との4つの接触点を有するということを保証することができる。2つの曲率半径は異なっていても同一であってもよい。
【0016】
さらなる一実施形態によれば、これらの曲率半径は同一である。これは、曲率半径および4つの象限上のその中心点の対称的な分離につながる。この対称配置により、荷重はボールと軌道との間の4つの接触点上に均等に分散される。
【0017】
さらなる一実施形態によれば、接触点は、ボールの回転軸に垂直に、この軸に対してずれて配置されている。これは、接触点は好ましくはボールの回転軸上およびボールの回転軸に垂直な軸上に配置されることを意味する。このように、ベアリングアセンブリが、2つのみ接触点を有する軸方向または径方向ボールベアリングとして挙動し、これにより径方向または軸方向の剛性を減少させることになるであろうことを防止することができる。さらに、軌道要素のそれぞれに1つの接触点を有する径方向または軸方向ボールベアリングとは対照的に、このベアリングアセンブリにより、荷重の開始以降から直接定義された方法で径方向または軸方向荷重を支持することができる。同様に、軸の1つに1つのみ接触点を有するボールベアリングとは対照的に、荷重の開始以降から直接定義された方法で軸方向または径方向荷重を支持することができる。
【0018】
さらなる一実施形態によれば、接触点は、ボールの回転軸に垂直である軸周りで、±20°、好ましくは±10°の領域に配置されている。ボールと軌道との間の接触点は、用途の場合に応じてこの領域内で変化する可能性がある。この配置により、ボールの回転軸は、荷重がかかっている間でも、周りに接触点が配置されている軸に常に垂直のままであるため、4つの接触点によりボールの特別な運動学が生み出される。
【0019】
一実施形態によれば、曲率半径は可変半径である。これは、それぞれの軌道が円弧軌道、楕円または略卵形であってもよいことを意味する。
【0020】
第1の軌道要素および/または第2の軌道要素は分割された軌道要素として構成することができ、ボールと軌道との間の接触点を制御するために予荷重機構が設けられている。それぞれの軌道要素の予荷重により、接触点の予荷重は、分割された軌道要素の部分間の間隙を調整することによって調整することができる。
【0021】
ベアリングアセンブリは、軸方向ベアリング、径方向ベアリング、またはリニアベアリングとして実現することができる。ベアリングアセンブリのそれぞれの設計に応じて、ボールの回転軸は、ベアリングの回転軸に垂直(軸方向ベアリングの場合)、ベアリングの回転軸に平行(径方向ベアリングの場合)、そして移動方向に垂直(リニアベアリングの場合)とすることができる。
【0022】
ここに記載のベアリングアセンブリにより、それぞれ上述のようなベアリングアセンブリの利点を示す多くの異なるベアリング構成がしたがって可能である。特に、ここに記載のベアリングアセンブリにより、良好な径方向荷重剛性および低い摺動挙動による低い摩耗挙動が提供される。
【0023】
さらなる一態様によれば、上述のようなベアリングアセンブリを備えたトランスミッション、特に高精度トランスミッションが提供される。このような高精度トランスミッションは、たとえば、移動シーケンスの、およびしたがってベアリングが使用されるジョイントの非常に正確な制御が要求されるロボットにおいて使用することができる。このベアリングアセンブリは、たとえば、連続アームまたはアーム部分を接続するため、ロボット用途におけるベアリングとして使用することができる。
【0024】
さらなる利点および有利な実施形態を、説明、図面、および請求項に明記している。ここで特に、説明におよび図面に明記する特徴の組み合わせは純粋に例示的であり、そのためこれらの特徴は個別に存在することも他の方法で組み合わせることもできる。
【0025】
以下において、図面に描く例示的な実施形態を使用して本発明をより詳細に説明する。ここで例示的な実施形態および例示的な実施形態に示す組み合わせは純粋に例示的であり、本発明の範囲を定義するように意図されていない。この範囲は係属中の請求項によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ベアリングアセンブリの概略断面図を示す。
図2】単列軸方向ベアリングとして図1のベアリングアセンブリの概略断面図を示す。
図3】単列径方向ベアリングとして図1のベアリングアセンブリの概略断面図を示す。
図4】複列軸方向ベアリングとして図1のベアリングアセンブリの概略断面図を示す。
図5】複列径方向ベアリングとして図1のベアリングアセンブリの概略断面図を示す。
図6】分割された軌道要素を備えたリニアベアリングとして図1のベアリングアセンブリの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、同一または機能的に同等の要素は同じ参照番号によって示される。
【0028】
図1は、第1の軌道要素2および第2の軌道要素4を備えたベアリングアセンブリ1を示す。軌道要素2、4間に転動要素としてボール6が配置されている。ボール6は、軌道要素2、4上に配置されている軌道8上を転動する。
【0029】
ベアリングアセンブリ1は、ボールベアリングとして、特に径方向または軸方向ベアリングとして、またはリニアベアリングとして構成することができる。径方向ベアリングの場合、第1の軌道要素2および第2の軌道要素4は内輪および外輪に対応する。軸方向ベアリングの場合、第1の軌道要素2および第2の軌道要素4はシャフトディスクおよびハウジングディスクに対応する。リニアベアリングの場合、第1の軌道要素2および第2の軌道要素4はレールおよびキャリッジに対応する。
【0030】
図1に示すベアリングアセンブリ1において、軌道8は概念的に4つの象限I、II、III、IVに分割することができる。4つの象限I、II、III、IVへの分割は、ボールの回転軸Aおよび回転軸Aに垂直である軸Aによってもたらされる。第2の軌道要素4の軌道は2つのセグメント8-I、8-IIによって形成され、第1象限Iおよび第2象限IIにあり、第1の軌道要素2の軌道は2つの軌道セグメント8-IIIおよび8-IVによって形成され、第3象限IIIおよび第4象限IVにある。
【0031】
ボール6は、2つの接触ゾーン10-Iおよび10-IIに位置する2つの接触点P-I、P-IIで軌道8-I、8-IIと接触し、そして接触ゾーン10-IIIおよび10-IVに位置する2つの接触点P-III、P-IVで軌道8-IIIおよび8-IVと接触する。ボール6が接触点P-I、P-II、P-III、P-IVで軌道8に確実に接触するよう、軌道8は特別な設計を有する。軌道セグメント8-Iの曲率半径R-Iの中心点M-Iは第3象限IIIにあり、軌道セグメント8-IIの曲率半径R-IIの中心点M-IIは第4象限IVにあり、軌道セグメント8-IIIの曲率半径R-IIIの中心点M-IIIは第1象限Iにあり、軌道セグメント8-IVの曲率半径R-IVの中心点M-IVは第2象限IIにある。
【0032】
図1に示す実施形態において、第1象限Iおよび第2象限IIの曲率半径R-I、R-IIの交点は軸A上にあり、第3象限IIIおよび第4象限IVの曲率半径R-III、R-IVの交点も軸A上にある。しかしながら、交点は軸A上になくてもよい。ここで曲率半径Rは、曲率を定義する半径、すなわち、軌道8と中心点Mとの間の距離を意味すると理解される。特に、図1に示すように、M-IおよびM-IIIを通る直線は交点SでM-IIおよびM-IVを通る直線と交差する。ここに示す場合、交点Sは同時に回転軸Aと軸Aとの交点上にあるが、これは絶対必要というわけではない。軌道8の曲率半径Rのこの特定の設計により、ボール6が接触点P-I、P-II、P-III、P-IVで軌道8に接触することが保証される。接触点P-I、P-II、P-III、P-IVは、軸A周りで±20°、特に±10°の領域における接触ゾーン10にある。
【0033】
ボールベアリング1は軸方向または径方向荷重を支持することができるのみではないということを保証するため、接触点P-I、P-II、P-III、P-IVは、軸Aに対して常にずれている。このようにボール6は常に、それぞれ接触ゾーン10-I、10-II、10-IIIおよび10-IVに位置する軌道8との4つの接触点P-I、P-II、P-III、P-IVを有し、良好な径方向荷重剛性ならびに良好な荷重および圧力分布、ひいては低摩耗挙動が達成される。
【0034】
ベアリングアセンブリ1は、図2から図6に示すように、異なる構成で使用することができる。
【0035】
図2に示すように、ベアリングアセンブリは単列軸方向ボールベアリングとして使用することができ、この場合、回転軸Aはベアリング回転軸Aに垂直である。ここで接触ゾーン10-I、10-II、10-III、10-IVが周りに配置される軸Aは、ベアリングの回転軸Aに平行にある。
【0036】
あるいは、図3に示すように、ベアリングアセンブリ1は単列径方向ベアリングとして使用することもできる。この場合、回転軸Aはベアリング1の回転軸Aに平行である。接触ゾーン10-I、10-II、10-IIIおよび10-IVが周りに配置される軸Aは、この場合、ベアリング回転軸Aに垂直である。
【0037】
ベアリングアセンブリ1は複列軸方向ボールベアリング(図4)としてまたは複列径方向ボールベアリング(図5)としても使用することができる。複列軸方向ボールベアリングの場合、回転軸Aはベアリングの回転軸Aに垂直であり、複列径方向ボールベアリングの場合、回転軸Aはベアリングの軸Aに平行である。
【0038】
このような複列軸方向または径方向ボールベアリングの場合、内輪2または外輪4を分割輪(図示せず)として構成することができる。この場合、ボール6と軌道8との間の接触点P-I、P-II、P-III、P-IVまたは接触ゾーン10を制御するため、予荷重機構、たとえば、ねじ接続を使用することができる。それぞれのリング2、4の予荷重により、接触点P-I、P-II、P-III、P-IVの予荷重は、分割輪2、4の部分間の間隙を調整することによって調整することができる。単列軸方向または径方向ボールベアリングも、分割輪2、4および予荷重機構で実現することができる。
【0039】
ベアリングアセンブリ1は、図6に示すようにリニアベアリングとして使用することもできる。この場合、第1の軌道要素2はレールによって、第2の軌道要素はキャリッジ12によって形成され、要素4’がこれから分離されている。また、この場合、第2の軌道要素4’は、接触点P-I、P-II、P-III、P-IVまたは接触ゾーン10-I、10-II、10-III、10-IVを対応して調整するため、予荷重要素14によってその予荷重またはその間隙を調整することができる。図6のリニアベアリング1の場合、ボール回転軸Aは、キャリッジ12におけるベアリング1の移動方向に垂直である。
【0040】
ここに記載のボールベアリングにより、良好な径方向および軸方向荷重剛性ならびにより低い摩擦による低摩耗挙動を実現することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ベアリングアセンブリ
2 第1の軌道要素
4 第2の軌道要素
6 ボール
8 軌道
10 接触ゾーン
12 キャリッジ
14 予荷重機構
I、II、III、IV 象限
ベアリング回転軸
ボール回転軸
ボール回転軸Aに垂直な軸
M 曲率半径の中心点
P 接触点
R 曲率半径
S 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軌道要素(2)および第2の軌道要素(4)を備えたベアリングアセンブリ(1)であって、前記第1の軌道要素(2)と前記第2の軌道要素(4)との間にボール(6)が配置され、前記ボール(6)は、前記第1の軌道要素(2)および前記第2の軌道要素(4)上に配置されている軌道(8)上を転動する、ベアリングアセンブリにおいて、断面において、前記ベアリングアセンブリ(1)は概念的に、ボール(6)の回転軸(A)および前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な軸(A)によって、時計回りに配置される4つの象限(I、II、III、IV)に分割され、前記ボール(6)は前記軌道(8)との4つの接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)を有し、各接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は前記4つの象限(I、II、III、IV)の1つにあり、前記第2の軌道要素(4)の前記軌道(8)は第1象限(I)および第2象限(II)にあり、前記第1の軌道要素(2)の前記軌道(8)は第3象限(III)および第4象限(IV)にあり、前記第1象限(I)の前記軌道(8-I)の曲率半径(R-I)の中心点(M-I)は前記第3象限(III)にあり、前記第2象限(II)の前記軌道(8-II)の曲率半径(R-II)の中心点(M-II)は前記第4象限(IV)にあり、前記第3象限(III)の前記軌道(8-III)の曲率半径(R-III)の中心点(M-III)は前記第1象限(I)にあり、前記第4象限(IV)の前記軌道(8-IV)の曲率半径(R-IV)の中心点(M-IV)は前記第2象限(II)にあり、前記接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は、前記ボール(6)の前記回転軸(A )に垂直な前記軸(A )に対してずれて配置され、前記ボール(6)の前記軌道(8)との前記接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)は、前記ボール(6)の前記回転軸(A )に垂直である前記軸(A )周りで、±10°の範囲に配置されていることを特徴とする、ベアリングアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の軌道要素(2)の前記軌道(8-III、8-IV)の前記2つの曲率半径(R-III、R-IV)の交点は前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な軸上にあり、前記第2の軌道要素(4)の前記軌道(8-I、8-II)の前記2つの曲率半径(R-I、R-II)の交点は前記ボール(6)の前記回転軸(A)に垂直な軸上にある、請求項1に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項3】
前記曲率半径(R-I、R-II、R-III、R-IV)は同一である、請求項1または2に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項4】
前記軌道(8)の前記曲率半径(R-I、R-II、R-III、R-IV)は可変半径である、請求項1からのいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の軌道要素(2)および/または前記第2の軌道要素(4)は分割された軌道要素として構成され、前記ボール(6)と前記軌道(8)との間の前記接触点(P-I、P-II、P-III、P-IV)を制御するために予荷重機構が設けられている、請求項1からのいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項6】
前記ベアリングアセンブリ(1)はボールベアリングであり、前記第1の軌道要素(2)は内輪またはシャフトディスクであり、前記第2の軌道要素(4)は外輪またはハウジングディスクである、請求項1からのいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項7】
前記ボール(6)の前記回転軸(A)は前記ボールベアリング(1)の回転軸(A)に垂直または平行である、請求項に記載のベアリングアセンブリ。
【請求項8】
前記ベアリングアセンブリ(1)はリニアベアリングであり、前記第1の軌道要素(2)はレールであり、前記第2の軌道要素(4、12)はキャリッジである、請求項1からのいずれか一項に記載のベアリングアセンブリ。
【国際調査報告】