(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-21
(54)【発明の名称】液槽光重合プリンタのためのマルチマテリアル膜
(51)【国際特許分類】
B29C 64/223 20170101AFI20230913BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20230913BHJP
【FI】
B29C64/223
B29C64/124
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514826
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 US2021047014
(87)【国際公開番号】W WO2022051118
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518113546
【氏名又は名称】ネクサ3ディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ジェン-ドゥン
(72)【発明者】
【氏名】メダルジー イズハル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AJ05
4F213AJ09
4F213AR06
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL67
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】液槽光重合プリンタに使用され、粘着防止特性、並びに高い耐熱性、耐薬品性、強度、可撓性を有するマルチマテリアル膜を提供する。
【解決手段】 3次元印刷システムのためのマルチマテリアル膜(14)であって、膜は、シリコーンゴムの層(34)にシリコーンゴムの層の第1の側で結合されたフッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はポリオレフィンポリマーフィルム(32)を備え、シリコーンゴムの層は、その第2の側にコーティング(36)を有し、コーティングは、シリコーンゴムの層の面エネルギを低減するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元印刷システム(100)のためのマルチマテリアル膜(14,204,502)であって、
シリコーンゴムの層(34)に該シリコーンゴムの層(34)の第1の側で結合したフッ化エチレンプロピレン(FEP)又はポリオレフィンポリマーフィルム、
を備え、
前記シリコーンゴムの層(34)は、その第2の側にコーティング(36)を有し、該コーティング(36)は、該シリコーンゴムの層(34)の面エネルギを低減するように構成される、
ことを特徴とするマルチマテリアル膜(14,204,502)。
【請求項2】
前記コーティング(36)は、シリコーンエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ベースの材料、シリコーンエラストマーの硬化層、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の層のうちの1つを備えることを特徴とする請求項1に記載のマルチマテリアル膜(14,204,502)。
【請求項3】
前記FEP又はポリオレフィンポリマーフィルム(32)は、0.03mmから0.1mmの厚みを有することを特徴とする請求項1に記載のマルチマテリアル膜(14,204,502)。
【請求項4】
前記シリコーンゴムの層(34)は、0.03mmから0.1mmの厚みを有することを特徴とする請求項3に記載のマルチマテリアル膜(14,204,502)。
【請求項5】
3次元印刷システム(100)のための膜アセンブリ(200)であって、
請求項1に記載の前記マルチマテリアル膜(14,204,502)と、
前記マルチマテリアル膜(14,204,502)の周囲に固定されたフレーム(202,504)であって、第1の平面に沿って該マルチマテリアル膜(14,204,502)を延伸するように構成された前記フレーム(202,504)と、
を備えることを特徴とする膜アセンブリ(200)。
【請求項6】
前記フレーム(202,504)は、第1の複数の貫通孔(510a)と該フレーム(202,504)の面の周りに配分された第2の複数の磁化部分(512a)とを含むことを特徴とする請求項5に記載の膜アセンブリ(200)。
【請求項7】
タンクアセンブリ(10)と、
請求項1に記載の前記マルチマテリアル膜(14,204,502)と、
照明センブリ(26)と、
前記照明センブリ(26)と前記マルチマテリアル膜(14,204,502)の間に固定された液晶ディスプレイ(LCD)(24,506)と、
を備えることを特徴とする3次元(3D)印刷システム(100)。
【請求項8】
前記マルチマテリアル膜(14,204,502)は、前記タンクアセンブリ(10)の側壁(300)の溝(304)と係合するリップ(206)を有するフレーム(202,504)内に固定されることを特徴とする請求項7に記載の3D印刷システム(100)。
【請求項9】
膜(14,204,502)が、シリコーンゴムの層(34)に該シリコーンゴムの層(34)の第1の側で結合したフッ化エチレンプロピレン(FEP)又はポリオレフィンポリマーフィルム(32)で構成される3次元印刷システム(100)のためのマルチマテリアル膜(14,204,502)を処理する方法であって、
前記シリコーンゴムの層(34)の面エネルギを低減するように構成されたコーティング(36)を該シリコーンゴムの層(34)の第2の側に付加する段階、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記コーティング(36)は、媒体中に分散されたシリコーンエラストマーを噴霧して該コーティング(36)をそれが前記シリコーンゴムの層上にシリコーンフィルムを形成するまで硬化させる段階又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ベースの乾燥潤滑剤を噴霧する段階のうちの一方によって付加されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング(36)は、媒体中に分散されたシリコーンエラストマーを噴霧し、かつ該コーティング(36)をそれが前記シリコーンゴムの層(34)上にシリコーンフィルムを形成するまで室温で硬化させることによって付加されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング(36)は、媒体中に分散されたシリコーンエラストマーを噴霧し、かつ該コーティング(36)をそれが前記シリコーンゴムの層(34)上にシリコーンフィルムを形成するまで室温よりも高い温度で硬化させることによって付加されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング(36)を付加する段階の前に前記シリコーンゴムの層(34)の前記第2の側を溶剤で洗浄する段階を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
この出願は、2020年9月3日出願の米国特許出願第16/948,118号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、付加製造工程に関連し、特に、液槽光重合プリンタに使用されるマルチマテリアル膜に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造又は公知であるように3D印刷は、様々な物品の直接製造の異なる手段を提供する異なる技術の集合である。1つのそのような技術は、(典型的に)紫外線(UV)光源を使用する液槽に閉じ込められた粘性樹脂の選択的硬化を伴う液槽光重合である。樹脂は、製造下の物品が互いに接着する連続する一連の断面を通して生成されるように層毎に硬化される。
【0004】
液槽光重合印刷で重要な1つの問題は、印刷3次元物体が光硬化によってそこから得られる液体ポリマーが集められる液槽(又はタンク)の構成である。抽出プレートが上昇される時にポリマーの新たに形成された層が構成下の3次元物体の他の部分から引き裂かれるのを避けるために、液槽は、その面(典型的には、光硬化工程をトリガするための紫外線(UV)光の通過を可能にする透明ベース、例えば、石英又はホウケイ酸ガラス)からのこの形成したばかりの層の剥離を可能にしなければならない。多くの場合に、非粘着性コーティングが液槽の内面に付加され、硬化ポリマーの第1層が抽出プレートに接着し、かつ連続する層が順番に互いに接合することを可能にする。
【0005】
しかし、従来の液槽光重合プリンタでは、構成下の物体の面と液槽の透明ベースを覆う非粘着性材料との間に発生し、かつ物体を印刷することができる速度に制限効果を課する吸引効果が存在する。実際には、新たに形成されたポリマー層は、液槽の非粘着性面から距離「s」(形成されている物体の次の層の厚みに等しい)で樹脂に浸漬されたままに留まり(両方の面は、形成されることになる層に精度を与えるために共平面かつ平坦である)、物体の新しい層は、その空間内で樹脂を光硬化させることによって発生される。空気の欠如は、高粘性液体によって囲まれた2つの面の間に真空を生成し、新しく形成された層が液槽面から離れるように変位される時に(物体の更に別の層が形成されるように空間を作るために)、この新しい層(厚みが僅か数十分の1ミリメートルである場合がある)によって被られる機械的応力は有意である場合がある。すなわち、新しく形成された層をそれが接着された以前の層が液槽の底面から垂直に離れるように急速に変位される場合に引き裂く付帯リスクが存在する。
【0006】
この引き裂きのリスクを低減するために、従来の印刷工程は、抽出版(及びそれに接着した物体)をゆっくりと上昇させるように行われた。これは、液槽光重合による3次元物体の生産速度をセンチメートル当たり数時間の程度に制限した。従って、そのような工程によって生成される新たに形成されたポリマー層に対する機械的応力を軽減する技術が開発された。1つのそのような技術は、液槽の底面と製作中の物品の間に可撓性の膜を導入することであった。2018年3月19日に出願されて本発明の出願人に譲渡された米国特許出願第15/925,140号明細書は、透明な自己潤滑性ポリマーで作られた1つのそのような可撓性膜を説明している。他の膜ベースの手法も使用されてきた。例えば、ElseyによるU.S.PGPUB 2014/0191442は、FEPフッ素重合体フィルムから作られた粘着防止面を有する膜を説明している。可撓性ではあるが、そのようなフィルムは、特に弾性というわけではない。Elseyによって考えられた他の材料は、ナイロン及びマイラー、又はシリコーンの層がポリエステルフィルムに結合された積層膜を含み、シリコーンは、膜の樹脂に面した側であり、ポリエステル裏打ちは、何らかの弾性を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第15/925,140号明細書
【特許文献2】U.S.PGPUB 2014/0191442
【特許文献3】EP2074188 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
FEPフッ素重合体膜は、確かに良好な粘着防止特性を提供するが、それらは、比較的硬質であり、従って、液槽面に直接に付加された粘着防止コーティングに優る多くの印刷速度の改善を提供しない。更に、それらの剛性は、膜が液槽光重合プリンタでのその設置中に破損されることに至る可能性がある。シリコーンゴム膜は、FEPフッ素重合体膜に優る改善された可撓性を提供し、それによってより高速の全体印刷速度を可能にすることができるが、それらは、それらがプリンタの液槽内の重合反応の発熱的性質に起因して生成されるもののような高温に露出された時に劣化しやすいので、摩滅しやすいという欠点がある。それらはまた、多孔質媒体であり、一部の3D印刷樹脂の構成成分に対して殆ど又は全く抵抗性を提供しない場合がある。
【0009】
本発明は、添付の図面の図に限定ではなく一例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態によりマルチマテリアル膜を有する光硬化液体樹脂を閉じ込めるタンク内で物体を製作するための3D印刷システムの概略断面図である。
【
図2】
図1に示す3D印刷システムのコントローラの例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による
図1に示すもののような3D印刷システムと共に使用するためのマルチマテリアル膜の断面図である。
【
図4】3D印刷システムのための膜アセンブリの斜視図である。
【
図5】3D印刷システムのためのタンク側壁の斜視図である。
【
図6A】タンク側壁の底部リムに固定された膜アセンブリを示す膜アセンブリ及びタンク側壁の断面図である。
【
図6B】タンク側壁の底部リムに固定された膜アセンブリを示す膜アセンブリ及びタンク側壁の断面図である。
【
図7A】LCDアセンブリに固定されたフレームアセンブリを示すフレームアセンブリ及びLCDアセンブリの斜視図である。
【
図7B】LCDアセンブリに固定されたフレームアセンブリを示すフレームアセンブリ及びLCDアセンブリの斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態による改修キットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示するのは、液槽光重合プリンタに使用するためのマルチマテリアル膜の例である。
【0012】
図1は、物体(例えば、3D物体)22を製作するために光硬化液体樹脂(典型的には液体ポリマー)18を硬化するのに電磁放射線(例えば、UV光)が使用される本発明の実施形態によりマルチマテリアル膜を用いて構成された3D印刷システム100の断面を描いている。物体22は、層毎に製作され(すなわち、物体22の新しい層は、物体22の底面に隣接する液体ポリマー18の層を光硬化させることによって形成される)、各新しい層が形成されると、物体は、ビルドプレート20によって上昇させることができ、光硬化液体樹脂18の次の層が新しく形成された層の下に引き込まれることを可能にする。この工程は、物体の製作が完了するまで追加の層を形成するために複数回繰り返すことができる。
【0013】
3D印刷システム100は、光硬化液体樹脂18を閉じ込めるためのタンク(又は液槽)10を含む。タンク10の底部(又は少なくともその一部分)は、光源26からの電磁放射線がタンク10に入ることを可能にするように樹脂の硬化に関連する波長で透明(又はほぼ透明)である可撓性マルチマテリアル膜14によって密封される(すなわち、光硬化性液体ポリマー18がタンク10の外に漏れないように)。光源26と光硬化液体樹脂18の間にマスク24(例えば、液晶層)が配置され、液体樹脂の選択的硬化を可能にする(これは、望ましい形状/パターンへの3D物体の形成を可能にする)。様々な実施形態では、マスク24と光源26の間にレンズ、反射器、フィルタ、及び/又はフィルムのような視準及び拡散要素を位置決めすることができる。これらの要素は、図面を不要に不明瞭にしないように図に示されていない。
【0014】
ホウケイ酸ガラス又は他の材料で形成されたプラテン又は裏当て部材16が、マスク24と可撓性マルチマテリアル膜14の間に配置され、かつ構造的支持を提供する。プラテンはまた、樹脂の硬化に関連する1又は2以上の波長で透明(又はほぼ透明)である。他の事例では、プラテン16は、金属又はプラスチックであり、かつ光源26からの電磁放射線がタンク10に入ることを可能にする透明窓を含む場合がある。他の実施形態では、マスク24自体が個別の窓の代わりに使用される場合があり、その周囲は、ガスケットで密封される。マスク24、プラテン16、及び膜14は、何らかの距離だけ互いから変位されるように示しているが、実際には、これらの構成要素は、あらゆる空気界面での屈折を防ぐために互いに接触するように位置決めすることができることに注意されたい。可撓性マルチマテリアル膜14は、タンク又は他の開口部の縁部で液密周囲を維持するようにタンク10の縁部に又は交換可能カートリッジアセンブリ(図示せず)に固定される(「液密」は、通常使用中にタンクが漏れないことを意味する)。
【0015】
3D印刷システム100を使用して物体22の層を製作する時に、電磁放射線は、放射線源26からマスク24、プラテン16、及び膜14を通ってタンク10の中に放出される。電磁放射線は、物体22の底部に隣接する画像平面上に画像を形成する。画像内の高い(又は中程度の)強度の区域は、光硬化液体樹脂18の局所領域の硬化を引き起こす。新たに硬化した層は、物体22の元の底面に接着し、可撓性マルチマテリアル膜14の存在に起因してタンク10の底面には実質的に接着しない。新たに硬化した層が形成された後に、電磁放射線の放出は、物体22の別の新しい層を印刷することができるようにビルドプレート20がタンクの底部から離れるように上昇される間に一時的に中断することができる(又は「連続印刷」の場合は中断されない)。
【0016】
ビルドプレート20は、リードスクリュー12又は他の配置を駆動するモータ(M)30の作用によって上昇及び下降させることができる。モータシャフトの回転に起因するリードスクリュー12の回転は、ビルドプレート20をタンク10の底部に対して上昇又は下降させる。他の実施形態では、線形アクチュエータ又は他の配置を使用してビルドプレート20を上昇及び下降させることができる。
【0017】
印刷工程の態様は、プロセッサ実行可能命令が格納され、そのためにプロセッサがそれらの命令を実行する時にそれが上述の作用を引き起こす作動を実行するプロセッサ可読ストレージ媒体を有するプロセッサベースのシステムとして実施される場合があるコントローラ28によって誘導される。例えば、取りわけ、コントローラ28は、モータ30を通じたビルドプレート20の上昇/下降、光源26の起動及び起動停止、及びマスク24を通じた製作中の物体の断面画像の投影を命令することができる。
図2は、そのようなコントローラ28の例を提供しているが、全てのそのようなコントローラがコントローラ28の全ての特徴を有する必要はない。例えば、ある一定のコントローラは、表示機能をコントローラに通信的に結合されたクライアントコンピュータによって提供することができるので又は表示機能が不要である場合があるのでディスプレイを含まない場合がある。そのような詳細は、本発明に対して重要ではない。
【0018】
コントローラ28は、情報を通信するためのバス28-2又は他の通信機構と、情報を処理するためにバス28-2に結合されたプロセッサ28-4(例えば、マイクロプロセッサ)とを含む。コントローラ28はまた、プロセッサ28-4によって実行される情報及び命令(例えば、g-コード)を格納するためにバス28-2に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的ストレージデバイスのような主メモリ28-6を含む。主メモリ28-6はまた、プロセッサ28-4によって実行される命令の実行中に一時的変数又は他の中間情報を格納するのに使用することができる。コントローラ28は、プロセッサ28-4のための静的情報及び命令を格納するためにバス28-2に結合された読取専用メモリ(ROM)28-8又は他の静的ストレージデバイスを更に含む。プロセッサ28-4がそこから読み取ることができるストレージデバイス28-10、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリベースのストレージ媒体、又は他のストレージ媒体が設けられ、かつ情報及び命令(例えば、オペレーティングシステム及びスライサーアプリケーションのようなアプリケーションプログラムなど)を格納するためにバス28-2に結合される。
【0019】
コントローラ28は、コンピュータユーザに情報を表示するためにバス28-2を通じてフラットパネルディスプレイのようなディスプレイ28-12に結合することができる。英数字及び他のキーを含むキーボードのような入力デバイス28-14は、プロセッサ28-4に情報及び指令選択を通信するためにバス28-2に結合することができる。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報及び指令選択をプロセッサ28-4に通信するための及びディスプレイ28-12上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックパッド、又は類似の入力デバイスのようなカーソル制御デバイス28-16である。マイク、スピーカなどのような他のユーザインタフェースデバイスは、詳細には示していないが、ユーザ入力の受信及び/又は出力の提示に関与する場合がある。
【0020】
コントローラ28はまた、バス28-2に結合された通信インタフェース28-18を含む。通信インタフェース28-18は、上述の様々なコンピュータシステムとの及びその間の接続性を提供するコンピュータネットワークとの双方向データ通信チャネルを提供することができる。例えば、通信インタフェース28-18は、1又は2以上のインターネットサービスプロバイダネットワークを通してインターネットにそれ自体が通信的に結合される互換LANへのデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードである場合がある。そのような通信経路の正確な詳細は、本発明に対して重要ではない。重要なことは、コントローラ28が、通信インタフェース28-18を通してメッセージ及びデータ、例えば、プリンタ100を使用して生成される3D物品を表すデジタルファイルを送受信することができ、そのようにしてインターネットを通じてアクセス可能なホストと通信することができることである。コントローラ28の構成要素は、単一デバイスに位置付けることができ、又は複数の物理的及び/又は地理的に分散されたデバイスに位置付けることができることに注意されたい。
【0021】
図3は、マルチマテリアル膜14の断面図である。マルチマテリアル膜14は、シリコーンゴム34の層に結合されたフッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はポリオレフィンポリマーフィルム32で構成され、FEP膜32は、膜の樹脂に面する側であり、シリコーンゴム34の層は、膜の液槽に面する又は光源に面する側である。シリコーンゴムの層34は、その面エネルギ及び摩擦係数を低減するために被覆36される。様々な実施形態では、FEPフィルム32とシリコーンゴムの層34との各々は、約0.03mmから0.1mmのそれぞれの厚みを有することができる。膜14のマルチマテリアル構成は、粘着防止特性(すなわち、膜が、新たに形成されたポリマー層が最小限の引き裂きでFEPフィルムから分離することを可能にすることにより、急速印刷を可能にすることになることを意味する)、並びに高い耐熱性、耐薬品性、強度、及び可撓性の両方を提供する。
【0022】
シリコーンゴム層34に付加されたコーティング36は、3D印刷用途に使用される未処理シリコーンゴム膜に優る増大した耐久性を提供する。様々なコーティング36、例えば、キシレン、酢酸三級ブチル、又は類似の溶剤のような媒体に分散させたシリコーンエラストマー(例えば、ジブチルインジラウレートのような触媒あり又はなしで、シランアセテート、シランエチルアセテート、シラントリアセテート、シランメチルトリアセテート、オクタメチルトリシロキサン、メチルヒドロシロキサン、シロキサン、及び以上の2又は3以上の混合物など)のような化学コーティングを使用することができる。これらのコーティングは、シリコーンゴム層34の上に均一に付加され、薄いシリコーンフィルムを形成するために約5分から24時間(硬化環境の相対湿度に依存する)にわたって昇温、例えば、80-150℃、又は室温のいずれかで硬化させられ、かつコーティングのはけ塗り、浸漬、又は好ましくは噴霧によるそのいずれかで膜14のシリコーンゴム層34に付加することができる。被覆する前に、シリコーンゴム層34は、コーティングの付加の前に完全に自然蒸発させるべきである適切な溶剤(例えば、シリコーンゴム層によって吸収されないことになるもの)を用いて洗浄することができる。コーティングは、シリコーンゴム層34を完全に(又はほぼ完全に)覆うように付加され、次に、エラストマーが分散している溶剤が完全に蒸発するように室温で又は加熱によりそのいずれかで硬化させられる。
【0023】
これに代えて、コーティング36は、数ミクロンの粒径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ベースの乾燥潤滑剤のような物理的コーティング、例えば、流体推進剤中のPTFEのエマルジョンである場合がある。このような潤滑剤は、好ましくは噴霧されるが、シリコーンゴム層34への均一な付加を提供するために刷毛塗り又は浸漬付加が使用される場合がある。これらの潤滑剤は、噴霧され、かつ典型的には室温でシリコーンゴム層の面に接着する(ファンデルワールス力により)薄層として乾燥する。付加の前に、シリコーンゴム層34は、適切な溶剤で洗浄されてあらゆる汚れ又は他の面コーティングを除去する。シリコーンゴム層34の面エネルギを低減する他のコーティングも使用することができる。
【0024】
コーティング36の付加の前に、シリコーンゴム層34は、FEPフィルム32に結合される。例えばEP2074188 A1に説明されているようなプラズマエッチング処理を使用するか又は化学的エッチング処理を使用するあらゆる適切な結合技術を使用することができる。エッチングの後に、液体シリコーンゴムは、FEPフィルム32の面に付加されて硬化させられる。その付加中に、液体シリコーンゴムの厚みは、例えば過剰液体を除去するためにローラ間に十分に定められた間隙を有するローラ配置を使用して又はFEPフィルムの面から十分に定められた距離に維持されたブレードを使用して制御される。液体シリコーンゴムが硬化した状態で、コーティング36がそれに付加される。被覆されたマルチマテリアル膜14の使用寿命は、他の膜と比較して他の膜が同様に被覆されている場合でさえも非常に長い(例えば、被覆されたシリコーンゴム膜よりも24倍程度長い)ことが見出されているが、マルチマテリアル膜はその使用寿命内の何らかの時点で再調整される必要があることになることが可能である。これを行うには、マルチマテリアル膜14は、タンク10から取り出され、洗浄され、新たなコーティング36が付加される(例えば、噴霧、浸漬、又は刷毛塗りにより)。被覆される膜の面積に応じて、0.2グラム-1.5グラム、好ましくは、0.36グラム-0.5グラムの間のコーティング層を付加することができる。
【0025】
改修は、マルチマテリアル膜14及び/又は3D印刷システム100の販売業者によるサービスとして提供される場合があるが、それは、改修キットの支援によって3D印刷システムのユーザによって行うこともできる。
図8に示すようなそのようなキット600は、コーティング材料602のサプライ、アプリケータ(例えば、スプレーボトル、ブラシ又はローラ、又は浸漬のための液槽)604、安全装置(手袋、ゴーグル、及びマスクのような)606、及び任意的な新たなコーティングが付加された後に使用するための膜のための乾燥ラック608を含むことができる。洗浄溶剤610も含まれる場合がある。
【0026】
上述のように、マルチマテリアル膜は、交換可能カートリッジアセンブリの一部とすることができる。
図4は、本発明の実施形態による3D印刷システムのための膜アセンブリ200の斜視図を描いている。膜アセンブリ200は、放射線透過性で可撓性のマルチマテリアル膜204を含むことができ、その周囲は、フレーム202に固定される。フレーム202は、第1の平面に沿って膜204を延伸するように構成することができる。フレーム202は、第1の平面に垂直な方向に延びるリップ206を備える場合がある。リップ206は、タンク側壁の底部リムに固定することができる(後述するように)。膜アセンブリ200は、タンク側壁の底部リムに固定された時に、光硬化液体樹脂を閉じ込めるように構成されたタンクの底部を形成する。
図4では、フレーム202は、矩形形状を有するように描かれているが、正方形、長円形、円形などを含むフレーム202のための他の形状が可能である。
【0027】
図5は、3D印刷システムのためのタンク側壁300の斜視図を描いている。タンク側壁300は、溝304を有する底部リム302を含む。フレーム202のリップ206は、膜アセンブリ200をタンク側壁300のベースの上に固定するように溝304内に挿入することができる。タンク側壁300の形状及び寸法は、フレーム202の形状及び寸法に適合しなければならない。例えば、フレーム202が矩形であった場合に、タンク側壁300も矩形でなければならない(すなわち、上から見た時に)。
【0028】
図6A及び6Bは、膜アセンブリ200(フレーム202及び膜204を有する)及びタンク側壁300の断面図を描いており、かつ膜アセンブリ200がタンク側壁300の底部リム302に固定される方法を示している。
図6Aは、タンク側壁300の溝304の下で位置合わせしたフレーム202のリップ206を描いている。
図6Bは、タンク側壁300の溝304内に挿入されたフレーム202のリップ206を描いている。リップ206及び溝304は、互いに連結される場合があり(例えば、スナップ式取り付けで)、リップ206及び溝304の面が互いに接触するようにピッタリと嵌め込まれる場合がある(例えば、摩擦嵌め取り付けで)などである。一実施形態では、膜アセンブリ200は、それがその有用寿命の終わりに廃棄される又は改修されるという点で「消耗」製品であると考えられる。従って、膜アセンブリ200は、プリンタでのプリンタカートリッジ、かみそりでのかみそりブレードなどと類似の役割を果たすことができる。
【0029】
図7A及び7Bは、フレームアセンブリ500をLCDアセンブリ501に固定することができる方法を示すフレームアセンブリ500及びLCDアセンブリ501の斜視図を描いている。フレームアセンブリ500は、フレーム504と放射線透過可撓性マルチマテリアル膜502とを含むことができ、フレーム504は、膜502をその周囲に保持するように構成される。他の実施形態では、フレームアセンブリ500は、膜502と透明ガラスプレートとの両方を支持することができる。フレーム504は、フレーム504の底面の周りに配分された貫通孔510a及び磁化部分512aを備える場合がある。LCDアセンブリ501は、フレーム508及びLCD506を含むことができ、フレーム508は、LCD506を保持するように構成される。フレーム506は、フレーム508の上面の周りに配分された貫通孔510b及び磁化部分512bを備える場合がある。
【0030】
図7Aに描かれているように、貫通孔510aがフレーム504の底面の周りに配分されるパターンは、貫通孔510bがフレーム508の上面の周りに配分されるパターンの鏡像とすることができる。
図5Aに更に描かれているように、磁化部分512aがフレーム504の底面の周りに配分されるパターンは、磁化部分512bがフレーム508の上面の周りに配分されるパターンのミラー画像とすることができる。磁化部分512aの各1つは、フレーム504がフレーム508に近接して配置された時にフレーム504の底面がフレーム508の上面と自動的に接触し、貫通孔510aの各1つが貫通孔510bの対応する1つと自動的に位置合わせするように、磁化部分512bの対応する1つに引き寄せることができる。LCD506の周囲に又はその近くにガスケット514を配置することができる。ガスケット514の目的は、
図7Cに関して以下で説明する。
【0031】
図7Bは、LCDフレーム508に固定されたフレーム504の斜視図を描いている。フレーム504は、放射線透過可撓性マルチマテリアル膜502と(任意的に)ガラスプレートとを取り囲んでいる。LCD506は、
図5Bでは見えないが、膜502のすぐ下に位置付けられる。この配置を固定するために、貫通孔510a及び510bの位置合わせしたペアを通して小さいスクリュー又はピンを挿入することができる。そのようなスクリュー又はピンのための開口部は、フレーム508の底面に位置付けることができる(描かれていない)。
【0032】
図7Cは、
図7Bの線I-Iに沿った断面図を描いている。
図7Cに示すように、フレームアセンブリ500は、LCDアセンブリ501に固定される。より具体的には、フレーム504の底面は、フレーム508の上面に接触し、膜502は、LCD506の上方に配置される。ガスケット514は、フレーム504の底面とフレーム508の上面の間の境界領域内に又はその近くに配置される。樹脂(又は別の流体)がフレーム504の底面とフレーム508の上面の間の境界領域を貫通することができる事象では、ガスケット514は、樹脂がLCD506と膜502の間を流れる(これは、LCD506から投影される画像の望ましくない歪みに至る場合がある)ことを防ぐことができる。
【0033】
上述のように、貫通孔510aと貫通孔510bを自動的に位置合わせするために磁石(又はフレームの磁化部分)が使用された。これに加えて又はこれに代えて、フレーム504の底面とフレーム508の上面との両方の上に配置された溝(例えば、のこぎり歯溝)(かつ特に上面での溝と相補的である底面での溝)も、自己位置合わせ機構として使用される場合がある。
【0034】
すなわち、液槽光重合プリンタに使用するためのマルチマテリアル膜の例を説明した。
【符号の説明】
【0035】
14 マルチマテリアル膜
32 FEP又はポリオレフィンポリマーフィルム
34 シリコーンゴム
36 コーティング
【国際調査報告】