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  • 特表-セラミック材料へのデータ記録 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】セラミック材料へのデータ記録
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/0045 20060101AFI20230913BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20230913BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20230913BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230913BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230913BHJP
   G11B 7/0033 20060101ALI20230913BHJP
   G11B 7/125 20120101ALI20230913BHJP
【FI】
G11B7/0045 Z
B23K26/57
B23K26/352
B81C1/00
B81B3/00
G11B7/0033
G11B7/125
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509850
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021069827
(87)【国際公開番号】W WO2022033800
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】20190446.3
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055832
【氏名又は名称】セラミック・データ・ソリューションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CERAMIC DATA SOLUTIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】プフラウム・クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3C081
4E168
5D090
5D789
【Fターム(参考)】
3C081AA17
3C081BA28
3C081CA02
3C081CA17
3C081CA31
3C081DA07
3C081EA12
3C081EA14
4E168AA02
4E168AB01
4E168AD18
4E168AE05
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA32
4E168DA40
4E168DA46
4E168DA47
4E168FC03
4E168JA15
5D090AA03
5D090CC01
5D090KK02
5D090LL01
5D090LL03
5D789FA02
5D789GA10
5D789JA51
(57)【要約】
【課題】セラミック材料の層に比較的短い時間で大量のデータを記録するのに適した方法および装置を提供する。
【解決手段】セラミック材料の層を提供する工程;及び、デジタルマイクロミラー装置を使用して、セラミック材料の層の複数の領域にレーザ光を選択的に照射する工程;を含み、選択された領域のそれぞれに対する、前記レーザ光に関するパラメータおよびその照射時間が、選択された各領域をアブレーションすることで前記セラミック材料の層に窪部を形成し、それによって前記セラミック材料の層にデータを記録できるように、制御されており、前記レーザ光を、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザから生成する方法、および、この方法に用い得る装置とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料の層にデータを記録する方法であって、
セラミック材料の層を提供する工程と、
デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域にレーザビームを選択的に照射する工程と
を含み、
選択された領域のそれぞれについて、前記レーザビームに関するパラメータおよびその照射時間を、前記選択された領域のそれぞれをアブレーションすることで前記セラミック材料の層に窪部を形成し、それにより前記セラミック材料の層にデータを記録できるように、制御し、
前記レーザビームを、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザから生成する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記レーザ光が、好ましくはレーザゾーンプレートまたは空間光変調器によって生成される、ベッセルビームである、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記窪部が大気に開放されている、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、
前記セラミック材料の層は、記録中に水平方向に移動され、当該方法は、さらに、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の第1の領域内の複数の領域を前記レーザ光で選択的に照射する工程であって、前記第1の領域は前記デジタルマイクロミラー装置によって被覆可能である、工程、
前記第1の領域とは異なる第2の領域が、前記デジタルマイクロミラー装置によって被覆可能であるように、前記セラミック材料の層を平行移動させる工程、および
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の前記第2の領域内の複数の領域を、前記レーザ光で選択的に照射する工程、

を含む、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、前記セラミック材料の層が、
CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;
TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属カーバイド;
Al、TiO、SiO、ZrO、ThO2,MgO、Cr、Zr、Vなどの金属酸化物;
TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;または
TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属シリサイド;
のうちの少なくとも1種を含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、
前記セラミック材料の層を提供する工程が、
基板を提供する工程と、
前記基板を、前記セラミック基板の材料とは異なる前記セラミック材料の層でコーティングする工程と、
を含み、前記セラミック材料の層が、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは10nm以下の厚みを有する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記基板が、
Al、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、Vのうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含有し;および/または
前記セラミック基板が、
CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;
TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属カーバイド;
TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;および
TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属シリサイド;
のうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含有する、方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、前記基板が、1mm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは200μm未満、最も好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、最も好ましくは10μm未満の、厚みを有する、方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の方法において、前記基板は、前記レーザビームの波長に対し透過性を有する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記基板が、ガラス状の透過性セラミック材料または結晶性セラミック材料を含み、および/または
前記基板が、サファイア(Al)、シリカ(SiO)、ケイ酸ジルコニウム(Zr(SiO))、酸化ジルコニウム(ZrO)、一酸化ホウ素(BO),三酸化ホウ素(B),酸化ナトリウム(NaO),酸化カリウム(KO),酸化リチウム(LiO),酸化亜鉛(ZnO),酸化マグネシウム(MgO)のうちの1種または複数種の組合せを含有する、方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域を、前記レーザビームで選択的に照射する工程が、透過性基板を介して前記セラミック材料の層を照射する工程を含む、方法。
【請求項12】
請求項6から11のいずれか一項に記載の方法において、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域を、前記レーザ光で選択的に照射する工程では、前記窪部が前記基板に向かって延びる領域のそれぞれにおいて、十分な量の材料をアブレーションする、方法。
【請求項13】
請求項6から12のいずれか一項に記載の方法において、前記コーティングされた基板を、記録前及び/又は記録後に、焼戻しする工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法において、前記レーザ光が、1000nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは600nm以下、好ましくは400nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下の最小焦点直径を有する、方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法において、前記レーザ光の波長が、700nmよりも短く、好ましくは650nmよりも短い、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法において、前記窪部が、複数箇所の所定の位置のサブセットによって作成され、前記複数箇所の所定の位置が、規則的なマトリックスまたは配列をなすように配置される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記規則的なマトリックスまたは配列が、正方形のパターンまたは六角形のパターンをなす、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法において、前記窪部が、円形状の断面を有する、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法において、負に帯電したメッシュまたはシートを用いて、正に帯電したデブリを収集する工程を、さらに含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記セラミック材料の層が、前記デジタルマイクロミラー装置と、前記負に帯電したメッシュまたはシートと、の間に配置される、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、前記負に帯電したメッシュまたはシートが、前記デジタルマイクロミラー装置と、前記セラミック材料の層と、の間に配置される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記負に帯電したメッシュまたはシートが、前記レーザ光を通過させる開口部を備える、方法。
【請求項23】
セラミック材料(1)の層にデータを記録するための装置であって、
ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザを含むレーザ光源(2)と、
複数のレーザビーム(4)を放射するように構成されたデジタルマイクロミラー装置(3)と、
前記レーザ光源から放射されたレーザ光を、前記デジタルマイクロミラー装置(3)上に平行に照射するためのコリメート光学系と、
基板(7)を取り付けるための基板ホルダ(6)と、
前記デジタルマイクロミラー装置(3)によって放射された前記複数のレーザビーム(4)のそれぞれを、前記基板ホルダ(6)に取り付けられた前記基板(7)上に集光するように調整された、集光光学系(8)と、
を備え、
前記デジタルマイクロミラーデバイス(3)によって放射される前記複数のレーザビーム(4)の各々のフルエンスが、100mJ/cmよりも多いことを特徴とする、装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、前記集光光学系(8)が、高い開口数(好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.8)を有するレンズを含む、装置。
【請求項25】
請求項23または24に記載の装置において、ビーム成形装置、好ましくはレーザゾーンプレートのマトリックスまたは空間光変調器を、さらに備える装置。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか一項に記載の装置において、前記複数のレーザビームの各々は、前記基板において、1000nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは600nm以下、好ましくは400nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下の最小焦点直径を有する、装置。
【請求項27】
請求項23から26のいずれか一項に記載の装置において、前記デジタルマイクロミラー装置を制御するように構成されたプロセッサを備えると共に、前記基板ホルダが搭載されるXY位置決めシステムを任意選択で更に備える、装置。
【請求項28】
請求項23から27のいずれか一項に記載の装置において、前記レーザ光源の波長は、700nmよりも短く、好ましくは650nmよりも短い、装置。
【請求項29】
請求項23から28のいずれか一項に記載の装置において、
正に帯電したデブリを集めるための、負に帯電したメッシュまたはシート(15)を更に備える、装置。
【請求項30】
請求項29に記載の装置において、前記基板ホルダ(6)が、前記集光光学系(8)と前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)との間に配置される、装置。
【請求項31】
請求項29に記載の装置において、前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)が、前記集光光学系(8)と前記基板ホルダ(6)との間に配置される、装置。
【請求項32】
請求項31に記載の装置において、前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)が、前記複数のレーザビーム(4)が前記メッシュまたはシートを通過可能とする開口部を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料の層にデータを記録する方法、およびセラミック材料の層にデータを記録するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の出願人は、情報の長期保存方法及びそのための記憶媒体を開発した(PCT/EP2019/071805及びPCT/EP2020/068892を参照)。前記情報の長期保存方法の一態様によれば、セラミック材料を含む書込み可能なプレートの局所的な領域を、レーザビームを用いて処理することにより、前記書き込み可能なプレート上で情報が符号化される。この方法は、原理的には、固定焦点を有するレーザビームを使用し、書込み可能なプレートをXY位置決めシステムに取り付けて、書込み可能なプレートの局所的な領域を、符号化が行われるレーザ焦点に移動させることにより行うことができる。しかし、この方法は煩雑で、時間がかかるものであった。
【0003】
米国特許4069487号明細書(特許文献1)及び米国特許4556893号明細書(特許文献2)にも、金属酸化物や金属炭化物等の記録層材料を利用した、レーザで記録可能な記録媒体が開示されている。しかし、どちらの場合も、記録は回転ディスク技術に依拠して行われ、この技術は、記録螺旋に沿って順次ピットを形成する必要から、記録プロセスが遅くなるため、不都合であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4069487号明細書
【特許文献2】米国特許第4556893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、セラミック材料の層にデータを記録するための、改良された方法であって、比較的短時間で大量のデータを記録することに適した方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に係る方法、および請求項23に係る装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
したがって、本発明は、セラミック材料の層にデータを記録するための方法に関するものである。この方法によれば、セラミック材料の層が提供される。このセラミック材料の層の複数の領域には、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いることにより、レーザビームが選択的に照射される。選択された領域のそれぞれに対する、レーザビームに関するパラメータ及び照射時間は、セラミック材料の層に窪部を形成することで当該セラミック材料の層にデータを記録可能とするために、選択された領域のそれぞれをアブレーションし得るように構成される。
【0008】
レーザビームは、好ましくはピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザによって生じる。ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザを利用することで、くっきりした窪部を形成することができ、非常に有利である。米国特許4556893号明細書(特許文献2)に開示されたアブレーション技術では、集光・変調されたレーザダイオードビームを利用し、レーザ出力に応じて、窪部や気泡を形成する。記録層の材料は光吸収性を有するため、この層は局所的に加熱され、その結果、溶融および/または蒸発が生じる。しかし、このプロセスを制御するのは難しく、一般的に不利な穴形状になりがちである。例えば、米国特許4556893号明細書(特許文献2)の図4にも示されているように、溶融し固化した材料が、穴の縁部周辺にリング状に形成されてしまう場合があった。このような状態は、データ密度を増大させるため極小の窪部を形成する際には、許容されない。極小の窪みを再現性のある形で形成し、再現性のある読出技術に適用することが求められるからである。
【0009】
本発明の発明者は、セラミック材料を用いる場合における様々なアブレーション技術について、複数の実験を行い、その結果、ピコ秒レーザやフェムト秒レーザを用いることで、断面が円形状でエッジが非常に鋭利な、はっきりとした穴を生成できることが分かった。これは、ピコ秒レーザやフェムト秒レーザによる、アブレーションプロセスによるものと考えられる。ピコ秒レーザやフェムト秒レーザのパルスは、セラミック材料を加熱するのではなく、むしろセラミック材料の電子と相互作用する。ピコ秒レーザパルスまたはフェムト秒レーザパルスは、化学結合を担う外側の価電子と相互作用し、その結果、価電子が原子から剥ぎ取られ、残された原子は正電荷を帯びた状態になると推測される。化学結合が切断された原子の間に相互反発の状態が生じると、物質は「爆発」して、熱放射よりも速い速度の高エネルギーイオンからなる小さなプラズマ雲となる。この現象はクーロン爆発と呼ばれ、ナノ秒レーザなどによる通常のレーザアブレーションとは明らかに異なるものである。通常のレーザアブレーションの場合、表面の材料は加熱されて溶融・蒸発し、レーザが衝突する領域の縁に溶融した材料が残ることとなる。熱により生じるアブレーションは材料内における区界しがたい熱流の影響を受けるのに対し、クーロン爆発は物理的なプロセスであるからレーザが衝突した領域に明確に限定される。したがって、クーロン爆発は、膨大な数の小さな窪部を生成できるという点で理想的であり、既知の技術と比べてデータ密度を飛躍的に向上させることが可能である。ピコ秒レーザでも良好な結果を得ることはできるが、上記の意味では、フェムト秒レーザの使用が有利である。したがって、レーザは10psよりも小さいパルス持続時間を有することが好ましく、1psよりも小さいパルス持続時間を有することがより好ましい。
【0010】
DMDから照射される複数のレーザビームのそれぞれのフルエンスは、100mJ/cmよりも大きく、400mJ/cmよりも大きいことが好ましく、800mJ/cmよりも大きいことがより好ましく、1J/cmよりも大きいことが最も好ましい。
【0011】
本発明の文脈では、「窪部」という用語は、セラミック材料が有する穴、溝または凹部に関するものである。換言すれば、窪部の占める体積空間には、セラミック材料は存在しない。前記体積空間は、大気と流体連通している。言い換えれば、各窪部は、大気に対して開放されており、被覆されたり閉塞されたりはしていない。
【0012】
このような開放された窪部は、アブレーション前に窪部内に存在していた材料を完全に清浄にアブレーションし得るので、米国特許第4069487号明細書(特許文献1)に記載のような情報記録部分を被覆する保護層を用いる技術と比べて有利である。とりわけ、データ密度を高めるために極小の窪部を形成する場合、この窪部を再現性よく形成し、再現可能な読出し技術を実現することが求められるので、とても重要である。これは、データ密度を増大させるため極小の窪部を形成する際に、特に重要である。極小の窪部を再現性のある形で形成し、再現性のある読出技術に適用することが求められるからである。
【0013】
DMDは、マイクロミラーのアレイまたはマトリックスを有し、アレイまたはマトリックスの個々のマイクロミラーを調整することにより、セラミック材料上の所定のピクセルを選択的に照射することが可能である。このように、セラミック材料上の膨大な数のピクセルを、同時にしかも精度よく制御された方法で照射することができ、またそのため自動化も容易に行える。DMDに含まれるマイクロミラーの数によっては、データを記録するために単一の選択領域をアブレーションするに十分な時間、セラミック材料の層に含まれる何百万もの選択領域(すなわちピクセル)を、同時に操作することができる。このようなデジタルマイクロミラー装置は容易に入手可能であり、記録装置に簡単に搭載することができる。
【0014】
好ましくは、セラミック材料上のピクセル、すなわち窪部が形成され得るサブセットにおける所定の位置は、規則的なマトリックスまたはアレイ、すなわち格子構造またはほぼ格子状の構造を有する繰り返し2次元パターンをなすように配置される。特に好ましいマトリックス又はアレイは、例えば、正方形パターンや、六角形パターンを有する。このようなマトリックス又はアレイは、例えば、CD、DVD又はブルーレイディスクのものよりも大幅に大きい最適なデータ密度を実現することができる。これは、個々のピクセル又はビットが、
ビット寸法の個々のピクセルのサイズ(例えば、ブルーレイディスクの150nm)と比べて2倍以上のサイズを有するトラックピッチ(例えば、ブルーレイディスクの320nm)によっては分離されていないためである。また、従来のディスク型の記録媒体は、その最大回転速度が、記録時や読出し時に安全に操作できる範囲内となるように、制限されている。そのため、このようなマトリックスやアレイで達成できる書込み/読取り速度は、螺旋状に配置されたピットによって到達できる速度よりもはるかに大きくなる。
【0015】
好ましくは、窪部は円形状の断面を有する。窪部は、セラミック層内に部分的にだけ入り込んでいてもよいし、セラミック層内に貫通孔を形成してもよい。前者の場合、異なる深さの凹部または穴が形成されてもよく、それぞれの深さはPCT/EP2020/068892に記載されているように予め定義された情報のビットに対応していてもよい。そのためには、セラミック材料の層は、2つ以上のレーザパルスで照射されてもよく、DMDのマイクロミラーを、セラミック材料の層の領域が(i)全く照射されない領域、(ii)単一のレーザパルスで1回照射される領域、(iii)2つのレーザパルスで2回照射される領域、あるいはそれ以上などとなるように、以後のパルス間で調整してもよい。
【0016】
本出願人が以前に行った実験では、5μmの厚さのCrNの層が、単一のフェムト秒レーザパルスによって可視的かつ確実に操作できることが示されている(PCT/EP2020/068892を参照されたい)。したがって、本発明の方法では、数百フェムト秒以内に少なくとも数千ピクセルから数百万ピクセルを符号化することが可能である。したがって、本発明に係る方法による記録速度は、DMDのマイクロミラーの数と、マイクロミラーの調整に要する時間とによる制限を受けるだけである。
【0017】
好ましくは、セラミック材料の層は、記録中に、例えば走査ステージなどのXY位置決めシステム(z軸が層の表面に垂直)を利用して横方向に移動または平行移動されてもよい。したがって、一つのピクセルのアレイまたはマトリックスに記録されると、セラミック材料の層を隣接する領域に移動させるだけで、上記アレイ/マトリックスに隣接するアレイまたはマトリックスにも記録させることができる。
【0018】
したがって、本発明に係る方法は、好ましくは、第1の領域をDMDによってカバーでき、該DMDを用いて、セラミック材料の層の第1の領域内の複数の領域をレーザ光により選択的に照射するステップと;第1の領域とは異なる第2の領域をDMDでカバーし得るように、セラミック材料の層を平行移動させるステップと;DMDを用いて、セラミック材料の層の第2の領域内の複数領域をレーザ光により選択的に照射するステップと、を備える。
【0019】
DMDとXY位置決めシステムの両方を適切に制御すれば、少なくとも10MB/s、好ましくは少なくとも100MB/s、好ましくは少なくとも1GB/s、より好ましくは少なくとも10GB/sのデータ記録速度を達成することが可能である。
【0020】
好ましくは、レーザビーム(すなわち、DMDから照射された複数のレーザビーム)は、高い開口数を有するレンズ(またはより複雑な光学系)によって、セラミック材料の層上に集束してもよく、好ましくは上記の開口数は、少なくとも0.5であってもよく、より好ましくは少なくとも0.8であってもよい。好ましくは、開口数をさらに高くするために、液浸光学系を使用してもよい。液浸光学系を使用する場合、開口数は、少なくとも1.0であってもよく、好ましくは少なくとも1.2であってもよい。
【0021】
データ記録に有利な特定のビーム形を作り出すために、ビーム成形装置を利用することがさらに好ましい。例えば、DMDから発せられる複数のレーザビームを、レーザゾーンプレートのマトリックスを透過させてもよい。これらのレーザゾーンプレートは、例えば、複数のレーザ光の各々が、針状のベッセルビームを成形するように、構成されていてもよい。
【0022】
ベッセルビームは、焦点深度を大幅に向上させることができる点で有利である。通常のガウシアンビームの焦点距離は、集光する光の波長程度であるが、ベッセルビームで得られる焦点距離は、集光する光の波長の4倍以上となる。同時に、焦点の幅は、ガウシアンビームで得られる焦点の幅の1/2程度となる。
【0023】
一般に、本発明に係る方法によって実現し得る特徴部分のサイズ(例えば、セラミック材料中の窪部の直径)は、ガウシアンビームの場合には2/3λ(空気)~1/2λ(浸漬)、ベッセルビーム(ここでλはレーザ光の波長)の場合には1/3λ(空気)~1/4λ(浸漬)のあいだで変化し得る。このように、ベッセルビームのビーム形は、加工を微小化でき、またそのため、記録されるデータの密度を高めることができ、有利である。そのうえ、ベッセルビームの焦点距離が長くなることで、例えば、より深い窪部を生成することができる点でも、有利である。この利点は特に、例えば窪部の深さによって情報を符号化可能とするために、複数の異なる深さを特徴として形成しなければならない場合に関連してくる。ガウシアンビームの焦点は円錐形状であるため、窪部をより深くするということは、表面における窪部の直径を増大させることを意味する。一方、ベッセルビームの焦点は円筒形状であるため、直径がほぼ一定の状態で、より深い窪部を形成することができる。
【0024】
このようなベッセルビームは、他のビーム成形装置によって生成することもできる。ビーム成形装置の特に好ましい一例は、空間光変調器であり、これはベッセルビームの生成、光近接制御、位相シフトマスクの提供など、多様な用途に用いることができる。
【0025】
好ましくは、セラミック材料の層は、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;および/またはTiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属カーバイド;および/またはAl、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、Vのような金属酸化物;および/またはTiB、ZrB2,、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;および/またはTiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属シリサイドを含有する。特に好ましい材料は、BC、HfC、Cr、ZrB、CrB、SiB6、Si、ThN、CrN、およびCrAlNである。これらの材料は,記録データを長期保存するために必要な、十分な硬度と、環境劣化への耐性とを備えている。
【0026】
好ましくは、セラミック材料の層を提供する工程は、基板を準備する工程と、セラミック基板を構成する材料とは異なるセラミック材料からなる層によって基板をコーティングする工程とを有する。したがって、堅牢でかつより安価な基板を用い、構造的完全性を保つことで、より高価なコーティング材料は少量でよい。セラミック材料の層は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは10nm以下の厚さを有する。
【0027】
好ましくは、基板は1mm未満、好ましくは250μm未満、より好ましくは200μm未満、最も好ましくは150μm未満の厚さを有する。
【0028】
さらに、基板を用いることにより、基板(コーティング上に穴が形成されている箇所)と、その周囲のコーティング材料との間の、光学的コントラストを生成することが可能となる。したがって、デジタルマイクロミラー装置を使用して、セラミック材料の層の複数領域にレーザビームを選択的に照射する工程は、好ましくは、窪部が基板に向かって延びる領域のそれぞれにおいて、十分な材料をアブレーションする工程を含む。好ましくは、選択された領域を処理することにより、これらの領域を、これを囲繞する他の材料と区別できるようになる。いくつかの用途では、これによって光学的に区別可能な状態となる。しかしながら、別の例では(特に、符号化された構造が小さすぎる場合)、これらの領域を周辺の材料から区別するには、例えば、走査型電子顕微鏡を用いたり、又は例えば磁気特性、誘電特性若しくは導電特性のような別の物理的パラメータの変化を測定することが必要となる。
【0029】
好ましくは、セラミック基板は酸化物セラミックを含有していてもよく、より好ましくは、当該セラミック基板は、Al、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、およびVのうちの1種または複数種の組合わせを、少なくとも90重量%含有していてもよく、最も好ましくは少なくとも95重量%含有していてもよい。これらの材料は、様々な環境下において特に耐久性が高く、かつ/または環境劣化に対して耐性を有することが知られている。したがって、これらの材料は、様々な条件下における長期保存に特に適している。セラミック基板は、サファイア(Al)、シリカ(SiO)、ケイ酸ジルコニウム(Zr(SiO))、酸化ジルコニウム(ZrO)、一酸化ホウ素(BO)、三酸化ホウ素(B)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化リチウム(LiO)、酸化亜鉛(ZnO)、および酸化マグネシウム(MgO)のうちの1種または複数種の組合せを含有することが特に好ましい。
【0030】
好ましくは、セラミック基板は非酸化物セラミックを含有し、より好ましくは、当該セラミック基板は、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、及びBNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属カーバイド;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、及びWBなどの金属ホウ化物;ならびにTiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物のうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%含有していてもよく、最も好ましくは少なくとも95重量%含有していてもよい。これらの材料は、様々な状況下で特に耐久性があり、かつ/または環境劣化に対する耐性を有することが知られている。したがって、これらの材料は、様々な条件下における長期保存に特に適している。また、セラミック基板が、BN、CrSi、SiC、およびSiBのうちの1種または複数種の組合せからなることが特に好ましい。
【0031】
好ましくは、セラミック基板は、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mon、または融点が1400℃を超える他の金属のうちの、1種または複数種の組合せを含有する。好ましくは、セラミック材料と金属とは、セラミック材料が金属または金属合金中に分散した状態の金属マトリックス複合体を形成している。好ましくは、金属は、セラミック基材(すなわち金属マトリックス複合体)の5~30重量%、好ましくは10~20重量%の量を占めていてもよい。特に好ましい金属マトリックス複合体は、WC/Co-Ni-Mo、BN/Co-Ni-Mo、TiN/Co-Ni-Moおよび/またはSiC/Co-Ni-Moである。
【0032】
セラミック基板とセラミック材料の層との間の強い結合を達成するために、セラミック材料の層は、セラミック基板上に直接、すなわち中間層を介在させることなく、コーティングされることが好ましい。コーティングされたセラミック基板は、そのような強い結合を達成するために、記録を行う工程の前および/または後に、焼戻し工程に付されるとが好ましい。焼戻し工程は、セラミック基板とセラミック材料の層との間に、焼結界面を精製することができる。隣接する2層のうちの一方の層からの1つ以上の元素が、隣接する2層のうちの他方の層へと拡散し得るので、焼結界面は基材およびセラミック材料の両方からの少なくとも1種の元素を含有することができる。焼結界面を設けることにより、セラミック基板とセラミック材料の層との間の結合を更に強化することができる。
【0033】
好ましくは、コーティングされたセラミック基板を焼き戻す工程は、コーティングされたセラミック基板を、200℃~4000℃の範囲内の温度にまで、より好ましくは1000℃~2000℃の範囲内の温度にまで、加熱する工程を含む。焼戻し工程は、1時間当たり少なくとも10Kの温度上昇を伴う加熱段階と、少なくとも1分間のピーク温度におけるプラトー段階と、最後に1時間当たり少なくとも10Kの温度低下を伴う冷却段階とから構成されてもよい。焼戻し工程は、セラミック基板を硬化する上で、および/またはセラミック材料とセラミック基板とを恒久的に結合する上で、効果がある。
【0034】
セラミック材料の層のうちの選択された領域に、レーザを照射してアブレーションを行うことにより、セラミック材料の層のうちの選択されなかった領域と比べて、処理が行われた領域において、下部のセラミック基板と(光学的に)区別できるコントラストを生じさせることができる。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、基板は、レーザ光の波長に対して透過性を有する。好ましくは、レーザ光と同じ波長を有する光が基板を透過する透過率は、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%である。基板は、例えば、ガラス状の透明なセラミック材料または結晶性セラミック材料を含み、具体的には、サファイア(Al)、シリカ(SiO)、ケイ酸ジルコニウム(Zr(SiO))、酸化ジルコニウム(ZrO)、一酸化ホウ素(BO)、三酸化ホウ素(B)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム (KO)、酸化リチウム(LiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)などを含有し得る。
【0036】
特に好適な結晶性セラミック材料は、サファイア(Al)、シリカ(SiO)、ケイ酸ジルコニウム(Zr(SiO))、酸化ジルコニウム(ZrO)、および酸化マグネシウム(MgO)である。
【0037】
このような透過性を有する材料は、透明基板を通して(基板上にコーティングされた)セラミック材料の層の複数領域を選択的に照射することができるため、特に有利である。したがって、記録工程においてデブリが発生したとしても、記録光学系の反対側のコーティングされた基板表面に堆積する。したがって、記録光学系に影響を与えることなく、前記表面を容易に洗浄及び/又は冷却することができる。
【0038】
透明な基板材料が、高い透過率を有するために、レーザ光は基板と相互作用せず、たとえば、コーティングのみをアブレーションするために単に当該基板を通過するだけである。特に、基板材料はレーザ光によって実質的に加熱されることはない。
【0039】
レーザビーム(すなわち、DMDから照射される複数のレーザビームの各々)の最小焦点径は400nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
【0040】
レーザービームの波長は、700nmより小さいことが好ましく、好ましくは650nmよりも小さく、より好ましくは600nmよりも小さく、さらに好ましくは500nmよりも小さく、最も好ましくは400nmよりも小さい。波長を短くすると、より小さな構造を作ることができ、またそれによって、より大きなデータ密度を達成することができる。さらに、波長が短いほど、光子1個あたりのエネルギー(作用量子)が高くなる。
【0041】
本発明は、さらに、セラミック材料の層にデータを記録するための装置に関する。この装置は、レーザ光源と、複数のレーザビームを放射するように構成されたデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)と、レーザ光源によって放射されたレーザビームをDMD上に平行に照射するためのコリメート光学系と、基板を取り付けるための基板ホルダと、DMDによって放射された複数のレーザビームのそれぞれを上記基板ホルダに取り付けられた基板上に集光するように構成された集光光学系とを、備えている。DMDによって放射される複数のレーザビームの各々のフルエンスは、100mJ/cmよりも大きく、好ましくは400mJ/cmよりも大きく、より好ましくは800mJ/cmよりも大きく、最も好ましくは1J/cmよりも大きい。レーザ光源は、好ましくは、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザによって構成される。レーザ光源のパルス持続時間は、好ましくは、10psよりも短く、より好ましくは1psよりも短い。
【0042】
本発明に係る方法についての文脈で、上記のように記載したすべての好ましい特徴は、本発明に係る装置においても同様に採用することができ、その逆もまた然りである。
【0043】
好ましくは、レーザ光のパワー密度は、セラミック材料の層上または層中にデータを記録するため、セラミック材料の層を十分に処理し得るように調整されている。好ましくは、レーザ光は、上記のセラミック材料をアブレーションし得るパワー密度を有する。
【0044】
集光光学系は、好ましくは、高い開口数(好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.8)を有する、レンズ(またはより複雑な光学系)を備える。液浸光学系を使用する場合、開口数は少なくとも1.0であってもよく、より好ましくは少なくとも1.2であってもよい。
【0045】
この装置は、好ましくは、例えば上述したような複数のベッセルビームを生成するために、ビーム成形装置(好ましくはレーザゾーンプレートのマトリックス又は空間光変調器)を更に備える。このようなビーム成形装置は、好ましくは集光光学系よりも手前に配置される。この場合、好ましくは複数のレンズ(好ましくはフレネルレンズ)がビーム成形装置の真後ろに配置され、例えばベッセルビームなどの光を集光できるようになっている。
【0046】
複数のレーザビームのそれぞれは、好ましくは、基板においてベッセルビームである。基板において、複数のレーザビームの最小焦点径は、それぞれ、好ましくは、400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
【0047】
基板ホルダは、好ましくは、走査ステージなどのXY位置決めシステムに取り付けられる。この装置は、好ましくは、DMD及びXY位置決めシステムを制御することが可能なプロセッサを備えており、それにより、基板ホルダに取り付けられた基板上で、隣接する領域又はピクセルアレイを順次照射することができる。
【0048】
このプロセッサ(または追加の処理ユニット)は、記録すべきデータ(すなわち、テキスト、数値、ピクセルの配列、QRコード(登録商標)などのアナログデータまたはデジタルデータ)を受信し、装置の構成要素(特に、DMDおよびXY位置決めシステム、また場合によってはビーム成形装置)を制御して、本発明に係る方法を実行し、受信したデータ一式を、セラミック材料の層上または層中に記録するように、調整され、構成されていることが好ましい。
【0049】
好ましくは、レーザ光源の波長は、700nmよりも短くてもよく、好ましくは650nmよりも短く、より好ましくは600nmよりも短く、さらに好ましくは500nmよりも短く、最も好ましくは400nmよりも短い。
【0050】
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら、さらに特定する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】好ましい一実施形態における、データ記録装置の概略図である。
図2a】記録装置の第1の代替例を模式的に示したものである。
図2b】記録装置の第2の代替例を模式的に示したものである。
図3】他の好ましい実施形態における、データ記録装置の概略図である。
図4】偏光板、ゾーンプレート、及びレンズの組合せを示す模式図、並びにそれらによって得られるビーム形状およびレーザ光の軸に沿う焦点距離を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る、セラミック材料の層にデータを記録するための装置を、概略的に示す図である。この装置は、アレイ状に配列された複数のマイクロミラー3aを含むDMD3上にレーザ光を照射するレーザ光源2を備える。DMD3は、複数のレーザビーム9を第1の方向(すなわち、記録用方向)または第2の方向(参照符号9で示す)のいずれかに沿って照射するように調整されており、後者では、各マイクロミラーが「オフ」状態となることでそれらの複数のレーザビーム9をビームダンプ(図示せず)にそらすことができる。通常、装置は、レーザ光源2によって放射されたレーザ光をDMD3上に平行に照射するためのコリメート光学系(図1には示されていない)をさらに備える。装置は、さらに、基板7を取り付けるための基板ホルダ6と、DMDによって放射された複数のレーザビーム4のそれぞれを、基板ホルダ6に取り付けられた基板7上に集光するように調整された集光光学系8とを、さらに備える。集光光学系8は、例えば、高い開口数を有する標準的な顕微鏡光学系を備えていてもよい。基板ホルダ6は、基板7を支持し、好ましくは当該基板7を取り付けられるように構成されてもよく、また基板ホルダ6は、XYステージの上またはその一部に取り付けられてもよい。
【0053】
図1に示す例では、基板7は、集光されたレーザービーム4によって局所的にアブレーションされるセラミックコーティングまたはセラミック材料1の層を含む。図1では、セラミックコーティング1は、基板7の頂面に設けられている(図2aも参照)。あるいは、図2bに示すように、セラミックコーティングは基板7の底面または裏面に設けられていてもよい。この場合のレーザビーム4は、基板7内を通過しなければならないので、基板7の材料は、この場合レーザ光の波長に対して透過性を有する必要がある。さらに、この場合、基板ホルダ6は、基板7の外縁部のみを支持するフレーム6aを備えることが好ましい(一方、図2aに示されるように、基板の頂面側がアブレーションされる場合、基板は全面的に支持されてもよい)。このように、セラミックコーティング1のうちアブレーションに供される部分は、当該部分の下側に自由空間6bを有しているため、ホルダによって支持されていない(図2bを参照)。
【0054】
これは、アブレーションの過程で発生したデブリのすべてを、基板7によって、集光光学系8から分離することができるため、特に好ましい実施形態である。むしろ、セラミック層1からアブレーションされたいかなる材料も、試料ホルダ6の自由空間6bに放出され、そこから除去または吸引することができる。したがって、集光光学系8は、それらのデブリによって悪影響を受けることはなく、記録直後あるいは記録中でさえも、セラミック被膜1の表面を清掃することがはるかに容易となる。
【0055】
好ましくは、基板の厚みは、使用される装置の集光光学系に応じて調整される。例えば、セラミックコーティングに光を到達させるために、基板の厚みは、集光光学系の焦点距離よりも小さく設定する必要がある。
【0056】
さらに、図2bに示すレイアウトによれば、例えば、冷却流体を前記セラミックコーティング1に沿って流すことにより、アブレーション中にセラミックコーティング1を冷却することも可能である。これにより、レーザ焦点から周囲へ向かう熱伝達を排除することができるので、アブレーションの工程の精度が改善される。このために、例えば、空気のクロスジェット(例えば、エアブレード)や水などの浸液をさらに導入してもよい。斯かるクロスジェットは、さらに、アブレーション中に発生したデブリを排出するために用いてもよい。
【0057】
このようなクロスジェットは、図2aに示すようなレイアウトの場合にも、導入することができる。しかしながら、この実施形態では、クロスジェットが光学系と干渉しないように設計しなければならない。例えば、液浸光学系を使用する場合、液浸液内の乱流に起因する光学的な影響を回避するために、好ましくは層流であるクロスフローとして液浸液を供給してもよい。
【0058】
空気または液体のこのようなクロスジェットは、記録精度を喪失し得る振動を発生させる虞があり、また、図2aに示すような実施形態においてクロスジェットを使用すると煩雑になるので、図2aおよび2bに示すように、負に帯電したメッシュまたはシート15を設けることが好ましい。上記で説明したように、ピコ秒レーザ又はフェムト秒レーザを使用すると、アブレーションされるセラミック材料にプラズマが形成される。簡単に言えば、レーザパルスとの相互作用によって、セラミック材料の原子殻の一部が除去される。残存した正電荷の原子核は、いわゆるクーロン爆発によって排出される。そして、これらの正に帯電した原子芯は、負に帯電したメッシュまたはシート15に引き寄せることができる。これは、図2aに示すような実施形態の場合、レーザ光4がメッシュまたはプレートの開口部を通過することができるため、特に有利である。すべてのデブリは、帯電したメッシュまたはプレートによって集められるので、例えば集光光学系8等に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0059】
図3には、本発明に係る装置の別の好ましい実施形態を、より詳細に示す。例えば、図3には、レーザ光源2が発したレーザ光をDMD3上に平行に照射するためのコリメート光学系5と、空間フィルタ10、11などの更なる光学部品とが、示されている。基板ホルダ6は、図3の場合、基板7をx-y平面(zは基板7の表面に対して垂直な方向)に沿って並進させるためのXY位置決めシステムである。DMD3およびXY位置決めシステム6はいずれも、コンピュータ13により制御され、以下の工程が実施される。
DMD3を用いて、セラミック材料の層1の第1の領域内の複数の領域を、レーザビームで選択的に照射する工程(その際、前記第1の領域をDMD3によって被覆してもよい);
セラミック材料の層1(すなわち、本実施例では基板7全体)を、第1の領域とは異なる第2の領域がDMD3によって覆われるように平行移動させる工程;
DMD3を用いて、セラミック材料の層1の第2の領域内の複数の領域にレーザビームを選択的に照射する工程。
【0060】
先に述べたように、好ましくは、装置は、例えばベッセルビームを得るためのビーム成形装置を備える。例えば、DMD3と集光光学系8との間にレーザゾーンプレート12のマトリックスを設けることで、レーザビーム4(図1を参照)の各々をベッセルビームの形状に成形してもよい。そして、各ベッセルビームを、付随するレンズ(例えば、フレネルレンズ)8によって基板7上に集光してもよい。レーザゾーンプレート12のマトリックスを適切に照明するために、追加のコリメート光学系14aおよび14bを設けてもよい。この原理は、(単一のビームレットについて)円偏光を生成する光学素子12aと、ベッセルビームを生成するための二値位相素子12bとの組み合わせによって、ベッセルビームを生成する方法を示した図4において、さらに明らかにされており、このベッセルビームは次に、付随する高い開口数のレンズ8(またはフレネルレンズ8)によって基板7上に集光される。図4にも示されるように、このようなベッセルビームを使用することによって、レーザ光の波長の少なくとも4倍の焦点距離を達成することができる。さらに、焦点は、ガウシアンビームよりもはるかに円筒形に近い形状を有する。
【符号の説明】
【0061】
1 セラミック材料の層
2 レーザ光源
3 デジタルマイクロミラー装置
4 レーザビーム
5 コリメート光学系
6 基板ホルダ
7 基板
8 集光光学系
9 レーザビーム
10、11 空間フィルタ
12 レーザゾーンプレート
12a 円偏光生成素子
12b 二値位相差素子
13 コンピュータ
14a、14b コリメート光学系
15 負に帯電したメッシュ(シート)
図1
図2a
図2b
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料の層にデータを記録する方法であって、
セラミック材料の層を提供する工程と、
デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域にレーザビームを選択的に照射する工程と
を含み、
選択された領域のそれぞれについて、前記レーザビームに関するパラメータおよびその照射時間を、前記選択された領域のそれぞれをアブレーションすることで前記セラミック材料の層に窪部を形成し、それにより前記セラミック材料の層にデータを記録できるように、制御し、
前記レーザビームを、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザから生成する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記レーザビームがベッセルビームである、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記窪部が大気に開放されている、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、
前記セラミック材料の層は、記録中に水平方向に移動され、当該方法は、さらに、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の第1の領域内の複数の領域を前記レーザビームで選択的に照射する工程であって、前記第1の領域は前記デジタルマイクロミラー装置によって被覆可能である、工程、
前記第1の領域とは異なる第2の領域が、前記デジタルマイクロミラー装置によって被覆可能であるように、前記セラミック材料の層を平行移動させる工程、および
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の前記第2の領域内の複数の領域を、前記レーザビームで選択的に照射する工程、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、前記セラミック材料の層が、金属窒化物、金属カーバイド、金属酸化物、金属ホウ化物または金属シリサイドのうちの少なくとも1種を含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、
前記セラミック材料の層を提供する工程が、
基板を提供する工程と、
前記基板を、前記セラミック基板の材料とは異なる前記セラミック材料の層でコーティングする工程と、
を含み、前記セラミック材料の層が、10μm以下の厚みを有する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記基板が、
Al、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、Vのうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%含有し;および/または
前記セラミック基板が、金属窒化物、金属カーバイド、金属ホウ化物および金属シリサイドのうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%含有する、方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、前記基板が、1mm未満の、厚みを有する、方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の方法において、前記基板は、前記レーザビームの波長に対し透過性を有する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記基板が、ガラス状の透過性セラミック材料または結晶性セラミック材料を含み、および/または
前記基板が、サファイア(Al)、シリカ(SiO)、ケイ酸ジルコニウム(Zr(SiO))、酸化ジルコニウム(ZrO)、一酸化ホウ素(BO),三酸化ホウ素(B),酸化ナトリウム(NaO),酸化カリウム(KO),酸化リチウム(LiO),酸化亜鉛(ZnO),酸化マグネシウム(MgO)のうちの1種または複数種の組合せを含有する、方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域を、前記レーザビームで選択的に照射する工程が、透過性基板を介して前記セラミック材料の層を照射する工程を含む、方法。
【請求項12】
請求項6から11のいずれか一項に記載の方法において、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域を、前記レーザビームで選択的に照射する工程では、前記窪部が前記基板に向かって延びる領域のそれぞれにおいて、十分な量の材料をアブレーションする、方法。
【請求項13】
請求項6から12のいずれか一項に記載の方法において、前記コーティングされた基板を、記録前及び/又は記録後に、焼戻しする工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法において、前記レーザビームが、1000nm以下の最小焦点直径を有する、方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法において、前記レーザビームの波長が、700nmよりも短い、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法において、前記窪部が、複数箇所の所定の位置のサブセットによって作成され、前記複数箇所の所定の位置が、規則的なマトリックスまたは配列をなすように配置される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記規則的なマトリックスまたは配列が、正方形のパターンまたは六角形のパターンをなす、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法において、前記窪部が、円形状の断面を有する、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法において、負に帯電したメッシュまたはシートを用いて、正に帯電したデブリを収集する工程を、さらに含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記セラミック材料の層が、前記デジタルマイクロミラー装置と、前記負に帯電したメッシュまたはシートと、の間に配置される、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、前記負に帯電したメッシュまたはシートが、前記デジタルマイクロミラー装置と、前記セラミック材料の層と、の間に配置される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記負に帯電したメッシュまたはシートが、前記レーザビームを通過させる開口部を備える、方法。
【請求項23】
セラミック材料(1)の層にデータを記録するための装置であって、
ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザを含むレーザ光源(2)と、
複数のレーザビーム(4)を放射するように構成されたデジタルマイクロミラー装置(3)と、
前記レーザ光源から放射されたレーザ光を、前記デジタルマイクロミラー装置(3)上に平行に照射するためのコリメート光学系と、
基板(7)を取り付けるための基板ホルダ(6)と、
前記デジタルマイクロミラー装置(3)によって放射された前記複数のレーザビーム(4)のそれぞれを、前記基板ホルダ(6)に取り付けられた前記基板(7)上に集光するように調整された、集光光学系(8)と、
を備え、
前記デジタルマイクロミラーデバイス(3)によって放射される前記複数のレーザビーム(4)の各々のフルエンスが、100mJ/cmよりも多いことを特徴とする、装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、前記集光光学系(8)が、少なくとも0.5の開口数を有するレンズを含む、装置。
【請求項25】
請求項23または24に記載の装置において、ビーム成形装置、好ましくはレーザゾーンプレートのマトリックスまたは空間光変調器を、さらに備える装置。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか一項に記載の装置において、前記複数のレーザビームの各々は、前記基板において、1000nm以下の最小焦点直径を有する、装置。
【請求項27】
請求項23から26のいずれか一項に記載の装置において、前記デジタルマイクロミラー装置を制御するように構成されたプロセッサを備えると共に、前記基板ホルダが搭載されるXY位置決めシステムを任意選択で更に備える、装置。
【請求項28】
請求項23から27のいずれか一項に記載の装置において、前記レーザ光源の波長は、700nmよりも短い、装置。
【請求項29】
請求項23から28のいずれか一項に記載の装置において、
正に帯電したデブリを集めるための、負に帯電したメッシュまたはシート(15)を更に備える、装置。
【請求項30】
請求項29に記載の装置において、前記基板ホルダ(6)が、前記集光光学系(8)と前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)との間に配置される、装置。
【請求項31】
請求項29に記載の装置において、前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)が、前記集光光学系(8)と前記基板ホルダ(6)との間に配置される、装置。
【請求項32】
請求項31に記載の装置において、前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)が、前記複数のレーザビーム(4)が前記メッシュまたはシートを通過可能とする開口部を含む、装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
先に述べたように、好ましくは、装置は、例えばベッセルビームを得るためのビーム成形装置を備える。例えば、DMD3と集光光学系8との間にレーザゾーンプレート12のマトリックスを設けることで、レーザビーム4(図1を参照)の各々をベッセルビームの形状に成形してもよい。そして、各ベッセルビームを、付随するレンズ(例えば、フレネルレンズ)8によって基板7上に集光してもよい。レーザゾーンプレート12のマトリックスを適切に照明するために、追加のコリメート光学系14aおよび14bを設けてもよい。この原理は、(単一のビームレットについて)円偏光を生成する光学素子12aと、ベッセルビームを生成するための二値位相素子12bとの組み合わせによって、ベッセルビームを生成する方法を示した図4において、さらに明らかにされており、このベッセルビームは次に、付随する高い開口数のレンズ8(またはフレネルレンズ8)によって基板7上に集光される。図4にも示されるように、このようなベッセルビームを使用することによって、レーザ光の波長の少なくとも4倍の焦点距離を達成することができる。さらに、焦点は、ガウシアンビームよりもはるかに円筒形に近い形状を有する。
なお本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
セラミック材料の層にデータを記録する方法であって、
セラミック材料の層を提供する工程と、
デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域にレーザビームを選択的に照射する工程と
を含み、
選択された領域のそれぞれについて、前記レーザビームに関するパラメータおよびその照射時間を、前記選択された領域のそれぞれをアブレーションすることで前記セラミック材料の層に窪部を形成し、それにより前記セラミック材料の層にデータを記録できるように、制御し、
前記レーザビームを、ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザから生成する、
方法。
〔態様2〕
態様1に記載の方法において、前記レーザ光が、好ましくはレーザゾーンプレートまたは空間光変調器によって生成される、ベッセルビームである、方法。
〔態様3〕
態様1または2に記載の方法において、前記窪部が大気に開放されている、方法。
〔態様4〕
態様1から3のいずれか一態様に記載の方法において、
前記セラミック材料の層は、記録中に水平方向に移動され、当該方法は、さらに、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の第1の領域内の複数の領域を前記レーザ光で選択的に照射する工程であって、前記第1の領域は前記デジタルマイクロミラー装置によって被覆可能である、工程、
前記第1の領域とは異なる第2の領域が、前記デジタルマイクロミラー装置によって被覆可能であるように、前記セラミック材料の層を平行移動させる工程、および
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の前記第2の領域内の複数の領域を、前記レーザ光で選択的に照射する工程、
を含む、方法。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一態様に記載の方法において、前記セラミック材料の層が、
CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si 、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;
TiC、CrC、Al 、VC、ZrC、HfC、ThC、B C、SiCなどの金属カーバイド;
Al 、TiO 、SiO 、ZrO、ThO 2, MgO、Cr 、Zr 、V などの金属酸化物;
TiB 、ZrB 、CrB 、VB 、SiB 、ThB 、HfB 、WB 、WB などの金属ホウ化物;または
TiSi 、ZrSi 、MoSi 、WSi 、PtSi、Mg Siなどの金属シリサイド;
のうちの少なくとも1種を含む、方法。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様に記載の方法において、
前記セラミック材料の層を提供する工程が、
基板を提供する工程と、
前記基板を、前記セラミック基板の材料とは異なる前記セラミック材料の層でコーティングする工程と、
を含み、前記セラミック材料の層が、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは10nm以下の厚みを有する、方法。
〔態様7〕
態様6に記載の方法において、
前記基板が、
Al 、TiO 、SiO 、ZrO 、ThO 、MgO、Cr 、Zr 、V のうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含有し;および/または
前記セラミック基板が、
CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si 、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;
TiC、CrC、Al 、VC、ZrC、HfC、ThC、B C、SiCなどの金属カーバイド;
TiB 、ZrB 、CrB 、VB 、SiB 、ThB 、HfB 、WB 、WB などの金属ホウ化物;および
TiSi 、ZrSi 、MoSi 、WSi 、PtSi、Mg Siなどの金属シリサイド;
のうちの1種または複数種の組合せを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含有する、方法。
〔態様8〕
態様6または7に記載の方法において、前記基板が、1mm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは200μm未満、最も好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、最も好ましくは10μm未満の、厚みを有する、方法。
〔態様9〕
態様6から8のいずれか一態様に記載の方法において、前記基板は、前記レーザビームの波長に対し透過性を有する、方法。
〔態様10〕
態様9に記載の方法において、
前記基板が、ガラス状の透過性セラミック材料または結晶性セラミック材料を含み、および/または
前記基板が、サファイア(Al )、シリカ(SiO )、ケイ酸ジルコニウム(Zr(SiO ))、酸化ジルコニウム(ZrO )、一酸化ホウ素(B O),三酸化ホウ素(B ),酸化ナトリウム(Na O),酸化カリウム(K O),酸化リチウム(Li O),酸化亜鉛(ZnO),酸化マグネシウム(MgO)のうちの1種または複数種の組合せを含有する、方法。
〔態様11〕
態様9または10に記載の方法において、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域を、前記レーザビームで選択的に照射する工程が、透過性基板を介して前記セラミック材料の層を照射する工程を含む、方法。
〔態様12〕
態様6から11のいずれか一態様に記載の方法において、
前記デジタルマイクロミラー装置を使用して、前記セラミック材料の層の複数の領域を、前記レーザ光で選択的に照射する工程では、前記窪部が前記基板に向かって延びる領域のそれぞれにおいて、十分な量の材料をアブレーションする、方法。
〔態様13〕
態様6から12のいずれか一態様に記載の方法において、前記コーティングされた基板を、記録前及び/又は記録後に、焼戻しする工程を含む、方法。
〔態様14〕
態様1から13のいずれか一態様に記載の方法において、前記レーザ光が、1000nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは600nm以下、好ましくは400nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下の最小焦点直径を有する、方法。
〔態様15〕
態様1から14のいずれか一態様に記載の方法において、前記レーザ光の波長が、700nmよりも短く、好ましくは650nmよりも短い、方法。
〔態様16〕
態様1から15のいずれか一態様に記載の方法において、前記窪部が、複数箇所の所定の位置のサブセットによって作成され、前記複数箇所の所定の位置が、規則的なマトリックスまたは配列をなすように配置される、方法。
〔態様17〕
態様16に記載の方法において、前記規則的なマトリックスまたは配列が、正方形のパターンまたは六角形のパターンをなす、方法。
〔態様18〕
態様1から17のいずれか一態様に記載の方法において、前記窪部が、円形状の断面を有する、方法。
〔態様19〕
態様1から18のいずれか一態様に記載の方法において、負に帯電したメッシュまたはシートを用いて、正に帯電したデブリを収集する工程を、さらに含む、方法。
〔態様20〕
態様19に記載の方法において、前記セラミック材料の層が、前記デジタルマイクロミラー装置と、前記負に帯電したメッシュまたはシートと、の間に配置される、方法。
〔態様21〕
態様19に記載の方法において、前記負に帯電したメッシュまたはシートが、前記デジタルマイクロミラー装置と、前記セラミック材料の層と、の間に配置される、方法。
〔態様22〕
態様21に記載の方法において、前記負に帯電したメッシュまたはシートが、前記レーザ光を通過させる開口部を備える、方法。
〔態様23〕
セラミック材料(1)の層にデータを記録するための装置であって、
ピコ秒レーザまたはフェムト秒レーザを含むレーザ光源(2)と、
複数のレーザビーム(4)を放射するように構成されたデジタルマイクロミラー装置(3)と、
前記レーザ光源から放射されたレーザ光を、前記デジタルマイクロミラー装置(3)上に平行に照射するためのコリメート光学系と、
基板(7)を取り付けるための基板ホルダ(6)と、
前記デジタルマイクロミラー装置(3)によって放射された前記複数のレーザビーム(4)のそれぞれを、前記基板ホルダ(6)に取り付けられた前記基板(7)上に集光するように調整された、集光光学系(8)と、
を備え、
前記デジタルマイクロミラーデバイス(3)によって放射される前記複数のレーザビーム(4)の各々のフルエンスが、100mJ/cm よりも多いことを特徴とする、装置。
〔態様24〕
態様23に記載の装置において、前記集光光学系(8)が、高い開口数(好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.8)を有するレンズを含む、装置。
〔態様25〕
態様23または24に記載の装置において、ビーム成形装置、好ましくはレーザゾーンプレートのマトリックスまたは空間光変調器を、さらに備える装置。
〔態様26〕
態様23から25のいずれか一態様に記載の装置において、前記複数のレーザビームの各々は、前記基板において、1000nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは600nm以下、好ましくは400nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下の最小焦点直径を有する、装置。
〔態様27〕
態様23から26のいずれか一態様に記載の装置において、前記デジタルマイクロミラー装置を制御するように構成されたプロセッサを備えると共に、前記基板ホルダが搭載されるXY位置決めシステムを任意選択で更に備える、装置。
〔態様28〕
態様23から27のいずれか一態様に記載の装置において、前記レーザ光源の波長は、700nmよりも短く、好ましくは650nmよりも短い、装置。
〔態様29〕
態様23から28のいずれか一態様に記載の装置において、
正に帯電したデブリを集めるための、負に帯電したメッシュまたはシート(15)を更に備える、装置。
〔態様30〕
態様29に記載の装置において、前記基板ホルダ(6)が、前記集光光学系(8)と前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)との間に配置される、装置。
〔態様31〕
態様29に記載の装置において、前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)が、前記集光光学系(8)と前記基板ホルダ(6)との間に配置される、装置。
〔態様32〕
態様31に記載の装置において、前記負に帯電したメッシュまたはシート(15)が、前記複数のレーザビーム(4)が前記メッシュまたはシートを通過可能とする開口部を含む、装置。
【国際調査報告】