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特表2023-540024パイプ処理方法、パイプ及びパイプ接続装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】パイプ処理方法、パイプ及びパイプ接続装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/028 20060101AFI20230913BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230913BHJP
   F16L 23/20 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F16L19/028
C23C26/00 A
C23C26/00 E
F16L23/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513276
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 IB2021057800
(87)【国際公開番号】W WO2022043898
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】20193135.9
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504117534
【氏名又は名称】テーイー・アウトモティーフェ(ハイデルベルク)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュターン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイク ゲオルク
【テーマコード(参考)】
3H014
3H016
4K044
【Fターム(参考)】
3H014CA01
3H016AA01
3H016AA03
3H016AD08
3H016AD09
3H016AE01
4K044AA01
4K044AB03
4K044BA01
4K044BA11
4K044BA21
4K044BB03
4K044BC01
4K044BC02
4K044CA07
4K044CA13
4K044CA14
4K044CA21
4K044CA41
(57)【要約】
パイプ(1)、特に自動車用パイプを処理するための方法は、パイプの少なくとも一方のパイプ端部にフレア(2)を形成することを特徴とする。フレアの少なくとも所定の領域(3,6)は、少なくとも1つの層(4,7)を有する。この層は、フレアのコーティング面の摩擦特性を変化させる。フレアは、プラズマコーティングによりコーティングされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ(1)、特に自動車用のパイプを処理するための方法であって、
前記パイプ(1)の少なくとも一方のパイプ端部にフレア(2)を形成し、
前記フレア(2)の少なくとも所定の領域に、前記フレア(2)のコーティング面の摩擦特性を変える少なくとも1つの層(4)を設け、
前記フレア(2)をプラズマコーティングによりコーティングする、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パイプ(1)に面するフレア後端部(3)の少なくとも所定の領域にプラズマコーティングにより第1の層(4)を設け、
前記第1の層(4)は摩擦値μ1を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パイプ(1)から離間した前記パイプ(1)の端面を形成するフレア前端部(6)の少なくとも所定の領域に、プラズマコーティングにより第2の層(7)を設け、
前記第2の層(7)は摩擦値μ2を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の摩擦値μ1を有する第1の層(4)が、プラズマコーティングにより、少なくとも所定の領域においてフレア(2)に適用され、
第2の摩擦値μ2を有する第2の層(7)が、プラズマコーティングにより、少なくとも所定の領域においてフレア(2)に適用され、
前記第2の摩擦値μ2は前記第1の摩擦値μ1より大きい、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フレア(2)はF型のフレア又はE型のフレアとして形成される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記パイプ(1)は金属からなるか又は実質的に金属からなる、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
プラズマコーティングにより適用される少なくとも1つの層(4、7)は、金属、金属塩、ポリマー、特にフルオロポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料からなるか又は実質的に前記少なくとも1つの材料からなる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
常圧又は大気圧でプラズマコーティングを行う、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
物理蒸着及び/又は化学蒸着としてプラズマコーティングを行う、ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
プラズマコーティングのためのプラズマコーティング装置(5)を使用し、
コーティング材料を粉末として前記プラズマコーティング装置(5)に供給する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
プラズマコーティング装置(5)におけるコーティング材料を気相に変換し、次いで、前記パイプ(1)の前記フレア(2)の少なくとも所定の領域に固体として堆積させる、ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
パイプ、好ましくは自動車用のパイプ、特に請求項1~11に記載のいずれかの方法によって処理されたパイプであって、
少なくとも一方のパイプ端部にフレア(2)を有し、
前記フレア(2)の少なくとも所定の領域に、プラズマコーティングにより適用される少なくとも1つの層(4、7)を有する、ことを特徴とするパイプ。
【請求項13】
パイプ(1)、特に自動車用のパイプを接続するためのパイプ接続装置であって、
請求項1~11に記載のいずれかの方法によって処理された少なくとも1つのパイプ(1)又は請求項12の記載の少なくとも1つのパイプ(1)と、少なくとも1つのねじ要素、特にねじ込み継ぎ手(11)と、を含み、
前記ねじ要素の少なくとも1つの面は、プラズマコーティングされたフレアの面と接する、ことを特徴とするパイプ接続装置。
【請求項14】
前記ねじ要素はプラズマコーティングされたフレア後端部(3)と接している、ことを特徴とする請求項13に記載のパイプ接続装置。
【請求項15】
前記ねじ要素の少なくとも所定の領域は、コーティング、特にねじ山コーティングを有し、
前記ねじ山コーティングの摩擦値μ3は、プラズマコーティングによりフレア後端部(3)に適用された層(4)の摩擦値μ1より大きい、ことを特徴とする請求項13又は14に記載のパイプ接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本開示は、2020年8月27日付で出願された欧州出願第20193135.9号の利益を主張するPCT出願であり、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、パイプ、特に自動車用パイプを処理するための方法に関する。パイプは、少なくとも一方のパイプ端部にフレア(flare)が形成されている。さらに、本開示は、対応するパイプ及びパイプを接続するためのパイプ接続装置に関する。パイプのフレアは、特にF型のフレア又はE型のフレアを含む。
【背景技術】
【0003】
端部にフレアを有するこのようなパイプは、特に自動車用のパイプとして、接続要素又は接続ブロックに接続される。例えば、パイプは、油圧流体又はブレーキ流体用に使用される。接続要素に対する接続のため、パイプは、通常、ねじ込み継ぎ手の軸方向孔を貫通し、ねじ込み継ぎ手の端面がパイプのフレアの裏側に作用する。ねじ込み継ぎ手は雄ねじを有し、対応する雌ねじにねじ込まれて接続要素に接続される。ねじ込み継ぎ手を締め付けると、通常、パイプのフレア前端部が接続要素のシール面に押しつけられる。通常、接続要素は、接続パイプと同じ高さに位置する付加的なパイプと一体化される。ねじ込み継ぎ手をねじ込む際に、パイプが共回りし、パイプのねじれによって、いわばパイプにバネ力が蓄えられる。パイプのねじれによって逆トルクが発生し、そのため、操作中に望ましくない又は制御できないねじ込み接続の緩みや剥離が生じることがある。このようなねじ込み接続の望ましくない緩みは、特に、例えば、自動車のエンジンルームにおける振動によっても生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した種類の方法、パイプ及びパイプ接続要素は、様々な構成のものが知られている。パイプのねじれに関する前述した欠点を低減させるため、パイプ端部のフレア、特にねじ込み継ぎ手の端面が作用するフレア後端部を処理することは既に知られている。従って、パイプに既に適用されているフレア上のコーティングを除去し、フレアの対応する面を研磨することにより、摩擦特性に影響が生じることが知られている。これは、ねじ込み継ぎ手の作用端面とフレア後端部との間の摩擦を減少させることを意図している。しかし、このような既知の処理には、一連の欠点があることが分かった、その一つとして、複数の手順により、処理が比較的複雑なものとなり、さらにコストが増加することが挙げられる。また、他の一つとして、コーティングを除去することにより望ましくない腐食作用が生じることが挙げられる。さらに、処理される面の品質は多数のパラメータに依存するため、当該面を再現性高く設定又は調整することができない。その結果、ねじ込み接続の機能的な信頼性が必ずしも確保されないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに対し、本開示は、前記技術的課題に基づいており、前記課題を容易かつ効果的に回避する。本開示は、さらに、対応するパイプ及び対応するパイプ接続装置を提供する技術的課題に基づいている。
【0006】
この技術的課題を解決するため、本開示は、パイプ、特に自動車用のパイプを処理するための方法を教示する。当該方法では、パイプの少なくとも一方のパイプ端部にフレアを形成する。フレアの少なくとも所定の領域に、フレアのコーティング面の摩擦特性を変える少なくとも1つの層を適用する。プラズマコーティングによりフレアをコーティングする。有利には、フレアは、パイプ端部においてパイプと一体的に形成されるか、又はパイプから形成される。
【0007】
本開示の枠組は、パイプに面するフレア後端部の少なくとも所定の領域がプラズマコーティングにより1つの層つまり第1の層を有することを含む。前記層つまり第1の層は、摩擦値μ1を有する。有利には、フレア後端部の面の少なくとも50%、特に少なくとも60%にプラズマコーティングにより1つの層つまり第1の層が適用される。さらに本開示の枠組は、プラズマコーティングにより適用されるこの層つまり第1の層が相対的に小さい摩擦値又は相対的に非常に小さい摩擦値を有することを含む。これにより、フレア後端部に作用するねじ込み継ぎ手を締め付けるか又はねじ込むときに、パイプのねじれを確実に回避又は大いに回避することができる。ねじ込み継ぎ手を含むこのような実施例において、有利には、ねじ込み継ぎ手の端面は摩擦値の小さい層を有する。前記層は、同様に、プラズマコーティングにより好ましく適用される。本開示の好ましい実施例において、ねじ込み継ぎ手のねじ山又は雄ねじは、ねじ込み継ぎ手を含む実施例では、特に好ましくは、より大きい摩擦値を有する層又はフレア後端部の層の摩擦値μ1より大きい摩擦値を有する層でコーティングされる。ねじ込み継ぎ手の雄ねじ又はねじ山における層の摩擦値は、フレア後端部の層又は第1の層の摩擦値μ1よりも、好ましくは3倍、特に少なくとも4倍、非常に好ましくは少なくとも5倍大きい。さらに本開示の枠組は、ねじ込み継ぎ手の雄ねじ又はねじ山における層がプラズマコーティングにより適用されることを含む。プラズマコーティングは、摩擦値が変化するコーティングを適用するのに特に有効であることが分かった。
【0008】
本開示は、本開示によるプラズマコーティングを使用することにより、フレア後端部の摩擦値を、所望の通り、かつ機能的に非常に信頼できる方法で再現性高く設定することができるという知見に基づいている。パイプへの損傷及びパイプ上のコーティングへの損傷を完全に回避することができるため、先行技術により公知の腐食の兆候が表れない。とりわけ、相対的に小さい摩擦値を有する層は、プラズマコーティングにより非常に簡単かつ安価に適用され得る。本開示による方法により、複数の処理段階及びそれに伴うコストを削減することができる。
【0009】
本開示の一実施例では、パイプから離間し、かつパイプの端面を形成するフレア前端部の少なくとも所定の領域は、プラズマコーティングにより1つの層つまり第2の層を有する。前記層つまり第2の層は摩擦値μ2を有する。有利には、摩擦値μ2は、フレア後端部に適用される層つまり第1の層の摩擦値μ1より大きいか、又は第1の層の摩擦値μ1よりも非常に大きい。本開示による方法の一実施例では、摩擦値μ1を有する第1の層は、プラズマコーティングにより、少なくとも領域においてフレア、特にフレア後端部に適用され、摩擦値μ2を有する第2の層は、プラズマコーティングにより、少なくとも所定の領域においてフレア、特にフレア前端部に適用される。第2の摩擦値μ2は、第1の摩擦値μ1より大きい。有利には、第2の摩擦値μ2は、第1の摩擦値μ1の少なくとも3倍、特に少なくとも4倍、好ましくは少なくとも5倍大きく、好ましくは、フレア後端部の層に適用される。
【0010】
本開示の好ましい実施例では、パイプ端部におけるフレアは、F型のフレア又はE型のフレアを含む。本開示の枠組では、F型のフレアが特に好ましい。パイプは、金属からなるか又は実質的に金属からなるパイプを使用することが最も好ましい。本開示の枠組は、フレア、特にF型のフレアは、パイプ又はパイプ端部と一体的に成形され、同様に、金属又は実質的に金属からなることを含む。
【0011】
本開示の枠組は、プラズマコーティングによりコーティングされる面が最初に洗浄され、好ましくはプラズマジェットによって洗浄されることを含む。本実施例は、本開示の枠組において特に有効であることが証明されている。有利には、特に、パイプのフレアのフレア後端部をプラズマジェットにより洗浄し、その後、プラズマコーティングにより、摩擦値μ1を有する層をフレア後端部又はフレア後端部の面に適用する。
【0012】
本開示による方法の特に好ましい実施例は、プラズマコーティングにより適用される少なくとも1つの層が、金属、金属塩、ポリマーからなる群から選択された少なくとも1つの材料又は少なくとも1つの物質からなるか、あるいは前記少なくとも1つの材料又は前記少なくとも1つの物質から実質的になることを特徴とする。フレア後端部の面に適用される層は、前記群から選択された少なくとも1つの材料からなるか又は実質的に前記少なくとも1つの材料からなることが好ましい。特に、本明細書においてポリマーとして使用されるのは、フルオロポリマー、ポリオレフィン及び/又はポリアミドである。プラズマコーティングにより適用される摩擦値の小さい層は、層の摩擦値を小さくする少なくとも1つの潤滑剤を有し、この潤滑剤は、好ましくはフルオロポリマー、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び/又は硫化モリブデン(MoS)であることが望ましい。有利には、前記潤滑剤を有する前記層は、プラズマコーティングによりフレア後端部の面に適用される。プラズマコーティングにより適用される層は、基本的に、種々の有機及び/又は有機金属化合物及び/又はこれらの混合物からなるか、あるいは実質的に種々の有機及び/又は有機金属化合物及び/又はこれらの混合物からなる。
【0013】
本開示の枠組は、プラズマコーティングが常圧又は大気圧で行われることを含む。プラズマコーティングは、基本的に、他の圧力下、例えば、真空下で行ってもよい。しかし、常圧でのプラズマコーティングが好ましい。有利には、プラズマコーティングは、物理蒸着及び/又は化学蒸着として実施される。
【0014】
本開示の枠組は、プラズマコーティングのためのプラズマコーティング装置が使用され、コーティング用の材料が粉末としてプラズマコーティング装置に供給されることを含む。有利には、プラズマコーティング装置内のコーティング用材料は、気相に変換され、その後、パイプの少なくともフレアの領域、特にパイプのフレア後端部に固体として堆積される。
【0015】
技術的課題を解決するため、本開示は、パイプ、好ましくは自動車用パイプを教示する。このパイプの少なくとも一方のパイプ端部にフレアが設けられている。フレアの少なくとも所定の領域は、プラズマコーティングにより適用された少なくとも1つの層を有する。有利には、フレア後端部の少なくとも所定の領域は、プラズマコーティングにより適用された少なくとも1つの層を有する。この層は、有利には、相対的に小さい又は非常に小さい摩擦値を有する。
【0016】
技術的課題を解決するため、本開示はさらに、パイプ、特に自動車用のパイプを接続するためのパイプ接続装置を教示する。この接続装置は、少なくとも1つのパイプ、少なくとも1つのねじ要素、特にねじ込み継ぎ手を備え、ねじ要素の少なくとも1つ面は、プラズマコーティングされたフレア面と接している。ねじ要素又はねじ込み継ぎ手は、好ましくは、プラズマコーティングされたフレア後端部と接している。本開示の枠組は、ねじ要素又はねじ込み継ぎ手の少なくとも所定の領域が、コーティング、特にねじ山又は雄ねじのコーティングを有することを含む。ねじ山コーティングの摩擦値μ3は、パイプのフレアのフレア後端部においてプラズマコーティングにより適用された層の摩擦値μ1よりも大きく、好ましくは非常に大きい。有利には、ねじ山コーティングの摩擦値μ3は、フレアのフレア後端部においてプラズマコーティングにより適用された層の摩擦値μ1の少なくとも2倍、特に少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍、非常に好ましくは少なくとも5倍大きい。
【0017】
本開示は、パイプのフレア、特にフレアのフレア後端部を特に簡単かつ安価な方法でコーティングすることができ、層の摩擦値を再現性高く設定することができるという知見に基づいている。フレア面やパイプ面への不利な損傷は発生しない。その結果、先行技術による公知の処理とは対照的に、腐食の兆候を回避することができる。本開示による方法に必要な工程は、先行技術による公知の処理工程より明らかに少ない。この点において、本開示によるパイプの製造は、所要時間が非常に短く、製造上の複雑さが減少し、より安価に行うことができる。コーティングされたフレアは、最適な表面品質が得られ、また、この表面品質は、再現性高く実現することができる。全体として、本開示は、シンプルさ、少ない労力及び低コストを特徴とする。本開示によりコーティングされたフレアによりパイプの不利なねじれを極めて効果的に回避することできるため、パイプを破損させる逆トルクも実質的に生じない。
【0018】
以下、例示的な実施例を示す図面に基づいて、本開示をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示に係る、コーティングされたフレアを有するパイプの断面図である。
図2図2は、図1に示した主題を有するパイプ接続装置を示す断面図である。
図3図3は、本開示に係る方法に適したプラズマコーティング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本開示による方法に基づいて処理された本開示に係るパイプ1を示す。好ましい実施例及び例示的な実施例において、パイプ1は、自動車用のパイプである。パイプ1は、一方のパイプ端部にフレア(flare)2を有する。好ましくは、例示的な実施例において、フレア2は、F型のフレアとして設計される。特に好ましい構成及び例示的な実施例では、フレア2は、フレア後端部3に第1の層4を有する。層4は、好ましくは、相対的に小さい摩擦値μ1を有する。フレア後端部3における前記層は、プラズマコーティングにより、具体的には、好ましくは図3に示すプラズマコーティング装置5により、本開示に従って適用されている。
【0021】
図1による例示的な実施例では、フレア前端部6は、パイプ1の端面を形成し、第2の層7を有する。第2の層7は摩擦値μ2を有する。有利には、第2の層7は、プラズマコーティングにより適用される。本開示の枠組において、第2の層7の摩擦値μ2は、フレア後端部3の第1の層の摩擦値μ1よりも大きく、好ましくは、摩擦値μ1よりも顕著に大きい。例示的な実施例では、摩擦値μ2は、摩擦値μ1の3倍である。有利には、パイプ1は金属からなる。同様に、フレア2又はF型のフレアは、金属からなり、好ましくはパイプ1と一体的に形成される。
【0022】
図2は、本開示によるパイプ接続装置の例示的な実施例を示す。この接続装置には、図1に示したパイプ1が接続されている。図2における例示的な実施例では、パイプ1は、好ましくは、接続要素又は接続ブロック8に接続されている。例示的な実施例では、接続ブロック8は、一体化された第2のパイプ9を有する。例示的な実施例では、パイプは、ねじ込み継ぎ手11の軸方向孔10を貫通している。ねじ込み継ぎ手11は、雄ねじ12を有する。図2における例示的な実施例では、ねじ込み継ぎ手11は、雄ねじ12に対応する相補的な雌ねじにねじ込まれる。ねじ込まれた状態において、ねじ込み継ぎ手11の端面13は、フレア2のフレア後端部3に接する。ねじ込み継ぎ手11は、フレア2、つまりフレア前端部6を接続ブロック8のシール面14に対して押圧する。
【0023】
小さい摩擦値μ1を有するフレア後端部3における第1の層4は、ねじ込み継ぎ手11の端面13とフレア後端部3との間の摩擦を減少させ、これにより、パイプ1のねじれを効果的に防止する。本開示は、プラズマコーティングによりフレア後端部3を第1の層4でコーティングすることが特に有利な結果をもたらすという知見に基づいている。一実施例及び図2に示す例示的な実施例では、ねじ込み継ぎ手11の雄ねじ12は、第3の層15を有する。第3の層15は、摩擦値μ3を有する。例示的な実施例では、第3の層15の摩擦値μ3は、好ましくは、フレア後端部3の第1の層4の摩擦値μ1より大きく、特に好ましくは、層4の摩擦値μ1より顕著に大きい。例示的な実施例では、ねじ込み継ぎ手11の雄ねじ12における層15の摩擦値μ3は、フレア後端部3における第1の層の摩擦値μ1の少なくとも3倍大きい。さらに、本開示の枠組は、ねじ込み継ぎ手11の端面13が摩擦値の小さい層を有することを含む。当該層は、フレア後端部3に適用されたものと同じ層であってもよい。さらに、本開示の枠組は、ねじ込み継ぎ手11の端面13におけるコーティングがプラズマコーティングにより同様に適用されることを含む。また、相対的に大きい摩擦値μ3を有するねじ込み継ぎ手11の雄ねじ12における第3の層15は、基本的にプラズマコーティングにより適用される。本開示は、プラズマコーティングによって層を適用する際に、層の摩擦値を特に所望の通りに正確に設定することができるという知見に基づいている。
【0024】
図3は、本開示に係る方法を実施するために好ましく使用されるプラズマコーティング装置5を示す。図3は、プラズマコーティングによる第1の層4を含むフレア後端部3のコーティングを示す。プラズマコーティング装置5は、電極16と、ガス供給ライン17と、を有する。さらに、流路18が設けられている。この流路を通して、プラズマコーティング用の材料が、好ましくは粉末として導入される。また、フレア後端部3をコーティングするためのプラズマジェット19も図示されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ(1)を処理するための方法であって、
前記パイプ(1)の少なくとも一方のパイプ端部にフレア(2)を形成し、
前記フレア(2)の少なくとも所定の領域に、前記フレア(2)のコーティング面の摩擦特性を変える少なくとも1つの層(4)を設け、
前記フレア(2)をプラズマコーティングによりコーティングする、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パイプ(1)に面するフレア後端部(3)の少なくとも所定の領域にプラズマコーティングにより第1の層(4)を設け、
前記第1の層(4)は摩擦値μ1を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パイプ(1)から離間した前記パイプ(1)の端面を形成するフレア前端部(6)の少なくとも所定の領域に、プラズマコーティングにより第2の層(7)を設け、
前記第2の層(7)は摩擦値μ2を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の摩擦値μ1を有する第1の層(4)が、プラズマコーティングにより、少なくとも所定の領域においてフレア(2)に適用され、
第2の摩擦値μ2を有する第2の層(7)が、プラズマコーティングにより、少なくとも所定の領域においてフレア(2)に適用され、
前記第2の摩擦値μ2は前記第1の摩擦値μ1より大きい、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記フレア(2)はF型のフレア又はE型のフレアとして形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パイプ(1)は金属からなるか又は実質的に金属からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プラズマコーティングにより適用される少なくとも1つの層(4、7)は、金属、金属塩、ポリマー、フルオロポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料からなるか又は実質的に前記少なくとも1つの材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
常圧又は大気圧でプラズマコーティングを行う、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
物理蒸着及び/又は化学蒸着としてプラズマコーティングを行う、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
プラズマコーティングのためのプラズマコーティング装置(5)を使用し、
コーティング材料を粉末として前記プラズマコーティング装置(5)に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
プラズマコーティング装置(5)におけるコーティング材料を気相に変換し、次いで、前記パイプ(1)の前記フレア(2)の少なくとも所定の領域に固体として堆積させる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
求項1又は2に記載の方法によって処理されたパイプであって、
少なくとも一方のパイプ端部にフレア(2)を有し、
前記フレア(2)の少なくとも所定の領域に、プラズマコーティングにより適用される少なくとも1つの層(4、7)を有する、ことを特徴とするパイプ。
【請求項13】
パイプ(1)を接続するためのパイプ接続装置であって、
請求項1又は2に記載の方法によって処理された少なくとも1つのパイプ(1)と、ねじ込み継ぎ手(11)を形成する少なくとも1つのねじ要素と、を含み、
前記ねじ要素の少なくとも1つの面は、プラズマコーティングされたフレアの面と接する、ことを特徴とするパイプ接続装置。
【請求項14】
前記ねじ要素はプラズマコーティングされたフレア後端部(3)と接している、ことを特徴とする請求項13に記載のパイプ接続装置。
【請求項15】
前記ねじ要素の少なくとも所定の領域は、ねじ山コーティングを有し、
前記ねじ山コーティングの摩擦値μ3は、プラズマコーティングによりフレア後端部(3)に適用された層(4)の摩擦値μ1より大きい、ことを特徴とする請求項13に記載のパイプ接続装置。
【国際調査報告】