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特表2023-539995ヒト血漿中のサイロシビンの主要代謝物であるサイロシン及び4-ヒドロキシインドール-3-酢酸の定量方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ヒト血漿中のサイロシビンの主要代謝物であるサイロシン及び4-ヒドロキシインドール-3-酢酸の定量方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20230913BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230913BHJP
【FI】
G01N33/50 B
G01N33/50 U
G01N27/62 V
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503474
(86)(22)【出願日】2021-08-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 IB2021057505
(87)【国際公開番号】W WO2022053892
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/077,611
(32)【優先日】2020-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522340934
【氏名又は名称】ユニヴェルシテートスピタル バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒティ,マティアス エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】コラクジンスカ,カロリナ エルズビエタ
(72)【発明者】
【氏名】ダタラー,ウルス フィリップ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA10
2G041GA09
2G041HA01
2G041LA08
2G045DA17
2G045FB06
(57)【要約】
個体から試料を取得し、LC-MS/MS分析を実施することにより試料中のトリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定することにより、トリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定する方法。個体から試料を取得することにより、治療薬モニタリング(TDM)におけるトリプタミン化合物支援精神療法を受けている患者の投与量を調整し、LC-MS/MS分析を実施することにより試料中のトリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定し、測定された代謝物に基づいてトリプタミン化合物の投与量を調整する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定する方法であって、
個体から試料を取得する工程と、
LC-MS/MS分析を実施することにより前記試料中の前記トリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料が、血漿、血液、尿、及び唾液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トリプタミン化合物が、サイロシビン、サイロシビンプロドラッグ、サイロシビン類似体、ジメチルトリプタミン(DMT)、DMT類似体、及びDMTプロドラッグからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トリプタミン化合物が、サイロシビンであり、前記代謝物が、サイロシン、4-ヒドロキシインドール-3-酢酸(4-HIAA)、サイロシン-O-グルクロニド、4-ヒドロキシトリプトホール(4-HTP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
個体がトリプタミン化合物を摂取したことを決定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記トリプタミン化合物が前記個体によって効果的に代謝されるかどうかを決定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記トリプタミン化合物がサイロシビンであり、代謝物に対するサイロシンの比を分析する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
LC-MS/MS分析を前記実施する工程が、モジュール式超高速液体クロマトグラフィーシステムを使用して検体を分離する工程と、エレクトロスプレーイオン化を実施する工程と、多重反応モニタリングによって検体を検出する工程とを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、前記トリプタミン化合物を用いた前記個体の治療の0、15、30、45、60、90、120、150、180、240、300、360、及び420分後からなる群から選択される時間で得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
個体から試料を取得する工程と、
LC-MS/MS分析を実施することにより前記試料中のトリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定する工程と、
前記測定された代謝物に基づいて前記トリプタミン化合物の投与量を調整する工程と、
を含む、治療薬モニタリング(TDM)においてトリプタミン化合物支援精神療法を受けている患者の投与量を調整する方法。
【請求項11】
前記試料が、血漿、血液、尿、及び唾液からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トリプタミン化合物が、サイロシビン、サイロシビンプロドラッグ、サイロシビン類似体、ジメチルトリプタミン(DMT)、DMT類似体、及びDMTプロドラッグからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記トリプタミン化合物が、サイロシビンであが、前記代謝物は、サイロシン、4-ヒドロキシインドール-3-酢酸(4-HIAA)、サイロシン-O-グルクロニド、4-ヒドロキシトリプトホール(4-HTP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記トリプタミン化合物が前記個体によって効果的に代謝されるかどうかを決定する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記トリプタミン化合物がサイロシビンであり、代謝物に対するサイロシンの比を分析する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
LC-MS/MS分析を前記実施する工程が、モジュール式超高速液体クロマトグラフィーシステムを使用して検体を分離する工程と、エレクトロスプレーイオン化を実施する工程と、多重反応モニタリングによって検体を検出する工程とを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、前記トリプタミン化合物を用いた前記個体の治療の0、15、30、45、60、90、120、150、180、240、300、360、及び420分後からなる群から選択される時間で得られる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
助成金情報
本出願における研究は、スイス国立科学財団(Swiss National Science Foundation)(助成金(Grant)番号32003B_185111)からの助成金によって部分的に支持された。
【0002】
1.技術分野
本発明は、ヒト血漿中のサイロシビンの活性代謝物であるサイロシン、及びサイロシビンの主要な不活性代謝物である4-ヒドロキシインドール-3-酢酸を同定及び定量化するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
サイロシビンは、幻覚マッシュルーム(シビレタケ属(Psilocybe))のいくつかの種に見られる人気のあるレクリエーション物質(recreational substance)であり、ヒトに「向精神作用性(mind-altering)」効果を引き起こす(Hofmann et al.,1959、Nichols,2004)。1958年にA.Hofmannによって単離されたサイロシビンの精神活性効果は、主に5-HT2A受容体を介して媒介される(Rickli et al.,2016、Vollenweider et al.,1998)。近年、サイロシビンは、群発頭痛、強迫性障害、不安症及びうつ病、並びにアルコール使用障害の治療のために転用され研究されている(Bogenschutz et al.,2018、Carhart-Harris et al.,2017、Griffiths et al.,2016、Grob et al.,2011、Johnson et al.,2017、Moreno et al.,2006、Ross et al.,2016、Sewell et al.,2006)。従って、サイロシビンを医薬品として使用することに大きな関心が寄せられており、更なる臨床研究が大いに必要とされている。これは又、サイロシビンとサイロシンの薬物動態、及びヒト血漿中のこれらの物質とその代謝物を定量化する方法をよりよく理解する必要性を生み出している。
【0004】
サイロシビンは、インドールアルカロイドであり、構造的に神経伝達物質のセロトニンに似ている(Hasler et al.,1997、Passie et al.,2002)(図1A)。摂取されると、プロドラッグのサイロシビンは、腸内のアルカリ性リン酸と非特異的エステラーゼによってサイロシンに急速に代謝され(図1B)、これは、サイロシビンの精神活性効果の原因となる(Nichols,2004、Rickli et al.,2016)。
【0005】
サイロシビンの自覚効果は、経口投与後2時間後にピークに達し、6時間持続する(Griffiths et al.,2016、Passie et al.,2002)。一貫して、サイロシンは、経口投与後1.5~2時間で血漿中の10~40ng/mlのピーク濃度に達し、2~3時間の半減期で消失する(Brown et al.,2017、Hasler et al.,1997)。しかしながら、この薬物動態データは、予備試験であり確認を必要とする。例えば、血漿は、6.5時間だけサンプリングされ(Hasler et al.,1997)、これは、サイロシビン治療の薬物動態プロファイル全体を適切に反映しておらず、サイロシンと4-ヒドロキシインドール-3-酢酸(4-HIAA)の薬物曝露と排出半減期を正確に決定することはできない。更に重要なことに、サイロシンは、肝臓ではUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)1A9によって、小腸ではUGT1A10によってグルクロン酸抱合を受け、サイロシン-O-グルクロニドになり(図1C)、80%がこの形態で体から排出されることを考慮すると、サイロシンの主要な代謝物である(Grieshaber et al.,2001、Hasler et al.,2002、Manevski et al.,2010)。サイロシンの薬物動態を評価するためにこれまでに行われた研究では、両方の形態のサイロシンの薬物動態パラメーターを有効に決定するために、非抱合(活性)サイロシンと抱合(不活性)サイロシンの両方を評価しなかった。この重要な問題を解決するには、ヒト血漿中の両方の形態を決定する方法がまず必要である。
【0006】
サイロシンは又、肝臓のアルデヒド脱水素酵素及びモノアミンオキシダーゼによって脱アミノ化及び酸化され、4-ヒドロキシトリプトホール(4-HTP)(図1E)及び4-HIAA(図1D)になる(Hasler et al.,1997、Lindenblatt et al.,1998、Passie al.,2002)。制御されたサイロシビン投与後のこれらの物質の薬物動態の有効な評価も不足している。サイロシビンを様々な精神障害の潜在的な治療薬として適用することへの関心が急速に高まっているため、その臨床薬理学の知識を拡大することが不可欠である。例えば、より大きな集団における有効な薬物動態(PK)データが必要であり、PKと薬力学(PD)の関係を調査する投与量設定研究及び薬物間相互作用研究が未決であり、適切な生物分析法が必要である。薬物動態データは、サイロシビン又は他のサイロシンプロドラッグで治療された患者の投与量を調整するためのサイロシンの参照濃度値を生成するためにも必要である。例えば、血漿濃度は、サイロシビンに対する予想される急性精神活性反応又は不十分な治療反応を示さない患者で測定することができる。この目的のために、サイロシン濃度を測定する方法は、規定された時点又は繰り返し(Cmax又は完全なPKプロファイル)で血漿中の濃度を測定するために必要であり、次いで、患者の値を、より大きな集団からの参照データと比較して、正しい投与量を決定し、サイロシビン支援療法における治療薬モニタリング(TDM)手法内で、投与量を調整することができる。
【0007】
これまで、ほとんどの方法は、限られた試料サイズを伴う薬物スクリーニング又は予備試験的な薬物動態研究を目的として、サイロシビンの代謝物の定量化に焦点を当ててきていた。血漿又は尿試料中のサイロシンの定量化は、作業集約的な抽出手順を含む大量の試料を処理することによって達成され、選択的分析は、長いクロマトグラフィー勾配プログラムを使用して保証された。過去の年月に渡り、シングル又はタンデム質量分析法によってサイロシンを検出するガスクロマトグラフィー(GC)及びHPLC法が開発されてきた。必要な試料量は少なくても、この方法は、時間のかかる液-液又は固相抽出を使用し、実行時間が10分を下回ることはほとんどなかった。従って、これらの方法は、大量の試料の分析には実用的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、血漿中のサイロシビン代謝物を評価する効果的な方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本発明は、個体から試料を取得し、LC-MS/MS分析を実施することにより試料中のトリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定することにより、トリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定する方法を提供する。
【0010】
本発明は又、個体から試料を取得し、LC-MS/MS分析を実施することにより試料中のトリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定し、測定された代謝物に基づいてトリプタミン化合物の投与量を調整することにより、治療薬モニタリング(TDM)におけるトリプタミン化合物支援精神療法を受けている患者の投与量を調整する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
本発明の他の利点は、添付の図面と関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるので、容易に理解される。
【0012】
図1A】サイロシビン及び代謝物の化学構造であり、経口サイロシビン(図1A)は、不活性プロドラッグであり、活性薬物であるサイロシンに急速に加水分解され(図1B)、これは、更にサイロシン-O-グルクロニドへのグルクロン酸抱合を受ける(図1C)、又は脱アミン化及び酸化されて4-ヒドロキシインドール-3-イル-酢酸(4-HIAA)(図1D)及び4-ヒドロキシトリプトホール(4-HTP)になる(図1E)。
図2】ヒト血漿中のサイロシン及び4-HIAA並びにそれぞれの内部標準であるサイロシン-d10及びトリプトファン-dのクロマトグラフィー分離のグラフである。
図3】正及び負のイオン化モードで記録されたブランクプラズマの4-HIAAバックグラウンドノイズのグラフである。
図4A】7人の異なる個体からのブランク血漿中のサイロシン及び4-HIAAの選択性のグラフであり、図4Aは、サイロシンの二重ブランクを示し、図4Bは、サイロシンのブランクを示し、図4Cは、4-HIAAの二重ブランクを示し、図4Dは、4-HIAAのブランクを示す。
図5A】LLOQレベル(0.25ng/mlのサイロシン又は2.5ng/mlの4-HIAA)までスパイクされたヒト血漿中のサイロシン及び4-HIAAの選択性を、二重ブランク及びブランクのシグナルと比較した表である。
図5B】LLOQ(0.25ng/mlのサイロシン又は2.5ng/mlの4-HIAA)までスパイクされたヒト血漿中のサイロシン及び4-HIAAの選択性の表である。
図6】サイロシン及び4-HIAAの安定性の表である。
図7A】サイロシン及びサイロシン-グルクロニドの薬物動態プロファイルのグラフである。
図7B】4-HIAAの薬物動態プロファイルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、血漿などのヒト試料中のトリプタミン化合物、好ましくは、サイロシビンの、サイロシン及び4-HIAAなどの代謝物を測定する方法を提供する。この方法は、薬物動態パラメーターを有効に導き出すための非抱合サイロシンと抱合サイロシンの両方の薬物動態の最初の説明を含む、方法の質と性能、及びヒト被験者への適用性に関する情報を提供することで検証される。本発明は又、サイロシビンの薬物動態の後のより包括的な評価を可能にする、より大規模なフェーズ1臨床研究への分析方法の適用性を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「試料」は、個体、好ましくはヒト又は哺乳動物からの血漿、血液、尿、唾液、又は他の体液の試料を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「代謝物」は、代謝の産物としての元の活性化合物の中間体又は最終産物を指す。本発明における代謝物は、好ましくは、サイロシン、4-HIAA、サイロシン-O-グルクロニド、又は4-HTPを含むサイロシビンの代謝物である。加えて、サイロシビン、サイロシンの他のプロドラッグが記載されている、又は開発されている。この方法は又、サイロシンの任意の他のプロドラッグ又は同じ代謝物をもたらす任意の他のサイロシン類似体の投与後に、サイロシン及びサイロシンの代謝物を決定するためにも使用できる。更に、この方法は、サイロシンの類似体、サイロシビンの類似体、ジメチルトリプタミン(DMT)、及びDMTの類似体又はプロドラッグを含む、他のトリプタミン化合物の分析を含むように調整できる。これは、サイロシビン類似体支援精神療法のTDMの概念だけでなく、分析方法も含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「LC-MSMS」は、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法分析化学技術(liquid chromatography-tandem mass spectrometry analytical chemistry technique)を指す。
【0017】
本発明は、個体から試料を取得し、LC-MS/MS分析を実施することにより試料中のサイロシビンの代謝物を測定及び同定することにより、サイロシビンの代謝物を測定及び同定する方法を提供する。最も一般には、LC-MS/MS分析は、モジュール式超高速液体クロマトグラフィーシステムを使用して検体を分離し、エレクトロスプレーイオン化を実施し、多重反応モニタリングによって検体を検出することによって実施される。
【0018】
既存のLC-MS/MS方法とは対照的に、本発明は、より少ない試料サイズを使用して、より高速になるように更に開発されており、その適用性は、抱合代謝物の評価、及び後のTDMのための参照PKデータの設定も含む。この分析方法及び関連するTDM適用性を使用して、サイロシビンを服用した個体を同定し、サイロシビンが個体の体内で効果的に代謝されているかどうかを確認できる。代謝物が予想されるレベルにない場合、サイロシビンの投与量は、必要に応じて個体において調整できる。
【0019】
従って、本発明は、個体から試料を取得し、LC-MS/MS分析を実施することにより試料中のトリプタミン化合物の代謝物を測定及び同定し、測定された代謝物に基づいてトリプタミン化合物の投与量を調整することにより、治療薬モニタリング(TDM)においてトリプタミン化合物支援精神療法を受けている患者の投与量を調整する方法を提供する。
【0020】
ヒト血漿中のサイロシン及び4-HIAAの分析のために、LC-MS/MS方法の規制生物分析ガイドライン(regulatory bioanalytical guidelines)(FDA/EMA)に準拠した徹底的な開発と完全な検証が提供される。本明細書では、サイロシビンのPKを調査するための最新技術のLC-MS/MS方法を使用し、これによりフェーズI及びIIの代謝物を特性評価する。この方法は、少なくとも8倍の感度があり、少量の試料を使用し、簡易な抽出プロトコルを伴い、迅速な試料分析を含むため、他の方法よりも改善されている。前述の方法論的利点を達成するために、試料をオンラインで希釈し、96ウェルプレート形式で試料を抽出し分析する半自動化されたワークフローを可能にし、高い処理量の分析を促進した。加えて、この方法は実践に移され、臨床研究で3人の健康な参加者のサイロシン及び4-HIAAのPKを評価することにより、この方法の臨床適用性が実証された。更に、この方法は、サイロシビンの参照PKデータを確立して、後のTDMを支援するために使用される。
【0021】
サイロシビンは、様々な精神障害を治療するための薬物として研究されている。サイロシンは、サイロシビンの活性代謝物であり、セロトニン作動性の幻覚物質である。サイロシンの薬物動態特性は、十分に特性評価されていない。薬物動態研究からのヒト血漿試料を分析するには、サイロシン血漿レベルを有効且つ迅速に測定する必要がある。4-ヒドロキシインドール-3-酢酸(4-HIAA)は、サイロシビンの主要な不活性代謝物である。
【0022】
サイロシビンが販売され、患者に定期的に使用されるようになると、その活性代謝物であるサイロシンの血漿濃度を決定するためにTDMが必要になる。例えば、サイロシビンの通常の投与量に反応しない患者の薬物の血漿レベルを決定して、投与量を調整することができる。しかしながら、血漿中のサイロシン濃度を有効且つ迅速に測定して、医師にそのような情報を提供できる方法が必要である。加えて、サイロシンと代謝物の比を使用して、遅い又は迅速な代謝物質を同定できる。更に、サイロシビンへの曝露を決定し、投与量を調整するために、血漿中のより長い排出半減期を持つ代謝物を使用することができる。最後に、代謝物レベルを使用してサイロシビン中毒を診断できる。従って、本発明は、開発及び検証され、ヒト血漿中のサイロシン及びその代謝物4-HIAAを定量化するための迅速なLC-MS/MS方法を含む。血漿試料は、メタノールを使用したタンパク質沈殿によって処理された。注入された試料は、C18分析カラムの前で水と混合され、検体の保持が増加した。サイロシン及び4-HIAAは、それぞれ正と負のエレクトロスプレーイオン化モードで複数の反応をモニタリングすることによって検出された。
【0023】
以下の実施例1に記載されるように、100~109%のアッセイ間精度及び8.7%以下の正確性が、3回の検証の実行に渡り記録された。回収はほぼ完了し(94.7%以上)、重要なことに、様々な濃度レベル及び血漿バッチに渡り一貫していた(CV%:4.1%以下)。プラズママトリックスによるイオン抑制はごくわずかであり、内因性干渉物(endogenous interference)は検体から分離できた。サイロシン及び4-HIAA血漿試料は、3サイクルの解凍と再凍結ができ、室温で8時間又は-20℃で1か月間、劣化(10%以下)を示さずに保存できる。この方法の線形性範囲(0.998以上のR)は、サイロシビン25mgの一般的な治療用経口投与後にヒトで観察された血漿濃度を網羅し、従って、サイロシン及び4-HIAAの薬物動態を評価することができた。LC-MS/MS方法は、血漿中のサイロシン及び4-HIAAを測定するのに便利で信頼性が高く、サイロシビンを患者に使用する場合、サイロシビンとTDMの臨床開発を促進するのに役立つ。
【0024】
以下の実験例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。これらの実験例は、説明のみを目的として提供されており、別段の指定がない限り、限定を意図するものではない。従って、本発明は、以下の実施例に限定されると決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意の及び全ての変形形態を包含すると解釈されるべきである。
【0025】
実施例1
この実施例の検討と方法の説明は、(Kolaczynska et al.,2021)にも示されていた。サイロシンはLipomed(Arlesheim,Switzerland)から、サイロシン-d10とL-アスコルビン酸(AA)はSigma-Aldrich(St.Louis,USA)から、L-トリプトファン-dはToronto Research Chemicals(Toronto,Canada)から購入した。4-ヒドロキシインドール-3-酢酸(4-HIAA)及び4-ヒドロキシトリプトホール(4-HTP)はReseaChem(Burgdorf,Switzerland)から入手した。LC-MSグレードの水及びメタノールはMerck(Darmstadt,Germany)から購入した。ギ酸及びジメチルスルホキシド(DMSO)はSigma-Aldrichから入手した。薬物を含まないヒトの血液は、地元の献血センター(Basel,Switzerland)から入手した。リチウムヘパリンでコーティングされたS-Monovette(登録商標)チューブ(Sarstedt,Nuembrecht,Germany)にて血液が採取された。検量及び品質管理(QC)試料用の血漿は、4000rpmで10分間の遠心分離(Eppendorf Centrifuge 5810R)によって生成された。
【0026】
LC-MS/MS測定器及び設定
検体は、4つのポンプ(A、B、C、及びD)からなるモジュール式超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)システム(Shimadzu,Kyoto,Japan)を使用して分離された。UHPLCシステムを4000 QTRAPタンデム質量分析計(AB Sciex,Ontario,Canada)に接続した。
【0027】
サイロシン及び4-HIAAは、Symmetry C18分析カラム(3.5μM、100Å、4.6×75mm、Waters,Massachusetts,USA)に保持され、カラムオーブンにて45℃で加熱された。移動相Aとして水、移動相Bとしてメタノールを使用した。どちらの移動相にも0.1%のギ酸が含まれていた。注入された試料(10μl)は、T-ユニオン(T-union)内の分析カラムの前で、ポンプCによって供給された移動相Aと混合された。ポンプCの初期流量は、1.3ml/分であり、各実行の最初の0.5分間の間に徐々に減少した。同時に、ポンプAとBにより、10%の移動相Bと0.3mL/分の流速を使用して、試料を分析カラムに投入した。流速は、最初の0.5分間に渡り0.3ml/分から0.5ml/分まで着実に増加し、実行の終わり(0.5~4.5分)までこの速度を維持した。検体を溶出するために、移動相Bの濃度を0.5~3分間で95%まで直線的に増加させた。その後、カラムを95%の移動相Bで1分間洗浄し、最後に10%の移動相Bで0.5分間再調整した。各試料注入の間に、オートサンプラーポートを、水、メタノール、アセトニトリル、及びイソプロパノール(1:1:1:1)からなる洗浄溶液で洗浄した。勾配プログラムにより、サイロシン及びサイロシン-d10の保持時間は2.17分、トリプトファン-dの保持時間は2.81分、及び4-HIAAの保持時間は3.36分になった。従って、UHPLCの流れは、実行の1.5~3.8分間のみタンデム質量分析計に接続され、それ以外の場合は、溶媒廃棄物に向けられた。
【0028】
サイロシンとサイロシン-d10には正極モードのエレクトロスプレーイオン化を使用し、4-HIAAとL-トリプトファン-dは負極モードでイオン化した(表1及び図2)。
【0029】
【表1】
【0030】
図2では、サイロシン(100ng/ml、黒線)とサイロシン-d10(10ng/ml、点線)の両方が、正イオン化モードで2.16分後に検出された。3.36分後に溶出した4-HIAA(1000ng/ml、黒線)を検出するために、2.5分後に極性モードを正から負のエレクトロスプレーイオン化に切り替えた。4-HIAAの内部標準であるトリプトファン-d(1000ng/ml、点線)の保持時間は、2.81分であった。
【0031】
検体は、以下の質量遷移(Q1→Q3)による多重反応モニタリング(MRM)によって検出された:サイロシン、205.2→58.1m/z、サイロシンd10、215.2→66.0m/z、4-HIAAでは、189.9→130.9m/z、及びトリプトファン-dでは、208.0→120.0m/z。窒素が、イオン源(ガス1、60l/分、ガス2、50l/分)、カーテン(10l/分)、及び衝突ガス(4l/分)として使用された。イオンスプレー電圧は、正極モードと負極モードでそれぞれ+5500Vと-4500Vに設定された。そのソース温度は、500℃であった。
【0032】
LC-MS/MSシステムは、Analystソフトウェア1.7(AB Sciex)で操作され、データは、MultiQuantソフトウェア3.0.3(AB Sciex)で分析された。
【0033】
検量及び品質管理試料の調製
サイロシン及び4-HIAAは、2つの別々の原液、1つは検量試料用、もう1つはQC試料調製用を得るために、二重に秤量された。検体を0.1Mのアスコルビン酸を含むDMSO(DMSO-AA)に溶解して、最終濃度10mg/mlを得た。20μg/mlのサイロシンと200μg/mlの4-HIAAの検量及びQC作業溶液混合物を調製し、DMSO-AAでそれぞれ0.025μg/mlと0.25μg/mlまで段階的に希釈した。検量及びQC作業溶液は、ブランクのヒト血漿と1:100(v/v)の比で混合された。検量試料は、サイロシンでは0.25~100ng/mL、4-HIAAでは2.5~1000ng/mLの範囲を網羅していた。
【0034】
QC試料は、定量下限(LLOQ)、低濃度(QCLOW)、中濃度(QCMID)、及び高濃度(QCHIGH)のレベルで調製され、これらは、サイロシンでは0.25、0.5、10、及び50ng/ml、4-HIAAでは2.5、5.0、100、及び500ng/mlの血漿濃度に相当した。全ての溶液は、-20℃で遮光チューブに保存された。
【0035】
内部標準(IS)サイロシン-d10及びトリプトファン-dは、DMSO-AAにて最終濃度10mg/mlで調製された。10ng/mlのサイロシン-d10及び1000ng/mlのトリプトファン-dを含むIS作業溶液をメタノール中で作成し、-20℃で保存した。
【0036】
試料抽出
50μlの血漿のアリコートを96ウェルのオートサンプラープレート(Matrix blank storage tubes,Thermo Fischer,Massachusetts,USA)にピペットで移し、5μlの0.1Mアスコルビン酸で補充した。次に、試料を150μlのIS作業溶液と混合し、ボルテックスで30秒間混合した。次いで、抽出物を10℃、4000rpmで30分間遠心分離して、タンパク質を含まない透明な上清を得た。試料を10℃のオートサンプラー内に置き、10μlの上清をLC-MS/MSシステムに注入した。
【0037】
方法の検証
分析方法は、方法の線形性、精度と正確性、選択性と感度、マトリックス効果と抽出回収率、及び検体の安定性に関して、欧州医薬品庁(EMA)の生物分析方法の検証に関するガイドラインに従って検証された(欧州医薬品庁、2011年)。
【0038】
線形性
各検量線は、2セットのブランク、二重ブランク、及び8つの検量試料からなった。二重ブランク試料は、純粋なメタノールで抽出され、その他の試料は、IS溶液で抽出された。検量試料は、検体濃度を上げて分析され、二重ブランク試料は、定量上限(ULOQ)試料の後に注入されて、分析実行間の検体キャリーオーバーを決定した。
【0039】
検量線は、ISピーク面積(y)に対する検体に対しての公称検体濃度(x)の線形回帰(重み付け1/x)によって確立された。サイロシン-d10は、サイロシンのISとして使用されたが、トリプトファン-dは、4-HIAAのISであった。この関係は、0.99(R)を超える相関係数をもたらす必要があった。精度が85~115%(LLOQ:80~120%)以外の検量試料は除外された。しかしながら、検量線には、1つのLLOQ試料と1つのULOQ試料を含む、少なくとも14の測定値(75%超)が含まれている必要があった。
【0040】
アッセイ内及びアッセイ間の精度と正確性
アッセイ内及びアッセイ間の精度と正確性は、3つの別々の日に3つの独立した検証の実行を行うことによって調べられた。各検証の実行は、アッセイの開始時と終了時に測定された2セットの検量線からなった。その間に、4つのQCレベル(LLOQ、QCLOW、QCMID、及びQCHIGH)の7つの複製物が測定された。方法の精度と正確性は、1回の実行(アッセイ内、n=7)及び3回の実行全て(アッセイ間、n=21)の複製物を分析することによって評価された。
【0041】
正確性は、それぞれの個々の実行(アッセイ内)及び3回の実行全て(アッセイ間)について、QCレベルごとの変動係数(CV%)を計算することによって決定された。15%以下(LLOQ:20%以下)の正確性は、許容範囲であった。
【0042】
QC試料濃度は、2つの検量セットの線形方程式に基づいて計算された。計算された濃度と公称濃度との差(%)が、測定の精度を特定した。平均精度は、85~115%(LLOQ:80~120%)である必要があり、各濃度レベルで全QC試料の少なくとも67%(アッセイ内:7のうち5、アッセイ間:21のうち15)は、この範囲内に収まる必要があった。
【0043】
選択性及び感度
方法の選択性は、7人の異なる被験者からのブランク試料を分析することによって調べられた。これらの試料は、ISを使用した場合と使用しない場合で処理され、干渉(interference)がプラズママトリックスの成分又はIS自体によって引き起こされているかどうかをそれぞれ判断した。更に、各ブランク試料は、LLOQ濃度(サイロシン:0.25ng/ml又は4-HIAA:2.5ng/ml)でスパイクされ、方法の感度を評価した。LLOQシグナル強度がブランクプラズマのバックグラウンドノイズよりも少なくとも5倍高かった場合、この方法は選択的であると見なされた。方法の感度を検証するには、血漿の7つの異なるバッチのLLOQ試料が、20%以下の正確性と80~120%の平均精度を示す必要があり、この場合、試料の少なくとも67%がこれらの制限内にある必要があった。
【0044】
抽出回収率及びマトリックス効果
LLOQ、QCLOW、QCMID、及びQCHIGHの濃度レベルで、7つの異なる血漿バッチについて抽出回収率及びマトリックス効果が調査された。
【0045】
抽出回収率は、等量の検体を使用してブランク血漿(抽出前)とブランク血漿上清(抽出後)をスパイクすることによって見積もられた。スパイクされた上清に見られるピーク面積は、100%の回収率に相当し、スパイクされ処理された血漿試料のピーク面積と比較された。
【0046】
マトリックス効果は、マトリックスを使用した場合と使用しない場合で試料における検体のピーク面積を比較することによって決定された。従って、純水と抽出されたブランク血漿(抽出後)は、等量の検体で調製された。水におけるピーク面積に対する血漿抽出物中の検体のピーク面積の比(%)は、マトリックス効果に相当した。
【0047】
全体として、回収率及びマトリックス効果は、様々な血漿バッチと濃度レベルの間で15%未満のCV%と一致する必要があった。
【0048】
安定性
血漿中のサイロシン及び4-HIAAの安定性は、様々な保存条件下で調査された。LLOQ、QCLOW、QCMID、及びQCHIGH試料の7つの複製物を、室温で8時間(ベンチトップでの安定性)、及び-20℃で1か月間(1か月の安定性)保存した。更に、安定性は、3回の連続した凍結解凍サイクル後に評価され(凍結/解凍安定性)、これによりQC試料を-20℃で少なくとも24時間凍結し、その後室温で解凍した。これらの安定性試験試料の濃度は、新たに調製された検量線に基づいて計算された。精度が85~115%(LLOQ:80~120%)、及び正確性が15%以下(LLOQ:20%以下)の場合、試料は安定であると認められた。
【0049】
方法の適用性
開発された方法の適用性を調べるために、サイロシン及び4-HIAA濃度が、25mgのサイロシビンの1回の経口投与を受けた3人の健康なボランティアの血漿試料にて定量化された。これは、臨床フェーズ2~3の研究で現在使用されている中程度から高い程度の投与量である。この研究は、北西部及び中央部のスイス国の倫理委員会(Ethical Committe)によって承認され(EKNZ、BASEC ID:2019-00223)、ClinicalTrials.govに登録され(ID:NCT03912974)、ヘルシンキ宣言(the Declaration of Helsinki)、及び医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice)における調和ガイドライン(Harmonization Guidelines)に関する国際会議に従って行われた。全てのボランティアは、研究の参加前に書面によるインフォームド・コンセント(informed consent)を提供した。
【0050】
濃度時間プロファイルを確立するために、以下の時点でリチウムヘパリンでコーティングされたチューブにて血液試料を採取した:治療の2時間前並びに治療の0、15、30、45、60、90、120、150、180、240、300、360、及び420分後。血液試料を3000rpmで10分間遠心分離して血漿を得、これをクライオチューブに移した。全ての試料は、分析まで-80℃で保存された。
【0051】
研究、検量、及びQC試料は、前述のように処理された。加えて、グルクロニド抱合サイロシン及び4-HIAAの総量は、Kamataら(2006)のプロトコルと同様に決定された。簡単に言えば、5μlの大腸菌(Escherichia coli)脱グルクロニダーゼ(水中で3000単位/ml)を50μlの血漿試料と混合した。100μlの酢酸緩衝液(0.1M)のアリコートを混合物に添加した。試料をサーモミキサー(Eppendorf,Hamburg,Germany)にて37℃で3時間インキュベートした。酵素反応を終了させ、150μlのメタノールを添加して試料を抽出した。上記で概説したように、試料をボルテックスで混合し、遠心分離した。
【0052】
分析の実行ごとに、測定の開始時と終了時に検量線を分析した。その間に、3人のボランティアの研究試料と、LLOQ、QCLOW、QCMID、及びQCHIGH試料の三つぞろいを測定した。LLOQ未満の濃度の試料は、blq(定量限界未満)として印され、ULOQを超える濃度の試料は、ブランク血漿を用いて検量範囲に希釈された。
【0053】
濃度-時間プロファイルをプロットし、プロットから最大血漿濃度(Cmax)とそれに到達するまでの時間(Tmax)を図表で取得した。薬物動態パラメーターは、Phoenix WinNonlin 8.3(Certara,New Jersey,USA)の非コンパートメント法(non-compartmental method)を使用して計算された。血漿濃度時間プロファイル下の面積は、0~420分(AUCLAST)の線形台形則を使用して計算された。排出半減期(t1/2)は、方程式
【数1】
によって計算され、この場合、排出速度定数(λ)は、最終排出段階で決定されたtに対するlog(C(t))の勾配であった。
【0054】
方法の検証と適用性の結果
LC-MS/MS方法が開発され、簡易で迅速な試料分析ワークフローで完全に検証された。
【0055】
最初に、サイロシン、サイロシン-d10、4-HIAA、4-HTP、及びトリプトファン-dのイオン化及びフラグメント化パラメーターを、検体を質量分析計に注入することによって最適化した(表1)。サイロシンと4-HTPは正極モードでのみ調整されたのに対し、正と負の極性のイオン化は、それがアミンとカルボン酸の官能基を持っていることを考慮して、4-HIAAに対して試験された。多重反応モニタリング(MRM)による定量化を可能にするために、最も豊富なフラグメントのスクリーニングを実施した。サイロシン(205.2m/z)は、フラグメント58.1及び160.0m/zに最も豊富に分解されたが、サイロシン-d10は、66.0及び164.0m/zにフラグメント化され、それぞれ8つ及び4つの重水素原子を保持していた。従って、フラグメント58.1m/zは、トリメチルアミンからなり、164m/zは、サイロシンの2-(インドール-3-イル)-エチル成分からなる。重要なことに、両方のフラグメントも報告され、他の方々によって定量化イオンとして使用された(Bjoernstad et al.,2009、del Mar Ramirez Fernandez et al.,2007、Kamata et al.,2003、Kamata et al.,2006、Martin et al.,2012)。4-HIAAと4-HTPは、タンデム質量分析法ではいまだ検出されていなかった。フラグメント146m/zと130.9m/zは、それぞれ正極モードと負極モードで4-HIAAに最も豊富であった。4-HTPは、サイロシンにおいて観察されたように、主に160.1m/zにフラグメント化し、これは、このフラグメントがサイロシンのプロトン化された2-(インドール-3-イル)-エチル部位に対応することを裏付けている。検証は、極性の切り替えを避けるために、全ての検体を正にイオン化することによって最初に開始された。しかしながら、使用された4-HIAAの質量遷移(192.1→146m/z)は、内因性血漿成分との顕著な干渉をもたらし、これは、検体信号から分離することは困難であった。しかしながら、負極モードでは、正極モードと比較して、4-HIAAにおけるベースラインノイズはごくわずかであった(図3)。図3では、25ng/ml(正極モード)又は2.5ng/ml(負極モード)のいずれかの4-HIAAを含む血漿試料のクロマトグラムを、ブランクの血漿クロマトグラムと重ね合わせた。正イオン化モードでは、4-HIAAが、質量遷移192.1→146.0m/zによって検出された。2500カウント/秒(cps)の顕著なバックグラウンドノイズが、ブランク血漿試料で観察され、これは、4-HIAAシグナルに干渉した。質量遷移189.9→130.9m/zは、負極モードで4-HIAAに使用され、ブランクプラズマで100cps未満のごくわずかなバックグラウンドノイズが得られた。従って、極性の切り替えは避けられず、トリプトファン-dを4-HIAAのISとして方法に組み込む必要があった。
【0056】
次に、分析カラムで検体を濃縮及び分離するために、検体のクロマトグラフィーを最適化した。多種多様なカラムがスクリーニングされ、ペンタフルオロフェニル(PFP)及びビフェニル相が比較的極性の高い芳香族検体を保持できることが示された。加えて、Symmetry C18カラムなどのC18カラムは、検体が極性シロキサン及びシラノール表面官能基と相互作用できるようにするアルキルリガンド密度を特徴とし、良好な検体保持と対称ピーク形状をもたらした。メタノールとアセトニトリルの検体ピーク強度は類似していたが、アセトニトリルの方が検体の溶出が速くなった。いくつかのMS適合改質剤(ギ酸及び酢酸、又はギ酸アンモニウム、酢酸塩及びフッ化物)が調査された。両方の移動相にフッ化アンモニウムを添加すると、ビフェニル相カラムに対する方法の線形性範囲が拡大した。しかしながら、添加剤は、一部のカラム(Symmetry C18など)の耐久性も低下させた。4-HIAAは、サイロシンよりもかなり遅く溶出したが、同時に4-HTPでは極性の切り替えが困難になった。最後に、4-HTPは、25mgのサイロシビンを投与されたボランティアの血漿中の2.5ng/mlの検出限界で検出できなかったため、この方法には含まれなかった。
【0057】
最後に、簡易な試料抽出のために、様々な血漿タンパク質沈殿溶媒が調査された。メタノール、アセトニトリル、及びエタノールは、同等のシグナル強度をもたらした。しかしながら、注入された試料は主に有機溶媒からなっていたため、検体のピーク形状は貧弱であった。抽出物を蒸発させ、残留物を移動相Aに再懸濁することで問題が解決した。加えて、過塩素酸(1M)によるタンパク質沈殿を評価したが、その理由は、親水性検体が水性溶媒によって効率的に抽出され、分析カラムに保持されることが予想できるためである。確かに、過塩素酸による抽出は有望であったが、抽出物の上清を別のチューブに移してpHを中和して、カラムの損傷を防ぐ必要が依然としてあった。
【0058】
最後に、血漿試料をメタノールで抽出し、血漿タンパク質をチューブの底まで遠心分離し、上清のアリコートをLC-MS/MSシステムに注入した。注入された試料を分析カラムの前に設置されたTユニオン内で水と広範囲に混合することにより、シャープで対称的なピークが得られた。この半自動化されたワークフローにより、単一のチューブ又は96ウェルプレート形式で血漿試料を抽出及び分析することができ、大量の試料の分析が容易になる。
【0059】
方法の検証
方法の線形性、精度、及び正確性
4つのQCレベル(LLOQ、QCLOW、QCMID、及びQCHIGH)を含む3つの検証の実行を行い、実行ごとに7つの複製物と2つの検量線を用いた。合計で、54の検量と84のQC試料が検体ごとに分析された。
【0060】
この方法は、サイロシンでは0.25~100ng/ml、4-HIAAでは2.5~1000ng/mlの範囲に渡り線形性であり、相関係数は0.998超であった。全ての4-HIAAキャリブレーターは、包含基準に合格したが、サイロシンキャリブレーターは1つだけが15%を超える精度バイアスを示した。両方の検体に対して選択された検量範囲は、臨床試料の定量化に適していた。これには、予想される最大血漿濃度の約5倍を超える濃度が含まれていたが、初期の薬物吸収の間及び後期の排出段階で観察された低濃度の試料も含まれていた(Brown et al.,2017、Hasler et al.,1997、Lindenblatt et al.,1998)。
【0061】
サイロシンのアッセイ内正確性は、9.1%以下、4-HIAAでは6.5%以下であり、アッセイ間正確性は8.7%以下であった(表2)。更に、サイロシンで観察された平均アッセイ内精度は、96.3~109%、4-HIAAでは97.5~109%であったが、アッセイ間精度バイアスは、9.0%以下であった。85~115%の精度(LLOQ:80~120%)以外のサイロシンQC試料はなく、4-HIAAの場合、84のQC試料のうち2つだけが許容基準に合格しなかった。
【0062】
【表2】
【0063】
全体として、分析方法は、ヒト血漿試料中の両方の検体を分析する信頼性があった。
【0064】
選択性及び感度
サイロシン及び4-HIAAの選択性及び感度は、血漿の7つの異なるバッチのLLOQシグナル強度を、ブランク及び二重ブランク試料のそれぞれのベースラインシグナルと比較することによって評価された。図4A~4Dに示されるように、内因性血漿成分は、サイロシン及び4-HIAAの検出を干渉しなかった。図4A~4Dでは、血漿の異なるバッチを使用して、7つの二重ブランク、ブランク及び定量下限(LLOQ)試料(サイロシン:0.25ng/mL、4-HIAA:2.5ng/mL)を調製した。LLOQクロマトグラム(黒色の線)に、二重ブランク(左)とブランク(右)のクロマトグラム(灰色の線)を重ねた。図4A及び4Bは、サイロシンに対応し、図4C及び4Dは、4-HIAAに関する。二重ブランク試料で決定されたバックグラウンドノイズは、観察されたLLOQピーク面積のそれぞれ4.1%以下及び5.5%以下しか占めていなかったため、サイロシン又は4-HIAAの検出を干渉しなかった。加えて、内部標準、サイロシン-d10及びトリプトファン-dは、ブランク試料で記録されたベースラインノイズに関する分析の選択性に影響を与えなかった。より正確には、サイロシン及び4-HIAAのバックグラウンドノイズは、LLOQピーク面積のそれぞれ4.1%以下及び5.5%以下を占めていた(図5A及び5B)。
【0065】
7つの異なるドナーのブランク血漿試料が、LLOQレベルでスパイクされて、使用された血漿源に関係なく検体を確実に定量化できるかどうかを評価した。102%(95.3~110%)と84.7%(82.6~87.1%)の平均精度は、サイロシン及び4-HIAAについてそれぞれ決定された。LLOQ試料は、いずれも80~120%の精度以外ではなく、正確性は、血漿の7つのバッチ全てで4.9%以下であった。
【0066】
これらの発見は、この方法がヒト血漿中のサイロシン及び4-HIAAの定量化に選択的であること、並びに血漿マトリックスが分析の感度に影響を与えないことを示している。
【0067】
回収率及びマトリックス効果
サイロシン及び4-HIAAの回収率とマトリックス効果を、4つのQC濃度レベルを含む7つの異なる血漿バッチの除タンパク後に調べた。
【0068】
【表3】
【0069】
タンパク質沈殿抽出は、ほぼ完了し、平均回収率はサイロシンで96.5%、4-HIAAで94.7%であった。重要なことに、様々な血漿バッチ間のバイアスは、10.1%未満であり、全てのQCレベルに渡り一貫していた(CV%:4.1%以下)。
【0070】
血漿抽出物中のサイロシンシグナルは、純水よりも平均で14%大きかった。サイロシンが水とメタノールの混合物(1:4v/v)に溶解された場合、シグナル強度は、更に小さくなったが、この理由は、主に、ピークが、一般的により広く、明らかなピークが前面に出ている(fronting)ためである。従って、血漿マトリックスは、質量分析計でのイオン化効率を高めるよりも、分析カラムでのサイロシンの結合を改善した。対照的に、4-HIAAシグナルは、血漿マトリックスによって約30%抑制された。興味深いことに、マトリックスを含まない試料のメタノール含有量は、4-HIAAのピーク形状に影響しなかった。7つの血漿バッチは、非常に類似したマトリックス効果(CV%:約7.8%以下)をもたらし、これは、使用した検体濃度(CV%:約13%以下)とは無関係であった。
【0071】
要約すると、使用された抽出方法は、ほぼ全てのサイロシン及び4-HIAAを血漿から回収し、一貫したごくわずかなマトリックス効果をもたらした。
【0072】
安定性
サイロシン及び4-HIAAの安定性は、3回の凍結解凍サイクル後、並びに室温で8時間及び-20℃で1か月保存した後に調べられた(図6)。
【0073】
凍結解凍を3回繰り返しても、検体の安定性は低下せず、この理由は、QC試料の精度は、サイロシンでは105~108%(CV%:8.2以下)、4-HIAAでは100~109%(CV%:5.4%以下)であったためである。更に、室温で8時間、又は-20℃で1か月間保存された血漿試料は、新鮮な試料と比較して、同様な量のサイロシン及び4-HIAAを含んだ(精度:94.8~110%、CV%:7.1%以下)。
【0074】
これらの結果は、サイロシン及び4-HIAAが、実験室で遭遇する様々な条件下で安定していることを示しており、サイロシンの短期の及び凍結/解凍の安定性を評価した以前の研究を裏付けている(Martin et al.,2012)。
【0075】
臨床の適用性
この方法の適用性は、25mgのサイロシビンの経口投与量で治療された3人の健康なボランティアにおけるサイロシン及び4-HIAAのPKを分析することによって評価された(図7A~7B及び表4)。25mgのサイロシビンの経口投与量が、3人の健康なボランティアに投与された。サイロシン及び4-HIAAの血漿濃度は、治療前と治療後7時間まで定量化された。全ての試料は、大腸菌(Escherichia coli)グルクロニダーゼによる脱グルクロニド化後に再分析された。図7Aは、サイロシンの濃度-時間プロファイルを示し、図7Bは、4-HIAAのプロファイルを示す。白い記号は、非抱合サイロシン及び4-HIAAに対応する。抱合代謝物と非抱合代謝物の総量は、黒色で示されている。灰色の記号は、抱合代謝物の総量に対応する、グルクロニダーゼの存在下と非存在下でインキュベートされた試料間の違いを示している。サイロシンの大部分は、グルクロン酸抱合を受けたが、4-HIAAは、抱合されなかった。平均値と平均値の標準誤差が示されている。
【0076】
【表4】
【0077】
サイロシン及び4-HIAAの最大血漿レベルは、それぞれ平均19.2ng/ml(SD:4.0ng/ml)と137.3ng/ml(SD:22.0ng/ml)であった。サイロシン及び4-HIAAは、治療後約120~140分後にTmaxに達した。サイロシン及び4-HIAAのt1/2は、それぞれ127分(SD:18分)と139分(SD:63分)と見積もられた。全体として、AUCLASTによって示される4-HIAAの量は、サイロシンの量よりも約5倍を超えて多く、これは(Hasler et al.,1997)による観察と一致している。
【0078】
4-HIAAとは対照的に、サイロシンは、広範なO-グルクロン酸抱合を受けた。サイロシン-グルクロニドは、およそ220分後に平均78.3ng/ml(SD:7.9ng/ml)のCmaxに達した。サイロシン-グルクロニドの計算されたAUCLASTは、20631ng・分・ml-1(SD:552ng・分・ml-1)であり、従ってサイロシンのAUCLASTと比較して5~6倍高かった。この結果は、サイロシンの大部分がグルクロン酸抱合によって抱合されることを報告した以前の研究と一致している(Grieshaber et al.,2001,Kamata et al.,2006,Sticht&Kaferstein,2000)。
【0079】
重要なことに、QC試料の精度は、93.6~113%であり、正確性は、8.1%以下であり、分析の実行が許容基準に合格したことを示している。更に、サイロシン及び4-HIAAは、観測された濃度がサイロシンで0.36~94.1ng/ml、4-HIAAで7.2~156.7ng/mlであったため、サンプリング期間内に常に定量化できた。従って、本明細書に提示される方法は、臨床試料の定量化に適している。
【0080】
結論
ヒト血漿中のサイロシビンを測定する他の生物分析法と比較して、現行の本発明の方法は、少量の試料しか必要とせず、効率的な分析を容易にする簡易な抽出手順を特徴とした。抽出プロトコルにより、検体はほぼ完全に回収された。様々な血漿バッチ間で一貫したマトリックス効果が観察され、更にマトリックスは、サイロシン又は4-HIAAの分析を干渉しなかった。両方の検体の定量化は、選択された検量範囲内で精度がよく正確であり、サイロシビンを投与したヒトで観察されたレベルと適合していた。全体として、現行の生物分析法は、治療薬としてのサイロシビンの開発を更に進めるための重要なツールである。
【0081】
本出願全体を通して、米国特許を含む様々な刊行物が、著者及び年号によって参照され、特許は番号によって参照される。刊行物の完全な引用を以下に列挙する。これらの刊行物及び特許の開示内容は、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
【0082】
本発明を例示的に説明してきたが、使用された用語は、限定ではなく説明の言葉の性質を意図していることを理解されたい。
【0083】
明らかに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正及び変形が可能である。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、具体的に説明した以外の方法で実施できることを理解されたい。
【0084】
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図1A
図1B
図1C
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図1E
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図6
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【国際調査報告】