(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】人工免疫細胞を製造するベクターフリーのプロセス
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230913BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230913BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230913BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230913BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230913BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230913BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230913BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230913BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/09 100
A61K35/17
A61P35/00
A61K47/68
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513386
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021047710
(87)【国際公開番号】W WO2022047003
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523046969
【氏名又は名称】トュミュニティ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TMUNITY THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ベドヤ、 フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、 ゾエ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA03
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、ある実施形態において、人工免疫細胞を製造するベクターフリー方法である。ある実施形態では、また、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法及びプロセスから得られる人工免疫細胞を含む組成物である。 追加の実施形態では、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法及びプロセスから得られる人工免疫細胞を使用する、疾患を治療する方法及びキットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾非刺激免疫細胞集団を調製するベクターフリーの方法であって、
(a)トランスフェクション法により、生物学的サンプルから得られた非刺激免疫細胞集団に、(i)遺伝子編集ヌクレアーゼ、(ii)ガイドRNA、及び(iii)抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートを送達する工程、及び、
(b)前記集団を非膨張条件下で約72時間又はそれ以下培養する工程、
を含み、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAは、複合体を形成し、少なくとも1つの非刺激免疫細胞内の標的部位に二本鎖切断を生成し、及び
前記HDRテンプレートは、前記標的部位でのHDRを促進し、前記集団内に少なくとも1つの修飾非刺激免疫細胞を生成する、
方法。
【請求項2】
修飾非刺激免疫細胞集団を調製するベクターフリーの方法であって、
(a)生物学的サンプルから非刺激性免疫細胞の濃縮集団を得る工程、
(b)トランスフェクション法により、(i)遺伝子編集ヌクレアーゼ、(ii)ガイドRNA及び(iii)抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートを、前記濃縮集団に送達する工程、及び、
(c)前記集団を非膨張条件下で培養する工程、を含み、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAは、複合体を形成し、前記集団内の複数の非刺激免疫細胞内の標的部位に二本鎖切断を生成し、及び、
前記HDRテンプレートは、前記標的部位でのHDRを促進し、前記集団内に複数の修飾非刺激免疫細胞を生成し、及び
前記集団内の約10%又はそれ以上の前記非刺激免疫細胞が修飾されている、
方法。
【請求項3】
修飾非刺激免疫細胞集団を生成するベクターフリーの方法であって、
(a)以下により、非刺激免疫細胞集団の約10%又はそれ以上において相同性指向性修復(HDR)を誘導する工程:
(i)前記非刺激免疫細胞集団を、遺伝子編集ヌクレアーゼ及び抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートと接触させる工程、及び、
(ii)トランスフェクション法により、前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記HDRテンプレートを前記非刺激免疫細胞内に送達する工程、及び、
(b)非膨張条件下で前記非刺激免疫細胞を約72時間又はそれ以下培養し、それにより前記修飾非刺激免疫細胞集団を生成する工程、
を含む、方法。
【請求項4】
(a)前記非刺激免疫細胞集団をガイドRNAと接触させ、トランスフェクション法により該ガイドRNAを該非刺激免疫細胞に送達する工程、及び、任意に
(b)前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び任意に前記ガイドRNAが、1つ又は複数の非刺激免疫細胞のゲノム内の標的部位に二本鎖切断を発生させる工程、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記HDRテンプレートが、前記非刺激免疫細胞集団の約10%又はそれ以上において、標的部位でのHDRを促進する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記非刺激免疫細胞集団が、
(a)生物学的サンプルから得られ、及び/又は、
(b)CD4
+T細胞、CD8
+T細胞又はそれらの組み合わせの濃縮集団を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記非刺激免疫細胞集団が、約500万細胞、1000万細胞、2000万細胞、5000万細胞、1億細胞、5億細胞、10億細胞、20億細胞、30億細胞、40億細胞、50億細胞又はそれ以上を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記トランスフェクション法が、
(a)約10%から約99%の、約12%から約99%の、約13%から約99%の、約15%から約99%の、約20%から約99%の、約30%から約99%の、約40%から約99%の、約50%から約99%の、約60%から約99%の、約70%から約99%の、約10%から約80%の、約12%から約80%の、約13%から約80%の、約15%から約80%の、約20%から約80%の、約30%から約80%の、約40%から約80%の、約50%から約80%の、約20%から約70%の又は約30%から約60%の、効率を提供する、及び/又は、(b)約10%、12%、13%、15%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%の効率を提供する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法であって、
【請求項9】
前記方法が、
(a)約10%から約99%の、約12%から約99%の、約13%から約99%の、約15%から約99%の、約20%から約99%の、30%から約99%の、約40%から約99%の、約50%から約99%の、約60%から約99%の、約70%から約99%の、約10%から約80%の、約12%から約80%の、約13%から約80%の、約15%から約80%の、約20%から約80%の、約30%から約80%の、約40%から約80%の、約50%から約80%の、約20%から約70%の又は約30%から約60%の、及び/又は、
(b)約10%、約12%、約13%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又は約99%の、細胞生存率を提供する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(a)約1pMから約10mMの前記HDRテンプレートが、前記非刺激免疫細胞内に送達される、及び/又は、
(b)約1pMから約10mMの前記遺伝子編集ヌクレアーゼが、前記非刺激免疫細胞内に送達される、及び/又は、
(c)約1pMから約10mMの前記ガイドRNAが、非刺激免疫細胞内に送達される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記ガイドRNAに対する前記遺伝子編集ヌクレアーゼの比は、約10:1、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5又は約1:10であり、及び/又は、
(b)前記遺伝子編集ヌクレアーゼと前記ガイドRNAとの間に形成される複合体に対する前記HDRテンプレートの比は、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2又は約1:5、及び/又は、
(c)前記遺伝子編集ヌクレアーゼに対する前記HDRテンプレートの比は、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2又は約1:5である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複合体は、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記非刺激免疫細胞の集団が、
(a)非刺激T細胞、非刺激ナチュラルキラー(NK)細胞、非刺激ナチュラルキラーT(NKT)細胞又はこれらの組み合わせを含む、及び/又は、
(b)CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
+/CD8
+T細胞又はそれらの組み合わせを含む、非刺激T細胞を含む、及び/又は、
(c)CD4
+T細胞、CD8
+T細胞又はそれらの組み合わせの濃縮集団を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記濃縮集団が、約90%、約95%、約99%又は約100%の、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞又はそれらの組み合わせを含む、請求項2又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記非刺激免疫細胞の集団を生成する前に、複数のCD4及び/又はCD8標識マイクロビーズ、任意で磁化マイクロビーズと共に生物学的サンプルをインキュベートする工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップがさらに、
(a)アルブミン、任意にヒト血清アルブミン(HSA)を含む溶液と前記生物学的サンプルをインキュベートする工程、及び/又は、
(b)前記集団中の前記非刺激細胞を濃縮する細胞選択工程、及び/又は、
(c)前記濃縮非刺激細胞を、最小培地、HSA、サイトカイン、サプリメント又はそれらの組み合わせ、を含む細胞培地中でインキュベートする工程、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記修飾非刺激免疫細胞が、
(a)約48時間又はそれ以下、約36時間又はそれ以下、約24時間又はそれ以下、又は約18時間又はそれ以下の間、非膨張条件下で培養される、及び/又は、
(b)約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、又は約72時間、非膨張条件下で培養される、及び/又は、
(c)さらに凍結保存液に再懸濁され、凍結保存される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記トランスフェクション法が
(a)電気穿孔法、又は、
(b)セルスクイーズ法、
を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗原結合ポリペプチドが、
(a)抗原結合ドメインを含む、
(b)キメラ抗原受容体(CAR)を含む、
(c)細胞表面受容体リガンドを含む、又は、
(d)T細胞受容体(TCR)を含む、及び/又は、
(e)腫瘍抗原に結合する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記抗原結合ドメインが、全長抗体又はその抗原結合フラグメント、Fab、F(ab)
2、単一特異性Fab
2、二重特異性Fab
2、三重特異性Fab
2、単鎖可変フラグメント(scFv)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、ミニボディ(minibody)、V-NAR又はVhHを含む、及び/又は、
(b)前記CARが、前記抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含み、任意選択で、該CARがヒンジ領域を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)前記膜貫通ドメインは、人工疎水性配列、I型膜貫通タンパク質の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ、ベータ若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、CD154及びキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインから選択される、及び/又は、
(b)前記細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む、及び/又は、
(c)前記細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリーのタンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)から得られる細胞内ドメイン又はそれらの変異体、からなる群から選択されるタンパク質の共刺激ドメインを1つ又はそれ以上を含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)前記共刺激ドメインは、4-1BB(CD137)共刺激ドメインを含み、及び/又は
(b)前記細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)の細胞質シグナル伝達ドメイン、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞質受容体、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66d、又はそれらの変異体、及び/又は、
(c)前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BB共刺激ドメインとヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)細胞質シグナル伝達ドメインを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞質シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍抗原が、
(a)血液学的悪性腫瘍に関連する、及び/又は、
(b)CD19、CD20、CD22及びCD33/IL3Raから選択される、及び/又は、
(c)固形腫瘍に関連する、及び/又は、
(d)ROR1、メソセリン、c-Met、PSMA、PSCA、葉酸受容体アルファ、葉酸受容体ベータ、EGFRvIII、GPC2、TnMUC1、GDNFファミリー受容体アルファ-4(GFRa4)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びIL13Ra2から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記TCRは、
(a)TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含む、及び/又は、
(b)野生型TCR、高親和性TCR及びキメラTCRから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記HDRテンプレートが、
(a)前記ポリヌクレオチドの上流に5’相同性アームをさらに含む、及び/又は、
(b)前記ポリヌクレオチドの下流に3’相同性アームをさらに含む、及び/又は
(c)二本鎖DNAテンプレートである、及び/又は
(d)二本鎖DNAテンプレートであり、前記HDRテンプレートは、約2キロ塩基対(kb)から約5kb、約2.3kbから約5kb、約3kbから約5kb、約3kbから約4kb、約2kbから約4kb、約2.3kbから約4kb、約2kbから約3kb、約2.3kbから約3kb又は約4kbから約5kbまでの長さを有する、及び/又は、
(e)電気穿孔法により送達される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記5’相同性アームは、
(a)前記ポリヌクレオチドに隣接している、及び/又は、
(b)標的部位のゲノム領域5’と相同である、及び/又は、
(c)約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50から約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さである、及び/又は、
(d)約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500の長さのヌクレオチドである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記3’相同性アームは、
(a)前記ポリヌクレオチドに隣接している、及び/又は、
(b)標的部位のゲノム領域3’と相同である、及び/又は、
(c)約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50から約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さである、及び/又は、
(d)約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500の長さのヌクレオチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的部位が、TRAC遺伝子座、及び任意でTRAC遺伝子座のエクソン1である、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝子編集ヌクレアーゼは、
(a)Casヌクレアーゼ、及び/又は、
(b)ジンクフィンガーヌクレアーゼ、及び/又は、
(c)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記Casヌクレアーゼは、
(a)Cas9、任意でSpCas9又はSaCas9であり、及び/又は、
(b)及び前記ガイドRNAは、非刺激免疫細胞に送達する前に複合体に集合する、及び/又は、
(c)及び前記ガイドRNAは、非刺激免疫細胞に送達された後、複合体に集合する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記非刺激免疫細胞に、1つ又は複数の追加のガイドRNAを送達する工程をさらに含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記生物学的サンプルが、
(a)血液サンプルである、及び/又は、
(b)血液サンプルであり、該血液サンプルは、全血サンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル又はアフェレシスサンプルである、及び/又は、
(c)血液サンプルであり、該血液サンプルは、凍結保存されるアフェレシスサンプルである、及び/又は、
(d)血液サンプルであり、該血液サンプルは、フレッシュであるアフェレシスサンプルである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
(a)前記修飾非刺激免疫細胞を刺激して、修飾刺激免疫細胞集団を生成する工程、及び、任意に、
(b)前記修飾刺激免疫細胞集団を拡大する工程を、さらに含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記修飾刺激免疫細胞集団を、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日又はそれ以上、拡大条件下で培養する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、マクロファージ、単球、B細胞、造血幹細胞又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
請求項1~33のいずれか1項に記載の方法によって生成された、修飾非刺激免疫細胞集団。
【請求項38】
請求項1~36のいずれか1項に記載の方法により生成された、修飾刺激免疫細胞集団。
【請求項39】
請求項1~33のいずれか1項に記載の方法により生成された修飾非刺激免疫細胞集団又は請求項1~36のいずれか1項に記載の方法により生成された修飾刺激免疫細胞集団を含み、任意に、薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
【請求項40】
請求項1~38のいずれか1項に記載の方法又は請求項39に記載の組成物によって、前記修飾非刺激免疫細胞集団を前記対象に投与する又は前記修飾刺激免疫細胞集団を前記対象に投与することを含む、それを必要とする対象における疾患を治療する方法。
【請求項41】
前記対象が癌を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が固形腫瘍である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が血液学的悪性腫瘍である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗原結合ドメインが、前記癌によって発現される抗原に特異的である、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記生物学的サンプルが対象に対して自己のものである、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記生物学的サンプルが対象に対して同種異系である、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象がヒトである、請求項40~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項37に記載の修飾非刺激免疫細胞集団又は請求項38に記載の修飾刺激免疫細胞集団を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
・関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月27日に出願された米国仮出願第63/071,236号の優先権利益を主張するPCT出願であり、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CARs)又は外因性T細胞受容体(TCRs)を発現するように操作されたT細胞を用いた新規治療により、いくつかのタイプの癌、主に血液悪性腫瘍(hematologic malignancies)に対する有望な免疫療法が得られている。
【0003】
キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)T細胞は、特定の腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen)を認識し、その後腫瘍細胞を殺すように遺伝的に修飾されたエフェクター免疫細胞である。
これらの細胞の製造には、一般に、T細胞の刺激、次いで、CAR又はTCRをコードする核酸を発現させるためにレンチウイルスベクター等のウイルスベクターを用いた細胞の形質導入(transduction)が含まれる。レンチウイルスベクター形質導入等の現在のベクター形質導入の1つの限界は、初代T細胞等の静止細胞に効率的に遺伝子導入を行うことができないことである。これまでの研究で、T細胞の刺激と拡張により、より分化したT細胞の表現型が得られることが示されている。
未分化又は非刺激のT細胞集団は、持続性が高く、高い効果をもたらすが、トランスフェクション(transfection)効率は低い。さらに、レンチウイルスベクターを用いた養子治療(adoptive therapies)用のT細胞の製造には、細胞を採取して投与用に調合するまでに最大で10~12日間を要する。
【0004】
従って、未分化表現型を保持し、製造時間を減少させながら、外因性免疫受容体をコードする核酸を用いたT細胞形質導入の改良された方法に対する必要性が存在する。
本発明は、これらの必要性に対処する方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
ある実施形態において、本明細書において開示されるのは、人工(engineered)免疫細胞を製造するベクターフリー(vector-free)方法及びプロセスである。
いくつかの実施形態において、また、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法及びプロセスから得られた人工免疫細胞を含む組成物である。
追加の実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法及びプロセスから得られる人工免疫細胞を用いた疾患を治療する方法及びキットである。
【0006】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、
修飾非刺激免疫細胞集団(modified unstimulated immune cells)を調製するベクターフリーの方法であって、
(a)トランスフェクション法により、生物学的サンプルから得られた非刺激免疫細胞集団に、(i)遺伝子編集ヌクレアーゼ、(ii)ガイドRNA、及び(iii)抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(homology-directed repair)(HDR)テンプレートを送達する工程、及び、
(b)前記集団を非膨張(non-expansion)条件下で約72時間又はそれ以下培養する工程、
を含み、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAは、複合体(complex)を形成し、少なくとも1つの非刺激免疫細胞内の標的部位(target site)に二本鎖切断(double-stranded break)を生成し(generate)及び
前記HDRテンプレートは、前記標的部位でのHDRを促進し、前記集団内に少なくとも1つの修飾非刺激免疫細胞を生成する、
方法、である。
【0007】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、
修飾非刺激免疫細胞集団を調製するベクターフリーの方法であって、
(a)生物学的サンプルから非刺激性免疫細胞の濃縮集団を得る工程、
(b)トランスフェクション法により、(i)遺伝子編集ヌクレアーゼ、(ii)ガイドRNA及び(iii)抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートを、前記濃縮集団に送達する工程、及び、
(c)前記集団を非膨張条件下で培養する工程、を含み、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAは、複合体を形成し、前記集団内の複数の非刺激免疫細胞内の標的部位に二本鎖切断を生成し、
前記HDRテンプレートは、前記標的部位でのHDRを促進し、前記集団内に複数の(a plurality of)修飾非刺激免疫細胞を生成し、及び
前記集団内の約10%又はそれ以上の前記非刺激免疫細胞が修飾されている、
方法、である。
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、
修飾非刺激免疫細胞集団を生成するベクターフリーの方法であって、
(a)以下により、非刺激免疫細胞集団の約10%又はそれ以上において相同性指向性修復(HDR)を誘導する工程:
(i)前記非刺激免疫細胞集団を、遺伝子編集ヌクレアーゼ及び抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートと接触させる工程、及び、
(ii)トランスフェクション法により、前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記HDRテンプレートを前記非刺激免疫細胞内に送達する工程、及び、
(b)非膨張条件下で前記非刺激免疫細胞を約72時間又はそれ以下培養し、それにより前記修飾非刺激免疫細胞集団を生成する工程、
を含む、方法。
いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)前記非刺激免疫細胞集団をガイドRNAと接触させ、トランスフェクション法により該ガイドRNAを該非刺激免疫細胞に送達する工程、及び、任意に、
(b)前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び任意に前記ガイドRNAが、1つ又は複数の非刺激免疫細胞のゲノム内の標的部位に二本鎖切断を発生させる工程、
をさらに含み得る。
さらに他の実施形態では、これらの方法において、前記HDRテンプレートは、前記非刺激免疫細胞集団の約10%又はそれ以上において、前記標的部位でのHDRを促進する。
さらに、前記非刺激免疫細胞集団は、生物学的サンプルから得られる、及び/又は、CD4+T細胞、CD8+T細胞又はそれらの組み合わせの濃縮集団を含み得る。
いくつかの態様において、前記免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、マクロファージ、単球(monocytes)、B細胞、造血幹細胞、又はこれらの組み合わせ、を含む。
いくつかの態様において、前記免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、マクロファージ、単球、B細胞、造血幹細胞、又はそれらの組合せ、からなる。
【0009】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記非刺激免疫細胞集団は、例えば、約500万細胞、1000万細胞、2000万細胞、5000万細胞、1億細胞、5億細胞、10億細胞、20億細胞、30億細胞、40億細胞、50億細胞又はそれ以上を含み得る。
【0010】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記トランスフェクション法は、
(a)約10%から約99%の、約12%から約99%の、約13%から約99%の、約15%から約99%の、約20%から約99%の、約30%から約99%の、約40%から約99%の、約50%から約99%の、約60%から約99%の、約70%から約99%の、約10%から約80%の、約12%から約80%の、約13%から約80%の、約15%から約80%の、約20%から約80%の、約30%から約80%の、約40%から約80%の、約50%から約80%の、約20%から約70%の又は約30%から約60%の、効率を提供し得る、及び/又は、
(b)約10%、12%、13%、15%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%の効率を提供し得る。
【0011】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの態様において、
前記方法は、
(a)約10%から約99%の、約12%から約99%の、約13%から約99%の、約15%から約99%の、約20%から約99%の、30%から約99%の、約40%から約99%の、約50%から約99%の、約60%から約99%の、約70%から約99%の、約10%から約80%の、約12%から約80%の、約13%から約80%の、約15%から約80%の、約20%から約80%の、約30%から約80%の、約40%から約80%の、約50%から約80%の、約20%から約70%の又は約30%から約60%の、及び/又は、
(b)約10%、約12%、約13%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又は約99%の、細胞生存率(cell viability)を提供し得る。
【0012】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
(a)約1pMから約10mMの前記HDRテンプレートが、前記非刺激免疫細胞内に送達される、及び/又は、
(b)約1pMから約10mMの前記遺伝子編集ヌクレアーゼが、前記非刺激免疫細胞内に送達される、及び/又は、
(c)約1pMから約10mMの前記ガイドRNAが、非刺激免疫細胞内に送達される。
【0013】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
(a)前記ガイドRNAに対する前記遺伝子編集ヌクレアーゼの比は、約10:1、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5又は約1:10であり、及び/又は、
(b)前記遺伝子編集ヌクレアーゼと前記ガイドRNAとの間に形成される複合体に対する前記HDRテンプレートの比は、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2又は約1:5、及び/又は、
(c)前記遺伝子編集ヌクレアーゼに対する前記HDRテンプレートの比は、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2又は約1:5である。
【0014】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、前記複合体は、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体である。
【0015】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記非刺激免疫細胞集団は、
(a)非刺激T細胞、非刺激ナチュラルキラー(NK)細胞、非刺激ナチュラルキラーT(NKT)細胞又はこれらの組み合わせを含む、及び/又は、
(b)CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4+/CD8+T細胞又はそれらの組み合わせを含む、非刺激T細胞を含む、及び/又は、
(c)CD4+T細胞、CD8+T細胞又はそれらの組み合わせの濃縮集団を含む。
【0016】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記濃縮集団が、約90%、約95%、約99%又は約100%の、CD4+T細胞、CD8+T細胞又はそれらの組み合わせを含む。
【0017】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記方法は、前記非刺激免疫細胞の集団を生成する前に、複数のCD4及び/又はCD8標識マイクロビーズ、任意で磁化マイクロビーズと共に生物学的サンプルをインキュベートする工程をさらに含む。
別の態様において、
前記ステップがさらに、
(a)アルブミン、任意にヒト血清アルブミン(HSA)を含む溶液と前記生物学的サンプルをインキュベートする工程、及び/又は、
(b)前記集団中の前記非刺激細胞を濃縮する細胞選択工程(cell selection process)、及び/又は、
(c)前記濃縮非刺激細胞を、最小培地(minimum media)、HSA、サイトカイン、サプリメント又はそれらの組み合わせ、を含む細胞培地中でインキュベートする工程、
を含む。
【0018】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記修飾非刺激免疫細胞が、
(a)約48時間若しくはそれ以下、約36時間若しくはそれ以下、約24時間若しくはそれ以下又は約18時間若しくはそれ以下の間、非膨張条件下で培養される、及び/又は、
(b)約18時間、約24時間、約36時間、約48時間又は約72時間、非膨張条件下で培養される、及び/又は、
(c)さらに凍結保存液に再懸濁され、凍結保存される。
【0019】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記トランスフェクション法は
電気穿孔法(electroporation)、又は、
セルスクイーズ法(cell squeezing method)、
を含む。
【0020】
本明細書に記載の方法のすべてに関するいくつかの実施形態において、
前記抗原結合ポリペプチドは、
(a)抗原結合ドメインを含む、
(b)キメラ抗原受容体(CAR)を含む、
(c)細胞表面受容体リガンドを含む、又は、
(d)T細胞受容体(TCR)を含む、及び/又は、
(e)腫瘍抗原に結合する。
別の態様において、
(a)前記抗原結合ドメインは、全長(full length)抗体又はその抗原結合フラグメント、Fab、F(ab)2、単一特異性(monospecific)Fab2、二重特異性(bispecific)Fab2、三重特異性(trispecific)Fab2、単鎖可変フラグメント(scFv)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、ミニボディ(minibody)、V-NAR又はVhHを含む、及び/又は、
(b)前記CARが、前記抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含み、任意選択で、該CARがヒンジ領域(hinge region)を含む。
さらなる態様において、
(a)前記膜貫通ドメインは、人工疎水性配列(artificial hydrophobic sequence)、I型膜貫通(transmembrane)タンパク質の膜貫通ドメイン、T細胞受容体のアルファ、ベータ若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、CD154及びキラー免疫グロブリン様受容体(killer immunoglobulin-like receptor)(KIR)に由来する膜貫通ドメインから選択される、及び/又は、
(b)前記細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達(costimulatory signaling)ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む、及び/又は、
(c)前記細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリーのタンパク質(proteins in the TNFR superfamily)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)から得られる細胞内ドメイン又はそれらの変異体、からなる群から選択されるタンパク質の共刺激ドメインを1つ又はそれ以上を含む。
さらに別の態様において
(a)前記共刺激ドメインは、4-1BB(CD137)共刺激ドメインを含み、及び/又は
(b)前記細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)の細胞質シグナル伝達ドメイン、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部(cytoplasmic tail)、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)(ITAM)を有する細胞質受容体、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66d、又はそれらの変異体、及び/又は、
(c)前記細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BB共刺激ドメインとヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
さらに別の態様において、前記細胞質シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)を含む。
【0021】
抗原結合ポリペプチドが腫瘍抗原に結合する方法において、
前記腫瘍抗原が、
(a)血液学的悪性腫瘍に関連し得る、及び/又は、
(b)CD19、CD20、CD22及びCD33/IL3Raから選択され得る、及び/又は、
(c)固形腫瘍に関連し得る、及び/又は、
(d)ROR1、メソセリン、c-Met、PSMA、PSCA、葉酸受容体アルファ、葉酸受容体ベータ、EGFRvIII、GPC2、TnMUC1、GDNFファミリー受容体アルファ-4(GFRa4)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びIL13Ra2から選択され得る。
【0022】
前記抗原結合ポリペプチドがT細胞受容体(TCR)を含んでいる方法において、
前記TCRは、
TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含み得る、及び/又は、
野生型TCR、高親和性TCR及びキメラTCRから選択される。
【0023】
本明細書に記載された方法のすべてについて、いくつかの実施形態では、
前記HDRテンプレートが、
(a)前記ポリヌクレオチドの上流に5’相同性アームをさらに含むことができる、及び/又は、
(b)前記ポリヌクレオチドの下流に3’相同性アームをさらに含むことができる、及び/又は、
(c)二本鎖DNAテンプレートであり得る、及び/又は
(d)二本鎖DNAテンプレートであり得、前記HDRテンプレートは、約2キロ塩基対(kb)から約5kb、約2.3kbから約5kb、約3kbから約5kb、約3kbから約4kb、約2kbから約4kb、約2.3kbから約4kb、約2kbから約3kb、約2.3kbから約3kb又は約4kbから約5kbまでの長さを有する、及び/又は、
(e)電気穿孔法により送達され得る。
別の態様において、
前記5’相同性アームは、
(a)前記ポリヌクレオチドに隣接することができ、及び/又は、
(b)前記標的部位のゲノム領域5’と相同であり得、及び/又は、
(c)約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50から約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さであり得、及び/又は、
(d)約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500の長さのヌクレオチドであり得る。
さらに別の態様において、
前記3’相同性アームは、
(a)前記ポリヌクレオチドに隣接することができ、及び/又は、
(b)前記標的部位のゲノム領域3’と相同であり得、及び/又は、
(c)約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50から約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さであり得、及び/又は、
(d)約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450又は約500の長さのヌクレオチドであり得る。
【0024】
本明細書に記載された方法のすべてについて、いくつかの実施形態では、前記標的部位が、TRAC遺伝子座、及び任意でTRAC遺伝子座のエクソン1である。
【0025】
本明細書に記載された方法のすべてについて、いくつかの実施形態では、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼは、
(a)Casヌクレアーゼ、及び/又は、
(b)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease)、及び/又は、
(c)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease)(TALEN)、を含む。
別の態様において、
前記Casヌクレアーゼは、
(a)Cas9、任意でSpCas9又はSaCas9であり、及び/又は、
(b)及び前記ガイドRNAは、非刺激免疫細胞に送達する前に複合体に集合する、及び/又は、
(c)前記ガイドRNAは、非刺激免疫細胞に送達された後、複合体に集合する。
【0026】
本明細書に記載された方法のすべてについて、いくつかの実施形態では、
前記方法は、前記非刺激免疫細胞に、1つ又は複数の追加のガイドRNAを送達する工程をさらに含む。
【0027】
本明細書に記載された方法のすべてについて、いくつかの実施形態では、
前記生物学的サンプルは、
(a)血液サンプルである、及び/又は、
(b)血液サンプルであり、該血液サンプルは、全血(whole blood)サンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル又はアフェレシス(apheresis)サンプルである、及び/又は、
(c)血液サンプルであり、該血液サンプルは、凍結保存されるアフェレシスサンプルである、及び/又は、
(d)血液サンプルであり、該血液サンプルは、フレッシュ(fresh)であるアフェレシスサンプルである。
【0028】
本明細書に記載された方法のすべてについて、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記修飾非刺激免疫細胞を刺激して、修飾刺激免疫細胞集団を生成する工程、及び、任意に、前記修飾刺激免疫細胞集団を拡大する工程を、さらに含む。
別の態様において、
前記修飾刺激免疫細胞集団は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日又はそれ以上、拡大条件下で培養され得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法によって生成された修飾非刺激免疫細胞集団である。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法によって生成された修飾刺激免疫細胞集団である。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法によって生成された修飾非刺激免疫細胞集団又は本明細書に記載の方法によって生成された修飾刺激免疫細胞集団を含み、任意に、薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物である。
【0032】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、それを必要とする対象における疾患を治療する方法であって、本明細書に記載の方法によって生成された修飾非刺激免疫細胞集団を対象に投与すること若しくは本明細書に記載の方法によって生成された修飾刺激免疫細胞集団を対象に投与すること、又は、修飾非刺激免疫細胞集団若しくは修飾刺激免疫細胞集団を含む組成物を投与すること、を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記対象は、固形腫瘍のような癌を有する。
本明細書に記載の疾患を治療する方法の他の態様において、前記癌は血液悪性腫瘍である。
本明細書に記載の疾患を治療する方法のさらに他の態様において、前記抗原結合ドメインは、前記癌によって発現される抗原に特異的である。
別の態様において、前記生物学的サンプルは、前記対象に対して自己由来(autologous)である。
あるいは、前記生物学的サンプルは、前記対象に対して同種異形(allogeneic)であることができる。
最後に、疾患を処置するすべての方法において、前記対象はヒトである。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の方法から得られる修飾非刺激免疫細胞集団又は本明細書に記載の方法から得られる修飾刺激免疫細胞集団を含むキットである。
【0035】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、
肝臓、皮膚又は膵臓の細胞から選択される修飾非刺激細胞集団を調製するベクターフリーの方法であり、
(a)トランスフェクション法により、生物学的サンプルから得られた非刺激細胞集団に、(i)遺伝子編集ヌクレアーゼ、(ii)ガイドRNA、及び(iii)抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートを送達する工程
(b)前記集団を非膨張条件下で約72時間又はそれ以下培養する工程を含み、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及び前記ガイドRNAは、複合体を形成し、少なくとも1つの非刺激免疫細胞内の標的部位に二本鎖切断を生成し、
前記HDRテンプレートは、前記標的部位でのHDRを促進し、前記集団内に少なくとも1つの修飾非刺激免疫細胞を生成する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、肝臓、皮膚、又は膵臓の細胞から選択される修飾非刺激細胞集団を調製するベクターフリーの方法であり、
(a)生物学的サンプルから非刺激細胞の濃縮集団を得る工程、
(b)トランスフェクション法により、(i)遺伝子編集ヌクレアーゼ、(ii)ガイドRNA及び(iii)抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートを、前記濃縮集団に送達する工程、及び、
(c)前記集団を非膨張条件下で培養する工程、を含み、
前記遺伝子編集ヌクレアーゼ及びガイドRNAは、複合体を形成し、前記集団内の複数の非刺激細胞内の標的部位に二本鎖切断を生成し、
前記HDRテンプレートは標的部位でのHDRを促進し、複数の修飾非刺激細胞を生成し、前記集団内の約10%又はそれ以上の非刺激細胞が修飾されている。
【0037】
いくつかの実施形態において、肝細胞は、肝細胞、肝星状細胞、類洞内皮細胞、及びクッパー細胞のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
いくつかの実施形態において、皮膚細胞は、ケラチノサイト、メラノソーム、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、及びメルケル細胞のうちの1つ又は複数から選択され得てもよい。
いくつかの実施形態において、膵臓細胞は、膵臓アルファ細胞、膵臓ベータ細胞、膵臓デルタ細胞、膵臓ガンマ細胞、及び膵臓イプシロン細胞のうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0038】
前述の概要と、以下の図面説明及び詳細な説明の両方は、例示的及び説明的である。これらは、本開示の更なる詳細を提供することを意図しているが、限定するものとして解釈されるものではない。他の目的、利点、及び新規な特徴は、本開示の以下の詳細な説明から当業者にとって容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A~1Cは、本明細書に記載のベクターフリー製造プロセスの例示的な概略図である。
図1Aは、人工免疫細胞のベクターフリー製造プロセスの概略を例示する。
図1Bは、臨床グレードのベクターフリーの人工T細胞の製造プロセスの概略を例示する。
図1Cは、同種異形T細胞製造プロセスの概略図を示す。
【0040】
図2A及び
図2Bは、人工T細胞のベクターフリー製造プロセスに関する例示的な概略図である。
図2Aは、0日目の製造プロセスを詳述し、
図2Bは、0日目から3日目/採取(Harvest)の製造工程を詳述する。
【0041】
図 3A及び3Bは、TRAC標的化gRNAを用いたCRISPR/Cas9による非刺激T細胞における内因性TCR発現の破壊を示す。CRISPR/Cas9遺伝子編集を、非刺激T細胞におけるTCRアルファ定数(TRAC)遺伝子座を標的とするために行った。2つのCRISPR/Cas9リボヌクレオプロテイン(RNP)システム(Truecut.v2 Cas9(ThermoFisher Scientific)及びSpyFi Cas9(Aldevron))をテストした。
図3Aは、ポジティブコントロール、Truecut及びSpyFiのCD3+TCR+/生細胞(Live Cells)の%を描写している。
図3Bは、ポジティブコントロール、Truecut及びSpyFiのCD3+TCR+/生細胞の割合も示している。
【0042】
図4は、二本鎖DNA切断の相同性指向性修復により、EcoRI部位を含むドナーDNAをTRAC遺伝子座のエクソン1に導入する工程に関する例示的な概略図である。
【0043】
図5A及びBは、化学修飾ssDNAドナー又は「ウルトラマー(ultramers)」へのHDR媒介挿入を示すためにEcoRIで消化したPCRアンプリコンのゲル電気泳動画像を示す。
【0044】
図6は、NY-ESO-1 TCRをコードするドナーDNAをTRAC遺伝子座に挿入するノックイン戦略(knock-in strategy)を示す例示的な概略図である。
【0045】
図7は、T細胞ゲノムへのGFP HDRカセットの標的挿入を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
・詳細な説明
1.概要
CAR-T細胞及びTCR細胞は、がん患者に対してエキサイティングな期待を提供する。しかしながら、CAR-T及びTCR細胞の製造に関連するいくつかの課題が現在存在し、これらの課題は、これらの癌治療薬の成功の可能性に影響を与える。
まず、現在のCAR-T及びTCRの製造プロセスでは、一般的に増殖(propagation)にウイルスベクターシステムが利用されている。しかし、このタイプの増殖方法を使用すると、細胞採取前に約9日間の期間が生じる。
本開示は、CAR-T及び/又はTCR細胞採取までの時間を劇的に短縮し、例えば、約72時間又はそれ未満に短縮する驚くべきベクターフリーの方法を詳述する。
【0047】
現在の技術に存在し、本開示によって対処される第2の課題は、生産をスケールアップする必要性である。
本開示は、大規模生産であっても、許容可能な挿入効率で驚くほどスケールアップ可能なベクターフリープロセスを詳述する。特に、短いプロセス時間は、プロセスをスケールアップする能力に影響を与える。
したがって、大規模生産レベルで行うことができ、高い割合の挿入効率を有する、短いCAR-T及びTCR製造プロセスを設計することができることは驚くべきことであった。
【0048】
本開示の別の驚くべき態様は、刺激細胞対非刺激細胞の培養の影響である。一般に、挿入効率は刺激細胞の方が高いが、製造工程は非刺激細胞の方が簡単である。一つの問題は、培地間で細胞を移動させると、高い細胞損失が生じることである。
さらに、未分化細胞の使用は、複数の異なる非刺激免疫細胞集団、例えば、CD4+又はCD8+T細胞(例えば、異なる、均一ではない特性を有する細胞)をもたらすことができるため、より良い製品を製造することができる。
本明細書に記載の方法は、刺激細胞(より高い挿入効率を生じる)又は非刺激細胞(より分化していない、より強力な表現型(phenotypes)を有する最終生成物を生じることができる)を用いて使用することができる。
【0049】
これらの利点及び発見は、以下により詳細に説明される。
【0050】
II.人工免疫細胞の製造方法
ある実施形態において、本明細書に開示されるのは、修飾免疫細胞又はその前駆体細胞(例えば、修飾T細胞、修飾ナチュラルキラー(NK)細胞、修飾ナチュラルキラーT(NKT)細胞、修飾マクロファージ、修飾単球、修飾B細胞又は修飾造血幹細胞)を調製する方法である。)
いくつかの実施形態において、前記修飾免疫細胞又はその前駆細胞は、外因性抗原結合ポリペプチドを発現する修飾非刺激免疫細胞又はその前駆細胞(例えば、修飾非刺激T細胞、修飾非刺激NK細胞、修飾非刺激NKT細胞、修飾非刺激マクロファージ、修飾非刺激単球、修飾非刺激B細胞、又は修飾非刺激造血幹細胞)である。
いくつかの実施形態において、前記抗原結合ポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)及び/又は外因性T細胞受容体(TCR)を含んでなる。
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ポリペプチドは、抗原結合ドメイン、細胞表面受容体リガンド又は腫瘍抗原に結合するポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、米国食品医薬品局(FDA)の規制に準拠した、又は外国の管轄区域における米国FDAの同等物に準拠した、適正製造基準(GMP)法である。
【0051】
いくつかの実施形態において、人工細胞の製造方法は、免疫細胞に限定されず、肝臓、皮膚、及び膵臓からの哺乳動物細胞をさらに含む。
本明細書に記載される免疫細胞に適用可能であるとして援用されるあらゆる方法は、肝臓、皮膚、及び膵臓からの細胞にもさらに適用可能である。
いくつかの実施形態において、肝臓、皮膚、及び膵臓からの細胞は、刺激に供されない。
いくつかの実施形態において、肝細胞は、肝細胞、肝星状細胞、類洞内皮細胞、及びクッパー細胞のうちの1つ又は複数から選択され得る。
いくつかの実施形態において、皮膚細胞は、ケラチノサイト、メラノソーム、メラノサイト、ランゲルハンス細胞及びメルケル細胞のうちの1つ又は複数から選択され得る。
いくつかの実施形態では、膵臓細胞は、膵臓アルファ細胞、膵臓ベータ細胞、膵臓デルタ細胞、膵臓ガンマ細胞、及び膵臓イプシロン細胞のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、人工若しくは修飾免疫細胞又はその前駆体細胞を調製する製造方法が、
図1Aに示されている。
図1に示すように、生物学的サンプル101は、細胞分離システム(cell separation system)を通して処理され(processed)、濃縮非刺激免疫細胞102(例えば、濃縮非刺激CD4
+及びCD8
+T細胞)の集団が生成する。
次に、前記濃縮非刺激免疫細胞102(例えば、濃縮された非刺激CD4
+及びCD8
+T細胞)は、遺伝子編集システム及びテンプレート(例えば、HDRテンプレート)でトランスフェクトされ、続いて最大約72時間培養され、修飾非刺激免疫細胞103(例えば、修飾非刺激CD4
+及びCD8
+T細胞)の集団が生成する。
次いで、前記修飾非刺激免疫細胞103は、凍結保存され、凍結保存修飾非刺激免疫細胞104が生成する。任意に、前記修飾非刺激免疫細胞104は、修飾刺激免疫細胞105を生成するために、最大約10日から約12日間刺激され、拡張され得る。
前記修飾刺激免疫細胞105はさらに、凍結保存された修飾刺激免疫細胞106を生成するために凍結保護することができる。
いくつかの実施態様において、前記製造方法は、修飾免疫細胞又はその前駆細胞を調製するベクターフリーの製造方法である。また、臨床グレードの人工T細胞及び同種異形T細胞のベクターフリーの製造プロセスの概略をそれぞれ示す
図1B及び
図1Cを参照されたい。
場合によって、前記製造方法は、トランスフェクションの効率、修飾非刺激若しくは刺激免疫細胞の収率、細胞生存率又はそれらの任意の組み合わせを改善する。
【0053】
A.非刺激性免疫細胞の選択と濃縮
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非刺激免疫細胞は、非刺激T細胞である。
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、又はNKT細胞であり得る。 例示的な実施形態では、前記T細胞は、CD8+T細胞又はCD4+T細胞である。
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞の集団は、対象からの生物学的サンプル、例えば、対象からの組織、流体、又は他のサンプルから採取される。
いくつかの実施形態では、前記生物学的サンプルは、組織又は器官サンプル、例えば、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、頸部、精巣、卵巣、扁桃、脾臓、リンパ節若しくは腫瘍組織又はそれらに由来する細胞である。
いくつかの実施形態では、前記生物学的サンプルは、流体サンプル、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿又は汗のサンプルである。
いくつかの実施形態では、前記生物学的サンプルは、血液サンプルであり、任意選択で、全血サンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル又はアフェレシスサンプルから選択される。
いくつかの実施形態において、サンプルは、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類又はブタのような異種起源からのものである。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記生物学的サンプルは、患者からのアフェレシスサンプルである。
いくつかの実施形態では、前記アフェレシスサンプルは、白血球サンプルである。
いくつかの実施形態では、前記アフェレシスサンプル(例えば、白血球サンプル)は、免疫細胞又は免疫細胞の集団の採取の前に凍結保存される。
いくつかの実施形態では、前記アフェレシスサンプル(例えば、白血球サンプル)は、凍結保存されていない患者からの新鮮なアフェレシスサンプルである。
いくつかの実施形態では、前記免疫細胞又は免疫細胞集団は、濃縮ステップを含むプロセス又はプロトコル(protocol)の間にアフェレシスサンプル(例えば、白血球サンプル)から得られる。
【0055】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞、特に非刺激T細胞集団は、1つ又は複数の選択ステップ、例えば、1つ以上の枯渇ステップ(例えば、非免疫細胞又は非T細胞の除去)において単離(isolated)及び濃縮される。
いくつかの例において、前記単離ステップは、サイズ、密度、特定の試薬に対する感受性又は耐性、及び/又は抗体又は他の結合パートナーに対する親和性、例えば免疫親和性等の1つ又は複数の特性に基づく分離を含む、1つ又は複数の分離ステップをさらに含む。
いくつかの態様において、前記単離は、単一のプロセスストリーム(process stream)において同じ装置(apparatus)又は機器(equipment)を順次使用して、及び/又は同時に実施される。
いくつかの態様において、前記異なる集団の単離、培養、及び/又は操作(engineering)は、同じ出発組成物又は材料から、例えば同じサンプルから実施される。
【0056】
いくつかの態様において、非刺激免疫細胞集団は、閉鎖システム又は装置において、及び/又は同じ容器(vessel)若しくは容器セット、例えば同じ(又は同じセットの)ユニット、チャンバー、カラム、例えば、磁気分離カラム、チューブ、チューブセット、培養若しくは栽培チャンバー、培養容器、処理ユニット(processing unit)、細胞分離容器、遠心分離チャンバーにおいて隔離される。
例えば、いくつかの場合によって、前記非刺激免疫細胞集団の分離は、例えば、細胞集団、組成物又は懸濁液を1つの容器、例えばチューブセットから別の容器に移す必要なく、例えば単一のカラム又はカラムのセット、及び/又は同一のチューブ、又はチューブセット等の単一又は同一の単離(isolation)又は分離(separation)容器又は容器セットを採用するシステム又は装置で実施される。
【0057】
いくつかの実施態様では、同時又は連続的な選択を採用することにより、複数の異なる非刺激免疫細胞集団、例えばCD4+又はCD8+T細胞が、選択、濃縮及び/又は単離される。
いくつかの実施形態において、前記分離ステップは、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、又は核酸等の、細胞内の1つ又は複数の特定の分子の発現又は存在に基づく、異なる細胞タイプの分離を含む。
いくつかの実施形態では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の既知の方法を使用することができる。
いくつかの実施形態では、前記分離は、親和性又は免疫親和性ベース(immunoaffinity-based)の分離である。
例えば、いくつかの態様における前記分離は、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体又は結合パートナーとのインキュベーションによる、1つ又は複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞の発現又は発現レベルに基づく細胞及び細胞集団の分離、次いで、一般に洗浄ステップ及び抗体又は結合パートナーに結合した細胞と、抗体又は結合パートナーに結合しなかった細胞からの分離が続く。
【0058】
このような分離ステップは、前記試薬に結合した前記非刺激免疫細胞をさらなる使用のために保持するポジティブ選択、及び/又は抗体又は結合パートナーに結合していない前記細胞を保持するネガティブ選択に基づくことができる。
いくつかの例では、両方のフラクションがさらなる使用のために保持される。
いくつかの態様において、ネガティブ選択は、異種集団における細胞タイプを特異的に同定する抗体が利用できない場合に特に有用であり、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて分離を行うのが最適であるように思われる。
【0059】
分離は、特定の細胞集団又は特定のマーカーを発現する細胞の100%濃縮又は除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現しているような特定のタイプの細胞のポジティブ選択又は濃縮は、そのような細胞の数又はパーセントを増加させることを意味するが、マーカーを発現していない細胞の完全な不在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現しているような特定のタイプの細胞のネガティブ選択、除去、又は枯渇は、そのような細胞の数又は割合を減少させることを意味するが、そのような細胞全ての完全な除去をもたらす必要はない。
例えば、いくつかの態様において、CD4+及びCD8+集団の選択は、当該集団を濃縮するが、他の非選択細胞のいくつかの残留又は小パーセントを構成することも可能である。そのような例では、他の非選択細胞の残留割合は、約10%未満、若しくは、に等しい、約9%未満、若しくは、に等しい、約8%未満、若しくは、に等しい、約7%未満、若しくは、に等しい、約6%未満、若しくは、に等しい、約5%未満、若しくは、に等しい、約4%未満、若しくは、に等しい、約3%未満、若しくは、に等しい、約2%未満、若しくは、に等しい、約1%未満、若しくは、に等しい、約0.5%未満、若しくは、に等しい、若しくは約0.1%未満、若しくは、に等しい、又は、それら未満としてもよい。
【0060】
いくつかの例では、分離ステップの複数のラウンド(round)を実施することができ、あるステップからのポジティブ又はネガティブに選択された画分は、その後のポジティブ又はネガティブに選択するような別の分離ステップに供される。
いくつかの例では、ネガティブセレクションの対象となるマーカーにそれぞれ特異的な複数の抗体または結合パートナーと細胞をインキュベートすること等により、単一の分離ステップで、複数のマーカーを同時に発現する細胞を枯渇させることができる。同様に、複数の細胞タイプは、様々な細胞タイプを発現する複数の抗体又は結合パートナーと細胞をインキュベートすることによって、同時にポジティブの選択を行うことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポジティブ又はネガティブ選択による非刺激T細胞集団の選択及び濃縮は、例えば、ポジティブ又はネガティブ選択された細胞に特有の表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせで達成することができる。
いくつかの実施形態において、CD4+T細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテル(cocktail)は、CD45RA、CCR7、CD62L、CD127(IL-7Rα)、及び/又はCD132に対する抗体を含む。
いくつかの実施形態において、CD8+T細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルは、CD62L、CCR7、及び/又はCD127(IL-7Rα)に対する抗体を含む。
追加の実施形態では、CD4+及び/又はCD8+T細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルは、CD2、CD3、CD27、及び/又はTCRに対する抗体を含む。
いくつかの実施形態において、ネガティブ選択によりCD4-及びCD8-細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルは、CD14、CD20、CD11b、CD16、及び/又はHLA-DRに対する抗体を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記方法は、CD4+及びCD8+T細胞の別個の選択を含んでいる。
いくつかの態様において、前記方法は、CD4+T細胞に対する第1のポジティブ選択を含み、その際、第1の選択からの非選択細胞(CD4-細胞)が、CD8+T細胞を濃縮する第2のポジティブ選択のための細胞源として使用される。
他の態様において、前記方法は、CD8+T細胞に対する第1のポジティブ選択を含み、その際、第1の選択からの非選択細胞(CD8-細胞)が、CD4+T細胞を濃縮する第2の位置選択のための細胞源として使用される。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記方法は、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の同時選択を含む。
いくつかの態様において、前記方法は、ポジティブ選択を含み、その際、CD4+及びCD8+T細胞が選択され、その後CD4-及びCD8-細胞が除去される。
【0064】
いくつかの実施形態では、細胞表面マーカー又はマーカーの発現に基づくポジティブ又はネガティブ選択、例えば、上述の方法のいずれかによって、非刺激免疫細胞を単離、選択、及び/又は濃縮する方法は、免疫親和性に基づく選択を含み得る。
いくつかの実施形態において、免疫親和性ベースの選択は、CD4+及びCD8+細胞を含む初代ヒトT細胞等の細胞を含むサンプルを、細胞表面マーカー又はマーカーに特異的に結合する抗体又は結合パートナーに接触させることを含む。
いくつかの実施形態では、前記抗体又は結合パートナーは、ポジティブ及び/又はネガティブ選択のための細胞の分離を可能にするために、球体又はビーズ、例えばマイクロビーズ、アガロースを含むナノビーズ、磁気ビーズ又は常磁性ビーズ等の固体支持体又はマトリックスに結合する。
いくつかの実施形態では、前記球体又はビーズは、免疫親和性クロマトグラフィーを実現するためにカラムに充填することができ、この場合、CD4+及びCD8+細胞を含む初代ヒトT細胞等の細胞を含むサンプルは、カラムのマトリックスと接触し、続いてそこから溶出又は放出される。
【0065】
いくつかの態様において、分離すべき非刺激免疫細胞のサンプル又は組成物は、磁気応答性粒子又は微粒子、例えば常磁性ビーズ等の、小型で磁化可能な又は磁気応答性材料とインキュベートされる。
前記磁気応答性材料、例えば、粒子は、一般に、分離することが望まれる細胞(cell)、細胞(cells)若しくは細胞集団上に存在する分子、例えば、表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば、抗体に直接又は間接的に付着している、例えば、ネガティブ又はポジティブの選択をすることが望まれるものである。
このようなビーズは知られており、いくつかの態様において、DYNABEADS(登録商標)(Life Technologies,Carlsbad,Calif.)、MACS(登録商標)ビーズ(Miltenyi Biotec,SanDiego,Calif.)又はSTREPTAMER(登録商標)ビーズ試薬(IBA、ドイツ)を含む種々のソースから商業的に入手可能である。
【0066】
インキュベーションは、一般に、前記磁性粒子又はビーズに付着している抗体又は前記結合パートナー、又はそのような抗体又は結合パートナーに特異的に結合する二次抗体又は他の試薬等の分子が、サンプル内の細胞上に存在すれば細胞表面分子に特異的に結合するような条件下に行われる。
【0067】
いくつかの態様において、前記サンプルは磁場に置かれ、それに付着した磁気応答性又は磁化可能な粒子を有するそれらの細胞は、磁石に引き寄せられ、標識されていない細胞から分離されるであろう。ポジティブ選択では、磁石に引き寄せられる細胞が保持され、ネガティブ選択では、引き寄せられない細胞(非標識細胞)が保持される。
いくつかの態様では、ポジティブ選択とネガティブ選択の組み合わせが同じ選択ステップ中に行われ、ポジティブ画分とネガティブ画分が保持され、さらに処理されるか、さらなる分離ステップに供される。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記親和性ベース選択は、磁気活性化セルソーティング(MACS)(Miltenyi Biotech,Auburn,Calif.)を介して行われる。
前記磁気活性化セルソーティング(MACS)システムは、磁化された粒子が付着した細胞を高純度で選択することが可能である。
ある実施形態では、MACSは、外部磁場の印加後に非標的種及び標的種が順次溶出されるモードで動作する。すなわち、磁化された粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出される間、その場に保持される。そして、この最初の溶出ステップが完了した後、磁場に捕捉されて溶出が阻止された種は、溶出及び回収できるように何らかの方法で解放される。ある実施形態では、非標的細胞は標識され、細胞の不均一な集団から枯渇する。
【0069】
いくつかの実施形態では、ビーズ又は他の表面に関連する(associated)又はコーティングされた細胞表面マーカーを特異的に結合する抗体は、全長抗体であるか、又はその抗原結合フラグメントであり、(Fab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fvフラグメント、抗原を特異的に結合できる可変重鎖(VH)領域、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む単鎖抗体フラグメント及び単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、nanobody)フラグメントである。
いくつかの実施形態では、前記抗体は、Fabフラグメントである。
いくつかの実施形態では、前記抗体は、一価、二価又は多価であり得る。
いくつかの実施形態では、Fab等の抗体は、多量体である。
いくつかの実施形態では、Fab多量体等の抗体は、細胞表面マーカーと多価の複合体を形成する。
【0070】
ポジティブ選択又はネガティブ選択による非刺激免疫細胞の所望の集団の単離のために、細胞及び表面(例えば、ビーズのような粒子)の濃度を変化させることができる。
ある態様では、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を大幅に減少させる(例えば、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。
例えば、1つの態様では、100億細胞/ml、90億細胞/ml、80億細胞/ml、70億/ml、60億/ml、又は50億/mlの濃度が使用される。
一態様では、10億細胞/mlの濃度が使用される。
別の一態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万又は1億細胞/mlの濃度が使用される。
さらなる態様において、1億2500万細胞/ml又は1億5000万細胞/mlの濃度が使用され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞の分離及び濃縮は、例えば、CliniMACSシステムを使用するような自動化システムを使用して実施される。
いくつかの態様において、前記方法は、滅菌された非発熱性(non-pyrogenic )溶液中で供給される抗体結合磁化可能粒子を使用する。
いくつかの実施形態において、磁性粒子で細胞を標識した後、細胞を洗浄して余分な粒子を除去する。次に、細胞調製バッグがチューブセットに接続され、このチューブセットは、バッファーを含むバッグ及び細胞収集バッグに接続される。前記チューブセットは、プレカラム(pre-column)と分離カラム(separation column)を含む、あらかじめ組み立てられた滅菌済チューブで構成されており、1回のみ使用できる。分離プログラムを開始すると、システムは自動的に細胞サンプルを分離カラムに適用します。ラベル付けされた細胞は前記カラム内に保持され、ラベル付けされていない細胞は一連の洗浄ステップによって除去される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法で使用するための前記細胞集団は、非標識であり、前記カラム内に保持されない。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法と共に使用するための前記細胞集団は、標識されており、前記カラム内に保持される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法と共に使用するための前記細胞集団は、磁場の除去後に前記カラムから溶出し、前記細胞収集バッグ内に収集される。
【0072】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞の分離及び濃縮は、LOVO Cell Processing System(Fresenius Kabi)等の濾過システムと組み合わせたCliniMACS Plus(Miltenyi)システム等の自動システムを使用して実施される。)
いくつかの実施態様において、非刺激免疫細胞は、回転膜濾過ステップにおいて上澄みから分離される。特に、あるカットオフ範囲、例えば<4μmの細胞は、上清とともに膜孔を通過して除去されるが、4μmを超える細胞はフィルターチャンバー内に保持され、その後、採取される。採取細胞は、CliniMACS Plusシステムを通じてさらに処理される。
【0073】
いくつかの実施形態では、分離及び濃縮ステップは、遠心分離による細胞の自動洗浄及び分画を可能にする細胞処理ユニットを備えたシステムを使用して実施される。
いくつかの態様において、前記分離及び濃縮ステップは、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して実施される。細胞処理ユニットを有するシステムは、搭載されたカメラと、細胞産物源の巨視的な層を判別することによって最適な細胞分画終点(endpoint)を決定する画像認識ソフトウェアとを含むこともできる。例えば、末梢血は、赤血球層、白血球層、血漿層に自動的に分離される。CliniMACS Prodigyシステム等の細胞処理システムは、例えば、細胞の分化及び拡大、抗原の装填、並びに長期細胞培養等の細胞培養プロトコルを達成する統合(integrated)細胞培養チャンバーを含むこともできる。入力ポートは、培地の滅菌的な除去及び補充を可能にし、細胞は、統合顕微鏡を使用して監視され得る。例えば、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakura et al. (2012) Blood. 1:72-82及び Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞集団は、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体流で運ばれるフローサイトメトリー(flow cytometry)を介して収集され、濃縮(又は枯渇)される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞集団は、分取スケール(preparative scale)(FACS)-ソーティング(sorting)を介して収集され、濃縮される(又は枯渇する)。ある実施形態では、本明細書に記載の細胞集団は、FACSベースの検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって収集及び濃縮(又は枯渇)される(例えば、WO2010/033140, Cho et al., Lab Chip, 10:1567-1573 (2010)及び Godin et al., J. Biophoton., 1(5):355-376 (2008)を参照されたい)。
いずれの場合も、細胞を複数のマーカーで標識することができ、高純度で十分に定義されたT細胞サブセット(subset)の単離が可能である。
【0075】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞の分離及び濃縮は、サイズ及び密度の両方に基づき細胞を分離及び精製するエルトリエーションシステム(elutriation system)を使用して実施される。
ある実施態様では、流体は、分離チャンバー内の遠心場内に設けられた非刺激免疫細胞層を通過する。遠心場と反対方向に流体の流れを変えることで、システムはサイズと密度に応じた粒子を整列させ収集する。
いくつかの実施形態では、溶出システムは、Terumo BCT社のELUTRA又はThermoFisher社のROTEAである。
【0076】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の分離及び濃縮ステップの間、非刺激免疫細胞は、細胞培地中でインキュベートされる。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、完全な(complete)細胞培地である。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、ウシ胎児血清(FBS)ベースの培地、例えば、約1%~約10%のFBSを含む。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、化学的に定義された培地である。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、最小培地である。分離及び濃縮ステップ中に非刺激免疫細胞をインキュベートするための例示的な培地としては、Miltenyi Biotech社のCliniMACSバッファーが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0077】
いくつかの実施態様において、前記細胞培地は、培養された非刺激免疫細胞と相互作用することなく培養容器の内面を被覆するタンパク質をさらに含んでなる。
いくつかの実施態様において、前記培地は、約0.1%~約5%w/v又は約0.5%~約2%w/vのタンパク質を含む。
いくつかの態様において、前記培地は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%又は約1%w/vのタンパク質を含む。
いくつかの態様において、前記タンパク質は、単離された組換えタンパク質又はそのフラグメントである。
いくつかの実施態様において、前記タンパク質は、操作されたデノボポリペプチド(de novo polypeptide)である。
いくつかの態様において、前記タンパク質は、天然に存在するタンパク質又はそのフラグメントである。
いくつかの態様において、前記タンパク質は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン又はHSA)である。
【0078】
いくつかの実施態様において、前記培地は、約0.1%から約5%w/v又は約0.5%から約2%w/vのアルブミン(例えば、HSA)を含む。
いくつかの実施態様において、前記培地は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%又は約1%w/vのアルブミン(例えばHSA)を含む。
いくつかの態様において、アルブミン(例えば、HSA)は、全長アルブミンである。
他の態様では、アルブミン(例えば、HSA)は、例えば、シグナル伝達ペプチドを含まない、そのフラグメントである。
【0079】
いくつかの実施形態では、上述の分離及び濃縮ステップの1つまたは複数から収集された前記非刺激免疫細胞は、細胞培地中に再懸濁される。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、完全な細胞培地、任意選択で完全な無血清及びゼノフリー(Xeno-free)培地である。
いくつかの実施態様において、前記培地は、ウシ胎児血清(FBS)ベースの培地、例えば、約1%から約10%のFBSを含む。
いくつかの実施態様において、前記細胞培地は、化学的に定義された培地である。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、最小培地である。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、T細胞サプリメント、ヒト血清、IL-7及び/又はIL-15等の1つ又は複数のサイトカイン、又はそれらの組合せを更に含む。
いくつかの実施態様では、前記T細胞サプリメントは、約2.4%v/vの最終濃度で培地に含まれる。
いくつかの実施態様では、前記ヒト血清は、約5%の最終濃度で培地中に含まれる。
いくつかの実施態様では、前記培地は、L-グルタミン又はL-グルタミン代替物(例えば、L-アラニン-L-グルタミン)を、任意に約2mMの最終濃度で含む。
いくつかの実施態様において、前記培地は、約5ng/mLの最終濃度でIL-7を含む。
いくつかの実施態様では、前記培地は、約5ng/mLの最終濃度でIL-15を含む。
いくつかの実施態様では、前記細胞培地は、ThermoFisherからのCTS(登録商標) OPTMIZER(登録商標)、ThermoFisherからのGlutaMAX(登録商標) Supplement、又はそれらの組合せを含む。
【0080】
いくつかの実施態様において、非刺激免疫細胞の分離及び濃縮ステップは、約2℃~約40℃の温度で実施される。
いくつかの実施態様において、前記分離及び濃縮ステップは、約2℃から約37℃、約2℃から約35℃、約2℃から約33℃、約2℃から約30℃、約2℃から約28℃、約2℃から約26℃、約2℃から約25℃、約2℃から約20℃、約2℃から約18℃、約2℃から約15℃、約2℃から約10℃、約2℃から約8℃、約4℃から約37℃、約4℃から約35℃、約4℃から約33℃、約4℃から約30℃、約4℃から約28℃、約4℃から約26℃、約4℃から約25℃、約4℃から約20℃、約4℃から約18℃、約4℃から約15℃、約4℃から約10℃、約4℃から約8℃、約20℃から約37℃、約20℃から約35℃、約20℃から約33℃、約20℃から約30℃、約20℃から約28℃、約20℃から約26℃、約20℃から約25℃、約22℃から約25℃、約22℃から約28℃、約24℃から約30℃、約24℃から約28℃、又は約25℃から約30℃の温度範囲で実施される。
いくつかの態様において、前記分離及び濃縮ステップは、約2℃から約8℃の温度で実施される。
いくつかの態様において、前記分離及び濃縮は、約4℃の温度で実施される。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記非刺激免疫細胞は、自己免疫細胞である。
他の実施形態では、非刺激免疫細胞は同種異形免疫細胞である。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記非刺激免疫細胞集団は、複数のT細胞、任意に複数のCD4+T細胞、複数のCD8+T細胞又はそれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様では、前記免疫細胞集団におけるCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約2:1、約3:1又は約4:1である。
いくつかの実施態様では、免疫細胞の集団におけるCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の比は、約1:1である。
いくつかの実施態様において、前記免疫細胞集団におけるCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の比は、約1:2である。
いくつかの実施態様では、前記免疫細胞集団におけるCD4+T細胞に対するCD8+T細胞の比は、約2:1である。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、約5000万から約500億個の濃縮非刺激免疫細胞、任意で約5000万から約10億、約1億から約50億、約10億から約100億又は約10億から約500億個の細胞を産生する。
いくつかの実施態様では、濃縮された非刺激免疫細胞は、約50から500mLの生物学的サンプルの出発サンプルから得られる。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記非刺激免疫細胞の濃縮集団は、約75%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%のCD4+T細胞、CD8+T細胞、又はそれらの組合せを含む。
【0085】
B.遺伝子編集された非刺激の免疫細胞
ある実施形態では、非刺激免疫細胞(例えば、非刺激T細胞)が、遺伝子編集システムによって修飾される。
いくつかの実施形態では、前記非刺激免疫細胞は、1つ又は複数の内因性発現遺伝子の発現を破壊するように遺伝子編集される。
いくつかの実施形態では、前記非刺激免疫細胞は、内因性受容体(例えば、内因性T細胞受容体)の発現の減少、欠失、排除、ノックアウト(knockout)又は破壊を有する。
いくつかの実施形態において、前記非刺激免疫細胞は、内因性遺伝子座に挿入された外因性免疫受容体(例えば、CAR又はTCR)を有する。
いくつかの実施形態では、前記内因性遺伝子座は、TRACである。
【0086】
ある実施形態では、非刺激免疫細胞は、内因性TCR遺伝子生成物(例えば、TRAC及びTRBCの遺伝子生成物)の発現を破壊するように遺伝学的に編集される。
いかなる理論にも拘束されることなく、TRAC及び/又はTRBCの発現を破壊することは、1)内因性TCRと外因性TCRとのミスペア(mispairing)が減少し、したがって自己反応性のリスクが減少する、及び2)内因性TCRとのミスペアが減少することによって細胞表面上の外因性TCR発現が増強され、したがって修飾細胞の有効性が増加する。
【0087】
いくつかの実施形態において、非刺激免疫細胞は、内因性TRAC遺伝子座を破壊し、外因性抗原結合免疫受容体を挿入する遺伝子修飾を含む。
いくつかの実施形態において、内因性TRAC遺伝子座を破壊するための前記遺伝子修飾は、TRACのエクソンにある。
いくつかの実施形態において、前記遺伝子修飾は、TRACのイントロンにある。
いくつかの実施形態において、内因性TRAC遺伝子座を破壊するための前記遺伝子修飾は、TRAC遺伝子座のエクソン1内にある。
いくつかの実施形態において、前記外因性抗原結合免疫受容体は、CARである。
いくつかの実施形態では、前記外因性抗原結合免疫レセプターは、TCRである。
【0088】
いくつかの態様において、前記遺伝子編集システムは、クラスタ化規則的インタースペル化短回文核酸(clustered regularly interspersed short palindromic nucleic acid)(CRISPR)-Casシステム等のRNA誘導ヌクレアーゼを含む。CRISPRシステム(本明細書では、CRISPR-Casシステム、Casシステム又はCRISPR/Casシステムとも呼ばれる)は、細胞への導入後にCasエンドヌクレアーゼが標的遺伝子に切断(例えば、二本鎖切断)を導入できる複合体を形成する、標的遺伝子に特異なCasエンドヌクレアーゼ及びガイド核酸配列を含む。
【0089】
いくつかの実施態様において、前記Casエンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼを含む。
いくつかの実施態様において、前記Cas9エンドヌクレアーゼは、例えば、S. pyogenes(例えば、SpCas9)、S.thermophiles、Staphylococcus aureus(例えば、SaCas9)又はNeisseria meningitidesのCas9分子に由来するか又はこれらに基づいている。
いくつかの実施態様において、前記Cas9エンドヌクレアーゼは、例えば、Acidovorax avenae、Actinobacillus pleuropneumoniae、Actinobacillus succinogenes、Actinobacillus suis、Actinomyces sp.、cycliphilus denitrificans、Aminomonas paucivorans、Bacillus cereus、Bacillus smithii、Bacillus thuringiensis、Bacteroides sp.、Blastopirellula marina、Bradyrhiz obium sp.、Brevibacillus latemsporus、Campylobacter coli、Campylobacter jejuni、Campylobacter lad、Candidatus Puniceispirillum、Clostridiu cellulolyticum、Clostridium perfringens、Corynebacterium accolens、Corynebacterium diphtheria、Corynebacterium matruchotii、Dinoroseobacter sliibae、Eubacterium dolichum、gamma proteobacterium、Gluconacetobacler diazotrophicus、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus sputorum、Helicobacter canadensis、Helicobacter cinaedi、Helicobacter mustelae、Ilyobacler polytropus、Kingella kingae、Lactobacillus crispatus、Listeria ivanovii、Listeria monocytogenes、Listeriaceae bacterium、Methylocystis sp.、Methylosinus trichosporium、Mobiluncus mulieris、Neisseria bacilliformis、Neisseria cinerea、 Neisseria flavescens、Neisseria lactamica. Neisseria sp.、Neisseria wadsworthii、 Nitrosomonas sp.、Parvibaculum lavamentivorans、Pasteurella multocida、Phascolarctobacterium succinatutens、Ralstonia syzygii、Rhodopseudomonas palustris、 Rhodovulum sp.、Simonsiella muelleri、Sphingomonas sp.、Sporolactobacillus vineae、 Staphylococcus lugdunensis、Streptococcus sp.、Subdoligranulum sp.、Tislrella mobilis、 Treponema sp.、or Verminephrobacter eiseniaeに由来するか又はこれらに基づいている。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記Cas9エンドヌクレアーゼは、S.pyogenes(例えば、SF370株、MGAS10270株、MGAS10750株、MGAS2096株、MGAS315株、MGAS5005株、MGAS6180株、MGAS9429株、NZ131株及びSSI-1株)、S.thermophilus(例えば、LMD-9株)、S.pseudoporcinus(例えば、SPIN20026株)、S.mutans(例えば、UA159株、NN2025株)、S.macacae(例えば、NCTC11558株)、S.gallolylicus(例えば、UCN34株、ATCC BAA-2069株)、S.equines(例えば、ATCC9812株、MGCS124株)、S.dysdalactiae(例えば、GGS124株)、S.bovis(例えば、ATCC700338株)、S.cmginosus(例えば、F021 1株)、S.agalactia(例えば、NEM316、A909株)、Listeria monocytogenes(例えば、F6854株)、Listeria innocua(L.innocua、例えば、Clip11262株)、Enterococcus italicus(例えば、DSM15952株)又はEnterococcus faecium (例えば、1,23,408株)のCa9分子由来である。
【0091】
いくつかの実施態様において、前記エンドヌクレアーゼは、Cas3、Cas8a、Cas8b、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Cas10(例えば、Cas10d)、Cas12a(又はCpf1)、Cas12b(又はC2c1)、Cas12d、Cas12e、Cas12f、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas13、Cas14、Cs2又はCmr5を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記ガイド核酸は、Cas-RNA複合体を標的配列に方向付けるガイドRNA(gRNA)分子である。
いくつかの実施形態において、方向付けは、gRNAの一部のDNAへのハイブリダイゼーション(例えば、gRNAターゲティングドメインを介して)、及びgRNA分子の一部のRNAガイドヌクレアーゼ又は他のエフェクター分子への結合(例えば、少なくともgRNA tracrを介して)により達成される。
いくつかの実施形態では、gRNA分子は、本明細書において「単一(single)ガイドRNA」又は「sgRNA」と呼ばれる、単一の連続したポリヌクレオチド分子からなる。
他の実施形態では、gRNA分子は、複数の、通常は2つの、ポリヌクレオチド分子からなり、それ自体が、通常はハイブリダイゼーションを通じて会合可能であり、本明細書では「デュアル(dual)ガイドRNA」又は「dgRNA」と称される。
【0093】
いくつかの実施態様において、前記gRNA分子は、任意に単一のポリヌクレオチド上又は別々のポリヌクレオチド上にあることができるcrRNA及びtracrを含む。
いくつかの実施態様において、前記crRNAは、ターゲティングドメインと、tracrと相互作用して旗竿(flagpole)領域を形成する領域とを含む。前記tracrは、ヌクレアーゼ又は他のエフェクター分子に結合するgRNA分子の一部を含む。
いくつかの実施形態では、前記tracrは、Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)に特異的に結合する核酸配列からなる。
いくつかの実施形態では、前記tracrは、旗竿の一部を形成する核酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記ターゲティングドメインは、前記標的DNA内のプロトスペーサー(protspacer)配列を認識する、例えば、これに相補的である、gRNA分子の一部である。
【0094】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は、プロトスペーサーの3’末端に隣接して位置し、Casエンドヌクレアーゼによって認識される2~6塩基対DNA配列である。
いくつかの実施態様において、各Casエンドヌクレアーゼは、特定のPAM配列を認識する。
例示的なPAM配列には、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼによって認識されるNGG配列又はS.thermophilus Cas9エンドヌクレアーゼによって認識されるNGGNG又はNNAGAAW配列(ここでNは任意のヌクレオチド)を含む。当業者であれば、Casエンドヌクレアーゼが認識するであろうPAM配列とともに使用される特定のCasエンドヌクレアーゼに基づいて、gRNA分子を設計する方法を理解するであろう。
【0095】
いくつかの実施形態では、1つ若しくは複数の、2つ若しくは複数の、3つ若しくは複数の又は4つ若しくは複数のガイド核酸(例えば、ガイドRNA分子)が、Casエンドヌクレアーゼを有する免疫細胞内にトランスフェクトされる。
いくつかの態様において、約1、2、又は3個のガイド核酸(例えば、ガイドRNA分子)が、Casエンドヌクレアーゼを有する免疫細胞内にトランスフェクトされる。
いくつかの態様では、約3個のガイド核酸(例えば、ガイドRNA分子)が、Casエンドヌクレアーゼを有する免疫細胞内にトランスフェクトされる。
いくつかの態様において、約2個のガイド核酸(例えば、ガイドRNA分子)が、Casエンドヌクレアーゼを有する免疫細胞内にトランスフェクションされる。
いくつかの態様では、約1個のガイド核酸(例えば、ガイドRNA分子)が、Casエンドヌクレアーゼを有する免疫細胞内にトランスフェクトされる。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子編集システムは、TALEN遺伝子編集システムである。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA開裂(cleavage)ドメインに融合させることによって人工的に製造される。
転写活性化因子様効果(TALE)は、標的DNAに結合するように操作することができる。
操作されたTALEをDNA開裂ドメインと組み合わせることで、任意の標的DNA配列に特異的な制限酵素を製造することができる。
【0097】
TALEは、Xanthomonas菌によって分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインは、12番目と13番目のアミノ酸を除いて、繰り返し、高度に保存された33~34個のアミノ酸配列を含んでいる。これら2つの位置は、特異的なヌクレオチド認識と強い相関を示し、非常に可変的であるため、標的DNA配列に結合するように操作することができる。
【0098】
TALENを製造するために、TALEタンパク質は、例えば、野生型又は変異型Foklエンドヌクレアーゼを含むヌクレアーゼ(N)と融合される。Foklドメインは二量体として機能し、標的ゲノムの部位に適切な向きと間隔で固有のDNA結合ドメインを持つ2つの構築物(construction)を必要とする。特異性及びオフターゲット(off-target)効果は、TALE DNA結合ドメインとFokl開裂ドメインの間のアミノ酸残基数及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基数を変えることによって調節することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子編集システムは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)遺伝子編集システムである。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的核酸配列の1つ又は複数の核酸部位を修飾するために使用することができる人工ヌクレアーゼである。TALEN編集システムと同様に、ZFNは、DNA結合ドメインに融合したFoklヌクレアーゼドメイン(又はその誘導体)を含む。ZFNの場合、前記DNA結合ドメインは、1つ又は複数のジンクフィンガーを含む。ジンクフィンガーは、1つ又は複数の亜鉛イオンによって安定化された小さなタンパク質構造モチーフである。ジンクフィンガーは、例えば、Cys2His2からなり、凡そ3-bp配列を認識することができる。既知の特異性を有する種々のジンクフィンガーを組み合わせて、約6、9、12、15又は18-bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを生成することができる。
【0100】
ZFNは、非パリンドローム(non-palindromic)DNA部位を認識する。標的部位を切断するために、一対のZFNは二量化し、前記標的部位の反対側の鎖(strands)に集合する。特定の配列を認識するジンクフィンガー(およびその組み合わせ)を生成するために、ファージディスプレイ(phage display)、酵母ワンハイブリッドシステム(yeast one-hybrid systems)、バクテリアワンハイブリッドおよびツーハイブリッドシステム(bacterial one-hybrid and two-hybrid systems)、哺乳類細胞等、様々な選択およびモジュールアセンブリ技術(modular assembly techniques)が利用可能である。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子編集システムは、メガヌクレアーゼ遺伝子編集システムである。メガヌクレアーゼは、15~40塩基対の開裂部位を認識する人工ヌクレアーゼである。
いくつかの実施態様において、メガヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性及び/又はDNA認識に影響を与えるその構造モチーフに基づいてファミリーにグループ分けされる。LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフのコピーを1つ又は2つ有することによって特徴付けられる。
いくつかの例では、前記LAGLIDADGモチーフのコピーを1つ有する前記LAGLIDADGメガヌクレアーゼは、ホモ二量体(homodimers)を形成するが、前記LAGLIDADGモチーフのコピーを2つ有するメンバーはモノマーとして見出される。GIY-YIGファミリーのメンバーは、70~100残基の長さのGP-YIGモジュールを有し、4つの不変残基を持つ4又は5つの保存配列モチーフを含み、そのうちの2つが活性に必要である。His-Cysボックスメガヌクレアーゼは、数百アミノ酸残基にわたる領域で、高度に保存された一連のヒスチジンとシステインによって特徴づけられる。NHNファミリーは、アスパラギン残基で囲まれた2対の保存されたヒスチジンを含むモチーフによってメンバーが定義されている。DNA結合特異性が変更されたメガヌクレアーゼを操作するための戦略、例えば、所定の核酸配列に結合するための戦略は、当技術分野で知られており、例えば、Chevalier et al. (2002), Mol. Cell, 10:895-905; Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res 31 : 2952-62; Silva et al. (2006) J Mol Biol 361 : 744-54; Seligman et al. (2002) Nucleic Acids Res 30: 3870-9; Sussman et al. (2004) J Mol Biol 342: 31-41; Rosen et al. (2006) Nucleic Acids Res; Doyon et al. (2006) J. Am Chem Soc 128: 2477-84; Chen et al. (2009) Protein Eng Des Sel 22: 249- 56; Arnould S (2006) J Mol Biol. 355: 443-58; Smith (2006) Nucleic Acids Res. 363(2): 283- 94.に見出される。
【0102】
いくつかの実施態様において、前記メガヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼのN末端に融合したTALEドメインを含むmegaTALと呼ばれるハイブリッドヌクレアーゼである。
いくつかの実施態様では、前記メガヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリーのメンバーである。
【0103】
C.相同性指向性修復(HDR)テンプレート
ある実施形態では、本明細書に記載の非刺激免疫細胞は、相同性指向性修復機構によって修飾される。
いくつかの実施形態では、抗原結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む相同性指向性修復(HDR)テンプレートが、ポリヌクレオチドが標的部位に挿入される条件下で、標的免疫細胞にトランスフェクトされる。
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートは、標的部位に対して上流、すなわち5’のゲノム配列に相同な5’相同性アームと、標的部位に対して下流、すなわち3’のゲノム配列に相同な3’相同性アームを含む。
いくつかの実施形態では、前記5’及び/又は3’相同性アームは、ポリヌクレオチドに隣接する。
いくつかの実施形態では、前記5’相同性アームは、約50から約1000ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50から約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さである。
いくつかの実施態様では、前記5’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280、約300、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900又は約1000ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施態様では、前記5'相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280又は約300ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施態様では、前記5’相同性アームは、約50、約100、約150、約200、約300、約350、約400、約450又は約500ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施態様では、前記3’相同性アームは、約50から約1000ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50から約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記3’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280、約300、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900又は約1000ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記3’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280又は約300ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施態様では、前記3’相同性アームは、約50、約100、約150、約200、約300、約350、約400、約450又は約500ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートの長さは、約2キロ塩基対(kb)から約5kb、約2.3kbから約5kb、約3kbから約5kb、約3kbから約4kb、約2kbから約4kb、約2.3kbから約4kb、約2kbから約3kb、約2.3kbから約3kb又は約4kbから約5kbである。
いくつかの例では、前記HDRテンプレートの長さは、約2kb、約2.3kb、約2.5kb、約3kb、約4kb又は約5kbである。
いくつかの態様において、前記HDRテンプレートは、本明細書においてウルトラマーとも称される。
いくつかの態様において、前記抗原結合ポリペプチドは、抗原受容体、任意選択でCAR又はTCRである。
【0104】
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートは、二本鎖DNA(dsDNA)テンプレートである。
いくつかの実施形態では、前記dsDNAテンプレートは、天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又はそれらの組合せを含む。
いくつかの実施形態では、前記dsDNAテンプレートは、標的部位に対して上流、すなわち5’のゲノム配列に相同な5’相同性アームと、標的部位に対して下流、すなわち3’のゲノム配列に相同な3’相同性アームを含む。
いくつかの実施形態では、前記5’及び/又は3’相同性アームは、ポリヌクレオチドに隣接する。
いくつかの実施形態では、前記5’相同性アームは、約50ヌクレオチドから約1000ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さである。
いくつかの実施形態では、前記5’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280、約300、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900又は約1000ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記5’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280又は約300ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記5’相同性アームは、約50、約100、約150、約200、約300、約350、約400、約450又は約500ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施形態では、前記3’相同性アームは、約50ヌクレオチドから約1000ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さである。
いくつかの実施形態では、前記3’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280、約300、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900又は約1000ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施態様では、前記3’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280又は約300ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記3’相同性アームは、約50、約100、約150、約200、約300、約350、約400、約450又は約500ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施形態において、前記dsDNAテンプレートの長さは、約2kbから約5kb、約2.3kbから約5kb、約3kbから約5kb、約3kbから約4kb、約2kbから約4kb、約2.3kbから約4kb、約2kbから約3kb、約2.3kbから約3kb又は約4kbから約5kbである。
いくつかの例では、dsDNAテンプレートの長さは、約2kb、約2.3kb、約2.5kb、約3kb、約4kb又は約5kbである。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートは、一本鎖DNA(ssDNA)テンプレートである。
いくつかの実施形態では、前記ssDNAテンプレートは、天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又はそれらの組合せを含む。
いくつかの実施形態では、前記ssDNAテンプレートは、標的部位に対して上流、すなわち5’のゲノム配列に相同な5’相同性アームと、標的部位に対して下流、すなわち3’のゲノム配列に相同な3’相同性アームを含む。
いくつかの実施形態において、前記5’及び/又は3’相同性アームは、ポリヌクレオチドに隣接する。
いくつかの実施形態において、前記5’相同性アームは、約50ヌクレオチドから約1000ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施形態では、前記5’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280、約300、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900又は約1000ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記5’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280又は約300ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記5’相同性アームは、約50、約100、約150、約200、約300、約350、約400、約450又は約500ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施形態では、前記3’相同性アームは、約50ヌクレオチドから約1000ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約50ヌクレオチドから約150ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから約200ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約400ヌクレオチド、約200ヌクレオチドから約300ヌクレオチド、約300ヌクレオチドから約500ヌクレオチド又は約300ヌクレオチドから約400ヌクレオチドまでの長さである。
いくつかの実施形態では、前記3’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280、約300、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900又は約1000ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記3’相同性アームは、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約140、約150、約160、約180、約200、約220、約240、約250、約260、約280又は約300ヌクレオチドの長さである。
いくつかの例では、前記3’相同性アームは、約50、約100、約150、約200、約300、約350、約400、約450又は約500ヌクレオチドの長さである。
いくつかの実施形態では、前記ssDNAテンプレートの長さは、約2kbから約5kb、約2.3kbから約5kb、約3kbから約5kb、約3kbから約4kb、約2kbから約4kb、約2.3kbから約4kb、約2kbから約3kb、約2.3kbから約3kb又は約4kbから約5kbである。
いくつかの例では、前記ssDNAテンプレートの長さは、約2kb、約2.3kb、約2.5kb、約3kb、約4kb又は約5kbである。
【0106】
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートは、免疫細胞内に導入される前にプラスミドに挿入される。例示的なプラスミドとしては、これらに限定はされないが、pBAD/His、pCal-n、pET-3a-c、pET32a-c、pGEX-2T、pTriEx-1、pUC19、pAd5F35、pAdDeltaF6、又はTLCV2が挙げられる。
【0107】
D.トランスフェクション
いくつかの実施形態では、前記遺伝子編集システム及び前記HDRテンプレートは、非ウイルス性送達方法(non-viral delivery method)を通じて、非刺激免疫細胞に導入される。非ウイルス性送達方法では、核酸は裸のDNAであるか、非ウイルス性プラスミド又はベクターに含まれ得る。例示的な非ウイルス性送達方法としては、それらに限定されないが、電気穿孔法、セルスクイーズ法、リン酸カルシウム、熱ショック(heat shock)、リポソーム送達、カチオン性ポリマー、脂質ポリマー、細胞透過ペプチド(cell-penetrating peptides)、カチオン性ナノキャリア、流体力学的送達(hydrodynamic delivery)、超音波、カチオン性脂質、ナノ粒子、弾道DNA注入(ballistic DNA injection)、磁気感染(magneto-fection)及び光ポーリング(photo-poration)が挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子編集システム及びHDRテンプレートは、電気穿孔法によって非刺激免疫細胞に導入される。
いくつかの例では、前記遺伝子編集システム(例えば、前記エンドヌクレアーゼ及び/又は前記ガイド核酸)及びHDRテンプレートは、電気穿孔法によって、非刺激免疫細胞に同時に導入される。
他の例では、前記遺伝子編集システム(例えば、前記エンドヌクレアーゼ及び/又は前記ガイド核酸)は、最初に電気穿孔法を行い、その後、前記HDRテンプレートの別個の電気穿孔法を行うことにより、同時に非刺激免疫細胞に導入される、又は、代替的に、前記HDRテンプレートは、最初に電気穿孔法を行い、その後、遺伝子編集システム(例えば、前記エンドヌクレアーゼ及び/又は前記ガイド核酸)の別個の電気穿孔法を行うことにより、同時に非刺激免疫細胞へ導入される。
さらなる例では、前記エンドヌクレアーゼ、前記ガイド核酸、及び前記HDRテンプレートは、電気穿孔法によって、前記非刺激免疫細胞に順次導入される。
【0109】
いくつかの実施形態では、前記エンドヌクレアーゼは、約1pMから約10mMの濃度で、非刺激免疫細胞に導入される。
いくつかの実施態様において、エンドヌクレアーゼの濃度は、約1pMから約5mM、約1pMから約3mM、約1pMから約1mM、約1pMから約0.8mM、約1pMから約0.5mM、約1pMから約0.2mM、約1pMから約0.1mM、約1pMから約0.09mM、約1pMから約0.05mM、約1pMから約0.01mM、約1pMから約5μM、約1pMから約1μM、約1pMから約500nM、約1pMから約100nM、約1nMから約10mM、約1nMから約5mM、約1nMから約3mM、約1nMから1mM、約1nMから約0.8mM、約1nMから約0.5mM、約1nMから約0.2mM、約1nMから約0.1mM、約1nMから約0.09mM、約1nMから約0.05mM、約1nMから約0.01mM、約1nMから約5μM、約1nMから約1μM、約1nMから約500nM、約1μMから約10mM、約1μMから約5mM、約1μMから約3mM、約1μMから約1mM、約1μMから約0.8mM、約1μMから約0.5mM、約1μMから約0.2mM、約1μMから約0.1mM、約1μMから約0.09mM、約1μMから約0.05mM、約1μMから約0.01mM又は約1μMから約5μMである。
【0110】
いくつかの実施形態では、前記ガイド核酸(例えば、前記ガイドRNA分子)は、約1pMから約10mMの濃度で非刺激免疫細胞へ導入される。
いくつかの例では、前記ガイド核酸の濃度(例えば、前記ガイドRNA分子)は、約1pMから約5mM、約1pMから約3mM、約1pMから約1mM、約1pMから約0.8mM、約1pMから約0.5mM、約1pMから約0.2mM、約1pMから約0.1mM、約1pMから約0.09mM、約1pMから約0.05mM、約1pMから約0.01mM、約1pMから約5μM、約1pMから約1μM、約1pMから約500nM、約1pMから約100nM、約1nMから約10mM、約1nMから約5mM、約1nMから約3mM、約1nMから約1mM、約1nMから約0.8mM、約1nMから約0.5mM、約1nMから約0.2mM、約1nMから約0.1mM、約1nMから約0.09mM、約1nMから約0.05mM、約1nMから約0.01mM、約1nMから約5μM、約1nMから約1μM、約1nMから約500nM、約1μMから約10mM、約1μMから約5mM、約1μMから約3mM、約1μMから約1mM、約1μMから約0.8mM、約1μMから約0.5mM、約1μMから約0.2mM、約1μMから約0.1mM、約1μMから約0.09mM、約1μMから約0.05mM、約1μMから約0.01mM、又は約1μMから約5μMである。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートは、約1pMから約10mMの濃度で、非刺激免疫細胞に導入される。
いくつかの実施態様では、前記HDRテンプレートの濃度は、約1pMから約5mM、約1pMから約3mM、約1pMから約1mM、約1pMから約0.8mM、約1pMから約0.5mM、約1pMから約0.2mM、約1pMから約0.1mM、約1pMから約0.09mM、約1pMから約0.05mM、約1pMから約0.01mM、約1pMから約5μM、約1pMから約1μM、約1pMから約500nM、約1pMから約100nM、約1nMから約10mM、約1nMから約5mM、約1nMから約3mM、約1nMから1mM、約1nMから約0.8mM、約1nMから約0.5mM、約1nMから約0.2mM、約1nMから約0.1mM、約1nMから約0.09mM、約1nMから約0.05mM、約1nMから約0.01mM、約1nMから約5μM、約1nMから約1μM、約1nMから約500nM、約1μMから約10mM、約1μMから約5mM、約1μMから約3mM、約1μMから約1mM、約1μMから約0.8mM、約1μMから約0.5mM、約1μMから約0.2mM、約1μMから約0.1mM、約1μMから約0.09mM、約1μMから約0.05mM、約1μMから約0.01mM又は約1μMから約5μMである。
【0112】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子編集システムは、CRISPR-Casシステムである。
いくつかの例では、Cas(例えば、Cas9)エンドヌクレアーゼは、約1pMから約10mMの濃度で非刺激免疫細胞へ導入される。
いくつかの実施態様において、Cas(例えば、Cas9)エンドヌクレアーゼの濃度は、約1pMから約5mM、約1pMから約3mM、約1pMから約1mM、約1pMから約0.8mM、約1pMから約0.5mM、約1pMから約0.2mM、約1pMから約0.1mM、約1pMから約0.09mM、約1pMから約0.05mM、約1pMから約0.01mM、約1pMから約5μM、約1pMから約1μM、約1pMから約500nM、約1pMから約100nM、約1nMから約10mM、約1nMから約5mM、約1nMから約3mM、約1nMから約1mM、約1nMから約0.8mM、1nMから約0.5mM、約1nMから約0.2mM、約1nMから約0.1mM、約1nMから約0.09mM、約1nMから約0.05mM、約1nMから約0.01mM、約1nMから約5μM、約1nMから約1μM、約1nMから約500nM、約1μMから約10mM、約1μMから約5mM、約1μMから約3mM、約1μMから約1mM、約1μMから約0.8mM、約1μMから約0.5mM、約1μMから約0.2mM、約1μMから約0.1mM、約1μMから約0.09mM、約1μMから約0.05mM、約1μMから約0.01mM、又は約1μMから約5μMである。
【0113】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞に導入される前記Cas(例えば、Cas9)エンドヌクレアーゼ濃度と前記ガイド核酸濃度の比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1である。
いくつかの例では、前記Casエンドヌクレアーゼと前記ガイド核酸の比は、約1:1である。
いくつかの例では、前記Casエンドヌクレアーゼと前記ガイド核酸の比は、約1:2である。
いくつかの例では、前記Casエンドヌクレアーゼと前記ガイド核酸の比は、約1:3である。
いくつかの例では、前記Casエンドヌクレアーゼと前記ガイド核酸の比は、約2:1である。
いくつかの例では、前記Casエンドヌクレアーゼと前記ガイド核酸の比は、約3:1である。
【0114】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞に導入される前記CRISPR-Casシステムと前記HDRテンプレートの比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:12、約1:15、約1:18、約1:20、約1:25、約1:30、約1:35、約1:40、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約12:1、約15:1、約20:1、約30:1又は約40:1である。
いくつかの例では、前記CRISPR-Casシステムと前記HDRテンプレートの比は、約1:1である。
いくつかの例では、前記CRISPR-Casシステムと前記HDRテンプレートの比は、約1:2である。
いくつかの例では、前記CRISPR-Casシステムと前記HDRテンプレートの比は、約2:1である。
【0115】
いくつかの実施形態では、非刺激免疫細胞に導入される前記遺伝子編集ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及び前記HDRテンプレートの比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1又は約10:1である。
いくつかの例では、前記遺伝子編集ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)と前記HDRテンプレートの比は、約1:1である。
いくつかの例では、前記遺伝子編集ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)と前記HDRテンプレートの比は、約1:2である。
いくつかの例では、前記遺伝子編集ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)と前記HDRテンプレートの比は、約2:1である。
【0116】
いくつかの実施形態では、前記電気泳動は、約2℃から約40℃の温度で実施される。
いくつか例では、前記電気泳動は、約2℃から約37℃、約2℃から約35℃、約2℃から約33℃、約2℃から約30℃、約2℃から約28℃、約2℃から約26℃、約2℃から約25℃、約2℃から約20℃、約2℃から約18℃、約2℃から約15℃、約2℃から約10℃、約2℃から約8℃、約4℃から約37℃、約4℃から約35℃、約4℃から約33℃、約4℃から約30℃、約4℃から約28℃です、約4℃から約26℃、約4℃から約25℃、約4℃から約20℃、約4℃から約18℃、約4℃から約15℃、約4℃から約10℃、約4℃から約8℃、約20℃から約37℃、約20℃から約35℃、約20℃から約33℃、約20℃から約30℃、約20℃から約28℃、約20℃から約26℃、約20℃から約25℃、約22℃から約25℃、約22℃から約28℃、約24℃から約30℃、約24℃から約28℃又は約25℃から約30℃の温度で実施される。
いくつかの場合では、前記電気泳動は、約20℃から約30℃の温度で実施される。
いくつかの場合では、前記電気泳動は、約25℃から約30℃の温度で実施される。
いくつかの場合では、前記電気泳動は、約25℃から約28℃の温度で実施される。
【0117】
例示的な電気穿孔法テクノロジーとして、これらに限定されないが、Lonza社のNUCLEOFECTOR(登録商標)プラットフォーム、Lonza社のAmaxa NUCLEOFECTOR(登録商標)II電気穿孔法機、MaxCyte社のFLOW ELECTROPORATION(登録商標)テクノロジー、及びBio-Rad社のGene Pulser MXCELL(登録商標)電気穿孔法システムが挙げられる。当業者であれば、パルスの種類、パルスの持続時間、電圧及び使用頻度は、装置の種類及び細胞の種類に依存すること並びにトランスフェクション効率の最適化は、パルスの種類、パルスの持続時間、電圧、使用頻度、及び、エンドヌクレアーゼ、ガイド核酸、及び/又はHDRテンプレートの濃度に基づいて調節できることを理解する。
【0118】
いくつかの実施形態では、前記HDRテンプレートは、非刺激免疫細胞集団の約10%又はそれ以上において、標的部位でのHDRを促進する。
いくつかの例では、前記HDRテンプレートは、非刺激免疫細胞集団の約20%若しくはそれ以上、30%若しくはそれ以上、40%若しくはそれ以上、50%若しくはそれ以上、60%若しくはそれ以上、70%若しくはそれ以上、80%若しくはそれ以上、90%若しくはそれ以上又は95%若しくはそれ以上において標的部位でのHDRを促進する。
【0119】
いくつかの実施形態では、前記トランスフェクション法の効率は、約2%から約99%、約5%から約99%、約8%から約99%、約10%から約99%、約12%から約99%、約13%から約99%、約15%から約99%、約20%から約99%、30%から約99%、約40%から約99%、約50%から約99%、約60%から約99%、約70%から約99%、約2%から約80%、約5%から約80%、約8%から約80%、約10%から約80%、約12%から約80%、約13%から約80%、約15%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約20%から約70%又は約30%から約60%である。
いくつかの例では、前記効率は約2%、約5%、約8%、約10%、約12%、約13%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又は約99%である。
【0120】
E.修飾非刺激性免疫細胞
いくつかの実施形態では、前記遺伝子編集システム及び前記HDRテンプレートの非ウイルス送達後の非刺激免疫細胞を、最大で約72時間、非膨張条件下で培養し、修飾非刺激免疫細胞を生成する。
いくつかの例では、前記非刺激免疫細胞を、約18時間から約72時間、約18時間から約36時間、約18時間から約24時間、約24時間から約72時間、約24時間から約36時間又は約36時間から約72時間、培養し、修飾非刺激免疫細胞を生成する。
いくつかの例では、前記非刺激免疫細胞を、約48時間若しくはそれ以下、約36時間若しくはそれ以下、約24時間若しくはそれ以下又は約18時間若しくはそれ以下、培養して、修飾非刺激免疫細胞を生成する。
いくつかの例では、前記非刺激免疫細胞を、約18時間、24時間、36時間、48時間又は約72時間、培養して、修飾非刺激免疫細胞を生成する。
いくつかの場合では、前記非刺激免疫細胞は、培養容器(例えば、培養バッグ又はバイオリアクター)内で約37℃で培養される。
いくつかの場合では、前記培養容器は、約90%、約95%又は約99%の湿度を含む。
いくつかの場合では、前記培養容器は、約0.5%の二酸化炭素を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、修飾非刺激免疫細胞と共に使用される前記細胞培地は、完全培地、化学的に定義された培地、又はウシ胎児血清(FBS)ベースの培地、例えば、約1%~約10%のFBSを含む培地を含んでいる。
いくつかの例では、前記細胞培地は、最小培地である。前記修飾非刺激免疫細胞を培養するための例示的な培地としては、Miltenyi Biotech社のCliniMACS buffer及びThermoFisher社のCTS(登録商標) OPTMIZER(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
いくつかの例では、前記細胞培地は、培養された前記修飾非刺激免疫細胞と相互作用することなく培養容器の内表面を被覆するタンパク質をさらに含む。
いくつかの場合では、前記培地は、約0.1%~約5%w/v又は約0.5%~約2%w/vのタンパク質を含む。
いくつかの場合では、前記媒体は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%又は約1%のタンパク質w/vを含む。
いくつかの場合では、前記タンパク質は、単離された組換えタンパク質又はそのフラグメントである。
いくつかの場合では、前記タンパク質は、操作されたデノボ(de novo)ポリペプチドである。
いくつかの場合では、前記タンパク質は、天然に存在するタンパク質又はそのフラグメントである。
いくつかの態様において、前記タンパク質は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン又はHSA)である。
【0123】
いくつかの実施形態では、前記細胞培地は、約0.1%~約5%w/v又は約0.5%~約2%w/vのアルブミン(例えば、HSA)を含む。
いくつかの例では、前記培地は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%又は約1%w/vのアルブミン(例えばHSA)を含む。
いくつかの場合では、アルブミン(例えば、HSA)は、全長アルブミンである。
他の場合では、前記アルブミン(例えば、HSA)は、例えば、シグナル伝達ペプチドを含まない、そのフラグメントである。
【0124】
いくつかの実施形態では、上述の方法によって生成された前記修飾非刺激免疫細胞集団は、約500万細胞、1000万細胞、2000万細胞、5000万細胞、1億細胞、5億細胞、10億細胞、20億細胞、30億細胞、40億細胞、50億細胞、100億細胞又はそれ以上を含む。
いくつかの場合では、上述の方法によって生成された前記修飾非刺激免疫細胞集団は、約5000万細胞~約50億細胞を含む。
いくつかの場合では、上述の方法によって生成された前記修飾非刺激免疫細胞集団は、約5000万細胞~約40億細胞を含む。
F.凍結保存
【0125】
いくつかの実施形態では、前記修飾非刺激免疫細胞は、最大約72時間培養した後、凍結保存される。
いくつかの例では、前記修飾非刺激免疫細胞は、培養容器から採取され、凍結保存培地に再懸濁される。
いくつかの例では、前記凍結保存培地は、CRYOSTOR(登録商標)CSB培地(BioLife Solutions)及びDMSOを含む。
いくつかの例では、前記DMSOは、2%、5%又は10%v/v溶液である。
いくつかの例では、前記DMSOは、CRYOSTOR(登録商標)CS5又はCRYOSTOR(登録商標)CS10(BioLife Solutions)である。
【0126】
いくつかの場合では、前記DMSOの最終濃度は、約0%v/vから約7.5%v/vである。
いくつかの場合では、前記DMSOの最終濃度は、約2.5%v/vである。
いくつかの場合では、前記DMSOの最終濃度は、約5%v/vである。
いくつかの場合では、再懸濁中の温度は、約24℃から約28℃である。
【0127】
前記凍結保存培地に再懸濁した後、前記修飾非刺激免疫細胞を凍結保存し、その際、細胞の温度を再懸濁温度から約-80℃までステップワイズ方法で低下させる。
いくつかの例では、1分あたり約1~5℃の減少が、前記ステップワイズ方法で使用される。
いくつかの例では、1分間に約1℃の減少が、前記ステップワイズ方式で使用される。
いくつかの例では、前記ステップワイズ方法は、約30分~約3時間以内に前記再懸濁温度から約-80℃まで温度を下げることを含む。
いくつかの場合では、前記再懸濁温度は、約24℃から約28℃、約26℃から約28℃又は約24℃から約26℃である。
【0128】
いくつかの実施形態では、凍結修飾非刺激免疫細胞を生成する本明細書に記載の方法は、約10%から約99%、約12%から約99%、約13%から約99%、約15%から約99%、約20%から約99%、30%から約99%、約40%から約99%、約50%から約99、約60%から約99%、約70%から約99%、約10%から約80%、約12%から約80%、約13%から約80%、約15%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約20%から約70%又は約30%から約60%の細胞生存性(cell viability)を提供する。
いくつかの場合では、前記方法は、約10%、約12%、約13%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又は約99%の細胞生存性を提供する。
【0129】
G.修飾刺激免疫細胞
いくつかの実施形態では、修前記飾非刺激免疫細胞は、凍結保存の前に任意に刺激される。
いくつかの例、前記修飾非刺激免疫細胞は、約5日~約12日間刺激され、拡大される。
いくつかの場合では、前記修飾非刺激免疫細胞は、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間又はそれ以上刺激され、拡大される。
いくつかの場合では、前記非刺激免疫細胞は、約10日間から約12日間まで刺激され、拡張される。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記修飾非刺激免疫細胞は、当該非刺激免疫細胞を刺激することができる薬剤(agent)の存在下でインキュベートされる。
前記非刺激免疫細胞がT細胞であるいくつかの例では、前記薬剤は、CD3ゼータ鎖等のTCR複合体の1つ又は複数の構成要素(components)の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができるか、又はそのような複合体又は構成要素を介したシグナル伝達を活性化することが可能である。
いくつかの例、前記薬剤は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗4-1BB抗体又はIL-2、IL-15、IL-7又はIL-21等のサイトカイン又は人工抗原提示細胞(aAPC)である。
いくつかの例では、前記抗体はさらに、ビーズ等の固体支持体の表面に結合されるか、又はその上に存在する。
いくつかの場合では、前記薬剤は、Dynabeads human T-Activator CD3/CD28(ThermoFisher)、任意で、ビーズ対細胞比が3:1で、又は、MACS(登録商標)GEMP T細胞 TRANSACT(登録商標)(Mitenyi Biotec)である。
【0131】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法によって生成された前記修飾刺激免疫細胞集団は、約500万細胞、約1000万細胞、約2000万細胞、約5000万細胞、約1億細胞、約5億細胞、約10億細胞、約50億細胞、約100億細胞、約200億細胞又はそれ以上を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、凍結修飾刺激免疫細胞を生成する本明細書に記載の方法は、約10%から約99%、約12%から約99%、約13%から約99%、約15%から約99%、約20%から約99%、30%から約99%、約40%から約99%、約50%から約99、約60%から約99%、約70%から約99%、約10%から約80%、約12%から約80%、約13%から約80%、約15%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約20%から約70%又は約30%から約60%の細胞生存性を提供する。
いくつかの場合では、前記方法は、約10%、約12%、約13%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又は約99%の細胞生存性を提供する。
【0133】
III.抗原結合ポリペプチド
ある実施形態では、本明細書に開示されるのは、外来性抗原結合ポリペプチドを発現する修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞である。
いくつかの例では、前記抗原結合ポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)である。
他の例では、前記抗原結合ポリペプチドは、T細胞受容体(TCR)である。
追加の例では、前記抗原結合ポリペプチドは、抗原結合ドメイン、細胞表面受容体リガンド又は腫瘍抗原に結合するポリペプチドである。
【0134】
A.キメラ抗原レセプター
いくつかの実施形態では、修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞、例えば、修飾非刺激又は刺激T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現している。本発明のCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。本明細書に記載の、任意の抗原結合ドメイン、任意のヒンジ、任意の膜貫通ドメイン、任意の細胞内共刺激ドメイン及び任意の細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを含む任意の修飾細胞が想定され(envisioned)、本明細書の開示を考慮して当業者が容易に理解し製造することができる。
【0135】
前記抗原結合ドメインは、細胞内での発現のために、本明細書の他の箇所に記載されている膜貫通ドメイン又は細胞内ドメイン等のCARの別のドメインに作動可能に連結され得る。
一実施形態では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸に作動可能に連結され、さらに細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列に作動可能に連結されている。
【0136】
本明細書に記載の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の膜貫通ドメインのいずれか、本明細書に記載の細胞内ドメイン若しくは細胞質ドメインのいずれか又は本発明のCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
本発明の主題CARは、本明細書に記載されるようなスペーサードメイン(spacer domain)を含むこともできる。
いくつかの実施形態において、前記抗原結合ドメイン、前記膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの各々は、リンカー(linker)によって分離されている。
【0137】
1.抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、炭水化物及び糖脂質を含む特定の標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域(extracellular region)である。
いくつかの実施形態において、前記CARは、標的細胞(例えば、癌細胞)上の標的抗原(例えば、腫瘍関連(associated)抗原)に対する親和性を含んでいる。前記標的抗原は、前記標的細胞に関連する(associated)任意のタイプのタンパク質、又はそのエピトープを含んでもよい。例えば、前記CARは、前記標的細胞の特定の状態を示す、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含んでもよい。
【0138】
本明細書に記載されるように、標的細胞上の特定の標的抗原に対する親和性を有する本開示のCARは、標的特異的結合ドメイン(target-specific binding domain)を含んでよい。
いくつかの実施形態では、前記標的特異的結合ドメインは、マウス標的特異的結合ドメインであり、例えば、前記標的特異的結合ドメインは、マウス由来である。
いくつかの実施形態において、前記標的特異的結合ドメインは、ヒト標的特異的結合ドメインであり、例えば、標的特異的結合ドメインは、ヒト由来である。
【0139】
前記抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、及びそれらの任意のフラグメントを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
したがって、一実施形態では、前記抗原結合ドメイン部分は、哺乳類抗体又はそのフラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ドメインは、全長抗体からなる。
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ドメインは、抗原結合フラグメント(Fab)、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、単一特異性(monospecific)Fab2、二重特異性(bispecific)Fab2、三重特異性(trispecific)Fab2、単鎖可変フラグメント(scFv)、dAb、タンデム(tandem)scFv、VhH、V-NAR、カメリド(camelid)、ダイアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)、トリアボディ(triabody)、又はテトラボディ(tetrabody)を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、1つ又は複数の標的細胞上の1つ又は複数の標的抗原に対する親和性を有し得る。
いくつかの実施形態において、CARは、単一の標的細胞上の1つ又は複数の標的抗原に対して親和性を有し得る。
そのような実施形態では、前記CARは、二重特異性CAR、又は多重特異性(multispecific)CARである。
いくつかの実施形態において、前記CARは、1つ又は複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つ又は複数の標的特異的結合ドメインを含む。
いくつかの実施形態において、前記CARは、同じ標的抗原に対する親和性を付与する1つ又は複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同じ標的抗原に親和性のある1つ又は複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原の異なるエピトープに結合することができる。CARに複数の標的特異的結合ドメインが存在する場合、前記結合ドメインはタンデムに配置され、リンカーペプチドによって分離され得る。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARでは、前記結合ドメインは、ポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域、又は膜ヒンジ領域を介して、単一のポリペプチド鎖上で互いに共有結合で連結されている。
【0141】
本明細書で使用する場合、「単鎖可変フラグメント」又は「scFv」という用語は、免疫グロブリン(例えば、マウス又はヒト)の重鎖(heavy chains)(VH)及び軽鎖(light chains)(VL)の可変領域を共有結合してVH::VLヘテロ二量体を形成する融合タンパク質である。重鎖(VH)と軽鎖(VL)は直接結合するか、ペプチドをコードするリンカー又はスペーサーによって結合し、VHのN末端とVLのC末端、又はVHのC末端とVLのN末端が連結される。
本明細書において、「リンカー」及び「スペーサー」という用語は、互換的に用いられる。
いくつかの実施形態において、前記抗原結合ドメイン(例えば、Tn-MUC1結合ドメイン)は、N末端からC末端まで、VH-リンカー-VLという構成を有するscFvを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗原結合ドメイン(例えば、Tn-MUC1結合ドメイン、PSMA結合ドメイン)は、N末端からC末端まで、VL-リンカー-VHという構成を有するscFvを含む。当業者であれば、本発明で使用するために適切な構成を選択することができるであろう。
【0142】
前記リンカーは、典型的には、柔軟性のためにグリシンを豊富に含み、また、溶解性のためにセリン又はスレオニンを含む。前記リンカーは、前記細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。
前記リンカーの非限定的な例としては、Shen et al., Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008)及び WO2014/087010に開示されており、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
様々なリンカー配列が当技術分野で知られており、限定されないが、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGS)n、及び(GGGGS)n(ただし、nは少なくとも1の整数を表す)等のグリシン・セリン(GS)リンカーが挙げられる。
例示的なリンカー配列は、限定されないが、GGSG、GGSGG、GSGSG、GSGGG、GGGSG、GSSSG、GGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS等を含むアミノ酸配列であり得る。当業者であれば、本発明で使用するために適切なリンカー配列を選択することができるであろう。
一実施形態では、本発明の抗原結合ドメイン(例えば、Tn-MUC1結合ドメイン、PSMA結合ドメイン)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VH及びVLは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGSを有するリンカー配列によって分離されており、これは、ヌクレオチド配列ggtggcggtggctcgggcggtggtgggtcgggtggcggcggatctを含む核酸配列によってコード化され得る。
【0143】
定数領域を除去し、リンカーを導入したにもかかわらず、scFvタンパク質は元の(original)免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston, et al. (Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)に記載されているように、VH-及びVL-エンコード配列を含む核酸から発現することができる。
また、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、同第4,956,778号、米国特許公開第20050196754号及び同第20050196754号を参照ください。阻害活性を有する拮抗型scFvが記載されている(例えば、Zhao et al., Hybridoma (Larchmt), 27(6):455-51 (2008); Peter et al., J. Cachexia Sarcopenia Muscle (Aug. 12, 2012); Shieh et al., J. Imunol., 183(4):2277-85 (2009); Giomarelli et al., Thromb. Haemost., 97(6):955-63 (2007); Fife et al., J. Clin. Invst., 116(8):2252-61 (2006); Brocks et al., Immunotechnology, 3(3):173-84 (1997); Moosmayer et al., Ther. Immunol., 2(10):31-40 (1995)を参照されたい。)。刺激活性を有するアゴニスティック(Agonistic)scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J. Biol. Chem., 25278(38):36740-7 (2003); Xie et al., Nat. Biotech., 15(8):768-71 (1997); Ledbetter et al., Crit. Rev. Immunol., I(5-6):427-55 (1997); Ho et al., BioChim. Biophys. Acta., 1638(3):257-66 (2003)を参照されたい。)。
【0144】
本明細書で使用する「Fab」は、抗原に結合するが一価でFc部分を持たない抗体構造のフラグメントを指し、例えば、酵素パパイン(enzyme papain)で消化した抗体は、2つのFabフラグメントとFcフラグメント(例えば、重(H)鎖一定領域、抗原に結合しないFc領域)を生成する。
【0145】
いくつかの例では、前記抗原結合ドメインは、前記CARが最終的に使用されるのと同じ種に由来し得る。例えば、ヒトで使用する場合、前記CARの前記抗原結合ドメインは、本明細書の他の箇所に記載されているようなヒト抗体又はそのフラグメントを含んでもよい。
【0146】
従って、例えば本明細書に記載の方法によって得られた免疫細胞は、以下の癌関連(associated)抗原(腫瘍抗原)のうちの1つを標的とするCARを発現するように操作することができる:CD19;CD20;CD22(シグレック(Siglec)2);CD37;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1(CD2サブセット(subset)1、CRACC、SLAMF7、CD319及び19A24とも呼ばれる);C型レクチン様分子-1(CLL-1又はCLECL1);CD33;CD133;上皮成長因子受容体(EGFR);上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII);ヒト上皮成長因子受容体(HER1);ガングリオシド(ganglioside)G2(GD2);ガングリオシドGD3(aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer);TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(maturation)(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)又は(GalNAca-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連(associated)糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;カルシノエンブリオニック(Carcinoembryonic)抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL-13Ra2又はCD213A2);メソセリン(Mesothelin);インターロイキン11受容体アルファ(IL-11rRa);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21(テスティシン(Testisin)又はPRSS21);血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);段階特異的胚性抗原4(SSEA-4);葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン(Mucin)1,細胞表面関連(cell surface associated)(MUC 1);GalNAca1-O-Ser/Thr(Tn)MUC 1(TnMUC1);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ(Prostase);前立腺酸性ホスファターゼ(prostatic acid phosphatase)(PAP);伸長因子2変異(mutated)(ELF2M);エフリンB2、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(プロソメ(Prosome)、マクロペイン(Macropain))サブユニット、ベータ型、9(LMP2).糖タンパク質100(gp100);ブレークポイントクラスター領域(breakpoint cluster region)(BCR)とアベルソン マウス白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ1(Abelson murine leukemia viral oncogene homolog 1)(Abl)からなる癌遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシル(Fucosyl)GM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシド GM3(aNeu5Ac(2-3)bDGalp(l-4)bDGlcp(l-l)Cer);トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量メラノーマ関連(associated)抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体β;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);染色体Xオープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);グリコセラミドのグロボH六糖部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ユーロプラキン2(UPK2);チロシン-プロテインキナーゼMet(c-Met);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、K9遺伝子座(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TCR Gamma Alternate Reading Frame Protein)(TARP);ウィルムス(Wilms)腫瘍タンパク質(WT1);癌/精巣抗原1(NY-ESO-1);癌/精巣抗原2(LAGE-la);メラノーマ結合関連(associated)1(MAGE-A1);染色体12pに位置するETS転座変異遺伝子6(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGEl);アンジオポエチン結合細胞表面受容体(angiopoietin-binding cell surface receptor)2(Tie2);メラノーマ癌精巣抗原-1(MAD-CT-1);MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロスタイン(prostein);生存(surviving);テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1又はGalectin8)、T細胞によって認識されるメラノーマ抗原1(MelanA又はMARTI);ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント(sarcoma translocation breakpoints);メラノーマアポトーシス阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通型プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアボックスタンパク質(paired box protein)Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリン(Cyclin)Bl;v-myc トリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(v-myc avian myelocytomatosis viral oncogene neuroblastoma derived homolog)(MYCN);Ras ホモログ ファミリー メンバーC(Ras Homolog Family Member C)(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);チトクロームP4501B1(CYP1B 1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガープロテイン)様(CCCTC-Binding Factor (Zinc Finger Protein)- Like)(BORIS又はインプリンティング部位の制御因子の兄弟(Brother of the Regulator of Imprinted Sites))、T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES 1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカー(anchor)蛋白質4(AKAP-4);滑膜肉腫;Xブレークポイント2(SSX2);高度糖化最終産物受容体(RAGE-1);腎ユビキタス1(RU1);腎ユビキタス2(RU2);レグマイン;ヒト乳頭腫ウイルスE6(HPV E6);ヒト乳頭腫ウイルスE7(HPV E7);腸内カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2変異体(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連(associated)免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR又はCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチン領域ファミリー12のメンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-2(GPC2);グリピカン-3(GPC3);NKG2D;KRAS;GDNFファミリー受容体アルファ4(GFRa4);IL13Ra2;Fc受容体様5(FCRL5);及び免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1)。
いくつかの実施形態において、前記免疫細胞は、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD37、メソセリン、PSMA、PSCA、Tn-MUC1、EGFR、EGFRvIII、c-Met、HER1、HER2、CD33、CD133、GD2、GPC2、GPC3、NKG2D、KRAS又はWT1、を標的とするCARを発現するように操作される。
【0147】
2.膜貫通型ドメイン
前記膜貫通ドメインに関して、前記CARは、該CARの抗原結合ドメインを細胞内ドメインに接続する膜貫通ドメインを含むように操作することができる。対象CARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞又はその前駆体)の原形質膜をまたぐ(spanning)ことができる領域である。前記膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば、真核細胞膜に挿入するためのものである。
いくつかの実施形態において、前記膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間に介在する。
【0148】
一実施形態では、前記膜貫通ドメインは、CARのドメインの1つ又は複数と自然に関連(associated)する。
いくつかの例では、前記膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために、同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのかかるドメインの結合を避けるように、アミノ酸置換によって選択又は変更され得る。
【0149】
前記膜貫通ドメインは、天然由来又は合成由来のいずれかに由来し得る。ソースが天然である場合、前記ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質、例えば、I型膜貫通タンパク質に由来し得る。ソースが合成である場合、前記膜貫通ドメインは、CARの細胞膜への挿入を容易にする任意の人工配列、例えば、人工疎水性配列であり得る。本発明で特に使用する膜貫通ドメインの例としては、限定されないが、T細胞受容体のアルファ、ベータ若しくはゼータ鎖、CD28、CD2、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9に由来する(即ち、少なくとも膜貫通ドメインを含む)膜貫通ドメインが挙げられる。
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、ロイシンやバリン等の疎水性残基が主体となって含まれる。
ある例示的な実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出されることになる。
【0150】
本明細書に記載の膜貫通ドメインは、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメインのいずれか、本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインのいずれか、又は対象CARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、前記膜貫通ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。本発明の対象CARは、ヒンジ領域を含むこともできる。前記CARのヒンジ領域は、前記抗原結合ドメインと前記膜貫通ドメインの間に位置する親水性領域である。
いくつかの実施形態では、このドメインは、CARのための適切なタンパク質折り畳みを促進する。前記ヒンジ領域は、CARのオプション部品である。前記ヒンジ領域は、抗体のFcフラグメント、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工ヒンジ配列又はそれらの組み合わせから選択されるドメインを含み得る。
ヒンジ領域の例としては、CD8aヒンジ、3つのグリシン(Gly)やIgG(ヒトIgG4等)のCH1及びCH3ドメインと同じくらい小さいポリペプチドでできた人工ヒンジ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示の対象CARは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとを接続するヒンジ領域を含み、この領域は、今度は、細胞内ドメインに接続する。
例示的な実施形態では、前記ヒンジ領域は、抗原結合ドメインが標的細胞上の標的抗原を認識して結合することを支持することができる(例えば、Hudecek et al., Cancer Immunol. Res., 3(2): 125-135 (2015)を参照されたい。)
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は、柔軟等メインであるため、前記抗原結合ドメインは、腫瘍細胞等の細胞上の標的抗原の特定の構造及び密度を最適に認識するための構造を有することができる。前記ヒンジ領域の柔軟性により、ヒンジ領域は様々なコンフォメーションをとることができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は、受容体由来のヒンジ領域ポリペプチド(例えば、CD8由来のヒンジ領域)である。
【0154】
前記ヒンジ領域は、約4アミノ酸から約50アミノ酸、例えば、約4アミノ酸から約10アミノ酸、約10アミノ酸から約15アミノ酸、約15アミノ酸から約20アミノ酸、約20アミノ酸から約25アミノ酸、約25アミノ酸から約30アミノ酸、約30アミノ酸から約40アミノ酸、又は約40アミノ酸から約50アミノ酸の長さを有することができる。
【0155】
適切なヒンジ領域は、容易に選択することができ、多数の適切な長さのいずれか、例えば、約1個のアミノ酸(例えば.Gly)から約20アミノ酸、約2アミノ酸から約15アミノ酸、約3アミノ酸から約12アミノ酸、約4アミノ酸から約10アミノ酸、約5アミノ酸から約9アミノ酸、約6アミノ酸から約8アミノ酸又は約7アミノ酸から約8アミノ酸を含み、約1、約2、約3、約4、約5、約6又は約7アミノ酸となり得る。
【0156】
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号47)及び(GGGS)n(配列番号48)(但し、nは少なくとも1の整数)、を含み、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー及び当技術分野において知られている他の柔軟なリンカーを含む。グリシンやグリシン-セリンポリマーを使用することができ、GlyおよびSerの両方が比較的構造化されておらず(unstructured)、したがって成分間の中性テザーとして機能することができる。グリシンポリマーを使用することができ、グリシンは、アラニンよりもかなり多くのファイ-プサイ(phi-psi)空間にアクセスし、長い側鎖を持つ残基よりもはるかに制限が少ない(例えば、Scheraga, Rev. Computational. Chem. (1992) 2: 73-142を参照されたい。)。
例示的なヒンジ領域は、GGSG(配列番号29)、GGSGG(配列番号30)、GSGSG(配列番号31)、GSGGG(配列番号32)、GGGSG(配列番号33)、GSSSG(配列番号34)等のアミノ酸配列からなり得るが、これらに限定はない。
【0157】
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域アミノ酸配列は、当技術分野で知られている、例えば、Tan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87(1):162-166 (1990); 及びHuck et al., Nucleic Acids Res., 14(4): 1779-1789 (1986)が挙げられる。
非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含み得る:DKTHT(配列番号35);CPPC(配列番号36);CPEPKSCDTPPPCPR(配列番号37)(例えば、Glaser et al., J. Biol. Chem. (2005) 280:41494-41503);ELKTPLGDTTHT(配列番号38);KSCDKTHTCP(配列番号 NO: 39);KCCVDCP(配列番号40);KYGPPCP(配列番号41);EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号42)(ヒトIGG1ヒンジ);ERKCCVECPPCP(配列番号43)(ヒトIGG2ヒンジ);ELKTPLGDTTHTCPRCP(配列番号44)(ヒトIGG3ヒンジ);SPNMVPHAHHAQ(配列番号45)(ヒトIGG4ヒンジ)。
【0158】
前記ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の、ヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
一実施形態では、前記ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して、1つ又は複数のアミノ酸置換及び/又は挿入及び/又は欠失を含み得る。
例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、前記ヒンジ領域が配列EPKSCDKTYTCPPCP(配列番号46)を含むように、Tyrで置換され得る;例えば、Yan et al., J. Biol. Chem. (2012) 287: 5891-5897を参照されたい。
一実施形態では、ヒンジ領域は、ヒトCD8、又はその変異体由来のアミノ酸配列からなり得る。
【0159】
一実施形態では、前記膜貫通ドメインは、CD8α膜貫通ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、対象CARは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むCD8α膜貫通ドメインを含み、これは、配列番号24に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
【0160】
別の実施形態では、対象CARは、CD8αヒンジドメインとCD8α膜貫通ドメインとを含む。
一実施形態では、前記CD8αヒンジドメインは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み、これは、配列番号26に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされ得る。
【0161】
一実施形態では、前記膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインからなる。
いくつかの実施形態において、対象CARは、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通ドメインを含み、これは、配列番号28に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされ得る。
【0162】
前記膜貫通ドメイン及び/又はヒンジドメインの許容できるバリエーションは、その意図する機能を維持しながら、当業者に知られているであろう。例えば、いくつかの実施形態において、膜貫通ドメイン又はヒンジドメインは、配列番号23、25及び/又は27に記載されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の、配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
例えば、いくつかの実施形態において、膜貫通ドメイン又はヒンジドメインは、配列番号24、26、及び/又は28に記載されているヌクレオチド配列のいずれかと少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸配列によりコードされている。
【0163】
前記膜貫通ドメインは、任意のヒンジドメインと組み合わせてもよく、及び/又は、本明細書に記載の1つ又は複数の膜貫通ドメインを含んでもよい。
【0164】
本明細書に記載の膜貫通ドメイン、例えば、T細胞受容体のα、β又はゼータ鎖の膜貫通領域、CD28、CD2、CD3イプシロン、CD45、CD4.CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8及びTLR9は、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメイン又は細胞内ドメイン又は細胞質ドメインのいずれか、又はCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0165】
一実施形態では、前記膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、ロイシン及びバリン等の疎水性残基が主体となって含まれる。
例示的な実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見られることになる。
【0166】
いくつかの実施形態において、対象CARは、前記CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、又は前記CARの細胞内ドメインと膜貫通ドメインの間に、スペーサドメインをさらに含んでもよい。本明細書で使用する場合、「スペーサードメイン」という用語は、一般に、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメイン又は細胞内ドメインに連結する機能を有する任意のオリゴ又はポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大約300アミノ酸、例えば、約10~約100アミノ酸、又は約25~約50アミノ酸を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、スペーサードメインは、短いオリゴ又はポリペプチドリンカー、例えば、長さが約2~約10アミノ酸の間であってもよい。例えば、グリシン-セリンダブレット(doublet)は、前記対象CARの前記膜貫通ドメインと前記細胞内シグナル伝達ドメインとの間に特に適したリンカーを提供する。
【0167】
したがって、本開示の主題CARは、本明細書に記載の膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン又はスペーサードメインのいずれかを含んでもよい。
【0168】
3.細胞内ドメイン
本発明の主題CARはまた、細胞内ドメインを含む。前記CARの細胞内ドメインは、該CARが発現している細胞(例えば、免疫細胞)のエフェクター機能の少なくとも1つを活性化する役割を担う。前記細胞内ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば、免疫細胞)がその特殊な機能、例えば、標的細胞に危害を加える、及び/又は破壊することを実行するように指示する。
【0169】
前記CARの細胞内ドメイン又はそうでなければ細胞質ドメインは、CARが発現している細胞の活性化を担う。本発明で使用する細胞内ドメインの例としては、表面受容体の細胞質部分、共刺激分子、及びT細胞におけるシグナル伝達を開始するために協調して作用する任意の分子、ならびにこれらの要素の任意の誘導体又は変異体、及び同じ機能能力を有する任意の合成配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
ある実施形態では、前記細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
ある実施形態では、前記細胞内ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
ある実施形態では、前記細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。
ある実施形態では、前記細胞内ドメインは、4-1BB及びCD3ゼータを含む。
ある実施形態では、前記共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BBを含む。
ある実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータを含む。
【0171】
一実施形態では、CARの細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリーのタンパク質、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、B7-H3(CD276)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR、その誘導体又は変種、及び、同じ機能能力を有するその合成配列、及びそれらの組み合わせ)由来の細胞内ドメインの少なくとも一つのシグナル伝達ドメイン等の1つ又は複数の共刺激分子の任意の部分を含む共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0172】
前記細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、限定されないが、T細胞受容体複合体のζ鎖又はそのホモログ、例えば、η鎖、FcsRIγ及びβ鎖、MB1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖等、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δ、ε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP70等)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lyn等)、CD2、CD5、CD28等のT細胞形質導入(transduction)に関わる他の分子が挙げられる。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、細胞質受容体を有する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、及びこれらの組み合わせであり得る。
【0173】
前記細胞内ドメインの他の例としては、1つ又は複数の分子又は受容体、これらに限定されないが、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、コモン(common)FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcガンマR11a、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連(associated)抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CD5、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1Id、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書に記載の他の共刺激分子、それらの誘導体、変異体又はフラグメント、同じ機能性能力を有する共刺激分子の合成配列、及びそれらの組合せ、
由来のフラグメント又はドメインが挙げられる。
【0174】
細胞内ドメインの追加の例としては、限定されないが、CD3、B7ファミリー共刺激、及び腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1、第2、及び第3世代のT細胞シグナル伝達タンパク質を含む他の種々の免疫シグナル伝達受容体のいくつかのタイプの細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、Park and Brentjens, J. Clin. Oncol., 33(6): 651-653 (2015)を参照されたい。)が挙げられる。
さらに、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK及びNKT細胞(例えば、Hermanson and Kaufman, Front. Immunol., 6: 195 (2015)を参照されたい。)、例えば、NKp30(B7-H6)(例えば、Zhang et al., J. Immunol., 189(5): 2290-2299 (2012)を参照されたい)、及びDAP12(例えば、Topfer et al., J. Immunol., 194(7): 3201-3212 (2015)を参照されたい。)のシグナル伝達ドメイン、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10、及び、CD3z、によって使用されるシグナル伝達ドメインを含んでもよい。
【0175】
本発明の対象CARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインには、明確で検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つ又は複数のサイトカインの産生物増加、標的遺伝子の転写の変化、タンパク質活性の変化;細胞挙動の変化、例えば、CARの活性化(すなわち、抗原と二量化剤によって活性化される)に応答して、細胞死;細胞増殖;細胞分化;細胞生存;細胞シグナル伝達反応の調節等)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、以下に記載するように、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6等)のITAMモチーフを含む。
いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。
いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、膜結合CARに共有結合しておらず、代わりに細胞質内に拡散している。
【0176】
本発明の対象CARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインには、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)-含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、ITAMモチーフは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて2回繰り返され、ITAMモチーフの第1及び第2のインスタンス(instance)は、6から8のアミノ酸によって互いに分離されている。
一実施形態では、対象CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIA、FcRL5等の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むヒト免疫グロブリン受容体のシグナル伝達ドメインを含む(例えば、Gillis et al., Front. Immunol., 5:254 (2014)を参照されたい)。
【0177】
好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMモチーフを含むポリペプチドに由来するITAMモチーフ含有部分(ITAM motif-containing portion)とすることができる。例えば、適切な細胞内シグナル伝達ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質由来のITAMモチーフ含有ドメインであり得る。したがって、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する全タンパク質の全配列を含む必要はない。好適なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:DAP12、FCER1G(Fcε受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)、及びCD79A(抗原受容体複合関連(associated)タンパク質アルファ鎖)。
【0178】
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX-活性化タンパク質12;KAR-結合タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;キラー活性化受容体結合タンパク質;キラー活性化受容体結合タンパク質等としても知られている)由来である。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、FCER1G(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fcイプシロンRIガンマ;fcRガンマ;fceR1ガンマ;高親和性免疫グロブリンε受容体サブユニットγ;免疫グロブリンE受容体、高親和性ガンマ鎖等としても知られている。)由来である。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原、デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖等としても知られている)由来である。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3e等としても知られている。)由来である。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-ガンマ、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)等としても知られている。)由来である。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ゼータ、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZ等としても知られている。)由来である。
一実施形態では、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連(associated)タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン関連(associated)アルファ);MB-1膜糖タンパク質;Ig-アルファ;膜結合免疫グロブリン関連(associated)タンパク質;表面IGM関連(associated)タンパク質等としても知られている)由来である。
一実施形態において、本開示の対象CARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。
一実施形態では、本開示の対象CARにおける使用に適した細胞内シグナル伝達ドメインは、ZAP70ポリペプチドのことを含む。
いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b又はCD66dの細胞質内シグナル伝達ドメインを含む。
一実施形態において、CARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質内シグナル伝達ドメインを含む。
【0179】
通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を採用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。前記細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分(truncated portion)を使用する場合、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、その切断部分をインタクト(intact)鎖の代わりに使用することができる。前記細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含む。
【0180】
本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメインのいずれか、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の膜貫通ドメインのいずれか又はCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0181】
さらに、対象CARでの使用に適した変異細胞内シグナル伝達ドメインは、当技術分野で知られている。YMFMモチーフはICOSに存在し、PI3Kのp85とp50アルファの両サブユニットをリクルート(recruit)し、AKTシグナルを増強するSH2結合モチーフである。例えば、Simpson et al. (2010) Curr. Opin. Immunol., 22:326-332を参照されたい。
一実施形態では、CD28細胞内ドメイン変異体は、YMFMモチーフを含むように生成され得る。
【0182】
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む4-1BB共刺激ドメインを含み、これは配列番号2又は3に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメインを含み、これは、配列番号5に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によりコードされてもよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCD28(YMFM)共刺激ドメインを含み、これは、配列番号7に記載の塩基配列を含む核酸配列によってコード化されてもよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むICOS共刺激ドメインを含み、これは、配列番号9又は配列番号10に記載の塩基配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むICOS(YMNM)共刺激ドメインを含み、これは、配列番号12に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むCD2共刺激ドメインを含み、これは、配列番号14に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むCD27共刺激ドメインを含み、これは、配列番号16に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むOX40共刺激ドメインを含み、これは、配列番号18に記載のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
【0183】
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、配列番号19又は配列番号21に記載のアミノ酸配列を含むCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含み、これはそれぞれ配列番号20又は配列番号22に記載の塩基配列を含む核酸配列によってコードされてもよい。
【0184】
特異的な活性を維持しながら、前記細胞内ドメインの許容できるバリエーションは、当業者に知られているであろう。
例えば、いくつかの実施形態では、前記細胞内ドメインは、配列番号19又は21に記載されているアミノ酸配列のいずれかと、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
例えば、いくつかの実施形態において、前記細胞内ドメインは、配列番号20又は22に記載されているヌクレオチド配列のいずれかと、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる。
【0185】
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、ICOS共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、CD28共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、CD28 YMFM変異体共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
一実施形態では、対象CARの細胞内ドメインは、CD27共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
一実施形態において、対象CARの細胞内ドメインは、OX40共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
例示的な一実施形態において、対象CARの細胞内ドメインは、4-1BB共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
例示的な一実施形態において、対象CARの細胞内ドメインは、CD2共刺激ドメイン及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0186】
表1は、本明細書に記載のCARのドメインの例示的な配列を示すものである。
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0187】
B.T細胞レセプター
いくつかの実施形態では、修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞(例えば、修飾非刺激又は刺激T細胞)は、外来性T細胞受容体(TCR)を発現している。任意の抗原(例えば、固形腫瘍抗原)に対して親和性を有するTCRを含む任意の修飾細胞が想定され、本明細書の開示に鑑みて当業者が容易に理解し製造することができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、前記標的細胞は、特定のT細胞受容体(TCR)遺伝子(例えば、TRAC及びTRBC遺伝子)を含むように改変(altered)されている。TCR又はその抗原結合部分には、腫瘍、ウイルス又は自己免疫タンパク質の抗原等の標的ポリペプチドのペプチドエピトープ又はT細胞エピトープを認識するものが含まれる。
いくつかの実施形態において、前記TCRは、腫瘍関連抗原に対する結合特異性を有する。
いくつかの実施態様において、例示的な腫瘍関連抗原は、NY-ESO-1(LAGE2、LAGE2B、又は癌/精巣抗原1)、メラノーマ関連抗原(MAGE)及びH3.3K27Mを含む。
【0189】
TCRは、6つの異なる膜結合鎖からなるジスルフィド結合ヘテロ二量体タンパク質であり、抗原に応答したT細胞の活性化に関与している。アルファ/ベータTCRとガンマ/デルタTCRが存在する。アルファ/ベータTCRは、TCRアルファ鎖とTCRベータ鎖を含む。TCRアルファ鎖とTCRベータ鎖を含むTCRを発現するT細胞は、一般にアルファ/ベータT細胞と呼ばれる。ガンマ/デルタTCRは、TCRガンマ鎖とTCRデルタ鎖を含む。TCRガンマ鎖とTCRデルタ鎖からなるTCRを発現するT細胞は、一般にガンマ/デルタT細胞と呼ばれている。本開示のTCRは、TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含むTCRである。TCRアルファ鎖とTCRベータ鎖は、それぞれ可変領域と定常(constant)領域という2つの細胞外ドメインで構成されている。TCRアルファ鎖可変領域とTCRベータ鎖可変領域は、TCRが標的抗原に親和するために必要な領域である。各可変領域は3つの超可変又は相補性決定領域(CDR)を含み、標的抗原との結合を提供する。TCRアルファ鎖の定常領域とTCRベータ鎖の定常領域は、細胞膜の近傍にある。TCRはさらに、膜貫通領域と短い細胞質尾部を含む。CD3分子はTCRヘテロ二量体と一緒に組み合わされる。CD3分子は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として知られているチロシンリン酸化のための特徴的な配列モチーフを含む。近傍のシグナル伝達イベントは、CD3分子を介して行われるため、TCR-CD3複合体の相互作用は、細胞認識イベントの媒介に重要な役割を果たす。
【0190】
TCRの刺激は、抗原ペプチドをT細胞に提示する抗原提示細胞上の主要組織適合性複合体分子(MHC)によって引き起こされ、TCRと相互作用して一連の細胞内シグナル伝達カスケードを誘発する。TCRが関与することで、細胞増殖、サイトカイン産生、活性化誘導性細胞死をもたらす正負両方のシグナル伝達カスケードが開始されます。
【0191】
本発明のTCRは、野生型TCR、高親和性TCR及び/又はキメラTCRであり得る。高親和性TCRは、野生型TCRと比較して標的抗原に対して高い親和性を付与する野生型TCRに対する修飾の結果であってもよい。高親和性TCRは、親和性成熟(matured)TCRであってもよい。TCR及び/又はTCRの親和性成熟を修飾する方法は、当業者に知られている。TCRを工学的に発現させる技術には、それぞれのサブユニットを連結するネイティブなジスルフィドブリッジ(bridge)を含むTCRヘテロ二量体の生産が含まれるが、これらに限定されない(Garboczi, et al., (1996), Nature 384(6605): 134-41; Garboczi, et al., (1996), J Immunol 157(12): 5403-10; Chang et al., (1994), PNAS USA 91 : 1 1408-1 1412; Davodeau et al., (1993), J. Biol. Chem. 268(21): 15455-15460; Golden et al., (1997), J. Imm. Meth. 206: 163-169; U.S. Pat. No. 6,080,840)。
【0192】
いくつかの実施形態では、外来性TCRは、完全なTCR又はその抗原結合部分若しくは抗原結合フラグメントである。
いくつかの実施形態において、前記TCRは、ab形又はgd形のTCRを含む、インタクト(intact)又は全長TCRである。
いくつかの実施形態では、TCRは、全長TCRよりも少ないが、MHC-ペプチド複合体に結合する等、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する抗原結合部分である。
いくつかの場合では、TCRの抗原結合部分又はフラグメントは、完全長又はインタクトなTCRの構造ドメインの一部しか含まないが、それでも完全なTCRが結合するMHC-ペプチド複合体等のペプチドエピトープを結合することが可能であり得る。
いくつかの場合では、抗原結合部は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン、例えばTCRの可変a鎖及び可変b鎖を含む。
一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHC及び/又はMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域(CDR)を含む。
【0193】
いくつかの実施形態において、TCRの可変ドメインは、超可変ループ、すなわちCDRを含み、これは一般に、抗原認識及び結合能力ならびに特異性に対して主として貢献するものである。
いくつかの実施形態において、TCRのCDR又はその組み合わせは、所定のTCR分子の抗原結合部位の全て又は実質的に全てを形成する。TCR鎖の可変領域内の種々のCDRは、一般にフレームワーク領域(FR)によって分離され、このフレームワーク領域は、CDRと比較して、一般にTCR分子間でより少ない変動を示す(例えば、Jores et al, PNAS, 87:9138 (1990); Chothia et al., EMBO J., 7:3745 (1988)を参照されるか、Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol., 27:55 (2003)を参照されたい)。
いくつかの実施形態において、CDR3は、抗原結合又は特異性を担う主要なCDRであるか、又は抗原認識、及び/又はペプチド-MHC複合体の処理されたペプチド部分との相互作用について、所定のTCR可変領域上の3つのCDRの中で最も重要である。
いくつかの状況では、アルファ鎖のCDR1は、ある種の抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。
いくつかの状況では、ベータ鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用することができる。
いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用又は認識に最も強く寄与するか、又はそれを担う主要なCDRである。
いくつかの実施形態では、b鎖の可変領域は、一般に超抗原結合に関与し、抗原認識には関与しない、さらなる超可変領域(CDR4又はHVR4)を含み得る(Kotb, Clinical Microbiology Reviews, 8:41 1-426 (1995))。
【0194】
いくつかの実施形態において、TCRは、可変アルファドメイン(Va)及び/又は可変ベータドメイン(Vp)又はそれらの抗原結合フラグメントを含む。
いくつかの実施形態において、TCRのアルファ鎖及び/又はベータ鎖はまた、定数ドメイン(constant domain)、膜貫通ドメイン及び/又は短い細胞質尾部を含み得る(例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3 Ed., Current Biology Publications, p. 4:33 (1997)を参照されたい)。
【0195】
いくつかの実施形態において、前記アルファ鎖定数ドメインは、TRAC遺伝子(IMGT命名法)によってコードされるか、又はその変異体である。
いくつかの実施形態において、前記ベータ鎖定数領域は、TRBC1又はTRBC2遺伝子(IMGT命名法)によりコードされるか、又はその変異体である。
いくつかの実施形態では、前記定数ドメインは、細胞膜に隣接している。
例えば、いくつかの場合では、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定数ドメイン(membrane-proximal constant domains)、及び2つの膜遠位可変ドメイン(membrane-distal variable domains)を含み、これらの可変ドメインはそれぞれCDRを含む。
【0196】
TCRの様々なドメイン又は領域を決定又は識別することは、当業者のレベルの範囲内である。
いくつかの態様において、TCRの残基は、知られているか、国際免疫遺伝学情報システム(IMGT)番号付けシステムに従って特定することができる(例えば、www.imgt.org; see also, Lefranc et al., Developmental and Comparative Immunology, 2:55-77 (2003)、及びThe T Cell Factsbook 2nd Edition, Lefranc and LeFranc Academic Press 2001を参照されたい。)。このシステムを用いると、TCR Va鎖及び/又はnb鎖内のCDR1配列は、残基番号27~38の間(両端を含む)に存在するアミノ酸に対応し、TCR Va鎖及び/又はnb鎖内のCDR2配列は、残基番号56~65の間(両端を含む)に存在するアミノ酸に対応し、TCR Va鎖及び/又はnb鎖内のCDR3配列は残基番号105~117の間(両端を含む)に存在するアミノ酸に対応する。
【0197】
いくつかの実施形態では、前記TCRは、1つのジスルフィド結合又は複数のジスルフィド結合等によって連結された2つの鎖a及びb(又は任意にg及びd)のヘテロ二量体であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記TCRの定数ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2つの鎖を連結する短い連結配列を含み得る。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、該TCRが定数ドメインにおいて2つのジスルフィド結合を含むように、a鎖及びb鎖の各々に追加のシステイン残基を有することができる。
いくつかの実施形態において、前記定数ドメイン及び前記可変ドメインの各々は、システイン残基によって形成されるジスルフィド結合を含む。
【0198】
いくつかの実施形態において、記載されるように細胞を操作するためのTCRは、実質的に全長のコード化配列が容易に入手可能である、na、b鎖の配列等の既知のTCR配列から生成したものである。V鎖配列を含む全長TCR配列を細胞源から取得する方法はよく知られている。
いくつかの実施形態において、TCRをコードする核酸は、所定の一つの細胞又は複数の細胞内または細胞から単離されたTCRをコードする核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅又は公的に利用可能なTCR DNA配列の合成等、様々なソースから得ることができる。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、生物学的源、例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ又は他の公知の源等から細胞等から得られる。
いくつかの実施形態では、前記T細胞は、インビボで分離された細胞から得ることができる。
いくつかの実施形態では、T-細胞は、培養されたT-細胞ハイブリドーマ又はクローンであることができる。
いくつかの実施形態では、前記TCR又はその抗原結合部分は、前記TCRの配列の知識(knowledge)から合成的に生成することができる。
いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、癌抗原)に対する高親和性T細胞クローンが同定され、患者から単離され、細胞に導入される。
いくつかの実施形態において、標的抗原のTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、又はHLA)で操作されたトランスジェニックマウスにおいて生成されている。例えば、腫瘍抗原(例えば、Parkhurst et al., Clin Cancer Res., 15: 169-180 (2009)及びCohen et al., J. Immunol., 175:5799-5808 (2005)を参照のこと)が参照できる。
いくつかの実施形態において、ファージディスプレイ(Phage display)は、標的抗原に対するTCRを単離するために使用される(例えば、Varela-Rohena et al., Nat. Med., 14: 1390-1395 (2008) and Li, Nat. Biotechnol., 23:349-354 (2005)を参照のこと。)。
いくつかの実施形態において、前記TCR又はその抗原結合部分は、修飾又は操作されたものである。
いくつかの実施形態では、指向性進化法(directed evolution)は、特定のMHC-ペプチド複合体に対するより高い親和性等、変化した特性を有するTCRを生成するために使用される。
いくつかの実施形態において、指向性進化は、限定されるものではないが、酵母ディスプレイ(Holler et al., Nat. Immunol., 4:55-62 (2003); Holler et al., PNAS USA,97: 5387-92 (2000))、ファージディスプレイ(Li et al., Nat. Biotechnol., 23: 349-54 (2005))、又はT細胞ディスプレイ(Chervin et al., J. Immunol. Methods, 339:175-84 (2008))に含まれる、ディスプレイ法により達成される。
いくつかの実施形態では、ディスプレイアプローチは、既知の、親又は参照TCRを操作する、又は修正することを含む。例えば、いくつかの場合では、野生型TCRを、CDRの1つ又は複数の残基が変異した変異型(mutagenized)TCRを製造するためのテンプレートとして使用することができ、所望の標的抗原に対する高い親和性等、所望の変更特性を有する変異体が選択される。
【0199】
記載されるようないくつかの実施形態では、前記TCRは、導入された1つ又は複数のジスルフィド結合を含むことができる。
いくつかの実施形態では、ネイティブなジスルフィド結合は存在しない。
いくつかの実施形態では、ネイティブな鎖間ジスルフィド結合を形成するネイティブなシステイン(例えば、a鎖及びb鎖の前記定数ドメインにおいて)の1つ又は複数は、セリン又はアラニン等の別の残基に置換されている。
いくつかの実施形態では、導入されたジスルフィド結合は、アルファ鎖及びベータ鎖の非システイン残基、例えば、a鎖及びb鎖の定数ドメインにおいて、システインに変異させることによって形成することができる。TCRの例示的な非ネイティブジスルフィド結合は、WO2006/000830及びWO2006/037960に記載されている。
いくつかの実施形態では、システインは、アルファ鎖のThr48及びベータ鎖のSer57残基、アルファ鎖のThr45及びベータ鎖のSer77残基、アルファ鎖のTyrIO及びベータ鎖のSerl7残基、アルファ鎖のThr45及びベータ鎖のAsp59残基及び/又はアルファ鎖のSerl5及びベータ鎖のGulul5残基に導入され得る。
いくつかの実施形態では、組換えTCRにおける非ネイティブシステイン残基(例えば、1つ又は複数の非ネイティブジスルフィド結合をもたらす)の存在は、ネイティブTCR鎖を含むミスマッチTCRペア(pair)の発現よりも、それが導入された細胞における所望の組換えTCRの産生を有利にできる。
【0200】
いくつかの実施形態では、前記TCR鎖は、膜貫通ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、前記膜貫通ドメインは、正に荷電している。
いくつかの場合では、前記TCR鎖は、細胞質尾部を含み得る。
いくつかの態様では、TCRの各鎖(例えば、アルファ又はベータ)は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定数ドメイン、膜貫通領域、及びC末端の短い細胞質尾部を保有し得る。
いくつかの実施形態において、TCRは、例えば細胞質尾部を介して、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質と関連している。
いくつかの場合では、前記構造は、前記TCRがCD3やそのサブユニットのような他の分子と関連する(associate)ことを可能にする。
例えば、膜貫通領域を持つ定数ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し(anchor)、CD3シグナル伝達装置又は複合体の不変サブユニットと関連することができる。CD3シグナル伝達サブユニット(CD3Y、CD36、CD3s、Oウプシロン3z鎖等)の細胞内尾部には、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つ又は複数の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMsを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、前記TCRは、全長TCRである。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、抗原結合部分である。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、二量体TCR(dTCR)である。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、一本鎖TCR(sc-TCR)である。前記TCRは、細胞結合型であっても、可溶性型であってもよい。
いくつかの実施形態では、提供される方法の目的のために、前記TCRは、細胞の表面で発現する細胞結合型である。
いくつかの実施形態では、前記dTCRは、TCR a鎖可変領域配列に対応する配列がTCR a鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合した第1のポリペプチドと、TCR b鎖可変領域配列に対応する配列がTCR b鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合した第2のポリペプチドとを含み、前記第1及び第2のポリペプチドはジスルフィド結合により連結されている。
いくつかの実施形態では、前記結合は、ネイティブな二量体ab TCRに存在するネイティブな鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。
いくつかの実施形態では、前記鎖間ジスルフィド結合は、ネイティブTCRに存在しない。
例えば、いくつかの実施形態では、1つ又は複数のシステインがdTCRポリペプチドペアの定常領域細胞外配列に組み込まれることができる。
いくつかの場合では、ネイティブと非ネイティブの両方のジスルフィド結合が望ましい場合もある。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、膜に固定(anchor)するための膜貫通配列を含む。
いくつかの実施形態において、dTCRは、可変aドメイン、定数aドメイン及び前記定数aドメインのC末端に付着した第1の二量化モチーフを含むTCR a鎖、並びに可変bドメイン、定数bドメイン及び定数bドメインのC末端に付着した第1の二量化モチーフを含むTCR b鎖を含み、第1及び第2の二量化モチーフは、容易に相互作用して、TCR a鎖及びTCR b鎖を一緒につなぐ第1の二量化モチーフのアミノ酸と第2の二量化モチーフのアミノ酸との間に共有結合を形成する。
【0202】
いくつかの実施形態において、前記TCRは、MHC-ペプチド複合体に結合することができるα鎖及びβ鎖を含む単一アミノ酸鎖であるscTCRである。
【0203】
典型的には、scTCRは、当業者に公知の方法を用いて生成することができ、例えば、WO1996/13593、WO1996/18105、WO1999/18129、WO2004/033685、WO2006/037960、WO2011/044186、米国特許第No.7,569,664号及びSchlueter et al. J. Mol. Biol., 256:859 (1996)を参照されたい。
【0204】
いくつかの実施形態では、前記膜貫通ドメインは、Ca又はCP膜貫通ドメインであり得る。
いくつかの実施形態では、前記膜貫通ドメインは、非TCR由来、例えば、CD3z、CD28又はB7.1由来の膜貫通領域であり得る。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、細胞質配列に対応する配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、CD3zシグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、CD3とTCR複合体を形成することが可能である。
いくつかの実施形態では、前記TCR又はその抗原結合部分は、結合特性等の1つ又は複数の特性が変更された、組換え生産された天然タンパク質又はその変異型であってもよい。
いくつかの実施形態では、TCRは、ヒト、マウス、ラット又は他の哺乳類等の様々な動物種のうちの1つに由来し得る。
【0205】
いくつかの実施形態において、前記TCRは、標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含んでいる。前記標的抗原は、前記標的細胞に関連する(associated)任意のタイプのタンパク質、又はそのエピトープを含むことができる。例えば、前記TCRは、前記標的細胞の特定の疾患状態を示す標的細胞上の標的抗原に対する親和性を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記標的抗原は、MHCによって処理され、提示される(presented)。
【0206】
いくつかの実施形態では、TCRは、N末端からC末端まで、第1の異種TCRサブユニット鎖を順次コードする核酸構築物(construct)によってコードされ、前記TCRサブユニット鎖は、TCRサブユニット鎖の可変領域及び定数領域、ならびに第2の異種TCRサブユニット鎖の可変領域及び可変領域を含む。前記構築物は、第1の異種TCRサブユニット鎖の可変領域に先行する第1の自己開裂ペプチド、及び第1の異種TCRサブユニット鎖と第2のTCRサブユニットとの間の第2の自己開裂ペプチドをさらにコードする。
いくつかの実施形態では、前記第1の異種TCRサブユニット鎖は、TCRα鎖であり、前記第2の異種TCRサブユニット鎖は、TCRβ鎖である。
いくつかの実施形態では、前記第1の異種TCRサブユニット鎖は、TCRβ鎖であり、前記第2の異種TCRサブユニット鎖はTCRα鎖である。
【0207】
自己開裂ペプチドの例としては、これらに限定されないが、自己開裂ウイルス2Aペプチド、例えば、ブタテスコウイルス-1(P2A)ペプチド、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)(T2A)ペプチド、馬鼻炎Aウイルス(E2A)ペプチド又は口蹄疫ウイルス(F2A)ペプチドが挙げられる。自己開裂2Aペプチドは、1つの構築物(construct)から複数の遺伝子生成物を発現させることができる(例えば、Chng et al. "Cleavage efficient 2A peptides for high level monoclonal antibody expression in CHO cells," MAbs, 7(2): 403-412 (2015)を参照されたい。)。
いくつかの実施形態では、前記第1及び第2の自己開裂ペプチドは、同じである。
いくつかの実施形態では、前記第1及び第2の自己開裂ペプチドは、異なる。
【0208】
C.抗原結合ポリペプチドの追加
いくつかの実施形態では、前記修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞(例えば、修飾非刺激又は刺激T細胞)は、抗原結合ドメイン、細胞表面受容体リガンド、又は腫瘍抗原に結合するポリペプチドを発現する。
いくつかの例では、前記抗原結合ドメインは、細胞表面タンパク質又は腫瘍細胞上に発現する受容体を認識する抗体を含む。
いくつかの例では、前記抗原結合ドメインは、腫瘍抗原を認識する抗体を含む。
いくつかの例では、前記抗原結合ドメインは、全長抗体又はその抗原結合フラグメント、Fab、F(ab)2、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab2、単鎖可変フラグメント(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ、V-NAR又はVhHを含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、前記修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞(例えば、修飾非刺激又は刺激T細胞)は、細胞表面受容体リガンドを発現する。
いくつかの例では、前記リガンドは、腫瘍細胞上に発現する細胞表面受容体に結合する。
いくつかの場合では、前記リガンドは、前記細胞表面レセプターに結合する野生型タンパク質又はその変異体を含む。
いくつかの例では、前記リガンドは、前記細胞表面受容体に結合する全長タンパク質又はその機能性フラグメントを含む。
いくつかの場合では、前記機能性フラグメントは、タンパク質の全長バージョンと比較して、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%又は約40%の長さを含むが、前記細胞表面受容体への結合は保持される。
いくつかの場合では、前記リガンドは、前記細胞表面の受容体に結合するDe Novo操作タンパク質(de novo engineered protein)である。例示的なリガンドとしては、これらに限定されないが、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、又はWnt3A等が挙げられる。
【0210】
いくつかの実施形態では、前記修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞(例えば、修飾非刺激又は刺激T細胞)は、腫瘍抗原に結合するポリペプチドを発現する。
いくつかの例では、前記腫瘍抗原は血液学的悪性腫瘍に関連(associated)している。例示的な腫瘍抗原としては、これらに限定されないが、CD19、CD20、CD22、CD33/IL3Ra、ROR1、メソセリン、c-Met、PSMA、PSCA、葉酸受容体アルファ、葉酸受容体ベータ、EGFRvIII、GPC2、Tn-MUC1、GDNFファミリー受容体アルファ4(GFRa4)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びIL13Ra2等が挙げられる。
いくつかの実施態様では、前記腫瘍抗原は、CD19、CD20、CD22、BCMA、CD37、メソセリン、PSMA、PSCA、Tn-MUC1、EGFR、EGFRvIII、c-Met、HER1、HER2、CD33、CD133、GD2、GPC2、GPC3、NKG2D、KRAS又はWT1を含む。
いくつかの実施態様において、前記ポリペプチドは、前記腫瘍抗原のリガンド、例えば、前記腫瘍抗原に結合する全長タンパク質、その機能性フラグメント、又は腫瘍抗原に結合するde novo操作リガンドである。
いくつかの例では、前記ポリペプチドは、前記腫瘍抗原に結合する抗体である。
【0211】
IV.組成物
本発明の組成物は、本明細書に記載の修飾非刺激免疫細胞又は本明細書に記載の修飾刺激免疫細胞、任意に、1つ又は複数の薬学的又は生理学的に許容できる担体、希釈剤、アジュバント又は賦形剤と組み合わせて含んでよい。このような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水等の緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン等の炭水化物、マンニトール;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸、抗酸化剤;EDTA又はグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは非経口投与(例えば、静脈内投与)用に製剤化される。
【0212】
V.使用方法
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、対象における疾患を治療する方法であって、本明細書に記載の修飾非刺激免疫細胞集団又は本明細書に記載の修飾刺激免疫細胞集団を対象に投与することを含んでいる。
いくつかの実施態様では、前記疾患は、癌、任意で固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である。
いくつかの実施態様において、修飾非刺激免疫細胞又は修飾刺激免疫細胞はそれぞれ、癌によって発現される抗原に特異的である抗原結合ドメインを発現する。
【0213】
いくつかの実施形態では、前記癌は、固形腫瘍である。例示的な固形腫瘍としては、これらに限定されないが、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、膠芽腫、神経芽細胞腫)、乳癌、大腸癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、腎癌、肺癌、メラノーマ、中皮腫、卵巣癌、すい臓癌、前立腺癌又は胃癌が挙げられる。
いくつかの例では、前記固形腫瘍は、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、膠芽腫、神経芽細胞腫)、乳癌、肺癌、メラノーマ、中皮腫、卵巣癌、膵臓癌又は前立腺癌である。
いくつかの例では、前記固形腫瘍は、転移性癌である。
いくつかの場合では、前記固形腫瘍は、再発又は難治性の固形腫瘍である。
【0214】
いくつかの実施形態において、癌は、血液学的悪性腫瘍である。
いくつかの実施形態において、血液悪性腫瘍は、B細胞悪性腫瘍又はT細胞悪性腫瘍である。
いくつかの実施形態において、血液悪性腫瘍は、リンパ腫、白血病又は骨髄腫である。いくつかの実施形態において、血液悪性腫瘍は、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫である。
例示的な血液悪性腫瘍としては、これららに限定されないが、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節内辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高グレードB細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ球性リンパ腫、B細胞性リンパ球性白血病、リンパ球形質性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性胸水リンパ腫又はリンパマトイド肉芽腫症が挙げられる。
いくつかの例では、前記血液悪性腫瘍は、転移性血液悪性腫瘍である。
いくつかの場合では、前記血液悪性腫瘍は、再発性又は難治性の血液悪性腫瘍である。
【0215】
いくつかの実施形態において、疾患を処置する方法は、対象に追加の治療剤を投与する又は追加の治療をさらに含む。
【0216】
いくつかの場合では、本明細書に開示される追加の治療薬は、化学療法剤、免疫療法剤、標的療法、放射線療法又はそれらの組み合わせを含む。例示的な追加の治療剤には、これらに限定されないが、アルトレタミン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ロムスチン、メルファラン、オキサラプラチン、テモゾロマイド又はチオテパ等のアルキル化剤、;5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロクスリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート又はペメトレキセド等の代謝拮抗剤;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン又はイダルビシン等のアントラサイクリン;トポテカン又はイリノテカン(CPT-11)等のトポイソメラーゼI阻害剤;エトポシド(VP-16)、テニポシド又はミトコキサントロン等のトポイソメラーゼII阻害剤;ドセタキセル、エストラムスチン、イクサベピロン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン又はビノレルビン等の分裂阻害剤;又はプレドニゾン、メチルプレドニゾロン又はデキサメタゾン等のコルチコステロイド等が挙げられる。
【0217】
いくつかの場合では、追加の治療剤は、第一選択療法(first-line therapy)を含み。本明細書で使用する場合、「第一選択療法」は、癌を有する対象のための一次治療を含んでいる。
いくつかの例では、前記癌は、原発性癌である。
他の例では、前記癌は、転移性又は再発性の癌である。
いくつかの場合では、前記第一選択療法は、化学療法を含む。
他の場合では、前記第一選択治療は、放射線治療を含む。当業者であれば、異なる第一選択治療が異なるタイプの癌に適用され得ることを容易に理解するであろう。
【0218】
いくつかの態様では、前記追加治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤を含んでなる。
いくつかの例では、前記免疫チェックポイント阻害剤は、抗体又はそのフラグメント等の阻害剤(例えば、、モノクローナル抗体、ヒト、ヒト化抗又はキメラ抗体)、RNAi分子、又はPD-1、PD-L1、CTLA4、PD-L2、LAG3、B7-H3、KIR、CD137、PS、TFM3、CD52、CD30、CD20、CD33、CD27、OX40、GITR、ICOS、BTLA(CD272)、CD160、2B4、LAIR1、TIGHT、LIGHT、DR3、CD226、CD2又はSLAMに対する低分子を含む。
【0219】
例示的なチェックポイント阻害剤としては、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、トレメリムマブ、又はイピリムマブが挙げられる。
【0220】
いくつかの実施形態では、前記追加療法は、放射線療法を含んでいる。
【0221】
いくつかの実施形態では、追加療法は、手術を含んでいる。
【0222】
VI.キットと製造品
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキット又は製造品は、修飾非刺激免疫細胞(例えば、修飾非刺激T細胞)の1つ又は複数の集団又は修飾刺激免疫細胞(例えば、修飾刺激T細胞)の1つ又は複数の集団を含む。
いくつかの例では、本明細書に記載のキット又は製造品は、バイアル、チューブ等の1つ又は複数の容器を受け入れるように区画されたキャリア、パッケージ、又は容器をさらに含み、容器のそれぞれは、本明細書に記載の方法で使用する別々の要素のうちの1つを含んでいる。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、試験管等が挙げられる。
一実施形態では、前記容器は、ガラスやプラスチック等の様々な材料から形成される。
【0223】
本明細書で提供される製造物品は、包装材を含む。医薬品包装材料の例としては、これらに限定されないが、ブリスターパック、ボトル、チューブ、バッグ、容器、ボトル、及び選択された製剤及び意図された投与及び治療の様式に適した任意の包装材料が挙げられる。
【0224】
キットは、通常、内容物及び/又は使用方法を記載したラベル、及び使用方法を記載したパッケージの挿入物を含む。また、通常、説明書も同梱される。
【0225】
VII.定義
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本開示の実施又は試験において、本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を使用することができるが、好適な方法及び材料が本明細書に記載される。
【0226】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数の参照語を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0227】
本明細書で使用する場合、「約(about)」という用語は、値が、値を決定するために採用されている装置又は方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。数値指定、例えば温度、時間、量、濃度(範囲を含む)の前に使用される「約(about)」という用語は、(+)又は(-)15%、10%、5%、3%、2%又は1%によって変化する可能性がある近似値を示す。
【0228】
本開示の実施は、特に断らない限り、当業者の技術範囲内である組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの従来技術を採用することになる。
例えば、Green and Sambrook eds. (2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th edition; the series Ausubel et al. eds. (2015) Current Protocols in Molecular Biology; the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); MacPherson et al. (2015) PCR 1 : A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press); MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach; McPherson et al. (2006) PCR: The Basics (Garland Science); Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual; Greenfield ed. (2014) Antibodies, A Laboratory Manual; Freshney (2010) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 6th edition; Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis; U.S. Pat. No. 4,683,195; Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization; Herdewijn ed. (2005) Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications; Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation; Buzdin and Lukyanov ed. (2007) Nucleic Acids Hybridization: Modern Applications; Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986)); Grandi ed. (2007) In Vitro Transcription and Translation Protocols, 2nd edition; Guisan ed. (2006) Immobilization of Enzymes and Cells; Perbal (1988) A Practical Guide to Molecular Cloning, 2nd edition; Miller and Calos eds, (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory); Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells; Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London); Lundblad and Macdonald eds. (2010) Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, 4th edition; and Herzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunology, 5th editionを参照されたい。
【0229】
「同種異系(Allogeneic)」とは、同じ種の異なる動物に由来するあらゆる材料を指す。
【0230】
本明細書で使用する場合、「抗体(antibody)」は、目的の抗原(例えば、腫瘍関連抗原)に対する重要な既知の特異的免疫反応活性を有するそのような集合体(例えば、インタクトの抗体分子、免疫アドヘシン又はそれらの変異体)を指す。抗体や免疫グロブリンは、軽鎖と重鎖を含み、その間に鎖間共有結合があっても、なくてもよい。脊椎動物系の免疫グロブリンの基本構造は、比較的よく理解されています。
【0231】
「抗体フラグメント」という用語は、インタクトな抗体の一部を指し、インタクトの抗体の抗原性決定可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、線状抗体、scFv抗体、及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体等が挙げられる。
【0232】
例えばキメラ抗原受容体の抗原結合ドメインは、抗体変異体(antibody variants)を含む。本明細書で使用される場合、「抗体変異体」という用語には、天然に存在しないように合成及び操作された形態の抗体、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全な重鎖ではない抗体(例えば、ドメイン削除抗体又はミニボディ);2つ又はそれ以上の異なる抗原又は単一の抗原上の異なるエピトープに結合するように改変した多特異的形態の抗体(例えば、二特異性、三特異性等);重鎖分子をscFv分子等に結合したもの等が挙げられる。さらに、「抗体変異体」という用語には、多価の形態の抗体(例えば、3価、4価等、同じ抗原の3、4又はそれ以上のコピーに結合する抗体)が含まれる。
【0233】
本明細書で使用される「抗原」又は「Ag」という用語は、免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫反応には、抗体産生、特定の免疫担当細胞の活性化のいずれか、あるいは両方が関与してもよい。当業者であれば、実質的にすべてのタンパク質又はペプチドを含むあらゆる高分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNA又はゲノムDNAに由来することもできる。当業者であれば、免疫反応を引き起こすタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、したがって、本明細書においてその用語が使用される「抗原」をコードすることを理解する。さらに、当業者であれば、抗原は遺伝子の全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解できるであろう。本発明は、これらに限定されないが、1つ以上の遺伝子の部分ヌクレオチド配列、及びこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を引き出すために様々な組み合わせで配置されることは容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によってコード化されている必要は全くないことを理解できるであろう。抗原は、合成して生成することもできるし、生物学的サンプルに由来することもできることは、容易に明らかである。このような生物学的サンプルは、これらに限定されないが、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞又は生物学的流体が含み得る。
【0234】
本明細書で使用される場合、「自己の(autologous)」という用語は、後に個体に再導入される可能性のある同じ個体に由来する任意の材料を指すことを意図している。
【0235】
本明細書で使用する用語「キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)」又は「CAR」は、免疫エフェクター細胞又はその前駆体細胞上で発現し、抗原と特異的に結合するように設計された人工T細胞受容体を指す。CARは、養子細胞移植による養子細胞療法に使用することができる。
いくつかの実施形態では、養子細胞移植(又は治療)は、患者からT細胞を除去すること、及び特定の抗原に特異的な受容体を発現するようにT細胞を修飾することを含む。
いくつかの実施形態では、前記CARは、選択された標的、例えば、PSMA又はMUC1に対する特異性を有する。CARはまた、細胞内活性化ドメイン、膜貫通ドメイン、及び抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含み得る。
【0236】
「発現ベクター(expression vector)」とは、発現させるべきヌクレオチド配列に作動的に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現に必要な十分なシス作用要素を含んでいる。発現のための他の要素は、宿主細胞又はin vitro発現系で供給することができる。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸又はリポソームに含まれる)及びウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)等の当該分野で知られているものをすべて含む。
【0237】
「開裂(cleavage)」という用語は、核酸分子のバックボーンやペプチド結合の加水分解のような共有結合の切断を意味します。開裂は、これらに限定されないが、ホスホジエステル結合の酵素的又は化学的加水分解を含む、様々な方法によって開始することができる。一本鎖の開裂と二本鎖の開裂の両方が可能である。二本鎖開裂は、2つの異なる一本鎖開裂イベントの結果として発生し得る。DNAの開裂は、平滑末端又は千鳥状末端が生成され得る。
【0238】
本明細書で使用される「相同性(homologous)」は、2つの高分子分子間、例えば、2つの核酸分子間、例えば、2つのDNA分子又は2つのRNA分子、又は2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列同一性を指す。2つの分子の両方のサブユニットの位置が同じモノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンによって占められている場合、その位置で相同である。2つの配列の相動性は、一致する又は同一である位置の数の直接的な関数である。例えば、2つの配列の位置の半分(例えば、長さ10サブユニットのポリマー中の5つの位置)が同一であれば、2つの配列は50%同一であり、90%の位置(例えば、10個のうちの9個)が一致又は同一であれば、2つの配列は90%同一である。
【0239】
「非相同性末端接合(non-homologous end joining)」又はNHEJという用語は、DNA鎖の開裂した又は傷ついた末端が、相同性テンプレート核酸を必要とせずに直接結紮されるプロセスを意味する。NHEJの修復は、修復部位の1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換又はそれらの組み合わせをもたらすことができる。
【0240】
「相同性指向性修復(homology-directed repair)」又はHDRという用語は、DNA鎖の開裂した又は傷ついた末端が、相同性テンプレート又はドナー、核酸の挿入によって修復されるプロセスを指す。このとき、元のDNA配列は、相同性テンプレートDNAに置き換えられる。前記相同性テンプレート核酸は、ゲノムの他の場所(姉妹染色体、相同染色体又は同一若しくは異なる染色体上の反復領域)の相同配列によって提供することができる。外来性テンプレート核酸を導入することで、標的部位の配列のHDRによる特異的な変化を得ることができる。これにより、切断部位に特定の変異や導入遺伝子を導入することができる。前記外来テンプレートは、HDRによって導入される導入遺伝子又は変異をコードする一本鎖DNA(ssDNA)テンプレート又は二本鎖DNA(dsDNA)テンプレートであってよい。
いくつかの場合では、ssDNA又はdsDNAテンプレートは、標的カット又は挿入部位に挿入される異種配列を含む領域を挟む2つの相同性領域、例えば5’末端と3’末端を含む。
【0241】
本明細書で使用される「上流(upstream)」という用語は、ゲノム内の特定の部位又は遺伝子座、例えば、ゲノム編集システムによって触媒される開裂部位の5’に見出される核酸配列を意味する。本明細書で使用される「下流(downstream)」という用語は、ゲノム中の特定の部位又は遺伝子座の3’に見出される核酸配列を意味する。
【0242】
本明細書で互換的に使用される「有効量(effective amount)」又は「治療上有効量(therapeutically effective amount)」は、それを必要とする対象において所望の生理学的、治療的又は予防的な結果を達成するのに有効な、本明細書に記載の化合物、製剤、材料、医薬剤又は組成物の量を指す。そのような結果には、これらに限定されないが、哺乳類に投与したときに、本発明の組成物の非存在下で検出された免疫応答と比較して、検出可能なレベルの免疫応答を引き起こす量が含まれ得る。前記免疫応答は、多くの技術的に認知された方法によって容易に評価することができる。当業者であれば、本明細書に投与される組成物の量は、治療される疾患又は状態、治療される哺乳類の年齢及び健康状態及び身体状態、疾患の重症度、投与される特定の化合物等の多くの要因に基づいて変化し、容易に決定できることを理解するであろう。有効量は、治療される対象の健康及び身体状態、治療される対象の分類群、組成物の製剤、対象の病状の評価、及び他の関連要因に応じて、対象間で変化し得る。
【0243】
「エンコード(encoding)」とは、遺伝子、cDNA及びmRNA等のポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列が、ヌクレオチドの規定配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)又はアミノ酸の規定配列とその結果得られる生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成用のテンプレートとなる固有の特性のことをいう。このように、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写と翻訳が細胞又は他の生物系でタンパク質を生成する場合、タンパク質をコードする。遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用されるコード鎖(そのヌクレオチド配列はmRNA配列と同一であり、通常配列表で提供される)と非コード鎖の両方を、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードするものと呼ぶことができる。
【0244】
本明細書で使用される「内因性(endogenous)」とは、生物、細胞、組織又はシステム由来の、又はその内部で生成される任意の物質を指す。
【0245】
本明細書で使用される「エピトープ(epitope)」という用語は、B及び/又はT細胞応答を誘導する、免疫応答を誘発することができる抗原上の小さな化学分子として定義される。抗原は1つ又は複数のエピトープを持つことができる。ほとんどの抗原は多くのエピトープを持ち、すなわち多価である。一般的にエピトープは、約10個のアミノ酸又は糖の大きさである。
特定の例示的な実施形態では、前記エピトープは、約4~18アミノ酸、約5~16アミノ酸、約6~14アミノ酸、約7~12アミノ酸、約10~12アミノ酸又は約8~10アミノ酸である。当業者は、一般に、分子の特定の直鎖配列ではなく、全体の三次元構造が抗原特異性の主な基準であり、したがって、あるエピトープと別のエピトープを区別することを理解する。本開示に基づき、本発明で用いられるペプチドは、エピトープであり得る。
【0246】
本明細書で使用される場合、「外因性(exogenous)」という用語は、生物、細胞、組織又はシステムの外から導入された、又は生成された任意の材料を指す。
【0247】
本明細書で使用される用語「拡大する(expand)」は、T細胞の数の増加のように、数が増えることを意味する。
一実施形態では、生体外(ex vivo)で拡張されたT細胞は、培養物中に元々存在した数と比較して、相対的に数が増加する。
別の実施形態では、生体外で増殖したT細胞は、培養中の他の細胞種と比較して数が増加する。本明細書で使用される「生体外(ex vivo)」とは、生体(例えば、ヒト)から取り出し、生体外(例えば、培養皿、試験管、バイオリアクター内)で増殖させた細胞を指す。
【0248】
本明細書で使用される「発現(expression)」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳として定義される。
【0249】
本明細書で使用される「同一性(identity)」は、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば、2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列同一性を意味する。2つのアミノ酸配列の同じ位置に同じ残基がある場合。例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれの位置がアルギニンによって占められている場合、その位置では同一である。アライメント(alignment)において、2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を持つ同一性又はその程度は、しばしばパーセントで表される。2つのアミノ酸配列の同一性は、一致する又は同一である位置の数の直接的な関数である。例えば、2つの配列の位置の半分(例えば、長さ10アミノ酸のポリマー中の5つの位置)が同一であれば、2つの配列は50%同一であり、90%の位置(例えば、10個のうちの9個)が一致又は同一であれば、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0250】
「単離されている(isolated)」とは、自然の状態から変化した、又は取り除かれたことを意味する。例えば、生体内に天然に存在する核酸やペプチドは、「単離されてい」ないが、同じ核酸やペプチドが天然状態の共存物質から一部又は完全に分離されたものは、「単離されて」いるる。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもできるし、例えば宿主細胞のような非天然の環境下で存在することもできる。
【0251】
本明細書で使用される「ノックダウン(knockdown)」という用語は、1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現の減少を意味する。
【0252】
本明細書で使用される「ノックアウト(knockout)」という用語は、1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現のアブレーション8ablation)を意味する。
【0253】
本明細書で使用される「レンチウイルス(lentivirus)」は、レトロウイルス科の属を意味する。レンチウイルスは、レトロウイルスの中でも、分裂していない細胞に感染することができるという特徴があり、宿主細胞のDNAに大量の遺伝情報を送り込むことができるため、遺伝子導入ベクターの中でも最も効率的な方法のひとつといえる。HIV、SIV及びFIVは、すべてレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、生体内で有意なレベルの遺伝子導入を実現する手段を提供するものである。
【0254】
本明細書で使用される「修飾された(modified)」という用語は、本発明の分子又は細胞の変化した状態又は構造を意味する。分子は、化学的、構造的、機能的等、さまざまな方法で修飾されてもよい。核酸の導入により、細胞を修飾することができる。
【0255】
本明細書で使用される「調節する(modulating)」という用語は、治療又は化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、及び/又は他の同一だが未治療の対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルを検出可能に増加又は減少することを媒介することを意味する。この用語は、ネイティブ(native)のシグナル又は応答を妨害及び/又は影響し、それによって対象(例えば、ヒト)における有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0256】
本発明の文脈では、一般的に存在する核酸塩基の以下の略号が使用される。「A」は、アデノシン、「C」は、シトシン、「G」は、グアノシン、「T」は、チミジン、「U」は、ウリジンを意味する。
【0257】
特に指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮退版であり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句(phrase)は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列があるバージョンでイントロンを含むことができる程度にイントロンを含むこともできる。
【0258】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドの重合体である。したがって、本明細書で使用する核酸及びポリヌクレオチドは互換性がある。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それが加水分解されて単量体の「ヌクレオチド」になることができるという一般的な知識を有している。前記単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解することができる。本明細書で使用するポリヌクレオチドは、限定されるものではないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びポリメラーゼ連鎖反応等を用いた、組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、及び合成手段によって得られる、当技術分野で利用可能なあらゆる核酸配列を含む。
【0259】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を意味する。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含んでいなければならず、タンパク質又はペプチドの配列を含むことができる最大アミノ酸数は制限されない。ポリペプチドは、2つ又はそれ以上のアミノ酸がペプチド結合で結合したペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、一般にペプチド、オリゴペプチド、オリゴマーとも当技術分野で呼ばれる短い鎖と、一般にタンパク質と当技術分野で呼ばれる長い鎖の両方を指し、多くの種類が存在する。「ポリペプチド」として、例えば、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質等が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド又はそれらの組合せを含む。
【0260】
「特異性(specificity)」という用語は、所定の標的抗原(例えば、ヒト標的抗原)を特異的に結合する(例えば、免疫反応する)能力を指す。キメラ抗原受容体は、標的を特異的に結合する1つ又は複数の結合部位を含む単特異的なものであってもよいし、キメラ抗原受容体は、同一又は異なる標的を特異的に結合する2つ又はそれ以上の結合部位を含む多特異的なものであってもよい。
ある実施形態では、キメラ抗原受容体は、同じターゲットの2つの異なる(例えば、重ならない)部分に対して特異的である。
ある実施形態では、キメラ抗原受容体は、1つ以上の標的に特異的である。
【0261】
抗体に関して本明細書で使用する「特異的に結合する(specifically binds)」という用語は、サンプル中の特定の抗原を認識するが、他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体又はその結合フラグメント(例えば、scFv)を意味する。例えば、ある種の抗原に特異的に結合する抗体は、1つ又は複数の種からその抗原に結合することもある。しかし、このような異種間反応性は、それ自体で抗体の特異性の分類を変えることはない。
別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の異なる対立遺伝子型にも結合することがある。しかし、このような交差反応性は、それ自体で抗体の特異性の分類を変えるものではない。
いくつかの場合では、「特異的結合(specific binding)」又は「特異的に結合する」という用語は、抗体、タンパク質、キメラ抗原受容体、又はペプチドと第2の化学種との相互作用に関して使用することができ、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存していることを意味する。例えば、キメラ抗原受容体は、一般的にタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識し結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識 「A」と抗体を含む反応において、エピトープ「A」を含む分子(又は遊離の非標識A)が存在すると、抗体に結合した標識Aの量は減少する。
【0262】
本明細書で使用される「非刺激(unstimulated)」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドとの結合によって刺激又は誘導されていない免疫細胞(例えば、T細胞)の状態を意味する。非刺激T細胞は、「静止(quiescent)」又は「ナイーブ(naive)」T細胞としても知られており、当技術分野で知られている手段によって刺激されていない。非刺激細胞は、集団内の他の細胞(例えば、刺激T細胞)から細胞を分化させる可能性のあるマーカーを発現しており、これにはCD45RA及びCD62Lが含まれるがこれらに限定されない。
【0263】
本明細書で使用する「静止(quiescent)」とは、細胞、好ましくはT細胞が分裂しない可逆的な状態にあるが、細胞増殖に再突入する能力を保持しているものをいう。静止T細胞は、細胞サイズが小さく、増殖能力が低く、基礎代謝プログラムが低いという特徴がある。静止細胞は、刺激を与えて分裂及び増殖させることができる。静止細胞とは、実質的に増殖していない細胞集団である。静止は、BrdUアッセイ、EdUアッセイ、MTT細胞増殖アッセイ、XTT細胞増殖アッセイ、WST-1細胞増殖アッセイ等の細胞増殖アッセイ、Ki67や増殖細胞核抗原(PCNA)等のマーカーの測定等、多くの手段で測定できるがこれに限定されない。
【0264】
「刺激(stimulation)」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドとの結合により、それによってシグナル伝達事象、例えば、これに限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達の媒介、によって引き起こされる一次応答を意味している。刺激は、TGF-ベータのダウンレギュレーション及び/又は細胞骨格構造の再編成、クローン拡大、異なるサブセットへの分化等の特定分子の発現変化を媒介する。
【0265】
本明細書で使用される「刺激性分子(stimulatory molecule)」とは、抗原提示細胞上に存在する同種の刺激性リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。
【0266】
本明細書で使用される「刺激性リガンド(stimulatory ligand)」とは、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞等)上に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(ここでは「刺激性分子(stimulatory molecule)」と呼ぶ)と特異的に結合でき、それによって活性化、免疫応答の開始、増殖等(これらに限らない)を含むT細胞による一次応答を媒介できるリガンドをいう。刺激性リガンドは当技術分野でよく知られており、特に、ペプチドを搭載したMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体等を包含している。
【0267】
本明細書で使用される場合、非刺激免疫細胞(例えば、修飾非刺激免疫細胞)の培養に関する「非膨張条件」という用語は、免疫細胞を刺激しない培養条件を意味する。
いくつかの実施形態において、前記培養培地は、非刺激免疫細胞において刺激応答を誘導するような刺激分子又は刺激リガンドを含んでいない。
【0268】
本明細書で使用される場合、「対象(subject)」及び「患者(patient)」という用語は互換的に使用される。本明細書で使用されるように、対象は、非霊長類(例えば、牛、豚、馬、猫、犬、ラット等)又は霊長類(例えば、猿及びヒト)等の哺乳動物であり得る。
ある実施形態では、本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳類等の脊椎動物を指す。哺乳類には、ヒト、ヒト以外の霊長類、野生動物(wild animals)、野性動物(feral animals)、農耕動物、スポーツ動物、ペット等が含まれるが、これらに限定されない。免疫応答が惹起され得る生体であれば、対象又は患者であってもよい。
ある例示的な実施形態では、対象は、ヒトである。
【0269】
「標的部位(target site)」又は「標的配列(target sequence)」とは、結合が起こるのに十分な条件下で結合分子が特異的に結合しうる核酸の部分を規定するゲノム核酸配列を指す。
【0270】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体」又は「TCR」という用語は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。前記TCRは、主要組織適合性複合体分子に結合した抗原を認識する役割を担っている。TCRは、アルファ(a)鎖とベータ(b)鎖のヘテロ二量体で構成されているが、一部の細胞では、ガンマ及びデルタ(γ/δ)鎖で構成されている。TCRは、アルファ/ベータとガンマ/デルタ型があり、構造的には似ているが、解剖学的な位置や機能は異なる。各鎖は、可変ドメインと定数ドメインの2つの細胞外ドメインで構成されている。
いくつかの実施形態では、前記TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞及びガンマデルタT細胞を含む、TCRを含む任意の細胞上で修飾され得る。
【0271】
本明細書で使用される「治療的(therapeutic)」という用語は、治療及び/又は予防を意味する。治療効果とは、疾患状態の抑制、寛解、根絶によって得られるものである。
【0272】
本明細書で使用される場合、「治療(therapy)」という用語は、疾患又はそれに関連する症状の予防、管理、治療及び/又は改善において使用することができる任意のプロトコル、方法及び/又は薬剤(例えば、CAR-T)を意味する。
いくつかの実施形態において、「治療(therapies)」及び「治療(therapy)」という用語は、医療従事者等の当業者に知られている、疾患又はそれに関連する症状の予防、管理、治療及び/又は改善に有用な生物学的療法(例えば、養子細胞療法)、支持療法(例えば、リンパ切除療法)及び/又は他の療法を指す。
【0273】
本明細書で使用される「トランスフェクト(transfected)」又は「形質転換(transformed)」又は「形質導入(transduced)」という用語は、外来性核酸が宿主細胞に移行又は導入されるプロセスを指す。トランスフェクト」又は「形質転換」又は「形質導入」された細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換又は形質導入されたものである。前記細胞には、主要な対象細胞及びその子孫が含まれる。
【0274】
本明細書で使用される場合、「治療(treat)」、「処置(treatment)」及び「治療する(treatment)」という用語は、1つ又は複数の療法(固形腫瘍の治療に向けられたCAR-T療法を含むが、これに限定されない)の投与によって生じる、疾患(disease)又はそれに関連する症状(symptom)の進行、重症度、頻度及び/又は期間の低減又は改善について言及する。
本明細書で使用される「治療する」という用語は、治療される対象の疾患経過を変化させることを指すこともできる。治療効果としては、疾患の発生又は再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の軽減、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、寛解又は予後の改善等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0275】
「ベクター(vector)」とは、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質組成物のことである。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。また、核酸の細胞内への移行を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等も含まれると解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0276】
本明細書で使用されるように、Casエンドヌクレアーゼに関して「に基づく(based on)」という用語は、関心のある参照又は標的Casエンドヌクレアーゼと比較して、約60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するCas分子を意味する。
【0277】
本明細書で使用される場合、「完全培地(complete media)」及び「完全培地(complete medium)」という用語は、免疫細胞の増殖(例えば、T細胞の増殖)に最適化されている細胞培養培地を意味する。
いくつかの例では、完全培地は、タンパク質、無機塩、微量元素、ビタミン、アミノ酸、脂質、炭水化物、サイトカイン及び/又は成長因子等を含み、各成分の比が細胞増殖に最適化されている場合もある。例示的なタンパク質としては、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン及びインスリンが挙げられる。例示的な炭水化物としては、グルコースが挙げられる。例示的な無機塩としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンが挙げられる。例示的な微量元素としては、亜鉛、銅、セレン、トリカルボン酸が挙げられる。例示的なアミノ酸としては、L-グルタミン(例えば、アラニル-L-グルタミン又はグリシル-L-グルタミン)等の必須アミノ酸又はグリシン、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-プロリン及び/又はL-セリン等の非必須アミノ酸(NEAA)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、完全培地は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、フェノールレッド、抗生物質及び/又はβ-メルカプトエタノールの1又は複数を含むこともある。
いくつかの実施態様において、完全培地は無血清培地である。
いくつかの例では、完全媒体はゼノフリー媒体である。
【0278】
本明細書で使用される場合、「化学的に定義された培地(chemically defined media)」という用語は、すべての成分の組成及び濃度が既知である細胞培養媒体を意味する。完全培地(complete media)と異なるのは、完全培地が、組成及び/又は濃度が不明な成分、例えば動物由来成分を含む場合がある点である。
【0279】
いくつかの例では、「ゼノフリー(xeno-free)」培地は、動物由来(非ヒト)の成分を含んでいない。
いくつかの例では、ゼノフリー培地は、ヒト血清、成長因子、インスリン等の1つ又は複数のヒト由来成分を含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、「無血清(serum-free)」培地は血清又は血漿を含まないが、血清又は血漿に由来する成分を含んでもよい。
いくつかの例では、「無血清」培地は、ウシ血清アルブミン(BSA)等の動物由来成分を含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、「最小(minimum)」培地は、標的細胞の増殖に必要な最小限のものを含んでいる。
いくつかの例では、最小培地は、無機塩、炭素源及び水を含む。
いくつかの例では、サプリメント、サイトカイン及び/又はアルブミン(例えば、HSA)のようなタンパク質が前記最小培地に添加される。本明細書で使用される場合、サプリメントは、微量元素、ビタミン、アミノ酸、脂質、炭水化物、サイトカイン、成長因子又はそれらの組み合わせを含む。
【0282】
・範囲
本開示全体を通して、本発明の様々な態様は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での説明は、単に便宜的かつ簡潔にするためのものであり、本発明の範囲を融通無碍に限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、ある範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能なすべてのサブレンジ(subrange)を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等のサブレンジと、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6等が具体的に開示されていると考えるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【実施例】
【0283】
これらの実施例は、説明のためにのみ提供され、本明細書に提供される請求項の範囲を限定するものではない。
【0284】
実施例1-修飾非刺激T細胞を調製するための一般的なベクターフリーの製造方法
図2に示されるような方法に基づいて、修飾非刺激T細胞を調製した。
【0285】
簡単に言うと、非刺激T細胞は、新鮮な白血球サンプルから処理した。白血球からのT細胞選択は、製造者のプロトコールに基づき、CD4+及びCD8+T細胞のポジティブ選択のためにCD4及びCD8マイクロビーズを使用して、CliniMACS Prodigyで実施した。濃縮されたCD4+及びCD8+T細胞は、その後、電気穿孔法バッファーに再懸濁された。
【0286】
Cas9エンドヌクレアーゼ、gRNA、及びTCRアルファ定数(TRAC)遺伝子座を標的とするHDRテンプレートをインキュベートし、続いて、4D Nucleofector(Lonza)又はATx若しくはGTx electroporator(MaxCyte)を使用して、非刺激T細胞の集団にトランスフェクトされた。Cas9エンドヌクレアーゼ、gRNA、及びHDRテンプレートの比は、1:1:1であった。
【0287】
続いて、トランスフェクトされたT細胞を、採取前に約72時間培養し、-80℃で凍結した。
【0288】
実施例2-TRAC標的化gRNAを有するCRISPR/Cas9を用いた非刺激T細胞における内因性TCR発現の破壊
CRISPR/Cas9遺伝子編集を行い、非刺激T細胞のTCRアルファ定数(TRAC)遺伝子座を標的とした。
【0289】
2つのCRISPR/Cas9リボヌクレオプロテイン(RNP)システム:Truecut.v2 Cas9(ThermoFisher Scientific)及びSpyFi Cas9(Aldevron)を試験した。RNPを含まないモック電気穿孔法を行ったT細胞をポジティブコントロールとして使用した。RNP複合体による電気穿孔法から72時間後に、CD3 イプシロン及びTCR アルファ/ベータの発現についてフローサイトメトリーで細胞を分析した。
【0290】
図3A及び
図3Bは、内因性TCRを発現する細胞のパーセントが、RNPを電気穿孔法しなかったポジティブコントロール細胞と比較して、Truecut又はSpyFi CRISPR/Cas9 RNPのいずれかを有する細胞において著しく低いことを図示する。
【0291】
破壊されたTRAC遺伝子座へのHDRを介した挿入を試験するために、DNAドナーテンプレートを導入した。一本鎖DNA(ssDNA)ウルトラマーオリゴヌクレオチド及び化学修飾ssDNAドナーは、5’相同性アーム及び3’相同性アームに挟まれたEcoRI制限部位、(
図4)で設計された。相動性アームは、TRAC遺伝子座のCRISPR/Cas9カット部位の上流と下流で相同性を持つように設計されている。ssDNAドナーは、電気穿孔法により細胞内に導入された。HDRを介した挿入の有無を検証し、相動性アームを含む挿入の上流と下流のゲノム配列にプライマーを設計し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で該挿入部位を増幅した。
【0292】
次に、PCR生成物をEcoRIとインキュベートし、得られたDNAフラグメントをアガロース電気泳動で分離及び可視化した。
【0293】
図5は、EcoRIによる消化の結果を示している。DNAドナーへの挿入の成功は、CRISPR/Cas9編集とEcoRIによる消化の両方を実施したレーンの低分子量バンドによって示される。
【0294】
実施例3-NY-ESO-1 TCRをコードするドナーDNAをTRAC遺伝子座に挿入するノックイン戦略
図6は、NY-ESO-1に特異的な人工TCRをTRAC遺伝子座に挿入するHDRを介した戦略を示している。
【0295】
完全なTCRα及びTCRβ(VJ領域のみ)鎖を含むDNAドナーを設計した。CRISPRによるTRACエクソン1部位の開裂後、ペイロード(payload)の両側の相動性アームにより、外来性TCRの挿入が可能である。
自己開裂ペプチド(T2A及びP2A)は翻訳後に除去され、NY-ESO-1 TCRの完全長TCRα及びTCRβ鎖が構成的に発現する。
【0296】
実施例4-標的タンパク質をコードするDNAドナーのT細胞ゲノムの特定の遺伝子座への挿入
緑色蛍光タンパク質をコードするDNAドナー(GFP HDRカセット)を設計し、T細胞ゲノム内の特定の標的領域に挿入した。上記のように、GFP遺伝子は、5’相動性アームと3’相動性アームで挟まれていた。
図7は、各反応に使用したDNAドナーの量に応じて、GFP
+T細胞の検出率が異なることを示す。
【0297】
ある実施形態を図示し、説明したが、以下の特許請求の範囲に定義されるような、より広い局面での技術から逸脱することなく、当業者の通常の技術に従って、そこに変更及び修正を加えることができることが理解されねばならない。
【0298】
本明細書で例示的に説明した実施形態は、本明細書で特に開示されていない1つの又は複数の要素、1つ又は複数の限定がない場合にも好適に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)、「含む(containing)」等という用語は、拡大解釈され、制限されないものとする。さらに、本明細書で採用された用語及び表現は、説明の用語として使用されており、制限の用語ではなく、このような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴又はその一部の任意の等価物を排除する意図はないが、請求された技術の範囲内で種々の変更が可能であることは認識される。さらに、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という表現は、具体的に言及された要素、及び請求された技術の基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えない追加要素を含むと理解されるであろう。「からなる(consisting of)」という表現は、指定されていない要素を排除するものである。
【0299】
本開示は、本願に記載されたある実施形態の点で限定されるべきものではない。当業者には明らかなように、その精神と範囲から逸脱することなく、多くの修正と変形を行うことができる。本明細書に列挙したものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法及び組成物は、前述の説明から当業者には明らかであろう。このような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることを意図している。本開示は、添付の請求項の条件によってのみ限定されるものであり、そのような請求項が権利を有する等価物の全範囲に沿って限定される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、又は組成物に限定されないことを理解され、これらはもちろん変化し得る。また、本明細書で使用される用語は、ある実施形態を説明する目的のみのものであり、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0300】
さらに、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループの観点から説明される場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュグループのメンバーの任意の個々のメンバー又はサブグループの観点からも説明されることを認識するであろう。
【0301】
当業者には理解されるであろうが、あらゆる目的、特に文章による説明を提供する観点から、本明細書に開示されたすべての範囲は、終点を含む、そのサブレンジ及びサブレンジの組み合わせのあらゆる可能性も包含する。リストアップされたどの範囲も、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分解することを十分に説明し可能であると容易に認識することができる。非限定的な例として、ここで議論される各範囲は、下位3分の1、中位3分の1、上位3分の1等に容易に分解され得る。また、当業者には理解されるように、「~まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「~より大きい(greater than)」、「~より小さい(less than)」等のすべての言語は、言及された数を含み、上で議論したように、その後、サブレンジに分解することができる範囲を指している。最後に、当業者には理解されるであろうが、範囲は個々の数値(menber)を含む。
【0302】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、発行済み特許、及びその他の文書は、個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、又はその他の文書が、その全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる文章に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する範囲において除外される。
【0303】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】