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特表2023-540037SARS-CoV-2を標的にする抗原結合分子
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  • 特表-SARS-CoV-2を標的にする抗原結合分子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2を標的にする抗原結合分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230913BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20230913BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/10 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 S
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513355
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021047757
(87)【国際公開番号】W WO2022047033
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,707
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520445473
【氏名又は名称】フラッグシップ パイオニアリング イノベーションズ シックス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グリゴリアン, ゲボルグ
(72)【発明者】
【氏名】イングラハム, ジョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BA71
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB50
4C085CC05
4C085DD33
4C085DD35
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA29
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、様々な実施形態において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルスのスパイク糖タンパク質(例えば、SARS-CoV-2-スパイク)に特異的に結合するポリペプチド(例えば、ラクダ抗体及びその抗原結合断片)を提供する。本発明は、様々な実施形態において、ポリペプチドの1つ以上を含む融合タンパク質、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドの発現に適したベクター及び宿主細胞並びにウイルス感染(例えば、COVID-19)を処置するための方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2-スパイク)に特異的に結合するポリペプチドであって、
a)配列番号4;又は
b)配列番号5
から選択されるアミノ酸配列を含む抗体のパラトープと同一であるパラトープを含むポリペプチド。
【請求項2】
免疫グロブリン重鎖可変領域(V)を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2-スパイク)に特異的に結合するポリペプチドであって、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)であって、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同一である重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)アミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項4】
a)配列番号4;又は
b)配列番号5
を含む単一ドメイン抗体のパラトープと同一であるパラトープをさらに含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2スパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2-スパイク)に特異的に結合するポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含み、
a)Xは、Tでないか;
b)Xは、Vでないか;若しくは
c)Xは、Vでないか、又は
上記のいずれかの組み合わせである、ポリペプチド。
【請求項6】
a)Xは、T若しくはVであるか;
b)Xは、V若しくはHであるか;又は
a)Xは、V若しくはLであるか、或いは
上記のいずれかの組み合わせである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
a)Xは、Vであるか;
b)Xは、Hであるか;若しくは
c)Xは、Lであるか、又は
上記のいずれかの組み合わせである、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記Vは、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)であって、配列番号4又は配列番号5のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3とアミノ酸配列において同一である重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記Vは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも85%同一である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記Vは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記アミノ酸置換は、保存的置換である、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記アミノ酸置換は、高度に保存的な置換である、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記Vは、ヒトフレームワーク領域を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
単一ドメイン抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
抗体重鎖定常ドメイン配列をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記抗体重鎖定常ドメインは、IgA定常ドメイン、IgD定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgG定常ドメイン及びIgM定常ドメインからなる群から選択される、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記抗体重鎖定常ドメインは、IgG1重鎖定常ドメインである、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
第2のポリペプチドに連結されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記第2のポリペプチドは、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記第2のポリペプチドは、
a)配列番号3のアミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体のパラトープと同一であるパラトープ;
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同一であるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むV
c)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるV;若しくは
d)配列番号3のアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含むV、又は
上記のいずれかの組み合わせ
を含む、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項21】
a)前記ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、及び前記第2のポリペプチドは、配列番号3、4若しくは5のアミノ酸配列を含むか;又は
b)前記ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、及び前記第2のポリペプチドは、配列番号3、4若しくは5のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記ポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは、リンカーを介して互いに連結されている、請求項18~21のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記リンカーは、ジスルフィド結合である、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項24】
免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)に連結されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ポリペプチド、前記第2のポリペプチド又は両方は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)を含む第3のポリペプチドに連結されている、請求項18~23のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記第3のポリペプチドは、抗体軽鎖定常ドメイン配列をさらに含む、請求項24又は25に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記抗体軽鎖定常ドメインは、κ定常ドメイン又はλ定常ドメインからなる群から選択される、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
異種部分にコンジュゲートされている、請求項1~27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記異種部分は、治療剤、診断剤又はそれらの組み合わせである、請求項28に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサデカン酸、ヒドロゲル、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子及び異種ポリペプチド配列又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記ポリマーナノ粒子は、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)を含む、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記異種ポリペプチド配列は、担体ポリペプチドを含む、請求項28に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記担体ポリペプチドは、アルブミン又はFcポリペプチドである、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
a)SARS-CoV-2に10μM以下のKで結合するか;
b)SARS-CoV-2のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を低減するか;若しくは
c)ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を低減するか、又は
上記のいずれかの組み合わせである、請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記SARS-CoV-2は、T19R、156del、157del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R及びD950Nを含み、且つ任意選択的にG142Dをさらに含む変異体である、請求項34に記載のポリペプチド。
【請求項36】
SARS-CoV-2に100nM以下のKで結合する、請求項34又は35に記載のポリペプチド。
【請求項37】
SARS-CoV-2のACE2への結合を少なくとも約30%だけ低減する、請求項34~36のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項38】
前記ACE2は、霊長類ACE2である、請求項34~37のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項39】
前記霊長類ACE2は、ヒトACE2(GeneID59272;例示的タンパク質配列NP_001358344.1)である、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記霊長類ACE2は、チンパンジーACE2、マカクACE2、カニクイザルACE2及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非ヒト霊長類ACE2である、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項41】
ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を少なくとも約30%だけ低減する、請求項34又は35に記載のポリペプチド。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項43】
請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項42に記載の融合タンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項44】
請求項43に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項45】
請求項43に記載のポリヌクレオチド又は請求項44に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項46】
請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項42に記載の融合タンパク質を含む組成物。
【請求項47】
1つ以上の医薬賦形剤、希釈剤又は担体をさらに含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、有効量の、請求項46又は47に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項49】
SARS-CoV-2-スパイクと、対象における細胞との間の融合を阻害する方法であって、前記細胞を、有効量の、請求項46又は47に記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項50】
前記対象は、COVID-19を有する、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象は、COVID-19を発症するリスクがある、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項52】
前記対象は、ヒトである、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記対象は、心疾患を有する、請求項48~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記心疾患は、うっ血性心疾患、冠動脈疾患、高血圧性心疾患、炎症性心疾患、肺心症、リウマチ性心疾患、心臓弁疾患、心筋症、心不全及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記心不全は、うっ血性心不全である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記炎症性心疾患は、心内膜炎、心肥大、心筋炎及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記対象は、糖尿病を有する、請求項48~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象は、肺疾患を有する、請求項48~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記肺疾患は、急性呼吸促迫症候群、喘息、気管支炎、COPD、肺気腫、肺腫瘍、胸膜腔疾患、肺血管疾患、気道感染症及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
a)前記気道感染症は、上気道感染症、下気道感染症若しくは肺炎であるか;
b)前記胸膜腔疾患は、胸膜中皮腫若しくは緊張性気胸であるか;
c)前記肺血管疾患は、塞栓症、浮腫、動脈性高血圧若しくは出血であるか;又は
d)それらの組み合わせ
である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記対象は、喫煙者である、請求項48~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記対象は、免疫力が低下している、請求項48~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記対象は、免疫抑制療法を受けている、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記対象は、40歳以上である、請求項48~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
治療有効量のさらなる治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項48~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記さらなる治療剤は、抗ウイルス剤、ACE2阻害剤、さらなるSARS-CoV-2-スパイク結合抗体、抗生物質、抗マラリア剤、ワクチン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
a)前記さらなるSARS-CoV-2-スパイク-結合抗体は、バムラニビマブ、エテセビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか;
b)前記抗ウイルス剤は、オセルタミビル(タミフル)、ファビピラビル、アマンタジン、レムデシビル、リマンタジン、プレコナリル、SARS-CoV-2に対するアンチセンスRNA、SARS-CoV-2に対するsiRNA及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか;
c)前記ACE2阻害剤は、ACE2に対するRNAi、ACE2に対するsiRNA、ACE2のCRISPRベースの阻害剤、可溶性ACE2、可溶性ACE2変異体、抗ACE2抗体及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるか;
d)前記抗生物質は、アジスロマイシンを含むか;
e)前記抗マラリア剤は、クロロキンを含むか;
f)前記ワクチンは、核酸ワクチン若しくは不活化ウイルスワクチンであるか;又は
g)それらの組み合わせ
である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ワクチンは、mrna-1273、BNT162、INO-4800、AZD1222、Ad5-nCoV、PiCoVacc、NVX-CoV2373又はそれらの組み合わせでる、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年8月26日に出願された米国仮特許出願第63/070,707号明細書の利益を主張する。上記の出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルの資料の参照による組み込み
本出願には、本明細書と同時に提出される以下のASCIIテキストファイルに含まれる配列表が参照により組み込まれる。
a)ファイル名:5708_1029001_Sequence_Listing.txt;2021年8月26日作成、サイズ33,014KB。
【背景技術】
【0003】
新規なコロナウイルスであるSARS-コロナウイルス-2(SARS-Coronavirus-2)(SARS-CoV-2)は、中国の武漢において最初に肺炎症例のクラスターを引き起こした(COVID-19)。2020年3月1日時点で、中国における79,968名の患者が検査でCOVID-19陽性であり、2,873名の死亡が生じており、それは、3.6%の死亡率(95%CI3.5~3.7)に匹敵するものであった(Baud D.et al.,Lancet Infect Dis.(2020))。しかし、この数値は、症候性患者におけるCOVID-19の潜在的脅威を過小評価したものであり得る(同上)。
COVID-19は、世界中で急速に蔓延しており、パンデミックをもたらしている。2020年4月21日に世界保健機関からリリースされたコロナウイルス疾患(COVID-2019)の状況報告では、2,397,216名の確定感染者及び162,956名の死亡が報告された。とりわけ、過去24時間以内に83,006名の新しい症例及び5,109名の死亡が追加された。検疫、隔離及び感染の抑制対策は、疾患蔓延を予防すること及び病気になる者に対する支持療法に依存している(Baden and Rubin,N Engl J Med.,(2020))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Baud D.et al.,Lancet Infect Dis.(2020)
【非特許文献2】Baden and Rubin,N Engl J Med.,(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
COVID-19の感染を予防するとともに、COVID-19患者を処置するための特定の抗ウイルス治療剤を開発することが決定的に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される発明は、部分的に、本発明のポリペプチドが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2のスパイク糖タンパク質(SARS-CoV-2-スパイク)に特異的に結合するという発見に基づいている。従って、本発明は、一般に、細胞へのスパイク(例えば、SARS-CoV-2-スパイク)媒介ウイルス侵入を低減するために有用な組成物(例えば、ポリペプチド、医薬組成物)及び方法に関する。
【0007】
SARS-CoV-2-スパイクに特異的に結合するポリペプチドが本明細書で提供される。一態様において、本発明は、SARS-CoV-2-スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4;又は
b)配列番号5
から選択されるアミノ酸配列を含む抗体のパラトープと同一であるパラトープを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2-スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)であって、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同一である重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)アミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)配列番号4;又は
b)配列番号5
を含む単一ドメイン抗体のパラトープと同一であるパラトープをさらに含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVを含むポリペプチドを提供し、ここで、
a)Xは、Tでないか;
b)Xは、Vでないか;若しくは
c)Xは、Vでないか、又は
上記のいずれかの組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、単一ドメイン抗体又はその抗原結合断片である。
【0013】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、第2のポリペプチドに連結されている。「連結されている」という用語は、共有結合的又は非共有結合的相互作用を介して結合されていることを意味する。コンジュゲーションでは、好適な連結剤を使用することができる。非限定的な例としては、ペプチドリンカー、複合リンカー及び化学架橋剤が挙げられる。特定の実施形態において、リンカーは、ジスルフィド結合である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、融合タンパク質である。
【0015】
他の態様において、本発明は、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター及びそのようなポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、処置を、それを必要とする対象(例えば、COVID-19などのSARS-CoV感染を有する対象)において行う方法であって、有効量の、本明細書に開示されるポリペプチド又は本明細書に開示されるポリペプチドを含む組成物(例えば、医薬組成物)を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2-スパイクと細胞(例えば、対象における細胞)との間の融合を阻害する方法であって、細胞を、有効量の、本明細書に開示されるポリペプチドを含む組成物又は本明細書に開示されるポリペプチドを含む組成物(例えば、医薬組成物)と接触させることを含む方法を提供する。
【0018】
特許又は出願ファイルは、色付けして作成された少なくとも1つの図面を含む。色付け図面を伴う本特許又は特許出願公開のコピーは、必要な料金の要求及び支払いの際に当局によって提供される。
【0019】
前述の内容は、添付の図面に示されているように、例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかであり、同様の参照文字は、異なる表示の全体にわたって同じ部分を参照している。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、代わりに実施形態を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】SARS-CoV-1-スパイクの受容体結合ドメイン(RBDのアミノ酸配列(配列番号21)を示す。本明細書に開示される参照抗体によって結合されるエピトープ残基がアスタリスクによって示される。
図2】本発明のポリペプチドにおいて有用である重鎖可変(V)配列の非限定的な例のアライメントを表す。重鎖相補性決定領域(HCDR)配列は、太字及び下線を用いて示される。パラトープ残基は、黒色「」で示される。追加の考えられるパラトープ残基は、赤色「」で示される。X(nは、1~3の数である)の位置は、アライメントの下部の対応する数によって示される。表1のVコンセンサス(配列番号2)も参照されたい。抗体配列は、参照ポリペプチド(参照)の配列及び構造からの情報を用いて計算的に作製された。パラトープ位置は、親構造における抗原の5オングストローム以内の抗体残基と定義された。
図3】参照VHH分子(参照)及び本発明の2つの変異体VHH分子AB-1及びAB-2の、COV-2 RBDに対する親和性を、酵母表面ディスプレイを用いる測定として表す。
図4】本発明のポリペプチド(AB-1)が突然変異体SARS-COV-2疑似ウイルスを中和する能力を図示する。バーは、親D614G-親ウイルスに対して出現する突然変異又は欠失を有する疑似ウイルスの抗体中和におけるIC50値の倍数差(WT-突然変異体)/(WT)を表す。-2.5~2.5の値は、このアッセイにおいて有意でないと見なされる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態例の説明は、以下の通りである。
【0022】
本発明のいくつかの態様は、あくまで例示を目的とする例を参照して以下で説明される。多数の具体的な詳細、関連性及び方法を記載することで本発明の十分な理解をもたらすことが理解されるべきである。しかし、関連する技術分野における当業者は、本発明が具体的な詳細の1つ若しくは複数を用いずに実施可能であるか、又は他の方法、プロトコル、試薬、細胞株及び動物を用いて実施可能であることを容易に理解するであろう。本発明は、一部の行為が他の行為又は事象と異なる順序で且つ/又は同時に行われ得ることから、行為又は事象の例示的順序によって限定されない。さらに、本発明に従って方法論を実現するために、例示的な行為、ステップ又は事象の全てが必要とされるわけではない。本明細書で説明又は参照される技術及び手順の多くは、当業者により、従来からの方法論を用いて十分に理解され、一般に利用される。
【0023】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合するポリペプチド
SARS-CoV-2は、COVID-19、SARS-CoV-2-スパイク又はSARS-CoV-2のSタンパク質(ヒト宿主細胞などの宿主細胞へのSARS-CoV-2ウイルスの侵入を促進するタンパク質)の病原体である。理論によって拘束されない場合、SARS-CoV-2-スパイクは、宿主細胞の表面上の侵入受容体(例えば、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)又は膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2))に結合することによって感染を促進すると考えられる。野生型SARS-CoV-2-スパイク配列の非限定的な例は、NCBI RefSeq YP_009724390(配列番号1)である。
【化1】
【0024】
本明細書で用いられるとき、SARS-CoV-2スパイクは、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、配列番号1)、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質の変異体並びに野生型及び変異体SARS-CoV-2スパイクタンパク質の修飾形態を含む。
【0025】
一態様において、本発明は、配列番号1を含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合するポリペプチドを提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクの変異体に結合する。いくつかの実施形態において、変異体は、野生型SARS-CoV-2-スパイク配列(例えば、配列番号1)に対して少なくとも約90%の配列同一性を有する、例えば野生型SARS-CoV-2-スパイク配列に対して少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%又は約99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、配列同一性は、約90~99.9%、約90~99.8%、約92~99.8%、約92~99.6%、約94~99.6%、約94~99.5%、約95~99.5%、約95~99.4%、約96~99.4%、約96~99.2%、約97~99.2%又は約97~99%である。
【0027】
いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、配列番号1に対して、L5F、S13I、T19R、A67V、69del、70del、D80G、T95I、G142D、144del、W152C、E154K、F157S、A222V、D253G、G261D、V367F、K417N、N439K、L452R、Y453F、S477N、E484K、F486L、S494P、E484Q、N501T、N501Y、F565L、A570D、D614G、Q677H、P681H、P681R、A701V、T716I、T859N、F888L、S982A、D950N、Q957R、Q1071H、V1176F、D1118H、K1191N又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45の全ての突然変異を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、配列番号1に対して、69del、70del、144del、E484K、S494P、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H若しくはK1191N又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、69del、70del、144del、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A及びD1118Hを含む。いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、E484K、S494P若しくはK1191N又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、配列番号1に対して、D80A、D215G、241del、242del、243del、K417N、E484K、N501Y、D614G若しくはA701V又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、D80A、D215G、241del、242del、243del、K417N、E484K、N501Y、D614G及びA701Vを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、配列番号1に対して、T19R、G142D、156del、157del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R若しくはD950N又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、T19R、156del、157del、R158G、L452R、T478K、D614G、P681R及びD950Nを含む。いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、G142Dをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、配列番号1に対して、69del、70del、144del、A222V、G261D、V367F、K417N、N439K、Y453F、S477N、E484K、F486L、N501T、N501Y、A570D若しくはD614G又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、変異体SARS-CoV-2-スパイクは、配列番号1に対して、E484K、N501Y若しくはD614G又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、修飾SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、配列番号1に対して、F817P、A892P、A899P、A942P、K986P、V987Pから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)(配列番号17)又はRBD内部のエピトープ(例えば、RBDコミュニティー7によって認識される)に結合する。
【化2】
【0035】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクRBDの変異体又はSARS-CoV-2-スパイクRBD内部のエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、変異体は、野生型SARS-CoV-2-スパイクRBD(例えば、配列番号17)に対して少なくとも約90%の配列同一性を有する、例えば少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%又は約99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、配列同一性は、約90~99.9%、約90~99.8%、約92~99.8%、約92~99.6%、約94~99.6%、約94~99.5%、約95~99.5%、約95~99.4%、約96~99.4%、約96~99.2%、約97~99.2%又は約97~99%である。
【0036】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、配列番号1、配列番号17)に結合し、且つ免疫グロブリン重鎖可変領域を含むポリペプチドは、配列番号6、配列番号7及び配列番号9の3つ全てを含むことはない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号6、配列番号7及び配列番号9から選択される1つ又は2つのCDRを含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的に結合するポリペプチドであって、配列番号3と少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(V)を含むポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号6、配列番号7及び配列番号9の3つ全てを含むことはない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号6、配列番号7及び配列番号9から選択される1つ又は2つのCDRを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質(例えば、配列番号1)に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つ以上のエピトープ残基(例えば、SARS-CoV-2スパイクRBD内の1つ以上のエピトープ残基)に結合する。
【0039】
本明細書で用いられるとき、「参照」又は「参照ポリペプチド」という用語は、SARS-CoV-1に特異的に結合するポリペプチド(例えば、免疫グロブリン分子)を指し、本発明のポリペプチドではない。参照ポリペプチド及び本発明のポリペプチドの配列を比較し、それらの間の構造的差異(例えば、アミノ酸置換など、1つ以上のアミノ酸位置での差異)を図示することができる。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、参照ポリペプチドと比較して、非実質性に留まらない差異(例えば、1つ以上の実質的差異)を有することになり、そのため、一般に、本発明のポリペプチドは、制御された条件下において、異なる機能の1つ以上(即ち1つ、2つ又は3つ全て)を異なる様式で示し、参照ポリペプチドと比較して、異なる結果を達成することになる。参照ポリペプチドは、本発明のポリペプチドと1つ以上のアミノ酸、例えばいくつかの実施形態において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるアミノ酸だけ異なることになる。特定の実施形態では、参照ポリペプチドは、本発明によって提供されるポリペプチドと少なくとも約0.4%、約0.8%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%又はそれを超えるアミノ酸同一性だけ異なる。
【0040】
いくつかの実施形態において、「参照ポリペプチド」は、配列番号3のアミノ酸配列を含むV領域を含む、本明細書で「参照抗体」と称される抗体である。参照抗体は、SARS-CoV-2スパイクRBDに結合し、ACE2との相互作用をブロックする単一ドメインラクダ抗体である。参照抗体についてのさらなる情報としては、例えば、Protein Data Bank(PDB)アクセッション6WAQ、Huo et al.,Neutralizing nanobodies bind SARS-CoV-2 spike RBD and block interaction with ACE2,Nat Struct Mol Biol.27(9):846-54(2020)及びWrapp et al.,Structural Basis for Potent Neutralization of Betacoronaviruses by Single-Domain Camelid Antibodies,Cell 181(5):1004-15(2020))を参照されたい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、配列がアラインされて最大レベルのパーセンテージで表される同一性を達成するときに、2つのヌクレオチド配列又は2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する程度を指す。配列アライメント及び比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として指定され、これと試験配列が比較される。参照配列と試験配列との間の配列同一性は、参照配列と試験配列のアライメント時に参照配列と試験配列が同じヌクレオチド又はアミノ酸を共有して最大レベルの同一性を達成する、参照配列の全長にわたる位置のパーセンテージとして表される。一例として、最大レベルの同一性を達成するためのアライメント時、試験配列が参照配列の全長にわたって同じ位置の70%に同じヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する場合、2つの配列は70%の配列同一性を有すると見なされる。
【0042】
最大レベルの同一性を達成するための比較用の配列のアライメントは、適切なアライメント方法又はアルゴリズムを使用して、当業者によって容易に実施され得る。場合によっては、アライメントは、最大レベルの同一性を提供するために導入されたギャップを含み得る。例には、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の検索方法、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装(GAP、BESTFIT、FASTA,及びTFASTA,Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)及び外観検査(一般的に、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)が含まれる。
【0043】
配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列がコンピューターに入力され、その後必要に応じて座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。パーセント配列同一性を決定するために一般的に使用されるツールは、米国国立衛生研究所の国立医学図書館の国立バイオテクノロジー情報センターから入手可能なProtein Basic Local Alignment Search Tool(BLASTP)である。(Altschul et al.,1990)。
【0044】
「ポリペプチド」、「ペプチド」又は「タンパク質」という用語は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)と無関係に、アミド結合によって共有結合的に連結された少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表す。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、任意の好適なL-及び/又はD-アミノ酸、例えば一般的なα-アミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、バリン)、非α-アミノ酸(例えば、β-アラニン、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、サルコシン、スタチン)及び珍しいアミノ酸(例えば、シトルリン、ホモシトルリン、ホモセリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン)を含み得る。ペプチド上のアミノ、カルボキシル及び/又は他の官能基は、遊離型(例えば、非修飾)であり得るか又は好適な保護基で保護され得る。アミノ基及びカルボキシル基に適した保護基並びに保護基を付加又は除去するための方法は、当技術分野で公知であり、例えばGreen and Wuts,“Protecting Groups in Organic Synthesis,”John Wiley and Sons,1991に開示されている。また、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドの官能基は、当技術分野で公知の方法を用いて、誘導体化(例えば、アルキル化)又は(例えば、フルオロゲン又はハプテンなどの検出可能な標識で)標識され得る。タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、必要に応じて、1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸リンカー、アシル化、アセチル化、アミド化、メチル化、末端修飾因子(例えば、環化修飾)、N-メチル-α-アミノ基置換)を含み得る。さらに、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは、公知の及び/又は天然に存在するペプチドの類似体、例えば保存的アミノ酸残基置換を有するペプチド類似体であり得る。
【0045】
一態様において、本発明は、SARS-CoV-2-スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、
a)配列番号4;又は
b)配列番号5
から選択されるアミノ酸配列を含む抗体のパラトープと同一であるパラトープを含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V)を含む。
【0046】
配列番号4及び5について表1を、配列番号4及び5を含む抗体のパラトープ残基について図2を参照されたい。いくつかの実施形態において、パラトープは、配列番号2のS52、W53又はY53、S54、G56、S57、T58、Y59、G102、T103又はV103、V104又はH104、V105又はL105、S106、E107、W108、Y110及びD111に対応するアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、前記パラトープは、配列番号2のG55及びD62に対応するアミノ酸残基をさらに含む。
【0047】
「パラトープ」という用語は、標的タンパク質のエピトープとの結合相互作用に寄与する、抗体又はその抗原結合断片中のアミノ酸残基のセットを指す。結合相互作用は、水素結合、塩架橋、ファンデルワールス相互作用、イオン結合又はそれらの組み合わせであり得る。結合相互作用は、直接的又は例えばイオン若しくは水などの協調的な中間分子を介して間接的であり得る。パラトープの残基は、いくつかの実施形態において、定義されたCDRの一部である残基のみを含む。他の実施形態では、パラトープの残基は、定義されたCDRの一部ではない1つ以上の残基をさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、パラトープは、ポリペプチドが標的抗原に結合されるとき、標的抗原上のエピトープから約5.0オングストローム未満、例えばエピトープから約4.5、約4.0、約3.5、約3.0、約2.5、約2.4、約2.3、約2.2、約2.1、約2.0、約1.9、約1.8、約1.7、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3、約1.2、約1.1、約1.0若しくは約0.9オングストローム未満又は約0.9~5.0、約0.9~4.8.約1.0~5、約1.0~4.5、約1.0~4.0、約1.0~3.5、約1.1~3.5、約1.1~3.0、約1.2~3.0、約1.2~2.5、約1.3~2.5、約1.3~2.4、約1.4~2.4、約1.4~2.3、約1.5~2.3、約1.5~2.2、約1.6~2.2、約1.6~2.1、約1.7~2.1、約1.7~2.0若しくは約1.8~2.0オングストロームにわたり配向される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドが標的抗原に結合されるとき、パラトープを構成するアミノ酸残基の全てが標的抗原上のエピトープから約5.0オングストローム未満にわたり配向される。他の実施形態では、ポリペプチドが標的抗原に結合されるとき、パラトープにおけるパラトープを構成するアミノ酸残基の全て未満(例えば、アミノ酸残基の約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%)が標的抗原上のエピトープから約5.0オングストローム未満にわたり配向される。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるパラトープを含むポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)をさらに含む。
【0050】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2-スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)であって、配列番号4又は配列番号5のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3とアミノ酸配列において同一である重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むVアミノ酸配列を含む。
【0051】
CDR(例えば、HCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3)は、本明細書でさらに記載の通り、抗体のCDR残基を同定するための任意の当技術分野で承認されている方法によって定義されたCDR(例えば、Kabatによって定義されたCDR、Chothiaによって定義されたCDR)であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、
a)配列番号4;又は
b)配列番号5
のアミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体のパラトープと同一であるパラトープをさらに含む。
【0053】
別の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVを含む、SARS-CoV-2-スパイクに特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、
a)Xは、Tでないか;
b)Xは、Vでないか;若しくは
c)Xは、Vでないか、又は
上記のいずれかの組み合わせである。
【0054】
配列番号2として同定された配列は、以下に示され、それは、本明細書中の配列番号3~5におけるコンセンサスV配列である。
【化3】
【0055】
いくつかの実施形態において、
a)Xは、T若しくはVであるか;
b)Xは、V若しくはHであるか;又は
c)Xは、V若しくはLであるか、或いは
上記のいずれかの組み合わせである。
【0056】
いくつかの実施形態において、
a)Xは、Vであるか;
b)Xは、Hであるか;若しくは
c)Xは、Lであるか、又は
上記のいずれかの組み合わせである。
【0057】
いくつかの実施形態において、Xは、Tでない。いくつかの実施形態において、Xは、T又はVである。いくつかの実施形態において、Xは、Tである。いくつかの実施形態において、Xは、Vである。いくつかの実施形態において、Xは、Vでない。いくつかの実施形態において、Xは、V又はHである。いくつかの実施形態において、Xは、Vである。いくつかの実施形態において、Xは、Hである。いくつかの実施形態において、Xは、Vでない。いくつかの実施形態において、Xは、V又はLである。いくつかの実施形態において、Xは、Vである。いくつかの実施形態において、Xは、Lである。
【0058】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4又は配列番号5のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3とアミノ酸配列において同一であるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むVを含む(配列番号4及び5について表1を、対応するHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列について図2を参照されたい)。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるVを含む。例えば、Vは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、Vは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。配列番号3として同定された配列は、以下に示され、それは、ヒトVドメインに対応する。
【化4】
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるVを含む。例えば、Vは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、Vは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号15若しくは配列番号16又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む。例えば、アミノ酸配列は、配列番号15又は配列番号16又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号15若しくは配列番号16又は上記の組み合わせのアミノ酸配列と少なくとも約85%又は少なくとも約90%同一である。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むVを含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20又は約1~20、約1~19、約2~19、約2~18、約2~17、約3~17、約3~16、約4~16、約4~15、約5~15、約5~14、約6~14、約6~13、約7~13、約7~12、約8~12、約8~11若しくは約9~11であり得る。いくつかの実施形態において、Vは、配列番号3のアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むVを含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20又は約1~20、約1~19、約2~19、約2~18、約2~17、約3~17、約3~16、約4~16、約4~15、約5~15、約5~14、約6~14、約6~13、約7~13、約7~12、約8~12、約8~11若しくは約9~11であり得る。いくつかの実施形態において、Vは、配列番号4若しくは配列番号5又は上記の組み合わせのアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号15若しくは配列番号16又は上記の組み合わせのアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20又は約1~20、約1~19、約2~19、約2~18、約2~17、約3~17、約3~16、約4~16、約4~15、約5~15、約5~14、約6~14、約6~13、約7~13、約7~12、約8~12、約8~11若しくは約9~11であり得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号15若しくは配列番号16又は上記の組み合わせのアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存的置換である。「保存的アミノ酸置換」又は「保存的置換」という用語は、BLOSUM62において、0以上の値を有するアミノ酸置換を指す。
【0066】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、高度に保存的な置換である。「高度に保存的なアミノ酸置換」又は「高度に保存的な置換」という用語は、BLOSUM62において、少なくとも1(例えば、少なくとも2)の値を有するアミノ酸置換を指す。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含むVを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含むVを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含むVを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号15又は配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、ヒトフレームワーク領域を含むVを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、抗体(例えば、全抗体、インタクトな抗体)又は抗体の抗原結合断片などの免疫グロブリン分子である。本明細書で用いられるとき、「抗体」という用語は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合する能力がある免疫グロブリン分子を指す。本明細書で用いられるとき、「抗体」という用語は、完全長抗体を指す。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、単一ドメイン抗体又はその抗原結合断片である。本明細書で用いられるとき、「単一ドメイン抗体(sdAb)」又は「ナノボディ」という用語は、単一の単量体可変抗体ドメインからなり、標的に特異的に結合する能力がある免疫グロブリン分子を指す。単一ドメイン抗体は、マウス抗体、ヒト抗体又はヒト化単一ドメイン抗体などの任意の種であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、2つ以上の重鎖を含むが、軽鎖を欠いている重鎖抗体又はその抗原結合断片である。重鎖抗体の非限定的な例としては、ラクダVhh(VHH又はVHとも称される)抗体が挙げられる。ラクダ抗体は、ラマ、ラクダ及びアルカパを含む哺乳類のラクダ科(Camelidae)からの抗体である。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む抗体又はその多量体(例えば、IgM)である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジCH2及びCH3を含む)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)内に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化され得る。V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけてFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4の順序で配列された3つのCDR及び4つのFRセグメントをそれぞれ含む。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体などの任意の種であり得る。
【0074】
抗体のフレームワーク領域及びCDRの範囲は、当技術分野で周知であるいくつかの好適な方法論の1つを用いて、例えばKabat定義、Chothia定義、AbM定義及び/又は接触定義によって同定され得る。フレームワーク及び/又はCDR領域を同定するための公的に及び/又は商業的に利用されるツールは、IgBlast(www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/でアクセス可能)、Scaligner(www.scaligner.com/のdrugdesigntechから入手可能)、IMGT規則及び/又はツール(例えば、www.imgt.org/IMGTScientificChart/Nomenclature/IMGT-FRCDRdefinition.htmlを参照されたい、www.imgt.org/でもアクセス可能)、Chothia Canonical Assignment(www.bioinf.org.uk/abs/chothia.htmlでアクセス可能)、Antigen receptor Numbering And Receptor CalssificatiIon(ANARCI,opig.stats.ox.ac.uk/webapps/newsabdab/sabpred/anarci/でアクセス可能)又はParatomeウェブサーバー(www.ofranlab.org/paratome/でアクセス可能、Vered Kunik,et al,Nucleic Acids Research,Volume 40,Issue W1,1 July 2012,Pages W521-W524を参照されたい)を含む。
【0075】
本明細書で用いられるとき、「CDR」は、抗体上のCDR残基を同定するための当技術分野で承認されている方法によって定義される任意のCDRを包含する。例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;Al-lazikani et al.,(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。2つの抗体は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3に関して、そのCDRの同一性が両抗体において同じ方法を用いて決定されるとき、相互に同じCDRを有するように決定される。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、抗体の抗原結合断片である。「抗原結合断片」という用語は、親完全長単一ドメイン抗体の抗原結合特性を保持する免疫グロブリン分子(例えば、単一ドメイン抗体)の一部を指す。抗原結合断片の非限定的な例には、V領域、V領域、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片及び1つのVドメイン又は1つのVドメインからなるドメイン抗体(dAb)などが挙げられる。V及びVドメインは、V/Vドメインが分子内で対合する場合又は分子間的にV及びVドメインが別々の鎖によって表されるような場合に様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成し、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディーなどの一価抗原結合部位を形成するため、合成リンカーを介して一緒に連結され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv又はFvから選択される抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、scFvである。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチド(例えば、抗体又は抗原結合断片)は、細胞ベースの療法に組み込まれる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、改変されたT細胞受容体である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、(例えば、T(CAR-T)細胞、ナチュラルキラー(CAR-NK)細胞又はマクロファージ(CAR-M)細胞で発現される)キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態において、CARは、膜貫通ドメイン及び抗原認識部分を含み、抗原認識部分は、SARS-CoV-2(例えば、例えばRBDコミュニティー7によって認識されるRBD内のエピトープ)に結合する。
【0078】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体模倣物である。「抗体模倣物」という用語は、抗体の抗原に結合する能力を模倣することができるが、天然の単鎖抗体構造と構造的に異なるポリペプチドを指す。抗体模倣物の非限定的な例には、アドネクチン、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、ダルピン、フィノマー、クニッツドメインペプチド、モノボディー、ナノボディ、nanoCLAMP及びバーサボディが挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、抗体重鎖定常ドメイン配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域は、IgA定常領域、IgD定常領域、IgE定常領域、IgG定常領域及びIgM定常領域からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、IgG定常領域は、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域又はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態において、IgG2定常領域は、IgG2a、IgG2b定常領域又はIgG2c定常領域である。いくつかの実施形態において、IgA定常領域は、IgA1定常領域又はIgA2定常領域である。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域は、IgG1定常領域(例えば、IGHV5-51)である。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V)をさらに含む。V及びVドメインは、リンカー(例えば、合成リンカー)を介して共に連結され、様々なタイプの一本鎖抗体設計であって、V/Vドメインが分子内で対合する場合又は分子間的にV及びVドメインが別々の鎖によって発現されるような場合の一本鎖抗体設計を形成し、一価抗原結合部位を形成することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体軽鎖定常ドメイン配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常ドメインは、κ定常ドメイン及びλ定常ドメインからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域は、IgG1定常領域であり、抗体軽鎖定常領域は、κ定常領域である。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも約60%同一である。例えば、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも約70%又は少なくとも約80%同一である。配列番号12として同定された配列は、以下に示される。
【化5】
【0083】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約60%同一である。例えば、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約70%又は少なくとも約80%同一である。配列番号13及び配列番号14として同定された配列は、以下に示される。
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号13)
GQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号14)
【0084】
いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20又は約1~20、約1~19、約2~19、約2~18、約2~17、約3~17、約3~16、約4~16、約4~15、約5~15、約5~14、約6~14、約6~13、約7~13、約7~12、約8~12、約8~11若しくは約9~11であり得る。いくつかの実施形態において、抗体重鎖定常領域配列は、配列番号12のアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20又は約1~20、約1~19、約2~19、約2~18、約2~17、約3~17、約3~16、約4~16、約4~15、約5~15、約5~14、約6~14、約6~13、約7~13、約7~12、約8~12、約8~11若しくは約9~11であり得る。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存的置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、高度に保存的な置換である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチドは、第2のポリペプチドに連結される。
【0088】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド及び第2のポリペプチドは、リンカーを介して互いに連結される。いくつかの実施形態において、リンカーは、ジスルフィド結合である。
【0089】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、
a)配列番号3のアミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体のパラトープと同一であるパラトープ;
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同一であるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むV
c)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるV;若しくは
d)配列番号3のアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含むV、又は
上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、
a)ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号3、4若しくは5のアミノ酸配列を含むか;又は
b)ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号3、4若しくは5のアミノ酸配列を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含み、及び第2のポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド、第2のポリペプチド又は両方は、Vを含む第3のポリペプチドに連結される。
【0094】
いくつかの実施形態において、第3のポリペプチドは、抗体軽鎖定常ドメイン配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常ドメインは、κ定常ドメイン及びλ定常ドメインからなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約60%同一である。例えば、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であり得る。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約70%又は少なくとも約80%同一である。
【0096】
いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。例えば、アミノ酸置換の数は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19若しくは約20又は約1~20、約1~19、約2~19、約2~18、約2~17、約3~17、約3~16、約4~16、約4~15、約5~15、約5~14、約6~14、約6~13、約7~13、約7~12、約8~12、約8~11若しくは約9~11であり得る。いくつかの実施形態において、抗体軽鎖定常領域配列は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列に対して約1~10のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存的置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、高度に保存的な置換である。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、野生型SARS-CoV-1-スパイク、SARS-CoV-1-スパイク変異体又はその組み合わせへの結合に対して、参照抗体と競合し、ここで、参照抗体は、野生型SARS-CoV-1-スパイクに特異的に結合する。「特異的に結合すること」又は「特異的に結合する」という用語は、抗体又はその抗原結合断片と、そのエピトープとの間の、他の抗原又はアミノ酸配列に対する、優先的相互作用、即ち有意により高い結合親和性を指す。
【0098】
いくつかの実施形態において、参照抗体は、配列番号3のVアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、参照抗体は、配列番号6、配列番号7及び配列番号9のそれぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。いくつかの実施形態において、単離されたポリペプチドは、組換え的に作製される。いくつかの実施形態において、単離されたポリペプチドは、合成的に生成される。
【0100】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、異種部分にコンジュゲートされている。「コンジュゲート」という用語は、共有又は非共有相互作用を介して結合することを指す。コンジュゲーションは、適切な連結剤のいずれかを使用することができる。非限定的な例には、ペプチドリンカー、化合物リンカー及び化学的架橋剤が含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態において、異種部分は、治療剤、診断薬又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサデカン酸、ヒドロゲル、ナノ粒子、多量体化ドメイン及び担体ペプチドである。
【0102】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は脂質ナノ粒子である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子はポリマーナノ粒子である。いくつかの実施形態において、ポリマーは両親媒性ポリマーである。他の実施形態において、ポリマーは、疎水性又は親水性ポリマーである。ポリマーの非限定的な例には、ポリ(乳酸)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-d-α-トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸塩、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-エチレンオキシドフマル酸塩、ポリ(グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)、ポリカプロラクトン-ポリ(エチレングリコール)又はそれらの塩が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリマーナノ粒子は、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、担体ポリペプチドは、アルブミン又はFcポリペプチドである。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、
a)SARS-CoV-1 RBDのアミノ酸残基Y36、N37、S38、T39、F40、F41、S42、T43、F44、K45、C46、A51、T52、G71、D72、V74、R75、I169、G170及びY174に対応するアミノ酸残基を含むSARS-CoV-2 RBDのエピトープに結合する能力があるか;
b)SARS-CoV-2に10μM以下の親和性で結合するか;
c)SARS-CoV-2のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合を低減するか;若しくは
d)ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を低減するか、又は
上記のいずれかの組み合わせである。
【0105】
野生型SARS-CoV-1-スパイク配列の非限定的な例は、配列番号21である。
【化6】
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、SARS-CoV-1 RBDのアミノ酸残基Y36、N37、S38、T39、F40、F41、S42、T43、F44、K45、C46、A51、T52、G71、D72、V74、R75、I169、G170及びY174に対応するアミノ酸残基を含むSARS-CoV-2 RBDのエピトープに結合する能力がある。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、SARS-CoV1 RBD、例えばSARS-CoV-1 RBDのアミノ酸残基Y36、N37、S38、T39、F40、F41、S42、T43、F44、K45、C46、A51、T52、G71、D72、V74、R75、I169、G170及びY174にも結合し得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクに、約10μM以下の結合定数(K)で結合する。本明細書で用いられるとき、「結合定数」、「平衡解離定数」又は「親和性定数」とも称される、「K」という用語は、2つの分子種(例えば、抗体及び標的タンパク質)間の可逆的会合の範囲の尺度であり、実際の結合親和性と見かけの結合親和性の両方を含む。結合親和性は、当技術分野で公知の方法を用いて、例えば表面プラズモン共鳴の測定により、例えばバイオレイヤー干渉法(Octet,ForteBio)又は表面プラズモン共鳴(Biacore)のシステム及びアッセイを用いて決定することができる。結合親和性及び動力学を測定するために、様々な表面技術を比較する参考文献は、Yang,D.,Singh,A.,Wu,H.,&Kroe-Barrett,R.,Comparison of biosensor platforms in the evaluation of high affinity antibody-antigen binding kinetics,Analytical Biochemistry 508:78-96(2016)(その内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる)である。
【0108】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクに、約5μM、約2μM、約1μM、約500nM、約200nM、約100nM、約50nM、約20nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約0.5nM、約0.2nM若しくは約0.1nM又はそれ未満のKで結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2に100nM以下のKで結合する。
【0109】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクに、約10-10~10-5M、約10-10~5×10-6M、約2×10-10~5×10-6M、約2×10-10~2×10-6M、約5×10-10~2×10-6M、約5×10-10~10-7M、約10-9~10-7M、約10-9~5×10-8M、約2×10-9~5×10-8M、約2×10-9~2×10-8M、約5×10-9~2×10-8M又は約5×10-9~10-8MのKで結合する。
【0110】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、ラクダ抗体)は、SARS-CoV-2-スパイク又はその断片(例えば、例えばRBDコミュニティー7によって認識されるRBD内のエピトープ)又はその変異体に、約10-6M以下、例えば約500nM、約200nM、約100nM、約50nM、約20nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約0.5nM、約0.2nM若しくは約0.1nM又はそれ未満;又は約10-10~10-6M、約10-10~5×10-7M、約2×10-10~5×10-7M、約2×10-10~2×10-7M、約5×10-10~2×10-7M、約5×10-10~10-7M、約10-9~10-7M、約10-9~5×10-8M、約2×10-9~5×10-8M、約2×10-9~2×10-8M、約5×10-9~2×10-8M若しくは約5×10-9~10-8MのKで結合する。
【0111】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-1-スパイクに、約10μM以下のKで結合する。いくつかの実施形態において、Kは、約5μM、約2μM、約1μM、約500nM、約200nM、約100nM、約50nM、約20nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約0.5nM、約0.2nM若しくは約0.1nM又はそれ未満である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-1-スパイクに、約10-10~10-5M、約10-10~5×10-6M、約2×10-10~5×10-6M、約2×10-10~2×10-6M、約5×10-10~2×10-6M、約5×10-10~10-7M、約10-9~10-7M、約10-9~5×10-8M、約2×10-9~5×10-8M、約2×10-9~2×10-8M、約5×10-9~2×10-8M又は約5×10-9~10-8MのKで結合する。
【0112】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、ラクダ抗体)は、SARS-CoV-2-スパイク又はその断片(例えば、例えばRBDコミュニティー7によって認識されるRBD内のエピトープ)又はその変異体に約10/Ms以下、例えば約5×10/Ms、約2×10/Ms、約10/Ms、約5×10/Ms、約2×10/Ms、約10/Ms若しくはそれ未満;又は約10~10/Ms、約10~5×10/Ms、約2×10~5×10/Ms、約2×10~2×10/Ms、約5×10~2×10/Ms若しくは約5×10~10/Msの会合定数で結合する。
【0113】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、ラクダ抗体)は、SARS-CoV-2-スパイク又はその断片(例えばRBDコミュニティー7によって認識されるRBD内のエピトープ)又はその変異体に約10-2/s以下、例えば約8×10-3/s、約6×10-3/s、約4×10-3/s、約2×10-3/s、約10-3/s、約8×10-4/s、約6×10-4/s、約4×10-4/s、約2×10-4/s、約10-4/s、約8×10-5/s、約6×10-5/s、約4×10-5/s、約2×10-5/s、約10-5/s、約8×10-6/s、約6×10-6/s、約4×10-6/s、約2×10-6/s若しくは約10-6/s又はそれ未満;又は約10-6~10-2/s、約2×10-6~10-2/s、約2×10-6~5×10-3/s、約5×10-6~5×10-3/s、約5×10-6~2×10-3/s、約10-5~2×10-3/s、約10-5~10-3/s、約2×10-5~10-3/s、約2×10-5~5×10-4/s、約5×10-5~5×10-4/s、約5×10-5~2×10-4/s若しくは約10-4~2×10-4/sの解離定数で結合する。
【0114】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、ラクダ抗体)は、SARS-CoV-2-スパイク又はその断片(例えば、例えばRBDコミュニティー7によって認識されるRBD内のエピトープ)又はその変異体に、約0.05以上、例えば、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.65、約0.7、約0.75、約0.8、約0.85、約0.9、約0.95、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0若しくはそれ以上;又は約0.1~2.0、約0.15~2.0、約0.15~1.8、約0.2~1.8、約0.2~1.6、約0.25~1.6、約0.25~1.4、約0.3~1.4、約0.3~1.2、約0.35~1.2、約0.35~1.0、約0.4~1.0、約0.4~0.95、約0.45~0.95、約0.45~0.9、約0.5~0.9、約0.5~0.85、約0.55~0.85、約0.55~0.8、約0.6~0.8、約0.6~0.75、約0.65~0.75若しくは約0.65~0.7のRmaxで結合する。
【0115】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクの侵入受容体(例えば、ACE2)への結合を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-Cov-2-スパイクのS1サブユニット受容体結合ドメイン(RBD)への結合に対して、侵入受容体(例えば、ACE2)と競合する。
【0116】
いくつかの実施形態において、侵入受容体は、ACE2である。いくつかの実施形態において、ACE2は、哺乳類ACE2である。いくつかの実施形態において、ACE2は、霊長類ACE2である。いくつかの実施形態において、霊長類ACE2は、ヒトACE2(GeneID59272;例示的なタンパク質配列NP_001358344.1)である。いくつかの実施形態において、霊長類ACE2は、チンパンジーACE2(例えば、A0A2J8KU96、XP_016798468.1、XP_016798469.1、PNI38578.1)、マカクACE2(例えば、B6DUF2、NP_001129168.1、XP_024647450.1)、カニクイザルACE2(例えば、A0A2K5X283、XP_005593094.1)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非ヒト霊長類ACE2である。
【0117】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクのその細胞標的受容体(例えば、ACE2)への結合を少なくとも約10%だけ低減する。例えば、少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2-スパイクのACE2への結合を少なくとも約30%だけ低減する。
【0118】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2-スパイクとその細胞標的受容体(例えば、ACE2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの不在下での結合のレベルに対して約90%未満、例えば約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%未満である。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2-スパイクとその細胞標的受容体(例えば、ACE2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの不在下での結合のレベルに対して約1~90%、例えばポリペプチドの不在下での結合のレベルに対して約2~90%、約2~85%、約3~85%、約3~80%、約4~80%、約4~75%、約5~75%、約5~70%、約6~70%、約6~65%、約7~65%、約7~60%、約8~60%、約8~55%、約9~55%、約9~50%、約10~50%、約10~45%、約15~45%、約15~40%、約20~40%、約20~35%、約25~35%又は約25~30%である。
【0120】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドSARS-CoV-1-スパイクのその細胞標的受容体への結合を少なくとも約10%だけ低減する。例えば、少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%である。
【0121】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、ラクダ抗体)は、ヒト宿主細胞のSARS-CoV-2の感染性を約25,000ng/mL以下、例えば約20,000ng/mL、約15,000ng/mL、約10,000ng/mL、約5,000ng/mL、約2,500ng/mL、約1,000ng/mL、約750ng/mL、約500ng/mL、約250ng/mL、約100ng/mL、約75ng/mL、約50ng/mL、約25ng/mL若しくは約10ng/mL又はそれ未満;例えば約10~25,000ng/mL、約10~20,000ng/mL、約25~20,000ng/mL、約25~15,000ng/mL、約50~15,000ng/mL、約50~10,000ng/mL、約75~10,000ng/mL、約75~5,000ng/mL、約100~5,000ng/mL、約100~2,500ng/mL、約250~2,500ng/mL、約250~1,000ng/mL、約500~1,000ng/mL若しくは約500~750ng/mLのIC50で中和する。
【0122】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、ラクダ抗体)は、ヒト宿主細胞のSARS-CoV-2の感染性を約50,000ng/mL以下、例えば約25,000ng/mL、約15,000ng/mL、約10,000ng/mL、約5,000ng/mL、約2,500ng/mL、約1,000ng/mL、約750ng/mL、約500ng/mL、約250ng/mL、約100ng/mL、約75ng/mL、約50ng/mL、約25ng/mL若しくは約10ng/mL又はそれ未満;例えば約10~50,000ng/mL、約10~25,000ng/mL、約25~25,000ng/mL、約25~15,000ng/mL、約50~15,000ng/mL、約50~10,000ng/mL、約75~10,000ng/mL、約75~5,000ng/mL、約100~5,000ng/mL、約100~2,500ng/mL、約250~2,500ng/mL、約250~1,000ng/mL、約500~1,000ng/mL若しくは約500~750ng/mLのIC80で中和する。
【0123】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主プロテアーゼ(例えば、II型膜貫通セリンプロテアーゼ(TMPRSS2))への結合を低減する。理論に拘束されない場合、一次標的細胞に対するSARS-CoV-2-スパイク活性化及び初期ウイルス侵入を媒介する主な宿主プロテアーゼは、TMPRSS2である。
【0124】
いくつかの実施形態において、宿主プロテアーゼは、TMPRSS2である。いくつかの実施形態において、TMPRSS2は、哺乳類TMPRSS2である。いくつかの実施形態において、TMPRSS2は、霊長類TMPRSS2、例えばヒトTMPRSS2又は非ヒト霊長類TMPRSS2(例えば、チンパンジーTMPRSS2、マカクTMPRSS2又はカニクイザルTMPRSS2)である。
【0125】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主プロテアーゼ(例えば、TMPRSS2)への結合を少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%だけ低減する。
【0126】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2と宿主プロテアーゼ(例えば、TMPRSS2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの不在下での結合のレベルに対して約90%未満、例えば約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%未満である。
【0127】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下でのSARS-CoV-2と宿主プロテアーゼ(例えば、TMPRSS2)との間の結合のレベルは、ポリペプチドの不在下での結合のレベルに対して約1~90%、例えばポリペプチドの不在下での結合のレベルに対して約2~90%、約2~85%、約3~85%、約3~80%、約4~80%、約4~75%、約5~75%、約5~70%、約6~70%、約6~65%、約7~65%、約7~60%、約8~60%、約8~55%、約9~55%、約9~50%、約10~50%、約10~45%、約15~45%、約15~40%、約20~40%、約20~35%、約25~35%又は約25~30%である。
【0128】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)への侵入を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%だけ低減する。
【0129】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の感染性を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の感染性を少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は99%だけ低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の感染性を少なくとも約30%だけ低減する。
【0130】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の再感染を低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、ヒト宿主細胞)におけるSARS-CoV-2の再感染を少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は99%だけ低減する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒト細胞におけるSARS-CoV-2の再感染を少なくとも約30%だけ低減する。
【0131】
感染性又は再感染は、疑似ウイルス中和アッセイ又は生ウイルス中和アッセイなどの技術を用いて測定することができる(例えば、Pinto et al.,Cross-neutralization of SARS-CoV-2 by a human monoclonal SARS-CoV antibody,Nature 583:290-95(2020)を参照されたく、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。キット、例えばGenScript cPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出キット(Genscript Biotech,Piscataway,NJ)は、製造業者のプロトコルに従って使用することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、肺II型肺細胞、回腸吸収性腸細胞、鼻杯分泌細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0133】
融合タンパク質
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される1つ以上のポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0134】
「融合タンパク質」という用語は、合成、半合成又は組換えの単一タンパク質分子を指す。融合タンパク質は、共有結合(例えば、ペプチド結合)によって結合される2つ以上の異なるタンパク質及び/又はポリペプチドの全部又は一部を含み得る。本発明の融合タンパク質は、当技術分野で周知の通常の方法及び試薬を使用して、組換え又は合成により産生することができる。例えば、本発明の融合タンパク質は、当技術分野で公知の方法に従って、適切な宿主細胞(例えば、細菌)において組換えにより産生することができる。たとえば、Current Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons,1992;及びMolecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子は、適切な宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))において導入及び発現することができ、発現された融合タンパク質は、通常の方法及び容易に入手可能な試薬を使用して、宿主細胞(例えば、封入体中)から単離/精製することができる。例えば、異なるタンパク質配列(例えば、光応答性ドメイン、異種ペプチド成分)をコードするDNA断片は、従来の技術に従って、インフレームで一緒に連結することができる。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動化されたDNAシンセサイザーを含む従来技術によって合成することができる。代わりに、核酸断片のPCR増幅は、2つの連続する核酸断片間に相補的なオーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実行でき、その後、アニーリング及び再増幅してキメラ核酸配列を生成できる(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,1992を参照されたい)。
【0135】
核酸、発現ベクター、発現宿主細胞
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、複数のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0136】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、選択された宿主細胞に対してコドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。
【0137】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれか1つ以上を含む発現ベクターを提供する。
【0138】
「発現ベクター」という用語は、発現ベクターが適切な発現宿主細胞に形質転換されるときに1つ以上のタンパク質を発現させることができる複製可能な核酸を指す。
【0139】
いくつかの実施形態において、発現ベクターは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結された発現制御ポリヌクレオチド配列、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列又はその両方をさらに含む。いくつかの実施形態において、発現制御ポリヌクレオチド配列は、プロモーター配列、エンハンサー配列又はその両方を含む。いくつかの実施形態において、発現制御ポリヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター配列を含む。「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合して遺伝子の転写を開始するDNAの領域を指す。「作動可能に連結された」という用語は、核酸が、それが連結されたエレメント(例えば、プロモーター)の制御下で核酸の発現を可能にするような方法で、組換えポリヌクレオチド、例えばベクターに配置されることを意味する。「選択マーカーエレメント」という用語は、人為選択に適した形質を与えるエレメントである。選択可能なマーカーエレメントは、ネガティブ又はポジティブ選択マーカーであり得る。
【0140】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチド又は発現ベクターのいずれか1つ以上を含む発現宿主細胞を提供する。
【0141】
「発現宿主細胞」という用語は、ベクターを受け取り、維持し、複製し、且つ増幅するのに有用な細胞を指す。
【0142】
発現宿主細胞の非限定的な例には、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞、COS細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞などの酵母細胞又はDH5αなどの細菌細胞などが含まれる。
【0143】
組成物
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は医薬組成物である。
【0144】
いくつかの実施形態において、組成物(例えば、医薬組成物)は、薬学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、希釈剤又は強壮剤をさらに含む(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。適切な薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。薬学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、希釈剤又は強壮剤の非限定的な例には、緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又はメチオニン)、防腐剤、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);親水性ポリマー、アミノ酸、炭水化物(例えば、単糖、二糖、グルコース、マンノース又はデキストリン);キレート剤(例えば、EDTA)、糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール)、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);非イオン性界面活性剤(例えば、Tween)、PLURONICS(商標)及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0145】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、医薬組成物)は、適切な投与スケジュール及び経路のために製剤化される。投与経路の非限定的な例には、経口、直腸、粘膜、静脈内、筋肉内、皮下及び局所などが含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、医薬組成物)は、水溶液又は乾燥製剤(例えば、凍結乾燥)の形態で保存される。
【0146】
いくつかの実施形態において、組成物は、注入(例えば、静脈内注入)によって投与されるように製剤化される。
【0147】
いくつかの実施形態において、組成物は、組み合わせ治療として第2の治療剤とともに投与されるように製剤化される。
【0148】
使用方法
別の態様において、本発明は、対象におけるSARS-CoV-2感染の可能性を低減する方法であって、薬学的に許容される担体と、活性成分としての本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つとを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0149】
いくつかの実施形態において、対象におけるSARS-CoV-2感染の可能性は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%だけ減少する。
【0150】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの存在下での対象におけるSARS-CoV-2感染の可能性は、ポリペプチドの不在下での可能性に対して約1~90%、例えば約2~90%、約2~85%、約3~85%、約3~80%、約4~80%、約4~75%、約5~75%、約5~70%、約6~70%、約6~65%、約7~65%、約7~60%、約8~60%、約8~55%、約9~55%、約9~50%、約10~50%、約10~45%、約15~45%、約15~40%、約20~40%、約20~35%、約25~35%又は約25~30%である。
【0151】
「対象」又は「患者」という用語は、動物(例えば、哺乳動物)を指す。本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、特定の病態(例えば、COVID-19)と診断されている者又はそのような病態を発現するリスクがある者であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の方法又は技術によって実施され得る。当業者は、本開示に従って処置される対象が、標準的な試験を受けた可能性があるか、又は検査なしで、疾患又は状態と関連する1つ以上の危険因子の存在に起因する危険性があると特定された可能性があることを理解するであろう。
【0152】
いくつかの実施形態において、対象は、COVID-19を有する。いくつかの実施形態において、対象は、COVID-19と診断されている。他の実施形態では、対象は、COVID-19を発症するリスクがある。
【0153】
いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、雌ウシ、チンパンジー、マカク、カニクイザル及びヒトからなる群から選択される哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、霊長類である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0154】
いくつかの実施形態において、対象は、心疾患を有する。いくつかの実施形態において、対象は、先天性心疾患、冠動脈疾患、高血圧性心疾患、炎症性心疾患、肺心症、リウマチ性心疾患、心臓弁疾患、心筋症、心不全及びそれらの組み合わせからなる群から選択される心疾患を有する。いくつかの実施形態において、対象は、うっ血性心不全を有する。いくつかの実施形態において、対象は、心内膜炎、心肥大、心筋炎及びそれらの組み合わせからなる群から選択される炎症性心疾患を有する。
【0155】
いくつかの実施形態において、対象は、糖尿病を有する。
【0156】
いくつかの実施形態において、対象は、肺疾患を有する。肺疾患の非限定的な例には、急性呼吸促迫症候群、喘息、気管支炎、COPD、肺気腫、肺腫瘍、胸膜腔疾患(例えば、胸膜中皮腫又は緊張性気胸)、肺血管疾患(例えば、塞栓症、浮腫、動脈性高血圧又は出血)、気道感染症(例えば、肺炎又は他の上気道若しくは下気道感染症)が挙げられる。
【0157】
いくつかの実施形態において、対象は、喫煙者である。
【0158】
いくつかの実施形態において、対象は、免疫力が低下している(例えば、基礎疾患を有するか又は免疫抑制療法を受けている)。
【0159】
いくつかの実施形態において、対象は、40歳以上、例えば少なくとも45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳である。
【0160】
「治療有効量」、「有効量」又は「有効用量」は、所望の治療結果(例えば、生理学的応答又は病態などの処置、治癒、阻害又は寛解)を達成するのに必要な用量及び期間中での有効な量である。十分な治療効果は、必ずしも1用量の投与によって生じることはなく、一連の用量の投与後に限って生じ得る。従って、治療有効量は、1回又は複数回投与において投与され得る。治療有効量は、哺乳動物の病態、年齢、性別及び体重、投与様式並びに治療薬又は治療薬の組み合わせの、個体における所望の応答を誘発する能力などの要素に応じて変化し得る。
【0161】
投与される薬剤の有効量は、通常の技能を有する臨床医により、本明細書で提供されるガイダンス及び当技術分野で公知の他の方法を用いて決定され得る。関連する要素は、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患若しくは障害のタイプ、対象のアイデンティティ(例えば、年齢、性別、体重)又は処置中の宿主などを含む。例えば、好適な用量は、1回の処置につき、体重で、約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kgであり得る。特定の薬剤、対象及び疾患に対する用量の決定は、当業者の能力の範囲内で十分になされる。好ましくは、その用量は、最低でも有害な副作用を引き起こすか又はもたらすことはない。
【0162】
所望の応答又は所望の結果は、細胞レベル、組織レベル又は臨床結果での効果を含む。そのようなものとして、「治療有効量」又はその同義語は、それが適用されている文脈に依存する。例えば、いくつかの実施形態において、それは、組成物の投与なしに得られる応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物の量である。他の実施形態では、それは、対照と比較して、対象における有利な又は所望的な結果をもたらす量である。本明細書で定義される通り、本開示の組成物の治療有効量は、当業者により、当技術分野で公知の通常の方法によって容易に決定され得る。投与計画及び投与経路は、最適な治療反応をもたらすように調節され得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、本方法は、予防的治療法のために使用される。いくつかの実施形態において、有効用量は、SARS-CoV-2による感染を受けている対象を予防するのに十分である。
【0164】
いくつかの実施形態において、本方法は、SARS-CoV-2感染を処置するために使用される。「処置すること」又は「処置」という用語は、疾患、病状又は障害(本明細書に例示される特定の適応症など)を改善、緩和、安定化し(即ち悪化させず)、予防又は治癒することを目的とした対象の医学的管理を指す。この用語には、積極的処置(疾患、病状又は障害を改善することに向けられた処置)、原因処置(関連する疾患、病状又は障害の原因に向けられた処置)、緩和処置(症状を緩和するために設計された処置)、予防的処置(関連する疾患、病状又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することに向けられた処置);及び補助的処置(別の療法を補うために利用される処置)が含まれる。処置には、検出可能又は検出不可能な、疾患又は状態の程度の減少;疾患又は状態の拡大の予防;疾患又は状態の進行の遅延又は減速;疾患又は状態の改善又は緩和;及び寛解(部分又は完全)も含まれる。疾患又は状態を「改善すること」又は「緩和すること」とは、処置の非存在下での程度又は時間経過と比較して、疾患、障害又は状態の程度及び/又は望ましくない臨床症状が軽減され、且つ/又は進行の時間経過が減速するか又は長くなることを意味する。「処置」は、処置を受けていない場合に期待される生存と比較して生存を延長することも意味し得る。処置が必要な人には、すでにその状態若しくは障害を有する人及びその状態若しくは障害を生じやすい人又はその状態若しくは障害を予防すべき人が含まれる。
【0165】
いくつかの実施形態において、有効用量は、対象におけるウイルス負荷を阻害するのに十分である。いくつかの実施形態において、ウイルス負荷の減少は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%である。いくつかの実施形態において、ウイルス負荷の減少は、約10~99%、例えば約10~98%、約15~98%、約15~97%、約20~97%、約20~96%、約25~96%、約25~95%、約30~95%、約30~94%、約35~94%、約35~93%、約40~93%、約40~92%、約45~92%、約45~91%、約50~91%、約50~90%、約55~90%、約55~85%、約60~85%、約60~80%、約65~80%、約65~75%又は約70~75%である。
【0166】
いくつかの実施形態において、有効用量は、ウイルスのその標的タンパク質、標的細胞又は両方への結合を低減するのに十分である。いくつかの実施形態において、結合の減少は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%である。いくつかの実施形態において、結合の減少は、約10~99%、例えば約10~98%、約15~98%、約15~97%、約20~97%、約20~96%、約25~96%、約25~95%、約30~95%、約30~94%、約35~94%、約35~93%、約40~93%、約40~92%、約45~92%、約45~91%、約50~91%、約50~90%、約55~90%、約55~85%、約60~85%、約60~80%、約65~80%、約65~75%又は約70~75%である。
【0167】
いくつかの実施形態において、有効用量は、標的細胞とのウイルス介在性融合を阻害するのに十分である。いくつかの実施形態において、融合の減少は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%である。いくつかの実施形態において、融合の減少は、約10~99%、例えば約10~98%、約15~98%、約15~97%、約20~97%、約20~96%、約25~96%、約25~95%、約30~95%、約30~94%、約35~94%、約35~93%、約40~93%、約40~92%、約45~92%、約45~91%、約50~91%、約50~90%、約55~90%、約55~85%、約60~85%、約60~80%、約65~80%、約65~75%又は約70~75%である。
【0168】
いくつかの実施形態において、有効用量は、細胞感染性に必要なウイルスエンベロープタンパク質における立体構造変化に干渉するのに十分である。
【0169】
本明細書に記載の治療剤は、化合物及び処置対象の特定の疾患に応じて、例えば経口、食事、局所、経皮、直腸、非経口(例えば、動脈内、静脈内、筋肉内、皮下注射、皮内注射)、静脈内注入及び吸入(例えば、気管支内、鼻腔内又は経口吸入、鼻内滴下)の投与経路を含む、種々の投与経路を介して投与され得る。投与は、適応に応じて、局所又は全身であり得る。好ましい投与様式は、選択される特定の化合物に応じて変化し得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチド、組成物又は医薬組成物は、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて(例えば、1つ以上のさらなる治療剤と同時に又は逐次的に)対象に投与される。いくつかの実施形態において、対象は、本明細書に開示されるポリペプチド、組成物又は医薬組成物の投与に先立ち、以前に1つ以上の治療剤で処置されている。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に開示されるポリペプチド、組成物又は医薬組成物の投与と同時に又はそれに続いて、治療有効量の1つ以上のさらなる治療剤を対象に投与することをさらに含む。
【0171】
さらなる治療剤の非限定的な例には、抗生物質(例えば、アジスロマイシン)、抗体又はその抗原結合断片(例えば、他のSARS-CoV-2-スパイク結合ペプチド)、抗マラリア剤(例えば、クロロキン又はヒドロキシクロロキン)、抗ウイルス剤(例えば、ファビピラビル、ロピナビル及び/又はリトナビル)、サイトカイン(例えば、インターフェロンベータ-1aなどの1型インターフェロン)、ヌクレオチド類似体(例えば、レムデシビル)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ダノプレビル)、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤(例えば、ACE2阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB))が挙げられる。
【0172】
いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、アマンタジン、ファビピラビル、ロピナビル、オセルタミビル(タミフル)、プレコナリル、リマンタジン、リトナビル、SARS-CoV-2に対するアンチセンスRNA、SARS-CoV-2に対するsiRNA、さらなる抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0173】
いくつかの実施形態において、さらなる抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体は、SARS-CoV-2のSタンパク質のRBDを標的にする。いくつかの実施形態において、さらなる抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体は、中和モノクローナル抗体である。抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の非限定的な例には、バムラニビマブ(LY-CoV555又はLY3819253)、エテセビマブ(LY-CoV016又はLY3832479)、カシリビマブ(REGN10933)及びイムデビマブ(REGN10987)が挙げられる。例えば、www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/therapies/anti-sars-cov-2-antibody-products/anti-sars-cov-2-monoclonal-antibodiesを参照されたい。
【0174】
いくつかの実施形態において、ACE2阻害剤は、ACE2に対するRNAi、ACE2に対するsiRNA、ACE2のCRISPRベースの阻害剤、可溶性ACE2、可溶性ACE2変異体、抗ACE2抗体、ワクチン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗生物質は、アジスロマイシンである。いくつかの実施形態において、抗マラリア剤は、クロロキン又はヒドロキシクロロキンを含む。いくつかの実施形態において、ワクチンは、核酸ワクチン又は不活化ウイルスワクチンである。いくつかの実施形態において、ワクチンは、mrna-1273、BNT162、INO-4800、AZD1222、Ad5-nCoV、PiCoVacc、NVX-CoV2373又はそれらの組み合わせである。
【0175】
2つ以上の治療剤の投与は、薬学的組み合わせなどでの、実質的に同時様式での治療剤の同時投与を包含する。代わりに、そのような投与は、各治療剤の、複数の容器又は別々の容器(例えば、カプセル、粉末及び液体)での同時投与を包含する。そのような投与は、ほぼ同じ時点又は異なる時点のいずれかにおける逐次的様式での治療剤の各タイプの使用も包含する。本明細書に記載の組成物及びさらなる治療剤は、同じ投与経路又は異なる投与経路を介して投与され得る。
【0176】
別の態様において、本発明は、対象におけるSARS-CoV-2感染を予防する方法であって、薬学的に許容される担体と、活性成分としての本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つとを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0177】
別の態様において、本発明は、対象におけるSARS-CoV-2感染を処置する方法であって、薬学的に許容される担体と、活性成分としての本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つとを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0178】
別の態様において、本発明は、対象におけるSARS-CoV-2のウイルス負荷を低減する方法であって、薬学的に許容される担体と、活性成分としての本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つとを含む、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0179】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2の標的細胞への結合を阻害する方法であって、標的細胞を、有効量の、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つと接触させることを含む方法を提供する。
【0180】
別の態様において、本発明は、SARS-CoV-2の標的細胞上の標的タンパク質への結合を阻害する方法であって、標的細胞を、有効量の、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つと接触させることを含む方法を提供する。
【0181】
別の態様において、本発明は、標的細胞とのウイルス介在性融合を阻害する方法であって、標的細胞を、有効量の、本明細書に記載のポリペプチド又は融合タンパク質のいずれか1つと接触させることを含む方法を提供する。
【0182】
特段の定義がされていない限り、本明細書で用いられる全ての専門用語、記号及び他の科学用語又は用語法は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味を有することが意図される。いくつかの場合、一般に理解されている意味を有する用語は、明確性及び/又は容易な参照を意図して、本明細書で定義され、本明細書でのそのような定義の包含については、当技術分野で一般に理解されていることを超える実質的差異を表すように必ずしも解釈されるべきではない。一般に使用される辞書で定義されるような用語は、関連する技術分野との関連において且つ/又は本明細書で定義される以外に、それらの意味に一致する意味を有するものとして解釈されるべきであることがさらに理解されるであろう。
【0183】
本明細書で用いられる用語法は、あくまで特定の実施形態を説明することを目的とし、限定することを意図されない。
【0184】
本明細書で用いられるとき、不定冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上明らかに別の意味を示していない限り、複数の参照を含むと理解されるべきである。
【0185】
本明細書及び後続する特許請求の範囲の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる」などの変形は、例えば、指定された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を包含するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外しないことを意味すると理解されるであろう。本明細書で用いられるとき、「含む」という用語は、「含有する」又は「包含する」という用語と交換可能である。
【0186】
本明細書で用いられるとき、「~からなる」は、クレーム要素において特定されない任意の要素、ステップ又は成分を除外する。本明細書で用いられるとき、「~から本質的になる」は、クレームの基本的で新規な特徴に実質的に影響しない材料又はステップを除外しない。「含む」、「含有する」、「包含する」及び「有する」という用語のいずれも、本発明の態様又は実施形態に関連して本明細書で用いられるときには常に、いくつかの実施形態において、本開示の範囲を変化させるための「~からなる」又は「~から本質的になる」という用語と交換可能である。
【0187】
本明細書で用いられるとき、複数の列記される要素間の「及び/又は」という接続用語は、個別の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1の選択肢は、第2要素を伴わない第1要素の適用可能性を指す。第2の選択肢は、第1要素を伴わない第2要素の適用可能性を指す。第3の選択肢は、第1及び第2要素の併用の適用可能性を指す。これらの選択肢のいずれか1つは、本明細書で用いられるとき、その意味の範囲内に該当し、従って「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。選択肢の2つ以上の併用の適用可能性は、その意味の範囲内にも該当し、従って「及び/又は」という用語の要件を満たすと理解される。
【0188】
リストが提示されるとき、特に断りのない限り、そのリストのそれぞれの個別の要素及びそのリストのあらゆる組み合わせが別々の実施形態であることが理解されるべきである。例えば、「A、B又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B又はC」を含むものとして解釈されるべきである。
【実施例
【0189】
実施例1.抗原結合分子とSARS-CoV-2-スパイクのS1サブユニット受容体結合ドメイン(RBD)との間の直接的結合
目的の分子を、組換え的に発現させ、精製し、そして定量化する。ELISAプレートを、市販のSARS-CoV-2 RBDのPBS中の1μg/mLで一晩コーティングする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、次に37℃で1時間にわたり、PBS中の5%BSAでブロッキングし、非特異的結合をブロックする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、目的の分子を、ELISAプレート内で希釈系列において滴定し、37℃で1時間インキュベートする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、標的分子に特異的な(HRPとコンジュゲートした)二次抗体を、プレートに固定希釈で添加する。プレートを、37℃で1時間インキュベートする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、TMB基質を目的のウェルに添加することにより、結合をそれとともにプローブする。5~10分後、反応を酸性停止溶液で停止させ、シグナルを、プレートリーダーで450nmでの吸光度を測定することによって定量する。陽性シグナルは、陰性対照(典型的に、抗体アイソトープ対照)におけるバックグラウンドについての吸光度読み取りに対応する。結合の半定量的理解は、標的分子のより大きい希釈での結合の力を評価することによって推定することができる。理論上、SARS-CoV-2 RBDに対する親和性がより大きい候補分子は、より弱い結合剤と比較して、より大きい希釈で、より大きいシグナルを示すはずである。
【0190】
実施例2.抗原結合分子はインビトロでRBDへの結合に対してヒトACE2(hACE2)と競合する
目的の分子を、組換え的に発現させ、精製し、そして定量化する。ELISAプレートを、市販のSARS-CoV-2 RBDのPBS中の1μg/mLで一晩コーティングする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、次に37℃で1時間にわたり、PBS中の5%BSAでブロッキングし、非特異的結合をブロックする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、目的の分子を、ELISAプレート内で希釈系列において滴定する。同時に、固定濃度の市販のhACE2(ビオチン化)を、候補分子と共インキュベートする。固定濃度のhACE2は、SARS-CoV-2 RBDに対する最大結合の50%がこのアッセイ形式において経験的に決定されたときの濃度に対応する。プレートを37℃で1時間インキュベートする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、ビオチン化hACE2に特異的な二次抗体(HRPとコンジュゲートされたストレプトアビジン)を、プレートに固定希釈で添加する。プレートを37℃で1時間インキュベートする。次に、プレートを、自動プレートウォッシャー上の200μLのPBS-Tで3回洗浄し、TMB基質を目的のウェルに添加することにより、結合をそれとともにプローブする。5~10分後、反応を酸性停止溶液で停止させ、シグナルを、プレートリーダーで450nmでの吸光度を測定することによって定量する。陽性シグナルは、陰性対照(典型的に、抗体アイソトープ対照)におけるバックグラウンドを上回る候補分子を有しないウェルに対する、候補分子を有するウェルにおける吸光度の減少に対応する。標的分子のhACE2と競合する能力の半定量的理解は、標的分子のより大きい希釈でのhACE2結合の全減少を評価することによって推定することができる。理論上、SARS-CoV-2 RBDに対してhACE2と競合する能力がより大きい候補分子は、より弱い能力を有する分子と比較して、より大きい希釈で、より大きいシグナルを示すはずである。
【0191】
実施例3.抗原結合分子は細胞表面上のRBDへの結合に対してhACE2と競合する
目的の分子を、組換え的に発現させ、精製し、そして定量化する。hACE2を野生型レベルで発現する細胞株を培養し、(表面タンパク質破壊を阻止するため)トリプシン処理なしに収集し、計数する。一定数の細胞を、96ウェルプレートに添加し、希釈系列において滴定された目的の分子とともにインキュベートする。同時に、固定濃度の市販のSARS-CoV-2(ビオチン化)を、候補分子と共インキュベートする。固定濃度のSARS-CoV-2は、細胞上のhACE2に対する最大結合の50%がこのアッセイ形式において経験的に決定されたときの濃度に対応する。細胞のプレートを、暗所、4℃で1時間インキュベートする。プレートを、400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞をPBS中の0.2%BSAで洗浄する。このプロセスを、さらに2回反復し、合計3回洗浄する。ビオチン化SARS-CoV-2に特異的な二次抗体(Alexa Fluor 488とコンジュゲートされたストレプトアビジン)を、プレートに固定希釈で添加する。細胞のプレートを、暗所、4℃で1時間インキュベートする。プレートを、400×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞をPBS中の0.2%BSAで洗浄する。次に、細胞を、PBS中の一定体積の0.2%BSAに再懸濁し、フローサイトメトリーを実施する。SARS-CoV-2 RBDの全結合をFIT-Cチャネルの中央値蛍光強度(MFI)によって分析する。陽性シグナルは、陰性対照(典型的に、抗体アイソトープ対照)におけるバックグラウンドを上回る候補分子を有しないウェルに対する、候補分子を有するウェルにおけるMFIの減少に対応する。SARS-CoV-2 RBDと競合する能力の半定量的理解は、標的分子のより大きい希釈でのSARS-CoV-2 RBD MFIの全減少を評価することによって推定することができる。理論上、(SARS-CoV-2 RBDに対する親和性と考えることもできる)hACE2に対してSARS-CoV-2 RBDと競合する能力がより大きい候補分子は、より弱い能力を有するより大きい希釈分子で、より大きいシグナルを示すはずである。
【0192】
実施例4.抗体設計の酵母ディスプレイの特徴付け
抗体を、c-Mycエピトープタグに融合された単一のVHドメインとしてフォーマットし、結合について酵母ディスプレイを用いて試験した。VH-c-Myc融合構築物を、酵母ディスプレイベクターへのクローニング用のオーバーハングを伴うDNA断片として合成した(TWIST Biosciences)。DNAインサート及び消化されたベクターを、酵母に形質転換し、全プラスミドをインビボで相同組換えによって作製した。細胞を、VH-c-Mycの発現及び提示のため、酵母細胞表面上に誘導した。誘導された細胞を染色し、ビオチン化SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)抗原(ACROBiosystems,Newark,DE)又はSARS-CoV RBD(Genscript)及び抗c-myc(Exalpha)に結合させ、VHc-Mycを発現させた。結合を示したクローンについて、平衡解離定数(K)を、様々な濃度のSARS-CoV-2 RBD又はSARS-CoV抗原による滴定曲線を作成することによって評価した。SAR-CoV-2 RBDに結合した全てのクローンは、SARS-CoV RBDとの交差反応性結合も示した。結合特異性及びK値を表2にまとめる。
【0193】
実施例5.VH-Fc融合体の生成
従来の方法を用いて、VH-cMyc融合構築物をVH-Fc融合体にリフォーマットした。ホモ二量体VHH抗体を、CMVプロモーターを含む発現プラスミドを使用して発現を駆動し、シグナルペプチドを使用して完全に折り畳まれたVH-Fc融合体の上清への分泌を促進することによって作製した。哺乳類発現宿主系(チャイニーズハムスター卵巣-CHO S細胞株など)を、フェドバッチ生産手順による、カチオン性脂質ベースの一過性トランスフェクション法を用いるタンパク質発現に使用した。発現された可溶性VH-Fc融合体を、プロテインA親和性樹脂(例えば、MabSelect Sure樹脂、GE Healthcare)及び水性緩衝液を用いる親和性捕捉ベースの精製方法を用いて精製した。溶出は、低いpH(pH3.5など)の酸性条件下で実施し、次いで2Mトリス塩基を用いてpH7.5まで中和した。精製されたVHH抗体を、水性緩衝液(NaClを含有するヒスチジンベースの緩衝液)中でさらに安定化し、長期貯蔵/凍結に備えた。
【0194】
実施例6.VHH抗体の結合動力学及び親和性
結合動力学及び親和性は、ForteBio Octet Red96e装置を用いるバイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定した。抗体を、バイオセンサーに捕捉した。次に、バイオセンサーを、会合及び解離のため、連続希釈でSARS-CoV-2 RBD(Acro Biosystems)とともにインキュベートした。
【0195】
実施例7.材料及び方法
完全長IgGの発現
設計された抗体のVHH可変ドメイン(scFc)配列をコードする逆翻訳されたDNAをPCR増幅し、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly(New England Biolabs,Ipswich,MA)を使用し、CMVプロモーター配列、シグナルペプチド及び対応する定常領域を含むヒトhG1 Fcベクターにクローン化した。VHHタンパク質を、製造業者の方法(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)に従い、ExpiCHO細胞内で発現させ、製造業者の方法に従い、MabSelect SureプロテインA親和性樹脂(Cytiva,Marlborough,MA)を使用する親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0196】
中和アッセイ
予備滴定量のrVSV-SARS-CoV-2を、連続希釈したモノクローナル抗体とともに37℃で1時間インキュベートした後、96ウェルプレート内のコンフルエントなベロ(ATCC CCL-81)単層に添加した。感染を、5%CO下、37℃で16~18時間進行させた後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、10μg/mLのヘキストで染色した。細胞を、CellInsight CX5イメージャを用いて画像化し、感染を、全細胞と緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する細胞の自動数え上げによって定量化した。感染を、ヒトIgGアイソタイプ対照とともにインキュベートした、rVSV-SARS-CoV-2で感染した細胞の平均数に正規化した。
【0197】
WT及び突然変異体SARS-CoV-2スパイクタンパク質の作製
スパイクタンパク質を、エピトープビニング試験及び構造生物学を意図して、外部ドメインの残基14~1208(Genbank:MN908947)、6つのプロリン置換(F817P、A892P、A899P、A942P、K986P、V987P)並びに北欧におけるスピルオーバー/スピルバックに関連する全て/大部分の変異体において確立されたD614G突然変異及び切断部位残基682~685(「RRAR」(配列番号18)~「GSAS」(配列番号19))の置換を有する)HexaProバックグラウンドを用いて作製した。得られたスパイク変異体を、N末端Gaussiaルシフェラーゼシグナル配列(MGVKVLFALICIAVAEA(配列番号20))及びC末端foldon三量体化ドメイン、それに続くHRV-3C切断部位及びTwin-Strep-Tagを含むphCMV哺乳類発現ベクターにクローン化した。プラスミドを、Plasmid Plus Midiキット(Qiagen,Hilden,Germany)を用いて、Stellarコンピテント細胞に形質転換し、単離した。
【0198】
SARS-CoV-2HexaProスパイクを、Freestyle 293-F又はExpiCHO-S細胞(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)に、一過性にトランスフェクトした。製造業者のプロトコルに従い、両細胞株を維持し、トランスフェクトした。つまり、トランスフェクションの日に(0日目)、293-F細胞を、2.0×10細胞/mLの密度まで成長させ、1.0×10細胞/mLまで希釈した。プラスミドDNA及びポリエチレンイミンを、Opti-MEM(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)中で混合し、25分間インキュベートし、次に細胞に添加した。細胞培養物を、37℃、8%CO及び120RPMでインキュベートし、5日目に収集した。ExpiCHO培養物の場合、製造業者の「高力価」プロトコルを使用した。つまり、トランスフェクションの日に(0日目)、細胞を、1×10細胞/mLの密度まで成長させ、6×10細胞/mLまで希釈した。プラスミドDNA及びExpifectamineを、製造業者の使用説明書に従い、Opti-PRO SFM(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)中で混合し、細胞に添加した。1日目、細胞に、提示されたプロトコルに従い、製造業者供給のフィード及びエンハンサーを与え、次に培養物を、32℃、5%CO及び115RPMでインキュベートした。7日目、ExpiCHO培養物を収集した。全ての培養物を、遠心分離によって清澄化し、続いて、BioLock(IBA Lifesciences,Goettingen,Germany)を添加し、上清を0.22μMの滅菌フィルターにフロースルーさせ、TBS緩衝液(25mMトリスpH7.6、200mM NaCl、0.02%NaN)で平衡化した5mLのStrepTrap-HPカラムを用いて、Ae KTA GO(Cytiva,Marlborough,MA)上で精製し、5mMのd-デスチオビオチン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を添加したTBS緩衝液で溶出させた。ストレプタグを、HRV-3Cプロテアーゼを用いて切断し、タンパク質を、TBS中、Superdex 6increase10/300カラム(GE Healthcare,Chicago,IL)上でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製した。
【0199】
ハイスループット表面プラズモン共鳴(HT-SPR)エピトープビニング
エピトープビニングは、サンドイッチアッセイ形式で、25℃でのCMDPセンサチップを備えたCarterra LSA SPR装置で、HBSTE-BSAランニングバッファー(10mMヘペス pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%Tween-20、0.5mg/mlのBSAを添加)中で実施した。2つのマイクロ流体モジュール、96チャネルのプリントヘッド(96PH)及び単一のフローセル(SFC)を用いて、サンプルをセンサチップ上に送達した。25mM MES(pH5.5)と、ランニングバッファーとして0.05%Tween-20を用いて、表面調製を実施した。チップを、SFCを用いて、0.1M MES(pH5.5)中、130mMの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)+33mMのN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)の新しく調製した溶液で活性化させた。抗体を、96PHを用いて、10μg/mLで10分間固定化し、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.25)に希釈した。非反応性エステルを、SFCを用いて、1Mエタノールアミン-HCl(pH8.5)の7分間注射でクエンチした。ビニング分析は、このアレイ上で、ランニングバッファーとしてのHBSTE-BSA緩衝液及びサンプル希釈剤を用いて実施した。RBD抗原を、各サイクルにおいて50nM(1.3μg/mL)で4分間注射し、その直後、分析物抗体を、30μg/mL(IgG構築物において200nM)で4分間注射した。各サイクルにおいて、表面を、10mMグリシン(pH2.0)の二重パルス(17秒/パルス)で再生させた。データを、Epitope Toolソフトウェア(Carterra,Salt Lake City,UT)によって処理及び分析した。
【0200】
実施例8.エピトープ及び親和性
可溶性G614 HexaProスパイク外部ドメイン及び単量体RBDに対するモノクローナル抗体の親和性を試験した。ハイスループット表面プラズモン共鳴分析を用いて、RBDと反応する抗体を、7つの異なる「コミュニティー」(コロナウイルス免疫療法コンソーシアム(COVIC))に選別した。RBDコミュニティーを、を、同じコミュニティーの2つのメンバー間で、結合における共有エピトープを示す、SPRサンドイッチ対を作れないことと定義した。参照のAB-1及びAB-2クラスターが、「RBDコミュニティー7」、即ち異なる「RBDコミュニティー」エピトープビンにクラスター化することが見出された(COVIC、データは示さず)。これらの抗体は、標的抗原のG614 HexaProスパイク外部ドメイン及び単量体RBDに対する親和性を表2に記載する。
【0201】
実施例9.VHH分子はYSDによってSARS-COV-2 RBDに結合する
c-mycエピトープタグに融合されたScFv構築物を、酵母ディスプレイベクターへのクローニング用のオーバーハングを伴うDNA断片として合成した(Twist Biosciences)。DNAインサート及び消化されたベクターを、酵母に形質転換し、全プラスミドをインビボで相同組換えによって作製した。細胞を、scFvの発現及び提示のため、酵母細胞表面上に誘導した。誘導された細胞を染色し、ビオチン化SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)抗原(ACROBiosystems,Newark,DE)又はSARS-CoV RBD(Genscript Biotech,Piscataway,NJ)及び抗c-myc(Exalpha Biologicals Inc,Shirley,MA)に結合させ、scFvを発現させた。親和性を、滴定濃度の抗原で構築物を染色し、各濃度で中央値蛍光強度をプロットすることによって平衡時のKを計算することにより、決定した(表2、図3)。
【0202】
実施例10.VHH分子はインビトロでSARS-COV-2を中和する
AB-1及びAB-2を、中和試験のため、コロナウイルス免疫療法コンソーシアム(COVIC)に提出した。両分子は、疑似及び真正WTウイルス双方のベロ単層の感染をブロックする能力を示す(表2)。
【0203】
AB-1を選択し、COV-2 RBD内の出現する突然変異の感受性をさらに調べた。疑似ウイルス中和試験を、複数のヒト及びミンク変異体に見出される点突然変異を有する疑似ウイルスを用いて実施した。データを図4に提示する。AB-1は、-2.5~2.5のIC50倍数変化によって示されるように、大部分の突然変異に対して耐性であった。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
【0206】
重鎖IgG1、軽鎖κ、軽鎖λ配列は、非限定的な例の配列である。
【0207】
【表3】
【0208】
参考文献
1.Baud D,et al.(2020)Real estimates of mortality following COVID-19 infection.Lancet Infect Dis.:S1473-3099(20)30195-X.doi:10.1016/S1473-3099(20)30195-X.[Epub ahead of print].
2.Lindsey R.Baden and Eric J.Rubin(2020)Covid-19-The Search for Effective Therapy,N Engl J Med.,doi:10.1056/NEJMe2005477.
3.Ziegler et al.(2020)SARS-CoV-2 receptor ACE2 is an interferon-stimulated gene in human airway epithelial cells and is detected in specific cell subsets across tissues,Cell,DOI:10.1016/j.cell.2020.04.035[Journal pre-proof].
【0209】
本明細書で引用された全ての特許、公開された出願及び参考文献の教示は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0210】
例示的な実施形態が特に示され、説明されているが、添付の特許請求の範囲に包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更形態がなされ得ることが当業者に理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023540037000001.app
【国際調査報告】