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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】延伸破断繊維材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06H 7/02 20060101AFI20230913BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20230913BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
D06H7/02
B29B11/16
B29K105:10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513380
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021047123
(87)【国際公開番号】W WO2022046621
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,151
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/123,248
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518041995
【氏名又は名称】モンタナ・ステイト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】MONTANA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブース,エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケアンズ,ダグラス エス.
【テーマコード(参考)】
3B154
4F072
【Fターム(参考)】
3B154AA14
3B154AB03
3B154AB09
3B154BB47
3B154BB54
3B154BB56
3B154BC16
3B154BC22
3B154DA06
3B154DA24
4F072AA04
4F072AB10
4F072AB22
4F072AC03
4F072AG03
(57)【要約】
延伸破断繊維材料を製造する方法及びシステムは、複数の連続フィラメント及び連続キャリアフィルムを含む繊維材料を、連続キャリアフィルムが繊維材料に接触するように延伸破断装置内に供給することと、連続キャリアフィルムが繊維材料に接触している間に、延伸破断装置を使用して繊維材料の複数の連続フィラメントの少なくとも一部を破断して、連続キャリアフィルムに接触している延伸破断繊維材料を製造することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸破断繊維材料の製造方法であって、
複数の連続フィラメント及び連続キャリアフィルムを含む繊維材料を、前記連続キャリアフィルムが前記繊維材料に接触するように延伸破断装置内に供給することと、
前記連続キャリアフィルムが前記繊維材料に接触している間に、前記延伸破断装置を用いて前記繊維材料の前記複数の連続フィラメントの少なくとも一部を破断して、前記連続キャリアフィルムに接触している延伸破断繊維材料を製造することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記連続キャリアフィルムは、前記繊維材料の第1の側面において前記繊維材料に接触する第1の連続キャリアフィルムを含み、前記方法は、
第2の連続キャリアフィルムを、前記第2の連続キャリアフィルムが前記繊維材料の前記第1の側面の反対側である前記繊維材料の第2の側面において前記繊維材料に接触するように、前記延伸破断装置内に供給すること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
引張応力下で、前記連続キャリアフィルムは、前記連続キャリアフィルムが破断する前に、前記引張応力の方向に沿って前記連続キャリアフィルムの長さの少なくとも6%伸長することが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維材料は、炭素繊維材料、繊維ガラス材料、有機繊維材料、セラミック繊維材料、ガラス繊維材料、玄武岩繊維材料、及びグラファイト繊維材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連続キャリアフィルムは、ポリマー材料、ゴム材料、熱可塑性材料、布地材料、織物材料、及び紙ベースの材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記連続キャリアフィルムは、前記連続キャリアフィルムに接触するプリプレグ延伸破断繊維材料を製造するために、前記繊維材料に接触する前記連続キャリアフィルムの表面上に樹脂材料を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の連続キャリアフィルムは、前記延伸破断装置を使用して前記繊維材料の前記複数の連続フィラメントの少なくとも一部を破断することに先立って、前記延伸破断装置内に供給され、前記繊維材料の前記第2の側面に接触する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の連続キャリアフィルムは、前記延伸破断装置を使用して前記繊維材料の前記複数の連続フィラメントの少なくとも一部が破断された後に、前記延伸破断装置内に供給され、前記繊維材料の前記第2の側面に接触する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の連続キャリアフィルムは、前記繊維材料の前記第2の側面に接触してプリプレグ延伸破断繊維材料を製造する、樹脂材料を含む樹脂含有シートを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記連続キャリアフィルムは、前記連続キャリアフィルムを貫通する複数の穿孔であって、増強剤が前記繊維材料へと前記穿孔を通過することを可能とするように構成された、複数の穿孔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記延伸破断装置を使用して、前記繊維材料の前記複数の連続フィラメントの少なくとも一部が破断された後に、前記延伸破断装置内に硬化フィルムを供給することをさらに含み、前記硬化フィルムは、前記第1の連続キャリアフィルム及び前記第2のキャリアフィルムよりも高い剛性を有し、前記第1の連続キャリアフィルム又は前記第2のキャリアフィルムのいずれかが、前記繊維材料と前記硬化フィルムとの間に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
延伸破断繊維材料を製造するシステムであって、
繊維材料のフィラメントを破断して、前記繊維材料の平均フィラメント長を短縮するように構成された、延伸破断装置と、
前記延伸破断装置内に連続キャリアシートを供給するように構成された、供給装置であって、前記延伸破断装置が前記繊維材料のフィラメントを破断する間に、前記連続キャリアシートが前記繊維材料に接触するようにされた、供給装置と、
を含む、前記システム。
【請求項13】
前記延伸破断装置は、差動ローラー延伸破断装置を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記延伸破断装置は、デュアルプラテン延伸破断装置を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記供給装置は、第1の連続キャリアフィルムを、前記第1の連続キャリアフィルムが前記繊維材料の第1の側面に接触するように、前記延伸破断装置内に供給するように構成された、第1の供給装置を含み、前記システムは、第2の連続キャリアフィルムを、前記第2の連続キャリアフィルムが前記第1の側面の反対側である前記繊維材料の第2の側面に接触するように、前記延伸破断装置内に供給するように構成された、第2の供給装置を更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2の供給装置は、前記延伸破断装置が前記繊維材料の前記フィラメントを破断することに先立って、第2の連続キャリアフィルムが前記繊維材料の前記第2の側面に接触するように、前記延伸破断装置内に前記第2の連続キャリアフィルムを供給するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2の連続キャリアフィルムは、前記延伸破断装置内に供給され、前記繊維材料の前記フィラメントが破断された後に前記繊維材料の前記第2の側面に接触してプリプレグ延伸破断繊維材料を提供する、樹脂材料を含む樹脂含有シートを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
1MPa以下である成形力を使用して成形可能である、延伸破断炭素繊維材料。
【請求項19】
前記延伸破断炭素繊維材料は、4cm未満の平均繊維長を有する、請求項1に記載の延伸破断炭素繊維材料。
【請求項20】
延伸破断炭素繊維トウを含む、乾燥延伸破断炭素繊維製品であって、前記延伸破断炭素繊維トウの繊維のうちの98%以上が、2°以内に整列されている、前記乾燥延伸破断炭素繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府支援]
本発明は、米国陸軍省(USARO)により与えられた契約番号第W911W6-18-C-0050号の下で政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2020年8月25日に出願された「延伸破断炭素繊維の製造技術、方法及び装置(Technique, Method and Device for the Manufacture of Stretch Broken Carbon Fiber)」と題された米国仮出願第63/070,151号の優先権の利益を主張し、2020年12月10日に出願された「延伸破断炭素繊維の製造技術、方法及び装置(Technique, Method and Device for the Manufacture of Stretch Broken Carbon Fiber)」と題された米国仮出願第63/123,248号の優先権の利益を主張するものであり、これらの両方の全体の教示は、いずれの目的についても、参照により本明細書に援用する。
【0003】
本開示は、概して、延伸破断繊維材料、特に延伸破断炭素繊維材料、及び1つ以上のキャリアフィルムを用いたかかる材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
炭素繊維材料等の複合材料は、多種多様な用途で使用されている。有望性が増している複合材料のうちの1つのタイプは、機械的延伸を用いて慣例的に製造された炭素繊維フィラメントの特性を変更することによって形成される、延伸破断炭素繊維(SBCF)材料である。延伸工程は、元来弱い箇所において繊維を切断し、繊維の長さを効果的に短縮する。このことは、SBCF材料の巨視的な「延性」挙動による炭素繊維部品の製造可能性を改善することを含む、様々な方法で、結果の炭素繊維材料を強化し得る。このことは、SBCF材料を使用した、より入り組んだ部品及び複雑な形状の製造を可能とし得る。延伸破断工程はまた、炭素繊維材料から元来の欠陥を除去することができ、これにより材料強度を改善することができ、さらに、より安価な製造工程を可能にすることによって、完成炭素繊維部品及び構造物のコストを削減することを支援し得る。
【0005】
SBCF材料を作製するための1つの現在の技術は、炭素繊維を伸長させ選択的に切断するために、異なる回転速度で駆動される一連のローラーを採用することを含む。しかしながら、現在実装されているようなこの技術には、不十分な繊維の短縮、様々なスケールアップの困難性、及び破断された後に短縮された繊維を取り扱うことにおける困難性を含む、多くの制限がある。特に、支持されていない炭素繊維トウは、一旦延伸破断されると、取り扱いが困難である。これに加えて、炭素トウの破断、ローラーへの繊維の巻き付き、ローラーへの屑の付着、及びその他のスケールアップの困難性は、日常的に生じてきたものである。これらの問題の多くは、SBCFの製造が再開され得る前に、延伸破断機が停止、洗浄及びリセットされることを必要とする。その結果、この技術の商業的な採用は、これまで限定的なものであった。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一実施形態に係る延伸破断繊維材料の製造方法は、複数の連続フィラメント及び連続キャリアフィルムを含む繊維材料を、連続キャリアフィルムが繊維材料に接触するように延伸破断装置内に供給することと、連続キャリアフィルムが繊維材料に接触している間に、延伸破断装置を用いて繊維材料の複数の連続フィラメントの少なくとも一部を破断して、連続キャリアフィルムに接触している延伸破断繊維材料を製造することとを含む。
【0007】
別の実施形態は、延伸破断繊維材料を製造するシステムであって、繊維材料のフィラメントを破断して、繊維材料の平均フィラメント長を短縮するように構成された、延伸破断装置と、延伸破断装置内に連続キャリアシートを供給するように構成された、供給装置であって、延伸破断装置が繊維材料のフィラメントを破断する間に、連続キャリアシートが繊維材料に接触するようにされた、供給装置とを含む、システムを含む。
【0008】
別の実施形態は、1MPa以下である成形力を使用して成形可能である、延伸破断炭素繊維材料を含む。
【0009】
別の実施形態は、延伸破断炭素繊維トウを含む、乾燥延伸破断炭素繊維製品であって、延伸破断炭素繊維トウの繊維のうちの98%以上が、2°以内に整列されている、乾燥延伸破断炭素繊維製品を含む。
【0010】
本開示の様々な実施形態は、ポリマーのキャリアフィルムのような1つ以上のキャリアフィルムを、延伸破断工程における不可欠な要素として利用することによって、前述の現在の延伸破断繊維製造工程の制限を克服し得る。前述のキャリアフィルムは、延伸破断工程中に繊維材料の束の一方の側面又は両方の側面において採用され得る。様々な実施形態において、キャリアフィルムの使用は、繊維に対するグリップを改善し、繊維が延伸破断機械に粘着するのを防止し、延伸破断工程において製造された成形可能な材料のその後の改善された取り扱いを可能にする裏打ちを提供し得る。キャリアフィルムの使用はまた、SBCFの成形性及び強度を著しく改善し得る、より短い繊維長を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態による、延伸破断繊維材料を製造する差動ローラーシステムを概略的に示す図である。
図2図2は、本開示の実施形態による、延伸破断繊維材料を製造するデュアルプラテンシステムを概略的に示す図である。
図3A図3Aは、キャリアフィルム上の延伸破断繊維材料の平面図である。
図3B図3Bは、図3Aにおける線A-A’に沿った延伸破断繊維材料及びキャリアフィルムの断面図である。
図3C図3Cは、第1のキャリアフィルムと第2のキャリアフィルムとの間に挟持された延伸破断繊維材料の断面図である。
図3D図3Dは、キャリアフィルム上の延伸破断繊維材料の2つのトウを示す平面図である。
図4図4は、延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを使用して製造された、一実施形態の延伸破断炭素繊維(SBCF)材料の繊維長プロファイルと、従来技術を使用して製造されたSBCF材料の3つの比較例の繊維長プロファイルとのプロットである。
図5図5は、(A)延伸破断工程中に繊維材料に接触するキャリアフィルムを含まない従来技術を用いて製造された、SBCF材料の比較例、及び(B)延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造された一実施形態のSBCF材料を含む、SBCF材料の顕微鏡写真である。
図6図6は、樹脂含有シートを延伸破断装置内に供給して延伸破断繊維材料に接触させるように構成された供給装置を含む、プリプレグ延伸破断繊維材料を製造する差動ローラーシステムを概略的に示す図である。
図7図7は、延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造された一実施形態のSBCF材料の成形性を、従来技術を用いて製造されたSBCF材料の比較例の成形性と比較して示すプロットである。
図8A図8Aは、複数の穿孔を含むキャリアフィルムを示す平面図である。
図8B図8Bは、2つの穿孔されたキャリアフィルムの間に配置された繊維材料の断面図である。
図9図9は、キャリアフィルムの表面に接触するように硬化シートを延伸破断装置内に供給するように構成された供給装置を含む、延伸破断繊維材料を製造する差動ローラーシステムを概略的に示す図である。
図10図10は、本開示の様々な実施形態による、延伸破断繊維材料を製造する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、様々な実施形態を詳細に説明する。可能な限り、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すのに使用する。特定の例及び実施態様に対する参照は、例示目的でなされ、本発明又は特許請求の範囲の範囲を制限することは意図していない。
【0013】
本発明は、本発明の構成要素、及び本明細書に記載された他の内容若しくは要素「を含む(comprise)」(限定しない)もの、又はこれら「から本質的になる(consist essentially of)」ものであり得る。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」とは、列挙された要素、又は構造若しくは機能におけるそれらの等価物に加え、いずれかの他の要素又は列挙されていない要素を意味する。用語「有する(having)」及び「含む(including)」はまた、文脈が別段の示唆をしていない限り、限定しないものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consist essentially of)」とは、本発明が明細書及び/又は請求項に列挙されたものに加えた内容を含み得ることを意味するが、追加的な内容が請求された発明の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限る。
【0014】
本明細書で列挙される、2つの値の「間」の範囲を列挙するものを含む、任意の及び全ての範囲は、端点を含む。「約」、「概して」、「実質的に」、「およそ」等の用語は、絶対的なものではないが先行技術では読み取れないように、用語又は値を修飾するものとして解釈されるべきである。かかる用語は、これらの用語が当業者によって理解されるときに、これらの用語が修飾する状況及び用語によって定義されることとなる。このことは、少なくとも、値を測定するために使用される所与の技術について、予想される実験誤差、技術誤差及び機器誤差の程度を含む。別段の示唆がない限り、本明細書で使用される場合、「1つの(a及びan)」は複数を含み、例えば、「1つの媒体」は、少なくとも1つの媒体、及び複数の媒体すなわち2つ以上の媒体を意味し得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、2つ以上の項目の列記において使用される場合の用語「及び/又は」は、列記された特性のうちの任意の1つが存在し得ること、又は列記された特性のうちの2つ以上の任意の組み合わせが存在し得ることを意味する。例えば、本発明の組成物が特徴A、B及び/又はCを含むものとして記載されている場合、該組成物は、A特徴のみ、Bのみ、Cのみ、AとBとを組み合わせて、AとCとを組み合わせて、BとCとを組み合わせて、又はAとBとCとを組み合わせて、を含み得る。
【0016】
本開示の様々な実施形態は、延伸破断炭素繊維材料等の延伸破断繊維材料を製造する方法及びシステムに関するものである。本開示の様々な実施形態によれば、少なくとも1つの連続キャリアフィルムは、延伸破断装置を使用して繊維材料のフィラメントが破断されるときに、少なくとも1つの連続キャリアフィルムが繊維材料に接触するように、延伸破断装置内に供給されてもよい。少なくとも1つのキャリアフィルムは、延伸破断繊維材料が少なくとも1つの連続キャリアフィルムに接触するように、延伸破断工程中に延伸するが破断しないものであってもよい。
【0017】
様々な実施形態において、延伸破断工程中に繊維材料に接触する連続キャリアフィルムを提供することは、延伸破断繊維フィラメントの組織化及び整列を維持することに役立ち得るものであり、このことは、延伸破断繊維材料の改善された取り扱い及び輸送、並びに延伸破断繊維材料を使用して製造され得る完成部品の改善された特性を可能とし得る。少なくとも1つのキャリアフィルムの使用はまた、繊維材料と延伸破断装置の構成要素との間に仕切りを提供し得るものであり、このことは、延伸破断装置上の摩耗及び屑を最小化し、延伸破断繊維製造工程の確実性及び効率を改善し得る。
【0018】
図1は、本開示の様々な実施形態による、延伸破断繊維材料を製造する差動ローラーシステム100の概略図である。複数の連続繊維フィラメントから構成される繊維材料101が、延伸破断装置110内に供給されてもよく、延伸破断装置110の複数のローラー104、106によって張力下に置かれてもよい。図1に示される実施形態においては、延伸破断装置110は、ローラーの3つのセット105、107及び109(それぞれ第1のニップステーション105、第2のニップステーション107及び第3のニップステーション109とも呼ばれ得る)を含む。繊維材料101は、矢印102の方向に沿って、第1のニップステーション105、第2のニップステーション107及び第3のニップステーション109の各々を通って進行し得る。各ニップステーション105、107及び109において、繊維材料101は、第1のローラー104と少なくとも1つの第2のローラー106との間を通過してもよい。図1に示される実施形態においては、各ニップステーション105、107、109は、第1のローラー104と、第1のローラー104よりも小さい直径を有する一対の第2のローラー106とを含む。各ニップステーション105、107及び109における少なくとも1つのローラー104、106は、所定の速度で回転するように制御されてもよい駆動ローラーであってもよい。各ニップステーション105、107及び109における残りのローラー104、107は、任意にアイドラーローラーであってもよい。実施形態においては、第1のローラー104は、ウレタン等の耐久性のある材料から構成された外面を有してもよい。いくつかの実施形態においては、第2のローラー106は、鋼材等の金属又は金属合金から構成された外面を有してもよい。
【0019】
システム100はまた、キャリアフィルム112、114を延伸破断装置110内に供給するように構成された、少なくとも1つの供給装置111、113を含んでもよい。図1の実施形態においては、第1の供給装置111は、第1のキャリアフィルム112を延伸破断装置110の第1のニップステーション105内に供給し得る、第1のスプールを含んでもよい。第2の供給装置113は、第2のキャリアフィルム114を延伸破断装置110の第1のニップステーション105内に供給し得る、第2のスプール113を含んでもよい。第1のキャリアフィルム112は、第1のキャリアフィルム112が繊維材料101の第1の側面115とそれぞれのニップステーション105、107及び109の第2のローラー106の各々との間に配置されるように、延伸破断装置110のニップステーション105、107及び109の各々を通して供給されてもよい。第2のキャリアフィルム114は、第2のキャリアフィルム114が繊維材料101の第2の側面116とそれぞれのニップステーション105、107及び109の第1のローラー104の各々との間に配置されるように、延伸破断装置110のニップステーション105、107及び109の各々を通して供給されてもよい。図1の実施形態は、繊維材料101の対向する側面115、116上に配置された第1のキャリアフィルム112及び第2のキャリアフィルム114を示しているが、いくつかの実施形態においては、繊維材料101が第1のニップステーション105、第2のニップステーション107及び第3のニップステーション109を通って進行するときに、キャリアフィルム(例えば第1のキャリアフィルム112又は第2のキャリアフィルム114)は、繊維材料101の片面にのみ配置されてもよいことは、理解されるであろう。
【0020】
それぞれのニップステーション105、107、109のローラー104、106は、異なる速度で回転するように駆動されてもよく、このことは、繊維材料101、第1のキャリアフィルム112、及び第2のキャリアフィルム114に対して、これらが延伸破断装置110を通って供給されるときに、張力を付与し得る。様々な実施形態において、第3のニップステーション109のローラー104、106は、第2のニップステーション107のローラー104、106よりも高い速度で回転してもよい。このことは、ニップステーション107とニップステーション109との間の領域117(「破断ゾーン」とも呼ばれ得る)において、繊維材料101、第1のキャリアフィルム112及び第2のキャリアフィルム114に対して張力を付与し得る。破断ゾーン117内の繊維材料101における引張歪みは、繊維材料101のフィラメントの少なくとも一部を、フィラメントの弱い箇所に沿って切断させ、それによってフィラメントの平均長さを短縮し、延伸破断繊維材料101’を製造するのに十分なものであり得る。しかしながら、破断ゾーン117内の第1のキャリアフィルム112及び第2のキャリアフィルム114における引張歪みは、フィルム112及び/又は114を伸長(すなわち延伸)させ得るが、キャリアフィルム112及び/又は114を破断させるのには十分でないものであってもよい。
【0021】
したがって、延伸破断繊維材料101’が延伸破断装置110を出るとき、延伸破断繊維材料101’は、連続する第1のキャリアフィルム112及び/又は連続する第2のキャリアフィルム114に接触し得る。いくつかの実施形態においては、延伸破断繊維材料101’は、連続する第1のキャリアフィルム112と連続する第2のキャリアフィルム114との間に挟持されてもよい。様々な実施形態において、キャリアフィルム112及び/又は114は、延伸破断繊維フィラメントの組織化及び整列を維持することに役立ち得るものであり、このことは、延伸破断繊維材料101’の改善された取り扱い及び輸送、並びに延伸破断繊維材料101’を用いて製造され得る完成部品の改善された特性を可能とし得る。第1のキャリアフィルム112及び第2のキャリアフィルム114はまた、繊維材料101と延伸破断装置110のローラー104、106との間に仕切りを提供し得るものであり、このことは、繊維がローラー104、106に付着する又は巻き付くことを防止し、また延伸破断装置110を屑から保護することに役立ち得る。これに加えて、ローラー104、106と研磨繊維材料との間の直接接触が低減又は排除され得るので、ローラー104、106における摩耗が著しく低減され得る。このことは、ダウンタイムを短縮し、延伸破断装置110の耐用年数を延長し、延伸破断繊維製造工程の全体的な確実性及び費用対効果を改善し得る。
【0022】
図2は、延伸破断繊維材料101’を製造するための代替のシステム200を概略的に示す。図2に示されるシステム200は、デュアルプラテン延伸破断装置210を含む。図1に示されるシステム100におけるように、繊維材料101が、デュアルプラテン延伸破断装置210内に供給され得る。システム200はまた、キャリアフィルム112、114を延伸破断装置210内に供給するように構成された、少なくとも1つの供給装置111、113を含んでもよい。図2の実施形態においては、第1の供給装置111は、第1のキャリアフィルム112が繊維材料101の第1の側面の表面115上に配置されるように、第1のキャリアフィルム112をデュアルプラテン延伸破断装置210内に供給し得る、第1のスプールを含んでもよい。第2の供給装置113は、第2のキャリアフィルム112が繊維材料101の第2の側面の表面116上に配置されるように、第2のキャリアフィルム114をデュアルプラテン延伸破断装置210内に供給し得る、第2のスプールを含んでもよい。図2に示される実施形態は、繊維材料101の2つの対向する側面115及び116に接触する一対のキャリアフィルム112及び114を示しているが、いくつかの実施形態においては、繊維材料101は、キャリアフィルム112又は114の片方にのみ接触され得ることは、理解されるであろう。
【0023】
繊維材料101及び少なくとも1つのキャリアフィルム112及び/又は114は、デュアルプラテン延伸破断装置210の一対のプラテンシステム201及び203を通って進行し得るものであり、プラテンシステム201及び203の各々は、矢印204の方向に沿って繊維材料101及びキャリアフィルム112、114に選択的に圧力を加え得るアクチュエーターシステム205に動作可能に結合されてもよい。第2のアクチュエーターシステム206は、矢印207の方向に沿ってプラテンシステム201及び203を互いに対して選択的に動かすように構成されてもよい。動作中、繊維材料101及び少なくとも1つのキャリアフィルム112及び/又は114が、矢印211の方向に沿ってデュアルプラテン延伸破断装置210を通して供給されるときに、プラテンシステム201及び203は、繊維材料101及びキャリアフィルム112、114の側面を選択的に把持してもよく、それと同時に、第2のアクチュエーターシステム206は、プラテンシステム201及び203を互いから離れるように矢印207の方向に沿って動かしてもよい。このことは、それぞれのプラテンシステム201及び203の間に配置された破断ゾーン117内で、繊維材料101及び少なくとも1つのキャリアフィルム112及び/又は114を伸長させ得る。破断ゾーン117内の繊維材料101における引張歪みは、繊維材料101のフィラメントの少なくとも一部をフィラメントの弱い箇所に沿って切断させ、それによってフィラメントの平均長さを短縮し延伸破断繊維材料101’を製造するのに十分なものであってもよい。しかしながら、破断ゾーン117内の第1のキャリアフィルム112及び第2のキャリアフィルム114における引張歪みは、少なくとも1つのキャリアフィルム112及び/又は114を伸長(すなわち延伸)させ得るが、キャリアフィルム112及び/又は114を破断させるのには十分でないものであってもよい。
【0024】
図3Aは、キャリアフィルム112上の延伸破断繊維材料101’の平面図であり、図3Bは、図3Aにおける線A-A’に沿った延伸破断繊維材料101’及びキャリアフィルム112の断面図である。延伸破断繊維材料101’は、図1を参照して前述されたような差動ローラーベースの延伸破断工程、又は図2を参照して前述されたようなデュアルプラテンベースの延伸破断工程等の、適切な工程を使用して製造され得る。例えば繊維フィラメントを切断するための破断バーの使用を含む、延伸破断繊維材料101’を製造するための他の適切な方法も、想定される開示の範囲内である。延伸破断繊維材料101’は、キャリアフィルム112上に支持されてもよく、このことは、第1の水平方向(hd1)に沿った延伸破断フィラメントの整列の維持に役立ち、延伸破断繊維材料101’の取り扱いの容易さを助長し得る。いくつかの実施形態においては、延伸破断繊維材料101’は、図3Cの断面図に示されるように、第1のキャリアフィルム112と第2のキャリアフィルム114との間に挟持されてもよい。
【0025】
様々な実施形態において、延伸破断繊維材料101’は、延伸破断繊維材料101’を製造するために用いる延伸破断工程中に、キャリアフィルム112上に配置されてもよいし、又は2つのキャリアフィルム112及び114の間に配置されてもよい。延伸破断工程は、第1の水平方向(hd1)に沿った1つ以上の位置において、繊維材料のフィラメントを切断して、フィラメントの平均長さを短縮してもよい。図1及び図2を参照して前述した通り、延伸破断工程は、延伸破断工程の後に、キャリアフィルム112、114が第1の水平方向(hd1)に沿って連続的に延伸されるように、キャリアフィルム112、114は延伸されるが破断はされないようにすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態においては、繊維の複数の束(「トウ」とも呼ばれ得る)は、図1に示されるような差動ローラー延伸破断装置110等の延伸破断装置によって同時に加工され得る。繊維材料101の複数のトウは、繊維材料101のトウの各々が、前述したように、少なくとも1つのキャリアフィルム112、114に接触しながら、延伸破断装置110を通って並んで進行してもよい。いくつかの実施形態においては、各トウは異なるキャリアフィルムに接触してもよいし、又は各トウはキャリアフィルムの異なる対の間に挟持されてもよい。代替としては、複数のトウは、同じキャリアフィルム112及び/又は114に接触してもよい。図3Dは、キャリアフィルム112上の延伸破断繊維材料101A’及び101B’の2つのトウを示す平面図である。繊維材料が、第1の水平方向(hd1)に沿って延伸破断装置110を通して供給されて、延伸破断繊維材料101A’及び101B’を製造するとき、延伸破断繊維材料101A及び101Bのトウの各々は、同じキャリアフィルム112に接触してもよい。延伸破断繊維材料101A及び101Bの個々のトウは、第2の水平方向(hd2)に沿って横方向に離隔されてもよい。いくつかの実施形態においては、追加的なキャリアフィルム(図3Dには示されていない)が、繊維材料101A及び101Bの上面における繊維材料101A及び101Bのそれぞれのトウに接触してもよい。
【0027】
本開示の様々な実施形態による延伸破断繊維材料101’は、炭素繊維材料であってもよいが、他の適切な繊維材料もまた、想定される開示の範囲内である。例えば、延伸破断繊維材料101’は、繊維ガラス、KEVLAR(登録商標)繊維材料のような有機繊維材料、セラミック繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、グラファイト繊維、並びに比較的高い強度及び剛性によって特徴付けられる他の繊維材料を含んでもよい。1つの実施形態においては、延伸破断繊維材料101’は、5Mpsi~120Mpsiのヤング率を有する繊維材料から構成されてもよい。
【0028】
本開示の様々な実施形態によるキャリアフィルム112、114は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)材料等のポリマー材料から構成されてもよいが、キャリアフィルム112、114のための他の適切な材料も、想定される開示の範囲内である。例えば、キャリアフィルム112、114は、ポリマー材料、ゴム材料、熱可塑性材料(例えばポリイミド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド等)、布地材料、織物材料、及び/又は紙ベースの材料のうちの1つ以上から構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、繊維材料に接触する少なくとも1つのキャリアフィルム112、114の表面は、キャリアフィルム112、114と繊維材料との間の接触を促進し、また延伸破断工程後に繊維材料の整列を維持することに役立ち得る、エポキシ樹脂等の接着材を含んでもよい。
【0029】
様々な実施形態において、キャリアフィルム112、114は、繊維材料101と比較して、破断する前に高い程度の伸縮性を有する材料から構成されてもよい。例えば、引張応力下の炭素繊維フィラメントは、典型的には、破断する前にその長さの約2%伸長(すなわち延伸)する。様々な実施形態において、繊維材料101に接触するキャリアフィルム112及び/又は114は、破断する前に、例えばその長さの15%~20%の間等、その長さの少なくとも10%を含む、その長さの少なくとも6%、引張応力下で伸長(すなわち延伸)し得る。
【0030】
いくつかの実施形態においては、キャリアフィルム112、114は、破断繊維材料101’を製造部品に成形することに先立って、延伸破断繊維材料101’から除去されてもよい。実施形態においては、延伸破断繊維材料101’から除去されるキャリアフィルム112、114は、リサイクル可能な材料から構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、キャリアフィルム112、114の全体は、任意に、追加的な延伸破断繊維材料101’を製造する後続の延伸破断工程において再利用されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態においては、第1のキャリアフィルム112及び/又は第2のキャリアフィルム114の少なくとも一方は、キャリアフィルム112、114に接触している延伸破断繊維材料101’が製造部品に成形される工程中、延伸破断繊維材料101’に接触したままであってもよい。例えば、キャリアフィルム112及び/又は114は、キャリアフィルム112、114の1つ以上の特性が、延伸破断繊維材料101’を用いて製造される最終製品部品に有益であり得る場合に、延伸破断繊維材料101’に接触したままであってもよい。1つの非限定的な例においては、熱可塑性材料又はマトリックスを含むキャリアフィルム112、114は、熱可塑性材料又はマトリックスが延伸破断繊維材料101’に染み込む又は含浸することを可能にしてもよい。いくつかの実施形態においては、染み込んだ又は含浸した熱可塑性材料は、より速い硬化及び/又はサイクル時間、及び完成製造部品に対する他の改善された特性を提供し得る。いくつかの実施形態においては、キャリアフィルム112、114は、延伸破断繊維が染み込んだキャリアフィルム材料を含むマトリックスを製造するために、キャリアフィルム112、114が加熱されたときに、キャリアフィルム112、114に接触する延伸破断繊維材料101’が、キャリアフィルム112、114内に沈み込むことを可能にする、エポキシ樹脂のような材料を含んでもよい。
【0032】
延伸破断炭素繊維(SBCF)等の延伸破断繊維材料101’は、様々な長さの繊維から構成されてもよい。延伸破断繊維材料101’の繊維長の差は、異なる性質及び特性を有する材料を提供し得る。延伸破断繊維材料の束又はトウ内の個々の繊維長の測定が行われてもよく、その結果の繊維長の分布が材料の特性を示し得る。図4は、前述したように、延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造された、一実施形態の延伸破断炭素繊維(SBCF)材料(MSU SB2)の繊維長プロファイル401と、延伸破断工程中に繊維材料に接触するキャリアフィルムを含まない従来技術を用いて製造された、延伸破断炭素繊維(SBCF)材料の3つの比較例(すなわちIM7 SB2、Hexcel Legacy、及びAlbany)の繊維長プロファイル402、403、404とのプロットである。図4から分かるように、実施形態のSBCF材料の繊維長プロファイル401は、比較例402、403及び404の平均繊維長(すなわち、それぞれ5.3cm、6.2cm及び4.8cm)と比較して、平均繊維長の著しい短縮(すなわち3.4cm)を示している。キャリアフィルムを用いて作られた実施形態のSBCF材料401はまた、比較例402、403及び404と比較して、非常にタイトな繊維長の分布を呈し、長繊維の減少を示している。6cmを超える長さを有する繊維等の、SBCF材料における長繊維の減少又は排除は、巨視的に成形可能な炭素繊維材料を提供に役立ち得る。
【0033】
様々な実施形態において、延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造されるSBCF材料は、4cm未満の平均繊維長を有し得る。いくつかの実施形態においては、延伸破断工程の間に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造されるSBCF材料は、4cm未満等の、5cm未満の中央値繊維長を有してもよい。いくつかの実施形態においては、実施形態のSBCF材料の繊維長の標準偏差は、0.95未満であってもよい。いくつかの実施形態においては、実施形態のSBCF材料の繊維のうちの0.01%未満が、6cmを超える繊維長を有していてもよい。いくつかの実施形態においては、実施形態のSBCF材料の繊維のうちの50%よりも多くが、1.0cm~3.5cmの繊維長を有していてもよい。いくつかの実施形態においては、実施形態のSBCF材料の繊維のうちの2%よりも多くが、2cm未満である繊維長を有していてもよい。いくつかの実施形態においては、実施形態のSBCF材料の繊維径は、5μm~15μmであってもよい。
【0034】
図5は、(A)延伸破断工程中に繊維材料に接触するキャリアフィルムを含まない従来技術を用いて製造された、SBCF材料の比較例、及び(B)前述のように延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造された、一実施形態のSBCF材料を含む、SBCF材料の顕微鏡写真である。右側の顕微鏡写真(B)は、顕微鏡写真(A)における比較例と比較して、繊維の整列の著しい改善を示している。様々な実施形態は、SBCF材料の各束又はトウにおいて、98%以上の繊維が2°以内に整列されている、乾燥繊維SBCF材料を含む。本明細書で使用される場合、「乾燥繊維」SBCF材料とは、樹脂材料を含まないか又は本質的に含まないSBCF材料である。本明細書で使用される場合、SBCF材料の「束」又は「トウ」とは、少なくとも10本の個々の炭素繊維フィラメントを含む、SBCF材料の撚られていない群である。いくつかの実施形態においては、SBCF材料のトウは、3000本のフィラメント(「3Kのトウ」)、6000本のフィラメント(「6Kのトウ」)、及び12000本のフィラメント(「12Kのトウ」)等の、偶数本の炭素繊維フィラメントを含んでもよい。
【0035】
本開示の追加的な実施形態は、プリプレグ延伸破断繊維材料を含む。プリプレグ延伸破断繊維は、樹脂系を予め含浸させた、SBCF材料等の延伸破断繊維材料を表す一般的な用語である。樹脂系は、エポキシ等の適切な樹脂を含んでもよく、また適切な硬化剤を含んでもよい。その結果、プリプレグ延伸破断繊維材料は、別の工程において樹脂材料の添加を必要とすることなく、部品の成形用金型内に載置する準備ができたものとなり得る。
【0036】
いくつかの実施形態においては、延伸破断工程中に繊維材料101に接触するキャリアフィルム112、114の表面は、エポキシ樹脂等の、延伸破断繊維を含浸させてプリプレグ延伸破断繊維材料を提供し得る樹脂材料を含んでもよい。代替的として又はこれに加えて、樹脂材料が延伸破断繊維に含浸してプリプレグ延伸破断繊維材料を提供し得るように、樹脂コーティングを含む紙シート等の、樹脂含有フィルム又はシートが、延伸破断工程後に繊維に接触してもよい。
【0037】
図6は、本開示の様々な実施形態による、プリプレグ延伸破断繊維材料を製造するために使用され得るシステム600の一実施形態を示す。図6のシステム600は、差動ローラー延伸破断装置610を含み、図1に係る前述したシステム100と類似している。したがって、同様の構成要素の繰り返しの説明は省略される。図6のシステム600は、延伸破断工程中にキャリアフィルム114がニップステーション105、107及び109を通って供給され、繊維材料101の一方の側面116に接触するが、延伸破断工程中に繊維材料101の反対の側面115にはキャリアフィルムが接触しない点で、図1のシステム100とは異なる。システム600はまた、樹脂含有シート601を延伸破断装置610内に供給するように構成された、供給装置603を含む。図6の実施形態においては、供給装置603は、樹脂含有シート601を延伸破断装置610の第3のニップステーション109内に供給し得るスプールを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、樹脂含有シート601は、ニップステーション107及び109の間に配置された破断ゾーン117の下流で第3のニップステーション109に入ってもよく、かくして、樹脂含有シート601は、延伸破断された後に繊維材料の側面115に接触してもよい。樹脂含有シート601の樹脂材料は、延伸破断繊維に含浸されて、プリプレグ延伸破断繊維材料101’を提供してもよい。いくつかの実施形態においては、樹脂含有シート601は、エポキシ樹脂材料でコーティングされた紙シートであってもよい。
【0038】
様々な実施形態において、繊維材料101に接触する樹脂含有シート601の表面は、粘着性又は接着性の特性を有していてもよい。このことは、延伸破断繊維材料にグリップする樹脂含有シート601の能力を補助し、延伸破断システム600の堅牢性及び信頼度を改善し得る。樹脂含有シートの粘着性の表面はまた、繊維が延伸破断されたほぼ直後に繊維を固定化することに役立ち、このことは、延伸破断繊維がその整列を維持することに役立ち得る。これに加えて、繊維が延伸破断された後、一貫した量のプリプレグ樹脂材料が繊維に適用され得る間に、繊維が依然として連続的であり、したがって取り扱いが容易であるとともに、トウの伸長及び繊維管理が実行され得るため、プリプレグ繊維材料の一貫した面積重量が保証され得る。このことは、業界標準の繊維取り扱い技術が採用され得ること、及び、任意の従来のプリプレグラインにおける場合と同様に、一貫した繊維織布が使用され得ることを意味する。さらに、プリプレグ延伸破断繊維材料101’を製造するコストは、他のSBCFプリプレグ材料と比較して削減することができ、必要とされるワークフロー及び機械が、大幅に簡略化され得る。
【0039】
延伸破断炭素繊維(SBCF)材料等の、本開示の様々な実施形態に係るキャリアフィルムを用いて製造される延伸破断繊維材料101’は、従来の延伸破断繊維材料と比較して改善された成形性を有し得る。図7は、前述したような、延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造された一実施形態のSBCF材料(MSU SBCF)の成形性を、延伸破断工程中に繊維材料に接触するキャリアフィルムを含まない従来の技術を用いて製造された比較例のSBCF材料(Hexcel SBCF)の成形性と比較して示すプロットである。様々な長さのサンプルが、繊維に張力を加えることによって試験され、その結果の成形力が測定された。試験は、約5.5μmまでの直径を有する約12000本の炭素繊維のトウを含むものであった。ゲージ長は、試験中に繊維トウが支持されたピンチポイント間の距離を表す。それぞれのSBCFトウの成形性は、様々なゲージ長でピンチポイント間に繊維の方向に垂直な負荷力を加えることによって試験された。平均最大負荷(「avg.max load」)は、繊維が伸長し始める前の繊維トウにおける平均ピーク負荷を表す(すなわち繊維における歪み>0.2%)。かくして、より小さいゲージ長での、より低い平均最大負荷は、SBCF材料がより成形可能であることを示す。図7に示されるように、実施形態のSBCF材料(SBCF MSU)の改善された繊維長プロファイルは、比較例のSBCF材料(SBCF Hexcel)と比較して、著しく低減された成形力を提供する。特に、実施形態のSBCF材料は、比較例のSBCF材料よりも非常に容易に複雑な形状に成形され得る。この成形性の著しい改善は、従来の連続繊維炭素か又は従来のSBCF材料のいずれかと比較して、炭素繊維部品の製造を非常に容易にし得る。様々な実施形態において、延伸破断工程中に炭素繊維材料に接触するキャリアフィルムを用いて製造されるSBCF材料は、1MPa以下である成形力を用いて成形可能であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態においては、延伸破断工程中に繊維材料に接触するキャリアフィルム112、114は、キャリアフィルム112、114を貫通する穿孔を含んでもよい。図8Aは、複数の穿孔801を含むキャリアフィルム112を示す平面図である。図8Bは、図8Aにおける線B-B’に沿った断面図である。図8Bに示されるように、穿孔801を含むキャリアフィルム112は、延伸破断繊維材料101’の上面に接触する。図8Bの実施形態においては、穿孔801を含む第2のキャリアフィルム114は、延伸破断繊維材料101’の下面に接触する。
【0041】
様々な実施形態において、繊維材料101を増強するため及び/又は繊維材料101を用いる工程を容易化するために、所望により材料が繊維材料101に到達することを可能とするよう、延伸破断工程に先立って又はその一環で、キャリアフィルム112及び/又は114が穿孔されてもよい。特に、キャリアフィルム112及び/又は114は、延伸破断工程に先立って又はその工程中に、繊維への望ましい増強材料の導入に対する仕切りとならないように、穿孔されていてもよい。図8Bにおける矢印603は、キャリアフィルム112における穿孔601を通して繊維材料101に導入される増強材料を概略的に示す。
【0042】
サイジングは、延伸破断繊維材料101の加工を増強するために使用され得る材料の1つのタイプである。サイジングは、取り扱い及び加工中に、また延伸破断繊維材料の後続する複合化及び合成加工中に、繊維フィラメントを保護するために、製造工程中に繊維の表面に塗布される、薄く均質なコーティングである。延伸破断繊維材料工程において使用されるサイジング材料は、布地サイジング剤と呼ばれる水溶性ポリマー、例えば変性デンプン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びアクリレート等の化学物質を含んでもよい。他の適切なサイジング材料も、想定される開示の範囲内である。キャリアフィルム112及び/又は114を貫通する穿孔601は、サイジング溶液が繊維材料101に到達することを可能とするように構成されてもよい。
【0043】
キャリアフィルム112及び/又は114における穿孔601は、キャリアフィルムへのサイジング材料の移送を可能にすることに限定されず、キャリアフィルム112及び/又は114を通して任意の所望の材料を通過させて繊維材料101に到達させるためにも使用され得る。かかる材料は、限定するものではないが、溶液、ガス、潤滑剤、蒸気、熱風又はその他の材料を含み、繊維材料101及び/又は後続の加工工程を増強するために所望に応じて繊維材料101に到達してもよい。例えば、延伸破断工程に先立って、サイジング剤が繊維に予め塗布されてもよく、溶剤又はその他の軟化剤が、キャリアフィルム112及び/又は114の穿孔601を通して移送されて、予め塗布されたサイジング剤を再構成及び活性化してもよい。適切な溶媒/軟化剤は、限定するものではないが、アルコール、その他の有機溶媒、水又は蒸気を含む。
【0044】
穿孔601は、所望の増強材料がキャリアフィルム112及び/又は114を通過して繊維材料101に到達することを可能にする、任意の所望のサイズ(例えばマイクロホール又はマクロホール)を有してもよい。例えば、キャリアフィルム112及び/又は114は、特定の増強材料(例えば蒸気)がキャリアフィルム112及び/又は114を通過することを可能とする一方で、他の材料を遮断し得る、GORETEX(商標)膜等の微小孔性材料から構成されてもよい。キャリアフィルム112及び/又は114における穿孔601は、増強材料の最適な導入のために望ましいいずれの手段によって作られてもよい。かかる穿孔の手段は、パンチングホール、レーザー焼き付け、ドリリング、成型、又はその他の穿孔の手段を含み得る。
【0045】
1つの実施形態においては、キャリアフィルム112及び/又は114が延伸破断工程を通過するときに、又は、キャリアフィルム112及び/又は114の製造中等の、延伸破断工程に先立って、キャリアフィルム112及び/又は114に穴を開けるために、外表面上にスパイクを含む自動ローラー(例えば「ポーキュパインローラー」)が使用されてもよい。キャリアフィルム材料中に形成される穿孔601のパターン及び/又はサイズは、延伸破断繊維加工を最適化するために、必要に応じて変更されてもよい。
【0046】
代替として、キャリアフィルム112及び/又は114は、サイジング又はその他の増強材料が繊維材料101に到達又は浸透することを可能にするために、望ましい最適な多孔質構造で製造されたポリマー又は他の材料から作られてもよい。例えば、フィルターを作る際に使用されるタイプの焼結ポリエチレン技術が使用して、多孔質キャリアフィルム112及び/又は114を提供することができる。
【0047】
穿孔601を含むキャリアフィルム112及び/又は114は、(1)布に織り込む又は縫い込むのに適した乾燥材料形態、(2)織布又は一方向テープの形をとる乾燥材料、又は(3)プリプレグ延伸破断繊維材料101の製造に適した延伸破断繊維材料101を製造するために使用されてもよい。
【0048】
図9は、本開示の様々な実施形態による延伸破断繊維材料を製造するために使用され得る、別の実施形態のシステム900を示す。図9のシステム900は、差動ローラー延伸破断装置910を含み、図1を参照して前述したシステム100と類似している。したがって、同様の構成要素の繰り返しの議論は省略される。図6のシステム900は、硬化シート901が破断ゾーン117の下流で延伸破断装置900に供給される点で、図1のシステム100とは異なる。システム900は、硬化シート901を延伸破断装置910内に供給するように構成された供給装置903を含んでもよい。図9の実施形態においては、供給装置903は、硬化シート901を延伸破断装置910の第3のニップステーション109内に供給し得るスプールを含んでもよい。硬化シート901は、第1のキャリアフィルム112及び第2のキャリアフィルム114よりも高い剛性を有していてもよい。実施形態においては、硬化シート901は、第1のキャリアフィルム112が硬化シート901と延伸破断繊維材料101’との間に配置されるように、第1のキャリアフィルム112に接触してもよい。
【0049】
延伸破断工程中にキャリアフィルム112及び114が繊維材料101の2つの側面115及び116上に配置される様々な実施形態においては、延伸破断装置910を出るときのキャリアフィルム112及び114における張力の解放が、キャリアフィルム112及び114を反跳させ得る。キャリアフィルム112及び114のこの反跳は、それぞれのキャリアフィルム112及び114の間の延伸破断繊維材料101’において波状パターンの形成を引き起こし得る。延伸破断繊維材料101’におけるこの波状パターンは、延伸破断繊維材料101’の整列及び組織化を低下させ得る。したがって、キャリアフィルム112及び114が延伸破断装置901から出ることに先立って、キャリアフィルム112の一方に接触する硬化シート901を提供することによって、キャリアフィルム112、114の反跳及びその結果の延伸破断繊維材料101’における波状パターンの形成が、低減又は排除され得る。いくつかの実施形態においては、硬化シート901は、ばね鋼材料等の金属材料から構成されてもよい。硬化シート901のための他の適切な材料も、想定される開示の範囲内である。いくつかの実施形態においては、硬化シート901は、再利用可能な構成要素であってもよい。キャリアフィルム112及び114並びに延伸破断繊維材料101’は、硬化シート901から除去されてもよく、硬化シート901は、延伸破断システム900において反跳され再び使用されてもよい。
【0050】
図10は、本開示の様々な実施形態による延伸破断繊維材料101’の製造方法1000を示すフロー図である。図10を参照すると、方法1000のステップ1001において、複数のフィラメント及びキャリアフィルム112、114を含む繊維材料101は、キャリアフィルム112、114が繊維材料101に接触するように、延伸破断装置(110、210、610、910)内に供給され得る。方法100のステップ1003において、キャリアフィルム112、114が繊維材料101に接触している間に、繊維材料101の複数のフィラメントの少なくとも一部が、延伸破断装置(110、210、610、910)を用いて破断されて、連続キャリアフィルム112、114に接触する延伸破断繊維材料101’を製造する。
【0051】
以上は、特定の実施形態に言及しているが、本開示はそのように限定されるものではないことは理解されるであろう。当業者であれば、開示された実施形態に対して様々な変更がなされ得ること、及びかかる変更は本開示の範囲内であることが意図されていることを認識するであろう。互いの代替例ではない全ての実施形態間で、互換性が推定される。単語「含む(comprise)」又は「含む(include)」は、明示的に別段の記載がない限り、単語「から本質的になる(consist essentially of)」又は単語「からなる(consists of)」が単語「含む(comprise)」又は「含む(include)」に置き換わる全ての実施形態を想定するものである。特定の構造及び/又は構成を使用する実施形態が本開示に例示されている場合、かかる置換が明示的に禁止されていないか又はそうでなければ当業者にとって不可能であることが知られていない限り、機能的に等価である任意の他の互換性のある構造及び/又は構成で本開示が実施され得ることは理解されよう。本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、その全体が参照により本明細書に援用されることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に援用されるものとする。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
【国際調査報告】