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特表2023-540027擬似交差腹部ストラップを有する安全ハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】擬似交差腹部ストラップを有する安全ハーネス
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
A62B35/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513281
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2021057495
(87)【国際公開番号】W WO2022043818
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,628
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
2.Dyneema
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス,マイケル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】セイフ,ネイサン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シェーバー,スティーヴン ディー.
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184KA11
2E184LA24
(57)【要約】
第1及び第2の腹部ストラップを有し、ユーザの矢状面と少なくとも概ね整列されている腹部バックルを有する、落下防止安全ハーネスであって、腹部バックルが、第1及び第2の腹部ストラップにそれぞれ取り付けられた第1及び第2のバックル部分を備える、落下防止安全ハーネス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスがユーザによって着用されたときに、前記ハーネスの第1の腹部ストラップが前記ユーザの右肩部から前記ユーザの右臀部まで延び、かつ前記ハーネスの第2の腹部ストラップが前記ユーザの左肩部から前記ユーザの左臀部まで延びるように構成された落下防止安全ハーネスであって、
第1のバックル部分が前記第1の腹部ストラップに取り付けられ、第2のバックル部分が前記第2の腹部ストラップに取り付けられ、前記第1及び第2のバックル部分が、腹部バックルを形成するように互いに取り外し可能に取り付けられており、
かつ、
前記第1及び第2の腹部ストラップ並びに前記第1及び第2のバックル部分が、前記腹部バックルが前記ユーザ及びハーネスの矢状面と少なくとも概ね整列されるように構成されている、落下防止安全ハーネス。
【請求項2】
前記第1の腹部ストラップ又は前記第2の腹部ストラップのいずれの部分も、前記ユーザ及びハーネスの前記矢状面と整列されていない、請求項1に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項3】
前記第1及び第2の腹部ストラップのうちの少なくとも1つ、並びに前記腹部ストラップに取り付けられた前記バックル部分が、前記腹部ストラップが前記バックル部分において180度のねじれを呈するように構成されている、請求項1又は2に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項4】
前記バックル部分が、前記ハーネスの垂直軸の±20度以内に配向されている少なくとも概ね垂直方向に細長いスロットを備え、前記腹部ストラップが、前記腹部ストラップが前記バックル部分の前記少なくとも概ね垂直方向に細長いスロットを通過するにあたり前記180度のねじれを呈する、請求項3に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項5】
前記少なくとも概ね垂直方向に細長いスロットの細長い長さの、前記スロットを通過する前記腹部ストラップの横方向幅に対する比が、1.4~3.0である、請求項4に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項6】
前記腹部ストラップが前記バックル部分の前記概ね垂直方向に細長いスロットを通過するにあたり前記180度のねじれを呈する、前記腹部ストラップが、互いに重なり合う関係にある第1及び第2のストラップ部分を備え、更に、互いに重なり合う関係にある前記第1及び第2のストラップ部分の少なくとも一部分がまた、前記バックル部分の前記概ね垂直方向に細長いスロットを部分的に画定する前記バックル部分の領域と重なり合う関係にある、請求項4に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項7】
前記概ね垂直方向に細長いスロットが、前記ハーネスの垂直軸の±10度以内に配向された実質的に垂直方向に細長いスロットであり、前記実質的に垂直方向に細長いスロットを備える前記バックル部分がまた、前記実質的に垂直方向に細長いスロットに対して15~60度の角度で配向されている長軸を呈する少なくとも1つの補助的な細長いスロットを備える、請求項4に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの補助的な細長いスロットの細長い長さの少なくとも80パーセントが、前記実質的に垂直方向に細長いスロットの全ての部分の横断方向外向きに配置されている、請求項7に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの補助的な細長いスロットが、上部及び下部の反対方向に角度付けられた補助的な細長いスロットの形態であり、前記補助的な細長いスロットの各々が、前記実質的に垂直方向に細長いスロットに対して15~60度の角度で配向されている長軸を呈する、請求項7に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項10】
前記第1の腹部ストラップ及び前記第1の腹部ストラップに取り付けられた前記第1のバックル部分が、前記第1の腹部ストラップが前記第1のバックル部分において180度のねじれを呈するように構成され、前記第2の腹部ストラップ及び前記第2の腹部ストラップに取り付けられた前記第2のバックル部分が、前記第2の腹部ストラップが前記第2のバックル部分において180度のねじれを呈するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項11】
前記第1のバックル部分が、第1の概ね垂直方向に細長いスロットを備え、前記第1の腹部ストラップが、前記第1の腹部ストラップが前記第1のバックル部分の前記第1の概ね垂直方向に細長いスロットを通過するにあたり前記180度のねじれを呈し、前記第2のバックル部分が、第2の概ね垂直方向に細長いスロットを備え、前記第2の腹部ストラップが、前記第2の腹部ストラップが前記第2のバックル部分の前記第2の概ね垂直方向に細長いスロットを通過するにあたり前記180度のねじれを呈する、請求項10に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項12】
前記第1のバックル部分の前記第1の概ね垂直方向に細長いスロットが、前記ハーネスの垂直軸の±10度以内に配向されている第1の実質的に垂直方向に細長いスロットであり、前記第1のバックル部分が、前記第1の実質的に垂直方向に細長いスロットに対して15~60度で角度付けられている長軸を各々呈する、上部及び下部の反対方向に角度付けられた補助スロットを備え、
かつ、
前記第2のバックル部分の前記第2の概ね垂直方向に細長いスロットが、前記ハーネスの垂直軸の±10度以内に配向されている第2の実質的に垂直方向に細長いスロットであり、前記第2のバックル部分が、前記第2の実質的に垂直方向に細長いスロットに対して15~60度で角度付けられている長軸を各々呈する、上部及び下部の反対方向に角度付けられた補助スロットを備える、請求項11に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項13】
前記第1及び第2のバックル部分が互いから取り外されるときに、前記第1のバックル部分が、前記第1の腹部ストラップに沿って摺動可能に移動可能であり、前記第2のバックル部分が、前記第2の腹部ストラップに沿って摺動可能に移動可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項14】
前記第1及び第2のバックル部分が、前記第1及び第2のバックル部分の金属構成要素によって互いに直接取り付けられており、前記第1及び第2のバックル部分が、いかなる可撓性ストラップ又はウェビングによっても、互いに直接取り付けられておらず、また直接接続されてもいない、請求項1~13のいずれか一項に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項15】
前記第1のバックル部分が、複数の機械的締結具によって互いに恒久的に取り付けられているベースプレート及びカバープレートを備え、前記第1のバックル部分の前記ベースプレート及び前記カバープレートが、前記第1及び第2のバックル部分を互いに取り付けるために、前記第2のバックル部分のキャッチを受容することができる受容キャビティを画定するように構成されており、前記ベースプレート及び前記カバープレートがまた、前記第1のバックル部分の前記キャッチを挿入して前記受容キャビティに到達させることができる開口部を画定する、請求項1~14のいずれか一項に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項16】
前記第1のバックル部分が、前記ベースプレート及び/又は前記カバープレートに枢動可能に取り付けられ、かつ前記第2のバックル部分の前記キャッチが前記第1のバックル部分の前記受容キャビティから出て前記第1及び第2のバックル部分を互いから取り外すことを可能にする、第1のラッチ解除位置と、前記第1のバックル部分の前記受容キャビティ内に前記第2のバックル部分の前記キャッチを確実に保持し、前記キャッチが前記受容キャビティから取り外されることを防止する、第2のラッチ位置との間で枢動可能に移動可能である、第1及び第2の枢動可能ラッチを備える、請求項15に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項17】
前記第1バックル部分の前記第1及び第2の枢動可能ラッチが、付勢部材によって前記第2のラッチ位置に向かって付勢され、前記第1及び第2の枢動可能ラッチが、前記第1及び第2の枢動可能ラッチの露出した耳部分を操作することによって、ユーザの指が前記付勢部材の付勢力に打ち勝って、前記第1及び第2のラッチを前記第2のラッチ位置から前記第1のラッチ解除位置まで手動で枢動させることができるように構成されている、請求項16に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項18】
前記第1バックル部分の前記第1及び第2の枢動可能ラッチが、前記第1及び第2のバックル部分を互いに向かって横断方向に移動させて前記第2のバックル部分の前記キャッチが前記第1のバックル部分の前記受容キャビティに入ることにより、前記キャッチの頭部の先端が前記第1及び第2の枢動可能ラッチの接触面に衝突し、前記付勢部材の前記付勢力に打ち勝って前記第1及び第2の枢動可能ラッチを付勢して、それらの第2のラッチ解除位置まで枢動可能に移動させるように構成されている、請求項17に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項19】
前記第1のバックル部分の前記第1及び第2の枢動可能ラッチが、前記第2のバックル部分の前記キャッチが前記第1のバックル部分の前記受容キャビティ内に十分に貫入することにより、前記付勢部材によって加えられる前記付勢力が、前記第1及び第2のラッチを付勢して前記第2のラッチ位置に自動的に枢動可能に移動して、前記キャッチを前記受容キャビティ内に確実に保持させるように構成されている、請求項18に記載の落下防止安全ハーネス。
【請求項20】
前記ハーネス及び前記腹部バックルが、ANSI Z359.12の要件を満たす、請求項1~19のいずれか一項に記載の落下防止ハーネス。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の落下防止安全ハーネスを着用する方法であって、前記安全ハーネスの上部をジャケットのように前記ユーザの前記肩部及び上部胴体のあたりに巻き付けることと、次いで前記第1及び第2のバックル部分を互いに取り付けて前記腹部バックルを形成することと、を含み、プルオーバーセーターのように前記ユーザの前記頭部及び肩部を越えて前記ハーネスを下向きに引っ張るステップを必要としない、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
安全ハーネスは、多くの場合、ユーザが落下を経験する可能性を低減するために、及び/又は落下の場合にユーザを安全に抑制するために使用される。そのようなハーネスは、多くの場合、ランヤード、垂直安全システム、又は梯子上昇支援システム、自動格納式命綱、及び他の落下防止機器のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。
【発明の概要】
【0002】
大まかに要約すると、本明細書では、第1及び第2の腹部ストラップと、ユーザの矢状面と少なくとも概ね整列された腹部バックルと、を有する落下防止安全ハーネスが開示される。これら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この広範な要約は、請求可能な主題を限定するように解釈してはならず、これは、かかる主題が出願において最初に出願された特許請求の範囲に提示されているか、又は、出願経過中に修正されたか若しくは他の方法で提示された請求項に提示されているかに関わらない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】例示的な第1及び第2のバックル部分を備えた例示的な落下防止安全ハーネスの背面図である。
図2】ハーネスがユーザによって部分的に着用され、第1及び第2のバックル部分がまだ互いに取り付けられていない状態の、例示的な第1及び第2のバックル部分を備えた例示的な落下防止安全ハーネスの正面図である。
図3】第1及び第2のバックル部分が互いに取り付けられて腹部バックルを形成した状態でユーザによって完全に着用された、図2の例示的な落下防止安全ハーネスの正面図である。
図4】例示的な腹部バックルの正面図である。
図5】互いに取り付けられて図4の腹部バックルを形成することができる、例示的な第1及び第2のバックル部分の正面図である。
図6図5の例示的な第1のバックル部分の正面部分分解図である。
図7】別の例示的な腹部バックルの正面図である。
【0004】
様々な図における同様の参照番号は、同様の要素を示す。いくつかの要素は、同一又は等価の複数で提示されることが可能であり、つまり1つのみ又はそれ以上の代表的要素が参照番号で示されることが可能な場合であっても、かかる参照番号は、かかる同一要素の全てに適用されると理解されたい。特に指示がない限り、本文書における全ての図及び図面は、縮尺どおりではなく、本発明の異なる実施形態を例示する目的で選択される。特に、様々な構成要素の寸法は、指示のない限り、単に例示的な意味合いとして示されているにすぎず、様々な構成要素の寸法間の関係は、図面から推測されるべきではない。「第1」及び「第2」などの用語を本開示に使用することができるが、特に断らない限り、これらの用語はあくまで相対的な意味においてのみ使用される点を理解すべきである。性質又は属性の修飾子として本明細書で使用する場合、「概ね」という用語は、特に定めのない限り、当業者には、高度の近似を要することなく性質又は属性を容易に認識可能であることを意味する。
【0005】
以下の用語は、直立しているユーザなどによって着用されているときの落下防止安全ハーネスに関して定義される。したがって、特許請求の範囲を含む、本明細書に開示されるハーネス構成要素の位置、配向などの説明は、別段の指定がない限り、直立しているユーザによって着用されているときのハーネスに関するものである。しかしながら、この用語は、説明を明確にするために使用され、職場において使用中のハーネス及びその構成要素の実際の配向を限定するものではない。
【0006】
垂直、上向き及び下向き、上部、下部、上及び下などの用語、並びに同様の用語は、ハーネスが直立しているユーザによって着用されるときの従来の方向に対応する。垂直軸(v)は、本明細書の様々な図に示されている。横断方向は、本明細書の様々な図において横断軸(t)によって示されるように、ユーザ及びハーネスの従来の左右方向を指す。腹部という用語は、ユーザの上半身の前面、並びにそこに位置するハーネス部分及び構成要素を指し、背部という用語は、ユーザの上半身の背面、並びにそこに位置するハーネス部分及び構成要素を指す。背部-腹部方向は、本明細書の様々な図において背部-腹部軸(d-v)によって示されるように、ユーザの身体を通して(具体的には、胴体を通して)前向き-後向きに延びる方向である。
【0007】
内向きなどの用語は、別段の指定がない限り、背部-腹部軸に沿ってユーザの身体に向かって内向きである方向を示し、外向きなどの用語は、別段の指定がない限り、背部-腹部軸に沿ってユーザの身体から外向きに離れる方向を示す。横断方向内向き及び横断方向外向きなどの用語は、この用法の例外であり、横断(t)軸に沿って、ユーザの身体及びハーネスの矢状面に向かう方向及びそれらの矢状面から離れる方向をそれぞれ示す。
【0008】
本明細書で使用される場合、矢状面(正中矢状面と呼ばれることもある)は、ユーザの身体を左部分及び右部分に対称的に分割するように、ユーザの身体の横断中心線を下って延びる垂直面としてのその従来の意味を有し、矢状という用語はまた、直立位置でそのようなユーザによって着用されるときの、本明細書に開示されるハーネスにも適用される。矢状面は、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0165246号の図9においてアイテム501として示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
落下防止安全ハーネス(全身安全ハーネスと呼ばれることもある)は、作業者が高所にいる、又はそうではないが落下の危険がある環境において広く使用されている。落下防止安全ハーネスは、落下防止を提供するために、例えば、自己格納式命綱、水平命綱、ランヤードなどの落下防止器具又は装置と組み合わせて機能するように構成されている。したがって、通常の使用では、少なくとも1つのそのような落下防止器具は、典型的には、安全ハーネス、例えば、ハーネスによって支えられるDリング(又は他の好適な接続点)に接続される。落下防止安全ハーネスは、例えば、バックパックなどの汎用品と区別されるであろう。
【0010】
図1図3の一般的な表現に示されるように、落下防止安全ハーネス1は、落下の場合にハーネスのユーザ(着用者)の体重を集合的に支持することができるストラップ及び関連アイテムのアセンブリを備えることになる。図1及び図2の描写は例示的な表現として意図されており、実際には、安全ハーネスは、これらの図に示される特定の構成とはいくつかの態様で異なる場合がある。また、図1及び図2の例示的なハーネスは、様々な点で異なり、同じハーネスの異なる図として解釈されるべきではない。
【0011】
そのようなハーネスのストラップは、多くの場合、例えば、ポリアミド、ポリアラミド(例えば、Kevlarなど)、超高分子量ポリエチレン(例えば、Dyneemaなど)などの、例えば、織布合成布地から作製される平坦なウェビングで構成される。そのようなストラップは、典型的には可撓性であるため、着用者の身体の表面に適合することができ、バックル、ガイド、ループなどのうちの1つ以上を通過することができるが、典型的には、有意に伸張可能ではない。そのようなストラップは、互いに相互接続され、多くの場合、ハーネスの快適性を向上させるための様々なパッド(例えば、肩部パッド4及び腰部/臀部パッド8)、並びに様々なバックル、ラッチ、コネクタ、ループ、ガイド、例えば胸部パッド及び/又は脚部パッドなどの追加のパッドなどで適合される。そのような構成要素及びそのような構成要素の例示的な構成は、例えば、米国特許第8959664号、同第9174073号、及び同第10137322号に記載されており、これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
安全ハーネス1は、典型的には、図2及び図3に示されるように、ユーザの肩部の上部にわたって延びる第1及び第2の(右及び左)ストラップ3及び2を含む。図2は、第1及び第2のバックル部分100及び200がまだ互いに取り付けられていない状態で部分的に着用されているハーネスを示している。図3は、バックル部分100及び200が互いに取り付けられて本明細書で後に詳細に説明されるような腹部バックル50を形成した状態で完全に着用されているそのようなハーネスを示している。
【0013】
着用者の腹部(前)側上で、肩部ストラップ3及び2は、図2及び図3に見られるように、着用者の胴体に沿って概ね下向きに続いている。そのような位置において、これらのストラップは、本明細書では腹部ストラップ7及び6と呼ばれる(各腹部ストラップは、多くの場合、図1図3から明らかなように、肩部ストラップの途切れのない連続体であることに留意されたい)。第1及び第2の腹部ストラップ7及び6は、ストラップ7及び6の最下部分12及び13がユーザの臀部又はその近くに位置することになるように、ユーザの胴体に沿って概ね下向きに延びる。多くの場合、腹部ストラップ6及び7の最下部分12及び13は、図1に示されるように、ユーザの腰部/臀部領域の少なくとも一部分を取り囲むストラップ5(腰部ストラップ、臀部ストラップなどと呼ばれ得る)と出会い、例えば相互接続する。(様々なハーネス設計では、腰部ストラップは、存在してもしなくてもよい。)多くの実施形態では、腹部ストラップ6及び/又は7は各々、肩部から臀部まで連続的に延びるウェビングの単一片であってもよい。他の実施形態では、腹部ストラップ6及び/又は7は、ストラップ6又は7に沿ったいくつかの位置において互いに取り付けられている2つの個別のウェビング片の形態をとり得る(定義上、そのような位置は腹部バックルにおいてではない)。全てのそのような設計変形例は、本明細書で使用される用語「ストラップ」によって包含される。
【0014】
多くの安全ハーネス設計では、第1及び第2の肩部ストラップ3及び2は、着用者の胴体の背面(背部)上で、例えば肩甲骨の間に位置する背部交差点において互いに出会い、重なり合い、交差することになる。いくつかの実施形態では、図1の例示的な設計のように、(肩部パッドとして機能するように上向きに続き得る)背部プレート11及び/又は背部パッド4が存在してもよい。多くの場合、背部Dリング40が、図1に示されるような位置に設けられる。いくつかの安全ハーネス、例えば、多目的安全ハーネス、垂直又は上昇支援システムと共に使用するために特に構成されたハーネスなどは、本明細書の様々な図に示されるように、腹部Dリング104を備え得る。(Dリングはまた、図1の例示的な設計において明らかであるように、他の位置、例えば臀部に設けられてもよい)
【0015】
いくつかの実施形態では、ハーネス1はまた、(図1図3に示され、番号が付けられていない)脚部ストラップ又は大腿部ストラップを含み、様々な実施形態では、いくつかのそのようなストラップは、腹部ストラップの連続体であってもなくてもよい。いくつかの実施形態では、落下防止安全ハーネスは、パッド及びクッションなどの他の比較的可撓性のハーネス構成要素と比較して(例えば、成形プラスチック及び/又は金属から作製され得る)比較的剛性であり得る、1つ以上のプレート(例えば、上述のような背部プレート)を含んでも含まなくてもよい。本明細書の図には示されていないが、いくつかの実施形態では、腹部ストラップ6及び/又は7(及び/又は任意の他のストラップ、例えば、腰部ストラップ、脚部ストラップなど)は、所望に応じてストラップの長さを調節するために使用され得るストラップアジャスタを備えてもよい。例示的なストラップアジャスタは、例えば、米国特許第8794378号に記載されている。本明細書の開示は、本明細書に開示されるような腹部バックルがストラップアジャスタと区別されることを明らかにする。本明細書に開示されるハーネスは、カプラストラップ(すなわち、米国特許第9993048号の図1のアイテム202によって例示されるような、従来のH型ハーネスの左胸部ストラップと右胸部ストラップとの間に互いに延びる、概ね水平で横断方向に延びているストラップ)を必ずしも必要とせず、多くの実施形態では含まない。
【0016】
従来、落下防止安全ハーネスには、2つの一般的なタイプがあった。1つの一般的なタイプのハーネスでは、一方の腹部ストラップが、ユーザの右肩部から右臀部まで延び、他方のストラップが、左肩部から左臀部まで延びている。多くの場合、そのような腹部ストラップは、概ね垂直な直線経路に沿ってユーザの胴体に沿って下降している。そのような(H型ハーネスと呼ばれることもある)ハーネスは、従来、一方の腹部ストラップから他方の腹部ストラップまで概ね横断方向に延びる(すなわち、「H」の水平クロスバーを形成する)、上述の一般的なタイプのカプラストラップを含む。そのようなハーネスは、例えばジャケット又はベストの一般的な方法で、比較的容易に着用することができるという利点を有する。すなわち、そのようなハーネスの腹部ストラップは、上部胴体あたりの前方に巻き付けることができ、その後、胸部ストラップカプラが、2つの腹部ストラップ間の接続を確立するために使用される。
【0017】
第2の一般的なタイプのハーネスは、いわゆる交差型ハーネスである。そのようなハーネスでは、一方の腹部ストラップが右肩部から左臀部まで延び、他方の腹部ストラップが左肩部から右臀部まで延びている。(ここで及び他の箇所において、肩部という用語は、首部の横断方向縁部から三角筋の横断方向外側限界まで延びている一般的な領域を指す。同様に、臀部という用語は、腹直筋から腸骨稜まで横方向に覆う筋肉及び組織までの一般的な領域を包含する)。したがって、腹部ストラップは、例えばユーザの胸骨の近傍で、互いに交差する。そのようなハーネスは、例えばユーザの臀部に掛かっている重いツールから生じ得る非対称な力を再分配する際に利点を有し得る。そのようなハーネスはまた、有利には、腹部Dリングをユーザの胴体の横断方向中心(矢状面)の近くに配置することができ、これは、女性ユーザにとって、及び/又はハーネスが垂直安全システム、上昇支援システムなどと組み合わせて使用されるときに、特に有利であり得る。これは、有利には、上述のカプラストラップに接続されるのではなく、腹部ストラップに直接接続されたDリングを有しながら達成され得る。しかしながら、交差型ハーネスは、ジャケット又はベストのようにハーネスを着用することができないという欠点を有する。むしろ、ハーネスは、プルオーバーセーターの一般的な方法でユーザの頭部の上方で下向きに引っ張られる必要がある。これは、特にハーネスの初心者ユーザにとって面倒であり得、瞬間的に、混乱するストラップのもつれをもたらす可能性がある。
【0018】
擬似交差設計
本設計は、両方のタイプのハーネスの利点を保持する擬似交差設計である。定義によれば、擬似交差設計は、H型ハーネスでのように、ハーネスの第1の腹部ストラップ7がユーザの右肩部からユーザの右臀部まで延び、ハーネスの第2の腹部ストラップ6がユーザの左肩部からユーザの左臀部まで延びる構成を示す。しかしながら、各腹部ストラップは、H型ハーネスの通常の方法で、ユーザの胴体に沿って概ね真っ直ぐに垂直下向きに延びていない。代わりに、各腹部ストラップは、それがユーザの肩部から下向きに延びるときに、図3に示される一般的な方法で腹部バックル50において腹部ストラップが互いに密接に(例えば、10cm以内に)接近するように、横断方向内向きに(ユーザ及びハーネスの矢状面に向かって)逸脱する。次いで、各腹部ストラップは、腹部バックルから下向きに続くため、図3から明らかなように、腹部ストラップが始まった肩部と同じ側部にある臀部まで延びるように、横断方向外向きに逸脱する。
【0019】
いくつかの実施形態では、これは、図2に示されるように、第1のバックル部分100を第1の腹部ストラップ7に取り付けることによって、及び第2のバックル部分200を第2の腹部ストラップ6に取り付けることによって達成され得る。ハーネスを着用するとき、2つのバックル部分100及び200は、互いに向かって(すなわち、ユーザの矢状面に向かって)横断方向内向きに移動され、図3に示されるような腹部バックル50を形成するように互いに取り外し可能に取り付けられ得る。これは、ハーネスをユーザの頭部の上方で下向きに引っ張らなければならないのではなく、H型ハーネスの着用と概ね同様の方法で行うことができることを理解されたい。
【0020】
擬似交差設計では、腹部バックル50は、図3から明らかなように、ユーザ及びハーネスの矢状面と少なくとも概ね整列されることになる。これは、矢状面が腹部バックルの少なくともいくつかの部分を通過するように、腹部バックルがユーザ及びハーネスの左右(横断)軸に対して少なくとも概ね中心に置かれることを意味する。多くの場合、矢状面は、バックルの横断方向中心の近く、又は非常に近接して(例えば、その4、2、又は1cm以内)を通過し得る。
【0021】
しかしながら、多くの実施形態では、第1の腹部ストラップ7又は第2の腹部ストラップ6のいずれの部分も、ユーザ及びハーネスの矢状面と整列されない。換言すれば、そのような実施形態では、腹部ストラップは、矢状面から横断方向外向きに、互いから横断方向に離れて配置されてもよく、その結果、矢状面は、図3に示される構成によって例示されるように、いずれの腹部ストラップのいかなる部分も通過しない。更に、そのような実施形態では、再び図3から明らかなように、いずれかの腹部ストラップのいかなる部分も、他方の腹部ストラップのいかなる部分とも重なり合う関係にならない。任意の2つ(又はそれ以上)のアイテムが重なり合う関係にあるとは、背部-腹部方向に沿って、アイテムのうちの1つの少なくともいくつかの部分を通過する線が、他のアイテムの少なくともいくつかの部分も通過することになることを意味する。上記の条件は、ハーネスストラップが全て安定した、適切かつぴったりと適合した状態にあるときに適用されるが、それにもかかわらず、これらの条件は、例えば、ハーネスのユーザがねじれたり、曲がったりしているとき、又はハーネスを着用するプロセスにおいて、瞬間的に破られ得ることが理解されるであろう。
【0022】
腹部ストラップの180度のねじれ
多くの実施形態では、第1及び第2の腹部ストラップ7及び/又は6のうちの少なくとも1つ、並びにその腹部ストラップに取り付けられるバックル部分(100及び/又は200)は、腹部ストラップが180度のねじれを呈するように構成されてもよい。180度のねじれとは、腹部ストラップがユーザの胴体に沿って下向きに進むときに、腹部バックルの上方にあるストラップの部分において内向きに(ユーザの身体に向かって)面する主表面が、腹部バックルの下方にあるストラップの部分において外向きに(ユーザの身体から離れて)面するように(逆もまた同様)、腹部ストラップが、腹部ストラップの長軸と概ね整列された回転軸を中心として180度回転することを意味する。
【0023】
したがって、図3に示されるような例示的な腹部ストラップ7を参照すると、ストラップ7の主表面14は、ユーザの上胸部上で内向きに面し、ユーザの下腹部上で外向きに面し、ストラップ7の対向する主表面15に対してはその逆が当てはまる。同様に、図3のストラップ6に対して、主表面16及び17はそれぞれ、腹部バックル50の上方及び下方で内向き-外向きの配向をとる。したがって、図3に示される実施形態では、腹部ストラップ7及び6は各々、180度のねじれ18及び19を含むように構成されている。いくつかの実施形態では、単一の腹部ストラップのみが、そのような方法で構成され得る。そのような場合、他方のストラップは、例えば、従来のH型ハーネスの腹部ストラップの一般的な方法で、ほぼ垂直に構成されてもよい。しかしながら、多くの実施形態では、腹部ストラップの両方を180度のねじれで構成することが有利であり得る。
【0024】
多くの実施形態では、腹部ストラップに取り付けられるバックル部分は、(図3に示される例示的な180度のねじれ18及び19のように)180度のねじれがバックル部分において生じることを必要とするように構成されてもよい。「において」とは、バックル部分の数cm(例えば、4、2、又は1cm)以内を意味する。いくつかの実施形態では、そのような構成は、バックル部分に、腹部ストラップが通過する少なくとも概ね垂直方向に細長いスロットを設けることによって促進され得る。(そのようなスロットは、本明細書では垂直方向に細長いスロットと呼ばれることもあるが、別段の指定がない限り、少なくとも概ね垂直方向に細長いことを意味することが理解されるであろう)。そのようなスロットは、図1図3において部分的に見ることができ、このタイプの例示的なスロットは、図4に示されるように、バックル部分100及び200のスロット106及び202としてより容易に見ることができる。スロットとは、容易に認識可能な長軸を有するように細長く、かつスロットを通過するストラップの横方向(クロスウェブ)幅と少なくとも同じ大きさの細長い長さを呈する、貫通開口部を意味する。多くの実施形態では、そのようなスロットは、少なくとも概ね垂直方向に細長く、これは、スロットの長軸がユーザ及びハーネスの垂直軸の±20度以内に配向されることを意味する。いくつかの実施形態では、そのようなスロットは、少なくとも実質的に垂直方向に細長く、これは、スロットの長軸が垂直軸の±10度以内に配向されることを意味する。(図3及び図4の例示的な構成は、厳密に垂直に配向されたスロットに非常に近いスロットを示している)。スロットの第2の主寸法(例えば、図3及び図4の横断方向に沿って延びるスロットの「幅」)は、スロットを通過するストラップの厚さ寸法を収容するのに十分であることのみを必要とする。(背部-腹部方向に、例えば、図3及び図4の平面の内外に延びる)スロットの最終(第3の)寸法は、例えば、スロットを画定する本体の厚さによって規定される、任意の好適な値であり得る。
【0025】
図3に例示的な方法で示されるように、腹部ストラップが通過させられる少なくとも概ね垂直方向に細長いスロットを設けることにより、スロットが設けられているバックル部分において腹部ストラップに180度のねじれを生じさせることができる。換言すれば、腹部ストラップは、腹部ストラップが概ね垂直方向に細長いスロットに接近し、そこを通過し、そこから出る局所領域において180度のねじれを呈し得る。
【0026】
少なくともいくつかの実施形態では、腹部ストラップは、180度のねじれを示す特徴を呈し得る。したがって、いくつかの実施形態では、そのような腹部ストラップは、図3に示される腹部ストラップ6の部分9及び9’によって例示されるように、互いに重なり合う関係にある第1及び第2のストラップ部分を備えることができる。これらの部分は重なり合う関係にあり、部分9’は外向きであり、部分9は内向きである。更に、いくつかのそのような実施形態では、これらのストラップ部分の各々の少なくとも一部分はまた、バックル部分の概ね垂直方向に細長いスロットを部分的に画定するバックル部分の領域と重なり合う関係にあってもよい。そのような領域は、ストラップ自体の部分9と重なり合って覆い隠されているため、図3では見えないが、そのような領域は、図4では(スロット202を部分的に画定する)領域211として示されている。同様の領域は、図7では領域311として示されている。
【0027】
図3の例示的な構成では、重なり合う点において、各腹部ストラップの下部は、各腹部ストラップの上部の(背部-腹部方向に沿って)外向きに送られる。(例えば、ストラップ6に対して、部分9’は部分9の外向きに配置される)。これは任意選択的であり、容易に逆にすることができ、例えば、一方又は両方のストラップの上部をそのストラップの下部の外向きに送ることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、概ね垂直方向に細長いスロット(例えば、バックル部分100又は200のスロット106又は202)は、スタンドアロン方法で機能してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、腹部ストラップの案内を向上させるため、特に、概ね垂直方向に細長いスロットにおいて180度のねじれが強制的に生じる程度を向上させるために、1つ以上の補助スロットが設けられてもよい。この一般的なタイプの例示的な構成を図7に示す。この図では、第1のバックル部分100(この他の構成要素及び機能は、本明細書で後に詳細に説明される)は、図4のスロット106と形態及び機能が類似する、概ね垂直方向に細長いスロット402を備える。バックル部分100はまた、2つの(上部及び下部)補助スロット406及び407を備える。他のアイテム及び特徴をより容易に見ることができるようにストラップは図7に示されていないが、ストラップが、スロット406によって確立される所望の角度で下向き及び横断方向内向きに案内され得、次いで垂直方向に細長いスロット402内を通過し得、次にスロット407によって確立される角度で下向き及び横断方向外向きに案内され得る方法は、容易に明らかである。そのような場合、スロット402において180度のねじれが生じることになる。
【0029】
様々な実施形態では、単一の補助スロット(例えば、上部スロット若しくは下部スロット)のみが存在してもよく、又は2つ(若しくはそれ以上)の補助スロットが使用されてもよい。そのようなスロットの角度は、所望に応じて選択することができ、垂直方向に細長いスロットの長軸に対する補助スロットの長軸の配向に関して定義される。様々な実施形態では、そのような補助スロットは、垂直方向に細長いスロットに対して少なくとも10、15、20、25、又は30度の角度で配向される長軸を呈し得る。更なる実施形態では、そのような補助スロットは、垂直方向に細長いスロットに対して最大60、50、40、又は30度の角度で配向される長軸を呈し得る。特定の例として、図7の例示的な構成では、補助スロット306は、垂直方向に細長いスロット302に対して約35度の角度で配向されている。
【0030】
特定の角度が何であれ、定義による任意のそのような補助スロットは、垂直方向に細長いスロットの垂直中点に最も近い補助スロットの終端部が、補助スロットの他方の対向する終端部よりも垂直方向に細長いスロットから更に離れるように、配向されることになる。(換言すれば、補助スロット306の下端部から垂直方向に細長いスロット302の最も近い点までの距離は、図7から容易に明らかなように、補助スロット306の上端部から垂直方向に細長いスロット302の最も近い点までの距離よりも大きい)。上部及び下部補助スロットが存在する場合、そのような要件は、上部及び下部補助スロットが垂直方向に細長いスロットに対して反対に角度付けられることを必要とし、これは再び図7から明らかである。本明細書の開示を考慮すると、当業者であれば、補助スロットのそのような構成が、本明細書に開示される180度のねじれを促進するようにストラップの案内を向上させ得る方法を容易に理解するであろう。
【0031】
本明細書では詳細に説明しないが、他のバックル部分は、上述したものと同様の設計の1つ以上の補助スロットを同様に備えることができる。したがって、図7では、第2のバックル部分は、垂直方向に細長いスロット302に加えて、上部及び下部補助スロット306及び307を備える。図7に示される上部及び下部補助スロットは対称である(例えば、それらが付随する垂直方向に細長いスロットに対して、等しいが反対の角度で配向されている)が、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、下部補助スロットは、上部補助スロットとは異なる角度で配向され得る。
【0032】
様々な実施形態では、補助スロットの細長い長さの少なくとも60、70、80、90、95、又は98パーセントは、垂直方向に細長いスロットの全ての部分の横断方向外向きに配置され得る。特定の例として、図7の例示的な構成では、補助スロット306及び307の細長い長さの少なくとも90パーセントが、垂直方向に細長いスロット302の全ての部分の横断方向外向きに配置されている。
【0033】
ハーネスのストラップのためのスロット及びガイドの従来の設計では、スロット又はガイドは、ストラップがスロットを通して適合することができるように、多くの場合、ストラップの横方向(クロスウェブ)幅よりわずかに大きい細長い長さを有するように選択される。本明細書に開示されるようなスロットは、180度のねじれを通してストラップを案内するという特定の目的を果たすものであり、有利には、スロットを通過するストラップの横方向幅よりもかなり大きい細長い長さを有するように選択され得ることを理解されたい。したがって、様々な実施形態では、スロットを通過するストラップの横方向幅に対する、バックル部分の少なくとも概ね垂直に配向されたスロットの細長い長さの比は、少なくとも、1.2、1.4、1.6、1.8、又は2.0であり得る。更なる実施形態では、この比は、最大4.0、3.5、3.0、2.5、2.2、又は1.9であり得る。
【0034】
本明細書に開示されるような腹部バックルは、本明細書に説明される少なくとも概ね垂直に配向されたスロット(並びにそれと併せて使用され得る任意選択の補助スロット)を備える。全てのそのようなスロットは、スロットを通過して前方に続くストラップを有するように構成される。これにより、ストラップをバックルに取り付けるためにストラップを通過させるように構成されたバックルスロットとは区別されることになる。例えば、いくつかの目的のために、ストラップは、ストラップの端部部分をスロットに通過させ、ストラップのこの端部部分をそれ自体の上に折り返し、次いで縫い付け、編み込み、又は別の方法でストラップをそれ自体に取り付けて、ストラップをバックル部分に取り付ける終端ループを形成することによって、バックル部分に取り付けられ得る。そのような取り付けは、典型的には、バックル及びハーネスが作製される工場において行われ、ストラップは、典型的には、常にバックル部分に取り付けられたままになる。そのようなバックル部分は、本明細書に開示されるような腹部バックル部分と区別されることになる。
【0035】
180度のねじれの条件、特に、例えば、垂直方向に細長いスロットによって必要とされるように、180度のねじれがバックル部分において生じ得るという規定は、例えば、図3に示されるように、ハーネスが完全に着用され、バックル部分が互いに取り付けられて腹部バックルを形成するときに適用可能である。(図1のように)ハーネスが着用されていない状態、又は(図2のように)部分的に着用されている状態では、本明細書に開示される構成及び幾何学的関係は明らかではない場合がある。したがって、腹部ストラップが本明細書に記載されるような180度のねじれを呈するか否かは、ハーネスが完全に着用され、製造業者によって必要とされる方法でユーザに正しく適合された状態で評価される。特に、180度のねじれがハーネスの腹部ストラップ内に意図的に組み込まれる、本明細書に開示される構成は、例えば、ユーザがハーネスを不正確に着用する(例えば、ストラップを偶発的にねじる)ことに起因して腹部ストラップがねじれてしまう状況とは区別されることになる。本構成では、ハーネスが工場において作製されるとき、例えば、様々なストラップを互いにバックルなどに、選択された恒久的な構成で取り付ける(例えば、縫い付ける)ことによって、腹部ストラップ内に180度のねじれが組み込まれる。換言すれば、本明細書に開示された180度のねじれは、腹部ストラップ又はそれが接続され得る任意のストラップのねじれを解くことによって除去することはできない。
【0036】
上述の効果を達成し得る例示的なバックル設計は、図4図7に示されている。いくつかの例示的な実施形態では、腹部バックル50は、バックル50を形成するために互いに取り外し可能に取り付けられ得る2つのバックル部分100及び200の形態で提供され得る。これらの図に描かれた例示的な構成では、第1のバックル部分100及び第2のバックル部分200は、そのようなバックルを説明するために当該技術分野において一般的に使用される用語にしたがって、それぞれ、「雌型」バックル部分及び「雄型」バックル部分になる。(そのようなバックル部分は、左腹部ストラップ又は右腹部ストラップに取り付けられ得る)。雌型バックル部分100は、図5から明らかなように、雄型バックル部分200の相補的なキャッチ203を選択的に受容するように構成された開口部119を備える。「相補的な(complementary)」及び「選択的に(selectively)」とは、バックル部分100及び200が各々、それと嵌合可能であるように特別に設計されている相手方バックル部分と嵌合可能であるように構成されていることを意味する。そのような設計は、例えば、「汎用の」バックル又はコネクタとは対照的である。(いくつかの実施形態では、所望に応じてユニバーサルバックルが使用され得る)
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の(例えば、雌の)バックル部分100は、ベースプレート101及びカバープレート102を含む。ベースプレート101、及びカバープレート102の一部は、図5に見ることができる。これらのアイテムは、ベースプレート101がカバープレート102から分解され、カバープレート102に対して180度回転されている、図6においてより容易に見ることができる。すなわち、図6では、ベースプレート101は、カバープレート102の追加の構成要素及び特徴を見ることができ、かつベースプレート101の下側の構成要素及び特徴を見ることができるように、クラムシェル方式でカバープレート102から開放されている。(また、図6では、他の特徴をより容易に見ることができるように、様々な締結具が省略されている)。様々な実施形態では、プレート101及び102(及びそれらに関連付けられた他の構成要素)は、例えば、鋼又はアルミニウムなどの金属で作製され得る。プレート101及び102を恒久的に一緒に保持するために、様々な機械的締結具(例えば、リベット)103が使用され得る。図6の図示から明らかなように、そのような締結具を収容するために、様々な貫通孔をプレートに設けることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1のバックル部分100は、第1のバックル部分に枢動可能に取り付けられ、かつ第2のバックル部分200のキャッチ203に選択的に係合して、キャッチ203を第1のバックル部分100の内部空間(受容キャビティ)111内に確実にロックするように構成された、少なくとも1つのラッチを備える。いくつかの特定の実施形態では、少なくとも1つのラッチは、図6に見られるように、第1及び第2の枢動可能ラッチ112の形態をとり得る。そのようなラッチは、図5及び図6に示されるように、回転軸118を中心にして(部分的に)回転可能であるような方法で、第1のバックル部分100に枢動可能に連結され得る。したがって、図示される実施形態では、ラッチ112は、ベースプレート101、カバープレート102、及びラッチ112の整列された開口122、121、及び124を通過する機械的締結具(例えば、リベット)103bによってバックル部分100に枢動可能に接続され、機械的締結具103bは、枢動可能ラッチの回転軸118を確立する。(他の締結具103aは、ベースプレート及びカバープレート内の様々な同様に整列された開口を通過し、これらは、プレートを一緒に保持することを補助するが、ラッチと相互作用しない)
【0039】
図示される実施形態では、枢動可能ラッチ112は、内向きに付勢される。この場合、内向きに付勢されるとは、ラッチがそれらの第2のラッチ位置(すなわち、図6に示されるような「肩部」115)にあるときに第2のバックル部分のキャッチに物理的に接触するラッチの部分が、互いに向かって内向きに付勢されることを意味する。そのような付勢は、例えば、図6に示されるような付勢部材113の使用によって達成され得る。いくつかの実施形態では、付勢部材113は、ベースプレート101及びラッチ112にそれぞれ設けられたチャネル116及び117に圧縮状態で取り付けられたコイルばね113の形態をとることができる。そのような構成を図6に示す。(図6では、ばねの位置を完全に示すことができるように、一方のばねはカバープレート102及びラッチ112と共に残り、他方のばねはベースプレート101と共に分解されている)
【0040】
枢動可能に内向きに付勢されたラッチ112を備える第1のバックル部分100のそのような構成は、図5に示されるように、主本体201から延び、かつ突出歯204を備える概ねT字形のキャッチ203を担持する第2のバックル部分200(例えば、「雄」部分)と組み合わせて使用することができる。(図5においてブロック矢印によって示されるように)キャッチ203が第1のバックル部分100の開口部119内に挿入されると、キャッチ203は、第1のバックル部分の受容キャビティ111に入る。キャッチ203の先端の縁部は、ラッチ112の傾斜した接触面123(図6に見える)に衝突し、ばね113の付勢力に打ち勝って、ラッチ112の肩部115を互いから離れるように移動させる方向に枢動するようにラッチ112を付勢する。キャッチがキャビティ111内により深く貫入し続けると、キャッチ112の歯204は、ラッチ112がばね113の付勢力の下で枢動可能に回転することができるまで移動し、その結果、ラッチ112の肩部115がキャッチの歯204に近接する空間205内に適合する。これにより、第2のバックル部分200のキャッチ203を第1の部分100の受容キャビティ111内に確実に保持し、したがって、図4に示されるように、第1及び第2のバックル部分を一緒に固定する。ラッチのそのような構成は、第2のラッチ位置と呼ばれる。
【0041】
キャッチ203は、その後、ラッチ112が第2のラッチ位置から第1のラッチ解除位置に手動で枢動可能に移動(回転)されない限り、受容キャビティ111から取り外すことはできない(したがって、第1及び第2のバックル部分は、互いから取り外されることができない)。これを達成するために、ユーザは、例えば親指及び人差し指を使用して、ラッチ112の操作部分(図5に示されるようにプレート101及び102の縁部を越えて露出されている「耳」114)を概ね後向きに付勢することができる(この場合、「後向き」は、第1のバックル部分100の主本体から離れることを意味する)。これにより、ラッチ112を(ばね113の付勢力に打ち勝って)回転させて、ラッチ112の肩部115が第1のラッチ解除位置に到達するのに十分なだけ離れて移動させ、これにより、第2のバックル部分のキャッチ203を第1のバックル部分から取り外すことが可能になる。
【0042】
上記の説明に基づき、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなラッチシステムは、自動的にラッチする(例えば、自己ラッチする)ことができ、これは、第2のバックル部分のキャッチと第1のバックル部分の枢動可能ラッチとの係合が、第1のバックル部分の受容キャビティ内へのキャッチの挿入時に自動的に起こり得ることを意味することを理解されたい。すなわち、第1及び第2のバックル部分を互いに取り付けて腹部バックルを形成するために、ユーザの指による枢動可能ラッチの操作は必要とされない。
【0043】
対照的に、図示される実施形態では、バックル部分を互いから取り外すためにキャッチを枢動可能ラッチから係合解除することには、慎重な手動操作を必要とする。すなわち、キャッチを受容キャビティから取り外すことができる前に、ラッチをラッチ解除位置に手動で枢動可能に移動させる(付勢力に打ち勝つ)予備ステップを実行しなければならない。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、第1及び第2のバックル部分は、バックル部分を互いに向かって移動させる結果として、自動的に互いに取り付けることができるが、対照的に、第1及び第2のバックル部分が互いから取り外されることを可能にするために、ラッチを枢動可能に移動させてラッチ解除する予備ステップが手動で実行されなければならない。
【0044】
上記の説明に基づき、バックル部分100及び200が互いから分離されているとき(例えば、ハーネスがユーザによって着用されていないとき)、付勢部材の付勢力が、(受容キャビティ内に固定されるキャッチは存在しないが)ラッチをそれらの第2のラッチ位置に保持させることは明らかである。ハーネスを着用するために、ハーネスの上部が肩部あたりの前方に巻き付けられ、左右の腹部ストラップが上部胴体の左側及び右側に配置される。次いで、第1及び第2のバックル部分は、ユーザの矢状面に向かって、かつ互いに向かって横断方向内向きに移動され、その結果、第2のバックル部分のキャッチは、第1のバックル部分の受容キャビティに入る。キャッチの前縁部はラッチに衝突し、付勢力に打ち勝ち、ラッチを付勢して第1のラッチ解除位置に瞬間的に移動させ、上述のように、キャッチを捕捉させて、バックル部分を互いに取り付けることを可能にする。この捕捉プロセスでは、ラッチは、付勢力の影響下で第2のラッチ位置に自動的に戻ることになる。
【0045】
ハーネスが取り外されると、ユーザは、説明されたようにラッチを第1のラッチ解除位置に手動で操作し、次いで、第1及び第2のバックル部分を、ユーザ及びハーネスの概ね横断方向に沿って離れるように移動させる。
【0046】
上述の第1のバックル部分100(及び対応する相補的な第2のバックル部分200)は、例示的なものにすぎず、そのようなバックル部分は、所望に応じて構成され得ることを理解されたい。バックル部分の様々な設計は、例えば、米国特許第6,668,434号、同第8,181,319号、及び同第9,993,048号、並びに米国特許出願公開第2011/0239413号に詳細に記載されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、第1のバックル部分は、第2のバックル部分のキャッチを受容するように構成されている開口部119が(例えば、本明細書の図5に示され、上記で詳細に説明されているように)第1のバックル部分の端部に配置される設計のものになる。そのような設計では、開口部は、キャッチの長手方向軸と概ね整列されている方向に沿って開口部119内へと移動されるキャッチを受容するように構成されている。そのような構成は、「端部嵌合」設計と呼ばれ、例えば、第1のバックル部分の主側面が、例えばバックル部分のベースプレート又はカバープレートに設けられた開口部(例えば、概ねT字形の開口部)を備え、それを通してキャッチが挿入される「側部嵌合」設計とは区別される。そのような側部嵌合設計は、例えば、米国特許第9,993,048号の図14Aに示されている。したがって、本明細書に開示されるような腹部バックルを形成するために互いに取り外し可能に取り付け可能である第1及び第2のバックルは、任意の好適なタイプ又は構成であり得、かつ任意の適切なラッチ又はラッチのセットに依存し得ることを理解されたい。任意のそのようなラッチ(単数又は複数)は、任意の適切な方法で、例えば、圧縮状態で取り付けられたコイルばね(この場合のように)、引張状態で取り付けられたコイルばね、ねじりばねによって、磁気付勢要素の使用などによって、付勢され得る。
【0047】
特定の設計が何であれ、定義上、本明細書に開示されるような腹部バックルは、互いに直接接触し、かつバックル部分の金属構成要素(例えば、上述のラッチ、キャッチなど)によって互いに直接取り付けられる(少なくとも)2つのバックル部分(例えば、雌部分及び雄部分)を備える。したがって、本明細書に開示されるような腹部バックルは、2つの「バックル部分」が、1つ以上の可撓性ストラップ、ウェビング(例えば、布で作製される)などによってのみ互いに取り付けられる構成を包含しない。更に、腹部バックル50(並びにその第1及び第2のバックル部分)は、落下防止安全ハーネスの身体支持腹部ストラップと共に使用するために特に構成されたアイテムである。したがって、そのようなバックルは、例えば、ユーザが転倒した場合にユーザの全重量を支持することに関与しなければならない1つ以上のハーネスストラップと共に使用されるのではなく、いくつかの比較的軽量の付属アイテム(例えば、ハードハット、ツールなど)の重量のみを支持するために使用される1つ以上のストラップと共に使用され得るバックルとは区別されることになる。
【0048】
ラッチ機構の特定の設計が何であれ、任意の適切な第1のバックル部分が特定の特徴及び機能を呈し、同様に、任意の好適な第2のバックル部分が特定の特徴及び機能を呈する。例えば、多くの実施形態では、第2のバックル部分200は、本明細書で先に詳細に説明したように、垂直方向に細長いスロット202を画定する(そこから上述のキャッチ203が延び得る)主本体201を備える。いくつかの実施形態では、本明細書で前述したように、1つ以上の補助スロットも存在し得る。いくつかの好都合な実施形態では、本体201及びキャッチ203は、図5に示される例示的な設計のように、(例えば、鋼又はアルミニウムなどの金属から作製される)単一の一体型本体の形態をとってもよい。
【0049】
同様に、第1のバックル部分100は、垂直方向に細長いスロット106を画定するスロット支持体107を備える。いくつかの実施形態では、そのようなスロット支持体は、ベースプレート101又はカバープレート102の一体的な延長部であってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、スロット支持体107が、第1のバックル部分100の残りの構成要素(例えば、ベースプレート101及び/又はカバープレート102)に枢動可能に接続されることが有利であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、スロット106は、図5に示されるように、そこから接続アーム108が延びる、スロット支持体107内に設けられてもよい。接続アーム108は、接続アーム108並びにベースプレート101及び/又はカバープレート102に設けられた、整列された開口を通って延びるシャフトを含むコネクタ105によって、ベースプレート101及びカバープレート102に接続されてもよい。(接続アーム108内のそのような開口109の位置は、図5に概略的に示され、ベースプレート101内のそのような開口125の位置は、図6に示されている)。そのような構成により、スロット支持体107をバックル部分の他の構成要素と接続することになり、特に、そのような構成により、スロット支持体107とベースプレート及びカバープレートとの間の枢動可能な接続を可能にする。そのような実施形態では、バックル部分の他の構成要素に対するスロット支持体107の回転軸は、コネクタ105の長軸によって画定されることになり、ハーネス及び腹部バックルの垂直軸と少なくとも概ね整列されることになる。そのような構成により、例えば、第1のバックル部分、及び第1のバックル部分を第2のバックル部分に取り付けることによって形成される腹部バックルが、ユーザの身体の形状に対してより容易に適合することを可能にし得る。
【0050】
本明細書に開示されるような腹部バックルは、命綱、ランヤードなどが接続され得る少なくとも1つのDリング104(Dリングという用語は、アイテムの正確な形状にかかわらず、任意の適切な接続アイテムを示す)を備える。いくつかの実施形態では、そのようなDリングは、図4図6の例示的な設計におけるように、第1のバックル部分100の構成要素であってもよい(すなわち、そこに恒久的に取り付けられてもよい)。いくつかの好都合な実施形態では、そのようなDリング104は、図6から明らかなように、スロット支持体107が取り付けられるのと同じコネクタ105に取り付けられてもよい。したがって、Dリングは、第1のバックル部分100に、したがって、そこから形成される腹部バックル50に枢動可能に接続されてもよい。図示される実施形態では、Dリング104は、左右に枢動可能であるように取り付けられているが、所望に応じて、Dリングは、上下に枢動可能であるように取り付けられてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のバックル部分100及び200は、第1のバックル部分100の垂直方向に細長いスロット106が第2のバックル部分200の垂直方向に細長いスロット202に対して特定の配向で密接に保持されるように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、バックル部分100及び200が互いに取り付けられるとき、スロット106は、常に、例えば±5、2、又は1度以内で、スロット202に対して平行のままであってもよい。他の実施形態では、バックル部分は、スロット106及び202の相対的な配向のいくつかの変動が許容又は促進されるように構成されてもよい。そのような変動は、例えば、(ラッチによって確実に保持されている間でさえも)キャッチ203がラッチ112に対してわずかに移動する能力において、いくらかの「遊び」を許容することによって可能にされ得る。したがって、様々な実施形態では、第1のバックル部分100のスロット106は、第2のバックル部分200のスロット202に対して少なくともいくらか、例えば、少なくとも5、10、又は20度以上の相対的な回転の角度にわたって枢動することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、スロットは、15、7、又は3度を超える角度にわたって互いに対して回転することができない。任意のそのような回転は、ハーネス及びバックル並びにバックル部分の背部-腹部軸と概ね整列される回転軸を中心とすることになる。明らかに、(図示の実施形態では)アーム108は、上述のように垂直軸を中心とする回転に関してコネクタ105に枢動可能に取り付けられているため、垂直軸を中心とするそのような回転は、背部-腹部軸を中心とする回転が可能であるか否かにかかわらず、任意の好適な量(例えば、最大90度以上又はそれ以上)で生じ得る。
【0052】
本明細書に開示される実施形態の少なくともいくつかの特徴は、少なくとも第1及び第2のバックル部分100及び200が互いから取り外されるときに、第1のバックル部分100が第1の腹部ストラップ7に沿って摺動可能に移動することができ、かつ第2のバックル部分200が第2の腹部ストラップ6に沿って同様に摺動可能に移動することができることである。換言すれば、バックル部分100及び200が図2に示される一般的な構成にあるとき、ユーザは、所望に応じて、各バックル部分を概ね垂直方向に上向き又は下向きに摺動させることができる。腹部ストラップがバックル部分を通って辿る経路は、バックル部分がストラップに沿って必ずしも自由に摺動する必要はなく、むしろ、ほとんどの場合、ユーザによって意図的に移動されるまで定位置にとどまり得る、十分な摩擦抵抗を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、上述のような補助スロットの存在が、そのような効果に寄与し得る。両方のバックル部分が所望の位置にあるとき、次いでそれらを互いに取り付けることができる。バックル50の上向き/下向き位置は、したがって、例えば、ユーザの特定の身体形状への最良な適合を提供するように、所望に応じて選択され得る。
【0053】
上述したように、多くの実施形態では、第1のバックル部分100及び第2のバックル部分200並びにその構成要素は、任意の適切な材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、任意のそのような構成要素は、任意の好適な金属、例えば、鋼又はアルミニウムから作製されてもよい。様々な実施形態では、そのような構成要素は、鍛造体若しくは鋳造体であってもよく、又は標準的な板金形成技法を使用して所望の形状に形成される(例えば、曲げられる)板金から作製されてもよい。典型的には、ベースプレート101及びカバープレート102は、別個に製造され、次いで(それらの間に捕捉されるラッチ、ばね等を用いて)一緒にされてもよく、機械的締結具103、例えばリベットによって互いに取り付けられて、第1のバックル部分100を形成してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、バックル部分のいくつかの部分(特に、ユーザの指によって定期的に接触される任意の領域)は、オーバーモールド有機ポリマー樹脂内に部分的に封入され得る。オーバーモールドは、例えば、予め形成された金属体を取り、それを少なくとも部分的に射出成形キャビティ内に挿入して、有機ポリマー成形樹脂を本体の所望の部分の上に形成して、付着させることによって行うことができる。いくつかの実施形態では、腹部バックル50とユーザの胸部又は胴体との間に強化された緩衝を提供するために、プレート及び/又はパッドが、例えば、第1及び/又は第2のバックル部分100及び/又は200の内側に提供されてもよい。任意のそのようなプレート及び/又はパッドは、例えば、発泡体又は他の弾性材料の1つ以上の層に依存する、任意の好適な設計であり得る。
【0055】
本明細書に開示されるような腹部バックル(及び腹部ストラップの擬似交差構成)は、任意の好適な落下防止ハーネスと共に使用され得る。そのようなハーネスはよく知られており、多種多様な落下防止装置、方法、及びシステムと共に使用され得る。いくつかの実施形態では、落下防止ハーネス及びその腹部バックルは、ANSI Z359.12の要件を満たし得る。
【0056】
落下防止装置及びシステム(例えば、ランヤード、自己格納式命綱、位置決めシステム、水平システム、垂直システム、上昇支援システム、ディセンダなど)、落下防止固定具、そのような装置、システム、機器などの構成要素など、本明細書に開示された構成が用途を見出すことができるものは、例えば、3M DBI-SALA Fall Protection Full Line Catalog 2018に記載されている。
【0057】
本明細書に記載されるようなハーネス及び/又は腹部バックルを含む任意の落下防止器具、装置、システム又はそれらの構成要素のユーザには、該当する法律、規則、規範、基準及び/又は指示によって必要とされるような、任意の適切なステップ、アクション、予防措置、動作手順などを実行することが課せられることが強調される。すなわち、いかなる状況下においても、本明細書に開示される任意の構成の存在により、ユーザが全ての適切な法律;規則;規範;該当する機関(例えばANSI)によって公布された基準;落下防止システム、装置又は構成要素の製造業者によって提供される指示;落下防止システム、装置、構成要素の製造業者によって提供される指示;作業現場を監督する主体によって提供される指示などに従う義務を免除するものではない。
【0058】
本明細書に提示されるバックル部分の特定の設計は例示的なものであり、変形が存在してもよいが、依然として、バックル部分がストラップの擬似交差配置を達成する腹部バックルを形成することを可能にし得ることが理解されるであろう。本明細書に開示されるバックル部分(及び180度のねじれ構成)は、主に、落下防止安全ハーネスの腹部ストラップと共に使用するための腹部バックルを形成するために使用される文脈で説明されているが、様々な実施形態では、ストラップのそのようなバックル部分及び/又は構成は、落下防止安全ハーネスの他のストラップと共に、汎用ハーネスのストラップと共に、又は任意の所望の目的のためのストラップと共に使用され得る。そのような使用は、2つの腹部ストラップの互いとの相互作用を必ずしも伴わなくてもよい。(図2のように)バックル部分が互いから取り外されるとき、2つのストラップは必ずしも互いに対してほぼ平行である必要はなく、(図3のように)バックル部分が互いに取り付けられるとき、2つのストラップは必ずしも互いにほぼ接線方向に接近する必要もない。むしろ、一方のストラップは、例えば、ほぼ垂直に又は任意の適切な角度で他方のストラップに接近してもよい。したがって、様々な実施形態では、本明細書に開示されるアプローチは、例えば、腹部ストラップを腰部ストラップ又は脚部ストラップと、腰部ストラップを脚部ストラップなどと、相互接続するために使用されてもよい。
【0059】
要約すると、そのような変形及び組み合わせは全て、単に例示的な例示としての役割を果たすように選択された代表的な設計ではなく、着想された発明の範囲内にあると考えられる。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載された特定の例示的な構造に限定してはならず、少なくとも請求項の文言によって記載された構造及びそれらの構造の均等物に拡張される。本明細書において選択肢として積極的に記載されている要素はいずれも、所望に応じた任意の組み合わせで、請求項に明示的に含めてもよい、又は請求項から除外してもよい。オープンエンド言語(例えば、「を含む」とその派生語)で本明細書に記載される、要素のいずれか又は要素の組み合わせは、クローズドエンド言語(例えば、「からなる」とその派生語)及び部分的クローズドエンド言語(例えば、「から本質的になる」とその派生語)で更に記載されると考えられる。本明細書の記載と、参照によって本明細書に組み込んだいずれかの文書の開示との間に何らかの矛盾又は不一致が存在するが、それに対する優先性が主張されていない場合、本明細書の記載が優先するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】