(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】農業構造物のためのフィルム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20230913BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A01G9/14 S
A01G13/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023505711
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 GR2021000050
(87)【国際公開番号】W WO2022023782
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513262964
【氏名又は名称】プラスティカ・クリティス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Plastika Kritis S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】フリサリ,メラニ エー.
(72)【発明者】
【氏名】アンドロウラキ,クリスタレニア
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
【Fターム(参考)】
2B024DA00
2B024DB01
2B024DB07
2B029EB03
2B029EC04
2B029EC09
2B029EC17
2B029EC19
2B029EC20
(57)【要約】
本発明は:(a)1つ以上の層を有する高分子フィルムであって、1つ以上の層のうち少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む、高分子フィルムと、(b)高分子フィルムの少なくとも1つの外面上のコーティングであって、フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含むコーティングと、を含む、農業構造物を覆うためのフィルムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業構造物を覆うためのフィルムであって、
(a)1つ以上の層を有する高分子フィルムであり、前記層のうち少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む、高分子フィルムと、
(b)前記高分子フィルムの少なくとも1つの外面上のコーティングであり、前記フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m
2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含むコーティングと、
を含むフィルム。
【請求項2】
200ml/m
2/bar/day未満、好ましくは100ml/m
2/bar/day未満の酸素透過性を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
ASTM E 96に従って測定された場合に、38°C及び90%の相対湿度において100g/m
2/day未満、好ましくは50g/m
2/day未満、最も好ましくは10g/m
2/day未満の水蒸気透過性を有する、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリマーを含む前記コーティングの少なくとも1つの層は、0.1μmから5μm、好ましくは0.1μmから2.0μm、最も好ましくは0.2μmから1.0μmの厚さを有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記コーティングは、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、AlCl
3、MgO、ZnO、CuO、Fe
2O
3、粘土、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の無機粒子、及び/又は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミン、ポリシロキサン、界面活性剤、バインダー、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の有機分子を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記コーティングにおける前記ポリマーは、塩化ビニリデンホモポリマー若しくは塩化ビニリデンコポリマー、又はビニルアルコールホモポリマー若しくはビニルアルコールコポリマーである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、該コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、及び/又は
前記塩化ビニリデンコポリマーは、該コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満の塩化ビニリデンモノマーを含む、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール及び酢酸ビニルのコポリマーである、請求項6又は7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量が、該コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%であり、及び/又は
前記ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量が、該コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満である、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数が、ビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%である、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
前記ビニルアルコールホモポリマー若しくはビニルアルコールコポリマーにおける1つ以上のビニルアルコールモノマーが、カルボキシル化、エーテル化、アセタール化、カルバメート化、アミノ化、硫酸化、又はエステル化によって修飾されている、及び/又は、1つ以上のビニルアルコールモノマーが側鎖に結合している、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記ビニルアルコールホモポリマー若しくはビニルアルコールコポリマーは架橋されており、好ましくは、前記ホモポリマー若しくはコポリマーは、熱、UV、及び/又は架橋剤によって架橋されている、請求項6乃至11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
前記架橋剤は、アルコール、直鎖ポリオール、分枝鎖ポリオール、アルデヒド、アミン、ポリアミン、ヒドラジド、ポリヒドラジド、金属塩、酸、及び有機酸を含む群から選択されており、好ましくは、前記架橋剤は、エチレングリコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、ポリオールカルボニル付加物、ホウ酸ナトリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から選択されている、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び式(I)の1つ以上のモノマーのコポリマーであり、及び/又は、前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び式(I)の1つ以上のモノマーのコポリマーであり、
【化8】
式中、各R
1は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、C
1-C
9ヘテロアリール、ニトリル、-OH、ハロ、-C(O)R
4、-C(O)OR
4、-OC(O)R
4、-C(O)NHR
4、及び-NHC(O)R
4を含む群から独立して選択されており、
各R
2は、H、ハロ、C
1-C
3アルキル、-C(O)OR
5、及び-CH
2C(O)OR
5を含む群から独立して選択されており、
各R
3は、H、-C(O)OR
5、及びC
1-C
3アルキルを含む群から独立して選択されており、
各R
4は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールを含む群から独立して選択されており、
各R
5は、C
1-C
10アルキルから独立して選択されており、
各C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールは、-OH、オキソ、-SO
2H、-NO
2、及びハロから独立して選択された1つ以上の置換基で任意的に独立して置換されている、請求項6乃至13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、及び/又は、前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、前記1つ以上のさらなるモノマーは、アルケン、アクリル酸、ビニルハライド、ビニルアミド、スチレン、ビニルアルコール、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸又はマレイン酸エステル、フマル酸又はフマル酸エステル、イタコン酸又はイタコン酸エステル、クロトン酸又はクロトン酸エステルを含む群から独立して選択されている、請求項6乃至14のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、前記1つ以上のさらなるモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、ビニルアルコール、酢酸ビニル、及びイタコン酸を含む群から独立して選択されている、請求項6乃至15のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項17】
前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、前記1つ以上のさらなるモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、メチルビニルケトン、及びイタコン酸を含む群から独立して選択されている、請求項6乃至16のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項18】
前記コーティングは、塩化ビニリデンホモポリマー又は塩化ビニリデンコポリマーを含む、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記コーティングは、2つ以上の層を含み、少なくとも1つの層は前記ポリマーを含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
前記コーティングは、前記ポリマーを含む単層を含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
前記高分子フィルムの両方の外面にコーティングを含み、各コーティングは、独立して、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のものである、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項22】
前記高分子フィルムの前記1つ以上の層は、それぞれ独立して、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度直鎖状ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン低密度直鎖状ポリエチレン(MLLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上のポリマーを含む、及び/又は
前記高分子フィルムの層のうち少なくとも1つの層は、IR吸収剤、防曇剤、防滴剤、防塵材料、防藻材料、接着補助材料、及び/又は顔料をさらに含む、請求項1乃至21のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項23】
前記1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、UV吸収剤、及びニッケル有機錯体を含む群から独立して選択されている、及び/又は
前記1つ以上のUV安定剤は、前記層の総重量に基づき、0.1wt%から20wt%、好ましくは0.1wt%から10wt%、最も好ましくは0.1wt%から5wt%の量で存在している、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項24】
前記高分子フィルムは、1から100の層、好ましくは3から11の層を有する、及び/又は
前記高分子フィルムは、押出又は共押出、好ましくはブローフィルム又はキャストフィルムの押出又は共押出によって得ることができる、及び/又は
前記フィルムは、25μmから500μmの全厚、及び1mから60mの全幅を有する、請求項1乃至23のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項25】
高分子フィルムの少なくとも1つの外面上でのコーティングの使用であって、前記コーティングは、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含み、前記高分子フィルムは1つ以上の層を含み、少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含み、農薬の存在下での光劣化に対する前記高分子フィルムの感受性を減らすため、及び/又は、ガス及び/又は水蒸気に対する前記高分子フィルムの透過性を減らすための使用。
【請求項26】
前記コーティングは、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m
2/bar/day未満まで、前記高分子フィルムの酸素透過性を減らす、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載のフィルムで少なくとも一部が覆われていることを特徴とする農業構造物。
【請求項28】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載のフィルムで農業構造物の少なくとも一部を覆うステップを含む、農業構造物を覆う方法。
【請求項29】
農業構造物を覆うためのフィルムを生成する方法であって、
(i)1つ以上の層を含む高分子フィルムを提供するステップであり、前記層のうち少なくとも1つの層が、1つ以上のUV安定剤を含む、ステップと、
(ii)前記高分子フィルムの少なくとも1つの外面上にコーティングを堆積させるステップであり、前記コーティングは、前記フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m
2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、ステップと、
を含む、フィルムを生成する方法。
【請求項30】
前記コーティングは、浸漬、噴霧、フレキソ印刷、プラズマ、レーザー、グラビア印刷、リバースロール、ロールツーロール、ナイフオーバーオール、ロッドコーター、ジェット印刷、又はスロットダイを介して堆積される、及び/又は
前記高分子フィルムの外面は、前記コーティングの堆積に先立ち、コロナ及び/又はプラズマで処理される、及び/又は
当該方法は、ブロー又はキャストの押出又は共押出を介して前記高分子フィルムを生成するステップをさらに含む、請求項29に記載のフィルムを生成する方法。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の方法によって得ることができる、請求項1乃至24のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業構造物を覆うための高分子フィルム及びそのようなフィルムを作製する方法に関する。本発明は、ガス及び水蒸気に対するバリアとしての、並びに、農薬の存在下での光劣化に対するフィルムの感受性を減らすための、高分子フィルムの少なくとも1つの外面上でのコーティングの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
農業構造物は、種々の目的のために高分子材料を含む可撓性のフィルムで覆われることが多い。例えば、温室は、作物及び植物の栽培のための好ましい環境を提供するという目的に合わせられた高分子フィルムで覆うことができる。高分子フィルムは、その下で育てられている作物を悪天候の状態から保護し、日射を選択的にフィルタリングすることによって温室効果を生み出す。
【0003】
ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及びエチレンアクリル酸ブチル(EBA)のコポリマー等、フィルムの高分子材料は、紫外線放射を吸収し、フィルムの光劣化を結果としてもたらし、それによって、フィルムの耐用年数を短くする。このために、紫外線(UV)安定剤が、通常、高分子フィルム材料に添加される。UV安定剤は、紫外線放射を吸収し、それによって、フィルムのポリマーによるその吸収を防ぐこと(UV吸収剤)によって、又は、光劣化につながる化学反応を妨げること(フリーラジカルスカベンジャー)によって機能する。
【0004】
紫外線吸収剤には、ポリマーを十分に保護するのを可能にしない2つの欠点があり:(a)紫外線吸収剤は、通常、小分子であり、徐々にフィルムの表面に移動し、周囲に失われる;(b)紫外線吸収剤は、物理法則(ランベルト・ベールの法則)に従って、紫外線フィルタとして作用するために一定の深さを必要とするため、フィルムの表面を十分に保護することができない。このために、過去20年にわたって、いわゆるHALS(ヒンダードアミン光安定剤)が、温室フィルムの主な安定剤として普及している。HALSは、立体障害アミンの化合物であり、フリーラジカルスカベンジャーとして作用し、酸素、紫外線放射、及び熱の影響を受けてポリマーにおいて形成されたフリーラジカルと反応する。これによって化学反応が止まり、さもなければ、ポリマー分子の鎖切断又は架橋、及びフィルムの物理的及び光学的特性の劣化につながる。
【0005】
HALSは、多くの用途で非常に効果的な安定剤であることが証明されている。しかし、温室フィルムの場合、その効果の低下につながる深刻な制約があり:温室の内部では、土壌消毒及び植物保護のために農薬が広く使用されている。これらの農薬は、熱及び紫外線放射の影響を受けて分解し、さらに、ガス状で又は水蒸気に溶解してフィルムに侵入し、HALSと反応して不活性化する活性化学化合物を生成する。特に、硫黄だけでなく、硫黄及び塩素含有化合物は、HALSを含有する温室フィルムの耐用年数の非常に大幅な短縮、例えば地中海においては3~5年から1~2年等の短縮につながる可能性がある。
【0006】
近年では、温室フィルム製造業者及び職能団体(例えば、CEPLA、Spain)は、製造業者の耐用年数保証を有効にするために、時期尚早に劣化するフィルムにおける硫黄及び塩素の含有量に制限を設けている。それにもかかわらず、様々な作物の病気を防ぐために温室で駆除剤を使用することは不可避であり、さらには増加しているため、高分子フィルムの品質を改善するための今日の主な問題は、駆除剤による早期老朽化を回避することである。
【0007】
この問題に対して、様々な解決策が提案されている。1つの提案は、硫黄に対して完全に耐性のあるニッケル錯体を安定剤として使用することである。しかし、これは塩素に対して感受性があり、フィルムに黄色を与えるが、これは、光の透過を減らすため望ましくない。提案されている別の解決策は、駆除剤の活性残基と反応して不活性化する補助安定剤を使用することであるが、これは不十分であると証明されている。さらなる解決策は、NOR HALS等の駆除剤に耐性のあるHALSを使用することである。残念ながら、これらの特定のHALSは、一般的なHALSよりも回復力があるけれども、十分に問題を解決しておらず、UV安定剤に対する農薬の影響による温室フィルムの早期老朽化が依然として観察されている。
【0008】
特許文献1及び特許文献2は、ポリアミドの共押出層を含む多層フィルムを開示している。ポリアミドの層は、ガス状でのフィルムへの農薬の侵入を防ぐバリア層として作用することができる。残念ながら、このポリアミドの共押出層は弾性が低く、引裂伝播強度が乏しいため、フィルムの機械的強度が著しく低下する。また、ポリアミドの層は光劣化に非常に感受性があるため、フィルムの寿命が短くなる。ポリアミド層はまた、化学残留物を含有することが多くある水分を(その質量の9%まで)吸収し、これは、次に、フィルムの質量全体に拡散され、安定剤及び/又はポリマー自体を破壊する。ポリアミドの層が水分を吸収すると、ガスに対するその透過性も増加して、もはやフィルムへの農薬の浸透を防ぐことができないレベルに達する。
【0009】
サイレージフィルムの場合、嫌気性発酵のプロセスを改善するためにフィルムが酸素に対する低い透過性を有し、従って、カビによる損失が少なく、より良いサイレージの品質を達成することが有益である。
【0010】
特許文献3に記載されているもの等、フィルムの中間にポリアミド(PA)又はエチレンビニルアルコール(EVOH)の共押出層を使用することによって酸素の透過性を低下させる多層のサイレージフィルムが提案されている。これらのフィルムの欠点は、EVOH及び/又はPAの共押出層を有していない高分子フィルムと比較して、上記の機械的性質が劣ることである。特に影響を受けるのは、この用途で重要な耐衝撃性(ダーツテスト)である。加えて、EVOH又はPAの共押出層の使用は、これらのフィルムがリサイクルされるのをより困難にする。さらに、そのようなフィルムの生成には、少なくとも5層のフィルムを形成することができる製造機を使用する必要があり、生成プロセスは非常に要求が高く、スクラップレベルが高い。
【0011】
上記を考慮して、優れた機械的特性及びリサイクル性を維持しながら、農薬の存在下で光劣化に対する感受性が低く且つ酸素に対する良好なバリア性を有する、農業構造物を覆うための改善されたフィルムに対するアンメットニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2009/060480
【特許文献2】EP1857272
【特許文献3】US6610377
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によると、農業構造物を覆うためのフィルムが提供され、当該フィルムは:
(a)1つ以上の層を有する高分子フィルムであり、1つ以上の層のうち少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む、高分子フィルム;並びに
(b)高分子フィルムの少なくとも1つの外面上のコーティングであり、フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含むコーティング;
を含む。
【0014】
高分子フィルムの表面上のポリマーコーティングは、酸素に対する低い透過性をフィルムに提供し、従って、外部のガスバリアとして作用する。その結果、コーティングは、ガス状の農薬又はその誘導体に対するバリアとしても作用し、それによって、フィルムの層におけるUV安定剤の不活性化を防ぐ。従って、本発明のフィルムは、フィルムの高分子材料が光劣化しにくいため、農薬の存在下での寿命を改善している。
【0015】
本発明のフィルムの低い酸素透過性は、嫌気性発酵を促進し、それによって、カビによる損失が少なく、より良いサイレージ品質を達成するため、サイレージフィルムに対して特に有利である。
【0016】
本明細書において使用される場合、「コーティング」という用語は、高分子フィルムの外面上の1つ以上の層を指し、各層は、溶液を堆積させることによって形成される。ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層は、ポリマーを含む溶液を堆積させることによって形成される。従って、コーティングは、フィルムの外部表面を形成し、高分子フィルム内の層ではない。本発明によるコーティングは、共押出によって生成されるフィルムの層とは構造的に異なる。コーティングは溶液から形成されるため、ポリマーは、分散したポリマー鎖の形をしており、これが堆積してコーティングを形成する。対照的に、共押出層は、共に溶融したプラスチックの連続的な層である。従って、本発明によるコーティングは、適切な技術によってフィルムの共押出層と区別することができる。例えば、フィルムにおける共押出層の存在は、赤外(IR)分光法を使用して検出することができる。走査型電子顕微鏡検査(SEM)を使用して、フィルムの表面を検査し、本発明によるコーティングの存在を特定することができる。EDS(エネルギー分散型X線分光法)を使用して、コーティングの元素組成を決定し、従って、コーティングにおいて存在する材料を特定することができる。
【0017】
驚くべきことに、バリアコーティングを使用すると、共押出バリア層を含むフィルムと比較して、機械的特性が改善されることがわかっている。共押出バリア層(例えば、EVOH又はポリアミドから作られたもの等)は剛性があり、その存在は、フィルムの弾性及び衝撃強度を低下させる。本発明のバリアコーティングは、これらの欠点に悩まされることはない。
【0018】
要約すると、高分子フィルムの表面にバリアコーティングを使用することによって、優れた機械的特性を維持しながら、低い酸素透過性及び農薬に対する低下した透過性がフィルムに提供される。さらに、本発明のフィルムは、優れたリサイクル性を維持する。
【0019】
また、本発明者らは、コーティングが高分子フィルムの表面の親水性を高めることができるということも見出した。これは、温室カバーに非常に望ましい防滴特性をフィルムに提供する(すなわち、フィルムはその表面での液滴の生成を抑制する)。
【0020】
本発明の別の態様によると、農薬の存在下での光劣化に対する高分子フィルムの感受性を減らすための、高分子フィルムの少なくとも1つの外面上でのコーティングの使用が提供され、コーティングは、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含み、高分子フィルムは1つ以上の層を含み、少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む。
【0021】
本発明の別の態様によると、ガス及び/又は水蒸気に対する高分子フィルムの透過性を減らすための、高分子フィルムの少なくとも1つの外面上でのコーティングの使用が提供され、コーティングは、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含み、高分子フィルムは1つ以上の層を含み、少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む。
【0022】
本発明の別の態様によると、農業構造物が提供され、当該農業構造物は、その少なくとも一部が本発明のフィルムで覆われていることを特徴とする。
【0023】
本発明の別の態様によると、農業構造物を覆う方法が提供され、当該方法は、本発明によるフィルムで農業構造物の少なくとも一部を覆うステップを含む。
【0024】
本発明の別の態様によると、農業構造物を覆うためのフィルムを生成する方法が提供され、当該方法は:(i)1つ以上の層を含む高分子フィルムを提供するステップであって、1つ以上の層のうち少なくとも1つの層が、1つ以上のUV安定剤を含む、ステップ;並びに(ii)高分子フィルムの少なくとも1つの外面上にコーティングを堆積させるステップであって、コーティングは、フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、ステップ;を含む。
【0025】
本発明の別の態様によると、本発明によるフィルムを生成する方法によって得ることができる本発明によるフィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
高分子フィルム
本発明のフィルムは、1つ以上の層を有する高分子フィルムを含む。
【0027】
フィルムの層は、当業者に知られている任意の適した高分子材料から作ることができる。高分子フィルムの1つ以上の層は、それぞれ独立して、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、及びポリウレタンを含む群から独立して選択された1つ以上のポリマーを含んでもよい。例えば、高分子フィルムの1つ以上の層は、それぞれ独立して、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度直鎖状ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン低密度直鎖状ポリエチレン(MLLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される1つ以上のポリマーを含んでもよい。
【0028】
高分子フィルムの少なくとも1つの層は1つ以上のUV安定剤を含んで、UV放射からの保護をフィルムに提供し、すなわち、フィルムにおける高分子材料の光劣化を防ぎ、それによって、フィルムの耐用年数を長くする。UV安定剤は、望ましいレベルのUV保護を提供するために、高分子フィルムの2つ以上の層又は高分子フィルムの全ての層に存在させてもよい。
【0029】
本明細書において使用される場合、「UV安定剤」は、紫外線放射を吸収し、それによって、高分子フィルムのポリマーによるその吸収を防ぐ「UV吸収剤」、及びポリマーの光劣化につながる化学反応を妨げるヒンダードアミン光安定剤の両方を含む。
【0030】
任意の適したUV安定剤を高分子フィルムに使用することができる。1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、UV吸収剤、及びニッケル有機錯体(Niクエンチャー)を含む群から独立して選択されてもよい。
【0031】
本発明の好ましい態様において、高分子フィルムの層の少なくとも1つは、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含む。
【0032】
本発明における使用に適したHALSの例は:1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N2,N2’’-1,2-エタンジイルビス[N2-[3-[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]プロピル]-N’、N’’-ジブチル-N’、N’’-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-ブタン二酸、1,4-ジメチルエステル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールを有するポリマー;ポリ(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール-alt-1,4-ブタン二酸);及び、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1、6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]]);である。
【0033】
1つ以上のUV安定剤は、層の総重量に基づき、例えば0.1wt%から20wt%、好ましくは0.1wt%から10wt%、最も好ましくは0.1wt%から5wt%等、任意の適した量で、フィルムの層において存在することができる。
【0034】
フィルムの層は、それぞれ独立して、1つ以上のさらなる成分を含んでもよい。例えば、高分子フィルムの1つ以上の層は、それぞれ独立して、IR吸収剤、防曇剤、防滴剤、防塵材料、防藻材料、接着材料、及び/又は顔料を含んでもよい。
【0035】
本明細書において使用される場合「IR吸収剤」という用語は、赤外放射(IR)を吸収する物質を指す。
【0036】
本明細書において使用される場合、「防滴剤」は、水滴の凝結を防ぐ物質を指し、「防曇剤」は、フィルムの表面が曇るのを防ぐ物質を指す。
【0037】
本明細書において使用される場合、「防塵材料」は、フィルムの表面から埃を退ける物質を指す。
【0038】
本明細書において使用される場合、「防藻材料」は、フィルム上での藻類の成長を抑制する物質を指す。
【0039】
本明細書において使用される場合、「接着材料」は、フィルム上でのコーティングの結合を高める物質を指す。
【0040】
高分子フィルムの層において使用することができる適した顔料の例としては、TiO2及びカーボンブラックが挙げられる。サイレージフィルムは、典型的に、例えば片面が黒でもう片面が白等、各面が異なる色である。光を反射して過熱を回避するために、片面を薄い色(白等)にすることが有利であり得る。
【0041】
温室フィルムが高い視感透過率を有して、作物及び植物の栽培のために温室内の最適な光条件を提供することが有益である。例えば、本発明のフィルムは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%の視感透過率を有してもよい。
【0042】
さらに、低いヘイズ特徴を温室フィルムが有することが好ましい場合があるけれども、世界の特定の地域ではより高いレベルのヘイズが望ましいことがあるため、これは、地理的位置に依存する。特定の用途に応じて、本発明のフィルムは、10%から90%のヘイズを有してもよい。
【0043】
ヘイズ及び視感透過率は、透明プラスチックのヘイズ及び視感透過率に対するASTM-D1003-92標準テスト方法に従って測定することができる。このテスト方法は、本質的に透明なプラスチック等の材料の平面部の特定の光透過性及び広角光散乱特性の評価を包含している。視感透過率及びヘイズの測定のための手順が提供される。ヘイズ値が30%を超える材料は拡散性と見なされる。このテスト方法において、「ヘイズ」は、試料内部又はその表面からの光の散乱によって引き起こされる、さもなければ透明な試料の曇った又は濁った態様又は外観として定義される。これは、試料を通過する際に、前方散乱を通る入射ビームから平均で0.044rad(2.5°)以上逸脱した全透過光の割合として測定される。視感透過率は、物体によって透過される光束とそれに入射する光束との比である。
【0044】
フィルムのヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定されてもよい。視感透過率は、積分球の入口から離れた場所に透明な試料を置くことによって得ることができる。
【0045】
高分子フィルムは、1から100の層、好ましくは3から11の層等、任意の適した数の層を有し得る。農業構造物を覆うためのフィルムは、25μmから500μmの全厚、及び、1mから50m又は1から60mの全幅等、任意の適した全厚及び全幅を有し得る。
【0046】
高分子フィルムは、当業者に知られている任意の適したプロセスによって製造することができる。好ましくは、高分子フィルムは、押出又は共押出、より好ましくはブローフィルム又はキャストフィルムの押出又は共押出によって得ることができる。
【0047】
コーティング
本発明のフィルムには、高分子フィルムの少なくとも1つの外面上又は側面にコーティングが提供される。このコーティングは、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む。
【0048】
コーティングは、高分子フィルム上の外部バリアとして作用し、酸素等のガス及び水蒸気のフィルムを介した透過を抑制する。コーティングは、23°C及び0%の相対湿度においてEN ISO 15105-2に従って測定された場合に、500ml/m2/bar/day未満、好ましくは200ml/m2/bar/day未満、より好ましくは100ml/m2/bar/day未満の酸素透過性をフィルムに提供する。
【0049】
コーティングは、主に、フィルムの低い酸素透過性に対して責任がある。好ましくは、コーティングのない高分子フィルムは、23°C及び0%の相対湿度においてEN ISO 15105-2に従って測定された場合に、500ml/m2/bar/dayを超える、より好ましくは1000ml/m2/bar/dayを超える酸素透過性を有する。
【0050】
コーティングは、ガスバリアとして、従ってガス状の農薬に対するバリアとして作用し、それらが高分子フィルムの層に浸透する、及び、その中のUV安定剤を不活性化するのを防ぐ。UV安定剤の不活性化を防ぐことによって、フィルムの高分子材料は光劣化から保護され、フィルムの耐用年数を延ばす。
【0051】
当業者によって理解されるように、「農薬」という用語は、駆除剤、殺虫剤、燻蒸剤、及び肥料等、農業において使用される化学物質を指す。本明細書において使用される場合、「農薬」には、硫黄、並びに、硫黄及び塩素を含有する化合物等の(例えば、熱及びUV放射の影響を受けた)農薬の分解によって生成される副産物も含まれる。
【0052】
本発明のフィルムがサイレージを覆うために使用される場合、低い酸素透過性が、サイレージの嫌気性発酵を促進する。これによって、カビによる損失が少なく、より良いサイレージの品質が結果として生じる。
【0053】
ポリマーを含む外部バリアコーティングを利用することによって、例えば共押出バリア層を含む従来技術のフィルムと比較して、フィルムの機械的特性が損なわれることはない。共押出バリア層(例えば、EVOH又はポリアミドで作られたもの等)は剛性であり、フィルムの機械的特性に悪影響を及ぼす。従来技術のフィルムにおいて等、PA又はEVOH等のバリア材料が共押出層としてフィルムの質量において組み込まれている場合、共押出バリア材料の可撓性がフィルムの他の層(例えばポリエチレン等)よりも低いため、フィルムの機械的特性が損なわれる。そのようなものとして、本発明のフィルムは、機械的特性、特に耐衝撃性を改善しており、これは、サイレージフィルムに対して特に有益である。
【0054】
また、コーティングは、優れた耐摩耗性をフィルムに提供することができる。さらに、コーティングは、フィルムの表面の親水性を高めることもできる。これは、防滴特性をフィルムに提供する(すなわち、フィルムの表面上での液滴形成を抑制する)。水滴が光の透過を15~30%減少させ、特定の病気の発生率を増加させるため、これは、植物の品質及び成長に悪影響を及ぼし得るフィルムの内側表面上の水分凝縮を防ぐために、特に温室フィルムに非常に望ましい。
【0055】
また、このコーティングは、水蒸気に溶解した農薬に対するバリアとして作用する、水蒸気に対する低い透過性をフィルムに提供することができる。例えば、フィルムは、標準的なASTM E 96に従って測定された場合に、38°C及び90%の相対湿度において100g/m2/day未満、好ましくは50g/m2/day未満、最も好ましくは10g/m2/day未満の透水性を有してもよい。
【0056】
本明細書において記載されるコーティングは、高分子フィルムの一方又は両方の外面に提供されてもよい。高分子フィルムの各外面上のコーティングは、同じであってもよく又は異なっていてもよい。従って、各コーティングは、本明細書において記載されるように独立して定められてもよい。
【0057】
さらに、少なくとも1つの層がポリマーを含む限り、コーティングは2つ以上の層を含んでもよい。コーティングの各層は、同じであってもよく又は異なっていてもよい。或いは、コーティングは、ポリマーを含む単層のみを含んでもよい。
【0058】
コーティングは、コーティングが提供される高分子フィルムの各外面のうち実質的に全てを覆う。「実質的に全て」とは、外面の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%がコーティングで覆われていることを意味する。
【0059】
任意の適したポリマーをコーティングに使用して、低い酸素透過性をフィルムに提供することができる。本発明の好ましい態様では、コーティングにおけるポリマーは、塩化ビニリデンホモポリマー若しくはコポリマー、又はビニルアルコールホモポリマー若しくはコポリマーである。
【0060】
本明細書において使用される場合、塩化ビニリデンは以下の構造:
【0061】
【0062】
本明細書において使用される場合、「ホモポリマー」という用語は、本質的に単一タイプのモノマー又はモノマー種の重合から形成されるポリマーを指す。従って、「塩化ビニリデンホモポリマー」という用語は、本質的に塩化ビニリデンモノマーのみの重合から形成されるポリマーを指す。そのようなものとして、塩化ビニリデンホモポリマーは、ホモポリマーの総重量に基づき、少なくとも99wt%の塩化ビニリデンモノマーを含む。
【0063】
本明細書において、ポリマーにおける塩化ビニリデンモノマーの量への言及は、モノマー自体ではなく、塩化ビニリデンモノマーの重合に由来する単位に関する。
【0064】
塩化ビニリデンホモポリマーは、以下の繰り返し単位:
【0065】
【化2】
を有し、ここで、「n」はホモポリマーにおける塩化ビニリデンモノマー単位の数である。
【0066】
本明細書において使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上のタイプのモノマーの重合から形成されるポリマーを指す。従って、「塩化ビニリデンコポリマー」という用語は、塩化ビニリデンモノマー及び1つ以上の他のモノマーの重合から形成されるポリマーを指す。
【0067】
塩化ビニリデンコポリマーは、別のモノマーに由来する少なくとも1つの単位を含む限り、任意の適した量の塩化ビニリデンモノマーを含み得る。
【0068】
最適なバリア特性を提供するために、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%の塩化ビニリデンモノマーを含むことが有益であり得る。
【0069】
塩化ビニリデンを1つ以上の他のモノマーと共重合することは、塩化ビニリデンのホモポリマーを使用することと比較して有利な場合がある。例えば、コポリマーは、熱的安定性を改善したかもしれない。従って、本発明の好ましい特徴において、コーティングは塩化ビニリデンコポリマーを含む。好ましくは、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満の塩化ビニリデンモノマーを含む。
【0070】
塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、20wt%から95wt%、好ましくは40wt%から95wt%、より好ましくは50wt%から95wt%、より好ましくは60wt%から95wt%、より好ましくは70wt%から95wt%、最も好ましくは80wt%から95wt%の塩化ビニリデンモノマーを含んでもよい。
【0071】
或いは、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、20wt%から90wt%、好ましくは40wt%から90wt%、より好ましくは50wt%から90wt%、より好ましくは60wt%から90wt%、より好ましくは70wt%から90wt%、最も好ましくは80wt%から90wt%の塩化ビニリデンモノマーを含んでもよい。
【0072】
本発明の1つの好ましい態様において、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%、好ましくは50wt%から95wt%、より好ましくは50wt%から90wt%の塩化ビニリデンモノマーを含む。
【0073】
本明細書において使用される場合、ビニルアルコールは以下の構造:
【0074】
【0075】
本明細書において使用される場合、「ビニルアルコールホモポリマー」という用語は、本質的にビニルアルコールモノマーの重合から形成されるポリマーを指す。そのようなものとして、ビニルアルコールホモポリマーは、ホモポリマーの総重量に基づき、少なくとも99wt%のビニルアルコールモノマーを含む。
【0076】
本明細書において、ポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの量への言及は、モノマー自体ではなく、ビニルアルコールモノマーの重合に由来する単位に関する。当業者によって正しく理解されるように、ポリマーは、実際にはビニルアルコールモノマーを重合することによって生成することはできない。典型的には、ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルモノマーを重合して、ポリ酢酸ビニルを形成し、これが次に加水分解されることによって生成される。或いは、アセトアルデヒド(ビニルアルコールの互変異性体)モノマーを使用することができる。
【0077】
ビニルアルコールホモポリマーは、以下の繰り返し単位:
【0078】
【化4】
を有し、ここで、「n」はホモポリマーにおけるビニルアルコールモノマー単位の数である。
【0079】
「ビニルアルコールコポリマー」という用語は、ビニルアルコールモノマー及び1つ以上の他のモノマーの重合から形成されるポリマーを指す。
【0080】
ビニルアルコールコポリマーは、別のモノマーに由来する少なくとも1つの単位を含む限り、任意の適した量のビニルアルコールモノマーを含み得る。
【0081】
ポリ酢酸ビニルを加水分解してポリビニルアルコールを生成する場合、部分的に加水分解されるだけでよい。従って、ビニルアルコールコポリマーは、酢酸ビニルモノマーを含んでもよい。酢酸ビニルは以下の構造:
【0082】
【0083】
言い換えると、ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであってもよく、任意的に、1つ以上のさらなるモノマーは酢酸ビニルを含む。
【0084】
最適なバリア特性を提供するためには、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量が、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%であることが有益であり得る。
【0085】
さらに、コポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、ビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%であることが好ましい。これによって、コポリマーのバリア特性が最適化され、湿度に対する安定性が高められる。
【0086】
当然ながら、酢酸ビニルはコポリマーにおいて存在しないこともあり、その場合、ビニルアルコールモノマーの数は、ビニルアルコール及び酢酸ビニルモノマーの総数の100%であり、酢酸ビニル及びビニルアルコールモノマーの合計量は、コポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの量に相当する。
【0087】
ビニルアルコール(及び任意的に酢酸ビニル)を1つ以上の他のモノマーと共重合することは、ビニルアルコール及び酢酸ビニルのみを使用することと比較して有利な場合がある。例えば、湿度に対するポリマーの安定性を改善することができる。従って、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量は、好ましくは、コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満である。
【0088】
ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量は、コポリマーの総重量に基づき、20wt%から95wt%、好ましくは40wt%から95wt%、より好ましくは50wt%から95wt%、より好ましくは60wt%から95wt%、より好ましくは70wt%から95wt%、最も好ましくは80wt%から95wt%であってもよい。
【0089】
或いは、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量は、コポリマーの総重量に基づき、20wt%から90wt%、好ましくは40wt%から90wt%、より好ましくは50wt%から90wt%、より好ましくは60wt%から90wt%、より好ましくは70wt%から90wt%、最も好ましくは80wt%から90wt%であってもよい。
【0090】
本発明の1つの好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量は、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%、好ましくは50wt%から95wt%、より好ましくは50wt%から90wt%である。
【0091】
ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーは修飾されてもよい。例えば、1つ以上のビニルアルコールモノマーは、カルボキシル化、エーテル化、アセタール化、カルバメート化、アミノ化、硫酸化、又はエステル化によって修飾されてもよい。その場合、ヒドロキシル基を、カルボキシル、エチレンオキシド、アセチル、アセトアセチル、スルホン酸、アミノ、又はアンモニウム塩の基等、別の官能基によって置換することができる。
【0092】
1つ以上の側鎖を、ホモポリマー又はコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーに結合させることもできる。各側鎖は、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、及びアミロースから独立して選択されてもよい。
【0093】
その耐湿性を改善するために、ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーを架橋することができる。ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーを、熱、UV(紫外線放射)、及び/又は架橋剤によって架橋することができる。
【0094】
任意の適した架橋剤が使用されてもよい。例えば、架橋剤は、アルコール、直鎖ポリオール、分枝鎖ポリオール、アルデヒド、アミン、ポリアミン、ヒドラジド、ポリヒドラジド、金属塩、酸、及び有機酸を含む群から選択されてもよい。好ましくは、架橋剤は、エチレングリコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、ポリオールカルボニル付加物、ホウ酸ナトリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から選択される。
【0095】
本明細書において記載されるコポリマーにおいて、エチレン性不飽和モノマー等、任意の適したモノマーを、塩化ビニリデン、ビニルアルコール、及び/又は酢酸ビニルと共重合することができる。本明細書において使用される場合、「エチレン性不飽和モノマー」は、炭素-炭素二重結合を含むモノマーを指す。
【0096】
本発明の1つの好ましい特徴において、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであってもよく、及び/又は、ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、1つ以上のさらなるモノマー、及び任意的に酢酸ビニルのコポリマーであってもよい。1つ以上のさらなるモノマーは、アルケン、アクリル酸、ビニルハライド、ビニルアミド、スチレン、ビニルアルコール、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸又はマレイン酸エステル、フマル酸又はフマル酸エステル、イタコン酸又はイタコン酸エステル、クロトン酸又はクロトン酸エステルを含む群から独立して選択されてもよい。
【0097】
例えば、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び式(I)の1つ以上のモノマーのコポリマーであってもよい。ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、式(I)の1つ以上のモノマー、及び任意的に酢酸ビニルのコポリマーであってもよく:
【0098】
【化6】
式中、各R
1は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、C
1-C
9ヘテロアリール、ニトリル、-OH、ハロ、-C(O)R
4、-C(O)OR
4、-OC(O)R
4、-C(O)NHR
4、及び-NHC(O)R
4を含む群から独立して選択され;
各R
2は、H、ハロ、C
1-C
3アルキル、-C(O)OR
5、及び-CH
2C(O)OR
5を含む群から独立して選択され;
各R
3は、H、-C(O)OR
5、及びC
1-C
3アルキルを含む群から独立して選択され;
各R
4は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールを含む群から独立して選択され;
各R
5は、C
1-C
10アルキルから独立して選択され;
各C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールは、-OH、オキソ、-SO
2H、-NO
2、及びハロから独立して選択される1つ以上の置換基で任意的に独立して置換される。
【0099】
塩化ビニリデンと共重合することができるモノマーの例として:エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸クロロエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n-ヘプチル、メタクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸クロロエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ビニルナフタレン、スチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸n-プロピル、クロトン酸n-ブチル、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びビニルピリジンが挙げられる。
【0100】
好ましくは、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、ビニルアルコール、酢酸ビニル、及びイタコン酸を含む群から独立して選択される。
【0101】
ビニルアルコール及び任意的に酢酸ビニルと共重合することができるモノマーの例として:エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸クロロエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n-ヘプチル、メタクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸クロロエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、プロピオン酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ビニルナフタレン、スチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸n-プロピル、クロトン酸n-ブチル、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びビニルピリジンが挙げられる。
【0102】
好ましくは、ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、1つ以上のさらなるモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、メチルビニルケトン、及びイタコン酸を含む群から独立して選択される。
【0103】
好ましい実施形態において、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであってもよく、1つ以上のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルアルコール、及び酢酸ビニルから選択される。
【0104】
別の好ましい実施形態において、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、及びアクリル酸ヒドロキシエチルのコポリマーであってもよい。
【0105】
別の好ましい実施形態において、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン、アクリル酸メチル、及び塩化ビニルのコポリマーであってもよい。
【0106】
別の好ましい実施形態において、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び塩化ビニルのコポリマーであってもよい。
【0107】
別の好ましい実施形態において、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及びアクリル酸メチルのコポリマーであってもよい。
【0108】
別の好ましい実施形態において、ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び1つ以上のモノマーのコポリマーであってもよく、1つ以上のモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、塩化ビニル、及び塩化ビニリデンから選択される。
【0109】
高分子フィルムの各外面上のコーティングの全厚は、独立して、0.1μmから20μm、好ましくは0.1μmから10μmであってもよい。
【0110】
ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層は、0.1μmから5μm、好ましくは0.3μmから1.5μmの厚さを有してもよい。或いは、ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層は、0.1μmから5μm、より好ましくは0.2μmから2.0μm、最も好ましくは0.2μmから1.0μmの厚さを有してもよい。
【0111】
コーティングは、低い酸素透過性をフィルムに提供するために、任意の適した量のポリマーを含み得る。ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーが、ポリマーとして使用される場合、ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層は、ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層の総乾燥重量に基づき、少なくとも1wt%、より好ましくは少なくとも3wt%、より好ましくは少なくとも6wt%のポリマーを含んでもよい。塩化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーがポリマーとして使用される場合、ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層は、好ましくは、ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層の総乾燥重量に基づき、少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、最も好ましくは少なくとも70wt%のポリマーを含む。「乾燥重量」とは、溶媒が除去された後のコーティングの重量を意味する。
【0112】
ポリマーの溶液を堆積させることによって、高分子フィルムの表面に非常に薄いコーティングを形成することが可能であり、これによって、高分子フィルムの可撓性及び機械的特性を損なうことが回避される。共押出バリア層は、典型的には、はるかに厚く、これは、フィルムの可撓性及び機械的特性にとって有害になる。さらに、薄いバリアコーティングの重量は、フィルム全体の重量と比較して無視できるほどのものである。従って、存在するコーティング材料の少ない量は、フィルムのリサイクル性に大きな影響を与えることはない。より厚い共押出層(EVOH及びポリアミド等)を有するフィルムは、リサイクルするのがより困難であり、フィルムの耐用年数後にそれらのスクラップから生成されたリサイクルされた材料は、そのような共押出層(例えば、EVOH及びポリアミド等)を有さないリサイクルされたポリエチレンの樹脂よりも品質が悪く、商業的価値も低い。
【0113】
ポリマーに加えて、各コーティングは、1つ以上のさらなる成分を独立して含んでもよい。
【0114】
例えば、各コーティングは、SiO2、Al2O3、TiO2、AlCl3、MgO、ZnO、CuO、Fe2O3、粘土、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の無機粒子を独立して含んでもよい。
【0115】
各コーティングは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミン、ポリシロキサン、界面活性剤、バインダー、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の有機分子を独立して含んでもよい。
【0116】
本発明の好ましい態様において、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、アルケン、アクリル酸、ビニルハライド、ビニルアミド、スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸又はマレイン酸エステル、フマル酸又はフマル酸エステル、イタコン酸又はイタコン酸エステル、クロトン酸又はクロトン酸エステルを含む群から独立して選択される。
【0117】
本発明の別の好ましい態様において、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、酢酸ビニル、及びイタコン酸を含む群から独立して選択される。
【0118】
本発明の別の好ましい態様において、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及び酢酸ビニルを含む群から独立して選択される。
【0119】
本発明の別の好ましい態様において、コーティングは、コポリマーの総重量に基づき、50wt%から95wt%の塩化ビニリデンモノマーを含む塩化ビニリデンコポリマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及び酢酸ビニルを含む群から独立して選択される。
【0120】
本発明の別の好ましい態様において、1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含み、さらに、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含む。
【0121】
本発明の別の好ましい態様において、1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含み、さらに、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、アルケン、アクリル酸、ビニルハライド、ビニルアミド、スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸又はマレイン酸エステル、フマル酸又はフマル酸エステル、イタコン酸又はイタコン酸エステル、クロトン酸又はクロトン酸エステルを含む群から独立して選択される。
【0122】
本発明の別の好ましい態様において、1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含み、さらに、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、酢酸ビニル、及びイタコン酸を含む群から独立して選択される。
【0123】
本発明の別の好ましい態様において、1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含み、さらに、塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも50wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及び酢酸ビニルを含む群から独立して選択される。
【0124】
本発明の別の好ましい態様において、1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤を含み、さらに、コーティングは、コポリマーの総重量に基づき、50wt%から95wt%の塩化ビニリデンモノマーを含む塩化ビニリデンコポリマーを含み、さらに、コポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及び酢酸ビニルを含む群から独立して選択される。
【0125】
本発明の別の好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、コポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも97%であり、ビニルアルコールコポリマーは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から独立して選択された架橋剤を用いて架橋されている。
【0126】
本発明の別の好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、エテン及びアクリル酸ブチルから選択される1つ以上のモノマー、並びに任意的にアクリル酸ビニルのコポリマーであり、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、コポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも97%であり、コポリマーは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から独立して選択された1つ以上の架橋剤を用いて架橋されている。
【0127】
本発明の別の好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、エテン及びアクリル酸ブチルから選択される1つ以上のモノマー、並びに任意的にアクリル酸ビニルのコポリマーであり、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、コポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも97%であり、コポリマーは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から独立して選択された1つ以上の架橋剤を用いて架橋されており、コーティングは、SiO2、Al2O3、TiO2、AlCl3、MgO、ZnO、CuO、Fe2O3、粘土、を含む群から独立して選択された1つ以上の無機粒子をさらに含む。
【0128】
本発明の別の好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、コポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも97%であり、コポリマーにおける1つ以上のビニルアルコールモノマーは、カルボキシル化、エーテル化、アセタール化、カルバメート化、アミノ化、硫酸化、又はエステル化によって修飾されており、コポリマーは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から独立して選択された1つ以上の架橋剤を用いて架橋されている。
【0129】
本発明の別の好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、コポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも97%であり、コポリマーにおける1つ以上のビニルアルコールモノマーは、カルボキシル化、エーテル化、アセタール化、カルバメート化、アミノ化、硫酸化、又はエステル化によって修飾されており、コポリマーは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から独立して選択された1つ以上の架橋剤を用いて架橋されており、コーティングは、SiO2、Al2O3、TiO2、AlCl3、MgO、ZnO、CuO、Fe2O3、及び粘土を含む群から独立して選択された1つ以上の無機粒子をさらに含む。
【0130】
本発明の別の好ましい態様において、ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数は、コポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも97%であり、コポリマーにおける1つ以上のビニルアルコールモノマーは、カルボキシル化、エーテル化、アセタール化、カルバメート化、アミノ化、硫酸化、又はエステル化によって修飾されており、コポリマーは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から独立して選択された1つ以上の架橋剤を用いて架橋されており、コーティングは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミン、ポリシロキサン、界面活性剤、及びバインダーを含む群から独立して選択された1つ以上の有機分子をさらに含む。
【0131】
農業構造物
本発明のフィルムは、農業構造物を覆うのに適している。本明細書において使用される場合「農業構造物」という用語は、温室、サイレージピット、サイレージバンカー等、農業目的のために設計された構造物を指す。
【0132】
そのようなものとして、本発明は、農業構造物であって、その少なくとも一部が本発明のフィルムで覆われていることを特徴とする農業構造物も含む。さらに、本発明は、農業構造物の少なくとも一部を本発明のフィルムで覆うステップを含む、農業構造物を覆う方法を含む。
【0133】
一実施形態において、フィルムは、農業構造物の実質的に全てを覆うことができる。
【0134】
例えば、本発明のフィルムは、温室を覆うために使用することができる。フィルムは、高分子フィルムの「内部」表面(すなわち、温室の内側)が、本明細書において記載されるコーティングを有するように、温室を覆うことができる。従って、コーティングは、温室の内側で使用される農薬から高分子フィルムの層を保護する。
【0135】
本発明のフィルムは、サイレージを覆うために使用することもできる。フィルムは、高分子フィルムの「外部」表面(すなわち、サイレージと接触していないフィルムの表面)又は「内部表面」(すなわち、サイレージと接触しているフィルムの表面)が、本明細書において記載されるコーティングを有するように、サイレージを覆うことができる。このコーティングは、外部バリアとして作用し、フィルムを介した酸素の透過及びサイレージとの接触を抑制する。
【0136】
本発明のフィルムを生成する方法
本発明のフィルムは、当業者に知られている任意の適した方法によって生成することができる。
【0137】
本発明のフィルムは、第一に、1つ以上の層を含む高分子フィルムを提供することによって生成することができ、ここで、1つ以上の層のうち少なくとも1つの層は、本明細書において記載される1つ以上のUV安定剤を含む。その後、フィルムの生成中にオンラインで、又は別のステップとしてオフラインで、本明細書において記載されるコーティングが、高分子フィルムの少なくとも1つの外面上に堆積され、コーティングは、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む。
【0138】
当該方法は、ブローフィルム又はキャストフィルムの押出又は共押出を介して高分子フィルムを生成するステップを含んでもよい。
【0139】
コーティングの堆積に先立ち、高分子フィルムの外面は、コロナ及び/又はプラズマで処理されてもよい。これによって、高分子フィルムの外面に対するコーティングの接着性を改善することができる。
【0140】
コーティングの各層は、その層の成分を含む溶液として堆積される。コーティングの第1の層が、高分子フィルムの表面上に堆積される。コーティングの第1の層が乾燥すると、第2の層が(存在する場合)第1の層の上に堆積される。このプロセスは、任意の数の層を有するコーティングを生成するために続けられる。
【0141】
ポリマーを含むコーティングの少なくとも1つの層は、ポリマーを含む溶液として堆積される。水等、任意の適した溶媒を使用することができる。塩化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーがポリマーとして使用される場合、溶液は、5%w.wから90%w.wまで、好ましくは20%w.wから70%w.wまで、最も好ましくは50%w.wから60%w.wまでのポリマーを含んでもよい。ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーがポリマーとして使用される場合、溶液は、1%w.wから20%w.wまで、好ましくは2%w.wから10%w.wまで、最も好ましくは3%w.wから6%w.wまでのポリマーを含んでもよい。
【0142】
コーティングは、当業者に知られている任意の適したコーティング技術によって堆積させることができる。好ましくは、コーティングは、浸漬、噴霧、フレキソ印刷、プラズマ、レーザー、グラビア印刷、リバースロール、ロールツーロール、ナイフオーバーオール、ロッドコーター、ジェット印刷、又はスロットダイの被覆技術を介して堆積される。
【0143】
堆積されると、高分子フィルムを焼きなまし急速に冷却して、コーティングを安定させることができる。
【実施例1】
【0144】
厚さ180μm及び幅12mの透明な温室フィルムを、出力1300kg/h及び速度11m/minで、1800mmのダイを用いて7層ブローフィルムライン上に生成した。このフィルムの層の組成が、以下の表1において示されている。このフィルムをコロナ処理し、片面に、塩化ビニリデン、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、及びアクリル酸ヒドロキシエチルのコポリマー(SolvayのDiofan 050)の50%水溶液を噴霧してコーティングを形成した。コーティングの厚さは0.8μmであった。
【0145】
【表1】
LDPE=低密度ポリエチレン;LLDPE=低密度直鎖状ポリエチレン;MLLDPE=メタロセン低密度直鎖状ポリエチレン;EVA=14%の酢酸ビニル含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー;UV=UV安定剤の組み合わせを有するUVマスターバッチ(20%HALS Chimassorb944を有するUV20H);IR=赤外線吸収剤を有するIRマスターバッチ。
【実施例2】
【0146】
厚さ100μm及び幅12mの黒/白サイレージフィルムを、出力1300kg/h及び速度19m/minで、1800mmのダイを用いて7層ブローフィルムライン上に生成した。このフィルムの層の組成が、以下の表2において示されている。フィルムをコロナ処理し、次に、塩化ビニリデンのコポリマー(SolvayのDiofan 063)の58%w.w水溶液を有するタンクに浸して、フィルムの片側にポリマーのコーティングを形成した。コーティングの厚さは1μmであった。フィルムを浸漬した直後に、フィルムは、水分が蒸発される乾燥機を通過し、フィルムを冷却し、巻いてロールにした。
【0147】
【表2】
White=PEキャリアに70%の二酸化チタンを有する白のマスターバッチ;Black=PEキャリアに40%のカーボンブラックを有する黒のマスターバッチ。表2における残りの略語は、表1に対して先に定義したとおりである。
【0148】
比較例1
厚さ180μmの7層フィルムが、以下の表3において記載されている。
【0149】
【表3】
表3における略語は、先に定義されている。
【0150】
比較例2
7層100μmサイレージフィルムが、中間に2.5μmのEVOH層を有している。このフィルムの層の組成が、以下の表4において示されている。
【0151】
【表4】
Green=PEキャリアに緑色の顔料を有する緑のマスターバッチ;Silver=PEキャリアにアルミニウム顔料を有する銀のマスターバッチ;EVOH44%=エチレンビニルアルコール44%モル;TIE=タイレイヤー樹脂。表4における残りの略語は、先に定義されている。
【0152】
酸素に対する透過性
実施例及び比較例に対するフィルムの酸素透過性を、標準的なEN ISO15105-2(23oC、0%RH)に従って測定した。結果が、以下の表5において示されている。
【0153】
【表5】
フィルムの表面に塩化ビニリデンコポリマーを含むコーティングを有する実施例1のフィルムは、そのようなコーティングを有していない比較例1よりも有意に低い酸素透過性を有している。これは、塩化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーを含むコーティングが、低い酸素透過性をフィルムに提供することを実証している。
【0154】
農薬に対する透過性
実施例1及び比較例1のフィルムを使用して、2つの同一の金属構造物(金属構造物の寸法:1850cm×1100cm×1000cm)を覆った。赤外線ランプを使用して硫黄を昇華させる硫黄バーナーを、各金属構造物の屋根の中央から(及び、そこから40cmの距離に)吊るした。硫黄バーナーを、1日30分間、合計3日間つけた。硫黄バーナーは、金属構造物の内側の硫黄供給源として作用して、熱及びUV放射の影響を受けて分解し且つ硫黄等の活性化合物を生成する農薬をシミュレートする。
【0155】
その後、2つの構造物の上部にあるフィルム両方からフィルム試料を採取した。フィルム試料を機械的にこすってその表面から硫黄を除去し、次に、硫黄濃度を、Mitsubishi Chemicalの硫黄分析器を使用して測定した。
【0156】
硫黄分析の結果が、以下の表6において示されている。そこからわかるように、実施例1のフィルム由来の試料の硫黄含有量は、比較例1由来のフィルムの試料よりも有意に低い。これは、実施例1の高分子フィルムの外面上の酸素バリアコーティングが、硫黄に対するフィルムの透過性を低下させ、それによって、高分子フィルムにおけるUV安定剤の不活性化を減少させることを実証している。従って、本発明のフィルムは、農薬の存在下での光劣化に対する感受性の低下を実証している。
【0157】
【表6】
ダーツ落下耐衝撃性
実施例2及び比較例2のフィルムのダーツ落下耐衝撃性を、標準的なEN ISO77651に従って測定した。結果が、以下の表7において示されている。
【0158】
【表7】
比較例2のフィルムは、フィルムの中間に共押出EVOHバリア層を含んでいる。これは、上記のように、0.2barで14cm
3/cm
2/dayの酸素透過性をフィルムに提供する。しかし、この共押出バリア層は、フィルムの機械的特性に悪影響を及ぼす。例えば、比較例2のフィルムのダーツ落下耐衝撃性は、わずか500grである。
【0159】
対照的に、実施例2のフィルムは、0.2barで15cm3/cm2/dayという同様に低い酸素透過性を有しているが、900grという有意に優れたダーツ落下耐衝撃性を有している。従って、実施例2のバリアコーティングは、低い酸素透過性をフィルムに提供するが、比較例2の共押出バリア層と比較して改善された機械的特性をフィルムに提供する。
【0160】
これは、本発明のフィルムが、優れた機械的特性を維持しながら、酸素ガスに対して低い透過性を有している(従って、実施例1によって先に実証されたように、農薬の存在下での光劣化に対して低下した感受性を有している)ことを実証している。
【0161】
水蒸気に対する透過性
水蒸気に対する実施例1及び比較例1のフィルムの透過性を、標準的なASTM E96(T=38°C、Δ(RH)=90%)に従って測定した。結果が、以下の表8において示されている。
【0162】
【表8】
比較例3
共押出フィルムを、以下の表9において定めた組成を用いて調製した。
【0163】
【表9】
このフィルムの機械的性質が、以下の表10において詳述されている。
【0164】
【表10】
IRT=赤外線透過率;GLT=グローバル光透過率;Diff.T.=拡散透過率。
【0165】
表10から、フィルムにおいてポリアミドを含む共押出層が存在すると、機械的特性が低下することがわかる。バリアコーティングを有する本発明のフィルムは、これらの問題悩まされることはない。例えば、比較例3のフィルムは、わずか550grのダーツ落下耐衝撃性を有しているが、本発明の実施例2のフィルムは、900grの有意に高いダーツ落下耐衝撃性を有している。
【0166】
本発明の番号付き実施形態
実施形態1:農業構造物を覆うためのフィルムであって、
(a)1つ以上の層を有する高分子フィルムであり、1つ以上の層のうち少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む、高分子フィルムと、
(b)高分子フィルムの少なくとも1つの外面上の、塩化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーを含むコーティングと、
を含むフィルム。
【0167】
実施形態2:コーティングは、0.1μmから5μm、好ましくは0.3μmから1.5μmの厚さを有する、実施形態1に記載のフィルム。
【0168】
実施形態3:コーティングは、SiO2、Al2O3、TiO2、AlCl3、MgO、ZnO、CuO、Fe2O3、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の無機粒子、及び/又は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、界面活性剤、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の有機分子を含む、実施形態1又は2に記載のフィルム。
【0169】
実施形態4:塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、及び/又は
塩化ビニリデンコポリマーは、コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満の塩化ビニリデンモノマーを含む、実施形態1乃至3のいずれかに記載のフィルム。
【0170】
実施形態5:塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び式(I)の1つ以上のモノマーのコポリマーであり、
【0171】
【化7】
式中、各R
1は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、C
1-C
9ヘテロアリール、ニトリル、-OH、ハロ、-C(O)R
4、-C(O)OR
4、-OC(O)R
4、-C(O)NHR
4、及び-NHC(O)R
4を含む群から独立して選択され、
各R
2は、H、ハロ、C
1-C
3アルキル、-C(O)OR
5、及び-CH
2C(O)OR
5を含む群から独立して選択され、
各R
3は、H、-C(O)OR
5、及びC
1-C
3アルキルを含む群から独立して選択され、
各R
4は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールを含む群から独立して選択され、
各R
5は、C
1-C
10アルキルから独立して選択され、
各C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールは、-OH、オキソ、-SO
2H、-NO
2、及びハロから独立して選択される1つ以上の置換基で任意的に独立して置換される、実施形態1乃至4のいずれかに記載のフィルム。
【0172】
実施形態6:塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、アルケン、アクリル酸、ビニルハライド、ビニルアミド、スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸又はマレイン酸エステル、フマル酸又はフマル酸エステル、イタコン酸又はイタコン酸エステル、クロトン酸又はクロトン酸エステルを含む群から独立して選択され、好ましくは、塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のモノマーのコポリマーであり、1つ以上のモノマーは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、酢酸ビニル、及びイタコン酸を含む群から独立して選択される、実施形態1乃至5のいずれかに記載のフィルム。
【0173】
実施形態7:高分子フィルムの両方の外面にコーティングを含み、各コーティングは、独立して、実施形態1乃至6のいずれかに記載のものである、実施形態1乃至6のいずれかに記載のフィルム。
【0174】
実施形態8:高分子フィルムの1つ以上の層は、それぞれ独立して、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度直鎖状ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択される1つ以上のポリマーを含む、及び/又は
高分子フィルムの層のうち少なくとも1つの層は、IR吸収剤、防曇剤、防滴剤、防塵材料、防藻材料、及び/又は顔料をさらに含む、実施形態1乃至7のいずれかに記載のフィルム。
【0175】
実施形態9:1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、UV吸収剤、及びニッケル有機錯体を含む群から独立して選択される、及び/又は
1つ以上のUV安定剤は、層の総重量に基づき、0.1wt%から20wt%、好ましくは0.1wt%から10wt%、最も好ましくは0.1wt%から5wt%の量で存在する、実施形態1乃至8のいずれかに記載のフィルム。
【0176】
実施形態10:高分子フィルムは、1から100の層、好ましくは3から11の層を有する、及び/又は
高分子フィルムは、共押出、好ましくはブローフィルム又はキャストフィルムの共押出によって得ることができる、及び/又は
フィルムは、25μmから500μmの全厚、及び1mから50mの全幅を有する、及び/又は
フィルムは、23°C及び0%の相対湿度においてASTM D3985に従って測定された場合に500ml/m2/day未満、好ましくは100ml/m2/day未満の酸素透過性を有する、実施形態1乃至9のいずれかに記載のフィルム。
【0177】
実施形態11:高分子フィルムの少なくとも1つの外面上での、塩化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーを含むコーティングの使用であって、高分子フィルムは1つ以上の層を含み、少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含んで、農薬の存在下での光劣化に対する高分子フィルムの感受性を減らす、及び/又は、ガス及び/又は水蒸気に対する高分子フィルムの透過性を減らす、使用。
【0178】
実施形態12:実施形態1乃至10のいずれかに記載のフィルムで少なくとも一部が覆われていることを特徴とする農業構造物。
【0179】
実施形態13:実施形態1乃至10のいずれかに記載のフィルムで農業構造物の少なくとも一部を覆うステップを含む、農業構造物を覆う方法。
【0180】
実施形態14:農業構造物を覆うためのフィルムを生成する方法であって、
(i)1つ以上の層を含む高分子フィルムを提供するステップであり、1つ以上の層のうち少なくとも1つの層が、1つ以上のUV安定剤を含む、ステップと、
(ii)高分子フィルムの少なくとも1つの外面上に、塩化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーを含むコーティングを堆積させるステップと、
を含む方法。
【0181】
実施形態15:コーティングは、浸漬、噴霧、フレキソ印刷、プラズマ、レーザー、グラビア印刷、リバースロール、ロールツーロール、ナイフオーバーオール、ロッドコーター、ジェット印刷、又はスロットダイを介して堆積される、及び/又は
高分子フィルムの外面は、コーティングの堆積に先立ち、プラズマで処理される、及び/又は
当該方法は、ブロー又はキャストの共押出を介して高分子フィルムを生成するステップをさらに含む、実施形態14に記載のフィルムを生成する方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業構造物を覆うためのフィルムであって、
(a)1つ以上の層を有する高分子フィルムであり、前記層のうち少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含む、高分子フィルムと、
(b)前記高分子フィルムの少なくとも1つの外面上のコーティングであり、前記フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m
2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含むコーティングと、
を含
み、前記コーティングの各層は、溶液を堆積して層を形成すること、及び前記層を乾燥させることによって形成されている、フィルム。
【請求項2】
200ml/m
2/bar/day未満、好ましくは100ml/m
2/bar/day未満の酸素透過性を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
ASTM E 96に従って測定された場合に、38°C及び90%の相対湿度において100g/m
2/day未満、好ましくは50g/m
2/day未満、最も好ましくは10g/m
2/day未満の水蒸気透過性を有する、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリマーを含む前記コーティングの少なくとも1つの層は、0.1μmから5μm、好ましくは0.1μmから2.0μm、最も好ましくは0.2μmから1.0μmの厚さを有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記コーティングは、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、AlCl
3、MgO、ZnO、CuO、Fe
2O
3、粘土、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の無機粒子、及び/又は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミン、ポリシロキサン、界面活性剤、バインダー、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上の有機分子を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記コーティングにおける前記ポリマーは、塩化ビニリデンホモポリマー若しくは塩化ビニリデンコポリマー、又はビニルアルコールホモポリマー若しくはビニルアルコールコポリマーである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、該コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%の塩化ビニリデンモノマーを含み、及び/又は
前記塩化ビニリデンコポリマーは、該コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満の塩化ビニリデンモノマーを含む、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール及び酢酸ビニルのコポリマーである、請求項6又は7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量が、該コポリマーの総重量に基づき、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%であり、及び/又は
前記ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの合計量が、該コポリマーの総重量に基づき、95wt%未満、好ましくは90wt%未満である、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記ビニルアルコールコポリマーにおけるビニルアルコールモノマーの数が、ビニルアルコール及び酢酸ビニルのモノマーの総数の少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%である、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
前記ビニルアルコールホモポリマー若しくはビニルアルコールコポリマーにおける1つ以上のビニルアルコールモノマーが、カルボキシル化、エーテル化、アセタール化、カルバメート化、アミノ化、硫酸化、又はエステル化によって修飾されている、及び/又は、1つ以上のビニルアルコールモノマーが側鎖に結合している、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記ビニルアルコールホモポリマー若しくはビニルアルコールコポリマーは架橋されており、好ましくは、前記ホモポリマー若しくはコポリマーは、熱、UV、及び/又は架橋剤によって架橋されている、請求項6乃至11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
前記架橋剤は、アルコール、直鎖ポリオール、分枝鎖ポリオール、アルデヒド、アミン、ポリアミン、ヒドラジド、ポリヒドラジド、金属塩、酸、及び有機酸を含む群から選択されており、好ましくは、前記架橋剤は、エチレングリコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタキシレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、ポリオールカルボニル付加物、ホウ酸ナトリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、グリオキシル酸ナトリウム、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ホウ酸、及びスルホコハク酸を含む群から選択されている、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び式(I)の1つ以上のモノマーのコポリマーであり、及び/又は、前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び式(I)の1つ以上のモノマーのコポリマーであり、
【化8】
式中、各R
1は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、C
1-C
9ヘテロアリール、ニトリル、-OH、ハロ、-C(O)R
4、-C(O)OR
4、-OC(O)R
4、-C(O)NHR
4、及び-NHC(O)R
4を含む群から独立して選択されており、
各R
2は、H、ハロ、C
1-C
3アルキル、-C(O)OR
5、及び-CH
2C(O)OR
5を含む群から独立して選択されており、
各R
3は、H、-C(O)OR
5、及びC
1-C
3アルキルを含む群から独立して選択されており、
各R
4は、H、C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールを含む群から独立して選択されており、
各R
5は、C
1-C
10アルキルから独立して選択されており、
各C
1-C
10アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
1-C
10アルコキシ、(C
1-C
5アルキル)-O-(C
1-C
5アルキル)、C
6-C
10アリール、及びC
1-C
9ヘテロアリールは、-OH、オキソ、-SO
2H、-NO
2、及びハロから独立して選択された1つ以上の置換基で任意的に独立して置換されている、請求項6乃至13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、及び/又は、前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、前記1つ以上のさらなるモノマーは、アルケン、アクリル酸、ビニルハライド、ビニルアミド、スチレン、ビニルアルコール、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸又はマレイン酸エステル、フマル酸又はフマル酸エステル、イタコン酸又はイタコン酸エステル、クロトン酸又はクロトン酸エステルを含む群から独立して選択されている、請求項6乃至14のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
前記塩化ビニリデンコポリマーは、塩化ビニリデン及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、前記1つ以上のさらなるモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン、メチルビニルケトン、ビニルアルコール、酢酸ビニル、及びイタコン酸を含む群から独立して選択されている、請求項6乃至15のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項17】
前記ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール、任意的に酢酸ビニル、及び1つ以上のさらなるモノマーのコポリマーであり、前記1つ以上のさらなるモノマーは、エテン、プロペン、ブテン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、メチルビニルケトン、及びイタコン酸を含む群から独立して選択されている、請求項6乃至16のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項18】
前記コーティングは、塩化ビニリデンホモポリマー又は塩化ビニリデンコポリマーを含む、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記コーティングは、2つ以上の層を含み、少なくとも1つの層は前記ポリマーを含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
前記コーティングは、前記ポリマーを含む単層を含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
前記高分子フィルムの両方の外面にコーティングを含み、各コーティングは、独立して、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のものである、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項22】
前記高分子フィルムの前記1つ以上の層は、それぞれ独立して、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度直鎖状ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン低密度直鎖状ポリエチレン(MLLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、及びそれらの組み合わせを含む群から独立して選択された1つ以上のポリマーを含む、及び/又は
前記高分子フィルムの層のうち少なくとも1つの層は、IR吸収剤、防曇剤、防滴剤、防塵材料、防藻材料、接着補助材料、及び/又は顔料をさらに含む、請求項1乃至21のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項23】
前記1つ以上のUV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、UV吸収剤、及びニッケル有機錯体を含む群から独立して選択されている、及び/又は
前記1つ以上のUV安定剤は、前記層の総重量に基づき、0.1wt%から20wt%、好ましくは0.1wt%から10wt%、最も好ましくは0.1wt%から5wt%の量で存在している、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項24】
前記高分子フィルムは、1から100の層、好ましくは3から11の層を有する、及び/又は
前記高分子フィルムは、押出又は共押出、好ましくはブローフィルム又はキャストフィルムの押出又は共押出によって得ることができる、及び/又は
前記フィルムは、25μmから500μmの全厚、及び1mから60mの全幅を有する、請求項1乃至23のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項25】
高分子フィルムの少なくとも1つの外面上でのコーティングの使用であって、前記コーティングは、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含み、
前記コーティングの各層は、溶液を堆積して層を形成すること、及び前記層を乾燥させることによって形成されており、前記高分子フィルムは1つ以上の層を含み、少なくとも1つの層が1つ以上のUV安定剤を含み、農薬の存在下での光劣化に対する前記高分子フィルムの感受性を減らすため、及び/又は、ガス及び/又は水蒸気に対する前記高分子フィルムの透過性を減らすための使用。
【請求項26】
前記コーティングは、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m
2/bar/day未満まで、前記高分子フィルムの酸素透過性を減らす、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載のフィルムで少なくとも一部が覆われていることを特徴とする農業構造物。
【請求項28】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載のフィルムで農業構造物の少なくとも一部を覆うステップを含む、農業構造物を覆う方法。
【請求項29】
農業構造物を覆うためのフィルムを生成する方法であって、
(i)1つ以上の層を含む高分子フィルムを提供するステップであり、前記層のうち少なくとも1つの層が、1つ以上のUV安定剤を含む、ステップと、
(ii)前記高分子フィルムの少なくとも1つの外面上にコーティングを堆積させるステップであり、前記コーティングは、前記フィルムが、EN ISO 15105-2に従って測定された場合に、23°C及び0%の相対湿度において500ml/m
2/bar/day未満の酸素透過性を有するように、ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、ステップと、
を含
み、
前記コーティングの各層は、溶液を堆積して層を形成すること、及び前記層を乾燥させることによって形成される、フィルムを生成する方法。
【請求項30】
前記コーティングは、浸漬、噴霧、フレキソ印刷、プラズマ、レーザー、グラビア印刷、リバースロール、ロールツーロール、ナイフオーバーオール、ロッドコーター、ジェット印刷、又はスロットダイを介して堆積される、及び/又は
前記高分子フィルムの外面は、前記コーティングの堆積に先立ち、コロナ及び/又はプラズマで処理される、及び/又は
当該方法は、ブロー又はキャストの押出又は共押出を介して前記高分子フィルムを生成するステップをさらに含む、請求項29に記載のフィルムを生成する方法。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の方法によって得ることができる、請求項1乃至24のいずれか一項に記載のフィルム。
【国際調査報告】