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特表2023-540056カリプラジン薬用塩及びその結晶形、製造方法及び応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】カリプラジン薬用塩及びその結晶形、製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 295/135 20060101AFI20230913BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C07D295/135 CSP
A61K31/495
A61P25/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513724
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2021114756
(87)【国際公開番号】W WO2022042643
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010870701.6
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010869671.7
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110324874.2
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110330670.X
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521504049
【氏名又は名称】上海雲晟研新生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】応述歓
(72)【発明者】
【氏名】陳志祥
(72)【発明者】
【氏名】張賢
(72)【発明者】
【氏名】朱涛
(72)【発明者】
【氏名】王▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉爽
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC50
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA27
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA18
(57)【要約】
カリプラジン薬用塩、その製造方法、それを含む医薬組成物及び応用を開示する。前記カリプラジン薬用塩は、カリプラジン遊離塩基と6個以上の炭素を有する有機酸から形成される塩であり、その溶解度と安定性は何れも良好であり、市場の見通しが良好である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリプラジン遊離塩基と6個以上の炭素を有する有機酸から形成される塩から選ばれ;
【化1】

好ましくは、前記6個以上の炭素を有する有機酸はC~C30の有機酸であり;
例えば、前記C~C30の有機酸は、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、グリセリル三酢酸、リグニン酸、パモ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸及びナフテン酸誘導体を含むが、これに限定されなく;
好ましくは、前記ナフテン酸誘導体はナフテン酸エステルを含むが、これに限定されないことを特徴とする、カリプラジン薬用塩。
【請求項2】
前記カリプラジン薬用塩は、結晶、多結晶又は非晶質の形態、又は溶媒との溶媒和物から選ばれ;
好ましくは、前記溶媒和物は、カリプラジン薬用塩の水和物、及びカリプラジン薬用塩と有機溶媒から形成される溶媒和物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカリプラジン薬用塩。
【請求項3】
前記薬用塩中のカリプラジンと前記6個以上の炭素を有する有機酸のモル比は(1:0.5)~(1:2)であることを特徴とする、請求項1に記載のカリプラジン薬用塩。
【請求項4】
前記「カリプラジン薬用塩と有機溶媒から形成される溶媒和物」における前記「有機溶媒」は、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のカリプラジン薬用塩。
【請求項5】
前記カリプラジン薬用塩は、以下のカリプラジンパモ酸塩結晶形A、F、D、B、C、E、G及びIから選ばれる:
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、21.0°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し、好ましくは2θ値が4.8°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し、より好ましくは2θ値が4.8°±0.2°、9.7°±0.2°、12.3°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し、好ましくは2θ値が4.9°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し、より好ましくは2θ値が4.9°±0.2°、12.8°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、20.4°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し、好ましくは2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し、より好ましくは2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、20.7°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が5.2°±0.2°、10.5°±0.2°、14.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.5°±0.2°、21.3°±0.2°、21.9°±0.2°、22.9°±0.2°、26.2°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.6°±0.2°、13.0°±0.2°、16.8°±0.2°、17.3°±0.2°、18.2°±0.2°、18.5°±0.2°、19.8°±0.2°、22.1°±0.2°、23.5°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が11.0°±0.2°、12.8°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、15.9°±0.2°、17.9°±0.2°、18.4°±0.2°、20.7°±0.2°、23.4°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.7°±0.2°、10.0°±0.2°、13.6°±0.2°、14.3°±0.2°、17.5°±0.2°、18.0°±0.2°、20.3°±0.2°、23.2°±0.2°、25.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が10.0°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、17.7°±0.2°、18.5°±0.2°、19.0°±0.2°、21.1°±0.2°、22.1°±0.2°、24.5°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のカリプラジン薬用塩。
【請求項6】
カリプラジン遊離塩基を前記6個以上の炭素を有する有機酸と反応させ、前記カリプラジン薬用塩を得るというステップを含む、請求項1~5の何れか1項に記載のカリプラジン薬用塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載のカリプラジン薬用塩を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項8】
精神疾患、双極性障害及び/又は急性躁病を治療及び/又は予防するための薬物の製造における、請求項1~5の何れか1項に記載のカリプラジン薬用塩の応用。
【請求項9】
前記薬物の剤形は、錠剤、カプセル、溶液製剤、懸濁剤、長時間作用型注射剤及び半固体製剤から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【請求項10】
前記懸濁剤は、水懸濁剤、油懸濁剤又は懸濁粉末であることを特徴とする、請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2020年8月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010870701.6である中国発明特許出願、2020年8月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010869671.7である中国発明特許出願、2021年3月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110324874.2である中国発明特許出願、及び2021年3月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110330670.Xである中国発明特許出願という先行出願の優先権を主張する。上記の先行出願は、その全体が引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明はカリプラジン薬用塩及びその結晶形、製造方法及び応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
カリプラジン(式I)は、新しいタイプの非定型抗精神病薬であり、ドーパミンD3、ドーパミンD2及び5-セロトニン2B受容体に拮抗作用がある。統合失調症及び双極I型障害の治療に使用できる。現在市販されているカリプラジン塩酸塩カプセルは経口製剤であり、血中薬物濃度を維持するために毎日投与する必要があるが、頻繁に投与するため、患者の服用コンプライアンスが悪いという問題がある。
【0004】
【化1】
【0005】
特許文献CN101679315Aは、一塩酸塩、二塩酸塩、モノ臭化水素酸、マレイン酸塩及びメシル酸塩を含む、カリプラジンの様々な塩を開示する。特許文献CN105218484Aは、カリプラジン酒石酸塩を開示し、且つ、カリプラジン酒石酸塩、カリプラジン塩酸塩、カリプラジンマレイン酸塩、カリプラジンベシル酸塩及びカリプラジンリン酸塩の溶解度を提供し、それらの溶解度は何れも3 mg/mLより大きい。特許文献WO2020056929Aは、カリプラジン塩酸塩の新しい結晶形を開示し、カリプラジン塩酸塩がpH6.5の緩衝液中で遊離塩基に急速に解離することを述べている。
【0006】
従来技術の欠陥を考慮して、溶解度が低く、長時間作用型投与に適しており、安定性が高く、臨床効果が良好であり、商品化に適したカリプラジン薬用塩及びその結晶形を見つけることは、当該分野において現在解決が急務とされている技術問題である。
【0007】
〔発明の概要〕
上記の技術問題を改善するために、本発明は、カリプラジン遊離塩基Iと6個以上の炭素を有する有機酸から形成される塩から選ばれる、カリプラジン薬用塩を提供する:
【0008】
【化2】
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記6個以上の炭素を有する有機酸は、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ヘプタデカン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸(メリシン酸)、グリセリル三酢酸、リグニン酸、パモ酸(パルミチン酸エステル)、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、パモ酸及びナフテン酸誘導体(ナフテン酸エステルを含むが、これに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記パルミチン酸エステルとは、パルミチン酸が、カルボキシル基とヒドロキシル基の両方を含む化合物(例えばパモ酸)の少なくとも1つのヒドロキシル基とエステル化した構造を指し、前記ナフテン酸エステルとは、ナフトエ酸がカルボキシル基とヒドロキシル基の両方を含む化合物(例えばパモ酸)の少なくとも1つのヒドロキシル基とエステル化した構造を指す。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記パモ酸(Pamoic acid)はエンボン酸とも呼ばれ、CAS登録番号は130-85-8である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記薬用塩中のカリプラジンと有機酸のモル比は、(1:0.5)~(1:2)であり得る。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン薬用塩は、カリプラジンモノパモ酸塩、カリプラジンヘミパモ酸塩、カリプラジン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、カリプラジンラウリン酸塩、カリプラジンパルミチン酸塩、カリプラジンセバシン酸塩、カリプラジンウンデカン酸塩又はカリプラジンヘプタン酸塩であり得る。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記パモ酸はPamoic acidであり、エンボン酸とも呼ばれ、CAS登録番号は130-85-8である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン薬用塩は、結晶、多結晶又は非晶質の形態であり得る。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記「多結晶」という用語は、同じ化合物の異なる結晶形態及び他の固体分子形態、例えば前記カリプラジン薬用塩の2つ以上の結晶形及び/又は非晶質形態を含む固体を指す。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン薬用塩は、溶媒との溶媒和物を含む。前記溶媒和物は、カリプラジン薬用塩の水和物、及びカリプラジン薬用塩と有機溶媒から形成される溶媒和物を含む。前記「カリプラジン薬用塩と有機溶媒から形成される溶媒和物」における前記「有機溶媒」は、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物から選ばれる溶媒を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明は、以下のステップを含む前記カリプラジン薬用塩の製造方法をさらに提供する:前記カリプラジン遊離塩基を前記6個以上の炭素を有する有機酸と反応させ(例えば中和反応)、前記カリプラジン薬用塩を得る。
【0019】
前記カリプラジン薬用塩の製造方法は、溶媒中又は無溶媒で行うことができる。
【0020】
前記カリプラジン薬用塩の製造方法では、前記6個以上の炭素を有する有機酸はC6~C30の有機酸であり得る。前記C6~C30の有機酸は、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ヘプタデカン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸(メリシン酸)、グリセリル三酢酸、リグニン酸、パモ酸(パルミチン酸エステル)、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸及びナフテン酸誘導体(ナフテン酸エステルを含むが、これに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン薬用塩は、カリプラジンパモ酸塩である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン薬用塩は、カリプラジン遊離塩基とパモ酸がモル比1:1~2:1で形成されるカリプラジンパモ酸塩であることを特徴とする、前記カリプラジン薬用塩。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩の製造方法は、以下の方法の何れか1つを採用する:
(1)カリプラジンとパモ酸を第1溶媒に溶解し、溶媒を除去するか又は第2溶媒を加え、カリプラジンパモ酸塩を得る;
前記第1溶媒は、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、アセトン、ジブチルケトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はそれらの混合物であり、好ましくはメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド又はそれらの混合物である;
前記第2溶媒は、イソプロパノール、メチル-t-ブチルエーテル、n-ヘプタン、トルエン、イソプロピルエーテル又はそれらの混合物であり、好ましくは水である;
(2)カリプラジンをリン酸水溶液に溶解して溶液Aを得、パモ酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解して溶液Bを得、溶液Aに溶液Bを加え、撹拌して反応させてカリプラジンパモ酸塩を得る;
前記リン酸水溶液の濃度は1 mg/mL~6 mg/mLである;
好ましくは、前記水酸化ナトリウム水溶液の濃度は1 mg/mL~8 mg/mLである。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、結晶、多結晶又は非晶質の形態である。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶は無水物、水和物又は溶媒和物である。前記溶媒和物は、カリプラジンパモ酸塩と、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルホキシドのうちの1つ又は複数から形成される溶媒和物を含むが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aである。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、21.0°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0028】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0029】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、9.7°±0.2°、12.3°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0030】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、8.2°±0.2°、9.7°±0.2°、11.6°±0.2°、12.3°±0.2°、13.1°±0.2°、14.7°±0.2°、15.1°±0.2°、16.6°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、20.7°±0.2°、21.0°±0.2°、21.6°±0.2°、22.1°±0.2°、24.1°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に吸収ピークを有する。
【0031】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは基本的に図2に示される。
【0032】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの示差走査熱量分析スペクトルは基本的に図3に示され、約166.5℃の融点を示す。
【0033】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの熱重量分析スペクトルは基本的に図4に示され、115℃の前に2段階の重量損失を示し、これは表面溶媒とチャンネル水の損失によるものである。115~165℃で約1.1%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものである。
【0034】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのNMRスペクトルは基本的に図5に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示す。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの製造方法は以下の通りである:
(1)カリプラジンパモ酸塩を溶媒に添加し、撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得る;
前記溶媒はメタノールである;
(2)カリプラジンパモ酸塩を良溶媒に溶解し、貧溶媒を徐々に加え、撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得る。
【0036】
前記良溶媒はジブチルケトンである;
前記貧溶媒はn-ヘプタンである。
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Fである。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0039】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0040】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、12.8°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0041】
より更に、本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、8.4°±0.2°、9.7°±0.2°、10.4°±0.2°、11.6°±0.2°、12.8°±0.2°、13.3°±0.2°、13.6°±0.2°、15.0°±0.2°、15.4°±0.2°、16.8°±0.2°、17.0°±0.2°、18.5°±0.2°、18.8°±0.2°、19.2°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、21.9°±0.2°、22.2°±0.2°、22.5°±0.2°、24.0°±0.2°、25.1°±0.2°、25.7°±0.2°、26.3°±0.2°、26.8°±0.2°、28.8°±0.2°、29.6°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0042】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは基本的に図6に示される。
【0043】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの示差走査熱量分析スペクトルは基本的に図7に示され、約166.6℃の融点を示す。
【0044】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの熱重量分析スペクトルは基本的に図8に示され、115℃の前に約1.3%の重量損失があることを示し、これはチャンネル水の損失によるものである。115~175℃で約1.3%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものである。
【0045】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのNMRスペクトルは基本的に図9に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示す。
【0046】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの製造方法は以下の通りである:
カリプラジンパモ酸塩結晶形Aを溶媒中でスラリーに形成し、撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fを得る;
前記溶媒は酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-t-ブチルエーテル又はn-ヘプタンである。
【0047】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Dである。
【0048】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、20.4°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0049】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0050】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、20.7°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0051】
より更に、本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、10.1°±0.2°、10.5±0.2°、11.9°±0.2°、13.2°±0.2°、14.5°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、20.7°±0.2°、21.1°±0.2°、21.9°±0.2°、23.5°±0.2°、18.8°±0.2°、19.2°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0052】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは基本的に図10に示される。
【0053】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの示差走査熱量分析スペクトルは基本的に図11に示され、約164.6℃の融点を示す。
【0054】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの熱重量分析スペクトルは基本的に図12に示され、190℃の前に約4%の重量損失があることを示し、これは水とエタノールの損失によるものである。
【0055】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのNMRスペクトルは基本的に図13に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示す。
【0056】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの製造方法は以下の通りである:
カリプラジンパモ酸塩をエタノールで撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dを得る。
【0057】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Bである。
【0058】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が5.2°±0.2°、10.5°±0.2°、14.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.5°±0.2°、21.3°±0.2°、21.9°±0.2°、22.9°±0.2°、26.2°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0059】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは基本的に図14に示される。
【0060】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Cである。
【0061】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.6°±0.2°、13.0°±0.2°、16.8°±0.2°、17.3°±0.2°、18.2°±0.2°、18.5°±0.2°、19.8°±0.2°、22.1°±0.2°、23.5°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0062】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは基本的に図15に示される。
【0063】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Eである。
【0064】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が11.0°±0.2°、12.8°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、15.9°±0.2°、17.9°±0.2°、18.4°±0.2°、20.7°±0.2°、23.4°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0065】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは基本的に図16に示される。
【0066】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Gである。
【0067】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.7°±0.2°、10.0°±0.2°、13.6°±0.2°、14.3°±0.2°、17.5°±0.2°、18.0°±0.2°、20.3°±0.2°、23.2°±0.2°、25.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0068】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは基本的に図17に示される。
【0069】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Iである。
【0070】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が10.0°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、17.7°±0.2°、18.5°±0.2°、19.0°±0.2°、21.1°±0.2°、22.1°±0.2°、24.5°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0071】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは基本的に図18に示される。
【0072】
本発明の実施形態によれば、前記「溶媒和物」という用語は、薬物、及び化学量論又は非化学量論的な1種又は複数種の溶媒分子(例えばエタノール)を含む分子複合体である。溶媒が薬物と密接に結合する場合、得られた複合体は、湿度に関係なく明確に定義された化学量論を有する。しかし、溶媒が薬物に弱く結合する場合、チャネル溶媒和物(channel solvate)及び吸湿性化合物のように、溶媒含有量は湿度と乾燥条件に依存する。そのような場合、複合体は一般に非化学量論的なものである。
【0073】
本発明の実施形態によれば、前記「水和物」という用語は、薬物、及び化学量論又は非化学量論的な水を含む溶媒和物である。「相対湿度」という用語は、所定の温度での水蒸気の量と、その温度及び圧力で維持できる水蒸気の最大量との比を百分率で表したものである。
【0074】
この分野の常識から逸脱することなく、上記好ましい条件のそれぞれは、任意に組み合わせれば、本発明のそれぞれの比較的好ましい例を得ることができる。
【0075】
本発明に用いる試薬及び原料は、何れも市販されている。
【0076】
本発明の実施形態によれば、前記室温とは、10℃~35℃の環境温度である。
【0077】
有益な効果
本発明者は、従来技術に開示されたカリプラジン薬用塩の溶解度が高すぎ、且つカリプラジン塩酸塩が水溶液の安定性が理想的ではなく、弱酸性又はアルカリ性環境で速やかに遊離塩基に解離する等の欠点があることを予想外に見出したため、このような塩は長時間作用型徐放性製剤には適していない。本発明のカリプラジン薬用塩は、上記の問題を改善し、その低溶解度、良好な結晶形安定性、良好な保存安定性、解離なし、及び容易な加工などの特性は、長時間作用型徐放製剤の製造を更に助長し、市場の見通しが良好である。
【0078】
〔図面の簡単な説明〕
図1]カリプラジンパモ酸塩非晶質のXRPDパターンである;
図2]カリプラジンパモ酸塩結晶形AのXRPDパターンである;
図3]カリプラジンパモ酸塩結晶形AのDSCパターンである;
図4]カリプラジンパモ酸塩結晶形AのTGAパターンである;
図5]カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの1H-NMRパターンである;
図6]カリプラジンパモ酸塩結晶形FのXRPDパターンである;
図7]カリプラジンパモ酸塩結晶形FのDSCパターンである;
図8]カリプラジンパモ酸塩結晶形FのTGAパターンである;
図9]カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの1H-NMRパターンである;
図10]カリプラジンパモ酸塩結晶形DのXRPDパターンである;
図11]カリプラジンパモ酸塩結晶形DのDSCパターンである;
図12]カリプラジンパモ酸塩結晶形DのTGAパターンである;
図13]カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの1H-NMRパターンである;
図14]カリプラジンパモ酸塩結晶形BのXRPDパターンである;
図15]カリプラジンパモ酸塩結晶形CのXRPDパターンである;
図16]カリプラジンパモ酸塩結晶形EのXRPDパターンである;
図17]カリプラジンパモ酸塩結晶形GのXRPDパターンである;
図18]カリプラジンパモ酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図19]カリプラジン塩酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図20]体外溶出シミュレーション実験の結果図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Gである);
図21]比較例4におけるpH7.4条件下でのカリプラジンパモ酸塩とカリプラジン塩酸塩のXRPDパターンの積み重ねグラフである(Aはカリプラジン遊離塩基である;Bはカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;CはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;Dはカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;EはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである)。
【0079】
図22]ラットにおける本発明の実施例44の製剤である経口試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である;
図23]ラットにおける本発明の実施例40~43の製剤である注射試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである);
図24図23の部分拡大図である(0~24時間のカルリモジンの平均血中薬物濃度と時間との関係図である)(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである)。
【0080】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例により本発明を更に説明するが、それによって本発明を記載される実施例の範囲に限定するわけではない。下記実施例において、具体的な条件を明記していない実験方法は、常軌の方法や条件、又は製品の仕様書に従って選択される。
【0081】
特に明記しない限り、下記の実施例における原料及び試薬は市販されているか、又は当業者が当該技術分野での既知の方法によって製造することができる。
【0082】
実施例の塩基型化合物について、それぞれ核磁気共鳴(1H-NMR)、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量法(DSC)、熱重量分析(TGA)、ホットステージ偏光顕微鏡(PLM)、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定を行い、測定パラメーターは以下の通りである:
(1)1H-NMR測定は、ブルカーの型式がBruker Advance III500Mである核磁気共鳴分光計で行い、測定周波数は400 Mzであり、使用する溶媒は重水素化DMSOであった。
【0083】
(2)DSC測定は、TA Instrumentsの型式Q2000密閉パン装置で行い、試料(約1~2 mg)をアルミニウムパンで秤量し、機器に移して測定した。測定パラメーターは以下の通りである:機器は30℃でバランスが取れており、10℃/minの速度で300℃まで上昇し、データを収集し、実験雰囲気は窒素ガスであった。
【0084】
(3)TGA測定は、TA Instrumentsの型式Q500装置で行い、試料(約2~5 mg)をアルミニウムパンで秤量し、機器に移して測定した。測定パラメーターは以下の通りである:機器は10℃/minの速度で350℃まで上昇し、データを収集し、実験雰囲気は窒素ガスであった。
【0085】
(4)XRPD測定は、ブルカーの型式がD8 AdvanceであるX線粉末回折計で行い、円形のゼロバックグラウンドの単結晶シリコン試料台を使用した。スキャンパラメーターは以下の通りである:電圧40 kV、電流40 mA、スキャン範囲3°~45°、スキャンステップ0.02°、スキャンモードは連続スキャンであった。
【0086】
(5)PLM測定は、上海点応光学機器の型式がDYP990/TPH350であるホットステージ偏光顕微鏡で行い、少量の試料を取り、スライドガラスに分散させ、10倍の接眼レンズ及び5~40倍の対物レンズで撮影した。
【0087】
(6)HPLC含有量及び関連物質の測定方法:
【0088】
【表1】
【0089】
特に明記しない限り、本発明におけるカリプラジン医薬組成物の懸濁水溶液の粒度検出装置の検出条件は以下の通りである:
【0090】
【表2】
【0091】
実施例1:カリプラジンパモ酸塩の製造
4000 mg(9.36 mmol)のカリプラジンを200 mL(5.4 mg/mL)のリン酸溶液に溶解して溶液Aを得、3634 mg(9.36 mmol)のパモ酸を100 mL(7.5 mg/mL)の水酸化ナトリウム溶液に溶解して溶液Bを得た。撹拌しながら、100 mLの溶液Bを200 mLの溶液Aに30分以内に添加し、生成物を濾別し、水で洗浄し、40℃で12時間真空乾燥を行い、5840 mgの淡黄色固体を得て、収率が76%であった(遊離塩基として計算)。
【0092】
本発明に記載のカリプラジンパモ酸塩の構造及びモル比は、プロトン核磁気共鳴により確認された。
【0093】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.38(s, 2H),8.16(d, 2H),8.80(d, 2H),7.39-7.13(m, 7H),5.86(d, 1H),4.76(s, 2H),3.40-3.32(m, 3H),3.22-3.18(m, 4H),2.75(s, 6H),1.76(t, 4H),1.63-1.57(m, 2H),1.25-1.16(m, 3H),1.04-0.96(m, 2H)。
【0094】
NMRの結果は、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0095】
上記試料を固相特性測定に供し、XRPDパターンは図1に示され、測定結果は、非晶質であることを示した。
【0096】
実施例2:カリプラジンパモ酸塩非晶質の製造
60℃の条件下で、20 g(46.8 mmol)のカリプラジンと18.17 g(46.8 mmol)のパモ酸を170 mLの THF:MeOH(2:1)混合溶媒に溶解し、濾過し、減圧濃縮して溶媒を除去し、更に300 mLのメタノールを加え、60℃で溶解し、減圧濃縮して溶媒を除去し、40℃で12時間真空乾燥を行い、36.6 gのカリプラジンパモ酸塩非晶質を得た。
【0097】
実施例3:カリプラジンヘミパモ酸塩の製造
200 mg(0.468 mmol)のカリプラジンを10 mL(5.4 mg/mL)のリン酸溶液に溶解して溶液Aを得、90.85 mg(0.234 mmol)のパモ酸を2.5 mL(7.5 mg/mL)の水酸化ナトリウム溶液に溶解して溶液Bを得た。撹拌しながら、2.5 mLの溶液Bを10 mLの溶液Aに30分以内に添加し、生成物を濾別し、水で洗浄し、40℃で12時間真空乾燥を行い、204 mgの淡黄色固体を得て、収率が70%であった。
【0098】
本発明に記載のカリプラジンパモ酸塩の構造及びモル比は、プロトン核磁気共鳴により確認された。
【0099】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.25(s, 1H),8.18(d, 1H),7.69(d, 1H),7.38-7.31(m, 2H),7.22-7.14(m, 2H),7.05(t, 1H),5.86(d, 1H),4.71(s, 1H),3.39-3.22(m, 5H),2.75(s, 6H),1.75(t, 4H),1.59-1.54(m, 2H),1.25-1.15(m, 3H),1.04-0.95(m, 2H)。
【0100】
NMRの結果は、カリプラジンとパモ酸がモル比2:1で塩形成をしたことを示した。
【0101】
上記試料についてPLM測定を行い、当該試料が無偏光固体で、非晶質であることが示された。
【0102】
実施例4:カリプラジン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の製造
100 mg(0.234 mmol)のカリプラジンと45 mg(0.234 mmol)の1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を8 mLのメタノールに加え、攪拌して溶解し、濾過し、3倍量のn-ヘプタンを加え、溶媒が乾くまで室温で揮発させ、油状物になり、40℃で4時間真空乾燥を行い、固体を得た。
【0103】
PLM測定により、固体は偏光を有し、約200℃で融解し始めたことを発見した。
【0104】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.23(d, 1H),7.80-7.74(m, 2H),7.57-7.53(m, 1H),7.48-7.44(m, 1H),7.38-7.31(m, 2H),7.20-7.16(m, 2H),5.86(d, 1H),3.36-3.09(m, 10H),2.75(s, 6H),1.74(t, 4H),1.61-1.56(m, 2H),1.33-1.15(m, 5H),1.02-0.83(m, 3H)。
【0105】
NMRの結果は、カリプラジンと1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0106】
実施例5:カリプラジンラウリン酸塩の製造
50 mg(0.117 mmol)のカリプラジンと23.7 mg(0.118 mmol)のラウリン酸を5 mLのメタノールに加え、50℃の条件下で溶解し、室温で12時間攪拌した後、2倍量の水を加えて濾過し、固体を40℃の条件下で12時間真空乾燥してカリプラジンラウリン酸塩を得た。
【0107】
実施例6:カリプラジンパルミチン酸塩の製造
50 mg(0.117 mmol)のカリプラジンと30.3 mg(0.118 mmol)のパルミチン酸を5 mLのメタノールに加え、50℃で溶解し、室温で12時間攪拌した後、1倍量の水を加えて濾過し、固体を40℃で12時間真空乾燥してカリプラジンパルミチン酸塩を得た。
【0108】
実施例7:カリプラジンセバシン酸塩、カリプラジンコハク酸塩、カリプラジンリンゴ酸塩、カリプラジン乳酸塩、カリプラジンウンデカン酸塩、カリプラジンヘプタン酸塩の製造
1:1.1のモル比でカリプラジンと酸の重量を量った。各種酸をそれぞれメタノール溶媒に溶解し、室温の条件下で得られた酸性試薬をカリプラジンメタノール溶液に加えて塩形成反応を行った。室温で12時間攪拌した後、室温で揮発、乾燥させ、相応するカリプラジン塩を得た。
【0109】
実施例8:カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの製造
2000 mgの実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩を取り、それを20 mLのメタノールに加え、室温で24時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、1900 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得、収率が95%であった。
【0110】
そのX線粉末回折パターンは図2に示された。
【0111】
その示差走査熱量分析スペクトルは図3に示され、166.5℃の融点を示した。
【0112】
その熱重量分析スペクトルは図4に示され、115℃の前に2段階の重量損失を示し、これは表面溶媒とチャンネル水の損失によるものであった。115~165℃で約1.1%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものであった。
【0113】
そのNMRスペクトルは図5に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0114】
実施例9:カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの製造
30 gの実施例2で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質の固体試料を取り、それを300 mLのメタノールに加え、10℃で24時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、28.5 gのカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得た。
【0115】
実施例10:カリプラジンパモ酸塩結晶形Bの製造
200 mgの実施例9で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aをメタノール溶媒中でスラリーに形成し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aと溶媒の重量体積比は40 mg/mLであり、3日間撹拌して結晶化させ、180 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Bを得た。
【0116】
そのX線粉末回折パターンは図14に示された。
【0117】
NMRの結果は、それがメタノール溶媒和物であることを示した。
【0118】
実施例11:カリプラジンパモ酸塩結晶形Bの製造
2 gの実施例9で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを50 mLのメタノールに加え、室温で72時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、1.9 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Bを得た。
【0119】
実施例12:カリプラジンパモ酸塩結晶形Cの製造
実施例8で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aをアセトン溶媒中でスラリーに形成し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aと溶媒の重量体積比は40 mg/mLであり、3日間撹拌して結晶化させ、カリプラジンパモ酸塩結晶形Cを得た。
【0120】
そのX線粉末回折パターンは図15に示された。
【0121】
NMRの結果は、それがアセトン溶媒和物であることを示した。
【0122】
実施例13:カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの製造
200 mgの実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを2 mLのエタノールに加え、室温で48時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、190 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Dを得、収率が95%であった。
【0123】
そのX線粉末回折パターンは図10に示された。
【0124】
その示差走査熱量分析スペクトルは図11に示され、164.6℃の融点を示した。
【0125】
その熱重量分析スペクトルは図12に示され、190℃の前に約4%の重量損失があることを示し、これは水とエタノールの損失によるものであった。
【0126】
そのNMRスペクトルは図13に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成し、約0.67個のエタノール分子を含むことを示した。
【0127】
実施例14:カリプラジンパモ酸塩結晶形Eの製造
実施例8で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aをアセトニトリル溶媒中でスラリーに形成し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aと溶媒の重量体積比は40 mg/mLであり、3日間撹拌して結晶化させ、カリプラジンパモ酸塩結晶形Eを得た。
【0128】
そのX線粉末回折パターンは図16に示された。
【0129】
実施例15:カリプラジンパモ酸塩結晶形Eの製造
2 gの実施例9で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを50 mLのアセトニトリルに加え、室温で72時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、1.8 gのカリプラジンパモ酸塩結晶形Eを得た。
【0130】
実施例16:カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの製造
200 mgの実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを20 mLの酢酸イソプロピルに加え、室温で12時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、180 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Fを得、収率が90%であった。
【0131】
そのX線粉末回折パターンは図6に示された。
【0132】
その示差走査熱量分析スペクトルは図7に示され、約166.6℃の融点を示した。
【0133】
その熱重量分析スペクトルは図8に示され、115℃の前に約1.3%の重量損失があることを示し、これはチャンネル水の損失によるものであった。115~175℃で約1.3%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものであった。
【0134】
そのNMRスペクトルは図9に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0135】
実施例17:カリプラジンパモ酸塩結晶形Gの製造
200 mgの実施例8で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、5 mLのアセトニトリルを加えてスラリーに形成し、5日間撹拌して結晶化させ、カリプラジンパモ酸塩結晶形Gを得た。
【0136】
そのX線粉末回折パターンは図17に示された。
【0137】
NMRの結果は、それがアセトニトリル溶媒和物であることを示した。
【0138】
実施例18:カリプラジンパモ酸塩結晶形Iの製造
15 mgの実施例1で得られたカリプラジンパモ酸塩非晶質の固体試料を取り、光照明条件下で10日間放置し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Iを得た。
【0139】
そのX線粉末回折パターンは図18に示された。
【0140】
実施例19:カリプラジン塩酸塩結晶形Iの製造
カリプラジン塩酸塩の先行研究特許に従って、カリプラジン塩酸塩結晶形Iの試料を製造した:
25 mL丸底フラスコに市販のカリプラジン遊離塩基1 gを加え、2 mLのメタノールと8 mLの水を加え、70℃のオイルバス用鍋で0.5 h攪拌し、0.226 mLの濃塩酸と0.35 mLの水との混合溶液を加え、溶解した後、熱いうちに濾過し、加熱を止めて一晩自然冷却し、0.8 gの近似白色固体を得た。
【0141】
そのX線粉末回折パターンは図19に示され、これがカリプラジン塩酸塩結晶形Iであることを示した。
【0142】
比較例1:関連物質と結晶形の安定性の比較
実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質、実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A、実施例10で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形B、実施例16で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形F、実施例17で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形G、及び実施例19で製造したカリプラジン塩酸塩結晶形Iを、それぞれ高温(60℃)、高湿(25℃/90%RH)、加速(40℃/75%RH)、光照明(1.2×106 Lux・hr)条件で放置し、HPLC又はXRPD検出のために0日、5日、7日、10日目にサンプリングした。
【0143】
関連物質の結果を表1に示し、本発明のカリプラジンパモ酸塩結晶形A、カリプラジンパモ酸塩結晶形B及びカリプラジンパモ酸塩結晶形Gのうち、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aが比較的安定であり、様々な条件下に10日間放置しても、関連物質の合計は基本的に変化しなかったが、カリプラジンパモ酸塩非晶質は高温条件下では不安定であり、不純物の成長が比較的大きかったことが示された。
【0144】
結晶形安定性の結果を表2に示し、既知のカリプラジン塩酸塩結晶形Iと比較して、本発明のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aが、更に優れた結晶形安定性を有し、様々な条件下に10日間放置しても結晶形が変化せず、結晶度も明らかに変化せず、本発明のカリプラジンパモ酸塩結晶形Fが、高温及び光照明条件下で比較的安定であり、結晶形が変化せず、高湿及び加速条件でカリプラジンパモ酸塩結晶形Aに変換されたことが示された。
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
比較例2:溶解度の比較
実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質、実施例3で製造したカリプラジンヘミパモ酸塩非晶質、実施例5で製造したカリプラジンラウリン酸塩、実施例6で製造したカリプラジンパルミチン酸塩、実施例7で製造したカリプラジンセバシン酸塩、カリプラジンコハク酸塩、カリプラジンリンゴ酸塩、カリプラジン乳酸塩、カリプラジンウンデカン酸塩、カリプラジンヘプタン酸塩、実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A、実施例10で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形B、実施例16で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形F、実施例17で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形G、実施例19で製造したカリプラジン塩酸塩結晶形I、及びカリプラジンをそれぞれ取り、それらをそれぞれ相応する媒体に加え、37℃の条件下で24時間振動し、0.45 μmの水相濾過膜で濾過し、濾液を回収し、高速液体クロマトグラフィーにより溶解度を測定した。そのうち、pH3、pH4、pH5及びpH6は酢酸緩衝液であり、pH7、pH7.4、pH8及びpH9はリン酸緩衝液であった。
【0148】
結果を表3に示し、本発明により得られたカリプラジンパモ酸塩及びその結晶形とカリプラジンヘミパモ酸塩の溶解度は何れも大幅に低下し、カリプラジンパモ酸塩の水への溶解度は3~10 μg/mLであり、カリプラジンの1/18~1/60(約180 μg/mL)に相当し、カリプラジン塩酸塩の1/1000~1/3600(約11 mg/mL)に相当し、そして、各pH媒体への溶解度は何れも比較的低く、それ自体で徐放効果を有し、同時に各pH媒体への溶解度は同等であり、放出速度はpHに最小限に依存するため、体内の異なる区域でのpH環境が薬物放出速度に及ぼす影響を回避し、バースト放出現象又は体内の局部区域での過剰な血中薬物濃度を回避し、個体間の薬物放出の変動性を減らし、且つ、カリプラジンパモ酸塩の結晶形は安定性が比較的良く、長時間作用型製剤に適しており、投与回数を減らし、患者の服用コンプライアンスを改善することができ、市場の見通しが良好であることを示した。
【0149】
【表5】
【0150】
比較例3:体外溶出シミュレーション実験
それぞれ実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質、実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A、実施例10で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形B、及び実施例17で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Gを取り、それぞれpH7.4のリン酸緩衝液媒体に加え、37℃の条件下で振動し、1、3、5、7、24時間で試料を取り、溶解度を測定した。
【0151】
結果を表4及び図20に示し、カリプラジンパモ酸塩非晶質試料に比べて、本発明によって製造されたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aとカリプラジンパモ酸塩結晶形Bとの二つの結晶形化合物試料は、pH7.4の条件下でより穏やかに溶出し、且つ24時間溶解度が小さかったことから、結晶形化合物が過剰な血中薬物濃度を避けるための薬用塩としてより適していることが示された。
【0152】
【表6】
【0153】
比較例4:溶液安定性の比較
実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A及び実施例19で製造したカリプラジン塩酸塩結晶形Iをそれぞれ取り、それらをそれぞれpH6、pH7、pH7.4、pH8、及びpH9等の相応する媒体に加え、37℃の条件下で4時間振動して遠心分離し、残分に対してXRPD検出を行った結果、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aは変化していないが、カリプラジン塩酸塩結晶形Iはカリプラジン遊離塩基に解離し、pH7.4での比較結果を図21に示し(残りは示されていない)、これにより分かるように、カリプラジン塩酸塩結晶形Iと比較して、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aは溶液中でより安定であり、投与後の結晶形の変化による薬効の変化を効果的に回避でき、薬物安全性を向上させることができる。
【0154】
実施例20~25:懸濁化剤の使用量が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0155】
【表7】
【0156】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記粗大粒子の懸濁水溶液をボールミルを用いて粉砕し、Dv(90)が10ミクロン以下の懸濁液を得た;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを4.0~9.0に調整し、定容して実施例20~25の懸濁液を得た。
【0157】
実施例20~25で製造した処方試料をそれぞれ取り、注射針透過性、懸濁性、沈降率及び再分散性を調べたところ、上記懸濁液試料は何れも0.45×15 mmシリンジの針を通過でき、懸濁性は良好であり、実施例22~25の試料の24時間沈降率及び再分散性は良好であった。
【0158】
実施例26~30:湿潤剤の使用量が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0159】
【表8】
【0160】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記粗大粒子の懸濁水溶液をそれぞれボールミルを用いて粉砕し、Dv(90)が10ミクロン以下の懸濁液を得た;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを4.0~9.0に調整し、定容して実施例26~30の懸濁液を得た。
【0161】
実施例26~30で製造した処方試料をそれぞれ取り、注射針透過性、懸濁性、沈降率及び濡れ性を調べたところ、上記懸濁液試料は何れも0.45×15 mmシリンジの針を通過でき、懸濁性、沈降率及び濡れ性は良好であった。
【0162】
実施例31~34:粒径が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0163】
【表9】
【0164】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記実施例31~34で得られた粗大粒子の懸濁水溶液をそれぞれボールミルを用いて粉砕して分散させた;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例31~34の懸濁液を得た;
(5)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、粉砕後の実施例試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0165】
【表10】
【0166】
上表の結果から、同じ処方の懸濁水溶液でも、粉砕パラメーターをコントロールすることで、異なる粒径(Dv90)の粒子の懸濁水溶液を製造できることが分かる。
【0167】
実施例35~37:結晶形が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0168】
【表11】
【0169】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)それぞれ処方量の相応するカリプラジンパモ酸塩試料を加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記実施例35~37で得られた粗大粒子の懸濁水溶液をそれぞれボールミルを用いて粉砕して分散させた;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例35~37の懸濁液を得た;
(5)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、粉砕後の実施例試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0170】
【表12】
【0171】
実施例35~37で製造した処方試料をそれぞれ取り、注射針透過性、懸濁性、沈降率及び濡れ性を調べたところ、上記懸濁液試料は何れも0.45×15 mmシリンジの針を通過でき、懸濁性、沈降率及び濡れ性は良好であった。
【0172】
上表の結果と注射針透過性、懸濁性、沈降率及び濡れ性の調べによると、同じ処方の懸濁水溶液と同じ粉砕パラメーターが、カリプラジンパモ酸塩の異なる結晶形に適用できることが分かる。
【0173】
実施例38:カリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液
【0174】
【表13】
【0175】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジン塩酸塩を加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記得られた粗大粒子の懸濁水溶液をボールミルを用いて粉砕して分散させた;
(4)上記懸濁液に処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例38の懸濁液を得た;
(5)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、粉砕後の実施例試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0176】
【表14】
【0177】
実施例39:カリプラジンパモ酸塩とカリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液の60℃における安定性に関する調べ
実施例33で製造したカリプラジンパモ酸塩と実施例38で製造したカリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液を取り、60℃の条件下で0、5、10日間の粒径を測定し、結果を下表に示す:
【0178】
【表15】
【0179】
上表の結果から、同じ処方の懸濁水溶液でも、カリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液は、不純物及び粒径の安定性の点でカリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液よりも明らかに優れていることが分かる。
【0180】
実施例40~44:ラット体内におけるカリプラジンパモ酸塩の懸濁液処方の薬物動態研究
【0181】
【表16】
【0182】
1、実施例40~43の懸濁注射液の製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)それぞれ処方量の相応するカリプラジンパモ酸塩試料を加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例40~43の懸濁注射液を得た;
(3)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、実施例41~43の試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0183】
【表17】
【0184】
2、実施例44の経口懸濁液の製造プロセス:
(1)処方量のTween20、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩を加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得、塩酸でpHを5.0~5.5に調整し、定容して実施例44の経口懸濁液を得た。
【0185】
実施例45:薬物動態実験
実施例40~44で製造した異なる濃度のカリプラジンパモ酸塩の処方試料を、ラットのインビボ実験のために選択し、実験は以下の通りであった:
15匹の雄SDラットを5つのグループに分け、そのうちの4つのグループに異なるカリプラジンパモ酸塩結晶形の処方試料を9 mg/kgの単回投与量で筋肉内注射し、投与後の0、1 h、3 h、7 h、24 h、4 d、7 d、11 d、15 d、20 d、25 d及び30 dに血漿を採取し、残りのグループに0.3 mg/kgの単回投与量でカリプラジンパモ酸塩結晶形Aの処方試料を強制経口投与し、投与後の5 min、15 min、30 min、1、2、3、4、6、8、12及び24時間に血漿を採取した。実験中、筋肉内注射群の動物は食物と水を自由に摂取でき、強制経口投与群の動物は投与前に一晩禁食し、投与の4時間後に飲食を再開した。
【0186】
血漿試料の採取:頸静脈から約150 μLの血液を採取し(全血を30分以内に遠心分離して血漿を分離)、抗凝固剤EDTA-K2入りの試験管に入れ、処理した後の血漿を使用するまで-70℃の冷蔵庫に保存した。
【0187】
血漿試料の前処理:30 μLの血漿試料を取り、200 μLの内部標準溶液(40 ng/mLのGlipizideアセトニトリル溶液)に加え、1 minボルテックスし、4℃で5800 rpmで10 min遠心分離し、100 μLの上清を取り、新しいプレートに移し、LC-MS/MS分析用に1 μLの溶液を取った。
【0188】
クロマトグラフィー条件:
流動相組成:流動相A:0.025%ギ酸水-1 mM酢酸アンモニウム
流動相B:0.025%ギ酸メタノール-1 mM酢酸アンモニウム
勾配溶出:
【0189】
【表18】
【0190】
カラム:Waters ACQUITY UPLC BEH C18 (2.1×50 mm, 1.7 μm);
流速:0.60 mL/min;
注入体積:1 μL;
カラムオーブン:60℃;
保持時間:カリプラジン:1.16 min;Glipizide:1.22 min。
【0191】
マススペクトル条件:
エレクトロスプレーイオン源(Turbo spray)を用い、正イオン検出モードで、多重チャンネル多重反応モニタリング(MRM)モードを選択して二次質量分析を行った。質量分析検出作業パラメーターとイオン源パラメーターは、次の表に示される。
【0192】
【表19】
【0193】
図22~24から分かるように、カリプラジンパモ酸塩経口群は投与後24時間以内に速やかに吸収されるのに対し、カリプラジンパモ酸塩注射群は投与後少なくとも11日間の持続放出を達成し、種属間の差異と合わせて、ヒトにおいて少なくとも30日間の放出が予想される。同時に、カリプラジンパモ酸塩のそれぞれの結晶形の中で、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの放出時間が最も優れている。
【0194】
本発明の実験結果から分かるように、本発明によって提供されるカリプラジンパモ酸塩注射製剤が懸濁水溶液に製造された後、カリプラジンパモ酸塩は粒度が比較的小さく、均一に分布しており、良好な注射可能性を有すると共に、長時間に亘って薬物を持続放出する特徴(SDラット体内で少なくとも1週間)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0195】
図1】カリプラジンパモ酸塩非晶質のXRPDパターンである;
図2】カリプラジンパモ酸塩結晶形AのXRPDパターンである;
図3】カリプラジンパモ酸塩結晶形AのDSCパターンである;
図4】カリプラジンパモ酸塩結晶形AのTGAパターンである;
図5】カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの1H-NMRパターンである;
図6】カリプラジンパモ酸塩結晶形FのXRPDパターンである;
図7】カリプラジンパモ酸塩結晶形FのDSCパターンである;
図8】カリプラジンパモ酸塩結晶形FのTGAパターンである;
図9】カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの1H-NMRパターンである;
図10】カリプラジンパモ酸塩結晶形DのXRPDパターンである;
図11】カリプラジンパモ酸塩結晶形DのDSCパターンである;
図12】カリプラジンパモ酸塩結晶形DのTGAパターンである;
図13】カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの1H-NMRパターンである;
図14】カリプラジンパモ酸塩結晶形BのXRPDパターンである;
図15】カリプラジンパモ酸塩結晶形CのXRPDパターンである;
図16】カリプラジンパモ酸塩結晶形EのXRPDパターンである;
図17】カリプラジンパモ酸塩結晶形GのXRPDパターンである;
図18】カリプラジンパモ酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図19】カリプラジン塩酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図20】体外溶出シミュレーション実験の結果図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Gである);
図21】比較例4におけるpH7.4条件下でのカリプラジンパモ酸塩とカリプラジン塩酸塩のXRPDパターンの積み重ねグラフである(Aはカリプラジン遊離塩基である;Bはカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;CはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;Dはカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;EはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである)。
図22】ラットにおける本発明の実施例44の製剤である経口試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である;
図23】ラットにおける本発明の実施例40~43の製剤である注射試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである);
図24図23の部分拡大図である(0~24時間のカルリモジンの平均血中薬物濃度と時間との関係図である)(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】