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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】X線分析装置用試料ホルダ
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/20025 20180101AFI20230913BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20230913BHJP
【FI】
G01N23/20025
G01N23/207
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509367
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021073622
(87)【国際公開番号】W WO2022043440
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】20192983.3
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503310327
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガテシュキ,ミレン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーズ,デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】フュフテフェーン,ヤン
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA15
2G001CA01
2G001MA04
2G001QA02
2G001SA04
(57)【要約】
本発明は、試料を保持するための試料ホルダに関する。試料ホルダは、入射面を有する本体と、試料を受けるための、本体内の開口とを含む。試料にX線が照射されると、試料ホルダの入射面も、特に低入射角で照射されてもよい。入射面からのバックグラウンド散乱を低減するために、入射面は、X線を遮断するための凸部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(2)を保持する試料ホルダ(1)であって、
基部(6)と入射面(11)とを有する本体(5)と、
前記本体内にあり、前記試料を受ける開口(7)であって、前記入射面から前記基部に向かって延在している開口と
を備え、
前記入射面は、前記入射面上に入射するX線の少なくとも一部を遮断する凸部(13)を有し、
前記凸部は、前記開口を取り囲む領域内に形成されている、
試料ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記入射面(11)は、複数の凸部(13)及び複数の凹部(9)を有する、
試料ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の試料ホルダ(1)であって、
凸部(13)はぞれぞれ、前記開口(7)を取り囲んでおり、
凹部は、各凸部とそれに隣接する凸部との間に規定されており、
好ましくは、前記凸部とそれに隣接する前記凸部との間にある、前記入射面の前記領域は、前記凹部の床(28)をなしている
試料ホルダ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記複数の凸部は、互いに同心円状である
試料ホルダ。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記複数の凸部(13)はそれぞれ、長尺であり且つ先細りになっている
試料ホルダ。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の試料ホルダ(1)であって、
凸部(13)それぞれとそれに隣接する凹部(9)について、該凸部(13)の高さhの該凹部(9)の幅wに対する比は、小さくとも0.001であり且つ1以下である、
試料ホルダ。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記入射面(11)は、
複数の凸部(13)及び複数の凹部(9)を有する第1領域(31)と、
複数の凸部(13)及び複数の凹部(9)を有する第2領域(32)と
を有し、
前記第1領域と前記第2領域は、分離凹部(34)により、互いから分離されており、
前記分離凹部(34)は、前記第1領域及び前記第2領域にある前記各凹部それぞれの幅より大きい幅を有する、
試料ホルダ。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記凸部(13)及び凹部(9)は、略円対称のパターンを規定する、
試料ホルダ。
【請求項9】
請求項1に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記試料ホルダは、凹部をさらに備え、
前記凹部は、螺旋形をなしており、
前記凹部の幅wに対する前記凸部の高さhの比は、小さくとも0.001であり1より小さい、
試料ホルダ。
【請求項10】
請求項9に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記凸部(13)は、先細りになっている、
試料ホルダ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記開口(7)は、前記本体(5)を貫通して延在しており、
前記試料ホルダは、試料ホルダ基部(3)をさらに備え、
該試料ホルダ基部は、前記本体(5)及び前記開口(7)と協働して、前記試料(2)を収容するキャビティ(24)を規定する、
試料ホルダ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の試料ホルダ(1)であって、
前記試料ホルダの前記本体(5)は、金属製である、
試料ホルダ。
【請求項13】
X線回折装置(50)であって、
試料(2)を支持するための試料台(55)と、
請求項1~12のいずれか1項に記載の試料ホルダ(10)と、
前記試料に入射X線を照射するように配置されたX線源(52)と、
前記試料によって回折されるX線を検出するために配置されたX線検出器(57)と
を備えるX線回折装置。
【請求項14】
試料のX線分析を行う方法であって、
試料ホルダを設けるステップ(60)であって、
前記試料ホルダは、
入射面と基部とを有する本体と、
前記入射面内にあり、前記試料を受ける開口と
を備え、
前記開口は、前記入射面から前記基部に向かって延在しており、
前記入射面は、入射X線の少なくとも一部を遮断する凸部を有する、
ステップ(60)を含み、
前記方法はさらに、
前記試料ホルダの前記開口内に前記試料を挿入するステップ(62)と、
前記凸部及び前記開口が照射されるように、前記試料と前記試料を取り囲む領域とに複数のX線を照射するステップ(64)であって、
前記X線の入射角は1.5度未満である、
ステップ(64)と
を含む
方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記試料ホルダ(10)は、請求項1~12のいずれか1項に記載の試料ホルダである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を支持するための試料ホルダ、及び、試料上においてX線分析を実行する際に試料ホルダを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料科学の分野では、X線分析を使用して試料の材料を分析することができる。試料は、X線源とX線検出器との間の入射X線ビーム経路内に置かれる。X線検出器は、試料により放射又は散乱されるX線を検出するように配置される。分析中、試料は試料ホルダ内に収容されている。
【0003】
X線回折、例えばブラッグ―ブレンターノ等、幾つかの種類のX線分析法では、試料は、キャビティを有する本体内で保持される。「反射での位置関係(geometry)」においては、X線源は、試料の入射面を照射し、X線検出器は、試料の入射面の、X線源と同じ側に配置され、入射面から散乱又は反射されるX線を検出する。場合によって、特に、試料(例えば粉末試料)の結晶相を分析するX線回折分析を行う際には、X線分析測定中に試料を回転させることが望ましい。
【0004】
良質な結果を得るには、試料ホルダの表面が非常に平坦であることが重要である。これにより、X線分析測定中に、試料表面を正確且つ高い精度で位置決めすることが可能になる。さもなければ、測定や分析の結果が損なわれかねない。
【0005】
X線分析装置は、入射X線ビーム又は散乱X線ビーム又はその両方においてさらなる部品を備える。例えば、X線分析装置は、コリメータ等のX線光学系又はビーム成形部品又はその両方を通常は備える。しかしながら、X線分析装置の様々な部品がバックグラウンド散乱(即ち、分析時における試料以外のものによるX線の散乱)を生じさせることがあり、このことが分析の結果を損なうことがある。試料ホルダは、バックグラウンド散乱の原因となりうるものの1つである。試料ホルダからのバックグラウンド散乱は、測定角度が低い場合に特に問題となる。
【0006】
従って、可能であればバックグラウンド散乱の原因を最少にし、結果の分析中にバックグラウンド散乱を考慮することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様において、試料を保持する試料ホルダであって、基部と入射面とを有する本体と、本体内にあり、試料を受ける開口であって、入射面から基部に向かって延在している開口とを備え、入射面は、入射面上に入射するX線の少なくとも一部を遮断する凸部を有し、凸部は、開口を取り囲む領域内に形成されている、試料ホルダを提供する。これに関して、凸部と入射面との間の領域を凹部とみなしてもよく、入射面の、凸部の一部を形成しない領域が凹部の床を規定してもよい。
【0008】
試料ホルダはX線回折試料ホルダでもよい。試料は、固体、粉末、又は圧縮粉末等の多結晶試料を包含してもよい。これにより、試料ホルダは、X線回折多結晶試料ホルダでもよい。これに関して、試料ホルダは、X線回折粉末試料ホルダ、X線回折圧縮粉末試料ホルダ、又はX線回折固体試料ホルダでもよい。
【0009】
凸部は、本体の、開口の周辺の領域に形成されてもよい。試料が受ける開口は、本体の中央領域にあってもよい。したがって、凸部は、本体の中央領域を取り囲むように、本体の周辺領域に形成されてもよい。
【0010】
幾つかの実施形態においては、試料は開口内にあり、試料ホルダの入射面には試料が存在しない。試料ホルダの入射面に試料が存在しないため、入射面はX線に晒される。特に、凹部には試料が存在しない。
【0011】
使用中、X線源からの各X線は試料の方へ向けられる。試料によって回折されたX線がX線検出器により検出される。(試料により回折されるX線ではなく)試料ホルダの入射面で散乱されるX線の少なくとも一部が検出器に到達しないようにすることにより、バックグラウンド散乱が低減される。
【0012】
凸部は、X線に対して実質的に不透明な材料を有してもよい。例えば、この材料は、CuKαX線の90%を吸収し、CuKαX線の10%を透過するものでもよい。したがって、凸部は、凸部上に入射する各X線が凸部を介して散乱されることがないようにし、これによって、散乱X線がX線検出器に到達しないようにする。特に、凹部上に小さい角度で(例えば1.5度未満で)入射して凹部にて散乱されるX線の少なくとも一部が凸部によって遮断されるように、この凸部は配置される。
【0013】
入射面は、複数の凸部及び複数の凹部を有してもよい。
【0014】
凸部及び凹部は、本体の、開口の周りの領域に形成される。
【0015】
幾つかの実施形態においては、試料は開口内にあり、試料ホルダの入射面には試料が存在しない。したがって、試料ホルダの入射面はX線源からのX線に晒されることがある。特に、凹部には試料が存在しない。
【0016】
凸部及び凹部はそれぞれ開口の周りに延在してもよい。凸部は、X線に対して不透明な材料を有してもよい。
【0017】
凸部はそれぞれ開口を取り囲んでもよく、凹部が凸部とそれに隣接する凸部との間に規定されてもよい。好ましくは、凸部とそれに隣接する凸部との間にある、入射面の領域は、凹部の床をなしている。
【0018】
入射面の平面視において、各凸部は開口を取り囲んでもよい。凸部それぞれは連続的であってもよい。凸部それぞれは開口の周りに閉じたループになって延在していてもよい。これの代わりに、凸部それぞれは、開口の周縁部の少なくとも50%を取り囲んでもよい(例えば、平面視において、凸部は半円形状であってもよい)。凹部は、その床と、隣接する一対の凸部が有する対向壁とにより規定されてもよい。隣接する凸部は、連続した凸部であってもよい。隣接する凸部は、介在する凸部なしに互いに隣り合って配置されてもよい。
【0019】
複数の凸部は、互いに同心円状であってもよい。
【0020】
入射面の平面視において、各凸部は楕円形リングの形状を有してもよい。したがって、凸部のそれぞれは開口を取り囲んでもよい。各凸部は、同心円状の楕円形リングであってもよい。
【0021】
平面視において、各凸部は円環の形状を有してもよい(換言すれば、凸部は、平面視において円形リングの形状を有してもよい)。各凸部は、環状の、同心円状の凸部であってもよい。同心円状の各凸部は開口に中心を合わせてもよい。
【0022】
複数の凸部はそれぞれ、長尺且つ先細りになっていてもよい。凹部はそれぞれ、長尺且つ先細りになっていてもよい。
【0023】
各凸部は長さ部分(例えば周縁部)に沿って延在する。凸部が延在する方向に対して直交している断面から見て凸部は先細りになっていてもよい。例として、各凸部は、開口の周りに延在し、平面視において楕円形リングを規定する。この場合、楕円形リングの接線方向に対して直交する断面から見て、凸部は先細りになっている。
【0024】
凹部は長さ部分(例えば周縁部)に沿って延在する。凹部が延在する方向に対して直交している断面から見て凹部は先細りになっていてもよい。例として、各凹部は、開口の周りに延在し、平面視において楕円形リングを規定する。この場合、楕円形リングの接線方向に対して直交する断面から見て、凹部は先細りになっている。
【0025】
各凸部は線状に先細りしていてもよい。凸部はそれぞれ頂点へと先細りしていてもよい。
【0026】
凸部それぞれとそれに隣接する凹部について、該凸部の高さhの該凹部の幅wに対する比は、小さくとも0.001であり且つ1以下である。
【0027】
凸部の高さとは、試料ホルダの平面かの方向における凸部の最大寸法のことである。各凸部同士の間に各凹部がある場合、高さとは、凸部上の最高地点と凹部の最低地点との間の差異のことである。
【0028】
凹部の幅とは、高さ部分に対して直交し且つ凹部が延在する方向に対して直交する方向における、隣接する(連続した)凸部同士の間の最大距離である。凹部が延在する方向に対して直交している断面から見て、幅とは、高さ部分に対して直交する方向における凸部同士の間の最大距離である。凹部が円形である場合、幅は、接線方向に対して直交する方向にある。
【0029】
隣接する凹部とは、凸部のすぐ隣りの凹部である。凸部は、隣接する凹部を両側に有してもよい。
【0030】
幅に対する高さの比が小さくとも0.001とすることにより、2θが0.23度未満である角度でのバックグラウンド散乱を低減することができる。
【0031】
好ましくは、幅に対する高さの比は小さくとも0.01である。したがって、凹部の床を1.1度未満の入射角で照射して反射されるX線は、(凹部と試料との間に配置されている)隣接する凸部により遮断されることになる。幅に対する高さの比は、好ましくは約0.1より小さい。このようにして、入射面は、入射角が小さい場合のバックグラウンド散乱を最少にするよう調整される。さらに、幅に対する高さの比を小さくすることにより、試料ホルダを洗浄しやすくすることができる。
【0032】
入射面は、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1領域と、複数の凸部及び複数の凹部を有する第2領域とを有し、第1領域と第2領域は、分離凹部により、互いから分離されており、分離凹部は、第1領域及び第2領域にある各凹部それぞれの幅より大きい幅を有してもよい。
【0033】
分離凹部の幅とは、分離凹部に隣り合う第1領域の凸部と、分離凹部に隣り合う第2領域の凸部との間の最大距離であって、凸部の高さ部分に対して直交し且つ分離凹部が延在する方向に対して直交する方向における最大距離のことである。
【0034】
凸部又は凹部又はその両方が円形又は楕円形である場合、凸部又は凹部又はその両方は周方向に延在している。凹部や凸部の幅とは、凹部や凸部の、径方向における最大寸法のことである。分離凹部が延在する方向に対して直交する断面から見て、幅とは、高さ部分に対して直交する方向における凸部同士の間の最大距離である。
【0035】
第1領域と第2領域とを分離する凹部の幅は、第1及び第2領域内の凹部の幅の小さくとも2倍、又は、第1及び第2領域内の凹部の幅の小さくとも5倍であってもよい。
【0036】
分離凹部の、幅に対する高さの比は、第1領域又は第2領域又はその両方の凹部の、幅に対する高さの比と等しくてもよい。第1領域と第2領域との間に比較的広い分離凹部を設けることにより、形成されねばならない凸部/凹部の数が少なくなる。従って、これにより、試料ホルダを比較的迅速に製造することが可能になる。さらに、比較的広い分離凹部を設けることにより、凸部先端の数が少なくなるのであり、これにより、バックグラウンド散乱を最少に抑えることができる。
【0037】
凸部及び凹部は、略円対称のパターンを規定してもよい。
【0038】
入射面の平面視において、凸部又は凹部又はその両方が略円対称のパターンを規定してもよい。同心円状の円形の凸部と凹部は円対称である。したがって、試料ホルダは、測定中に試料が回転されるX線分析用途において利便性よく使用することができる。例えば、粉末試料のX線回折分析において、試料は通常、各入射角にて360度回転される。
【0039】
試料ホルダは凹部をさらに備えてもよく、凹部は螺旋形をなしてもよく、凹部の幅wに対する凸部の高さhの比は小さくとも0.001であり1より小さくてもよい。この実施形態において、凹部は、入射面の平面視において螺旋形をなしている。(平面視において)凸部及び凹部により規定される螺旋は、ほぼ円対称である。好ましくは、幅に対する高さの比は小さくとも0.01であり1より小さい。より好ましくは、幅に対する高さの比は、0.5より小さく又は0.1より小さい。最も好ましくは、幅に対する高さの比は小さくとも0.01であり0.1より小さい。凸部は先細りになっていてもよい。凸部は、好ましくは(平面視において)螺旋状に開口の周りに延在してもよい。凸部が延在する方向に対して直交する断面から見て、凸部は先細りになっていてもよい。
【0040】
開口は本体を貫通して延在していてもよく、試料ホルダは試料ホルダ基部をさらに備え、この試料ホルダ基部が、本体及び開口と協働して、試料を収容するキャビティを規定してもよい。したがって、開口を規定する本体の側壁と、試料ホルダ基部との間に規定されるキャビティ内で、試料を試料ホルダによって収容することができる。
【0041】
試料ホルダの本体は金属製であってもよい。金属製本体を設けることにより、試料ホルダを検出しやすくすることができる。例えば、使用時において、X線分析装置(例えばX線回折装置)は、金属ターゲット(この場合は試料ホルダ)を検出することができる誘導型近接センサを備えてもよい。したがって、X線分析測定を簡便なやり方で実行するための位置に正確に試料ホルダがあるかどうかを判定することが可能である。これは、試料が正確に整列するのを確実にすること、又は、装置が測定を自動的に実行するようトリガすること、又はその両方の一助することができる。金属製本体を設けることにより、試料ホルダは耐久性があるものになり、頻繁な回転により引き起こされる潜在的な摩耗に耐えることができる。さらに、試料ホルダは寿命が長くなり、頻繁な洗浄に耐えることができる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、X線回折装置が提供される。X線回折装置は、
試料を支持するための試料台と、
上述した試料ホルダと、
試料に入射X線を照射するように配置されたX線源と、
試料によって回折されるX線を検出するために配置されたX線検出器と
を備えてもよい。
【0043】
試料台は、試料ホルダの平面に対して垂直な中心軸の周りで試料ホルダを回転させ、これによって試料を回転させるように構成されてもよい。好ましくは、X線源及びX線検出器は、ゴニオメータに装着される。
【0044】
本発明の別の態様によれば、試料のX線分析を行う方法であって、
試料ホルダを設けるステップであって、
試料ホルダは、
入射面と基部とを有する本体と、
入射面内にあり、試料を受ける開口と
を備え、
開口は入射面から基部に向かって延在しており、
入射面は、入射X線の少なくとも一部を遮断する凸部を有する、
ステップを含み、
本方法はさらに、
試料ホルダの開口内に試料を挿入するステップと、
凸部及び開口が照射されるように、試料と試料を取り囲む領域とに複数のX線を照射するステップであって、
X線の入射角は1.5度未満であるステップと
を含む方法が提供される。
【0045】
好ましくは、本方法は、試料にX線を1度以下の入射角で照射するステップを含む。試料は開口内にのみ設けられ、入射面には試料は潜在せず、よって入射面は入射X線に晒される。したがって、凹部内に試料は存在しない。入射面が、多数の凹部及び多数の凸部を有してもよい。試料ホルダが、上述したものとは別様であってもよい。試料は粉末であってもよく、本方法は、試料を回転させるステップを含んでもよい。X線が照射する対象の試料の表面は、凸部の上面が在る基準面と同一平面上にある。この手法により、基準面は、試料の入射面の位置の基準として使用することができる。
【0046】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照し、例示して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】当該技術分野において公知の試料ホルダの概略図である。
図2】本発明のある実施形態における、1つの凸部及び1つの凹部を備える試料ホルダの概略図を斜視図で示している。
図3】本発明の別の実施形態における、多数の凸部及び凹部を備える試料ホルダの概略図を平面図で示している。
図4図3の試料ホルダの断面における概略図である。
図5】本発明の別の実施形態による試料ホルダの断面における概略図である。
図6】本発明の別の実施形態による試料ホルダのある部分の概略図を斜視図で示している。
図7】本発明のある実施形態によるX線分析装置の概略図である。
図8】本発明のある実施形態による方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
これらの図は、図式的なものであり、縮尺通りに描いていないことに留意すべきである。これらの図の一部の相対的寸法及び比は、図面における明確さ及び利便性のために誇張して又は縮小して示している。
【0049】
まず図1を参照すると、粉末試料を保持するための、当該技術分野において公知の試料ホルダ100の概略図が示されている。試料ホルダ100は、基部300と本体500とを備える。本体500は環状の鋼板である。この板の一方の主要面は本体の基部600をなし、他方の主要面は入射面110をなす。開口700が、板の中心を貫通して、本体500の入射面110から基部600に向かう方向に延在している。開口700は本体の中心にあり、入射面110が開口を取り囲んでいる。試料ホルダの本体500と基部300とは連結されており、これにより、試料ホルダの基部300は、開口700を規定する側壁と共に、試料を保持するキャビティを形成する。
【0050】
使用中、試料は、試料の表面が試料ホルダ100の入射面110と揃うように、開口700内に挿入される。入射X線ビームは試料の方へ向けられ、X線が試料の表面に照射される。入射X線ビームの大きさ及び形状が開口700の大きさ及び形状に厳密に適合してはいない場合、開口700を取り囲む本体500の表面も、X線により照射されることがある。よって、入射X線ビームが、少なくとも本体500の入射面110の一部を照射することもありうる。これにより、不用な「バックグラウンド散乱」(即ち、測定中の試料以外の原因に関連する散乱)が生じることがあり、X線分析結果の精度が損われることがある。これは入射角が小さい(例えば1.5度未満)の場合に特に顕著であることを発明者らは認識していた。その理由は、角度が小さい場合、X線により照射される試料ホルダの面積がより大きいからである。さらに、入射角が小さい場合は、試料ホルダから散乱されたり回折されたりしたX線信号がより強くなっている。
【0051】
図2は、本発明のある実施形態における、粉末試料を保持する試料ホルダ1を示す。この試料ホルダは、図1に示す公知の試料ホルダ100に関連し得る「バックグラウンド散乱」を、それぞれの試料ホルダの基本的特徴の多くが類似してはいるが、最少にすることができる。
【0052】
例えば、そしてここでは図2を参照すると、試料ホルダ1は、同様に、基部3と本体5とを備える。本体5は、同様に、環状の鋼板である。ここでも、この板の一方の主要面は本体の基部6をなし、他方の主要面は入射面11をなす。開口7が、板の中心を貫通して、本体5の入射面110から基部6に向かう方向に延在している。開口7は本体の中心にあり、入射面11は開口を取り囲んでいる。試料ホルダの本体5と基部3とは連結されており、これにより、試料ホルダの基部3は、開口7を規定する側壁と共に、試料を保持するキャビティを形成する。
【0053】
図2に示す試料ホルダ1と、図1に示す試料ホルダ100との間の主な差異は、本体5の入射面11が開口7の周りに延在している凸部13及び凹部9を有していることである。凸部13は、平面視において螺旋形を規定する経路に沿って延在しており、この螺旋形は、開口に中心がある。凸部は、入射面11の周縁部から開口7の方へ内向きに且つ開口7の周りで曲がりくねって、螺旋状となっている。面11の、開口7を取り囲むパターンの特徴(即ち凸部及び凹部の存在)は、不用なバックグラウンド散乱を低減したり回避したりすることを支援する。これについて、本明細書において、以下でより詳細に説明する。
【0054】
図1に関連して記載したのと同様の態様で、図2の試料ホルダ1の使用中、試料が開口7内に挿入される。ただし、図1において記載する先行技術の試料ホルダ100とは異なり、試料の表面は、試料ホルダ1の、(開口7の周りで曲がりくねっている)凸部13の頂上部と揃っている。入射X線ビームは試料の方へ向けられ、X線が試料の表面に照射される。この場合、入射X線ビームの大きさ及び形状が開口7の大きさ及び形状に厳密に適合してはおらず、且つ、X線が開口7を取り囲む本体5の表面にも照射された場合であっても、凸部13は、入射X線の少なくとも一部を凹部9や入射面11にて遮断する。試料自体には関連しない散乱X線や回折X線(即ち、試料ホルダにより散乱されたり回折されたりしたX線)を遮断する能力は、入射角が小さい(例えば1.5度未満)の場合に特に顕著であり、この場合は、より多くのX線が、試料ホルダに照射されて試料ホルダにより散乱されたり回折されたりし、従って不用な「バックグラウンド散乱」への寄与がより顕著になる。試料ホルダから散乱されたり回折されたりしたX線信号は、入射角が小さい場合により強くなっているため、入射角が小さい場合に試料ホルダかから散乱されたり回折されたりしたX線信号を遮断する能力は特に有利でもある。
【0055】
凹部9も、(平面図に見られるように)螺旋の形状をなしている。凸部13の反対向きの部分が凹部9として規定される。図2に示すように、凸部13の頂上部は実質的に平坦である。平面視において、凹部及び凸部により形成されるパターンは、ほぼ円対称である。凸部や凹部は1つしか無いが、螺旋の性質上、試料ホルダを断面において視認した場合、この凸部や凹部は、開口7を取り囲む多数の凸部及び凹部として現れることがある。
【0056】
幾つかの実施形態においては、凹部9は、本体13に螺旋形の溝を作ることにより形成される。したがって、本体5と凸部13とを一体的に形成してもよい。
【0057】
好適な実施形態において、凹部9の幅に対する凸部13の高さの比は、約0.001より大きく、約0.1より小さい。このようにして、試料ホルダ1上に入射する低角X線の少なくとも一部が試料ホルダによって検出器の方へ散乱されることが防止される。
【0058】
図3は、試料ホルダ10の別の実施形態を平面図で示している。試料ホルダ10は、入射面が多数の円形凹部及び多数の円形凸部を有することを除いて、図2の試料ホルダと同じ構造を有する。
凹部29及び凸部23は、開口27の周りに延在している。この実施形態において、凸部23は、開口27を中心とする同心環である(白色の円環として示す)。凹部29は、同心環であり(暗色の円環として示す)、隣接する凸部23同士の間に規定される。したがって、図3に示すように、入射面は円対称である。
【0059】
凹部29の幅というのは、入射面の直径を横切る断面に見られるように、径方向において、連続した凸部23同士の間に延在している寸法のことである。この幅は、凸部が本体から突出している方向に対して直交している。各凹部は他の凹部と同じ幅を有し、各凸部は他の凸部と同じ幅を有する。さらに、各凹部及び各凸部の幅は、凹部及び凸部それぞれの広がりに沿って均一である。つまり、円環の周りの各地点にて幅は同一である。各凹部29の幅は、各凸部23の幅よりも大きい。凸部の幅とは、連続した凹部同士の間の、径方向における最大寸法のことである。
【0060】
図4は、図3の試料ホルダ10を、(図3の平面図に対して直交する平面内の)断面図で示している。図3の断面図は、接線方向(即ち凸部及び凹部の接線方向)に対して直交する平面内にある。
【0061】
試料ホルダの基部21は、その周縁部の周りに環状突出部20を有する板である。本体25の基部26は、環状の位置決めスロット22を有し、この位置決めスロットは、試料ホルダ10の基部21内の環状突出部20と協働して、本体25と基部21とを嵌合させる。開口27は、本体25を貫通して延在している。したがって、本体25にある開口27の各側壁と、開口27の下方にある試料ホルダの基部23の部分とで、試料を収容するキャビティ24を規定する。
【0062】
各凸部23はそれぞれ、外側側壁及び内側側壁を有する。内側側壁は、当該凸部の、開口と同じ側にある。外側側壁は、当該凸部の、開口とは反対側にある。外側側壁は、円環の最大周縁部の周りに延在しており、内側側壁は円環の最小周縁部の周りに延在している。凸部23の頂上部は、2つの側壁同士の間に延在している。各凹部29は、隣接する凸部23同士の間に規定される。つまり、凹部は、第1凸部23の内側側壁と、径方向において第1凸部よりも開口27に近い位置に位置決めされた、隣りの(第2)凸部23の外側側壁との間に規定される。凹部の底部では、凹部の床28が、外側側壁と内側側壁との間に延在している。凹部の頂上部は開放されており且つ凸部の頂上部と同一平面上にある。
【0063】
各凸部は、高さ及び幅を有する。凸部23の高さは、凸部が本体25から突出する方向における凸部の最大寸法である。凸部の幅は、径方向における凸部の最大寸法である。凹部の深さは、凹部の両側にある凸部の高さと等しい。凹部29の幅は、接線方向に対して直交する平面において且つ径方向において、隣接する凸部同士の間の距離である。
【0064】
凹部の幅は10μm~10mmの範囲にある。凸部の高さは0.5μm~1mmの範囲にある。凸部の幅は0.5mmより小さいである。凸部の高さと凹部の幅との比は、小さくとも0.001であり、好ましくは小さくとも0.01である。凸部の高さと凹部の幅との比は、好ましくは1より小さく、より好ましくは約0.1より小さい。
【0065】
ある凸部とそれに隣接する凹部との、幅に対する高さの比が、約0.001より大きく且つ約0.1より小さいように配置することにより、試料ホルダ上に入射する低角X線の少なくとも一部が試料ホルダによって検出器の方へ散乱されることが防止される。
【0066】
言及したように、好適な実施形態において、凸部とそれに隣接する凹部について、凹部の幅(w)に対する凸部の高さ(h)の比は小さくとも0.01である。これは、(ブラッグ―ブレンターノ(対称)ジオメトリにおいて)約2.3度以下である2θの角度にて行われる測定において、バックグラウンド散乱を低減するのに役立つ。このように角度が非常に小さい場合に試料ホルダを照射しないようにすることは特に困難であることから、この範囲にわたるバックグラウンド散乱は特に問題がある。例として、各凸部は0.05mmの高さ及び0.05mmの幅を有する。各凹部の幅は0.3mmである。したがって、幅に対する高さの比はほぼ0.17である。
【0067】
図5は、図3及び図4の試料ホルダ10が、先細りになった凹部及び凸部を有する別の実施形態を示している。図5に示すように、凸部231はその先端に向かって、幅が狭くなっている。先細りになった凸部231を設けることにより、凸部231の頂上部の表面積は最少になり、このことを、バックグラウンド散乱をさらに低減するのに役立てることができる。凸部231の先端にて表面積を最少にすることにより、入射X線15が凸部231の先端から散乱する可能性が最少になる。凹部29も先細りになっており、凹部29の床28での幅は、床28の反対側にある凹部の頂上部での幅よりも狭い。
【0068】
凸部231が頂点へと先細りしている実施形態において、凹部29の幅というのは、ある凸部の先端から次の(即ち隣接する)凸部の先端までの距離のことである。凹部の幅は、10μm~10mmの間とすることができる。凸部の高さは0.5μm~1mmの間とすることができ、凸部の幅は0.5mmより小さくすることができる。凸部の高さと、隣接する凹部の幅との間の比は小さくとも0.01である。凸部の高さと、隣接する凹部の幅との間の比は、好ましくは約0.1より小さい。
【0069】
凸部及びその隣接する凹部の、幅に対する高さの比が約0.001より大きく且つ約0.1より小さくなるように配置することにより、小さい角度で入射するX線の少なくとも一部を試料ホルダから検出器の方へ散乱しないようにすることができる。
【0070】
好適な実施形態においては、凸部の高さ(h)の、隣接する凹部の幅(w)に対する比は小さくとも0.01である。このことは、(ブラッグ―ブレンターノ(対称)ジオメトリにおいて)約2.3度以下である2θの角度にて行われる測定において、バックグラウンド散乱を低減するのに役立つ。このように角度が非常に小さい場合に試料ホルダを照射しないようにすることは特に困難であることから、この範囲にわたるバックグラウンド散乱は特に問題がある。幅に対する高さの比が特定の値である凸部を設けることにより、試料ホルダに関連する散乱X線や回折X線の大部分がX線検出器まで透過するのを阻止することができ、これは、試料ホルダからのX線信号透過が著しく(例えば実質的に検出不可能なレベルにまで)低減されることを意味する。
【0071】
図5に示すように、使用中、入射X線15が試料(図示せず)と試料ホルダ10とを照射する。入射X線15の一部は、凹部29の床28にて反射されるが、試料からのX線と一緒に検出されることがある。一方、凹部間に形成されている凸部231により、入射X線の一部が遮断される。さらに、凹部29の床28にて反射されるX線の一部が、凸部231により遮断される。
【0072】
図6は、試料ホルダ30の別の実施形態の断面図を示している(本体35のみを示し、試料ホルダの基部は示していない)。試料ホルダは、(平面視において)環状であり、且つ、本体35を貫通して延在している開口37を有する。試料ホルダの基部に位置決めスロット42が形成されている。この実施形態においては、試料ホルダ30の入射面は5つの領域を有する。これらの領域のうちの3つ(第1~第3領域)は、第1~第3領域のうちの他の領域にある凹部及び凸部と同じ寸法である凹部及び凸部を有する。第1~第3領域は、入射面の約40パーセントを占める。第1領域31は、開口37に近接する領域である。第3領域33は、本体35の周縁部の周りに延在している。第2領域32は、第1領域31と第3領域33との間にある。第1領域31と第2領域32とは、凹部1つのみからなる第4領域34により分離されている。第5領域36は、第2領域32と第3領域33との間にあり、これも凹部を1つのみ備える。第4領域34にある凹部は、第1~第3領域にある及び第5領域にある凹部の幅よりも大きい幅を有する。第5領域にある凹部は、第1~第3領域内の凹部の幅よりも大きい幅を有する。一方、第4及び第5領域の各凹部の、幅に対する高さの比は、第1及び第2領域にある凸部及び凹部の、幅に対する高さの比と同じである。
【0073】
図6において、凹部の深さとは、接線方向に対して直交する断面において視認される、径方向に対して直交する方向における凹部の最大寸法のことである。
【0074】
図7は、本発明のある実施形態によるX線分析装置50を示している。X線分析装置は反射での位置関係(geometry)内に配置されている。X線分析装置は、試料2(例えば粉末試料)に照射するように配置されたX線管52を備える。試料2は試料ホルダ10内に収容され、試料ホルダは試料台55によって支持される。各凸部の先端(簡略にするために図7には不図示)が試料2の入射面と同じ平面内に在るように、試料ホルダ1のキャビティに試料が充填される。このようにして、各凸部の先端は、試料2の入射面の基準面内に在る。試料2によって回折されるX線を受けるためにX線検出器57が配置されている。
【0075】
試料ホルダ1の入射面の凹部及び凸部のパターンが円対称である実施形態においては、試料台は、試料の入射面に対して直交する(且つ試料ホルダの、互いに反対側にある主要面を両方とも通過する)中心軸の周りで試料ホルダ1を回転させるように構成されている。特に、試料台はころ軸受を有してもよく、このころ軸受は、試料ホルダより上に配置され、且つ、試料ホルダ1の周縁部の周りの離れた場所で入射面に又は試料ホルダ1の縁部に接触するように構成される。試料台は、試料ホルダより下に配置されるモータにより、試料ホルダを中心軸の周りで回転する。入射面は固定平面で回転するが、ころ軸受はこの固定平面を規定しつつ入射面を案内する。
【0076】
図8は、本発明のある実施形態による、試料ホルダを使用する方法を示している。試料ホルダは、本体を備えており、本体は、その入射面から本体の基部に向かって延在している、試料を受けるための開口を有する。入射面は、少なくとも1つの凸部を含む。最初のステップ60において、試料ホルダが提供される。挿入ステップ62において、試料ホルダ1の開口内に試料2が挿入される。試料の入射面が凸部の先端の在る基準面と同一平面上にあるように、キャビティに試料2が充填される。この手法を用いれば、基準面を、試料2の入射面の位置の基準として使用できる。試料は、開口内にのみ挿入されるものであり、開口を取り囲み且つ凹部及び凸部を有する表面には、試料は存在しない。
【0077】
後続のステップにおいて、試料台上に試料ホルダが載置される。幾つかの実施形態においては、試料ホルダは金属製であり、X線装置はセンサ(例えば誘導型近接センサ)を備える。このセンサは、試料ホルダの有無を検出するために使用可能である。
【0078】
照射ステップ64において、X線試料は、X線によって、1.5度より小さい角度を有する入射角θの範囲にわたって照射される。粉末試料により回折されるX線を受けるために、X線検出器は検出角度2θのところに配置される。入射角がそれぞれθであるところで、試料台は試料ホルダを中心軸の周りで回転させてもよい。このようにして、X線回折を、試料の様々な回転角度にて検出することができる。
【0079】
試料ホルダは(平面視において)円形状や環形状でなくてもよいことが当業者により理解されるであろう。平面視における形状は、楕円形又は他の任意の形状であってもよい。さらに、開口は、平面視において円形状でなくてもよい。開口は、楕円形又は他の任意の形状であってもよい。
【0080】
試料ホルダは、単一の凸部でなく、螺旋形に配置される多数の離散的な凸部を有することができ得る。
【0081】
凸部及び凹部は、開口の周りに延在している。
【0082】
図3図5では凸部は4つしか示されていないが、試料ホルダは任意の数の凸部を有することができうる。例えば20より多く又は100より多く有することができる。
【0083】
図3図5では凹部は3つしか示されていないが、試料ホルダは任意の数の凹部を有することができうる。例えば20より多く又は100より多く有することができる。
【0084】
実施形態において、凹部は、サンドブラスト等による粗い面を設けることにより形成されてもよい。しかしながら、螺旋形の凸部、同心円状の楕円形の凸部、又は、同心円状の円形の凸部を備える試料ホルダが、バックグラウンド散乱をより良好に抑制することを達成しつつ、許容できる耐久性も達成することが判った。試料ホルダの本体の表面に直接接触することにより試料ホルダを回転させるころ軸受が長期に亘って回転した後のパターンが摩耗しにくいことが望ましい。
【0085】
円対称のホルダ(同心円状の円形溝等)又はほぼ円対称のホルダ(1つ又は複数の螺旋溝等)において、1つ又は複数の凹部及び1つ又は複数の凸部の少なくとも一方は、凹部/凸部の広がりに対して直交する平面(接線方向に対して垂直な平面等)内に均一な断面を有してもよい。
【0086】
試料ホルダが複数の凹部を含む場合、各凹部は互いに同じ幅を有してもよく、又は、複数の凹部のうち少なくとも1つは複数の凹部のうちの別のものとは異なる幅を有してもよい。同様に、各凸部は他の凸部と同じ幅を有してもよく、又は、複数の凸部の少なくとも1つは、複数の凸部のうちの別のものとは異なる幅を有してもよい。
【0087】
凸部又は凸部のそれぞれは、均一な幅を有してもよい。各凸部は、同一の均一な幅を有してもよい。凸部又は凸部のそれぞれは、均一な高さを有してもよい。凸部は、同一の均一な高さを有してもよい。
【0088】
凹部又は凹部のそれぞれは、均一な幅を有してもよい。
【0089】
凸部それぞれの高さは、該凸部とその隣接する凸部との間に規定される凹部の深さに等しい。
【0090】
1つ又は複数の凹部は、凹部の広がりに対して直交する平面内の断面において対称であってもよく又は非対称であってもよい。
【0091】
1つ又は複数の凸部は、1つの凸部の広がり又は複数の凸部の広がりに対して直交する平面内の断面において対称であってもよく又は非対称であってもよい。
【0092】
各凸部の壁は、1つの凸部の広がり又は複数の凸部の広がりに対して直交する平面内の断面において直線状であってもよく又は曲線状であってもよい。
【0093】
凸部の壁の斜面は、30度未満であってもよく又は10度未満であってもよい。
【0094】
凸部の外端から次の凸部の対応する外端までの距離(即ち、凸部により規定されるパターンのピッチ又は周期)は、小さくても10μmであり、好ましくは小さくても300μmである。
【0095】
凹部の床は平坦であってもよい。
【0096】
各凸部は頂点へと先細りしていてもよく、又は、各凸部の先端は切り取られて(truncated)いてもよい。各凸部は、1つの凸部の広がり又は複数の凸部の広がりに対して直交する平面内の断面において、ある地点まで先細りしていてもよい(例えば各凸部は逆v字形状を有してもよい)。これの代わりに、各凸部は切り取られていてもよい。例えば断面において、凸部は、三角錐台の形状を有してもよい。
【0097】
凹部は「長尺」であってもよく又はなくてもよい(例えば、凹部は角錐形又は円錐形であってもよい)。
【0098】
各凸部は長尺である。長尺の凸部は、線状(例えば線形状、山形形状、ジグザグ形状)であってもよく、又は、曲線状(例えば平面図における楕円形)であってもよい。線状の凸部は、ハニカムパターン等のパターンを規定してもよい。
【0099】
さらに、試料ホルダは鋼製でなくてもよい。試料ホルダは、X線に対して実質的に不透明な任意の材料であってもよい。例えば、試料ホルダは真鍮を含んでもよい。
【0100】
試料ホルダは、本体とは別になった基部を必ずしも備えない。幾つかの実施形態においては、開口は本体の途中まで延在して、試料を収容するためのキャビティを形成してもよい。幾つかの他の実施形態においては、開口は本体を貫通して延在しており、キャビティは、試料ホルダが接する表面と開口とにより規定される。例えば、キャビティは、開口を規定する本体の側壁と試料台の表面とにより規定されてもよい。
【0101】
開口は、試料ホルダの本体を貫通して延在していなくてもよい。幾つかの実施形態においては、開口は、試料ホルダの本体を途中まで通って延在してもよい。これにより、試料ホルダを基部に連結する必要性が避けられる。
【0102】
本体は、ニッケルコーティング等により被覆されてもよい。
【0103】
本体の基部は、環状の位置決めスロットを有してもよく、試料ホルダの基部は環状の凸部を有してもよい。位置決めスロットと凸部とは協働して、試料ホルダの本体と試料ホルダの基部とを嵌合させる。しかし、本体と基部とは、異なる方法で連結されてもよい。
【0104】
試料ホルダは金属製の本体を備えてもよく、X線装置は、磁気センサ、光学センサ、又は、金属製の本体を検出できる別の種類のセンサを備えてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】