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特表2023-539946血流速度測定を実行するためのシステム
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  • 特表-血流速度測定を実行するためのシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(54)【発明の名称】血流速度測定を実行するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230912BHJP
   A61B 5/0275 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61B6/00 330A
A61B5/0275 J
A61B6/00 331E
A61B6/00 335
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518745
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2021076436
(87)【国際公開番号】W WO2022069382
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20290069.2
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】フローラン ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ホルスト アーイェン
(72)【発明者】
【氏名】ジス アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
4C017
4C093
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA11
4C017AA19
4C017AB04
4C017AC40
4C017BB01
4C017BB13
4C017BC11
4C093AA01
4C093AA24
4C093CA32
4C093DA02
4C093EE20
4C093FA47
4C093FA52
4C093FF18
4C093FF24
(57)【要約】
本発明は、対象から得られた血管造影図に基づいて血流速度測定値を得るためのシステムで使用するためのプロセッサを提供する。血管造影図は、その中に造影剤を含む血管を表し、造影剤は、所与の平均周波数のバーストで血管に提供され、それによって血管造影図内にコントラストデータを提供する。プロセッサは、心周期の推定された周期と、各血管造影画像フレームの推定された瞬間血流速度と、各血管造影画像フレームの計算された信頼値と、各血管造影画像フレームによって表される心周期内の推定された点とに基づいて、心周期にわたる血管内の血流速度を表す速度曲線を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた血管造影図に基づいて血流速度測定値を得るためのシステムで使用するためのプロセッサにおいて、前記プロセッサは、
前記対象の血管の血管造影図を取得し、前記血管造影図は複数の血管造影画像フレームを有し、前記血管造影図はその中に造影剤を含む前記血管を表し、前記造影剤はバーストで前記血管に提供され、それによって前記血管造影図内にコントラストデータを提供し、
コントラストデータを含む前記血管造影図の各血管造影画像フレームに対して、
前記コントラストデータに基づいて瞬間血流速度を推定し、
前記コントラストデータに基づいて前記血管造影画像フレームの信頼値を計算し、
前記血管造影画像フレームによって表される心周期内の点を推定し、
前記心周期の周期を推定し、
前記心周期の前記周期と、各血管造影画像フレームの前記推定された瞬間血流速度と、各血管造影画像フレームの前記信頼値と、各血管造影画像フレームによって表される前記心周期内の前記点とに基づいて、前記心周期にわたる前記血管内の前記血流速度を表す速度曲線を生成する、
ように構成される、プロセッサ。
【請求項2】
前記血管に提供された前記造影剤のバーストの周波数は、前記心周期の周波数に対して非同期化される、請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項3】
前記バーストは、規則的な間隔によって分離される、請求項1又は2に記載のプロセッサ。
【請求項4】
前記バーストは、不規則な間隔によって分離される、請求項1又は2に記載のプロセッサ。
【請求項5】
バーストの所定の平均周波数が、15Hz以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項6】
前記信頼値を計算することは、前記血管造影画像フレームのノイズレベル又は前記推定された瞬間血流速度に更に基づく、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項7】
前記心周期の前記周期を推定することは、前記血管造影図、ECGデータ、及び血圧測定のうちの1つ又は複数に基づく、請求項1から6のいずれかに記載のプロセッサ。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記速度曲線に基づいて、
前記血管に提供される前記造影剤に対する最適な注入パターンと、
前記血管に提供される前記造影剤に対する最適な注入持続時間と、
のうちの1つ又は複数を識別するように更に構成される、請求項1乃至7のいずれかに記載のプロセッサ。
【請求項9】
前記プロセッサは、更に、
前記血管から血圧測定データを取得し、
前記圧力測定データと前記速度曲線とに基づいて血管インピーダンスを計算する、
ように構成される、請求項1乃至8のいずれかに記載のプロセッサ。
【請求項10】
前記プロセッサは、更に、
前記対象の血管の第2の血管造影図を取得し、前記第2の血管造影図は刺激が前記対象に提供された後に取得され、前記第2の血管造影図は複数の第2の血管造影画像フレームを有し、前記第2の血管造影図はその中に造影剤を含む前記血管を表し、前記造影剤はバーストで前記血管に提供され、それによって前記血管造影図内にコントラストデータを提供し、
コントラストデータを含む前記血管造影図の各第2の血管造影画像フレームに対して、
前記第2の血管造影画像フレームに基づいて誘導瞬間血流速度を推定し、
前記コントラストデータに基づいて前記第2の血管造影画像フレームの誘導信頼値を計算し、
前記第2の血管造影画像フレームによって表される心周期内の点を推定し、
前記心周期の周期を推定し、
前記心周期の前記周期と、各第2の血管造影画像フレームの前記推定された誘導瞬間血流速度と、各第2の血管造影画像フレームの前記誘導信頼値と、各第2の血管造影画像フレームによって表される前記心周期内の前記点とに基づいて、前記心周期のための誘導速度曲線を生成し、
前記速度曲線と前記誘導速度曲線を比較し、
前記比較に基づいて相対指数を計算する、
ように構成される、請求項1乃至9のいずれかに記載のプロセッサ。
【請求項11】
前記プロセッサは、更に、
各血管造影画像フレームについて血管直径を決定し、
前記血管直径及び前記速度曲線に基づいて血流体積を決定する、
ように構成される、請求項1乃至9のいずれかに記載のプロセッサ。
【請求項12】
対象から得られた血管造影図に基づいて血流速度測定値を得るためのシステムにおいて、
前記対象の血管に造影剤をバーストで注入するように構成された造影剤注入装置と、
前記血管の血管造影図を取得するように構成されたX線撮像装置と、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のプロセッサと、
を有する、システム。
【請求項13】
前記造影剤注入装置は、
最適な注入パターン又は前記プロセッサによって識別される前記最適な注入持続時間に基づいて自動的に動作されるか、又は
ユーザによって手動で動作され、前記システムは前記最適な注入パターン又は前記最適な注入持続時間に関する情報を前記ユーザに表示するように構成されたディスプレイを更に有するか、
のいずれかである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
対象から得られた血管造影図に基づいて血流速度を確認する方法において、
前記対象の血管の血管造影図を取得するステップであって、前記血管造影図は、複数の血管造影画像フレームを有し、前記血管造影図は、その中に造影剤を含む前記血管を表し、前記造影剤は前記血管にバーストで提供され、それによって前記血管造影図内にコントラストデータを提供する、ステップと、
コントラストデータを含む前記血管造影図の各血管造影画像フレームに対して、
前記コントラストデータに基づいて瞬間血流速度を推定するステップと、
前記コントラストデータに基づいて前記血管造影画像フレームの信頼値を計算するステップと、
前記血管造影画像フレームによって表される心周期内の点を推定するステップと、
前記心周期の期間を推定するステップと、
前記心周期の前記周期、各血管造影画像フレームの前記推定された瞬間血流速度、各血管造影画像フレームの前記信頼値、及び各血管造影画像フレームによって表される前記心周期内の前記点に基づいて、前記心周期にわたる前記血管内の前記血流速度を表す速度曲線を生成するステップと、
を有する方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータプログラムの前記コンピュータプログラムコード手段は、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項12に記載のシステム上で請求項14に記載の方法を実施するように構成される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流速度測定の分野に関し、より具体的には、血管造影図を使用する血流速度測定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
血行動態測定に基づいて心血管疾患及び末梢血管疾患の治療をガイドすることは、典型的には治療の最終結果を改善する。特に、冠動脈に関して、臨床試験は、Pijls, Nico H. J., et al. "Fractional Flow Reserve Versus Angiography for Guiding Percutaneous Coronary Intervention in Patients With Multivessel Coronary Artery Disease." Journal of the American College of Cardiology, vol.56, no. 3, Elsevier Inc., July 2010, pp. 177-84, doi:10.1016/j.jacc.2010.04.012に論じられるように、血圧及び血流測定に基づく意思決定が、血管造影法単独に基づく試験と比較して臨床結果を改善する。
【0003】
血流測定は、非閉塞性冠動脈疾患、すなわち、大きな動脈における任意の可視閉塞なしの狭心症の訴えの場合、特に価値がある。更に、末梢血管疾患などの他の病状を治療する際の血流測定は、足への血液供給に対するアテローム性動脈硬化症の効果を定量化し、血管内治療の終点を定義するのを助けうる。加えて、腫瘍学的介入の分野では、塞栓形成介入中の血流モニタリングが、塞栓形成の程度を評価し、例えば経動脈化学塞栓形成(TACE)において、健康な組織の塞栓形成を防止するために、いつ治療を中止するかを決定するのに有用であり得る。高血圧管理の分野において、腎血流は、腎臓除神経処置の有効性の予測因子であり得る。更に、介入神経学において、血流測定値は、展開されたフローダイバータが、治療された動脈瘤内で観察される血行動態挙動に肯定的な影響を及ぼすかどうかを示し得る。
【0004】
要約すると、血流速度は、多種多様な異なる処置及び治療において重要な測定基準である。血流速度を評価するために利用可能ないくつかの方法が存在する。例えば、ドップラ超音波センサ又は温度センサを有するガイドワイヤは、血流の評価のために市場で利用可能である。これらの方法の欠点は、装置のコストと、動脈に挿入される装置の必要性であり、これは、合併症の更なるリスクをもたらす。外部超音波は、また、血流を評価するために使用され得るが、しかしながら、このようにして正確な測定値を取得するために、高度に経験した超音波検査者が必要とされる。加えて、冠動脈及び腎動脈は、体内の血管の位置に起因して、外部超音波を使用して撮像することが困難である。
【0005】
血管造影も、血流を評価するために使用され得る。血管造影図の使用は、追加のハードウェアが必要とされないので、魅力的であり、血流の評価が、既存のX線介入ワークフローの一部を形成し得る。
【0006】
血管造影に基づいて血流を推定するための定量的アプローチの中で、最も一般的に採用されているアプローチの1つは、Khanmohammadi et al, Automatic Estimation of Coronary Blood Flow Velocity Step 1 for Developing a Tool to Diagnose Patients With Micro-Vascular Angina Pectoris, Frontiers in Cardiovascular Medicine, Jan. 2019に記載されるように、ボーラス前面伝搬を使用する。別の一般的に使用されるアプローチは、Bonnefous and al, Quantification of arterial flow using digital subtraction angiography, Med. Phys. 39 (10), October 2012に記載されるように、血液拍動性に基づく。 更に、Holdsworth, D. W., et al. "Quantitative Angiographic Blood-Flow Measurement Using Pulsed Intra-Arterial Injection." Medical Physics, vol.26, no. 10, Oct. 1999, pp. 2168-75, doi:10.1118/1.598733及びShaw, C. G., and D. B. Plewes. "Pulsed-Injection Method for Blood Flow Velocity Measurement in Intraarterial Digital Subtraction Angiography." Radiology, vol.160, no. 2, Aug. 1986, pp. 556-59, doi:10.1148/radiology.160.2.3523598に記載される方法のような、造影剤の注入が連続的ではないがパルス化される、パルス造影剤に基づく血流測定方法が存在する。
【0007】
特に血管造影図から血流速度を導出するための方法を見ると、既存の方法は、以下に説明するように、いくつかの欠点を被る。
【0008】
ボーラス前面伝播に基づく方法は、観察された前方横断に対応する時間間隔中の血流速度、すなわち、ボーラス前面が、観察された血管セグメントを横断するのに要する時間を推定することのみが可能であるという事実に悩まされる。血流速度が高い場合、ボーラス前面が可視血管セグメントを横切るのに要する時間は、非常に制限的であり得、心周期の一部の間にのみ情報を提供し得る。血流速度は、心周期を通して変化するので、これは、平均血流速度の強い過小評価又は過大評価につながり得る。
【0009】
血液拍動性に基づく方法は、完全な心周期にわたる血流速度を決定することができるが、血管造影図におけるコントラスト雑音比に非常に敏感である。このコントラスト雑音比感度は、不可能ではない場合に、そのような方法の使用を問題にする。更に、これらの方法は、大きい積分距離を必要とし、したがって腎動脈などの短い血管に適用されることができない。
【0010】
上述のように、いくつかの方法は、いくつかのボーラス前面を人工的に生成することによってボーラス前面伝播の制限を軽減する試行において、パルス造影剤注入を利用する。例えば、Shaw, C. G., and D. B. Plewes. "Pulsed-Injection Method for Blood Flow Velocity Measurement in Intraarterial Digital Subtraction Angiography." Radiology, vol.160, no. 2, Aug. 1986, pp. 556-59, doi:10.1148/radiology.160.2.3523598に記載された方法は、ボーラス前面を使用しないが、むしろ造影パルス間の距離に基づいて平均速度を計算する。これらの方法は、高度に特殊化された機器が必要とされる、造影剤の非常に制御された高周波注入に依存する。そのような注射状態は、非常に要求が厳しく、実際には容易に適用可能ではない。更に、この方法は、少なくとも2つのパルスが画像上の所与の瞬間に可視であると仮定し、これは十分に長い血管に対するこの方法の適用を制限する。
【0011】
Holdsworth, D. W., et al. "Quantitative Angiographic Blood-Flow Measurement Using Pulsed Intra-Arterial Injection." Medical Physics, vol.26, no. 10, Oct. 1999, pp. 2168-75, doi:10.1118/1.598733に記載されている方法は、高周波パルス注入を用いたパルス前面伝播に基づいて瞬間速度推定を生成する。高周波成分は、測定の精度を高めるのに役立つが、上述のように高度に特殊化された注入機器を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、血管造影図を使用して、従来の血管造影図と比較して追加ハードウェア又は特殊な機器を必要とせずに、任意の長さの血管内の血流速度を決定する手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様による例によれば、対象から取得された血管造影図に基づいて血流速度測定値を取得するためのシステムで使用するためのプロセッサが提供され、プロセッサは、
対象の血管の血管造影図を取得し、血管造影図は、複数の血管造影画像フレームを有し、血管造影図は、その中に造影剤を含む前記血管を表し、造影剤は、バーストで血管に提供され、それによって血管造影図内にコントラストデータを提供し、
コントラストデータを含む血管造影図の各血管造影画像フレームに対して、
コントラストデータに基づいて瞬間血流速度を推定し、
コントラストデータに基づいて血管造影画像フレームの信頼値を計算し、
血管造影画像フレームによって表される心周期内の点を推定し、
心周期の周期を推定し、
心周期の周期、各血管造影画像フレームの推定された瞬間血流速度、各血管造影画像フレームの信頼値及び各血管造影画像フレームによって表される心周期内の点に基づいて、心周期にわたる血管内の血流速度を表す速度曲線を生成する、
ように構成される。
【0014】
本発明は、標準的なX線撮像機器のみを用いて実施することができる血管の血管造影図から、正確な血流速度測定値を導出する手段を提供する。
【0015】
速度曲線上の各点は、推定瞬間血流速度と、心周期内のその時点に関連する血管造影画像フレームの信頼値との組み合わせに基づいて生成される。
【0016】
各血管造影画像フレームから導出された瞬間血流速度は、コントラストデータに基づいて決定された各画像フレームの信頼値と組み合わされるので、造影剤が血管に提供される必要がある頻度は、血流速度が信頼値を使用せずに導出された場合よりも低くなり得る。このようにして、専門家のハードウェアを必要としない低周波造影剤注入が、造影剤を血管に供給するために使用されてもよい。
【0017】
したがって、正確な血流速度測定値が、従来のX線撮像ハードウェアを使用して、血管造影図から導出されてもよい。更に、コントラストデータが、血流速度測定に加えて信頼値計算のために利用されるので、さもなければ可能ではないであろう、短い血管の血管造影図から血流速度測定値を導出することが可能である。
【0018】
一実施形態では、造影剤のバーストが血管に提供された頻度が、心周期の周期と非同期化される。このようにして、血管の血管造影図内の造影剤波面は、心拍周期の異なる位相に及び、それによって、最終速度曲線の精度を高める。
【0019】
いくつかの実施形態では、バーストは、
規則的な間隔、又は
不規則な間隔、
によって分離される。
【0020】
言い換えれば、バーストは、周期的又は非周期的であり得る。このようにして、任意の注入パターンが、血管の速度曲線の最適な測定を達成するために使用され得る。代替的に、非周期的バーストは、バーストの所定の平均周波数によって特徴付けられてもよく、周期的バーストの場合、バーストの周波数は、バーストの平均周波数である。
【0021】
一実施形態では、造影剤は、一例では15Hz以下であり得る、所定の平均周波数でバーストで血管に提供される。
【0022】
このようにして、血流速度曲線は、低周波数で提供される造影剤を使用して、正確な方法で導出され得る。
【0023】
一実施形態では、信頼値を計算することは、更に血管造影画像フレームのノイズレベルに基づく。
【0024】
血管造影画像フレームから正確な瞬間血流速度測定値を得るために、コントラストデータは、プロセッサによって認識されることができる区別可能パターンを特徴とすべきであり、前記パターンは、血管造影画像フレーム内のノイズエネルギよりも高いエネルギを有するべきである。したがって、血管造影画像フレームの信号対雑音比を考慮することによって、瞬間血流速度及び速度曲線の精度が、増大され得る。
【0025】
一実施形態では、信頼値を計算することは、更に推定された瞬間血流速度に基づく。
【0026】
このようにして、信頼値の精度が、増大され得る。特に、信頼値を計算するために血流速度測定値を使用することは、速度測定値のいずれかが可能な値の既知の範囲外にある場合、信頼値が更に改良され得るので、有利である。更に、速度測定値が血管に沿って不安定であるように見える場合、信頼値が、改良され得る。
【0027】
ある実施形態では、心周期の周期を推定することは、
血管造影図、及び
ECGデータ、
の1つ以上に基づく。
【0028】
一実施形態では、プロセッサは、速度曲線に基づいて、
血管に提供される造影剤のための最適な注入パターンと、
血管に提供される造影剤のための最適な注入持続時間と、
のうちの1つ又は複数を識別するように更に構成される。
【0029】
このようにして、完全に入力された速度曲線を提供する造影剤注入パターンが、取得されてもよく、それによって、その後に取得される速度曲線の精度を高める。換言すれば、得られた速度曲線の形状に基づいて、造影剤の注入パターンが、導出され得、その結果、瞬間血流速度測定値及び関連する信頼値が、心周期全体にわたる所望の分布で得られる。
【0030】
一実施形態では、プロセッサは、
血管から圧力データを取得し、
圧力データ及び速度曲線に基づいて血管インピーダンスを計算する、
ように構成される。
【0031】
このようにして、血管の状態に関する追加情報が、血管造影図から得られた速度曲線に基づいて導出され得る。
【0032】
一実施形態では、プロセッサは、
対象の血管の第2の血管造影図を取得し、第2の血管造影図は刺激が対象に提供された後に取得され、第2の血管造影図は複数の第2の血管造影画像フレームを有し、第2の血管造影図はその中に造影剤を含む血管を表し、造影剤はバーストで血管に提供され、それによって血管造影図内にコントラストデータを提供し、
コントラストデータを含む血管造影図の各第2の血管造影画像フレームに対して、
第2の血管造影画像フレームに基づいて誘導(stimulated)瞬間血流速度を推定し、
コントラストデータに基づいて第2の血管造影画像フレームの誘導信頼値を計算し、
第2の血管造影画像フレームによって表される心周期内の時点を推定し、
心周期の周期を推定し、
心周期の周期、各第2の血管造影画像フレームの推定された誘導瞬間血流速度、各第2の血管造影画像フレームの誘導信頼値、及び各第2の血管造影画像フレームによって表される又はそれに関連する心周期内の時点に基づいて、心周期のための誘導速度曲線を生成し、
速度曲線と誘導速度曲線を比較し、
比較に基づいて相対指数を計算する、
ように構成される。
【0033】
このようにして、血管系の状態は、刺激が対象に与えられる前後に得られる速度曲線間の比較に基づいて決定され得る。
【0034】
一実施形態では、プロセッサは、
各血管造影画像フレームについての血管直径を決定し、
血管直径及び速度曲線に基づいて血流体積を決定する、
ように構成される。
【0035】
このようにして、血管の状態に関する追加情報が、血管造影図から得られた速度曲線に基づいて導出され得る。
【0036】
本発明の一態様による例によれば、対象から取得された血管造影図に基づいて血流速度測定値を取得するためのシステムが提供され、このシステムは、
開示された実施形態のいずれかに従って提供されるバーストで対象の血管に造影剤を注入するように構成された造影剤注入装置と、
血管の血管造影図を取得するように構成されたX線撮像装置と、
それぞれの開示された実施形態のいずれかによるプロセッサと、
を有する。
【0037】
一実施形態では、システムは、速度曲線に基づいて、造影剤注入装置を介して血管に提供される造影剤の最適注入パターン又は最適注入持続時間を識別するように構成されたフィードバックモジュールを更に有する。
【0038】
一実施形態では、造影剤注入装置は、フィードバックモジュールによって識別された最適注入パターン又は最適注入持続時間に基づいて自動的に動作される。
【0039】
一実施形態では、造影剤注入装置は、ユーザによって手動で動作され、システムは、最適注入パターン又は最適注入持続時間に関する情報をユーザに表示するように構成されたディスプレイを更に有する。
【0040】
本発明の一態様では、血流速度を確認する方法が、対象から得られた血管造影図に基づいて提供され、この方法は、
対象の血管の血管造影図を取得するステップであって、血管造影図は、複数の血管造影画像フレームを有し、血管造影図は、その中に造影剤を含む血管を表し、造影剤は、バーストで血管に提供され、それによって血管造影図内にコントラストデータを提供する、ステップと、
コントラストデータを含む血管造影図の各血管造影画像フレームに対して、
コントラストデータに基づく瞬間血流速度を推定するステップと、
コントラストデータに基づいて血管造影画像フレームの信頼値を計算するステップと、
血管造影画像フレームに関連する心周期内の時点を推定するステップと、
心周期の周期を推定するステップと、
心周期の周期、各血管造影画像フレームの推定された瞬間血流速度、各血管造影画像フレームの信頼値、及び各血管造影画像フレームによって表される又は各血管造影画像フレームに関連付けられた心周期内の時点に基づいて、心周期にわたる血管内の血流速度を表す速度曲線を生成するステップと、
を有する。
【0041】
本発明の更なる態様では、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムのコンピュータプログラムコード手段は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、本発明による方法を本発明によるシステムのいずれかで実施するように構成される。
【0042】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これを参照して説明される。
【0043】
本発明をより良く理解するため、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、単なる例として、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の一態様によるプロセッサによって実行されるステップを示すフロー図を示す。
図2】時間に対する血流速度のグラフを示す。
図3】血管造影図に基づいて血流速度測定値を得るためのシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0046】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、同じ参照番号が同じ又は類似の部分を示すために、図面全体にわたって使用されることを理解されたい。
【0047】
本発明は、対象から得られた血管造影図に基づいて血流速度測定値を得るためのシステムで使用するためのプロセッサを提供する。血管造影図は、その中に造影剤を含む血管を表し、造影剤は、所定の又は所与周波数のバーストで血管に提供されており、それによって血管造影図内にコントラストデータを提供する。
【0048】
コントラストデータを含む血管造影図の各血管造影画像フレームについて、プロセッサは、コントラストデータに基づいて瞬間血流速度を推定し、コントラストデータに基づいて血管造影画像フレームの信頼値を計算し、血管造影画像フレームによって表される心周期内の点を推定し、心周期の周期を推定するように構成される。
【0049】
プロセッサは、心周期の推定された周期と、各血管造影画像フレームの推定された瞬時血流速度と、各血管造影画像フレームの計算された信頼値と、各血管造影画像フレームによって表される心周期内の推定された点とに基づいて、心周期にわたる血管内の血流速度を表す速度曲線を生成する。
【0050】
図1は、対象から取得された血管造影図に基づいて血流速度測定値を取得するときにプロセッサによって実行されるステップを示すフロー図100を示す。
【0051】
ステップ110において、対象の血管の血管造影図が、取得される。血管造影図は、複数の個々の血管造影画像フレームを有し、例えば15Hz未満の所定の又は所与の平均周波数のバーストで造影剤を提供された血管を表し、それによって血管造影図内にコントラストデータを提供する。言い換えれば、血管造影図は、その中に造影剤を含む血管を表す。造影剤は、任意の適切な様式で血管に提供されてもよく、その例は、図3に関して以下に説明される。
【0052】
造影剤のバーストが血管に提供された所与の平均周波数は、心周期の周期と非同期化され得る。造影剤のバーストが血管に提供される周波数を非同期化することによって、血管造影図内の造影剤波面は、心周期の異なる位相に及ぶことになり、これは、後続のステップで得られる速度測定値が、心周期全体にわたる血管内の血流速度曲線のより完全な画像を提供することを意味する。
【0053】
造影剤のバーストは、規則的な間隔又は不規則な間隔によって分離されてもよい。規則的な間隔でバーストを提供することによって、速度測定値は、速度曲線にわたって均等に離間される。不規則な間隔を利用することによって、高い速度勾配を有する領域など、より頻繁な測定を必要とする速度曲線の領域が、より正確に測定され得る。したがって、説明で使用される用語を単純化するために、バーストの平均周波数は、周期的及び非周期的バーストに対して使用され、非周期的バーストは、バーストの平均周波数によって特徴付けられ、周期的バーストについては、バーストの周波数が、実際にバーストの平均周波数である。
ステップ120乃至140は、コントラストデータを含む血管造影図の各血管造影画像フレームに対して実行される。
【0054】
ステップ120では、瞬間血流速度が、コントラストデータに基づいて推定される。血管内の瞬間血流速度の推定は、相関技術又はオプティカルフロー法などの任意の適切な方法を使用して実行され得る。
【0055】
ステップ130において、血管造影画像フレームの信頼値が、コントラストデータに基づいて計算される。
【0056】
血管造影画像フレームを使用して、信頼値又は重みが、関心血管に沿って観察されたコントラスト情報に基づいて計算される。コントラスト情報は、造影剤の前面、造影剤の広がり、隣接する造影剤前面の間の間隔、異なる血管造影画像フレーム間の造影剤前面の変位など、血管内の造影剤に関する任意の情報を含んでもよい。信頼値は、コントラストデータによって表されるように、所与の瞬間における血管に沿ったコントラストパターンの顕著性又は卓越性に関連する。例えば、コントラストが時間tにおいて血管全体に沿って一定である場合、造影剤の移動の速度、したがって血流速度を推定するために利用されることができる実際のパターンは存在しない。一方、時間tにおいて、コントラストデータが十分にマークされたステップエッジ外観を特徴とする場合、このパターンは、他の時点では血管に沿った異なる位置において識別され得、それによって血管内の血流速度に関する情報を提供する。コントラストデータの分散は、信号の非定数成分のエネルギを捕捉するので、信頼性測定のために使用され得る。コントラストデータの正規化は、必要とされない場合があるが、しかしながら、コントラストデータを正規化することによって、固定のレベルが、確立され得、そのレベルを超えると、信頼値は、信頼できるサンプルを記述するものと見なされ得る。
【0057】
例として、信頼値は、以下のように計算され得る。
R(t)=(√(Varx(C(t,x))-N2)/N
ここで、R(t)は、信頼値であり、C(t,x)は、所与の位置x、及び時間tにおけるコントラスト強度であり、Varxは、x次元に沿ったC(t,x)の分散であり、Nは、血管造影画像フレームにおけるノイズレベルの標準偏差である。
【0058】
この例では、信頼値は、ノイズ分散が減算され、次いでノイズレベルNによって正規化されるコントラスト分散を記述する。測定値は、R(t)>R0 であるときはいつでも保持され、ここでR0は、閾値である。代わりに、測定値は、R(t)をこの組み合わせにおける相対的重みとして使用して組み合わせられることができる。
【0059】
言い換えれば、信頼値を計算することは、血管造影画像フレームの信号対雑音比に基づいてもよく、ここで、ノイズレベルは、血管造影画像において推定され、信号は、測定可能なコントラスト又は分散として、同じ画像内であるが、関心のある血管に沿って推定される。
【0060】
信頼値は、血流速度推定が最も信頼できる瞬間血流速度計測値を識別するための手段を提供する。例えば、コントラストデータが血管に沿って変化を示さない場合、経時的な造影剤の移動を追跡することは、不可能である。コントラストデータは、瞬間血流速度を識別するために区別可能なパターンを特徴としなければならず、前記パターンは、ノイズエネルギよりも高いエネルギを有しなければならない。言い換えると、コントラストデータは、ノイズに埋められてはならない。
【0061】
更に、信頼値の計算は、推定された瞬間血流速度に基づいてもよい。信頼値の計算において瞬間血流速度測定を使用することは、信頼値を更に改良するのに役立ち得る。例えば、血流速度測定値が明らかに既存の臨床知識に基づいて規定される既知の範囲の外である場合、これらの測定値は、誤っているものとして自動的に廃棄されてもよい。更に、血流速度測定値が血管セグメントに沿って不安定であるように見える場合、信頼値は、質量保存原理に基づいて、その画像フレームに対して下げらてもよく、これは、分岐のないまっすぐの管において、流れが、管に沿って一定であるべきであることを意味する。
【0062】
ステップ140において、血管造影画像フレームによって表される心周期内の点が、推定される。換言すれば、各血管造影画像フレームは、心周期期間内のある時点に関連付けられる。血管造影画像フレームによって表される心周期に沿った位置は、血管造影図と同時に得られるECG信号を使用して推定され得る。代わりに、心周期に沿った血管造影画像フレームの位置は、心周期に沿って変化する血管造影画像フレーム内の血管の形状に基づいて、又は心拍に従って移動する任意の解剖学的特徴の相対位置によって推定されてもよい。
【0063】
ステップ150において、心周期の周期が、推定される。心周期の周期は、ECGデータ、血圧測定データ(例えば、血圧測定カフ内のセンサ、血管内装置上のセンサを用いる)に基づいて、又は心臓内の冠状動脈の移動若しくは血管造影図上の血管の断面拍動の基本周波数を使用して、血管造影図自体に基づいて推定されてもよい。
【0064】
ステップ160において、心周期にわたる血管内の血流速度を表す速度曲線が、心周期の周期、各血管造影画像フレームの推定された瞬間血流速度、各血管造影画像フレームの信頼値、及び各血管造影画像フレームによって表される又は各血管造影画像フレームに関連付けられた心周期内の時点に基づいて生成される。
【0065】
言い換えれば、所定の閾値を上回る信頼値を有する、全ての瞬間血流速度測定値は、1心周期長速度曲線に集約され、各瞬間血流速度測定値は、対応する心臓位相に配置され、関連する信頼値を考慮に入れる。例えば、信頼値は、バイナリであってもよく、十分に明確なコントラストデータを有する瞬間血流速度測定値のみが、曲線に集約されてもよい。このようにして、コントラスト造影パルスの限られた周波数を使用して血流速度曲線を再構成することが、可能である。代わりに、測定値は、それらの信頼値を、組み合わせにおける相対的重みとして、例えば、加重平均として使用して組み合わせられてもよい。
【0066】
本方法は、造影剤が15Hz以下の平均周波数、例えば1Hzで血管に提供される状況において使用されてもよい。造影剤の注入の平均周波数が1Hzである例では、全体注入プロトコルが、5秒間実行され得る。心拍数が60拍/分を超えると仮定すると、速度曲線は、少なくとも5つの瞬間血流速度測定点を用いて推定されてもよい。
【0067】
言い換えると、造影剤の低周波数パルス注入を使用して、瞬間血流速度値が、標的血管に沿った各血管造影画像フレームに含まれる固有のコントラスト情報の量を示す対応する信頼値とともに推定されてもよい。信頼値は、心周期を表す特有の速度曲線を生成する連続的な速度推定器の能力を特徴付ける。
【0068】
上記ステップは、対象が、速度曲線と誘導速度曲線との間の比較に基づいて、冠血流予備能(CFR)又は腎指標などの相対指標を導出するために、刺激剤又は薬物を提供された後に繰り返されてもよい。
【0069】
加えて、プロセッサは、各血管造影画像フレームに対する血管直径を決定し、血管直径及び速度曲線に基づいて血流体積を決定するように更に構成されてもよい。言い換えれば、血管造影図において測定される血管直径は、血流速度の代わりに又は加えて、体積流量を決定するために利用されてもよい。
【0070】
更に、プロセッサは、血管から圧力測定データを取得し、圧力データ及び速度曲線に基づいて血管インピーダンスを計算するように構成されてもよい。換言すれば、測定された血流速度曲線及び追加の血圧測定値に基づいて、血管インピーダンスが、決定されてもよい。血圧は、流体充填カテーテルを介して、又は圧力センサを備えたガイドワイヤを用いてなど、任意の適切な方法で決定され得る。
【0071】
図2は、心周期期間にわたってプロットされた血流速度曲線210を用いた、時間に対する血流速度のグラフ200を示す。
【0072】
血流速度曲線210に沿った各点220は、血管造影画像フレームから導出された瞬間血流速度推定値を表す。y軸に沿った各点の位置は、各点に対応する各画像フレームに関連する信頼値に基づいて調整される。点220は、各血管造影画像フレームによって表される心周期内の推定された点に基づいてx軸に沿って配置される。
【0073】
点220の位置が確定されると、完全血流速度曲線210が、生成される。血流速度曲線は、後続の血流速度測定値に基づいて更に改良され得る。
【0074】
図3は、対象から得られた血管造影図に基づいて血流速度測定値を得るためのシステム300の概略的表現を示す。
【0075】
システムは、所定の平均周波数、例えば15Hz未満の、バーストで対象の血管330に造影剤320を注入するように構成された造影剤注入装置310を有する。介入の間、造影剤が、対象の血管内に注入される。造影剤注入装置は、所与の持続時間の間、所与の注入パターンで、所望の周波数でパルス注入を生成する。造影剤注入装置は、高い注入周波数が必要とされないので、自動化された方法で機械的に動作されてもよく、又はユーザによって手動で動作されてもよい。パルス周波数は、生成された造影剤前面が心周期の異なる位相をカバーするように、心周波数に対して非同期化され得る。
【0076】
システムは、血管330の血管造影図を取得するように構成されたX線撮像装置340を更に有する。X線撮像システムは、造影剤の注入中に、固定されたフレームレートで対象を撮像する。血流速度が推定される血管セグメントは、X線撮像装置の視野345内になければならない。
【0077】
X線撮像装置は、任意の所与のフレームレートで血管造影図を取得し得る。例えば、X線撮像装置は、20Hz乃至60Hzのフレームレートで血管造影図を取得し得る。血管内への造影剤の各注入に対して、造影剤は、血管内の血流に従って血管に沿って伝播する。したがって、造影剤の各注入は、コントラストデータを含む複数の血管造影画像フレームを生成し得る。
【0078】
システムは、図1に関して上記で説明した機能を実行するように構成されたプロセッサ350を更に含む。
【0079】
上述のステップに加えて、プロセッサ350は、速度曲線に基づいて、血管に提供される造影剤に対する最適な注入パターン、及び血管に提供される造影剤に対する最適な注入持続時間のうちの1つ又は複数を識別するように更に構成されてもよい。
【0080】
注入パターン自体、すなわち、造影剤のバーストの発生のタイミング及び前記バーストの持続時間に加えて、速度曲線のリアルタイム観察は、それが生成されるとき、いつ完全速度曲線を生成するために十分な数の血流速度測定値が取得されたかの検出を可能にする。この決定に基づいて、信号は、自動的に又はユーザに送信される信号によって、又はユーザ自身の決定に基づいて、トリガされて、造影剤の注入を終了してもよい。造影剤注入の分布は、均一な分布であってもよい。代わりに、造影剤注入の分布は、最適な分布を達成するために不均一であってもよく、その結果、速度勾配がより高い速度曲線上の点において、速度推定がこれらの領域においてより困難であるので、より多くの血流速度サンプルが得られる。
【0081】
システムは、速度曲線に基づいて、造影剤注入装置を介して血管に提供される造影剤の最適注入パターン又は最適注入持続時間を識別するように構成された専用フィードバックモジュール360を更に有してもよい。
【0082】
フィードバックモジュール360は、現在の速度曲線再構成に関して注入パターンを最適化して、最適な様式で速度曲線を入力する。手動で制御される造影剤注入装置の場合、フィードバック信号は、例えばディスプレイ又はスピーカーによって、ユーザに提供されて、最適な瞬間に注入をトリガするように又は満足のいく血流速度曲線が達成されたときにユーザに注入を停止させるように、ユーザをガイドし得る。自動的な機械的注入の場合、フィードバックプロセスは、自動化され得る。
【0083】
一例として、平均血流速度測定値の収束は、十分な数の造影剤注入が完全速度曲線を再構成するために実行されたというインジケータとして使用され得る。造影剤注入が停止され得ることをシグナリングするために使用され得る代替パラメータは、血流速度測定値を入力された心周期のパーセンテージが所与の閾値を超えるときである。
【0084】
更なる態様では、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムのコンピュータプログラムコード手段は、コンピュータ上で実行されるときに、開示されたシステムのいずれかにおいて本発明による方法を実施するように構成される。
【0085】
開示された実施形態に対する変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。
【0086】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を果たしてもよい。
【0087】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0088】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線もしくは無線電気通信システムなどを介して、他の形態で配布されてもよい。
【0089】
「ように適応される」という用語が請求項又は明細書に用いられる場合、「ように適応される」という用語は、「ように構成される」と言う用語と同様であることを意味する。
【0090】
請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】