(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】CO2回収のための調整可能で取り込みが迅速なアミノポリマーエアロゲル吸収材
(51)【国際特許分類】
C08F 226/02 20060101AFI20230913BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20230913BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230913BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230913BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230913BHJP
B01D 53/10 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C08F226/02
C08F220/34
B01J20/26 A
B01D53/14 100
B01D53/04
B01D53/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571303
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021030661
(87)【国際公開番号】W WO2021242485
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】チンタパリ マハティ
(72)【発明者】
【氏名】メックラー スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】イフタイム ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】パンディー ラフル
(72)【発明者】
【氏名】ルーイ メアリー
(72)【発明者】
【氏名】ベー ユージーン シン ミン
【テーマコード(参考)】
4D012
4D020
4G066
4J100
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CA10
4D012CG01
4D020AA03
4D020BA21
4D020BB01
4D020CA01
4D020CA07
4G066AB02D
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB07A
4G066AB07D
4G066AB10D
4G066AB12A
4G066AB13A
4G066AC12B
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA23
4G066BA26
4G066BA28
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA35
4G066DA02
4G066DA03
4G066FA07
4G066FA21
4G066FA34
4G066FA37
4G066FA38
4J100AB16Q
4J100AL08P
4J100AL63Q
4J100AL66Q
4J100AL67Q
4J100AN02P
4J100AN03P
4J100BA02Q
4J100BA29P
4J100BC09Q
4J100BC23P
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100CA23
4J100EA13
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC25
4J100JA15
(57)【要約】
ポリマー骨格に組み込まれた5質量%超のアミン含有ビニルモノマーを有する多孔質ポリマーエアロゲル。少なくとも1つの溶媒、保護アミノ基を有するアミンモノマー、1つ又は複数の架橋剤、1つ又は複数のラジカル開始剤、及び窒素酸化物媒介物を含む溶液を調製すること、溶液から酸素を除去すること、溶液を加熱して重合を促進し、重合材料を作製すること、重合材料で溶媒交換を行うこと、重合材料で脱保護反応を引き起こして、アミノ基を保護する基を除去すること、材料を浸漬してすすぎ、過剰な試薬及び脱保護反応の任意の副生成物を除去すること、並びに材料を乾燥させてアミン吸収材を作製すること、を含む多孔質ポリマーエアロゲルアミン材料の製造方法。ポリマー骨格に組み込まれたアミン含有ビニルモノマーが5質量%超であるポリマー多孔質エアロゲル吸収材を含む、他のガスからCO
2を分離するシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマーエアロゲルであって、ポリマー骨格に組み込まれた5質量%超のアミン含有ビニルモノマーを有するエアロゲル。
【請求項2】
前記エアロゲルの窒素原子含有量が1~33質量%の範囲にある、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項3】
ビニルアミンモノマーの重合により得られたアミン基が、0~6個の炭素原子からなる炭化水素鎖で前記ポリマー骨格に結合する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項4】
前記エアロゲルの多孔度が10%よりも高い、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項5】
前記エアロゲルの比表面積が少なくとも100m
2/gである、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項6】
前記エアロゲルの壁厚が10~100nmの範囲にある、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項7】
前記エアロゲルの孔径が10~1000nmの範囲にある、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項8】
前記エアロゲルが一級アミンを含有する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項9】
前記エアロゲルが二級アミンを含有する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項10】
前記エアロゲルが、安定フリーラジカルの一部を含有する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項11】
前記エアロゲルの吸着量が、エアロゲル1kg当たり1モルCO
2よりも多い、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項12】
前記エアロゲルの吸着量が、0℃超の温度及び1000ppm未満のCO
2濃度で1ミリモル/g吸収材よりも多い、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項13】
前記エアロゲルの取り込み動態が、0.05モルCO
2/kg・minを超える、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項14】
前記エアロゲルの取り込み動態が、0℃超の温度及び1000ppm未満のCO
2濃度で0.05モルCO
2/kg・minを超える、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項15】
前記エアロゲルが、固体アミン吸収材又はアミン吸収液と比べて良好な熱安定性及び酸化安定性を有する、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項16】
前記エアロゲルの摩耗指数が0.5未満である、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項17】
前記エアロゲルの最小顕熱負荷が50kJ/モル未満である、請求項1に記載のエアロゲル。
【請求項18】
多孔質ポリマーエアロゲルアミン材料の製造方法であって、
少なくとも1つの溶媒、アミンモノマー、1つ又は複数の架橋剤、1つ又は複数のラジカル開始剤、及び窒素酸化物媒介物を含む溶液を調製すること、
前記溶液から酸素を除去すること、
前記溶液を加熱して重合を促進し、重合材料を作製すること、
前記重合材料で溶媒交換を行うこと、
前記重合材料で脱保護反応を引き起こして、アミノ基を保護する基を除去すること、
材料を浸漬してすすぎ、過剰な試薬及び脱保護反応の任意の副生成物を除去すること、並びに
材料を乾燥させてアミン吸収材を作製すること、
を含む方法。
【請求項19】
溶液を調製することが、1つ又は複数の還元剤を含む溶液を調製することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくともアミンモノマーを含む前記溶液を調製することが、以下からなる群から選択される1つ又は複数を含む前記溶液を調製することを含む、請求項18に記載の方法:保護アミン基を有するアミンモノマー、低分子量のビニルアミンモノマー、重合性二重結合を含むビニルモノマー、重合性二重結合を含むアミンモノマー、ビニルアミン、アリルアミン、3-ブテン-1-アミン、4-ペンテン-1-アミン、3-ビニルアニリン、4-ビニルアニリン、4-シクロヘキセン-1,2-ジアミンを含むジアミンビニルモノマー、アミン含有アクリレート及びメタクリレート、2-アミノエチルメタクリレート及び3-アミノプロピルメタクリレート、N-メチルビニルアミン、N-エチルビニルアミン、N-メチル-アリルアミン、N-イソプロピルビニルアミン、N-tert-ブチルビニルアミン、並びに一級アミン含有ビニルモノマーから水素原子を置換して得られるこれらの任意の誘導体。
【請求項21】
少なくとも1つ又は複数の架橋剤を含む前記溶液を調製することが、前記溶液中で前記架橋剤が、2つ以上のビニル基を有する架橋剤、重合性二重結合基、-CH=CH
2、-C(R)=CH
2、-C(R1)=C(R2)H、-C(R1)=C(R2)(R3)、-CH=C(R1)(R2)を含むビニル架橋剤からなる群から選択される1つ又は複数を含む前記溶液を調製することを含み、R、R1、R2、R3は、メチル、エチルプロピル、イソプロピル、トリ、テトラ、ペンタ、又はヘキサアクリレート及びメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートトリメタクリルアダマンタン、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、フェニレンジメタクリレート、フェニレンジアクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを含むアルキル基である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの溶媒を含む前記溶液を調製することが、前記溶媒として以下からなる群から選択される1つ又は複数を含む前記溶液を調製することを含む、請求項18に記載の方法:極性非プロトン性有機溶媒、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2-ジメトキシエタン、酢酸エチル、高沸点溶媒、アセトフェノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、及びn-メチルピロリドン。
【請求項23】
少なくとも1つの溶媒を含む前記溶液を調製することが、前記溶液全体の20~99質量%の濃度を有する溶媒を含む前記溶液を調製することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのラジカル開始剤を含む前記溶液を調製することが、以下からなる群から選択される1つ又は複数を有する前記溶液を調製することを含む、請求項18に記載の方法:熱開始剤、光開始剤、過酸化物、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアセチル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、過酸化ラウロイル、過酸化ジクミル、アゾ化合物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、フェニルアゾトリフェニルメタン、ベンゾフェノン、アントラキノン、カンファーキノン、ベンジル、及びベンゾイン。
【請求項25】
少なくとも1つの窒素酸化物媒介物を含む前記溶液を調製することが、以下からなる群から選択される1つ又は複数を有する前記溶液を調製することを含む、請求項18に記載の方法:アルコキシアミンの分解から得られる窒素酸化物種、4-ヒドロキシ-TEMPO、TEMPO、TEMPO誘導体、TIPNO、TIPNO誘導体、クロロベンジル-TIPNO、SG1、SG1誘導体、及びメタクリル酸ラジカル。
【請求項26】
前記溶液を加熱することが、前記溶液を70~200℃の範囲の温度に加熱することを含み、前記温度は前記ラジカル開始剤の開始温度に依存する、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記材料を乾燥させることが、以下のうちの1つを含む、請求項18に記載の方法:室温及び室圧での前記材料の自然乾燥;室温及び室圧での、次いで真空での前記材料の自然乾燥;前記材料の凍結乾燥に続く、真空昇華による氷の除去;並びに液体CO
2との溶媒交換の実施、及び前記材料の超臨界的な乾燥。
【請求項28】
ポリマー骨格に組み込まれた5質量%超のアミン含有ビニルモノマーを有するポリマー多孔質エアロゲル吸収材を含む、他のガスからCO
2を分離するシステム。
【請求項29】
前記エアロゲル吸収材が、バインダーフリーペレット、バインダー含有ペレット、粒子、モノリス、流動化可能粒子、及び他の材料にキャストした粒子のうちの1つである、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
多孔質ポリマーエアロゲルを、固定床、流動床、又はモノリス型吸着器のうち1つを含む吸着器で使用する、請求項28に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素の回収、より詳細には、固体吸収材を用いた直接空気回収に関する。
【背景技術】
【0002】
総合評価モデルの予測によれば、気候変動に関する政府間パネルの目標である地球温暖化2℃を達成するには、今後数十年の間に年間約10ギカトン(Gt)規模のネガティブCO2エミッションが必要となる。脱炭素活動や安価で自然なネガティブエミッションのアプローチと合わせて展開すれば、CO2の直接空気回収(DAC)は、土地利用フットプリントが低く、プラント立地要件に柔軟性があり、大容量地中隔離貯留層と互換性があることから、気候変動緩和の有望な方策となる。しかし、DACにおけるCO2回収にかかるコストとエネルギーは大きく、コストは推定100~1000ドル/トンCO2、エネルギーは推定4~13ギガジュール/トンCO2となる。アルカリ吸収液を用いるDAC法と比べて、固体吸収材を用いるDAC法は、工程が単純で、CO2の取り込みが速く、蒸発熱損失が排除され、再生時の顕熱負荷が低く、再生温度が700℃超に対し200℃未満となることから、コストとエネルギー消費が削減できる可能性が高い。液体アミンを用いるDACや他のCO2回収法と比べて、固体吸収材は化学的に安定しており、揮発性物質の放出が少ない。
しかし、DACのコストとエネルギー消費を削減するために、固体吸収材料の大幅な進歩が必要とされている。特に米国科学アカデミー(NAS)は最近、(1)CO2容量が増大し、(2)拡散速度が速く、(3)サイクル寿命が長く、(4)コストが50ドル/kg未満で、且つ(5)不活性支持体からの顕熱負荷を最小限に抑えた吸収材材料を開発する必要性を明らかにしている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に説明する態様に従って、多孔質ポリマーエアロゲルであって、ポリマー骨格に組み込まれた5質量%超のアミン含有ビニルモノマーを有するエアロゲルが提供される。本明細書に説明する態様に従って、少なくとも1つの溶媒、アミンモノマー、1つ又は複数の架橋剤、1つ又は複数のラジカル開始剤、及び窒素酸化物媒介物を含む溶液を調製すること、溶液から酸素を除去すること、溶液を加熱して重合を促進し、重合材料を作製すること、重合材料で溶媒交換を行うこと、重合材料で脱保護反応を引き起こして、アミノ基を保護する基を除去すること、材料を浸漬してすすぎ、過剰な試薬及び脱保護反応の任意の副生成物を除去すること、並びに材料を乾燥させてアミン吸収材を作製すること、を含む多孔質ポリマーエアロゲルアミン材料の製造方法が提供される。
本明細書に説明する態様に従って、他のガスからCO2を分離するシステムであって、ポリマー骨格に組み込まれた5質量%超のアミン含有ビニルモノマーを有するポリマー多孔質エアロゲル吸収材を有するシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本実施形態による固体吸収材の実施形態を示す図である。
【
図2】高アミン添加吸収材を製造する工程の実施形態の流れ図である。
【
図3】従来のラジカル重合によるポリマーと制御ラジカル重合によるポリマーとを比較した図である。
【
図4】高アミン添加吸収材を製造する工程の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に記載する実施形態は、米国科学アカデミー(NAS)が特定した全ての分野で同時に進歩をもたらし、100ドル/トンCO2未満という画期的な製造コストを達成する可能性を有する固体吸収材及びその製造方法を含む。DACでは空気中のCO2含有量が約400ppmと低いため、高選択性化学吸着材料が必要となる。CO2選択性が高く、耐湿性があり、吸着熱が高く、低コストであることから、固体アミン修飾材料は、DACのための最も有望な固体吸収材料である。多様なアミン修飾吸収材が報告されているが、材料や工程に制約があるため製造コストは依然として高い。例えば、あるアプローチでは固体アミン吸収材を使用し、コストが600ドル/トンCO2であると報告されている。MOFや、強固な四面体モノマーの非晶質超架橋ネットワークである多孔質ポリマーネットワーク(PPN)などの他の材料も提案されているが、これらには、高コスト、湿気による劣化、及び孔径が小さいことによる取り込み動態の遅さという問題がある。
【0006】
本明細書に記載する実施形態は、CO
2の直接空気回収のためのアミノポリマーエアロゲル吸収材の使用を含んでいた。TRAPSの実施形態を、最先端(SOA)吸収材と比較して示す(表1)。
【表1】
【0007】
一般に、アミングラフト化又はアミン含浸シリカなどの低コストの吸収材は、容量が小さく、顕熱負荷が高い。一方、金属有機構造体(MOF)又は多孔質ポリマーネットワークなどの高容量吸収材は、高コストという欠点がある。用語「顕熱負荷」は、物質の温度を上下させるのに必要なエネルギー量を指す。
本明細書に記載する実施形態は、直接空気回収(DAC)条件下での選択的CO2吸着のための、接触面積が広く、且つ骨格に組み込まれたアミン基の含有量が多い、スケーラブルなメソポーラスポリアミンエアロゲルからなる新規の材料を含む。本実施形態は、制御ラジカル重合工程によってアミノビニルモノマーから、一級アミンのみに限定されないが、ビニルアミンやアリルアミンなどの低分子アミンを直接導入する新規工程も含む。これにより、吸収材のアミン官能基の高含有を実現でき、高いCO2吸着量が可能となる。
本明細書に記載する実施形態は、アミングラフト化メソポーラスシリカ、又はポリエチレンイミンのブレンドなどの多孔質セラミック支持体とブレンドされたアミンと比べて、10~1000nmの範囲にある同等の孔径で比表面積がより広くなる。これにより、ガスと吸収材の相互作用が向上し、吸脱着速度が速くなる。
本実施形態は、高活性一級アミンを有する出発材料を使用し、不活性支持体を排除しているため、従来の非担持及びセラミック担持ポリアミンよりも高い平衡比容量を有することになる。
本実施形態では合成プラットフォームの調整が可能であるため、ポリマー骨格へのアミンの共有結合的な組み込み、及び立体環境の正確な制御が可能となり、従来のポリアミンよりも長い寿命を達成できる。
【0008】
図1は、本実施形態で得られる固体吸収材10を表す図である。ポリアミン16は、高含量でポリマー骨格に組み込まれており、吸収材中の全体的なアミン含有量が多くなっている。一例では、エアロゲルは、最小のビニルアミン類似体であるビニルアミンを90質量%、及び架橋剤を10質量%含有する混合物の共重合により得られ、エアロゲル中の窒素原子含有量は29.3質量%である。架橋剤を用いずに、完全にビニルアミンのみで作ると、エアロゲルの窒素原子含有量は32.55質量%となる。実際には、本用途の目的に好適なエアロゲル中の窒素の割合は1~33質量%であり得る。ポリアミンの含有量がこのように多く、合わせて細孔壁が小さい(一例として10nm)ことにより、ポリマー骨格のCO
2吸着量が、4モルCO
2/kg、1モルCO
2/kg超若しくは1~4モルCO
2/kg、又は1~5モルCO
2/kgの範囲と高くなる。本実施形態は、0℃超の温度及び1000ppm未満のCO
2濃度で、吸収材1g当たり1ミリモル超の吸着量を有するエアロゲルであり得る。
本実施形態は、0℃超の温度及び1000ppm未満のCO
2濃度で、取り込み動態が0.05モルCO
2/kg・minよりも高いエアロゲルを含む。一実施形態では、得られるエアロゲルは、ポリマー骨格に組み込まれたアミン含有ビニルモノマーが5質量%超である。
骨格ポリマーは14などの架橋剤を、ただし低含有量で含むことで、機械的堅牢性、及び吸収材に対する低顕熱負荷を実現する一方で、更にCO
218の回収向上をもたらす。本吸収材は、0.15モルCO
2/kg・minという範囲の高速動態を有し、一例ではメソポーラスの孔径が10~30nmの範囲であり、比表面積(specific area)が500m
2/g超である。本吸収材の動態は、0.01~0.5モルCO
2/kg・minの範囲、0.05~0.5モルCO
2/kg・min、又はこれらの範囲の任意の部分であってもよい。吸収材の孔径は、1~50nm、1~100nm、1~200nm、若しくは1~500nmの範囲、又はこれらの範囲の部分及び組み合わせであってもよい。吸収材の比表面積は、100m
2/g、200m
2/g、300m
2/g、400m
2/g、600m
2/g、700m
2/g、800m
2/g、900m
2/g、1000m
2/g、1100m
2/g、及び1200m
2/gよりも大きくてもよい。
【0009】
一実施形態は、骨格に組み込まれた高含量のアミン基を有し、孔径が小さく、細孔ポリマー壁が薄い多孔質ポリマーエアロゲルの製造工程である。
図2は工程の一実施形態を示す。各工程の順番は暗示されておらず、また推測されるべきでもないことに注意されたい。工程の20で、溶媒、低分子量のビニルアミンモノマー、2つ以上のビニル基を含む1つ又は複数の架橋剤、1つ又は複数のラジカル開始剤、窒素酸化物媒介物、及び、任意であるが、場合によっては1つ又は複数の還元剤を含む溶液の調製を含む。低分子量のビニルアミンモノマーは、架橋剤及びビニルアミン自体を含む他のビニル試薬との反応を防ぐために、アミン基が保護されていてよい。低分子量とは、分子量が100g/モル未満、300g/モル未満、1000g/モル未満、又は5000g/モル未満であることを意味する。ビニルアミンは、ビニル官能基、又はアクリレート若しくはメタクリレートなどのビニル基を含む官能基と、アミン基(一級、二級、又は三級)、RNH
2、R
2NH、又はR
3Nとを含む分子である。ビニルアミンのアミンは、アミド、ホルムアミドなどのアミンに変換できる官能基を指すこともある。ビニル基とアミン基は互いに直接結合し得る、又はこれらの間に他の原子若しくはサブグループ、例えば0~6個の炭素原子を有し得る。
続いて工程の22で、上記の溶液から酸素を除去し、得られた溶液を加熱して重合を促進し、重合材料を作製する。工程の24で、水、又は水溶性有機溶媒、極性溶媒、極性溶媒を含有する溶媒混合物、プロトン性溶媒、若しくはプロトン性溶媒を含有する溶媒混合物との水混合液などの適切な溶媒と溶媒交換を行う。工程の26で脱保護反応によりアミン保護基を除去し、材料をすすぐ。溶媒交換と脱保護反応はいずれの順番で行ってもよい。得られた材料を水、水混和性有機溶媒、極性溶媒、極性溶媒を含有する溶媒混合物、プロトン性溶媒、又はプロトン性溶媒を含有する溶媒混合物を含む水混合液で浸漬してすすぎ、過剰な試薬と可溶性の脱保護反応副生成物を除去する。最後に28で、乾燥させて最終アミン吸収材を作製する。
【0010】
本実施形態は、いくつかの独自の特徴を有する。その1つが、制御ラジカル重合である安定フリーラジカル重合(SFRP)によって低分子量のビニルアミンモノマーを直接導入することによるポリマー多孔質構造の開発である。また、10~1000nmの範囲の小孔径及び10~100nmの範囲の薄い壁を有し、ポリマー骨格に組み込まれた導入アミン含有ビニルモノマーが10質量%超とアミノ基含有量が多い多孔質ポリマーを製造する、アミン含有ビニルモノマーとビニル架橋剤との共重合のための合成方法の開発も挙げられる。一級及び二級アミン含有ビニルモノマーの重合又は共重合は、アミン基と架橋剤のアミン含有ビニルモノマーに存在するビニル基とが反応するため不可能である。
本工程を用いることで、細孔壁構造の直径を調整し、ポリアミンの完全な利用及び迅速な取り込みを確保することができる。先行技術の固体吸収材に見られる厚い細孔壁では、アミンの大部分が高密度の細孔ポリマー壁に取り込まれ、動態的にCO2回収に利用できない。本実施形態で実現される、厚さが10~100nm(又は1~100nm、1~500nm、若しくは10~500nm)の範囲の薄いポリマー壁には、表面積-体積比が大きくなる、及びガスが固体材料に浸透する拡散時間が短縮されるという2つの利点があり、その結果、CO2回収のためのガスとの相互作用に利用できるアミノ基が多くなる。これにより、現在のアプローチと比べてCO2回収能力が向上するという効果がある。
その他の独自の態様に、DAC環境条件下でCO2平衡吸着量の増加をもたらすアミンの高添加がある。特に有益なのは、低CO2分圧吸着に化学的に最適化した一級アミン基である。これらには、圧縮抵抗強度(crush strength resistance)の向上と摩耗指数の低下によって測定される、この多孔質吸収材材料から作られた吸収材粒子の機械的及び物理的安定性も含まれ、これにより、開示するアミン吸収材で作られた粒子が、流動床法によるCO2回収に好適なものとなる。本実施形態は、より長いアミン鎖をグラフトしたシリカや他の固体又は液体アミン吸収材などの他の吸収材と比べて、熱劣化及び酸化劣化に対する安定性が向上している。この安定性の向上は、アミン基に極めて近接しているポリマー骨格の立体効果、及び劣化を触媒する金属の除去によるものである。
【0011】
SFRP(安定フリーラジカル重合)エアロゲル法は、米国特許出願公開第2020/0031977号明細書及び米国特許第10,421,253号明細書に開示されているような様々な非アミンモノマーで実証されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
図3に示すように、従来のラジカル重合では、様々なポリマー鎖末端30は異なる速度で成長し、鎖の末端にあるラジカル32の結合による連鎖停止事象によって停止することができ、成長を止める不活性ポリマー鎖34を生成する。最終的に、適度な比表面積と大きな細孔壁を有する大きな凝集体粒子36からなる多孔質吸収材構造が得られる。
SFRP独自のエアロゲル法は、PARC(Palo Alto Research Center,Inc.)が特許を取得している方法と同様に、図の下部に示すように、重合中に鎖の成長とナノゲルクラスターの沈殿を調節する。SFRPでは、窒素酸化物媒介物44が成長鎖40の末端42に可逆的に結合し、「休止」状態をもたらす。TEMPO-OHなどの窒素酸化物媒介物44が鎖末端から分離し、新たなモノマー分子46が成長鎖と反応できるようになった場合にのみ、鎖の成長が生じる。鎖は殆どの時間休止状態であるため、望ましくない連鎖停止事象の確率が低いリビング重合として反応が進行する。最終的には、比表面積が広く壁が薄い、多孔度の高いポリマー構造48が得られる。SFRPは細孔壁の厚みを減少させ、同等の多孔度で表面積を増加させる。
【0012】
先行研究では、一級及び二級アミン含有ビニルモノマーの重合又は共重合は、アミン基と架橋剤のアミン含有ビニルモノマーに存在するビニル基とが反応するため不可能であることが示されている(Tillet,G.,Boutevin,B.&Ameduri,B.Chemical reactions of polymer crosslinking and post-crosslinking at room and medium temperature.Prog.Polym.Sci.36,191-217(2011))。これらの実施形態の工程ではビニルアミンモノマーを利用しており、アミン基は重合ステップ中に保護される。重合後に保護基を除去し、CO2の回収が可能な、骨格に組み込まれたアミン基の含有量が多い多孔質ポリマーエアロゲルを作製する。アミン基を保護/脱保護する任意の工程が、本実施形態の目的に好適である。場合によっては、二級及び三級アミンは保護基を必要としない。二級及び三級アミンでは、窒素原子は1若しくは0個の水素、及び2若しくは3個の非水素原子又は化学基と結合している。保護基が不要である場合、重合中に1又は2個の非水素基が副反応を防ぐ。
一級及び二級アミン含有ビニルモノマーを保護/脱保護する方法の1つが、以前に、http://cssp.chemspider.com/article.aspx?id=103で説明されている。ホルムアミドを用いた反応による保護では、通常、50~80℃で加熱しながらアミンを無水酢酸中でギ酸と反応させ、次いで溶媒を蒸発させ、クロマトグラフィーで精製する。
【0013】
図4は合成工程の実施形態を示す。アミンが保護されたビニルモノマーは、従来の(非制御)ラジカル重合法によって効率的に重合できるため好適である。50でアミンがホルムアルデヒドによって保護されているN-ビニルホルムアミド(1)は本実施形態の好適な一例である(Zhu,J.,Gosen,C.&Marchant,E.R.Synthesis and Characterization of Poly(vinyl amine)-Based Amphiphilic Comb-Like Dextran Glycopolymers by a Two-Step Method.J Polym Sci Part A Polym Chem 44,192-202(2006))。第1のステップで、N-ビニルホルムアミドと多官能性架橋剤、例えばジビニルベンゼン(DVB、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、多官能性アクリレート、又は多官能性メタクリレートなど)との共重合を、SFRP条件(100~130℃、6~48時間)下で、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、又はAIBNなどの開始剤で開始させ、ポロゲンとして好適な溶媒中で窒素酸化物媒介鎖成長剤(TEMPO、TIPNO、SG1、TEMPO-OH)を使用して行うことにより、溶媒和ゲルを作製する。多孔度を30%超にするには、溶液全体の50~80質量%の範囲の溶媒濃度を使用し得る。一般に、20~90質量%又は20~99質量%の溶媒濃度を使用し得る。第2のステップでは、酸性及び塩基性条件下で、任意に、先行技術で報告されているイオン交換樹脂を用いて、ホルミル基を除去することによってアミンを再生する(Wang,and Mohammadi,Z.,Cole,A.&Berkland,C.J.In situ synthesis of iron oxide within Polyvinylamine nanoparticle reactors.J.Phys.Chem.C 113,7652-7658(2009))。最後に、非アミノエアロゲルのためにPARCが以前開発したプロトコルによって、制御環境条件下で溶媒和ゲルを乾燥させる。
【0014】
CO2回収に必要な窒素原子の含有量を増加させるには、低分子量のビニルアミンが好ましい。多孔質アミンエアロゲルでは、アミンビニルモノマーの重合により得られたアミン基は、0~6個の炭素原子からなる炭化水素鎖でポリマー骨格に結合し得る。一例として、ビニルアミンモノマーがビニルアミンである場合、結合する炭化水素鎖の炭素原子数は0である。ビニルアミンモノマーが3-ブテン-1-アミンである場合、結合する炭化水素鎖の炭素原子数は2である。
本実施形態で保護アミンとして使用される、好適な低分子量のアミン置換ビニルモノマーには以下がある:保護アミン基を有するアミンモノマー、ビニル又はアミンモノマーを含む低分子一級アミン、即ち重合性二重結合を含むものとしては、ビニルアミン、アリルアミン、3-ブテン-1-アミン、4-ペンテン-1-アミン、3-ビニルアニリン、4-ビニルアニリン、4-シクロヘキセン-1,2-ジアミンを含むジアミンビニルモノマーなどがある。これらの実施形態では、例えば2-アミノエチルメタクリレート、3-アミノプロピルメタクリレートなどのアミン含有アクリレート及びメタクリレートも好適である。
また、低分子二級アミンもこれらの実施形態に好適である。これには、N-メチルビニルアミン、N-エチルビニルアミン、N-メチル-アリルアミン、N-イソプロピルビニルアミン、N-tert-ブチルビニルアミン、及び一般に、一級アミン含有ビニルモノマーから水素原子を置換して得られる誘導体のいずれかがある。
【0015】
好適なビニル架橋剤に、2つ以上のビニル基を有する架橋剤、重合性二重結合基、-CH=CH2、-C(R)=CH2、-C(R1)=C(R2)H、-C(R1)=C(R2)(R3)、-CH=C(R1)(R2)を有するビニル架橋剤があり、R、R1、R2、R3は、メチル、エチルプロピル、イソプロピルなどを含むアルキル基である。二重結合は、ジビニルベンゼンの場合のように、フェニル、ビフェニル、又はアントラセン(anthraces)ラジカルに直接結合させることができる。二重結合は、アクリレート又はメタクリレートの場合のように、エステル基と結合させてもよい。アクリレート及びメタクリレート架橋剤の好適な例に、トリ、テトラ、ペンタ、又はヘキサアクリレート及びメタクリレート、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレートトリメタクリルアダマンタン、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、フェニレンジメタクリレート、フェニレンジアクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどがある。
ポロゲンとして機能する好適な溶媒に、極性非プロトン性有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2-ジメトキシエタン、酢酸エチルなどがある。沸点が160℃超、150℃超、又は約130℃超である高沸点溶媒、例えばアセトフェノン(202℃)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(189℃)、スルホラン、又はn-メチルピロリドン(202℃)が特に好適である。溶媒/モノマー相互作用強度を調整して、多孔度及び孔径に影響を及ぼすことができる。一般に、相互作用が好ましくないと、孔径が大きくなり、細孔壁も大きくなる。
【0016】
好適なラジカル開始剤に、熱によって活性化される熱開始剤、及び光、通常は波長が約200~400nmの紫外線によって活性化される光開始剤がある。熱開始剤の非限定的な例に、(1つの)過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアセチル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、過酸化ラウロイル、過酸化ジクミル;又はアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及びフェニルアゾトリフェニルメタンがある。光開始剤の非限定的な例に、ベンゾフェノン、アントラキノン(anthaquinone)、カンファーキノン、ベンジル、ベンゾインなどがある。
好適な窒素酸化物媒介物に、アルコキシアミンの分解から得られる窒素酸化物種、4-ヒドロキシ-TEMPO、TEMPO及び他のTEMPO誘導体、TIPNO及びTIPNO誘導体、クロロベンジル-TIPNO、SG1及び他のSG1誘導体、並びにメタクリル酸ラジカルがある。安定なフリーラジカルの一部はエアロゲル構造中に残存してよい。
好適な反応温度は、ラジカル開始剤の開始温度及び安定なフリーラジカルの反応性に依存し、通常は70~200℃の範囲となる。
【0017】
溶媒中の架橋剤と合わせたアミン含有ビニルモノマーの濃度は、溶液全体の1~60質量%の範囲となる。一般に、モノマー及び架橋剤の濃度が低いほど、吸収材の多孔度が高くなる。
重合後、ホルミル基は、通常、塩基性又は酸性条件下での加水分解によって、続いて、すすぎ及びイオン交換樹脂を用いた処理によって除去する(Wang)。本開示で提案する工程では、水、及び水混和性有機溶媒を有する水混合物で浸漬及びすすぐことにより、過剰な試薬及び可溶性の脱保護反応副生成物を除去する。好適な水混和性溶媒に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール、並びに例えばアセトン及びTHFがある。1つ又は複数の水混和性溶媒を使用できる。水溶液中の水混和性溶媒の量は、水溶液の全質量の0.5~99.5%とすることができる。
乾燥は、自然乾燥、凍結乾燥、又は超臨界CO2乾燥のいずれかであり得る。自然乾燥では、ヘキサン、ヘプタンを含むアルカンなどの触媒、又はより極性の溶媒、例えばアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、若しくはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールに浸漬したゲルを、最初に室温及び室圧で乾燥させ、次いで、場合によっては真空で乾燥させる。凍結乾燥では、最初に吸収材を(溶媒の凝固点よりも低い温度に低下させて)凍結させ、次いで、真空昇華で溶媒を除去する。超臨界CO2乾燥では、ゲルは液体CO2と溶媒交換し、超臨界的に乾燥させる。
【0018】
速度論的障壁を減少させるために、本実施形態は、高多孔性で、比表面積が大きく、細孔壁が薄くなければならない。細孔壁が薄いと、迅速なガス拡散、CO
2化学吸着、及び10nm規模でのバルクへの拡散が可能となる。いくつかの実施形態では、多孔度は10%よりも高い。他の実施形態では、多孔度は20%、30%、40%、50%、60%、及び70%よりも高い。熱力学的に、低分圧で大量のCO
2を回収するには、選択的化学吸着部分が多く必要となる。本実施形態のプラットフォームでは、アミン添加と吸収材の細孔特性の両方を明確に制御できる。SFRPエアロゲル法では、
図3に示す非制御ラジカル重合で合成したゲルと比べて、比表面積が大きく、細孔壁厚が薄いゲルが得られる。
重要な反応パラメーターを活用して、これらのトレードオフを調整することができる。窒素酸化物媒介物はSFRP中にポリマー鎖末端を可逆的にキャップするが、反応の過程で、連鎖停止によって過剰な窒素酸化物が蓄積される。過剰な窒素酸化物が抑制されないと、重合が停止する。この作用を抑制するために、グルコースなどの還元糖、ヘミアセタール基を含有する試薬、ヒドロキシアセトン、又はケトース及びアルドース糖などのケトン及びアルデヒドから得られるエンジオール種などの還元剤を使用して徐々に窒素酸化物を消費し、リビングラジカルに対する窒素酸化物の比率を維持する。分解速度が遅い開始剤も、過剰な遊離窒素酸化物の蓄積を阻止するのに有効である。溶媒とモノマーの相互作用の強さ、ラジカル開始剤の半減期、溶媒、窒素酸化物、還元剤、及びラジカル開始剤の濃度などのパラメーターを体系的に調整することによって、モノマーの同じセットから様々な細孔構造を得ることができる。
【0019】
アミンの立体環境を制御することで、安定性とアミン利用を最大化する。より柔軟な結合環境にあるアミンは、より高い吸着熱でより強力にCO2を吸着する一方で、より多くの立体障害が酸化を抑制すると予想される。本実施形態のプラットフォームは調整可能であるため、アリルアミンや二級アミンモノマーなどのビニルアミンの変種を合成時に容易に置換して、アミンの立体環境や柔軟性を微調整することができる。
本明細書に記載する実施形態では、細孔壁厚を制御する。細孔壁を構成する多孔質の粗粒子の大きさは、窒素酸化物媒介物が重合に及ぼす影響の尺度となる重合活性を変化させることで、10~100nmの範囲、又は5~200nmの範囲、5~500nmの範囲、10~1000nmで調整できる。細孔壁粒子はガスに対して透過性があり、ポリマー壁内部のアミン基との相互作用を可能にすることでCO2回収能力を最大化する。これは、これらの実施形態の吸収材の際立った利点である。典型的な多孔度と表面積に基づいて、細孔壁構造の剛体球の長さスケールは約10~100nmである。
【0020】
本実施形態は、不活性な顕熱負荷を大幅に減少させ、化学劣化を減少させることにより、排ガス濃度での吸着に使用されるアミン吸収液よりも有利である。排ガス条件に最適化された移動性の高いアミンは、固定化された固体アミンよりも酸化及び副反応を起こしやすい。
これらの実施形態の吸収材は、固定床、流動床、又はモノリス型吸着器を有するシステムに設置し得る。本エアロゲル合成方法は順応性があり、これを使用することで、1~100μmの粒子から0.3×10×10cm3以上のモノリスまで様々な形状要素でエアロゲルを製造できる。吸収材は、モノリス、バインダーフリーペレット、バインダー含有ペレット、粒子、流動化可能粒子、又はマクロポーラス物質などの材料にキャストした粒子として製造できる。
本実施形態では、極端に高いわけではない、適度な多孔度で大きな比表面積が得られる。多孔度が低いため、本実施形態は、約0.14W/mK、又は0.02、0.05、0.07、若しくは0.1W/mK超という、シリカエアロゲルよりも高い熱伝導率を有し、迅速な熱交換が可能となる。
10~30nmの範囲の小さな孔径が好ましい一方で、10~1000nmの範囲などの大きな孔径も適しているが、吸収材の表面積が変化する可能性がある。細孔壁が薄いほど、細孔壁からのガス拡散が良好となり、CO2吸着量が多くなる。10~100nmの範囲の厚い壁も、吸収材の機械的強度を向上させるのに有益であり得るため、本実施形態に好適であるが、CO2回収吸着効率を低下させる可能性がある。最適な機械的強度とCO2吸着量を得るために、これら2つの性能指標間のトレードオフが必要となり得る。最適な範囲は、吸収材の使用形態に依存する。
【0021】
本実施形態は、エアロゲル中の一級アミン構造、及び骨格へのアミンの共有結合的導入により、従来の担持ポリエチレンイミン(PEI)吸収材よりも酸化安定性が7倍向上すると予想される。エアロゲルは二級アミンも含み得る。他のポリアミンと同様に、周囲湿度のあるDAC条件下では、酸化劣化が顕著となる。最近、一級アミンのみを含む担持ポリアリルアミン(PAA)は、安定性の低い二級アミンと一級アミンの混合物を含むポリエチレンイミン(PEI)よりも7倍遅く酸化することが示された(Bali,S.,Chen,T.T.,Chaikittisilp,W.&Jones,C.W.Oxidative stability of amino polymer-alumina hybrid adsorbents for carbon dioxide capture.Energy and Fuels 27,1547-1554(2013))。構造が類似していることから、本実施形態は、PAAと同様の酸化挙動を有するはずである。本実施形態は、剛性構造、及びポリマー骨格へのアミンの共有結合的導入により、物理的及び化学的な劣化速度も遅くなる。本実施形態は、10,000サイクルで90%の容量が維持されるという経済的に実行可能な寿命を実現する可能性がある。本実施形態のサイクル寿命は、65℃未満の温度で空気が導入されると仮定して、酸化安定性が7倍向上し、サイクル時間が短くなるとの予想に基づいて、二級アミン吸収材のサイクル寿命から推定される。
本実施形態は、CO2不活性コモノマーの含有量が少ないことに加えて、アミン利用率が高いため、CO2取り込み能力が高く、半サイクル当たり50kJ/モル未満、例えば26kJ/モルCO2という低い最小顕熱負荷が可能となる。最小顕熱負荷は、10kJ/モル、20kJ/モル、30kJ/モル、40kJ/モル、及び50kJ/モル未満ということもあり得る。このパラメーターは、CO2回収のエネルギー及びDAC法の運用費にとって重要である。最小エネルギー必要量は、従来の担持ポリアミンよりも40~70%少なく(表1)、45~90kJ/モルCO2の範囲にある吸着熱よりも低い。
【0022】
固定床及び流動床吸着器と吸収材との適合性を示す圧縮強度及び摩耗指数(AI)の値は、DOEが資金提供した排ガス回収用ベンジルアミンイオン交換樹脂に関する文献から推定される(Sjostrom,S.&Senior,C.Pilot testing of CO2 capture from a coal-fired power plant-Part 1:Sorbent characterization.Clean Energy 3,144-162(2019))。これらは本実施形態と同様の化学構造及び多孔度を有するが(Alesi,W.R.&Kitchin,J.R.Evaluation of a primary amine-functionalized ion-exchange resin for CO 2 capture.Ind.Eng.Chem.Res.51,6907-6915(2012))、本実施形態はAIが0.5よりも小さい上に、CO2容量がより大きく、多孔度が制御されているという追加的な利点を有する。これらの値は、新たな流動床粒子がしばしば比較される、0.2~0.5の範囲のAIを有する最先端の耐摩耗性流動クラッキング触媒と比較しても遜色がない(Green,A.D.et al.Carbon Dioxide Capture from Flue Gas Using Dry Regenerable Sorbents.DOE Report,DE-FC26-00NT40923 128(2004))。比較として、シリカ/PEIではAIは2よりも大きく(Kim,J.Y.et al.Continuous testing of silica-PEI adsorbents in a lab.-scale twin bubbling fluidized-bed system.Int.J.Greenh.Gas Control 82,184-191(2019))、MOFではAIは10よりも大きい(Luz,I.,Soukri,M.&Lail,M.Confining Metal-Organic Framework Nanocrystals within Mesoporous Materials:A General Approach via ‘solid-State’ Synthesis.Chem.Mater.29,9628-9638(2017))。本実施形態の性能向上は、ポリマーの固有の靭性及び塑性変形によるものである。
【0023】
本実施形態の吸収材は、燃焼後ガスの回収又は室内CO2の除去を含む、DAC以外の他の用途に使用し得る。DAC用途では、周囲条件で吸着が起こることがある。周囲条件とは、周囲湿度(40~70%RH)、空気の組成、CO2濃度(空気中のCO2が100~5000ppm、空気中のCO2が400~500ppm)、温度(-40~50℃又は20~30℃)、及び絶対圧(0.5~2bar又は1bar)である。他の用途では、0.1~50%CO2、又は1~90%CO2、3~15%CO2、又は3~50%CO2、0~100%RH、1mbar~10bar、及び15~80℃又は15~50℃などの幅広い条件で吸着が起こることがある。本吸収材は、様々なシステム及び構成で使用し、CO2又は他の酸性ガスを空気又は他の周囲ガスから分離し得る。
【0024】
特許請求の範囲、要約、及び図面を含む本明細書に開示する全ての特徴、並びに開示する任意の方法又は工程における全てのステップは、かかる特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせ得る。特許請求の範囲、要約、及び図面を含む本明細書に開示する各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同一、同等、又は類似の目的を果たす代替的な特徴で置き換えることができる。上記に開示した特徴及び機能並びにその他の特徴及び機能の変形、又はこれらの代替物は、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わせ得ることが理解されよう。現在予見又は予想されていない様々な代替案、修正、変形、又はその改良が、今後、当業者によってなされ得るが、これらも上記の実施形態に包含されることが意図される。
【国際調査報告】