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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】カンナビノイドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/84 20060101AFI20230912BHJP
   C07D 311/58 20060101ALI20230912BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20230912BHJP
   C07C 39/23 20060101ALI20230912BHJP
   B01D 9/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C07C37/84
C07D311/58
C07D307/91
C07C39/23
B01D9/02 601H
B01D9/02 601J
B01D9/02 601K
B01D9/02 602B
B01D9/02 604
B01D9/02 606
B01D9/02 609A
B01D9/02 610Z
B01D9/02 615A
B01D9/02 617
B01D9/02 619Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514802
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2021073804
(87)【国際公開番号】W WO2022049007
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2013765.9
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シモン・ロフト
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ・モンテジャノ・ロペス
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジェームズ・シルコック
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD15
4H006BD70
4H006BD84
4H006FC52
4H006FE13
(57)【要約】
医薬品業界は、医薬の安全性、有効性、及び品質を確保するために厳しく規制されており、薬剤の変色は、薬剤リコールの主な原因の1つである。本発明の目的は、安定で実質的に純粋な、医薬品における使用のためのカンナビノイド類の改良された製造方法を提供することである。そのような、安定で実質的に純粋なカンナビノイド類の医薬品における使用は、投薬に対する患者のコンプライアンスを改善することとなる。この方法の主な工程は、脱炭酸、抽出、脱ろう、及び結晶化である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)脱炭酸工程、
b)粗抽出物を生成するための抽出工程、及び
c)脱ろう及び結晶化を組み合わせた工程であって、サブ工程が、
i)溶媒中のアルカンを冷却により沈殿させ、濾過によりそれらを除去するサブ工程、
ii)部分蒸留により溶媒を除去するサブ工程、
iii)溶媒をヘプタンに交換するサブ工程、
iv)水性相分離によって残りの溶媒を除去し、ヘプタン溶液を得るサブ工程、
v)ヘプタン溶液を加熱してそれを濾過するサブ工程、
vi)溶液を一定速度で撹拌しながら冷却するサブ工程、
vii)溶液に結晶核を加え、結晶核を成長させ、懸濁液を得るサブ工程、
viii)懸濁液を冷却、撹拌し、濾過し、洗浄し、生成物を得るサブ工程、及び
ix)生成物を脱液及び乾燥するサブ工程、
を含む工程、
を含む方法によって得られる、安定した実質的に純粋なカンナビノイド。
【請求項2】
カンナビノイドが、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジオーコルとしても知られるカンナビジオール-C1(CBD-C1)、ノル-カンナビジオールとしても知られるカンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジオール-C6(CBD-C6)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピル変異体(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピル変異体(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、及びテトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、からなる群から選択され得る、請求項1に規定の方法。
【請求項3】
カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)である、請求項1に規定の方法。
【請求項4】
抽出工程が、温度25℃、圧力100Bargで液体CO2を使用して実施される、請求項1に規定の方法又は請求項2から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
脱ろう工程が溶媒としてメタノールを使用する、請求項1に規定の方法又は請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
脱ろう工程が0℃~5℃の間の温度で実施される、請求項1に規定の方法又は請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水性相分離が、3回又は3回未満の水性洗浄からなる、請求項1に規定の方法又は請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
脱ろう工程が、バナジウムを含まない濾過助剤を使用する、請求項1に規定の方法又は請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
脱ろう工程が、代替濾過助剤を使用する、請求項1に規定の方法又は請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
脱ろう工程が、濾過助剤を使用しない、請求項1に規定の方法又は請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
キレート剤が溶媒交換に使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
キレート剤がクエン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1つ又は複数の抗酸化剤が添加される、請求項1に規定の方法又は請求項2から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数の抗酸化剤がクエン酸又はパルミチン酸アスコルビルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
CBDが>95%、より好ましくは96%(w/w)より高く、より好ましくは97%(w/w)、より好ましくは98%(w/w)、最も好ましくは99%(w/w)以上の純度を有する、請求項1から14のいずれか一項に規定の生成物。
【請求項16】
THCが0.15%未満で存在する、請求項1から15のいずれか一項に規定の生成物。
【請求項17】
CBDVが最大で1%存在する、請求項1から16のいずれか一項に規定の生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定で実質的に純粋なカンナビノイドを調製する方法に関する。カンナビノイドは、医薬品製剤の活性成分として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
医薬品業界は、医薬の安全性、有効性、及び品質、並びに製品情報の関連性及び正確性を確保するために、厳しく規制されている。薬剤の規制当局及び製造業者は、医薬の安全で適切な使用を保証する中で、製品の外観と物理的特性の役割をより詳しく調べている。サイズ、色、及び形が異なる等、物理的な外観が異なる互換性のある薬剤は、投薬ミスにつながるか、又は処方された治療に対する消費者の了解が減少し、患者のコンプライアンスを損なう可能性があるという懸念がある。
【0003】
薬剤の変色は、薬剤リコールの主な原因の1つである(Ahuja S. & Dong M. Elsevier、2005年2月9日、「Handbook of Pharmaceutical Analysis by HPLC」)。変色とは、指定された外観からの剤形の色の変化を指す。製造方法中、又は薬剤製品の輸送、流通、及び/又は保管中の交差汚染の結果として発生する可能性がある。薬剤製品の変色は、薬剤製品の効力、分解生成物、及び不純物に影響を与える可能性があるため、変色が発生した場合、及び変色の原因となっている化学物質が特定された場合、薬剤製品をリコールする必要がある。
【0004】
カンナビノイド類は、様々な健康状態を治療するための医薬としての使用について、過去に広く記載されてきた。近年、カンナビノイドベースの医薬は、医薬品製品として多くの国で患者にますます利用できるようになっている。現在、市場で市販されているカンナビノイドベースの薬剤製品は4種類ある。これらは、エイズ及び化学療法誘発性吐き気と嘔吐の患者の食欲不振を治療するために使用される合成テトラヒドロカンナビノール(THC)であるドロナビノール(Marinol(登録商標))、化学療法誘発性吐き気と嘔吐の治療に使用される、合成カンナビノイドでTHCの類似体であるナビロン(Cesamet(登録商標))、THC、CBD、及びその他の植物由来のカンナビノイド類及び非カンナビノイドを含む複雑な植物混合物で、多発性硬化症による中等度から重度の痙縮を伴う成人患者の症状改善の治療としてヨーロッパで承認されているナビキシモル(Sativex(登録商標))、並びに、米国で1歳以上の患者におけるレノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群又は結節性硬化症複合体に関連する発作の治療に承認されている、植物由来の精製CBDを含むカンナビジオール(Epidiolex(登録商標))である。
【0005】
Epidiolexは、レノックス・ガストー症候群(LGS)及びドラベ症候群(DS)に関連する発作の治療を提供するために開発され、LGS及びDS患者は、1つ又は複数の抗てんかん薬(AED)に対して治療抵抗性であると見なされることを特徴としている。(国際公開第2019/97238号及び国際公開第2016/203239号を参照)。薬剤製品は、マイナーなカンナビノイド不純物を含まないCBDの合成製剤、及びマイナーなカンナビノイド不純物を高レベルで有する粗抽出物と比較して、より高い治療効果を可能にする特定のカンナビノイドプロファイルを達成するために精製された植物起源のCBDを含む。これには、薬剤製品の仕様に準拠するために、慎重に管理された調製及び精製方法が必要である。国際公開第2019/207319号は、単に粗抽出物を使用する代わりに、植物起源のカンナビスを使用して精製することの重要性を示している。
【0006】
上記で概説したカンナビノイド類の医薬での現代的な使用により、特に一貫した外観と不純物プロファイルを示す安定した形で、これらのカンナビノイド類を製造するより効果的な方法を見つける必要があった。
【0007】
医薬品における使用のためのCBDの標準的な調製方法は、図1の左側に示されている。簡単に言えば、方法には、粉砕されたCBD植物原料(BRM)の脱炭酸が含まれ、続いて液体CO2で抽出して粗CBD抽出物を生成する。次に、この粗抽出物を脱ろうして精製抽出物を生成し、それ自体を結晶化してCBD活性医薬品成分(API)を生成する。したがって、標準的な方法では、2種類のCBD抽出物、粗抽出物と精製抽出物を単離する必要がある。
【0008】
この方法は、米国特許第10583096号で更に詳しく説明されている。乾燥粉砕されたBRMは、脱炭酸撹拌パン(DAP)で約150℃に加熱することにより脱炭酸され、植物に天然に存在するカンナビジオール酸(CBDA)を活性CBDに変換する。次に、これを60bar/10℃の液体CO2で抽出して、約60%~80%w/wのCBDを含む未精製のCBD抽出物を生成する。抽出物の残りは、他のカンナビノイド、長鎖アルカン、テルペン、ステロール、及びトリグリセリドを含む様々な不純物で構成されている。CBD調製物の精製及び特徴付けに関するさらなる方法は、英国特許第2548873号及び英国特許第2574321号に開示及び記載されている。
【0009】
脱ろうには、エタノール中の未精製抽出物の2.0容量溶液からの長鎖ワックス状アルカン不純物の沈殿が含まれる。これは、冷凍庫で50時間かけて約-20℃まで冷却するか、又は温度制御ユニットを使用して4時間かけて-15℃から-25℃まで冷却することによって達成される。次いで沈殿物は濾過により除去される。抽出物から最後の微量のエタノールを除去することは困難である場合があり、時間がかかる場合がある。精製抽出物中の3%w/wを超えるレベルのエタノールは、結晶化収率に大きな影響を与える可能性がある。エバポレーターの容量及び規模の管理性により、脱ろうのために抽出バッチを分割する必要があり、CBD製造方法のボトルネックにつながる。
【0010】
結晶化は、単離された精製抽出物から行われる。CBD APIは、n-ヘプタン2.0容量中のリファインされた(熱濾過された)抽出液から結晶化される。溶液に0.1%w/wの結晶CBDを12℃で結晶核として加え、結晶核が沈殿(成長)を開始するまで2時間待ってから、懸濁液を非常にゆっくりと(24時間かけて)-18℃~-20℃に冷却する。懸濁液を-18℃~-20℃で更に24時間撹拌して、濾過前に収量分を生成させる。濾過された固体は、ショートスラリー及び置換洗浄(-18℃~-20℃及び10℃で)、4×0.25容量を用いて30分間、10℃の再スラリー化を1.0容量の溶媒で、合計2.0容量のヘプタン洗浄溶媒で洗浄される。洗浄されたAPIは、20℃~30℃の撹拌フィルター乾燥機で乾燥される。したがって、全体的な結晶化方法は非常に長くなり、高純度及び高安定性のCBDを生成する方法効率を改善する必要があり、より単純でより効率的な洗浄方法が必要である。
【0011】
多くの出版物がカンナビノイドの変色の問題を議論している。
【0012】
米国特許第10155176号は、テルペン、フラボノイド、及び他の植物成分の配列を任意に更に含むカンナビノイド製品の製造方法を開示している。それは、特に脱ろう工程も結晶化工程もなしに、吸着及び濾過システムを使用することを開示している。カンナビノイド含有抽出供給材料から不純物を除去するための吸着剤による前処理について説明している。それが議論しているそのような不純物の1つはクロロフィルであり、供給材料から除去されると味が改善され、より明るい色の最終製品が生産される。得られたカンナビノイド製品は、30%~95%のカンナビノイドを含む。安定性試験は開示も言及もされていない。
【0013】
米国特許第10604464号は、クロロフィルの存在により緑色の粗カンナビノイド抽出物を開示しており、脱色ゾーンを使用してこれを除去し、抽出物の色を緑色から琥珀色に変化させている。これにより、製造方法に余分な工程が必要になり、方法効率が低下する。この文書は、結果として得られる組成物の長期安定性に関するデータを提供していない上、短期安定性データも提供していない。
【0014】
カンナビスから農薬を除去するために販売されているFlorisil(登録商標)等の市販の濾過助剤が存在する。それは、例えばアセフェート、アセタミプリド等の、カンナビス抽出物から除去された様々な農薬の例を示している。繰り返しになるが、カンナビノイドの安定性に関するデータも、そのような濾過助剤の使用による純度レベルに関するデータも開示されていない。
【0015】
明らかに、安定で実質的に純粋な医薬品における使用のためのカンナビノイド類を製造するための、より効率的で合理化された方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2019/97238号
【特許文献2】国際公開第2016/203239号
【特許文献3】国際公開第2019/207319号
【特許文献4】米国特許第10583096号
【特許文献5】英国特許第2548873号
【特許文献6】英国特許第2574321号
【特許文献7】米国特許第10155176号
【特許文献8】米国特許第10604464号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Ahuja S. & Dong M. Elsevier、2005年2月9日、「Handbook of Pharmaceutical Analysis by HPLC」
【非特許文献2】Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、Chapter 1、3~15頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、カンナビノイド含有薬剤製品を製造する改善された方法を提供することであった。そのような薬剤製品は、薬剤開発を実行可能にするために、カンナビノイド活性の良好な安定性を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、
a)脱炭酸工程、
b)粗抽出物を生成するための抽出工程、及び
c)脱ろう及び結晶化を組み合わせた工程であって、サブ工程が、
i)溶媒中のアルカンを冷却により沈殿させ、濾過によりそれらを除去するサブ工程、
ii)部分蒸留により溶媒を除去するサブ工程、
iii)溶媒をヘプタンに交換するサブ工程、
iv)水性相分離によって残りの溶媒を除去し、ヘプタン溶液を得るサブ工程、
v)ヘプタン溶液を加熱してそれを濾過するサブ工程、
vi)溶液を一定速度で撹拌しながら冷却するサブ工程、
vii)溶液に結晶核を加え、結晶核を成長させ、懸濁液を得るサブ工程、
viii)懸濁液を冷却し、撹拌し、濾過し、洗浄し、生成物を得るサブ工程、及び
ix)生成物を脱液及び乾燥するサブ工程、
を含む工程、
を含む方法によって得られる安定した実質的に純粋なカンナビノイドが提供される。
【0020】
好ましくは、カンナビノイドは、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジオーコルとしても知られるカンナビジオール-C1(CBD-C1)、ノル-カンナビジオールとしても知られるカンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジオール-C6(CBD-C6)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピル変異体(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピル変異体(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、及びテトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、からなる群から選択され得る。
【0021】
より好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール(CBD)である。
【0022】
本発明のさらなる態様において、抽出工程は、温度25℃及び圧力100barで液体CO2を使用して実施される。
【0023】
好ましくは、脱ろう工程は溶媒としてメタノールを使用する。
【0024】
好ましくは、脱ろう工程は、0℃~5℃の間の温度で実施される。
【0025】
好ましくは、水性相分離は、3回未満の水性洗浄からなる。
【0026】
本発明のさらなる態様では、脱ろう工程は、バナジウムを含まない濾過助剤を使用する。
【0027】
好ましくは、脱ろう工程は代替濾過助剤を使用する。
【0028】
別法として、脱ろう工程は濾過助剤を使用しない。
【0029】
本発明のさらなる態様では、キレート剤が溶媒交換に使用される。
【0030】
好ましくは、キレート剤はクエン酸である。
【0031】
本発明のさらなる態様では、1つ又は複数の抗酸化剤が添加される。
【0032】
好ましくは、1つ又は複数の抗酸化剤は、クエン酸又はパルミチン酸アスコルビルである。
【0033】
本発明のさらなる態様において、CBDは、>95%、好ましくは96%(w/w)より高く、より好ましくは97%(w/w)、更により好ましくは98%(w/w)、最も好ましくは99%(w/w)以上の純度を有する。
【0034】
好ましくは、THCは0.15%未満で存在する。
【0035】
好ましくは、CBDVは最大で1%存在する。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、
a)カンナビジオール(CBD)植物原料の脱炭酸工程、
b)粗抽出物を生成するための工程(a)の反応混合物の抽出工程、及び
c)工程(b)の粗抽出物の脱ろうと結晶化を組み合わせた工程であって、サブ工程が、
i)工程(b)の粗抽出物の溶媒中のアルカンを冷却により沈殿させ、濾過によりアルカンを除去するサブ工程、
ii)部分蒸留によりサブ工程(i)の反応混合物の溶媒を除去するサブ工程、
iii)サブ工程(ii)の反応混合物をヘプタンに溶媒交換するサブ工程、
iv)サブ工程(iii)の反応混合物の残留溶媒を水性相分離によって除去し、ヘプタン溶液を得るサブ工程、
v)サブ工程(iv)のヘプタン溶液を加熱し、それを濾過するサブ工程、
vi)サブ工程(v)の反応混合物を一定速度で撹拌しながら冷却するサブ工程、
vii)サブ工程(vi)の反応混合物に結晶核を加え、結晶核を成長させ、懸濁液を得るサブ工程、
viii)サブ工程(vii)の懸濁液を冷却し、撹拌し、濾過し、洗浄するサブ工程、及び
ix)サブ工程(viii)の反応材料を脱液及び乾燥して、安定した実質的に純粋なカンナビノイドを得るサブ工程、
を含む工程、
を含む方法が提供される。
【0037】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下に更に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】短縮されていない方法及び短縮された方法のグラフによる比較を示す図である。
図2】様々な温度での脱ろう後の脱ろう抽出物中の総アルカンレベルのプロットを示す図である。
図3】連続した水溶液洗浄後にヘプタン溶液に残っている%w/w残留メタノールのプロットを示す図である。
図4】2日後及び55日後の方法Bの薬剤製品に対する方法Aの薬剤製品の外観を示す図である。薬剤製品に処方されるAPIバッチは、方法A(対照)を表す800346990及び800347540、並びに方法Bを表すバッチ800342580及び800340900であった。
図5】55日間にわたる方法A及び方法Bの薬剤製品の色の変化を示す、集計結果の3-D散布図を示す図である。2つの異なる薬剤製品間でトレンドに有意な差が見られる。
図6】微量金属である鉄、アルミニウム、マグネシウム、及びバナジウムの元素分析結果をグラフで示す。黄色のボックスは方法A API及び濾過助剤APIを使用しない短縮方法を表し、緑色のボックスはセライト濾過助剤を使用した短縮方法APIであり、赤色のボックスは代表的な短縮方法APIである。
図7】添加実験中の方法A及びBの正及び負の対照と比較した、高バナジウム及び低バナジウムの添加実験の外観を示す図である。より低い添加の酸化バナジウムは、14日間にわたる方法B対照の色の変化の次に来る。
図8】添加実験における低い添加の酸化バナジウム及び方法B対照におけるRRT 0.79の不純物成長を示すクロマトグラムである。不純物のピークは赤丸で囲まれている。
図9】短縮方法API及び対照方法A APIと比較した、濾過助剤なしAPIの比色結果の3-D散布図を示す図である。
図10】最初の時点(0日)と2番目の時点(7日)で代替濾過助剤を使用して得られた薬剤製品を示す図である。
図11】最初の時点、及び7、14、21、28、56、84、及び168日後の25℃及び40℃でのバッチの外観を示す図である。
図12】実施例4からの25℃及び40℃での3つすべての方法B濾過助剤なしバッチのCBDアッセイ結果を示す図である。
図13】実施例4からの25℃及び40℃での3つすべての方法B濾過助剤なしバッチの総分解物の結果を示す図である。
図14】3つの方法B濾過助剤なしバッチ対方法Aバッチの傾向を比較する、40℃での比色試験からのb*値を示す図である。b*値は、反対色理論に基づく青色又は黄色である。
図15】3つの方法B濾過助剤なしのバッチ対方法Aのバッチの傾向を比較した、40℃での総分解物の結果を示す図である。
図16】様々なキレート剤、クエン酸、及びEDTAを試験するために使用される、様々な条件下で製造された薬剤製品の比色結果の3-D散布図を示す図である。
図17】不純物プロファイル、並びに図16と同じ条件下で製造された薬剤製品に存在するCBDパーセンテージを示す図である。
図18】5つの異なる抗酸化剤を使用した場合に、3つの異なる時点で存在する分解物のパーセンテージを示す図である。
図19】異なる抗酸化剤を使用した最初の時点及び27日目のCBDゲルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
本発明を説明するために使用されるいくつかの用語の定義を以下に詳述する。
【0040】
「実質的に純粋な」カンナビノイドは、95%(w/w)を超える純度で存在するカンナビノイドとして定義される。より好ましくは96%(w/w)を超え、より好ましくは97%(w/w)、より好ましくは98%(w/w)、最も好ましくは99%(w/w)以上である。
【0041】
「方法A」は、標準的な短縮されていない方法を説明するために使用される。
【0042】
「方法B」は、本特許請求の短縮された方法を説明するために使用される。
【0043】
「代替濾過助剤」は、次の濾過助剤:Harborlite 800 (Fisher社)及びCelpure (Imerys Filtration社)を説明するために使用される。
【0044】
本出願に記載されるカンナビノイド類は、それらの標準的な略語とともに以下に列挙される。
【0045】
【表1A】
【0046】
【表1B】
【0047】
【表1C】
【0048】
活性医薬品成分
多くの既知のカンナビノイドがあり、本発明による方法を使用して、安定で実質的に純粋なカンナビノイドを製造することができる。そのようなカンナビノイド類は、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジオーコルとしても知られるカンナビジオール-C1(CBD-C1)、ノル-カンナビジオールとしても知られるカンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジオール-C6(CBD-C6)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピル変異体(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピル変異体(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、及びテトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、からなる群から選択され得る。このリストは網羅的なものではなく、参照用に本出願で同定されたカンナビノイドを詳述するだけである。これまでに、100を超える異なるカンナビノイドが特定されており、これらのカンナビノイド類は次のように異なる群:植物性カンナビノイド、内因性カンナビノイド、及び合成カンナビノイド、に分けることができる。
【0049】
本発明による方法はまた、Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、Chapter 1、3~15頁に開示されているように、安定で実質的に純粋なカンナビノイドを製造するために使用することもできる。
【0050】
したがって、本発明による方法は、すべてのカンナビノイドを製造するために使用することができるが、CBDを使用して例示される。
【0051】
抽出
脱炭酸CBD BRMの抽出効率は、脱炭酸の前に材料をペレット化及び粉砕することでかさ密度が増加したことにより改善された。このかさ密度の増加により、BRM1kg当たりのCO2の総量を減らしながら充填質量を増やすことができ、高収量のCBD抽出物が得られることが示された。ペレット化されたBRMに由来し、55kgCO2/kgの脱炭酸BRMを使用して抽出された1つのフルスケールバッチでは、良好な抽出効率(約90%)及び高い生成物アッセイ(74%)を得た。抽出効率は、温度と圧力を上げる(60bar、10℃から100bar、25℃)ことによって改善された。
【0052】
短縮脱ろう及び溶媒交換
アルカン不純物は、メタノール中の未精製抽出物の2.0容量溶液から、0℃~5℃に冷却すると沈殿する(脱ろう)。メタノールは部分蒸留によって除去され、n-ヘプタンへの溶媒交換の後、残りのメタノールは水性相分離(水洗浄)によって除去される(図1を参照)。
【0053】
脱ろう溶剤
直接対比(2.0容量、60分間、20℃)の脱ろう実験では、メタノール脱ろうはエタノール脱ろうに匹敵し、両方の溶媒で精製抽出物中の低レベルのアルカン(0.03%w/w)を得る。Table 2(表2)参照のこと。メタノールは、脱ろう後に蒸留及び水性分離(洗浄)によって容易に除去されるため、結晶化収率への影響が最小限に抑えられる。
【0054】
実験は20gの抽出物、及び室温で1時間精製された物質で実施された。濾過に続いて、アルカン分析のために試料を濾液から採取した。結果は、両方の例で、アルカンのレベルが室温で1時間の撹拌時間でも非常に低く、方法Aよりも大幅に短いことを示した。これらの溶液は乾燥まで蒸留して精製抽出物を単離し、結晶化を実施した。次いで、単離された物質をアルカンレベルについて分析した。Table 2(表2)は、結晶化前のバッチ溶液、及びその後の単離された最終生成物のクロマトグラフィーにより取得したアルカン含有量を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
データは、メタノールがアルカンの除去においてより効率的な溶媒であることを示した。最終生成物の分析では、エタノール精製から単離された物質のレベルが低いことが示されたが、メタノール精製からのレベルも非常に低く、安価で大量供給されるプラント製造にはメタノールが好まれたため、メタノールが溶媒として選択された。
【0057】
脱ろう温度
一連の脱ろう実験を様々な温度で実施し、実験用脱ろう温度で液体バッグ濾過システム(GAF(登録商標)バッグ)で濾過した。得られたすべての精製抽出物試料で低レベルのアルカンが得られた(<0.25%w/w)。最低のアルカンレベルは、0℃~5℃での脱ろうから得られた(図2を参照)。
【0058】
アルカンケーキ洗浄
メタノール溶液の濾過後、アルカンケーキを冷(0℃~5℃)メタノールで洗浄して、保持された微量のCBDを除去した。液体の濾過は、2.0容量の洗浄溶媒を0.5容量の洗浄液に分割した場合(より大きな1回の洗浄とは対照的に)、より高速であると報告された。ケーキが乾燥してひび割れする前に、各洗浄液をアルカンに添加した。
【0059】
濾過助剤
特に製造規模が大きい場合に、濾過時間を大幅に短縮するので、アルカンの濾過を補助するために濾過助剤を使用した。
【0060】
溶媒交換
脱ろう後、部分蒸留及び水性相への分配(水洗浄)により、メタノールを効果的に除去した。蒸留後、メタノール溶液をn-ヘプタンに溶媒交換し、2.0容量の精製水と激しく混合した。水性層(メタノールを含む)を有機相から分離し、除去した。これにより、典型的には、得られたヘプタン溶液中のメタノールのレベルが非常に低い結果となり、結晶化工程に持ち込まれた。メタノールは、2回目の水性洗浄後に<0.5% w/wのレベルに減少し、3回目の洗浄後には非常に低いレベルに減少したことが示された(図3を参照)。これは、3回の水性洗浄で十分以上であることを示唆した。
【0061】
改良された結晶化
方法効率を改善するために、改良された結晶化方法が提案された。冷却時間(結晶核添加温度から-18℃~-20℃の単離温度まで)は、粒径に悪影響を与えることなく、24時間から16時間に首尾よく短縮された。-18℃から-20℃への撹拌時間は、収量に影響を与えることなく、24時間から6時間に短縮された。結晶核の成長時間は、120分から45分に短縮された。
【0062】
置換洗浄を除去することにより、洗浄方法の複雑さが軽減された。洗浄効率は、個々の洗浄量を増やすことで更に改善された(ケーキの湿潤性をより良くするため)。洗浄回数を5回から3回に減らし、総洗浄容量を2.0容量に維持した。改良された結晶化方法により、プラントでの結晶化時間が約24時間短縮された。
【0063】
薬剤製品の変色
方法A(非短縮)ルートで製造されたCBD API を使用したCBD薬剤製品と比較して、方法B(短縮)ルートで製造されたCBD APIを使用したCBD薬剤製品では、色の違いが観察された。
【0064】
色の違いを評価するために、2つの方法A及び2つの方法Bの薬剤製品を分析するための安定性研究を実施した。方法Aの結果は、方法Bの薬剤製品バッチを評価する際の対照として機能する。条件は「使用中」の研究と同様であり、ここで、薬剤製品の入ったねじ蓋付きの琥珀色のボトルをバッチごとに1つ製造し、室温(商業的な保管をシミュレートするために実験室の温度を20℃±5℃に維持)で保管し、試験用の試料調製のために開封した。その後、指定された時点で同じボトルを再度開けた。試験は、外観及び比色の試験方法を使用して55日間にわたって実施された。
【0065】
最初の時点で、方法Aと方法Bの両方の溶液は、透明で無色から黄色に見えた。2日後、透明から黄色のままであった方法Aの溶液と比較して、方法Bの溶液は、著しくより黄色くなった。図4を参照。時間が経つにつれて、方法Bの溶液はより濃い黄色になり、55日後には黄色からわずかにオレンジ色になった。この55日間の方法Bの溶液の色の変化は、図5に記録されている。
【0066】
Table 3.1(表3)に示す方法Aの薬剤製品(バッチ800347540)、及びTable 3.2(表4)に示す方法Bの薬剤製品(バッチ800340900)の55日間にわたる安定性の結果を記録した。溶液の外観、並びにUPLC(超高性能液体クロマトグラフィー)アッセイを使用して、分解物及びCBD濃度を記録した。この結果は、図4の視覚的所見と図5の比色データを裏付けるものであり、方法Bの薬剤製品は55日間にわたってわずかにオレンジ色に変色することがわかった。Table 3.2(表4)からわかるように、方法Bの薬剤製品では20日から色の変化が顕著だったが、方法Aの薬剤製品は透明な無色から黄色の溶液のままだった(Table 3.1(表3)を参照)。更に、THC濃度及び総分解物濃度が、方法Bの薬剤製品に関して、それぞれ30日目と55日目に仕様限界を超えていることがわかった(Table 3.2(表4)を参照)。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
濾過助剤は、メーカーの仕様に応じて様々なレベルの微量元素を有する。図6に示す様々なAPI試料が元素分析のために提出された。データは、短縮された方法APIのバナジウムが驚くほど高レベルであることを示しているが、方法A APIには低レベルが存在する。
【0070】
この元素の潜在的な影響を評価するために、酸化バナジウムを使用して更にスクリーニング実験を行った。高添加(100mg)及び低添加(2mg)の酸化バナジウムを、方法Aの代表的な物質10gを含む100mLのエタノール溶液に添加した。方法Aと方法Bの両方の対照が、添加実験の一部で実行された。このスクリーニング実験の結果、外観及び不純物プロファイルを図7及び図8に示す。図7は、低バナジウム添加試料が方法B材料内で観察された色の変化と一致することを示した。図8のクロマトグラムは、14日間にわたる低添加の不純物の増加が、方法B対照の不純物の増加と一致することを示した。特に、同じ不純物(赤丸で囲った)が、低及び高添加の酸化バナジウムと方法B対照で記録された。バナジウムの高添加実験では、この不純物は0日目にも存在し、高レベルの酸化バナジウムによる劣化の加速を示している。ここに示されているデータは、バナジウムが、特に低レベルで、この調査における色の変化の主要な一因である可能性があることを示している。
【0071】
観察された色の変化を修正するための1つの解決策は、脱ろう方法で濾過助剤を使用しないことだった。実際、図9の短縮方法中に濾過助剤を使用しなかった場合、色の変化は抑制された。しかし、濾過助剤を取り去ると、濾過方法にかかる時間が大幅に増加した。
【0072】
代わりに、様々な濾過助剤を評価して、薬剤製品の色への影響を評価した。Celpure及びHarborliteは、薬剤製品の外観が方法Aの薬剤製品と同様であることが示されているため、代替濾過助剤として好まれるオプションであった。図4と比較した図10を参照。
【0073】
以下の非限定的な実施例は、本発明を更に説明するために提供される。
【実施例1】
【0074】
濾過助剤を使用しない場合と代替濾過助剤を使用する場合のAPIの評価
濾過助剤を使用せず、及び代替濾過助剤(Celpure及びHarborlite)を使用して製造されたAPIを分析して、仕様に対する試験を行った。API物質は、外観、CBDアッセイ、及び液体クロマトグラフィー(LC)TM-170を使用して行った不純物試験について分析した。Table 4(表5)を参照。すべてのAPIの結果(濾過助剤なしの4つのバッチと代替濾過助剤ありの2つのバッチ)は、仕様基準に関して準拠していることを示している。
【0075】
【表5】
【0076】
【実施例2】
【0077】
濾過助剤なしで製造されたAPIと代替濾過助剤を使用した薬剤製品の評価
薬剤製品は、様々な製造ストリームからのAPIを使用して処方された。これらのストリームは、脱ろう工程、特に濾過工程のみが異なっており、濾過助剤も代替濾過助剤も使用していない。評価された代替濾過助剤は、Celpure及びHarborliteだった。Celpure濾過助剤を使用したAPIの3つの異なるバッチ、Harborliteの2つのバッチ、及び濾過助剤を使用しない4つのバッチを製造し、それらの対応する薬剤製品を分析した(Table 5.1(表6)及びTable 5.2(表7)を参照)。7日間の安定性試験は、薬剤製品が色及び不純物のプロファイルに関して仕様限界内で動作するかどうかを示す。35日目にも分析を実施し、長期間にわたってこの薬剤製品の周囲条件での安定性を確認し、薬剤製品の安定性を再確認した。
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
上記の結果は、濾過助剤を使用しない短縮方法と代替濾過助剤を使用する短縮方法の両方を使用して製造されたCBDの仕様に準拠していることを示している。仕様試験結果に違いを示す証拠はまったくなく、したがって、製造方法で導入された変更が最終APIの品質に悪影響を及ぼさなかったと結論付けることができる。この研究は、濾過助剤なし及び代替濾過助剤の薬剤製品が、色、不純物プロファイル、及び周囲条件でのこの薬剤製品の安定性に関して、35日間にわたって仕様を満たしていることを示している。
【実施例3】
【0081】
方法A及び濾過助剤を使用しない短縮方法Bから得られた薬剤製品との比較性
この安定性研究の目的は、濾過助剤なしで製造された方法B APIからの薬剤製品の安定性を調査し、方法A APIからの薬剤製品と比較することであった。更に、Clarcel濾過助剤を使用して製造された方法B APIからの薬剤製品を使用して、比較した。
【0082】
試験は、25℃/60%RH(相対湿度)の長期間の条件及び40℃/75%RHの加速条件で保存されたボトルで行った。これまでに完了した安定性試験の概要をTable 6(表8)に示す。
【0083】
【表8】
【0084】
以下の試験は、2つの濾過助剤なしの方法Bバッチ、方法Aの対照バッチ、及びClarcel濾過助剤の方法Bバッチで実行された。その結果をTable 7.1(表9)及びTable 7.2(表10)に示す。
・外観
・UPLCによるCBDアッセイ
・UPLCによる分解物
【0085】
【表9A】
【0086】
【表9B】
【0087】
【表10A】
【0088】
【表10B】
【0089】
安定性研究の結果は、Table 5(表6)に示した以前の結果を裏付けており、濾過助剤なしで製造された方法B APIからの薬剤製品は仕様限界内であった。重要なことに、濾過助剤なしの方法Bの薬剤製品は、方法A APIの薬剤製品と同等であった。一方、Clarcel濾過助剤を使用して製造された方法B APIからの薬剤製品は、方法Aの薬剤製品及び濾過助剤を使用しない方法Bの薬剤製品とは、外観及び分解レベルに関して著しく異なっていた。特に、THC濃度は25℃で84日及び112日(Table 7.1(表9))、40℃で28日以降(Table 7.2(表10))に仕様限界を超え、その一方で前述の時点で溶液の外観が濃い黄色に変色した。
【0090】
結論
112日(16週間)までの結果は、25℃と40℃の両方で、外観、CBD、及び分解物濃度に関して、濾過助剤なしの方法Bバッチが方法Aバッチと同等であったことを示している。したがって、これらの結果は、濾過助剤を使用しない方法Bの薬剤製品が、長期間にわたって方法Aの薬剤製品と同じ品質、純度、及び安定性を保持していることを示している。
【実施例4】
【0091】
濾過助剤を使用しない短縮方法Bから得られる薬剤製品の安定性
この安定性研究の目的は、濾過助剤なしで製造された方法B APIからの薬剤製品の長期(6箇月)安定性を調査することであった。試験は、25℃/60%RHの長期間の条件及び40℃/75%RHの加速条件で保存されたボトルで実施された。
【0092】
これまでに完了した安定性試験の概要をTable 8(表11)に示す。
【0093】
【表11】
【0094】
次の試験は、3つの濾過助剤なしの方法Bバッチで実行され、その結果をTable 9.1(表12)及びTable 9.2(表13)、及び図11図15に示す。
・外観
・比色分析
・UPLCによるCBDアッセイ
・UPLCによる分解物
【0095】
【表12】
【0096】
【表13】
【0097】
25℃の保管条件では、すべての結果が168日後に透明で、無色から黄色の溶液になるという仕様の合格基準に準拠していた(図11を参照)。試験期間中、外観に大きな変化はなかった。
【0098】
40℃の加速条件では、すべての結果が、24週間後に透明で、無色から黄色の溶液になるという仕様の合格基準に準拠していた。試験期間中、外観に大きな変化はなかった。バッチは、各時点で25℃条件と比較してわずかに濃い黄色であった。これは、方法Aを使用して製造された薬剤製品で同じことが見られるため、予想される観察結果であった。
【0099】
図12及び図13、並びにTable 9.1(表12)及びTable 9.2(表13)からわかるように、CBD含有量も他のカンナビノイドも6箇月の期間にわたって、著しくは変化しなかった。更に、方法B濾過助剤なしのバッチと方法Aのバッチを40℃の加速条件で比較すると、b*値(図14を参照)にも総分解物(図15を参照)にも偏差がほとんど又はまったくないことが示された。
【0100】
結論
すべての結果は、24週間後にそれぞれの仕様限界内であり、試験期間中に大きな変化はなかった。すべての結果及び傾向は、方法Aを使用して製造された薬剤製品の安定性の結果と同等であった。
【実施例5】
【0101】
キレート剤の添加
濾過助剤なしの方法Bを更に最適化するために、洗浄レジーム内にキレート剤を追加することで、微量元素による汚染を更に減らしながら、濾過助剤なしの方法Bの薬剤製品の外観を維持できるかどうかを調査した。
【0102】
クエン酸は、キレート剤の候補としてEDTAと比較された。14日間にわたって、次の条件下:
・クエン酸(API濾過助剤洗浄)
・クエン酸(API濾過助剤なし洗浄)
・クエン酸(方法B濾過助剤、溶媒交換)
・クエン酸(方法B濾過助剤なし、溶媒交換)
・EDTA(API濾過助剤なし洗浄)
・方法B濾過助剤
・方法B濾過助剤なし
・方法A対照
で製造されたAPI及び薬剤製品の比色データが記録され、その結果を図16に示す。
【0103】
各種不純物濃度及びCBDも測定した(方法A対照を除く)。これらの結果を図17に示す。
【0104】
驚くべきことに、方法B(濾過助剤なし)における溶媒交換方法中にクエン酸洗浄を追加すると、分解物濃度を下げるのに有益であることがわかった。これは、図17に示す不純物プロファイル、特にRRT 0.76(紫色の線)のプロファイルによって証明される。比色データは、「方法A対照」及び「クエン酸(方法B濾過助剤なし溶媒交換)」の同様の比色プロファイルによって示されるように、クエン酸洗浄の追加が薬剤製品の外観を変えないことも確認した。
【0105】
結論
全体として、溶媒交換におけるキレート剤としてのクエン酸の添加は、薬剤製品からの不純物及び分解物を更に減少させるのに有用であると結論付けられた。
【実施例6】
【0106】
抗酸化剤の添加
抗酸化剤の添加が薬剤製品中に存在する分解物を減少させるかどうかを試験するために、さらなる最適化が行われた。試験した抗酸化剤をTable 10(表14)に示す。試料を60℃で保存し、クロマトグラフィーで評価した。
【0107】
この例では、CBD-C4を使用したが、すべてのカンナビノイドを使用できることを理解されたい。
【0108】
【表14】
【0109】
抗酸化剤試験の結果を図18に示す。27日で、最も効果的な抗酸化剤はパルミチン酸アスコルビルで、活性の%として分解物が0.39%であり、54日では、クエン酸が活性の%として分解物が1.05%である最も効果的な抗酸化剤であった。
【0110】
結論
54日までの結果は、抗酸化剤としてのクエン酸及び/又はパルミチン酸アスコルビルの添加が、薬剤製品中の分解物の割合を低く維持するのに有益であり得ることを示している。
【実施例7】
【0111】
抗酸化剤によるさらなる安定性研究
一連のCBDゲルを調製し、色と分解(HPLCによる)の両方を強制分解条件下で調査した。
【0112】
方法
33%CBDゲルを、様々な抗酸化剤を使用して処方し、強制分解条件(60℃)に置いた。使用した様々な抗酸化剤は次のとおりである;アルファトコフェロール、EDTA、メタ重亜硫酸ナトリウム、BHA、クエン酸、パルミチン酸アスコルビル、モノチオグリセロール。ゲルの色は、色の変化に対応する不純物RRTを特定するための分析プロファイリングと同様に、強制分解期間全体で観察した。
【0113】
10gの33%CBDゲルを、様々な抗酸化剤を使用して製造した(Table 11(表15)を参照)。バルクから、0.5gのアリコートを20mlのシンチレーションバイアルに入れ、(60℃)オーブンに入れた。様々な時点で、試料を取り出し、物理的及び化学的に試験した。すべての化学分析は、ハードゼラチンカプセル中のCBDゲル製剤のHPLC分析によって行った。
【0114】
【表15】
【0115】
結果
物理分析
図19に示すデータは、製剤中に存在する抗酸化剤に応じたCBDゲルの色の変化を示している。データは、抗酸化剤アルファトコフェロール、EDTA、メタ重亜硫酸ナトリウム、及びBHAを処方したゲル(バッチB1~B4)が暗褐色/紫色になったことを示している。パルミチン酸アスコルビル及びクエン酸が存在する処方(バッチB5及びバッチB6)は、28日後も黄色のままであった。
【0116】
化学分析
以下のTable 12(表16)に示されるデータは、最初の時点では製剤中に分解物が存在しないことを示している。存在する唯一のピークは、CBDV、CBD-C4、及びCBDである。
【0117】
【表16】
【0118】
Table 13(表17)に示されるデータは、27日目の時点で、分解物RRT 0.544、RRT 0.561、RRT 0.599、RRT 0.877、RRT 1.236及びRRT 1.281が、アルファトコフェロール、EDTA、メタ重亜硫酸ナトリウム、BHA及びモノチオグリセロールを含有する製剤中に存在することを示している。クエン酸及びパルミチン酸アスコルビル製剤では、これらの分解物が存在しないことがわかった。両方の製剤(図19を参照)は元の黄色を維持し、暗褐色/紫色に劣化しない。
【0119】
【表17】
【0120】
結論
種々の抗酸化剤を(CBDゲル製剤の一部として)加速条件下で研究し、HPLCによる色及び分解について視覚的に試験した。種々の抗酸化剤は、著しくは色を抑制せず、付随する種々の不純物の上昇も抑制しなかった。
【0121】
パルミチン酸アスコルビル及びクエン酸は、製剤で生成される色の強度が明らかに最小限に抑えられ、著しく多くの重要な不純物が検出可能に存在しないことで、有意な差を示した。
【0122】
短縮方法B(後抽出工程)の概説
1.精製されていないCBD抽出物を、50℃で2.0容量のメタノールに溶解する。
2.混合物を0℃~5℃で60分間撹拌してワックス状不純物を沈殿させる。
3.ワックス状不純物を真空下で濾過し、得られたケーキを3×0.5容量の冷メタノールで洗浄して、微量の保持されたCBDを除去する。
4.メタノール溶液を蒸留して溶液容量を1.5容量にする。
5.ヘプタンを、結晶化に必要な実験的濃度(2.2容量)に従って、濃縮溶液に添加する。
6.溶液を3×2.0容量の精製水で洗浄し、メタノールを含む水性相を分離する。IPCは、残留メタノール含有量が仕様の範囲内であることを確認する。
7.洗浄したヘプタン溶液を50℃に加熱し、熱濾過(リファイン)して不溶解粒子を除去し、0.3容量のヘプタンで洗浄する(合計2.0容量のヘプタン)。
8.溶液を25℃に冷却し、次いでゆっくりと12℃に冷却する(6時間かけて)。
9.小さなプラントでの結晶化の間、115rpmの撹拌速度を維持する(又は別の容器の場合はそれと同等)。
10.溶液に1.0%w/wの結晶性CBDで結晶核を加え、結晶核を180分(3時間)かけて成長させる。
11.懸濁液を960分(16時間)かけて-18℃~-20℃に冷却し、次いで-20℃で360分(6時間)撹拌する。
12.懸濁液を真空下で濾過し、次いで3回のヘプタン洗浄で洗浄する(合計3.0容量)。
・-18℃及び10℃で2×0.75容量置換洗浄
・1×1.5容量、10℃で30分間再スラリー化
13.生成物は脱液され、次に、残留ヘプタンの仕様を満たすまで、20℃~30℃で真空下乾燥する。
上記の容量と濃度は、代表値としてのみ信頼されたい。
スケールが異なると、それに応じて調整が必要になる。
【0123】
全体的な結論
濾過助剤を使用せずに、又は短縮方法Bで代替濾過助剤を使用して製造されたAPIは、仕様基準に関して準拠を示している。濾過助剤なしで製造された薬剤製品及び代替濾過助剤の短縮方法も、色、不純物プロファイル、及び安定性に関して仕様を満たしている。重要なことに、この薬剤製品は、一定範囲の温度及び長期間にわたり、対照方法Aから製造された薬剤製品と同等であることがわかった。
【0124】
クエン酸等のキレート剤、並びにクエン酸及びパルミチン酸アスコルビル等の抗酸化剤を添加すると、薬剤製品の不純物プロファイルを更に改善できる。
【0125】
したがって、上記で概説した方法は、以前に記載された方法よりも効率的で合理化されており、安定で実質的に純粋な医薬品における使用のためのカンナビノイドを製造できると結論付けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】