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特表2023-540050気体流中の水素/酸素の除去システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】気体流中の水素/酸素の除去システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/23 20210101AFI20230913BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C25B9/23
B01D53/86 200
B01D53/86 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513633
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2021074057
(87)【国際公開番号】W WO2022049089
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】2013706.3
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321003751
【氏名又は名称】エナプター エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ トルベン
(72)【発明者】
【氏名】カルデコット ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】アイエッロ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン ショーン クロフォード
(72)【発明者】
【氏名】フィルピ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ヤンユストゥス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット マックス イシュトヴァーン
【テーマコード(参考)】
4D148
4K021
【Fターム(参考)】
4D148AA30
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03Y
4D148BA05Y
4D148BA07Y
4D148BA10Y
4D148BA11Y
4D148BA19Y
4D148BA21Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA37Y
4D148BA38Y
4D148BA41Y
4D148BB03
4D148BB09
4D148CA01
4D148CD01
4D148CD03
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA05
4D148DA06
4D148DA08
4D148DA20
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA09
4K021DB36
4K021DB53
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】
本発明の一実施形態によれば、気体流中の水素/酸素ガスを除去する結合器が提供される。
【解決手段】
結合器は、気体流の流れを収容可能なパイプを備える。パイプは、気体流を触媒活性構造(CAS)に伝達するように構成される。CASは、気体流の実質的大部分と接触するハウジングと、パイプと接続される入口と、再結合後の気体流を除去する出口と、気体流を結合器から離れるように伝達するためにCASの出口に接続される第2パイプと、を備える。本発明の第2実施形態は、直接電気化学セル内に収容されたCASである。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に、酸素を主とする主ガス流中の混入水素を除去する、またはその逆のための結合器装置であって、
入口と出口とを有するハウジングを備える触媒活性構造(CAS)と、
前記入口から前記出口に流れるように前記主ガス流を前記ハウジング内に搬送するために前記入口に連結された第1パイプと、
前記主ガス流を前記ハウジングから離れるように搬送する排気パイプと、
を有してなり、
前記CASは、水素と酸素とを結合して水を形成するように動作可能な触媒材料を含む構造要素を備えて、
前記構造要素は、前記ハウジング内で、前記入口と前記出口との間の一部に位置して、使用時に前記主ガス流が前記構造要素を通って流れるように、前記ハウジングの断面の大部分にわたって延在する、
ことを特徴とする結合器装置。
【請求項2】
前記CASは、前記主ガス流中の混入ガスの量が所定量を上回る場合に、水素と酸素とを結合して水を形成するように構成されて、
前記主ガス流中の水素と酸素との前記CASによる結合が確実に生じるように、前記主ガス流中の前記混入ガスの量を所定閾値以上に増加させる補充手段を備える、
請求項1記載の結合器装置。
【請求項3】
前記補充手段は、
前記主ガス流を前記CASの下流から上流に再循環させる手段と、
前記混入ガスを収容して、所定の条件下で前記混入ガスを放出するように構成されるリザーバと、
のいずれか一方、
を備える、
請求項2記載の結合器装置。
【請求項4】
前記リザーバは、金属水素化物である、
請求項3記載の結合器装置。
【請求項5】
前記混入ガスと前記主ガスとを再結合して水を形成すると同時に、前記混入ガスの存在を検出するように構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項6】
前記混入ガスの検出に用いられる1つ以上のセンサを備えて、
1つ以上の前記センサは、湿度センサと、温度センサと、熱伝導度センサと、のいずれかである、
請求項5記載の結合器装置。
【請求項7】
1つ以上の前記センサは、前記主ガス流中に存在する前記混入ガスの量を決定する演算手段に接続される、
請求項6記載の結合器装置。
【請求項8】
デミスタと接続された結合器装置であって、
前記CASは、
デミスタパッドの上流にある、
前記デミスタパッドの下流にある、または、
前記デミスタパッドと組み合わされる、
のいずれかである、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項9】
前記デミスタはさらに火炎防止器として作用して、好ましくは、前記デミスタは前記入口に取り付けられる、
請求項8記載の結合器装置。
【請求項10】
前記デミスタは、好ましくは発泡金属または焼結金属である発泡材料または焼結材料と、好ましくは焼結セラミックであるセラミックと、炭素系材料と、のいずれか1つであることが好ましい微孔質材料である、
請求項8または9記載の結合器装置。
【請求項11】
生成された液体を除去して、任意選択的に再利用する手段を備える、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項12】
前記構造要素は、カーボンブラック、セラミックなどの金属酸化物、高分子フィルム、金属発泡体、ゼオライト構造、または、金属有機骨格からなる骨格構造、を備える、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項13】
前記主ガス流に外気を導入する手段を備える、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項14】
前記触媒材料は、白金、パラジウム、または、前記白金もしくは前記パラジウムの合金である、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項15】
前記触媒材料は、PGMを含有しない材料であって、金属合金、セラミック、カルコゲナイド、プニクトゲニド、有機金属、または、他の金属錯体である、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の結合器装置。
【請求項16】
アノード層と、カソード層と、その間に位置するイオン交換膜と、を含む膜電極接合体(MEA)と、
第1圧力で動作するように構成されたアノード区画と、
第2圧力で動作するように構成されたカソード区画と、
電気的に絶縁された触媒活性構造(CAS)と、
を有してなり、
前記CASは、前記区画のうち低い圧力を有する一方の区画に位置して、使用中に主ガス流が前記CASを流れるように、前記一方の区画の横断面の大部分にわたって延在する、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項17】
電解装置と、AEMまたはPEMと、燃料電池と、可逆性燃料電池または電気化学コンプレッサと、のいずれか1つを含む、
請求項16記載の電気化学セル。
【請求項18】
乾式カソードを含むAEM電解装置を備える、
請求項16または17記載の電気化学セル。
【請求項19】
前記乾式カソードを含む前記AEM電解装置は、高圧下の前記乾式カソードで動作するように構成される、
請求項18記載の電気化学セル。
【請求項20】
前記CASは、片面もしくは両面のアイオノマー薄膜もしくは超薄膜、または、それらの組み合わせ、により、前記電気化学セルの他の構成要素から絶縁される、
請求項16乃至19のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項21】
水素と酸素とを含む主ガス流を利用するシステムにおいて、主に酸素からなる主ガス流から混入水素を除去する方法、またはその逆の方法であって、前記システムにおいて、前記主ガス流が前記入口から前記出口まで前記ハウジングを通って流れるように、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の結合器装置を設ける工程を有してなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記システムは、電気化学セルを含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記主ガス流は、0.4%と20%との間の混入ガスを含む、
請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
動作温度は、20℃と100℃との間である、
請求項21乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも少量の酸素を含む気体流中の水素を除去する手段と方法とに関する。本発明は、電解装置から出力される酸素含有物に使用されることを意図しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
水素には、エネルギー貯蔵から肥料の製造に至るまで様々な用途がある。水素は様々な資源から得られるが、異なる水素の資源には異なる色が与えられることが多い。グレー水素は、天然ガスや石油などの化石燃料から得られる。ブルー水素は、炭素捕捉技術を用いてグレーと同様の方法で得られる。グリーン水素は、二酸化炭素を排出せずに得られて、再生可能エネルギーと電解装置とを利用することにより実現されることが多い。これらの資源のいくつか、例えば、ブルーやグレーのような資源は、明白な理由により望ましくない。したがって、信頼性が高くて持続可能な方法で水素を製造できる必要がある。
【0003】
電解装置は、電気化学的に水を分解することにより、水素と酸素とを生成するために使用される装置である。一般的に、電解装置は、現在利用可能な3つの主要な技術、すなわち陰イオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)方式と、プロトン交換膜(PEM:Proton Exchange Membrane)方式と、液体アルカリ方式と、のうちの1つに分類される。液体アルカリ方式は、100年以上前から知られている最も確立された技術である。また、PEM方式も確立されており、数十年前から市販されている。AEM電解装置は、比較的新しい技術である。固体酸化物電解のような他の技術も利用可能である。
【0004】
特にAEM方式では、電解装置を加圧運転して水素を製造することが可能である。加圧で運転すると、水素クロスオーバが生じる可能性がある。酸素を含む流体中に水素が存在すると、発火源が発生または存在する場合に、特に注意が必要である。
【0005】
現在では、水素量が危険値を超える可能性を低減するために、出口で十分な換気を行うなど様々な方法でリスクが軽減されている。他に任意選択できる方法として、使用する圧縮システムに関する要件が増えるが、カソード圧を低くした運転が挙げられる。また、他に任意選択できる方法として、膜厚を比較的厚くすることも挙げられる。これらのパラメータを変更することは、電解装置の効率、またはより広い範囲におけるシステムの効率に悪影響を与え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PEM電解装置において、膜全体に再結合部を点在させる技術が公開されている。これは、全体の効率を低下させる可能性があり、すべての電気化学デバイスに適しているわけではない。文献に開示されているような手法は、AEMを利用する電気化学デバイスでの使用には、アノード電位および高いpHのため適さない。そのため、AEMを利用する電気化学デバイスには、新しい手法が必要であることが分かった。
【0007】
水素と酸素とは、様々な場面で混ざり合うことがある。酸素中に水素が4%から75%(体積ベース)の範囲にある混合物が可燃性であるため、その混合が問題となることがある。このような混合物は、酸素中の水素が18.3%と59%(体積比)との間で起爆する能力がある。本明細書に記載の発明は、危険閾値を越える可能性のある混合物の安全性を確保するために、任意のそのような状況に適用されてもよい。
【0008】
本発明の目的は、少なくとも少量の酸素を含む気体流中の水素を除去する改良された手段と方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、使用時に、酸素を主とする主ガス流中の混入水素を除去する、またはその逆のための結合器装置が提供される。結合器装置は、入口と出口とを有するハウジングを含む触媒活性構造(CAS:Catalytically Active Structure)と、入口から出口に流れるように主ガス流をハウジング内に搬送するために入口に連結された第1パイプと、前記主ガス流をハウジングから離れるように搬送する排気パイプと、を備えて、CASは、水素と酸素とを結合して水を形成する触媒材料を含む構造要素をさらに含み、この構造要素は、ハウジング内で入口と出口との間の一部に位置して、使用時に主ガス流が中を通って流れるように、ハウジングの断面の大部分にわたって延在する。
【0010】
本明細書において、用語「パイプ」は、銅、ステンレス鋼、ポリマー/プラスチック、およびアルミニウムなど様々な材料から作成された配管を含むものとして使用されるが、これらに限定されない。パイプまたは配管は、ガスや液体を送るためのあらゆる手段を意味する。
【0011】
本明細書において、用語「ガス流」と「気体流」とは、少なくとも水素と酸素とを含む任意の気体流を含むものとして使用される。あるいは、用語「流体」が使用される場合もある。その他の潜在的な混入物質については、流体の性質に応じて、他の適切な除去手段で対処する必要がある。気体流は、ガスに何らかの形で伴う蒸気および/または液体を含み得る。好ましい用途では、水が最も可能性が高い。
【0012】
本明細書において、用語「入口」と「出口」とは、ハウジングへの配管やハウジングからの配管など、従来型の入口と出口とを含むものとして使用される。さらに、これらの用語は、システムの、流体が出入りする場所や手段であるいずれの部分も含むものとして使用される。
【0013】
本明細書において、用語「触媒活性構造(CAS)」は、触媒の存在により触媒活性を有する任意の表面または構造を含むものとして使用されるが、これに限定されない。このような表面には、膜と、布と、構造と、これらの同等物とが含まれる。好ましい実施形態は、触媒床反応器、触媒コンバータ、触媒バーナなどの名称である。
【0014】
本明細書において、水素または酸素への言及は、結合器の用途に応じて、酸素または水素のいずれかの存在を含むものとして使用される。電解装置と組み合わせて使用される結合器は、アノードからの酸素を主とする流体から水素を除去するため、またはカソードからの水素を主とする流体に含まれる潜在的な酸素をすべて除去するために使用され得る。一般的に、気体流における比較的少量の成分が除去されるであろう。
【0015】
本明細書において、用語「燃焼」は、水素と酸素との再結合を含むものとして使用されるが、これに限定されない。燃焼は、再結合などの他の用語と互換的に使用される。一般的に、好ましい用途で言及されるものは水素の除去であり、その場合には、酸素と比較して少量の水素が存在するであろう。
【0016】
本明細書において、用語「デミスタ」と「デミスタパッド」とは、互換的に使用される。なお、パッドという用語が使用されても、必ずしもデミスタの幾何学的形状を限定するものではない。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、CASは、実質的に閉じたハウジングに収容されて、本明細書に記載の入口と出口とのパイプを通ることでのみ到達可能である。外気やその他の液体がハウジング内を透過可能であることは意図されていない。
【0018】
本発明は、水素と酸素との両方を含む気体流に作用することを意図している。好ましくは、酸素または水素のいずれかは、気体流の主体成分である。より好ましくは、混入(または「少量」)ガスは、気体流の0.1%と50%との間、より好ましくは0.1%と20%との間、さらにより好ましくは0.1%と10%との間を構成する。通常の運転では、混入ガスは、0.01%と5%との間であると想定されている。組成の例としては、酸素90%および水素10%と、酸素99.9%および水素0.1%と、これらの逆と、これらの間の任意の範囲と、が挙げられる。混入ガスを完全に除去するためには、水素および酸素のみを想定すると、反応の化学量論により、組成が制限される。場合により、混入ガスが50%を超えることもあるが、そのような事態は好ましくない。
【0019】
本発明は、触媒などの成分を変えることにより、様々な温度で作用するように構成されてもよい。好ましい実施形態において、温度は、室温(20℃)より高く、120℃未満である。より好ましくは、温度は、60℃と110℃との間であり、さらに好ましくは約90℃を中心とした70℃と100℃との間の温度である。なお、反応の発熱性と、任意選択による断熱材と、周囲温度の変化とにより、CASの温度が高くなる場合がある。このような測定値は、誤動作を示すために使用されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、CASがガスを再結合するために必要な最小レベルの混入ガスが存在し得る。好ましい実施形態において、再結合が起こるために必要な量のガスを供給する手段が提供される。このような手段には、ガスの再循環、結合器の前のリザーバの使用、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0021】
一実施形態において、結合器の下流の気体流が再循環されてもよい。再循環は、自動的に行われてもよく、またはこれに代えて、水素/酸素が上昇した場合、再循環を開始する下流の水素/酸素センサにより制御されてもよい。水素/酸素センサの代わりに、温度センサや湿度センサなどの他のセンサが採用されて較正されてもよい。
【0022】
水素が混入ガスである代替的な一実施形態において、混入ガスを吸着するように構成された金属水素化物または他の材料は、結合器の上流において、CASに、またはCASの前に存在すると想定される。水素は、金属水素化物に吸着するため、水素化物が吸着ピークに達するまで混入物質の排出を軽減する。水素化物の熱サイクルまたは圧力サイクルのいずれによっても水素を放出することが可能である。このようなサイクルは、実行時間に基づいて、所与の間隔で実施されてもよく、前述のとおり結合器の下流でセンサを利用して、吸着した水素を放出する方法のトリガを設定してもよい。
【0023】
水素リザーバとして金属水素化物を利用する実施形態において、圧力を低下させることは、吸着した水素を放出するトリガとなる。温度調節機能を有する実施形態において、温度を上昇させることは、吸着した水素を放出するトリガとなる。
【0024】
水素と酸素との再結合の産物が、水である。水分が過剰になると、CASのフラッディングが引き起こされる恐れがある。温度の上昇により余分な水分が蒸発するため、この反応の発熱性は、フラッディングを軽減させる。本発明の一実施形態において、前述の断続的な再結合で、所与の周期、または採用されたセンサの閾値のいずれかに基づいて、水管理が支援され得る。断続的な再結合は、出力における安全な組成を確保しながら、生成された水を蒸発などによりCASから除去することを可能にする。
【0025】
逆に、用途における混入ガスが何であるかに応じて、酸素リザーバが設けられてもよい。
【0026】
水素リザーバと酸素リザーバとのいずれを採用するかにかかわらず、リザーバは、CASと連結されてもよく、または別個の構成要素でもよいと想定される。さらに、リザーバは、結合器内に収容されてもよく、または結合器の上流に収容されてもよい。さらに別の実施形態において、リザーバは、結合器の下流にあり、吸着ガスの放出のときにガスを再利用する手段を備えてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、除去と検出とは、結合器により同時に達成される。必要に応じて、ガスの除去への言及は、検出手段が提供される実施形態において、ガスの検出への言及も含む。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、気体流の全体が、CASに接触するように案内される。これは、図示のとおり、CASが、混合ガスが流れる経路の断面のすべてではないにしても実質的に大部分を横断することにより実現され得る。
【0029】
好ましい実施形態において、結合器は、電気化学デバイス、より好ましくは電解装置、さらに好ましくはAEM電解装置と組み合わせて使用される。このような電気化学デバイスは、水槽またはその同等物を利用することが多い。このような水槽は、通常、ガスを除去する排出口を有する。気体流は、通常、酸素であり、少量の混入物として水素や水を含む。
【0030】
前述の用途において、デミスタは、水槽上に設置されてもよいと想定される。本明細書で請求される結合器は、このようなデミスタと直列に使用されてもよく、触媒の性質に応じて前または後のいずれかに配置されると想定される。あるいは、結合器は、デミスタハウジング内に組み込まれてもよく、またはデミスタパッドそのものと組み合わされてもよい。
【0031】
一実施形態において、再結合器/CASに連結されたデミスタは、火炎防止器およびデミスタとして二重に作用してもよい。起動時や停止時に起こり得る密閉および低流量という条件下での再結合では、弱い失火から爆発に至る可能性があり、少なくとも再結合器の入口には火炎防止器が必要である。火炎防止器は、水を脱気および凝集させて、CAS/リアクタチャンバへの直接的な水の導入を防ぐような、微孔質の焼結材料であることが好ましい。このような一実施形態では、起動時や停止時の安全性とシステム回復力とを確保するために、CASチャンバの入口に焼結金属製の合着フィルタが取り付けられるであろう。
【0032】
再結合器は、デミスタと連結されてもよく、CASは、デミスタパッドの上流にあるか、デミスタパッドの下流にあるか、またはデミスタパッドと組み合わされるかのいずれかであると想定される。また、デミスタパッドは、CASの側面に位置してもよく、すなわち、CASの上流と下流との両方に存在し得ると想定される。
【0033】
これらの実施形態において、他の実施形態と同様に、デミスタパッドが火炎防止器として二重に作用してもよい。このような二重に作用するデミスタ/火炎防止器の構成は、後述する。
【0034】
また、別の安全上の考慮事項として、金属製のハウジングやコネクタを通る水飽和ガス流において発生しやすい静電気放電に対して部品の強度を高めることがある。この問題を回避するため、CASを含むリアクタチャンバの内部金属表面の一部または全部にポリマーコーティングを適用することが想定される。これにより、不適切な接地または地絡による部品の帯電の場合も、リアクタチャンバ内で放電が発生しないことが保証される。
【0035】
任意のコーティングは疎水性でも親水性でもよいと想定されるが、好ましい実施形態では、ポリマーコーティングまたはその同等物は親水性である。別の一実施形態は、金属基材上の絶縁性の裏打ち層/下地層と、下地層上に蒸着された導電性および/または親水性のコーティングと、を有する複数のコーティング層を含むことが想定される。親水性および/または導電性の層は、帯電防止層として機能する。前述のコーティングは、CAS、デバイスの残りの部分、またはその両方の上に施されてもよい。
【0036】
別の用途において、水素出口に存在するいかなる酸素をも除去するために、存在する水や再結合により発生する水の除去に使用するドライヤを用いるとともにカソード出口に結合器が配置されてもよい。
【0037】
多くの実施形態において、酸素を主とする流体から水素を除去することが想定されるが、本発明にかかる結合器は、逆に、水素を主とする流体から酸素を除去するために使用され得る。他の実施形態と同様に、再結合により発生する水を処理するために、ドライヤの下流に乾燥手段が設けられてもよい。
【0038】
CASは、任意の適切な触媒活性表面であると想定されるが、好ましい実施形態において、CASは触媒バーナである。CASは、構造骨格としての金属発泡体を有してもよく、高分子フィルムを有してもよく、またはその他の適切な構造を有してもよい。また、CASは、構造体および/またはハウジングの壁に施されたポリマーコーティング内に存在してもよい。このような実施形態は、酸化アルミニウム構造上に担持されたPTFE被覆白金でもよく、またはその適切な代替物でもよい。
【0039】
CASは外気や他のガスを導入することなく動作するであろうと想定されるが、いくつかの実施形態では、外気を導入することが好ましい。これにより、完全な再結合が確実になる。処理済みの気体流を希釈するために、外気は、下流に導入されてもよい。
【0040】
CASでは、様々な触媒が再結合に使用されることが想定される。プラチナとパラジウムとの両方は、これらの合金と共に機能することが理解される。このような触媒の例としては、Pd/Alと、PtCo合金と、が挙げられる。
【0041】
好ましい実施形態において、金属合金、セラミック、カルコゲナイド、プニクトゲニド、有機金属、およびその他の金属錯体などのPGMを含有しない触媒が使用されるが、これらに限定されない。例としては、Ni合金などが挙げられる。水素酸化反応について良好な触媒であれば何が使用されてもよく、例えば、NiLaである。
【0042】
使用される触媒に関係なく、反応は以下のようになる。
2H+O→2H
【0043】
この反応は、気体流から水素と酸素とのいずれが除去される場合でも同じである。いずれの反応物質がなくなるまで、反応は続く。
【0044】
デミスタや他の乾燥手段に対する結合器の位置は、触媒の性質や選好に依る。前述のとおり、反応に伴い水が生成される。触媒の中には親水性のものがあり、湿った状態でより良く機能する。逆に、触媒の中にはより乾燥した条件が望ましい疎水性のものもある。また、担体自体も親水性または疎水性のいずれでもよい。水が生成されるため、疎水性が好ましいと想定される。CASは、触媒の好ましい特性に応じて、ドライヤやデミスタの前または後に配置されてもよい。液体水が存在すると、フラッディングとも呼ばれる過剰生成物の存在により反応速度が阻害される場合があるため、(生成された/過剰な)水を除去する手段を設けることが好ましい。同手段は、例えば、水を毛管作用で運ぶ手段、または水を蒸発させるための加熱もしくは化学的前処理などの手段などであるが、これらに限定されない。
【0045】
好ましい実施形態において、CASとデミスタとはハウジングを共有するように構成されて、CASはデミスタパッドの上または下に配置されるか、またはデミスタパッドに組み合わされる。前述のハウジング内でこれら2つの層を隔てる間隔を設ける手段が設けられてもよく、CASとデミスタパッドとを接触させてもよい。あるいは、前述のとおり、デミスタパッドとCASとは、組み合わされてもよい。このような組み合わせでは、前述のとおり別個の火炎防止器が必要となる場合がある。水素貯蔵に水素化物を利用する実施形態において、水素化物もデミスタ上またはデミスタ内に収容されてもよい。
【0046】
CASを形成するために、任意の触媒とともに、前述の担体に限定されない様々な担体が使用されることが想定される。好ましくは、担体は、機械的安定性と、熱安定性と、高表面積と、耐水性および耐腐食性と、を有する必要がある。このような担体の例としては、カーボンブラック、セラミックなどの金属酸化物、高分子フィルム、ニッケル発泡体などの金属発泡体、ゼオライト/ゼオライト構造体、および有機金属骨格などが挙げられる。好適と考えられる金属酸化物の例としては、Pd/SnOとPd/TiOとが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記の組み合わせが使用されることも想定される。
【0047】
コアシェルモデルは、基材と触媒とのいずれか一方、あるいは両方に適用されてもよい。基材に適用される場合は、CeOをシェルとしてAlをコアとしたものが一例で、シェルは熱安定性、保水性、耐食性、および耐水性など基板の寿命に関わる特性の組み合わせで選択される。触媒に関しては、コアシェル構成により、PGMの装填を減らすことが可能となり、また、非PGMの実施形態では、別の触媒が使用可能である。一例としては、PtをシェルとしてCoをコアとしたものが挙げられる。
【0048】
本発明の一実施形態において、水素を除去する手段は、さらに、水素と酸素との存在を検出する手段も含むように構成される。この手段は、CASの温度と、経験的分析により達成された予想温度と、の相関により実現されてもよい。水素および酸素の再結合と水素化物生成とは、いずれも発熱反応である。本発明は、さらに、再結合器であると同時に、水素センサまたは酸素センサとしても構成されてもよいことが想定される。CASの温度測定には、熱電対などの温度検知手段が使用されるものとする。温度は、存在する混入ガスの比率と相関し得る。流量も考慮される必要があり、さらに、水素化物を利用する実施形態では、相関において水素化物も考慮される必要がある。温度を測定することにより、存在するガスの比率が決定可能である。このような情報は、漏出や潜在的なリスクを知らせるために使用されてもよく、装置の制御システムで使用され得る。
【0049】
安全性を維持して、流出物中の混入ガス濃度が最小閾値であり、さらにフラッディングの可能性を低減する必要がある限りにおいて、CASリアクタの温度を制御して調節する手段が必要である。したがって、いくつかの実施形態において、反応の効率を確保するために、熱センサ/熱電対と、加熱手段と、PIDコントローラとは、反応器の動作温度を所定の設定値に調節するように利用される。さらに、ある定常状態の温度において、前述のPIDコントローラに利用されるヒータ出力データから、反応速度、ひいては流出物中の混入ガス流の含有量が推測され得る。温度センサで制御されるヒータの追加は、様々な組成の段階での再結合器の起動と停止とを可能にして、気体流がなくても動作温度が維持されて自律的な温度の維持が確実になる。さらに、ヒータは、CAS上の活性化部位のフラッディングを軽減する。
【0050】
あるいは、湿度センサまたは水センサが採用されてもよく、水量が、存在する水に対する水素の比率に比例する、または指標となる。また、質量が測定されて、マスバランスは、存在する各ガスの比率を計算するために求められ得る。この計算を一定の時間間隔で実行可能な演算手段が採用されてもよい。また、使用され得る別のセンサは、熱伝導率センサである。
【0051】
結合器は、略大気圧で使用されることが想定されているが、いくつかの実施形態において、ハウジングは1バール、10バール、または100バールを超える高圧に対応するように構成されてもよい。実際のところ、結合器は、圧力により制限されることは意図されない。結合器と内包されるCASとは、流体を処理するために十分な大きさを有するものとする。
【0052】
本発明は、酸素と水素との両方が気体流に含まれる可能性のある複数のシナリオで利用され得ることが想定される。例えば、水素燃焼エンジンの排気ガスなどであるが、これに限定されない。本発明が利用可能なその他のシナリオとしては、水素が完全に酸化されていないため、安全性を考慮して除去する必要がある場合などが挙げられる。好ましい実施形態では、本手段は、電解装置、より好ましくはAEM電解装置と組み合わせて利用される。いくつかの電解装置は、水槽や液体脱ガス槽を利用する。このような装置は、気体排出口を有することが多い。本発明の好ましい実施形態において、CASは、このような気体排出口と連通するように配置されることになる。他のよく確立された用途として、水槽の気体排出口にデミスタが利用され得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、フラッディングを防ぐために、水を除去する排水口または他の手段が、CASの近傍または後段に設けられてもよい。液体のみを確実に除去するためにバルブや他の手段が採用されることが想定されて、水はシステム内で再利用のためにタンクに案内されてもよい。
【0054】
本発明の第2実施形態によれば、電気化学セルが提供される。電気化学セルは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備える。MEAは、アノード層と、カソード層と、アノード層とカソード層との間に位置するイオン交換膜と、第1圧力で動作するように構成されたアノード区画と、第2圧力で動作するように構成されたカソード区画と、電気的に絶縁された触媒活性構造(CAS)と、を備える。CASは、比較的低い圧力を有する区画に位置して、使用中に主ガス流がCASを流れるように区画の断面の大部分にわたって延在する。
【0055】
本明細書において、電気化学セルは、電解装置、燃料電池、または電気化学コンプレッサを含むことが意図されるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。このようなデバイスは、従来のアルカリまたはPEM方式でもよいが、好ましくは陰イオン交換膜方式である。単一の電気化学セルが電解装置として使用されてもよく、またはこのような電気化学セルのスタックが電解装置として使用されてもよい。燃料電池および電気化学コンプレッサについても同様である。
【0056】
本明細書で言及するように、電気化学セルは、アノード区画とカソード区画との両方を有する。アノード区画は、イオン交換膜から始まり、アノード触媒と前述の構成要素を収容する区画とに向かって外向きに延在する。逆に、カソード区画は、イオン交換膜の反対側から、カソードを収容する区画を包含して、外向きに延在する。
【0057】
ここで説明されている実施形態は、陰イオン交換膜(AEM)またはプロトン交換膜(PEM)のいずれでも動作することが想定されているが、好ましい実施形態では、AEM電気化学デバイスである。さらに好ましいものは、乾式カソードで動作するAEM電解装置である。さらに好ましくは、乾式カソードの実施形態では、カソードは、アノードよりも高い圧力下にある。また、第1実施形態において説明した結合器は、乾式カソードで動作するAEM電解装置のアノードの下流で使用されることが好ましい。乾式カソードは、任意の圧力下にあってもよいが、好ましくは1バールから100バールの範囲、より好ましくは10バールから50バールの範囲、さらにより好ましくは30バールと40バールとの間の範囲であり、最も好ましくは約35バールである。水素を扱う場合、例えば、8バールの上限が守られている日本におけるように、低い上限を要求する法域もある。
【0058】
逆に、電気化学セルがアノードにおいて高い圧力下で動作している場合、結合器はカソード内にあってもよい。
【0059】
CASはMEAから電気的に絶縁されるものとするが、好ましい実施形態において、CASは、収容されている区画にかかわらず、電極の近くにあり、電極に当接する。他の部品からのCASの電気的絶縁は、片面または両面にアイオノマー薄膜を塗布するか、CASを2枚の超薄膜の間に配置するか、またはそれらの組み合わせにより、実現され得る。
【0060】
CASがガスの実質的な大部分に接触するための構成は、CASが、CASを収容するハウジングまたは区画の断面積のすべてではないにしても、実質的な大部分にわたって延在することが好ましい。
【0061】
この実施形態は、膜が十分に水和されることを確実にするとともに、特に乾式カソードで動作する電解装置についてカソード運動力学上の利点を有することが分かっている。これらの2つの予想されなかった利点は、電解装置をより一層安全にするとともに、電解装置の効率向上に役立つ。さらに、本実施形態に関連するすべての利点により、存在する混合電位の可能性が低減される。本配置の採用は、PEM電解装置の場合よりも、AEMに基づく電気化学デバイスの場合に有益である。
【0062】
本発明は、AEMまたはPEMを利用する可逆性燃料電池に有用であると想定される。このような実施形態において、アノードは酸素発生と水素酸化との両方において活発であり、混合電位により悪影響を受ける。それゆえ、本発明の利点がある。
【0063】
好ましい実施形態において、カソード区画は実質的に乾燥しており、液体が能動的に導入されることはない。このような電気化学デバイスは、乾式カソードで動作すると形容される。このCASは、乾式カソードで動作する電気化学デバイスのアノード区画のいずれの位置で使用されてもよいと想定される。あるいは、結合器は、酸素を主とする流体に水素が存在し得るアノード出口の下流のいずれの位置に配置されてもよい。水素は、乾式カソードで動作する場合の利点である高圧での水素製造時に起こるクロスオーバが原因で存在する。
【0064】
第2実施形態は、触媒、CAS、温度感知手段の使用、および存在するガスの比率を決定するための情報の処理など、第1実施形態について説明した適用可能な変形と実施形態とのいずれかおよびすべてを備えてもよい。
【0065】
CASは、様々な方法で作成されてもよく、使用される担体の性質に依存するものとする。一般的に、触媒溶液が使用されて、隣接する部品との絶縁のために、任意選択でアイオノマー溶液が使用されてもよい。触媒溶液は担体に噴霧されて、担体は前述のように任意の適切な構造であり、所望の場合、任意選択のアイオノマー溶液が塗布される。方法は、MEAの製造方法から公知であり、スプレー、塗装、スロットダイ、および転写などを含む。
【0066】
再結合触媒は、アノード区画からイオン交換膜に向かって、濃度が増加するか減少するかのいずれかの濃度勾配を有し得ることが想定される。あるいは、CASは、CAS全体にわたって実質的に均一な濃度の触媒を有してもよいことが想定される。また、触媒の濃度は、CAS内で変化してもよい。
【0067】
一般的に、CASをアノード層などの他の構成要素やMEAから電気的に絶縁する目的で、アイオノマー層が使用され得る。好ましくは、アイオノマー層は、超薄膜である。
【0068】
代替的な一実施形態において、下流の出口を通る放出の前にクロスオーバ水素を放出された酸素と再結合する混合触媒層を生成するために、CASがアノード触媒層と組み合わされる。前記出口は、任意選択でデミスタを備える。
【0069】
本発明の別の態様によると、水素と酸素とを含む主ガス流を利用するシステムにおいて、酸素を主とする主ガス流から混入水素を除去する方法、またはその逆の方法が提供される。本方法は、前述のシステムにおいて、主ガス流が入口から出口までハウジングを通って流れるように、実質的に前述のとおりの結合器装置を設ける工程を含む。
【0070】
本発明で利用されるデミスタは、所定の好ましい構造的特徴を有する。好ましくは、デミスタは、直径が100ミクロン未満、より好ましくは50ミクロン未満、さらにより好ましくは1ミクロンと20ミクロンとの間の細孔を有する多孔質基材である。表面処理された孔は、サブミクロンでもよい。
【0071】
好ましい実施形態において、デミスタは、金属発泡体または焼結金属の基材とされる。材料は、特にZn、Sn、Al、およびこれらの合金などの金属を避けて、潜在的なアルカリ蒸気と親和性があるように選択される(すなわち、ステンレス鋼、Ni、またはその合金)。デミスタ基材は、アルミナまたは炭素系を含む、セラミックまたは焼結セラミックなどの金属非含有でもよい。
【0072】
細孔の分布は、小さな範囲内でもよく、所望の値の周りで実質的に均一な孔径、すなわち5ミクロン程度の分布でもよく、あるいは(金属膜フィルタスキンバリアント(metal membrane filter skin variant)の10ミクロンバルク、および1ミクロンまたはサブミクロンの表面フィルムなど、均一的にまたは勾配を介して)2つの異なる細孔サイズを選択する双峰分布でもよい。複数の孔径分布、または分布勾配により、水蒸気の凝縮およびその後の液体水をより小さな孔に引き込む毛細管現象が可能になる。
【0073】
完全に飽和すると、幾何学的形状にもよるが、多孔質媒体は、重力的な流れと相変化に誘導された流れとの両方によりゆっくりと流出する。後者のプロセス(相変化に誘導された流れ(PCI:Phase Change Induced flow))は、デミスタの構成がCASハウジングに実質的に接続されている場合に重要である。つまり、再結合熱は、継続的にPCIを発生させて、PCIにより流入した水が低温側で凝縮して、高温側で蒸発/排水されることが可能となる。デミスタの主な機能は、再結合器が十分に高い定常温度(すなわち70℃と90℃との間)に達する前に水の早期導入を防ぐことであり、導入または発生した水は、その後蒸発してCASから排出される。
【0074】
デミスタは、システム起動時に上流側の通気管路の凝縮水が直ちに反応室に入ることを防ぐとともに、発生する廃熱を利用してデミスタが限界まで吸水した状態にならないようにするために、CAS/再結合器の入口に取り付けられてもよい。電解装置/システムの起動時に、CASが流入水より多くの水を生成する場合、CASが適切な定常状態に加熱されるまで、出口上のデミスタが最初に生成された液体水を毛細作用で運ぶことができる。電解装置の通気管路の凝縮水がシステム内の主要かつ最も問題のある水源であると判断された場合、さらに上流のデミスタが使用されることになる。
【0075】
好ましくは、デミスタは、再結合器/CASの上流にあり、CASの前で余分な水を除去してフラッディングを防止する。代替的な一実施形態において、デミスタは、CASの下流にあり、再結合器で発生した水を収容する。さらに別の一実施形態において、CASの上流と下流とに1個ずつ、2個のデミスタが使用される。
【0076】
好ましい実施形態において、CASは、(取り外し可能で交換可能な)カートリッジ形式のハウジングに設けられる。前記カートリッジは、触媒が汚れたり、変性したり、または別の理由で効果がなくなった場合に、部品全体を交換する必要なしにCASの交換を可能にして、それにより保守費用と休止時間とを削減するように構成されることが想定される。
【0077】
また、再結合器からの廃熱が、システムの他の部分の予熱に利用されることや、冷凍サイクルの一部としてシステムの他の部分の冷却手段として機能することも想定される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
以下、本発明の理解を助けるために、その具体的な実施形態を、例示として、添付図面を参照しながら説明する。
図1A図1Aは、本発明の第1実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である。
図1B図1Bは、本発明の第1実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である
図2A図2Aは、デミスタと連結された本発明の実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である。
図2B図2Bは、デミスタと連結された本発明の実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である。
図4A図4Aは、本発明の代替的な一実施形態を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、本発明の代替的な一実施形態を模式的に示す図である。
図5図5は、再利用ループを利用する、本発明の一実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である。
図6図6は、本発明の一実施形態にかかる結合器を模式的に示す図である。
図7A図7Aは、本発明にかかる結合器を模式的に示す図である。
図7B図7Bは、本発明にかかる結合器を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1Aを参照すると、ハウジング3aと、入口1aを通って浄化されるガスを導入するパイプ1とが示される。ハウジング3a内にはCAS4が存在する。CAS4では、再結合反応が起こり、それにより酸素を主とする流体中の水素、または水素を主とする流体中の酸素が除去される。浄化されたガスは、出口2aを通ってパイプ2に出ることができる。ガスの流れを引き起こす手段は、本明細書には示されないが、当業者には周知であろう。
【0080】
図1Aに図示される実施形態において、少量の混入水素を含む酸素を主としたガス流は、ガス流がCAS4に接触する入口1aに入る。CASでは、水素と酸素とが結合する再結合が起こり、水が生成される。前記水を除去する手段は、図示されていない。また、混入水素の濃度を検出する任意選択の温度センサおよび/または湿度センサは、図示されていない。1個以上の温度センサは、通常、CASに連結されることになる一方で、1個以上の湿度センサは、通常、CASのすぐ後(すなわち下流)に配置されることになろう。
【0081】
図1Bに図示される実施形態は、図1Aのものと多くの点で類似しているが、ハウジング3bの幾何学的形状という点で異なる。より一般的には、ハウジングの幾何学的形状は、例えば、入口における圧力および/または出口における所望の圧力を含む、システムの様々な特性とパラメータとにより決定されてもよい。
【0082】
上記で言及したように、図1Bに示される実施形態は、他のほとんどの点で図1Aのものと同様であり、その動作は、図1Aに関して前述のとおりと同様の方法で行われることになろう。
【0083】
図2Aは、本発明の実施形態を水槽6と組み合わせて示す。このような水槽は、一般的に、電解装置とともに使用される。このような電解装置の典型的な配置では、当業者によく理解されるように、電解液は、電解スタックから水槽6に流れて、そこで再循環される。AEM電解装置などにおいて、水槽6内の液体から出る溶存ガスは、酸素と水素とを含み得る。デミスタハウジング3cは、CAS4と、デミスタパッド5と、を収容する。ガスは、入口7aを通って水槽6からハウジング3cに入る。CAS4は、使用される触媒が疎水性か親水性かにより、それぞれデミスタパッド5の上または下(すなわち上流または下流)にあることを意味する破線で示される。親水性触媒は、出口が乾燥していることが必要な場合、再結合後にさらなる乾燥手段(不図示)を必要とする場合がある。結合後、ガスは、出口7bを通ってハウジング3cから出る。
【0084】
デミスタは、電解装置内の液面高さを維持して、液補充などのメンテナンスの頻度を減らすために使用されてもよい。ガスの外向きの流れに関係しない水槽への接続と水槽からの接続とは、本明細書には示されないが、当業者には周知であろう。
【0085】
図2Bに図示される実施形態は、外気が第2入口8を通ってCASに導入される点で図2Aの実施形態と異なる。外気や他のガスを導入するために、ファンが使用されてもよい。加圧運転する場合、CAS4に空気が導入可能なように、ファンの代わりにコンプレッサが使用されてもよい。
【0086】
図2A図2Bとの両方の配置において、少量の水素を含む酸素を主とした溶存ガスを含有する液体は、好ましくは液体脱ガス槽として構成された水槽6に入る。溶存ガスは、液体から除去されて、デミスタ3cに移動する。このハウジング3c内において、デミスタパッド5は液面高さを維持できて、CAS4により確実に安全な混合ガスのみが出口7bから排気される。
【0087】
図2A図2Bとにおいて、デミスタとCASとは、1つの部品となるように組み合わされてもよい。さらに、本デバイスは、本実施形態におけるデミスタがCASを有することなく、デミスタの前および/または後に、図7A図7Bとに示されるような再結合器を含むように構成されてもよい。図2A図2Bとにおいて、水は、図示されていない。
【0088】
図2A図2Bとにおいて、タンク6内の水からガスが除去されて、ガスと水蒸気とが入口7aを通ってハウジング3cに入ってから、デミスタパッド4からCAS5の順、またはCAS5からデミスタパッド4の順で通過する。この順番は、実施形態に依る。また、デミスタとCASとは、組み合わされてもよい。デミスタにより凝集された水蒸気は、入口7aを通って戻り水槽に逆流する。CASの後にデミスタがある実施形態において、凝集した水蒸気を(CASを迂回して)タンク6に戻す、または排水してフラッディングを防止するために迂回路(不図示)が設けられてもよい。また、CASのフラッディングを防ぐために、ハウジング3cが回転されてもよい。
【0089】
図3を参照すると、本発明の実施形態は、ハウジング3dを有する電解セルの形態で模式的に図示される。本実施形態において、水または電解液は、入口13を通ってセルのアノード9に入る。MEA11は、CAS4から(12において)電気的に絶縁されるものとして図示される。動作中、水素は、セルのカソード10で生成されて、出口15を通って出て行く。加圧運転の場合、水素がカソード10からアノード9にクロスオーバし得るため、水素の除去が必要である。CAS4は、クロスオーバした水素と、水の電気分解で発生した酸素と、を結合させるように作用する。その後、比較的純粋な酸素流は、出口14を通ってアノード9を離れる。図3に図示される電解装置は、乾式カソードで動作するように構成される。
【0090】
図4Aは、図3と同様に、乾式カソードで動作するように構成された電解セルを示す。相違点は、MEA11に見られる。本実施形態において、陰イオン交換膜15はCAS4に密着して、通常、高分子である超薄膜のアイオノマー層(または薄膜のキャスト膜)16により、CAS4がアノード層17から隔てられる。カソード層18は、陰イオン交換膜の反対側に位置するように図示される。図4Bに図示される実施形態において、アイオノマー層16により、CASがイオン交換膜から隔てられる。
【0091】
図3と、図4Aと、図4Bと、に図示された電解セルは、次のように動作する。電解液は、入口13からアノード区画に入る。電解は、カソード区画10でアノード区画9よりも高い圧力で水素が発生して起こる。その結果、一部の水素は、アノード区画9(酸素が生成されている)にクロスオーバし得る。この酸素と水素との混合物は、アノード区画のみ、および/またはアノード区画の下流に存在する。CAS4がアノード区画にあることにより、酸素と水素とが再結合して水が形成されて、少量存在する混入ガスが除去される。
【0092】
図5は、ハウジング3aが入口1aを通って入るパイプ1を有する点と、CAS4の後(すなわち下流)にパイプ2への出口2aがある点と、において図1Aに図示されるものと多くの点で類似する本発明の一実施形態を示す。この場合、パイプ2から分岐する、バルブ21への供給部20aを備える再利用ループがあり、再利用ループはパイプ20bを通ってハウジングに入る。あるいは、再利用ループは、CAS4のさらに上流にあってもよい。他の実施形態は当業者により想到されてもよく、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神から逸脱することなく、記載された実施形態に対して修正および変形が可能である。なお、バルブ21の制御手段は、図示されていない。また、完全な再利用を実現するパイプ2のBOPも図示されていない。
【0093】
図6は、図1A図1Bとを参照して説明したものと同様の本発明の代替的な一実施形態を示しており、水素リザーバ22が採用されている。一般的に、水素リザーバは、典型的には金属水素化物であり、任意選択の構成や代替的な構成が上記に開示されている。水素リザーバは、本実施形態において、CAS4の前(すなわち上流側)に配置される。リザーバ22内に貯蔵された水素の放出を引き起こす手段は、図6には図示されていないが上記に開示されている。
【0094】
図5図6との構成を組み合わせた実施形態において、リザーバ22は、ハウジングの下流でありながら20aでの再利用開始前に位置し得る。これは、再結合されなかった混入ガスが放出されることや、問題が発生する可能性のある下流に送られないことを保証する。
【0095】
温度検出手段と、検出された温度を混入ガスの異なる比率で予想される温度に較正する演算手段と、を導入することにより、いずれの実施形態も単なる結合器としてではなく、検出器としても動作するように構成されてもよい。これらの手段は、本明細書では図示されていない。これに代えて、またはこれに加えて、湿度センサまたは類似の演算手段が採用されてもよい。ここで重要なことは、様々なタイプのセンサが存在するガスの比率を計算できるように構成されてもよく、本明細書で請求する結合器と組み合わせてこのような手法を利用した変形は、本発明の範囲内にあると考慮されるべきであるということである。
【0096】
図7Aによれば、本発明にかかる結合器が示される。電解装置などの装置から生成される少量の酸素と水/水蒸気とを含む水素を主とした気体流は、入口1に入る。構造体50は、独立型の火炎防止器、デミスタ、または焼結金属フィルタであるか、代替的な一実施形態において、火炎防止器と、デミスタと、焼結金属フィルタとが組み合わされたものである。水や水蒸気は、凝集して排水口19およびバルブなどを通って排水されるが、排水や水槽などに向かう様子は図示されていない。ガスは、CAS4を構成するハウジング3内に入る。ハウジング内では、発熱を伴う再結合が起こる。ハウジングには、温度を測定する手段を備えたヒータ30が取り付けられている。また、CASが所望の温度を維持できるようにヒータを動作させて、クロスオーバ/混入物質レベルが低い起動時と運転停止時とに加熱して、再結合器の良好な動作を確保するように構成された任意選択的なPIDまたは他のコントローラへの接続は、図示されていない。温度が高すぎて混入ガスが過剰であることを意味する場合にユーザに警告するように構成された追加の演算手段は、図示されていない。CAS4の後、処理されたガスは、出口2を通って再結合器から出る。また、任意選択的な部品の絶縁および/または高分子コーティングも図示されていない。
【0097】
図7Bは、図7Aをほぼ反映しているが、デミスタ/火炎防止器がCAS4の下流にあることのみが異なる。CAS4の上流と下流との両方にデミスタ/火炎防止器を備えた実施形態は、図示されていない。図7Bの排水口19は、凝集した水が通気管路2から出るようにしてもよいため、任意選択である。
【0098】
本発明にかかる図7Aと7Bとなどに図示されるように、電解スタックまたはそのセルがデミスタの前および/または後に再結合器を備えることは、実用上の理由で好ましくないが可能である。好ましい実施形態において、デミスタと再結合器とは水槽上に位置して、そこに電解液と発生した混入物質含有ガスとが送られる。
【0099】
図示された実施形態は、デミスタパッドがCASであること、水素リザーバまたは酸素リザーバの追加、または下流ガスの再利用ループなど、本明細書に記載されている特徴のいずれかを含むように修正されても、または組み合わされてもよい。
【0100】
なお、本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されることを意図するものではない。例えば、酸素を含む流体中の水素除去が言及されている。逆に、このデバイスは、水素を主とする流体中の酸素除去のために再調整するように使用されてもよい。
【0101】
本発明は、電解装置の分野に限定されることを意図するものではない。実際のところ、本発明は、どのような用途でも、水素と酸素との両方からなる気流から水素または酸素を検出して除去するために利用され得る。本発明は、2種類のガスが流体に含まれて再結合できる場合の様々な用途に適応できると想定される。このような反応が発熱を伴う場合、濃度/比率は、同様に適合されてもよい。他の混入物質を除去するために、例えば、COスクラバなどの他の手段が設けられてもよい。
【0102】
なお、他の混入物質が存在する可能性があり、そのような場合には、除去、洗浄、または検出をする他の手段も設けられてもよい。
【0103】
本発明は、触媒を保持する担体に限定されることを必ずしも意図するものではない。
【0104】
CASが電気化学セル内にある実施形態において、セルそのものがハウジングとして解釈されるべきである。
【0105】
本発明は、請求される実施形態におけるアノード触媒またはカソード触媒のいずれかの電気化学セル内における位置により限定されることを意図するものではない。
【0106】
いずれの実施形態においても、CASを備える再結合器は、電解装置などであるが必ずしもこれに限定されない装置と通気管路との間に配置されることが意図されている。

図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】