(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】感染を防止するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/10 20060101AFI20230912BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230912BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230912BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230912BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230912BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230912BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230912BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230912BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230912BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230912BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230912BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230912BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230912BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230912BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230912BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230912BHJP
A61K 35/02 20150101ALI20230912BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/18
A61K9/08
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/12
A61K9/12
A61P37/08
A61P11/02
A61P11/06
A61P11/00
A61P17/00
A61P27/02
A61K35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515621
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021074417
(87)【国際公開番号】W WO2022053412
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523082657
【氏名又は名称】アルタミラ メディカ, アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フェイス, ファビオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
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4C087ZB33
(57)【要約】
本開示は、粘膜付着性ポリマーと粘土粒子とを含む水性組成物、ならびに感染を治療または防止する方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示は、粘膜付着性ポリマーと、粘土粒子とを含む、水性組成物を提供する。粘膜付着性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407)、Avicel(例えば、Avicel RC591)、及びこれらの組合せのうちの1つ以上とすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜付着性ポリマーと、粘土粒子とを含む、水性組成物。
【請求項2】
前記粘膜付着性ポリマーが、アルギン酸ナトリウム、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407)、Avicel(例えば、Avicel RC591)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記粘膜付着性ポリマーがキサンタンガムである、請求項2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記粘土粒子が、カオリン鉱物、例えば、カオリナイト、チャイナクレイ、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト;蛇紋岩鉱石、例えば、リザーダイト、ハロイサイト、クリソタイル、アンチゴライト、カルロストラナイト、アメスタイト、クロンステダイト(cronstedite)、シャモサイト、ベルチェリン、ガリエライト(garierite);タルク;パイロフィライト;フェリパイロフィライト;スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、メドモンタイト、ピメライト、ベントナイト;イライト鉱物、例えば、レディキート(ledikete)、ブラベサイト、分解雲母、加水雲母、ハイドロマスコバイト(hydromuscovite)、含水イライト、含水雲母、K-雲母、雲母状粘土、及びセリサイト;雲母、例えば、ペグマタイト、マスコバイト、及びフロゴパイト;脆性雲母、例えば、マーガライト及びクリントナイト;海緑石;セラドナイト;クロライト及びバーミキュライト、例えば、苦土緑泥石、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ベイレイクロア、ドンバッサイト、クッカイト(cookite)、スドイト、フランクリンファーナサイト(franklinfurnaceite);パリゴルスカイト及びセピオライト、例えば、アタパルジャイト;アロフェン及びイモゴライト;混合層粘土鉱物、例えば、タルク-クロライト;ならびにこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記粘土粒子がベントナイトである、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項6】
約0.1重量%~約3重量%の前記粘膜付着性ポリマーと、約0.4重量%~約5重量%の粘土とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項7】
約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項8】
約0.1重量%~約0.5重量%のキサンタンガムと、約2.0重量%~約3.0重量%のベントナイト粘土とを含む、請求項7に記載の水性組成物。
【請求項9】
前記組成物のpHが約4~約7(例えば、約5.0)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項10】
緩衝剤(例えば、クエン酸)をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項11】
前記組成物が1つ以上の親油性賦形剤(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項12】
約0.1重量%~約50重量%の前記親油性賦形剤を含む、請求項11に記載の水性組成物。
【請求項13】
約30重量%~約40重量%の前記親油性賦形剤を含む、請求項12に記載の水性組成物。
【請求項14】
香味料をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項15】
前記組成物が1つ以上の保湿剤(例えば、グリセロール)を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項16】
約0.1重量%~約5重量%の前記保湿剤を含む、請求項15に記載の水性組成物。
【請求項17】
前記組成物が1つ以上の粘度調整剤(例えば、ステアリン酸グリセリル)を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項18】
約0.1重量%~約50重量%の前記粘度調整剤を含む、請求項17に記載の水性組成物。
【請求項19】
約0.1重量%~約5重量%の前記粘度調整剤を含む、請求項17に記載の水性組成物。
【請求項20】
前記組成物が、1つ以上の防腐剤及び/またはキレート剤(例えば、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、及び/またはEDTA二ナトリウム、またはソルビン酸カリウム、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、ペンチレングリコール、ヒドロキシアセトフェノン(hydroxyacetophonenone)、及び/またはEDTA二ナトリウム)を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項21】
約0.01重量%~約3重量%の前記防腐剤及び/または前記キレート剤を含む、請求項20に記載の水性組成物。
【請求項22】
約0.1重量%~約1.5重量%の前記防腐剤及び/または約0.05重量%~約0.5重量%の前記キレート剤を含む、請求項21に記載の水性組成物。
【請求項23】
前記組成物が0.5重量%以下の防腐剤を有する(例えば、防腐剤を含まない)、請求項1~22のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項24】
前記組成物が1つ以上の酸化防止剤を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項25】
約0.005重量%~約0.5重量%の前記酸化防止剤を含む、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項26】
前記酸化防止剤がBHAである、請求項24または25に記載の水性組成物。
【請求項27】
前記組成物がチキソトロピー性である、請求項1~26のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項28】
前記組成物が非ニュートンせん断減粘性を示す、請求項1~27のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項29】
前記組成物が水溶液である、請求項1~28のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項30】
前記組成物がゲルエマルジョン(水中油型ゲル)である、請求項1~28のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項31】
対象における感染を治療または防止する方法であって、治療有効量の請求項1~30のいずれか1項に記載の水性組成物を前記対象の粘膜に投与することを含み、前記組成物が、前記粘膜の上にバリアを形成する、前記方法。
【請求項32】
前記粘膜が、鼻粘膜、口粘膜、または咽頭粘膜である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記感染が呼吸器系ウイルス感染である、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記呼吸器系ウイルス感染が、インフルエンザ感染、ライノウイルス感染、コロナウイルス感染、及び/またはパラミクソウイルス感染のうちの1つ以上である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記コロナウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群ウイルス(CoV-MERS)、ヒトHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、及びHCoV-HKU1から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記コロナウイルス感染がSARS-CoV-2である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、スプレーまたはエアロゾルとして投与される、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記スプレーまたは前記エアロゾルが、経鼻ポンプスプレーまたは咽喉スプレーポンプを介して投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、局所的に(例えば、クリーム、ゲル、または軟膏として)投与される、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
対象におけるCOVID-19感染を防止する方法であって、治療有効量の請求項1~29のいずれか1項に記載の水性組成物を投与することを含み、前記組成物が粘膜の上にバリアを形成する、前記方法。
【請求項41】
前記粘土粒子がSARS-CoV-2を結合、捕捉、及び/または不活性化する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む、請求項31~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
アレルギー疾患または状態の防止または治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、治療有効量の請求項1~30のいずれか1項に記載の水性組成物を、前記対象の粘膜に投与することを含み、前記組成物が前記粘膜の上にバリアを形成する、前記方法。
【請求項44】
前記アレルギー疾患または状態が、空中アレルゲン、例えば、花粉、チリダニ、カビ、動物の鱗屑、及び/または胞子によって引き起こされるか、またはそれによって悪化する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記アレルギー疾患が、鼻炎、副鼻腔炎、喘息、過敏性肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎、結膜炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、アナフィラキシー、血管浮腫、アレルギー性頭痛、及び片頭痛のうちの1つ以上である、請求項43または44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許出願第63/230,191号(2021年8月6日出願)、米国特許出願第63/173,816号(2021年4月12日出願)、米国特許出願第63/119,237号(2020年11月30日出願)、及び米国特許出願第63/075,590号(2020年9月8日出願)に対する優先権の利益を主張し、これらの出願の各内容は、参照によりあらゆる目的で全体として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ及びコロナウイルスなどの呼吸器系ウイルス感染は、世界的に呼吸器疾患の重要な原因となっている。インフルエンザは、先進国では年間250,000例を超える死亡を引き起こしている。1918年のパンデミックでは、全世界で少なくとも二千万例の死亡が推定されており、これは特定のインフルエンザウイルス株によって引き起こされ、急速な感染及び重篤な症状の両方によって特徴付けられるものであった。
【0003】
パンデミックを伴わないとしても、インフルエンザ感染は、健康リスク及び医療コストの両方をもたらす。平均すると、インフルエンザ(インフルと一般的に呼ばれている)は、毎年米国の人口の5%~20%が罹患している。100,000例超がインフルエンザの合併症により入院し、およそ36,000例が死亡する。一部の人々、例えば、高齢者、幼児、及びある特定の健康状態にある人々(例えば、免疫不全の人々)は、重篤なインフルエンザの合併症のリスクが高い。
【0004】
A型及びB型インフルエンザウイルスは、毎年季節性インフルエンザが流行する原因となっている。インフルエンザのシーズンの間は、異なる型(A型及びB型)ならびにA型インフルエンザウイルスの亜型が集団の中を循環し、病気を引き起こし得る。治療戦略において特に問題となるのは、インフルエンザウイルスが「抗原ドリフト」と呼ばれるプロセスを通じて絶えず変化しているという事実である。したがって、昨年は有効であったであろうワクチンが、今年は有効性が低下したりなくなったりする可能性がある。
【0005】
直近においては、2019~2020年のコロナウイルス2019(COVID-19)パンデミックは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされている。アウトブレイクは、2019年12月に中国のWuhan,Hubeiで確認され、2020年3月11日に世界保健機関(WHO)によりパンデミックとして認識された。2020年11月時点で、COVID-19は世界全体で6,200万件超の症例が報告され、死亡例は140万例超となっている。
【0006】
感染性疾患の伝播を有効に防止または抑制するデバイス、組成物、及び他の治療が長年にわたり必要とされている。この問題を解決する試みとしては、マスクまたは人工呼吸器の装着、及び病的状態にあるまたは病原体を保有することが知られているまたは予測される個体または動物の回避または隔離が挙げられる。このようなアプローチは、汚染環境(例えば、公共交通機関または公共の人が集まる場)に遭遇する者がマスクを着用するある特定の国で一般的に行われている。
【0007】
ヒトまたは動物に微生物が接触した後にその微生物を殺滅する解決策は多数存在するが、このような解決策の有効性は、微生物が粘膜に結合することにより、体内に侵入し個体に感染する前に、迅速に微生物接触を認識し、殺微生物組成物を適用することに依存する。例えば、抗細菌性石鹸による洗浄は、手に付いている病原体の殺滅には有効と考えられるが、手を洗う前に、汚染された表面に無意識に触れ、手を口または鼻の付近または中に入れてしまうことは非常に容易である。
【0008】
同様に、吸入されたアレルゲンに対するアレルギー応答も非常に一般的であり、全世界の子ども及び成人の10~30%にわたる人口のかなりの部分が罹患している。アレルギー症状は軽度の場合もあるが、アレルギー性鼻炎などの比較的軽い症状であっても、鼻ポリープの発生、副鼻腔炎、中耳炎などの合併症を生じることがある。さらに、アレルギーを治療するための療法(抗ヒスタミン剤、うっ血除去薬、及び経口コルチコステロイド)は、重大な副作用(例えば、心血管の影響、体重増加、不眠、過敏性、高血圧、免疫抑制など)を有することがあるため、長期療法としては望ましくないと考えられる。
【0009】
マスクのような物理的なデバイスは、快適ではなく、微生物及びアレルゲンとの接触の回避に有効ではない場合が多い。既に身体に接触した微生物を殺滅するための解決策は、持続的な防御をもたらさない断続的で一過性の選択肢であるため、感染防止に有効ではない場合が多い。微生物及びアレルゲンを含めた空気中の病原体に対するバリアを形成することが可能な組成物のアンメットニーズが存在する。本発明は、他のニーズの中でもこのようなニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、粘膜付着性ポリマーと、粘土粒子とを含む、水性組成物を提供する。粘膜付着性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407)、Avicel(例えば、Avicel RC591)、及びこれらの組合せのうちの1つ以上とすることができる。いくつかの実施形態において、粘膜付着性ポリマーはキサンタンガムである。粘土粒子は、カオリン鉱物、例えば、カオリナイト、チャイナクレイ、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト;蛇紋岩鉱石、例えば、リザーダイト、ハロイサイト、クリソタイル、アンチゴライト、カルロストラナイト、アメスタイト、クロンステダイト(cronstedite)、シャモサイト、ベルチェリン、ガリエライト(garierite);タルク;パイロフィライト;フェリパイロフィライト;スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、メドモンタイト、ピメライト、ベントナイト;イライト鉱物、例えば、レディキート(ledikete)、ブラベサイト、分解雲母、加水雲母、ハイドロマスコバイト(hydromuscovite)、含水イライト、含水雲母、K-雲母、雲母状粘土、及びセリサイト;雲母、例えば、ペグマタイト、マスコバイト、及びフロゴパイト;脆性雲母、例えば、マーガライト及びクリントナイト;海緑石;セラドナイト;クロライト及びバーミキュライト、例えば、苦土緑泥石、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ベイレイクロア、ドンバッサイト、クッカイト(cookite)、スドイト、フランクリンファーナサイト(franklinfurnaceite);パリゴルスカイト及びセピオライト、例えば、アタパルジャイト;アロフェン及びイモゴライト;混合層粘土鉱物、例えば、タルク-クロライトのうちの1つ以上とすることができる。いくつかの実施形態において、粘土粒子はベントナイト粒子である。
【0011】
いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1重量%~約3重量%の粘膜付着性ポリマーと、約0.4重量%~約5重量%の粘土とを含む。例えば、組成物は、約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む。組成物のpHは、約4~約8、例えば約5~約7とすることができる。いくつかの実施形態において、組成物はさらに、緩衝剤及び/または香味料を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の親油性賦形剤(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1重量%~約50重量%の親油性賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は親油性賦形剤を含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の保湿剤(例えば、グリセロール)を含む。いくつかの実施形態において、保湿剤は、組成物の約0.1重量%~約5重量%を構成する。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の粘度調整剤(例えば、ステアリン酸グリセリル)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1重量%~約50重量%の粘度調整剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の防腐剤及び/またはキレート剤(例えば、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、及び/またはEDTA二ナトリウム)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.01重量%~約3重量%の防腐剤及び/またはキレート剤を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、組成物は1つ以上の防腐剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、0.5重量%以下の防腐剤を有する。いくつかの実施形態において、組成物は防腐剤を含まない。いくつかの実施形態において、組成物はチキソトロピー性である。いくつかの実施形態において、組成物は非ニュートンせん断減粘性を示す。いくつかの実施形態において、組成物は、水溶液またはゲルエマルジョン(水中油型ゲル)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象の感染を治療または防止する方法であって、治療有効量の本開示の水性組成物を対象の粘膜に投与することを含み、組成物が粘膜上にバリアを形成する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、粘膜は、鼻、口腔、または咽頭粘膜である。いくつかの実施形態において、感染は呼吸器系ウイルス感染である。いくつかの実施形態において、呼吸器系ウイルス感染は、インフルエンザ、ライノウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、及び/またはパラミクソウイルス感染のうちの1つ以上である。例えば、感染は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群ウイルス(CoV-MERS)、ヒトHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63及びHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルス感染とすることができる。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染はSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば経鼻ポンプを介して、スプレーまたはエアロゾルとして投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象におけるCOVID-19感染を防止する方法であって、治療有効量の本開示の水性組成物を投与することを含み、組成物が粘膜上にバリアを形成する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、SARS-CoV-2ウイルスなどのウイルスを捕捉し、及び/またはこれに結合する。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ベントナイトとのインキュベートを5分、15分、及び45分間行った後のウイルス負荷の低減を示している。各時点の結果は、左から右にベントナイト0.04%、ベントナイト0.08%、ベントナイト0.16%、及びVicks First Defence(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(10倍希釈)を含む経鼻スプレー)の場合について示している。1logの低減は、ウイルス負荷の90%低減に相当し、1.8logの低減は98.42%の低減、2logの低減は99%の低減、3logの低減は99.9%の低減に相当する。
【0016】
【
図2】異なる処置(各n=3)下で、再構成ヒト鼻上皮細胞の感染後(感染後24、48、72、及び96時間時)に定量化された平均SARS-CoV-2ウイルス力価(及び標準偏差)を示している。細胞培養物を、ベントナイト製剤F060、先端側を毎日洗浄しない同じ製剤、ビヒクルF060(-)、ベントナイト製剤F049、そのビヒクルF049(-)、HPMC 5mg/mL、または食塩水(メイン対照)で毎日処置した。非感染細胞及び製剤F060で処置した非感染細胞を、さらなる対照群とした。陽性対照群では、感染から48時間後に明確なウイルス成長を観察することができた。そしてウイルス力価は、96時間かけて平均6.9×106 TCID50/mLに増加した。これに対し、ベントナイト組成物F060で処置した鼻上皮の場合では、先端洗浄による平均ウイルス力価は48時間時に90.0%低下し(p<0.05)、72時間及び96時間時にそれぞれ99.2及び99.4%低下した(p<0.001)。先端洗浄なしの場合、96時間時の平均ウイルス力価は92.4%低下した(p<0.001)。ベントナイト組成物F049で処置した結果、ウイルス力価は同様に低減したが、その低減は、F060よりも遅れて明らかになり、またより小さいものであった(72時間時に61.1%、96時間時に71.8%、有意差なし)。ビヒクルF060(-)及びF049(-)は、ウイルス成長及びウイルス力価に効果を有しないように思われた。HPMCによる処置も、顕著な効果を示さなかった。F060で処置した培養物対照及び非感染培養物には、特に変化は見られなかった。
【0017】
【
図3】アレルゲンチャレンジチャンバー(ACC)内で草花粉曝露によって誘発させたアレルギー性鼻炎の症状の緩和における、AM-301及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)粉末の比較結果である。
【0018】
【
図4】確立されたSARS-CoV-2感染(ヒト鼻粘膜上皮への感染から24時間(上)または30時間(下(top)))を軽減する、ベントナイトを含むゲル製剤の能力を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、特定の粘膜付着性ポリマー及び粘土を特定の量で水性組成物中に組み合わせることによって、組成物を適用するとき(例えば、組成物で鼻腔または口腔咽頭腔をスプレーまたは洗浄することによって)比較的低い粘度を提供するレオロジー特性を有しつつ、病原体またはアレルギー物質から使用者を防御する治療効果及び/または障壁効果を与えるために十分な時間の間、毛様体クリアランスまたは離脱に対して抵抗する比較的高い粘度を有するという驚くべき発見に基づいている。このようなレオロジー特性には、例えば、「せん断減粘」またはチキソトロピー性である流体組成物が含まれ、この組成物にせん断力が加えられ得る場合、粘度が十分に低くなり、当技術分野で知られている従来の送達デバイス(例えば、スプレーポンプまたはスプレーボトル、US8894604(参照により本明細書に援用される)に記載されているような「RetroNose」デバイス、呼吸作動型加圧定量吸入器(pMDI)など)を介して容易に患者の鼻または口に送達することができるが、この組成物は、粘膜表面などの表面に沈着した後は迅速に高粘度に戻り、粘性特性によって粘膜表面に結合し、ゲルは病原体に対する防御バリアを形成するとともに病原体を不活性化する。特定の機構に束縛されるものではないが、病原体の捕捉または結合は、組成物の粘土構成成分との物理的相互作用(例えば、イオン相互作用)を介して起こり得る。
【0020】
哺乳類の鼻、口、腸、及び体腔の粘膜内層は、病原性微生物またはアレルゲンによる哺乳類の身体への侵入(局所及び全身の両方の感染またはアレルギー反応を引き起こす恐れがある)に対する第1のバリアとなる。上皮粘膜内層は、共生生物の侵入を低減するバリアを形成する(Monica Boirivanta and Warren Strober,“The Mechanism of Action of Probiotics”Current Opinion in Gastroenterology 2007,23:679-692)。
【0021】
本出願では、感染性疾患を引き起こす微生物が粘膜に接触したり感染したりするのを遮断、捕捉、または中和し、ひいては微生物が体内に伝播し感染を引き起こすのを防止する方法及び組成物について開示する。同様に、患者の粘膜組織に吸入されるかまたは他の方法で接触する、アレルゲンを遮断または中和する方法及び組成物についても開示する。本開示の方法及び組成物は、様々な実施形態において、感染を引き起こすことが知られている微生物(細菌、真菌、及びウイルス)を遮断、捕捉、もしくは中和する、あるいはアレルゲンを吸着、結合、または患者の口腔もしくは鼻粘膜に接触するのを遮断することができる粘膜付着性ポリマー及び粘土粒子を組み込む。当該方法は、バリア層を形成することによってヒトの粘膜を防御するものであり、微生物(細菌、真菌、ウイルス)を結合または阻害したり、アレルゲンを吸着または結合したりすることができる粘土(例えば、ベントナイト)粒子を含む。この二重作用組成物及び方法(バリア+粘土)は、ヒトまたは他の哺乳類の粘膜組織または、例えば、口腔、鼻腔、膣腔、咽喉、及び他の開口部(限定されるものではないが、耳を含む)の開口部内の表面に適用することができる。また、医療デバイス(例えば、気管デバイス、カテーテル(例えば、灌注カテーテル)、シリンジなど)にも適用することができる。この独自かつ予想外の解決策は、空気中の微生物によって引き起こされる感染性疾患の防止という、長年にわたる未解決のニーズに対処するものである。さらに、この組成物は抗微生物剤ではなく天然鉱物を利用するため、病原体耐性のリスクが存在しない。
【0022】
安全であり(すなわち、粘膜に損傷を引き起こさない)、かつ病原性微生物(例えば、インフルエンザウイルス、COVID-SARS2)またはアレルゲンが粘膜組織に対しまたはその中を通過するのを阻害するバリアを形成する、バリア形成組成物が望ましい。別の望ましい特性は、病原体、またはいくつかの実施形態では殺微生物活性を、長期間にわたって固定または結合することにより、微生物成長を阻害する能力である。理論に束縛されるものではないが、本明細書で開示するバリア形成組成物の作用機構は、いくつかの実施形態においては、形成されたバリアに病原菌が閉じ込められ、続いて粘土によって結合または不活性化されるといった相乗的な二重作用機構に基づくものである。
【0023】
本明細書に記載の方法及び組成物は、ヒト、またはより一般的には哺乳類が、破損した粘膜を有する場合に特に有用であり得る。破損は、創傷または擦り傷によって引き起こされ得る。口腔及び胃腸(GI)管の粘膜は、様々な微生物の局所的または全身的な侵入を防止したり、口腔及び腸の内腔に通常存在する微生物産物の吸収を防止したりする助けとなる重要な機械的障壁として機能する(“Gastrointestinal mucosal injury in experimental models of shock,trauma, and sepsis,”Crit.Care Med.1991;19:627-41.)。粘膜のバリア機能の混乱は、全身感染の病態生理において中心的な役割を担っている。言い換えれば、この粘膜の破損が感染につながる。
【0024】
第一防衛ラインが破られるリスクを排除または低減することが重要であり、また粘膜の完全性を維持することが重要である(Anders Heimdahl,“Prevention and Management of Oral Infections in Cancer Patients” Supportive Care in Cancer,Vol.7,No.4,224-228(1999)。)このように、インタクトな粘膜を有することは、特に免疫不全状態の患者(例えば、がん患者)においては、全身感染に対する重要な宿主防御である(Shahab A.Khan,John R.Wingard,“Infection and Mucosal Injury,”Cancer Treatment Journal of the National Cancer Institute,Monographs No.29(2001)。有害な微生物を遮断及び結合し、破壊された粘膜の治癒を妨げないバリア形成組成物は、粘膜が破壊された者、特に免疫不全も有する者の感受性の問題に対する独自かつ予想外の解決策である。
【0025】
定義
以下の用語は、当業者であれば十分に理解できると考えられるが、本開示の主題を容易に説明するために、以下の定義を記載する。
【0026】
本明細書全体において、「約(about)」及び/または「およそ(approximately)」という用語は、数値及び/または範囲と組み合わせて使用することができる。「約」という用語は、挙げられた値に近い値を意味するものと理解される。例えば、「約40[単位]」は、40の±25%以内(例えば、30~50)、±20%、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±1%未満以内、またはそれらの中のもしくはそれらを下回る任意の他の値もしくは範囲を意味し得る。他の文脈において、「約」という用語は、数値配列内の隣接する値の中間の値を指すことがある。さらに、「約[値]未満」または「約[値]超」という表現は、本明細書で示す「約」という用語の定義を考慮して理解するべきである。「約」及び「およそ」という用語は、互換的に使用することができる。
【0027】
本明細書全体において、ある特定の量に関して数値範囲が示されている。これらの範囲は、その中の全ての部分範囲を含むことを理解されたい。したがって、「50~80」という範囲には、考えられる全ての範囲(例えば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)が含まれる。さらに、所定の範囲内の全ての値は、その範囲に含まれる範囲の終点であってもよい(例えば、50~80という範囲には、55~80、50~75などの終点を伴った範囲が含まれる)。
【0028】
「a」または「an」という用語は、1つ以上のその実体を指し、例えば、「粘膜付着性ポリマー」は、1つ以上の粘膜付着性ポリマーまたは少なくとも1つの粘膜付着性ポリマーを指す。したがって、「a」または「an」、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用される。さらに、不定冠詞「a」または「an」によって「賦形剤」に言及した場合、文脈により賦形剤のうちの1つのみの存在が明確に要求されない限り、2つ以上の賦形剤が存在する可能性は排除されない。
【0029】
本明細書で使用する場合、この発明を実施するための形態及び特許請求の範囲で使用される動詞「~を含む(comprise)」及びその活用形は、その非限定的な意味において使用され、この単語に続く項目を含み、ただし具体的に言及されていない項目を排除するわけではないことを意味する。本発明は、好適には、特許請求の範囲に記載されているステップ、要素、及び/または試薬を「含む」か、それ「からなる」か、またはそれから「本質的になる」ことができる。
【0030】
さらに、請求項がいかなる任意選択の要素も除外するように立案され得ることにも留意されたい。そのため、本記載は、請求項の要素の列挙に関連して、「単に(solely)」、「~のみ(only)」のような排他的用語の使用、または「否定的な」限定の使用のための先行的記載としての役目を果たすように意図されている。
【0031】
「治療する」、「治療される」、「治療すること」、または「治療」という用語は、治療される状態、障害、または疾患に関連するか、またはそれにより引き起こされる少なくとも1つの症状の減少または軽減を含む。治療とは、障害の1つもしくはいくつかの症状の減弱、または障害もしくは病気の完全な根絶であり得る。同様に、「予防」という用語は、予測されるこのような症状の開始前に活性薬剤を投与することにより、症状の一部または全部を防止することを指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳類を指す。非限定的な例としては、マウス、イヌ、ウサギ、家畜、スポーツ動物、ペット、及びヒトが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」または「有効量」とは、状態に対する所望の薬理学的及び/または生理学的効果をもたらす量を示す。効果は、状態もしくはその症状を完全もしくは部分的に防止するという観点で予防的であってもよく、及び/または、状態または状態に起因し得る有害作用を部分的もしくは完全に治癒するという観点で治療的であってもよい。
【0034】
「粘膜付着性組成物」という用語は、粘膜または粘膜表面に付着する組成物を指す。粘着は、任意の機構(限定されるものではないが、静電気引力、水素結合、低い表面張力、及び粘膜層内へのポリマー拡散を含む)によって起こり得る。「粘膜」または「粘膜表面」という用語は、粘液が生成される任意の表面または解剖学的位置を指す。「粘膜」及び「粘膜表面」としては、限定されるものではないが、口腔、鼻腔、眼腔、耳腔、膣腔、肛門腔、胃腔、及び腸腔が挙げられる。
【0035】
「粘膜付着性ポリマー」という用語は、粘膜または粘膜表面に付着する化合物を指す。粘膜付着性ポリマーには全てのクラスの粘膜付着性ポリマーが含まれ、アニオン性ポリマー(例えば、アルギン酸、キサンタンガム、カラギーナン、ポリ(アクリル酸)、ポリ-(メタクリル酸)、ポリ[(マレイン酸)-co-(ビニルメチルエーテル)])、カチオン性ポリマー(例えば、キトサン)、置換セルロースポリマー、例えば、Avicel RC591(カルボキシメチルセルロースと微結晶セルロースとの混合物、ヒドロキシエチルセルロース)、非イオン性ポリマー(例えば、グアーガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン)、両性ポリマー、重合チオマー、アクリレート末端基を有するポリマー、デンドリマー、ボロン酸コポリマー、合成グリコポリマー、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー407(Lutrol F127)、ガム、例えば、キサンタンガム、ペクチン、ならびにポリマーのブレンド及び複合体、両性ポリマー、アクリレート末端ポリマー、デンドリマー、ボロン酸コポリマー、合成グリコポリマー、ならびにKhutoryanskiy,Macromolecular Bioscience,11(6)748-64(2011)(参照により全体として本明細書に援用される)に記載の任意のポリマーが挙げられる。
【0036】
方法
いくつかの実施形態において、バリア形成組成物は、哺乳類における感染性疾患を防止または治療するために投与することができる。防止とは、遭遇した微生物からの感染、またはバリア形成組成物の適用後に遭遇したアレルゲンに対するアレルギー反応のリスクが低減されることを意味する。十分な防止効果のためには、哺乳類が汚染された環境または品目に遭遇する前に、バリア形成組成物を適用する必要がある。また、汚染された環境または品目との遭遇中または遭遇後に、バリア形成組成物を投与することによっても、いくらかの利益(例えば、症状の重症度の低減)を得ることができる。例えば、本開示の組成物を適用することにより、感染後の病原体(例えば、インフルエンザウイルス、COVID-SARS2ウイルスなど)の「放出」を低減し、よって症状の重篤度を低減することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、バリア形成組成物は、粘膜が破壊された哺乳類(例えば、免疫不全状態の哺乳類)に投与される。哺乳類の粘膜内の破壊領域は識別され、治療有効量のバリア形成組成物が、少なくとも哺乳類の粘膜の破壊領域に投与される。バリア形成組成物は、粘膜の破壊領域にバリアを提供し、このバリアは、微生物が粘膜の破壊領域に伝播するのを有効に阻害する。
【0038】
バリア形成組成物は、約30nm以上の直径、例えば、約100nm(HIV、球形)、約100~約300nm(インフルエンザ、球形及び細長い形態)、約120nm~約260nm(EBV球形/円盤型の形態)、及び約30nm(ライノウイルス、球形)の直径を有する微生物またはアレルゲンに対し有効である。したがって、組成物は、約30nmの直径、または約30nmを上回る直径を有する他の微生物に対しても有効であるはずである。
【0039】
したがって、本発明は、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、病原体または潜在的病原体によって引き起こされる感染性疾患またはその症状を治療、緩和、防止、または低減する方法を提供する。病原体の例としては、ウイルス、細菌、寄生虫、及び真菌が挙げられる。特定の態様において、病原体はウイルスである。ウイルスは、アデノウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ニューモウイルス亜科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科(Poxyiridae)、レトロウイルス科、またはトガウイルス科由来であり得る。いくつかの実施形態において、ウイルスは、上部または下部呼吸器感染の原因である。医学的に意義のある代表例としては、限定されるものではないが、ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ボカウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、オルソミクソウイルス科、サイトメガロウイルス、エピスタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びモルビリウイルスが挙げられる。諸実施形態において、ウイルスは、皮膚または粘膜組織の感染の原因である。粘膜の例としては、唇、口、鼻腔及び副鼻腔、中耳、耳管、咽頭、泌尿生殖道(尿道及び膣を含む)の内膜、呼吸器粘膜、ならびに眼(結膜)が挙げられる。皮膚及び粘膜組織の感染を引き起こすウイルスの例としては、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、及び帯状疱疹ウイルスを含む)、ヒトパピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、またはポックスウイルスが挙げられる。
【0040】
またさらなる態様において、治療または防御を行う病原体または潜在的病原体は、細菌である。代表的な桿菌としては、限定されるものではないが、Hemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Proteus mirabilis、Enterobacter cloacae、Serratia marcescens、Helicobacter pylori、Salmonella enteritidis、及びSalmonella typhi、Listeria、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Actinobacteria、及びClostridiumが挙げられる。いくつかの実施形態において、細菌は、上部または下部呼吸器感染の原因である。
【0041】
別の実施形態において、治療または防御を行う病原体または潜在的病原体は、NIAIDカテゴリーA~C優先度の病原体である。カテゴリーA優先度病原体としては、限定されるものではないが、Bacillus anthracis(炭疽)、ボツリヌス毒素(ボツリヌス中毒)、Yersinia pestis(ペスト)、Variola major(天然痘)、Francisella tularensis(野兎病)、アレナウイルス、ブニヤウイルス、フラビウイルス、及びフィロウイルスが挙げられる。代表的なカテゴリーB優先度病原体としては、限定されるものではないが、Burkholderia pseudomallei(類鼻疽)、Coxiella burnetii(Q熱)、Brucella種(ブルセラ症)、Burkholderia mallei(鼻疽)、Chlamydia psittaci(オウム病)、チフス熱、食品及び水媒介性病原体(下痢性E.coli、病原性ビブリオ、Shigella種、Salmonella、Listeria monocytogenes、Campylobacter jejuni、Yersinia enterocolitica)、カリシウイルス、A型肝炎、Cryptosporidium parvum、Cyclospora cayatanensis、Giardia lamblia、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Naegleria fowleri、Balamuthia mandrillaris、Microsporidia、蚊媒介性脳炎ウイルス(西ナイルウイルス、ラクロス脳炎、カリフォルニア脳炎、ベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス)が挙げられる。代表的なカテゴリーC優先度病原体としては、限定されるものではないが、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、追加のハンタウイルス、ダニ媒介性出血熱ウイルス(ブニヤウイルス及びフラビウイルス)、ダニ媒介性脳炎複合フラビウイルス(ダニ媒介性脳炎ウイルス、ヨーロッパ亜型、極東亜型、シベリア亜型、ポワッサン/シカダニウイルス)、黄熱ウイルス、結核(薬剤耐性結核を含む)、インフルエンザウイルス、他のリケッチア、狂犬病ウイルス、プリオン、チクングニアウイルス、Coccidioides spp.、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV)、MERS-CoV、及びならびに高病原性ヒトコロナウイルスが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、呼吸器系ウイルス感染を防止または治療する。いくつかの実施形態において、呼吸器系ウイルス感染は、インフルエンザウイルス感染(例えば、季節性インフルエンザ)、ライノウイルス感染(例えば、風邪)、コロナウイルス感染(例えば、重症急性呼吸器症候群及び風邪)、及び/またはパラミクソウイルス感染(例えば、麻疹)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群ウイルス(CoV-MERS)、ヒトHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、及びHCoV-HKU1から選択される。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染はSARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2)である。いくつかの実施形態において、SARS-CoVはSARS-CoV-2(COVID-19)である。いくつかの実施形態において、呼吸器系ウイルス感染は、A型インフルエンザウイルス感染、B型インフルエンザウイルス感染、及びC型インフルエンザウイルス感染からなる群より選択されるインフルエンザウイルス感染である。いくつかの実施形態において、A型インフルエンザウイルスは、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、またはH10N7亜型を含む。
【0043】
微生物は、空気中の微生物(例えばSARS-Cov-2)とすることができる。1つの実施形態において、微生物は、感染性疾患を引き起こす微生物である。
【0044】
他の実施形態において、本開示の組成物は、一般的な空中アレルゲン(例えば、花粉、ダニ、カビ、動物の鱗屑、胞子など)に対するバリアを提供する上で有効である。
【0045】
1つの実施形態において、本明細書に記載のバリア形成組成物ならびに治療及び防止の方法は、例えば、病院などの環境下での感染、及び感染性微生物で汚染された環境下での一般的な感染を防止するのに有用と考えられる。上述のように、本明細書で開示する方法及び組成物は、免疫不全状態の患者に特に適用可能と考えられる。加えて、バリア形成組成物は、創傷に共通して感染する微生物による感染の防止に有用と考えられる。
【0046】
汚染された環境としては、例えば、公共の輸送車両、公共の人が集まる場、及び病気であることが知られているまたは予想される哺乳類を含む部屋または車両、または病気であることが知られているまたは予想される哺乳類への接近を挙げることができる。一般的に汚染された環境として認識される環境(例えば、飛行機、保育所、及び保健所)に関するさらなる情報については、Yang,et al.,“Concentrations and Size Distributions of Airborne Influenza A Viruses Measured Indoors at a Health Centre,a Day-Care Centre,and on Aeroplanes,”J.R.Soc.Interface(Feb.7,2011)に開示されており、当該文献は参照により本明細書に援用される。より具体的には、1つの実施形態において、公共の輸送車両は、例えば、飛行機、バス、またはタクシーであり得る。人が集まる公共の場は、例えば、医院、病院、学校、保育所、教会、ホテル、またはレストランであり得る。病気であることが知られているまたは予想される哺乳類への接近は、例えば、半径1フィート以内、または哺乳類と同じ車両に乗ることであり得る。公共で使用される飛行機は、多くの人が汚染された環境と認識する、一般的であり特に注目すべき例として挙げることができる。
【0047】
1つの実施形態において、本明細書に記載のバリア形成組成物ならびに治療及び防止の方法は、例えば、活動関連治療(例えば、人工呼吸器の使用(人工呼吸器に関連する医療機器及び患者との接触を含むことになるであろう))において汚染され得る物品からの感染予防に有用と考えられる。
【0048】
感染性疾患を防止する方法の1つの実施形態において、1つのステップは、哺乳類が汚染された環境または品目に遭遇する前に、治療有効量のバリア形成組成物を哺乳類の粘膜に投与することを含む。治療有効量とは、標的とする粘膜を十分なバリア形成組成物で被覆して、粘膜上のバリア層形成をもたらすバリアを形成するための十分な量を意味する。本開示のバリア形成組成物は、被覆された粘膜組織を病原体もしくはアレルゲンへの曝露から物理的に遮断もしくは制限するバリア、及び/または病原体/アレルゲンを捕捉もしくは結合して、下層にある粘膜組織への曝露を防止または低減するバリアを提供する。例えば、スプレー製剤については約50マイクロリットル~約500マイクロリットル、例えば、約75マイクロリットル~約200マイクロリットル、例えば、約100マイクロリットル~約150マイクロリットルである。また、投与量は、1平方cmあたりの体積で表すこともでき、例えば、スプレー製剤については、例えば約0.3~約2μL/cm2、例えば、約0.625~約1μL/cm2と表される。加えて、バリア形成組成物から粘膜上に形成される膜の平均厚さは、例えば、約0.001~約0.2mm、例えば、約0.01mm~約0.1、または約0.08~約0.15mmを範囲とすることができる。例えば、所与のヒトまたは動物について、治療有効量は、治療を行う哺乳類の年齢または体重またはサイズに基づいて決定することができ、投与量は、上記に挙げた量とすることができる。特に、非ヒト哺乳類については、投与量は、上記に示した1平方cmあたりの値、及び治療を行う粘膜面または体腔のおよその表面積に従って調整することができる。
【0049】
1つの実施形態において、本開示のバリア形成組成物は、治療有効量で粘膜に投与され、微生物が粘膜に侵入するのを阻害または防止するバリア層を粘膜上にもたらす。1つの実施形態において、微生物の阻害は、結合を通じて微生物の有害な活性を不活性化することも含む。1つの実施形態において、バリア形成組成物は、バリア形成組成物に接触する全ての有害な微生物を遮断する。別の実施形態において、バリアは、有害な微生物が感染性疾患を引き起こすのを防止するのに十分な有害な微生物を実質的に遮断する。後者の場合では、有害な微生物の粘膜への侵入が遅らされた、及び/または希釈された場合、身体自身の、微生物が疾患または広範囲の感染を引き起こすのを防止する能力を強化することになる。
【0050】
別の実施形態において、治療有効量で粘膜に投与される本開示のバリア形成組成物は、アレルゲンが粘膜に接触するのを阻害または防止するバリア層を粘膜上にもたらす。1つの実施形態において、バリア形成組成物は、バリア形成組成物に接触するアレルゲンを遮断及び/または結合する。別の実施形態において、バリアは、アレルゲンがアレルギー反応を誘発するのを十分防止する、またはアレルギー反応の重症度を十分低減するように、アレルゲンとの結合を実質的に遮断する。
【0051】
1つの実施形態において、防止または治療の継続的な投与方法において、本開示のバリア形成組成物は、例えば、約1~12時間ごと、約2~8時間ごと、または約4~6時間ごとに、一連の用量で投与することができる。この防止方法は、例えば、数日、数週間、数か月間継続することができる。いくつかの実施形態において、組成物は「必要に応じて」摂取される。この継続的な投与方法は、対象が汚染された環境または物品に長時間接触する場合に好ましいと考えられる。
【0052】
粘膜は、例えば、口腔、鼻腔、または咽頭腔、例えば、鼻咽頭(上咽頭)、口咽頭(中咽頭)、または喉頭咽頭部(下咽頭)内の粘膜表面とすることができる。また、粘膜は、膣腔、胃、腸、喉、または哺乳類の他の開口部(限定されるものではないが、外耳道を含む)とすることもできる。
【0053】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、哺乳類の口開口部または鼻開口部にスプレーすることによって投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、口内にスプレーし、鼻から吐き出すことにより、口腔及び鼻腔の両方に投与される。他の投与方法としては、例えば、本開示の組成物の皮膚または粘膜への局所投与、例えば、ゲル化バリア形成組成物の粘膜または皮膚への塗擦または適用が挙げられる。バリア形成組成物は、多くの異なる送達システム(例えば、液体、ゲル、潤滑剤、ローション、クリーム、ペースト、エアロゾル化粒子、ストリップ、スプレー、リンス、包帯(例えば、創傷被覆材)、製品(例えば、コンドーム、ロゼンジ、またはガム)の中または外側へのバリア形成組成物の注入または積層)を介して哺乳類に投与することができる。諸実施形態において、組成物は、クリーム、ゲル、または軟膏として哺乳類に投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、経鼻ポンプを介して投与される。好適な経鼻ポンプスプレーの例としては、限定されるものではないが、Advanced Preservative Free経鼻ポンプスプレー(Aptar Pharma)、Advanced Preservative Free Plus経鼻ポンプスプレー(Aptar Pharma)、VP6ポンプ(Aptar Pharma)、Advancia経鼻ポンプスプレー(Nemera)、SP270もしくはSP370経鼻ポンプスプレー(Nemera)、またはAeroポンプ経鼻ポンプスプレーが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は、米国特許第8,894,604号(参照により全体として本明細書に援用される)に記載のようなRetroNose送達デバイスを介して投与される。本開示の組成物を投与するための他のデバイスとしては、呼吸作動型pMDI、喉スプレーポンプがある。
【0054】
1つの実施形態において、本開示のバリア組成物を使用して、手から口、または手から鼻への接触による有害微生物の伝播に対抗することができる。このような実施形態において、バリア組成物は、哺乳類の手から口、または手から鼻への接触によって哺乳類の口腔、鼻腔、または咽頭腔に導入された微生物を遮断、捕捉、または中和するために適用される。この方法は、汚染された品目との哺乳類の手による接触を識別することを含み、汚染された品目または環境は、有害なウイルス、真菌、または細菌微生物で汚染されていることが知られているか、または予測されている。これは、上記に挙げた汚染された品目または環境との接触を含み得る。
【0055】
同様に、本開示の組成物を使用して、空気中のアレルゲンもしくは病原体の伝達、または手から口もしくは手から鼻への接触による病原体もしくはアレルゲンの伝達を低減することができる。この実施形態において、バリア組成物は、哺乳類の手から口、または手から鼻の接触によって哺乳類の口腔、鼻腔、または咽頭腔に導入されたアレルゲンを遮断または中和するために適用される。この方法は、汚染された品目との哺乳類の手による接触を識別することを含み、汚染された物品または環境は、有害なアレルゲンで汚染されていることが知られているか、または予想されている。これは、上記に挙げた汚染された品目または環境との接触を含み得る。
【0056】
組成物
本開示は、粘膜付着性ポリマーと、粘土粒子とを含む、水性組成物を提供する。本開示の組成物は、感染(例えば、呼吸器系感染)の防止及び治療に有効である。
【0057】
特定の理論に束縛されるものではないが、本開示の組成物は、粘膜表面を覆うと、空気中の病原体及びアレルゲンが粘膜細胞に接触するのを防ぐ防御バリアとして作用するとともに、病原体またはアレルゲンに結合したりそれを捕捉したりもすると考えられている。ただし、本明細書に記載の粘土またはフィロケイ酸塩(例えば、ベントナイト)は、正に帯電したウイルス及び負に帯電したウイルスのいずれにも結合する。本明細書に記載の積層されたフィロケイ酸塩へのウイルスの吸着及び/または結合は、吸着、イオン性錯化、静電気的錯形成、キレート化、水素結合、イオン-双極子、双極子/双極子、ファンデルワールス力、及びこれらの任意の組合せからなる群より選択される1つ以上の機構によって達成されることが理論化される。このようなイオン結合、例えば、フィロケイ酸塩の1つ以上のカチオンまたは負電荷部位が、フィロケイ酸塩表面上でウイルスを構成する分子の1つまたは2つの極性末端の1つまたは2つの原子と電子を共有することにより、驚くほど高いパーセンテージのウイルスの不活性化が得られる。したがって、様々な実施形態において、粘土(例えば、ベントナイト粘土、またはモンモリロナイト粘土)は、空気中の病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌)またはアレルゲンと相互作用し、これらを有効に不活性化する。粘土粒子は、負電荷を有するため病原体及び/またはアレルゲンの吸着/結合性を有しており、この負電荷により、正に帯電した病原体またはアレルゲン(例えば、SARS-Cov-2)に結合する。空気中の病原体に対するバリアとして作用することに加えて、本開示の組成物は、投与する前に既に粘膜表面上に存在する病原体またはアレルゲンを不活性化することも可能である。結合した病原体またはアレルゲンは、粘液線毛クリアランスによって身体から除去される。
【0058】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物はチキソトロピー性調製物である。「チキソトロピー製剤」という用語は、せん断力(振とう、ノズルを介した押圧、撹拌など)に供されたときに、特に点鼻薬、特に経鼻スプレーとして使用するのに適した低粘度(ゾル状態)であり、好ましくは8.90×10-4Pa*s~00.015、特に、8.90×10-4~0.007Pa*s(=kg/(m×s))を範囲とし、一方、静止状態では高粘度であり、好ましくは0.015~1000Pa*sを範囲とすることを特徴とすることを意味すると理解されたい。測定は、0.015~1000Pa*sでもたらされる。測定は、回転式粘度計、または当技術分野で知られている他の粘度測定方法によって実施される。組成物をチキソトロピー性製剤として製剤化することの利点は、その使いやすさである。例えば、感熱性ゲルとは対照的に、投与前に規定温度は必要とされない。単なる振とうまたはポンピングにより、(例えば、経鼻送達デバイスを介して)ゲルを投与に適したゾル状態にすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、せん断減粘性を有する。「せん断減粘」という用語は、流体様または非流体様の挙動及び流れに関連する材料のレオロジー的な粘弾性特性を指す。せん断応力及びせん断減粘としては、ビンガム流、塑性流、擬塑性、ダイラタンシー、チキソトロピー、レオペクシーなどに関連する特性、あるいは粘性材料の他の応力及び/またはひずみ特性が挙げられる。さらに、「せん断減粘」とは、流動開始前に超えなければならない応力として定義される降伏応力の増加(擬可塑性)、時間依存性(チキソトロピー)に伴う、または降伏応力に関連した見かけの粘度(せん断応力のせん断速度に対する比)の低減を指す(ビンガム可塑物及び全般的ビンガム可塑物)。一般的には、Harris,J.,& Wilkinson,W.L.,“Non-Newtonian Fluid,”pp.856-858 in Parker,S.P.,ed.,McGraw-Hill Encyclopedia of Physics,Second Edition,McGraw-Hill,New York,1993を参照。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態において、組成物は、様々な経路による投与に適した任意の形態で製剤化することができ、経路としては、経鼻(例えば、溶液、スプレー、液滴、エアロゾル、ゲル、乾燥粉末)、経口、例えば、局所的(例えば、スプレー、溶液、液滴、エアロゾル、ゲル、乾燥粉末、薬物放出皮膚パッチ、クリーム、または軟膏)、膣内、ドレンチ、経皮、皮内、肺、子宮内パッチまたはデバイス、エアロゾルの使用が挙げられる。
【0061】
粘膜付着性ポリマー(複数可)は、組成物の約0.1重量%~約3重量%のレベルで存在する。例えば、粘膜付着性ポリマー(複数可)は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、または約3.0%で存在することができる。粘膜付着性ポリマーは、約0.1%~約3%、約0.1%~約2.5%、約0.1%~約2.0%、約0.1%~約1.5%、約0.1%~約1.0%、約0.1%~約0.8%、約0.1%~約0.6%、約0.2%~約3%、約0.2%~約2.5%、約0.2%~約2.0%、約0.2%~約1.5%、約0.2%~約1.0%、約0.2%~約0.8%、約0.2%~約0.6%、約0.3%~約3%、約0.3%~約2.5%、約0.3%~約2.0%、約0.3%~約1.5%、約0.3%~約1.0%、約0.3%~約0.8%、約0.3%~約0.6%、約0.3%~約0.5%、約0.4%~約3%、約0.4%~約2.5%、約0.4%~約2.0%、約0.4%~約1.5%、約0.4%~約1.0%、約0.4%~約0.8%、約0.4%~約0.6%、約0.6%~約2.8%、約0.6%~約2.6%、約0.8%~約2.6%、約0.8%~約2.4%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約1.8%、約0.8%~約1.6%、約0.8%~約1.4%、約0.8%~約1.2%、約1.0%~約2.0%、約1.0%~約1.8%、約1.0%~約1.6%、約1.0%~約1.4%、約1.0%~約1.2%、約1.2%~約2.0%、約1.2%~約1.8%、約1.2%~約1.6%、約1.2%~約1.4%、約1.4%~約2.0%、約1.4%~約1.8%、約1.4%~約1.6%、約1.6%~約2.0%、または約1.6~約1.8%を範囲とすることができる。諸実施形態において、粘膜付着性ポリマー(例えば、キサンタンガム)は、組成物の約0.1重量%~約0.5重量%である。諸実施形態において、粘膜付着性ポリマー(例えば、キサンタンガム)は、組成物の約0.2重量%である。
【0062】
粘土は、組成物の約0.4重量%~約5重量%のレベルで存在する。例えば、粘土は、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3.0%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4.0%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、または約5.0%で存在することができる。例えば、粘土(例えば、ベントナイト粘土)は、組成物の約2.5重量%で存在することができる。粘土は、約0.4%~約3%、約0.4%~約2.8%、約0.4%~約2.5%、約0.6%~約3%、約0.6%~約2.8%、約0.6%~約2.6%、約0.8%~約2.6%、約0.8%~約2.4%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約1.8%、約0.8%~約1.6%、約0.8%~約1.4%、約0.8%~約1.2%、約1.0%~約2.0%、約1.0%~約1.8%、約1.0%~約1.6%、約1.0%~約1.4%、約1.0%~約1.2%、約1.2%~約2.0%、約1.2%~約1.8%、約1.2%~約1.6%、約1.2%~約1.4%、約1.4%~約2.0%、約1.4%~約1.8%、約1.4%~約1.6%、約1.6%~約2.0%、約1.6~約1.8%、約2%~約4%、約2%~約3.8%、約2%~約3.6%、約2%~約3.4%、約2%~約3.2%、約2%~約3%、約2%~約2.8%、約2%~約2.6%、約2%~約2.4%、約2%~約2.2%、約2.4%~約4%、約2.4%~約3.8%、約2.4%~約3.6%、約2.4%~約3.4%、約2.4%~約3.2%、約2.4%~約3%、約2.4%~約2.8%、約2.4%~約2.6%、約2.8%~約4%、約2.8%~約3.8%、約2.8%~約3.6%、約2.8%~約3.4%、約2.8%~約3.2%、約2.8%~約3%、約3%~約4%、約3%~約3.8%、約3%~約3.6%、約3%~約3.4%、約3%~約3.2%、約0.5%~約5%、約1%~約5%、約2%~約5%、約3%~約5%、約4%~約5%、約4.2%~約5%、または約4.5%~約5%を範囲とすることができる。例えば、粘土(例えば、ベントナイト粘土)は、組成物の約2.0重量%~約3.0重量%を範囲とすることができる。粘土は、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、鉄、及び他の存在量の少ない元素、特にアルカリ及びアルカリ土類金属の層型含水(構造的なヒドロキシル基を含む)ケイ酸塩である粘土鉱物の微粒子から構成されている。いくつかの実施形態において、粘土は、アルミニウム、マグネシウム、及び鉄のケイ酸塩である。例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(またはケイ酸マグネシウムアルミニウム)は、コレライナイト(colerainite)、サポナイト、及びサフィリンなどのスメクタイト鉱物中に天然に存在する。本明細書で有用な精練されたケイ酸アルミニウムマグネシウムは、R.T.Vanderbilt Company,Inc.により製造されたVeegumとして容易に入手可能である。本明細書で「粘土」に言及した場合、単一のタイプの粘土を指すが、本明細書に記載の2つ以上の異なる形態の粘土の混合物も含む。
【0063】
粘土は、様々な量の非粘土鉱物(例えば、石英、方解石、長石、及び黄鉄鉱)を含んでもよい。本明細書で有用な好ましい粘土は、水膨潤性粘土である。
【0064】
本明細書で使用する場合、「粘土」という用語は、限定されるものではないが、カオリン鉱物、例えば、カオリナイト、チャイナクレイ、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト;蛇紋岩鉱石、例えば、リザーダイト、ハロイサイト、クリソタイル、アンチゴライト、カルロストラナイト、アメスタイト、クロンステダイト(cronstedite)、シャモサイト、ベルチェリン、ガリエライト(garierite);タルク;パイロフィライト;フェリパイロフィライト;スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、メドモンタイト、ピメライト、ベントナイト;イライト鉱物、例えば、レディキート(ledikete)、ブラベサイト、分解雲母、加水雲母、ハイドロマスコバイト(hydromuscovite)、含水イライト、含水雲母、K-雲母、雲母状粘土、及びセリサイト;雲母、例えば、ペグマタイト、マスコバイト、及びフロゴパイト;脆性雲母、例えば、マーガライト及びクリントナイト;海緑石;セラドナイト;クロライト及びバーミキュライト、例えば、苦土緑泥石、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ベイレイクロア、ドンバッサイト、クッカイト(cookite)、スドイト、フランクリンファーナサイト(franklinfurnaceite);パリゴルスカイト及びセピオライト、例えば、アタパルジャイト;アロフェン及びイモゴライト;混合層粘土鉱物、例えば、タルク-クロライト;ならびにこれらの組合せを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、粘土は、カオリン鉱物、スメクタイト、雲母、及びこれらの混合物からなる群より選択される。例えば、粘土は、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、及びこれらの混合物とすることができる。いくつかの実施形態において、粘土はベントナイトである。いくつかの実施形態において、ベントナイトはナトリウムベントナイトである。いくつかの実施形態において、ベントナイトはカルシウムベントナイトである。いくつかの実施形態において、ベントナイトは、ナトリウムベントナイト及びカルシウムベントナイトの混合物である。
【0066】
任意の利用可能な形態、例えば、コロイド状粘土、例えば、アルミノケイ酸マグネシウム、マグネシウムベントナイト、アタパルジャイト、ナトリウムベントナイトマグマなどが本発明での使用に許容される。
【0067】
本発明で有用な粘土には、採掘された天然粘土及び合成粘土の両方が含まれる。粘土は、医薬的に許容されるものでなければならない。本明細書で有用な粘土及び粘土鉱物のより詳細な説明は、以下の3件の文献に見出すことができ、これらの各々が参照により全体として本明細書に援用される:Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.6,pages 381-423;Dell,D.J.,“Smectite Clays in Personal Care Products”,Cosmetics & Toiletries,Vol.108,May 1993,pages 79-85;及びTheng B.K.G.,“Formation and Properties of Clay-Polymer Complexes”,Developments in Soil Science,Vol.9。粘土としては、Southern Clay Products(Gonzalez,Tex.)、Generichem(Totowa,N.J.)、R.T.Vanderbilt(Norwalk,Conn.)、Smeotite,Inc.(Casper,N.Y.)から入手可能な製品が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の粘度剤または1つ以上の医薬的に許容される粘度増強剤を含む。好適な粘度剤または粘度増強剤の非限定的な例としては、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(例えば、Miglyol 812N)、ステアリン酸グリセリル(例えば、geleolモノ及びジグリセリド)、キサンタンガム(例えば、XANTURAL 180)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース-Na、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレン-オキシド、Carbopol、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アルギン酸、カラギーナン、ペクチン、マルトデキストリン、デンプングリコール酸ナトリウム、トラガカントガム、アラビアガム、微結晶性セルロース及びその誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態において、粘度増強剤は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(例えばMiglyol 812N)、ステアリン酸グリセリル(例えばgeleolモノ及びジグリセリド)、及びキサンタンガム(例えばXANTURAL 180)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態において、粘土増強剤は、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1つ以上の粘度剤を含み、また鼻腔内組成物である。いくつかの実施形態において、1つ以上の粘度剤は、粘膜付着性ポリマーと組み合わせて、製剤が感染を十分に防止する上で十分に長い時間、粘膜上に保持されるようにする。例えば、組成物は、粘膜表面上に約5分超、約10分超、約15分超、約20分超、約25分超、約30分超、約45分超、約1時間超、約1時間半超、約2時間超、約2時間半超、約3時間超、約4時間超、約5時間超、約6時間超、約7時間超、約8時間超、約9時間超、約10時間超、約11時間超、約12時間超、約16時間超、約20時間超、または約24時間超保持され得る。いくつかの実施形態において、鼻腔内投与用の製剤に1つ以上の粘度剤が存在しても、製剤の鼻腔内スプレーは妨げられない。
【0069】
1つ以上の粘度剤または1つ以上の医薬的に許容される粘度増強剤は、組成物の約0.1重量%~約50重量%のレベルで存在する。例えば、1つ以上の粘度剤または1つ以上の医薬的に許容される粘度増強剤は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、または約50%で存在することができる。例えば、1つ以上の粘度剤は、組成物の約1.5重量%で存在することができる。1つ以上の粘度剤または1つ以上の医薬的に許容される粘度増強剤は、約0.1%~約50%、約0.1%~約25%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約20%、約15%~約50%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約15%~約20%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約20%~約25%、約25%~約50%、約25%~約45%、約25%~約40%、約25%~約35%、約25%~約35%、約25%~約30%、約30%~約50%、約30%~約45%、約30%~約40%、約30%~約35%、約35%~約50%、約35%~約45%、約35%~約40%、約40%~約50%、約40%~約45%、または約45%~約50を範囲とすることができる。例えば、1つ以上の粘度剤は、組成物の約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、または約1重量%~約2重量%で存在することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物の粘度は、USP<911>粘度の方法によって測定される。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物の粘度は、欧州薬局方の方法、例えば、Ph.Eur.2.2.8.に記載のような方法によって測定される。
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、約200mOsm/kg~約1500mOsm/kgまたは約400mOsm/kg~約1200mOsm/kgの範囲のオスモル濃度を有する。いくつかの実施形態において、本開示の組成物のオスモル濃度は、約200mOsm/kg、約300mOsm/kg、約400mOsm/kg、約500mOsm/kg、約600mOsm/kg、約700mOsm/kg、約800mOsm/kg、約900mOsm/kg、約1000mOsm/kg、約1100mOsm/kg、約1200mOsm/kg、約1300mOsm/kg、約1400mOsm/kg、約1500mOsm/kg、約1600mOsm/kg、約1700mOsm/kg、約1800mOsm/kg、約1900mOsm/kg、約2000mOsm/kg、約2100mOsm/kg、約2200mOsm/kg、約2300mOsm/kg、約2400 mOsm/kg、または約2500mOsm/kgである。
【0073】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、約200mOsm/kg~約600mOsm/kg、約400mOsm/kg~約1000mOsm/kg、約500mOsm/kg~約2000mOsm/kg、約500mOsm/kg~約1500mOsm/kg、約500mOsm/kg~約1000mOsm/kg、約1000mOsm/kg~約2000mOsm/kg、約1000mOsm/kg~約1600mOsm/kg、約1200mOsm/kg~約1800mOsm/kg、約1500mOsm/kg~約1800mOsm/kg、約1500mOsm/kg~約2000mOsm/kgの範囲のオスモル濃度を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のオスモル濃度は、USP<785>オスモル濃度の方法によって測定される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のオスモル濃度は、欧州薬局方の方法、例えば、Ph.Eur.2.2.35に記載のような方法によって測定される。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のオスモル濃度は、試験溶液の凝固点降下を測定する氷点法によって測定される。凝固点降下測定のための浸透圧計は、測定に使用する容器を冷却するための手段と、温度に敏感な抵抗器(サーミスター)と、温度変化またはオスモル濃度を目盛付けすることができる適切な電流または電位差測定デバイスと、試料を混合するための手段とを含む。最初に、浸透圧計をメーカーの指示に従って較正する。浸透圧計の較正は、少なくとも2つの標準溶液を用いて、標準溶液のオスモル濃度が試験溶液のオスモル濃度の予測範囲にまたがるようにして、確認される。浸透圧計の読取り値は、標準溶液から±2mOsmol/kg以内であることとする。較正については、メーカーの指示に従い、適切な体積の標準溶液を測定セルに導入し、冷却システムを始動させる。混合デバイスは、概して、凝固点降下から予測される最低温度を下回る温度で動作するようにプログラムされている。当該装置は、いつ平衡状態が達成されるかを表示する。浸透圧計は、読取り値が標準溶液のオスモル濃度または凝固点降下値のいずれかに対応するように、適切な調整デバイスを用いて較正される。オスモル濃度を示す装置もあれば、凝固点降下を示す装置もある。各測定の前に、測定セルを、試験を行う溶液で少なくとも2回すすぐ。試験溶液を用いてこの手順を繰り返す。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1つ以上の親油性添加剤または賦形剤を含む。用いられる場合、親油性賦形剤は、軟化剤(例えば、当技術分野で知られている軟化剤)であってもよい。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、親油性添加物(例えば、油、脂肪エステル、脂肪酸、または脂肪アルコール)を除外する。他の実施形態において、本開示の組成物は、油、脂肪エステル、脂肪酸、または脂肪アルコール、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸ミリスチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、トリグリセリド、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール(例えば、オレイルアルコール)、及びこれらの組合せを含む。好適なトリグリセリドはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、好適な脂肪酸はカプリル酸である。いくつかの実施形態において、親油性賦形剤は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Miglyol 812 N)である。いくつかの実施形態において、親油性賦形剤は、(i)炭化水素、例えば鉱油、特にパラフィン、パラフィン油(特に、ホワイトパラフィン油、低粘度パラフィン油、またはより広い実施形態では高粘度パラフィン油)、パーセリン油、もしくはパーヒドロスクアレン、またはさらに固形パラフィンもしくはワセリン、あるいは(ii)植物油、例えば、アーモンド油、落花生油、小麦胚芽油、ナタネ油、亜麻仁油、綿実油、アンズ油、クルミ油、パーム油、ピスタチオ油、ゴマ油、ケシの実油、松油、ヒマシ油、大豆油、アボカド油、ココア油、ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、グレープシードオイル。米油、サフラワー油、トウモロコシ胚芽油、モモ核油、コーヒー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アザミ油、カカオバターなど、またはこれらの水素化、ポリオキシエチル化、ポリオキシもしくは水素化ポリオキシ誘導体もしくは分画誘導体から選択される1つ以上の油である。いくつかの実施形態において、油は、動物油、飽和または非飽和エステル、高級アルコール及び/またはシリコーン油、あるいはこれらの構成成分の2つ以上の混合物である。1つ以上の親油性賦形剤は、組成物の約0.1重量%~約50重量%のレベルで存在する。例えば、親油性賦形剤は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、または約50%で存在することができる。例えば、親油性賦形剤(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)は、組成物の約35重量%で存在することができる。1つ以上の親油性賦形剤は、約0.1%~約50%、約0.1%~約25%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約20%、約15%~約50%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約15%~約20%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約20%~約25%、約25%~約50%、約25%~約45%、約25%~約40%、約25%~約35%、約25%~約35%、約25%~約30%、約30%~約50%、約30%~約45%、約30%~約40%、約30%~約35%、約35%~約50%、約35%~約45%、約35%~約40%、約40%~約50%、約40%~約45%、または約45%~約50を範囲とすることができる。例えば、親油性賦形剤(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)は、組成物の約30重量%~約40重量%を範囲とすることができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1つ以上の医薬的に許容される保湿剤を含む。このような保湿剤の非限定的な例としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコール400、ポリエチレングリコール400、ヘキサレングリコール、ブチレングリコール、デキストロース、三酢酸グリセリル、ポリデキストロース、グリセロール、三酢酸グリセリル、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。様々な実施形態において、本開示の組成物は、医薬的に許容される保湿剤の混合物を含むことができる。1つ以上の保湿剤は、組成物の約0.1重量%~約10重量%のレベルで存在する。例えば、1つ以上の保湿剤は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3.0%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4.0%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、約5.0%、約5.1%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、約5.5%、約5.6%、約5.7%、約5.8%、約5.9%、約6.0%、約6.1%、約6.2%、約6.3%、約6.4%、約6.5%、約6.6%、約6.7%、約6.8%、約6.9%、約7.0%、約7.1%、約7.2%、約7.3%、約7.4%、約7.5%、約7.6%、約7.7%、約7.8%、約7.9%、約8.0%、約8.1%、約8.2%、約8.3%、約8.4%、約8.5%、約8.6%、約8.7%、約8.8%、約8.9%、約9.0%、約9.1%、約9.2%、約9.3%、約9.4%、約9.5%、約9.6%、約9.7%、約9.8%、約9.9%、または約10.0%で存在することができる。例えば、保湿剤は、組成物の約5.0重量%で存在することができる。1つ以上の保湿剤は、約0.1%~約3%、約0.1%~約2.8%、約0.1%~約2.5%、約0.2%~約3%、約0.2%~約2.8%、約0.2%~約2.5%、約0.3%~約3%、約0.3%~約2.8%、約0.3%~約2.5%、約0.4%~約3%、約0.4%~約2.8%、約0.4%~約2.5%、約0.6%~約3%、約0.6%~約2.8%、約0.6%~約2.6%、約0.8%~約2.6%、約0.8%~約2.4%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約1.8%、約0.8%~約1.6%、約0.8%~約1.4%、約0.8%~約1.2%、約1.0%~約3.0%、約1.0%~約2.8%、約1.0%~約2.3%、約1.0%~約2.0%、約1.0%~約1.8%、約1.0%~約1.6%、約1.0%~約1.4%、約1.0%~約1.2%、約1.2%~約3.0%、約1.2%~約2.8%、約1.2%~約2.6%、約1.2%~約2.4%、約1.2%~約2.2%、約1.2%~約2.0%、約1.2%~約1.8%、約1.2%~約1.6%、約1.2%~約1.4%、約1.4%~約3.0%、約1.4%~約2.8%、約1.4%~約2.6%、約1.4%~約2.4%、約1.4%~約2.2%、約1.4%~約2.0%、約1.4%~約1.8%、約1.4%~約1.6%、約1.6%~約3.0%、約1.6%~約2.8%、約1.6%~約2.6%、約1.6%~約2.4%、約1.6%~約2.2%、約1.6%~約2.0%、約1.6~約1.8%、約1.8%~約3.0%、約1.8%~約2.8%、約1.8%~約2.6%、約1.8%~約2.4%、約1.8%~約2.2%、約1.8%~約2.0%、約2%~約3.0%、約2%~約2.8%、約2%~約2.6%、約2%~約2.4%、約2%~約2.2%、約2.2%~約3.0%、約2.2%~約2.8%、約2.2%~約2.6%、約2.2%~約2.4%、約2.4%~約3.0%、約2.4%~約2.8%、約2.4%~約2.6%、約2.6%~約3.0%、約2.6%~約2.8%、約2.8%~約3%、約1%~約5%、約2%~約5%、約3%~約5%、約4%~約5%、約4.2%~約5%、約4.5%~約5%、約3%~約10%、約4%~約10%、約3%~約6%、約4%~約6%、約5%~約10%、約5%~約8%、約5%~約7%、約6%~約10%、約6%~約8%、または約8%~約10%を範囲とすることができる。例えば、保湿剤は、組成物の約1重量%~約10重量%、約2.5重量%~約7.5重量%、または約4重量%~約6重量%を範囲とすることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、1つ以上の保湿剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール400、及びプロピレングリコールから選択される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物はグリセリンを含む。いくつかの実施形態において、本開示の組成物はポリエチレングリコール400を含む。いくつかの実施形態において、本開示の組成物はプロピレングリコールを含む。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、グリセリン、ポリエチレングリコール400、及びプロピレングリコールを含む。諸実施形態において、保湿剤はプロピレングリコール及びマンニトールである。
【0079】
いくつかの実施形態において、1つ以上の医薬的に許容される保湿剤を含む本開示の組成物は、鼻腔内組成物である。いくつかの実施形態において、鼻腔内投与用の鼻腔内組成物中の1つ以上の保湿剤は、鼻粘膜、鼻組織、及び/または鼻膜を保湿する。いくつかの実施形態において、鼻腔内投与用の鼻腔内組成物中の1つ以上の保湿剤は、投与後の鼻腔内の刺激を低減し、耐性を高める。いくつかの実施形態において、本開示の鼻腔内組成物は、グリセリン、ポリエチレングリコール400、及びプロピレングリコールを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体及び/または1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物はさらに、限定されるものではないが、防腐剤、オスモル濃度に影響を及ぼす薬剤、錯化剤(例えば、エデト酸ナトリウム)、界面活性剤、pH及び張力に影響を及ぼす薬剤、ならびに感覚マスキング剤を含む1つ以上の添加剤を含む。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用の本開示の組成物はさらに、限定されるものではないが、防腐剤、オスモル濃度に影響を及ぼす薬剤、錯化剤(例えば、エデト酸ナトリウム)、界面活性剤、pH及び張力に影響を及ぼす薬剤、ならびに感覚マスキング剤を含む1つ以上の添加剤を含む。
【0082】
添加剤及び/または賦形剤の非限定的な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム/微結晶性セルロース、プロピルパラベン、メチルパラベン、フェネチルアルコール、クロロブタノール、EDTA、エタノール、アスコルビン酸、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、無水デキストロース、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、PEG400、PEG3500、ステアリン酸ポリオキシル400、ポリソルベート20、ポリソルベート80、グリセリン、プロピレングリコール、三酢酸グリセリル、グリセロール、エチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、及びアルギン酸、カラギーナン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアガムが挙げられる。
【0083】
本明細書で開示する組成物は、所望の投与経路に適合した通例的な手順に従って製剤化することができる。これらの投与方法の各々に適した製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,ed.,20th edition,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PAで見出すことができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、医薬的に許容される担体は、当業者に周知されており、このような担体としては、限定されるものではないが、緩衝剤、食塩水、及び水が挙げられる。いくつかの実施形態において、医薬的に許容される担体としては、約0.01~約0.1Mリン酸緩衝剤または食塩水(例えば、0.8%食塩水)が挙げられる。いくつかの実施形態において、緩衝剤はクエン酸緩衝剤を含む。クエン酸緩衝剤は、例えば、1M溶液とすることができる。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、二塩基性リン酸ナトリウム及び一塩基性リン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、及びクエン酸三ナトリウム二水和物を含む。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、HEPES、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、トリス、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム無水物及び二水和物、ならびにこれらの組合せからなる群より選択される。例えば、pHは、約4~約9の範囲内(約4、約4.2、約4.4、約4.5、約4.8、約5、約5.2、約5.4、約5.5、約5.6、約5.8、約6、約6.2、約6.4、約6.8、約7、約7.2、約7.4、約7.6、約7.8、約8、約8.2、約8.4、約8.6、約8.8、または約9のpH値を含み、これらの値のいずれかの間の全ての範囲を含む)に収まるように制御することができる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、約4.5~約7のpH値を有する。任意の本明細書に記載の組成物のいくつかの実施形態において、組成物は、約4.5~約7のpH値(約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9~約7.0を含み、これらの間の全ての値及び部分範囲を含む)を有する。諸実施形態において、クエン酸は、組成物のpHが約5~約7または約6~約7になるまで添加される。諸実施形態において、クエン酸は、組成物のpHが約5になるまで添加される。諸実施形態において、クエン酸は、組成物のpHが約5~約7になるまで添加される。
【0085】
いくつかの実施形態において、医薬的に許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、及び乳濁液とすることができる。本出願での使用に適した非水性溶媒の例としては、限定されるものではないが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。
【0086】
本出願における使用に適した水性担体としては、限定されるものではないが、水、アルコール/水溶液(例えば、エタノール/水)、グリセロール及びまたはグリセロール/水性混合物、エマルジョンまたは懸濁液(食塩水及び緩衝媒体を含む)が挙げられる。経口用担体は、エリキシル、シロップ、カプセル、錠剤などとすることができる。
【0087】
本出願における使用に適した液体担体は、溶液、懸濁液、または乳液の調製に使用することができる。活性成分は、医薬的に許容される液体担体(例えば、水、有機溶媒、両方の混合物、または医薬的に許容される油もしくは脂質)中に溶解または懸濁することができる。液体担体は、他の好適な医薬添加剤(例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定化剤、または浸透圧調節剤)を含むことができる。
【0088】
本出願での使用に適した液体担体としては、限定されるものではないが、水(上記のような添加剤を部分的に含むもの、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール(例えば、グリコール)を含む)ならびにその誘導体、ならびに油(例えば、分留ココナツ油及び落花生油)が挙げられる。本発明の組成物が加圧容器(例えば、加圧式定量ディスペンサー)から投与される場合、本明細書で開示する加圧された組成物の液体担体は、ハロゲン化炭化水素、炭化水素、二酸化炭素、または他の医薬的に許容される噴射剤とすることができる。
【0089】
香味剤及び香味増強剤は、鼻腔内投与された組成物の一部が摂取された場合に、患者にとって投与形態をより食味の優れたものにすることができる。本発明の組成物及び/または組合せに含めることができる医薬品の一般的な香味剤及び香味増強剤としては、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール、酒石酸、ミント、ショウノウ、ユーカリなどが挙げられる。
【0090】
本開示の組成物は、シグナル伝達剤も含むことができる。シグナル伝達剤により、ユーザーは組成物の投与を感知することができる。例えば、シグナル伝達剤は、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、シトラス、レモン、ライム、またはこれらの任意の組合せとすることができる。このような香味剤またはシグナル伝達剤を組成物に含めることにより、患者は、使用の際に快適な感覚的フィードバックを得られ、これにより、投与を行ったことを患者に認識させ、患者が投与を思い出すための一助とすることができる。このような因子は、患者のコンプライアンスを高め、正の心理的作用をもたらすことができる。また、香味剤/シグナル伝達剤を含めることで、本発明の粉末組成物の予防または治療効果が増強されることも分かった。より具体的には、ミント、メントールなどを含む組成物は、シグナル伝達剤を含まない本発明の組成物よりも、アレルギー性鼻炎及び喘息の治療に有効であると考えられる。
【0091】
感覚マスキング剤を使用して、組成物の投与に伴って食味マスキング及び/または臭気マスキングを行うことができる。いくつかの実施形態において、臭気マスキング剤は、香料入りの芳香マスキング剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、医薬文献で知られている任意の既知の感覚マスキング剤を検討することができる。例示的な食味マスキング剤としては、限定されるものではないが、スクラロース、アスパルテーム、ラクトース、ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、フルクトース、マンニトール、転化糖、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0092】
また、本発明の液体組成物において、構成成分が液体担体(例えば、水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはグリセリン)に溶解または懸濁される場合に、外観を改善する、及び/または患者が製品や単位投与量レベルを識別するのを容易にするために、本開示の組成物は、任意の医薬的に許容される着色剤を用いた色素を含むことができる。
【0093】
例えば、吸入投与用の製剤は、賦形剤として、例えばラクトースを含み、または、例えば、ポリオキシエチレン-9-アウリルエーテル、グリココール酸塩、及びデオキシコール酸塩を含む水溶液、または点鼻形態での投与用の油性溶液、または鼻腔内に適用するゲルであってもよい。また、非経口投与用の製剤は、頬側投与用にグリココール酸塩、経直腸投与用にメトキシサリチル酸塩、または経膣投与用にクエン酸を含むことができる。
【0094】
液体組成物及び/または組合せは、液体担体に可溶ではない有効成分または他の賦形剤を、組成物及び/または組合せ全体に均一に分散させるための乳化剤を含むことができる。本発明の液体組成物及び/または組合せに有用な乳化剤としては、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシア、トラガカント、ツノマタ、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール、及びセチルアルコールが挙げられる。
【0095】
甘味剤、例えば、アスパルテーム、ラクトース、ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、フルクトース、マンニトール、及び転化糖を添加して、食味を改善することができる。
【0096】
本開示の組成物は、防腐剤、共防腐剤、及びキレート剤も含むことができる。例えば、防腐剤、共防腐剤、及びキレート剤としては、アルコール、四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンゾキソニウム、臭化ベンゾドデシニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化セトリモニウム、塩化ベンザルコニウム、フェニルエチルアルコール、安息香酸ならびにそのエステル及び塩、例えば、安息香酸ナトリウム、4-ヒドロキシ安息香酸のC1~C7アルキルエステル、例えば、メチル4-ヒドロキシベンゾエート、メチル4-ヒドロキシベンゾエートナトリウム、またはプロピル4-ヒドロキシベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、セチルピリジニウム塩化物、セトリミド;パラベン及び誘導体、例えば、プロピルパラベンまたはメチルパラベン;アルキル酸、例えば、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸ナトリウム;ビグアニド、例えば、クロルヘキシジンまたはその経鼻的に許容される塩、例えば、ジグルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、または塩化クロルヘキシジン、2-フェノキシエタノール、Euxyl 9010(フェノキシエタノール:エチルヘキシルグリセリン9:1);ヒドロキシアセトフェノン(例えば、SY979940 SymSave(登録商標)H)、1,2-ペンタンジオール(SY996442 Hydrolite(登録商標)5 green)、SY973949 SymOcide(登録商標)PH(フェノキシエタノール(約72%)、ヒドロキシアセトフェノン(17.5%)、カプリリルグリコール(7.5%)、カプリリルグリコール(7.5%))、カプリリルグリコール単体、または他の防腐剤もしくは共防腐剤(例えば、SY973949 SymOcide(登録商標)PH)との組合せ、エチルヘキシルグリセリン単体または他の防腐剤もしくは共防腐剤(例えば、Euxyl 9010)との組合せ、ホウ酸;フェノール、例えば、4-クロロクレゾール、4-クロロキシレノール、ジクロロフェンまたはヘキサクロロフェン及びキレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二ナトリウム(例えば、エデト酸ナトリウムTITRIPLEX III)またはエチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)を挙げることができ、保存安定性を高めるために、投与に安全なレベルでこれらを添加することができる。いくつかの実施形態において、防腐剤または共防腐剤は、酸化防止剤とすることができる。好適な酸化防止剤としては、限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、リンゴ酸、パルミチン酸アスコルビル、パルミチン酸レチニル、アスコルビン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、ベータ-カロテン、アスコルビン酸、アスコルビルリン酸ナトリウム、アスコルビルリン酸マグネシウム、アスコルビン酸-2-グリコシド、パルミチン酸アスコルビル、ヒドロキシアセトフェノン、ステアリン酸アスコルビル、αリポ酸、グルタチオン、コエンザイムQ10、トコフェロール(例えば、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)、酢酸トコフェロール、レチノール、パルミチン酸レチノール、ゲニステイン、ケルセチン、エピガロカテキン、没食子酸エピガロカテキン、没食子酸ガロカテキン、シリビン、ジオスメチン、ケンペロール、エピカテキン、ガランギン、インドール酸、γ-リノレン酸、リノール酸、クロロゲン酸、トコトリエノール、アスタキサンチン、及びこれらの任意の医薬的に許容される塩、これらの任意のアナログ、及び以上の任意の組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は、防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、防腐剤としてメチルパラベンを含む。いくつかの実施形態において、組成物は塩化ベンザルコニウムを含まない。
【0097】
1つ以上の防腐剤及びキレート剤は、組成物の約0.01重量%~約3重量%のレベルで存在する。例えば、1つ以上の防腐剤及びキレート剤は、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、または約3.0%で存在することができる。例えば、1つ以上の防腐剤及び/またはキレート剤は、組成物の約0.5重量%または約0.2重量%で存在することができる。1つ以上の防腐剤及びキレート剤は、約0.01%~約3%、約0.01%~約2.5%、約0.01%~約2.0%、約0.01%~約1.5%、約0.01%~約1.0%、約0.01%~約0.8%、約0.01%~約0.6%、約0.01%~約0.4%、約0.01%~約0.2%、0.1%~約3%、約0.1%~約2.5%、約0.1%~約2.0%、約0.1%~約1.5%、約0.1%~約1.0%、約0.1%~約0.8%、約0.1%~約0.6%、約0.1%~約0.4%、約0.1%~約0.3%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約3%、約0.2%~約2.5%、約0.2%~約2.0%、約0.2%~約1.5%、約0.2%~約1.0%、約0.2%~約0.8%、約0.2%~約0.6%、約0.2%~約0.4%、約0.2%~約0.3%、約0.3%~約3%、約0.3%~約2.5%、約0.3%~約2.0%、約0.3%~約1.5%、約0.3%~約1.0%、約0.3%~約0.8%、約0.3%~約0.6%、約0.3%~約0.5%、約0.4%~約3%、約0.4%~約2.5%、約0.4%~約2.0%、約0.4%~約1.5%、約0.4%~約1.0%、約0.4%~約0.8%、約0.4%~約0.6%、約0.6%~約2.8%、約0.6%~約2.6%、約0.8%~約2.6%、約0.8%~約2.4%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約1.8%、約0.8%~約1.6%、約0.8%~約1.4%、約0.8%~約1.2%、約1.0%~約2.0%、約1.0%~約1.8%、約1.0%~約1.6%、約1.0%~約1.4%、約1.0%~約1.2%、約1.2%~約2.0%、約1.2%~約1.8%、約1.2%~約1.6%、約1.2%~約1.4%、約1.4%~約2.0%、約1.4%~約1.8%、約1.4%~約1.6%、約1.6%~約2.0%、または約1.6~約1.8%を範囲とすることができる。例えば、1つ以上の防腐剤及び/またはキレート剤は、組成物の約0.01重量%~約3重量%を範囲とすることができる。諸実施形態において、防腐剤は、組成物の約0.1重量%~約1.5重量%を範囲とし、キレート剤は、組成物の約0.05重量%~約0.5重量%を範囲とする。
【0098】
諸実施形態において、防腐剤は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、及び安息香酸ナトリウムからなる群より選択される1つ以上の防腐剤である。
【0099】
諸実施形態において、組成物は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール(pheoxyethanol)、エチルヘキシルグリセリン、ペンチレングリコール、及びヒドロキシアセトフェノン(hydroxyacetophonenone)のうちの1つ以上を含む。
【0100】
諸実施形態において、キレート剤はEDTA二ナトリウムである。
【0101】
いくつかの実施形態において、製剤は防腐剤を含まない。
【0102】
本開示の組成物においては、1つ以上の酸化防止剤も含むことができる。
【0103】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、システイン、重硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)、モノチオグリセロール、ジチオスレイトールなどを挙げることができる。例えば、酸化防止剤はブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)とすることができる。
【0104】
1つ以上の酸化防止剤は、約0.005%~約3%、約0.005%、約0.01%~約2.5%、約0.01%~約2.0%、約0.01%~約1.5%、約0.01%~約1.0%、約0.01%~約0.8%、約0.01%~約0.6%、約0.01%~約0.4%、約0.01%~約0.2%、0.1%~約3%、約0.1%~約2.5%、約0.1%~約2.0%、約0.1%~約1.5%、約0.1%~約1.0%、約0.1%~約0.8%、約0.1%~約0.6%、約0.1%~約0.4%、約0.1%~約0.3%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約3%、約0.2%~約2.5%、約0.2%~約2.0%、約0.2%~約1.5%、約0.2%~約1.0%、約0.2%~約0.8%、約0.2%~約0.6%、約0.2%~約0.4%、約0.2%~約0.3%、約0.3%~約3%、約0.3%~約2.5%、約0.3%~約2.0%、約0.3%~約1.5%、約0.3%~約1.0%、約0.3%~約0.8%、約0.3%~約0.6%、約0.3%~約0.5%、約0.4%~約3%、約0.4%~約2.5%、約0.4%~約2.0%、約0.4%~約1.5%、約0.4%~約1.0%、約0.4%~約0.8%、約0.4%~約0.6%、約0.6%~約2.8%、約0.6%~約2.6%、約0.8%~約2.6%、約0.8%~約2.4%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約2.2%、約0.8%~約1.8%、約0.8%~約1.6%、約0.8%~約1.4%、約0.8%~約1.2%、約1.0%~約2.0%、約1.0%~約1.8%、約1.0%~約1.6%、約1.0%~約1.4%、約1.0%~約1.2%、約1.2%~約2.0%、約1.2%~約1.8%、約1.2%~約1.6%、約1.2%~約1.4%、約1.4%~約2.0%、約1.4%~約1.8%、約1.4%~約1.6%、約1.6%~約2.0%、または約1.6~約1.8%を範囲とすることができる。例えば、酸化防止剤は、組成物の約0.005重量%~約0.5重量%、または約0.01重量%~約0.1重量%を範囲とすることができる。
【0105】
諸実施形態において、組成物は、粘膜付着性ポリマー及び粘土粒子、ならびに親油性賦形剤、粘度調整剤、保湿剤、防腐剤、キレート剤、及び緩衝剤から選択される、少なくとも1つ以上の追加の構成成分(例えば、1つまたは2つまたは3つまたは4つまたは5つまたは6つの追加の構成成分)を含む。
【0106】
諸実施形態において、組成物は、粘膜付着性ポリマー及び粘土粒子、ならびに親油性賦形剤、粘度調整剤、保湿剤、酸化防止剤、キレート剤、及び緩衝剤から選択される、少なくとも1つ以上の追加の構成成分(例えば、1つまたは2つまたは3つまたは4つまたは5つまたは6つの追加の構成成分)を含む。
【0107】
これらの実施形態の一部において、防腐剤を含まない製剤は、経鼻経路を含む様々な経路に投与するための複数回の投与前及び投与時に溶液の無菌性を維持することが可能な、液体分注システムを備えた好適なデバイスに含めることができる。投与は、定量ポンプ分注デバイス(例えば、当技術分野で知られているもの)の使用によって制御することができる。このようなデバイスの一例が、韓国特許第KR101474858B1号(参照により全体として本明細書に援用される)に記載されている。いくつかの実施形態において、防腐剤を含まない組成物は、製剤を鼻に送達するのに十分である、すなわち経鼻スプレーとして機能することが可能である、防腐剤を含まない分注システムと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態において、このような併用製品は、防腐剤を含まない滅菌製剤を滅菌ボトルに無菌充填することにより、製造することができる。Ursatec Verpackung GmbH製の防腐剤を含まないスプレーポンプシステムは、このような組合せ製品の1つであり、ポンプが押下されると、内蔵バルブは、空気をボトルに逆流させずに経鼻スプレーを放出する。空気は、フィルター、吸着材、及び銀の効率的な材料の組合せからなる特別なフィルターマトリックスを通過する。別の組合せ製品例としては、Nemera製の防腐剤を含まないポンプシステムがあり、機械的に閉鎖されたチップが開口部からの汚染を回避するとともに、シリコーン膜を透過することで無菌の空気が進入できるようになっている。防腐剤を含まない組合せ製品のまた別の例としては、Aptar Pharma製の経鼻スプレーシステムがあり、ばね式のチップ封止機構が汚染を防止するとともに、通気チャネル内のフィルター膜が無菌の空気の進入を確保している。
【0108】
また、液体組成物及び/または組合せは、添加剤または賦形剤(例えば、グルコン酸、乳酸、クエン酸、または酢酸、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、または酢酸ナトリウム)も含むことができる。賦形剤の選択及び使用量は、経験に基づき、そして当分野の標準的な手順及び参考文献の検討に基づき、製剤科学者が容易に決定することができる。
【0109】
本発明の組成物及び/または組合せは、水性または油性懸濁液の形態をとることができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び/または組合せは、無菌の水性または油性懸濁液の形態をとることができる。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、公知の技術に従って製剤化することができる。無菌溶液または懸濁液は、無毒性の医薬的に許容される希釈剤または溶媒(例えば、1,3-ブタンジオール中溶液)に溶解または分散してもよく、乾燥粉末としての送達用に凍結乾燥粉末として調製してもよい。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒に含まれるものとして、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の固定油は、従来から溶媒または懸濁媒体として用いることができる。この目的において、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激の固定油を用いることができる。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態において、組成物は、経口投与、経鼻投与、または経口と経鼻との組合せ投与に適した任意の方法で製剤化することができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、本開示の製剤は、刺激応答性ポリマーを含むin situ経鼻ゲル化システムの形態をとる。刺激応答性ポリマーとしては、鼻粘膜との接触時に温度、pH、またはイオンの変化によりin situゲル化製剤のレオロジー特性を改変するポリマーが挙げられる。刺激応答性ポリマーまたはin situゲル化剤の例としては、限定されるものではないが、ポロキサマー、ペクチン、及びキトサンベースのポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、in situゲル化システムはさらに、粘膜付着性賦形剤、例えば、carbopol 934P、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルセルロースを含むことができる。いくつかの実施形態において、刺激応答性ポリマーを含む経鼻製剤は、任意選択でさらに、粘膜付着性賦形剤、例えば、Chonkar et al.,Indian J Pharm Sci.,2015 Jul-Aug;77(4):367-375(参照によりあらゆる目的で全体として本明細書に援用される)で開示しているものを含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、米国付与前公開第2006/0045868号、同第2006/0045869号、同第2008/0299079号で開示されているアルキルグリコシドなどの吸収促進剤を含む製剤、または吸収増強剤としての大豆由来ステアリルグリコシド及びステロール混合物を含む製剤(Ando et al.,Biological and Pharmaceutical Bulletin,21(8),862-865)を使用して、持続放出をもたらすことができる(これらの文献の各々が、参照によりあらゆる目的で本明細書に援用される)。いくつかの実施形態において、吸収増強剤としてのグリココール酸ナトリウムのミセルまたは脂肪酸(例えば、リノール酸)と混合したグリココール酸ナトリウムのミセルを含む製剤は、持続放出製剤として使用することができる。吸収増強剤の他の例としては、シクロデキストリン、リン脂質、及びキトサンが挙げられる。
【0113】
熱ゲル化ポリマー(例えば、ポロキサマー)に基づく例示的な経鼻製剤については、Sharmaら(Drug Dev Ind Pharm.2014 Jul;40(7):869-78)、Choら(J Pharm Sci.2011 Feb;100(2):681-91)、Choiら(Int Forum Allergy Rhinol.2017 Jul;7(7):705-711)、及びBalakrishnanら(Molecules.2015 Mar 4;20(3):4124-35)で開示されている(これらの文書の各々は、参照によりあらゆる目的で本明細書に援用される)。
【0114】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、液滴、スプレー、ゲル、軟膏、クリーム、または懸濁液で、経鼻的または経口的に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、ディスペンサーもしくはデバイス(例えば、単回用量アンプル、定量スプレー、アトマイザー、ネブライザー、ポンプ、鼻パッド、もしくは鼻スポンジ)、または医薬文献で知られている任意の他の経鼻投与方法を用いて経鼻的に投与される。
【0115】
いくつかの実施形態において、本開示の液体組成物の経鼻投与用のデバイスとしては、ピペット(例えば、単位用量ピペット)、ドロッパー(例えば、多回用量スポイトを含む)、rhinyleカテーテル、蒸気吸入器、機械的スプレーポンプ(スクイーズボトル、多回用量定量スプレーポンプ、単回または2回用量スプレーポンプ、双方向性多回用量スプレーポンプを含む)、ガス駆動スプレーシステム/アトマイザー及び電動ネブライザー/アトマイザーが挙げられる。これらのデバイスは、Djupeslandによる概説で簡潔に要約されている(Drug Deliv.and Transl.Res.(2013)3:42-62)(参照により全体として本明細書に援用される)。
【0116】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、定量で鼻腔に投与される。いくつかの実施形態において、定量経鼻スプレーを使用して、本開示の組成物を投与することができる。いくつかの実施形態において、定量経鼻ポンプスプレーを使用して、本開示の組成物を定量で投与することができる。いくつかの実施形態において、定量霧化スプレーポンプを使用して、本開示の組成物を定量で投与することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、経鼻加圧式定量吸入器(pMDI)を使用して、本開示の組成物を定量で投与することができる。いくつかの実施形態において、本開示の加圧経鼻製剤は、エアロゾル製剤とすることができる。このようなエアロゾル製剤は、いくつかの実施形態において、好適な噴射剤(例えば、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、二酸化炭素、または当技術分野で知られている他の好適な噴射剤)を有する加圧パック内に組成物を含む。エアロゾルは、いくつかの実施形態において、レシチンなどの界面活性剤も含むことができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、従来の手段により、例えば、ドロッパー、ピペット、スプレー、ポンプスプレー、呼吸作動型pMDI、RetroNoseデバイス、または喉スプレーポンプを用いて、鼻腔または口腔に投与される。
【0119】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1日に1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1日に1回以上投与され、各用量は、組成物の制御量、定量、または設定量を投与する。
【0120】
いくつかの実施形態において、本開示の鼻腔内組成物は、1日に1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回投与される。いくつかの実施形態において、本開示の鼻腔内組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、または1日6回投与され、各用量は、組成物の制御量、定量、または設定量を投与する。いくつかの実施形態において、本開示の鼻腔内組成物は1日3回投与される。いくつかの実施形態において、本開示の鼻腔内組成物は1日最大6回投与される。
【0121】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、溶液、懸濁液、またはエアロゾルである。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は水溶液である。
【0122】
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、あたかもそれぞれ個々の刊行物及び特許が参照により援用されるよう具体的かつ個々に示されているかのように、それらが参照により全体として本明細書に援用される。矛盾がある場合、本明細書の任意の定義を含めて本明細書が優先される。
【0123】
本開示の具体的な実施形態について論じてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、制限的なものではない。開示の多くの変形は、本明細書及び以下の特許請求の範囲の再考察時に当業者に明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲をそれらの均等物の全範囲とともに、ならびに本明細書をこのような変形とともに参照することにより、決定されるべきである。
【実施例】
【0124】
実施例1:ベントナイト懸濁液によるSARS-CoV-2結合のin vitro分析
目的:水中に懸濁させたベントナイトが、SARS-CoV-2ウイルスに結合し、ウイルスの細胞感染能力を低下させることができるかを評価する。
【0125】
以下の試験品目:Vicks First Defence(風邪及びインフルエンザの症状を引き起こすウイルスを捕捉及び中和、スプレー形態で市販(HPMC、コハク酸、コハク酸二ナトリウム、PCA、フェネチルアルコール、EDTA亜鉛、酢酸亜鉛、ポリソルベート80、香料:(メントール、ショウノウ、ユーカリプトール)、サッカリンナトリウム))、及び「Veegum HS」(精製ベントナイト NF)を使用した。Vicksの試料を水で10倍に希釈した。Veegumベントナイトに水を加え、0.04重量%、0.08重量%、0.16重量%のベントナイトを有する水溶液を達成した。
【0126】
手順:100μlのSARS-CoV2(10^6感染単位)を900ulの各ベントナイト懸濁液及び非ベントナイト試料(Vicks)に加え、各試料を32℃で5、15、45分間インキュベートした。ゲル分離カラム(Sephadexマイクロスピンカラム)を使用して、非結合ウイルスを含む溶液からベントナイトを分離した。次いで、各試料を段階希釈し、Vero細胞株とインキュベートし、6日目にウイルス力価を測定し、TCID50(50%組織培養感染量)を測定することにより細胞病理学的効果を決定した。
【0127】
結果:
図1は、ベントナイトのインキュベートから5、15、及び45分後のウイルス感染負荷の低減を示している。5分間のインキュベート後、全てのベントナイト含有溶液は90%超のウイルス感染負荷の低減を達成し、ベントナイト溶液のうちの2つの溶液(0.04%及び0.16%ベントナイト)は、99%に近いウイルス感染負荷の低減を達成した。同様に、インキュベートから15分時及び45分時では、全てのベントナイト含有溶液が、99%に近いウイルス感染負荷の低減を達成した。これに対し、ベントナイト非含有溶液(Vicks)では、各試験のインキュベート時点でウイルス感染負荷の低減がマイナスであることが示された。
【0128】
結論:SARS-Cov-2粒子は、ベントナイト含有溶液に吸着及び/または結合して、病原体を不活性化するであろうと考えられた。本実施例に記載している結果は、この仮説を裏付けるものであり、5分間のインキュベート後であっても、全てのベントナイト含有溶液が90%以上のウイルス感染負荷の低減を達成し、ほとんどの溶液が99%に近いウイルス感染負荷の低減を達成したことを示している。また、非ベントナイト系溶液ではウイルス感染負荷の低減が示されなかったことで、この仮説はさらに裏付けられる。
【0129】
実施例2:チキソトロピー性製剤の開発及び調製
目的:従来の水溶液経鼻スプレーと比較して、良好な局所忍容性及び安全性を有し鼻内滞留時間が長い、鼻腔内送達に適したベントナイト組成物を製剤化する。
【0130】
鼻内滞留時間を最大化するため、チキソトロピー性製剤、すなわち、スプレーデバイス内で振とうするとゾル状態になり、鼻粘膜に沈着するとゲル状態に戻る粘性のゲルである製剤の開発を検討した。
【0131】
材料及び方法:ベントナイト(Veegum K)、粘度調整剤(キサンタンガム、ステアリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、湿潤剤(グリセロール)、及び緩衝剤(クエン酸)の組合せに基づきデザインスペースを定義して、合計63種の製剤を生成した。構成成分及び最大濃度は、入手可能な安全性及び忍容性のデータならびに規制の状態(一般的に安全と認められる(GRAS)非活性成分のFDAリスト)に基づいて選択した。
【0132】
製剤の実現可能性及び適合性を、複数の因子(製造実現可能性(原材料の可溶化及び高せん断混合後の均一性)、質感、表面への付着性及び粘着性、レオロジー(G*複素弾性率、スイープ振幅試験によるG’貯蔵弾性率、ORO試験(最大240インチのG’再生率[%]及びせん断粘度曲線を調べる)によるチキソトロピー)を含む)に基づいて評価し、さらにリード候補については、経鼻スプレーポンプによるスプレー性(プルーム幾何学形状、スプレーパターン、作動力の手動による評価)についても評価した。レオロジー測定は、MCR 102 Antoon Paarレオメーターで実施した。
【0133】
結果:製剤開発作業から、以下に示す2つのリード製剤が浮上した。
【表1】
【0134】
製剤60を以下のようにして調製した。
混合物1:メチルパラベンを、完全に溶解するまで撹拌することにより、75℃で水に溶解した。Veegum K及びキサンタンガムを水に、高せん断ミキサーを用いて12000rpm、75±1℃で15分間撹拌しながら加えた。
混合物2:グリセロール、Miglyol 812 N、及びGeleolを70±1℃に加熱し混合した。
混合物3:ソルビン酸カリウム及びEDTA二ナトリウムを水に溶解した。
ステップ1:混合物2を混合物1に、10000rpm、75℃で5分間混合しながら加えた。
ステップ2:ステップ1のゲルエマルジョンを35℃に冷ました後、10000rpmで5分間混合し、その後混合物3を加えた。
ステップ3:1Mクエン酸でpHを5.0に調整し、10000rpmで5分間均質化した。
ステップ4:調製物を水で最終容量にし、10000rpmで5分間均質化した。
【表2】
【0135】
製剤49を以下のようにして調製した。
混合物1:メチルパラベンを、完全に溶解するまで撹拌することにより、75℃で水に溶解した。Veegum K及びキサンタンガムを水に、高せん断ミキサーを用いて12000rpm、75±1℃で15分間撹拌しながら加えた。
混合物2:ソルビン酸カリウム、グリセロール、及びEDTA二ナトリウムを水に溶解した。
ステップ1:混合物1を35℃に冷ました後、10000rpmで5分間混合し、その後混合物2を加えた。
ステップ2:1Mクエン酸でpHを5.0に調整し、10000rpmで5分間均質化した。
ステップ3:調製物を水で最終容量にし、10000rpmで5分間均質化した。
【0136】
結論:本実験の結果、所望の特徴及び特性、すなわち、安全性及び忍容性が良好な構成成分、ゲル段階での構造(許容されるG’及びG*(それぞれ貯蔵弾性率及び複素弾性率))、振とう後の標準的な市販の経鼻スプレーポンプによるスプレー性、スプレーし粘膜表面に接触した後の短時間での構造回復(せん断応力後の許容される240インチのG’貯蔵弾性率回復)、許容されるスプレー特徴(均質なスプレーパターン、作動の容易性、許容されるスプレープルーム)、を備えた2つのリード製剤が得られた。
【0137】
実施例3:ヒト気道上皮細胞アッセイにおける防御効果
目的:鼻上皮細胞のSARS-CoV-2感染を防止または軽減するベントナイトを含むゲル製剤の能力を評価する。
【0138】
材料及び方法:本実験のために、14例の健康なドナーに由来する再構成ヒト鼻上皮(MucilAir(商標)、Epithelix)を使用した。これらの上皮培養物は、形態的及び機能的に上部伝導気道に似ており、粘液を産生し、in vivo上皮のように活発な線毛運動及び粘液線毛クリアランスを示す。そのため、これらによって、ヒトの呼吸器系ウイルスの影響を調べるための汎用的なプラットフォームが得られる。
【0139】
鼻上皮細胞培養物を0.7mLの培地中で調製し、通常の培養中は37℃で、試験中は34℃で保存した。挿入物の処置及び感染の前に、先端側を軽く洗浄して粘液を除去した(200μL廃棄)。次いで、10μLの以下の試験品目(1:5希釈):F060及びF49(実施例2で開示している2つのベントナイト製剤)、またはこれらのビヒクルF060(-)及びF49(-)を、先端側に加えた。比較のため、ウイルスまたはアレルゲンのバリアとして使用される経鼻粉末のヒドロキシプロピルメチルセルロース(Nasaleze 5mg/mL)の溶解液を加えた。感染培養物に食塩水を加えたものをメイン対照とし、無処置の非感染細胞を培養物対照とした。F060で処置した非感染細胞を追加的な対照とした。処置した後、100μLのSARS-CoV-2懸濁液を0.5の感染多重度(2.5×106TCID50;Texcell)で加えた。3時間後、先端側を200μLの培養基で3回軽く洗浄して、結合していないウイルスを除去した。次いで、先端側に300μLの培養基を加え、20分後にウイルスの定量化(TCID50)のために除去した。次に、500μLの培地が入った新しい培養プレートに挿入物を移し、底部側面から試料を採取し、10μLの試験品目を加えた。次いで細胞培養物を21時間インキュベートした。
【0140】
24、48、72、及び96時間後にそれぞれ、300μLの培養基を先端側に加え、ウイルス定量化のために20分後に除去し、挿入物を500μLの培養液が入った新しい培養プレートに移し、底部側面からの試料を採取し、10μLの試験品目を加えた(96時間後以外)。F060で処置した1つの別個の細胞培養物の場合、先端洗浄を実施せず、24時間ごとに10μLの試験品目F060を加えながら(72時間時に最後の添加)、ウイルスを4日間蓄積させた。
【0141】
次いで、各試料を段階希釈し、Vero細胞株とインキュベートし、6日目にクリスタルバイオレット染色を用いてウイルス力価を測定して、細胞病理学的効果(TCID50)を決定した。
【0142】
結果:食塩水で処置した鼻上皮では、Sars-CoV-2が効率的に複製した。
図2に示されているように、感染から48時間後に明らかなウイルス成長を観察することができた。そしてウイルス力価は、96時間かけて平均6.9×10
6TCID
50/mLに増加した。これに対し、ベントナイト組成物F060で処置した鼻上皮の場合では、先端洗浄による平均ウイルス力価は48時間時に90.0%低下し(p<0.05)、72時間及び96時間時にそれぞれ99.2及び99.4%低下した(p<0.001)。先端洗浄なしの場合、96時間時の平均ウイルス力価は92.4%低下した(p<0.001)。ベントナイト組成物F049で処置した結果、ウイルス力価は同様に低減したが、その低減は、F060よりも遅れて明らかになり、またより小さいものであった(72時間時に61.1%、96時間時に71.8%、有意差なし)。ビヒクルF060(-)及びF049(-)は、ウイルス成長及びウイルス力価に効果を有しないように思われた。HPMCによる処置も、顕著な効果を示さなかった。F060で処置した培養物対照及び非感染培養物には、特に変化は見られなかった。
【0143】
結論:ベントナイト組成物による反復処置は、鼻上皮細胞のSars-CoV-2感染を顕著に軽減する上で有効である。試験した組成物のビヒクル自体は防御効果を示さなかったため、阻害効果はベントナイト成分によって発揮される。驚くべきことに、F060の場合において、製剤とベントナイトとの間の相乗効果が観察され、F049よりも含まれるベントナイトが少なかった(2.5%対3.0%)にもかかわらず、より顕著な効果が示された。水性製剤であるF049とは異なり、F060はゲルエマルジョン(水中油型)である。理論に束縛されるものではないが、この有効性の増大は、ベントナイトが乳化安定剤として機能して、自らを油滴と水相との界面に配置することに関連すると考えられる。別の仮説は、水相内の油の界面にあるベントナイトが、油滴の近傍にウイルス粒子を動員し、油滴内にウイルス粒子を捕捉するのを増強する可能性があるというものである。
【0144】
実施例4:空気中のウイルス、アレルゲン、及び他の粒子からの防御に使用するための製剤の開発及び調製
目的:ほとんどまたは全く防腐剤を有しないように設計された一般的な経鼻スプレーデバイスを介して投与することができる、ベントナイトを含むチキソトロピー性製剤を含む製品を開発する。この製品は、投与が容易で、鼻及び咽喉における忍容性が良好であり、関連する規制要件に適合し、大規模な製造に適したものであるべきである。
【0145】
材料及び方法:実施例2で開示している組成物F060から出発し、いくつかの因子に基づき様々なバリアントを評価した。このような因子には、製造実現可能性(原材料の可溶化及び高せん断混合後の均質性)、質感、表面への付着性及び粘着性、レオロジー(G*複素弾性率、スイープ振幅試験によるG’貯蔵弾性率、ORO試験(最大240インチのG’再生率[%]及びせん断粘度曲線を調べる)によるチキソトロピー)、工業スケールにおける及び現行の医薬品規格に従った適切な分注能力、製造プロセス、保存、及び使用中の許容される物理的及び化学的安定性が含まれた。
【0146】
さらに、評価には、経鼻スプレーデバイスとの適合性、単純な振とう後の一貫したスプレー特徴(均質なスプレーパターン、作動の容易性、許容されるスプレープルーム、プルーム幾何学形状、液滴サイズ分布、鼻腔スプレー先端に液滴が残留しない)、作動力の手動による評価、プライミングの容易性、及びボトルとの適合性が含まれた。さらに、試験には、におい及び食味、忍容性、ならびに操作のユーザー評価も含まれた。最後に、長期的かつ頻繁に毎日使用するための使い勝手の側面(防腐剤不使用、鼻粘膜との徹底した適合性、及び鼻の症状を含む)について検討した。
【0147】
結果:開発作業の結果、防腐剤を含まないゲルエマルジョン(6PF3)を20mL HDPEボトル(参照:P-3696(Rochling,Mannheim))に充填し、約140μLずつ約120回スプレーを送達する経鼻スプレーポンプ(APF(Aptar,Radolfzell))に接続した。
【表3】
【0148】
製剤6PF3を以下のようにして調製した。
【0149】
水相:水を70℃+/-5℃に加熱し、EDTAナトリウムを加え、完全に溶解した(例えば、5分間)。マンニトールを加え、約5分間溶解した。プロピレングリコールを加え、約10分間溶解した。キサンタンガム及びVeegum Kを加え、約3000rpmで均質化した(例えば、25分間)。
【0150】
油相:Miglyol 812N及びGeleolモノ及びジグリセリドを混合し、70℃+/-5℃に加熱した。BHAを加え、約5分間均質化した。
【0151】
油相を水相に加え、約3000rpm、70℃で約35分間乳化した。
【0152】
温度が35℃以下になるまで、混合及び均質化しながら冷却を実施した。クエン酸の濃縮溶液を、pH5.0に達するまで、均質化しながら加えてPH調整を実施した。調製物を水で最終容量にし、約1500rpmで約5分間均質化した。
【0153】
調製物を20mLボトルに充填し、これを経鼻スプレーポンプで閉鎖した。
【0154】
微生物汚染除去の戦略(例えば、オートクレーブ及びガンマ線照射)を、バルク製品及び完成製品に対し試験した。
【0155】
結論:実験の結果、物理的に安定な製剤と、スプレーポンプとを含み、所望の特徴及び特性、すなわち、一貫性があり許容されるスプレー特徴(均質なスプレーパターン、作動の容易性、許容されるスプレープルーム)、を備えた好適な組合せ製品が得られた、製剤の成分は、優れた安全性及び忍容性、鼻腔内の長い滞留時間を可能にするゲル段階での適切な構造(許容されるG’及びG*(それぞれ貯蔵弾性率及び複素弾性率))、スプレーし粘膜表面に接触した後の短時間での構造回復(せん断応力後の許容される240インチの貯蔵弾性率回復)を有する。
【0156】
実施例5:拡散バリアアッセイにおけるアレルゲンに対するバリア機能の試験
目的:ベントナイトを含むゲル製剤において、鼻上皮へのアレルゲン粒子の拡散を防ぐバリアとして機能する能力を評価する。
【0157】
材料及び方法:本実験のために、寒天ブロックを使用して鼻粘膜をシミュレートした。これは過去に説明されている通りである(Diethart B,Emberlin JC,Lewis RA.Hydroxypropylmethylcellulose gel application delays Der p 1 diffusion in vitro.Natural Sci.2010;2(2):79-84(参照によりあらゆる目的で全体として本明細書に援用される))。10mLの寒天(1.5%、Agar-agar ultrapure(Merck,Darmstadt);0.9%食塩水で調製)を10cmシャーレにキャストした。冷却後、寒天から小さな長方形(1×1cm)を切り出し、清浄なスライドガラスに移した。寒天ブロックの片面の2つの縁からスライドの縁まで、温かいため液体になっているワセリンの小さな線を引いて、ブロックの側面から試験品目が拡散するのを防止した。寒天ブロックを、寒天の上面を密閉するカバースリップで覆った。そのため、寒天内への拡散は1つのフリーエッジからのみ可能となった。
【0158】
試験品目は、実施例4に記載したゲル6PF3とした。これを滅菌1mLシリンジを用いて総体積40μLで寒天ブロックの開放側に適用し、その結果、初期厚さは3~4mmとなった。カバースリップで覆った後、20μLのアレルゲン溶液(組み換えTimothy草花粉アレルゲンPhi p 5a 6000ng/mL;Indoor Biotechnologies,Charlottesville)を試験品目または直接寒天ブロック(陰性対照)上に適用した。1つの追加の対照群では、試験品目の代わりに40μLの寒天を適用した(寒天対照)。スライドを35℃、相対湿度90%で15分、30分、60分、180分、360分インキュベートして、鼻の状態をシミュレートした。全ての試験は、寒天対照(三重反復)を除き、四重反復で実施した。
【0159】
寒天ブロックをスライドから慎重に取り出し、0.5mLの溶出培地(0.05%v/v Tween(登録商標)20を含むリン酸緩衝食塩水)を含むラベル付き滅菌マイクロチューブに移した。試料を20秒間ボルテックスし、室温で一晩振とうした。チューブから試料を採取し、ELISA(Antibody kit PhI p 5(Indoor Biotechnologies,Charlottesville))で測定するまで-80℃で保存した。
【0160】
結果:陰性対照群では、アレルゲン回収率が経時的に上昇して、6時間後には70.5%となった。寒天対照群では、回収率は46.0%であった(6時間後のみ実施)。試験品目を適用した結果、1時間後(12.8%)を除く全ての時点で、検出可能なアレルゲンが認められなかった。
【0161】
結論:ベントナイト組成物の適用は、不透過性または難透過性の物理的バリアを確立することにより、鼻上皮へのアレルゲン粒子の拡散を防止する上で有効である.鼻腔内部をシミュレートした環境下では、バリア効果が数時間持続する。
【0162】
実施例6:空中アレルゲンに対する防御の臨床的評価
目的:アレルゲンチャレンジチャンバー(ACC)内で、草花粉曝露によって誘発されたアレルギー性鼻炎の症状を緩和する上での、チキソトロピー性ベントナイト組成物(AM-301)を含む経鼻スプレー及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)粉末の臨床性能及び安全性を比較する。草花粉アレルギーの季節に行ったプラセボ対照試験では、HPMC処置群はプラセボ群と比較して、レスキュー薬(例えば、抗ヒスタミン剤、経鼻スプレー、及び目薬)を必要とする量が有意に低下することが示されている(Emberlin,J.,& Lewis,R.(2006).A double blind, placebo controlled trial of inert cellulose powder for the relief of symptoms of hay fever in adults.Current Medical Research and Opinion,22(2),275-285)(参照によりあらゆる目的で全体として本明細書に援用される)。
【0163】
材料及び方法:本実験は、検証済みのACC環境下で非盲検クロスオーバーランダム化単一施設臨床試験として行った。ACCを使用することにより、制御量のアレルゲンへの曝露が可能となり、従って環境因子(主に季節性疾患における花粉曝露量の変動)による交絡効果を排除することができる。草花粉に対するアレルギー性鼻炎の既往を有する36例の患者が、3回のACCセッションに参加し、各セッションは4時間とした。ACC内で、患者をDactylis glomerataの花粉(m3当たり4000±800粒子;Pharmallerga,Lisov,Czech Republic)に曝露させた。試験参加者は、20分ごとに合計鼻症状スコア(TNSS)を記録した。TNSSは、閉塞、鼻汁、かゆみ、及びくしゃみといった鼻症状の総和として定義され、各症状は0~3の尺度でスコア化される。
【0164】
第1のACCセッション中に、試験選択の適格性を判定した。これには、アレルゲンチャレンジ中に少なくとも2回、TNSSスコアが6以上であることが含まれた。スクリーニングフェーズ後、参加者をランダム化して、第2のACCセッションの10分前に、AM-301またはHPMC(Nasaleze(Isle of Man,UK))のいずれかを単回用量(鼻孔あたり一吹き)で投与した。AM-301の組成を以下の表4に示す。
【表4】
【0165】
第2のセッションから少なくとも1週間経った後に行った第3のACCセッションでは、処置を交替させた。4時間の花粉曝露に対するTNSS平均値におけるAM-301とHPMCとの差を有効性の主要エンドポイントとし、さらなる分析では、第1のACCセッション中の防御なしの曝露から次のACCセッション中の防御ありの曝露にかけてのTNSSの低減、ならびに処置の安全性及び忍容性についても分析した。
【0166】
結果:AM-301による処置により、特に花粉曝露からの40分間、HPMCによる処置の場合よりも低いTNSS値が得られた(
図3)。残りの曝露については、TNSS値はほぼ収束した。平均すると、AM-301による処置の結果、防御なしの曝露に対しTNSSが約1.1ポイント低減し、HPMCで観察され低減(0.7ポイント)を上回った。AM-301による処置により、少なくとも3時間の防御が得られ、参加者の忍容性も良好であった。
【0167】
結論:花粉曝露前にベントナイトを含む組成物を経鼻スプレーで単回用量投与すると、アレルギー性鼻炎の症状が低減する。防御効果は迅速に始まり、少なくとも3時間持続する。
【0168】
実施例7:ウイルス感染発症後のみ開始した処置の防御効果
【0169】
目的:確立されたSARS-CoV-2感染(ヒト鼻粘膜上皮への感染から24または30時間)を軽減する、ベントナイトを含むゲル製剤の能力を評価する。本実験は、ベントナイトを含むゲル製剤の投与をSARS-CoV-2感染と同時に開始したときにウイルス力価の有効な低減を示した実施例3の結果を補完するために実施した。
【0170】
材料及び方法:本実験のために、実施例3に記載したものと同じアッセイを用いた。実施例4に記載したゲル製剤6PF3を試験品目とし、そのビヒクル及び食塩水を対照とした。
【0171】
挿入物上で培養した鼻上皮をSARS-CoV-2に感染させた。24時間後及び30時間後に、製剤6PF3(または対照)を感染挿入物に適用した。これらの挿入物からの先端培地を規定の時点で収集し、VERO細胞株のTCID50に対し試験した。
【0172】
感染後24時間処置した上皮については、先端側に培地を適用し、20分後に回収し、実施例3と同様に10μLの試験品目を以下の時点に(96時間後を除く)加えた:24時間(6PF3を加える直前)、48、72、及び96時間。
【0173】
感染後30時間処置した上皮については、先端側に培地を適用し、20分後に回収し、実施例3と同様に10μLの試験品目を以下の時点に(96時間後を除く)加えた:30時間(6PF3を加える直前)、54時間、78時間、及び102時間。
【0174】
実施例3と同様に、各時間経過の1つの条件(「洗浄なし」)では、先端洗浄を実施せず、24時間ごとに10μLの6PF3を加えながら4日間ウイルスを蓄積させた(最終添加は最後から2番目の時点)。
【0175】
結果:実施例3と同様に、ビヒクルもしくは食塩水で処置した、または無処置のままの各感染鼻上皮において、SARS-CoV-2が効率的に複製した(
図4)。特に、感染の48時間後からは、明らかなウイルス成長を観察することができた。平均TCID50値は、3日目に、6PF3を除く全ての条件を合わせた場合に1.22×10
7TCID50/mL、4日目に7.59×10
6TCID50/mLとなった。これに対し、感染から24時間後に開始した処置スケジュールでは、(i)6PF3で処置し24時間ごとに洗浄した上皮は、3日目に3.23×10
6TCID50/mL、4日目に1.42×10
6TCID50/mLとなり、それぞれおよそ3.5倍及び10倍低いSARS-CoV-2感染負荷に相当し、(ii)6PF3で処置し、洗浄しなかった上皮は、4日目に7.84×10
5TCID50/mLを示し、約18倍低いSARS-CoV-2感染負荷に相当した。
【0176】
感染から30時間後に開始した処置スケジュールについては、(i)6PF3で処置し24時間ごとに洗浄した上皮は、3日目に1.19×106TCID50/mL、4日目に1.16×106TCID50/mLを示し、約12.3倍及び約3.8倍低いSARS-CoV-2の感染負荷に相当し、(ii)6PF3で処置し、洗浄しなかった上皮は、4日目に2.37×105TCID50/mLを示し、約18倍低いSARS-CoV-2感染負荷に相当した。
【0177】
結論:ベントナイト組成物による反復処置は、感染から24時間及び30時間後に処置を開始した場合であっても、確立されたSARS-CoV-2のヒト鼻粘膜上皮への感染及びウイルス負荷を顕著に軽減する上で有効である。
【0178】
実施例8:A型インフルエンザ(H1N1)感染における防御効果
【0179】
目的:H1N1亜型のA型インフルエンザウイルスによるヒト鼻粘膜上皮の感染の防止または軽減を助ける、ベントナイトを含むゲル製剤の能力を評価する。本実験は、SARS-CoV-2で得られたデータを補完し、本発明が他の型のウイルスによる感染に対しても防御効果をもたらすことを実証するために実施した。ヒトにおけるH1N1型A型インフルエンザの周知されたアウトブレイクとしては、2009年のブタインフルエンザパンデミックが挙げられる。
【0180】
材料及び方法:本実験のために、実施例3に記載したものと同じアッセイを用いた。実施例4に記載したゲル製剤6PF3を試験品目とし、そのビヒクル及び食塩水を対照とした。
【0181】
挿入物上で培養した鼻上皮に、6PF3を最初に適用してから10分後(製剤の防止効果を試験するため)または6PF3を最初に適用する24時間前(製剤の軽減効果を試験するため)にH1N1(LSS3、MOI=0.2)を接種した。実施例3及び7と同様に、6PF3製剤を毎日4日間適用した。先端側に培地を適用し、20分後に回収し、実施例3及び7と同様に10μLの試験品目を以下の時点に(96時間後を除く)加えた:24、48、72、及び96時間。挿入物からの先端培養物をMDCK細胞株でTCID50について試験した。全ての試験は、それぞれ6つの挿入物で実施した。
【0182】
結果:食塩水またはビヒクルで処置した上皮では、特に感染の48時間後からは、明らかなウイルス成長を観察することができた。予防実験(接種の10分前から処置)では、3日目における平均TCID50値は、両方の対照において11×106TCID50/mL、4日目にはそれぞれ4.0及び2.9×106TCID50/mLとなった。これに対し、6PF3で処置した上皮は、3日目及び4日目にそれぞれ0.94及び0.65×106TCID50/mLの値を示し、食塩水対照に対し84%及び85%のウイルス負荷の低減に相当した。対数変換TCID50値を用いた反復測定混合効果モデル(MMRM)モデルからは、6PF3群と食塩水対照との比較について、一般化最小二乗平均(GLS平均)の比が3日目に0.03(p=0.0128)、4日目に0.04(p=0.0056)と示された。6PF3群とビヒクル対照との比較については、GLS平均の比は、それぞれ0.12(p=0.0178)及び0.25(p=0.0533)となった。
【0183】
軽減実験(接種から24時間後に処置開始)では、平均TCID50値は、3日目には、食塩水及びビヒクル対照について、それぞれ3.3及び2.9×107TCID50/mLとなり、4日目にはそれぞれ2.1及び1.7×107TCID50/mLとなった。これに対し、6PF3で処置した上皮では、3日目及び4日目にそれぞれ4.5及び4.7×106TCID50/mLという値が示され、食塩水対照に対し86%及び77%のウイルス負荷の低減に相当した。対数変換TCID50値を用いたMMRMモデルでは、6PF3群と食塩水対照との比較について、GLS平均の比は、3日目に0.13(p=0.0050)、4日目に0.23(p=0.0033)となった。6PF3群とビヒクル対照との比較については、GLS平均の比はそれぞれ0.15(p=0.0073)及び0.25(p=0.0051)となった。
【0184】
結論:ベントナイト組成物による反復的処置は、鼻上皮に適用すると、ウイルス負荷を低減することにより、A型インフルエンザ(H1N1)感染の防止を助ける上で有効である。また、この処置は、感染から24時間後のみに開始した場合であっても、A型インフルエンザ(H1N1)感染の軽減及びヒト鼻粘膜上皮のウイルス負荷の低減に有効である。
【0185】
実施形態
1.粘膜付着性ポリマーと、粘土粒子とを含む、水性組成物。
2.前記粘膜付着性ポリマーが、アルギン酸ナトリウム、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407)、Avicel(例えば、Avicel RC591)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、実施形態1に記載の水性組成物。
3.前記粘膜付着性ポリマーがキサンタンガムである、実施形態2に記載の水性組成物。
4.前記粘土粒子が、カオリン鉱物、例えば、カオリナイト、チャイナクレイ、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト;蛇紋岩鉱石、例えば、リザーダイト、ハロイサイト、クリソタイル、アンチゴライト、カルロストラナイト、アメスタイト、クロンステダイト(cronstedite)、シャモサイト、ベルチェリン、ガリエライト(garierite);タルク;パイロフィライト;フェリパイロフィライト;スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、メドモンタイト、ピメライト、ベントナイト;イライト鉱物、例えば、レディキート(ledikete)、ブラベサイト、分解雲母、加水雲母、ハイドロマスコバイト(hydromuscovite)、含水イライト、含水雲母、K-雲母、雲母状粘土、及びセリサイト;雲母、例えば、ペグマタイト、マスコバイト、及びフロゴパイト;脆性雲母、例えば、マーガライト及びクリントナイト;海緑石;セラドナイト;クロライト及びバーミキュライト、例えば、苦土緑泥石、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ベイレイクロア、ドンバッサイト、クッカイト(cookite)、スドイト、フランクリンファーナサイト(franklinfurnaceite);パリゴルスカイト及びセピオライト、例えば、アタパルジャイト;アロフェン及びイモゴライト;混合層粘土鉱物、例えば、タルク-クロライト;ならびにこれらの組合せからなる群より選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の水性組成物。
5.前記粘土粒子がベントナイトである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の水性組成物。
6.約0.1重量%~約3重量%の前記粘膜付着性ポリマーと、約0.4重量%~約5重量%の粘土とを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の水性組成物。
7.約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の水性組成物。
8.約0.1重量%~約0.5重量%のキサンタンガムと、約2.0重量%~約3.0重量%のベントナイト粘土とを含む、実施形態7に記載の水性組成物。
9.前記組成物のpHが約4~約7である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の水性組成物。例えば、実施形態1~8のいずれか1つにおいて、前記組成物のpHは約5である。
10.緩衝剤(例えば、クエン酸)をさらに含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の水性組成物。
11.前記組成物が1つ以上の親油性賦形剤(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の水性組成物。
12.約0.1重量%~約50重量%の前記親油性賦形剤を含む、実施形態11に記載の水性組成物。
13.約30重量%~約40重量%の前記親油性賦形剤を含む、実施形態12に記載の水性組成物。
14.香味料をさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の水性組成物。
15.前記組成物が1つ以上の保湿剤(例えば、グリセロール)を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の水性組成物。
16.約0.1重量%~約5重量%の前記保湿剤を含む、実施形態15に記載の水性組成物。
17.前記組成物が1つ以上の粘度調整剤(例えば、ステアリン酸グリセリル)を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の水性組成物。
18.約0.1重量%~約50重量%の前記粘度調整剤を含む、実施形態17に記載の水性組成物。
19.約0.1重量%~約5重量%の粘性調整剤を含む、実施形態17に記載の水性組成物。
20.前記組成物が1つ以上の防腐剤及び/またはキレート剤(例えば、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、またはEDTA二ナトリウム、またはソルビン酸カリウム、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、及び/またはEDTA二ナトリウム)を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の水性組成物。諸実施形態において、前記組成物は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、ペンチレングリコール、ヒドロキシアセトフェノン(hydroxyacetophonenone)、及び/またはEDTA二ナトリウムのうちの1つ以上を含む。例えば、諸実施形態において、前記組成物はソルビン酸カリウムを含む。諸実施形態において、前記組成物はメチルパラベンを含む。諸実施形態において、前記組成物は安息香酸ナトリウムを含む。諸実施形態において、前記組成物はフェノキシエタノールを含む。諸実施形態において、前記組成物はエチルヘキシルグリセリンを含む。諸実施形態において、前記組成物はペンチレングリコールを含む。諸実施形態において、前記組成物はヒドロキシアセトフェノン(hydroxyacetophonenone)を含む。諸実施形態において、前記組成物はEDTA二ナトリウムを含む。
21.約0.01重量%~約3重量%の前記防腐剤及び/または前記キレート剤を含む、実施形態20に記載の水性組成物。
22.約0.1重量%~約1.5重量%の前記防腐剤及び/または約0.05重量%~約0.5重量%の前記キレート剤を含む、実施形態21に記載の水性組成物。
23.前記組成物が0.5重量%以下の前記防腐剤を有する(例えば、防腐剤を含まない)、実施形態1~22のいずれか1つに記載の水性組成物。
24.前記組成物が1つ以上の酸化防止剤を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の水性組成物。
25.約0.005重量%~約0.5重量%の前記酸化防止剤を含む、実施形態24に記載の水性組成物。
26.前記酸化防止剤がBHAである、実施形態24または25に記載の水性組成物。
27.前記組成物がチキソトロピー性である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の水性組成物。
28.前記組成物が非ニュートンせん断減粘性を示す、実施形態1~27のいずれか1つに記載の水性組成物。
29.前記組成物が水溶液である、実施形態1~28のいずれかに記載の水性組成物。
30.前記組成物がゲルエマルジョン(水中油型ゲル)である、実施形態1~28のいずれかに記載の水性組成物。
31.対象における感染を治療または防止する方法であって、治療有効量の実施形態1~30のいずれか1つに記載の水性組成物を前記対象の粘膜に投与することを含み、前記組成物が粘膜上にバリアを形成する、前記方法。
32.前記粘膜が、鼻粘膜、口粘膜、または咽頭粘膜である、実施形態31に記載の方法。
33.前記感染が呼吸器系ウイルス感染である、実施形態31または実施形態32に記載の方法。
34.前記呼吸器系ウイルス感染が、インフルエンザ、ライノウイルス、コロナウイルス、及び/またはパラミクソウイルス感染のうちの1つ以上である、実施形態33に記載の方法。
35.前記コロナウイルス感染が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群ウイルス(CoV-MERS)、ヒトHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、及びHCoV-HKU1から選択される、実施形態34に記載の方法。
36.前記コロナウイルス感染がSARS-CoV-2である、実施形態35に記載の方法。
37.前記組成物が、スプレーまたはエアロゾルとして投与される、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
38.前記スプレーまたは前記エアロゾルが、経鼻ポンプスプレーまたは咽喉スプレーポンプを介して投与される、実施形態37に記載の方法。
39.前記組成物が、局所的に(例えば、クリーム、ゲル、または軟膏として)投与される、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
40.対象におけるCOVID-19感染を防止する方法であって、治療有効量の実施形態1~29のいずれか1つに記載の水性組成物を投与することを含み、前記組成物が粘膜上にバリアを形成する、前記方法。
41.前記粘土粒子が、SARS-CoV-2を結合、捕捉、及び/または不活性化する、実施形態40に記載の方法。
42.前記組成物が、約0.1重量%~約3重量%のキサンタンガムと、約0.4重量%~約5重量%のベントナイト粘土とを含む、実施形態31~41のいずれか1つに記載の方法。
43.アレルギー疾患または状態の防止または治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、治療有効量の実施形態1~30のいずれか1つに記載の水性組成物を、前記対象の粘膜に投与することを含み、前記組成物が粘膜上にバリアを形成する、前記方法。
44.前記アレルギー疾患または状態が、空中アレルゲン、例えば、花粉、チリダニ、カビ、動物の鱗屑、及び/または胞子によって引き起こされるか、またはそれによって悪化する、実施形態43に記載の方法。
45.前記アレルギー疾患が、鼻炎、副鼻腔炎、喘息、過敏性肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎、結膜炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、アナフィラキシー、血管浮腫、アレルギー性頭痛、及び片頭痛のうちの1つ以上である、実施形態43または44に記載の方法。
【国際調査報告】