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特表2023-540054GRN関連成人発症性神経変性の治療のための組換えアデノ随伴ウイルス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】GRN関連成人発症性神経変性の治療のための組換えアデノ随伴ウイルス
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20230913BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230913BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230913BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230913BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/864 100Z
C12N7/01 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/12
A61P43/00 105
A61P25/28
G01N33/68
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513708
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021047686
(87)【国際公開番号】W WO2022046988
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/070,639
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
2.TWEEN
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ニムロッド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA36
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
4C084AA17
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZB211
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA55
4C087NA14
4C087ZA15
4C087ZB21
(57)【要約】
ヒト患者における成人発症性神経変性疾患の治療に有用な治療レジメンであって、AAV1カプシド及びプログラニュリン(GRN)のコード配列を含むベクターゲノムを有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの投与を含む、治療レジメンが提供される。また、組換えAAVベクターを含む組成物、及び組換えAAVベクターの投与を含む、患者における成人発症性神経変性疾患を治療する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における成人発症性神経変性疾患の治療に有用な治療レジメンであって、前記レジメンが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの投与を含み、前記ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリン(GRN)のコード配列、及び標的細胞における前記プログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、前記投与が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムを含む、単回用量の大層内(ICM)注入を含む、治療レジメン。
【請求項2】
前記プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、請求項1に記載のレジメン。
【請求項3】
前記ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、請求項1又は2に記載のレジメン。
【請求項4】
前記ベクターゲノムが、配列番号24を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項5】
前記患者が、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項6】
前記患者が、少なくとも35歳である、請求項1~5のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項7】
前記患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が低い、請求項1~6のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項8】
前記患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が正常レベルの50%未満である、請求項7に記載のレジメン。
【請求項9】
前記患者は、CSF中のプログラニュリン濃度が正常レベルの約30%である、請求項7に記載のレジメン。
【請求項10】
CSF、血清、及び/又は血漿中のプログラニュリンのレベルを検出することを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項11】
i)ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、総タウ(T-タウ)、及びリン酸化タウ(P-タウ)のうちの1つ以上のCSFレベル、
ii)網膜リポフスチンを評価すること、
iii)脳体積、白質完全性、並びに中前頭皮質及び頭頂領域の厚さのうちの1つ以上の変化を追跡するためにMRIを実施すること、
iv)前頭葉及び/若しくは側頭葉における代謝低下を評価するためにFDG PETを実施すること、並びに/又は
v)疾患に関連する変化の減速を評価するためにEEG/誘発応答電位を測定すること、を測定することを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項12】
前記単回用量が、以下の組織型:前頭皮質、頭頂皮質、側頭皮質、後頭部皮質、髄質、小脳、頸部脊髄、胸部脊髄、腰椎脊髄、頸部後根神経節、胸部後根神経節、腰部後根神経節、及び三叉神経節のうちのいずれか1つ以上において、10GC/μgのDNAを提供するのに十分である、請求項1~11のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項13】
前記単回用量が、以下の組織型:前頭皮質、頭頂皮質、側頭皮質、後頭部皮質、髄質、小脳、頸部脊髄、胸部脊髄、腰椎脊髄、頸部後根神経節、胸部後根神経節、腰部後根神経節、及び三叉神経節のうちのいずれか1つ以上において、10GC/μgのDNAを提供するのに十分である、請求項1~12のいずれか一項に記載のレジメン。
【請求項14】
AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えAAVベクターを含む、医薬組成物であって、前記ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞における前記プログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、前記組成物が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムの用量を投与するために、大槽内(ICM)注入を必要とするヒト患者への大槽内(ICM)注入用に製剤化されている、医薬組成物。
【請求項15】
前記プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、請求項14又は15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ベクターゲノムが、配列番号24を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
成人発症性神経変性疾患を有する患者を治療する方法であって、前記方法が、ICM注入によって単回用量の組換えAAVを前記患者に投与することを含み、前記組換えAAVが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、前記ベクターゲノムが、AAV ITR、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞における前記プログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、
前記単回用量が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムである、方法。
【請求項19】
前記プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記ベクターゲノムが、配列番号24を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、少なくとも35歳である、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が低い、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が正常レベルの50%未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者は、CSF中のプログラニュリン濃度が正常レベルの約30%である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
CSF、血清、及び/又は血漿中のプログラニュリンの濃度を検出することを更に含む、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
i)ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、総タウ(T-タウ)、及びリン酸化タウ(P-タウ)のうちの1つ以上のCSF濃度、
ii)網膜リポフスチンを評価すること、
iii)脳体積、白質完全性、並びに中前頭皮質及び頭頂領域の厚さのうちの1つ以上の変化を追跡するためにMRIを実施すること、
iv)前頭葉及び/若しくは側頭葉における代謝低下を評価するためにFDG PETを実施すること、並びに/又は
v)疾患に関連する変化の減速を評価するためにEEG/誘発応答電位を測定すること、を測定することを更に含む、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
単位剤形の医薬組成物であって、
約1.44×1013~約4.33×1014GCの緩衝液中の組換えAAVベクターを含み、
前記組換えAAVが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、前記ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞において前記プログラニュリンの発現を指示する調節配列を含む、医薬組成物。
【請求項30】
前記プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、請求項29又は30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記ベクターゲノムが、配列番号24を含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物が、ICM投与用に製剤化されている、請求項29~32のいずれか一項に
記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記緩衝液が、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びポロキサマー188を含む、請求項29~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記緩衝液が、1mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、3mMの塩化カリウム、1.4mMの塩化カルシウム、0.8mMの塩化マグネシウム、及び0.001%のポロキサマー188を含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
約3.0mL、約4.0mL、又は約5.0mLの体積を有する、請求項29~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
成人発症性神経変性疾患を有するヒト患者の治療における使用のための、請求項29~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記患者が、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている、請求項37に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項39】
前記組成物が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムの用量を投与するために製剤化されている、請求項37又は38に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
前頭側頭型認知症(FTD)は、致命的な神経変性疾患であり、典型的には、人生の60代又は70代に現れ、実行機能、行動、発話、又は言語理解の障害を伴う。これらの症状は、前頭皮質及び側頭皮質に影響を及ぼす脳萎縮の特徴的なパターンに関連している。患者は、普遍的に進行性の経過を示し、症状の発症からの平均生存期間は8年である(Coyle-Gilchrist IT,et al.Neurology.2016;86(18):1736-43)。
【0002】
FTDは、高度に遺伝性であり、患者の約40%が陽性の家族歴を有する(Rohrer JD,et al.Neurology.2009;73(18):1451-6.)。5~10%のFTD患者では、遍在性のリソソームタンパク質であるプログラニュリン(PGRN)をコードするグラニュリン(GRN)遺伝子において、病原性の機能喪失変異が特定され得る(Rohrer JD,et al.Neurology.2009;73(18):1451-6)。GRN変異の保因者は、急速かつ広範囲の脳萎縮を示し、進行性核上性麻痺、基底核症候群、パーキンソン病、レビー小体を伴う認知症、又はアルツハイマー病などの他の神経変性疾患の臨床的特徴を呈し得る(Le Ber I,et al.Brain:a journal of neurology.2008;131(3):732-46.)。GRN変異は、常染色体優性形態で遺伝し、70歳までに90%を超える浸透率を有する(Gass J,et al.Human molecular genetics.2006;15(20):2988-3001)。単一のGRN変異の遺伝は、FTD及び他の遅発性神経変性疾患を引き起こすが、ホモ接合性の機能喪失変異を有する患者は、人生のずっと早い時期に神経セロイドリポフスチン症(NCL、バッテン病)を呈し、ニューロンのリソソーム内の自己蛍光物質(リポフスチン)の蓄積、急速な認知低下及び網膜変性を特徴とする(Smith Katherine
R,et al.American Journal of Human Genetics.2012;90(6):1102-7)。GRN変異に対してヘテロ接合の患者は、症状の発症がずっと遅延するが、最終的に、NCL患者と同一の脳及び網膜におけるリソソーム蓄積病変を発症し、同様に、進行性神経変性を経験する(Ward ME,et al.Science Translational Medicine.2017;9(385);Gotzl JK,et al.Acta neuropathologica.2014;127(6):845-60)。プログラニュリンは、最近、リソソームの酸性化を促進し、カテプシンD(CTSD)を含むリソソームプロテアーゼのシャペロンとして機能することによって、リソソーム機能において重要な役割を果たすことが見出された(Beel S,et al.Human molecular genetics.2017 Aug 1;26(15):2850-2863;Tanaka Y,et al.Human molecular genetics.2017;26(5):969-88)。CTSDをコードする遺伝子の変異もまた、NCL表現型をもたらし、欠損したリソソームプロテアーゼ活性に関連する一般的な病態生理を支持している(Siintola E,et al.Brain:a journal of neurology.2006;129(Pt 6):1438-45)。
【0003】
現在、GRNハプロ不全によって引き起こされる成人発症性神経変性の疾患を修飾する療法は存在しない。疾病管理は、疾患に関連する行動、認知、及び/又は運動の症状を低減することを目的とした支持ケア及び適応症外治療を含む(Tsai and Boxer,2016,J Neurochem.138 Suppl 1:211-21)。更に、認知症の家族歴のある個人をスクリーニングすることによって、より多くの患者がより早い段階で到達する可能性があるが、現在、治療の欠如を考慮して適応されていない。
したがって、この疾患スペクトルは、満たされていない医療ニーズの高い領域を表している。
【0004】
必要とされているものは、GRNハプロ不全に関連する成人発症性神経変性疾患及びそれに関連する症状のための治療である。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、ヒト患者における成人発症性神経変性疾患の治療に有用な治療レジメンであって、レジメンが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの投与を含み、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリン(GRN)のコード配列、及び標的細胞における前記プログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、投与が、(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムを含む、単回用量の大層内(ICM)注入を含む、治療レジメンが、本明細書で提供される。特定の実施形態では、プログラニュリンのコード配列は、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号24を含む。特定の実施形態では、患者は、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている。
【0006】
一態様では、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えAAVベクターを含む、医薬組成物であって、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞における前記プログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、組成物が、(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムの用量を投与するために、大槽内(ICM)注入を必要とするヒト患者への大槽内(ICM)注入用に製剤化されている、医薬組成物が、本明細書で提供される。特定の実施形態では、プログラニュリンのコード配列は、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号24を含む。
【0007】
一態様では、成人発症性神経変性疾患を有する患者を治療する方法であって、方法が、ICM注入によって単回用量の組換えAAVを患者に投与することを含み、組換えAAVが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムが、AAV ITR、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞におけるプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、単回用量が、(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムである、方法が、本明細書で提供される。特定の実施形態では、プログラニュリンのコード配列は、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号24を含む。特定の実施形態では、患者は、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認
知症(FTD)を有すると特定されている。
【0008】
一態様では、単位剤形の医薬組成物であって、約1.44×1013~約4.33×1014GCの緩衝液中の組換えAAVベクターを含み、組換えAAVが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞においてプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含む、医薬組成物が、本明で提供される。
【0009】
特定の実施形態では、プログラニュリンのコード配列は、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号24を含む。特定の実施形態では、組成物は、ICM注入用に製剤化されている。特定の実施形態では、医薬組成物は、成人発症性神経変性疾患を有するヒト患者の治療における使用のためのものである。
【0010】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下の本発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】AAV1.hPGRNベクターゲノムの線形マップである。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(以下、PBFT02とも称される)ベクターゲノムは、遍在性CB7プロモーターの制御下でヒトPGRNのコード配列を含み、これは、CMV IEエンハンサーとニワトリβアクチンプロモーターとの間のハイブリッドで構成される。略語:BA:β-アクチン、bp:塩基対、CMV IE:サイトメガロウイルス最初期、ITR:逆位末端反復、PolyA:ポリアデニル化、rBG:ウサギβ-グロビン。
図2】ベクターゲノムを担持するシスプラスミドの線形ベクターマップである。
図3A-3D】GRN-/-マウスの脳におけるリポフスチン蓄積及びヘキソサミニダーゼ活性の自然歴を提供する。GRN-/-マウス(KO)又はGRN+/+(WT)対照は、示された齢で犠牲になった(n=10時点)。未染色の脳切片を、海馬、視床、及び前頭皮質における自己蛍光物質(リポフスチン)について画像化し、リポフスチン沈着物を3人の盲検レビュアによって定量化及び平均化した(図3A図3C)。リポフスチンの数は、関心領域の総面積に対して表される。ヘキソサミニダーゼ活性は、脳試料において測定され、総タンパク質濃度に対して正規化された(図3D)。値は、野生型対照に対する比率で表される。
図4】ヒトPGRNを発現するAAVベクター又はビヒクルで処置されたGrn-/-マウスのCSF及び脳中のヒトPGRN発現を示す。ビヒクル(PBS)処置WTマウス、ビヒクル処置Grn-/-マウス、及びAAVhu68.hPGRN(AAV)処置Grn-/-マウス(ICV用量:1.00×1011GC)を投薬の65日後に剖検した(N=10/群)。ヒトPGRNタンパク質の濃度を、CSF(WT+PBS:N=5、Grn-/-+PBS:N=6、Grn-/-+AAV:N=9)及び前頭皮質からの脳組織(N=10/群)に対してELISAによって測定した。脳PGRN濃度は、脳から単離された総タンパク質に対して正規化された。ELISAのLODは、CSFについては1.25ng/mL、脳については0.08ng/mgであった。
図5】ヒトPGRNを発現するAAVベクター又はビヒクルで処置されたGrn-/-マウスの脳及び血清におけるヘキソサミニダーゼ活性を示す。ビヒクル(PBS)処置WTマウス、ビヒクル処置Grn-/-マウス、及びAAVhu68.hPGRN(AAV)処置Grn-/-マウス(ICV用量:1.00×1011GC)を投薬の65日後に剖検した(N=10/群)。HEX活性は、前頭皮質由来の脳組織及び血清において測定された(N=9である血清についてのGrn-/-+AAVを除いてN=10/群)。脳HEX活性は、脳から単離された総タンパク質に対して正規化された)。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、一元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定。
図6】ヒトPGRNを発現するAAVベクター又はビヒクルで処置されたGrn-/-マウスの脳におけるリポフスチン沈着物の定量化を示す。ビヒクル(PBS)処置WTマウス、ビヒクル処置Grn-/-マウス、及びAAVhu68.hPGRN(AAV)処置Grn-/-マウス(ICV用量:1.00×1011GC)を投薬の65日後に剖検した(N=10/群)。海馬、視床、及び前頭皮質の未染色凍結切片における自己蛍光リポフスチン沈着物は、盲検レビュアにより定量化された(WT+PBS:N=10、Grn-/-+PBS:N=8、Grn-/-+AAV:N=10)。リポフスチン数は、高倍率視野ごとに表される。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、一元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定。
図7A-7C】AAV媒介性PGRN発現による、加齢GRN-/-マウスにおける脳ミクログリオーシスの補正を示す。生後7ヶ月で、GRN-/-マウス(KO)又はGRN+/+(WT)対照を、ビヒクル(PBS)又はヒトPGRN(1011GC)を発現するAAVhu68ベクターの単回ICV注入で処置した。動物は、注入4ヶ月後に犠牲にされ、脳切片は、CD68について染色された。海馬、視床、及び前頭皮質の画像におけるCD68陽性領域は、ImageJソフトウェアを使用して、盲検レビュアによって定量化された。領域は、高倍率視野ごとに表される。*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001、一元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定。
図8】ICM AAV投与後のNHPのCSF及び血漿中のヒトPGRNタンパク質の発現を示す。成人NHP(N=2/群)は、3.0×1013GCの用量で、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)、AAV5.CB7.CI.hPGRN.rBG、AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBG、又はAAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40の単回ICM投与を受けた。示された試験日に、CSF及び血漿中のヒトPGRNタンパク質を、ELISAによって測定した。破線は、健常なヒト対照試料中の平均正常PGRN濃度を示す。正常なヒト対照CSF試料は、NHP試料と同時に評価され、一方、血漿の正常なヒトPGRN濃度は、公表された文献に由来する。AAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40の血漿分析は、他の群と比較して、CSF中のPGRN発現レベルが低いことにより、21日目及び28日目には実施されなかった。
図9】ICM AAV投与後のNHPのCSF及び血清中の抗ヒトPGRN抗体を示す。成人NHP(N=2/群)は、3.0×1013GCの用量で、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGのいずれかの単回ICM投与を受けた。示された試験日に、CSF及び血清中の抗ヒトPGRN抗体を、ELISAによって測定した。AAV5.CB7.CI.hPGRN.rBG及びAAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40の場合の抗ヒトPGRN抗体は、評価されなかった。
図10】ICMのAAV投与後のNHPの体重を示す。成人NHP(N=2/群)は、3.0×1013GCの用量で、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)、AAV5.CB7.CI.hPGRN.rBG、AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBG、又はAAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40の単回ICM投与を受けた。体重を、示された時点で測定した。
図11】ICM AAV送達後のNHPにおけるCSF白血球数を示す。成人NHP(N=2/群)は、3.0×1013GCの用量で、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)、AAV5.CB7.CI.hPGRN.rBG、AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBG)、又はAAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40の単回ICM投与を受けた。CSF白血球数を、示された時点で評価した。特定された細胞は、分析された全ての試料において主に小リンパ球であった。
図12】非ヒト霊長類へのAAV1及びAAVhu68ベクターのICM投与後の脳形質導入のレベルを示す。成体アカゲザルに、ニワトリβアクチンプロモーターからGFPを発現する3x1013GCのAAVhu68(n=2)又はAAV1(n=2)ベクターを、ICM注入によって投与した。ベクター投与の28日後、動物を剖検し、脳の右半球の5つの領域の切片を、GFP免疫組織化学又はGFP及びDAPIの染色による免疫蛍光によって分析した。特定の細胞型(NeuN、GFAP、及びOlig2)のマーカーによる共染色で、形質導入された、アストロサイト、及びオリゴデンドロサイトの定量を可能にした。全てのサンプリングされた脳領域について、各細胞型の平均形質導入を計算した。エラーバー=5つの切片のSEM。
図13】非ヒト霊長類へのAAV1(動物ID1826及び2068)及びAAVhu68(動物ID1518及び2076)ベクターのICM投与後の、ニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトの形質導入パーセントを示す表を提供する。試験0日目、成体アカゲザルに、ニワトリβアクチンプロモーターからGFPを発現する3×1013GCのAAVhu68(n=2)又はAAV1(n=2)ベクターを、ICM注入によって投与した。ベクター投与の28日後、動物を剖検し、脳の右半球の5つの領域の切片を、特定の細胞型(NeuN、GFAP、及びOlig2)に対する共染色によるGFP免疫蛍光によって分析した。各細胞型の全細胞及び各型のGFP発現細胞の数を、HALOソフトウェアを使用して定量した。各領域について、形質導入された各細胞型の割合を示す。一部の動物については、領域5からの2つの切片を分析した。
図14】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与されたGrn-/-マウスの体重を示す。Grn-/-マウスに、4.4×10GC、1.3×1010GC、4.4×1010GC、又は1.3×1011GCの用量でAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)をICV投与した(N=15/群)。Grn-/-マウス及びWTマウス(N=15/群)に、対照としてビヒクル(ITFFB)をICV投与した。毎週、動物を体重測定した。エラーバーは、SEMを表す。
図15】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与されたGrn-/-マウスの脳脊髄液中の導入遺伝子産物の発現を示す。Grn-/-マウスに、4.4×10GC(N=12)、1.3×1010GC(N=12)、4.4×1010GC(N=13)、又は1.3×1011GC(N=11)の用量でAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)をICV投与した。Grn-/-(N=7)及び正常WTマウス(N=11)に、対照としてビヒクル(ITFFB)をICV投与した。90日目に、CSFを採取し、PGRN発現をELISAによって測定した。エラーバーは、SEMを表す。ELISAアッセイのLODは、CSFの1:40希釈については1.25ng/mLであった。
図16A-16C】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与したGrn-/-マウスの脳におけるリポフスチン沈着物の定量を示す。Grn-/-マウスに、4.4×10GC(N=15)、1.3×1010GC(N=14)、4.4×1010GC(N=15)、1.3×1011GC(N=15)の用量でAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)をICV投与した。Grn-/-及び野生型マウスに、対照としてビヒクル(ITFFB)をICV投与した(N=15/群)。90日目に、脳を採取し、凍結切片にした。視床(図16A)、皮質(図16B)、及び海馬(図16C)における自己蛍光リポフスチン沈着物を、自動化画像分析ソフトウェアを使用して定量化した。1日目に未処置Grn-/-マウス及び野生型マウスから採取した脳は、ベースライン対照として含まれた。エラーバーは、SEMを表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001は、全90日目群対ビヒクル処置Grn-/-対照の一元配置ANOVA、続くテューキーの多重比較検定に基づいている。
図17A-17C】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与したGrn-/-マウスの脳におけるCD68発現の定量を示す。Grn-/-マウスに、4.4×10GC(N=15)、1.3×1010GC(N=14)、4.4×1010GC(N=15)、1.3×1011GC(N=15)の用量でAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)をICV投与した。Grn-/-及び野生型マウスに、対照としてビヒクル(ITFFB)をICV投与した(N=15/群)。90日目に、CD68 IHCのために脳を採取した。視床(図17A)、皮質(図17B)、及び海馬(図17C)におけるCD68染色を、自動化画像分析ソフトウェアを使用して、視野当たりの陽性面積として定量化した。1日目に未処置Grn-/-マウス及び野生型マウスから採取した脳は、ベースライン対照として含まれた。エラーバーは、SEMを表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001は、全90日目群対ビヒクル処置Grn-/-対照についての一元配置ANOVA、続くテューキーの多重比較検定に基づいている。
図18】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与されたGrn-/-マウスの脳におけるヘキソサミニダーゼ活性の定量化を示す。Grn-/-マウスに、4.4×10GC(N=15)、1.3×1010GC(N=13)、4.4×1010GC(N=15)、1.3×1011GC(N=15)の用量でAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)をICV投与した。Grn-/-及び野生型マウスに、対照としてビヒクル(ITFFB)をICV投与した(N=15/群)。90日目に、脳の第3の前頭部分(主に皮質組織)の脳試料を採取し、HEX活性を、蛍光発生基質を使用して測定した。1日目に剖検した未処置Grn-/-及び野生型マウス由来の脳組織溶解物をベースライン対照として含めた。エラーバーは、SEMを表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001は、全90日目群対ビヒクル処置Grn-/-対照についての一元配置ANOVA、続くテューキーの多重比較検定に基づいている。
図19】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与された野生型マウスの体重を示す。野生型マウスに、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(1.3×1011GC[N=8/群])又はビヒクル(ITFFB、[N=4/群])のいずれかをICV投与した。ベースライン(-4日目)及び投薬後毎週、動物を体重測定した。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)を投与された全てのマウス(群2、4、6、及び8)を分析のために組み合わせ、ビヒクルを投与された全ての群(群1、3、5、7)を分析のために組み合わせた。エラーバーは、SEMを表す。
図20】野生型マウスへのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の脳室内投与後のベクター生体内分布を示す。脳、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、及び骨格筋(大腿四頭筋)を、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(1.3×1011GC[N=8/群])又はビヒクル(ITFFB、[N=4/群])のいずれかの単一ICV投与の10、30、60、及び90日後の野生型マウスからの剖検で採取した。各棒グラフは、DNA1μg当たり検出された平均ベクターゲノムを表す。エラーバーは、SEMを表す。LODは、50GC/μgDNAであった。
図21】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与された野生型マウスのCNS中の導入遺伝子産物の発現を示す。野生型マウスに、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(1.3×1011GC[N=8/群])又はビヒクル(ITFFB、[N=4/群])のいずれかをICV投与した。10、30、60、及び90日目に、CSF、脳、及び脊髄を採取し、ヒトPGRN発現をELISAによって測定した。エラーバーは、SEMを表す。*p<0.05、**p<0.01、及び****p<0.0001は、対応のないt検定に基づいている。
図22】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与された野生型マウスの血清中の導入遺伝子産物の発現を示す。野生型マウスに、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(1.3×1011GC[N=8/群])又はビヒクル(ITFFB、[N=4/群])のいずれかをICV投与した。10、30、60、及び90日目に、血清を採取し、ヒトPGRNの発現をELISAによって測定した。エラーバーは、SEMを表す。各時点について、対応のないt検定を実施した。
図23A-23F】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルを投与された野生型マウスの末梢臓器中の導入遺伝子産物の発現を示す。野生型マウスに、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(1.3×1011GC[N=8/群])又はビヒクル(ITFFB、[N=4/群])のいずれかをICV投与した。10、30、60、及び90日目に、心臓(図23A)、肝臓(図23B)、脾臓(図23C)、腎臓(図23D)、四頭筋(図23E)、及び頸部リンパ節(図23F)を採取した。ヒトPGRN発現を、ELISAによって測定した。エラーバーは、SEMを表す。*p<0.05及び**p<0.01は、対応のないt検定に基づいている。
図24】健常なNHPの第II指から記録された典型的な正中神経SNAPからの典型的な感覚神経活動電位波を示す。感覚神経伝導速度は、刺激カソードと第II指の記録部位との間の距離を、発症潜時(すなわち、刺激とSNAPの発症との間の時間)で割ることによって計算した。SNAP振幅は、SNAP開始時の電位とSNAPピークとの差として計算した。
図25】NHPへのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後の感覚神経活動電位を示す。3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、又は3.0×1013GC(高用量)の用量で、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の単回ICM投与を受けた成人NHPからの、BL並びに28±3及び90±5日目の代表的なSNAP波形(N=3/群)。動物181323(群1)、171229(群2)、171311(群3)、及び171246(群4)は、90±5日目までにSNAP振幅の著しい片側の低減を示した動物171123(ビヒクル、群1)及び180668(低用量、群2)、並びに90±5日目までにSNAP振幅の著しい両側の低減を示した動物171209(高用量、群4)を除いて、それぞれ、ビヒクル、低用量、中用量、及び高用量の全ての動物について得られた神経伝導データの代表である。
図26A-26B】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後のNHPにおけるSNAP振幅(図26A)及び神経伝導速度(図26B)を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。感覚神経伝導試験を、BL並びに28及び90日目に実施した。左右の正中神経のSNAP振幅及び伝導速度を提示する。
図27】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後のNHPの体重を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。体重は、0、7、14、28、60、及び90日目にモニタリングされた。
図28】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルのICM投与後のNHPの脳脊髄液中の白血球数を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。CSFを、0、7、14、28、60、及び90日目に採取した。白血球を、CSFの1μl当たりの白血球(WBC)の数として定量化した。
図29】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後のNHPにおけるカプシド又は導入遺伝子に対するIFN-γT細胞応答の要約を示す。
図30】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)をNHPにICM投与した後のCSF及び血清中のベクター薬物動態を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。CSFを、0、7、14、及び60日目に採取した。全血を、0、7、14、28、及び60日目に採取した。TaqMan qPCRによって、ベクターゲノムを定量化した。
図31】NHPへのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後の尿及び糞便中のベクター排泄を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。尿及び糞便を、ベースライン並びに5、28、60、及び90日目に採取した。TaqMan qPCRによって、ベクターゲノムを定量化した。
図32】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後のNHPの脳脊髄液及び血清中のヒトPGRN発現を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。CSFを、0、7、14、28、60、及び90日目に採取した。血清を、BL時並びに14、28、60、及び90日目に採取した。試料をELISAによって分析して、ヒトPGRN発現レベルを評価した。
図33】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後のNHPの脳脊髄液中のヒトPGRNタンパク質を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。14日目に採取したCSFをELISAによって分析して、ヒトPGRN発現レベルを評価した。
図34】AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与後のNHPのCSF及び血清中の抗ヒトPGRN抗体を示す。成人NHPは、ビヒクル(ITFFB、N=2/群)又は3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、若しくは3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のいずれかの単回ICM投与を受けた。CSFを、0、7、14、28、60、及び90日目に採取した。血清を、BL時並びに14、28、60、及び90日目に採取した。試料をELISAによって分析して、抗ヒトPGRN抗体レベルを評価した。
図35】NHPへのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)のICM投与の90日後のベクターの生体内分布を示す。示される組織を、3.0×1012GC(低用量)、1.0×1013GC(中用量)、又は3.0×1013GC(高用量)(N=3/群)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の単回ICM投与の90日後の成人NHPから剖検で採取した。また、ビヒクル(ITFFB)治療NHP(N=2)から対照として組織を採取した。各棒グラフは、DNA1μg当たり検出された平均ベクターゲノムを表す。エラーバーは、SEMを表す。LODは、50GC/μgDNAであった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
AAV1カプシド及びプログラニュリンのコード配列を有するベクターゲノムを含む組換えAAVを含む、医薬組成物が提供される。医薬組成物は、プログラニュリン(GRN)関連前頭側頭型認知症(FTD)を含む、ヒト患者における成人発症性神経変性疾患の治療のための方法及びレジメンにおいて有用である。
【0013】
本明細書で使用される場合、「AAV.hPGRN」又は「rAAV.hPGRN」という用語は、調節配列の制御下でヒトプログラニュリン(GRN、またPGRNとも)のコード配列を含むベクターゲノムをその中に有するAAVカプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルスを指すために使用される。特定のカプシドの種類が特定されてもよく、例えば、AAV1.hPGRNは、AAV1カプシドを有する組換えAAVを指し、AAVhu68.hPGRNは、AAVhu68カプシドを有する組換えAAVを指し、AAV5.hPGRNは、AAV5カプシドを有する組換えAAVを指す。
【0014】
「組換えAAV」又は「rAAV」は、2つのエレメント、AAVカプシド、及びAAVカプシド内にパッケージングされた少なくとも非AAVコード配列を含むベクターゲノムを含むDNAse耐性ウイルス粒子である。特に明記しない限り、この用語は「rAAVベクター」という句と互換的に使用され得る。rAAVは、任意の機能的AAV rep遺伝子又は機能的AAV cap遺伝子を欠き、後代を生成することができないため、「複製欠損ウイルス」又は「ウイルスベクター」である。特定の実施形態では、唯一のAAV配列は、AAV逆位末端反復配列(ITR)であり、ITR間に位置する遺伝子及び調節配列がAAVカプシド内にパッケージングされることを可能にするために、典型的にはベクターゲノムの5’及び3’最末端に位置する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」は、ウイルス粒子を形成するrAAVカプシドの内側にパッケージングされる核酸配列を指す。かかる核酸配列は、AAV逆位末端反復配列(ITR)を含有する。本明細書の例では、ベクターゲノムは、少なくとも、5’から3’へ、AAV5’ITR、コード配列、及びAAV3’ITRを含有する。AAV2からのITR、カプシドとは異なる供給源AAV、又は全長ITR以外が選択され得る。特定の実施形態では、ITRは、産生中のrep機能又はトランス相補性AAVを提供するAAVと同じAAV供給源由来である。更に、他のITRが使用され得る。更に、ベクターゲノムは、遺伝子産物の発現を指示する制御配列を含む。ベクターゲノムの好適な成分が本明細書でより詳細に考察される。
【0016】
治療用タンパク質及びコード配列:
rAAVは、ヒトプログラニュリン(hPGRN)タンパク質又はそのバリアントのコード配列を含み、hPGRNの生物学的機能のうちの1つ以上を行う。このタンパク質のコード配列は、中枢神経系(CNS)における発現のためにベクターゲノムへと操作される。
【0017】
ヒトPGRN1(hPGRN)は、最も一般的に、配列番号1に再現されるGenBank NP_002078の593アミノ酸の配列によって特徴付けられる。この配列は、分泌プログラニュリンタンパク質又はアミノ酸18~約593を含む分泌グラニュリンとともに1~17位にシグナルペプチドを有する。このタンパク質は、配列番号1の番号付けを参照して、グラニュリン1(別名グラニュリンG:約aa58約アミノ酸113)、グラニュリン2(約アミノ酸123~約179)、グラニュリン3(約アミノ酸206~約アミノ酸261)、グラニュリン4(約アミノ酸281~約アミノ酸336)、グラニュリン5(約アミノ酸364~約アミノ酸417)、グラニュリン6(約アミノ酸442~約アミノ酸496)、及びグラニュリン7(約アミノ酸518~約アミノ酸573)の8つの鎖に切断され得る。特定の実施形態では、天然シグナルペプチドの代わりに、異種シグナルペプチドで置換され得る。しかしながら、他の実施形態は、外因性シグナルペ
プチド(例えば、ヒトIL2リーダー)を有するプログラニュリンを包含し得る。また、例えば、www.signalpeptide.de/index.php?m=listspdb_mammaliaを参照されたい。したがって、プログラニュリン及び/又はその断片を含む融合タンパク質が企図される。かかる融合タンパク質は、互いと様々な組み合わせで活性GRN(例えば、GRN1、2、3、4、4、6、又は7)のうちの1つ以上を包含してもよく、あるいはこれらのペプチドのうちの1つ以上を、全長PGRN又は別のタンパク質若しくはペプチド(例えば、別の活性タンパク質若しくはペプチド、及び/又はヒトPGRNに対して外因性のシグナルペプチド)と組み合わせてもよい。
【0018】
ベクターゲノムは、このタンパク質のコード配列を担持し、ヒト細胞において(特に、中枢神経系において)タンパク質を発現するように操作される。特定の実施形態では、コード配列は、GenBank:NM_002087.3に見出され、配列番号2に再現される。
【0019】
特定の実施形態では、コード配列は、配列番号3に提供される。特定の他の実施形態は、配列番号3と95%~99.9%又は100%同一性のコード配列を包含し、それらの間の値を含む。一部の実施形態では、コード配列は、より良い治療転帰(例えば、哺乳動物細胞における発現増強)のためにコドン最適化される。同一性は、シグナル(リーダー)配列を有する全長プログラニュリンのコード配列にわたって、シグナル(リーダー)配列を有さないプログラニュリンにわたって、又は本明細書に定義される融合タンパク質のコード配列の長さにわたって評価され得る。特定の実施形態では、コード配列は、配列番号3に提供される。特定の他の実施形態は、配列番号4と95%~100%未満同一性のコード配列を包含する。同一性は、シグナル(リーダー)配列を有する全長プログラニュリンのコード配列にわたって、シグナル(リーダー)配列を有さないプログラニュリンにわたって、又は本明細書に定義される融合タンパク質のコード配列の長さにわたって評価され得る。
【0020】
好適には、これらのコード配列は、全長プログラニュリンをコードする。しかしながら、他の実施形態は、異種シグナルペプチド(例えば、ヒトIL2リーダー)を有する活性グラニュリン鎖を包含し得る。また、例えば、www.signalpeptide.de/index.php?m=listspdb_mammaliaを参照されたい。
【0021】
特定の実施形態では、ヒトPGRNのコード配列(例えば、配列番号3若しくは配列番号4)の断片、又はそれと約95%~99.9%若しくは100%同一の配列を利用してもよい。かかる断片は、活性ヒトGRN(aa18~593)、又は活性ヒトGRNとともに異種シグナルペプチドを含む融合ペプチドをコードし得る。特定の実施形態では、活性GRN(例えば、GRN1、2、3、4、4、6、又は7)のうちの1つ以上のコード配列のうちの1つ以上は、互いに様々な組み合わせでベクターゲノムに含まれ得るか、又はこれらのペプチドのうちの1つ以上は、全長PGRN若しくは別のコード配列と組み合わせられ得る。
【0022】
理論に束縛されることを意図するものではないが、CNSの細胞のサブセット(例えば、上衣細胞)におけるAAV媒介性PGRN発現は、分泌されたタンパク質のデポ(depot)を提供すると考えられる。分泌PGRNタンパク質(及び/又は1つ以上のGRN)は、ソーティリン又はマンノース-6-リン酸受容体を介して他の細胞に取り込まれ、その後、リソソームに輸送される。特定の実施形態では、分泌タンパク質は、プログラニュリンである。特定の実施形態では、分泌タンパク質は、グラニュリンである。特定の実施形態では、分泌タンパク質は、プログラニュリン及びグラニュリンの混合物を含む。
【0023】
特定の実施形態では、プログラニュリンのコード配列に加えて、別の非AAVコード配
列、例えば、目的のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、機能性RNA分子(例えば、miRNA、miRNA阻害剤)、又は他の遺伝子産物を含んでもよい。有用な遺伝子産物としては、miRNAが挙げられ得る。miRNA及び他の低分子干渉核酸は、標的RNA転写産物の切断/分解又は標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳抑制を介して遺伝子発現を調節する。miRNAは、典型的には、最終的な19~25の非翻訳RNA産物として天然に発現される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用を介してそれらの活性を示す。これらの内因性の発現miRNAは、ヘアピン前駆体を形成し、これがその後、miRNA二本鎖へと処理され、更に「成熟」一本鎖miRNA分子へと処理される。この成熟miRNAは、成熟miRNAとの相補性に基づいて、例えば、3′UTR領域内の標的mRNAの標的部位を特定する、多タンパク質複合体miRISCを誘導する。
【0024】
特定の実施形態では、発現カセットは、後根神経節(drg)におけるhPGRNの発現を抑制する1つ以上のmiRNA標的配列を更に含む。特定の実施形態では、発現カセットは、drg特異的miRNA標的配列の少なくとも2つのタンデム反復を含み、少なくとも2つのタンデム反復は、少なくとも第1のmiRNA標的配列と、同じ又は異なり得る少なくとも第2のmiRNA標的配列とを含む。特定の実施形態では、タンデムmiRNA標的配列は、連続的であるか、又は1~10個の核酸のスペーサーによって分離されており、当該スペーサーは、miRNA標的配列ではない。特定の実施形態では、少なくとも2つのdrg特異的miRNA標的配列があり、hPGRNコード配列の3’に位置する。特定の実施形態では、少なくとも2つのdrg特異的miRNAタンデム反復の第1の開始は、hPGRNコード配列の3’末端から20ヌクレオチド以内である。特定の実施形態では、少なくとも2つのdrg特異的miRNAタンデム反復の第1の開始は、hPGRNコード配列の3’末端から少なくとも100ヌクレオチドである。特定の実施形態では、miRNAタンデム反復は、200~1200ヌクレオチド長を含む。特定の実施形態では、少なくとも2つのdrg特異的miRNA標的配列があり、hPGRNコード配列の5’に位置する。特定の実施形態では、少なくとも2つのdrg特異的miRNA標的配列は、hPGRNコード配列の5’及び3’の両方に位置する。特定の実施形態では、発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の少なくとも第1のmiRNA標的配列及び/又は少なくとも第2のmiRNA標的配列は、(i)AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号:32)、(ii)AGCAAAAATGTGCTAGTGCCAAA(配列番号:33)、(iii)AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(配列番号:34)、及び(iv)AGGGATTCCTGGGAAAACTGGAC(配列番号:35)から選択される。特定の実施形態では、2つ以上の連続したmiRNA標的配列は、連続しており、スペーサーによって分離されていない。特定の実施形態では、2つ以上のmiRNA標的配列は、スペーサーによって分離されており、各スペーサーは、独立して、(A)GGAT、(B)CACGTG、又は(C)GCATGCのうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態では、miRNA標的配列の間に位置するスペーサーは、第1のmiRNA標的配列の3’及び/又は最後のmiRNA標的配列の5’に位置し得る。特定の実施形態では、miRNA標的配列間のスペーサーは同じである。2020年2月12に出願された国際特許出願第PCT/US19/67872号を参照されたく、これは、参照により本明細書に援用される。
【0025】
AAV1
クレードF由来のAAVhu68は、CNS内でhPGRNを標的化及び発現するベクターを生成するために使用することができる。しかしながら、AAV1媒介性PGRN送達は、同等の血漿中濃度が観察されたにもかかわらず、予想外に、AAVhu68よりもCNSにおける優れたPGRN発現を提供することが観察された。本発明者らは、rAAV1.PGRNの髄腔内送達が、本明細書に記載される療法のための魅力的な送達経路であることを発見した。したがって、特に望ましい実施形態では、AAV1カプシドが選択
される。
【0026】
特定の実施形態では、組成物が提供され、髄腔内注入に好適な水性液体と、上衣細胞を優先的に標的とするAAVカプシドを有するrAAVのストックとを含み、rAAVは、中枢神経系(CNS)への送達のためのPGRNコード配列を有するベクターゲノムを更に含む。特定の実施形態では、組成物は、大槽への(大槽内)後頭下注入用に製剤化される。特定の実施形態では、rAAVは、コンピュータ断層撮影(CT)ガイドによるrAAV注入を介して投与される。特定の実施形態では、患者に、単回用量の組成物を投与する。
【0027】
AAV1カプシドは、AAV vp1タンパク質、AAV vp2タンパク質、及びAAV vp3タンパク質を有するカプシドを指す。特定の実施形態では、AAV1カプシドは、約1:1:10の所定の比率のAAV vp1タンパク質、AAV vp2タンパク質、及びAAV vp3タンパク質で構成され、60個の総vpタンパク質のT1正二十面体カプシドに組み立てられる。AAV1カプシドは、ゲノム配列をパッケージングして、AAV粒子(例えば、ゲノムがベクターゲノムである組換えAAV)を形成することができる。典型的には、最も長いvpタンパク質(すなわち、VP1)をコードするカプシド核酸配列は、AAV1カプシドを有するrAAVの産生中にトランスで発現される。例えば、米国特許第6,759,237号、米国特許第7,105,345号、米国特許第7,186,552号、米国特許第8,637,255号、及び米国特許第9,567,607号に記載されている(これらは、参照により本明細書に援用される)。
【0028】
カプシドのコード配列は、最終的に組み立てられたrAAV1.hPGRNには存在しない。しかしながら、かかる配列は、組換えAAVの産生に利用される。特定の実施形態では、AAV1カプシドのコード配列は、配列番号26の全長AAV1 VP1タンパク質、又はそのVP2領域若しくはVP3領域をコードする任意の核酸配列である。例えば、米国特許第6,759,237号、米国特許第7,105,345号、米国特許第7,186,552号、米国特許第8,637,255号、及び米国特許第9,567,607号を参照されたい(これらは、参照により本明細書に援用される)。特定の実施形態では、AAV1カプシドのコード配列は、配列番号25である。一部の実施形態では、AAV1カプシドは、翻訳後修飾を伴うか又は伴わない配列番号25のコード配列から産生されるタンパク質である。しかしながら、このコード配列のバリアントは、操作され得、かつ/又は他のコード配列は、AAV1 VP1、AAV1 VP2、及び/又はAAV VP3のアミノ酸配列を使用して、所望の発現系のために逆翻訳され得る。
【0029】
特定の実施形態では、組換えAAV1を含む組成物は、配列番号26に再現されたAAV1 VP1の一次配列の番号付けに基づいて、AAV1が、高度に脱アミド化された5つのアミノ酸(N57、N383、N512、及びN718)を含有するカプシドを有する。
【表1】
【0030】
特定の実施形態では、AAV1は、質量分析を使用して決定されたカプシド中のVPタンパク質の総量に基づいて、以下の表で定義されるように脱アミド化されたVPアイソフォームの異種集団のカプシド組成によって特徴付けられる。特定の実施形態では、AAVカプシドは、質量分析を使用して決定される、以下に提供される範囲で、以下の位置のうちの1つ以上で修飾される。残基番号は、配列番号26に再現される公開されたAAV1配列に基づく。
【表2】
【0031】
好適な修飾には、脱アミド化標識された上記段落に記載の修飾が含まれ、本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、以下の位置、又はNに続くグリシンのうちの1つ以上は、本明細書に記載されるように修飾される。特定の実施形態では、57位、383位、512位、及び/又は718位のNに続くグリシンが保存されている(すなわち、未修飾のままである)AAV1変異が構築される。特定の実施形態では、前文で示した4つの位置のNGは、天然配列で保存される。残基番号は、配列番号26に再現される公開されたAAV1 VP1に基づく。特定の実施形態では、人工NGは示される、上の表で特定される位置のうちの1つとは異なる位置に導入される。
【0032】
rAAVベクター
上述のように、AAV1カプシドを有する組換えAAVは、FTDの治療のための本明
細書に記載される好ましいベクターである。特定の実施形態では、例えば、以下の実施例では(例えば、AAVhu68又はAAV5)、他のAAVカプシドを使用して、rAAVが生成され得る。特定の実施形態では、AAV1カプシドが選択され得、プログラニュリン(GRN)のコード配列を含むベクターゲノムのエレメントのうちの1つ以上が置換され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、AAVhu68カプシドは、WO2018/160582で定義されるカプシドを指す(参照により本明細書に援用される)。本明細書に記載されるように、rAAVhu68は、rAAVhu68カプシドを有し、配列番号31のvp1アミノ酸配列をコードするAAVhu68核酸配列(配列番号30)、及び任意選択的に、追加の核酸配列(例えば、vp1及び/又はvp2の固有領域を含まないvp3タンパク質をコードする配列)からのカプシドを発現する産生システムで産生される。単一の核酸配列vp1を使用した産生から得られるrAAVhu68は、vp1タンパク質、vp2タンパク質、及びvp3タンパク質の異種集団を産生する。より具体的には、AAVhu68カプシドは、配列番号31の予測されたアミノ酸残基からの修飾を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、及びvp3タンパク質内に亜集団を含有する。これらの亜集団は、最低限、脱アミド化アスパラギン(N又はAsn)残基を含む。例えば、アスパラギン-グリシン対におけるアスパラギンは、高度に脱アミド化される。一実施形態では、AAVhu68 vp1核酸配列は、配列番号30の配列、又はそれに相補的な鎖、例えば、対応するmRNA若しくはtRNAを有する。特定の実施形態では、vp2及び/又はvp3タンパク質は、追加的又は代替的に、例えば、選択された発現系においてvpタンパク質の比率を変化させるために、vp1とは異なる核酸配列から発現され得る。特定の実施形態では、vp1固有領域(約aa1~約aa137)及び/又はvp2固有領域(約aa1~約aa202)を有しない配列番号31のAAVhu68 vp3アミノ酸配列(約aa203~736)若しくはそれに相補的な鎖、対応するmRNA若しくはtRNA(配列番号30の約nt607~約nt2211)をコードする核酸配列も提供される。特定の実施形態では、vp1固有領域(約aa1~約137)を含まない配列番号31のAAVhu68 vp2アミノ酸配列(約aa138~736)又はそれに相補的な鎖、対応するmRNA若しくはtRNA(配列番号30のnt411~2211)をコードする核酸配列も提供される。
【0034】
本明細書で使用される場合、AAV5カプシドは、配列番号29の予測されたアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、AAV5カプシドは、配列番号28の核酸配列から発現される。
【0035】
AAVカプシド中にパッケージングされ宿主細胞に送達されるゲノム配列は、典型的には、最低でもトランス遺伝子、及びその制御性配列、及びAAV逆位末端反復(ITR)から構成される。一本鎖AAV及び自己相補的(sc)AAVの両方がrAAVに含まれる。導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、機能性RNA分子(例えば、miRNA、miRNA阻害剤)、又は他の遺伝子産物をコードするベクター配列とは異種の核酸コード配列である。核酸コード配列は、標的組織の細胞中で導入遺伝子の転写、翻訳、及び/又は発現を可能にする様式で調節要素に作動可能に連結される。
【0036】
ベクターのAAV配列は、典型的には、シス作用性5’及び3’逆位末端反復配列を含む(例えば、B.J.Carter,in “Handbook of Parvoviruses”,ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照されたい)。ITR配列は、約145bpの長さである。好ましくは、ITRをコードする実質的に完全な配列が分子中で使用されるが、これらの配列のある程度の最小限の修飾は許容される。これらのITR配列を修飾する能力は、当業者の範囲内である。(例えば、Sambrook et al,「Molecular Clo
ning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)、及びK.Fisher et al.,J.Virol.,70:520 532(1996)を参照されたい)。本発明で使用されるこのような分子の一例は、導入遺伝子を含有する「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列及び関連する調節エレメントは、5’及び3’AAV ITR配列に隣接している。一実施形態では、ITRは、カプシドを供給するのとは異なるAAV由来である。一実施形態では、AAV2由来のITR配列である。D配列及び末端分離部位(trs)が欠失している、ΔITRと称される5’ITRの短縮バージョンが記載されている。他の実施形態では、全長AAV5’及び3’ITRが使用される。しかしながら、他のAAV供給源に由来するITRが選択され得る。ITRの供給源がAAV2由来であり、AAVカプシドが別のAAV供給源由来である場合、得られるベクターは、擬似型と称され得る。しかしながら、これらのエレメントの他の構成も好適であり得る。
【0037】
組換えAAVベクターについて上述した主要エレメントに加えて、ベクターは、プラスミドベクターでトランスフェクトされた、又は本発明により産生されたウイルスに感染した細胞中でその転写、翻訳、及び/又は発現を可能にするような様式で導入遺伝子と作動可能に連結される必要な従来の制御エレメントも含む。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」配列には、目的の遺伝子と連続する発現制御配列、及び目的の遺伝子を制御するためにトランスで、又は離れて作用する発現制御配列の両方が含まれる。
【0038】
制御性調節要素は、典型的には、発現制御配列の一部として、例えば、選択される5’ITR配列とコード配列との間に位置するプロモーター配列を含む。構成的プロモーター、調節可能なプロモーター[例えば、WO 2011/126808及びWO 2013/04943を参照されたい]、組織特異的プロモーター、又は生理学的ヒントに応答するプロモーターが、本明細書に記載されるベクターに使用され得る。プロモーターは、異なる供給源、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーター、SV40最初期エンハンサー/プロモーター、JCポリモマウイルスプロモーター、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)又は神経膠原線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)潜伏関連プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)長末端反復(LTR)プロモーター、ニューロン特異的プロモーター(NSE)、血小板由来成長因子(PDGF)プロモーター、hSYN、メラニン凝集ホルモン(MCH)プロモーター、CBA、マトリックス金属タンパク質プロモーター(MPP)、及びニワトリβアクチンプロモーターから選択され得る。プロモーターに加えて、ベクターは、1つ以上の他の適切な転写開始、終結、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、例えばWPRE、翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を増強する配列、及び必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強する配列を含み得る。好適なエンハンサーの一例は、CMVエンハンサーである。他の好適なエンハンサーには、所望の標的組織適応症に適切なものが含まれる。一実施形態では、発現カセットは、1つ以上の発現エンハンサーを含む。一実施形態では、発現カセットは、2つ以上の発現エンハンサーを含む。これらのエンハンサーは、同じであってもよく、又は互いに異なっていてもよい。例えば、エンハンサーは、CMV前初期エンハンサーを含み得る。このエンハンサーは、互いに隣接して位置する2つのコピー中に存在し得る。代替的に、エンハンサーの二重コピーは、1つ以上の配列によって分離される。更に別の実施形態では、発現カセットは、イントロン、例えば、ニワトリベータアクチンイントロンを更に含む。他の好適なイントロンとしては、当該技術分野で既知のものが含まれ、例えば、WO2011/126808に記載されるものなどが含まれる。好適なポリA配列の例には、例えば、SV40、SV50、ウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン、及び合成ポリAが含まれる。任意選択
的に、1つ以上の配列を選択して、mRNAを安定させてもよい。かかる配列の一例は、修飾WPRE配列であり、これは、ポリA配列の上流及びコード配列の下流で操作され得る(例えば、MA Zanta-Boussif,et al,Gene Therapy(2009)16:605-619.を参照されたい。
【0039】
一実施形態では、ベクターゲノムは、AAV5’ITR、プロモーター、任意選択的なエンハンサー、任意選択的なイントロン、ヒトPGRN(複数可)のコード配列、又はそれらを含む融合タンパク質、ポリA、及びAAV3’ITRを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV5’ITR、プロモーター、任意選択的なエンハンサー、任意選択的なイントロン、ヒトPGRNのコード配列、又はそれらを含む融合タンパク質、ポリA、及びAAV3’ITRを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV5’ITR、プロモーター、任意選択的なエンハンサー、任意選択的なイントロン、hPGRNのコード配列、ポリA、及びAAV3’ITRを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV2 5’ITR、EF1aプロモーター、任意選択的なエンハンサー、任意選択的なプロモーター、hPGRN、SV40ポリA、及びAAV2 3’ITRを含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV2 5’ITR、UbCプロモーター、任意選択的なエンハンサー、任意選択的なイントロン、hPGRN、SV40ポリA、及びAAV2 3’ITRである。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV2 5’ITR、CB7プロモーター、イントロン、hPGRN、SV40ポリA、及びAAV2 3’ITRである。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV2 5’ITR、CB7プロモーター、イントロン、hPGRN、ウサギベータグロビンポリA、及びAAV2 3’ITRである。例えば、配列番号22(EF1a.hPGRN.SV40)、配列番号23(UbC.PI.hPGRN.SV40)、又は配列番号24(CB7.CI.hPGRN1.rBG)を参照されたい。hPGRNのコード配列は、本明細書で定義される配列から選択される。例えば、配列番号3若しくはそれと95%~99.9%同一の配列、又は配列番号4若しくはそれと95%~99.9%同一の配列、又は本明細書に定義されるそれらの断片を参照されたい。以下の実施例で使用されるベクターエレメントの例示的な配列は、例えば、配列番号6(ウサギグロビンポリA)、AAV ITR(配列番号7及び8)、ヒトCMV IEプロモーター(配列番号9)、CBプロモーター(配列番号10)、キメライントロン(配列番号11)、UbCプロモーター(配列番号12)、EF-1aプロモーター(配列番号17)、イントロン(配列番号13)、及びSV40後期ポリA(配列番号14)で提供される。ベクターゲノムの他のエレメント又はこれらの配列上のバリエーションは、本発明の特定の実施形態について、ベクターゲノムに対して選択され得る。
【0040】
ベクター産生
AAVウイルスベクター(例えば、組換え(r)AAV)の産生における使用のために、発現カセットは、パッケージング宿主細胞に送達される任意の好適なベクター、例えば、プラスミド上に担持され得る。本発明において有用なプラスミドは、とりわけ、原核細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞におけるインビトロでの複製及びパッケージングに適しているように操作され得る。好適なトランスフェクション技術及びパッケージング宿主細胞は、既知であり、かつ/又は当業者によって容易に設計することができる。
【0041】
ベクターとしての使用に好適なAAVを生成及び単離するための方法は、当該技術分野において既知である。一般に、例えば、Grieger&Samulski,2005,“Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications,”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145、Buning et al.,2008,“Recent developments in adeno-assoc
iated virus vector technology,”J.Gene Med.10:717-733、及び以下に引用される参考文献を参照されたく、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される。導入遺伝子をビリオンにパッケージングするために、ITRは、発現カセットを含む核酸分子と同じ構築物中でシスに必要とされる唯一のAAV成分である。cap及びrep遺伝子は、トランスで供給され得る。
【0042】
一実施形態では、本明細書に記載される発現カセットは、ウイルスベクターを産生するために、その上に運ばれる免疫グロブリン構築物配列をパッケージング宿主細胞に導入する遺伝子要素(例えば、シャトルプラスミド)に操作される。一実施形態では、選択される遺伝子エレメントは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む任意の好適な方法によってAAVパッケージ細胞に送達され得る。好適なAAVパッケージング細胞も作製され得る。代替的には、発現カセットは、AAV以外のウイルスベクターを生成するために、又はインビトロでの抗体の混合物の産生のために使用され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技法を含む。例えば、Molecular
Cloning:A Laboratory Manual,ed.Green and Sambrook,Cold Spring Harbor Press,Cold
Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0043】
「AAV中間体」又は「AAVベクター中間体」という用語は、それにパッケージングされた所望のゲノム配列を欠失している組み立てられたrAAVカプシドを指す。これらはまた、「空の」カプシドと称され得る。かかるカプシドは、発現カセットの検出可能なゲノム配列を含んでいなくてもよく、又は遺伝子産物の発現を達成するには不十分な部分的にパッケージングされたゲノム配列のみを含んでいてもよい。これらの空のカプシドは、宿主細胞に目的の遺伝子を導入するために非機能的である。
【0044】
本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、既知の技法を使用して産生されてもよい。例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、US7588772B2を参照されたい。かかる方法は、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列、機能性rep遺伝子、最低限、AAV逆位末端反復(ITR)及び導入遺伝子で構成される発現カセット、並びに発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングするのを可能にするのに十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞を培養することを含む。カプシドを生成する方法、そのためのコード配列、及びrAAVウイルスベクターの産生方法が記載されている。例えば、Gao,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10),6081-6086(2003)及びUS2013/0045186A1を参照されたい。
【0045】
一実施形態では、組換えAAVを産生するために有用な産生細胞培養物が提供される。かかる細胞培養物は、宿主細胞中でAAVカプシドタンパク質を発現する核酸、AAVカプシドへのパッケージングに好適な核酸分子、例えば、AAV ITR及び宿主細胞中の産物の発現を指示する配列と作動可能に連結される遺伝子産物をコードする非AAV核酸配列を含有するベクターゲノム、並びに組換えAAVカプシドへの核酸分子のパッケージングを可能にするのに十分なAAV rep機能及びアデノウイルスヘルパー機能を含有する。一実施形態では、細胞培養物は、哺乳動物細胞(例えば、とりわけ、ヒト胎児腎臓293細胞)又は昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)からなる。
【0046】
典型的には、rep機能は、ベクターゲノムに隣接するITRを提供するAAVと同じAAV源に由来する。本明細書の実施例では、AAV2 ITRを選択し、AAV2 repを使用する。コード配列は、配列番号27に再現される。任意選択的に、他のREP
配列又は別のREPソース(及び任意選択的に別のITRソース)が選択されてもよい。例えば、repは、これらに限定されないが、AAV1 repタンパク質、AAV2 repタンパク質、又はrep78、rep68、rep52、rep40、rep68/78、及びrep40/52、若しくはそれらの断片であり得る。任意に、rep及びcap配列は、細胞培養物中の同じ遺伝子要素上にある。rep配列とcap遺伝子との間にスペーサーが存在し得る。これらのAAV又は変異体AAVカプシド配列のいずれかは、宿主細胞中でそれらの発現を指示する外因性調節制御配列の制御下にあり得る。
【0047】
一実施形態では、細胞は、好適な細胞培養(例えば、HEK293)細胞において製造される。本明細書に記載される遺伝子療法ベクターを製造するための方法には、遺伝子療法ベクターの産生に使用されるプラスミドDNAの生成、ベクターの生成、及びベクターの精製などの、当該技術分野で周知の方法が含まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、AAVベクターであり、生成されたプラスミドは、AAVゲノム及び目的の遺伝子をコードするAAVシス-プラスミド、AAV rep及びcap遺伝子を含有するAAVトランス-プラスミド、並びにアデノウイルスヘルパープラスミドである。ベクター生成プロセスは、細胞培養の開始、細胞の継代、細胞の播種、プラスミドDNAによる細胞のトランスフェクション、トランスフェクション後の無血清培地への培地交換、並びにベクター含有細胞及び培養培地の回収などの方法ステップを含み得る。
【0048】
特定の実施形態では、rAAV.hPGRNの製造プロセスは、プラスミドDNAによるHEK293細胞の一過性トランスフェクションを伴う。単一バッチ又は複数バッチは、PALL iCELLisバイオリアクターで、HEK293細胞のPEI媒介性三重トランスフェクションによって産生される。回収したAAV材料は、可能な場合、使い捨ての閉鎖型バイオプロセッシングシステムにおいて、清澄化、TFF、アフィニティクロマトグラフィ、及びアニオン交換クロマトグラフィによって順次精製される。
【0049】
回収されたベクター含有細胞及び培養培地は、本明細書では粗細胞回収物と称される。更に別の系では、遺伝子療法ベクターは、バキュロウイルスベースのベクターによる感染によって昆虫細胞に導入される。これらの産生系に関するレビューについては、概して、例えば、Zhang et al.,2009,“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたく、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。これら及び他のAAV産生系を作製及び使用する方法はまた、以下の米国特許に記載されており、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される:5,139,941、5,741,683、6,057,152、6,204,059、6,268,213、6,491,907、6,660,514、6,951,753、7,094,604、7,172,893、7,201,898、7,229,823、及び7,439,065(これらは、参照により本明細書に援用される)。
【0050】
粗細胞回収物は、その後、ベクター回収物の濃縮、ベクター回収物の透析濾過、ベクター回収物の顕微溶液化、ベクター回収物のヌクレアーゼ消化、顕微溶液化された中間体の濾過、クロマトグラフィによる粗精製、超遠心分離による粗精製、接線流濾過による緩衝液交換、及び/又はバルクベクターを調製するための製剤化及び濾過などの、追加の方法ステップに供される。
【0051】
2工程の高塩濃度でのアフィニティクロマトグラフィ精製、続いて、アニオン交換樹脂クロマトグラフィを用いて、ベクター薬物製品を精製し、空のカプシドを除去する。これらの方法は、2016年12月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2016/
065970号に更に詳細に記載されている(これは、参照により本明細書に援用される)。AAV8の精製方法:2016年12月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2016/065976号、及びrh10の精製方法:2016年12月9日に出願され、「Scalable Purification Method for AAVrh10」と題する国際特許出願第PCT/US16/66013号(2015年12月11日にも出願されている)、並びにAAV1の精製方法:2016年12月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2016/065974号、2015年12月11日に出願された「Scalable Purification Method for AAV1」は、全て参照により本明細書に援用される。
【0052】
空及び充填粒子の含有量を算出するために、選択された試料(例えば、本明細書の実施例では、イオジキサノール勾配で精製された調製物、ここで、GCの数=粒子の数)についてのVP3バンド体積が、ロードされたGC粒子に対してプロットされる。得られた線形方程式(y=mx+c)を用いて、試験物ピークのバンド体積中の粒子の数を算出する。次いで、ロードした20μL当たりの粒子の数(pt)に50を掛けて、粒子(pt)/mLを得る。Pt/mLをGC/mLで割り算し、ゲノムコピーに対する粒子の比率(pt/GC)を得る。Pt/mL~GC/mLは、空pt/mLを与える。空pt/mLをpt/mLで割り、100を掛け算することによって、空粒子のパーセンテージを得る。
【0053】
一般に、空のカプシド及びパッケージされたゲノムを含むAAVベクター粒子をアッセイするための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Grimm et al.,Gene Therapy(1999)6:1322-1330、Sommer et al.,Molec.Ther.(2003)7:122-128を参照されたい。変性カプシドについて試験するために、本方法は、処理されたAAVストックを、3つのカプシドタンパク質を分離することが可能な任意のゲルからなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えば、緩衝液中に3~8%のトリス酢酸塩を含有する勾配ゲル)に供することと、次いで、試料材料が分離されるまでゲルを試行することと、ナイロン又はニトロセルロース膜、好ましくはナイロンの上でゲルをブロッティングすることと、を含む。抗-AAVカプシド抗体は、次いで、変性したカプシドタンパク質、好ましくは、抗-AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗-AAV-2モノクローナル抗体に結合する主要な抗体として使用される(Wobus et al.,J.Virol.(2000)74:9281-9293)。次いで、一次抗体に結合し、一次抗体、より好ましくは、抗体に共有結合した検出分子を含有する抗IgG抗体、最も好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合したヒツジ抗マウスIgG抗体との結合を検出するための手段を含む、二次抗体が使用される。一次抗体と二次抗体との間の結合を半定量的に決定するために、結合を検出するための方法、好ましくは、放射性アイソトープ放射、電磁放射、又は比色変化を検出することができる検出方法、最も好ましくは、化学発光検出キットが使用される。例えば、SDS-PAGEでは、カラムフラクションからの試料を取って、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGE充填緩衝液中で加熱することができ、カプシドタンパク質は、プレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)中で分解された。SilverXpress(Invitrogen、CA)を製造元の指示に従って、又は他の好適な染色方法、すなわち、SYPROルビー若しくはクマシー色素を用いて、銀染色を実施してもよい。一実施形態では、カラム画分中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)によって測定することができる。試料は希釈され、DNase I(又は別の好適なヌクレアーゼ)で消化されて、外因性DNAが除去される。ヌクレアーゼの不活性化後、試料は、更に希釈され、プライマー及びプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを用いて増幅される。規定レベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に到達するのに必要とされるサイクル数は、Applied Biosyst
ems Prism 7700配列検出システム上で各試料について測定される。AAVベクター中に含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを用いて、Q-PCR反応における標準曲線を生成する。試料から得られたサイクル閾値(Ct)の値を使用して、プラスミド標準曲線のCt値に対してそれを正規化することによって、ベクターゲノム力価を決定する。デジタルPCRに基づくエンドポイントアッセイも使用されることができる。
【0054】
一態様では、広域スペクトルのセリンプロテアーゼ、例えば、プロテイナーゼK(例えば、Qiagenから商業的に入手可能なもの)を利用する最適化されたq-PCR方法が使用される。より具体的には、最適化されたqPCRゲノム力価アッセイは、DNase I消化の後に、試料をプロテイナーゼK緩衝液で希釈し、プロテイナーゼKで処理し、続いて、熱失活させることを除き、標準的なアッセイと同様である。好適には、試料は、試料サイズと等しい量のプロテイナーゼK緩衝液で希釈される。プロテアーゼK緩衝液は、2倍以上に濃縮され得る。典型的には、プロテイナーゼK処理は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLで変動し得る。治療ステップは、一般に、約55°Cで約15分間、実施されるが、より低い温度(例えば、約37°C~約50°C)でより長時間(例えば、約20分間~約30分間)、又はより高い温度(例えば、最高約60°C)でより短時間(例えば、約5~10分間)実施されてもよい。同様に、熱失活は、一般に、約95°Cで約15分間であるが、温度を下げてもよく(例えば、約70~約90°C)、時間を延ばしてもよい(例えば、約20分間~約30分間)。次いで、試料は希釈され(例えば、1000倍)、標準的なアッセイで記載されるように、TaqMan分析に供される。
【0055】
追加的に、又は代替的に、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)が使用されてもよい。例えば、ddPCRによる一本鎖及び自己相補性AAVベクターゲノム力価を決定するための方法が記載されている。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0056】
簡潔に言うと、パッケージングされたゲノム配列を有するrAAV粒子をゲノム欠損AAV中間体から分離するための方法は、組換えAAVウイルス粒子及びAAVカプシド中間体を含む懸濁液を高性能液体クロマトグラフィに供することを含み、AAVウイルス粒子及びAAV中間体は、高pHで平衡化された強力アニオン交換樹脂に結合され、約260及び約280で紫外吸光度のために溶出液をモニタリングしながら、塩勾配に供される。pHは、選択されたAAVに応じて調節され得る。例えば、WO2017/160360(AAV9)、WO2017/100704(AAVrh10)、WO2017/100676(例えば、AAV8)、及びWO2017/100674(AAV1)を参照されたい(これらは、参照により本明細書に援用される)。この方法では、AAV完全カプシドは、A260/A280の比が変曲点に到達すると溶出される画分から回収される。一実施例では、アフィニティクロマトグラフィステップのために、ダイアフィルトレーションされた産物を、AAV2血清型を効率的に捕らえるCapture Select(商標)Poros-AAV2/9アフィニティ樹脂(Life Technologies)に適用してもよい。これらのイオン性条件下、残留細胞DNA及びタンパク質の有意なパーセンテージは、カラムの中を流れ、AAV粒子は、効率的に捕捉される。
【0057】
組成物
本明細書では、少なくとも1つのrAAV.hPGRNストック(例えば、rAAVストック)、及び任意選択的な担体、賦形剤及び/又は防腐剤を含む組成物が提供される。
【0058】
本明細書で使用される場合、rAAVの「ストック」は、rAAVの集団を指す。脱アミド化に起因するカプシドタンパク質の不均一性にもかかわらず、ストック内のrAAVは、同一のベクターゲノムを共有することが予想される。ストックは、例えば、選択されたAAVカプシドタンパク質及び選択された産生系に特徴的な不均一な脱アミド化パターンを有するカプシドを有するrAAVを含み得る。ストックは、単一の産生系から産生されてもよく、又は産生系の複数の実行からプールされてもよい。本明細書に記載されるものを含むが、これらに限定されない様々な産生系が選択され得る。
【0059】
特定の実施形態では、組成物は、プログラニュリン関連前頭側頭型認知症(FTD)を治療する際の使用に好適な組換えAAV(rAAV)であるウイルスストックを含み、当該rAAVは、(a)アデノ随伴ウイルス1カプシドと、(b)AAVカプシド中にパッケージングされるベクターゲノムであって、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復、ヒトプログラニュリンのコード配列、及びプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含む、ベクターゲノムと、を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ヒトPGRNのコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む。特定の実施形態では、イントロンは、ニワトリベータアクチンスプライスドナー及びウサギβスプライスアクセプターのエレメントからなる。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、AAV2 5’ITR及びAAV2 3’ITRを更に含み、これらは、ベクターゲノムの全てのエレメントに隣接する。
【0060】
rAAV.hPGRNは、好ましくは生理学的に適合する担体に懸濁され、ヒト患者又は非ヒト哺乳動物患者に投与され得る。特定の実施形態では、ヒト患者への投与のために、rAAVは、好適には、生理食塩水、界面活性剤、及び生理学的に適合性の塩又は塩の混合物を含有する水溶液に懸濁される。好適には、製剤は、生理学的に許容されるpH、例えば、pH6~9、又はpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、又はpH7.2~7.8の範囲に調整される。脳脊髄液のpHは、約7.28~約7.32、又は髄腔内送達の場合、約7.2~約7.4であるので、この範囲内のpHが望ましいが、静脈内送達の場合、約6.8~約7.2のpHが望ましい場合がある。しかしながら、より広範囲にある他のpH、及びこれらの下位範囲が、他の送達経路のために選択され得る。
【0061】
特定の実施形態では、製剤は、重炭酸ナトリウムを含まない緩衝生理食塩水溶液を含有し得る。かかる製剤は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上を水中に含む緩衝生理食塩水溶液、例えば、Harvard緩衝液を含有し得る。水溶液は、ポロキサマーであるKolliphor(登録商標)P188を更に含んでもよく、これは、BASFから市販され、以前、Lutrol(登録商標)F68という商品名で販売されていた。水溶液は、7.2のpH又は7.4のpHを有し得る。
【0062】
別の実施形態では、製剤は、1mMのリン酸ナトリウム(NaPO)、150mMの塩化ナトリウム(NaCl)、3mMの塩化カリウム(KCl)、1.4mMの塩化カルシウム(CaCl)、0.8mMの塩化マグネシウム(MgCl)、及び0.001%のKolliphor(登録商標))188を含む、緩衝生理食塩水溶液を含有し得る。例えば、harvardapparatus.com/harvard-apparatus-perfusion-fluid.htmlを参照されたい。特定の実施形態では、ハーバード緩衝液が好ましい。
【0063】
他の実施形態では、製剤は、1つ以上の浸透促進剤を含有し得る。適切な浸透促進剤の例は、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、
又はEDTAを含んでもよい。
【0064】
別の実施形態では、組成物は、担体、希釈剤、賦形剤及び/又はアジュバントを含む。好適な担体は、導入ウイルスが指向する適応症の観点で、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体は、生理食塩水を含み、様々な緩衝化溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)を用いて製剤化され得る。他の例示的な担体としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が挙げられる。緩衝液/担体は、rAAVが注入チューブに粘着するのを防ぐが、インビボでのrAAV結合活性を妨害しない構成要素を含むべきである。
【0065】
任意選択的に、組成物は、rAAV及び担体(複数可)に加えて、防腐剤又は化学安定剤などの他の従来の医薬成分を含み得る。好適な例示的な防腐剤には、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが含まれる。好適な化学的安定剤には、ゼラチン及びアルブミンが含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。薬学的活性物質に対するかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補足活性成分を組成物中に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されるときにアレルギー又は類似の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。リポソーム、ナノカプセル、ミクロ粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などのような送達ビヒクルが、本発明の組成物を好適な宿主細胞に導入するために使用され得る。詳細には、rAAVベクター送達導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、又はナノ粒子などに封入化された送達のいずれかのために製剤化され得る。
【0067】
一実施形態では、組成物は、対象への送達に適した最終製剤を含み、例えば、生理的に適合するpH及び塩濃度に緩衝される水性液体懸濁液である。任意選択的に、1つ以上の界面活性剤が製剤中に存在する。別の実施形態では、組成物は、対象への投与のために希釈される濃縮物として輸送され得る。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥され、投与時に再構築されてもよい。
【0068】
好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択されてもよい。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、8400の平均分子量を有する、ポロキサマー188としても知られている、Pluronic(登録商標)F68[BASF]などの、第一級ヒドロキシル基末端の二機能的ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般的に、文字「P」(ポロキサマーの場合)の後に3桁の数字で命名され、最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を与え、最後の1桁×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを与える。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%の量で存在してもよい。
【0069】
ベクターは、細胞をトランスフェクトするのに十分な量で投与され、十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供して、過度の悪影響なしに、又は医学的に許容される生理学的効果を伴う治療効果を提供し、これは当業者によって決定され得る。任意に、髄腔内投与以外の経路、例えば、所望の臓器(例えば、肝臓(任意に肝動脈を介して)、肺、心臓、眼、腎臓)への直接送達、経口、吸入、鼻腔内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び他の親の投与経路などを使用することができる。投与経路は、所望される場合、組み合わされてもよい。
【0070】
ウイルスベクターの投薬量は、主に、治療される状態、患者の年齢、体重、及び健康状態などの要因に依存し得、したがって、患者間で変化し得る。例えば、ウイルスベクターの治療上有効なヒト投薬量は、概して、約25~約1000マイクロリットル~約100mLの範囲の、(体重が70kgの平均的な対象を治療するために)約1×10~1×1016ゲノムウイルスベクターの濃度(その範囲内の全ての整数又は分数量を含み、好ましくは、ヒト患者に対して、1.0×1012GC~1.0×1014GC)を含む溶液である。一実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、又は9×10GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9×1010GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量あたり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCを含むように製剤化される。一実施形態では、ヒトへの適用のために、用量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、用量あたり1×1010~約1×1012GCの範囲であり得る。
【0071】
特定の実施形態では、用量は、約1×10GC/g脳質量~約1×1012GC/g脳質量の範囲である。特定の実施形態では、用量は、約1×1010GC/g脳質量~約3.33×1011GC/g脳質量の範囲である。特定の実施形態では、用量は、約3.33×1011GC/g脳質量~約1.1×1012GC/g脳質量の範囲である。特定の実施形態では、用量は、約1.1×1012GC/g脳質量~約3.33×1013GC/g脳質量の範囲である。特定の実施形態では、用量は、3.33×1011GC/g脳質量よりも低い。特定の実施形態では、用量は、1.1×1012GC/g脳質量よりも低い。特定の実施形態では、用量は、3.33×1013GC/g脳質量よりも低い。
【0072】
特定の実施形態では、用量は、約1×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約2×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約
2×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約3×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約4×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約5×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約6×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約7×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約8×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約9×1010GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約1×1011GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約2×1011GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約3×1011GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約4×1011GC/g脳質量である。特定の実施形態では、用量は、約3.3×1010GC/脳質量のgである。特定の実施形態では、用量は、約1.1×1011GC/脳質量のgである。特定の実施形態では、用量は、約2.2×1011GC/脳質量のgである。特定の実施形態では、用量は、約3.3×1011GC/脳質量のgである。
【0073】
特定の実施形態では、用量は、rAAVの約1.44×1013~4.33×1014GCの範囲の均一用量として、ヒトに投与される。特定の実施形態では、用量は、rAAVの約1.44×1013~2×1014GCの範囲の均一用量として、ヒトに投与される。特定の実施形態では、用量は、rAAVの約3×1013~1×1014GCの範囲の均一用量として、ヒトに投与される。特定の実施形態では、用量は、rAAVの約5×1013~1×1014GCの範囲の均一用量として、ヒトに投与される。
【0074】
特定の実施形態では、組成物は、rAAVの約1×1013~8×1014GCの範囲にあるAAVの量を含有するように投薬量単位で製剤化され得る。特定の実施形態では、組成物は、rAAVの約1.44×1013~4.33×1014GCの範囲にあるrAAVの量を含有するように投薬量単位で製剤化され得る。特定の実施形態では、組成物は、rAAVの約3×1013~1×1014GCの範囲にあるrAAVの量を含有するように投薬量単位で製剤化され得る。特定の実施形態では、組成物は、rAAVの約5×1013~1×1014GCの範囲にあるrAAVの量を含有するように投薬量単位で製剤化され得る。
【0075】
特定の実施形態では、以下の組織型:前頭皮質、頭頂皮質、側頭皮質、後頭部皮質、髄質、小脳、頸部脊髄、胸部脊髄、腰椎脊髄、頸部後根神経節、胸部後根神経節、腰部後根神経節、及び三叉神経節のうちのいずれか1つ以上において、10GC/μgのDNAを提供するのに十分である単回用量が投与される。特定の実施形態では、以下の組織型:前頭皮質、頭頂皮質、側頭皮質、後頭部皮質、髄質、小脳、頸部脊髄、胸部脊髄、腰椎脊髄、頸部後根神経節、胸部後根神経節、腰部後根神経節、及び三叉神経節のうちのいずれか1つ以上において、10GC/μgのDNAを提供するのに十分である単回用量が投与される。
【0076】
特定の実施形態では、rAAVは、単回用量で対象に投与される。特定の実施形態では、複数回の用量(例えば、2用量)が所望される。
【0077】
任意の副作用に対する治療的利益のバランスをとるために、投薬量を調整してもよく、そのような投薬量は、組換えベクターが利用されるための治療用途に応じて変化し得る。導入遺伝子の発現レベルをモニタリングして、ウイルスベクター、好ましくはミニ遺伝子を含有するAAVベクターをもたらす投薬頻度を決定することができる。任意選択的に、治療目的で記載されているものと同様の投与レジメンは、本発明の組成物を使用した免疫化に利用され得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「髄腔内送達」又は「髄腔内投与」という用語は、脳脊髄
液(CSF)に到達するように、脊柱管内、より具体的には、クモ膜下腔内への注射を介した、薬物の投与経路を指す。髄腔内送達は、腰部穿刺、脳室内(側脳室内(ICV)を含む)、後頭下/槽内、及び/又はC1-2穿刺を含み得る。例えば、材料は、腰椎穿刺の手段によって、クモ膜下腔全体に拡散させるために導入され得る。別の実施例では、注入は、大槽内であってもよく、又は実質内送達を介してもよい。特定の実施形態では、rAAVは、コンピュータ断層撮影(CT)ガイドによる大槽への(大槽内)後頭下注入を介して投与される。特定の実施形態では、患者は、単回用量で投与される。
【0079】
本明細書で使用される場合、「大槽内送達」又は「大槽内投与」という用語は、小脳延髄大槽の脳脊髄液への直接的な薬物の投与経路、より具体的には、後頭下穿刺による、若しくは大槽内への直接注射による、又は永続的に配置されたチューブによる、薬物の投与経路を指す。
【0080】
特定の実施形態では、rAAV.hPGRNのストックは、髄腔内最終製剤緩衝液(ITFFB;0.001%のPluronic F-68を含む人工CSF)中に製剤化される。バッチ(複数可)を凍結し、その後解凍し、必要に応じてプールし、標的濃度に調整し、0.22μmフィルターを通して滅菌濾過し、バイアルを充填する。特定の実施形態では、rAAV1.hPGRNの製剤緩衝液を含む懸濁液は、pH7.2~7.4に調整される。
【0081】
一実施形態では、本明細書で提供されるrAAV1.hPGRNの用量の送達のための容量は、当業者により決定され得る。例えば、約1μL~150mLの容量が選択されてもよいが、より高容量が、成人用に選択されてもよい。典型的には、新生児のために、好適な体積は、約0.5mL~約10mL、より年長の乳児のために、約0.5mL~約15mLが選択され得る。幼児のために、約0.5mL~約20mLの体積が選択され得る。小児のために、最大約30mLの体積が選択され得る。10代前半及び10代のために、最大約50mLの体積が選択され得る。更に他の実施形態では、患者は、約5mL~約15mLの体積での髄腔内投与を受けてもよく、これが選択されるか、又は約7.5mL~約10mLを受けてもよい。他の適切な体積及び投薬量が決定され得る。任意の副作用に対する治療的利益のバランスをとるために、投薬量を調整してもよく、そのような投薬量は、組換えベクターが利用されるための治療用途に応じて変化し得る。
【0082】
特定の実施形態では、組成物は、rAAV.EF1a.hPGRN.SV40、rAAV.UbC.PI.hPGRN.SV40、又はrAAVCB7.CI.hPGRN1.rBGを含む。rAAVカプシドがAAVhu68、AAV5、又はAAV1である組成物は、以下の実施例に例示される。特に好ましい実施形態では、rAAVは、AAV1である。特定の実施形態では、hPGRNのコード配列は、本明細書で定義される配列から選択される。例えば、配列番号3若しくはそれと95%~99.9%同一の配列、又は配列番号4若しくはそれと95%~99.9%同一の配列、又は本明細書に定義されるそれらの断片を参照されたい。以下の実施例で使用されるベクターエレメントの例示的な配列は、例えば、配列番号6(ウサギグロビンポリA)、AAV ITR(配列番号7及び8)、ヒトCMV IEプロモーター(配列番号9)、CBプロモーター(配列番号10)、キメライントロン(配列番号11)、UbCプロモーター(配列番号12)、EF-1aプロモーター(配列番号17)、イントロン(配列番号13)、及びSV40後期ポリA(配列番号14)で提供される。
【0083】
使用
本明細書で使用される場合、PGRNハプロ不全は、欠乏したPGRN及び/又はGRN(複数可)のレベルをもたらす、PGRN遺伝子の変異を有する患者を指す。rAAV1-PGRN療法の標的集団には、PGRNハプロ不全を有する患者、及び/又はその他
の欠乏したPGRN又はGRNのレベルを有する患者が含まれる。特定の実施形態では、患者は、PGRN変異についてヘテロ接合である。更に別の実施形態では、患者は、PGRN変異由来のホモ接合である。特定の実施形態では、患者は、本明細書で提供されるrAAV1媒介性hPGRN療法と組み合わせた免疫抑制レジメンが投与される。
【0084】
特定の実施形態では、rAAV1.PGRNは、GRNハプロ不全を有する患者の治療に有用である。かかる患者は、GRNハプロ不全によって引き起こされる成人発症性神経変性症と診断された可能性があるか、又は症状前である可能性がある。rAAV1.PGRNは、コンピュータ断層撮影(CT)ガイドによる大槽への(大槽内[ICM])後頭下注入を介して、単回用量として投与することができる。単回用量は、所定の用量レベルで投与される。NHPにおける単回ICM注入により達成された優れた脳形質導入により、この投与経路が選択された。特定の実施形態では、ベクターのICMへの投与はまた、別の投与経路(例えば、側脳室への注入)と比較して、抗PGRN T細胞応答の低下をもたらす。一般的な手順では、ICM注入(後頭下穿刺としても知られている)は、以前は腰椎穿刺によって置き換えられていた。しかしながら、他の投薬レベル及び送達経路は、このrAAV1媒介性hPGRN療法と併せて選択及び/又は使用されてもよい。
【0085】
特定の実施形態では、本明細書に記載のrAAV1媒介性療法は、GRN変異を有しないヒト(ハプロ不全)に対して、およそ平均的で正常な生理学的レベルで、PGRN発現を提供し得る。しかしながら、治療は、PGRN発現の増加が正常レベルよりも低い場合であっても、治療効果を提供し得、正常な平均レベルの約40%~99%、例えば、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はこれらの間の他の値を提供する。特定の実施形態では、これは、治療前の患者の発現レベルを上回る、少なくとも5%~約70%、又はそれ以上のPGRNレベルの増加から生じ得る。特定の実施形態では、治療は、rAAV1媒介性hPGRNの投与が、CSF中のPGRNのレベルの上昇(例えば、正常レベルよりも10倍~40倍高い)をもたらす治療有効性を提供する。
【0086】
特定の実施形態では、有効性は、CSFにおけるPGRNタンパク質のレベルの増加、及び/又は脳皮質の厚さの変化のうちの1つ以上によって評価される。特定の実施形態では、rAAV1媒介療法の有効性は、単回ICM用量の投与後に評価され、長期生存、並びにミニメンタルステート検査(MMSE)、臨床全般印象変化(CGI-C)、前頭葉機能検査(FAB)、前頭側頭型認知症評価尺度(FRS)、前頭葉性行動質問紙(FBI)、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)、言語流暢性検査、前頭側頭葉変性症の臨床認知症尺度評価項目合計(CDR-FTLD sb)、及び/又は神経精神症状質問紙(NPI)によって評価される臨床症状及び日常機能の改善のうちの1つ以上によって測定される。特定の実施形態では、有効性は、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、タウ、リン酸化タウ、及び炎症マーカーのCSFレベルの改善、並びに/又はPGRNの血漿中レベルの増加によって実証される。特定の実施形態では、有効性は、ミクログリオーシスのレベルの減少又は逆転を測定することによって評価される。特定の実施形態では、有効性は、前頭葉及び/又は側頭葉における代謝低下を評価するためにFDG PETを実施することによって実証される。
【0087】
特定の実施形態では、有効性は、GRN患者に関連する臨床症状のうちの1つ以上の改善によって測定され、これには、例えば、行動上の欠陥(脱抑制、無気力、同情又は共感の喪失、強迫的又は常同的な行動、又は口唇傾向)及び認知上の欠陥(エピソード記憶又は視覚空間スキルに重大な影響を及ぼさない実行機能の低下)が含まれる。
【0088】
特定の実施形態では、改善は、いくつかの他のより非定型的な症状において観察され、精神医学的特徴(妄想、幻覚、及び強迫行動)及び/又は他の認知障害(エピソード記憶
障害、失行、及び視空間機能障害)を含む。評価は、FTDC基準を使用して行われてもよく、前頭葉変性及び/又は側頭葉変性の徴候についての脳イメージング、臨床評価尺度(前頭側頭葉変性症の臨床認知症尺度[CDR-FTLD]、前頭葉性行動質問紙[FBI]、神経精神症状質問紙[NPI]、及び前頭側頭型認知症評価尺度[FRS]など)での減少の評価、及び最終的には、病原性GRN変異を確認するための遺伝子検査を含む。脳脊髄液(CSF)のバイオマーカーを使用してもよく、タウ及びアミロイド-β、並びにアミロイドの陽電子放出断層撮影(PET)イメージングが含まれる。
【0089】
特定の実施形態では、改善は、原発性進行性失語(PPA)を有するGRN変異保因者において観察され、これは、発話及び言語に関連する症状によって特徴付けられる。これらは、PPAの3つの臨床型である意味型PPA(svPPA)、非流暢型PPA(nfvPPA)、及びロゴペニック型PPA(lvPPA)を区別するメスラム基準に基づくガイドラインを使用して診断され得る(Gorno-Tempini et al.,(2011)“Classification of primary progressive aphasia and its variants.”Neurology.76(11):1006-14)。nfvPPAは、発話を生成する能力の欠陥を呈し、基本的な特徴としては、言語生成における失文法、努力性発話、及び発話の失行が挙げられる。svPPAは、単語の意味を理解する能力の欠陥を呈し、基本的な特徴としては、単語の呼称及び単語の理解の障害が挙げられる。lvPPAは、会話中に適切な単語を見つけることが困難であることを特徴とするが、単語の理解の低下を伴わない。lvPPAの基本的主な特徴は、単語の想起及び文の復唱の能力の欠陥である。GRN変異保因者は、nfvPPAで最も一般的であるが、PPAの臨床スペクトルにわたってより広範な症状を有する場合があり、「PPA-特定不能(not otherwise specified)」の診断をもたらす(Gorno-Tempini et al.,2011;Woollacott and Rohrer,2016)。
【0090】
GRNハプロ不全に関連する神経変性状態を有するヒト患者を治療する方法が提供される。特定の実施形態では、この状態は、プログラニュリン関連前頭側頭型認知症(FTD)である。本方法は、アデノ随伴ウイルス1(AAV1)カプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を介して、プログラニュリンのコード配列を中枢神経系(CNS)に送達することを含み、当該rAAVは、AAVカプシド中にパッケージされるベクターゲノムを更に含み、当該ベクターゲノムは、AAV逆位末端反復、ヒトプログラニュリンのコード配列、及びプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含む。
【0091】
プログラニュリンに関連する前頭側頭型認知症又はGRNハプロ不全に関連する別の神経変性状態、に関連する脳病変を有するヒト患者を治療するための方法が提供される。本方法は、アデノ随伴ウイルス1(AAV1)カプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を介して、プログラニュリンのコード配列を中枢神経系(CNS)に投与することを含み、当該rAAVは、AAVカプシド中にパッケージングされるベクターゲノムを更に含み、当該ベクターゲノムは、AAV逆位末端反復、ヒトプログラニュリンのコード配列、及びプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含む。
【0092】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、(a)脳病変の減少の予測因子として網膜蓄積病変の減少について患者を非侵襲的に評価すること、(b)磁気共鳴画像法を行って脳体積を評価すること、及び/又は(c)CSF中のプログラニュリンの濃度を測定することによって、治療をモニタリングすることを更に含み得る。任意選択的に、血漿中のプログラニュリン濃度を評価してもよい。
【0093】
特定の実施形態では、rAAV.hPGRN組成物の有効性は、主に認知的方法、主に行動的方法、又は認知/他の方法のうちの1つ以上によって評価される。以下に、好適な
評価について説明する。
【0094】
主な認知評価には、言語流暢性検査、FTLDの臨床認知症比率、又はミニメンタルステート検査(MMSE)がある。言語流暢性検査は、各対象に同じ絵/写真を提示し、口頭での説明を求めることによって実施される。説明中に、発話速度(単語/分)がカウントされ、記録され、最終的に定型発達の成人を反映する速度と比較される。CDR-FTLDは、古典的なCDRの拡張版であり、歴史的に、アルツハイマー病のスペクトル障害の重症度を評価するために使用されている。この評価には、CDRの元の6つのドメイン(記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家庭状況と趣味、介護状況)、並びに言語及び行動という2つの追加のドメインが含まれ、FTLDの低下を検出する際に、感度がより高くなる。「0」の評価は、正常な行動又は言語を示し、「1」、「2」、又は「3」のスコアは、軽度から重度の障害を示す。「評価項目合計(sum of boxes)」、又は個々のドメインスコアの合計は、全体的な認知症の重症度を決定するために使用される。MMSEは、臨床及び研究の実践で広く使用されている11問の全体的な認知評価である。質問としては、例えば、「今年は何年ですか?季節はいつですか?何日ですか?何曜日ですか?何月ですか?」と尋ねられ、正解ごとに1ポイントが与えられ、質問ごとに最高スコアが与えられる。最高総スコアは30で、24及び27のスコアの2つのカットオフがある。これらのカットオフは、認知機能低下の指標である。
【0095】
主な運動評価には、例えば、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)が含まれる。UPDRSは、メンテーション、行動、日常生活の気分と活動など、パーキンソニズムに関連するいくつかのドメインの42項目の4部構成の評価である。各項目は、典型的には、0(典型的には障害なしを示す)から4(典型的には最も重度の障害を示す)の範囲の評価尺度を含む。各部のスコアは、疾患の重症度を提供するために集計され、高スコアの199点は、最悪/最も完全な障害を示す。
【0096】
主な行動評価としては、例えば、神経精神症状質問紙(NPI)又は前頭葉性行動質問紙(FBI)が含まれる。NPIは、脳の障害を有する患者における精神病理の存在を解明するために使用される。当初、これはアルツハイマー病の集団で使用するために開発されたが、他の条件における行動の変化を評価するのに役立つ場合がある。この評価は、10の行動ドメインと2つの自律神経領域で構成され、その中には、4つのスコア:頻度、重症度、総合的な負担、及び介護者の負担がある。NPIの総スコアは、行動ドメインのドメインスコアを加算し、介護者負担のスコアを減算することによって得られる。FBIは、bvFTDに特に関連する行動及び人格の変化を評価し、FTDと他の認知症間を区別することを目的とした24項目の評価である。bvFTDと診断された患者は、一般に、これらのタイプの変化について十分な洞察を有していないため、これは、主介護者との対面面接として実施される。行動と人格に関連するいくつかの分野に焦点を当て、各質問を0(なし)から3(重度/ほとんどの場合)まで採点する。総スコアは、病気の重症度に関する洞察を提供し、経時的な変化を評価するために使用することができる。
【0097】
他の/認知及び運動評価の両方には、例えば、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)、臨床全般印象度変化(CGI-C)、前頭葉機能検査(FAB)、及び/又は前頭側頭型認知症評価尺度(FDR)が含まれる。C-SSRSは、自殺の念慮と行動を評価するための質問を通して、自殺念慮、念慮の強度、自殺行動を測定する3部構成の尺度である。この評価の結果は、尺度から直接取得される自殺行動致死率評価、自殺念慮スコア、及び自殺念慮強度評価で構成される。0を超える念慮スコアは、評価ガイドラインに基づいて、介入の必要性を示し得る。強度評価は、0~25の範囲であり、0は、自殺念慮の支持なしを表す。CGI-Cは、3部の簡潔で広く使用されている評価のうちの1つであり、3項目で構成され、臨床医と観察者によって評価される。CGI-Cは、改善が完全に治療によるものであるかどうかにかかわらず、研究への登録から始まり、1(非
常に改善された)から7(非常に悪化した)の範囲の7段階で評価される。FABは、前頭葉性遂行機能障害表現型認知症とアルツハイマー型認知症間の区別を補助するための簡易評価である。これは、軽度の痴呆患者(MMSE>24)において特に有用である。評価は、認知、運動、及び行動の領域に対処する6部で構成され、総スコアが18で、より高いスコアは、より良好なパフォーマンスを示す。FDRは、前頭側頭型認知症の患者のための簡易病期分類評価であり、経時的なFTDサブタイプの疾患進行の差異を検出する。この簡単な面接は、主介護者とともに実施され、30項目からなり、「起こらない」、「時々起こる」、又は「常に起こる」に分類される。次いで、パーセンテージスコアが計算され、ロジットスコア(logit score)、そして最終的には、重症度スコアに変換される。重症度スコアは、非常に軽度から最重度までの範囲である。
【0098】
有効性の他の尺度としては、症状の発症後、診断時点からの生存期間の増加が挙げられ、有効性の尺度である。現在、GRN変異によって引き起こされる神経変性と診断された患者の平均寿命は、症状の発症から7~11年である。有効性の別の尺度は、標的集団における全ての臨床症状にわたって最も一般的に影響を受ける脳領域である中前頭皮質及び頭頂領域の厚さにおける萎縮の安定化及び/又は増加である。これは、MRI又は他の画像診断技術を使用して評価することができる。更に他の評価には、生化学的バイオマーカーが含まれる。CSF中及び血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、AAV形質導入の読み出しとして測定され、rAAV1.hPGRNの投与後、患者において増加することが予想される。他の実施形態では、神経フィラメント軽鎖(NFL)、タウ、リン酸化タウ、及び他の炎症マーカーのCSFレベルが評価される。特定の実施形態では、これらのバイオマーカーのレベルの調節及び/又は減少は、有効性と相関する。
【0099】
以下の実施例は、ヘテロ接合GRNハプロ不全に関連する特定の状態の治療に焦点を当てているが、特定の実施形態では、本明細書に記載のベクター及び組成物は、他の疾患、例えば、神経セロイドリポフスチン症、癌(例えば、卵巣癌、乳癌、副腎癌、及び/又は膵臓癌)、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病、及び代謝性疾患などのGRN遺伝子のホモ接合性変異に関連する疾患の治療に使用され得る。
【0100】
更なる実施形態は、以下、「A1」~「E3」として続く。
【0101】
A1.ヒト患者における成人発症性神経変性疾患の治療に有用な治療レジメンであって、レジメンが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの投与を含み、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリン(GRN)のコード配列、及び標的細胞におけるプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、投与が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムを含む、単回用量の大層内(ICM)注入を含む、治療レジメン。
【0102】
A2.プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、実施形態A1に記載のレジメン。
【0103】
A3.ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、実施形態A1又はA2に記載のレジメン。
【0104】
A4.ベクターゲノムが、配列番号24を含む、実施形態A1~A3のうちのいずれか
1つに記載のレジメン。
【0105】
A5.患者が、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている、実施形態A1~A4のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0106】
A6.患者が、少なくとも35歳である、実施形態A1~A5のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0107】
A7.患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が低い、実施形態A1~A6のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0108】
A8.患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が正常レベルの50%未満である、実施形態A7に記載のレジメン。
【0109】
A9.患者は、CSF中のプログラニュリン濃度が正常レベルの約30%である、実施形態A7に記載のレジメン。
【0110】
A10.CSF、血清、及び/又は血漿中のプログラニュリンのレベルを検出することを更に含む、実施形態A1~A9のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0111】
A11.
i)ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、総タウ(T-タウ)、血漿グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、及びリン酸化タウ(P-タウ)のうちの1つ以上のCSFレベル、
ii)網膜リポフスチンを評価すること、
iii)脳体積、白質完全性、並びに中前頭皮質及び頭頂領域の厚さのうちの1つ以上の変化を追跡するためにMRIを実施すること、
iv)前頭葉及び/若しくは側頭葉における代謝低下を評価するためにFDG PETを実施すること、並びに/又は
v)疾患に関連する変化の減速を評価するためにEEG/誘発応答電位を測定すること、を測定することを更に含む、実施形態A1~A10のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0112】
A12.単回用量が、以下の組織型:前頭皮質、頭頂皮質、側頭皮質、後頭部皮質、髄質、小脳、頸部脊髄、胸部脊髄、腰椎脊髄、頸部後根神経節、胸部後根神経節、腰部後根神経節、及び三叉神経節のうちのいずれか1つ以上において、10GC/μgのDNAを提供するのに十分である、実施形態A1~A11のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0113】
A13.単回用量が、以下の組織型:前頭皮質、頭頂皮質、側頭皮質、後頭部皮質、髄質、小脳、頸部脊髄、胸部脊髄、腰椎脊髄、頸部後根神経節、胸部後根神経節、腰部後根神経節、及び三叉神経節のうちのいずれか1つ以上において、10GC/μgのDNAを提供するのに十分である、実施形態A1~A12のうちのいずれか1つに記載のレジメン。
【0114】
B1.AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えAAVベクターを含む、医薬組成物であって、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞におけるプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、組成物が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムの用量を投与するために、大槽内(ICM)注入を必要とするヒト患者への大槽内(ICM)注入用に製剤化されている、医薬組成物。
【0115】
B2.プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、実施形態B1に記載の医薬組成物。
【0116】
B3.ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、実施形態B1又はB2に記載の医薬組成物。
【0117】
B4.ベクターゲノムが、配列番号24を含む、実施形態B1~B3のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0118】
C1.成人発症性神経変性疾患を有する患者を治療する方法であって、方法が、ICM注入によって単回用量の組換えAAVを患者に投与することを含み、組換えAAVが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムが、AAV ITR、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞におけるプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含み、
単回用量が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムである、方法。
【0119】
C2.プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、実施形態C1に記載の方法。
【0120】
C3.ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、実施形態C1又はC2に記載の方法。
【0121】
C4.ベクターゲノムが、配列番号24を含む、実施形態C1~C3のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0122】
C5.患者が、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている、実施形態C1~C4のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0123】
C6.患者が、少なくとも35歳である、実施形態C1~C5のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0124】
C7.患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が低い、実施形態C1~C6のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0125】
C8.患者は、CSF中のプログラニュリンの濃度が正常レベルの50%未満である、実施形態C7に記載の方法。
【0126】
C9.患者は、CSF中のプログラニュリン濃度が正常レベルの約30%である、実施
形態C7に記載の方法。
【0127】
C10.CSF、血清、及び/又は血漿中のプログラニュリンの濃度を検出することを更に含む、実施形態C1~C9のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0128】
C11.
i)ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、総タウ(T-タウ)、血漿グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、及びリン酸化タウ(P-タウ)のうちの1つ以上のCSF濃度、
ii)網膜リポフスチンを評価すること、
iii)脳体積、白質完全性、並びに中前頭皮質及び頭頂領域の厚さのうちの1つ以上の変化を追跡するためにMRIを実施すること、
iv)前頭葉及び/若しくは側頭葉における代謝低下を評価するためにFDG PETを実施すること、並びに/又は
v)疾患に関連する変化の減速を評価するためにEEG/誘発応答電位を測定すること、を測定することを更に含む、実施形態C1~C10のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0129】
D1.単位剤形の医薬組成物であって、
約1.44×1013~約4.33×1014GCの緩衝液中の組換えAAVベクターを含み、
組換えAAVが、AAV1カプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復(ITR)、プログラニュリンのコード配列、及び標的細胞においてプログラニュリンの発現を指示する調節配列を含む、医薬組成物。
【0130】
D2.プログラニュリンのコード配列が、配列番号3、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列である、実施形態D2に記載の医薬組成物。
【0131】
D2.ベクターゲノムが、CB7プロモーター、キメライントロン、及びウサギベータグロビンポリAを更に含む、実施形態D1又はD2に記載の医薬組成物。
【0132】
D4.ベクターゲノムが、配列番号24を含む、実施形態D1~D3のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0133】
D5.組成物が、ICM投与用に製剤化されている、実施形態D1~D4のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0134】
D6.緩衝液が、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びポロキサマー188を含む、実施形態D1~D5のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0135】
D7.緩衝液が、1mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、3mMの塩化カリウム、1.4mMの塩化カルシウム、0.8mMの塩化マグネシウム、及び0.001%のポロキサマー188を含む、実施形態D1~D6のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0136】
D8.約3.0mL、約4.0mL、又は約5.0mLの体積を有する、実施形態D1~D6のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0137】
E1.成人発症性神経変性疾患を有するヒト患者の治療における使用のための、実施形態D1~D8のうちのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0138】
E2.患者が、GRNハプロ不全及び/又は前頭側頭型認知症(FTD)を有すると特定されている、実施形態E1に記載の使用のための医薬組成物。
【0139】
E3.組成物が、
(i)約3.3×1010ゲノムコピー(GC)/脳質量のグラム、
(ii)約1.1×1011GC/脳質量のグラム、
(iii)約2.2×1011GC/脳質量のグラム、又は
(iv)約3.3×1011GC/脳質量のグラムの用量を投与するために製剤化されている、実施形態E1又はE2に記載の使用のための医薬組成物。
【0140】
本明細書で使用される場合、コンピュータ断層撮影(CT)という用語は、軸に沿って作成された一連の平面断面画像から、コンピュータによって身体構造の三次元画像が構築される放射線撮影を指す。
【0141】
「実質的相同性」又は「実質的類似性」という用語は、核酸、又はその断片を参照する場合、別の核酸(又はその相補的鎖)と適切なヌクレオチド挿入又は欠失によって最適にアラインメントされるとき、アラインメントされる配列の少なくとも約95~99%のヌクレオチド配列同一性を有することを示す。好ましくは、相同性は、全長配列、又はそのオープンリーディングフレーム、又は少なくとも15ヌクレオチド長である別の適切な断片にわたる相同性である。好適な断片の例は、本明細書に記載されている。
【0142】
核酸配列の文脈で「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、又は「同一パーセント」という用語は、最大限対応するようにアラインメントさせたときに同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性の比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、又は、少なくとも約500~5000個のヌクレオチドの断片にわたってもよく、これが望ましい。しかしながら、例えば、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24個のヌクレオチド、少なくとも約28~32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチドの、より小さい断片間の同一性も望まれ得る。同様に、「パーセント配列同一性」は、タンパク質の全長わたるアミノ酸配列又はその断片について容易に決定することができる。好適には、断片は、少なくとも約8アミノ酸長であり、最大で約700アミノ酸長であり得る。好適な断片の例は、本明細書に記載されている。
【0143】
「実質的相同性」又は「実質的類似性」という用語は、核酸、又はその断片を参照する場合、別の核酸(又はその相補的鎖)と適切なアミノ酸挿入又は欠失によって最適にアラインメントされるとき、アラインメントされる配列の少なくとも約95~99%のアミノ酸配列同一性を有することを示す。好ましくは、相同性は、全長配列、若しくはそのタンパク質、例えば、capタンパク質、repタンパク質、又は少なくとも8アミノ酸長であるそれらの断片、若しくはより好ましくは、少なくとも15アミノ酸長にわたる。好適な断片の例は、本明細書に記載されている。
【0144】
「高度に保存された」という用語は、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは97%を超える同一性を意味する。同一性は、当業者によって知られているアルゴリズム及びコンピュータプログラムに頼ることによって、当業者によって容易に決定される。
【0145】
一般的に、2つの異なるアデノ随伴ウイルス間の「同一性」、「相同性」又は「類似性
」について言及する場合、「同一性」、「相同性」又は「類似性」は、「アラインメントされた」配列を参照して決定される。「アラインメントされた」配列又は「アラインメント」とは、複数の核酸配列又はタンパク質(アミノ酸)配列を指し、参照配列と比較して、多くの場合、欠損又は追加塩基又はアミノ酸についての補正を含む。例では、公開されたAAV9配列を参照点として使用してAAVアラインメントを行う。アラインメントは、公的又は商業的に利用可能な様々な多重配列整列プログラムのいずれかを使用して行われる。かかるプログラムの例としては、インターネット上のウェブサーバを通してアクセス可能な「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「MAP」、及び「MEME」が挙げられる。かかるプログラムの他のソースは、当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティもまた使用される。また、当該技術分野で既知のいくつかのアルゴリズムが存在し、上に記載のプログラムに含まれるものを含め、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を用いて比較することができる。Fasta(商標)は、照会及び検索配列の間の最良の重複領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、本明細書に参考として組み込まれる、GCG Version 6.1で提供される、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのためのNOPAM因子)を用いるFasta(商標)を使用して決定することができる。「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び「Match-Box」プログラムなどの多重配列整列プログラムもまた、アミノ酸配列に対して利用可能である。一般的に、これらのプログラムのいずれかをデフォルト設定で使用するが、当業者は、これらの設定を必要に応じて変更し得る。あるいは、当業者は、参照のアルゴリズム及びプログラムによって提供されるものと少なくとも同じレベルの同一性又はアラインメントを提供する、別のアルゴリズム又はコンピュータプログラムを利用することができる。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0146】
「a」又は「an」という用語は、1つ以上を指すことに留意されたい。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0147】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」という用語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。「なる(consist)」、「なっている(consisting)」という用語、及びその変形は、包括的ではなく排他的に解釈されるべきである。明細書中の様々な実施形態は、「含む(comprising)」という言語を使用して提示されるが、他の状況下では、関連する実施形態は、「~からなる」又は「~から本質的になる」という言語を使用して解釈され、記載されることも意図している。
【0148】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別途指定されない限り、与えられた参照から10%(±10%、例えば、±1、±2、±3、±4、±5、±6、±7、±8、±9、±10、又はそれらの間の値)の可変性を意味する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「疾患」、「障害」、及び「状態」は、対象における異常な状態を示すために互換的に使用される。
【0150】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当
業者によって、及び本明細書で使用される多数の用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する、公開された文献を参照することによって、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0151】
「発現」という用語は、本明細書で最も広い意味で使用され、RNA又はRNA及びタンパク質の産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、特に、ペプチド又はタンパク質の産生に関する。発現は、一過性又は安定であり得る。
【0152】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、コード配列、プロモーターを含む核酸分子を指し、それらのための他の調節配列を含み得、そのカセットは、遺伝子要素(例えば、プラスミド)によりパッケージング宿主細胞に送達され得、ウイルスベクターのカプシド(例えば、ウイルス粒子)へパッケージされる。典型的には、ウイルスベクターを生成するためのこのような発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する本明細書に記載の遺伝子産物のためのコード配列と、本明細書に記載されるものなどの他の発現制御配列と、を含有する。
【0153】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、目的の遺伝子に連続している発現制御配列、及びトランスで又は離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の両方を指す。
【0154】
タンパク質又は核酸を参照して使用される場合、「異種性」という用語は、タンパク質又は核酸が、天然では互いに同じ関係で見出されない、2つ以上の配列又は部分配列を含むことを示す。例えば、新規の機能的核酸を作製するために配置された関連のない遺伝子からの2つ以上の配列を有する核酸は、典型的に、組換えにより産生される。例えば、一実施形態では、核酸は、ある遺伝子由来のプロモーターを有し、異なる遺伝子由来のコード配列の発現を指令するように配置される。したがって、コード配列を参照すると、プロモーターは、異種性である。
【0155】
本発明の文脈における「翻訳」という用語は、リボソームでのプロセスに関し、mRNA鎖は、アミノ酸配列の集合を制御して、タンパク質又はペプチドを生成する。
【0156】
以下の実施例は、単なる例示であり、本発明を限定することを意図していない。
【実施例
【0157】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0158】
実施例1:材料及び方法
ベクター
操作されたヒトPGRN cDNAを、サイトメガロウイルス初期エンハンサーを有するニワトリβアクチンプロモーター、キメライントロン、及びウサギβグロビンポリアデニル化配列を含む発現構築物にクローニングした(図1)。第2の操作されたヒトPGRN cDNAを、ヒトユビキチンCプロモーターを含む発現構築物にクローニングした。発現構築物は、AAV2逆位末端配列に隣接した。アデノ随伴ウイルス血清型1、5及びヒト68(AAVhu68)は、前述のようにHEK293細胞の三重トランスフェクション及びイオジキサノール精製によって、この構築物から生成された(Lock M,et al.Hum Gene Ther.2010;21(10):1259-71)。
【0159】
動物手順
全ての動物プロトコルは、the Institutional Animal Care and Use Committee of the University of Pennsylvaniaにより認可された。つがいのGRNノックアウトマウスを、The Jackson laboratory(ストック番号013175)から購入し、コロニーをペンシルベニア大学で維持した。野生型C57BL/6(ストック番号000664)は、対照として機能した。最初の研究では、2ヶ月齢のマウスをイソフルランで麻酔し、1×1011ベクターゲノムコピー(GC)を5μLの量で側脳室(ICV)に注入した。注入60日後、マウスを、ケタミン/キシラジン麻酔下、失血により安楽死させ、頚椎脱臼により、死亡を確認した。第2の研究では、マウスは、7ヶ月齢で処置され、11ヶ月齢で犠牲にされた。剖検時に、血清を、心臓穿刺により採取し、CSFを、ポリエチレンチューブに連結された32ゲージ針を用いて、後頭下穿刺により採取した。血清及びCSF試料を、ドライアイス上で即時凍結し、分析時まで-80度で保存した。前頭皮質を、生化学用に回収し、ドライアイス上で即時凍結し、残りの脳は、組織学用に10%のホルマリンで固定した。
【0160】
3~4歳齢のアカゲザル(rhesus macaques)を、Covanceから購入した。大槽内への後頭下穿刺を介した指定された試験物の単回注入(ICM注入)で動物に投与した。同じデバイス及び手順を使用して全ての動物に行った。
試験0日目に、動物を実施前に鎮静させた。試験物の投与前に、動物を体重測定し、バイタルサインを記録した。鎮痛剤が動物に提供された。
【0161】
次いで、麻酔されたアカゲザルを、動物保持スペースから移し、X線台上に側臥位で配置し、CSF採取及び大槽への投薬のために頭を前方に曲げた。注入部位は無菌的に準備
した。無菌技術を使用して、CSFの流れが観察されるまで、21~27ゲージのQuincke脊椎ニードル(Becton Dickinson)を後頭下空間へと前進させた。次いで、1.0mLのCSFを、投与前に、ベースライン分析のために採取した。横切られる解剖学的構造は、皮膚、皮下脂肪、硬膜外腔、硬膜、及び環椎後頭筋膜を含む。ニードルは、血液の汚染及び潜在的な脳幹損傷を回避するために、より広範囲の大槽の上部空隙へ指向された。ニードル穿刺の正確な配置は、透視装置(OEC9800C-Arm、GE)を使用する脊髄造影法を介して確認され得る。CSF採取の後、レウルアクセス延長カテーテルを、脊椎ニードルに連結して、イオヘキサール(商標名:Omnipaque 180mg/mL,General Electric Healthcare)造影剤及び試験物の投薬を容易にする。最大2mLのイオヘキソールを、カテーテル及び脊椎ニードルを介して投与した。ニードル配置を確認した後、試験物を含有するシリンジ(1.0mLに等価な容量並びにシリンジ及びリンカーのデッドスペース容量)を、可撓性リンカーに連結して、30±5秒間にわたって注入した。投与後、ニードルを取り出し、直接的圧力が穿刺部位に適用された。
【0162】
組織学及び画像診断
マウスの脳を10%ホルマリンで固定し、スクロース中で凍結保存し、最適切断温度(OCT)化合物中に包埋し、クリオスタットで切片化した。目的の領域の自己蛍光物質(リポフスチン)の低倍率画像を撮影した。Image Jソフトウェアを使用して、リポフスチン沈着物を盲検で定量した。非ヒト霊長類組織を10%ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。スライドは、委員会認定の獣医病理学者(ELB)によって審査された。GFPベクターで処置された動物の場合、脳切片を、olig2、GFAP、又はNeuNに対する抗体で染色した。全ての切片を、DAPI及びGFPに対する抗体、続いて蛍光二次抗体で共染色した。スライドをLeica Aperio Versa 200スライドスキャナーでスキャンし、eSlide Managerからダウンロードして、HALOイメージングソフトウェア(Indica Labs)で分析した。各動物について右半球の5つの領域をサンプリングし、各細胞型マーカーを用いて細胞を定量した。細胞を、以下の設定を調整することによって検出した:核検出タブの下で「最小核強度」、「核サイズ」、「核セグメンテーションアグレッシブネス」、及び「最小核ラウンドネス」。次いで、個々の色素ごとに基準を定義して、細胞を更に同定し、各マーカーの定量的な総細胞数を生成した。設定は、所望の細胞型の検出の感度及び信頼性に基づいて経験的に決定された。一部の場合、細胞質におけるNeuNの検出などの設定は、マーカーの真の細胞内局在を反映しなかったが、より高い特異性及び感度の検出を提供した。自動化された手段によって検出された全ての細胞は、手動で検証された。ニューロンについては、「色素1」タブの下、「核陽性閾値」及び「細胞質陽性閾値」を調整して、核及び細胞質の両方に存在するNeuNを有する細胞のみを検出した。アストロサイトについては、DAPI及びGFAPマーカーを選択し、細胞の核及び細胞質の両方に存在する場合、カウントに含めた。オリゴデンドロサイトについては、DAPIとolig2の両方が核に存在するが、細胞の細胞質には存在しない場合、細胞をカウントした。共局在については、同じ設定が使用されたが、ニューロンでは核、並びにアストロサイトでは核及び細胞質の両方で、GFPが追加の色素として含まれた。全ての選択されたマーカーを発現しなかった細胞は、核又は細胞質の「マスク」機能を使用して「マスキング」することによって、生成される結果表から除外された。olig2と共局在するGFP陽性細胞が稀なため、形質導入されたオリゴデンドロサイトは手動でカウントした。場合によって、自己蛍光を示す血管又は脈絡叢の一部は、「はさみ」ツールを使用して手動で、輪郭を描き、除外した。得られた値を、各細胞型マーカーのGFP陽性細胞の割合として表した。
【0163】
神経炎症の評価(CD68免疫組織化学)
CD68の免疫組織化学染色を、各動物の脳の凍結切片で実施した。簡潔にいうと、抗
原賦活化は、diHO中に1:100で希釈されたクエン酸塩ベースの抗原賦活緩衝液(Vector Laboratories、カタログ番号H-3300)中でスライドを100℃で20分間インキュベーションすることによって実施された。次いで、スライドを洗浄し、0.2%のTriton-Xを含む1%のロバ血清中で、室温で15分間ブロッキングした。スライドを、ウサギ抗マウスCD68一次抗体(Abcam、カタログ番号125212)とともに、4℃で一晩インキュベーションした。翌日、スライドを洗浄し、抗ウサギIgG TritCコンジュゲート二次抗体とともに室温で1時間インキュベーションした。スライドをPBS中で洗浄し、続いてdiH20を1分間洗浄した。スライドを、核対比染色として、Fluoromount G又はDAPIを含有する同様の培地でカバーガラスした。CD68染色を、VIS画像分析ソフトウェアを使用して、視野当たりの陽性面積として定量化した。CD68面積は、平均視野サイズを視野サイズで割り、次いでCD68陽性面積で乗算することによって、全視野領域に正規化した(Visiopharm、Hoersholm,Denmark、Version 2019.07.0.6328)。
【0164】
ヘキソサミニダーゼ(Hex)アッセイのための試料調製
HEX活性は、96ウェルの黒色プラスチックアッセイプレート中で、10μgの脳組織溶解物又は5μLの血清を95μLの反応混合物(1mMの4-メチルウンベリフェリルナセチルβD-グルコサミニド[Sigma M2133]、0.15MのNaCl、0.05%のTriton X-100、及び0.1Mの酢酸ナトリウム、pH3.58)と混合することによって測定した。プレートを密封し、37℃で30分間インキュベーションし、150μLの停止溶液(290mMのグリシン及び180mMのクエン酸ナトリウム、pH10.9)を添加することによって、反応を停止した。反応産物からの蛍光を、365nmで励起したときの450nmの発光波長で測定した。
【0165】
DNA抽出及び生体内分布(TaqMan qPCR)
デオキシリボ核酸(DNA)抽出及びゲノムコピーの定量化を、TaqMan定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を使用してベクター生体内分布分析のために採取された組織に対して実施した。簡潔にいうと、組織を機械的に均質化し、プロテイナーゼKで消化した。試料をRNAse Aで処理し、細胞をBuffer AL(カタログ番号19075、QIAGEN)中、70℃で1時間インキュベーションすることによって溶解した。DNAを抽出し、QIAGENスピンカラム上で精製した。90ng/μl以上、110ng/μl以下の濃度まで希釈した後、ベクター特異的プライマー及び/又は導入遺伝子特異的プライマーを使用して、qPCR反応を二重に行った。シグナルを、同じ研究からのナイーブ又は陰性対照動物由来の既知の濃度のDNAのバックグラウンドにおける線状化プラスミドDNAの標準曲線と比較した。1マイクログラムのDNA当たりのゲノムコピーを計算した。PCR反応における交差汚染及び試料干渉を除外するために、追加の対照を利用した。生データは、Ct値について事前に定義された合格基準に基づいて分析され、各実行について定量限界が決定された。全てのデータは、バッチレコードフォームに含まれ、及び/又はバッチレコードフォームに添付された。
【0166】
導入遺伝子の発現の評価(ELISA)
前頭皮質からの脳組織の凍結試料を、0.9%のNaCl(pH4.0)及び0.05%のTriton-X100を含む溶液中で、Qiagen TissueLyzerを使用して、30Hzで2分間均質化した。試料を、ドライアイス上で凍結し、室温で解凍し、軽くボルテックスした。溶解物を、10,000RPMの卓上遠心分離機で10分間遠心分離することによって清澄化した。
【0167】
サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、脳組織溶解物又はCSF中のヒトPGRN発現を測定した。簡潔にいうと、ELISAプレートを、4℃で
一晩、抗ヒトPGRN捕捉抗体でコーティングした。プレートを洗浄し、次いで、PBS中の1%ウシ血清アルブミン中で、室温で2時間ブロッキングした。プレートをデカントし、100μlの脳組織溶解物又はCSFを室温で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、ビオチンコンジュゲート抗ヒトIgG抗体とともに、室温で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、ストレプトアビジンコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼとともに、室温で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)発色基質及び0.004%Hを含有する現像溶液中で、室温でインキュベーションした。反応は、任意のウェルの色が飽和に達するように見えるまで、最大30分間、発色のために観察された。次いで、HS0を含有する停止緩衝液を添加することによって反応をクエンチし、吸光度を450nmで測定した。
【0168】
抗導入遺伝子抗体の評価(ELISA)
血清及びCSF中の抗ヒトPGRN抗体を、間接ELISAによって測定した。簡潔にいうと、ELISAプレートを、4℃で一晩、組換えヒトPGRNタンパク質(1μg/mL)でコーティングした。プレートを洗浄し、次いで、DPBS中の1%ウシ血清アルブミン中で、室温で1時間ブロッキングした。血清試料を、DPBS中に1:250に希釈し、一方、CSF試料を、1:5に希釈した。希釈した試料をELISAプレートのウェルに二重で添加し、37℃で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、ビオチン化抗マウスIgG抗体とともに室温で1時間インキュベーションし、続いて、洗浄し、ストレプトアビジンコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ二次抗体とともに1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)発色基質及び0.004%Hを含有する現像溶液中で、室温でインキュベーションした。反応は、任意のウェルの色が飽和に達するように見えるまで、最大30分間、発色のために観察された。HS0を含有する停止緩衝液を添加することによって反応をクエンチし、吸光度を450nmで測定した。
【0169】
ELISpotアッセイのための末梢血単核球及びリンパ球単離
末梢血単核球分離
最大10mLの血液を、事前に標識された50mLの遠心分離機チューブ中で、滅菌されたHankの平衡塩溶液(HBSS)で希釈した。試料を十分に混合し、次いで、100%Ficoll-Paque Plus密度勾配で遠心分離した。上部血漿画分を除去した。下部のPBMC含有層を新しいチューブ中に配置し、洗浄し、細胞を、ACK溶解緩衝液を使用して溶解した。懸濁液をDNAse Iで処理し、遠心分離し、溶解した赤血球からなる上清を除去した。白血球ペレットをほぐし、洗浄し、DNAse Iで処理し、遠心分離した。ペレットを完全なRPMI培地(L-グルタミン、ウシ胎児血清[FBS]、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸[HEPES]、pen/strep、及びゲンタマイシン硫酸塩を補充したRPMI1650培地を含有する)に再懸濁した。
【0170】
肝臓リンパ球単離
各動物の肝臓の切片を採取し、室温で滅菌RPMI1640培地中に配置した。肝臓を採取した直後に、ペトリ皿でさいの目に切断した。小片をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、ハンドプロセッサを使用して1mmサイズの断片に切り刻んだか、又は自動化組織解離器を使用して均質化した。組織をコラゲナーゼで消化し、100μm及び40μmのフィルターを通して濾過した。試料を遠心分離し、ペレットを1%のFBSを補充したPBSで洗浄して、コラゲナーゼを除去した。ペレットを、5%のFBSを補充したRPMI1640培地に再懸濁した。次いで、肝臓リンパ球を、2000RPMで、20℃(±2℃)で20分間のPercoll勾配を通した遠心分離を介して単離した。肝臓リンパ球を、1%のFBSを補充したPBS中で2回洗浄し、続いて1600RPMで5
分間遠心分離し、各洗浄を20℃(±2℃)で行った。肝臓リンパ球をRPMI1640培地に再懸濁した。
【0171】
脾臓リンパ球単離
各動物の脾臓の切片を採取し、室温で滅菌L15培地中に配置した。その後、それをさいの目に切断し、自動化組織解離器を使用して粉砕又は均質化した。スラリーを細胞ストレーナを通して50mLの円錐遠心チューブに濾過した。試料を1700RPMで、20℃(±2℃)で5分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞ペレットを、室温で3分間、ACK溶解緩衝液中に再懸濁した。次いで、DNAse Iを含有するRPMI1640培地を試料に添加し、続いて、直ちに、1700RPMで、20℃(±2℃)で5分間遠心分離した。細胞ペレットをRPMI1640培地で洗浄して、DNase I及び溶解緩衝液を除去し、遠心分離した。洗浄した脾細胞をRPMI1640培地中に再懸濁した。
【0172】
骨髄リンパ球単離
骨髄を、室温で、ヘパリン及びPBSを含有するチューブに採取した。骨髄を、滅菌HBSS中で希釈し、70μmストレーナ、続く40μmストレーナを通して濾過するか、又は自動化組織解離器を使用して均質化するかのいずれかを行った。濾過した骨髄を新しいチューブ内のフィコールパーク層の上部に配置し、遠心分離器を止めて2500RPMで25分間遠心分離した。上部画分を除去し、骨髄リンパ球を含有する画分を新しいチューブにピペットした。細胞をHBSSで洗浄し、1700RPMで5分間遠心分離した。細胞ペレットを、完全なRPMI培地(L-グルタミン、FBS、HEPES、pen/strep、及びゲンタマイシン硫酸塩を補充したRPMI1650培地を含有する)で再度洗浄し、1700RPMで5分間遠心分離した。ペレットをRPMI1640培地中に再懸濁した。
【0173】
中和抗体アッセイ
AAVhu68に対する中和抗体は、前述のように評価された(Calcedo R,et al.J Infect Dis.2009;199(3):381-90)。
【0174】
感覚神経伝導試験
動物を、ケタミン/デクスメデトミジンの組み合わせで鎮静させた。体温を維持するために、鎮静した動物を、ヒートパックを備えた処置台に対して横向き又は背殿位で配置した。電気信号取得に干渉する可能性があるため、電子加温デバイスは使用しなかった。
【0175】
感覚神経伝導試験(NCS)は、感覚神経伝導速度(NCV)試験とも称され、Nicolet EDX(登録商標)システム(Natus Neurology)及びViking(登録商標)分析ソフトウェアを使用して、感覚神経活動電位(SNAP)の振幅及び伝導速度を測定するために実施した。簡潔にいうと、刺激プローブは、記録部位に最も近いカソードで、正中神経の上に配置された。2つの針電極を、遠位指骨(参照電極)及び近位指骨(記録電極)のレベルで第2指の皮下に挿入し、一方、接地電極を刺激プローブ(陰極)の近位に配置した。WR50 Comfort Plus Probe小児刺激装置(Natus Neurology)を使用した。励起された応答を、差動増幅させ、モニターに表示させた。初期取得刺激強度を0.0mAに設定して、バックグラウンド電気信号の欠如を確認した。最適刺激位置を見つけるために、刺激強度を10.0mAまで増加させ、連発刺激を生成しつつ、最大の明確な波形によって決定される最大位置が見つかるまで、正中神経に沿ってプローブを移動させた。プローブを最適位置に保ちつつ、ピーク振幅応答が増加しなくなるまで、刺激強度を段階的に10.0mAまで増加させた。最後の30回の刺激応答を記録し、ソフトウェアに保存した。最大10の最大刺激応答を平均し、正中神経について報告した。記録部位から刺激カソードまでの距離(cm)を測定し、ソフトウェアに入力した。伝導速度は、応答の開始潜時及び距離(cm)を
使用して計算した。伝導速度及びSNAP振幅の平均の両方を報告した。正中神経を両側試験した。この装置によって生成した全ての生データを、試験ファイルの一部として保持した。
【0176】
実施例2:組換えAAV1.hPGRN
rAAV1.PGRNは、1)AAV ITRに隣接する導入遺伝子カセットをコードするAAVシスプラスミド(pENN.AAV.CB7.CI.hPGRN.rBG.KanRと称される)、2)AAV2 rep及びAAV1 capの遺伝子をコードするAAVトランスプラスミド(pAAV2/1.KanRと称される)、及び3)ヘルパーアデノウイルスプラスミド(pAdΔF6.KanRと称される)を用いたHEK293細胞の三重プラスミドトランスフェクションによって生成される。
【0177】
A.AAVベクターゲノムプラスミドの配列エレメント
シスプラスミド(pENN.AAV.CB7.CI.hPGRN.rBG.KanR(p4862)と称される)由来のベクターゲノムの線形マップは、図2を参照されたい。
【0178】
シスプラスミドは、以下のベクターゲノム配列エレメントを含む:
1.逆位末端反復(Inverted Terminal Repeat、ITR):ITRは、同一の逆相補配列であり、AAV2(130塩基対[bp]、GenBank:NC_001401)に由来し、ベクターゲノムの全ての構成要素に隣接する。ITR配列は、AAV及びアデノウイルスヘルパー機能がトランスで提供される場合、ベクターDNAの複製起点及びベクターゲノムのパッケージングシグナルの両方として機能する。したがって、ITR配列は、ベクターゲノムの複製及びパッケージングに必要とされるシス配列のみを表す。
【0179】
2.ヒトサイトメガロウイルス最初期エンハンサー(CMV IE):このエンハンサー配列は、ヒト由来のCMV(382bp、GenBank:K03104.1)から得られ、下流導入遺伝子の発現を増加させる。
【0180】
3.ニワトリβ-アクチンプロモーター(BA)この遍在性プロモーター(282bp、GenBank:X00182.1)を選択して、任意のCNS細胞型における導入遺伝子の発現を駆動させた。
【0181】
4.キメライントロン(CI):ハイブリッドイントロンは、ニワトリβ-アクチンスプライスドナー(973bp、GenBank:X00182.1)及びウサギβ-グロビンスプライスアクセプターのエレメントを含む。イントロンは転写されるが、その両端のいずれかにある配列と合わせて、スプライシングによって成熟メッセンジャーRNA(mRNA)から除去される。発現カセットにおけるイントロンの存在は、核から細胞質へのmRNA輸送を促進し、それにより、翻訳のためのmRNAの一定レベルの蓄積を高めることが示されている。これは、遺伝子発現レベルの増加を意図した遺伝子ベクターにおいて共通の特徴である。
【0182】
5.コード配列:ヒトGRN遺伝子の操作されたcDNA(2つの終止コドンを含む1785bp)は、ヒトPGRN(hPGRN)タンパク質(593アミノ酸[aa]、GenBank:NP_002078)をコードし、それは、リソソーム機能及び他の神経系の役割に関与する。
【0183】
6.ウサギβグロビンのポリアデニル化シグナル(rBG PolyA):rBG PolyAシグナル(127bp、GenBank:V00882.1)は、cisで導入遺伝子のmRNAの効率的なポリアデニル化を促進する。このエレメントは、転写終結、
新生転写物の3’末端での特異的切断事象、及び長いポリアデニル鎖付加のためのシグナルとして機能する。
【0184】
B.AAV1トランスプラスミド:pAAV2/1.KanR(p0069)
AAV2/1トランスプラスミドは、pAAV2/1.KanR(p0069)である。pAAV2/1.KanRプラスミドは、鎖長が8113bpであり、AAVベクターゲノムの複製及びパッケージングに必要とされる4つの野生型AAV2レプリカーゼ(Rep)タンパク質をコードする。pAAV2/1.KanRはまた、3つの野生型AAV1ビリオンタンパク質カプシド(Cap)タンパク質をコードし、AAVベクターゲノムを収容するためにAAV血清型1(AAV1)のビリオンシェルに組み立てられる。pAAV2/1.KanRに含まれるAAV1 cap遺伝子は、サル源から単離された。
【0185】
pAAV2/1.KanR構築物を作製するために、p5E18(2/2)からの3.0キロ塩基(kb)断片、pAV1Hからの2.3kb断片、及びp5E18(2/2)からの1.7kb断片を組み込んで、pAAV2/1(p0001)を形成し、これは、アンピシリン耐性(AmpR)カセット(文献ではp5E18[2/1]と称される)中にAAV2 rep及びAAV1 capを含む。このクローニング戦略では、AAV p5プロモーター(通常rep発現を駆動する)を、repの5’末端からcapの3’末端へと移し、repの上流の切断型p5プロモーターを残す。この切断型プロモーターは、repの発現を下方制御し、結果として、ベクター産生を最大化する役割を果たす(Xiao et al.,(1999)Gene therapy vectors based on adeno-associated virus type 1.J Virol.73(5):3994-4003)。
【0186】
臨床製品の製造のためのpAAV2/1.KanRを生成するために、pAAV2/1の骨格配列におけるアンピシリン耐性(AmpR)遺伝子をカナマイシン耐性(KanR)遺伝子で置換した。トランスプラスミドの全ての構成部品は、直接配列決定によって検証された。
【0187】
C.アデノウイルスヘルパープラスミド:pAdDeltaF6(KanR)
プラスミドpAdDeltaF6(KanR)は、ペンシルベニア大学のJame M.Wilson博士及び同僚の研究室内で構築され、サイズは15,774bpである。このプラスミドには、AAVの複製に重要なアデノウイルスゲノムの領域、すなわちE2A、E4、及びVA RNAが含まれている(アデノウイルスE1の機能は、HEK293細胞によって提供される)。しかしながら、このプラスミドには、他のアデノウイルスの複製遺伝子又は構造遺伝子は含まれていない。プラスミドは、アデノウイルスITRなどの複製に重要なシスエレメントを含んでおらず、したがって、感染性のアデノウイルスが生成されることは予想されない。プラスミドは、Ad5のE1、E3欠失分子クローン(pBHG10、pBR322ベースのプラスミド)に由来した。Ad5に欠失を導入して、不要なアデノウイルス遺伝子の発現を除去し、かつアデノウイルスDNAの量を削減した(32kbから12kbへ)。最後に、アンピシリン耐性遺伝子を、カナマイシン耐性遺伝子によって置き換え、pAdeltaF6(KanR)を生成した。このプラスミドに残るE2、E4、及びVAIのアデノウイルス遺伝子は、HEK293細胞に存在するE1とともに、AAVベクターの産生に必要である。
【0188】
最終生成物は、USP<791>によって決定される6.2~7.7の範囲のpH、USP<785>によって決定される260~320mOsm/kgの浸透圧、及びddPCRによって決定される2.5×1013GC/mL以上のGC力価を有する必要がある(Lock et al,(2014).“Absolute determination of single-stranded and self-complemen
tary adeno-associated viral vector genome titers by droplet digital PCR.”Hum Gene Ther Methods.25(2):115-25。
【0189】
実施例3:マウス疾患モデルにおけるヒトPGRN導入遺伝子のAAV媒介性送達
CB7プロモーター及びキメライントロンの制御下でヒトPGRN(配列番号3)を発現するAAVhu68カプシドを有する組換えAAVベクター(CB7.CI.hPGRN.rBG)を、例えば、WO2018/160582に記載されている公開された三重トランスフェクション技術を使用して産生した。
【0190】
本発明者らは、GrnノックアウトマウスモデルにおけるヒトGrn導入遺伝子のAAV媒介性送達を評価した。ヘテロ接合のGrn変異(Grn+/-)のマウスは、Grn関連神経変性疾患の病理学的特徴を示さず、おそらく、マウスの寿命では、ヒトにおいて数十年後に初めて現れるGRNハプロ不全の後遺症の発生が不可能であるためである。対照的に、(Grn-/-)マウスにおける完全なPGRN欠損では、リソソーム機能の障害、自己蛍光リソソーム蓄積物質(リポフスチン)の蓄積、及びミクログリアの活性化などのヒトにおけるGrnハプロ不全のいくつかの初期の特徴を再現するが、Grn-/-マウスは、最大2歳齢まででさえニューロン損失を示さない(Lui H,et al.Cell.2016;165(4):921-35;Ward ME,et al.Sci Transl Med.2017 Apr 12;9(385):pii:eaah5642)。Grn+/-マウス及びGrn-/-マウスの両方とも、行動異常を示すことが報告されているが、所見は群間で一致していない(Ahmed Z,et al.Am J Pathol.2010;177(1):311-24;Wils H,et al.The Journal of Pathology.2012;228(1):67-76、Ghoshal N,et al.Neurobiology of Disease.2012;45(1):395-408、Filiano AJ,et al.The Journal of neuroscience:the official journal of the Society for Neuroscience.2013;33(12):5352-61、Yin F,et al.The FASEB Journal.2010;24(12):4639-47)。同様に、一部の報告は、Grn-/-マウスにおける生存率の低減が示されたが、他では、Grn-/-マウスが、正常な寿命を有することが見出され、本発明者ら経験と一致した(Ahmed Z,et al.Am J Pathol.2010;177(1):311-24;Wils H,et al.The Journal of Pathology.2012;228(1):67-76)。Grn-/-マウスは、明らかな神経変性又は神経学的徴候を示さないが、ヒトにおけるGRNハプロ不全との顕著な生化学的及び組織学的類似性から、新規療法を評価するための潜在的に有益なモデルとなる。したがって、本発明者らは、Grn-/-マウスにおけるこれらの生化学的及び組織学的所見に分析の焦点を当てた。
【0191】
この研究の目的は、ヒトGrn遺伝子の脳への送達が、既存のリソソーム蓄積物質を排除し、Grn-/-マウスにおけるリソソーム機能を正常化することができるかどうかを評価することである。リソソーム蓄積に応答して、細胞は、リソソーム酵素の発現を上方制御し、リソソーム蓄積症のバイオマーカーとして使用され得る(Hinderer C,et al.Molecular therapy:the journal of the American Society of Gene Therapy.2014;22(12):2018-27、Gurda BL,et al.Molecular therapy:the journal of the American Society of Gene Therapy.2016;24(2):206-16、Karageorgos LE,et al.Experimental Cell R
esearch.1997;234(1):85-97)。本発明者ら、種々の年齢のGrn-/-及びGrn+/+マウス由来の脳組織におけるリソソーム酵素ヘキソサミニダーゼの活性、並びに皮質、海馬、及び視床におけるリポフスチン沈着物を評価した(図3A図3D)。ヘキソサミニダーゼ活性の上昇は、生涯を通して明らかであったが、リポフスチンは進行性の蓄積を示した。リポフスチンは、早くも2ヶ月齢で明らかであり、以前の所見と一致した(Klein ZA,et al.Neuron2017;95(2):281-96 e6)。本発明者らの最初の研究は、天然分離株であるAAVhu68に基づくAAVベクターを用いて実施され、これは、クレードFの分離株であるAAV9と密接に関連している。2~3ヶ月齢のGrn-/-マウスを、ヒトGrnを発現するAAVhu68ベクター又はビヒクル(PBS)のいずれかの脳室内(ICV)注入で処置した(群当たりN=10)。更に、野生型マウスのコホートに、ビヒクル(N=10)を注入した。小規模の2ヶ月齢マウスでは、ICM経路(NHP研究及び提案されたFIH臨床試験に使用されるROAである)を介してベクターを確実に投与することが困難になるため、ICV ROA(脳室のCSFにAAVベクターを直接注入することを伴う)を使用した。以前の研究では、この研究に選択された用量(1011GC)でのAAVhu68のICV投与では、形質導入が注入された脳室近くの脳領域に限定されることが示され、小さな細胞集団によるPGRNの分泌によって、脳病変の全体的な改善が達成され得るかどうかを評価するための有用なシステムとなる。
【0192】
ベクター投与の2ヶ月後、動物を安楽死させ、脳、CSF、及び血清を回収した。脳におけるヒトPGRNタンパク質レベルの定量化により、AAV処置群における形質導入を確認した(図4)。PGRNは、CSF中の測定可能な分泌タンパク質であり、ヒトGRN変異保因者のCSF中で減少している(Lui H,et al.Cell.2016;165(4):921-35;Meeter LH,et al.Dement Geriatr Cogn Dis Extra.2016;6(2):330-40)。したがって、本発明者らは、AAV処置Grn/-マウスのCSF中のPGRNタンパク質レベルを評価し、平均CSF濃度が14ng/mLであることを明らかにしたが、一方、ビヒクル処置群では、ヒトPGRNは検出レベル未満であった(図4)。PGRNの発現は、リソソーム酵素の発現の正常化を伴い、AAV処置GRN-/-マウスの脳におけるHex活性レベルが、ほぼ正常レベルに戻った(図5)。血清において、ビヒクル処置Grn-/-マウスにおけるHEX活性は、ビヒクル処置WTマウスよりも有意に高かった。対照的に、AAV処置Grn-/-マウスにおけるHEX活性は、ビヒクル処置Grn-/-マウスよりも有意に低く、ビヒクル処置WTマウスのものと同様であった。
【0193】
Grn-/-マウスの脳におけるPGRN発現を確認した後、PGRN発現が海馬、視床、及び皮質におけるリポフスチン沈着物の数を低減させたかどうかを評価した。その目的で、未染色の固定脳切片をカバーガラスに載せ、盲検で自己蛍光リポフスチンを撮像した。ビヒクル処置Grn-/-マウスの海馬、視床、及び前頭皮質には、ビヒクル処置WTマウスのものと比較して有意に多くのリポフスチン沈着物が存在した。対照的に、AAV投与は、Grn-/-マウスの3つの脳領域全てにおけるリポフスチン沈着物の数を、ビヒクル処置WTマウスのものに匹敵するレベルにまで有意に低減させた(図6)。
【0194】
概念研究の最初の証明は、蓄積物質が脳に現れ始めたばかりの早い時期に、処置マウスにおいてAAV媒介性PGRN発現の治療活性を実証した。その後、より重篤な既存病態を有する高齢マウスにおける遺伝子導入の影響を評価した。この研究では、7ヶ月齢のGrn-/-マウスは、ヒトPGRNを発現するAAVhu68ベクター又はビヒクルの単回ICV注入を受け、11ヶ月齢で犠牲になった。広範囲の脳リポフスチン沈着物に加えて、11ヶ月齢のGrn-/-マウスは、Grn変異によって引き起こされるFTDを有する患者と同様に、広範囲のミクログリオーシスを示した(図7A図7C)(Ahmed Z,et al.Journal of neuroinflammation.J
Neuroinflammation.2007 Feb 11;4:7)。GRN遺伝子導入は、より若い動物における所見と同様に、老化マウスにおいて、脳Hex活性及びリポフスチン沈着物を減少させた(図5A図5D)。加えて、処置マウスの脳において、ミクログリアのサイズ及び数が正常化された。
【0195】
併せると、ヒトPGRNを発現するAAVベクターをGrn-/-マウスの脳にICV送達することで、リポフスチン凝集物が除去され、リソソーム酵素の活性がほぼ完全に正常化され、PGRN遺伝子送達によって、Grn関連神経変性疾患の基礎となる病態生理の重要な側面が、効果的に修正され得ることを実証する。
【0196】
実施例4:非ヒト霊長類におけるAAV媒介性GRN遺伝子送達
この研究は、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするヒトグラニュリン前駆体(GRN)遺伝子を発現する4つのベクター(AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)、AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBG、AAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40、及びAAV5.CB7.CI.hPGRN.rBG)を評価した。しかしながら、各候補は、異なる血清型、プロモーター、操作された導入遺伝子(配列番号3又は4)、及び転写終結因子の組み合わせからなった。
【0197】
ベクターを、3.0×1013ゲノムコピー(GC)/動物の単回大槽内(ICM)用量として、成体非ヒト霊長類(NHP)に投与した。生存中評価には、毎日の観察、体重測定、血液及び脳脊髄液(CSF)の臨床病理学パネル(細胞数、分化、臨床化学、及び/又は総タンパク質)、並びにCSF及び血清中の導入遺伝子発現の評価が含まれた。CSF及び血清中の導入遺伝子に対する抗体も、導入遺伝子発現の最も高いレベルを示す群において測定された。全てのNHPについて、35日目又は60日目に剖検を実施し、最も高いレベルの導入遺伝子発現を有する群からの脳及び脊髄を、組織病理について評価した。
【0198】
群の割り当ての後、各動物は、3.0×1013GC(3.3×1011GC/g脳)の用量で、以下の試験物のうちの1つの単回ICM注入を受けた:
1.AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)
2.AAV5.CB7.CI.hPGRN.rBG
3.AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBG
4.AAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40
以下の表に、研究事象を要約する。
【表4】
【0199】
CSFにおいて、ヒトPGRNの発現は、試験された全てのベクターについて、7日目までに検出された。14日目までに、PGRNの発現は、試験した全てのベクターについて、健常なヒト対照試料で見出される平均発現レベルを超えた。発現は、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)を投与したNHPのCSFにおいて一貫して最も高かった。7~35日目から、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)を投与された動物の平均PGRN濃度は、正常なヒトCSFのPGRNレベルよりも約40倍高かった(図8)。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)を投与した両方のNHPについて、CSFのPGRNレベルは、およそ21~28日にピークに達したようであった。血漿中で、ヒトPGRNの発現は、試験された全てのベクターについて、7日目までに検出された。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGのいずれかを投与されたNHPにおけるPGRN発現レベルは、7及び14日目に健常なヒト対照試料について公表されたPGRN濃度を超え、発現は両方のベクターについておよそ14~21日目にピークに達したようであった。対照的に、AAV5.CB7.CI.hPGRN.rBGを投与されたNHPは、血漿中のPGRNの低いレベルを示した(図8)。
【0200】
研究中、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGを投与されたNHPは、他の群と比較して、CSF及び血漿中のより高いレベルのPGRNを示したため、これらの群のみが、導入遺伝子に対する抗体応答について評価された。CSFでは、7~35日以内にAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGのいずれかを投与されたNHPにおいて、抗PGRN抗体の存在が検出された。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)を投与されたNHPは、AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGを投与したものと比較して、より早い抗体応答を示した(図9)。血清では、7~14日以内にPBFT02又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGのいずれかを投与されたNHPにおいて、抗PGRN抗体の存在が検出された。抗体応答の発症のタイミングは、2つの処置群間で同様であった(図9)。
【0201】
全てのNHPは、予定された研究エンドポイント(群1~3では35±2日目、群4で
は60±4日目)まで生存した。全ての動物を剖検した。毎日の観察では、処置に関連する異常は特定されなかった。体重は、研究全体を通して、全ての動物で安定していた(図10)。
【0202】
CSF分析から、投与された全てのベクターについて、AAV投与の7~21日後に始まる無症候性リンパ球増加が明らかになった(図11)。AAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGが投与された両方の動物(RA2981及びRA2982)及びAAVhu68.UbC.PI.hPGRN2.SV40が投与された1匹の動物(RA3153)は、研究における他の動物のものと比較して、概して軽度のプレオサイトーシスを示した。CSF白血球数は、ピークレベルから低下したが、研究中のほとんどの動物について、剖検時、上昇したままであった。
【0203】
研究中のいずれの動物においても処置関連の全体的な病理学的知見は存在しなかった。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGを投与されたNHPは、研究中にCSF及び血漿中でより高いレベルのPGRNを示したため、脳及び脊髄の組織病理学は、これらの群に対してのみ実施された。AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はAAVhu68.CB7.CI.hPGRN.rBGを投与されたNHPは、髄膜及び脈絡叢における時折の最小限のリンパ球浸潤を示した。いくつかのDRG及び脊髄切片では、感覚ニューロン及びそれらに関連する軸索の変性も観察された。感覚ニューロンの所見は、典型的には、重症度が最小限から軽度であり、臨床徴候とは関連していなかった。
【0204】
非ヒト霊長類へのAAV1及びAAVhu68ベクターのICM投与後のCNS形質導入の異なるパターン。
本研究者らは、AAV1ベクターで処置されたNHPのCSFにおける著しく高いPGRN発現から、AAV1、AAV5、及びAAVhu68ベクターの形質導入パターンの差異を更に探求することにした。GFPレポーター遺伝子を発現するAAV1、AAV5、又はAAVhu68ベクター(3×1013GC、ベクターあたりn=2)の単回ICM注入がNHPに投与された。脳形質導入の組織学的分析のために、注入の28日後に動物が犠牲になった。
【0205】
免疫組織化学により、AAV1及びAAVhu68ベクターで処置されNHPの脳全体にわたって、散在的なパッチ状の形質導入が明らかになった。最小限の形質導入は、AAV5ベクターを受けた動物の脳において顕著であった。AAV1とAAVhu68との間の形質導入における差異をより正確に特徴付けるために、複数の脳領域から回収された切片で形質導入細胞を定量化する半自動化方法を開発した。GFP及び特定の細胞型のマーカーに対する蛍光標識抗体で染色された切片を使用して、NeuN、olig2、及びGFAPの染色、続いて各型のGFP発現細胞の定量によって、それぞれ、ニューロン、オリゴデンドロサイト、及びアストロサイトの総数を定量した(図12図13)。AAV1及びAAVhu68は、それぞれ、調べた全ての領域で、各細胞型の1パーセント未満を形質導入した。ニューロンの形質導入は、2つのベクター間でほぼ同等であったが、AAVhu68は、わずかに多くのアストロサイト及びオリゴデンドロサイトを形質導入したように見えた。
【0206】
AAV1で達成された劇的に高いCSFのPGRNレベルを考慮すると、AAV1及びAAVhu68ベクターで観察されたほぼ同等の脳形質導入は、予想外であった。上衣細胞の形質導入は、AAVhu68で処置された動物及びAAV1で処置された動物RA1826の側脳室及び第4脳室の複数の領域において、免疫組織化学によって評価された。興味深いことに、AAV1処置動物(RA1826)からの複数の脳切片は、脳室系の一部を含み、脳室に沿って並ぶ上衣細胞の広範な形質導入を示したが、これは、AAVhu
68処置動物のいずれにおいても観察されなかった(未掲載)。側脳室の前角、側角及び後角と第4の脳室とを含む、全てのサンプリングされた領域にわたって、平均48%の上衣細胞が形質導入された。対照的に、AAVhu68ベクターを与えられた動物の同じ脳領域では、1~2%の上衣細胞のみが形質導入された。第2のAAV1処置動物において1つの側脳室の小さなセグメントのみが評価可能であり、約1%の上衣細胞の形質導入を示したものの、分析は、小さなサンプリング領域に限定された。これらの知見は、他の細胞型の形質導入が2つの血清型間で類似しているように見えることを考慮すると、AAV1処置動物において高度に形質導入される上衣細胞が、CSFにおける高レベルのPGRNの供給源であり得ることを示唆する。分泌されたPGRNによって媒介される傍観者効果により、GRN変異によって引き起こされるFTDは、例外的に、AAV遺伝子療法に適している。細胞外PGRNはニューロンに取り込まれ得るため、AAV1ベクターで達成される高いCSFのPGRNレベル(明らかに、頑強な上衣細胞の形質導入によって媒介されている)により、AAV1が、GRN遺伝子療法のための理想的な選択肢となる。
【0207】
累積的に、これらの研究は、大型動物モデルのCSFにおける治療的PGRN発現レベルを達成するための髄腔内AAV送達の可能性を確立した。
【0208】
実施例5:最小有効用量(MED)を決定するためのGrn-/- マウスにおける脳室内投与後のAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の有効性
この薬理学的研究の目的は、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするヒトグラニュリン前駆体(GRN)遺伝子を発現する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1ベクターであるAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の脳室内(ICV)投与後のGrn-/-マウスにおける最小有効用量(MED)及び導入遺伝子発現レベルを評価することであった。
【0209】
成体Grn-/-マウス(6.5~8.5ヶ月齢)は、4つの用量レベル、4.4×10ゲノムコピー[GC]/動物、1.3×1010GC/動物、4.4×1010GC/動物、又は1.3×1011GC/動物(それぞれ、1.1×1010GC/g脳、3.3×1010GC/g脳、1.1×1011GC/g脳、3.3×1011GC/g脳)のうちの1つで、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の単回のICV投与を受けた。追加のGrn-/-マウス及びC57BL/6J野生型マウスに、対照としてビヒクル(髄腔内最終製剤緩衝液[ITFFB])を投与した。
【0210】
以下の表に、群の指定、用量レベル、及び投与経路(ROA)を示す。
【表5】
【0211】
ベースライン(-7~0日目)に、投薬前に動物から血液を採取し、将来の分析のために保存した。投薬日(1日目)に、成体Grn-/-マウス(6.5~8.5ヶ月齢)は、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(4.4×10GC/動物、1.3×1010GC/動物、4.4×1010GC/動物、又は1.3×1011GC/動物)又はビヒクル(ITFFB)のいずれかの単回ICV投与を受けた。年齢適合野生型マウスにも、ビヒクルを対照として投与した。投薬日(1日目)に、未処置Grn1-/-マウス及び野生型マウスも、疾患関連脳異常の進行又は解消に対するAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の効果とともに、臨床病理学及び組織病理学におけるベースライン異常を評価するための対照として機能するように剖検した。
【0212】
AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクルのいずれかを投与されたマウスを、生存率について毎日モニタリングし、毎週体重測定をした。90日目に、全ての生存マウスを剖検した。剖検では、それぞれ臨床病理学(CBC及び血
清化学)及び組織病理学のために血液及び組織を採取した。CSFを採取して、導入遺伝子産物の発現(ヒトPGRNタンパク質)を測定した。脳組織を採取して、Grn-/-マウスモデルに特徴的な疾患関連バイオマーカーを評価した。これらのバイオマーカーには、視床、皮質、及び海馬において定量化された脳蓄積物質の蓄積(リポフスチン沈着物)及び神経炎症(ミクログリアに標識するためのCD68免疫組織化学)が含まれた。前頭皮質を含む脳の第3の前頭部分の溶解物を使用して、リソソーム酵素HEXの活性を評価した。
【0213】
全ての群は、研究期間中、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)又はビヒクル投与後も体重を維持した(図14)。
【0214】
導入遺伝子産物の発現(ヒトPGRNタンパク質)は、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)投与の90日後に、剖検されたマウスのCSFにおいて測定された。CSF中のヒトPGRN発現は、ビヒクル処置Grn-/-対照のものと比較して、2つの最も高い用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(4.4×1010GC及び1.3×1011GC)で増加した(図15)。2つの最も低い用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(4.4×10GC又は1.3×1010GC)を投与されたGrn-/-マウスにおけるヒトPGRN発現は、ビヒクル処置Grn-/-マウス及び野生型対照のものと同様のようであった。しかしながら、PGRN ELISAアッセイのLODは1.25ng/mLであり、したがって、2つの最も低い用量並びにビヒクル処置Grn-/-及び野生型対照におけるPGRN発現の変化を検出する能力を制限した。
【0215】
ビヒクル処置Grn-/-対照と比較した場合、90日目のCBC又は血清化学パネルでは、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)投与に関連する異常は観察されなかった。盲検化された肉眼的及び顕微鏡的評価において、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)の投与に関連する組織病理学的所見はなかった。
【0216】
リポフスチン沈着物を、ベースライン及びAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)投与の90日後に剖検されたマウスの3つの脳領域(視床、皮質、及び海馬)において定量化した。ベースライン及び90日目の両方で、リポフスチン沈着物は、皮質及び海馬と比較して、視床においてより豊富であり、視床が、他の脳領域よりも、リポフスチン凝集体を評価するためのより高い感度を提供し得ることを示唆した。視床では、未処置野生型対照よりも、未処置Grn-/-マウスにおいて、より高いベースラインのリポフスチン数が観察された。90日目で、ビヒクル処置Grn-/-マウスにおける平均リポフスチン数は、未処置Grn-/-ベースライン対照のものよりも高く、リポフスチン沈着物の進行性の増加を示した。対照的に、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)処置群(4.4×10GC/動物、1.3×1010GC/動物、4.4×1010GC/動物、及び1.3×1011GC/動物)は、ビヒクル処置Grn-/-マウスのものよりも有意に低いリポフスチン数を示した。リポフスチン数は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)用量群間で同様であったため、用量依存性応答は観察されなかった。全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)処置群における平均リポフスチン数は、未処置Grn-/-ベースライン対照群の平均数と同様であったため、全ての用量レベルでのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)投与は、90日の研究中のリポフスチンの漸進的な蓄積を防止するようであった(図16A図16C)。皮質及び海馬において、未処置のGrn-/-マウスでは、ベースラインの未処置の野生型対照よりも高い平均リポフスチン数が観察された。同様に、90日目に、ビヒクル処置Grn-/-マウスでは、ビヒクル処置野生型マウスよりも、より高い平均リポフスチン数
も観察された。全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)処置群(4.4×10GC/動物、1.3×1010GC/動物、4.4×1010GC/動物、及び1.3×1011GC/動物)は、ビヒクル処置Grn-/-マウスよりも90日目に平均リポフスチン数が少なかったが、低減は、1.3×1010GC/動物の用量での皮質において統計的に有意であっただけであった。リポフスチン数は、4つのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)用量群全てで同様であったため、用量依存性応答は観察されなかった。
【0217】
神経炎症マーカーCD68を、ベースライン及びAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)投与の90日後に剖検されたマウスの3つの脳領域(視床、皮質、及び海馬)において、定量化した。CD68発現は、CD68染色が陽性の組織の領域を定量化することにより評価された。ベースラインでは、未処置Grn-/-マウスの視床、皮質、及び海馬において、未処置野生型対照と比較して、より高い平均CD68発現が観察された。同様に、90日目に、ビヒクル処置Grn-/-マウスの視床、皮質、及び海馬において、ビヒクル処置野生型対照と比較して、より高い平均CD68発現が観察された。90日目の視床では、3つの最も高いPBFT02用量群(1.3×1010GC/動物、4.4×1010GC/動物、及び1.3×1011GC/動物)で概して用量依存的な応答が観察され、ビヒクル処置Grn-/-マウスの発現と比較して有意に低減したCD68発現を示した(図17A)。注目すべきことに、最も高い用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)(1.3×1011GC/動物)を投与されたマウスは、ビヒクル処置Grn-/-マウスのものと比較して、約4倍のCD68発現の低減を示した。90日目の皮質において、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)処置群において平均CD68発現が低減したが、低減は、ビヒクル処置Grn-/-マウスにおけるCD68発現との有意差ではなかった。用量依存性応答は観察されなかった(図17B)。90日目の海馬では、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)処置群(4.4×10GC/動物、1.3×1010GC/動物、4.4×1010GC/動物、及び1.3×1011GC/動物)は、ビヒクル処置Grn-/-マウスのものと比較して有意に低いCD68発現を示した。更に、CD68の発現は、全ての用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)について、ビヒクル処置野生型対照のものと同様であった。CD68の発現は、全ての用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)において同様であったため、この応答は用量依存的ではなかった(図17C)。
【0218】
主に皮質組織からなる脳の第3の前頭葉部分の溶解物に対して、ベースライン及びAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与の90日後に、HEX活性アッセイを実施した。ベースラインでは、未処置野生型対照よりも、未処置Grn-/-マウスにおいて、脳HEX活性が高かった。90日目に、最も高いAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)用量(1.3×1011GC/動物)を投与されたGrn-/-マウスは、ビヒクル処置Grn-/-マウスのものと比較して、有意に低減した脳HEX活性を示した。更に、最も高い用量群(1.3×1011GC/動物)におけるHEX活性は、ビヒクル処置野生型対照のものと同様であり、この用量での脳HEXレベルの正常化を示す(図18)。
【0219】
累積的に、Grn-/-マウスのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置は、最も高い用量(1.3x1011GC[3.3x1011GC/g脳])で観察されたリポフスチン、神経炎症、及びリソソーム酵素活性に対する最も広範な処置に関連する効果を有する組織病理学の用量関連補正をもたらした。最も低い用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(4.4×10GC[1.1×1010GC/g脳])は、視床におけるリポフスチンの蓄積の予防及び海馬にお
けるミクログリア浸潤(すなわち、CD68発現によって定義される神経炎症)の低減を含む、GRN関連神経変性を有する患者に見出される主要な神経病理学的特徴を有意に改善した。この用量では、組織学的補正は、調べた脳領域のサブセットに限定され(おそらく、Grn-/-マウスの皮質及び海馬と比較して、視床におけるリポフスチン沈着物及びCD68発現細胞の全体的な大きな濃縮によるものである)、リソソーム酵素活性(HEX活性によって測定された)は正規化されなかったが、MEDは、4.4×10GC(1.1×1010GC/g脳)であると決定された。
【0220】
実施例6:野生型マウスにおける脳室内投与後のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の生体内分布及び導入遺伝子の発現
この薬理学的研究の目的は、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするヒトグラニュリン前駆体(GRN)遺伝子を発現する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1ベクターであるAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の脳室内(ICV)投与後の野生型マウスにおけるベクター生体内分布及び導入遺伝子発現レベルを評価することであった。
【0221】
投与日(1日目)に、成体C57BL/6J野生型マウス(3.5~5.5ヶ月齢)は、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(1.3×1011ゲノムコピー[GC]/動物[3.3×1011GC/g脳])又はビヒクル(髄腔内最終製剤緩衝[ITFFB])のいずれかの単回ICV投与を受けた。
【0222】
以下の表に、群の指定、用量レベル、及び投与経路(ROA)を示す。
【表6】
【0223】
最小有効用量(実施例5)を同定した用量範囲の研究で評価された最も高い用量であり、体積制約及び予想されるベクター力価によって制限されるマウスにおける最大実行可能用量に近いため、1.3×1011GC/動物のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)用量を選択した。この用量は、標的系(CNS)並びに血液及び末梢組織の両方におけるマウスにおけるベクター分布及び導入遺伝子産物の発現の包括的な評価を可能にすることが期待された。
【0224】
投与日(1日目)に、成体野生型マウス(3.5~5.5ヶ月齢)は、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(1.3×1011GC/動物)又はビヒクル(ITFFB)のいずれかの単回ICV投与を受けた。全てのマウスを、生存率について毎日モニタリングし、週に1回、体重測定をした。CSF、血清、及び組織の包括的リストを、10、30、60、及び90日目の剖検で採取して、ベクターの生体内分布及び導入遺伝子産物の発現(ヒトPGRNタンパク質)を評価した。
【0225】
研究全体を通して、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与に関連する臨床的異常は認められなかった。全ての群は、研究期間中、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)又はビヒクル投与後も体重を維持した(
図9)。
【0226】
ベクター投与後10日目までに、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターゲノムは、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスの標的組織(脳)及び全ての末梢組織(心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、及び骨格筋)において検出可能であった。組織内ベクターゲノムレベルは、一部の臓器で30、60、及び90日目に変動したが、vベクターゲノムレベルの減少傾向は、概して、10日目後に観察され、全ての組織は、最終的に、10日目よりも90日目に低いベクターゲノムレベルを示した。1つの注目すべき例外は、腎臓であり、これは、90日目に10日目と同様のレベルのベクターゲノムを示した。この研究全体を通して、脳は他の全ての組織と比較して最も高い濃度のベクターゲノムを示した。肝臓、脾臓、腎臓、及び心臓においては、低いレベルのベクターゲノムが観察された。研究全体を通して、肺及び骨格筋は、最も低いレベルのベクターゲノムを示した(図20)。
【0227】
AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターゲノムは、60日目の脳及び肺(それぞれ、動物8及び7[群5])並びに30日目の心臓(動物18[群3])を除いて、研究全体を通してビヒクル処置マウスの組織において検出できなかった。これらの組織において低レベルのベクターゲノムが観察されたため、ビヒクル処置マウスにおけるそれらの存在は、試料処理中の汚染に起因する可能性が高い。
【0228】
AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)又はビヒクル投与後10、30、60、及び90日目に、導入遺伝子産物の発現(ヒトPGRNタンパク質)を、標的臓器系(CNS)並びに血清及び末梢臓器において測定した。CSFでは、ヒトPGRN発現レベルは、研究全体を通して評価された全てのビヒクル処置マウス(14/14の動物)において検出できなかった。対照的に、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与は、10日目及び30日目のCSF中のヒトPGRN発現レベルを、ビヒクル処置対照のものと比較して有意に上昇させた。60日目及び90日目の発現レベルは、ビヒクル処置対照のものと比較して有意に上昇しなかったが、評価されたAAV1.CB7.CI.HPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスの大部分(60日目の2/5の動物及び90日目の7/8の動物)において、ヒトPGRN発現は依然としてCSFにおいて検出可能であった。
【0229】
AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスは、10日目、30日目、及び90日目に、それぞれ49.93ng/mL、34.97ng/mL、及び31.41ng/mLの平均ヒトPGRN CSF濃度を示した。60日目は、1.46ng/mLの低い平均ヒトPGRN濃度で、唯一の外れ値であった。60日目のヒトPGRN発現レベルが、他の時点でのAAV1.CB7.CI.HPGRN.RBG(PBFT02)処置群の発現レベルよりも低かった理由は不明である。ヒト導入遺伝子産物に対する抗体は、この研究では分析されなかったが、60日目のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置群の動物は、ヒト導入遺伝子産物に対する抗体応答を有した可能性がある(図21)。
【0230】
脳では、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスは、10日目、30日目、及び90日目に、同じ時点でのビヒクル処置対照のレベルと比較して、有意にヒトPGRNレベルの上昇を示した。CSFで観察されたものと同様に、60日目の脳中のヒトPGRN発現レベルは、ビヒクル処置対照のものと比較して有意に上昇しなかったが、これは、おそらく、60日目群におけるヒト導入遺伝子産物に対する抗体応答によるものであった(図21)。
【0231】
脊髄では、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与は、1
0、30、60、又は90日目に、ビヒクル処置対照レベルを上回るヒトPGRN発現を有意に増加させなかった(図21)。
【0232】
血清では、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与は、10、30、60、又は90日目に、ビヒクル処置対照レベルを上回るヒトPGRN発現を有意に増加させなかった(図22)。
【0233】
研究中、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスの腎臓、骨格筋、又は頸部リンパ節において、ヒトPGRN発現の有意な上昇は観察されなかった。しかしながら、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスは、心臓、肝臓、及び脾臓において、ヒトPGRN発現の一過性の上昇を示した。心臓及び肝臓では、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスは、ビヒクル処置対照のものと比較して、60日目に有意に上昇したヒトPGRN発現レベルを示したが、10日目、30日目、又は90日目では示さなかった。脾臓では、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置マウスは、ビヒクル処置対照のものと比較して、10日目に有意に上昇したヒトPGRNレベルを示したが、30日目、60日目、又は90日目では示さなかった(図23A図23F)。
【0234】
AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターゲノムは、髄腔内投与後に組織中に広く分布していたが、GRN関連神経変性を治療するための標的臓器系(すなわち、CNS)は、研究全体を通して、ベクター形質導入の全体的な最も高いレベルを示し、形質導入遺伝子産物の発現が持続していた。
【0235】
実施例7:成体アカゲザルに槽内投与したAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の毒性及び生体内分布
この毒性学研究の目的は、非ヒト霊長類(NHP)における大槽内(ICM)投与後にヒトプログラニュリン(PGRN)タンパク質を発現する組換えアデノ随伴ウイルス血清型1(AAV1)ベクターであるAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の安全性、耐容性、生体内分布、及び排泄(排出)プロファイルを評価することであった。
【0236】
成体の雄及び雌アカゲザルは、ビヒクル(髄腔内最終製剤緩衝液[ITFFB])又は3.0×1012ゲノムコピー(GC)(低用量、3.3×1010GC/g脳)、1.0×1013GC(中用量、1.1×1011GC/g脳)、若しくは3.0×1013GC(高用量、3.3×1011GC/g脳)の用量でのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の単回ICM投与を受けた。
【0237】
用量の投与日(0日目)を、投与日にわたって可能な限り多くの研究群を表す動物と交錯させた。以下の表に、研究事象を要約する。
【表7】
【0238】
評価される最も高い用量(3.0×1013GC)は、予想されるベクター力価及び最大投与体積に基づいた最大実行可能用量である。中用量(1.0×1013GC)及び低用量(3.0×1012GC)は、それぞれ、最大実行可能用量より3倍及び10倍低い。用量が区別され、マウス薬理学研究で評価された用量範囲を包含することを確実にするために、この範囲を選択した。
【0239】
この研究は、90日目の剖検時点を含んだ。先のICMプログラムでは、DRG及びTRGニューロンの毒性が再現可能な動態で観察されている。DRG及びTRGニューロンは、ベクター投与の14~21日以内に一貫して変性する。細胞体の変性後、ベクター投与のおよそ30日後に、末梢神経及び脊髄の後側柱におけるこれらの細胞の軸索のその後の変性(軸索障害)が現れる。軸索の変化は、ベクター投与の90日後に犠牲になった動物において引き続き見ることができる。ベクター投与後180日で、組織学的病変の重症度は、多くの場合、30日目又は90日目と同様であったが、変性ニューロン及びそれらの関連する軸索が、先の犠牲時点で存在するマクロファージによって除去されたためであると推定されるため、通常、多少改善される。これらの動態に基づいて、本研究者らは、90日目の剖検時点が、DRG及びTRGの組織学的所見及び関連する任意の臨床徴候を評価するのに十分であると予想した。
【0240】
標準化された神経学的検査を、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBF
T02)投与前のベースライン、並びに投与後14、28、及び90日目に実施した。動物は、時折、試験に非協力的であり、いくつかの評価を不可能にした。しかしながら、試験に必要な全ての構成要素は、各動物について、最大時点で評価された。AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(1.0×1013GC、動物171311、群3、N=1/3)の中用量を投与された1匹の動物は、90日目に離脱反射を有しなかった。しかし、動物はケージバー及びグリッドを手及び足の両方でつかみ、正常に歩行することが示された。無反応は、不安に起因し、深い痛みの感覚の喪失に起因しなかった。研究全体を通して、他の異常な神経学的徴候は認められなかった。
【0241】
感覚神経伝導試験は、両側正中神経活動電位振幅及び伝導速度を測定するために、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与前のベースラインで並びに28及び90日目に、全ての動物に対して実施された(図25)。
【0242】
SNAP振幅の場合、動物間及び動物内の変動が明らかであったが、値は、典型的には、ベースライン測定の範囲内にとどまった(図26A)。1匹のビヒクル処置動物(ITFFB、動物171123、群1、1/2の動物)及び低用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)を投与された1匹の動物(3.0×1012GC、動物180668、群2、1/3の動物)は、90日目に、片側正中神経SNAP振幅の著しい低減を示した。高用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(3.0×1013GC、動物171209、群4、1/3の動物)を投与された1匹の動物は、左右の正中神経の両方について、90日目までに両側正中神経SNAP振幅の著しい低減を示した。これら3匹の動物に異常な臨床所見はなかったが、高用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(3.0x1013GC)の投与後の動物171209におけるNCS所見は、正中神経における組織病理学的所見と相関していた。正中神経伝導速度については、研究全体を通して、いずれの動物においても、有意な変化は観察されなかった(図26B)。
【0243】
全ての動物は、研究全体を通して正常な体重を維持した(図27)。
【0244】
血液CBC、凝固研究、又は血清化学パネルでは、顕著な試験物に関連する異常は観察されなかった。全ての群(5/11)にわたるいくつかの動物は、ベースライン及び/又は0日目に一過性クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の上昇(>1000U/L)を示した。全ての上昇はCPKの骨格筋アイソフォームを伴っていたため、CPKの上昇は鎮静作用又は静脈穿刺中の筋肉外傷に続発したものである可能性が高く、したがって試験物とは無関係とみなされた。いくつかのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置動物(2/9、動物180668、3.0×1012GC、群2、動物171209、3.0×1013GC、群4)は、血清アルカリホスファターゼ(ALP、>600U/L)の軽度の増加を示し、これは当初、ベースライン又は60日目のいずれかで示された。ALP上昇は、両方の動物において90日目の剖検まで持続した。ALPには、肝臓、腎臓、及び骨に見られるものを含む複数のアイソフォームがあり、これらの変化は、動物の年齢に起因する本質的に生理学的である可能性が最も高いと見なされた。90日目に、低用量のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)(3.0×1012GC、動物17229、群2)を投与した単一の動物において、軽度の血小板減少が観察されたが、関連する臨床徴候の欠如及び低い発生率は、この減少がアーチファクトである可能性が高いことを示唆した。
【0245】
いくつかのCSF試料には、CSF採取中の血液汚染に起因する赤血球が含まれていた。5/9(56%)のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置動物及び0/2(0%)のビヒクル処置対照において、軽度の髄液細胞増加(>6個の白血球[WBC]/μLとして定義される)が生じた。髄液細胞増加は、リンパ球性(主
にリンパ球又はリンパ球及びマクロファージの混合物からなる)であり、試験物に関連するとみなされた(図28)。1匹の高用量動物(3.0×1013GC、動物171209、群4)の7日目、1匹の高用量動物(3.0×1013GC、動物181330、群4)の14日目、1匹の中用量動物(1.0×1013GC、動物171306、群3)の28日目、及び1匹の低用量動物(3.0×1012GC、動物171229、群2)の60日目に、8~18WBC/μLのピークCSF WBC数が生じた。中用量群の1匹の動物(1.0×1013GC、動物171118、群3)は、28日目及び90日目に18WBC/μLの2つのピークCSF WBC数を示したが、28日目の結果は、試料中の血液汚染によるアーチファクトであった可能性が高い。全ての動物において、髄液細胞増加は自己限定的であり、臨床的続発症とは関連していなかった。
【0246】
AAV1カプシドに対する既存のNAbは、AAV1.CB7.CI.hPGRN.rBG(PBFT02)投与前に、3/11の動物(27%)の血清において検出可能であった。ビヒクル処置された動物は、90日目までに血清NAb力価の変化を示さず、一方、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)を投与された全ての動物は、90日目までに血清NAb力価の増加を示した。低用量(3.0×1012GC)、中用量(1.0×1013GC)、及び高用量(3.0×1013GC)群のNAb力価は、90日目に同等であり、用量依存性応答の欠如を示した。加えて、AAV1 NAb応答の大きさは、評価したいずれの用量でも、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与前の既存のAAV1 NAbの存在に影響されないようであった。以下の表に、血清中のAAV1に対するNAb応答を要約する。
【表8】
【0247】
図29に要約されるように、ビヒクル処置対照動物(ITFFB、2/2の動物)は両方とも、研究期間を通して、カプシド(AAV1)及び導入遺伝子産物(ヒトPGRN)に対するIFN-γT細胞応答について陰性のままであった。対照的に、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与は、8/9(89%)のNHPにおいて、AAV1カプシド及び/又はヒトPGRNに対するIFN-γT細胞応答を誘発した。単一の非応答者は、中用量を投与した動物(3.0×1012GC、動物171311、群3)であった。
【0248】
IFN-γT細胞応答を示す動物のうち、6/8(75%)は、AAV1カプシドに対して陽性応答を示し、6/8(75%)は、ヒトPGRNに向けられた応答を有した。これらの動物のうち、2/8(25%)のNHPは、AAV1カプシドに対してのみT細胞応答を示し、2/8(25%)のNHPは、ヒトPGRNに対してのみT細胞応答を示した。AAV1カプシドに対するIFN-γ応答は低く、100万細胞当たり58~188
スポット形成ユニット(SFU)の範囲であった。AAV1カプシドに応答を示す6匹の動物のうち、3/6匹(50%)は、低用量群の1匹の動物(3.0×1012GC、動物171250、群2)、中用量群の1匹の動物(1.0×1013GC、動物171118、群3)、及び高用量群の1匹の動物(3.0×1013GC、動物171209、群4)を含み、研究中の単一の時点で低い一過性IFN-γ応答を示した。残りの3/6匹(50%)は、PBMCで開始し、90日目の剖検で少なくとも1つの組織リンパ球集団を介して運ばれた、より持続的な応答を示した。2/6(33%)のNHPのみが、肝臓におけるAAV1カプシドに対する検出可能なIFN-γ応答を有した。
【0249】
ヒトPGRNに対するIFN-γ応答を示す6/8の動物については、中等度から高い陽性応答(100万個の細胞当たり280~520SFU)が90日目に観察された高用量群(3.0×1013GC、動物171209、群4)の単一の動物の肝臓における応答を除いて、全ての観察された応答は低かった(100万個の細胞当たり60~200SFUの範囲である)。ヒトPGRNに対するIFN-γ応答は、剖検で単離された肝臓リンパ球(6/6の動物[100%])において、PBMC(4/6の動物[67%])又は脾細胞(2/6の動物[33%])よりも優勢であった。
【0250】
カプシド及び導入遺伝子産物に対するT細胞応答は、異常な臨床観察又は血液学、凝固、及び血清化学のパラメータの変化とは関連していなかった。
【0251】
試験物関連の肉眼的所見は観察されなかった。全ての肉眼的所見は、偶発的なものとみなされた。試験物に関連する所見は、主に、DRG、三叉神経節TRG、脊髄の後側白質路、及び末梢神経内で観察された。これらの所見は、後根神経節(DRG)及び三叉神経節(TRG)内の単核細胞浸潤を伴うニューロン変性からなり、線維症の有無にかかわらず、脊髄及び末梢神経の後側白質路内の軸索変性(すなわち、軸索障害)を伴った。全体的に、これらの所見は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置群にわたって観察された。これらの所見の重症度は、中用量群(1.0×1013GC)及び高用量群(3.0×1013GC)由来の動物においてより高くなる傾向があった。脊髄及び末梢神経におけるDRG/TRG変性及び軸索障害の発生率は、用量にかかわらず同様であったが、中用量(1.0×1013GC)及び高用量(3.0×1013GC)では、より高い線維症の発生率が観察された。他の試験物に関連する所見には、注入部位での骨格筋及び脂肪組織における慢性炎症が含まれた。
【0252】
DRG/TRG神経変性
軸索を脊髄の後側白質路に中枢的に、末梢神経に末梢的に投射するDRGにおける単核細胞の浸潤を伴う神経細胞体の変性は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置群で観察され、試験物に関連するとみなされた。同様の所見がTRGで観察された。DRG/TRG神経変性の重症度は、低用量(最小、[3.0×1012GC、群2、2/3の動物、6/12の神経節])で最も低く、続いて高用量群(最小~軽度、[3.0×1013GC、群4、3/3の動物、6/12の神経節])が密接に続いた。重症度は、全体として、中用量群で最も高かったが(最小~軽度、[1.0×1013GC、群3、3/3の動物、7/12の神経節])、中用量群と高用量群との間では、明確な用量応答は観察されなかった。発生率は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置群(群2~4)にわたって同様であった。最小限の神経細胞体変性は、1匹のビヒクル処置対照(動物171123[ITFFB、群1、1/2の動物])において生じたが、処置対バックグラウンドに対するこの所見の関係を確立することができなかった。加えて、中用量群の1匹の動物(動物171306[1.0×1013GC、群3、1/3の動物])及び高用量群の1匹の動物(動物171209[3.0×1013GC、群4、1/3の動物])の脳神経IX、X、及び/又はXIにおいて観察される最小の軸索障害。
【0253】
脊髄における軸索障害
DRG変性は、脊髄の後側白質路の軸索障害をもたらした。軸索障害の発生率は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置群で同様であったが、重症度の用量依存的増加が観察された。重症度は、低用量群(3.0×1012GC、群2、3/3の動物)の最小から、中用量群(1.0×1013GC[群3、3/3の動物])及び高用量群(3.0×1013GC[群4、3/3匹の動物])の両方で最小から著しいまで増加した。注目すべきことに、中用量群の1匹の動物(動物171306[1.0×1013GC、群3、1/3の動物])及び高用量群の1匹の動物(動物171209[3.0×1013GC;群4、1/3の動物])は、同じ用量を投与された他の動物よりも、全体的により高い重症度を示した。
【0254】
末梢神経における軸索障害
DRG変性は、末梢神経の軸索障害をもたらした。末梢神経の軸索障害は、用量依存的応答を示した。重症度は、低用量群(最小~軽度、[3.0×1012GC、群2、23/30の神経])において最も低く、中用量群(最小~中等度、[1.0×1013GC、群3、26/30の神経])から高用量群(最小~中等度、[3.0×1013GC、群4、23/30の神経])に増加した。しかしながら、この発生率は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置群にわたって比較的同様であった。対照動物(動物171123[ITFFB、群1、1/30の神経])において最小限の軸索障害はめったに観察されず、偶発的であるとみなされた。
【0255】
神経内膜線維症
用量依存性神経内線維症(軸索周囲線維症又は神経周囲線維症とも称される)は、末梢神経において観察され、軸索損傷に続発するとみなされた。低用量群(3.0×1012GC、群2)の末梢神経では線維症は観察されなかったが、中用量群(1.0×1013GC、群3、2/3の動物、4/30の神経)から高用量群(3.0×1013GC、群4、2/3の動物、6/30の神経)まで、発生率及び重症度の両方が増加した最小~中等度の線維症が観察された。末梢神経における線維症の最も高い発生率及び重症度は、中用量群の1匹の動物(動物171306[1.0×1013GC、群3、1/3の動物])及び高用量群の1匹の動物(動物171209[3.0×1013GC、群4、1/3の動物])で観察され、これらは、脊髄における軸索障害所見の重症度と相関した。軽度の神経内膜線維症は、中用量群の1匹の動物(動物171306[1.0×1013GC、群3、1/3の動物、1/12の神経節)の腰部セグメントのDRG神経根内でも観察され、軸索損傷に続発するとみなされた。
【0256】
注入部位の所見
局所注入部位の所見は、対照動物を含む全ての群にわたって観察された。ICM注入/CSF採取部位及び周辺領域において、ビヒクル処置対照動物は、骨格筋筋膜内に最小限の局所急性炎症又は骨格筋内の単核細胞浸潤を示した(ITFFB、群1、2/2の動物)。AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置動物は、関連する筋線維の変化(8/9の動物)を伴う骨格筋及び脂肪組織内の最小~中等度の慢性炎症(9/9の動物)からなるこれらの所見の重症度の増加を示した。AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置動物における注入部位の所見の重症度は、用量依存性ではなかった。これらの注入部位所見は、部分的に、ICM注入及び/又は反復CSF採取に手順的に関連しているとみなされた。しかしながら、試験物に対する局所的応答に由来する増悪があった可能性が高い。
【0257】
ICM投与後、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNAは、CSF及び末梢血の両方で検出可能であった。CSF中のAAV1.CB7
.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の濃度は、評価された最初の時点(7日目)後、急速に低下し、低用量群の1匹の動物(3.0×1012GC、動物171229、群2)及び高用量群の1匹の動物(3.0×1013GC、動物181330、群4)を除いて、ほとんどの動物において60日目までに検出できなかった。動物171229及び動物181330の両方について、CSFにおけるAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNA濃度は、60日目の最後の試料採取時点で減少傾向にあった。血液中のAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNA濃度は、よりゆっくりと低下し、末梢血細胞の形質導入に起因する可能性がある。CSF又は末梢血のいずれにおいても、ピークベクター濃度は、用量依存的にではないようであった(図30)。
【0258】
0日目に、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNAはCSFで検出されたが、中用量群の2匹の動物(動物171306及び171311[1.0×1013GC、群3])の血液では検出されなかった。0日目にAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)が陽性であったCSF試料を再試験して、結果を確認した。0日目のCSF中の低レベルのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNAの検出は、ICM投与手順中のCSF試料汚染に起因する可能性が高い。
【0259】
ベクター投与後5日目に、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNAは、分析することができた8/9匹の動物の尿中及び全ての動物の糞便中(5/5の動物)で検出可能であった。AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNAは、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与後28日目までに、全ての動物(9/9の動物)の尿中で検出できなかった。AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)ベクターDNAは、28日目に分析することができた全ての動物の糞便中で検出することができず(3/3匹)、60日目(9/9匹)に全ての糞便試料中で検出できないことが確認された。ピーク尿及び糞便のベクター濃度は、用量依存的ではないようであった。
【0260】
導入遺伝子産物の発現(ヒトPGRNタンパク質)は、ビヒクル処置対照動物のCSFにおいて検出できなかった。AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)のICM投与後、ヒトPGRNは、14日目までにCSFにおいて検出可能なヒトPGRNを発現しなかった1匹の低用量動物(3.0×1012GC、動物171250、群2)及び1匹の高用量動物(3.0×1013GC、動物171246、群4)を除いて、7日目までに全ての動物のCSF及び血清中で検出可能であった。これらの動物の両方が、AAV1カプシドに対してベースラインNAbを有していた。発現は、CSF及び血清の両方について用量依存的であった(図32)。
【0261】
CSFにおいて、最大のヒトPGRN発現は、1/3の中用量動物(1.0×1013GC、群3)及び2/3高用量動物(3.0×1013GC、群4)において、14日目に観察された。低用量群の全ての動物(3.0×1012GC、群2、N=3/3)は、28日目に最大発現に達し、中用量群の2/3の動物(1.0×1013GC、群3)、及び高用量群1/3の動物(3.0×1013GC、群4)も同様に達した。最大発現では、低用量群(5.27ng/mL)と比較して、中用量群(11.58ng/mL)及び高用量群(11.77ng/mL)で、約2倍高いヒトPGRNの平均濃度が観察された(図32)。
【0262】
血清では、両方とも28日目に最大の発現を示した低用量群の1匹の動物(3.0×1012GC、動物171229、群2)及び中用量群の1匹の動物(1.0×1013GC、動物171118、群3)を除いて、ほとんどの動物で14日目に最大のヒトPGR
N発現が観察された。低用量(3.0×1012GC、群2)、中用量(1.0×1013GC、群3)、及び高用量(3.0×1013GC、群4)群において、それぞれ109.03ng/mL、240.12ng/mL、及び430.52ng/mLの平均最大発現レベルが観察された(図33)。
【0263】
60日目までに、CSF及び血清中のヒトPGRN発現は、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置動物において最大レベルから低下した(図34)。この低下は90日目を通して続き、全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置動物のCSF及び血清の両方での抗ヒトPGRN抗体の出現と相関した(図34)。
【0264】
ベクターゲノムは、90日目に、脳、脊髄、DRG、肝臓、及び脾臓において高レベルで検出された(図35)。CNS組織において検出されたベクターゲノムの量は、概して、用量依存性であることが観察された。1匹の低用量動物(3.0×1012GC、動物171250、群2)及び1匹の高用量動物(3.0×1013GC、動物171246、群4)におけるAAV1カプシドに対するベースラインNAbの存在は、他の全てのAAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)処置NHPと比較して、肝臓へのベクター分布の実質的な低減と相関した。
【0265】
AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)投与は、関連する中枢及び末梢軸索(9/9の動物)と一緒にDRG及びTRG感覚ニューロン(8/9の動物)無症候性変性をもたらした。これらの病変の重症度は、最小~軽度であった。これらの所見は、中用量群及び高用量群においてより重度の病変の傾向を示した。脊髄及び末梢神経の線維症において最も重度の軸索損失を示した2匹の動物のうち、高用量群の1匹の動物(動物171209、3.0×1013GC[3.3×1011GC/g脳])は、90日目に、両側の正中神経の感覚活動電位振幅の著しい低減を示した。全ての用量群における無症候性感覚ニューロン病変の存在に起因して、無観察有害作用レベル(NOAEL)は定義されなかった。評価された最も高い用量(3.0×1013GC)は、最大耐容用量(MTD)とみなされた。
【0266】
実施例8:ヒト試験
GRN遺伝子の変異によって引き起こされる成人発症性神経変性疾患(前頭側頭ジメンチア(dimentia)を含む)を有する患者におけるPBFT02)の単回投与の第1のヒト(FIH)第1b相用量漸増研究を実施する(以下の表にサマライズした)。PBFT02は、GRN遺伝子を置き換えるように設計されている。現在、GRNハプロ不全によって引き起こされる成人発症性神経変性の疾患を修飾する療法は存在しない。疾病管理は、疾患に関連する行動、認知、及び/又は運動の症状を低減することを目的とした支持ケア及び認可外治療を含む。したがって、この疾患スペクトルは、満たされていない医療ニーズの高い領域を表している。このFIH試験は、安全性及び耐容性を評価し、有効性に関する予備データを収集する。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【0267】
標的集団:FTD及びGRNハプロ不全を有する軽度の症候性対象
ホモ接合性GRN変異を有する対象は、10代及び若年成人に影響を与えるリソソーム蓄積症であるバッテン病のより重症で早期発症表現型を有することが記載されており、したがって、本研究から除外される。GRNハプロ不全は、成人発症性神経変性をもたらす。これらの患者の間では、疾患の期間は、典型的には、4.9~10.0年の範囲である。FTDにおける症状発症の平均年齢範囲は、54.8~69.5歳であり、70歳までに疾患の浸透率は90%を超える。患者は、普遍的に進行性の経過を示す。発症からの生存期間は平均8年であり、68±8年の平均寿命をもたらす。
【0268】
75歳の最大年齢は、生存の合理的な可能性を有する患者を含めることを確実にし、これにより、提案されたエンドポイントの分析が可能になり、認知障害に寄与する併存疾患が検出されない可能性のある高齢の患者を含める可能性を低減する。
【0269】
現在の臨床試験研究集団は、35以上75歳以下の年齢の病原性ヘテロ接合型GRN変異を有する早期FTD(CDRプラスNACC FTLDの全体的スコア=0.5~1.0)を有する対象からなる。
【0270】
この集団は、治療を受けるときにすでに疾患の初期臨床症状を有しており、試験の経過中に最初の臨床症候群の進行及び他のFTD症状の発症を経験することが予想されるという点で、良好なリスク/利益プロファイルを提供すると考えられる。しかし、彼らはまだ進行及び広範囲の神経変性を有していないため、FTLD病態生理学の進行を著しく遅らせるか、又は停止させる介入から利益を得る。
【0271】
FTLDにおける神経変性を遅らせるためのCNSプログラニュリンレベルを増加させるための疾患メカニズム及び根拠
GRNは、分泌糖タンパク質であるPGRNタンパク質産物(以下、PGRNと称する)をコードする。GRNは、神経系を含む全身の広範囲の組織で発現される。PGRNの正確な分子機能は不明であるが、新たな証拠は、成人発症性神経変性に対するその病原性の寄与がリソソームにおける重要な役割に関連することを示唆している。
【0272】
PGRNは最近、リソソームの酸性化を促進し、カテプシンD(CTSD)を含むリソソームプロテアーゼのシャペロンとして機能することが見出された。これらの活動に沿って、GRNハプロ不全を有する患者は、リポフスチンと呼ばれる自己蛍光材料のリソソーム蓄積を示す。同様に、少なくとも12個の異なる遺伝性障害が、ニューロンのリソソーム中のリポフスチンの異常な蓄積を引き起こす。これら全ての疾患は、必須リソソームタンパク質の欠乏によって引き起こされ、全てが神経変性をもたらす。組織学的に同一のリソソーム蓄積病変は、進行性神経変性疾患である神経セロイドリポフスチン症(NCL)(バッテン病としても知られる)を伴う人生のずっと早い時期に存在するホモ接合性機能喪失GRN変異を有する患者においても同様に観察される。累積的に、これらの観察結果は、中央PGRNを増加させることが、リソソーム病理を修正し、FTLDにおける神経変性を遅らせる可能性があることを示唆している。
【0273】
●AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)での遺伝子療法についての根拠
GRNハプロ不全によって引き起こされる成人発症性神経変性は、分泌タンパク質の欠乏に起因する単一遺伝性疾患であるため、遺伝子療法の魅力的な候補である。新しく合成されたPGRNは、トランスゴルジネットワークからリソソームに直接輸送され得るが、ソーティリン又はマンノース-6-リン酸受容体を介して他の細胞に分泌及び取り込まれ得、その後、リソソームに輸送される。PGRNの分泌の重要な結果は、ニューロンにおけるGrnの選択的欠失後のトランスジェニックマウスにおいて実証されている。全ての細胞型においてPGRNタンパク質を完全に欠くGrn-/-動物とは対照的に、単独のニューロンにおけるPGRN発現の切除は、ニューロンリポフスチン蓄積をもたらさず、他の中枢神経系(CNS)細胞が、PGRN欠損ニューロンにPGRNタンパク質を供給することを示す。したがって、CNSの細胞のサブセットでPGRNを過剰発現させることは、周囲の細胞によって取り込まれ得る分泌されたタンパク質のデポを提供し、交差補正の可能性をもたらし得る。研究動物におけるAAVベクターの髄腔内(IT)送達は、CNS全体で細胞を形質導入することが示されており、この経路は、GRNハプロ不全によって引き起こされるFTLDの治療に魅力的なアプローチとなっている。更に、Grn-/-ノックアウトマウス及びNHPの両方における本発明者らの非臨床研究は、IT AAV送達が、Grn-/-ノックアウトマウスにおけるPGRN欠乏に関連するリソソーム蓄積病変の分解に加えて、CSF及びCNSにおける堅牢なPGRN発現をもたらすことを実証する。
【0274】
研究の根拠
FTLDは、プログラニュリン(GRN)遺伝子を含む5つの既知の疾患遺伝子のうちの1つの変異によって引き起こされる。GRNにおける全ての病理学的変異は、機能の損失を引き起こし、プログラニュリン(PGN)mRNAレベル(約50%)及びタンパク質レベル(約33%)の低減をもたらすことが確認されるか、又は予測される。GRNハプロ不全によって引き起こされるFTLDは、分泌タンパク質の欠乏に起因する単一遺伝性疾患であるため、遺伝子療法の魅力的な候補である。新しく合成されたPGRNは、トランスゴルジネットワークからリソソームに直接輸送され得るが、ソーティリン又はマンノース-6-リン酸受容体を介して他の細胞に分泌及び取り込まれ得、その後、リソソームに輸送される。研究動物におけるAAVベクターのIT送達は、CNS全体で細胞を形質導入することが示されており、この経路は、FTLD-GRNハプロ不全の治療に魅力的なアプローチとなっている。更に、Grn-/-ノックアウトマウス及びNHPの両方における本発明者らの非臨床研究は、IT AAV送達が、Grn-/-ノックアウトマウスにおけるCSF及びCNSにおける堅牢なPGRN発現及びPGRN欠乏に関連するリソソーム蓄積病変の分解をもたらすことを実証する。
【0275】
研究の目的
一次目的
単回ICM用量の投与後のPBFT02の全体的な安全性及び耐容性を評価すること。二次目的
●単回ICM投与後の、CSF及び血漿プログラニュリンレベル並びに他の疾患バイオマーカーに対するPBFT02の薬物動態効果の耐久性を評価すること。
●神経変性の神経画像化、流体及び眼のバイオマーカーで評価されたFTLDの進行に対するPBFT02での処置の効果を評価すること。
●FTDの臨床進行(認知機能、行動、言語及び運動の徴候及び症状)に対するPBFT02での処置の効果を評価すること。
●生存に対するPBFT02の影響を評価すること。
【0276】
研究設計及び根拠
研究設計の概要
これは、早期FTD及びGRNハプロ不全を有する35歳以上75歳以下の対象において、5年間にわたって単回ICM注入として投与されたPBFT02の安全性、耐容性、及び薬力学を評価する、第1b、FIH、非盲検、単群、多施設用量漸増研究である。安全性、耐容性、薬力学及び臨床有効性を2年間にわたって評価し、全ての対象をPBFT02の投与後5年間にわたって、安全性及び耐容性、薬物動態、並びに臨床転帰の長期評価について追跡する。
【0277】
本試験は、約-35日目から-7日目までの各潜在的な対象の適格性を決定するためのスクリーニング段階からなる。適格性の確認後、対象は、脳及び脊髄磁気共鳴画像法(MRI)、CSF採取のための腰部穿刺、採血、採尿、バイタルサイン、ECG、身体検査、神経学的検査、Total Neuropathy Score-Nurse(TNSn)、神経伝導試験、及び臨床評価を含み得るベースライン評価を受ける。ベースライン評価は、PBFT02の投与前の、-14日目~0日目(含む)に行われる。治療段階では、対象は1日目の朝に入院する。対象は、1日目に単回ICM用量のPBFT02を受け、観察のために投薬後、所定の時間病院に留まる。その後の試験来院は、投薬後の最初の2年間は6ヶ月ごとを含む、投薬後の所定の時間(30、60、90日)に行われる。長期フォローアップ来院は、更に3年間、12ヶ月ごとの頻度で、用量後5年間にわたって行われる。
【0278】
本研究は、各々、単回用量のPBFT02を単回ICM注入として投与された最大5人の対象の最大3つのコホートからなる。第1のコホートでは、各対象は、順次登録され、各対象間の60日間の安全性観察期間を伴って、最も低い計画用量を投与される。事前に定義された安全審査トリガーが観察されない場合、第1のコホートの全ての対象がPBFT02を投与されてから90日後に、第1のコホートの全ての利用可能なデータはIndependent Data Monitoring Committee(IDMC)によって審査される。
【0279】
より高い用量に進むことが決定された場合、最大5人の対象が順次登録される場合があり、各対象間に60日間の安全性観察期間があるより高い用量を受ける場合がある。第2のコホートの利用可能な全てのデータは、Independent Data Monitoring Committee(IDMC)によって審査される。
【0280】
最大実行可能な用量に達していない場合、任意選択の第3のコホートが順次登録される場合があり、各対象間に60日間の安全性観察期間がある第2のコホートよりも高い用量で投薬される場合がある。
【0281】
情報提供者(例えば、親類、パートナー、又は友人)はまた、この研究の不可欠な参加者でもある(組み入れ基準を参照)。情報提供者は、臨床スケールに対する対象情報を提供し、AEの報告に役立つ場合がある。この研究において情報提供者が果たす重要な役割のために、第2のバックアップ情報提供者も、好ましくは0日目の前に特定される必要がある。
【0282】
安全審査トリガー
治験薬の投与後、各対象は、有害事象について所定の時間観察される。有害事象の有害事象共通用語基準(CTCAE)は、独立した審査及び倫理委員会によって要求される有害事象(AE)の重症度の等級付けに使用される。これらは、治験責任医師がグレード4又はグレード5とみなす任意の有害事象及び重篤な有害事象、又は治験薬関連とみなされるグレード3の事象である。投与後いつでも、これらの事象が発生した場合、IDMCは事象を審査し、研究を継続するべきか又は停止するべきかを決定する必要がある。
【0283】
治験薬関連とは見なされないグレード4以上の事象が生じる場合、又は技術的な問題がある場合、その事象は臨床研究医療チームによって審査され、IDMCは審査のために招集される。
【0284】
このサイクルは、コホートの最後の対象が登録され、審査されるまで続く。
【0285】
コホートの最後の対象からの90日間のデータが利用可能な場合、コホートからの全ての利用可能なデータが要約され、用量漸増を進めるべきか、研究を中止すべきかを決定するためにIDMCに提示される。
【0286】
用量を漸増させる決定がなされた場合、対象は、より高い用量のPBFT02を受けるためにコホート2に登録される。登録は、低用量について上述したのと同じ手順に従う。以前のように、最後の対象からのデータが利用可能な場合、コホートからの全ての利用可能なデータが要約され、研究を進めるべきか、研究を中止すべきかを決定するためにIDMCに提示される。
【0287】
PBFT02が第2のコホートにおいて良好に耐容され、より高い用量が実行可能である場合、安全性及び耐容性を評価するために、連続した対象の間に少なくとも60日間、第3のコホートを登録され得る場合がある。
【0288】
SRTを引き起こす事象に加えて、以下の基準のうちのいずれかが満たされている場合、研究は中止され、新しい対象は登録されない。
●治験責任医師によって評価された治験薬又はICM注入手順に関連すると見なされる任意の死亡
●治験責任医師によって評価された治験薬又はICM注入手順に関連すると考えられるCNS出血、脳卒中、又は急性麻痺
Independent Data Monitoring Committeeは、これらの有害事象を審査し、研究の継続的な実施及び対象の登録に関する決定を下す。
【0289】
用量漸増基準
用量漸増は、安全性(臨床及び実験室評価を含む)、耐容性、及びCSF PGRNレベルへの影響の評価に基づいている。評価は、各対象が各コホートに登録された後に実施される。各コホートの後に要約評価も実施される。安全審査トリガー基準が確立され、正式なIndependent Data Monitoring Committeeの会合が臨時に開催される時期が決定される。そうでなければ、急性の安全性の問題が見られない場合、各コホートの要約データが利用可能であるときに定期的に予定されているIndependent Data Monitoring Committeeの会合が開催され、より高い用量に進むかどうかのガイダンスを提供することができる。安全性の考慮に加えて、CSFプログラニュリンレベルの評価を実施して、PBFT02が所望の薬力学的効果を有する程度を決定する。
【0290】
研究設計の根拠
盲検、対照、研究相、治療群
これは非盲検用量漸増研究設計である。各コホートは、積極的な治療を受けている最大5人の対象からなる。研究の最初の2年間の部分は、一次エンドポイント及び臨床及びバイオマーカー疾患進行の潜在的ないくつかの二次エンドポイントに対する効果を評価するのに十分である。追加の3年間の延長相は、長期的な安全性の評価に適している。当初、2つのコホート、低用量コホート及び高用量コホートが計画されている。PBFT02が第2の用量コホートにおいて良好に忍容され、用量を増加させることが可能である場合、第3のコホートは、第2のコホートよりも高い用量で登録される場合がある。これは、バイオマーカー(CSF PGRNレベル、及び神経変性の他の流体及び神経画像化バイオマーカーを含む)に対する安全性、耐容性、及び治療効果に基づいて、最適な用量を特定することを可能にする。
【0291】
研究集団
この研究の標的集団は、35歳以上75歳以下の、FTDの軽度の徴候及び症状(CDRプラスNACC FTLDの全体的スコア0.5~1.0によって定義される)、並びに低いCSF PGRNレベル及びヘテロ接合病原性GRN変異の遺伝子バイオマーカー証拠(AD&FDMDBによって分類される)によって確認されるGRNハプロ不全を有する対象からなるFTLDの治療の評価を混乱させる可能性のあるアルツハイマー病又は他のCNS障害と一致する臨床病歴又はバイオマーカープロファイルを有する対象は除外される。
【0292】
遺伝子療法として、PBFT02は、GRNの1つ又は両方のコピーにおける病原性変異によって引き起こされる神経変性疾患に罹患する患者に利益をもたらす可能性を有する。既知のGRN変異は、ヒトゲノム変異協会によって確立されたガイドラインに従って、AD及びFTLD患者両方の全ての既知の変異及び非病原性コード変異をカタログ化するAD&FTDMDBによって病原性として定義される。この突然変異解釈へのアプローチは、概して、これらの患者を評価する臨床医によって受け入れられており、FTLD疾患
の専門家との議論の中で本研究に採用された。
【0293】
GRNハプロ不全によって引き起こされる成人発症性神経変性の初期臨床症状は、不均一である。この不均一性は、疾患の進行にともなって現れる追加の症状とともに様々な初期臨床症状をもたらす。FTDの患者は、典型的には、最初の症状の発症後に急速に低下するため、本研究は、行動変化及び実行機能障害が顕著な初期症状である行動バリアント(bvFTD)、及び言語の理解及び/又は産生が損なわれる原発性進行性失語(ppaFTD)を含む、主要な臨床FTD表現型のいずれかを呈する対象を登録する。PPAは、特定の言語欠陥に従って、非流暢型PPA(nfvPPA)及び意味型PPA(svPPA)に更に分割され、いずれも登録の対象となる。PPAの第3のサブタイプであるロゴペニック型lPPAは、アルツハイマー病のバイオマーカーが同時ADと一致しない場合にも登録の対象となる。
【0294】
FTDスペクトルには、進行性核上性麻痺症候群、皮質基底症候群(CBS)、及びALSを含む運動障害表現型も含まれる。この比較的小規模な第1相研究における疾患の臨床経過の均質性を確保するために、運動症状のみを有する対象は、登録に適格ではない。しかしながら、これらの運動障害の併発症状を有するbvFTD又はppaFTDのいずれかを有する対象はこの研究に含まれる。
【0295】
適格な対象は、CDRプラスNACC FTLD尺度でスクリーニングされ、それは、記憶、見当識、判断力及び問題解決、社会的状況、家庭状況及び趣味、個人医療、行動、及び言語を含む、全てのFTD臨床症状にわたる症状の重症度を評価するように設計されている。0.5~1.0のCDRプラスNACC FTLDの全体的スコア(軽度の症状のある患者を含む)は、遺伝子療法の利益が最大化される可能性が高い神経変性の初期段階で、症状のある患者の選択が可能になる。この初期段階で患者を登録することもまた、その後の疾患進行の変化又は安定化、及び追加の症状の発症の遅延の検出が可能にする。
【0296】
対象へのリスクを最小限に抑えるため、本研究では、臨床手順に禁忌がある、病原性が予測されるGRN変異がない、又は神経系若しくは免疫系に関連する疾患を有する、患者を除外する。
【0297】
更に、本研究には、がんに関連するリスクを最小限に抑える除外基準が含まれている。PGRNの過剰発現が様々な腫瘍で観察されているため、がん関連の除外基準が提案されている。PGRNの過剰発現は、がんの進行を促進すると仮定されている。したがって、悪性腫瘍(限局性皮膚がんを除く)、又は遺伝性がん症候群の既往歴を有する患者は除外する。しかし、以前に悪性腫瘍を成功裏に治療し、再発を除外するための十分なフォローアップを有する対象は、治験責任医師の裁量で含まれる場合がある。加えて、この遺伝子療法は、生理学的レベルを上回るPGRNの発現をもたらさないことが予想される。FIH試験で使用される用量よりも高い非ヒト霊長類研究におけるPBFT02の用量を使用すると、PBFT02のICM投与後、PGRNが正常に近いレベルで血清中に発現することが見出された。FIH試験に登録された対象は、典型的には、ベースライン循環PGRNレベルが正常値の約30%であったため、循環血清PGRNレベルは、せいぜい正常値に回復するであろうと予想される。したがって、PGRNへの異常に高い全身曝露は予想されない。
【0298】
CNSのPGRNレベルは、いくつかの脳領域では正常より高い可能性があるため、患者は、潜在的なCNS腫瘍の兆候について厳密にモニタリングされている。対象の血液検査は、CBCパネルを介してモニタリングされ、対象は、以下の表に指定されるフォローアップの時点で、毎年5年間、脳及び脊髄のガドリニウム造影剤を用いたMRIを介してモニタリングされる。ガドリニウム保持に関連する潜在的なリスクは認識されているが、
GRN媒介性腫瘍の潜在的なリスクとバランスが取れていると考えられる。
【0299】
用量選択(AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02))
PBFT02は、GRN遺伝子を置き換え、中央PGRNレベルを上昇させるように設計される。GRNハプロ不全によって引き起こされるFTLDは、分泌タンパク質の欠乏に起因する単一遺伝性疾患であるため、遺伝子療法の魅力的な候補である。新しく合成されたPGRNは、トランスゴルジネットワークからリソソームに直接輸送され得るが、ソーティリン又はマンノース-6-リン酸受容体を介して他の細胞に分泌及び取り込まれ得、その後、リソソームに輸送される。PGRNの分泌の重要な結果は、ニューロンにおけるGrnの選択的欠失後のトランスジェニックマウスにおいて実証されている。全ての細胞型においてPGRNタンパク質を完全に欠くGrn-/-動物とは対照的に、単独のニューロンにおけるPGRN発現の切除は、ニューロンリポフスチン蓄積をもたらさず、他の中枢神経系(CNS)細胞が、PGRN欠損ニューロンにタンパク質を供給することを示す。したがって、CNSの細胞のサブセットでPGRNを過剰発現させることは、周囲の細胞によって取り込まれ得る分泌されたタンパク質のデポを提供し、交差補正の可能性をもたらし得る。
【0300】
開始AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)用量レベルは、GLP NHP毒性研究及びマウス疾患モデル研究から決定される(実施例3に記載)。このFIH用量漸増研究は、最大3つの用量コホートからなる。試験される全ての用量は、治療的利益を付与する可能性を有する。容量は、バイオマーカー(CSF PGRNレベル、及び神経変性の他の流体及び神経画像化バイオマーカーを含む)に対する安全性、耐容性、及び治療効果に基づいて、最適な用量を特定することを可能にするために、順次投与されるであろう(低用量、続いて高用量)。
【0301】
エンドポイント
安全性及び耐容性を主要エンドポイントとして測定することに加えて、二次的有効性のエンドポイントを、最近の文献に基づき、前頭側頭型認知症の研究を専門とする一流の臨床医と協議して、この研究のために選択した。これらのエンドポイントは、その後の登録用試験のための適切なエンドポイントを特定することを目的として、臨床転帰及び疾患バイオマーカーを追跡する。以下の表に示される時点と同様に、所定の時点を測定する。これらの時点を選択して、AAV1.CB7.CI.hPGRN.RBG(PBFT02)の安全性及び耐容性の完全な評価を容易にした。臨床有効性測定値の評価を可能にするために、GRN患者における疾患進行の速度を考慮して、それらも選択された。対象は、PBFT02投与後合計5年間、安全性及び有効性について引き続きモニタリングされ、それは草案“FDA Guidance for Industry:Long Term
Follow-Up after Administration of Human
Gene Therapy Products”(July 2018)に準拠している。
【0302】
バイオマーカー
以下の表は、この研究で評価されるバイオマーカーの概要及びその全体的な目的を示している。このリストは網羅的なものではなく、科学分野が進歩するにつれて進化するであろう。これらのバイオマーカーは、本プロトコルの後続のセクションに詳細に記載されている。プロトコルで事前に指定されたものに加えて、追加のバイオマーカー分析のためのインフォームドコンセントが得られる。
【表10】
【0303】
GRNハプロ不全の決定
対象は、医療記録の一部である検証されたアッセイの結果に基づいて、又は本研究のスクリーニング手順の一部として臨床現場によって実施される遺伝子型決定に基づいて、GRN変異保持者であることを文書化される必要がある。
【0304】
アルツハイマー病の病理学を有する対象を除外するバイオマーカー
アルツハイマー病は、FTDと誤解される場合があるか、又は-FTDを有する患者の併存疾患として存在する場合がある。したがって、本研究の結果の解釈に対するADの混同効果を避けるために、アルツハイマー病のバイオマーカー証拠を有する対象を除外する。対象は、除外基準に概説されるように、検証されたアッセイを使用して、アルツハイマー病の存在について評価される。
【0305】
ベースライン及び治療後のCSF及び血漿PGRNレベルの決定
CSF中及び血漿中のPGRNタンパク質のレベルは、AAV形質導入の指標として、ベースライン(選択のため)及びその後の治療後に測定される。PGRNレベルは、PBFT02の投与後、患者において増加することが予想される。中でも、他の尺度、CSF及び血漿PGRNレベルの治療関連の増加は、この試験における用量漸増及びその後の試験の用量選択に通知することができる。
【0306】
神経変性の流体バイオマーカーの評価
流体バイオマーカーは、神経変性、及び関連する神経炎症及びミクログリア活性に対する潜在的な治療効果を評価するために採取される。ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、総タウ(T-タウ)、リン酸化タウ(P-タウ)のCSFレベルの治療関連変化も、研究の経過中に追跡されるが、これらのエンドポイントに対する疾患安定化の予測される影
響は不明である。
【0307】
NfL
ニューロフィラメントは、軸索細胞骨格の構造タンパク質である。FTDでは、NfLサブユニットのCSF濃度は、アルツハイマー病(AD)と比較して高いことが示されている。高濃度のCSF NfLは、FTDにおける生存期間の短縮と関連しており、これは、疾患の強度/重症度のマーカーであることを示唆している。NfLの血漿中濃度はCSFと強く相関しており、最近のデータは、NfLの血清又は血漿レベルがFTDで増加し、疾患強度を反映し、磁気共鳴画像法での将来の臨床的悪化及び脳容積損失を予測することを示している。NfLは、神経細胞の損失又は損傷の一般的な指標と考えられる。
【0308】
GFAP
GFAPの血漿レベルにおけるグリア線維性酸性タンパク質処置関連の変化は、研究の経過を通じて追跡されるであろう。GFAPは、FTDの既知の病理学的過程であるアストログリオーシスの尺度である。GFAP濃度の上昇は、FTD-GRNに固有のものであり、症状発症直前にレベルが上昇する可能性があることから、GFAPが発症に近い重要なマーカーである可能性が示唆される(Hellerら、2020)。
【0309】
タウ
タウ及びリン酸化タウは、AD、PD、及びいくつかの形態のFTDサブタイプで見られる病理に関連し、概して、サブグループに関係なく、神経損傷又は変性に関連する(基礎となるAD病理に関連するロゴペニック型原発性進行性失語[lvPPA]を除く)。FTD患者は、CSFにおいて、T-タウに対するP-タウの比率が低いようであった。
【0310】
網膜リポフスチン
網膜変性は、ヘテロ接合GRN変異保持者において生じ、表現型はまた、Grnノックアウトマウスにおいても観察される。Grnノックアウトマウスはまた、中枢神経系全体にリポフスチンとして知られる自家蛍光凝集体の顕著な沈着物を発達させる。非侵襲的網膜画像化は、ヘテロ接合GRN変異保持者における網膜リポフスチン症を検出することができる。眼コヒーレンス断層撮影(OCT)を本研究で使用して、スクリーニング及び以下の表に概説されるものと同様の時点で、網膜リポフスチンを評価する。
【0311】
神経変性の神経画像化バイオマーカーの評価
磁気共鳴画像法(MRI)
GRNハプロ不全の患者は、主に前頭葉及び側頭葉皮質に神経細胞の損失を示し、全脳容積は典型的には、症状発現後に年に3.4%の割合で減少する。したがって、この研究は、T1加重MRIを利用して、標的集団における全ての臨床症状にわたって最も一般的に影響を受ける脳領域である脳体積、白質の完全性、及び中前頭皮質及び頭頂領域の厚さの変化を追跡する。PBFT02の投与は、経時的にこれらの領域の萎縮の低下を安定させることが期待される。萎縮罹患脳領域は様々な臨床症状の間で異なることがあり、これらのデータは、GRN関連の神経変性の自然史の理解を助けることができるため、他の皮質又は皮質下脳領域からの追加の探索的データが収集される。MRIは、スクリーニング中及び以下の表に概説されるものと同様の時点で実施される。
【0312】
フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影(FDG PET)
FTDでは、代謝低下は、典型的には、前側頭葉及び前頭葉、より具体的には、両側の内側皮質、下側皮質及び上側皮質、前帯状皮質、左側の側頭皮質、及び右側の頭頂皮質及び尾状核に見られる。通常、代謝低下はMRIの萎縮と相関するが、多くの場合、先行する。FTDについては、FDG PETスキャンの感度は47%~90%の範囲であり、特異度は68%~98%の範囲である。経時的に異常の増加が見られ得、疾患進行のバイ
オマーカーとしてのFDG PETの潜在的有用性を示す。PBFT02の投与は、経時的にこれらの領域で観察される代謝低下を安定させることが期待される。FDG PET画像化は、スクリーニング中、及び以下の表に概説されるものと同様の時点で実施される。
【0313】
EEG/誘発応答電位
事象関連EEG活性の振幅又は供給源活性は、感覚及び認知運動情報プロセス中の視床皮質及び上昇活動システムの同期/非同期及び結合/分離のメカニズムを調べ、軽度の認知障害及びアルツハイマー病及び介入の進行性効果を、特に早期の疾患段階で明らかにし、他の形態の認知症に有用であり得る。
【0314】
臨床転帰尺度
臨床進行、生活の質、及び機能に対するPBFT02の効果を評価する。標的患者集団によって示される表現型が不均一であるために、臨床症状の範囲にわたって発現される症状の進行を捕捉する尺度が用いられる。これらの有効性評価は、経時的な症状の低下少を安定させるPBFT02の能力を捉えることを意図している。様々な臨床症状を有する患者の様々な臨床パラメータにわたる更なる低下の速度に関するデータは、適切なエンドポイントの選択に更に情報を提供し、登録用試験の臨床的に有意義な変化を定義するために使用される。
【0315】
行動、言語、及び認知の評価
CDRプラスNACC FTLD SB
CDRプラスNACC FTLDは、ADスペクトラム障害の重症度を評価するために歴史的に使用される古典的な臨床認知症評価(CDR)尺度の拡張版である。この評価には、CDRのオリジナルな6つのドメイン(記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家庭状況と趣味、介護状況)が含まれる。それはまた、より高い感度でFTLDスペクトル患者の減少の検出を可能にする、言語及び行動の2つの追加のドメインを含む。0の全体的な評価スコアは、正常な行動又は言語を示し0.5、1、2、又は3のスコアは、軽度から重度の障害を示す。CDRプラスNACC FTLD評価項目合計(CDRプラスNACC FTLD sb)スコアは、個々のドメインの合計を表し、個々のドメイン及び複数のドメインにわたる疾患の重症度の進行を決定するために使用される。
【0316】
前頭葉機能検査(FAB)
FABは、実行機能を評価するための簡易評価である。これは、軽度の痴呆患者(MMSE>24)において特に有用である。この評価は、6部で構成され、認知、運動、及び行動の領域に対処する。総スコアは18、又はより高いスコアは、より良好なパフォーマンスを示す。
【0317】
前頭側頭型認知症評価尺度(FRS)
FRSは、疾患の進行を測定する。これは、認知症関連の行動及び障害を測定するために設計された2つの古い機器から選ばれた30個のプローブの質問の項目分析によって構築された。統計的に定義された閾値を計算して、重症度のレベルを定義した。FRSは、経時的なFTDの疾患進行の差異を検出する。この簡単な面接は、主介護者とともに実施され、30項目からなり、「起こらない」、「時々起こる」、又は「常に起こる」に分類される。次いで、パーセンテージスコアが計算され、ロジットスコア(logit score)、そして最終的には、重症度スコアに変換される。重症度スコアは、「非常に軽度」から「最重度」までの範囲である。
【0318】
ボストン命名試験(BNT)
BNTは、対立命名能力を評価するために幅広く使用されるツールである。BNTは、
ベッドからそろばんまでの語彙頻度に応じて順序付けられたオブジェクトの60個の白黒線画からなる。描かれた刺激の順序は、ノミネート障害のある個人が低周波オブジェクトの命名に大きな困難を抱えることが多いという発見を考慮に入れている。
【0319】
多言語命名試験(MINT)
32個の項目のMINTは、もともと4つの言語(英語、スペイン語、ヘブライ語、中国語)で命名をテストするために開発されたBNTの代替品であり、言語間のアイテムの難易度を同等にするように注意してある。MINTは、アルツハイマー病における障害の命名に感度が高い。
【0320】
数字スパン試験
番号スパン試験は、個人のワーキングメモリ数記憶容量を測定するために使用され、実行機能の尺度である。参加者には一連の数字(例えば、「8、3、4」)が提示され、すぐにそれらを繰り返さなければならない。これを成功させると、より長いリストが与えられる(例えば、「9、2、4、0」)。人が覚えていることができる最長のリストの長さは、その人の数字スパンである。参加者は、前方の数スパンのタスクで与えられた順序で数値を入力するように求められるが、後方も数スパンタスクでは、参加者は数値の順序を逆にする必要がある。
【0321】
意味流暢性
意味流暢性は、実行機能及び意味記憶へのアクセスの広く受け入れられた尺度である。タスクのスコアリングは、単一のカテゴリから可能な限り多くの単語を60秒で口頭で命名することで構成される。意味流暢性のパフォーマンスは、ADを有するヒトと健常な高齢者とを区別するために成功裏に使用されている。
【0322】
発話流暢性(音素テスト)
単語の流暢性は、意味及び文字単語リスト生成テスト並びに2つの文字生成タスクで測定される。各タスクには60秒かかり、正しい項目が合計さる。エラー及びルール違反に注意されたい。
【0323】
追跡作製試験(口頭適応)
追跡作製試験の口頭版は、書かれた追跡作製試験の動作及び視覚的要求なしに連続的なセットシフトの評価を提供する神経心理学的尺度である。もともとは、書かれた追跡作製試験の口頭アナログとして機能することを目的としていたが、口頭版は身体的制限のある患者を評価する手段を提供する。これは、実行機能の臨床的尺度である。
【0324】
ベンソンコンプレックスフィギュアコピー(10分間リコール)
ベンソンコンプレックスフィギュアは、建設能力のテストである。図のエレメントは、存在及び配置についてスコア化される。再現は、保持記憶を測定するために遅延後に試験される。
【0325】
カリフォルニア州言語学習テスト(CVLT)、第2版
エピソードの言語学習及び記憶の尺度としてのCVLTの構築妥当性は、神経心理学の文献でかなりの支持を得ている。この尺度は、4つの学習試験にわたって提示された9単語のリストを使用して、最近のエピソード記憶を評価する。30秒間の気を散らすタスクの後に、即座に自由なリコールが行われる。自由リコール及び意味論的手がかりのリコール試験は、10分間の遅延後に実施される。
【0326】
モントリオール認知評価(MoCA)
MoCAは、軽度の認知機能障害のための迅速なスクリーニング機器として設計された
1ページ30点の試験である。それは異なる認知領域:注意及び集中、実行機能、記憶、言語、視覚構造スキル、概念的思考、計算、並びに見当識を評価する。
【0327】
生活の質及び機能的活動の評価
機能活動質問票(FAQ)
FAQは、バランスの取れた食事の準備及び個人の財政管理など、日常生活の道具的な活動を測定する。日常生活の基本的な活動と比較してより高い認知能力を必要とする日常生活の器用な活動で、機能的な変化が認知症プロセスの初期に注目されるので、このツールは、経時的なこれらの機能的な変化をモニタリングするのに有用である。
【0328】
日常生活のシュワブ及びイングランド活動(SEADL)
シュワブ及びイングランド尺度は、日常生活能力の活動を0~100%の尺度で評価し、100%が完全に独立しており、障害はない。この尺度は、日常生活の活動における独立性及びパフォーマンスの有用な世界的な尺度である。
【0329】
重症度の臨床全体的印象
CGI-Sは、同じ診断を受けた患者に対する臨床医の過去の経験と比較して、評価時の患者の疾患の重症度に対する臨床医の印象を評価するために広く使用される簡潔な器具である。CGI-Sは研究者に1つの質問をする:「この特定の集団でのあなたの総臨床経験を考慮して、患者は現時点でどの程度病気か?」これは以下の7点スケールで評価される:1=正常、まったく病気ではない;2=境界病気;3=軽度の病気;4=中等度の病気;5=著しい病気;6=重度の病気;7=最も重度の病気の患者の間。
【0330】
臨床全般印象度変化
CGI-Cは、3部の簡潔で広く使用されている評価のうちの1つである。これは、3つの項目で構成され、臨床医によって評価される。CGI-Cは、改善が完全に治療によるものであるかどうかにかかわらず、研究への登録から始まり、1(非常に改善された)から7(非常に悪化した)の範囲の7段階で評価される。
【0331】
ケンブリッジ行動目録-改訂版(CBI-R)
CBI-Rは、複数の行動領域(すなわち、記憶及び見当識、日常的なスキル、自己治療、異常な行動、気分、信念、食習慣、睡眠、ステレオタイプ及び運動行動、及び動機付け)を評価する45項目で構成された代理アンケートであり、各項目は5段階で評価される(0=なし、1=月に数回、2=週に数回、3=毎日、4=常に)。このアンケートは、bvFTD及びADをパーキンソン病及びハンチントン病から区別するために使用されている。
【0332】
その他の評価
C-SSRS
コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を使用して自殺リスクを評価する。C-SSRSは、自殺念慮、念慮の強度、及び自殺行動を測定する3部構成の尺度である。この評価の結果は、尺度から直接取得される自殺行動致死率評価、自殺念慮スコア、及び自殺念慮強度評価で構成される。0を超える念慮スコアは、評価ガイドラインに基づいて、介入の必要性を示し得る。強度評価は、0~25の範囲であり、0は、自殺念慮の支持なしを表す。
【0333】
安全性評価
処置段階では、以下の表に列挙されるものと同様の時点で、定期的な安全性評価が実施される。これらの安全性評価には、AE及び併用薬のモニタリング、臨床検査の決定(血液学、臨床化学、尿検査)のための血液試料の採取、バイタルサインの測定、身体検査及
び神経学的検査、神経伝導試験、並びにTNSnが含まれるが、これらに限定されない。
【0334】
対象へのリスクを最小限に抑えるため、本研究では、臨床手順に禁忌がある、病原性が予測されるGRN変異がない、又は神経系若しくは免疫系に関連する疾患を有する、患者を除外する。
【0335】
CNSのPGRNレベルは、いくつかの脳領域では正常より高い可能性があるため、患者は、潜在的なCNS腫瘍の兆候について厳密にモニタリングされている。対象の血液検査は、CBCパネルを介してモニタリングされ、対象は、以下の表に指定されるフォローアップの時点で、毎年5年間、脳及び脊髄のガドリニウム造影剤を用いたMRIを介してモニタリングされる。ガドリニウム保持に関連する潜在的なリスクは認識されているが、GRN媒介性腫瘍の潜在的なリスクとバランスが取れていると考えられる。
【0336】
研究集団及び参加の期間
研究参加の期間
各対象の研究期間は60ヶ月である(安全性及び有効性のための中間解析:24ヶ月)。
【0337】
標的集団
標的集団は、GRNハプロ不全によって引き起こされる成人発症性神経変性と診断された、35歳以上75歳以下の患者である。
【0338】
対象及び現地の数
米国以外のグローバル現地では、最大15人の成人対象が登録される。対象は、施設への提示中、又は病院/医師の紹介を通じて特定される。地方、地域、及び国家の対象擁護群のパートナーシップも、研究の意識を高めるために利用されている。
【0339】
選択基準
1.登録時に35歳以上、75歳以下
2.以下の基準の1つによる原因としてのGRN変異の確認(スクリーニング中又は検証されたアッセイを用いた文書化された既往歴に基づく):
●American College of Medical Genetics(ACMG)が発行したガイドラインに従って、Alzheimer Disease & Frontotemporal Dementia Mutation Database(AD&FTDMDB)によって病原性に分類された突然変異
●GRN以外の変異が疾患の存在を説明することができるという証拠はないはずである。
3.可能性のあるbvFTD又はPPA(非流動型[nfvPPA]、意味型[svPPA]、又はロゴペニック型[lPPA])の現在の国際的なコンセンサス診断基準に従った臨床及び画像診断:
●Rascovsky(2011)基準によるbvFTDの可能性
A.以下の行動/認知症状(A~F)のうち3つが存在する必要がある。確認には、症状が単一又はまれな事象ではなく、持続的又は再発することが必要である。
A.早期*行動的脱阻害[以下の症状(A.1~A.3)のうちの1つが存在しなければならない]:A.1.社会的に不適切な行動
A.2.マナー又は礼儀の喪失
A.3.衝動的、発疹、又は不注意な行動
B.早期無関心又は慣性[以下の症状(B.1~B.2)のうちの1つが存在する必要がある]:B.1.無関心
B.2.慣性
C.同情又は共感の早期喪失[以下の症状のうち1つ(C.1~C.2)が存在する必要がある]:C.1.他人のニーズ及び感情に対する応答の低下
C.2.社会的関心、相互関係、又は個人的な暖かさの低下
D.早期の忍耐的、ステレオタイプ的又は強迫的/儀式的行動[以下の症状(D.1~D.3)のうちの1つが存在する必要がある]:D.1.単純な反復動作
D.2.複雑な、強迫的な、又は儀式的な行動
D.3.スピーチのステレオタイプ
E.口唇傾向及び食事の変化[以下の症状(E.1~E.3)のうちの1つが存在する必要がある]:
E.1.食事の好みの変化
E.2.過食、アルコール又はタバコの消費の増加
E.3.口腔探索又は食べられないものの消費
F.神経心理学的プロファイル:記憶及び視覚空間機能の相対的な節約を伴う実行/世代欠陥[以下の症状(F.1~F.3)の全てが存在する必要がある]:F.1.実行タスクの欠陥
F.2.エピソード記憶の相対的な保存
F.3.視覚空間スキルの相対的な節約
B.著しい機能低下を示す(医療専門家の報告による、又は臨床認知症評価尺度又は機能活動アンケートスコアによって証明される)
C.bvFTDと一致する画像化結果[以下のうちの1つ(C.1~C.2)が存在する必要がある]:
C.1.MRIにおける前頭及び/又は前側頭の萎縮
C.2.PETの前頭及び/又は前側頭の代謝低下
●Gorno-Tempini(2011)基準による原発性進行性失語症のバリアントMesulam(2001)による基準に基づくPPAの診断
1.最も顕著な臨床的特徴は、言語の困難である
2.これらの欠陥は、日常生活活動の障害の主な原因である。
3.失語症は、症状の発症時及び疾患の初期段階で最も顕著な欠陥であるべきである
PPA診断が確立されたら、PPAバリアントを分類するために以下を使用すべきである:
A.非流動性型PPA[nfvPPA]
-次の2つのコア機能のうち、少なくとも1つが存在する必要がある:
1.言語産生におけるアグラマティズム
2.一貫性のないスピーチエラー及び歪みを伴う努力的で停止するスピーチ(スピーチのアプラクシア)
-以下の3つの他の機能のうち少なくとも2つが存在する必要がある:
1.構文的に複雑な文章の理解の障害
2.割愛単一語の理解
3.割愛物体の知識
-画像化では、以下の結果の1つ以上を表示する必要がある。
a.MRI上の優勢な左後部前頭島萎縮又は
b.PET上の優勢な左後部前頭島代謝低下
B.意味型PPA[svPPA]
-以下のコア機能の両方が存在する必要がある:
1.対立の命名の障害
2.単語理解の障害
-以下の他の診断機能のうち少なくとも3つが存在する必要がある:
1.障害のある物体の知識、特に低頻度又は低慣れ度の項目
2.表面失読症又は書字障害
3.割愛された繰り返し
4.スピーチ制作(文法及び運動スピーチ)
-画像化では、以下の結果の1つ以上を表示する必要がある。
a.MRI上の優勢な前側頭葉萎縮
b.PETにおける優勢な前側頭代謝低下
C.意味型[lPPA])
-以下のコア機能の両方が存在する必要がある:
1.自発的な発話と命名における単語検索の障害
2.文章やフレーズの繰り返しが損なわれている
-以下の他の機能のうち少なくとも3つが存在する必要がある:
1.自発的なスピーチ及び命名におけるスピーチ(音声学的)エラー
2.単語の理解及びオブジェクトの知識を割愛
3.割愛された運動スピーチ
4.率直な非文法主義の欠如
画像には、以下の結果のうちの少なくとも1つが表示されている必要がある:
a.MRIでの優勢な左後周囲萎縮又は頭頂萎縮
b.PET上の優勢な左後周囲又は頭頂部の代謝低下
4.bvFTD又はppaFTD(基準#2に定義)のいずれかを有する対象で、進行性核上性麻痺症候群(PSP)、皮質基底症候群(CBS)、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の併発症状を有する対象が含まれる(運動症状のみの対象は登録資格がない)。
5.少なくとも毎週、個人的に話をしたり、対象を見たりする信頼できる情報提供者を雇う
6.CDRプラスNACC FTLDの全体的スコア0.5又は1.0
7.低プログラニュリンレベル:歴史的に低いCSFプログラニュリンレベルが確認されていない対象を、血漿プログラニュリンレベルについてスクリーニングする。血漿プログラニュリンレベルが低い場合、対象を登録してもよい。
8.NfLの上昇:歴史的に高いNfL CSFレベルが確認されていない対象を、血漿NfLレベルについてスクリーニングする。血漿中NfLレベルが上昇している場合、対象を登録してもよい。
【0340】
除外基準
1.アルツハイマー病のバイオマーカー証拠。アルツハイマー病のバイオマーカーの証拠を有することが以前に同定されていない、又は過去12ヶ月以内にアルツハイマー病のバイオマーカーについて試験されていない対象を、血漿pタウ181のレベルについてスクリーニングする。血漿pタウ181がAD病理と一致する場合、対象は除外される。
2.ローゼン修飾ハチンスキー虚血スケールスコア>7
3.MRIのFazekasスコア>1
4.症候性参加者の症状を合理的に説明できる構造的脳病変(例えば、腫瘍、皮質梗塞)の既知の存在
5.PSEN1、PSEN2又はAPPにおけるアルツハイマー病を引き起こす変異の既知の存在。
6.コルサコフ脳症の既往歴、重度のアルコール依存症(認知症の発症から5年以内)、頻繁なアルコール又は他の物質中毒。
7.B12欠乏症の既往歴又は検査室での検査を通じた証拠は、フォローアップ検査(ホモシステイン及びメチルマロン酸)がその値が生理学的に有意でないことを示す場合を除き、除外される。B12補充で治療された対象は、疾患/治療の安定性及びコンプライアンスを確保するために、治験責任医師による診断及び治療歴記録の審査後、治験依頼者の医療モニターによる書面による同意とともに登録され得る。
8.甲状腺機能低下症(TSH>正常の150%)の既往歴又は検査による証拠
9.腎不全(クレアチニン>2)
10.肝不全(ALT又はAST>正常の2倍)
11.酸素補給を必要とする呼吸不全、
12.大きな合流性白質病変
13.心血管疾患の悪化などの重大な全身性医学的疾患
14.完全な同意が提供できない、又は同意を提供できる適切な連絡先を有する法的権限のある介護者がいない。
15.MRI、ICM宗達、又はLPへの禁忌(例えば、局所感染、血小板減少症、凝固障害、頭蓋内圧の上昇(占拠性病変による[ICP])。
16.AD&FDMDBにおける「病原性ではない」、「良性バリアントである可能性が高い」、又は「良性バリアント」としてのGRN変異の分類。
17.免疫不全患者。
18.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はC型肝炎の試験結果が陽性の患者であること。
19.GRN変異に起因しない他の悪性腫瘍又は慢性CNS障害。
20.治験責任医師の意見では、免疫抑制薬又は全身性コルチコステロイドなど、患者にリスクをもたらす可能性のある薬物。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、スクリーニング前の30日間安定した用量で使用され、試験期間中同じ用量で維持されることに同意がある場合、使用が許容される。
21.悪性腫瘍(限局性皮膚癌を除く)、又は遺伝性癌症候群の既往歴。以前に悪性腫瘍を成功裏に治療し、再発を除外するための十分なフォローアップ(腫瘍学者の意見に基づく)を有する対象は、治験委託者又は被指名人による議論及び承認の後に含めることができる。
22.治験責任医師の見解では、認知症の他の原因、神経梅毒、水頭症、脳卒中、小血管虚血性疾患、制御されていない甲状腺機能不全、又はビタミン欠乏症を含む、GRN変異とは無関係の認知障害を引き起こす可能性のある任意の併発症
23.妊娠可能な女性の場合、スクリーニング来院時の血清妊娠検査で陽性尿が確認された場合、治験薬投与前の1日目の血清の結果で陽性尿が確認された場合、又は治験中に追加の妊娠検査を行う意思がない場合。
24.男性及び妊娠可能な女性の場合、医学的に許容される二重バリア避妊法(殺精子剤とともにコンドーム/ダイアフラムの使用など)を使用する意思がない、又はスクリーニング日からベクター投与後52週間まで禁欲に従事する意思がない。
25.治験責任医師の見解では、対象を過度のリスクにさらす可能性があるか、治験薬の評価を妨害し得るか、又は対象の安全性若しくは研究結果の解釈を妨害し得る、任意の状態(例えば、任意の病歴、任意の現在の疾患の証拠、身体検査における任意の所見、又は任意の検査異常)を有する。
26.登録の30日以内に入院が必要な任意の急性の病気
【0341】
禁止事項及び制限事項
潜在的な対象は、参加資格を得るために、研究の進行中に以下の禁止事項及び制限事項を順守する意思があり、順守することができなければならない:
●研究の完了(すなわち、最終フォローアップ来院)後、少なくとも90日間は献血を避ける。
●併用薬に関連する禁止又は制限について。
●アルコール含有製品は、治験参加施設への来院予定時刻の24時間前からは使用できない。
【0342】
投約量及び投与
投薬量
大槽内注入
CNSを治療するための静脈内(IV)全身AAV投与の限界を回避するために、本研究では、大槽への髄腔内(IT)ベクター送達を使用する。ベクター分散のためのビヒク
ルとしてのCSFを使用して、IT投与は、単一の低侵襲手順でCNS全体にわたって導入遺伝子送達を達成する可能性を有する。動物研究は、血液脳関門を通過する必要性を排除することによって、IT送達は、IVアプローチのものよりもはるかに低いベクター用量で、実質的により効率的なCNS遺伝子導入をもたらすことを実証している。腰部穿刺(LP)及び大槽内(ICM)を含む、CSFアクセスのための様々な経路が存在する。研究は、LPを介したCSFへのAAVベクターの送達は、大槽のレベルでのベクターの注入と比較して、脳及び脊髄の細胞を形質導入する際の効率が少なくとも10倍低いことが見出されたことを示している。
【0343】
研究前及び併用薬
スクリーニング開始の30日前までに投与された全ての研究前療法は、スクリーニング時に記録する必要がある。
【0344】
全ての併用療法は、最初のICFへの署名から開始して、研究終了来院(フォローアップ来院)まで、研究全体を通して記録される必要がある。具体的には、治験薬とは異なる治療(ワクチン、ビタミン、ハーブサプリメントを含む処方薬又は市販薬、電気神経刺激、鍼治療、特別な食事、運動療法などの非薬理療法)は、対象のソースレコードに記録し、eCRFに入力する必要がある。
【0345】
併用療法は、新規又は悪化する有害事象と併せて、事象が解消するまで、この時間を超えて記録する必要がある。対象は、新しい薬剤又はサプリメントを開始する前、及び現在の併用薬剤又はサプリメントの投与量を変更する前に、治験責任医師又は現場の適切な治験担当者に相談するよう指示されている。
【0346】
AChE阻害剤、メマンチン、ベンゾジアゼピン、及び抗うつ薬などの特別な関心のある特定の併用薬物の使用に関する情報は、用量及び投与経路、投与日、及び使用適応症を含む、eCRFに別々に採取される。
【0347】
治験依頼者は、禁止された治療法が投与された場合には、事前に(又はその後できるだけ早く)通知されなければならない。
【0348】
ADに関連する症状の進行は、治験責任医師の意見では加速すると考えられる場合を除き、AEとして記録されるべきではない。しかしながら、いずれの対症療法も、研究終了時の来院(フォローアップ来院)までは文書化される。
【0349】
有効な既存の療法の修正は、対象を研究に登録するという明示的な目的のために行われるべきではない。
【0350】
高齢者集団で頻繁に発生する可能性のある安定した医学的状態の治療は、対象が試験薬の投与開始前に少なくとも6週間安定した薬剤を服用している場合に許可される。対象は、可能であれば、研究期間中、安定した薬物療法を継続すべきである。医薬品の変更又は追加は、臨床的に適応がある場合にのみ許可され、eCRFの併用医薬品セクションに文書化する必要がある。
【0351】
認知障害の治療を目的とした認知エンハンサー(例えば、AChE阻害剤)又は薬物による治療は、研究への登録時に除外される。研究中に認知機能低下を経験した対象は、承認されたAD療法を受けることが許可されているが、認知能力に影響を与えると予想されるこれらの新しい療法又は治療適応(例えば、AChE阻害剤又はメマンチン)は、医学的必要性に基づく治験依頼者の明示的な許可なしに許可されていない。認知に影響を与えると予想される治療の用量を開始、停止、又は変更する前に、治験依頼者の医療モニター
に連絡して、対象が研究を継続すべきかどうか、及び臨床的アウトカム測定を実施すべきかどうかを判断する必要がある。
【0352】
研究中、ベンゾジアゼピンの継続的(毎日)使用は許可されていないが、短時間作用型ベンゾジアゼピンの時折の摂取は許可されている。対象がベンゾジアゼピンによる断続的な治療を必要とする場合、ベンゾジアゼピンの最後の用量からの間隔及びその後の認知評価は、その化合物の少なくとも4半減期又は24時間のいずれか長い方でなければならない。任意の来院時に、又は任意の短期使用のために、研究処置(例えば、MRI、PETスキャン、腰部穿刺)のために鎮静剤が投与される場合、全ての認知評価は、鎮静剤の投与後、少なくとも24時間、又は4半減期のいずれか長い方の前に投与され、完了されなければならない。
【0353】
中枢神経系(CNS)の機能に影響を及ぼす他の併用薬は、投与量が研究全体を通して変わらず維持することを意図している場合に投与され得る。これらの化合物の用量は、無作為化の6週間前から一定のままであるべきである。認知評価への影響を避けるために、以下の事項が適用される。ただし、医療上の必要性が文書化されている場合を除き、治験依頼者の医療モニターと議論されている。
●無作為化の前に少なくとも6週間、CNS機能に影響を及ぼす薬物の安定用量を受けた対象は、研究中にこの薬物の投与を停止すべきではなく、この薬物の用量を変更すべきではない。
●対象は、研究期間中にCNS機能に影響を与える薬物を追加してはならない。
【0354】
治験中にCNS機能に影響を及ぼす治療の予期せぬ開始、停止、又は安定用量への変更があった場合、治験依頼者の医療モニターに連絡して、対象が治験を継続すべきかどうか、及び臨床転帰測定を実施すべきかどうかを判断する必要がある。
【0355】
CSF試料採取に関しては、本節で別途指定されていない限り、併用療法に関連する局所部位の指示に従う。患者に処方される可能性のある精神作用薬の併用について話し合う。
【0356】
研究手順
実施された評価
以下のセクションで特定された研究手順は、以下の表に記載されているものと同様に、指示された試験来院時の全ての対象に必要である。
【0357】
書面によるインフォームドコンセント
患者/介護者は、スクリーニング評価を含む任意の研究関連手順の前に、IRB/IEC承認のインフォームド・コンセント・フォーム(ICF)に署名する必要がある。
【0358】
既往歴及び身体検査
対象の人口統計学的データ、過去の既往歴、過去及び併用薬、身長及び体重は、治験責任医師によって採取及び記録される。完全な身体検査及び完全な神経学的検査(強度、感覚、調整、及び反射試験を含む)は、ベースライン来院時に医師によって実施される。有害事象、又は薬物療法を含む既往歴の変更について議論される。
【0359】
血漿及び血清バイオマーカー
同意後、血漿、血清、DNA、及びRNAのために血液を採取する。標準安全性ラボは、現場研究所で、又は現場と契約した地方研究所で実施され、現場スタッフが研究所の値をeCRFに入力する。中央研究所で処理するための試料は、現地で保管され、研究運用マニュアルに記載されているように、現場によってドライアイスでバッチ出荷される。採
血は、各臨床試験来院時に経験豊富な研究スタッフによって標準的な手順を使用して実施される。採血には断食は必要ない。対象が全身麻酔を受けている場合、痛み及び不快感を軽減するために、その間に採血を行ってもよい。
【0360】
神経伝導試験(NCS)
神経伝導試験(NCS)には、研究マニュアルで指定された標準的な表面記録技術を使用した、2つの感覚神経(腕の1つ及び脚の1つ)の遠位セグメントにおける神経伝導速度及び振幅の測定が含まれる。NCSは、ベースライン及び事前に指定された時点で評価される。各時点で、変動を最小限に抑えるために、繰り返しの尺度が用いられる。感覚神経伝導速度は、毎秒メートルで測定され、応答の開始時に記録される。感覚神経振幅は、ベースラインからピークまでのマイクロボルトで測定される。全てのNCSは、研究全体を通して、個々の対象について、体の同じ側で実施され、皮膚の温度は慎重に記録され、維持される。臨床現場は、集中型中核研究所の専門家によってNCSで訓練され、認定されており、中核研究所及び治験依頼者による継続的な審査を介してNCSデータの品質管理が保証される。
【0361】
心電図(ECG)
ECGは、心臓の電気的活動を記録し、異常を検出するために、対象の胸、腕、及び脚に取り付けられた電極を使用した試験である。バイタルサインが測定される来院時では、まず、ECGを実施する必要がある。
【0362】
脳の磁気共鳴画像法(MRI)
MRIは、以下の表に列挙されているものと同様に、対象の同意を得て、指示された試験来院時に対象に対して実施される。
【0363】
T1加重MRI画像は、疾患進行及び安全性モニタリングのためのガドリニウム対照の両方を評価するために得られる。
【0364】
腰部穿刺及びCSFバイオマーカー
CSFは、以下の表に列挙されているものと同様に、対象の同意後に、指示された試験来院時に、全ての対象について採取される。この処置は、腰椎穿刺を伴う。既往歴の最初の議論中に、対象が現在抗血小板薬を服用しているかどうかが決定される。対象が抗血小板薬を服用している場合、その来院のために腰椎穿刺は実施されない。
【0365】
腰部穿刺は、現場スタッフの資格のあるメンバーによって、標準的な病院の手順に従って実施される。腰部穿刺の前に、全ての適切な検査前処置を実施する。腰椎穿刺及びCSF採取は、全身麻酔下で行われ得る。
【0366】
標準的なCSF化学検査及び細胞診検査は、現場研究所で、又は現場と契約した地方研究所で実施され、現場スタッフが研究所の値をeCRFに入力する。中央研究所で処理するための試料は、現地で保管され、FTD特異的バイオマーカー試験(PGRNタンパク質、ベクターDNA、ベクター中和抗体)及び将来の研究(同意が得られた場合)のために、現場スタッフによってドライアイス上でバッチ出荷される。
【0367】
全ての治験固有の検体採取、処理、及び保管手順は、治験運営マニュアルで治験実施施設に提供されている。CSFは、示された試験来院時に対象について採取される。これらの来院の各々で、対象が現在血液シンナーを服用しているかどうかが判定される。対象が抗血小板薬を服用している場合、その来院の場合の腰部穿刺は実施されない。
【0368】
Total Neuropathy Score-Nurse
Total Neuropathy Score-Nurseには、治療が発生した感覚、運動、及び自律神経の症状について対象者に標的を絞った質問、並びに定量的感覚検査(振動及びピン)が含まれる。振動試験はRydel-Seiffer C64 Graduated Tuning Forkを使用して実施し、ピン試験はNeuroPenを使用して実施する。臨床現場でTNSnを実行する個人は、医学の背景及び患者ケアの経験を持っている必要がある(例えば、看護師、医師のアシスタント、医師-非神経科医、経験豊富な臨床技術者)。彼らは、患者に対処し、臨床データを採取することに快適でなければならない。TNSnを実行する全てのサイト担当者は、NeuroPen及びRydel-Seiffer C64 Graduated Tuning Forkの両方を使用して、治験依頼者が開発したトレーニングモジュール及びトレーニングの文書化を完了する必要がある。
【0369】
対象の離脱及び早期終了
対象は、治療に影響を及ぼすことなく、いつでも研究を中止することができる。彼らはまた、遵守研究手順又は来院スケジュールの欠如のために、治験責任医師の裁量で試験を中止される場合がある。治験責任医師はまた、治験計画に違反した対象を、安全性に関連する理由、又は管理上の理由で対象を保護するために取り下げることができる。該当する場合、各対象が研究を完了したかどうか、及び早期中止/終了の理由がeCRFに文書化されている。継続的な参加を妨げる任意の治験薬による治療を開始したために早期に終了した対象を含め、早期に中止した対象は、全ての研究終了手順が実施される最終的な研究終了臨床来院(来院720日目)に出席するためにあらゆる努力を払う必要がある。早期終了の理由が死亡である場合、これはeCRFに記録され、採取され、対象の情報源に保管される必要がある。
【0370】
研究を中止した、又は早期に終了した対象から採取されたデータは、中止又は終了の時点まで、分析に使用され続ける。介護者は、早期終了後に中央ラボ又はバイオバンクに出荷されたラボ試料の更なるテストの同意を撤回することができる。ただし、既に識別されていない試料/試料データは、データセットから除外することはできない。
【表11】
【表12】

【表13】
【0371】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報は、
数値識別子<223>の下のフリーテキストを含む配列に関して提供される。
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【0372】
本明細書に引用される全ての文書は、参照により本明細書に援用される。「21-9658PCT_ST25.txt」と名づけられた本明細書とともに提出された配列表、並びにその中の配列及びテキストは、参照により援用される。2019年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/809,329号、2019年10月21日に出願された米国仮特許出願第62/923,812号、2020年2月2日に出願された米国仮特許出願第62/969,108号、2020年8月26日に出願された米国仮特許出願第63/070,639号、及び2020年2月21日に出願された国際特許出願第PCT/US20/19149号が参照により本明細書に援用される。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されよう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図24
図25-1】
図25-2】
図25-3】
図26A
図26B
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【配列表】
2023540054000001.app
【国際調査報告】