(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】高インピーダンスでコンパクトなニューラルセンサフロントエンド
(51)【国際特許分類】
H03F 3/70 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
H03F3/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513709
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2021074101
(87)【国際公開番号】W WO2022049108
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ザマニ,ミラド
(72)【発明者】
【氏名】ラシディ,アミン
(72)【発明者】
【氏名】モラディ,ファルシャド
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA25
5J500AC92
5J500AH10
5J500AH25
5J500AH38
5J500AK56
(57)【要約】
本発明は、例えば、神経活動センサからの電気信号を増幅するために、関連センサからの電気信号を増幅するように構成されたフロントエンドデバイスを提供する。フロントエンドデバイスは、その入力端子と出力端子(Vin、Vout)との間に接続されたアンプ回路を有し、アンプ回路は容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、CCCは、チョッパ周波数(fch)で動作するように構成された第一利得素子(-Gm)ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチ(CH1、CH2、CH3)を含む。さらに、アンプ回路は、A)CCCの第一チョッパスイッチ(CH1)と並列して入力端子(Vin)に接続されたインピーダンスブースト補助経路であって、プリチャージバッファ(1)を有する、インピーダンスブースト補助経路、及びB)CCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子(b)を含む。このようなフロントエンドデバイスは高い入力インピーダンスを有し、入力インピーダンスは利得と無相関である。これは、ブレインダストなどの埋め込み型マイクロデバイスに非常に適している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連センサからの電気信号を増幅するように構成されたフロントエンドデバイスであって、
前記センサに電気接続されて電気信号を前記センサから受信するように構成された入力端子(Vin)と、
増幅された電気信号を出力するように構成された出力端子(Vout)と、
前記入力端子と前記出力端子(Vin、Vout)との間に接続されたアンプ回路であって、
前記アンプ回路は、チョッパ周波数(fch)で動作するように構成された第一利得素子(-Gm)ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチ(CH1、CH2、CH3)を有する容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、
前記アンプ回路は、
前記CCCの前記第一チョッパスイッチ(CH1)と並列して前記入力端子(Vin)に接続されたインピーダンスブースト補助経路であって、プリチャージバッファ(1)を有する前記インピーダンスブースト補助経路、及び
前記CCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子(b)、
をさらに含む、
前記アンプ回路と、
を含む、前記フロントエンドデバイス。
【請求項2】
前記インピーダンスブースト補助経路は、前記プリチャージバッファ(1)とチョッパスイッチ(CH4)との直列接続を含む、請求項1に記載のフロントエンドデバイス。
【請求項3】
前記プリチャージバッファ(1)の入力は前記入力端子(Vin)に直接接続され、前記プリチャージバッファ(1)の出力は前記CCCの入力コンデンサ(C1)に接続される、請求項2に記載のフロントエンドデバイス。
【請求項4】
前記インピーダンスブースト補助経路の前記チョッパスイッチ(CH4)は、前記CCCの前記第一チョッパスイッチ、前記第二チョッパスイッチ及び前記第三チョッパスイッチ(CH1、CH2、CH3)と同じチョッパ周波数(fch)で動作する、請求項2または3に記載のフロントエンドデバイス。
【請求項5】
前記CCCの前記第一チョッパスイッチ(CH1)は、前記入力端子(Vin)と前記入力コンデンサ(C1)の第一端子との間に接続され、
前記入力コンデンサ(C1)の第二端子は、前記第一利得素子(-Gm)と前記第二チョッパスイッチ(CH2)の第一端子との直列接続に接続され、前記第二チョッパスイッチ(CH2)の第二端子は前記出力端子(Vout)に接続される、先行請求項のいずれかに記載のフロントエンドデバイス。
【請求項6】
前記入力コンデンサ(C1)の前記第二端子は、フィードバックコンデンサ(C2)、前記第三チョッパスイッチ(CH3)及び前記第二利得素子(b)の直列接続を含むフィードバック経路に接続される、請求項5に記載のフロントエンドデバイス。
【請求項7】
前記第二利得素子(b)の入力端子は、前記出力端子(Vout)に接続される、請求項6に記載のフロントエンドデバイス。
【請求項8】
前記第二利得素子(b)の出力端子は、前記第三チョッパスイッチ(CH3)に接続される、請求項6または7に記載のフロントエンドデバイス。
【請求項9】
前記第二利得素子(b)の利得及び前記入力コンデンサ(C1)の容量値は、前記フロントエンドデバイスの標的電圧利得を提供するように選択される、先行請求項のいずれかに記載のフロントエンドデバイス。
【請求項10】
前記第二利得素子は、1未満の利得、例えば0.99未満の利得、例えば0.9未満の利得、例えば0.1~0.9の利得、例えば0.2~0.8の利得を有する、先行請求項のいずれかに記載のフロントエンドデバイス。
【請求項11】
補助経路プリチャージ及び利得変更回路を含む、先行請求項のいずれかに記載のフロントエンドデバイス。
【請求項12】
0.5mm
2未満、例えば0.2mm
2未満、例えば0.1mm
2未満の面積を占めるCMOS技術で実装される、先行請求項のいずれかに記載のフロントエンドデバイス。
【請求項13】
少なくとも1GΩ、例えば少なくとも2GΩ、例えば少なくとも5GΩのDC入力インピーダンスを有する、先行請求項のいずれかに記載のフロントエンドデバイス。
【請求項14】
請求項1~13に記載のフロントエンドデバイス、及び
生体組織内への埋め込み用に構成されたニューラルセンサであって、神経電気信号を感知するように構成された第一部分と、前記フロントエンドデバイスの前記入力端子(Vin)に接続するように構成された第二部分とを含む、前記ニューラルセンサ、
を含む、ニューラルセンサシステム。
【請求項15】
前記フロントエンドデバイスの前記出力端子(Vout)に接続されたニューラル記録ユニットを含み、
前記ニューラル記録ユニットは、前記フロントエンドデバイスの前記出力端子(Vout)で発生した電気信号の時系列を記録するように構成される、請求項14に記載のニューラルセンサシステム。
【請求項16】
生体組織内への埋め込み用に構成されたマイクロデバイスであって、
請求項14または15に記載のニューラルセンサシステム、及び
前記フロントエンドデバイスの前記出力端子(Vout)での電気信号に応答して生成された神経活動データを含む無線信号を伝送するように構成された無線伝送器、
を含む、前記マイクロデバイス。
【請求項17】
前記フロントエンドデバイスの前記出力端子(Vout)で前記電気信号に応答してデータ処理アルゴリズムを実行し、それに応じて前記神経活動データを生成するように構成されたプロセッサを含む、請求項16に記載のマイクロデバイス。
【請求項18】
1mm
3未満、例えば0.5mm
3未満、例えば0.2mm
3未満の総体積を有する、請求項16または17に記載のマイクロデバイス。
【請求項19】
生体組織内の神経活動を感知する方法であって、
生体組織内に埋め込まれたニューラルセンサから電気信号を受信する(R_E)ことと、
前記電気信号をアンプ回路に印加する(A_AMP)ことであって、前記アンプ回路は容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、前記CCCはチョッパ周波数(fch)で動作するように構成された第一利得素子(-Gm)ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチ(CH1、CH2、CH3)を含み、前記アンプ回路は前記CCCの前記第一チョッパスイッチ(CH1)と並列して前記電気信号を受信するように接続されたインピーダンスブースト補助経路をさらに含み、前記インピーダンスブースト補助経路はプリチャージバッファ(1)を含み、前記アンプ回路は前記CCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子(b)をさらに含む、前記印加することと、
前記アンプ回路から出力電気信号を受信する(R_O)ことと、
前記出力電気信号に信号処理アルゴリズムを適用する(A_SP)ことと、
前記信号処理アルゴリズムに応答して出力を生成する(G_O)ことと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学的用途専用の計装アンプの分野に関する。より具体的には、本発明は、脳などの生体組織への埋め込み用のマイクロデバイス、いわゆるブレインダストなどへの統合に適したニューラルセンサ用の高インピーダンスのフロントエンドデバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
生体組織への埋め込みに適したマイクロデバイスは、通常、1つ以上のセンサ及び/または1つ以上のアクチュエータで電力を供給され、通常、それらのようなマイクロデバイスは外部デバイスとのデータ通信を提供する。しかし、これらの機能はすべて、マイクロデバイスの非常にコンパクトな寸法、例えば、脳組織への埋め込み用のいわゆるダストに詰め込まれる必要がある。神経細胞記録、神経信号感知(LFP)用のセンサを備えたマイクロデバイスの場合、例えば、ブレインコンピュータインタフェースを実装するためのブレインダストの場合、それらのような信号を外部受信器に通信する効率的な方法が必要であり、リアルタイムまたはほぼリアルタイムのLFP信号を通信するには、数十個または数百個の埋め込み型マイクロデバイスが必要である。
【0003】
それらのような生物医学的用途(神経細胞記録など)の計装アンプ回路では、電極-組織界面での電気化学的効果により、記録電極に大きいdcオフセットが発生する。計装アンプの入力インピーダンスは、この大きいdcオフセットによる組織界面でのDC電流を最小にし、電極不整合の影響を軽減するのに十分な大きさである必要がある。
【0004】
これは、非常に高い電気インピーダンスがマイクロデバイスへの統合に必要な超コンパクトな寸法と組み合わされているため、そしてさらにこれが、埋め込み型マイクロデバイスで利用可能な電力が限られているので消費電力を少なくするという要求と組み合わされているため、ブレインダストなどの既存のマイクロデバイスに関する問題である。
【発明の概要】
【0005】
上記に続いて、本発明の目的は、生物医学的用途を可能にするのに十分に高い入力インピーダンスを有し、好ましくは、ブレインダストなどの埋め込み型マイクロデバイスへの統合に適した小型部品を用いた実装に適した計装アンプ回路を提供することであるとみなされることができる。
【0006】
第一態様では、本発明は、関連センサからの電気信号を増幅するように構成されたフロントエンドデバイスを提供し、
このフロントエンドデバイスは、
センサに電気接続されて電気信号をセンサから受信するように構成された入力端子と、
増幅された電気信号を出力するように構成された出力端子と、
入力端子と出力端子との間に接続されたアンプ回路であって、
アンプ回路は、チョッパ周波数で動作するように第一利得素子ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチを有する容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、
アンプ回路は、
CCCの第一チョッパスイッチと並列して入力端子に接続されたインピーダンスブースト補助経路であって、プリチャージバッファを有するインピーダンスブースト補助経路、及び
CCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子、
をさらに含む、
アンプ回路と、
を含む。
【0007】
このようなフロントエンドデバイスは、従来の計装アンプ設計に比べて高いインピーダンスを提供するため、有利である。インピーダンスブースト用の補助経路と、利得素子を備えたフィードバック経路により、フロントエンドの所望の利得とその入力インピーダンスの調整が互いに無相関であることが得られる。入力コンデンサを減らすと、入力インピーダンスが増加し、フィードバック経路を追加すると、フィードバックコンデンサ(実装に使用される技術によってその最小値が制限される)を減らすことなく利得を一定に保つことができる。さらに、提案された構造は、入力コンデンサを減らすことによって、バッファが充電する入力コンデンサが少なくなるため、バッファの時定数制約を(補助経路では)緩和する。さらに、従来の計装アンプでは入力コンデンサが総チップ面積の大部分を占めているため、提案された構造の面積が少なくなることは貴重な特徴である。
【0008】
したがって、フロントエンドデバイスは、例えばブレインダストなどのマイクロデバイスに統合されるような、神経感知電極のフロントエンドとして非常に適している。
【0009】
以下に、第一態様の好ましい特徴及び実施形態を説明する。
【0010】
好ましくは、インピーダンスブースト補助経路は、プリチャージバッファとチョッパスイッチとの直列接続を含む。特に、プリチャージバッファの入力は入力端子に直接接続され、プリチャージバッファの出力はCCCの入力コンデンサに接続される。特に、インピーダンスブースト補助経路のチョッパスイッチは、CCCの第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチと同じチョッパ周波数で動作する。
【0011】
好ましくは、CCCの第一チョッパスイッチは、入力端子と入力コンデンサの第一端子との間に接続され、入力コンデンサの第二端子は第一利得素子と第二チョッパスイッチの第一端子との直列接続に接続され、第二チョッパスイッチの第二端子は出力端子に接続される。特に、入力コンデンサの第二端子は、フィードバックコンデンサ、第三チョッパスイッチ及び第二利得素子の直列接続を含むフィードバック経路に接続され得る。特に、第二利得素子の入力端子は、出力端子に接続され得る。特に、第二利得素子の出力端子は、第三チョッパスイッチに接続され得る。
【0012】
好ましくは、第二利得素子の利得及び入力コンデンサの容量値は、フロントエンドデバイスの標的電圧利得を提供するように選択される。
【0013】
好ましくは、第二利得素子は、1未満の利得、例えば0.5~0.9の利得、例えば0.5未満の利得、例えば0.1~0.5の利得を有する。特に、第二利得素子は、0.99未満の利得、例えば0.9未満の利得、例えば0.1~0.9の利得、例えば0.2~0.8の利得を有してもよい。
【0014】
特に、フロントエンドデバイスは、補助経路のプリチャージ及び利得変更回路を含むことができる。
【0015】
特に、フロントエンドデバイスは、0.5mm2未満、例えば0.2mm2未満、例えば0.1mm2未満の面積を占めるCMOS技術で実装されることができる。
【0016】
好ましくは、フロントエンドデバイスは、少なくとも1GΩ、例えば少なくとも2GΩ、例えば少なくとも5GΩのDC入力インピーダンスを有するように実装される。
【0017】
マイクロデバイスへの統合のための好ましい実装では、フロントエンドデバイスは1つのシングルチップ上に実装される。
【0018】
第二態様では、本発明は、ニューラルセンサシステムを提供し、
このニューラルセンサシステムは、
第一態様によるフロントエンドデバイス、及び
生体組織内への埋め込み用に構成されたLFPセンサまたはシングルセルセンサなどのニューラルセンサであって、神経電気信号を感知するように構成された第一部分と、フロントエンドデバイスの入力端子に接続するように構成された第二部分とを含む、ニューラルセンサ、
を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、ニューラルセンサシステムは、フロントエンドデバイスの出力端子に接続されたニューラル記録ユニットを含み、ニューラル記録ユニットは、フロントエンドデバイスの出力端子で発生した電気信号の時系列を記録するように構成される。そのようなセンサ信号データの時系列の記録及び格納は、さらなるデータ処理、及び/または時間圧縮フォーマットでのセンサ信号データの伝送に、データ伝送容量がそのようにすることを可能にする場合に使用されることができる。
【0020】
第三態様では、本発明は、生体組織への埋め込みのために構成された、ブレインダストなどのマイクロデバイスを提供し、
このマイクロデバイスは、
第二態様によるニューラルセンサシステム、及び
フロントエンドデバイスの出力端子(Vout)での電気信号に応答して生成された神経活動データを有する無線信号を送信するように構成された無線送信器、例えば、超音波後方散乱などによって、神経活動データを有する超音波信号を外部受信器に送信するように構成された超音波送信器、
を含む。
【0021】
特に、マイクロデバイスは、フロントエンドデバイスの出力端子での電気信号に応答してデータ処理アルゴリズム、例えばそれに応じて事象に基づいた神経活動データを生成するように構成されたデータ処理アルゴリズムなどを実行し、それに応じて神経活動データを生成するように構成されたプロセッサを含むことができる。事象に基づいた神経活動データを導出するためにマイクロデバイスで処理能力が利用可能である場合、これは、マイクロデバイスから送信するために必要なデータの量を有意に減らすのに役立ち得る。これは、マイクロデバイスの消費電力を削減するのに役立つことにより、数十個または数百個のブレインダストを含むブレインダストシステムでは、すべてのブレインダストからのデータを処理するための総データ容量に対する要求が減少する。
【0022】
マイクロデバイスは、1mm3未満、例えば0.5mm3未満、例えば0.2mm3未満の総体積を有することができる。マイクロデバイスは、圧電超音波受電器と、青色及び赤色LEDと、寸法500×500×500μm、つまり0.125mm3の体積とで試験されている。
【0023】
本発明の有利な実施形態では、マイクロデバイスのサイズは小さく、埋め込み目的のために、マイクロデバイスが可能な限り小さいことが好ましい場合がある。好ましい実施形態では、マイクロデバイスの寸法は、1×1×1mm(高さ×長さ×幅)以内、例えば500×500×500μm以内、例えば400×400×400μm以内、例えば300×300×300μm以内、例えば200×200×200μm以内であり、いくつかの実施形態では、100×100×100μm以内であることが最も好ましいとみなされ得る。選択された実際の製造技術が許す場合には、マイクロデバイスが好ましくは100×100×100μmよりもさらに小さくてもよいことを理解されたい。
【0024】
好ましい実施形態では、マイクロデバイスは、2mm3未満、好ましくは1mm3未満、好ましくは0.7mm3未満、例えば0.5mm3未満の総体積を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、マイクロデバイスは、不均一な高さ、長さ及び幅を有する。特に、高さ、長さ、及び幅の寸法は、例えば200×150×100μm、または例えば150×150×100μm、または例えば0.5~1.5mm以内の高さ、0.5~1.0mmの長さ、及び0.3~0.7mmの幅を有するマイクロデバイスであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、信号受信システムは、超音波信号を超音波受信器に送信するように構成された超音波送信システムを含み、超音波送信器は、超音波信号を後方散乱した超音波信号として超音波検知システムに送信するように構成される。それらのような実施形態は、好ましくは、マイクロデバイス内の電子機器への超音波送電の組み合わせを利用し、同時に、外部信号受信システムへの通信として後方散乱した超音波信号の使用を可能にする。例えば、そのようなシステムは、外部超音波受信器から電力を回収し、電力を出力してマイクロデバイスの回路に電力を供給するための電源管理回路に接続された圧電結晶を含む。特に、そのような超音波受信器は、数MHz以上の範囲内の周波数を有する超音波信号を発生するように構成され得る。
【0027】
第四態様では、本発明は、生体組織内の神経活動を感知する方法を提供し、
この方法は、
生体組織内に埋め込まれたニューラルセンサから電気信号を受信することと、
電気信号をアンプ回路に印加することであって、アンプ回路は容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、CCCはチョッパ周波数で動作するように構成された第一利得素子ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチを含み、アンプ回路はCCCの第一チョッパスイッチと並列して電気信号を受信するように接続されたインピーダンスブースト補助経路をさらに含み、インピーダンスブースト補助経路はプリチャージバッファを含み、アンプ回路はCCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子をさらに含む、印加することと、
アンプ回路から出力電気信号を受信することと、
出力電気信号に信号処理アルゴリズムを適用することと、
信号処理アルゴリズムに応答して出力を生成することと、
を含む。
【0028】
第五態様では、本発明は、生きているヒトまたは動物の処置または治療のために、第一態様のフロントエンドデバイス、第二態様のニューラル感知システム、または第三態様のマイクロデバイスの使用を提供する。
【0029】
第一態様について述べられたものと同じ利点は、第二、第三及び第四態様にも当てはまる。本発明の個々の態様は、それぞれ他の態様のいずれかと組み合わされることができる。本発明のこれら及び他の態様は、記載された実施形態を参照した以下の説明から明らかになるであろう。
【0030】
ここで、本発明は、添付の図面に関してより詳細に説明される。図面は、本発明を実施する1つの方法を示しており、添付の特許請求の範囲内に入る他の可能な実施形態を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】フロントエンドの実施形態のブロック図を示す。
【
図4】ブレインダストなど、生体組織への埋め込みのためのマイクロデバイスの実施形態のブロック図を示す。
【
図6】実装されテストされた特異的なフロントエンドの実施形態を示す。
【
図7】A、Bは、
図6の実施形態の特異的な詳細を示す。
【
図8】
図6に示された実施形態の計測された入力インピーダンスを、従来の補助経路のインピーダンスブースト技術のものと比較したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、フロントエンドデバイスの実施形態の基本部分のブロック図を示す。フロントエンドデバイスは、LFPセンサLFP_Sに電気接続してセンサLFP_Sからの電気信号Sを受信するように構成された入力端子と、増幅された電気信号A_Sを出力するための出力端子とを備えたアンプ回路AMPを含む。LFPセンサLFP_Sは、例えば神経活動によって引き起こされる、脳組織などの生体組織内のLFP信号を感知するように構成された1つ以上の電極を含む。
【0033】
入力端子と出力端子との間に接続されたアンプ回路AMPは、チョッパ周波数で動作するように構成された利得素子及びチョッパスイッチを備えた容量結合チョッパ回路CC_CHを含む。アンプAMPは、チョッパ回路CC_CHの第一チョッパスイッチと並列して、入力端子(Vin)に接続されたプリチャージバッファを備えたインピーダンスブースト補助経路IB_APを含む。さらに、アンプAMPは、チョッパ回路CC_CHのフィードバック経路に接続される第二利得素子GE2を含む。
【0034】
これにより、高い電気入力インピーダンスを有するフロントエンドデバイスが提供され、入力インピーダンス及び利得は無相関である。同時に、アンプ回路AMPは、小さいコンポーネントで実装されることができるため、限られた体積しか占有しない。したがって、フロントエンドデバイスは、生体組織内に位置している電極に対して高い入力インピーダンスを必要とする、ブレインダストなどのマイクロデバイスへの統合に適している。
【0035】
図2aは、従来技術の容量結合チョッパ-安定器計装アンプ(CCIA)を示す。CCIAは、正確な利得定義(コンデンサの比率による)と、低周波数での高い入力インピーダンスとにより、ニューラル記録アンプで最も一般的に使用される回路である。CCIAは、チョッパ技術を利用して、低周波数範囲でのフリッカ雑音を低減させ、DCオフセットを除去する。CCIAの入力換算雑音が低いという特徴にもかかわらず、DCでの入力インピーダンスが低いという問題がある。基本的なCCIAの入力インピーダンスは、次の式で与えられる:
【数1】
式中、
【数2】
及びC
1はそれぞれチョッパ周波数及びコンデンサを表す。フリッカ雑音を除去するには、高いチョッパ周波数範囲が好ましいため、スイッチ-コンデンサの組み合わせの固有入力インピーダンスが非常に低くなる(数十kΩの範囲内)。基本的なCCIAの利得は、フィードフォワード入力コンデンサとフィードバックコンデンサとの比率である。入力コンデンサを減らすことにより、入力インピーダンスを大きくすることができる。ただし、技術によって定義される最小コンデンサは、フィードバックコンデンサを制限するため、入力コンデンサ(利得によって定義される)、つまり入力インピーダンスを制限する。もう1つの重要な問題は、入力分岐の整合に依存する同相信号除去比(CMRR)である。電極間の不整合は、利得が高い場合にフロントエンドを飽和させる可能性がある。不整合の問題を最小にするには、フロントエンドの入力インピーダンスを電極インピーダンスよりも一桁大きくする必要がある。
【0036】
図2bは代替の従来技術のCCIA回路を示しており、インピーダンスブーストアプローチは、入力電極から漏れ電流なしで、その供給電圧から入力コンデンサ電圧を充電するプリチャージバッファを利用する補助経路を使用している。アンプの利得と入力インピーダンスとは次のように定義される:
【数3】
式中、C
1、C
2、T、τ、及び
【数4】
は、それぞれ入力コンデンサ、フィードバックコンデンサ、補助経路チョッパのオンタイム持続時間、バッファ時定数、及びチョッパ周波数を表す。
【0037】
入力インピーダンスの上限は、最小入力コンデンサによって制限され、このコンデンサは、必要な利得によっても制限される。ニューラル記録フロントエンドの利得要件により、入力コンデンサは比較的大きいため、補助経路バッファの時定数は大きくなる。したがって、バッファは入力コンデンサを完全に充電することができないため、インピーダンスのブーストは補助経路の時定数、入力コンデンサのサイズ、及び利得によって制限される。これらの制限と技術によって定義された最小コンデンサとを考慮すると、基本的なCCIAと比較して、入力インピーダンスは25倍の改善しか見込めない。
【0038】
図3は、本発明によるフロントエンドデバイスの回路の実施形態を示す。提案された構造は、
図2aのようにインピーダンスブーストのための補助経路を備えたCCIAと同じであるが、bに対するC1の比が一定である場合、フィードバック経路を利用すると、利得調整及び入力インピーダンスは互いに無相関になる。提案された構造の利得及び入力インピーダンスが次のようになることを簡単に示すことができるものもある:
【数5】
式中、C
1、C
2、b、T、τ、及び
【数6】
は、それぞれ入力コンデンサ、フィードバックコンデンサ、追加のブロック利得、補助経路のオンタイム持続時間、バッファ時定数、及びチョッパ周波数を表す。入力コンデンサを減らすと、入力インピーダンスが増加し、フィードバック経路を追加すると、フィードバックコンデンサ(技術によってその最小値が制限される)を減らすことなく利得を一定に保つことができる。さらに、提案された構造は、入力コンデンサを減らすことによって、バッファが充電する入力コンデンサが少なくなるため、バッファの時定数制約を緩和する。さらに、従来のCCIAでは入力コンデンサが総チップ面積の大部分を占めているため、提案された構造の面積が少なくなることは有益な特徴である。
【0039】
図4は、ブレインダストなどの埋め込み型マイクロデバイスMDのブロック図を示す。埋め込み型マイクロデバイスMDは、LFPセンサLFP_Sの形態のニューラル感知システムと、前述のアンプ回路AMPとを含み、センサLFP_Sから電気出力Sを受信することに応じて、増幅された信号A_Sを発生するように構成される。マイクロデバイスMDは無線通信ユニットW_CMをさらに含む。この無線通信ユニットW_CMは、増幅された信号A_Sを受信し、センサLPF_Sによって感知された神経活動を示すデータを無線信号W_Sで送信し、外部受信器に受信させることができる。例えば、無線信号は、超音波信号及び/または電磁無線周波数信号の形態である。具体的には、マイクロデバイスは、外部超音波送信器から電力を回収するための圧電結晶を含むことができ、圧電結晶を利用して、超音波後方散乱信号として無線信号W_Sを送信し、外部超音波受信器に受信させる。
【0040】
図5は、生体組織における神経活動を感知する方法の一実施形態のステップを示す。最初に、生体組織に埋め込まれたニューラルセンサから電気信号を受信し(R_E)、次に、電気信号をアンプ回路に印加し(A_AMP)、アンプ回路は容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、CCCはチョッパ周波数で動作するように構成された第一利得素子ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチを含み、アンプ回路はCCCの第一チョッパスイッチと並列して電気信号を受信するように接続されたインピーダンスブースト補助経路をさらに含み、インピーダンスブースト補助経路はプリチャージバッファを含み、アンプ回路はCCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子をさらに含む。次いで、出力電気信号をアンプ回路から受信して(R_O)から、信号処理アルゴリズムを出力電気信号に適用し(A_SP)、信号処理アルゴリズムに応答して出力を生成する(G_O)。
【0041】
図6は、補助経路のプリチャージ及び利得変更技法を用いた特異的なフロントエンドの実施形態を示す。フロントエンドの実施形態は、0.051mm
2の面積を占有し、1V電源から引き出される2.1μWの消費電力を有する180nmのCMOS技術で実装された。6.7GΩのDC入力インピーダンスを得ることで、埋め込み型マルチチャネル記録システムの要件を満たす。同相信号除去比、-75dBが得られ、入力換算雑音は2.1μV
rmsである。フロントエンドの実施形態は、マウス脳切片からインビトロで記録された神経信号で試験された。
【0042】
図7Aは、チョッパ周波数が4kHzで、チョッパ信号fch_Auxとf_Auxとの間のT_auxの遅延が2.5μsである、
図6の実施形態の補助経路A_Pの特異的な実装を示す。
【0043】
図7Bは、
図6の実施形態の利得変更G_R部分の特異的な実装を示す。
【0044】
図8は、利得変更技法による
図6、7A、7Bの提案された実施形態の計測された入力インピーダンスを、利得変更しない従来の補助経路ブースト技法のものと比較したグラフを示す。図に見られるように、DCでは18倍の差があり、DCでは
図6、7A、7Bの実施形態は、6.7GΩの入力インピーダンスを得る。
【0045】
要約すると、本発明は、例えば神経活動センサからの電気信号を増幅するために、関連センサからの電気信号を増幅するように構成されたフロントエンドデバイスを提供する。フロントエンドデバイスは、その入力端子と出力端子(Vin、Vout)との間に接続されたアンプ回路を有し、アンプ回路は容量結合チョッパ回路(CCC)を含み、CCCは、チョッパ周波数(fch)で動作するように構成された第一利得素子(-Gm)ならびに第一チョッパスイッチ、第二チョッパスイッチ及び第三チョッパスイッチ(CH1、CH2、CH3)を含む。さらに、アンプ回路は、A)CCCの第一チョッパスイッチ(CH1)と並列して入力端子(Vin)に接続されたインピーダンスブースト補助経路であって、プリチャージバッファ(1)を有する、インピーダンスブースト補助経路、及びB)CCCのフィードバック経路に接続された第二利得素子(b)を含む。このようなフロントエンドデバイスは高い入力インピーダンスを有し、入力インピーダンスは利得と無相関である。これは、ブレインダストなどの埋め込み型マイクロデバイスに非常に適している。
【0046】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、提示された例に決して限定されると解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に照らして解釈されるべきである。特許請求の範囲の文脈において、「含むこと(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、他の可能な要素またはステップを除外するものではない。また、「a」または「an」などの参照の言及は、複数を除外するものと解釈されるべきではない。図面に示された要素に関する特許請求の範囲における参照記号の使用も、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。さらに、異なる請求項に記載された個々の特徴は可能であれば有利に組み合わされることができ、異なる請求項に記載されたこれらの特徴は、特徴の組み合わせが可能でなく有利でないことを除外するものではない。
【国際調査報告】